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特表2022-508935がん治療における免疫モジュレーションのための組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】がん治療における免疫モジュレーションのための組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220112BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20220112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P35/02
A61K31/4745
A61K31/7068
A61K33/243
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547036
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 US2019056994
(87)【国際公開番号】W WO2020081971
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/747,822
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/837,048
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521164773
【氏名又は名称】センワ バイオサイエンシズ,インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086EA17
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、対象においてがん若しくは難治性がんを治療する及び/又はがん転移、再発若しくは進行を阻害する、又はがんと診断された対象において適切な期間にわたって生存の可能性を増加させる方法であって、抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤の組合せを対象に投与するステップを含む方法を提供する。本開示の方法は、腫瘍微小環境内のT細胞及び活性化T細胞の数を増加させるので、がん療法において免疫をモジュレートすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてがん若しくは難治性がんを治療する及び/又はがん転移、再発若しくは進行を阻害する、又はがんと診断された対象において適切な期間にわたって生存の可能性を増加させる方法であって、抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤の組合せを対象に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
投与が対象における腫瘍微小環境内の腫瘍特異的T細胞を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗がん剤及びCK2阻害剤の組合せが、同時に、逐次的に、断続的に又は周期的に投与され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回の投与サイクルを含み、サイクルが8週間以下の期間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
組合せが前記がんに対する免疫記憶をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤が相乗的に有効な量である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
サイクルが4週間の期間である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
投与サイクルが、対象に1回以上の第1の治療(例えば導入療法、例えば化学療法剤及びCK2阻害剤の組合せ)を、奏効(部分又は完全奏効)を達成するのに十分な量及びレジメンで投与すること、並びに次いで対象にある量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
投与サイクルが、CK2阻害剤を毎日及び化学療法剤を週1回投与することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
投与サイクルが、免疫チェックポイント阻害剤を週2回投与することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
CK2阻害剤が、対象の体重1kgあたり約25mg(約25mg/kg)~約2000mg/kgの範囲の1日用量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
1日用量が約50mg/kg~約200mg/kgの範囲であり、一部の実施形態では、CK2阻害剤が1日2回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
抗がん剤が、対象の体重1kgあたり約1mg(約1mg/kg)~約20mg/kgの範囲の用量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
抗がん剤の用量が約5mg/kg~約10mg/kgの範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
免疫チェックポイント阻害剤が、対象の体重1kgあたり約1mg(約1mg/kg)~約20mg/kgの範囲の用量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
免疫チェックポイント阻害剤の用量が約8mg/kg~約15mg/kgの範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
がんが、膠芽細胞腫、皮膚がん(例えば黒色腫及び基底細胞癌)、肝臓がん(例えば肝細胞癌)、結腸直腸癌、膠芽細胞腫、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん(NSCLC)及び小細胞肺がん)、膵臓がん、腎細胞癌、良性前立腺肥大、前立腺がん、卵巣がん、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がん、胆管癌、膀胱がん又は子宮がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
抗がん剤が、シスプラチン、ゲムシタビン、カルボプラチン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、サリノスポラミドA、ボルテゾミブ、PS-519、オムラリド、シクロホスファミド、イホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン又はパクリタキセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記CK2阻害剤が、式Iの構造を有する化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル
