(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ジルコプランによる神経疾患治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20220112BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220112BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220112BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20220112BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220112BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20220112BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20220112BHJP
A61K 31/64 20060101ALI20220112BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220112BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61K38/10
A61P21/04
A61K9/08
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/4425
A61K47/02
A61P37/06
A61K31/52
A61K38/13
A61K31/519
A61K31/706
A61K31/64
A61K39/395 N
G01N33/53 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547053
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 US2019057316
(87)【国際公開番号】W WO2020086506
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516372114
【氏名又は名称】ラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RA PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】デューダ、ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ファルザネ-ファー、ラミン
(72)【発明者】
【氏名】マー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ナンチュン
(72)【発明者】
【氏名】サッカベリー、エバン
(72)【発明者】
【氏名】リカルド、アロンソ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB13
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4C076DD26Z
4C084AA01
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4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
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4C086AA01
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4C086BC17
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4C086MA05
4C086MA17
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZB08
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、ジルコプラン(RA101495)により、全身型重症筋無力症を含む重症筋無力症を治療する方法に関する。本開示は、ジルコプラン投与のための装置及びキット並びに補体阻害剤治療有効性を評価する方法も特許請求する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコプランを対象に投与することを含む、重症筋無力症(MG)を治療する方法。
【請求項2】
前記MGが全身型MG(gMG)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジルコプラン投与が皮下(SC)投与を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ジルコプランが、約0.1mg/kg(mgジルコプラン/kg対象体重)~約0.6mg/kgの投与量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ジルコプラン投与が自己投与を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジルコプラン投与がプレフィルドシリンジの使用を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリンジが29ゲージニードルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ジルコプラン投与が、自己投与装置を使用する自己投与を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記自己投与装置が、請求項6又は7に記載のプレフィルドシリンジを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プレフィルドシリンジがガラスシリンジである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プレフィルドシリンジが、少なくとも1mlの最大充填容積を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記自己投与装置がジルコプラン溶液を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ジルコプラン溶液が水溶液である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ジルコプラン溶液が保存剤不含である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記自己投与装置が、約0.15ml~約0.81mlのジルコプラン溶液体積を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象がジルコプラン投与に先立ちスクリーニングされる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記スクリーニングが定量的重症筋無力症(QMG)スコアの算定を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
対象QMGスコアが12以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、MG療法を受けない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤療法を受けない、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
4以上のQMG試験項目が2以上のスコアを達成する、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が18~85歳である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
スクリーニングが、以前にgMGであると診断された対象を選択することを含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記gMG診断が米国重症筋無力症財団(Myasthenia Gravis Foundation of America)(MGFA)基準に従ってなされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
スクリーニングが、アセチルコリンエステラーゼ受容体(AChR)自己抗体レベルの算定を含む、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
スクリーニングが、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、対象により受け取られるコルチコステロイド投与量に変化がないことを確認することを含む、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
スクリーニングが、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、対象免疫抑制療法に変化がないことを確認することを含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
スクリーニングが血清妊娠試験及び/又は尿妊娠試験を含む、請求項16~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ジルコプラン投与が連日投与を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が標準治療gMG療法を同時に受ける、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記標準治療gMG療法が、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び免疫抑制薬治療の1つ以上を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象がMG特徴に関して評価又はモニタリングされ、前記MG特徴が、QMGスコア、重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアの1つ以上を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
対象評価又はモニタリングが、対象ジルコプラン治療の間又はその後に、前記MG特徴の変化を算定することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
被治療対象QMGスコアが減少する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
被治療対象QMGスコアが少なくとも3ポイント減少する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
被治療対象QMGスコアが、12週間の治療で又はその前に減少する、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
被治療対象QMGスコアが、ジルコプラン治療の過程でモニタリングされる、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、ジルコプラン治療の過程でコリンエステラーゼ阻害剤治療を受けている、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
コリンエステラーゼ阻害剤治療が、被治療対象QMGスコアの算定に先立つ少なくとも10時間、保留される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記MG特徴の前記変化が、ベースラインMGコンポジットスコアからの少なくとも3ポイントのMGコンポジットスコアの変化を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ベースラインMGコンポジットスコアからのMGコンポジットスコアの前記変化が、12週間のジルコプラン治療で又はその前に起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記MG特徴の前記変化が、ベースラインMG-ADLスコアからの少なくとも2ポイントのMG-ADLスコアの変化を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
ベースラインMG-ADLスコアからのMG-ADLスコアの前記変化が、12週間のジルコプラン治療で又はその前に起こる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ジルコプランが溶液中にあり、前記溶液がリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ジルコプランが溶液中にあり、前記溶液が約4mg/ml~約200mg/mlジルコプランを含む、請求項1~44に記載の方法。
【請求項46】
前記溶液が約40mg/mlジルコプランを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
対象ジルコプラン血漿レベルが、治療の最初の日に最大濃度(C
max)に達する、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも90%溶血阻害が対象血清中で達成され、任意選択で、溶血阻害がヒツジ赤血球(sRBC)溶血アッセイにより測定される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
ジルコプランを含むシリンジ;及び
使用説明書
を含むキット。
【請求項50】
前記シリンジが自己注射装置を構成する、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記自己注射装置が、BDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)自己投与装置を含む、請求項49又は50に記載のキット。
【請求項52】
アルコールワイプを含む、請求項49~51のいずれか一項に記載のキット。
【請求項53】
創傷被覆材を含む、請求項49~52のいずれか一項に記載のキット。
【請求項54】
廃棄容器を含む、請求項49~53のいずれか一項に記載のキット。
【請求項55】
前記ジルコプランが溶液中にある、請求項49~54のいずれか一項に記載のキット。
【請求項56】
前記溶液が水溶液である、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記溶液がリン酸緩衝食塩水を含む、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記溶液が約4mg/ml~約200mg/mlのジルコプランを含む、請求項55~57のいずれか一項に記載のキット。
【請求項59】
前記溶液が約40mg/mlジルコプランを含む、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
前記溶液が保存剤を含む、請求項55~59のいずれか一項に記載のキット。
【請求項61】
MGの治療を評価する方法であって、
評価候補を、少なくとも1つの評価参加基準に関してスクリーニングすること;
評価参加者を選択すること;
前記評価参加者にMGの前記治療を投与すること;及び
少なくとも1つの有効性評価項目を算定すること;
を含み、任意選択で、MGの前記治療が請求項1~48及び95~112のいずれか一項に従うものである、評価方法。
【請求項62】
前記少なくとも1つの評価参加基準がMG診断を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記MG診断がgMG診断である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記gMG診断がMGFA基準に従ってなされる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの評価参加基準がQMGスコアを含む、請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
評価参加者選択が12以上の評価候補QMGスコアを要する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記評価候補が、スクリーニングに先立ち、少なくとも1つの代替MG治療を受けていた、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
評価候補QMGスコアが、前記少なくとも1つの代替MG治療を受けた少なくとも10時間後に算定される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1つの代替MG治療がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤投与を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
評価参加者選択が、4つ以上のQMG試験項目で2以上のスコアを要する、請求項65~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つの評価参加基準が評価候補年齢を含む、請求項61~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
評価参加者選択が、18~85歳の評価候補年齢を要する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1つの評価参加基準が、AChR自己抗体レベル及び/又は抗筋特異的キナーゼ自己抗体レベルを含む、請求項61~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記少なくとも1つの評価参加基準が、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、評価候補により受け取られたコルチコステロイド投与量に変化がないことを含む、請求項61~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記少なくとも1つの評価参加基準が、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、評価候補免疫抑制療法に変化がないことを含む、請求項61~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記少なくとも1つの評価参加基準が、前記評価候補が妊娠していないということの確認を含む、請求項61~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
スクリーニングが血清妊娠試験及び/又は尿妊娠試験を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
MGの前記治療が評価期間にわたって投与される、請求項61~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記評価期間が約1日~約12週間である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記評価期間が約12週間又はそれ以上である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記評価参加者が、前記評価期間にわたって標準治療gMG療法を受ける、請求項78~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記標準治療gMG療法が、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び免疫抑制薬治療の1つ以上を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記少なくとも1つの有効性評価項目が、被治療対象QMGスコア減少を含む、請求項61~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
被治療対象QMGスコア減少が少なくとも3ポイントである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記評価参加者が、前記評価期間の間にコリンエステラーゼ阻害剤治療を受ける、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項86】
