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特表2022-508884カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度ならびにそれらの比率の定量的決定のための手段
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度ならびにそれらの比率の定量的決定のための手段
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/52 20060101AFI20220112BHJP
   G01N 33/493 20060101ALI20220112BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220112BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20220112BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220112BHJP
   G01N 27/333 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01N33/52 B
G01N33/493 A
G01N33/483 F
G01N33/70
G01N27/416 351A
G01N27/416 351B
G01N27/416 341G
G01N27/333 331C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546456
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077093
(87)【国際公開番号】W WO2020078756
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】18200692.4
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521161059
【氏名又は名称】ウリソルト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フールマン, ゲルダ
(72)【発明者】
【氏名】キリッキラン, ピナル
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB03
2G045DA42
2G045DB07
2G045DB08
2G045DB10
2G045DB12
2G045DB13
(57)【要約】
本発明は、ナトリウムではないカチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量的決定、および後続のそれらの比率の決定のための使い捨て試験ストリップ、ならびに患者の体内の電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置に関する。さらに、本発明は、患者の尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を同時かつ定量的に決定する方法、ならびに患者の体内の電解質均衡の障害を検出する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の尿試料中のナトリウムではないカチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量のための使い捨て試験ストリップであって、前記試験ストリップが、
-基板であって、電気的に絶縁されているか、または電気絶縁層が前記基板上に適用されている基板、
-前記基板上または、存在する場合、前記電気絶縁層上に適用された電極アセンブリであって、前記電極アセンブリが、少なくとも
-前記カチオン性電解質に対して選択的な1つの作用電極、
-1つのクレアチニン選択性作用電極、
-前記カチオン性電解質選択性作用電極および前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの接合基準電極、または前記カチオン性電解質選択性作用電極のための基準電極および前記クレアチニン選択性作用電極のための別個の基準電極のいずれか、
-必要に応じて、干渉を測定および除去するための1つまたは2つの中性電極
を含む、電極アセンブリ、
-前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するためのインターフェース
を含む使い捨て試験ストリップ。
【請求項2】
前記作用電極、前記基準電極(複数可)および、存在する場合、前記中性電極(複数可)が、印刷、スパッタリング、蒸着、無電解めっき、貼着、接着またはリソグラフィ、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷などの適切な堆積技術によって、前記基板上または、存在する場合、前記電気絶縁層上に適用され、かくして前記基板上または前記電気絶縁層上に電極アセンブリが形成されており、前記カチオン性電解質選択性作用電極がカチオン性電解質選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性作用電極がクレアチニン選択性膜を含み、前記中性電極(複数可)が前記カチオン性電解質に対して選択的ではなくクレアチニン選択性でもない膜を含む、請求項1に記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項3】
ナトリウムではない前記カチオン性電解質が、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛および銅を含む、好ましくはこれらからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項4】
前記基板が、プラスチック、セラミック、アルミナ、紙、厚紙、ゴム、織物、ポリプロピレンなどの炭素系ポリマー、テフロン(登録商標)などのフルオロポリマー、ガラス、石英、窒化ケイ素、酸化ケイ素などのケイ素系基材、ポリジメトキシシロキサンなどのケイ素系ポリマー、元素ケイ素などの半導体材料、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデンなどの有機誘電材料、二酸化ケイ素などの無機誘電材料から選択される誘電材料から選択される材料で作製され、存在する場合、前記電気絶縁層は誘電材料で作製され、前記電気絶縁層が前記基板上に存在する場合、前記電極アセンブリは前記電気絶縁層上に配置されるものとする、先行する請求項のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項5】
前記カチオン性電解質選択性作用電極が、ポリマーマトリックス中にカチオン性電解質選択性担体を含むカチオン性電解質選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性膜が、ポリマーマトリックス中にクレアチニン選択性担体を含む、請求項2~4のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項6】
前記電極アセンブリが、干渉を測定および排除するための1つまたは2つの中性電極をさらに含み、前記中性電極(複数可)が、カチオン性電解質選択性担体もクレアチニン選択性担体も含まないポリマーマトリックスを含む膜を含む、先行する請求項のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項7】
前記電極アセンブリ内の前記電極の各々が、それぞれ電気リード線を有し、前記電気リード線が、前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するために前記電極を前記インターフェースと接続する、先行する請求項のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項8】
前記接合基準電極が、前記作用電極のそれぞれの表面よりも大きい表面を有するか、または前記別個の基準電極のそれぞれが、前記作用電極のそれぞれの表面よりも大きい表面を有する、先行する請求項のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップ。
【請求項9】
患者の体内の電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置であって、前記POC装置が、
-尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の定量的かつ選択的な測定のため、およびクレアチニンに対するカチオン性電解質の比率を決定するための読み取りメーター装置であって、前記読み取りメーター装置が、
-請求項1~8のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップのインターフェースを受け入れ、前記読み取りメーター装置と前記使い捨て試験ストリップの電極アセンブリとの間の電気的接触を確立し、したがって前記使い捨て試験ストリップから前記読み取りメーター装置への電気信号(複数可)の検出および伝送を可能にするための受入モジュールであって、前記受入モジュールが、前記試験ストリップの前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する、受入モジュール、
-請求項1~8のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップから送信された電気信号(複数可)を増幅するための、好ましくは高い入力抵抗を有するマルチチャンネルアンプ、
-請求項1~8のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップから受け取った電気信号をカチオン性電解質濃度測定値(複数可)およびクレアチニン濃度測定値(複数可)に変換し、続いて前記カチオン性電解質濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に基づいてクレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率を決定するための、アナログ/デジタル変換器およびデータ記憶用メモリを含むコントローラ、
-濃度測定値および/または前記比率をユーザ、好ましくはディスプレイに表示するための出力装置、並びに
-電源
を含む、読み取りメーター装置を含む、非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップであって、前記使い捨て試験ストリップの前記インターフェースを介して前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに挿入されることで、前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立されることになる使い捨て試験ストリップをさらに含む、請求項9に記載の非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置。
【請求項11】
前記装置が、さらに、
-前記装置を操作するためのユーザインターフェース、および/または複数のカチオン性電解質およびクレアチニン濃度測定値ならびにクレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の決定された比率を記憶するためのメモリ、および/または外部コンピュータもしくは外部ネットワークとデータを転送および/または交換するための接続インターフェース、好ましくはUSBおよび/または無線接続インターフェース
を含む、請求項9~10のいずれかに記載の非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置。
【請求項12】
患者の尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための方法であって、
a)患者の尿試料を準備する工程、
b)請求項1~8のいずれかに記載の使い捨て試験ストリップを前記尿試料と接触させ、前記試験ストリップの前記電極アセンブリを前記尿試料で濡らして接触させ、必要に応じて前記尿試料から前記の尿で濡らした試験ストリップを引き出す工程、
c)前記試験ストリップを請求項9に記載のポイント・オブ・ケア(POC)装置の読み取りメーター装置に接続して、請求項10に記載のポイント・オブ・ケア(POC)装置を組み立てる工程であって、前記使い捨て試験ストリップが前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに挿入されることで、前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立されることになり、
工程c)における前記ポイント・オブ・ケアの前記読み取りメーター装置への前記試験ストリップの前記接続は、工程b)の前か後に行われるものとする、工程、並びに
d)工程c)で組み立てられた前記ポイント・オブ・ケア(POC)装置を用いて、前記尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を測定する工程
を含む、方法。
【請求項13】
患者の体内の電解質均衡の障害を検出する方法であって、前記方法が、
-請求項12に記載の方法を実行する工程、
-前記ポイント・オブ・ケア(POC)装置を使用して、クレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率を決定する工程、
-前の工程で決定された前記尿試料中のクレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の前記比率が、それぞれの患者についての生理学的に適切な比率の値の範囲の外である、すなわちそれより高いかまたは低い場合に、電解質均衡の障害を検出する工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記電解質均衡の障害が、カチオン性電解質枯渇またはカチオン性電解質過負荷であり、好ましくは、
-例えば、後天性または遺伝性腎疾患、利尿薬摂取中または感染症、炎症性疾患、悪性疾患および遺伝性腸疾患中の長期の嘔吐および/または下痢中に起こり得るような、カリウムの腎臓および/または胃腸での喪失量の増加に起因する患者の血漿中のカリウム枯渇、
-例えばカリウムレベルを上昇させる薬物の摂取に起因するか、または急性腎障害、心血管疾患および真性糖尿病の間における患者の血漿中のカリウム過負荷、
-例えば、腎臓結石症、骨粗鬆症および真性糖尿病で起こり得るような、代謝障害、ビタミンD欠乏または腎カルシウム喪失量の増加に起因する患者の体内におけるカルシウム枯渇、
