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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】音響送信アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/26 20060101AFI20220112BHJP
   H04R 15/00 20060101ALI20220112BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20220112BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220112BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H04R1/26 330
H04R15/00 330
H04R17/00 332Z
H04R3/00 330
G01S7/521 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546463
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019078083
(87)【国際公開番号】W WO2020083724
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】1801114
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラジエ,イブ
(72)【発明者】
【氏名】ラルダ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】トデスコ,ジェレミー
【テーマコード(参考)】
5D019
5J083
【Fターム(参考)】
5D019AA09
5D019BB02
5D019BB10
5D019BB18
5D019BB22
5D019CC01
5D019CC06
5D019FF02
5D019GG11
5J083AA02
5J083AC31
5J083AD06
5J083CA01
5J083CA14
(57)【要約】
ソナーを装備するように意図された音響アンテナ(ANT)であって、第1の長手軸(AI)の中心に置かれ、且つ少なくとも長手軸に沿って積まれた少なくとも2つのトランスデューサ(TI)の第1のアセンブリ及び少なくとも2つのトランスデューサ(T2)の第2のアセンブリを含み、各トランスデューサは、少なくとも、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する空洞モードとを有する、音響アンテナ(ANT)において、第1のアセンブリのトランスデューサは、少なくとも第1のアセンブリのトランスデューサの空洞周波数と放射周波数との間に広がる第1の連続周波数帯内の音波を送信するように構成され、及び第2のアセンブリのトランスデューサは、少なくとも第2のアセンブリのトランスデューサの空洞周波数と放射周波数との間に広がる第2の連続周波数帯内の音波を送信するように構成されること、第2のアセンブリのトランスデューサの空洞周波数は、第1のアセンブリのトランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス(frI-fcI)/10に等しく、frIは、第1のアセンブリのトランスデューサの放射周波数であり、及びfcIは、第1のアセンブリのトランスデューサの空洞周波数であることを特徴とし、且つ第2のアセンブリのトランスデューサは、第1のアセンブリのトランスデューサ間に位置決めされることと、第1のアセンブリのいかなるトランスデューサも第2のアセンブリのトランスデューサ間に位置決めされないこととを特徴とする音響アンテナ(ANT)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソナーを装備するように意図された音響アンテナ(ANT)であって、第1の長手軸(A1)の中心に置かれ、且つ少なくとも前記長手軸に沿って積まれた少なくとも1つのトランスデューサ(T1)の第1の組及び少なくとも2つのトランスデューサ(T2)の第2の組を含み、各トランスデューサは、少なくとも、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの空洞モードとを有する、音響アンテナ(ANT)において、前記第1の組の前記トランスデューサは、少なくとも前記第1の組の前記トランスデューサの前記空洞周波数と前記放射周波数との間に広がる第1の連続周波数帯内の音波を送信するように構成され、及び前記第2の組の前記トランスデューサは、少なくとも前記第2の組の前記トランスデューサの前記空洞周波数と前記放射周波数との間に広がる第2の連続周波数帯内の音波を送信するように構成されること、前記第2の組のトランスデューサの前記空洞周波数は、前記第1の組のトランスデューサの前記放射周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10にほぼ等しく、fr1は、前記第1の組の前記トランスデューサの前記放射周波数であり、及びfc1は、前記第1の組の前記トランスデューサの前記空洞周波数であることを特徴とし、且つ前記第2の組の前記トランスデューサは、前記第1の組の前記トランスデューサ間に置かれることと、前記第1の組のいかなるトランスデューサも前記第2の組の前記トランスデューサ間に置かれないこととを特徴とする音響アンテナ(ANT)。
【請求項2】
前記トランスデューサの第1の組は、少なくとも2つのトランスデューサを含み、及び前記第2の組の前記トランスデューサは、前記第1の組の前記トランスデューサ間に置かれる、請求項1に記載の音響アンテナ。
【請求項3】
前記第2の組の前記トランスデューサは、サブグループに分割され、各サブグループは、前記第2の組の少なくとも2つのトランスデューサを含み、各サブグループ間の間隔は、同一のサブグループの2つのトランスデューサ間の間隔以上であり、及び各サブグループは、グループ空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードを有する、請求項1又は2に記載の音響アンテナ。
【請求項4】