前記コリンエステラーゼ阻害剤治療が、被治療対象QMGスコアの算定に先立つ少なくとも10時間、保留される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも1つの有効性評価項目が、MG-ADLスコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアの1つ以上に関するベースラインスコアの変化を含む、請求項61~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記少なくとも1つの有効性評価項目が、少なくとも3ポイントのベースラインMGコンポジットスコアの変化を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
ベースラインMGコンポジットスコアの前記変化が、12週間の前記治療で又はその前に起こる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記少なくとも1つの有効性評価項目が、少なくとも2ポイントのベースラインMG-ADLスコアの変化を含む、請求項87~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
ベースラインMG-ADLスコアの前記変化が、12週間のMGの前記治療で又はその前に起こる、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記少なくとも1つの有効性評価項目を算定することが一式の算定を含み、前記一式の算定が、(1)評価参加者MG-QOL15rスコアを算定すること;(2)評価参加者MG-ADLスコアを算定すること;(3)評価参加者QMGスコアを算定すること;及び(4)評価参加者MGコンポジットスコアを算定することの順序で実施される、請求項61~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記一式の算定が、MGの前記治療を投与した後で、1つ以上の場合に実施される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
MGの前記治療を投与した後の前記1つ以上の場合が、MGの前記治療を投与した1週間後、2週間後、4週間後、8週間後、及び/又は12週間後を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
ジルコプランが、約0.1mg/kg~約0.3mg/kgの1日量で投与される、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
ジルコプランが0.3mg/kgの投与量で投与される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
対象QMGスコア及び/又はMG-ADLスコアが減少する、請求項1~48、95、及び96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
QMGスコアが、8週間の治療により3ポイント以上減少する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
MG-ADLスコアが、8週間の治療により2ポイント以上減少する、請求項97又は98に記載の方法。
【請求項100】
救援療法を必要とするリスクが減少する、請求項1~48及び95~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
投与が、MGの重大又は危機的段階に先立って起こるMG疾患の病期で実施される、請求項1~48及び95~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
ジルコプラン投与が、対象症状発現の減少をもたらす、請求項1~48及び95~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記対象症状発現の減少が、エクリズマブ投与と関連する対象症状発現の減少を超える、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
対象神経筋接合部(NMJ)膜侵襲複合体(MAC)ポア形成が阻害される、請求項1~48及び95~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記NMJでの安全係数が改善される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
ジルコプランが治療剤と組み合わせて投与される、請求項1~48及び95~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記治療剤が免疫抑制剤を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記免疫抑制剤が、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、タクロリムス、シクロホスファミド、及びリツキシマブの1つ以上から選択される化合物を含む、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記治療剤が、自己抗体介在性組織破壊の阻害剤を含む、請求項106~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
自己抗体介在性組織破壊の前記阻害剤が、胎児性Fc受容体(FcRN)阻害剤を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記FcRN阻害剤の投与が静脈内免疫グロブリン(IVIG)治療を含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
ジルコプラン及び前記治療剤が重複するレジメンで投与される、請求項106~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
MGの治療用に調製された投与装置であって、
シリンジ及びニードルを含む自己注射装置;並びに
所定体積の医薬組成物
を含み、前記医薬組成物が水溶液中に40mg/mL濃度のジルコプランを含み、前記所定体積が、対象体重のkgあたり0.3mgの投与量での対象へのジルコプラン投与を促進するように調節される、投与装置。
【請求項114】
前記自己注射装置がBDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)自己投与装置を含む、請求項113に記載の投与装置。
【請求項115】
MGの治療用に調製されたキットであって、
請求項113又は114に記載の投与装置に記載の2つ以上の投与装置を含む一式の投与装置;並びに
前記キットの使用説明書
を含むキット。
【請求項116】
アルコールワイプを含む、請求項115に記載のキット。
【請求項117】
創傷被覆材を含む、請求項115又は116に記載のキット。
【請求項118】
廃棄容器を含む、請求項115~117のいずれか一項に記載のキット。
【請求項119】
前記医薬組成物が保存剤不含である、請求項115~118のいずれか一項に記載のキット。
【請求項120】
前記キットが室温での保存用に調製されている、請求項115~119のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補体活性を阻害することによる神経障害治療に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物免疫応答は、獲得免疫及び自然免疫成分から構成されている。獲得免疫応答は特定の病原体に選択的であり、応答が遅いが、自然免疫応答の成分は幅広い範囲の病原体を認識し、感染すると迅速に応答する。自然免疫応答のそのような1成分は補体系である。
【0003】
補体系は、主として肝臓により合成される、約20の循環している補体成分タンパク質を含む。この特定の免疫応答の成分は、それらが細菌の破壊において抗体応答を補ったという観察により、最初に「補体」と名付けられた。これらのタンパク質は、感染に応答した活性化の前には不活性な形態のままである。活性化は、病原体認識により開始されて、病原体破壊に至るタンパク質分解切断の経路により起こる。3種のそのような経路が補体系において知られており、古典経路、レクチン経路、及び代替経路と称される。古典経路は、IgG又はIgM分子が病原体の表面に結合するときに活性化される。レクチン経路は、マンナン結合レクチンタンパク質が細菌細胞壁の糖残基を認識することにより開始される。代替経路は、具体的な刺激が全くない状態で、低レベルの活性を保っている。3種の経路は全て起因事象に関して異なるが、3種の経路は全て補体成分C3の切断に収れんする。C3は切断されて、C3a及びC3bと呼ばれる2種の産物になる。これらのうち、C3bは病原体表面と共有結合するのに対して、C3aは拡散性シグナルとして作用して、炎症を促進し、循環している免疫細胞を動員する。表面に付着したC3bは他の成分と複合体を形成して、補体系の後の成分の間の反応のカスケードを開始する。表面に付着する必要性のため、補体活動は局在化されたままであり、非標的細胞に対する破壊を最低限にする。
【0004】
病原体に付着したC3bは、病原体破壊を2種の方法で促進する。一経路において、C3bは食細胞により直接認識され、病原体の貪食がもたらされる。第2の経路において、病原体に付着したC3bは膜侵襲複合体(MAC)の形成を開始する。第1段階で、C3bは他の補体成分と合体して、C5転換酵素複合体を形成する。最初の補体活性化経路次第で、この複合体の成分は異なり得る。古典的補体経路の結果として形成されたC5転換酵素は、C3bの他にC4b及びC2aを含む。代替経路により形成される場合、C5転換酵素は、C3bの2つのサブユニット並びに1つのBb成分を含む。
【0005】
補体成分C5は、いずれかのC5転換酵素複合体によりC5a及びC5bに切断される。C5aは、C3aに似て、循環中に拡散し、炎症を促進して、炎症細胞の化学誘引物質として作用する。C5bは細胞表面に付着したままであり、そこで、C6、C7、C8、及びC9との相互作用によりMACの形成を引き起こす。MACは、膜全体に及ぶ親水性ポアであり、細胞への流体の自由な流出入を促進し、それにより細胞を破壊する。
【0006】
全免疫活性の重要な要素は、免疫系が自己と非自己の細胞を区別する能力である。病的状態は、免疫系がこの区別をつけられない場合に発生する。補体系の場合、脊椎動物細胞は、自身を補体カスケードの作用から保護するタンパク質を発現する。これにより、補体系の標的が病原性細胞に限定されることが確実になる。多くの補体関連の障害及び疾患は、補体カスケードによる自己の細胞の異常な破壊と関連している。いくつかの補体関連の障害及び疾患には、重症筋無力症などの神経疾患及び障害がある。
【0007】
重症筋無力症(Myasthenia gravis)は、神経から筋への電気信号の正常な伝達に重要なタンパク質を標的とする自己抗体の産生を特徴とする稀な補体介在性自己免疫疾患である。米国のMGの患者数は、およそ60,000症例と推定されている。MGを有する患者のおよそ15%において、症状は眼筋に限定されている。残りの患者は、典型的には全身型MG(gMG)と称される、体全体にわたる複数の筋群を侵すMGを有する。gMGを有する患者は、特徴的には繰り返し使うとより重度になり休息により回復する筋力低下を呈する。筋力低下は、特定の筋にとどまることがあるが、多くの場合より拡散した筋力低下に進行する。全身型重症筋無力症症状は、筋力低下が、呼吸を担当する胸壁内の横隔膜及び肋間筋を含む場合、生死にかかわるようになり得る。筋無力症クリーゼとして知られるgMGの最も危険な合併症により、入院、挿管、及び機械換気が必要となる。gMGを有する患者のおよそ15%~20%が、診断の2年以内に筋無力症クリーゼを経験するだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
重症筋無力症など、神経系を侵すものを含む補体関連の疾患及び障害を治療する組成物及び方法が依然として必要とされている。本開示は、関連する組成物及び方法を提供することにより、この必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態において、本開示は、例えば重症筋無力症(MG)など、本明細書に開示される補体関連の適応症(indications)及び/又は自己免疫適応症及び/又は神経障害を治療する方法であって、補体活性を調節する化合物又は化合物を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。そのような化合物は、補体活性化を遮断する阻害剤(補体阻害剤)、例えばC5阻害剤、例えば本明細書に記載のC5阻害剤ポリペプチドであり得る。化合物は、本明細書に開示のジルコプラン又はその活性代謝物若しくは変形体であり得て、適応症又は障害は、本明細書で以下にさらに定義されるMGであり得る。本明細書において、MGは、全身型MG(gMG)を含み得るか、又は全身型MGであり得る。化合物(例えばジルコプラン)投与は、皮下(SC)投与を含み得る。化合物(例えばジルコプラン)は、約0.1mg/kg(mg化合物/kg対象体重)~約0.6mg/kgの投与量で投与され得る。化合物投与は自己投与を含み得る。化合物投与は、プレフィルドシリンジの使用を含み得る。シリンジは29ゲージニードルを含み得る。化合物投与は、自己投与装置を使用する自己投与を含み得る。自己投与装置はプレフィルドシリンジを含み得る。プレフィルドシリンジはガラスを含み得る。任意選択で、プレフィルドシリンジはガラスシリンジである。プレフィルドシリンジは、少なくとも1mlの最大充填容積を含み得る。自己投与装置は、化合物の溶液を含み得る。溶液は水溶液であり得る。溶液は保存剤不含であり得る。自己投与装置は、約0.15ml~約0.81mlの溶液体積を含み得る。対象は、化合物(例えばジルコプラン)の投与に先立ちスクリーニングされ得る。スクリーニングは、定量的重症筋無力症(Quantitative Myasthenia Gravis)(QMG)スコアの算定を含み得る。対象QMGスコアは12以上であり得る。対象は、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、MG療法を受けることを禁止され得る。MG療法は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤療法であり得る。スクリーニングは、4以上のQMG試験項目が2以上のスコアを達成することを必要とし得る。対象は18~85歳であり得る。スクリーニングは、以前にgMGであると診断された対象を選択することを含み得る。gMG診断は、米国重症筋無力症財団(Myasthenia Gravis Foundation of America)(MGFA)基準に従ってなされ得る。スクリーニングは、アセチルコリンエステラーゼ受容体(AChR)自己抗体レベルの算定を含み得る。スクリーニングは、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、対象により受け取られるコルチコステロイド投与量に変化がないことの確認を含み得る。スクリーニングは、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、対象免疫抑制療法に変化がないことの確認を含み得る。スクリーニングは、血清妊娠試験及び/又は尿妊娠試験を含み得る。化合物投与は連日投与を含み得る。対象は、同時に、標準治療gMG療法を受け得る。標準治療gMG療法は、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び免疫抑制薬治療の1つ以上を含み得る。対象は、MG特徴(MG characteristic)に関して評価又はモニターされ得るが、MG特徴は、QMGスコア、重症筋無力症-日常生活動作(Myasthenia Gravis-Activities of Daily Living)(MG-ADL)スコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコア(MG Composite score)の1つ以上を含む。対象評価又はモニタリングは、本明細書に記載の化合物(例えば:ジルコプラン)による対象治療の間又はその後に、MG特徴の変化を算定することを含み得る。MG特徴はQMGスコア減少を含み得る。被治療対象QMGスコアは、少なくとも3ポイント減少し得る。被治療対象QMGスコアは、12週間の治療で又はその前に減少し得る。被治療対象QMGスコアは、治療の過程でモニターされ得る。対象は、治療の過程で、コリンエステラーゼ阻害剤治療を受け得る。コリンエステラーゼ阻害剤治療は、被治療対象QMGスコアの算定に先立つ少なくとも10時間、保留され得る。MG特徴の変化は、ベースラインMGコンポジットスコアからの少なくとも3ポイントのMGコンポジットスコアの変化を含み得る。ベースラインMGコンポジットスコアからのMGコンポジットスコアの変化は、12週間の治療で又はその前に起こり得る。MG特徴の変化は、ベースラインMG-ADLスコアからの少なくとも2ポイントのMG-ADLスコアの変化を含み得る。ベースラインMG-ADLスコアからのMG-ADLスコアの変化は、12週間の治療で又はその前に起こり得る。化合物は溶液中にあり得て、溶液はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。溶液は、約4mg/ml~約200mg/mlの化合物(例えば:ジルコプラン)を含み得る。溶液は、約40mg/mlの化合物(例えばジルコプラン)を含み得る。化合物の対象血漿レベルは、治療の最初の日に最大濃度(Cmax)に達し得る。少なくとも90%溶血阻害が対象血清中で達成され得て、任意選択で、溶血阻害はヒツジ赤血球(sRBC)溶血アッセイにより測定される。化合物(例えばジルコプラン)は、約0.1mg/kg~約0.3mg/kgの1日量で投与され得る。ジルコプランは、0.3mg/kgの投与量で投与され得る。対象QMGスコア及び/又はMG-ADLスコアは減少し得る。QMGスコアは、8週間の治療により3ポイント以上減少し得る。MG-ADLスコアは、8週間の治療により2ポイント以上減少し得る。救援療法を必要とするリスクは減少し得る。投与は、MGの重大又は危機的段階に先立って起こるMG疾患病期で実施され得る。化合物(例えばジルコプラン)の投与は、対象症状発現の減少をもたらし得る。対象症状発現の減少は、エクリズマブ投与と関連する対象症状発現の減少を超え得る。対象神経筋接合部(NMJ)膜侵襲複合体(MAC)ポア形成は阻害され得る。NMJでの安全係数は改善され得る。ジルコプランは、治療剤と組み合わせて投与され得る。治療剤は、免疫抑制剤を含み得る。免疫抑制剤は、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、タクロリムス、シクロホスファミド、及びリツキシマブの1つ以上から選択される化合物を含み得る。治療剤は、自己抗体介在性組織破壊の阻害剤を含み得る。自己抗体介在性組織破壊の阻害剤は、胎児性Fc受容体(FcRN)阻害剤を含み得る。FcRN阻害剤の投与は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)治療を含み得る。ジルコプラン及び治療剤は、重複するレジメンで投与され得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(例えばジルコプラン)を含むシリンジ及び使用説明書を含み得るキットを提供する。シリンジは自己注射装置を含み得る。自己注射装置は、BDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)自己投与装置を含み得る。キットはアルコールワイプを含み得る。キットは創傷被覆材を含み得る。キットは廃棄容器を含み得る。化合物は溶液中であり得る。溶液は水溶液であり得る。溶液はリン酸緩衝食塩水を含み得る。溶液は、約4mg/ml~約200mg/mlの化合物(例えばジルコプラン)を含み得る。溶液は、約40mg/mlの化合物(例えばジルコプラン)を含み得る。溶液は保存剤を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態によると、本開示は、MGなど、本明細書に開示の補体関連の適応症及び/又は自己免疫適応症及び/又は神経障害の治療を評価する方法を提供する。方法は、少なくとも1つの評価参加基準に関して評価候補をスクリーニングすること;評価参加者を選択すること;適応症又は障害(例えばMG)の治療を評価参加者に投与すること;及び少なくとも1つの有効性評価項目を算定することを含み得るが、ここで、任意選択で、治療は、本明細書に開示の化合物(例えばジルコプラン)又は組成物の投与を含む。少なくとも1つの評価参加基準はMG診断を含み得る。MG診断はgMG診断を含み得る。MG診断はgMG診断であり得る。gMG診断は、MGFA基準に従ってなされ得る。少なくとも1つの評価参加基準はQMGスコアを含み得る。