-例えば、妊娠中における妊娠高血圧腎症で起こり得るような、腎臓カルシウム喪失量の低減による患者の体内のカルシウム過負荷、
-尿路結石症、片頭痛、アルツハイマー病、冠動脈心疾患、高血圧症、2型真性糖尿病、妊娠高血圧腎症および子癇症で起こり得るような、患者の体内におけるマグネシウム枯渇またはマグネシウム過負荷、
-例えば、セリアック病もしくはクローン病、ウィルソン病、糖尿病、慢性の肝疾患および腎疾患で起こり得るような、食事不足または胃腸障害に起因する患者の体内における亜鉛枯渇、
-例えば、腎症候群、メンケス、疾患および低タンパク質血症の間に起こり得るような、吸収不良および吸収不良に起因する患者の体内における銅枯渇、ならびに
-ウィルソン病で起こり得るような、銅の腎排泄の妨害に起因する患者の体内の銅過負荷
から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生理学的に適切な比率の値の範囲が、好ましくは同じ年齢、性別および/または体重の健常者を基準にして別々に決定されている、または決定された、請求項13~14のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムではないカチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量的決定、および後続のそれらの比率の決定のための使い捨て試験ストリップ、ならびに患者の体内の電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置に関する。さらに、本発明は、患者の尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を同時かつ定量的に決定する方法、ならびに患者の体内の電解質均衡の障害を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
身体は、ヒトおよび動物の健康に不可欠な多種多様な電解質を含有する。各電解質は体内で特定の役割を果たし、それらの均衡がとれていることは、水和、細胞外および細胞内pH、代謝、神経インパルス、骨密度、ならびに筋収縮/弛緩などの多数の生理学的機能にとって決定的に重要である。重要な電解質は、とりわけ、カチオン性電解質、特にカリウム(K)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、銅(Cu2+)、および亜鉛(Zn2+)の正荷電イオンである。
【0003】
患者の体内における前述の電解質の枯渇および/または過負荷を含む電解質均衡の障害は、これらの電解質の不十分な取り込みおよび/または排泄障害から生じることがあり、これは様々な急性および慢性の疾患状態、例えば腎臓の機能不全、胃腸疾患、重度かつ継続的な下痢または嘔吐を生じる感染症の間に、および尿中の電解質の喪失を引き起こす薬物(利尿薬)に起因して起こり得る([1])。
【0004】
カリウム(K)は最も重要な細胞内カチオンである。Kは、あらゆる細胞における多数の生命プロセスに関与し、K不均衡は、重度の細胞不応答性および危険な心不整脈をもたらし得る([2])。カリウム枯渇は、摂食障害に関連するK摂取の減少、ならびに例えばインスリン投与、交感神経系の刺激、甲状腺中毒症および家族性周期性麻痺に起因するKの細胞内シフトの増加に起因して起こり得る。しかしながら、カリウム枯渇を引き起こす最も重要な機構は、依然として主に腎臓および/または消化管を介したK喪失量の増加である([3])。腎カリウム喪失は、後天性または遺伝性腎疾患、例えばバーター症候群およびクッシング症候群を含む内分泌障害の結果であり得るか、またはチアジドおよび浸透圧利尿薬、アムホテリシンB、ペニシリンおよびテオフィリンなどの薬物によって引き起こされ得る。胃腸の原因は、感染症、炎症性、悪性および遺伝性腸疾患中の長期の嘔吐および/または下痢の間に起こるが、下剤乱用の結果としても起こる。K枯渇の軽微な症例は、筋力低下および痙攣などのより軽度の症状で現れることがあるが、重篤な症例は致命的であり得、直ちに処置しなければならない。通常、処置については、経口カリウム補充が推奨される。しかしながら、補充カリウムもまた、例えば入院患者におけるK過負荷の一般的な原因であるので、処置中の慎重な制御が不可欠である。
【0005】
一方、カリウム過負荷は、慢性腎臓疾患で頻繁に起こる臨床的異常であるが、食事における高カリウム摂取およびカリウムレベルを上昇させることが知られている薬物の結果であることも多い。過負荷のさらなる危険因子は、急性腎障害、心血管疾患および真性糖尿病である([4])。K過負荷は無症候性であり得、これが引き起こすのは、悪心、疲労、筋力低下または刺痛を含む曖昧な症状に過ぎないことを意味する。しかしながら、診断されず処置されないままにすると、この症状は致命的であり、心停止および死亡につながる可能性がある。慢性KO患者は、食事性カリウムを減らすように助言され、綿密なモニタリングが必要である。
【0006】
カルシウム(Ca)は、筋収縮、酵素活性、および血液凝固に必要である。Caは、細胞膜の安定化に役立ち、ニューロンからの神経伝達物質および内分泌腺からのホルモンの放出に不可欠である。骨の健康のためには、十分な生物学的に利用可能なカルシウムが不可欠である。カルシウム枯渇は、多数の胃腸疾患の結果としての不十分な摂取または同化不良によるビタミンD欠乏によって引き起こされ得る。また、真性糖尿病を含む様々な代謝障害は、腎Ca喪失量の増加に随伴し得る([5])。
【0007】
骨粗鬆症は、あらゆる年齢の女性および男性が罹患し得る一般的な骨障害である。特に、全閉経後女性の30%超が、骨折の危険が高い臨床的に関連のある骨粗鬆症に罹患している([6])。現在、骨粗鬆症を診断するための最も広く受け入れられている方法は、骨密度(BMD)の測定である。しかしながら、BMD測定は、技術的および遂行上要求が厳しく、時間がかかり、高価である。24時間の尿収集におけるβクロスラップおよびCa排泄などの骨粗鬆症の他のマーカーは、処置に対する応答を評価するために臨床的に使用されるが、これらの調査は面倒で間違いも多い。したがって、これらの方法は、Ca喪失量の増加の一般的な集団スクリーニングにも、骨粗鬆症処置中のCa状態のモニタリングにもあまり適していない。
【0008】
一方、Caの排泄の減少は、世界中の妊娠の最大8%に影響を及ぼし、母体の死の主な原因の1つである、妊娠高血圧腎症における機序であると報告されており([7])、したがってCa状態をモニタリングするより簡単な方法が要望されている。
【0009】
マグネシウム(Mg)は、300を超える酵素反応に関与し、セカンドメッセンジャーとしても重要な役割を果たす必須ミネラルである。マグネシウムは、筋肉および神経細胞の静止膜電位を安定化し、したがって神経筋伝導、心臓の興奮性および血管運動緊張において重要な役割を果たす([8])。
【0010】
これらの作用と一致して、マグネシウム枯渇は、片頭痛、アルツハイマー病、冠動脈心疾患、高血圧、2型真性糖尿病の発生率の増加に関連し得ることが報告されている。低マグネシウム尿症はまた、尿路結石症を有する患者の最大60%で報告されている([9])。十分に研究された重要な役割が、妊婦に影響を及ぼす妊娠高血圧腎症および子癇におけるマグネシウムについて確立されている。しかしながら、経口硫酸マグネシウム投与は、現在、これらの患者群において認められている治療手段であるが、下痢、嘔吐、悪心および心停止に至る重度の不整脈を引き起こし得る毒性についての懸念が残っている([10])。したがって、体内Mg状態の補充を制御し、モニタリングするための単純な方法は、罹患したすべての患者にとって最も重要である。
【0011】
亜鉛(Zn)は、タンパク質の構造成分であり、様々な酵素プロセスにおいて補因子として関与するため、体内の必須元素である。亜鉛欠乏の影響には、免疫応答の減少、治癒の遅延および神経障害、ならびに胎児発達の低下が含まれ得る。亜鉛枯渇は、食事性要因によって引き起こされ得るが、セリアック病またはクローン病のような胃腸障害、ウィルソン病、糖尿病、慢性の肝疾患および腎疾患を有する患者に存する遺伝性欠陥によっても引き起こされ得る([11])。体内亜鉛状態の評価は、特に、ウィルソン病における経口亜鉛療法のような治療をモニタリングするため、および栄養不足の疑い、糖尿病の症例、創傷治癒の遅延、または成長遅延を評価するために必要である。
【0012】
体内の多くの生物学的プロセスに不可欠な別の電解質は、いくつかのタンパク質の一部である銅(Cu)である。銅枯渇は、栄養不良および吸収不良の結果であり得、低タンパク血症、腎症候群およびメンケス病に起因し得る。一方、銅は、過剰に存在すると有毒であり得、重度の肝損傷を引き起こすことが多い([12])。銅過負荷は、主にウィルソン病患者に起こる。ヒトおよび動物の銅の主な供給源は、食品、飲料水および銅含有サプリメントである。一般に、食材はその天然銅含有量が大きく異なるため、食物における銅含有量は大きく異なる。季節、土壌の質、地理、水源および肥料の使用などの要因は、食品中の最終銅含有量に影響を及ぼす。体内銅状態の評価は、ウィルソン病の治療をモニタリングするため、および閉塞性肝疾患を検査するために必要である。
【0013】
現在、身体の電解質状態の評価のためには実験室での分析が必要とされているが、これは結果取得にかかる時間を長期化させるもので遂行上厄介である。かかる分析は、医療および実験室の人員を必要とし、モニタリングおよび集団スクリーニングにも、自己検査にも適していない(例えば、血液検査のための静脈穿刺の必要性、24時間の尿収集)。これらの方法は、ポイント・オブ・ケア(POC)診断のための試験の要件を満たさない([13]、[14])。
【0014】
電解質障害は、患者の健康に有害となる可能性があり、時間内に処置されなければ、腎不全、呼吸不全、または循環不全、さらには死などの深刻な生命を脅かす問題を引き起こす可能性がある。したがって、電解質の不均衡を適時に特定し、電解質の状態をモニタリングするより簡単な方法が緊急に要望されている。
【0015】
最近、スポット尿試料中のクレアチニン(Crea)に対する電解質(El)の算出濃度(uEl/uCrea)が、電解質障害の危険がある患者を特定およびモニタリングするための潜在的に有望なツールとして浮上した([15]、[16])。クレアチニンは、筋肉代謝の老廃物であり、糸球体濾過によって比較的一定した速度で尿中に排出される。個体内では、クレアチニン濃度排泄は比較的安定している([17])。したがって、尿量および尿産生速度の変動を調整するために、尿クレアチニン(uCrea)を場合により電解質濃度の正規化としてみなすこともあり得る。
【0016】
それにもかかわらず、現在行われているようなuEl/uCreaの測定にとっては、確立された実験方法の1つによって分析物濃度を測定する実験室に尿検体を送る必要性が障害となっている。したがって、この方法は、依然として熟練した人員、かなりの組織的努力および長い結果取得までの時間を必要とし、ポイント・オブ・ケア(POC)診断には適していない。
【0017】
スクリーン印刷またはインクジェットなどの先進技術によって可能になった電気化学装置の小型化、および成熟したモバイル技術の出現と共に、真性糖尿病患者のグルコースで実証されているように([18])、様々な分析物の定量的測定を可能にし得るPOC検査の新しい時代が到来した([13]、[14])。
【0018】
国際公開第96/04554号明細書は、尿中のカルシウムおよびクレアチニンの濃度の測定によってカルシウム喪失を測定するための試験ストリップについて記載している。この方法は、試験ストリップに取り付けられた2つの乾燥化学試薬含有パッドの存在に依存するもので、1つはカルシウムを感知し、1つはクレアチニンを感知する。パッド上に固定化された乾燥化学試薬は、分析物が尿中に存在する場合、その分析物と化学的に反応して、それぞれの分析物の濃度に比例する色の変化を生じさせる。読み取りは、最善でも半定量的な測定に過ぎないカラーチャートを介して、またはポイント・オブ・ケア設定に適していない反射率計を介して視覚的に行われ得る。
【0019】
生物学的試料中の電解質濃度を測定するために、圧倒的に現在適用されている主な分析方法は、炎光光度法、古典的なイオン選択電位差測定法、または上流の化学反応に基づく比色法である([19])。前述の方法は、特別な機器および前分析試料調製を必要とする。したがって、前述の方法は訓練された人でなければ実行することができない。結果取得に要する時間は、数時間、さらには数日かかることがあり、適時の治療決定が妨げられる。
【0020】
結果取得に要する時間を短縮することができる近医療診断装置は、現在、病院の緊急ユニットまたは臨床検査室で利用できることがある。かかる装置の例は、Radiometer ABL 800(Radiometer、デンマーク)またはCobas 6000(Roche、CH)である。システムは、センサ、溶液、ゴミ袋、さらにはサンプラーを含む使い捨て複合カートリッジを備えた血液ガス分析器である。しかしながら、分析には侵襲的な段階(静脈穿刺)が必要であり、器具はその複雑さのために高価であり、訓練された人にしか操作できない。
【0021】
臨床検査室でのクレアチニンの定型的な測定法は、Jaffe反応に基づくか、または着色化合物を生じる酵素クレアチニンアミドヒドロラーゼの使用に基づく。これらの比色法に干渉や分析上の問題がないことは周知である([20])。クレアチニンに関する非常に正確な結果は、同位体希釈ガスクロマトグラフィー-質量分析によって提供される。しかしながら、この方法は、高価で複雑な計装および訓練された人を必要とするため、実行可能な定型的方法と考えることはできない。より最近では、クレアチニンを測定するための実行可能な定型的方法を開発する目的で、主に3つの酵素の複雑な組合せに依存するいくつかのアンペロメトリックバイオセンサが報告されている([21])。現在市販されているのは、使い捨てのポケットサイズのカートリッジに固定されたこの三酵素系を利用する携帯型臨床分析装置であるStatSensor(登録商標)(Nova Biomedical、米国)である([22])。しかしながら、分析は血液試料を用いて行われ、検査は医療従事者によって行われるべきである。
【0022】
Nova(登録商標)Biomedical Stat Profile Critical Care Xpress(CCX)([23])は、約11.4%の誤差でクレアチニンを検出することができ、K、CaまたはMgを含む他の分析物も検出することができるベンチトップのポイント・オブ・ケア装置である。しかしながら、装置は他のすべての装置と同様に、分析のために血液を必要とするため、侵襲的である。また、携帯機器ではなく、オールインワン方式であるためかなり高価である。
【0023】
上記の情報を考慮すると、明らかにK、Ca、Mg、ZnおよびCuなどの必須電解質の状態の障害を識別およびモニタリングするための侵襲性が低く安価な手段が非常に所望され得る。