【化1】
(式中、
各Z1、Z2、Z3及びZ4は、N又はCR3であり、
Z5、Z6、Z7及びZ8の各々は、N又はCR6であり、
Z1~Z4のうちの0個、1個又は2個はNであり、Z5~Z8のうちの0個、1個又は2個はNであり、Z1~Z4及びZ5~Z8のうちの少なくとも1個は窒素原子であり、
各R3及び各R6は独立して、H、又は任意選択で置換されているC1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C12ヘテロアリール、C7~C12アリールアルキル若しくはC6~C12ヘテロアリールアルキル基であるか、或いは
各R6は独立して、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、OC(O)R、COR、NO2、又はカルボン酸、カルボン酸塩、エステル、カルボキサミド、テトラゾールから選択される極性置換基、又は
【化2】
からなる群から選択されるカルボキシバイオアイソスターであり、
各R3は独立して、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、OC(O)R、COR、上記に定義される極性置換基又はNO2であり、
少なくとも1個のR3は、極性置換基であり、
ここで、各Rは独立して、H、又はC1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~C12アリールアルキル若しくはC6~C12ヘテロアリールアルキルであり、
ここで、同じ原子上又は隣接する原子上の2個のRは連結して、任意選択で1個以上のN、O又はSを含有する3~8員環を形成することができ、
各R基、及び2個のR基を共に連結することによって形成される各環は、任意選択で、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OC(O)R'、COR'及びNO2から選択される1個以上の置換基で置換されており、
ここで、各R'は独立して、H、C1~C6アルキル、C2~C6ヘテロアルキル、C1~C6アシル、C2~C6ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~12アリールアルキル又はC6~12ヘテロアリールアルキルであり、これらの各々は、任意選択で、ハロ、C1~C4アルキル、C1~C4ヘテロアルキル、C1~C6アシル、C1~C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ及び=Oから選択される1個以上の基で置換されており、
ここで、2個のR'は連結して、任意選択でN、O及びSから選択される最大3個のヘテロ原子を含有する3~7員環を形成することができ、
R4は、H、又は任意選択で置換されている、C1~C6アルキル、C2~C6ヘテロアルキル及びC1~C6アシルからなる群から選択されるメンバーであり、
各R5は、任意選択で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C2~10ヘテロアルキル、C3~8炭素環及びC3~8複素環からなる群から選択されるメンバーであり、任意選択で、更なる任意選択で置換されている炭素環若しくは複素環と縮合しているか、又は
R5は、任意選択で置換されているC3~8炭素環若しくはC3~8複素環で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル若しくはC2~10ヘテロアルキルであり、
各-NR4R5において、R4及びR5はNと共に、任意選択で環員としてN、O及びSから選択される更なるヘテロ原子を含有してもよい、任意選択で置換されている3~8員環を形成してもよく、
但し、式(I)中の-NR4R5が-NHΦ(式中、Φは任意選択で置換されているフェニルである)である場合、
Z5~Z8の全てがCHであるか又はZ5~Z8のうちの1個がNであれば、Z1~Z4のうちの少なくとも1個はCR3であり、少なくとも1個のR3は非水素置換基でなければならず、又は
各R3がHであれば、Φは置換されていなければならず、
ここで、各R7は独立して、H、又は任意選択で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C2~10ヘテロアルキル、C3~8炭素環及びC3~8複素環からなる群から選択されるメンバーであり、任意選択で、更なる任意選択で置換されている炭素環若しくは複素環と縮合しているか、或いはR7は、任意選択で置換されているC3~8炭素環又はC3~8複素環で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル又はC2~10ヘテロアルキルである)
である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
CK2阻害剤がCX-4945である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1又はCTLA-4阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
免疫チェックポイント阻害剤が、ランブロリズマブ、ピジリズマブ、ニボルマブ、チシリムマブ又はイピリムマブである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがん治療の分野に関する。特に、本発明は、化学療法剤、CK2阻害剤及び免疫チェックポイント阻害剤の組合せを使用してがんを治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼCK2は多くのヒトのがんにおいて上方調節されるので、がん療法に対する標的とみなされてきた(Chuaら、Pharmaceuticals 2017、10、18)。CK2阻害剤は細胞増殖を阻害することが示されており、新生物性障害、例えば乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、造血性がん、結腸直腸がん、皮膚がん及び卵巣がんを治療するために使用され得る(Chuaら、米国特許第9,062,043 B2号)。しかしながら、CK2阻害剤単独ではある特定のがんの種類に対して中程度の抗がん効果しか有さない場合がある。
【0003】
CK2阻害剤の複数のシリーズが、単独で及び他の抗増殖剤と組合せで細胞成長を阻害する際のそれらの活性について研究されている(米国特許第9,062,043 B2号、米国特許第7,956,064 B2号;公報WO 2010080170 A1及びWO 2011011199 A1)。新生物性障害を治療又は改善するために、CK2阻害剤を、細胞成長を阻止する抗がん剤、例えばアルキル化剤、代謝拮抗物質、ビンカアルカロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質及びチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせることがWO 2010080170 A1に開示されている。更に、WO 2010008170 A1はまた、新生物性障害を治療するためにCK2阻害剤を免疫抑制性マクロライドと組み合わせることも開示している。
【0004】