評価参加者選択は、12以上の評価候補QMGスコアを要し得る。評価候補は、スクリーニングに先立ち、少なくとも1つの代替MG治療を受けた可能性がある。評価候補QMGスコアは、少なくとも1つの代替MG治療を受けた少なくとも10時間後に算定され得る。少なくとも1つの代替MG治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤投与を含み得る。評価参加者選択は、4つ以上のQMG試験項目で2以上のスコアを要し得る。少なくとも1つの評価参加基準は評価候補年齢を含み得る。評価参加者選択は、18~85歳の評価候補年齢を要し得る。少なくとも1つの評価参加基準は、AChR自己抗体レベル及び/又は抗筋特異的キナーゼ自己抗体レベルを含み得る。少なくとも1つの評価参加基準は、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、評価候補により受け取られたコルチコステロイド投与量に変化がないことを含み得る。少なくとも1つの評価参加基準は、スクリーニングに先立つ少なくとも30日間、評価候補免疫抑制療法に変化がないことを含み得る。少なくとも1つの評価参加基準は、評価候補が妊娠していないということの確認を含み得る。スクリーニングは、血清妊娠試験及び/又は尿妊娠試験を含み得る。MGの治療は、評価期間にわたって投与され得る。評価期間は約1日~約12週間であり得る。評価期間は約12週間以上であり得る。評価参加者は、評価期間にわたって標準治療gMG療法を受け得る。標準治療gMG療法は、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び免疫抑制薬治療の1つ以上を含み得る。少なくとも1つの有効性評価項目は、被治療対象QMGスコア減少を含み得る。被治療対象QMGスコア減少は少なくとも3ポイントであり得る。評価参加者は、評価期間の間、コリンエステラーゼ阻害剤治療を受け得る。コリンエステラーゼ阻害剤治療は、被治療対象QMGスコアの算定に先立つ少なくとも10時間、保留され得る。少なくとも1つの有効性評価項目は、MG-ADLスコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアの1つ以上に関するベースラインスコアの変化を含み得る。少なくとも1つの有効性評価項目は、少なくとも3ポイントのベースラインMGコンポジットスコアの変化を含み得る。ベースラインMGコンポジットスコアの変化は、12週間の治療で又はその前に起こり得る。少なくとも1つの有効性評価項目は、少なくとも2ポイントのベースラインMG-ADLスコアの変化を含み得る。ベースラインMG-ADLスコアの変化は、12週間のMGの治療で又はその前に起こり得る。少なくとも1つの有効性評価項目を算定することは、一式の算定を含み得る。一式の算定は、(1)評価参加者MG-QOL15rスコアを算定すること;(2)評価参加者MG-ADLスコアを算定すること;(3)評価参加者QMGスコアを算定すること;及び(4)評価参加者MGコンポジットスコアを算定することの順序で実施され得る。一式の算定は、MGの治療を投与した後で1つ以上の場合に実施され得る。MGの治療を投与した後の1つ以上の場合は、MGの治療を投与した1週間後、2週間後、4週間後、8週間後、及び/又は12週間後を含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示は、MGなど、本明細書に開示の補体関連の適応症及び/又は神経障害の治療用に調製された投与装置を提供する。投与装置は、シリンジ及びニードルを含む自己注射装置を含み得る。投与装置は、所定体積の医薬組成物を含み得る。医薬組成物は、水溶液中に40mg/mL濃度の本明細書に開示の化合物(例えばジルコプラン)を含み得る。所定体積は、対象体重のkgあたり0.3mgの投与量での化合物(例えばジルコプラン)の対象への投与を容易にするように調節され得る。投与装置は、BDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)自己投与装置を含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示は、MGの治療用に調製されたキットを提供する。キットは、一式の本明細書に記載の2つ以上の投与装置及びキット使用の説明書を含み得る。キットはアルコールワイプを含み得る。キットは創傷被覆材を含み得る。キットは廃棄容器を含み得る。キット投与装置は、保存剤不含である、化合物(例えばジルコプラン)の医薬組成物を含み得る。キットは、室温での保存用に調製され得る。
【0014】
前記及び他の目的、特徴、及び利点は、添付図面に示される通り、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかだろう。図面は、必ずしも縮尺通りではない;代わりに、種々の開示される実施形態の原理を説明することに強調がおかれている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】古典補体経路と代替補体経路の重複を示す模式図である。
【
図2】重症筋無力症治療試験デザインを示す模式図である。
【
図3】12週間のプラセボ対0.3mg/kgジルコプラン治療の間の、ベースラインからの定量的重症筋無力症(QMG)スコア変化を示すグラフである。
【
図4】12週間のプラセボ対0.3mg/kgジルコプラン治療の間の、ベースラインからの重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコア変化を示すグラフである。
【
図5】12週間のプラセボ対0.1mg/kgジルコプラン治療の間の、ベースラインからのQMGスコア変化を示すグラフである。
【
図6】12週間のプラセボ対0.1mg/kgジルコプラン治療の間の、ベースラインからのMG-ADLスコア変化を示すグラフである。
【
図7】12週間の間の0.1mg/kg及び0.3mg/kgジルコプラン治療投与量からの合わせた平均スコア変化と比較してプラセボのベースラインからのMG-ADLスコア変化を示すグラフである。
【
図8】0.3mg/kgジルコプラン治療対プラセボの、患者のパーセントによるQMGスコアのポイント改善を示すグラフである。
【
図9】0.3mg/kgジルコプラン治療対プラセボの、患者のパーセントによるMG-ADLスコアのポイント改善を示すグラフである。
【
図10】エクリズマブに対してジルコプラン治療によるMG-ADL分析に基づき、特定期間の治療で最小症状発現(minimal symptom expression)を達成する患者のパーセントを示すグラフである。
【
図11】ジルコプラン又はプラセボ治療の過程で患者から得られた試料中のジルコプラン濃度を示すグラフである。
【
図12】ジルコプラン又はプラセボ治療の過程で患者から得られた試料の溶血アッセイ分析から得られた溶血値パーセントを示すグラフである。
【
図13】ジルコプラン濃度値に対してプロットされた溶血値を示すグラフであり、両セットの値は、プラセボ又はジルコプラン治療された患者由来の試料と関連する。
【
図14】12週間プラセボ治療の過程又は24週間ジルコプラン治療(0.1mg/kg又は0.3mg/kg投与量)の過程での、治療前(pretreatment)ベースライン値からのQMGスコアの変化を示すグラフである。QMGスコアの変化は、プラセボ治療から切り替えた後の12~24週のジルコプラン治療(0.3mg/kg)を受けた対象でも示され、その場合12週間プラセボ治療スコアが、スコアの変化を決定するためのベースラインとして使用される。
【
図15】12週間プラセボ治療の過程又は24週間ジルコプラン治療(0.1mg/kg又は0.3mg/kg投与量)の過程での、治療前ベースライン値からのMG-ADLスコアの変化を示すグラフである。MG-ADLスコアの変化は、プラセボ治療から切り替えた後の12~24週のジルコプラン治療(0.3mg/kg)を受けた対象でも示され、その場合12週間プラセボ治療スコアが、スコアの変化を決定するためのベースラインとして使用される。
【
図16】12週間プラセボ治療の過程又は24週間ジルコプラン治療(0.1mg/kg又は0.3mg/kg投与量)の過程での、治療前ベースライン値からのMGコンポジットスコアの変化を示すグラフである。MGコンポジットスコアの変化は、プラセボ治療から切り替えた後の12~24週のジルコプラン治療(0.3mg/kg)を受けた対象でも示され、その場合12週間プラセボ治療スコアが、スコアの変化を決定するためのベースラインとして使用される。
【
図17】12週間プラセボ治療の過程又は24週間ジルコプラン治療(0.1mg/kg又は0.3mg/kg投与量)の過程での、治療前ベースライン値からのMG-QOL15rスコアの変化を示すグラフである。MG-QOL15rスコアの変化は、プラセボ治療から切り替えた後の12~24週のジルコプラン治療(0.3mg/kg)を受けた対象でも示され、その場合12週間プラセボ治療スコアが、スコアの変化を決定するためのベースラインとして使用される。
【
図18】基底膜モデルを使用するインビトロ透過性アッセイにおいて上部チャンバーから下部チャンバーへ移動する、試験された各化合物のパーセンテージを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、補体活性を阻害することによる神経障害治療に関する。補体活性は、体を外来の病原体から保護するが、活性増大又は制御不良により自己細胞破壊をもたらすことがある。重症筋無力症は、自己抗体介在性神経系破壊を特徴とする神経障害である。補体阻害剤を投与することによる、重症筋無力症を治療する方法が本明細書に含まれる。MGの新たな治療を試験する方法も含まれる。本開示のこれら及び他の実施形態は以下で詳細に説明される。
【0017】
I.化合物及び組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、補体活性を調節するように機能する化合物及び前記化合物を含む組成物を提供する。そのような化合物及び組成物は、補体活性化を遮断する阻害剤を含み得る。本明細書では、「補体活性」は、補体カスケードの活性化、C3若しくはC5などの補体成分からの切断産物の形成、切断事象後の下流複合体の集合、又は補体成分、例えば、C3若しくはC5の切断に伴う、若しくはそれから生じるあらゆるプロセス若しくは事象を含む。補体阻害剤は、補体活性化を補体成分C5のレベルで遮断するC5阻害剤を含み得る。C5阻害剤はC5と結合して、C5転換酵素による切断産物C5a及びC5bへのその切断を妨げ得る。本明細書では、「補体成分C5」又は「C5」は、C5転換酵素により少なくとも切断産物C5a及びC5bに切断される複合体であると定義される。本明細書中で称される「C5阻害剤」は、切断前の(pre-cleaved)補体成分C5複合体又は補体成分C5の切断産物のプロセシング若しくは切断を阻害するあらゆる化合物又は組成物を含む。
【0018】
C5切断の阻害が、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合性タンパク質欠損赤血球に対する細胞溶解性の膜侵襲複合体(MAC)の集合及び活性を抑制することが理解されている。いくつかの場合に、本明細書に提示のC5阻害剤はC5bとも結合し、C6結合及びC5b-9MACのその後の集合も抑制する。
【0019】
C5阻害剤化合物は、表1に提示されるもののいずれも含み得るが、これらに限定されない。列記される参照文献及び列記される臨床試験番号を支持する情報は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0020】
【0021】
【0022】
ペプチド系化合物
いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤はポリペプチドである。本開示によると、あらゆるアミノ酸系分子(天然又は非天然)が「ポリペプチド」と称され得て、この用語は、「ペプチド」、「ペプチドミメティクス」、及び「タンパク質」を包含する。「ペプチド」は従来大きさが約4~約50アミノ酸の範囲であると考えられている。約50アミノ酸より大きいポリペプチドは一般的に「タンパク質」と称される。
【0023】
C5阻害剤ポリペプチドは、直鎖でも、環状でもあり得る。環状ポリペプチドは、その構造の一部として、ループ及び/又は内部連結など1つ以上の環状の特徴を有するあらゆるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、環状ポリペプチドは、分子が架橋部分として作用してポリペプチドの2つ以上の領域を連結するときに形成される。本明細書では、用語「架橋部分」は、ポリペプチド中の2つの隣接又は非隣接のアミノ酸、非天然アミノ酸、又は非アミノ酸の間に形成された架橋の1つ以上の成分を指す。架橋部分は、任意の大きさ又は組成でよい。いくつかの実施形態において、架橋部分は、2つの隣接又は非隣接のアミノ酸、非天然アミノ酸、非アミノ酸残基、又はそれらの組合せの間に1つ以上の化学結合を含み得る。いくつかの実施形態において、そのような化学結合は、隣接又は非隣接のアミノ酸、非天然アミノ酸、非アミノ酸残基、又はそれらの組合せ上の1つ以上の官能基の間であり得る。架橋部分は、アミド結合(ラクタム)、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、芳香環、トリアゾール環、及び炭化水素鎖の1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態において、架橋部分は、それぞれアミノ酸、非天然アミノ酸、又は非アミノ酸残基側鎖中に存在するアミン官能基とカルボキシラート官能基の間のアミド結合を含む。いくつかの実施形態において、アミン又はカルボキシラート官能基は非アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基の一部である。
【0024】
C5阻害剤ポリペプチドは、カルボキシ末端、アミノ末端により、又は任意の他の簡便な結合点、例えば、システインの硫黄(例えば、配列中の2つのシステイン残基の間のジスルフィド結合の形成により)又はアミノ酸残基の任意の側鎖により環化し得る。環状ループを形成するさらなる結合は、マレイミド結合、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、チオールエーテル結合、ヒドラゾン結合、又はアセトアミド結合を含み得るが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、固相ペプチド合成(SPPS)により固体担体(例えばリンクアミド樹脂)上で合成できる。SPPS方法は当技術分野に公知であり、直交保護基と共に実施できる。いくつかの実施形態において、本開示のペプチドは、SPPSにより、Fmocケミストリー及び/又はBocケミストリーと共に合成できる。合成されたペプチドは、標準的な技法を使用して固体担体から切断できる。
【0026】
ペプチドは、クロマトグラフィーにより精製できる[例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び/又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)]。HPLCは逆相HPLC(RP-HPLC)を含み得る。ペプチドは、精製後に凍結乾燥できる。精製されたペプチドは、純粋なペプチドとしても、ペプチド塩としても得ることができる。ペプチド塩を構成する残留塩は、トリフルオロ酢酸(TFA)、酢酸塩、及び/又は塩酸塩を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示のペプチドは、ペプチド塩として得られる。ペプチド塩は、TFAとのペプチド塩であり得る。残留塩は、精製されたペプチドから、公知の方法により(例えば、脱塩カラムの使用により)除去できる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示の環状C5阻害剤ポリペプチドは、ラクタム部分を使用して形成される。そのような環状ポリペプチドは、例えば、標準的なFmocケミストリーを使用する固体担体ワング樹脂上での合成により形成され得る。いくつかの場合に、Fmoc-ASP(アリル)-OH及びFmoc-LYS(アロック)-OHがポリペプチド中に組み込まれて、ラクタムブリッジ形成の前駆体モノマーとしての役割を果たす。
【0028】
本開示のC5阻害剤ポリペプチドはペプチドミメティクスであり得る。「ペプチドミメティック」又は「ポリペプチドミメティック」は、分子が、天然のポリペプチド(すなわち20種のタンパク質構成アミノ酸からのみ構成されているポリペプチド)にはみられない構造要素を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチドミメティクスは、天然のペプチドの生物学的作用を反復又は模倣することが可能である。ペプチドミメティックは、多くの点で、例えば、骨格構造の変化により、又は天然に存在しないアミノ酸の存在により天然のポリペプチドとは異なり得る。いくつかの場合に、ペプチドミメティクスは、公知の20種のタンパク質構成アミノ酸にはみられない側鎖を有するアミノ酸;分子の末端若しくは内部部分の間の環化を起こすのに使用される非ポリペプチド系架橋部分;メチル基(N-メチル化)若しくは他のアルキル基によるアミド結合水素部分の置換;化学処理若しくは酵素処理に耐性がある化学基若しくは結合によるペプチド結合の置換え;N末端及びC末端修飾;並びに/又は非ペプチド性伸長(ポリエチレングリコール、脂質、炭水化物、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオシド塩基、種々の小分子、又はホスファート若しくはスルファート基など)によるコンジュゲーションを含み得る。
【0029】
本明細書では、用語「アミノ酸」は、天然のアミノ酸並びに非天然アミノ酸の残基を含む。20種の天然のタンパク質構成アミノ酸は、下記の通り、1文字表記か3文字表記かにより本明細書で特定及び言及される:アスパラギン酸(Asp:D)、イソロイシン(Ile:I)、スレオニン(Thr:T)、ロイシン(Leu:L)、セリン(Ser:S)、チロシン(Tyr:Y)、グルタミン酸(Glu:E)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、ヒスチジン(His:H)、グリシン(Gly:G)、リジン(Lys:K)、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、システイン(Cys:C)、トリプトファン(Trp:W)、バリン(Val:V)、グルタミン(Gln:Q)メチオニン(Met:M)、アスパラギン(Asn:N)。天然に存在するアミノ酸は、その左旋性(L)の立体異性形態で存在する。本明細書で言及されるアミノ酸は、特記されない限り、L-立体異性体である。用語「アミノ酸」は、従来のアミノ保護基(例えばアセチル又はベンジルオキシカルボニル)を有するアミノ酸、並びにカルボキシ末端で保護されている天然及び非天然アミノ酸(例えば、(C1~C6)アルキル、フェニル、若しくはベンジルエステル、又はアミドとして;又はα-メチルベンジルアミドとして)も含む。他の好適なアミノ及びカルボキシ保護基は当業者に公知である(例えば、それぞれの内容が参照により本明細書にその全体として組み込まれるグリーン,T.W.(Greene,T.W.);ウッツ,P.G.M.(Wutz,P.G.M.)著、有機合成における保護基(Protecting Groups In Organic Synthesis);第2版、1991年、ニューヨーク、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley&sons,Inc.)及びそこに引用されている文書を参照されたい)。本開示のポリペプチド及び/又はポリペプチド組成物は、修飾されたアミノ酸も含み得る。
【0030】