前記第2の組は、3つのサブグループに分割された7つのトランスデューサを含み、第1のサブグループ(SG1)は、2つのトランスデューサを含み、第2のサブグループ(SG2)は、3つのトランスデューサを含み、第3のサブグループ(SG3)は、2つのトランスデューサを含み、及び前記第2のサブグループは、前記1のサブグループと前記第3のサブグループとの間に置かれる、請求項3に記載の音響アンテナ。
【請求項5】
少なくとも1つのサブグループの前記グループ空洞周波数は、前記第1の組の前記トランスデューサの前記放射周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10に等しく、及び少なくとも1つの他のサブグループの前記グループ空洞周波数は、前記第1の組の前記トランスデューサの前記空洞周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10に等しく、fr1は、前記第1の組の前記トランスデューサの前記放射周波数であり、及びfc1は、前記第1の組の前記トランスデューサの前記空洞周波数である、請求項3又は4に記載の音響アンテナ。
【請求項6】
前記第1の長手軸に沿って積まれた受動素子(P1)を含み、前記受動素子(P1)は、前記第2の組の前記トランスデューサを取り囲み、及び前記第2の組の前記トランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス0.1×fr2に等しく、有利には前記第2の組の前記トランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス0.05×fr2に等しい(ここで、fr2は、前記第2の組の前記トランスデューサの前記放射周波数である)、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの放射モードを有し、且つ前記第1の周波数帯内における、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードも有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の音響アンテナ。
【請求項7】
前記受動素子は、材料であって、前記材料のE/ρ比が、前記第2の組の前記トランスデューサを形成する材料のものより高いような材料で作られ、Eは、前記材料のヤング率であり、及びρは、前記材料の密度である、請求項6に記載の音響アンテナ。
【請求項8】
前記受動素子は、前記第2の組の前記トランスデューサのものより大きい直径を有する円柱である、請求項7に記載の音響アンテナ。
【請求項9】
前記トランスデューサは、圧電セラミック、又は磁歪セラミック、又は電歪セラミックで作られたFFR(「無浸水リング」)トランスデューサである、請求項1~8のいずれか一項に記載の音響アンテナ。
【請求項10】
前記第1の組及び前記第2の組の前記トランスデューサは、円形、台形又は多角形断面を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の音響アンテナ。
【請求項11】
少なくとも前記第1の長手軸(A1)と平行なK個の長手軸(A2、A3)に沿って積まれた少なくとも2つのトランスデューサ(T3)の第3の組を含み、Kは、1より大きく、前記第3の組の前記トランスデューサは、少なくとも、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの放射モードと、前記第2の組の前記トランスデューサの前記放射周波数プラス又はマイナス(fr2-fc2)/10に等しい、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの空洞モードとを有し、fr2は、前記第2の組の前記トランスデューサの前記放射周波数であり、及びfc2は、前記第2の組の前記トランスデューサの前記空洞周波数であり、前記第3の組の前記トランスデューサは、少なくともそれらの空洞周波数とそれらの放射周波数との間に広がる第3の連続周波数帯内の音波を送信するように構成され、前記第3の周波数帯は、前記第1及び第2の周波数帯の周波数より高い少なくとも1つの周波数を有し、及び前記第1、第2及び第3の周波数帯の交わり部分は、連続周波数帯を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の音響アンテナ。
【請求項12】
前記K個の長手軸は、前記第1の長手軸と一致する、請求項11に記載の音響アンテナ。
【請求項13】
前記第1の組の前記トランスデューサの励起信号と、前記第2の組のトランスデューサの少なくともサブグループの励起信号との間に第1の位相シフト(Δφ1)を導入するように配置された少なくとも第1の移相器(D1)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の音響アンテナ。
【請求項14】
前記第2の組のトランスデューサの異なるサブグループの励磁信号間に第2の位相シフト(Δφ2)を導入するように配置された少なくとも第2の移相器(D2)を追加的に含む、請求項13に記載の音響アンテナ。
【請求項15】
同じタイプのトランスデューサのN+1個のグループと、前記第1のグループの前記トランスデューサの励起信号と別のグループの励起信号との間に位相シフトを導入するように配置されたN個の移相器とを含み、Nは、1より大きい整数である、請求項1~14のいずれか一項に記載の音響アンテナ。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか一項に記載の音響アンテナを校正する方法において、
a.同じタイプのトランスデューサの第1のグループを励起し、且つ他のトランスデューサを短絡する工程、
b.前記第1のグループの前記トランスデューサによって生成される圧力波の位相を遠距離場測定する工程、
c.同じタイプのトランスデューサの第2のグループを励起し、且つ他のトランスデューサを短絡する工程、
d.前記第2のグループの前記トランスデューサによって生成される圧力波の位相を遠距離場測定する工程、
e.工程bにおいて取得された前記位相と、工程dにおいて取得された前記位相との間の位相差を計算する工程、