ある特定のCK2阻害剤はまた、新生物性障害及び/又は炎症性、自己免疫性若しくは感染性障害を治療又は改善するために、細胞成長経路に不可欠である分子に対する阻害剤、例えばAKT阻害剤、HDAC阻害剤、HSP90阻害剤、mTOR阻害剤、PBK/niTGR阻害剤、PDK阻害剤及び腫瘍/がん抗原を標的とする抗体と組み合わされることも示されている(WO 2011011199 A1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、腫瘍細胞に対する免疫応答を増強することができる新規化合物を同定する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、対象においてがん若しくは難治性がんを治療する及び/又はがん転移、再発若しくは進行を阻害する、又はがんと診断された対象において適切な期間にわたって生存の可能性を増加させる方法であって、抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤の組合せを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0007】
一実施形態では、抗がん剤は、(i)腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェンクエン酸塩(toremifine citrate)を含む、例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、並びに選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERD)、例えばフルベストラント;(ii)副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、ホルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾール及びアナストロゾール;(iii)抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)プロテインキナーゼ阻害剤、例えばMEK阻害剤、例えばコビメチニブ;(v)脂質キナーゼ阻害剤、例えばタセリシブ;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子、例えばPKC-アルファ、Raf及びH-Rasの発現を阻害するもの、例えばオブリメルセン;(vii)リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤及びHER2発現阻害剤;(viii)ワクチン、例えば遺伝子療法ワクチン、トポイソメラーゼ1阻害剤;(ix)血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体である。別の実施形態では、抗がん剤は治療用抗体、例えばアレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ、エムタンシン及びトシツモマブである。
【0008】
更なる実施形態では、抗がん剤は、限定されないが、シスプラチン、ゲムシタビン、カルボプラチン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、サリノスポラミドA、ボルテゾミブ、PS-519、オムラリド、シクロホスファミド、イホスファミド、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ドセタキセル、ドキソルビシン及びパクリタキセルを含む化学療法剤である。
【0009】
本発明の一部の実施形態では、CK2阻害剤は、式Iの構造を有する化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル
【化1】
(式中、
各Z1、Z2、Z3及びZ4は、N又はCR3であり、
Z5、Z6、Z7及びZ8の各々は、N又はCR6であり、
Z1~Z4のうちの0個、1個又は2個はNであり、Z5~Z8のうちの0個、1個又は2個はNであり、Z1~Z4及びZ5~Z8のうちの少なくとも1個は窒素原子であり、
各R3及び各R6は独立して、H、又は任意選択で置換されているC1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C12ヘテロアリール、C7~C12アリールアルキル若しくはC6~C12ヘテロアリールアルキル基であるか、或いは
各R6は独立して、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、OC(O)R、COR、NO2、又はカルボン酸、カルボン酸塩、エステル、カルボキサミド、テトラゾールから選択される極性置換基、又は
【化2】
からなる群から選択されるカルボキシバイオアイソスターであり、
各R3は独立して、ハロ、OR、NR2、NROR、NRNR2、SR、SOR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRCOOR、NRCOR、CN、OC(O)R、COR、上記に定義される極性置換基又はNO2であり、
少なくとも1個のR3は、極性置換基であり、
ここで、各Rは独立して、H、又はC1~C8アルキル、C2~C8ヘテロアルキル、C2~C8アルケニル、C2~C8ヘテロアルケニル、C2~C8アルキニル、C2~C8ヘテロアルキニル、C1~C8アシル、C2~C8ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~C12アリールアルキル若しくはC6~C12ヘテロアリールアルキルであり、
ここで、同じ原子上又は隣接する原子上の2個のRは連結して、任意選択で1個以上のN、O又はSを含有する3~8員環を形成することができ、
各R基、及び2個のR基を共に連結することによって形成される各環は、任意選択で、ハロ、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'2、OC(O)R'、COR'及びNO2から選択される1個以上の置換基で置換されており、
ここで、各R'は独立して、H、C1~C6アルキル、C2~C6ヘテロアルキル、C1~C6アシル、C2~C6ヘテロアシル、C6~C10アリール、C5~C10ヘテロアリール、C7~12アリールアルキル又はC6~12ヘテロアリールアルキルであり、これらの各々は、任意選択で、ハロ、C1~C4アルキル、C1~C4ヘテロアルキル、C1~C6アシル、C1~C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ及び=Oから選択される1個以上の基で置換されており、
ここで、2個のR'は連結して、任意選択でN、O及びSから選択される最大3個のヘテロ原子を含有する3~7員環を形成することができ、
R4は、H、又は任意選択で置換されている、C1~C6アルキル、C2~C6ヘテロアルキル及びC1~C6アシルからなる群から選択されるメンバーであり、
各R5は、任意選択で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C2~10ヘテロアルキル、C3~8炭素環及びC3~8複素環からなる群から選択されるメンバーであり、任意選択で、更なる任意選択で置換されている炭素環若しくは複素環と縮合しているか、又は