【0024】
体内の電解質の障害を識別およびモニタリングするための侵襲性が低く、安価で、使いやすい手段が非常に所望され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】国際公開第96/004554号
【非特許文献】
【0026】
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、本発明の目的は、患者の尿試料中の興味の対象である電解質およびクレアチニンの濃度を簡単な方法で同時に測定する手段を提供し、かつ容易に取り扱うことができるそのような手段を提供することであった。さらに、本発明の目的は、患者の尿試料中の電解質濃度およびクレアチニン濃度を測定し、それに続いてそれらの比率を決定し、電解質枯渇および/または電解質過負荷を検出するための、時間効率がよく、ポイント・オブ・ケア(POC)で実施することができる方法論を提供することであった。さらに、本発明の目的は、患者自身などの訓練を受けていない人によっても実施することができる、患者の体内の電解質枯渇および/または電解質過負荷を検出するための方法論を提供することであった。さらに、本発明の目的は、時間がかからず、定型的操作として実行することができる、患者の尿試料中の電解質濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定し、それらの比率を決定し、そして/または患者の体内の電解質枯渇および/または電解質過負荷を検出するための手段および方法論を提供することであった。
【0028】
第1の実施態様において、本発明は、患者の尿試料中のナトリウムではないカチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量ための使い捨て試験ストリップに関するものであって、
前記試験ストリップは、
-電気的に絶縁されているか、または電気絶縁層がその上に適用されている基板と、
-前記基板上または、存在する場合、前記電気絶縁層上に適用された電極アセンブリを含み、
前記電極アセンブリは、少なくとも
-前記カチオン性電解質に対して選択的な1つの作用電極、
-1つのクレアチニン選択性作用電極、
-前記カチオン性電解質選択性作用電極および前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの接合基準電極、または前記カチオン性電解質選択性作用電極のための基準電極および前記クレアチニン選択性作用電極のための別個の基準電極、
-必要に応じて、干渉を測定および除去するための1つまたは2つの中性電極、
-前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するためのインターフェース
を含むものとする。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態によれば、電極アセンブリは、カチオン性電解質に対して選択的な1つの作用電極および1つのクレアチニン選択性作用電極以外のさらなる作用電極を一切含まないことに留意されたい。
【0030】
一実施形態において、かかる測定は、電位差測定(複数可)によって行われる。
【0031】
好ましい実施形態において、前記電極アセンブリは、基準電極として、前記カチオン性電解質選択性作用電極および前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの接合基準電極を含む。接合基準電極の利点は、はるかに単純な形状および材料コストの大幅な削減である。単一の接合基準電極を用いて、電極アセンブリのためのかなり単純な幾何学的形状を設計することが可能であり、各作用電極について異なる、すなわち別個の基準電極のそれぞれ異なる位置を考慮する必要性が回避される。これにより、材料コストおよび製造コストが削減される。
【0032】
一実施形態において、前記作用電極、前記基準電極(複数可)および前記中性電極(複数可)は、存在する場合、印刷、スパッタリング、蒸着、無電解めっき、貼着、接着またはリソグラフィ、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷などの適切な堆積技術によって、前記基板上または前記電気絶縁層(存在する場合)上に適用されており、したがって前記基板上または前記電気絶縁層上に電極アセンブリが形成されることになるが、ただし前記カチオン性電解質選択性作用電極はカチオン性電解質選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性作用電極はクレアチニン選択性膜を含み、前記中性電極(複数可)は前記カチオン性電解質に対して選択性ではなく、かつクレアチニン選択性ではない膜を含むものとする。
【0033】
一実施形態において、前記電極アセンブリは、
-前記カチオン性電解質に対して選択的な1つの作用電極、
-1つのクレアチニン選択性作用電極、
-前記カチオン性電解質選択性作用電極および前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの接合基準電極、または前記カチオン性電解質選択性作用電極のための基準電極および前記クレアチニン選択性作用電極のための別個の基準電極、
-必要に応じて、干渉を測定および除去するための1つまたは2つの中性電極、
-前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するためのインターフェース
からなる。
【0034】
一実施形態では、ナトリウムではない前記カチオン性電解質は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛および銅を含む、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0035】
一実施形態において、前記基板は、プラスチック、セラミック、アルミナ、紙、厚紙、ゴム、織物、ポリプロピレンなどの炭素系ポリマー、テフロン(登録商標)などのフルオロポリマー、ガラス、石英、窒化ケイ素、酸化ケイ素などのケイ素系基材、ポリジメトキシシロキサンなどのケイ素系ポリマー、元素ケイ素などの半導体材料、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデンなどの有機誘電材料、二酸化ケイ素などの無機誘電材料から選択される誘電材料から選択される材料で作製され、存在する場合、前記電気絶縁層は誘電材料で作製され、前記電気絶縁層が前記基板上に存在する場合、前記電極アセンブリは前記電気絶縁層上に配置されるものとする。
【0036】
より具体的には、基板は、必要に応じて電気絶縁層でコーティングされていてもよい。かかる電気絶縁基板は、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデンなどの有機誘電材料、または二酸化ケイ素などの無機誘電材料から選択される、好ましくは誘電材料で作製される。一実施形態において、基板上または、存在する場合、前記電気絶縁基板上に適用される電極アセンブリは、基板の表面の一部であり、かつ/またはその一部を形成しており、尿試料などの患者の試料と接触させるのに適している。電気絶縁層が基板上に存在する場合、電極アセンブリは、好ましくは、かかる電気絶縁層上に配置され、適用される。
【0037】
一実施形態において、前記カチオン性電解質選択性作用電極は、ポリマーマトリックス中にカチオン性電解質選択性担体を含むカチオン性電解質選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性膜は、ポリマーマトリックス中にクレアチニン選択性担体を含む。
【0038】
一実施形態において、前記電極アセンブリは、干渉を測定および排除するための1つまたは2つの中性電極をさらに含み、前記1つまたは2つの中性電極は、カチオン性電解質選択性担体およびクレアチニン選択性担体を含まないポリマーマトリックスを含む膜を含む。
【0039】
一実施形態において、前記電極アセンブリ内の各前記電極は、それぞれ電気リード線を有し、前記電気リード線は、前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するために前記電極を前記インターフェースと接続する。
【0040】
一実施形態において、前記接合基準電極は、前記作用電極のそれぞれの表面よりも大きい表面を有するか、または前記別個の基準電極のそれぞれは、前記作用電極のそれぞれの表面よりも大きい表面を有する。
【0041】
さらなる実施態様において、本発明はまた、患者の体内における電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置に関するもので、前記POC装置は、
-尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の定量的かつ選択的な測定のための、およびクレアチニンに対するカチオン性電解質の比率を測定するための読み取りメーター装置を含み、前記読み取りメーター装置は、
-本発明による使い捨て試験ストリップのインターフェースを受け入れ、前記読み取りメーター装置と前記使い捨て試験ストリップの電極アセンブリとの間の電気的接触を確立し、したがって前記使い捨て試験ストリップから前記読み取りメーター装置への電気信号(複数可)の検出および伝送を可能にするための受入モジュールであって、前記試験ストリップの前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する受入モジュール、
-本発明による使い捨て試験ストリップから送信された電気信号を増幅するための、好ましくは高い入力抵抗を有するマルチチャンネルアンプ、
-本発明による使い捨て試験ストリップから受け取った電気信号をカチオン性電解質濃度測定値(複数可)およびクレアチニン濃度測定値(複数可)に変換し、続いて前記カチオン性電解質濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に基づいてクレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率を決定するための、アナログ/デジタル変換器およびデータ記憶用メモリを含むコントローラ、
-濃度測定値および/または前記比率をユーザ、好ましくはディスプレイに表示するための出力装置、
-電源
を含んでいる。
【0042】
一実施形態において、出力装置はまた、他のデータ、例えば以前の測定値を追加的に示すことがあり得、また値がある特定の閾値を超えた場合等の警報などの追加の機能を有することもあり得る。出力装置は保存/送信機能などを含むことができる。
【0043】
一実施形態では、本発明による使い捨て試験ストリップから受け取った電気信号をカチオン性電解質濃度測定値(複数可)およびクレアチニン濃度測定値(複数可)に変換するための前記コントローラは、そのデータ記憶用メモリに予め記憶された事前記憶較正情報を利用する。前述の事前記憶較正情報は、各分析物、すなわちカチオン性電解質およびクレアチニンに関するものである。コントローラは、Nernstの式をさらに利用して、それぞれの分析物の濃度測定値を決定する。例えば、一実施形態では、電極アセンブリが第1の作用電極(第1の電気リード線を有する)、接合基準電極(第2の電気リード線を有する)、第2の作用電極(第3の電気リード線を有する)および中性電極(第4の電気リード線を有する)を含む場合、前記コントローラは、第1の電気コネクタ(リード線)および第2の電気コネクタ(リード線)を介して受け取った第1の電気信号、第2の電気コネクタ(リード線)および第3の電気コネクタ(リード線)を介した第2の電気信号、ならびに中性電極も存在する場合、第2の電気コネクタ(リード線)および第4の電気コネクタ(リード線)を介した第3の電気信号を使用して、ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度をそれぞれ測定し、続いてそれらの比率を計算する。
【0044】
一実施形態では、前記受入モジュールは、前記試験ストリップのインターフェースへの接続を確立することを可能にするスリット、凹部またはウェルの形態または他の適切な形態である。一実施形態では、前記受入モジュールは、エッジコネクタ対またはピンとソケット対として構成されている場合もある。
【0045】
一実施形態において、本発明による非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置は、さらに
-本発明による使い捨て試験ストリップであって、この使い捨て試験ストリップの前記インターフェースを介して前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに挿入されることで、前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立されることになる、使い捨て試験ストリップを含む。
【0046】
一実施形態において、前記装置は、さらに
-前記装置を操作するためのユーザインターフェース、および/または複数のカチオン性電解質およびクレアチニン濃度測定値ならびにクレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の決定された比率を記憶するためのメモリ、および/または外部コンピュータもしくは外部ネットワークとデータを転送および/または交換するための接続インターフェース、好ましくはUSBおよび/または無線接続インターフェース
を含む。
【0047】
さらなる実施態様において、本発明はまた、患者の尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定する方法であって、
a)患者の尿試料を提供する段階、
b)本発明による使い捨て試験ストリップを前記尿試料と接触させ、前記試験ストリップの電極アセンブリを前記尿試料で濡らして接触させ、必要に応じて前記尿試料から尿で濡らした試験ストリップを引き出してもよい段階、
c)前記試験ストリップを前記ポイント・オブ・ケア(POC)装置の読み取りメーター装置に接続して、前記ポイント・オブ・ケア(POC)装置を組み立てる段階であって、前記使い捨て試験ストリップが前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに挿入されることで、前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立される、段階、
段階c)における前記試験ストリップの前記ポイント・オブ・ケアの前記読み取りメーター装置への前記接続は、段階b)の前または後のいずれかで行われるものとする、段階、および
d)段階c)で組み立てられた前記ポイント・オブ・ケア(POC)装置を使用して、前記尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を測定する段階