f.移相器を、それが、工程eにおいて計算された前記位相差に等しい位相シフトを、前記第2のグループの前記トランスデューサに送信される前記励起信号に導入するように調整する工程
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響送受信アンテナ、特に低周波数及び中間周波数システムの分野における音響送信アンテナ並びにこのようなアンテナを校正する方法に関する。本発明は、限定しないが、特に可変深度ソナーに適用される。本発明は、例えば、固定アンテナソナー、保護ソナー又はポートソナーなどの他のタイプのソナーにも適用され得る。
【背景技術】
【0002】
海上プラットホームは、水中の物体を検出し、且つ/又は見出すために水面下ソナーアンテナを備える。ソナーアンテナは、支持体に取り付けられた、音響信号を送信するための積層トランスデューサの組を含む。この信号は、送信トランスデューサの組の構成に対して選択された構成に従って配置された水中聴音機などの受信器の組により受信される。
【0003】
可変深度ソナー(「音響航法及び測距」)送信のための現在のアンテナは、様々なアーキテクチャに従って製造される。
【0004】
基本トランスデューサのアレイで構成された平面アンテナが使用され得る。これらのアンテナは、ソナー信号の送信を行う。そのトランスデューサは、多くの場合、それらを嵩張り且つ重くするTonpilzタイプのものである。具体的には、Tonpilzトランスデューサは、能動素子(すなわちアンテナの圧電、磁歪、電歪材料素子)が、後部、屋根及び密閉筐体に耐震質量などの嵩張った機械的部品を備えることを必要とする。加えて、これらのトランスデューサの水面下動作は、静水圧補償装置を設けることを伴い、これなしではトランスデューサの水面下性能が著しく劣化される。このアンテナアーキテクチャは、低質量曳航物設計に不適任であり、システムの他の素子を過剰に大きくすることを伴う。
【0005】
コンパクト性且つ重量の観点において、コンパクトなフレックステンショナルトランスデューサの垂直方向アレイで構成されたアンテナなどの他のアーキテクチャが好ましい。しかし、このタイプのアンテナは、それらのトランスデューサが単一共振性であり、且つ本来的に高度に過剰ストレスを受ける機械的屈曲モードで動作するため、最近の広帯域ソナーに必要な周波数帯幅が取得されることを可能にしない。したがって、低周波数は、機械的屈曲を使用することにより実現される。このアンテナは、システムの嵩及び質量を低減するために十分にコンパクトであるが、活物質の容積を最小化する欠点を有し、これは、供給可能音響出力と、したがって音響レベルとにとって有害であり得る。これらのアンテナの帯域は、1オクターブよりはるかに小さいままであり、ここで、1オクターブは、[f;2f]形式の周波数範囲である。
【0006】
「スロット付き円柱」タイプの変換器の垂直方向アレイから構成されるアンテナも小型且つ低質量のアンテナを実現するために使用される。このタイプのトランスデューサは、機械的屈曲システムにも基づいており、したがってフレックステンショナルトランスデューサに等しい周波数帯幅を必然的に有する。米国特許第9001623号明細書は、曳航体へのその一体化を提案しており、米国特許第8717849号明細書は、その変形形態を提案している。このアーキテクチャは、コンパクト且つ軽量なアンテナが製造されることを可能にするが、周波数帯及び活物質の容積の観点で制限されたままである。これを克服するために、アンテナは、長手方向に伸張されるが、このとき、音響エネルギーは、低減された容積の流体内に集束され、これは、ソナーの検出性能を低減し得る。長手方向のアンテナの伸張も曳航体のナビゲーションの観点で不利である(特に高速度において)。加えて、曳航体上のその一体化は、複雑であり、曳航体の質量を増加し、結果的に運用の複雑性を増加させる。
【0007】
送信周波数帯の幅を増加させるためにFFR(「無浸水リング」)タイプのコンパクト且つ広帯域なトランスデューサの垂直方向アレイで構成されたアンテナを使用することも可能である。このタイプのアンテナは、水上艦艇により曳航されるソナー上に存在し得る。仏国特許第2776161号明細書は、その一例を与えている。これらのトランスデューサの動作は、1オクターブ程度の帯域幅の取得を可能にする2つの共振モードの結合に基づく。加えて、活物質の比率は、全質量に対して非常に高く、したがって音響レベルに関して好ましい高出力送信を実現することが可能である。しかし、これらのアンテナは、複数のオクターブがカバーされることを可能にしない。
【0008】
送信帯域及び音響レベルを最適化するために、少なくとも2つのトランスデューサのグループに分割された変換器の垂直方向アレイで構成されたアンテナを使用することも可能である(仏国特許第3026569号明細書)。しかし、上記と同様に、複数オクターブをカバーすることは可能でない。
【0009】
有用帯域を増加させるために、異なるサイズの複数のFFRトランスデューサを結合することが可能である(国際公開第2015/019116号パンフレット)が、これは、質量と、したがって出力要件との増加に繋がり、これは、システムを複雑にする。仏国特許第2776161号明細書のアンテナと比較して、質量及び出力要件は、2.5~3倍高い。加えて、この解決策は、様々なトランスデューサ間に音響相互作用があるため、音響レベルにおいて制限され、したがって小さいトランスデューサがより大きいトランスデューサによって音響的にマスクされる影響が観測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第9001623号明細書
【特許文献2】米国特許第8717849号明細書
【特許文献3】仏国特許第2776161号明細書
【特許文献4】仏国特許第3026569号明細書
【特許文献5】国際公開第2015/019116号パンフレット