「非天然の」アミノ酸は、先に列記された20種の天然のアミノ酸には存在しない側鎖又は他の特徴を有し、N-メチルアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、アルファ、アルファ置換アミノ酸、ベータ-アミノ酸、アルファ-ヒドロキシアミノ酸、D-アミノ酸、及び当技術分野に公知である他の非天然アミノ酸を含むがこれらに限定されない(例えば、ジョセフソン(Josephson)ら著、(2005年)、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)、第127巻:p.11727-11735;フォルスター,A.C.(Forster,A.C.)ら著(2003年)、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第100巻:p.6353-6357;サブテルニー(Subtelny)ら著、(2008年)、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)、第130巻:p.6131-6136;ハートマン,M.C.T.(Hartman,M.C.T.)ら著(2007年)、プロスワン(PLoS ONE)2:e972;及びハートマン(Hartman)ら著、(2006年)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第103巻:p.4356-4361を参照されたい)。本開示のポリペプチド及び/又はポリペプチド組成物の最適化に有用なさらなる非天然アミノ酸には、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸、1-アミノ-2,3-ヒドロ-1H-インデン-1-カルボン酸、ホモリジン、ホモアルギニン、ホモセリン、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、ベータ-アラニン、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、5-アミノペンタン酸、5-アミノヘキサン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、デスモシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリジン、アロ-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルペンチルグリシン、ナフチルアラニン、オルニチン、ペンチルグリシン、チオプロリン、ノルバリン、tert-ブチルグリシン、フェニルグリシン、アザトリプトファン、5-アザトリプトファン、7-アザトリプトファン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、サルコシン、ホモシステイン、1-アミノシクロプロパンカルボン酸、1-アミノシクロブタンカルボン酸、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、1-アミノシクロヘキサンカルボン酸、4-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-4-カルボン酸、(S)-2-アミノ-3-(1H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシン、シクロプロピルグリシン、η-ω-メチル-アルギニン、4-クロロフェニルアラニン、3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、5-フルオロトリプトファン、5-クロロトリプトファン、シトルリン、4-クロロ-ホモフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、4-アミノメチル-フェニルアラニン、3-アミノメチル-フェニルアラニン、オクチルグリシン、ノルロイシン、トラネキサム酸、2-アミノペンタン酸、2-アミノヘキサン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノオクタン酸、2-アミノノナン酸、2-アミノデカン酸、2-アミノウンデカン酸、2-アミノドデカン酸、アミノ吉草酸、及び2-(2-アミノエトキシ)酢酸、ピペコリン酸、2-カルボキシアゼチジン、ヘキサフルオロロイシン、3-フルオロバリン、2-アミノ-4,4-ジフルオロ-3-メチルブタン酸、3-フルオロ-イソロイシン、4-フルオロイソロイシン、5-フルオロイソロイシン、4-メチル-フェニルグリシン、4-エチル-フェニルグリシン、4-イソプロピル-フェニルグリシン、(S)-2-アミノ-5-アジドペンタン酸(本明細書で「X02」とも称される)、(S)-2-アミノヘプタ-6-エン酸(本明細書で「X30」とも称される)、(S)-2-アミノペンタ-4-イン酸(本明細書で「X31」とも称される)、(S)-2-アミノペンタ-4-エン酸(本明細書で「X12」とも称される)、(S)-2-アミノ-5-(3-メチルグアニジノ)ペンタン酸、(S)-2-アミノ-3-(4-(アミノメチル)フェニル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-3-(3-(アミノメチル)フェニル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-4-(2-アミノベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ブタン酸、(S)-ロイシノール、(S)-バリノール、(S)-tert-ロイシノール、(R)-3-メチルブタン-2-アミン、(S)-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-アミン、及び(S)-N,2-ジメチル-1-(ピリジン-2-イル)プロパン-1-アミン、(S)-2-アミノ-3-(オキサゾール-2-イル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-3-(オキサゾール-5-イル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-3-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-3-(1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-3-(5-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)プロパン酸、及び(S)-2-アミノ-3-(1H-インダゾール-3-イル)プロパン酸、(S)-2-アミノ-3-(オキサゾール-2-イル)ブタン酸、(S)-2-アミノ-3-(オキサゾール-5-イル)ブタン酸、(S)-2-アミノ-3-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ブタン酸、(S)-2-アミノ-3-(1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ブタン酸、(S)-2-アミノ-3-(5-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)ブタン酸、及び(S)-2-アミノ-3-(1H-インダゾール-3-イル)ブタン酸、2-(2’MeOフェニル)-2-アミノ酢酸、テトラヒドロ3-イソキノリンカルボン酸、並びにこれらの立体異性体(非限定的に、D及びL異性体を含む)があるが、これらに限定されない。
【0031】
本開示のポリペプチド又はポリペプチド組成物の最適化において有用な追加の非天然アミノ酸には、1つ以上の炭素結合水素原子がフッ素に置き換えられたフッ素化されたアミノ酸があるが、これに限定されない。含まれるフッ素原子の数は、1から水素原子の全てまで(全てを含む)の範囲になり得る。そのようなアミノ酸の例には、3-フルオロプロリン、3,3-ジフルオロプロリン、4-フルオロプロリン、4,4-ジフルオロプロリン、3,4-ジフルロプロリン(difluroproline)、3,3,4,4-テトラフルオロプロリン、4-フルオロトリプトファン、5-フルロトリプトファン(flurotryptophan)、6-フルオロトリプトファン、7-フルオロトリプトファン、及びこれらの立体異性体があるが、これらに限定されない。
【0032】
本開示のポリペプチドの最適化において有用なさらなる非天然アミノ酸には、α-炭素で二置換されているものがあるが、これに限定されない。これらには、α-炭素上の2つの置換基が同じであるアミノ酸、例えば、α-アミノイソ酪酸、及び2-アミノ-2-エチルブタン酸並びに置換基が異なるもの、例えば、α-メチルフェニルグリシン及びα-メチルプロリンがある。さらに、α-炭素上の置換基は共に環を形成することがあり、例えば1-アミノシクロペンタンカルボン酸、1-アミノシクロブタンカルボン酸、1-アミノシクロヘキサンカルボン酸、3-アミノテトラヒドロフラン-3-カルボン酸、3-アミノテトラヒドロピラン-3-カルボン酸、4-アミノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸、3-アミノピロリジン-3-カルボン酸、3-アミノピペリジン-3-カルボン酸、4-アミノピペリジン(aminopiperidinnne)-4-カルボキシリクス酸(carboxylix acid)、及びこれらの立体異性体である。
【0033】
本開示のポリペプチド又はポリペプチド組成物の最適化において有用な追加の非天然アミノ酸には、インドール環系が、N、O、又はSから独立に選択される0、1、2、3、又は4つのヘテロ原子を有する別の9又は10員二環式環系により置き換えられているトリプトファンの類似体があるが、これに限定されない。各環系は、飽和でも、部分不飽和でも、完全不飽和でもよい。環系は、0、1、2、3、又は4つの置換基により、任意の置換可能な原子で置換され得る。各置換基は、H、F、Cl、Br、CN、COOR、CONRR’、オキソ、OR、NRR’から独立に選択され得る。各R及びR’は、H、C1~C20アルキル、又はC1~C20アルキル-O-C1~20アルキルから独立に選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、トリプトファンの類似体(本明細書で「トリプトファン類似体」とも称される)は、本開示のポリペプチド又はポリペプチド組成物の最適化において有用であり得る。トリプトファン類似体は、5-フルオロトリプトファン[(5-F)W]、5-メチル-O-トリプトファン[(5-MeO)W]、1-メチルトリプトファン[(1-Me-W)又は(1-Me)W]、D-トリプトファン(D-Trp)、アザトリプトファン(非限定的に、4-アザトリプトファン、7-アザトリプトファン、及び5-アザトリプトファンを含む)5-クロロトリプトファン、4-フルオロトリプトファン、6-フルオロトリプトファン、7-フルオロトリプトファン、及びこれらの立体異性体を含み得るが、これらに限定されない。反対であると示される場合を除き、本明細書での用語「アザトリプトファン」及びその省略形「azaTrp」は7-アザトリプトファンを指す。
【0035】
本開示のポリペプチド及び/又はポリペプチド組成物の最適化に有用な修飾アミノ酸残基には、化学的にブロックされているもの(可逆的に又は不可逆的に);そのN末端アミノ基又はその側鎖基で化学的に修飾されているもの;アミド骨格中で化学修飾されているもの、例えば、N-メチル化された、D(非天然アミノ酸)及びL(天然アミノ酸)立体異性体;又は側鎖官能基が化学修飾されて別の官能基になった残基があるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、修飾アミノ酸は、非限定的に、メチオニンスルホキシド;メチオニンスルホン;アスパラギン酸-(ベータ-メチルエステル)、アスパラギン酸の修飾アミノ酸;N-エチルグリシン、グリシンの修飾アミノ酸;アラニンカルボキサミド;及び/又はアラニンの修飾アミノ酸を含む。非天然アミノ酸は、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)(セントルイス、ミズーリ州)、バッケム(Bachem)(トーランス、カリフォルニア州)又は他の供給業者から購入できる。非天然アミノ酸は、その内容が参照により本明細書にその全体として組み込まれる米国特許出願公開第2011/0172126号明細書の表2に列記されたもののいずれもさらに含み得る。
【0036】
本開示は、本明細書に提示されるポリペプチドの変形体及び誘導体を企図する。これらには、置換による、挿入による、欠失による、及び共有結合による変形体及び誘導体がある。本明細書では、用語「誘導体」は、用語「変形体」と同義に使用され、基準分子又は出発分子に対して任意の方法で修飾又は変化を受けた分子を指す。
【0037】
本開示のポリペプチドは、以下の成分、特徴、又は部分のいずれも含むことがあり、本明細書で使用されるその略語は下記を含む:「Ac」及び「NH2」は、それぞれアセチル及びアミド化された末端を示す;「Nvl」はノルバリンを表す;「Phg」はフェニルグリシンを表す;「Tbg」はtert-ブチルグリシンを表す;「Chg」はシクロヘキシルグリシンを表す;「(N-Me)X」は、N-メチル-Xと書かれる変数「X」の代わりに、1文字又は3文字アミノ酸コードにより示されるアミノ酸のN-メチル化形態を表す[例えば、(N-Me)D又は(N-Me)Aspは、アスパラギン酸のN-メチル化形態すなわちN-メチル-アスパラギン酸を表す];「azaTrp」はアザトリプトファンを表す;「(4-F)Phe」は4-フルオロフェニルアラニンを表す;「Tyr(OMe)」はO-メチルチロシンを表し、「Aib」はアミノイソ酪酸を表す;「(ホモ)F」又は「(ホモ)Phe」は、ホモフェニルアラニンを表す;「(2-OMe)Phg」は2-O-メチルフェニルグリシンを指す;「(5-F)W」は5-フルオロトリプトファンを指す;「D-X」は所与のアミノ酸「X」のD-立体異性体を指す[例えば、(D-Chg)はD-シクロヘキシルグリシンを表す];「(5-MeO)W」は5-メチル-O-トリプトファンを指す;「ホモC」はホモシステインを指す;「(1-Me-W)」又は「(1-Me)W」は1-メチルトリプトファンを指す;「Nle」はノルロイシンを指す;「Tiq」はテトラヒドロイソキノリン残基を指す;「Asp(T)」は(S)-2-アミノ-3-(1H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸を指す;「(3-Cl-Phe)」は3-クロロフェニルアラニンを指す;「[(N-Me-4-F)Phe]」又は「(N-Me-4-F)Phe」はN-メチル-4-フルオロフェニルアラニンを指す;「(m-Cl-ホモ)Phe」はメタ-クロロホモフェニルアラニンを指す;「(des-アミノ)C」は3-チオプロピオン酸を指す;「(アルファ-メチル)D」はアルファ-メチルL-アスパラギン酸を指す;「2Nal」は2-ナフチルアラニンを指す;「(3-アミノメチル)Phe」は3-アミノメチル-L-フェニアラニン(phenyalanine)を指す;「Cle」はシクロロイシンを指す;「Ac-ピラン」は4-アミノ-テトラヒドロ-ピラン-4-カルボン酸を指す;「(Lys-C16)」はN-ε-パルミトイルリジンを指す;「(Lys-C12)」はN-ε-ラウリルリジンを指す;「(Lys-C10)」はN-ε-カプリルリジンを指す;「(Lys-C8)」はN-ε-カプリル酸リジンを指す;「[xキシリル(y,z)]」は、2つのチオール含有アミノ酸の間のキシリル架橋部分を指し、式中、xは、架橋部分を生成させる(それぞれ)メタ-、パラ-、又はオルト-ジブロモキシレンの使用を示すようにm、p又はoであり得て、数値識別子y及びzは、環化に参加するアミノ酸のポリペプチド内のアミノ酸位置を配置する;「[シクロ(y,z)]」は、2つのアミノ酸残基の間の結合の形成を指し、式中、数値識別子y及びzは、結合に参加する残基の位置を配置する;「[シクロ-オレフィニル(y,z)]」は、オレフィンメタセシスによる2つのアミノ酸残基の間の結合の形成を指し、式中、数値識別子y及びzは、結合に参加する残基の位置を配置する;「[シクロ-チオアルキル(y,z)]」は、2つのアミノ酸残基の間のチオエーテル結合の形成を指し、式中、数値識別子y及びzは、結合に参加する残基の位置を配置する;「[シクロ-トリアゾリル(y,z)]」は、2つのアミノ酸残基の間のトリアゾール環の形成を指し、式中、数値識別子y及びzは、結合に参加する残基の位置を配置する。「B20」は、N-ε-(PEG2-γ-グルタミン酸-N-α-オクタデカン二酸)リジン[別名(1S,28S)-1-アミノ-7,16,25,30-テトラオキソ-9,12,18,21-テトラオキサ-6,15,24,29-テトラアザヘキサテトラコンタン-1,28,46-トリカルボン酸]を指す。
【0038】
B20
【0039】
【0040】
「B28」はN-ε-(PEG24-γ-グルタミン酸-N-α-ヘキサデカノイル)リジンを指す。
B28
【0041】
【0042】
「K14」はN-ε-1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル-L-リジンを指す。他の全記号は標準的な1文字アミノ酸コードを指す。
【0043】
いくつかのC5阻害剤ポリペプチドは、約5アミノ酸~約10アミノ酸、約6アミノ酸~約12アミノ酸、約7アミノ酸~約14アミノ酸、約8アミノ酸~約16アミノ酸、約10アミノ酸~約18アミノ酸、約12アミノ酸~約24アミノ酸、又は約15アミノ酸~約30アミノ酸を含む。いくつかの場合において、C5阻害剤ポリペプチドは少なくとも10アミノ酸を含む。いくつかの場合において、C5阻害剤ポリペプチドは少なくとも30アミノ酸を含む。C5阻害剤ポリペプチドは、14、15、又は16アミノ酸(例えば15アミノ酸)を含み得る。
【0044】
本開示のいくつかのC5阻害剤はC末端脂質部分を含む。そのような脂質部分は、脂肪酸アシル基(例えば、飽和又は不飽和の脂肪酸アシル基)を含み得る。いくつかの場合において、脂肪酸アシル基はパルミトイル基であり得る。
【0045】
脂肪酸アシル基を有するC5阻害剤は、脂肪酸をペプチドに結び付ける1つ以上の分子リンカーを含み得る。そのような分子リンカーはアミノ酸残基を含み得る。いくつかの場合において、L-γグルタミン酸残基が分子リンカーとして使用され得る。いくつかの場合において、分子リンカーは、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)リンカーを含み得る。本開示のPEGリンカーは、約1~約5、約2~約10、約4~約20、約6~約24、約8~約32、又は少なくとも32のPEG単位を含み得る。
【0046】
本明細書に開示のC5阻害剤は、約200g/mol~約600g/mol、約500g/mol~約2000g/mol、約1000g/mol~約5000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約2500g/mol~約7500g/mol、約5000g/mol~約10000g/mol、又は少なくとも10000g/molの分子量を有し得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤ポリペプチドはジルコプランを含む。ジルコプランのコアアミノ酸配列([シクロ(1,6)]Ac-K-V-E-R-F-D-(N-Me)D-Tbg-Y-azaTrp-E-Y-P-Chg-K;配列番号1)は、4つの非天然アミノ酸[N-メチル-アスパラギン酸すなわち「(N-Me)D」、tert-ブチルグリシンすなわち「Tbg」、7-アザトリプトファンすなわち「azaTrp」、及びシクロヘキシルグリシンすなわち「Chg」]を含む15アミノ酸(全L-アミノ酸);ポリペプチド配列のK1とD6の間のラクタムブリッジ;及びN-ε-(PEG24-γ-グルタミン酸-N-α-ヘキサデカノイル)リジン残基(本明細書で「B28」とも称される)を形成する修飾側鎖を有するC末端リジン残基を含む。C末端リジン側鎖修飾は、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサ(PEG24)を含み、PEG24が、パルミトイル基により誘導体化されたL-γグルタミン酸残基に結合している。
【0048】
遊離酸型のジルコプランは、C172H278N24O55の分子式、3562.23ダルトン(Da)の分子量、及び3559.97amuの精密質量を有する(CAS番号1841136-73-9を参照されたい)。四ナトリウム型のジルコプランはC172H278N24O55Na4の分子式を有する。ナトリウム塩型のジルコプランの化学構造は構造Iに示される:
【0049】
【0050】
構造中の4つのナトリウムイオンは、明示されたカルボキシラートと会合して示されているが、それらは、分子中の酸性基のいずれとも会合し得る。ジルコプラン原薬は、典型的には、ナトリウム塩型として提供され、凍結乾燥されている。遊離塩基型のジルコプラン又はジルコプランの任意の薬学的に許容できる塩は、用語「ジルコプラン」により包含される。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤はジルコプランの変形体を含む。本明細書において、ジルコプランへの言及は、その活性代謝物又は変形体、すなわちC5阻害活性を有する活性代謝物又は変形体を含む。いくつかのジルコプラン変形体において、C末端リジン側鎖部分は変更され得る。いくつかの場合において、C末端リジン側鎖部分のPEG24スペーサ(24のPEGサブユニットを有する)は、より少ない又は追加のPEGサブユニットを含み得る。他の場合において、C末端リジン側鎖部分のパルミトイル基は、別の飽和又は不飽和の脂肪酸により置換され得る。さらなる場合において、C末端リジン側鎖部分のL-γグルタミン酸リンカー(PEGとアシル基の間)は、代替のアミノ酸又は非アミノ酸リンカーにより置換され得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤はジルコプランの活性代謝物又は変形体を含み得る。代謝物は、パルミトイルテールのω-ヒドロキシル化を含み得る。そのような変形体は、ジルコプラン前駆体のヒドロキシル化により合成又は形成され得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、ジルコプラン変形体は、ジルコプランの環状又はC末端リジン側鎖部分特徴の1つ以上と組み合わせて使用され得る、ジルコプランのコアポリペプチド配列に対する修飾を含み得る。そのような変形体は、(配列番号1)のコアポリペプチド配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有し得る。