を含む方法に関する。
【0048】
好ましい実施形態において、定量は、電位差測定(複数可)によって行われる。前述の電位差測定は、電極アセンブリに電流または電位を印加する必要がなく、代わりに、この定量的測定が作用電極(複数可)と対応する基準電極(複数可)との間の既存の電位差の測定(複数可)を含むという利点を有する。また、定量的電位差測定は、(調査されている試料中において)摂動を引き起こすための電極アセンブリへの電位または電流の能動的印加も、そのような摂動の効果(複数可)のその後の検出も含まないことにも留意されたい。
【0049】
さらなる実施態様において、本発明は、患者の体内の電解質均衡の障害を検出する方法であって、
-本発明によるカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための方法を実施する段階、
-前記ポイント・オブ・ケア(POC)装置を使用して、クレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率を決定する段階、
-前の段階で測定された、前記尿試料中のクレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の前記比率が、それぞれの患者にとって生理学的に適切な比率の値の範囲の外側にある、すなわちよりその範囲より高いかまたは低い場合に、電解質均衡の障害を検出する段階
を含む方法に関する。
【0050】
一実施形態では、前記電解質均衡の障害は、カチオン性電解質枯渇またはカチオン性電解質過負荷であり、好ましくは、
-例えば、後天性または遺伝性腎疾患、利尿薬摂取中または感染症、炎症性疾患、悪性疾患および遺伝性腸疾患中の長期の嘔吐および/または下痢中に起こり得るような、カリウムの腎臓および/または胃腸での喪失量の増加に起因する患者の血漿中のカリウム枯渇、
-例えばカリウムレベルを上昇させる薬物の摂取に起因するか、または急性腎障害、心血管疾患および真性糖尿病の間における患者の血漿中のカリウム過負荷、
-例えば、腎臓結石症、骨粗鬆症および真性糖尿病で起こり得るような、代謝障害、ビタミンD欠乏または腎カルシウム喪失量の増加に起因する患者の体内におけるカルシウム枯渇、
-妊娠中における妊娠高血圧腎症で起こり得るような、例えば腎臓カルシウム喪失量の低減による患者の体内のカルシウム過負荷、
-尿路結石症、片頭痛、アルツハイマー病、冠動脈心疾患、高血圧症、2型真性糖尿病、妊娠高血圧腎症および子癇症で起こり得るような、患者の体内におけるマグネシウム枯渇またはマグネシウム過負荷、
-例えば、セリアック病もしくはクローン病、ウィルソン病、糖尿病、慢性の肝疾患および腎疾患で起こり得るような、食事不足または胃腸障害に起因する患者の体内における亜鉛枯渇、
-例えば、腎症候群、メンケス、疾患および低タンパク質血症の間に起こり得るような、吸収不良および吸収不良に起因する患者の体内における銅枯渇、ならびに
-ウィルソン病で起こり得るような、銅の腎排泄の妨害に起因する患者の体内の銅過負荷
から選択される。
【0051】
一実施形態では、生理学的に適切な比率の値の前記範囲は、好ましくは同じ年齢、性別および/または体重の健常者を参照して別々に決定されるか、または決定されている。
【0052】
本発明者らは、患者の尿試料中の、カチオン性電解質がナトリウムではない場合のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の同時定量のための、ならびに患者の体内の電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的、定量的、低コストおよび携帯型ポイント・オブ・ケア(POC)装置のための、単純で、高感度、非侵襲的、定量的および低コストの携帯型使い捨て試験ストリップを提供した。試験ストリップおよびポイント・オブ・ケア装置により、後でカチオン性電解質およびクレアチニンの比率(カチオン性電解質:クレアチニン)を計算または決定するためのカチオン性電解質およびクレアチニンの尿中濃度の電気化学的測定結果を、電解質均衡の障害のマーカーとして使用することが可能となる。
【0053】
カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の同時定量的測定は、酵素を用いない方法で行われることに留意されたい。したがって、かかる決定に関して酵素は使用されず、酵素反応または他の化学反応の生成物は測定/決定されない。かかる決定は、好ましくは単に電位差測定に基づいており、すなわち電位差の測定を含む。これは電流の測定を含まず、試験ストリップのパッドに固定される酵素、染料および/または乾燥化学試薬の使用も含まない。したがって、本発明の実施形態による試験ストリップは、試験ストリップのパッド上に固定化され、そして/またはカチオン性電解質もしくはクレアチニンと反応することになる酵素または乾燥化学試薬を含まないか、またはその使用を含まない。より好ましくは、本発明による試験ストリップ(複数可)は、最終的にカチオン性電解質およびクレアチニンと反応するための乾燥化学試薬を含まず、乾燥化学試薬が固定化されたパッドも含んでいない。
【0054】
本発明の実施形態による試験ストリップは、使い捨て試験ストリップであり、これは、カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の測定のために1回使用された後には廃棄されることを意味する。したがって、本発明の実施形態による試験ストリップは使い捨て試験ストリップである。これは、患者の体内の電解質均衡の障害を検出するための本発明による非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置と共に使用されるべきである。
【0055】
本明細書で使用される「試験ストリップ」は、簡単な実施形態では、カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の定量的測定を行うために、試料と接触させることになる基板を指すものとする。試験ストリップは、長方形、正方形、円形または楕円形など、患者の試料と接触するのに適した形態であればいかなる形態でもよい。一実施形態では、試験ストリップは平面状であり、電極アセンブリが適用された平面状の電気絶縁基板を有する。しかしながら、他の実施形態において、試験ストリップはまた、シートまたはロッドまたはチューブなどの他の形状および形態をとっていてもよいが、ただし、かかる形態は、電極アレイを堆積させることができる基板を収容するのに適しているものとする。一実施形態では、前記基板は平面基板であり、別の実施形態では、前記基板は非平面基板である。例えば、前記基板は、シートまたはロッドまたはチューブの形態であってもよい。一実施形態では、前記電極アレイの電極はすべて、前記基板上または、存在する場合、前記絶縁層上での単一の平面内に配置される。別の実施形態では、前記電極は必ずしも単一の平面内にある必要はなく、互いにある角度をなして異なる平面内に配置されてもよい。唯一の要件は、試験ストリップが尿試料と接触するときに電極を尿と接触させることができるように電極が電極アレイ内に配置されることである。
【0056】
一実施形態では、本発明による試験ストリップは、それ自体が単一の試験ストリップである。別の実施形態では、前記試験ストリップは、ロール内またはディスク上に配置され得るような試験ストリップのアレイの一部を形成しており、各測定について、一度に1つの試験ストリップが使用され得る。したがって、本発明はまた、互いに接続された本発明による複数の試験ストリップを想定しており、それらに関するものである。したがって、本発明はまた、本発明による試験ストリップのアレイに関する。かかるアレイでは、各試験ストリップは単回使用を意図しているが、アレイ全体は、かかるアレイ内に存在する試験ストリップの数に応じた回数だけ使用され得る。一実施形態において、かかる試験ストリップのアレイは、試験ストリップの連続使用を可能にするカートリッジまたは他の分注装置の形態で提供されてもよい。一実施形態では、かかるアレイ内で、試験ストリップは互いに離脱し得るように接続されていてもよく、例えば、試験ストリップが測定に使用される場合、試験ストリップはアレイから切り離され、その後に使用され得る。
【0057】
電極または膜に関して本明細書で使用される場合、「カチオン性電解質選択性(の)」および「クレアチニン選択性(の)」という用語は、それぞれのカチオン性電解質、例えばK、Ca2+、Mg2+、Zn2+またはCu2+、および/またはクレアチニンについてそれぞれ特異的かつ選択的に感知する電極または膜を指すものとする。かかるカチオン性電解質選択性の膜または電極は、考慮される個々のカチオン性電解質に対して選択的である、すなわち、異なるカチオン性電解質を区別することができ、それらのうちの(実験者によって選択された)1つに対して選択的であることに留意されたい。したがって、K選択性の電極または膜は、Ca2+選択性の電極または膜とは異なる。一実施形態では、電極のかかる特異的かつ選択的な感度は、カチオン性電解質選択性膜またはクレアチニン選択性膜を前記電極に適用することによって達成される。一実施形態において、かかるカチオン性電解質選択性膜またはより一般的には分析物選択性膜は、分析物選択性膜溶液をそれぞれの電極の表面に適用することによって製造される。前記適用は、分注、ドロップキャスト、スクリーン印刷、スピンコーティング、または任意の他の適切な堆積方法によって行うことができる。かかる分析物選択性膜溶液は、典型的には、イオノフォアなどの分析物特異的担体分子を含む。溶液はまた、典型的には、ポリマーおよび溶媒を含有する。前述の溶液はまた、必要に応じて、可塑剤および/またはカチオン交換塩などの他の成分を含んでいてもよい。分析物選択性溶液は、例えば、すべての成分を適切な溶媒に溶解させることによって調製され得る。適切な溶媒は、多種多様であり、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノンまたはジメチルホルムアミドである。分析物選択性膜溶液が電極の表面に適用されると、溶媒は乾燥、蒸発などによって除去され、残存するものは、分析物特異的および選択的な担体を含有するポリマー膜である。
【0058】
膜溶液(そこからポリマーマトリックスが生成される)の調製に使用され得、その後膜中でポリマーマトリックスとして機能するポリマーまたはポリマーの混合物は多種多様であり、一実施形態では、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリシロキサン、ポリメタクリレート、シリコーンエラストマー、セルロースエステルから選択される。
【0059】
極めて疎水性の高い分析物選択性電極(ASE)膜、例えばイオン選択性電極(ISE)膜を実現するために、これらのポリマーのフルオラス相も可能である。
【0060】
一実施形態において、ポリマーは、膜の不活性特性を保証するために、好ましくは高分子平均重量を有する。
【0061】
一実施形態において、ポリマー材料の重量パーセントは、分析物選択性膜の総重量に対して20~40%である。
【0062】
一実施形態では、1つまたはいくつかの可塑剤が膜溶液に含まれる。それらの役割は、膜をより柔らかくし、機械的ストレスに対し耐性にすることである。一実施形態において、膜溶液に使用され得る可塑剤は、o-ニトロフェニル-オクチルエーテル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジオクチル、ホスホン酸ジオクチルフェニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、ヘキサメチルホスホルアミド、アジピン酸ビス(1-ブチルペンチル)、クロロパラフィンから選択され得る。一実施形態において、可塑剤は、ポリマー材料中の分析物選択性担体を溶媒和するのに十分な量で存在する。一実施形態では、可塑剤対分析物選択性担体の重量比は、10:1~100:1である。一実施形態では、典型的な可塑剤:ポリマー混合物中の可塑剤:ポリマーの重量比は、1:1~4:1の範囲内である。一実施形態では、可塑剤の重量パーセントは、膜の総重量に対して40~80%である。
【0063】
必要に応じて、そしていくつかの実施形態では、それぞれの電極の表面に分析物選択性溶液を適用するか、またはKClもしくは親油性塩を含むポリマー材料を基準電極上に適用する前に、「内側接触層」材料(イオン-電子トランスデューサとも呼ばれる)を前記電極上にコーティングすることができる。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、前述の内側接触層は、電極/膜境界面での容量性のある層の形成を回避する機能を有する。「内側接触層」として適した材料の例は、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェンなどの導電性炭素系材料または金属ナノ粒子である。一実施形態において、それらは、適切な溶媒に可溶化または分散され、分注、ドロップキャスト、スクリーン印刷、スピンコーティングまたは任意の他の適切な堆積方法によって前記電極の表面に適用され得る。溶液/分散液が電極の表面に適用されると、溶媒は乾燥、蒸発などによって除去され、残存するものは後で分析物選択性膜が適用される「内側接触層」である。
【0064】
一実施形態において、「内側接触層」材料は、必要に応じて、基準電極上に適用された分析物選択性膜のポリマー膜溶液またはポリマー材料に直接含まれていてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、電極は液体試料、例えば尿試料と電気的に接触しているべきであるが、電極アレイおよび電気リード線が、濃度(複数可)の測定値(複数可)の質に干渉し、悪影響を及ぼし得る、タンパク質などのより大きな分子または尿成分と接触するのを防ぐことは有用であり得る。(より大きな分子に起因する前述の悪化プロセスは、「バイオファウリング」と呼ばれる)。したがって、いくつかの実施形態では、必要に応じて、被覆膜が、前記尿試料と接触するように意図された前記試験ストリップの部分に適用されてもよい。かかる適切な被覆膜の例は、ポリカーボネート材料、例えば、大きな干渉分子の捕捉を可能にする「Nucleopore」の商標で販売されているものである。
【0066】
さらに、いくつかの実施形態では、試験ストリップの製造の終わりに、電極用の開口部を有する適切な被覆フィルム、例えば、プラスチック絶縁材料などの誘電体保護層を試験ストリップに適用して(図4)、貯蔵および処理中の電気リード線の汚染を除くために、およびユーザにとって有用な商品であるために、露出した電極アレイ4および端子インターフェース5を有する試験ストリップ(2a)を構築することができる。
【0067】