【特許文献6】仏国特許第2776161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術の前述の欠点及び制限を克服することを目的とする。具体的には、本発明は、質量、嵩及び出力の観点で従来技術と同様の寸法に従う一方、音響レベルに悪影響を与えることなく広周波数帯を有する音響アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の1つの主題は、ソナーを装備するように意図された音響アンテナであって、第1の長手軸の中心に置かれ、且つ少なくとも前記長手軸に沿って積まれた少なくとも1つのトランスデューサの第1の組及び少なくとも2つのトランスデューサの第2の組を含み、各トランスデューサは、少なくとも、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの空洞モードとを有する、音響アンテナにおいて、第1の組のトランスデューサは、少なくとも第1の組のトランスデューサの空洞周波数と放射周波数との間に広がる第1の連続周波数帯内の音波を送信するように構成され、及び第2の組のトランスデューサは、少なくとも第2の組のトランスデューサの空洞周波数と放射周波数との間に広がる第2の連続周波数帯内の音波を送信するように構成されること、第2の組のトランスデューサの空洞周波数は、第1の組のトランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10にほぼ等しく、fr1は、第1の組のトランスデューサの放射周波数であり、及びfc1は、第1の組のトランスデューサの空洞周波数であることを特徴とする音響アンテナである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によると、
- トランスデューサの第1の組は、少なくとも2つのトランスデューサを含み、及び第2の組のトランスデューサは、第1の組のトランスデューサ間に置かれ、
- 第2の組のトランスデューサは、サブグループに分割され、各サブグループは、第2の組のトランスデューサの少なくとも2つのトランスデューサを含み、各サブグループ間の間隔は、同一のサブグループの2つのトランスデューサ間の間隔以上であり、及び各サブグループは、グループ空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードを有し、
- 第2の組は、3つのサブグループに分割された7つのトランスデューサを含み、第1のサブグループは、2つのトランスデューサを含み、第2のグループは、3つのトランスデューサを含み、第3のサブグループは、2つのトランスデューサを含み、及び第2のサブグループは、第1のサブグループと第3のサブグループとの間に置かれ、
- 少なくとも1つのサブグループのグループ空洞周波数は、第1の組のトランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10に等しく、及び少なくとも1つの他のサブグループのグループ空洞周波数は、第1の組のトランスデューサの空洞周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10に等しく、fr1は、第1の組のトランスデューサの放射周波数であり、及びfc1は、第1の組のトランスデューサの空洞周波数であり、
- アンテナは、第1の長手軸に沿って積まれた受動素子を含み、受動素子は、第2の組のトランスデューサを取り囲み、及び第2の組のトランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス0.1×fr2に等しく、有利には第2の組のトランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス0.05×fr2に等しい(ここで、fr2は、第2の組のトランスデューサの放射周波数である)、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの放射モードを有し、且つ第1の周波数帯内における、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードも有し、
- 受動素子は、材料であって、その材料のE/ρ比が、第2の組のトランスデューサを形成する材料のものより高いような材料で作られ、Eは、材料のヤング率であり、及びρは、材料の密度であり、
- 受動素子は、第2の組のトランスデューサのものより大きい直径を有する円柱であり、
- トランスデューサは、圧電セラミック、又は磁歪セラミック、又は電歪セラミックで作られたFFR(「無浸水リング」)トランスデューサであり、
- 第1の組及び第2の組のトランスデューサは、円形、台形又は多角形断面を有し、
- アンテナは、少なくとも第1の長手軸と平行なK個の長手軸に沿って積まれた少なくとも2つのトランスデューサの第3の組を含み、Kは、1より大きく、第3の組のトランスデューサは、少なくとも、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの放射モードと、第2の組のトランスデューサの放射周波数プラス又はマイナス(fr2-fc2)/10に等しい、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する1つの空洞モードとを有し、fr2は、第2の組のトランスデューサの放射周波数であり、及びfc2は、第2の組のトランスデューサの空洞周波数であり、第3の組のトランスデューサは、少なくともそれらの空洞周波数とそれらの放射周波数との間に広がる第3の連続周波数帯内の音波を送信するように構成され、第3の周波数帯は、第1及び第2の周波数帯の周波数より高い少なくとも1つの周波数を有し、及び第1、第2及び第3の周波数帯の交わり部分は、連続周波数帯を形成し、
- K個の長手軸は、第1の長手軸と一致し、
- アンテナは、第1の組のトランスデューサの励起信号と、第2の組のトランスデューサの少なくともサブグループの励起信号との間に第1の位相シフトを導入するように配置された少なくとも第1の移相器を含み、
- アンテナは、第2の組のトランスデューサの異なるサブグループの励磁信号間に第2の位相シフトを導入するように配置された少なくとも第2の移相器を追加的に含み、及び
- アンテナは、同じタイプのトランスデューサのN+1個のグループと、第1のグループのトランスデューサの励起信号と別のグループの励起信号との間に位相シフトを導入するように配置されたN個の移相器とを含み、Nは、1より大きい整数である。
【0014】
本発明の別の主題は、本発明による音響アンテナを校正する方法において、
a.同じタイプのトランスデューサの第1のグループを励起し、且つ他のトランスデューサを短絡する工程、
b.第1のグループのトランスデューサによって生成される圧力波の位相を遠距離場測定する工程、