R5は、任意選択で置換されているC3~8炭素環若しくはC3~8複素環で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル若しくはC2~10ヘテロアルキルであり、
各-NR4R5において、R4及びR5はNと共に、任意選択で環員としてN、O及びSから選択される更なるヘテロ原子を含有してもよい、任意選択で置換されている3~8員環を形成してもよく、
但し、式(I)中の-NR4R5が-NHΦ(式中、Φは任意選択で置換されているフェニルである)である場合、
Z5~Z8の全てがCHであるか又はZ5~Z8のうちの1個がNであれば、Z1~Z4のうちの少なくとも1個はCR3であり、少なくとも1個のR3は非水素置換基でなければならず、又は
各R3がHであれば、Φは置換されていなければならず、
ここで、各R7は独立して、H、又は任意選択で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C2~10ヘテロアルキル、C3~8炭素環及びC3~8複素環からなる群から選択されるメンバーであり、任意選択で、更なる任意選択で置換されている炭素環若しくは複素環と縮合しているか、或いはR7は、任意選択で置換されているC3~8炭素環又はC3~8複素環で置換されている、C1~10アルキル、C2~10アルケニル又はC2~10ヘテロアルキルである)
である。
【0010】
本発明のある特定の好ましい実施形態では、CK2阻害剤はCX-4945である。
【0011】
一実施形態では、免疫療法剤は免疫チェックポイント阻害剤である。本発明の一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1のアンタゴニスト又はCTLA-4のアンタゴニストである。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL-1又はPD-1抗体である。一部の実施形態では、PD-1又はCTLA-4阻害剤には、限定されないが、ヒトPD-1を遮断するヒト化抗体、例えばランブロリズマブ(抗PD-1 Ab、商標名Keytruda)又はピジリズマブ(抗PD-1 Ab)、ニボルマブ(抗PD-1 Ab、商標名Opdivo)、チシリムマブ(抗CTLA-4 Ab)及びイピリムマブ(抗CTLA-4 Ab)が含まれる。
【0012】
一実施形態では、投与は前記がんに対する免疫記憶をもたらす。一実施形態では、投与は腫瘍微小環境内のT細胞及び活性化T細胞の数を増加させる。
【0013】
一実施形態では、抗がん剤及びCK2阻害剤の組合せは、同時に、逐次的に、断続的に又は周期的に投与され得る。
【0014】
がんを有する対象を治療する又は対象においてがん転移、再発若しくは進行を阻害するのに適切な治療プロトコールは、例えば少なくとも1回の投与サイクルを投与することを含む。
【0015】
一実施形態では、方法は少なくとも1回の投与サイクルを含み、サイクルは8週間以下の期間である。更なる実施形態では、サイクルは4週間の期間である。
【0016】
一実施形態では、投与サイクルは、対象に1回以上の第1の治療(例えば導入療法、例えば抗がん剤及びCK2阻害剤の組合せ)を、奏効(部分又は完全奏効)を達成するのに十分な量及びレジメンで投与することを含む。
【0017】
一実施形態では、投与サイクルは、CK2阻害剤を毎日及び抗がん剤を週1回投与することを含む。更なる投与では、投与サイクルは免疫チェックポイント阻害剤を週2回投与することを更に含む。
【0018】
一実施形態では、化学療法剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤は相乗的に有効な量である。
【0019】
一実施形態では、化学療法剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤は、対象においてがんに対する免疫応答を増加させるのに有効な用量で投与される。
【0020】
一部の実施形態では、CK2阻害剤は、対象の体重1kgあたり約25mg(約25mg/kg)~約2,000mg/kgの範囲の用量で毎日投与される。一部の実施形態では、1日用量は約50mg/kg~約200mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、CK2阻害剤は1日2回投与される。
【0021】
一部の実施形態では、抗がん剤は、対象の体重1kgあたり約1mg(約1mg/kg)~約20mg/kgの範囲の用量で投与される。一部の実施形態では、用量は約5mg/kg~約10mg/kgの範囲である。
【0022】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、対象の体重1kgあたり約1mg(約1mg/kg)~約20mg/kgの範囲の用量で投与される。一部の実施形態では、用量は約8mg/kg~約15mg/kgの範囲である。
【0023】
一部の実施形態では、がんには、限定されないが、皮膚がん(例えば黒色腫及び基底細胞癌)、膠芽細胞腫、肝臓がん(例えば肝細胞癌)、結腸直腸癌、膠芽細胞腫、胃がん、結腸直腸がん、食道がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん(NSCLC)及び小細胞肺がん)、膵臓がん、腎細胞癌、良性前立腺肥大、前立腺がん、卵巣がん、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がん、胆管癌、膀胱がん及び子宮がんが含まれる。
【0024】
本発明によれば、対象はまた、CAR-T療法により更に投与されてもよい。
【0025】
一部の実施形態では、治療有効用量の併用治療薬の投与は、対象におけるIL-6 mRNA又はタンパク質の発現を減少させる。
【0026】
一部の実施形態では、治療有効用量の併用治療薬の投与は、腫瘍に対する対象の免疫応答を増加させる。一部の実施形態では、増加した免疫応答は、治療した対象における腫瘍微小環境内の多くのT細胞数若しくは活性、全身的に若しくは腫瘍微小環境内のより少ないMDSC、又は腫瘍微小環境内のより少ないTAMとして測定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】卵巣腫瘍モデルにおける平均腫瘍体積を示す図である。
図2】結腸直腸がんモデルにおける平均腫瘍体積を示す図である。
図3】免疫能力のある同系マウスモデル、4T1におけるシスプラチン処置によるCX-4945の14日の抗腫瘍成長活性を示す図である。
図4】同系マウスモデル4T1におけるCX-4945及び/又はシスプラチンの処置後の腫瘍浸潤CD4及びCD8 T細胞を示す図である。
図5】ビヒクル、37.5mg/kgのCX-4945、10mg/kgの抗CTLA4、並びにCX-4945及び抗CTLA-4の組合せにより処置した対象のKaplan-Meier生存曲線を示す図である。
図6】ナイーブマウス群及びがんが治癒したマウス群の腫瘍成長曲線(経時的な平均腫瘍体積)を示す図である。
図7】担腫瘍マウスにおける平均体重変化の結果を示す図である。