【0054】
いくつかの場合において、ジルコプラン変形体は、ジルコプラン中に使用されているもの以外のアミノ酸の間にラクタムブリッジを形成することにより環化され得る。
いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤は、その内容が参照により本明細書にその全体として組み込まれる米国特許出願公開第2017/0137468号明細書の表1に列記されるもののいずれも含み得る。
【0055】
本開示のC5阻害剤は、特異的結合特性を達成するように開発又は修飾され得る。阻害剤結合は、特定の標的との会合速度及び/又は解離速度を決定することにより評価され得る。いくつかの場合において、化合物は、緩徐な解離速度と合わせて、標的と強力で迅速な会合を示す。いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤は、C5と強力で迅速な会合を示す。そのような阻害剤は、C5との緩徐な解離速度をさらに示し得る。
【0056】
本明細書に開示のC5タンパク質結合C5阻害剤は、C5補体タンパク質に、約0.001nM~約0.01nM、約0.005nM~約0.05nM、約0.01nM~約0.1nM、約0.05nM~約0.5nM、約0.1nM~約1.0nM、約0.5nM~約5.0nM、約2nM~約10nM、約8nM~約20nM、約15nM~約45nM、約30nM~約60nM、約40nM~約80nM、約50nM~約100nM、約75nM~約150nM、約100nM~約500nM、約200nM~約800nM、約400nM~約1,000nM、又は少なくとも1,000nMの平衡解離定数(KD)で結合し得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤は、C5からのC5aの形成又は生成を遮断する。いくつかの場合において、C5aの形成又は生成は、補体活性化の代替経路の活性化の後で遮断される。いくつかの場合において、本開示のC5阻害剤は、膜侵襲複合体(MAC)の形成を遮断する。そのようなMAC形成阻害は、C5阻害剤がC5bサブユニットに結合することによる。C5bサブユニットに結合するC5阻害剤は、C6結合を妨げて、MAC形成の遮断をもたらし得る。いくつかの実施形態において、このMAC形成阻害は、古典経路、代替経路、又はレクチン経路の活性化の後で起こる。
【0058】
本開示のC5阻害剤は、化学的プロセスを利用して合成され得る。いくつかの場合において、そのような合成は、哺乳動物細胞系における生物学的製品の製造と関連するリスクを排除する。いくつかの場合において、化学合成は、生物学的製造プロセスより単純で費用効率がより高くなり得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物であり得る。いくつかの実施形態において、薬学的に許容できる賦形剤は、塩及び緩衝剤の少なくとも1つを含み得る。塩は塩化ナトリウムであり得る。緩衝剤はリン酸ナトリウムであり得る。塩化ナトリウムは、約0.1mM~約1000mMの濃度で存在し得る。いくつかの場合において、塩化ナトリウムは約25mM~約100mMの濃度で存在し得る。リン酸ナトリウムは約0.1mM~約1000mMの濃度で存在し得る。いくつかの場合において、リン酸ナトリウムは約10mM~約100mMの濃度で存在する。
【0060】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)組成物は、約0.01mg/mL~約4000mg/mLのC5阻害剤を含み得る。いくつかの場合において、C5阻害剤は約1mg/mL~約400mg/mLの濃度で存在する。
【0061】
ポリペプチド系C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)が使用されて、迅速且つ/又は増大した阻害剤組織分布から利益を得る適応症が治療され得る。組織は、筋及び/又は神経筋接合部(NMJ)を含み得る。ポリペプチド阻害剤(例えばジルコプラン)は、より小さいサイズ及び/又は有利な荷電プロファイルに基づいて、抗体と比べて筋及び/又はNMJへの優れた浸透を提供し得る。そのような浸透は、過度に活性が高い補体からのより速い解放をもたらし得る。さらに、ポリペプチド阻害剤(例えばジルコプラン)浸透は、MACポア形成を妨げることにより、NMJ膜電位を安定化及び/又は改善し得る。したがって、NMJでの安全係数は改善され得る。用語「安全係数」は、生理的ストレス下で神経筋伝達有効性を確実にする神経インパルス後に放出される過剰な伝達物質レベルを指す。過剰は、筋線維活動電位を引き起こすのに要する量を超えた量であり、膜電位回復に寄与する。
【0062】
同位体変種
本開示の化合物は、同位体である1つ以上の原子を含み得る。本明細書では、用語「同位体」は、1つ以上の追加の中性子を有する化学元素を指す。いくつかの実施形態において、本開示の化合物は重水素化され得る。本明細書では、用語「重水素化された」は、1つ以上の水素原子が重水素同位体に置き換えられた物質を指す。重水素同位体は水素の同位体である。水素の核は1つのプロトンを含むが、重水素核はプロトンと中性子の両方を含む。本開示の化合物及び組成物は、安定性などの物性を変えるために、又は診断及び実験用途での使用を可能にするために重水素化され得る。
【0063】
II.方法
いくつかの実施形態において、本開示は、MGなどの神経障害の治療的処置のための化合物及び組成物を使用及び評価することに関連する方法を提供する。いくつかの方法は、本明細書に記載の化合物及び/又は組成物を使用して、補体活性を調節することを含む。
【0064】
治療適応症
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載の化合物及び組成物を使用して治療適応症を治療する方法を提供する。本明細書での「治療適応症」は、1種以上の形態の治療介入(例えば、治療剤投与又は具体的な治療方法)により軽減され、治癒され、改善され、逆転され、安定化され、又は他の方法で対処され得るあらゆる疾患、障害、病態、又は症状を指す。
【0065】
治療適応症は、補体関連の適応症を含み得る。本明細書では、用語「補体関連の適応症」は、補体系、例えばC5などの補体成分の切断又はプロセシングに関連するあらゆる疾患、障害、病態、又は症状を指す。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、補体関連の適応症を、本明細書に提示される化合物及び組成物により治療することを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、本明細書に提示される化合物及び組成物を使用して、対象の補体活性を阻害することにより、補体関連の適応症を治療することを含む。いくつかの場合において、対象において阻害される補体活性のパーセンテージは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%であり得る。いくつかの場合において、このレベルの補体活性の阻害及び/又は最大阻害は、投与の約1時間後~投与の約3時間後、投与の約2時間後~投与の約4時間後、投与の約3時間後~投与の約10時間後、投与の約5時間後~投与の約20時間後、又は投与の約12時間後~投与の約24時間後に達成され得る。補体活性の阻害は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又は少なくとも4週間の期間にわたり続き得る。いくつかの場合において、このレベルの阻害は、連日投与により達成され得る。そのような連日投与は、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも2か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、少なくとも1年間、又は少なくとも5年間の投与を含み得る。いくつかの場合において、対象は、そのような対象の生涯の間、本開示の化合物又は組成物を投与され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象のC5活性を阻害することにより、補体関連の適応症を治療する方法を提供する。本明細書での「C5依存性補体活性」又は「C5活性」は、C5の切断による補体カスケード、C5の下流切断産物の集合、又はC5の切断に伴うか若しくはそれから生じるあらゆる他のプロセス若しくは事象の活性化を指す。いくつかの場合において、対象において阻害されるC5活性のパーセンテージは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも、85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%であり得る。
【0068】
C5阻害剤を使用して、1種以上の補体関連の適応症を治療できるが、その場合、治療から生じる有害作用がほとんど又は全くない。いくつかの場合において、有害な心血管の、呼吸器の、及び/又は中枢神経系(CNS)の作用が全く起こらない。いくつかの場合において、心拍数及び/又は動脈圧の変化が全く起こらない。いくつかの場合において、呼吸数、1回換気量、及び/又は分時換気量に変化が全く起こらない。
【0069】
疾患マーカ又は症状の文脈における「下げる」又は「減少させる」とは、そのようなレベルの著しい、多くの場合統計的に有意な減少を意味する。減少は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれ以上であり得て、好ましくは、そのような障害のない個人の正常の範囲内として認識されているレベルまでである。
【0070】
疾患マーカ又は症状の文脈における「増加させる」又は「上げる」とは、そのようなレベルの著しい、多くの場合統計的に有意な増加を意味する。増加は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又はそれ以上であり得て、そのような障害のない個人の正常の範囲内として認識されているレベルまでであり得る。
【0071】
治療効果又は予防効果は、疾病状態の1つ以上のパラメータにおいて、著しい、多くの場合統計的に有意な改善がある場合に、又はそうでなければ予測されるだろう症状を悪化若しくは発現させることができないことにより明らかである。一例として、疾患の測定可能なパラメータの少なくとも10%の有利な変化、及び少なくとも20%、30%、40%、50%又はそれ以上は、有効な治療を示し得る。所与の化合物又は組成物の有効性は、当技術分野に公知である通り所与の疾患の実験動物モデルを使用しても判断できる。実験動物モデルを使用する場合、治療の有効性は、マーカ又は症状に統計的に有意な調節が観察される場合に証明される。
【0072】
本開示の化合物と追加の治療剤を組み合わせて投与できる。そのような組合せは同じ組成物中であってよく、又は追加の治療剤を、別な組成物の一部として、若しくは本明細書に記載の別の方法により投与できる。
【0073】
いくつかの実施形態において、本開示は、組織を組織浸透性のC5阻害剤と接触させることによる組織中のC5活性を阻害する方法を提供する。本明細書では、用語「組織浸透性」は、組織透過性を特徴とする性質を指す。組織浸透が増大した薬剤は、組織浸透が低いか又は全くない薬剤と比べると、組織におけるより良好な分布を示し得る。組織浸透は、基底膜を横切る能力により評価され得る。本明細書では、用語「基底膜」は、内皮細胞をその下の組織から分ける細胞外マトリックス(ECM)タンパク質層を指す。組織浸透評価は、インビボでもインビトロでも実施でき、基底膜モデルの使用を含み得る。そのようなモデルは、人工基底膜を通る化合物の拡散を測定することを含み得る。そのようなモデルは、人工基底膜により分離された上部及び下部リザーバの使用を含み得る。人工基底膜は、その内容が参照により本明細書にその全体として組み込まれるアレンズ,F(Arends,F)ら著、2016年、インテクオープン(IntechOpen)、デジタルオブジェクト識別子:10.5772/62519に記載されたECMゲル膜のいずれも含み得る。神経筋接合部の基底板にみられるものを模倣したマトリックス成分を含むように、ECMゲル膜を調製できる。いくつかのモデルにおいて、試験されている化合物は上部リザーバに導入され、化合物拡散が下部リザーバで検出される。
【0074】
組織浸透評価は、例えば、蛍光標識を使用して基底膜を横切る分析物の動きを可視化することによる目視評価を含み得る。いくつかの評価は、基底膜の浸透された側から得られた試料の生化学的分析を含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、化合物透過性は、定量的全身分析(quantitative whole body analysis)(QWBA)を使用して測定され得る。QWBAは、ラジオグラフィーを使用して、放射標識された分析物の分布を評価する分析の一形態である。いくつかの実施形態において、放射性標識された化合物が対象に投与されて、化合物の組織分布が時間経過とともに分析される。
【0076】
組織浸透性C5阻害剤はポリペプチドであり得る。組織浸透性C5阻害剤はジルコプランを含み得る。組織を組織浸透性C5阻害剤と接触させることは、組織浸透性C5阻害剤を製剤の一部として組織に投与することを含み得る。そのような製剤は皮下注射により投与され得る。組織浸透性C5阻害剤は、基底膜に浸透することが可能であり得る。ポリペプチド組織浸透性C5阻害剤の基底膜透過性は、抗体などのより大きいタンパク質の基底膜透過性よりも高い可能性がある。そのような利点は、タンパク質及び抗体の制限になるほど大きなサイズによるものであり得る。ジルコプラン基底膜透過性は、エクリズマブの基底膜透過性の約3倍~約5倍になり得て、組織中のC5活性を阻害し、関連する補体関連の適応症を治療するための、エクリズマブより優れた利点を与える。いくつかの実施形態において、ジルコプラン透過性は、エクリズマブと比べて、肺、心臓、筋、小腸、大腸、脾臓、肝臓、骨、胃、リンパ節、脂肪、脳、膵臓、精巣、及び胸腺の1つ以上における分布を増大させる。
【0077】
ポリペプチド系C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)を使用して、迅速且つ/又は増大した阻害剤組織分布から利益を得る補体関連の適応症(例えば重症筋無力症)を治療できる。組織は、筋及び/又は神経筋接合部(NMJ)を含み得る。ポリペプチド阻害剤(例えばジルコプラン)は、より小さいサイズ及び/又は有利な荷電プロファイルに基づいて、抗体と比べて筋及び/又はNMJへの優れた浸透を提供し得る。そのような浸透は、過度に活性が高い補体からのより速い解放をもたらし得る。さらに、ポリペプチド阻害剤(例えばジルコプラン)浸透は、MACポア形成を妨げることにより、NMJ膜電位を安定化及び/又は改善し得る。したがって、NMJでの安全係数は改善され得る。用語「安全係数」は、生理的ストレス下で神経筋伝達有効性を確実にする神経インパルス後に放出される過剰な伝達物質レベルを指す。過剰は、筋線維活動電位を引き起こすのに要する量を超えた量であり、膜電位回復に寄与する。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示は、ジルコプランを他の治療剤と組み合わせて投与することによる、対象の補体関連の適応症を治療する方法を提供する。シクロスポリンAは、公知の免疫抑制剤、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1及びOATP1B3の阻害剤であり、PNH及び他の補体関連の適応症における潜在的な併用薬物(comedication)である。いくつかの実施形態において、シクロスポリンA及びジルコプランは、補体関連の適応症(例えば重症筋無力症)を有する対象に組み合わせて投与され得る。シクロスポリンA及びジルコプランは、重複する投与レジメンにおいて投与され得る。ジルコプランと組み合わせて、又は重複する投与レジメンにおいて投与され得る他の免疫抑制剤は、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、タクロリムス、シクロホスファミド、及びリツキシマブを含み得るが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示は、ジルコプランを胎児性Fc受容体(FcRN)阻害剤治療と組み合わせて投与することによる、対象の補体関連の適応症を治療する方法を提供する。FcRN阻害剤治療を使用して、自己抗体介在性組織破壊を含む自己免疫疾患を治療できる。FcRN阻害剤治療は、静脈内免疫グロブリン(IVIG)治療を含み得て、それは、高投与量の免疫グロブリンによりFcリサイクリング機構を圧倒することによりIgG抗体の半減期を減少させるものである。いくつかのFcRN阻害剤治療は、DX-2504又はその機能的に等価な変形体、例えば、凝集を減少させ製造性を改善する修飾を含むDX-2507(ニクソン,A.E.(Nixon,A.E.)ら著、2015年、フロンティアズ・イン・イミュノロジー(Front Immunol.)、第6巻:p.176)の投与を含み得る。DX-2504はFcRNリサイクリングの阻害剤である。FcRNを阻害することにより、DX-2504は、Fc介在性リサイクリングを阻害し、それにより、IgG抗体の半減期を減少させる。DX-2504の投与は、IVIG治療のモデルにおいても使用され得る。いくつかの実施形態において、ジルコプランを投与して、FcRN阻害剤治療と重複する投与レジメンにおいて補体関連の適応症(例えば重症筋無力症)を治療できる。FcRN阻害剤治療は、DX-2504(又はDX-2507)投与及び/又はIVIG治療を含み得る。
【0080】
神経学的適応症
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の化合物及び組成物を使用して、神経学的適応症である補体関連の適応症が治療され得る。本明細書での「神経学的適応症」は、神経系に関連するあらゆる疾患、障害、病態、又は症状を指す。いくつかの実施形態において、補体関連の神経学的適応症は重症筋無力症を含む。
【0081】
自己免疫適応症
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の化合物及び組成物を使用して、自己免疫適応症である補体関連の適応症が治療され得る。本明細書では、用語「自己免疫適応症」は、自己破壊性の免疫活性に関連するあらゆる疾患、障害、病態、又は症状を指す。免疫系が自己の細胞と非自己の細胞を区別する能力は、この系の重大な特徴である。病状は、免疫系がこの区別をつけられないときに起こる。免疫系は、自然系及び獲得系に分けることができ、それぞれ非特異的な即時の防衛機構及びより複雑な抗原特異的な系を指す。補体系は自然免疫系の一部であり、病原体を認識して排除する。さらに、補体タンパク質は獲得免疫を調節して、自然応答と獲得応答を接続できる。自己免疫疾患は、体の特定の組織又は器官を含み得る。
【0082】
補体系の場合、脊椎動物細胞は、自身を補体カスケードの作用から保護する阻害性タンパク質を発現し、これにより、補体系が外来の病原体を対象にすることが確実になる。補体関連の多くの適応症は、補体カスケードによる自己細胞の異常な破壊と関連している。
【0083】
いくつかの実施形態において、補体関連の自己免疫適応症は重症筋無力症を含む。
重症筋無力症
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の化合物及び組成物を使用して、重症筋無力症を含む補体関連の適応症が治療され得る。重症筋無力症(MG)は、神経から筋への化学的又は神経伝達物質シグナルの正常な伝達に重要であるタンパク質、例えばアセチルコリン受容体(AChR)タンパク質を標的とする自己抗体の産生を特徴とする稀な補体介在性自己免疫疾患である。患者試料中のAChR自己抗体の存在は疾患の指標として使用され得る。本明細書では、用語「MG」はあらゆる形態のMGを包含する。患者の約15%は眼筋に限定された症状を有するが、患者の大部分は全身型重症筋無力症を経験する。本明細書では、用語「全身型重症筋無力症」又は「gMG」は、体全体の複数の筋群を侵すMGを指す。MGの予後は一般的に良性であるが、患者の10%~15%は難治性MGを有する。本明細書では、用語「難治性MG」又は「rMG」は、疾病管理が、現行の療法により達成できないか、又は免疫抑制療法の重度の副作用をもたらすMGを指す。この重度形態のMGは、米国でおよそ9,000人の個人を侵している。
【0084】