c.同じタイプのトランスデューサの第2のグループを励起し、且つ他のトランスデューサを短絡する工程、
d.第2のグループのトランスデューサによって生成される圧力波の位相を遠距離場測定する工程、
e.工程bにおいて取得された位相と、工程dにおいて取得された位相との間の位相差を計算する工程、
f.移相器を、それが、工程eにおいて計算された位相差に等しい位相シフトを、第2のグループのトランスデューサに送信される励起信号に導入するように調整する工程
を含むことを特徴とする方法である。
【0015】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、一例として与えられる添付図面を参照して提供される説明を読むことで明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態による音響アンテナを示す。
図2】第2の実施形態による音響アンテナを示す。
図3a】第3、第4及び第5の実施形態のそれぞれによる音響アンテナを示す。
図3b】第3、第4及び第5の実施形態のそれぞれによる音響アンテナを示す。
図3c】第3、第4及び第5の実施形態のそれぞれによる音響アンテナを示す。
図4】第6の実施形態による音響アンテナを示す。
図5】本発明の一実施形態による較正方法を示す。
図6a図6bに提示される本発明の一実施形態による音響アンテナによるシミュレーションの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書を通して、用語「円柱」は、一般的な意味で使用されおり、且つその母線同士が平行である線織面(すなわち平行線で構成された空間内の表面)を指す。添付図面により示されるいくつかの実施形態において、トランスデューサ及び受動素子は、環状の形状(すなわち回転柱の形状)である。
【0018】
図1は、第1の実施形態による音響アンテナANTを示す。アンテナANTは、第1の長手軸A1を中心にして置かれ、且つ少なくとも2つの中空円柱状トランスデューサT1の第1の組及び少なくとも2つの中空円柱状トランスデューサT2の第2の組を含む。この第1の実施形態では、第1の組は、2つのトランスデューサT1を、第2の組は、7つのトランスデューサT2を含む。円柱状トランスデューサT1及びT2は、同じ長手軸A1の周囲に形成される。トランスデューサT2は、トランスデューサT1及びT2間にいかなる物理的オーバーラップもなしにトランスデューサT1間に置かれる。これは、トランスデューサT1によるトランスデューサT2のマスキングなどの有害な音響相互作用を回避することを可能にする。各トランスデューサ(T1、T2)は、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードとを有する。第1の組のトランスデューサT1は、少なくともトランスデューサT1の空洞周波数と放射周波数との間に広がる第1の周波数帯内の音波を送信するように構成され、及び第2の組のトランスデューサT2は、少なくともトランスデューサT2の空洞周波数と放射周波数との間に広がる第2の連続周波数帯内の音波を送信するように構成される。トランスデューサT1及びT2は、異なる物理的寸法を有し、特に、トランスデューサT2は、第2の組のトランスデューサT2の空洞周波数fc2が第1の組のトランスデューサT1の放射周波数fr1に(fr1-fc1)/10以下の公差でほぼ等しくなる(すなわちfc2=fr1±(fr1-fc1)/10であり、ここで、fc1は、トランスデューサT1の空洞周波数である)ように、トランスデューサT1より小さい物理的寸法を有する。これは、第1及び第2の周波数帯の周波数を含む連続送信周波数帯を取得することを可能にする。
【0019】
第2の組のトランスデューサT2は、少なくとも2つのトランスデューサを含むサブグループに分割され得る。この第1の実施形態では、トランスデューサT2は、3つのサブグループ(SG1、SG2、SG3)に分割される。第1のサブグループSG1は、2つのトランスデューサT2を含み、第2のサブグループSG2は、3つのトランスデューサT2を含み、及び第3のサブグループSG3は、2つのトランスデューサT2を含む。サブグループSG2は、サブグループSG1及びSG3間に置かれる。各サブグループ間(すなわちこの第1の実施形態のサブグループSG1及びSG2間並びにサブグループSG2及びSG3間)の間隔は、同一のサブグループのトランスデューサT2間の間隔以上である。これは、トランスデューサT2により多くの機能を行うことを可能にする。
【0020】
各サブグループ(SG1、SG2、SG3)は、グループ空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードを有する。具体的には、2つの同一の環状トランスデューサが、それらの空洞モードの音響波長に対して短い距離で互いに上下に配置されると、これらのモードは、相互作用し、及びそれらの周波数は、低下する(放射モードの周波数は、影響を受けない)。したがって、トランスデューサT2は、等しい物理的寸法を有するため、サブグループのグループ空洞周波数を修正することを可能にするのは、同一のサブグループのトランスデューサT2間の間隔である。
【0021】
サブグループの少なくとも1つは、第1の組のトランスデューサT1の放射周波数に(fr1-fc1)/10以下の公差でほぼ等しいグループ空洞周波数(すなわちfcg=fr1±(fr1-fc1)/10)を有し、ここで、fcgは、グループ空洞周波数であり、fr1は、トランスデューサT1の放射周波数であり、及びfc1は、トランスデューサT1の空洞周波数である。サブグループの少なくとも1つの他のものは、第1の組のトランスデューサT1の空洞周波数にほぼ等しいグループ空洞周波数を有し、すなわち、グループ空洞周波数は、トランスデューサT1の空洞周波数プラス又はマイナス(fr1-fc1)/10に等しい。例えば、この第1の実施形態では、第1の組のトランスデューサT1の放射周波数にほぼ等しいグループ空洞周波数を有するのは、第1のサブグループSG1及び第3のサブグループSG3のトランスデューサT2であり、第1の組のトランスデューサT1の空洞周波数にほぼ等しいグループ空洞周波数を有するのは、第2のサブグループSG2のトランスデューサT2である。したがって、この実施形態では、第2のサブグループSG2内のトランスデューサT2間の間隔は、サブグループSG1及びSG3内のトランスデューサT2間の間隔より小さい。トランスデューサT2の放射周波数は、サブグループ内のトランスデューサT2の間隔により影響を受けない。その容積モードの周波数を調整するためのトランスデューサ間の可変軸方向間隔の使用は、上に引用された仏国特許第3026569号明細書から知られている。