図8】第1相臨床試験における対象のKaplan-Meier生存曲線を示す図であり、患者は用量変更又は用量減少をせずにシスプラチン及びゲムシタビンと併用して少なくとも1サイクルのCX-4945を受けている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態を記載する目的のみのためであり、限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【0029】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。一般に、以下に記載する本明細書で使用される命名法及び実験方法は当該技術分野において周知であり、一般に用いられているものである。
【0030】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語並びに本文脈で使用される同様の言及は単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈され得る。
【0031】
別段に示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメーターは、本出願によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。一般に、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、測定可能な値、例えば重量、時間、用量などを指す場合、特定の量から、一例では±15%又は±10%、別の例では±5%、別の例では±1%、更に別の例では±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動自体は開示された方法を実施するのに適切である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患を治療するために動物に投与される場合、疾患、障害又は状態に対してそのような治療を行うのに十分な量を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」及び「治療すること」という用語は、本明細書に記載される、疾患若しくは障害又はそれらの1つ以上の症状の発症を逆転する、軽減する、遅延させる、或いは疾患若しくは障害又はそれらの1つ以上の症状の進行を阻害することを指す。一部の実施形態では、治療は1つ以上の症状が発生した後に投与され得る。他の実施形態では、治療は症状の非存在下で投与され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に相応し、健全な医学的判断の範囲内で意図された使用に有効であることを意味する。
【0035】
「塩」は活性剤の誘導体を含み、活性剤はその酸又は塩基付加塩を生成することによって改変される。好ましくは、塩は薬学的に許容される塩である。そのような塩には、限定されないが、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される塩基付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩が含まれる。酸付加塩には、無機酸及び有機酸の塩が含まれる。適切な無機酸の代表的な例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸などが含まれる。適切な有機酸の代表的な例には、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩などが含まれる。塩基付加塩には、限定されないが、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、例えばリシン及びアルギニンジシクロヘキシルアミンなどが含まれる。金属塩の例には、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが含まれる。アンモニウム塩及びアルキル化アンモニウム塩の例には、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが含まれる。有機塩基の例には、リシン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミン、コリンなどが含まれる。薬学的に許容される塩及びそれらの製剤の調製のための標準的な方法は当該技術分野において周知であり、例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、A. Gennaro編、第20版、Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、PAを含む様々な参考文献に開示されている。
【0036】
本明細書で使用される場合、「相乗的に有効な」という用語は、組合せで使用される場合の2つ以上の治療剤の複合効果が、個々に使用される場合のそれらの相加効果よりも大きいことを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」又は「患者」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「免疫療法剤」という用語は、望ましい治療効果を与えるために人の免疫応答をモジュレートする化学物質及び生物製剤を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「免疫抑制がん」又は「免疫抑制性がん」という用語は、対象における全身的な又は腫瘍微小環境内の免疫抑制特性と関連するがんである。免疫抑制特性は以下のいずれか1つを含む:高調節性T細胞、高骨髄由来抑制細胞(MDSC)、高腫瘍関連マクロファージ(TAM)、CD4又はCD8 T細胞の少ない存在又は活性、及び抗原提示細胞(APC)の少ない活性。
【0040】
腫瘍微小環境は、周囲の血管、造血前駆体、免疫細胞、線維芽細胞、細胞外マトリクス及びシグナル伝達分子を含む、腫瘍が存在する細胞環境である。免疫細胞は免疫機能に関連するリンパ球及び他の造血細胞(例えば抗原提示細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、単球及び骨髄由来抑制細胞)を含む。シグナル伝達分子は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子並びに細胞活性及び組成に影響を及ぼす際に機能する他の可溶性タンパク質を含む。
【0041】
CK2阻害剤は、免疫チェックポイントモジュレーター(ICM)、例えば抗PD1抗体又は抗細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)抗体と相乗的に作用することが示されている。PD-1及びCTLA4の両方はT細胞活性化に不可欠である共刺激シグナル伝達を抑制することが知られている。しかしながら、そのようなCK2阻害剤は、単独で利用した場合、効果的な腫瘍成長阻害(TGI)特性を有さない(WO 2017/070137 A1)。更に、一連のCK2阻害剤、即ちBMS-211、BMS-699及びBMS-595は、腫瘍特異的免疫応答の負の調節因子である、多形核MDSC(PMN-MDSC)及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)を減少させることが示され、これは免疫チェックポイント阻害剤とのそれらの相乗効果に寄与する可能性が高い(Hashimotoら、Cancer Res 78: 5644-5655)。
【0042】