一実施形態において、本発明による試験ストリップは、ロッド状構造ではなく、平面状電気絶縁基板であるか、または平面状電気絶縁基板を含むことに留意されたい。一実施形態において、カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の定量は、比色測定またはアンペロメトリック測定に基づいていない。一実施形態では、カチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の定量は電位差測定に基づく。さらに、一実施形態では、本発明によるカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度の定量は、酵素の使用も、酸化/還元反応も、分析物の加水分解も含まない。
【0068】
本発明による実施形態では、使い捨て試験ストリップは、電解質均衡の障害を検出するための本発明によるポイント・オブ・ケア装置に関連して使用される。その目的のために、使い捨て試験ストリップは、前記試験ストリップの電極アセンブリを本発明のポイント・オブ・ケア装置の一部を形成する読み取りメーター装置に電気的に接続するための適切なインターフェースを有する。前述のインターフェースは、任意の適切な形態をとることができ、一実施形態では、平面基板上の電極アセンブリから来る一組の電気接点であってもよい。かかるインターフェースは、例えば、プラグの形態をとることができ、電気接点は前記プラグの一部を形成する。インターフェースは、電極アセンブリを、電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的ポイント・オブ・ケア装置の読み取りメーター装置に電気的に接続するのに適しており、そのようなポイント・オブ・ケア装置は、試験ストリップのインターフェースを受容するための、例えば凹部またはウェルまたはスリットの形態をした、本発明による使い捨て試験ストリップのインターフェースを受け入れるための受入モジュールを有する読み取りメーター装置を含む。一実施形態において、前述の受入モジュールは、ソケットの形態をとることもあり得る。典型的には、受入モジュールは、使い捨て試験ストリップのインターフェースを収容するのに適している。
【0069】
「尿試料中のカチオン性電解質濃度」または「尿中」という用語は、本明細書では「uEl」と略記することもある。「尿試料中のクレアチニン濃度」または「尿中」についても同様であり、「uCrea」と略記する。尿試料中の、クレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率は、本明細書では「uEl/uCrea」と略記されることもある。
【0070】
本明細書で使用される場合、略語「EMF」は、起電力を指し、これは本質的に2つの電極間の電位の差を指す。そのような起電力は、Nernstの式を通して、試料中の対応する分析物濃度と定量的に関連している。典型的には、本発明による試験ストリップから得ることができる電位差測定信号または測定値は起電力であり、次いでこれを分析物濃度に関連付ける/変換することができる。本明細書で使用される場合、略語「WE」は作用電極を指し、略語「RE」は基準電極を指し、略語「NE」は中性電極を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「カチオン性電解質」という用語は、ナトリウムではなく、好ましくはカリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、および銅を含む、好ましくはそれらからなる群から選択される金属カチオン電解質を指すものとする。本明細書で使用される場合、「カリウム」、「カルシウム」、「マグネシウム」、「亜鉛」および「銅」という用語は、かかる金属のそれぞれのカチオン種、すなわちK、Ca2+、Mg2+、Zn2+およびCu2+を指す。本明細書で使用される場合、「カチオン性電解質」という用語は、「電解質」または「興味の対象である電解質」と同義に使用されることもある。しかしながら、本発明による前述の「カチオン性電解質」はナトリウムではない、すなわちその元素状態でもNaでもないことを理解されたい。
【0072】
一実施形態において、前記カチオン性電解質選択性作用電極は、ポリマーマトリックス中にカチオン性電解質選択性担体を含むカチオン性電解質選択性膜を含む。
【0073】
一実施形態では、「カチオン性電解質選択性」の前記カチオン性電解質は、好ましくはカリウムであり、前記カリウムイオン選択性担体は、典型的には、抗生物質、モノ-15-クラウン-5エーテルおよびビス-15-クラウン-5エーテルのファミリーからの誘導体である。カリウム選択性担体の例は、バリノマイシン、ビス[(ベンゾ-15-クラウン-5)-4’-イルメチル]ピメレート、およびビス[(ベンゾ-15-クラウン-5)-4’-イルメチル]2-ドデシルー2-メチルマロネート、および2-ドデシル-2-メチル-1,3-プロパンジイルビス[N-[5’-ニトロ(ベンゾ-15-クラウン-5)-4’-イル]カルバメート]である。
【0074】
一実施形態において、前記カリウム選択性担体分子は、カリウム選択性膜の総重量に対して0.5%~10%、好ましくは1%~5%の重量パーセントで存在し得る。
【0075】
一実施形態では、「カチオン性電解質選択性」の前記カチオン性電解質は、好ましくはカルシウムであり、前記カルシウムイオン選択性担体は、典型的には抗生物質、非環式ジアミド誘導体、ジアザクラウンエーテル環、またはリン酸エステルのファミリーに由来する。カルシウム選択性担体の例は、3,6-ジオキサオクタンジアミド、N,N,N’,N’-テトラシクロヘキシル-3-オキサペンタンジアミド、ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)]ホスフェート、ドデシルホスフェート、(1,7-ジ[2-(1-フェニルアゾ)ナフチル]-1,4,7-トリオキサヘプタン)、およびビス(オクタデシル-3-オキサペンタンジアミド)21-ジアザクラウンエーテルである。
【0076】
一実施形態において、前記カルシウム選択性担体分子は、カルシウム選択性膜の総重量に対して0.5%~10%、好ましくは1%~5%の重量パーセントで存在し得る。
【0077】
一実施形態では、「カチオン性電解質選択性」の前記カチオン性電解質は、好ましくはマグネシウムであり、前記マグネシウムイオン選択性担体は、典型的には、ジアミドおよびトリアミド、β-ジケトン誘導体、ならびに二重置換ジアザクラウンエーテルである。マグネシウム選択性担体の例は、N,N’-ジヘプチル-N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミド、N,N’’-オクタメチレン-ビス(N’-ヘプチル-N’-メチル-メチルマロンアミド、N,N’’-オクタメチレン-ビス(N’-ヘプチル-N’-メチルマロンアミド)、4,13-[ビス(N-アダマンチルカルバモイル)アセチル]-1,7,10,16,テトラオキサ-4,13-ジアザシクロオクタデカン、および1,2-ビス(ジトリルホスフィンオキシド)ベンゼン)である。
【0078】
一実施形態では、前記マグネシウム選択性担体分子は、マグネシウム選択性膜の総重量に対して0.5%~10%、好ましくは1%~5%の重量パーセントで存在し得る。
【0079】
別の実施形態では、「カチオン性電解質選択性」の前記カチオン性電解質は、好ましくは銅であり、前記銅イオン選択性担体は、典型的には、大環状テトラチオエーテル、非環状ジチオカルバメートおよびヒドロキサメートのファミリーからの誘導体である。銅イオン選択性担体の例は、N-(m-ニトロシンナモイル)、N-(p-クロロフェニル)ヒドロキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラシクロヘキシル-2,2’-チオジアセトアミド、o-キシリレン-ビス(N,N-ジイソブチルジチオカルバメート)、2-(1,4,8,11-テトラチアシクロテトラデカ-6-イルオキシ)ヘキサン酸およびテトラエチルチウラムジスルフィドである。
【0080】
一実施形態では、前記銅イオン選択性担体分子は、電解質選択性膜の総重量に対して0.5%~10%、好ましくは1%~5%の重量パーセントで存在し得る。
【0081】
別の実施形態では、「カチオン性電解質選択性」の前記カチオン性電解質は、好ましくは亜鉛であり、前記亜鉛イオン選択性担体は、典型的にはアルキル化チウラムジスルフィド、アザグルタル酸ジアミドのファミリーからの誘導体である。亜鉛選択性担体の例は、テトラブチルチウラムジスルフィド、N-ベンジルイミノ二酢酸ビス(N-エチル-N-シクロヘキシルアミド)およびカリウムヒドロトリス(N-t-ブチル-2-チオイミダゾリル)ボレートである。
【0082】
一実施形態において、前記亜鉛選択性担体分子は、電解質選択性膜の総重量に対して1%~10%、好ましくは2%~6%の重量パーセントで存在し得る。
【0083】
一実施形態では、電位差測定の前に、クレアチニンをプロトン化して、適切な緩衝液の添加によって前記試料のpHを調整することによってクレアチニニウム(creatininium)イオンを形成させる必要がある。「クレアチニン選択性」という用語は、前記クレアチニンのプロトン化状態に関係なく独立して、クレアチニンに対する選択性を包含することを意味する。したがって、クレアチニン選択性電極は、非プロトン化形態またはプロトン化形態またはその両方のクレアチニンに対して選択的である。一実施形態では、適切なpHは5未満であり、適切な緩衝液は多種多様であり、例えば、それらは酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液またはリン酸緩衝液であり得る。典型的には、一実施形態では、プロトン化クレアチニン選択性担体(クレアチニニウム(creatininium)選択性担体)は、クラウンエーテル、α-、β-シクロデキストリン、カリックスピロール、アミノ-ピリドンおよびアミノ-ピリミドンのファミリーから選択され得る。クレアチニン選択性担体の例は、ジベンゾ-30-クラウン-10;トリ-o-オクチル-β-シクロデキストリン;2,6-ジ-o-ドデシル-β-シクロデキストリン;1-(5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクチル)イソシトシンである。
【0084】
一実施形態において、クレアチニン選択性担体は、結晶性イオン対錯体、例えば、クレアチニンタングストホスフェート、クレアチニンモリブドホスフェートまたはクレアチニンピクロロネートであり得る。
【0085】
一実施形態において、前記クレアチニンイオン選択性担体分子は、クレアチニン選択性膜の総重量に対して0.5%~10%、好ましくは1%~5%の重量パーセントで存在し得る。
【0086】
さらなる実施態様において、本発明は、患者の体内の電解質均衡の障害を検出するための非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置に関するもので、前記POC装置は、
尿試料中のカチオン性電解質濃度およびクレアチニン濃度を定量的かつ選択的に測定し、クレアチニンに対するカチオン性電解質の比率を決定するための読み取りメーター装置であって、
-好ましくは使い捨て試験ストリップから送信された電気信号(複数可)を増幅するための高い入力抵抗を有するマルチチャンネルアンプ、
-使い捨て試験ストリップから受け取った電気信号を分析物濃度測定値(複数可)に変換するための、アナログ・デジタル変換器およびデータ記憶用メモリを含むコントローラ、
-分析物濃度の測定を開始し、好ましくは実行する測定機構、
-濃度測定値をユーザ、好ましくはディスプレイに示すための出力装置、
-使い捨て試験ストリップまたは試験ストリップホルダユニットのインターフェースを受け取るための受入モジュール、
-必要に応じて、通信ユニット、および
-電源
を含む、読み取りメーター装置を含み、
必要に応じて、使い捨て試験ストリップのインターフェースを受け入れ、前記受入モジュールに接続し、前記読み取りメーター装置と前記使い捨て試験ストリップの電極アセンブリとの間の電気的接触を確立するためのインターフェースを有し、したがって前記使い捨て試験ストリップから前記読み取りメーター装置への電気信号の検出および伝送を可能にし、前記試験ストリップの前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する、試験ストリップホルダユニット
を含んでいてもよい。
【0087】
一実施形態では、前記POC装置、好ましくは前記読み取りメーター装置は、前記読み取りメーター装置の受入モジュールから、または、存在する場合、前記試験ストリップホルダユニットから前記試験ストリップを離脱させるための離脱機構をさらに備える。一実施形態では、前記POC装置は、試験ストリップホルダユニットを必須のものとして備える。一実施形態において、前記測定機構は、測定を開始するためのプッシュボタン、押しボタン、タッチボタン、またはデジタル制御ボタンなどの測定ボタン、レバー、POC装置のボタンの第2の加圧点またはPOC装置のボタンを2回目に押すこと、および音声制御手段から選択される。
【0088】
一実施形態において、前記POC装置は、前記試験ストリップを読み取りメーター装置の前記受入モジュールから、または、存在する場合、前記試験ストリップホルダユニットから離脱させるための離脱機構をさらに備える。一実施形態では、前記離脱機構は、プッシュボタン、押しボタン、タッチボタン、またはデジタル制御ボタンなどのボタン、レバー、POC装置のボタンの第2の加圧点、またはPOC装置のボタンを2回目に押すこと、および音声制御離脱機構から選択される。
【0089】
一実施形態では、前記離脱機構は、読み取りメーター装置の一部であるか、または前記離脱機構は、試験ストリップホルダユニットの一部である。一実施形態において、前記装置は、前記装置を操作するためのユーザインターフェース、および/または複数の電解質濃度測定値を記憶するためのメモリ、並びに/または外部コンピュータもしくは外部ネットワークとデータを転送および/または交換するための通信ユニット、好ましくはUSBおよび/または無線通信ユニットをさらに備える。一実施形態では、前記装置は、USB接続および無線接続の両方のためのポートを備える。一実施形態において、前記POC装置は、本体と、一方が前記試験ストリップのインターフェースを受け入れ、他方が前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに接触するための少なくとも2つの端子インターフェースと、前記デジタル読み取りメーター装置を前記使い捨て試験ストリップと電気的に接続するための電気リード線とを備える試験ストリップホルダユニットを備える。
【0090】