【0022】
サブグループSG2は、トランスデューサT1の空洞周波数の近傍のトランスデューサT1の音響レベルを増加させること(すなわち第1の周波数帯の最低周波数における送信を増強すること)を可能にする一方、サブグループSG1及びSG3のトランスデューサTは、トランスデューサT1の放射周波数にほぼ等しい同一空洞周波数を有することにより、第2の周波数帯における送信を増強することを可能にする。
【0023】
図2は、本発明の第2の実施形態による音響アンテナANTを提示する。音響アンテナANTは、長手軸A1を中心に置かれ、且つ長手軸A1に沿って積まれたトランスデューサ(T1、T2)の2つの組を含む。トランスデューサT2は、図1に示すように、トランスデューサT1及びT2間にいかなる物理的オーバーラップもなしにトランスデューサT1間に置かれ、且つ3つのサブグループSG1、SG2及びSG3に分割される。サブグループSG1及びSG3のグループ空洞周波数は、トランスデューサT1の放射周波数にほぼ等しく、サブグループSG2のグループ空洞周波数は、トランスデューサT1の空洞周波数にほぼ等しい。トランスデューサT1の空洞周波数帯における(すなわち第1の周波数帯の下側境界における)音響レベルを増強するために、受動素子P1がアンテナANTに追加される。これらの受動素子P1は、長手軸A1に沿って積まれ、第2の組のトランスデューサT2を囲み、且つ第1の組のトランスデューサT1間に置かれる。これらの受動素子P1は、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードとを有する。受動素子P1は、円柱、特にリングである。
【0024】
トランスデューサT2の放射モードと干渉しないために、受動素子P1は、材料であって、その材料のE/ρ比が、第2の組のトランスデューサT2を形成する材料のものより高いような材料で作られ、Eは、材料のヤング率であり、及びρは、材料の密度である。これは、同じ周波数において共振する放射モードを有する(すなわち受動素子P1の放射周波数がトランスデューサT2の放射周波数にほぼ等しい)一方、トランスデューサT2のものより大きい直径を有する受動素子P1を取得することも可能にする。素子P1の放射周波数は、トランスデューサT2の放射周波数プラス又はマイナストランスデューサT2の放射周波数の10%に等しく、すなわちfrp1=fr2±0.1×fr2であり、ここで、frp1は、受動素子P1の放射周波数であり、及びfr2は、トランスデューサT2の放射周波数である。好適には、frp1=fr2±0.05×fr2である。
【0025】
加えて、受動素子P1の送信がトランスデューサT2の送信をマスクすることを妨げるために、受動素子P1の放射周波数は、第2の組SG2のトランスデューサT2の放射周波数にほぼ等しく、受動素子P1の空洞周波数は、第1の周波数帯内にある。
【0026】
受動素子P1の励起は、トランスデューサT1及び中央トランスデューサT2(すなわちこの実施形態ではサブグループSG2のトランスデューサT2)により生成される音場に由来する。
【0027】
別の実施形態によると、受動素子P1の空洞周波数は、第1の組のトランスデューサT1の空洞周波数にほぼ等しい。これは、受動素子P1の空洞周波数がトランスデューサT1の空洞周波数プラス又はマイナス(lcp1+lc1)/2に等しいことを意味し、ここで、lcp1は、受動素子P1の空洞モードの半値全幅であり、及びlc1は、トランスデューサT1の空洞モードの半値全幅である。これは、第1の周波数帯における音響レベルがより効果的に増強されることを可能にする。
【0028】
図3a、3b及び3cは、それぞれ第3、第4及び第5の実施形態による音響アンテナANTを示す。これらの3つの実施形態では、音響アンテナANTは、第1の長手軸A1を中心に置かれ、且つトランスデューサT1、T2及びT3の3つの組を含む。トランスデューサT1及びT2は、第1の長手軸A1に沿って積まれ、トランスデューサT3は、軸A1と平行な第2の長手軸A2に沿って積まれる。受動素子P1、トランスデューサT2及びT1は、図2と同様に配置され、寸法決めされる。具体的には、トランスデューサT2の空洞周波数は、第1の組のトランスデューサT1の放射周波数にほぼ等しく、トランスデューサT2は、3つのサブグループSG1、SG2及びSG3に分割される。サブグループSG1及びSG3のグループ空洞周波数は、第1の組のトランスデューサT1の放射周波数にほぼ等しく、サブグループSG2のグループ空洞周波数は、トランスデューサT1の空洞周波数にほぼ等しい。加えて、受動素子P1の放射周波数は、トランスデューサT2の放射周波数プラス又はマイナス0.1×fr2、好適にはプラス又はマイナス0.05×fr2に等しく、ここで、fr2は、トランスデューサT2の放射周波数であり、及び受動素子P1の空洞周波数は、第1の周波数帯内にある。
【0029】
第3の組のトランスデューサT3は、第1及び第2の周波数帯と異なる第3の連続周波数帯内の音波を送信するように寸法決めされる。トランスデューサT3は、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードとを有する。第3の周波数帯は、少なくとも第3の組のトランスデューサT3の空洞周波数と放射周波数との間に広がる。加えて、第3の組のトランスデューサT3の空洞周波数は、第2の組のトランスデューサT2の放射周波数にほぼ等しい。したがって、トランスデューサT3の空洞周波数は、トランスデューサT2の放射周波数プラス又はマイナス(fr2-fc2)/10に等しく、ここで、fr2は、トランスデューサT2の放射周波数であり、及びfc2は、トランスデューサT2の空洞周波数である。したがって、第1、第2及び第3の周波数帯の組み合わせは、3オクターブをカバーする連続周波数帯を取得することを可能にする。この第3の周波数帯は、トランスデューサT1及びT2より小さい物理的寸法を有する第3の組のトランスデューサT3の寸法決めのために取得される。