T細胞における抑制シグナル伝達分子、例えばPD-1又はCTLA-4に単に拮抗するだけでは、T細胞の腫瘍特異的細胞傷害活性を介して腫瘍成長を制御するのに不十分であるという事実は、腫瘍微小環境内の更なる免疫構成成分が、腫瘍がT細胞媒介性殺傷を回避するのに役立つ免疫抑制機構に寄与し得ることを示す。
【0043】
したがって、本開示は、対象においてがん若しくは難治性がん(refractory caner)を治療する及び/又はがん転移、再発若しくは進行を阻害する、又はがんと診断された対象において適切な期間にわたって生存の可能性を増加させる方法であって、抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤の組合せを対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0044】
本開示に使用される抗がん剤は化学療法剤であってもよい。化学療法剤には、従来の化学療法試薬、例えばアルキル化剤、代謝拮抗物質、植物性アルカロイド、抗生物質及びその他の化合物、例えばシスプラチナム、CDDP、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、ブレオマイシン及びヒドロキシウレアが含まれる。化学療法薬にはまた、プロテアソーム阻害剤、例えばサリノスポラミド(例えばサリノスポラミドA)、ボルテゾミブ、PS-519及びオムラリドが含まれる。最も一般的に使用される種類の抗がん剤には、DNAアルキル化剤(例えばシクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、葉酸アンタゴニスト及び5-フルオロウラシル、ピリミジンアンタゴニスト)、微小管撹乱物質(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNAインターカレーター(例えばドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)及びホルモン療法(例えばタモキシフェン、フルタミド)が含まれる。臨床試験において評価されている他の白金配位錯体には、カルボプラチン、テトラプラチン、オルミプラチン(ormiplatin)、イプロプラチン及びオキサリプラチンが含まれる(Kelland、Crit. Rev. Oncol. Hematol、15: 191-219 (1993)を参照のこと)。
【0045】
アルキル化剤には、(a)アルキル化様白金系化学療法剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン及び(SP-4-3)-(シス)-アミンジクロロ-[2-メチルピリジン]白金(II);(b)スルホン酸アルキル、例えばブスルファン;(c)エチレンイミン及びメチルメラミン誘導体、例えばアルトレタミン及びチオテパ;(d)ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、トロホサミド、プレドニムスチン、メルファラン及びウラムスチン;(e)ニトロソウレア、例えばカルムスチン、ロムスチン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン及びストレプトゾシン;(f)トリアゼン及びイミダゾテトラジン、例えばダカルバジン、プロカルバジン、テモゾラミド及びテモゾロミドが含まれる。
【0046】
本発明のある特定の実施形態によれば、化学療法剤は、シスプラチン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、サリノスポラミドA、ボルテゾミブ、PS-519、オムラリド、シクロホスファミド、イホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン及びパクリタキセルからなる群から選択され得る。
【0047】
CK2阻害剤は抗がん及び抗炎症の可能性を提供することができる。CK2阻害剤は一般に3つのカテゴリーに分類される:(1)CK2の調節サブユニットを標的とする阻害剤(例えば遺伝的に選択されたペプチドアプタマー);(2)CK2の触媒活性の阻害剤(例えばキノベン、TBB、DMAT、IQA);及び(3)多くの場合、CK2サブユニット界面に結合する分子であり、そのサブユニットの高親和性相互作用を阻害するCK2ホロ酵素の撹乱物質。各クラスのCK2阻害剤は任意の種類の分子、例えば小分子、機能性核酸、抗体又はペプチド模倣物などであってもよい。
【0048】
CK2触媒サブユニットは構成的活性を有する。しかしながら、真核細胞では、CK2βサブユニットは四量体CK2複合体の中心的構成成分であるだけでなく、CK2基質の動員にも関与する。したがって、生細胞において観察されたCK2サブユニットの動的相互作用はCK2シグナル伝達経路において重要な役割を果たし得る。この相互作用を特異的に標的とする薬物はCK2触媒活性の一般的な阻害剤として作用する薬物よりも副作用を有する可能性が低い。
【0049】
CK2阻害剤は、フラボノイド(例えばアピゲニン)、ヒドロキシアントラキノン/キサンテノンの誘導体(例えばエモジン)、ヒドロキシクマリンの誘導体(例えばDBC)、テトラブロモトリアゾール/イミダゾールの誘導体(例えばDRB、TBB、DMAT、TBCA、TBBz)及びインドロキナゾリンの誘導体(例えばIQA)を含む、多種多様な化学物質からなる。
【0050】
ある特定の実施形態では、CK2阻害剤は本明細書に記載される式Iによって表される化合物である。本発明のある特定の実施形態によれば、CK2阻害剤は、4,5,6,7-テトラブロモベンゾトリアゾール(TBB)、キナリザリン、ヘマテイン、テトラブロモケイ皮酸(TBCA)、CIGB-300、CX-4945、5,6-ジクロロ-1-ベータ-D-リボフラノシルベンゾイミダゾール(DRB)、アピゲニン、2-ジメチルアミノ-4,5,6,7-テトラブロモ-1H-ベンゾイミダゾール(DMAT)、エモジン、5-オキソ-5,6-ジヒドロ-インドロ(1,2-a)キナゾリン-7-イル]酢酸(IQA)、CX-4945及び6,7-ジクロロ-1,4-ジヒドロ-8-ヒドロキシ-4-[(4-メチルフェニルアミノ)メチレン]ジベンゾ[b,d]フラン-3(2H)-オン(TF)からなる群から選択され得る。
【0051】
特に、CK2阻害剤は以下の構造を有するCX-4945(シルミタセルチブ)である:
【0052】
【化3】
【0053】
免疫療法剤は、がんの腫瘍微小環境内の1つ以上のサイトカインの生理学的レベルをモジュレートすることができる薬剤である。一部の実施形態では、免疫療法剤は腫瘍細胞に対して細胞傷害効果を有する少なくとも1つの内因性サイトカイン、例えばTNF-α又はIFN-γの局所産生を誘導する。一部の実施形態では、免疫療法剤は、T細胞認識及びがん細胞の破壊を妨げる内因性サイトカイン、例えばIL-10、TGFβ又はVEGFの産生を阻害する。他の実施形態では、免疫療法剤は、免疫細胞、例えば樹状細胞、エフェクターT細胞(例えばCD8+リンパ球)及びナチュラルキラー(NK)細胞を腫瘍細胞に誘引する1つ以上のケモカインの腫瘍細胞産生を誘導することができる薬剤である。一部の実施形態では、ケモカインには、限定されないが、CCL19、CCL20、CCL21、CX3CL1、CXCL9及びCXCL10が含まれる。
【0054】