MGを有する患者は、特徴的には繰り返し使うとより重度になり休息により回復する筋力低下を呈する。筋力低下は、目の動きを担当するものなど特定の筋にとどまることがあるが、多くの場合より拡散した筋力低下に進行する。MGは、筋力低下が、呼吸を担当する横隔膜及び他の胸壁筋を含む場合、生死にかかわるようにすらなり得る。これは、筋無力症クリーゼ又はMGクリーゼとして知られるMGの最も恐れられている合併症であり、入院、挿管、及び機械換気が必要となる。gMGを有する患者のおよそ15%~20%は、診断の2年以内に筋無力症クリーゼを経験する。
【0085】
MGにおける自己抗体の最も通常の標的は、運動ニューロンがシグナルを骨格筋線維に伝達する点である神経筋接合部に位置するアセチルコリン受容体すなわちAChRである。現行のgMGの療法は、AChRシグナルを増大させることか、非特異的に自己免疫応答を抑制することのいずれかに重点を置いている。症候性のgMGの第一選択療法は、ピリドスチグミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療であり、それはMGの認可された唯一の療法である。軽度の眼の症状の制御には充分であることもあるが、ピリドスチグミン単独療法は、通常、全身性の衰弱の治療には不充分であり、この療法の投薬はコリン作動性副作用により制限され得る。したがって、ピリドスチグミン療法にもかかわらず症状を示したままの患者において、全身性免疫抑制剤を伴うか又は伴わないコルチコステロイドが適応となる(サンダーズ DB(Sanders DB)ら著、2016年、ニューロロジ(Neurology)、第87巻(4号):p.419-25)。gMGに使用される免疫抑制剤には、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、タクロリムス、シクロホスファミド、及びリツキシマブがある。現在まで、これらの薬剤の有効性データはわずかであり、ステロイド療法も免疫抑制療法もgMGの治療に全く認可されていない。さらに、これらの薬剤は全て充分に裏付けられた長期毒性と関連している。胸腺の外科的切除は、非胸腺腫のgMG及び中程度から重度の症状を有する患者に、AChR自己抗体の産生を減少させようとして推奨され得る(ウルフ GI(Wolfe GI)ら著、2016年、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(N Engl J Med)、第375巻(6号):p.511-22)。静脈内(IV)免疫グロブリン及び血漿交換(PLEX)は、筋無力症クリーゼ又は呼吸不全若しくは嚥下障害など生死にかかわる徴候を有する患者での通常短期間の使用に限定される(サンダーズ(Sanders)ら著、2016年)。
【0086】
AChR自己抗体陽性gMGの病因における終末補体カスケードの役割を支持するかなりの証拠がある。実験的自己免疫MGの動物モデルから得られた結果は、神経筋接合部での自己抗体免疫複合体形成が古典補体経路の活性化を引き起こし、神経筋接合部でのC3の局部的活性化及び膜侵襲複合体(MAC)の沈着をもたらし、シグナル伝達の低下及び最終的な筋力低下をもたらすことを実証した(クスナー LL(Kusner LL)ら著、2012年、ニューヨーク科学アカデミーの年報(Ann N Y Acad Sci)、第1274巻(1号):p.127-32)。
【0087】
さらに、C5の阻害は、C5を遮断する抗体、エクリズマブを使用する臨床試験に基づき、難治性gMGの治療のための標的として立証されてきた。エクリズマブは、MG及び2種の他の補体により推進される希少疾病、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)及び非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)での使用に認可されている。第2相のランダム化二重盲検プラセボ対照試験において、エクリズマブは、14人の難治性gMGを有するAChR自己抗体陽性患者で試験され、彼らは、12以上の定量的重症筋無力症(QMG)スコアを有し、以前に少なくとも2つの免疫抑制剤療法(IST)による治療が不成功に終わっていた(その内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるハワード,JF(Howard,JF)著、2013年、米国重症筋無力症財団 MGの臨床的概要(Myasthenia Gravis Foundation of America Clinical Overview of MG))。患者は、1:1の比でエクリズマブかプラセボかを受けとるようにランダム化された。エクリズマブを服用する患者は、全体で16週間の治療の間、1週あたり600mgを4週間受け取り、それに続いて900mgを隔週でIV注入により受け取った。5週間の休薬期間の後、患者は試験の反対のアームにクロスオーバされた。試験の最初の16週間プラセボを受け取った患者はエクリズマブにより治療され、逆も同様であった。主要評価項目は、QMGスコアの3ポイント以上の減少を達成した患者のパーセンテージにより測定された安全性及び有効性であった。QMGスコアにおけるエクリズマブによるC5阻害の影響は迅速に起こり(治療開始の1週間以内)、全治験来院にわたりプラセボと比べてエクリズマブを有利にした(p=0.0144)。最初の16週間治療期間の後で、プラセボアームにおける7人の患者のうちの4人と比べて、エクリズマブ服用の7人の患者のうちの6人が、QMGスコアの3ポイント以上の改善を達成した。プラセボアームにおける1人のみと比べて、エクリズマブに応答した患者のうち4人はQMGスコアの8ポイント減少を達成した。
【0088】
QMGは、特にMG用に開発され、以前に臨床試験に使用された、標準化された検証済みの定量的な強度スコアリングシステムである。スコアリングシステムは、眼、延髄、及び肢の機能に関連する13項目を算定する(バーネット,C(Barnet,C)ら著、2015年、ジャーナル・オブ・ニューロマスキュラ・ディジージズ(J Neuromuscul Dis)、第2巻:p.301-11)。各項目は、0~3でスコアリングされる。最大総合スコアは39である。より高いスコアはより重度の障害を表す。最近のデータは、2~3ポイントのQMGスコアの改善が、疾患重症度に応じて臨床的に意味があると考えられ得ることを示唆する[バローン RJ(Barohn RJ)ら著、1998年、ニューヨーク科学アカデミーの年報(Ann N Y Acad Sci)、第841巻:p.769-772;カッツバーグ HD(Katzberg HD)ら著、2014年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第49巻(5号):p.661-665]。
【0089】
以前に2つのISTが不成功に終わったか、又は1つのISTが不成功に終わり慢性血漿交換若しくはIV免疫グロブリン療法が必要であった、6以上の重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコアを有する125人のAChR自己抗体陽性患者を登録した第3相試験(NCT01997229)も完了した。MG-ADLは、MG症状重症度を評価するように設計された簡潔な8項目の調査である。各項目は0~3でスコアリングされる。最大総合スコアは24である。より高いスコアは、MGのより重度の症状と関連する。MG-ADLが、他の検証済みのMG転帰尺度(例えばMG-QOL15r)と相関することが示され、MG-ADLスコアの2ポイント改善は臨床的に意味があると考えられる[ウルフ GI(Wolfe GI)ら著、1999年、ニューロロジ(Neurology)、第52巻(7号):p.1487-9;ムッピディ S(Muppidi S)ら著、2011年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第44巻(5号):p.727-31]。MG-QOL15rは、患者の報告に基づいてMG患者の生活の質を算定するように設計された15項目の調査である。各項目は0~2でスコアリングされる。最大総合スコアは30である。より高いスコアは、患者の生活の側面に対する疾患のより重度の影響を示す[バーンズ,TM(Burns,TM)ら著、2010年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第41巻(2号):p.219-26;バーンズ TM(Burns TM)ら著、2016年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第54巻(6号):p.1015-22]。
【0090】
患者は、26週間の治療期間の間プラセボかエクリズマブかを受け取るように1:1にランダム化され、それに続いて延長試験があった。エクリズマブを受け取る患者は、1週あたり900mgにより4週間、それに続いて1200mgにより隔週でIV注入により治療された。エクリズマブ治療は、この試験において、MG-ADL中の主要評価項目のベースラインからの変化において、プラセボに対して統計的に有意な利益と関連しなかった(p=0.0698)。しかし、統計的に有意な結果は、QMGスコア中の副次的評価項目のベースラインからの変化を含む、22の事前指定された分析のうち18で観察された(p=0.0129)。総合すると、これら2つの臨床試験の結果は、C5の切断を遮断することによる終末補体カスケードの阻害が、gMGの治療のための臨床的に検証された標的であることを確立する。第3相試験で主要評価項目が不首尾に終わったにもかかわらず、エクリズマブは、AChR自己抗体を有する成人MG患者の治療として、米国、欧州連合、及び日本において、データの全体性に基づいて2017年に認可された。
【0091】
抗AChR自己抗体の筋終板への結合は、古典補体カスケードの活性化及びシナプス後筋線維へのMACの沈着をもたらし、筋膜の局部的損傷及び神経細胞による刺激に対する筋の反応性の減少につながる。終末補体活性の阻害を使用して、MG(例えば、gMG及び/又はrMG)から生じる補体介在性損傷を遮断できる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のC5阻害剤を使用して、MGを治療できる。そのような阻害剤はジルコプランを含み得る。C5切断の阻害は、例えば、患者神経筋接合部の節後膜(post-junctional membranes)においてMACの下流集合及び活性を妨げ、MG(例えば、gMG及び/又はrMG)と関連する神経筋問題を減少又は予防し得る。エクリズマブとは異なり、ジルコプランはC5のC5b部分に結合し、C5a及びC5bサブユニットへの切断を阻害する。ジルコプランは、遊離のC5bとも結合し、C6への結合及びその後のMAC集合を妨げる。したがって、ジルコプランは、MAC集合を2つの異なる機構により阻害する(
図1参照)。さらに、ジルコプランは特異的にC5に結合し、緩徐な解離速度と合わせて、C5との強力で迅速な会合を示す。
【0092】
スクリーニング
ジルコプランにより治療される対象は、ジルコプラン投与に先立ちスクリーニングされ得る。本明細書では、用語「スクリーン」は、選択又はふるい分け(filtration)の目的で実施される検査又は評価を指す。対象は、治療を必要とする個人が選択されるようにスクリーニングされ得る。いくつかの実施形態において、対象は、治療に対して好都合に応答する可能性が最も高い個人が選択されるようにスクリーニングされる。いくつかの実施形態において、スクリーニングは、治療と関連するリスクがより高い個人を除外するように実施される。スクリーニングは、QMGスコアの算定を含み得る。先に述べられた通り、QMGは、特にMG用に開発され、以前に臨床試験に使用された、標準化された検証済みの定量的な強度スコアリングシステムである。より高いスコアは、より重度の障害を表す。最近のデータは、2~3ポイントのQMGスコアの改善が、疾患重症度に応じて臨床的に意味があると考えられ得ることを示唆する[バローン RJ(Barohn RJ)ら著、1998年、ニューヨーク科学アカデミーの年報(Ann N Y Acad Sci)、第841巻:p.769-772;カッツバーグ HD(Katzberg HD)ら著、2014年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第49巻(5号):p.661-665、これらの内容は参照により本明細書にその全体として組み込まれる]。いくつかの実施形態において、対象は、12以上のQMGスコアを有する対象を選択するようにスクリーニングされる。いくつかの実施形態において、選択される対象は、4以上のQMG試験項目で2以上のスコアを達成するQMGスコアを有する。
【0093】
スクリーニングに先立ち又はその間にMG療法を受ける対象は、スクリーニングプロセスの間にそのような療法を受けたままでよいことも、スクリーニングプロセスの前又はその間に1つ以上の治療を保留するように求められることもある。いくつかの実施形態において、以前のMG療法とスクリーニング評価の間のある期間が要求される。その期間は、特定のスクリーニング評価から信頼できる結果を得るために要求され得る。いくつかの実施形態において、QMGスコアを算定される対象は、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、MG療法から除かれ得る。QMGスコアを算定される対象は、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤療法(例えばピリドスチグミン治療)から除かれ得る。
【0094】
スクリーニングは、対象を年齢に基づいて選択することを含み得る。いくつかの実施形態において、スクリーニングは、18~85歳の年齢の対象を選択するように実施され得る。
【0095】
スクリーニングは、以前にgMGであると診断された対象を選択することを含み得る。gMG診断は、米国重症筋無力症財団(Myasthenia Gravis Foundation of America)(MGFA)基準;クラスII~IVaに従ってなされ得る(ハワード,J.F.(Howard,J.F.)著、2009年、重症筋無力症 医療従事者用のマニュアル(Myasthenia Gravis A Manual for the Health Care Provider)、米国重症筋無力症財団(Myasthenia Gravis Foundation of America,Inc.)を参照されたい)。
【0096】
スクリーニングは、バイオマーカレベルの算定を含み得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカは、アセチルコリンエステラーゼ受容体(AChR)自己抗体レベルを含む。AChR自己抗体は、AChRと結合し、補体活性化を刺激することにより疾患をもたらし得る。したがって、AChR自己抗体レベルは、補体介在性疾患の良好な指標であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカは、筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)に対する自己抗体を含む。抗MuSK抗体を有する対象は、予測しにくい治療成績と関連する別個のMGサブセットの一部である(ラブルニック,D.(Lavrnic,D.)ら著、2005年、ジャーナル・オブ・ニューロロジ・ニューロサージャリー・アンド・サイカイアトリー(J Neurol Neurosurg Psychiatry)、第76巻:p.1099-102)。スクリーニングは、抗MuSK抗体を有する対象を、治療及び/又は評価から除外することを含み得る。
【0097】
スクリーニングは、対象の以前及び現在の治療の検査を含み得る。いくつかの実施形態において、対象は、治療の最近の変化に基づいてスクリーニングされる。いくつかの実施形態において、対象は、スクリーニングに先立ちコルチコステロイド投与量又は免疫抑制療法に変化がないことを確認するようにスクリーニングされる。スクリーニングは、対象のコルチコステロイド治療投与量又は免疫抑制療法レジメンが、スクリーニングに先立つ30日以内に変化する場合に、治療から対象を除外し得る。
【0098】
対象は、妊娠状態に関してスクリーニングされ得る。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は治療から除外され得る。妊娠状態スクリーニングは血清妊娠試験により実施され得る。いくつかの実施形態において、妊娠スクリーニングは尿妊娠検査を含み得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、スクリーニングは、重大又は危機的段階に達する前に起こるMGの病期を有する対象を特定するように実施され得る。そのようなスクリーニングは、MGになるのに先立ち、又は積極的治療若しくは予防的治療から利益を得ることがある疾患経過の早期に対象を特定するように実施され得る。
【0100】
ジルコプラン治療
ジルコプランは、古典経路の活性化時に用量依存的にC5a形成を阻害し、古典及び別補体経路の活性化時にC5b形成を阻害する(補体活性化表面でのC5b-9すなわちMACの沈着により測定して)(米国特許第9,937,222号明細書)。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、対象へのジルコプラン投与によるMGを治療する方法を含む。MG治療はgMGを含み得る。ジルコプラン投与は皮下(SC)投与であり得る。ジルコプランは、約0.01mg/kg(mgジルコプラン/kg対象体重)~約1.0mg/kg、約0.02mg/kg~約2.0mg/kg、約0.05mg/kg~約3.0mg/kg、約0.10mg/kg~約4.0mg/kg、約0.15mg/kg~約4.5mg/kg、約0.20mg/kg~約5.0mg/kg、約0.30mg/kg~約7.5mg/kg、約0.40mg/kg~約10mg/kg、約0.50mg/kg~約12.5mg/kg、約0.1mg/kg~約0.6mg/kg、約1.0mg/kg~約15mg/kg、約2.0mg/kg~約20mg/kg、約5.0mg/kg~約25mg/kg、約10mg/kg~約45mg/kg、約20mg/kg~約55mg/kg、約30mg/kg~約65mg/kg、約40mg/kg~約75mg/kg、約50mg/kg~約150mg/kg、約100mg/kg~約250mg/kg、約200mg/kg~約350mg/kg、約300mg/kg~約450mg/kg、約400mg/kg~約550mg/kg、又は約500mg/kg~約1000mg/kgの投与量で投与され得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、ジルコプランは、約0.10mg/kg~約0.42mg/kgの投与量で投与され得る。
本開示の方法は、約0.1mg/kg~約0.3mg/kgの1日量でジルコプランを投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、ジルコプランは、0.3mg/kgの1日量で投与される。対象QMGスコア及び/又はMG-ADLスコアは、投与の結果として減少し得る。QMGスコアは、8週間の治療により3ポイント以上減少し得る。MG-ADLスコアは、8週間の治療により2ポイント以上減少し得る。救援療法(IVIG又は血漿交換)を必要とするリスクは減少し得る。
【0103】
ジルコプラン投与は自己投与によるものであり得る。ジルコプラン投与は、プレフィルドシリンジの使用を含み得る。自己投与は、自己投与装置の使用を含み得る。自己投与装置は、プレフィルドシリンジを含み得るか、又はプレフィルドシリンジを合体し得る。
【0104】
ジルコプランは溶解状態で提供され得る。ジルコプラン溶液は水溶液を含み得る。ジルコプラン溶液はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含み得る。ジルコプラン溶液は保存剤不含であり得る。ジルコプランは、約0.01mg/mL~約1mg/mL、約0.05mg/mL~約2mg/mL、約1mg/mL~約5mg/mL、約2mg/mL~約10mg/mL、約4mg/mL~約16mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、約8mg/mL~約24mg/mL、約10mg/mL~約30mg/mL、約12mg/mL~約32mg/mL、約14mg/mL~約34mg/mL、約16mg/mL~約36mg/mL、約18mg/mL~約38mg/mL、約20mg/mL~約40mg/mL、約22mg/mL~約42mg/mL、約24mg/mL~約44mg/mL、約26mg/mL~約46mg/mL、約28mg/mL~約48mg/mL、約30mg/mL~約50mg/mL、約35mg/mL~約55mg/mL、約40mg/mL~約60mg/mL、約45mg/mL~約75mg/mL、約50mg/mL~約100mg/mL、約60mg/mL~約200mg/mL、約70mg/mL~約300mg/mL、約80mg/mL~約400mg/mL、約90mg/mL~約500mg/mL、又は約100mg/mL~約1000mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、自己投与装置はジルコプラン溶液を含む。自己投与装置は、約0.010mL~約0.500mL、約0.050mL~約0.600mL、約0.100mL~約0.700mL、約0.150mL~約0.810mL、約0.200mL~約0.900mL、約0.250mL~約1.00mL、約0.300mL~約3.00mL、約0.350mL~約3.50mL、約0.400mL~約4.00mL、約0.450mL~約4.50mL、約0.500mL~約5.00mL、約0.550mL~約10.0mL、約0.600mL~約25.0mL、約0.650mL~約50.0mL、約0.700mL~約60.0mL、約0.750mL~約75.0mL、約0.800mL~約80.0mL、約0.850mL~約85.0mL、約0.900mL~約90.0mL、約0.950mL~約95.0mL、約1.00mL~約100mL、約2.00mL~約200mL、約5.00mL~約500mL、約10.0mL~約750mL、約25.0mL~約800mL、約50.0mL~約900mL、又は約100mL~約1000mLのジルコプラン溶液体積を含み得る。