一実施形態において、前記装置は、使い捨てストリップであって、この使い捨て試験ストリップの前記インターフェースを介して前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールまたは前記試験ストリップホルダユニットに挿入され、したがって前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立される使い捨て試験ストリップをさらに含み、好ましくは、前記使い捨て試験ストリップは、本明細書における上記および下記でさらに記載されているように、ナトリウムではないカチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量のための使い捨て試験ストリップである。
【0091】
一実施形態では、前記測定は電位差測定である。
【0092】
一実施形態では、カチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量は、電位差測定によって行われる。
【0093】
本発明の実施形態によれば、ナトリウムではないカチオン性電解質およびクレアチニン濃度のそれぞれの濃度の決定は、「組み合わせて」行われることに留意されたい。「組み合わせて」という用語は、両方の分析物の濃度が、1つの試料、すなわち尿試料中または1つの試料、すなわち尿試料から一緒に決定されることを意味する。しかしながら、これは特定の決定順序を意味するものではない。例えば、かかる決定は、同時に行われてもよいし、一時的に重複して行われてもよいし、順次行われてもよい。一実施形態において、分析物の濃度は同時に決定され、これは本質的に、これらの決定の間に実質的な時間間隔をおかずに一緒に決定されることを意味する。
【0094】
一実施形態において、本発明の実施形態による試験ストリップは、別個の試験ストリップである。別の実施形態において、前記試験ストリップは、ロール状またはディスク上に配置され得るような試験ストリップのアレイの一部を形成し、各測定について、一度に1つの試験ストリップが使用され得る。
【0095】
一実施形態では、前記基板は平面基板であり、別の実施形態では、前記基板は非平面基板である。例えば、前記基板はまた、シートまたはロッドまたはチューブの形態であってもよい。一実施形態では、前記電極アレイの電極はすべて、単一の平面内に配置されている。別の実施形態では、前記電極は必ずしも単一の平面内にある必要はなく、互いにある角度をなして異なる平面に配置されていてもよい。唯一の要件は、試験ストリップが尿試料と接触するときに電極が尿と接触することができるように電極が電極アレイ内に配置されることである。
【0096】
一実施形態では、前記作用電極、前記基準電極(複数可)および、存在する場合、前記中性電極(複数可)は、本明細書で定義される適切な堆積技術によって、前記基板上または、存在する場合、前記電気絶縁層上に適用されており、したがって前記基板上または前記電気絶縁層上に電極アセンブリが形成されている。中性電極(複数可)の目的は、干渉(複数可)を測定し、除去することである。しかしながら、干渉(複数可)の種類および性質に応じて、中性電極(複数可)は、前述の干渉/干渉性分析物に対して選択的であり得る。一実施形態では、一例として、中性電極(複数可)はプロトン選択性であり、プロトン選択性である膜を含む。したがって、中性電極(複数可)は、カチオン性電解質選択性ではなく、クレアチニン選択性でもないが、それにもかかわらず、他の構成要素、例えばプロトン、特に干渉を引き起こすこれらの他の構成要素に対して選択性であり得る。
【0097】
一実施形態では、作用電極(複数可)は、炭素、金、パラジウム、銀、白金、チタン、クロム、イリジウム、スズ、それらの酸化物または誘導体、およびそれらの組合せ、例えばフッ素ドープ酸化スズ(FTO)または酸化インジウムスズ(ITO)などの任意の導電性材料で作製され得る。一実施形態では、前記電極は、印刷、スパッタリング、蒸着、無電解めっき、貼着、接着またはリソグラフィ、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷などの適切な堆積技術によって、前記基板上または、存在する場合、前記電気絶縁層上に適用されている。電極は、個別に堆積されてもよく、一緒に堆積されてもよい。
【0098】
一実施形態では、基準電極(複数可)は好ましくはAg/AgCl系であり、制御された電位を提供する他の適切な基準材料(複数可)および生物学的流体も可能であり想定される。
【0099】
一実施形態において、前記基準電極(複数可)は、作用電極と同じ材料から作製され、表面を有し、その表面は、電極の定電位を維持するためのAg/AgCl/Cl系を含む、導電性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリピロール、またはポリマー材料、例えばポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルなどの安定化層でコーティングされている。
【0100】
一実施形態では、より高い電位差安定性のために、基準電極は、アニオンおよびカチオン交換材料(例、異なるテトラアルキルアンモニウム(複数可)およびテトラフェニルボレート)などの親油性塩を含むポリマー材料の安定化層でさらにコーティングされてもよい。親油性が高いこれらの成分により、試料溶液とのイオン交換が排除または最小化され、基準電極の一定電位が与えられる。
【0101】
一実施形態において、前記電極アセンブリは、既に上で概説したように、干渉を測定および排除するための1つまたは2つの中性電極(NE)をさらに備える。好ましくは、前述の中性電極(複数可)は、カチオン性電解質選択性担体不含有かつクレアチニン選択性担体不含有のポリマーマトリックスを含む膜を含む。典型的には、前記中性電極(複数可)は、前記作用電極(WE)の前記カチオン性電解質選択性膜および/またはクレアチニン選択性膜におけるものと同じまたは類似のポリマーマトリックスを含むが、カチオン性電解質選択性およびクレアチニン選択性の担体(複数可)は含んでいない。かかる中性電極に関連する利点は、前述の中性電極を組み込んだシステムが、例えば尿酸またはアスコルビン酸などの他の分析物から生じる試料中の干渉をさらに測定することが可能である点である。したがって、中性電極は、本明細書で定義されるカチオン性電解質に対して選択的ではなく、クレアチニンに対しても選択的ではないが、中性電極(複数可)は、本明細書で定義されるカチオン性電解質またはクレアチニン以外の分析物、例えば可能な干渉(複数可)を生じさせる分析物または構成要素に対して選択的であり得ることに留意されたい。一実施形態において、中性電極(複数可)はプロトンに対して選択的であってもよい。別の実施形態において、中性電極(複数可)は、尿酸および/またはアスコルビン酸に対して選択的であってもよい。また、これらの中性電極はそれぞれ電気リード線を有し、前記電気リード線は、それぞれの電極を、前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するための前記インターフェースと接続する。
【0102】
一実施形態において、前記電極アセンブリ内の各前記電極は、それぞれ電気リード線を有し、前記電気リード線は、前記電極アセンブリを読み取りメーター装置に電気的に接続するために前記電極を前記インターフェースと接続する。一実施形態において、前記電気リード線は、炭素、金、パラジウム、銀、白金、チタン、クロム、イリジウム、スズ、それらの酸化物または誘導体およびそれらの組合せ、例えばFTO、ITOなどの任意の適切な導電性材料で作製され得る。一実施形態では、前記電気リード線は、印刷、スパッタリング、蒸着、無電解めっき、貼着、接着またはリソグラフィ、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷などの適切な堆積技術によって、前記基板または、存在する場合、前記電気絶縁層上に適用されている。電気リード線は、個別に堆積されてもよく、または一緒に堆積されてもよい。
【0103】
基板上または、存在する場合、絶縁層上の電極の形態および位置的配置は両方とも(例、円形、楕円形、正方形、長方形)、試験ストリップから使用可能な成果を達成するために重要ではないことに留意されたい。具体例としての可能な配置は、例えば、WE1-WE2-RE、WE1-RE-WE2または例えば中性電極が存在する場合、WE1-NE-WE2-RE、WE1-WE2-NE-RE、NE-WE1-WE2-REなどであり得る。(WE=作用電極;RE=基準電極;NE=中性電極)。
【0104】
一実施形態において、前記接合基準電極は、前記作用電極のそれぞれの表面よりも大きい表面を有するか、または前記別個の基準電極のそれぞれは、前記作用電極のそれぞれの表面よりも大きい表面を有する。
【0105】
一実施形態において、読み取りメーターは、試験ストリップを離脱するための離脱機構を備える。
【0106】
一実施形態では、読み取りメーターは、試験ストリップのインターフェースを受け入れるための、必要に応じて取り外し可能であってもよい試験ストリップホルダを備える。
【0107】
一実施形態において、読み取りメーターは、読み取りメーター装置または前記試験ストリップホルダから前記試験ストリップを離脱するための離脱機構を備える(図9、B)。
【0108】
一実施形態では、読み取りメーターは、試験ストリップのインターフェースを受け入れるための試験ストリップホルダを備え、離脱機構を有する(図9、C)。
【0109】
一実施形態では、前記離脱機構は、プッシュボタン、押しボタン、タッチボタン、またはデジタル制御ボタンなどのボタン、レバー、POC装置のボタンの第2の加圧点、またはPOC装置のボタンを2回目に押すこと、および音声制御離脱機構から選択される。
【0110】
一実施形態では、前記離脱機構は、読み取りメーター装置の一部であるか、または前記離脱機構は、試験ストリップホルダユニットの一部である。
【0111】
一実施形態では、ユーザと尿試料との接触を回避するために、前記離脱機構は、測定後に前記読み取りメーター装置または前記試験ストリップホルダユニットから前記試験ストリップを取り外すために作動される。
【0112】
一実施形態では、前記装置は、前記装置を操作するためのユーザインターフェース、および/または複数の分析物濃度測定値を記憶するためのメモリ、および/または外部コンピュータまたは外部ネットワークとデータを転送および/または交換するための通信ユニット、好ましくはUSBおよび/または無線通信ユニットをさらに備える。
【0113】
一実施形態では、前記装置は、USB接続および無線接続の両方のためのポートを備える。
【0114】
患者の体内の電解質均衡の障害を検出する方法の実施形態では、尿試料中の、クレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率がそれぞれの患者についての生理学的に適切な比率の値の範囲の外側にある、すなわちその範囲より高いかまたは低い場合に、電解質均衡の障害が検出される。本明細書で使用される場合、「それぞれの患者についての生理学的に適切な比率の値の範囲」という用語は、電解質均衡の障害を有しないヒトまたは動物において測定され得る比率である、クレアチニン濃度に対するカチオン性電解質濃度の比率の値、すなわち比率の範囲に関する。一実施形態では、そのような生理学的に適切な比率の値の範囲は、好ましくは同じ年齢、性別、栄養、および/または体重の健常者を基準にして別々に決定されるか、または決定されてきた。比較的健康状態の良い患者の前述の範囲が比較的広くなり得ることは、当業者には明らかである。前述の生理学的に適切な比率の値の範囲についての例示的であるが限定的ではない値は、比較的健康状態の良い成人ヒト患者の場合:
カリウム:5~12、カルシウム:0.05~0.2、マグネシウム:>0.25、亜鉛:0.15×10-3~1.6×10-3、銅:1.2×10-5~12.8×10-5である。
【0115】
本明細書で使用される「非侵襲的ポイント・オブ・ケア(POC)装置」という用語は、患者の尿試料中のナトリウムではないカチオン性電解質の濃度およびクレアチニン濃度の定量的電位差測定による決定のための装置に関する。本発明のPOC装置は、尿試料中の前記濃度の定量的および選択的電位差測定のための分析装置ユニットとしての読み取りメーター装置を備える。本発明の実施形態によれば、POC装置は、必要に応じて、試験ストリップをPOC装置の前記読み取りメーター装置に接続する試験ストリップホルダユニットを備える。POC装置は、必要に応じて前記POC装置の前記読み取りメーター装置と前記試験ストリップとの間に介在する前記試験ストリップホルダユニットによって、尿中の分析物の定量のための検知ユニットとしての使い捨て試験ストリップと組み合わされる。一実施形態では、本発明のPOC装置は、測定機構および/または離脱機構をさらに備える。一実施形態では、前記測定機構および/または前記離脱機構は、読み取りメーター装置の一部である。別の実施形態では、前記測定機構および/または離脱機構は、前記試験ストリップホルダユニットの一部である。
【0116】
本明細書で使用される場合、「読み取りメーター装置」という用語は、前記読み取りメーター装置の受入モジュールを介して読み取りメーター装置に接続された試料露出使い捨て試験ストリップから受け取った電気信号を定量的に測定するのに適しており、そのように構成された装置に関するもので、必要に応じて、試験ストリップホルダユニットが前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールと前記試験ストリップとの間に挿入されてもよい。本発明による読み取りメーター装置は、直接読み取り回路またはヌル平衡電位差測定回路のいずれかである電気測定装置である。本発明の実施形態の多くでは、前記読み取りメーター装置は、患者の尿試料中のカチオン性電解質の濃度およびクレアチニンの濃度を定量的に決定するための多用途デジタル電位差測定読み取りメーターである。読み取りメーター装置は、POC装置の一部であり、電気信号および較正情報に基づいて試料中の前記カチオン性電解質および前記クレアチニンの濃度を計算するように構成され、結果を出力する、例えばユーザに表示するようにも構成される。一実施形態では、前述の読み取りメーター装置は、前記試験ストリップから受け取った電気信号をデジタル値で変換するためのアナログ-デジタル変換器などの測定ユニットと、デジタル値から電極アセンブリの電位差を決定し、前述の電気信号(複数可)に基づいて前記カチオン性電解質および前記クレアチニンの濃度を計算するように構成されたコントローラなどの分析ユニットとを含む。一実施形態では、前記較正情報は、試験ストリップのセットについて最初に決定され、後で分析物濃度の計算を実行するためにソフトウェアなどの分析ユニットに保存される。一実施形態では、前記測定ユニットは、好ましくは測定機構によって始動される。いくつかの実施形態では、測定を制御するために、測定機構は、この目的または測定ユニット、またはその両方のために構成され得る。さらに、読み取りメーター装置は、ユーザによる検査の結果を出力するためにコントローラに接続された出力ユニットを備える。一実施形態では、前述の読み取りメーター装置は、外部コンピュータまたはネットワークとデータを交換するための通信ユニット、例えばUSBおよび/または無線ポートをさらに備える。読み取りメーター装置は、試験ストリップまたは試験ストリップホルダユニットを受け入れるためのインターフェース部を有する。一実施形態では、読み取りメーター装置は、測定機構および離脱機構を備える。