他の実施形態では、免疫療法剤は免疫チェックポイント遮断、例えばPD-1遮断及びCTLA-4遮断を誘導する薬剤である。免疫チェックポイント阻害剤はヒトにおいていくらかの抗腫瘍活性を提供することが知られており、この部分的な抗腫瘍活性は治療した対象のほんの一部においてのみ観察される。免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1又はCTLA-4経路を阻害する抑制性受容体のアンタゴニスト、例えば抗PD-1、抗PD-L1若しくは抗CTLA-4抗体又は阻害剤を含む。PD-1又はPD-L1阻害剤の例には、限定されないが、ヒトPD-1を遮断するヒト化抗体、例えばランブロリズマブ(抗PD-1 Ab、商標名Keytruda)又はピジリズマブ(抗PD-1 Ab)、バベンチオ(抗PD-L1 Ab、アベルマブ)、イミフィンジ(抗PD-L1 Ab、デュルバルマブ)及びテセントリク(抗PD-L1 Ab、アテゾリズマブ)並びに完全なヒト抗体、例えばニボルマブ(抗PD-1 Ab、商標名Opdivo)が含まれる。他のPD-1阻害剤には、限定されないが、B7-DC-Ig又はAMP-244としても知られているPD-L2 Fc融合タンパク質を含む可溶性PD-1リガンドの提示並びに療法に使用するために現在調査中及び/又は開発中の他のPD-1阻害剤が含まれ得る。更に、免疫チェックポイント阻害剤には、限定されないが、PD-L1を遮断するヒト化抗体又は完全なヒト抗体、例えばデュルバルマブ及びMIH1並びに現在調査中の他のPD-L1阻害剤が含まれ得る。
【0055】
本明細書に記載される活性成分は、この分野で一般に使用される賦形剤、即ち医薬賦形剤、医薬担体などを使用して、一般に使用される方法によって調製された医薬組成物であり得る。
【0056】
経口投与用の固体組成物として、錠剤、散剤、顆粒剤などが使用される。そのような固体組成物において、1つ又は2つ又はそれ以上の種類の活性成分が少なくとも1つの不活性賦形剤と混合される。組成物は、不活性添加剤、例えば、一般に使用される方法によって滑沢剤、崩壊剤、安定剤、溶解剤などを含有してもよい。
【0057】
経口投与用の液体組成物は、薬学的に許容される、エマルション、溶液調製物、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤などを含み、一般的に使用される不活性希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。液体組成物は、不活性希釈剤に加えて、アジュバント、例えば可溶化剤、湿潤剤及び懸濁剤、甘味剤、香料、芳香剤又は保存剤を含有してもよい。
【0058】
非経口投与用の注射は、滅菌水又は非水溶液調製物、懸濁剤又はエマルションを含む。水性溶媒として、例えば注射用蒸留水又は生理食塩水が含まれる。非水性溶媒として、例えばアルコール、例えばエタノールが含まれる。そのような組成物は、等張化剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤又は溶解剤を更に含んでもよい。これらは、例えば細菌保持フィルターによる濾過、殺菌剤の混合又は照射によって滅菌される。更に、これらはまた、滅菌固体組成物が調製され、使用される前に注射用の滅菌水又は滅菌溶媒に溶解又は懸濁される方式で使用されてもよい。
【0059】
経粘膜剤、例えば経鼻剤などは、固体、液体又は半固体形態で使用され、関連分野で公知の方法に従って調製され得る。例えば、公知の賦形剤、pH調整剤、保存剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤、増粘剤などは、適切に添加され得る。投与では、吸入又は吹送のために適切なデバイスを使用することが可能である。
【0060】
共投与は、同じ又は異なる剤形での、抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤の同時投与又は治療剤の別個の投与を含んでもよい。例えば、抗がん剤、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤は同時に投与されてもよい。或いは、抗がん剤はCK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤と組合せで投与されてもよく、CK2阻害剤及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤と組合せで投与され得る抗がん剤は別個の投与のために製剤化され、同時に又は逐次的に投与される。
【0061】
以下の実施例は本開示のある特定の態様及び実施形態の更に詳細な説明を提供するが、それらは単に例示であり、決して特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0062】
[実施例]
【0063】
[実施例1]
CX-4945はDNA損傷剤ゲムシタビンとのin vivo相乗性を示す
A2780卵巣腫瘍モデルにおいて、単一薬剤としての各々の投与と比較して、エンドポイントまでの時間の大幅な増加が、たった4回の投薬の後、ゲムシタビン(Gem)(120mg/kg)及びCX-4945(25mg/kg又は100mg/kg)の組合せで実証された(図1)。Colo-205結腸直腸がんモデルは各個々の薬剤単独に対して耐性がある(図2)。しかしながら、ゲムシタビン及びCX-4945の組合せは腫瘍成長を大幅に減少させ、この組合せが、ゲムシタビン単独が承認されていない適応症において効果的であり得ることを示唆している。
【0064】
[実施例2]
がん動物モデルにおける医薬組合せによる抗腫瘍効果の増強作用
表1は、本発明に記載される医薬組合せにより、in vivoで相乗的抗新生物効果が得られることを示す。A2780卵巣がん異種移植片へのi.v.注射による60mg/kgのゲムシタビン及び経口投与による100mg/kgのCX-4945の使用は良好な耐容性(tolerated)を示し、ゲムシタビン単独と比較して抗腫瘍活性を大幅に増強した。エンドポイントまでの時間(TTE)分析により、ゲムシタビン、CX-4945及び両方の薬剤の組合せについてエンドポイントまでの時間の大幅な遅延が示された。
【0065】
【表1】
【0066】
[実施例3]
CX-4945は、腫瘍においてT細胞を大幅に増加させ、in vivoで化学療法剤と共に腫瘍成長を相乗的に阻害する
腫瘍成長阻害及びT細胞活性の有効性研究を、免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD1、抗PD-L1及び抗CTLA4の処置に対して耐性があることが知られている免疫能力のある同系マウスモデル、4T1において行った。T細胞共刺激シグナル伝達をモジュレートするこれらのアンタゴニストに対する耐性は高い免疫抑制腫瘍微小環境を示す。
【0067】
この一連の研究は6~8週齢のBalb/Cマウスにおいて行った。乳がん細胞4T1を、0.1ml PBS中の3×105細胞を用いてマウスの右脇腹に皮下注射した。マウスを、平均腫瘍サイズがおよそ80~120mm3に達したときに、処置のためにランダム化した。処置を表1に記載した用量及びスケジュールでのCX-4945及び/又はシスプラチンにより投与した。CX-4945は25mM Na2HPO4溶液(pH=9.2)中で製剤化し、強制経口投与により投与する。シスプラチンは生理食塩水緩衝液に溶解し、腹腔内注射により投与した。腫瘍を、電子キャリパーを用いて2次元的(幅×長さ)に測定し、腫瘍体積を、式V=(L×W×W)/2(式中、Vは腫瘍体積であり、Lは腫瘍長さ(最も長い腫瘍の寸法)であり、Wは腫瘍幅(Lに対して直角である最も長い腫瘍の寸法)である)により計算した。マウスを週2回モニターし、腫瘍サイズがおよそ800~1000mm3に達したときに、フローサイトメトリー分析のために安楽死させた。