【0030】
図3aに示す実施形態では、長手軸A2は、軸A1と異なり、したがってトランスデューサT3は、トランスデューサT1及びT2を含む構造の隣に置かれる。この実施形態は、トランスデューサT1及びT2より小さいトランスデューサT3が他のトランスデューサを著しくマスクしなくなるために可能である。
【0031】
図3bに示す実施形態では、アンテナANTは、軸A1と平行であり、且つ軸A1と異なる2つの長手軸A2及びA3に沿って積まれた複数のトランスデューサT3を含む。これは、長手軸A1に沿ったよりコンパクトなアンテナを取得することと、軸A2及びA3に沿って積まれたトランスデューサT3が他のトランスデューサと交互に動作する場合に全方向音響送信を生じるために、又はトランスデューサのすべてが同時に送信する場合に方向付け可能な指向性音響送信を生じるために、トランスデューサT1及びT2によるトランスデューサT3のマスキングの影響を克服することも可能にする。
【0032】
より一般的には、アンテナANTは、軸A1に平行なK個の長手軸に沿って積まれた複数のトランスデューサT3を含み得、ここで、Kは、1より大きい整数である。再びより一般的には、アンテナANTは、それぞれが少なくとも1つのトランスデューサを含む複数組のトランスデューサT2、T3、...、TNを含み得、各組のトランスデューサは、軸A1に平行なK個の長手軸に沿って積まれ、その上にトランスデューサT1が積まれ、Nは、2より大きい整数である。
【0033】
図3cに示す実施形態では、長手軸A2は、軸A1と一致する。トランスデューサT3は、トランスデューサT2間(特にサブグループSG1及びSG3間)に置かれ、サブグループSG2は、トランスデューサT3で置換される。第3の組のトランスデューサT3間の間隔は、上に示したトランスデューサT1に対するトランスデューサT2と類似の方法で定義される。例えば、図では、トランスデューサT3とサブグループSG1又はSG3のトランスデューサとの間の間隔は、トランスデューサT3間の間隔より大きく、且つまた同一のサブグループのトランスデューサT2間の間隔より大きい。
【0034】
より一般的には、トランスデューサT3の組の径方向嵩がトランスデューサT1の外径プラス又はマイナス10%程度の径方向嵩となるように、これらのK個の軸が位置決めされる場合、曳航体上の設置に好適なコンパクトなアンテナが取得される。これは、同時に活性状態であるトランスデューサT1、T2及びT3による全方向且つ方向付け可能な指向性音響送信を実現することを可能にする。別の実施形態では、軸A1と一致するK個の長手軸を有することが可能である。この構成は、例えば、固定設置のために使用され得る。
【0035】
加えて、トランスデューサT2の音響レベルを増強するために、受動素子P2も存在し得る。これらの受動素子P2は、長手軸A1に沿って積まれ、且つ第3の組のトランスデューサT3を囲む。受動素子P1は、図3cに示すように、受動素子P2を囲み得る。受動素子P2は、放射周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの放射モードと、空洞周波数と呼ばれる共振周波数を有する少なくとも1つの空洞モードとを有する。受動素子P2の放射周波数は、第3の組のトランスデューサT3の放射周波数にほぼ等しく、受動素子P2の空洞周波数は、第2の周波数帯内である。上と同様に、これは、受動素子P2の放射周波数がトランスデューサT3の放射周波数プラス又はマイナス0.1×fr3、好適にはプラス又はマイナス0.05×fr3に等しいことを意味し、fr3は、トランスデューサT3の放射周波数である。加えて、受動素子P1と同様に、その周囲に位置決めされるトランスデューサT3の放射モードと干渉しないために、受動素子P2は、材料であって、その材料のE/ρ比が、トランスデューサT3を形成する材料のものより高いような材料で作られ、Eは、材料のヤング率であり、及びρは、材料の密度である。
【0036】
別の実施形態によると、トランスデューサT1及びT2のように、第3の周波数帯の下側部分における音響レベルを増強するために、トランスデューサT3をサブグループに分割することも可能である。
【0037】
より一般的には、再帰的構造を有する音響アンテナを生成することが可能である。トランスデューサは、組i+1のトランスデューサの低周波モード(すなわち空洞モード)が組iのトランスデューサの高周波モード(すなわち放射モード)に重畳されるように寸法決めされる。
【0038】
トランスデューサがシングルモードであれば、同じ原理は、組i+1のトランスデューサの送信周波数帯の最低部を組iのトランスデューサの送信周波数帯の最上部に一致させることにより使用され得る。
【0039】
トランスデューサがマルチモードであれば、デュアルモードトランスデューサ(すなわち空洞モード及び放射モードを有するトランスデューサ)と同じ原理を使用することと、組iのトランスデューサの最高共振周波数と組i+1のトランスデューサの最低共振周波数とを一致させることとが可能である。
【0040】
加えて、トランスデューサは、高周波数で動作するトランスデューサが、低周波数で動作する少なくとも2つのトランスデューサ間に挿入されるように配置される。
【0041】
より一般的には、受動素子P1及びP2の数は、Nに等しく、ここで、Nは、1より大きい自然数である。各組のサブグループは、1より大きい整数である数M個のトランスデューサを含み得る。したがって、音響アンテナは、それぞれが例えばトランスデューサT2及び/又はT3の組を取り囲む例えば3つのトランスデューサT1を含み得る。加えて、第1の組のトランスデューサT1は、トランスデューサT1より低い送信周波数帯を有する別の組のトランスデューサの2つのトランスデューサ間に置かれる可能性もある。アンテナは、少なくとも2つのトランスデューサのサブグループに分割された複数のトランスデューサT1も含み得る。
【0042】