【0117】
本明細書で使用される場合、「受入モジュール」という用語は、試験ストリップまたは試験ストリップホルダユニットのインターフェースを受け入れ、前記読み取りメーター装置と前記試験ストリップの電極アセンブリとの間の電気的接触を確立し、したがって、必要に応じて試験ストリップホルダユニットを介して、前記試験ストリップから前記読み取りメーター装置への電気信号(複数可)の検出および伝送を可能にするための読み取りメーター装置の受入モジュールに関するもので、前記受入モジュールは、前記試験ストリップまたは前記試験ストリップホルダユニットの前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する。一実施形態では、前記受入モジュールは、前記試験ストリップまたは前記試験ストリップホルダユニットのインターフェースへの接続を確立することを可能にするスリット、凹部またはウェルの形態または他の適切な形態である。一実施形態では、前記受入モジュールは、エッジコネクタ対またはピンとソケット対として構成されている場合もある。一実施形態では、本発明による使い捨て試験ストリップは、前記使い捨て試験ストリップの前記インターフェースを介して前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに挿入され、かくして前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立される。一実施形態では、本発明による使い捨て試験ストリップは、前記使い捨て試験ストリップの前記インターフェースを介して前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールに接続された前記試験ストリップホルダユニットに挿入され、かくして前記試験ストリップホルダユニットを介して前記試験ストリップの前記電極アセンブリと前記読み取りメーター装置との間の電気的接触が確立される。一実施形態では、前記読み取りメーター装置は、使い捨て試験ストリップのインターフェースを受け入れることができる受入モジュールを有する。一実施形態では、前記読み取りメーター装置は、試験ストリップホルダユニットのインターフェースを受け入れることができる受入モジュールを有する。一実施形態では、前記読み取りメーター装置は、使い捨て試験ストリップのインターフェースを受け入れることができる受入モジュールを有し、試験ストリップホルダユニットのインターフェースを受け入れることができる受入モジュールを有する。一実施形態では、前記読み取りメーター装置は、使い捨て試験ストリップおよび/または試験ストリップホルダユニットのインターフェースを受け入れることができる受入モジュールを有する。
【0118】
本明細書で使用される場合、「インターフェース」という用語は、読み取りメーター装置の受入モジュールの一部である第1のインターフェースに関するもので、前記第1のインターフェースは、前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールの前記第1のインターフェースに接続することができる必要に応じて試験ストリップホルダユニットの一部である第2のインターフェースへの接触を確立することができ、前記第1のインターフェースは、第4のインターフェースと呼ばれる試験ストリップのインターフェースへの接触を確立することができる。この用語はまた、試験ストリップの一部である第4のインターフェースに接続することができる試験ストリップホルダユニットの一部である第3のインターフェースに関する。前記試験ストリップの一部である前記第4のインターフェースは、前記試験ストリップホルダユニットの前記第3のインターフェースに接続されていてもよく、または前記読み取りメーター装置の前記受入モジュールの一部である前記第1のインターフェースに直接接続されていてもよい。
【0119】
本明細書で使用される場合、「通信ユニット」という用語は、読み取りユニットまたはネットワーク、例えば、データ管理のために、およびユーザと医師との間の容易な通信のために開発されたソフトウェアアプリ、または病院情報システム(HIS)もしくは検査室情報システム(LIS)に接続されたサーバに有線および/または無線で結果を送信するためのポイント・オブ・ケア(POC)装置のオプションユニットに関する。一実施形態では、かかる通信ユニットは、USBポートおよび/またはBluetooth(登録商標)モジュールを備える。
【0120】
本明細書で使用される場合、「測定機構」という用語は、患者の尿試料中のカチオン性電解質の濃度およびクレアチニンの濃度の測定を開始し、好ましくは実行するために使用されるPOC装置の特徴に関する。具体例としての測定機構は、測定を開始するためのプッシュボタン、押しボタン、タッチボタン、またはデジタル制御ボタンなどの測定ボタン、レバー、POC装置の異なるボタンの第2の加圧点またはPOC装置のボタンを2回目押すこと、または音声制御手段から選択される。本明細書で使用される場合、「測定機構」という用語はまた、検知ユニットが試料を感知した後の、ある定められた時点での測定の自動開始に関連し得る。一実施形態では、前記測定機構は、好ましくは、測定を行うために測定ユニットと連動して動作する。
【0121】
本明細書で使用される場合、「時間制御された方法」という用語は、測定を実行する機構に関するもので、測定は、好ましくはある定められた時点で開始された後、ある定められた期間にわたって続いて実行され、前記定められた期間が測定期間であるものとする。一実施形態では、平均値は、測定期間中に取得された値に対して計算される。一実施形態では、前記平均値はPOC装置によって表示される。一実施形態では、前記平均値は、カチオン性電解質の濃度およびクレアチニンの濃度およびその比率、ならびに/または前記カチオン性電解質および前記クレアチニンの身体状態のその後の計算に使用される。
【0122】
本明細書で使用される場合、「測定ボタン」という用語は、具体例としての測定機構に関するもので、これは、プッシュされたとき(プッシュボタン)、押されたとき(押しボタン)、またはタッチされたとき(タッチボタン)に測定を開始するPOC装置にあるボタンである。この用語はまた、タッチスクリーン上に表示されたボタンアイコンなどのデジタル制御ボタンも含む。
【0123】
「測定を開始する」という用語は、測定機構に関連して使用される場合、規定された時点、すなわち測定機構が作動されたときに測定が開始される動作を指す。
【0124】
「測定を行う」という用語は、測定機構に関連して使用される場合、測定が、規定された時点で開始された後、その完了まで続いて実行される動作を指し、そのような実行は、測定期間の持続時間または規定された測定期間に受信された電気信号の値の分散などの様々な測定パラメータに対する制御を含む。一実施形態では、測定は時間制御された方法で行われる。一実施形態では、測定は、好ましくは、上記でさらに定義されるように、測定ユニットと併せて測定機構によって行われる。いくつかの実施形態では、測定を制御するために、測定機構は、この目的または測定ユニット、またはその両方のために構成され得る。
【0125】
本明細書で使用される場合、「離脱機構」という用語は、読み取りメーター装置の受入モジュールまたは試験ストリップホルダユニットから試験ストリップを離脱させることを可能にする手段または機構に関する。具体例としての離脱機構は、プッシュボタン、押しボタン、タッチボタン、またはデジタル制御ボタンなどのボタン、レバー、POC装置のボタンの第2の加圧点、または測定ボタンなどのPOC装置のボタンを2回目に押すこと、または音声制御離脱機構である。離脱機構は、読み取りメーター装置または試験ストリップホルダユニットの一部であってもよい。本明細書で使用される場合、「離脱機構」という用語は、測定が終了したときの試験ストリップの自動離脱にも関連し得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、「ボタンの第2の加圧点」という用語は、第2の異なる機能も呼び出すある特定の機能を有するボタンの特徴に関するもので、前記第2の異なる機能は、前記ボタンの第2の加圧点で前記ボタンを押すことによって開始され得る。例えば、ボタンは、前記ボタンの第1の機能を呼び出すために規定された第1のレベルまでプッシュされ得、前記ボタンの第2の機能を呼び出すために規定された第2のレベルまでプッシュされ得、前記第1のレベルおよび前記第2のレベルは異なるものとする。例えば、ボタンの第2の加圧点は、前記第2の加圧点で前記ボタンを押す、プッシュする、またはタッチすることによって作動させることができる。この用語はまた、前記レバーの第2の機能を作動させることを可能にするレバーの第2の位置にも関連し得る。この用語はまた、ボタンの第2の機能も含み、前記ボタンは、前記ボタンが、例えば、プッシュする、押す、またはタッチすることによって起動される時間の長さに応じて異なる機能を実行するように起動され得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「2回目にボタンを押すこと」という用語は、第2の異なる機能も呼び出すある特定の第1の機能を有するボタンの特徴に関するもので、前記第2の異なる機能は、前記ボタンを2回目に押すことによって開始され得る。この用語はまた、ボタンの特徴を含み、ボタンは、前記ボタンが押圧、プッシュ、タッチなどによって始動に至る時間の長さに応じて異なる機能を呼び出すように始動され得る。
【0128】
本明細書で使用される場合、「音声制御」という用語は、音声によってPOC装置を制御することを可能にする機構に関する。音声制御は、オプションによる音声制御ユニットによって可能にされるPOC装置のオプションによる特徴である。一実施形態において、前記オプションによる音声制御ユニットは、測定を開始するために、すなわち測定機構として、および/または試験ストリップを試験ストリップホルダユニットから離脱させるために、すなわち離脱機構として使用され得る。
【0129】
本明細書で使用される場合、「試験ストリップホルダユニット」という用語は、必要に応じて本発明の実施形態によるPOC装置の一部であってもよく、デジタル読み取りメーター装置を使い捨て試験ストリップと電気的に接続するユニットを指す。本発明による試験ストリップホルダユニットは、試験ストリップまたは試験ストリップアレイの各電気リード線をデジタル読み取りメーター装置と別々に接続することを可能にする電気リード線を備える。試験ストリップホルダユニットは、試験ストリップまたは試験ストリップアレイを受け入れるためのインターフェース部と、読み取りメーターの受入モジュールに接続するためのインターフェース部とをさらに備える。離脱機構を使用することにより、試験ストリップまたは試験ストリップアレイを試験ストリップホルダユニットから離脱させることができる。試験ストリップホルダユニットは、必要ならば、例えば清掃のために、例えば、施栓/開栓によって、読み取りメーター装置から取り外し可能である。試験ストリップホルダユニットは、長方形状、ロッド状、または管状など、任意のサイズおよび形状を有することができる。試験ストリップホルダユニットは、剛性であっても可撓性であってもよい本体を有し、好ましくは、ユーザに使用される商品では、前記本体は剛性の本体である。前記試験ストリップホルダユニットは、使い捨て試験ストリップまたは使い捨て試験ストリップアレイのインターフェースに接続するのに適した少なくとも1つのインターフェースを備え、読み取りメーター装置の受入モジュールに接続するのに適した1つのインターフェースを備える。一実施形態では、前記試験ストリップホルダユニットは、ソケットの形態をとるか、または読み取りメーター装置に接続するための回転可能なポートを有することができる。
【0130】
本明細書で使用される場合、「電位差測定(の)」という用語は、0(または無視できる)電流の条件下での電極の電位の差、例えば基準電極と分析物選択性作用電極との間の電位差の測定に関する。電位差測定は、電流の測定を伴わず、酵素の使用および酵素反応の生成物の測定を伴わず、また定量的測定は、分析物の酸化/還元反応または加水分解などのいかなる化学作用も伴わない。本発明のPOC装置および本発明による試験ストリップを用いて達成される測定は、電位差測定である。本発明による電位差測定は、比色測定またはアンペロメトリック測定に基づくものではない。典型的には、本発明による試験ストリップから得ることができる電位差測定信号または測定値は起電力であり、次いでこれを分析物濃度に関連付ける/変換することができる。
【0131】
本明細書で使用される場合、「電位差測定」という用語は、一実施形態では、試験ストリップの分析物選択性作用電極と基準電極の電位の差による分析物濃度の測定に関するもので、基準電極は一定の電位を有し、分析物選択性作用電極は、試料中の前記分析物の量に関してNernst直線性に従って発現する電位を有する。一実施形態では、かかる測定は、尿試料と接触しているかまたは接触していた使い捨て電位差測定試験ストリップを直接または試験ストリップホルダユニットを介して本発明のPOC装置のデジタル読み取りメーター装置に接触させ、それによって2つの電極間の電位差を測定し、信号を増幅し、発生したアナログ信号をデジタル信号に変換することによって行われる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「枯渇」という用語は、体内のある特定の分析物の病理学的減少、すなわち欠乏を特徴とする人体または動物体の障害に関する。この欠乏は、かかる分析物の摂取量が少ないこと、またはかかる分析物の喪失が増大していることに由来し得る。
【0133】
本明細書で使用される場合、「過負荷」という用語は、体内のある特定の分析物の病理学的増加、すなわち過負荷を特徴とする人体または動物体の障害に関する。過負荷は、かかる分析物の摂取量が多いこと、またはかかる分析物の喪失が低下していることに由来し得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「生理学的に適切な値」または「患者にとって生理学的に適切な値」という用語は、ある分析物の枯渇または過負荷を有しないヒトまたは動物で測定され得る値の範囲内にある分析物濃度の値または分析物濃度比の値に関する。一実施形態では、かかる生理学的に適切な値は、ヒトまたは動物の構造によって異なり得る。一実施形態では、かかる生理学的に適切な値は、ヒトまたは動物の年齢、性別、健康状態、または栄養状態によって異なり得る。
【図面の簡単な説明】
【0135】
以下の図を参照して本発明をさらに説明する。
【0136】