【0068】
【表2】
【0069】
抗腫瘍活性を、安楽死させた時点での腫瘍成長阻害%(%TGI)として測定した。TGIは、%TGI=100×(1-T/C)として計算した。T及びCはそれぞれ所与の日における処置及び対照群の平均腫瘍体積であった。14日の抗腫瘍活性を表2に示し、腫瘍成長曲線を図3に示す。要約すると、CX-4945は白金系DNA損傷剤であるシスプラチンと共に抗腫瘍成長阻害における相乗効果を示す。
【0070】
免疫細胞の組成を、腫瘍が800~1000mm3に達した日にマルチカラーフローサイトメトリー(FACS)を用いて分析した。腫瘍を溶解培地(Miltenyi、CAT#130-096-730)で処理し、FACS緩衝液に再懸濁した。T細胞浸潤を腫瘍試料中のT細胞の数を調べることによって測定した。CD4 T細胞、CD8 T細胞、活性化CD4 T細胞及び活性化CD8 T細胞を、それぞれCD45+CD3+CD4+、CD45+CD3+CD8+、CD45+CD3+CD4+CD69+及びCD45+CD3+CD8+CD69+として細胞表面マーカーによって同定した。細胞の絶対数を、計数用ビーズ(eBiosciences CAT# 01-1234-42)を用いた細胞の正規化した数及び各腫瘍試料の重量によって測定した。腫瘍浸潤T細胞の絶対数を、絶対数(細胞/mg)=[(細胞数×eBead体積)/(eBead数×腫瘍重量)]×eBead濃度として式によって計算した。
【0071】
CX-4945を用いた免疫能力のあるマウスの処置は腫瘍微小環境内のMDSCの数を全身的又は局所的に減少させない。更に、CX-4945及びシスプラチンを用いた免疫能力のあるマウスの処置は腫瘍微小環境内のCD4及びCD8 T細胞の両方を予想外に増加させる。特に、CX-4945及びシスプラチンの組合せは腫瘍微小環境内のT細胞及び活性化T細胞の数の増加において相乗効果を示した(図4)。
【0072】
CX-4945及びシスプラチンの組合せの腫瘍成長阻害は腫瘍微小環境内の細胞傷害性T細胞活性と関連していた。処置と共に抗CD8抗体を投与することによってCD8 T細胞を枯渇させると、抗腫瘍成長活性は消失した。
【0073】
[実施例4]
CX-4945と抗CTL4との組合せはがんを有する対象における生存の可能性を大幅に増加させる
効果的に腫瘍を殺傷する際のT細胞活性を増強するCX-4945の能力も、抗PD1又は抗CTLA4処置に対して難治性を実証している同じ同系モデルである4T1において試験した。この一連の研究は6~8週齢のBalb/Cマウスにおいて行った。乳がん細胞4T1を、0.1ml PBS中の3×105細胞を用いてマウスの右脇腹に皮下注射した。マウスを、平均腫瘍サイズがおよそ80~120mm3に達したときに、処置のためにランダム化した。次いでマウスを、強制経口投与による37.5mg/kgのCX-4945及び/又は腹腔内注射による10mg/kgの抗CTLA4抗体を用いて処置した。Kaplan-Meier生存曲線を生成し、Log Rank検定を実施した。3000m3の腫瘍が成長したマウスを腫瘍成長エンドポイントに達したとみなした。CX-4945及び抗CTLA4の組合せは担腫瘍マウスの全生存を大幅に改善し(図5)、そのような組合せにより処置した群の28.5%が完全寛解に達した。
【0074】
有効性フェーズ(4T-1)にもたらされた生存マウス(即ち、がんが治癒したマウス)(腫瘍完全退縮)を、マウスが同じがん細胞系に対して免疫を発生させることができるかどうかを確認するために同じがん細胞系である4T-1により再チャレンジした。腫瘍細胞接種後、マウス(ナイーブマウス及びがんが治癒したマウス)を罹患率及び死亡率について毎日チェックした。定期的なモニタリング時に、動物を、腫瘍成長及び処置の挙動に対するあらゆる影響、例えば運動、食物及び水の消費、体重増加/減少(体重は週2回測定した)並びに任意の他の異常についてチェックした。死亡率及び観察した臨床兆候を個々の動物について記録した。異なる群の腫瘍成長曲線(経時的な平均腫瘍体積)を図6に示した。担腫瘍マウスにおける平均体重変化の結果を図7に示した。その結果によって、CX4945及び抗マウスCTLA-4抗体による初回処置からのがんが治癒したマウスにおいて、再チャレンジ後に4T-1腫瘍が発生することができないことが示され、薬物処置後の獲得免疫が示唆された。結論として、CX-4945及び抗CTLA4抗体の組合せにより処置した生存マウスは、4T1腫瘍細胞により再チャレンジした場合、腫瘍成長阻害において優れた活性を示し、免疫記憶が首尾良く誘導されることを示した。
【0075】
要約すると、併用CX-4945レジメンによって誘導された腫瘍微小環境内の活性化したT細胞活性及び免疫記憶は腫瘍を有する対象の長期生存に寄与する。
【0076】
[実施例5]
臨床試験結果の比較
ABC-02試験により208人の患者のデータを収集し、そのうちの138人の患者はゲムシタビン及びシスプラチンによる一次化学療法を受けていた(Juan Valleら、N. Engl. J. Med. 362:1273-1281 (2010))。以下の表3を参照のこと。
【0077】
【表3】
【0078】
比較すると、胆管癌を有する患者のフロントライン処置におけるゲムシタビン及びシスプラチンとの組合せでのCX-4945の第I/II相研究の結果を以下の表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
[実施例6]
CX-4945とシスプラチン及びゲムシタビンとの組合せによる治療は胆管癌を有する対象の全生存を増加させる
胆管癌患者におけるゲムシタビン及びシスプラチンとの組合せによるCX-4945の第I相の非盲検、多施設、複数回投薬、用量漸増研究において、切除不能な胆管癌を有する50人の患者に、21日サイクルで与えたゲムシタビン及びシスプラチンと併用してCX-4945を投与した。CX-4945を、1及び8日目の静脈内シスプラチン25mg/m2及びゲムシタビン1,000mg/m2の投与前後の、0、1及び2日目、並びに7、8及び9日目に1日2回経口投与した。疾患進行又は許容されない毒性がない場合は、治療を21日毎に繰り返した。
【0081】
50人の患者のうち、36人の患者は用量変更又は用量減少をせずに少なくとも1サイクルの研究薬物を受け、改変された治療意図(modified intension to treat)(mITT)集団と指定した。この研究におけるmITT集団の全生存を、切除不能な再発性又は転移性胆道癌(肝内又は肝外胆管癌、胆嚢がん又は膨大部癌)を有する患者における拡大した第3相ランダム化対照試験である研究ABC-02と比較した。mITT集団の全生存中央値は20.8カ月であり(95%CI:13.8-NE)、一方、ABC-02研究の中央全生存中央値は11.7カ月であり(95%CI:9.5~14.3)、シスプラチン及びゲムシタビンとの組合せでCX-4945により治療した胆管癌患者の生存の可能性が増加していることを示す。mITT集団のKaplan-Meier生存曲線を図8に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】