【0106】
ジルコプラン治療は、連続的でも、1つ以上の投与量でもよい。いくつかの実施形態において、治療は、毎時、毎日、隔日、毎週、隔週、毎月、又はそれらの組合せで起こる投与である。ジルコプラン治療は連日投与を含み得る。対象ジルコプラン血漿レベルは、治療の最初の日に最大濃度(Cmax)に達し得る。血清溶血はジルコプラン治療により阻害され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも90%溶血阻害が、ジルコプラン治療により対象血清中で達成される。投与の間、対象はgMGの標準治療療法を受け得る。MGの標準治療療法は、血漿交換、静脈内イミュノグロビン(immunoglobin)(IVIG)治療、生物製剤(例えばリツキシマブ又はエクリズマブ)、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び/又は免疫抑制薬治療を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、対象は、ジルコプラン治療の過程でコリンエステラーゼ阻害剤治療を受ける。
【0107】
MGのジルコプラン治療は、異なる人口学的背景及び疾患の病期の種々の対象と共に実施され得る。治療は、難治性(他の標準的な療法に抵抗性又は反応しない)MGの対象と共にも、非難治性MGの対象と共にも実施され得る。難治性対象は、エクリズマブによる以前の療法に抵抗性又は反応しなかった対象を含み得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、重大又は危機的段階に達するに先立って起こるMGの病期を有する対象がジルコプランにより治療される。そのような治療は、積極的治療又は予防的治療の利益を与えるために、MGになるのに先立ち、又は疾患経過の早期に対象を治療するように実施され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明は、0.1~0.3mg/kgジルコプランを対象に皮下又は静脈内投与することを含むMGを治療する方法に使用するためのジルコプランを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、0.1mg/kg又は0.3mg/kgジルコプランを対象に皮下又は静脈内投与することを含むMGを治療する方法に使用するためのジルコプランを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、0.1mg/kg又は0.3mg/kgジルコプランを対象に皮下投与することを含むMGを治療する方法に使用するためのジルコプランを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、0.3mg/kgジルコプランを対象に皮下投与することを含むMGを治療する方法に使用するためのジルコプランを提供する。いくつかの実施形態において、MGはgMGである。いくつかの実施形態において、対象はAChR自己抗体陽性である。
【0110】
評価
MGのジルコプラン治療を受ける対象は、治療の間又はその後に有効性に関して評価され得る。本明細書では、用語「被治療対象」は、少なくとも1つの治療を受けた個人を指す。ジルコプラン被治療対象評価は、有効性の1つ以上の測定基準の評価を含み得る。いくつかの実施形態において、評価は、評価に先立つある期間、対象治療が保留されることを要求し得る。いくつかの評価は、評価の前、その間、及び/又はその後に、対象が一貫した治療を維持することを要求し得る。保留又は維持される治療はジルコプラン治療であり得る。いくつかの実施形態において、保留又は維持される治療は、MGの病態又は非MG病態の他の治療を含む。
【0111】
評価が実施されて、主要有効性評価項目が算定され得る。本明細書では、用語「主要評価項目」は、特定の試験によりだされる最も重要な質問に答える結果を指す。用語「副次的評価項目」は、主要な質問より下位の他の関連する質問に答える結果を指す。主要有効性評価項目が、治療が有効であるかどうかを検討する結果である一方で、副次的有効性評価項目は1つ以上の周辺的な質問(例えば、生活の質影響、副作用重症度など)を検討する。
【0112】
評価が実施されて、対象MG特徴が算定され得る。本明細書では、用語「MG特徴」は、対象におけるMGの存在又は重症度と関連する身体的又は精神的特質又は1式の特質を指す。MG特徴は、様々な疾患評価方法を使用して得られたスコアを含み得る。MG特徴は、QMGスコア、MG-ADLスコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、対象は、経時的にMG特徴に関してモニタリングされ得る。そのようなモニタリングはMG疾患の過程で実施され得る。モニタリングは疾患治療の過程で実施され得る。いくつかの実施形態において、対象評価又はモニタリングは、ジルコプランによる対象治療の間又はその後に、MG特徴の変化を算定するために実施される。
【0113】
いくつかの実施形態において、ジルコプラン被治療対象は、QMGスコアに関して評価又はモニタリングされる。先に述べられた通り、QMGは、特にMG用に開発され、以前に臨床試験に使用された、標準化された検証済みの定量的な強度スコアリングシステムである。スコアリングシステムは、眼、延髄、及び肢の機能に関連する13項目を算定する(バーネット,C(Barnet,C)ら著、2015年、ジャーナル・オブ・ニューロマスキュラ・ディジージズ(J Neuromuscul Dis)、第2巻:p.301-11)。各項目は、0~3でスコアリングされる。最大総合スコアは39である。より高いスコアはより重度の障害を表す。最近のデータは、2~3ポイントのQMGスコアの改善が、疾患重症度に応じて臨床的に意味があると考えられ得ることを示唆する[バローン RJ(Barohn RJ)ら著、1998年、ニューヨーク科学アカデミーの年報(Ann N Y Acad Sci)、第841巻:p.769-772;カッツバーグ HD(Katzberg HD)ら著、2014年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第49巻(5号):p.661-665、これらの内容は参照により本明細書にその全体として組み込まれる]。QMGスコアに関して算定されている対象は、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、MG療法から除かれ得る。MG療法は、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤療法(例えばピリドスチグミン治療)を含み得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、QMGスコアの変化は主要有効性評価項目であり得る。被治療対象QMGスコアは減少し得る。QMGスコアは、少なくとも3ポイント減少し得る。QMGスコアは、12週間のジルコプラン治療で又はその前に減少し得る。被治療対象QMGスコアは、ジルコプラン治療の過程でモニタリングされ得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、ジルコプラン被治療対象評価は、MG-ADLスコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアの1つ以上に関して試験及び/又はモニタリングすることを含み得る。そのようなスコアは、副次的有効性評価項目として評価され得る。先に説明された通り、MG-ADLは、MG症状重症度を評価するように設計された簡潔な8項目の調査である。各項目は0~3でスコアリングされる。最大総合スコアは24である。より高いスコアは、MGのより重度の症状と関連する。MG-ADLが、他の検証済みのMG転帰尺度(例えばMG-QOL15r)と相関することが示され、MG-ADLスコアの2ポイント改善は臨床的に意味があると考えられる[ウルフ GI(Wolfe GI)ら著、1999年、ニューロロジ(Neurology)、第52巻(7号):p.1487-9;ムッピディ S(Muppidi S)ら著、2011年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第44巻(5号):p.727-31、これらの内容は参照により本明細書にその全体として組み込まれる]。MG-QOL15rは、先に説明された通り、患者の報告に基づいてMGの患者の生活の質を算定するように設計された15項目の調査である。各項目は0~2でスコアリングされる。最大総合スコアは30である。より高いスコアは、患者の生活の側面に対する疾患のより重度の影響を示す[バーンズ,TM(Burns,TM)ら著、2010年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第41巻(2号):p.219-26;バーンズ TM(Burns TM)ら著、2016年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第54巻(6号):p.1015-22、これらの内容は参照により本明細書にその全体として組み込まれる]。MGコンポジットは、治療応答を評価するために、開業医の環境(practice setting)と臨床試験の両方でMGの患者の臨床状態を測定するために使用されてきた10項目のスケールである(バーンズ,T.M.(Burns,T.M.)ら著、2008年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第38巻:p.1553-62)。10項目は、眼、延髄、呼吸器、首、及び肢の機能に関連して算定される。項目は重みづけされ、スコアは0~9である。最大総合スコアは50である。MGコンポジットにおけるより高いスコアは、疾患による、より重度の障害を示す。この手段における3ポイント変化は臨床的に意味があると考えられる[バーンズ,T.M.(Burns,T.M.)ら著、2010年、ニューロロジ(Neurology)、第74巻(18号):p.1434-40;サドジャディ,DB(Sadjadi,DB)ら著、2012年、ニューロロジ(Neurology)2016年;第87巻(4号):p.419-425、これらの内容は参照により本明細書にその全体として組み込まれる]。
【0116】
MG-ADL、MG-QOL15r、及び/又はMGコンポジットスコアの試験又はモニタリングは、ベースラインスコアからの変化を特定するために使用され得る。本明細書では、用語「ベースラインスコア」は、初期治療の前に得られたスコアを指す。ベースラインスコアは、ある治療から別の治療への切替えの間に得られたスコアであり得る。切替えは、プラセボから活性のある医薬化合物になるものであり得る。いくつかの実施形態において、ジルコプラン治療は、MG-ADLスコアの少なくとも2ポイントの減少に関して評価され得る。減少は、12週間のジルコプラン治療で又はその前に起こり得る。いくつかの実施形態において、ジルコプラン治療は、MGコンポジットスコアの少なくとも3ポイントの減少に関して評価され得る。減少は、12週間のジルコプラン治療で又はその前に起こり得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、ジルコプラン治療は、対象症状発現の減少につながる。対象症状発現の減少は、エクリズマブ投与と関連する対象症状発現の減少を超え得る。
評価方法
いくつかの実施形態において、本開示は、MGの治療を評価する方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つの評価参加基準に関して評価候補をスクリーニングすることを含み得る。本明細書では、用語「評価候補」は、評価(例えば臨床試験)への参加を検討されているあらゆる個人を指す。「評価参加基準」は、評価に含める個人を選択するのに使用される測定基準又は因子を指す。評価への参加に選択された評価候補は、本明細書において「評価参加者」と称される。いくつかの実施形態において、MGの治療を評価する方法は、少なくとも1つの評価参加基準に関して評価候補をスクリーニングすること;評価参加者を選択すること;MGの治療を評価参加者に投与すること;及び少なくとも1つの有効性評価項目を算定することを含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、評価参加基準はMG診断を含む。MG診断はgMG診断を含み得る。gMGの診断は、MGFA基準に従ってなされ得る。いくつかの実施形態において、評価参加基準はQMGスコアを含む。評価参加者選択は、12以上の評価候補QMGスコアを要し得る。評価候補の一部は、スクリーニングに先立ち、少なくとも1つの代替MG治療(すなわち、標準治療など、試験されているMGの治療に代わるもの)を受けた可能性がある。いくつかの実施形態において、そのような候補は、直近の代替MG治療の少なくとも10時間後に、QMGスコアに関して算定され得る。代替MG治療は、コリンエステラーゼ阻害剤治療、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤治療、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び免疫抑制薬治療を含むがこれらに限定されない標準治療MG治療を含み得る。評価参加者選択は、4つ以上のQMG試験項目で2以上のスコアを要し得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、評価参加基準は評価候補年齢を含む。いくつかの実施形態において、評価候補は18~85歳でなくてはならない。
評価参加基準は、候補バイオマーカレベルを含み得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカはアセチルコリンエステラーゼ受容体(AChR)自己抗体レベルを含む。AChR自己抗体は、AChRと結合し、補体活性化を刺激することにより疾患をもたらし得る。したがって、AChR自己抗体レベルは、補体介在性疾患になりやすいことの良好な指標であり得る。
【0120】
評価参加基準は、候補の以前及び現在の代替MG治療状態を含み得る。いくつかの実施形態において、評価参加者は、現在又は前の代替MG治療の一貫性(consistency)に基づいて選択される。いくつかの実施形態において、コルチコステロイド投与量又は免疫抑制療法の最近の変化がない候補が選択される。過去30日以内にコルチコステロイド治療投与量又は免疫抑制療法レジメン変化がある候補は、評価参加から除外され得る。
【0121】
評価参加基準は妊娠状態を含み得る。いくつかの実施形態において、妊娠中の対象は評価参加から除外され得る。妊娠状態スクリーニングは血清妊娠試験により実施され得る。いくつかの実施形態において、妊娠スクリーニングは尿妊娠検査を含み得る。
【0122】
MGの治療を評価する方法は、MGの治療を評価参加者に評価期間にわたって投与することを含み得る。本明細書では、用語「評価期間」は、特定の試験が行われる時間枠を指す。治療は、約1日~約24週間の評価期間にわたり投与され得る。いくつかの評価期間は約12週間以上である。評価参加者は、評価期間にわたり標準治療gMG療法を受け続け得る。そのような療法は、コリンエステラーゼ阻害剤治療、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤治療、ピリドスチグミン治療、コルチコステロイド治療、及び/又は免疫抑制薬治療を含み得るが、これらに限定されない。
【0123】
有効性評価項目は、MGを有する個人の評価と関連する特定のスコア又はスコアの変化を含み得る。そのような評価は、QMGスコア、MG-ADLスコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、有効性評価項目はQMGスコア減少を含む。有効性評価項目は、QMGスコアの少なくとも3ポイント減少を含み得る。評価期間の間に代替MG治療(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤治療)を受けている評価参加者では、これらの治療の1つ以上が、QMGスコア算定に先立つ少なくとも10時間、保留され得る。いくつかの実施形態において、有効性評価項目は、ベースラインスコアに対する、MG-ADLスコア、MG-QOL15rスコア、及びMGコンポジットスコアの1つ以上の減少を含む。有効性評価項目は、ベースラインスコアに対するMG-ADLスコアの2ポイント減少を含み得る。MG-ADLスコアの減少は、12週間のMGの治療で又はその前に起こり得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、有効性評価項目を算定することは一式の算定を含む。一式の算定は、特定の順序で実施され得る。いくつかの実施形態において、一式の算定は以下の順序で実施される:(1)評価参加者MG-QOL15rスコアを算定すること;(2)評価参加者MG-ADLスコアを算定すること;(3)評価参加者QMGスコアを算定すること;及び(4)評価参加者MGコンポジットスコアを算定すること。
【0125】
有効性評価項目の算定は、MGの治療を投与した後、1つ以上の場合に実施され得る。そのような算定は、特定の時間及び/又は日に実施され得ることもあり、繰り返して実施されることもある(例えば、毎時、毎日、毎週、毎月、又はそれらの組合せ)。いくつかの実施形態において、算定は、MGの治療の投与を開始した1週間後、2週間後、4週間後、8週間後、及び/又は12週間後に実施される。
【0126】
製剤
いくつかの実施形態において、本開示の化合物又は組成物、例えば医薬組成物は、水溶液中に製剤される。いくつかの場合において、水溶液は、1種以上の塩及び/又は1種以上の緩衝剤をさらに含む。塩は、約0.05mM~約50mM、約1mM~約100mM、約20mM~約200mM、又は約50mM~約500mM濃度で含まれ得る塩化ナトリウムを含み得る。さらなる溶液は少なくとも500mM塩化ナトリウムを含み得る。いくつかの場合において、水溶液はリン酸ナトリウムを含む。リン酸ナトリウムは、約0.005mM~約5mM、約0.01mM~約10mM、約0.1mM~約50mM、約1mM~約100mM、約5mM~約150mM、又は約10mM~約250mMの濃度で水溶液中に含まれ得る。いくつかの場合において、少なくとも250mMリン酸ナトリウム濃度が使用される。
【0127】
本開示の組成物は、約0.001mg/mL~約0.2mg/mL、約0.01mg/mL~約2mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約0.5mg/mL~約5mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約15mg/mL~約40mg/mL、約25mg/mL~約75mg/mL、約50mg/mL~約200mg/mL、又は約100mg/mL~約400mg/mLの濃度のC5阻害剤を含み得る。いくつかの場合において、組成物は、少なくとも400mg/mLの濃度のC5阻害剤を含む。
【0128】
本開示の組成物は、およそ、約、又は正確に以下の値のいずれかの濃度のC5阻害剤を含み得る:0.001mg/mL、0.2mg/mL、0.01mg/mL、2mg/mL、0.1mg/mL、10mg/mL、0.5mg/mL、5mg/mL、1mg/mL、20mg/mL、15mg/mL、40mg/mL、25mg/mL、75mg/mL、50mg/mL、200mg/mL、100mg/mL、又は400mg/mL。いくつかの場合において、組成物は少なくとも40mg/mLの濃度のC5阻害剤を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、少なくとも水及びC5阻害剤(例えば環状C5阻害剤ポリペプチド)を含む水性組成物を含む。水性C5阻害剤組成物は、1種以上の塩及び/又は1種以上の緩衝剤をさらに含み得る。いくつかの場合において、水性組成物は、水、環状C5阻害剤ポリペプチド、塩、及び緩衝剤を含む。
【0130】