図1図1は、患者の体内における電解質の枯渇および/または過負荷を検出するためのポイント・オブ・ケア(POC)装置の一実施形態の概略図である。EMF=起電力;uEl=尿試料中のカチオン性電解質の濃度(El=K、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Cu2+);uCrea=尿試料中のクレアチニン濃度;uEl/uCrea=カチオン性電解質:クレアチニン濃度の比率。1=POC装置、2=試験ストリップ、3=読み取りメーター装置、4=電極アセンブリ、5=電気的接続のためのインターフェース、6=カチオン性電解質選択性電極、7=クレアチニン選択性電極、8=基準電極、9=電気リード線
【0137】
図2図2は、絶縁層上に適用された電極アレイおよび電気リード線の例示的な可能なパターンを有する具体例としての試験ストリップの上面図である。 A)具体例としての円形状の作用電極+円形状の基準電極 5=電気的接続のためのインターフェース 6=カチオン性電解質選択性電極 7=クレアチニン選択性電極 8=基準電極 9=電気リード線 B)具体例としての円形状の作用電極+楕円形状の基準電極 C)具体例としての円形状の作用電極+長方形状の基準電極 D)具体例としての正方形形状の作用電極+長方形状の基準電極 E)9a)=読み取りメーター装置に接触するための電気リード線の端部における具体例としての接触経路 F)10=干渉を決定するための中性電極
【0138】
図3図3は、具体例としての分析物選択性電極の断面図である。 A)「内側接触層」を伴わない 11=基板 12=絶縁層 13=導電層 14=分析物選択性膜 B)「内側接触層」を伴う 15=必要に応じて「内側接触層」(トランスデューサ) C)「被覆層」を伴う、および 16=必要に応じて「被覆層」
【0139】
図4図4は、追加の被覆層を有する具体例としての試験ストリップの製造のための具体例としての実施形態を示す。前述の具体例としての製造方法では、以下の工程が実行される: 工程1)上部に絶縁層を有する基板を用意する 工程2)電極アセンブリおよび電気リード線を適用する 工程3)分析物選択性電極を形成する 工程4)好ましくは、適切な被覆フィルム、例えば電極用の開口部を有するプラスチック絶縁材料を適用する 2a=被覆層を有する試験ストリップ 4a=電極アセンブリおよび電気リード線 5=電気的接続のためのインターフェース 11a=絶縁層付き基板 15a=分析物選択性膜溶液 16=電極用開口部を有する被覆層
【0140】
図5図5は、水溶液中の異なる濃度のカリウム(K)に対する、本発明に従って製造された試験ストリップ(K1~K4)の電位差測定応答を示す。
【0141】
図6図6は、水溶液中の異なるカルシウム(Ca2+)濃度に対する、本発明に従って作製された具体例としての試験ストリップ(Ca1~Ca4)の電位差測定応答を示す。
【0142】
図7図7は、水溶液中の異なるプロトン化クレアチニン濃度に対する、本発明に従って製造された具体例としての試験ストリップ(Crea1~Crea4)の電位差測定応答を示す。
【0143】
図8図8は、電極アレイおよび基板の具体例としての寸法を有する具体例としての試験ストリップの上面図である。WE1=第1作用電極;WE2=第2作用電極;RE=基準電極。
【0144】
図9図9は、以下のものからなる患者の体内における電解質枯渇および/または電解質過負荷を検出するためのポイント・オブ・ケア(POC)装置の具体例としての実施形態を示す: A)離脱ボタン(17a)を有する試験ストリップおよび読み取りメーター B)試験ストリップホルダ(18)および離脱ボタン(17a)を備えた試験ストリップおよび読み取りメーター C)レバー(17b)の形態の離脱ボタンを有する試験ストリップホルダ(18)を備えた試験ストリップおよび読み取りメーター
【0145】
図10図10は、試験ストリップおよび例示的な分析結果を表示する読み取りメーターからなる、患者の体内の電解質枯渇および/または電解質過負荷を検出するための具体例としてのポイント・オブ・ケア(POC)装置を示す。
【0146】
図11図11は、本発明の実施形態による(POC)装置のプロトタイプを示す。 パネルAは、測定のために準備された、試験ストリップホルダユニットを介して読み取りメーター装置に接続された使い捨て試験ストリップを含む(POC)装置を示す。 パネルBは(POC)装置を示し、試験ストリップは尿試料と接触しており、測定機構が「時間制御された方法」で測定を開始するために起動された後である。 パネルCは、測定後のPOC装置を示しており、測定直後の結果は、使い捨て試験ストリップが試験ストリップホルダユニットを介して接続されている読み取りメーターの出力ユニット、すなわちディスプレイを介して表示される。
【0147】
さらに、本発明を、本発明を限定するものではなく解説するために与えられる以下の実施例を参照することによってさらに説明する。
【実施例
【0148】
実施例1
試験ストリップの構造
原理証明実験のために、本発明による寸法を呈する電極アレイを有する試験ストリップを作製した。このシステムは、φ=3mmの炭素作用電極(WE)、(Ag/AgCl)対/基準電極(RE)、プラスチック基板上にスクリーン印刷された電気リード線、および読み取りメーターへの電気的接続のためのインターフェースからなる。
実施例2
カリウム選択性試験ストリップの作製
【0149】
カリウム選択性電極(K-ISE)を実現するために、テトラヒドロフラン中のポリ(3-オクチルチオフェン)の溶液(0.5mg/1mL)を、実施例1の試験ストリップの炭素WEの領域にキャストした(2.5μL)。次いで、基板を乾燥させて溶媒を除去し、薄いトランスデューサ層を形成させた。続いて、カリウム選択性膜(K-ISM)液の溶液(3.5μL)をそのトランスデューサ層の上部にキャストした。次いで、基板を乾燥させて溶媒を除去し、WE上にカリウム選択性膜を形成させた。K-ISM溶液は、1mLのテトラヒドロフラン中に2.0mgのカリウムイオノフォアバリノマイシン、0.5mgのテトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム、32.8mgのPVC(高分子量ポリ塩化ビニル)および64.7mgのセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)を含む混合物からなっていた。
実施例3
カリウム選択性試験ストリップを用いた電位差測定
【0150】
カリウム選択性試験ストリップを、すべての電極が覆われるまで試料溶液に浸し、試験ストリップのインターフェースを受け入れるための受入モジュールおよびディスプレイを有する読み取りメーターのプロトタイプに組み込まれた高入力インピーダンス電圧計を用いて、修正WE(複数可)とREとの間の電位差(EMF)を測定し、その結果を直ちに表示した。
実施例4
標準カリウム溶液系列を測定することによるセンサ較正
【0151】
塩化カリウム(KCl)を水に溶解させることによって、それぞれ1M、10-1M、10-2M、10-3Mのカリウム濃度を有する標準溶液を調製した。EMF値を記録し、カリウム濃度のマイナス対数の関数としてEMF値をプロットすることによって検量線を設定した。4つの異なる試験ストリップ(K1~K4)を作製し、試験した。結果を表1にまとめる。
【表1】
【0152】
データは、良好な再現性、および図5に示すように、0.001M~1Mのカリウム溶液の線形(ダイナミック)範囲を明確に示す。したがって、試験ストリップの線形範囲は、ヒト尿のような生理学的流体中の医学的に関連する濃度を包含し、カリウム濃度の範囲は、典型的には0.025~0.125Mである。
各試験ストリップについてのこれらのデータから、次のタイプの回帰方程式
EMF=傾き×(-log[K])+切片、
それらの平均値および偏差値を計算した(表2)。
【表2】
【0153】
これらの回帰方程式を使用して、以下の例によって示されるように、測定されたEMFから試料中のカリウム濃度を決定することができる。
測定された試料のEMF:2.0mV
回帰方程式(平均):EMF=-105.1(-log[K])+206.3
EMFの値を上式に当てはめて計算すると以下の結果が得られる:
-log[K]=(2-206.3)/(-105.1)=1,9439
[K]=10-1.9439=0.0114M=11.4mM
実施例5
カルシウム選択性試験ストリップの作製
【0154】
カルシウム選択性電極(Ca-ISE)を実現するために、テトラヒドロフラン中のポリ(3-オクチルチオフェン)の溶液(0.5mg/1mL)を炭素WEの領域にキャストした(2.5μL)。次いで、基板を乾燥させて溶媒を除去し、薄いトランスデューサ層を形成させた。続いて、カルシウム選択性膜(Ca-ISM)液の溶液(3.5μL)をそのトランスデューサ層の上部にキャストした。次いで、基材を乾燥させて溶媒を除去し、WE上にカルシウム選択膜を形成させた。Ca-ISM溶液は、1mLのテトラヒドロフラン中に2.0mgのカルシウムイオノフォアII(N,N,N’,N’-テトラ[シクロヘキシル]ジグリコール酸ジアミド)、0.5mgのテトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム、32.8mgのPVC(高分子量ポリ塩化ビニル)および64.7mgの2-ニトロフェニルオクチルエーテルを含む混合物からなっていた。
実施例6
カルシウム選択性試験ストリップを用いた電位差測定
【0155】
カルシウム選択性試験ストリップを、すべての電極が覆われるまで試料溶液に浸し、試験ストリップのインターフェースを受け入れるための受入モジュールおよびディスプレイを有する読み取りメーターのプロトタイプに組み込まれた高入力インピーダンス電圧計を用いて、修正WE(複数可)とREとの間の電位差(EMF)を測定し、その結果を直ちに表示した。
実施例7
標準カルシウム溶液系列を測定することによるセンサ較正
【0156】
塩化カルシウム(CaCl)を水に溶解させることによって、それぞれ10-1M、5×10-2M、10-2M、5×10-3Mのカルシウム濃度を有する標準溶液を調製した。EMF値を記録し、カルシウム濃度のマイナス対数の関数としてEMF値をプロットすることによって検量線を設定した。4つの異なる試験ストリップ(Ca1~Ca4)を作製し、試験した。結果を表3にまとめる。
【表3】
【0157】
データは、良好な再現性、および図6に示すように、0.005M~0.1Mのカルシウム溶液の線形(ダイナミック)範囲を明確に示す。したがって、試験ストリップの線形範囲は、ヒト尿のような生理学的流体中の医学的に関連する濃度を包含し、カルシウム濃度は、典型的には10mM前後の範囲にある。
各試験ストリップについてのこれらのデータから、次のタイプの回帰方程式
EMF=傾き×(-log[Ca2+])+切片、
それらの平均値および偏差値を計算した(表4)。
【表4】
【0158】
これらの回帰方程式を使用して、以下の例によって示されるように、測定されたEMFから試料中のカリウム濃度を決定することができる。
測定された試料のEMF:155.0mV
回帰方程式(平均):EMF=-55.3(-log[Ca2+])+282.4
EMFの値を上式に当てはめて計算すると以下の結果が得られる:
-log[Ca2+]=(155-282.4)/(-55.3)=2.3038
[Ca]=10-2.3038=0.00498M=4.98mM
実施例8
クレアチニン選択性試験ストリップの作製
【0159】
クレアチニン選択性電極(Crea-ISE)を実現するために、テトラヒドロフラン中のポリ(3-オクチルチオフェン)の溶液(0.5mg/1mL)を炭素WEの領域にキャストした(2.5μL)。次いで、基板を乾燥させて、表面に薄いトランスデューサ層を形成する溶媒を除去した。続いて、クレアチニン選択性膜(Crea-ISM)液の溶液(3.5μL)をそのトランスデューサ層の上部にキャストした。次いで、基板を乾燥させて溶媒を除去し、WE上にクレアチニン選択性膜を形成させた。Crea-ISM溶液は、2mLのテトラヒドロフランおよび0.5mLのアセトンの混合物中に4.0mgのクレアチニンモリブドホスフェート、63mgのPVC(高分子量ポリ塩化ビニル)および125mgのo-ニトロフェニルオクチルエーテルを含む混合物からなっていた。
実施例9
クレアチニン選択性試験ストリップによる電位差測定
【0160】
クレアチニン選択性試験ストリップを、すべての電極が覆われるまで試料溶液に浸し、試験ストリップのインターフェースを受け入れるための受入モジュールおよびディスプレイを有する読み取りメーターのプロトタイプに組み込まれた高入力インピーダンス電圧計を用いて、修正WE(複数可)とREとの間の電位差(EMF)を測定し、その結果を直ちに表示した。
実施例10
標準クレアチニン溶液系列を測定することによるセンサ較正
【0161】
クレアチニン塩酸塩を水に溶解させることによって、それぞれ1M、316.2×10-1M、17.8×10-1M、10-1M、3.16×10-2M、10-2M、10-3Mのクレアチニン濃度を有する標準溶液を調製した。EMF値を記録し、カリウム濃度のマイナス対数の関数としてEMF値をプロットすることによって検量線を設定した。4つの異なる試験ストリップ(Crea1~Crea2)を作製し、試験した。結果を表5にまとめる。
【表5】
【0162】
データは、明らかに良好な再現性を示し、図7に示すように、0.001M~1Mのクレアチニン溶液の線形(ダイナミック)範囲を示す。したがって、試験ストリップの線形範囲は、ヒト尿のような生理学的流体中の医学的に関連する濃度を包含し、クレアチニン濃度の範囲は、典型的には約1~32mMである。
各試験ストリップについてのこれらのデータから、次のタイプの回帰方程式
EMF=傾き×(-log[Crea])+切片、
それらの平均値および偏差値を計算した(表6)。
【表6】
【0163】
これらの回帰方程式を使用して、以下の例によって示されるように、測定されたEMFから試料中のカリウム濃度を決定することができる。
測定された試料のEMF:140.0mV
回帰方程式(平均):EMF=-109.8(-log[Crea])+358.3
EMFの値を上式に当てはめて計算すると以下の結果が得られる:
-log[Crea]=(140.0-358.3)/(-109.8)=1.9882
[Crea]=10-1.9882=0.01027M=10.3mM
【0164】
参考文献
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【0165】
本明細書、特許請求の範囲、および/または添付の図面に開示された本発明の特徴は、別々におよびそれらの任意の組み合わせの両方で、本発明をその様々な形態で実現するための材料となり得る。

図1
図2A)】
図2B)】
図2C)】
図2D)】
図2E)】
図2F)】
図3A)】
図3B)】
図3C)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】