図4は、第6の実施形態による音響アンテナANTを示す。アンテナANTの物理的寸法及びアンテナANTに含まれるトランスデューサ(T1、T2)又は(T1、T2、T3)のすべてによりカバーされる周波数帯の広がりは、この周波数帯のいくつかの周波数に破壊的干渉を出現させ得、アンテナの周波数帯内の「ギャップ」を生じる。これは、これらの様々な「副アンテナ」を形成するトランスデューサの励起信号(有利には単一発生器Gに由来する)を適切に位相シフトすることにより回避され得る。図4の実施形態では、第1の組のトランスデューサT1は、基準としての役割を果たし、且つ発生器Gに直接接続され、サブグループSG1及びSG3のトランスデューサT2は、位相差Δφ1を、これらのトランスデューサにより受信される励起信号に適用するように構成された第1の移相器D1を介して発生器Gに接続され、サブグループSG2のトランスデューサT2は、位相差Δφ2を、これらのトランスデューサにより受信される励起信号に適用するように構成された第2の移相器D2を介して発生器Gに接続される。
【0043】
別の実施形態によると、アンテナANTは、第1の組のトランスデューサT1に送信される励起信号に対して、第2の組のトランスデューサT2のすべてに送信される励起信号に位相差を適用するように構成された1つの移相器のみを含む。
【0044】
同様に、アンテナANTは、第2の組のトランスデューサT2に送信される励起信号に対して、第3の組のトランスデューサT3に送信される励起信号に位相差を適用するように構成された第3の移相器を含み得る。
【0045】
より一般的には、トランスデューサの任意の組又はサブグループを基準として取ることと、次に基準組のサブグループに対して他のトランスデューサを位相シフトするために移相器を追加することとが可能である。
【0046】
別の実施形態によると、移相器は、調整可能である。
【0047】
本発明の一実施形態によると、トランスデューサ(T1、T2、T3)は、「無浸水リング」(FFR)トランスデューサである。具体的には、これらは、圧電セラミック、磁歪セラミック又は電歪セラミックで作られる。トランスデューサは、単結晶又はテクスチャ化セラミックなどの圧電磁器の混合物から導出される材料又は電気力学などの様々な原理に基づく材料によっても作られ得る。
【0048】
別の実施形態によると、トランスデューサ(T1、T2、T3)は、円形、台形又は多角形断面を有する。トランスデューサの直径は、その断面内のセグメントの最長の長さにより定義される。
【0049】
別の実施形態によると、より大きい送信出力及び指向送信を取得するために、本発明に従って製造された少なくとも2つのアンテナANTを互いに隣接して置くことが可能であり、指向性又は全方向性送信における音響レベルを特に増加させることを可能にする。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態による音響アンテナを校正する方法を提示する。第1の工程aでは、同じタイプのトランスデューサの第1のグループが励起され、及び他のトランスデューサが短絡される。次の工程bでは、第1のグループのトランスデューサによって生成される圧力波の位相が遠距離場において測定される。次の工程cでは、同じタイプのトランスデューサの第2のグループが励起され、及び他のトランスデューサが短絡される。工程dでは、第2のグループのトランスデューサによって生成される圧力波の位相が遠距離場において測定される。工程eは、工程b及び工程dからの測定結果間の位相差を計算することを含む。最後に、工程fでは、移相器は、それは、工程eにおいて計算された位相差に等しい位相シフトを、第2のグループのトランスデューサに送信される励起信号に導入するように調整される。
【0051】
例えば、第1のグループのトランスデューサは、第1の組のトランスデューサT1であり、第2のグループのトランスデューサは、第2の組のトランスデューサT2である。したがって、これらの2つのグループにより計算された位相差に等しい位相シフトをトランスデューサに導入するために、図4に存在する移相器D1を使用することが可能であろう。
【0052】
別の例では、第1のグループのトランスデューサは、第1の組のトランスデューサT1を含み、第2のグループのトランスデューサは、サブグループSG2のトランスデューサT2を含む。したがって、図4に存在する移相器D2は、これらの2つのグループにより計算された位相差に等しい位相シフトを導入するために使用される可能性がある。
【0053】
図6aは、本発明の一実施形態による音響アンテナによるシミュレーションの結果(特に周波数に応じた送信音レベル)を提示する。図6bに提示されるこの実施形態では、音響アンテナANTは、第1の組に属する2つのトランスデューサT1と、第2の組に属する4つのトランスデューサT2とを含む。トランスデューサT2は、サブグループに分割されない。音響アンテナの多くの構成が研究された。第1の構成では、トランスデューサT1のみが活性状態であり、音波を送信する。第2の構成では、トランスデューサT2のみが活性状態であり、音波を送信し、第3の構成では、トランスデューサT1及びT2がすべて活性状態であり、音波を送信する。構成1~3は、移相器を使用せずに生成される。構成4では、トランスデューサT1及びT2は、すべて活性状態であり、移相器は、図5において説明した較正方法を適用するために使用される。
【0054】
構成1は、灰色一点鎖線の曲線により、構成2は、灰色破線曲線により、構成3は、黒色破線曲線により、及び構成4は、べた黒色曲線により表される。最後に、べた灰色曲線は、所望の最大音響レベルを表す。第1の組及び第2の組のトランスデューサが同時に活性状態でなければ、2オクターブの連続周波数帯にわたって十分な(すなわち所望の音響レベルに対して-3dBの)音響レベルを有する音響送信を取得することが可能でないことが明確に分かり得る。
【0055】
トランスデューサの両方の組が同時に活性化される場合(構成3)、送信音レベルは、2オクターブにわたって増加されるが、いくつかの周波数において所望の音響レベルより3dB超低いため、依然として不十分である。構成4の較正方法による移相器の使用では、所望の最大レベルに対して-3dBより大きいため、十分な音響レベルを有する少なくとも2オクターブの連続送信周波数帯を取得することが可能である。
【0056】
この使用は、ここで、可変深度ソナー曳航体に含まれるように意図されているが、それにもかかわらず、本発明による音響アンテナは、ドームにより保護が設置される任意のキャリヤ上に設置され得る。固定局上の使用も可能であり、したがっていかなる特別な保護も必要としない。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6a
図6b
【国際調査報告】