水性C5阻害剤製剤は、約2.0~約3.0、約2.5~約3.5、約3.0~約4.0、約3.5~約4.5、約4.0~約5.0、約4.5~約5.5、約5.0~約6.0、約5.5~約6.5、約6.0~約7.0、約6.5~約7.5、約7.0~約8.0、約7.5~約8.5、約8.0~約9.0、約8.5~約9.5、又は約9.0~約10.0のpHレベルを有し得る。
【0131】
いくつかの場合において、本開示の化合物及び組成物は、適正製造基準(GMP)及び/又は現行GMP(cGMP)に従って調製される。GMP及び/又はcGMPを実施するのに使用されるガイドラインは、米国食品医薬品局(FDA)、世界保健機関(WHO)、及び医薬品規制調和国際会議(ICH)の1つ以上から得ることができる。
【0132】
用量及び投与
ヒト対象の治療のために、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は医薬組成物として製剤され得る。治療される対象、投与様式、及び望まれる治療の種類(例えば、予防(prevention)、予防(prophylaxis)、又は療法)によって、C5阻害剤は、これらのパラメータと調和する方法で製剤され得る。そのような技法のまとめは、それぞれ参照により本明細書に組み込まれているレミントン:薬科学(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams&Wilkins)、(2005年);及び薬理学テクノロジー百科事典(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology)J.スウォーブリック(J.Swarbrick)及びJ.C.ボイラン(J.C.Boylan)編、1988-1999、マルセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨークに見出される。
【0133】
C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、治療上有効な量で提供され得る。いくつかの場合において、C5阻害剤の治療上有効な量は、約0.1mg~約1mg、約0.5mg~約5mg、約1mg~約20mg、約5mg~約50mg、約10mg~約100mg、約20mg~約200mg、又は少なくとも200mgの投与量の1種以上のC5阻害剤の投与により達成され得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、対象は、そのような対象の体重に基づいて治療量のC5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)を投与され得る。いくつかの場合において、C5阻害剤は、約0.001mg/kg~約1.0mg/kg、約0.01mg/kg~約2.0mg/kg、約0.05mg/kg~約5.0mg/kg、約0.03mg/kg~約3.0mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約2.0mg/kg、約0.2mg/kg~約3.0mg/kg、約0.4mg/kg~約4.0mg/kg、約1.0mg/kg~約5.0mg/kg、約2.0mg/kg~約4.0mg/kg、約1.5mg/kg~約7.5mg/kg、約5.0mg/kg~約15mg/kg、約7.5mg/kg~約12.5mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約15mg/kg~約30mg/kg、約20mg/kg~約40mg/kg、約30mg/kg~約60mg/kg、約40mg/kg~約80mg/kg、約50mg/kg~約100mg/kg、又は少なくとも100mg/kgの投与量で投与される。そのような範囲は、ヒト対象への投与に好適な範囲を含み得る。用量レベルは、病態の性質;薬物有効性;患者の状態;開業医の判断;並びに投与の頻度及び様式に高度に依存し得る。いくつかの実施形態において、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体は、約0.01mg/kg~約10mg/kgの投与量で投与され得る。いくつかの場合において、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体は、約0.1mg/kg~約3mg/kgの投与量で投与され得る。
【0135】
いくつかの場合において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、試料、生体系、又は対象におけるC5阻害剤の所望のレベル(例えば、対象中の血漿レベル)を達成するように調整された濃度で提供される。いくつかの場合において、試料、生体系、又は対象中のC5阻害剤の所望の濃度は、約0.001μM~約0.01μM、約0.005μM~約0.05μM、約0.02μM~約0.2μM、約0.03μM~約0.3μM、約0.05μM~約0.5μM、約0.01μM~約2.0μM、約0.1μM~約50μM、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約5μM、約0.2μM~約20μM、約5μM~約100μM、又は約15μM~約200μMの濃度を含み得る。いくつかの場合において、対象血漿中のC5阻害剤の所望の濃度は約0.1μg/mL~約1000μg/mLであり得る。対象血漿中のC5阻害剤の所望の濃度は、約0.01μg/mL~約2μg/mL、約0.02μg/mL~約4μg/mL、約0.05μg/mL~約5μg/mL、約0.1μg/mL~約1.0μg/mL、約0.2μg/mL~約2.0μg/mL、約0.5μg/mL~約5μg/mL、約1μg/mL~約5μg/mL、約2μg/mL~約10μg/mL、約3μg/mL~約9μg/mL、約5μg/mL~約20μg/mL、約10μg/mL~約40μg/mL、約30μg/mL~約60μg/mL、約40μg/mL~約80μg/mL、約50μg/mL~約100μg/mL、約75μg/mL~約150μg/mL、又は少なくとも150μg/mLであり得る。他の実施形態において、C5阻害剤は、少なくとも0.1μg/mL、少なくとも0.5μg/mL、少なくとも1μg/mL、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも100μg/mL、又は少なくとも1000μg/mLの最大血清濃度(Cmax)を達成するのに充分な投与量で投与される。
【0136】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、対象の体重のkgあたり約0.1mg/日~約60mg/日を送達するのに充分な投与量で連日投与される。いくつかの場合において、各投与量で達成されるCmaxは約0.1μg/mL~約1000μg/mLである。そのような場合において、投与の間の曲線下面積(AUC)は約200μg・時/mL~約10,000μg・時/mLであり得る。
【0137】
本開示のいくつかの方法によると、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、所望の効果を達成するのに必要とされる濃度で提供される。いくつかの場合において、本開示の化合物及び組成物は、所与の反応又はプロセスを半分減少させるのに必要な量で提供される。そのような減少を達成するのに必要とされる濃度は、本明細書において、半数阻害濃度又は「IC50」と称される。或いは、本開示の化合物及び組成物は、所与の反応、活性、又はプロセスを半分増加させるのに必要とされる量で提供され得る。そのような増加のために必要とされる濃度は、本明細書において、半数効果濃度又は「EC50」と称される。
【0138】
C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、合計で組成物の総重量の0.1~95重量%となる量で存在し得る。いくつかの場合において、C5阻害剤は静脈内(IV)投与により提供される。いくつかの場合において、C5阻害剤は皮下(SC)投与により提供される。
【0139】
C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)のSC投与は、いくつかの場合において、IV投与より優れた利点を与え得る。SC投与は、自己投与装置などの投与装置を使用することによる自己投与を含み得る。本明細書では、用語「自己投与」は、治療的処置の受容者により全体的又は一部分実施されるあらゆる形態の治療送達を指す。自己投与装置は自己注射装置を含み得る。自己投与治療は、患者が自宅で自身に治療を提供でき、供給者又は医療施設に移動する必要性が回避される点で好都合であり得る。さらに、SC治療により、患者が、感染症、静脈アクセスの喪失、局所血栓症、及び血腫など、IV投与と関連する長期合併症を避けることができる。いくつかの実施形態において、自己注射装置を使用する自己投与は、患者コンプライアンス、患者満足感、生活の質を増加させ、治療コスト及び/又は薬物の要件を減少させ得る。
【0140】
いくつかの場合において、連日SC投与は、1~3回の投与、2~3回の投与、3~5回の投与、又は5~10回の投与以内に到達される定常状態C5阻害剤濃度を提供する。いくつかの場合において、約0.1mg/kg~約0.3mg/kgの連日SC投与量は、2.5μg/mL以上の持続したC5阻害剤レベル及び/又は90%を超える補体活性の阻害を達成し得る。
【0141】
C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、SC投与後の緩徐な吸収動態(4~8時間を超える最高濃度到達時間)及び高いバイオアベイラビリティ(約75%~約100%)を示し得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、用量及び/又は投与が変更されて、対象又は対象流体(例えば血漿)中のC5阻害剤レベルの半減期(t1/2)が調節される。いくつかの場合において、t1/2は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも16時間、少なくとも20時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、又は少なくとも16週間である。
【0143】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は長い終末相t1/2を示し得る。長い終末相t1/2は、大規模な標的結合及び/又は追加の血漿タンパク結合によるものであり得る。いくつかの場合において、C5阻害剤は、血漿と全血の両方において24時間を超えるt1/2値を示す。いくつかの場合において、37℃のヒト全血中で16時間のインキュベーション後に、C5阻害剤は機能活性を失わない。
【0144】
いくつかの実施形態において、用量及び/又は投与が変更されて、C5阻害剤の定常状態分布容積が調節される。いくつかの場合において、C5阻害剤の定常状態分布容積は、約0.1mL/kg~約1mL/kg、約0.5mL/kg~約5mL/kg、約1mL/kg~約10mL/kg、約5mL/kg~約20mL/kg、約15mL/kg~約30mL/kg、約10mL/kg~約200mL/kg、約20mL/kg~約60mL/kg、約30mL/kg~約70mL/kg、約50mL/kg~約200mL/kg、約100mL/kg~約500mL/kg、又は少なくとも500mL/kgである。いくつかの場合において、C5阻害剤の用量及び/又は投与が調整されて、定常状態分布容積が全血液体積の少なくとも50%であることが確実にされる。いくつかの実施形態において、C5阻害剤分布は血漿コンパートメントに限定され得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、約0.001mL/時/kg~約0.01mL/時/kg、約0.005mL/時/kg~約0.05mL/時/kg、約0.01mL/時/kg~約0.1mL/時/kg、約0.05mL/時/kg~約0.5mL/時/kg、約0.1mL/時/kg~約1mL/時/kg、約0.5mL/時/kg~約5mL/時/kg、約0.04mL/時/kg~約4mL/時/kg、約1mL/時/kg~約10mL/時/kg、約5mL/時/kg~約20mL/時/kg、約15mL/時/kg~約30mL/時/kg、又は少なくとも30mL/時/kgの総クリアランス率を示す。
【0146】
対象中(例えば対象血清中)のC5阻害剤の最大濃度が維持される期間(Tmax値)は、用量及び/又は投与(例えば、皮下投与)を変更することにより調整され得る。いくつかの場合において、C5阻害剤は、約1分~約10分、約5分~約20分、約15分~約45分、約30分~約60分、約45分~約90分、約1時間~約48時間、約2時間~約10時間、約5時間~約20時間、約10時間~約60時間、約1日~約4日、約2日~約10日、又は少なくとも10日のTmax値を有する。
【0147】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、オフターゲット効果なしに投与され得る。いくつかの場合において、C5阻害剤は、300μM以下の濃度ですらhERG(ヒトエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子)を阻害しない。10mg/kgまでの用量段階を有するC5阻害剤のSC注射は忍容性が良好であり得て、心血管系(例えば、心室再分極延長の高いリスク)及び/又は呼吸器系の有害作用を全くもたらさない。
【0148】
C5阻害剤投与量は、別の種に観察された無有害作用量(NOAEL)を使用して決定され得る。そのような種は、サル、ラット、ウサギ、及びマウスを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの場合において、ヒト等価用量(HED)は、他の種で観察されたNOAELからのアロメトリック・スケーリングにより決定され得る。いくつかの場合において、HEDは、約2倍~約5倍、約4倍~約12倍、約5倍~約15倍、約10倍~約30倍、又は少なくとも30倍の治療マージン(therapeutic margins)をもたらす。いくつかの場合において、治療マージンは、霊長類における曝露及びヒトにおける推定Cmaxレベルを使用することにより決定される。
【0149】
いくつかの実施形態において、本開示のC5阻害剤は、補体系の長期に及ぶ阻害が有害であると判明する感染症の場合に、迅速な休薬期間を可能にする。
本開示によるC5阻害剤投与は、対象に対する潜在的な臨床リスクを減少させるために調節され得る。ナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)による感染症は、エクリズマブを含むC5阻害剤の公知のリスクである。いくつかの場合において、ナイセリア・メニンジティデス(Neisseria meningitides)による感染症のリスクは、1つ以上の予防的段階を設けることにより最小化される。そのような段階は、既にこれらの細菌が定着している可能性がある対象の除外を含み得る。いくつかの場合において、予防的段階は、1種以上の抗生物質の共投与を含み得る。いくつかの場合において、シプロフロキサシンが共投与され得る。いくつかの場合において、シプロフロキサシンは、約100mg~約1000mg(例えば500mg)の投与量で経口で共投与され得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、毎時、2時間ごとに、4時間ごとに、6時間ごとに、12時間ごとに、18時間ごとに、24時間ごとに、36時間ごとに、72時間ごとに、84時間ごとに、96時間ごとに、5日ごとに、7日ごとに、10日ごとに、14日ごとに、毎週、2週ごとに、3週ごとに、4週ごとに、毎月、2か月ごとに、3か月ごとに、4か月ごとに、5か月ごとに、6か月ごとに、毎年、又は少なくとも毎年の頻度で投与される。いくつかの場合において、C5阻害剤は、1日1回又は1日を通して適切な間隔で2、3、若しくはそれ以上の副投与量として投与される。
【0151】
いくつかの実施形態において、C5阻害剤は複数の1日量で投与される。いくつかの場合において、C5阻害剤は7日間連日投与される。いくつかの場合において、C5阻害剤は7~100日間連日投与される。いくつかの場合において、C5阻害剤は少なくとも100日間連日投与される。いくつかの場合において、C5阻害剤は無期限に連日投与される。
【0152】
本開示の方法は、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)を、約0.1mg/kg~約0.3mg/kgの1日量で投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、C5阻害剤(例えば、ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくは変形体)は、0.3mg/kgの1日量で投与される。対象QMGスコア及び/又はMG-ADLスコアは、投与の結果として減少し得る。QMGスコアは8週間の治療により3ポイント以上減少し得る。MG-ADLスコアは、8週間の治療により2ポイント以上減少し得る。救援療法(IVIG又は血漿交換)を必要とするリスクは減少し得る。
【0153】
静脈内に送達されるC5阻害剤は、注入により、5分、10分、15分、20分、又は25分の期間にわたるなど、ある期間にわたり送達され得る。投与は、例えば、毎時、毎日、毎週、隔週(すなわち2週ごとに)など定期的に、1か月、2か月、3か月、4か月、又は4か月より長く反復され得る。初期の治療レジメンの後、治療は、頻度を減らして投与され得る。例えば、3か月の隔週投与の後、投与は、1月あたり1回、6か月間又は1年以上反復され得る。C5阻害剤投与は、(例えば、患者の細胞、組織、血液、尿又は他の部分中の)結合又は任意の生理学的に有害なプロセスを、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、又はそれ以上減少させ、低下させ、増加させ、又は変更し得る。
【0154】
全量のC5阻害剤及び/又はC5阻害剤組成物の投与の前に、患者に、全量の5%など、より低い投与量を投与して、アレルギー反応若しくはインフュージョンリアクションなどの有害作用に関して、又は脂質レベル若しくは血圧の上昇に関してモニタリングできる。別の例において、サイトカイン(例えば、TNF-アルファ、IL-1、IL-6、又はIL-10)レベル増加などの望まれない免疫賦活効果に関して患者をモニタリングできる。
【0155】
遺伝的素因は、いくつかの疾患又は障害の発症において役割を果たす。したがって、C5阻害剤を必要とする患者は、家族歴分析又は例えば1つ以上の遺伝子マーカ若しくはバリアントのスクリーニングにより特定され得る。医療提供者(例えば、医師又は看護師)又は血縁者は、本開示の治療用組成物を処方又は投与する前に、家族歴情報を分析し得る。
【0156】
III.キット及び装置
いくつかの実施形態において、本開示はキット及び装置を提供する。そのようなキット及び装置は、本明細書に記載の化合物又は組成物のいずれも含み得る。非限定的な例において、ジルコプランが含まれ得る。
【0157】
本開示の装置は投与装置を含み得る。本明細書では、用語「投与装置」は、物質を受容者に与える任意の道具を指す。投与装置は自己投与装置を含み得る。本明細書では、用語「自己投与装置」は、物質を受容者に与えるのに使用されるあらゆる道具であって、道具の使用が受容者により全体的又は一部分行われる道具を指す。自己投与装置は自己注射装置を含み得る。「自己注射装置」は、個人が物質を自身の体に皮下投与できるようにする自己投与装置である。自己注射装置はプレフィルドシリンジを含み得る。本明細書では、用語「プレフィルドシリンジ」は、シリンジの操作者によるアクセス又は使用の前に物質又はカーゴ(cargo)が充填されているシリンジを指す。例えば、プレフィルドシリンジ(本明細書で「事前充填シリンジ」とも称される)は、キットへの包装前に;販売業者、投与者、若しくは操作者へのシリンジ出荷前に;又は自己投与のためにシリンジを使用する対象によるアクセス前に、治療用組成物が充填され得る。環状ペプチド安定性のため、環状ペプチド阻害剤(例えばジルコプラン)は、事前充填シリンジへの製造、保存、及び分配に特に好適である。さらに、事前充填シリンジは、自己投与(すなわち、医療専門家の助けを借りない対象による投与)に特に好適である。自己投与は、遠方にいる可能性があるか、又は他の点でアクセスが困難である医療専門家に頼らずに対象が治療を得る簡便な方法である。これにより、自己投与の選択肢が、頻繁な注射を要する治療(例えば連日注射)に好適となる。
【0158】
プレフィルドシリンジは、どのような材料であってもよい(例えば、ガラス、プラスチック、又は金属)。いくつかの実施形態において、プレフィルドシリンジはガラスシリンジである。プレフィルドシリンジは、少なくとも0.1ml、少なくとも0.2ml、少なくとも0.3ml、少なくとも0.4ml、少なくとも0.5ml、少なくとも0.75ml、少なくとも1.0ml、少なくとも1.5ml、少なくとも2.0ml、少なくとも5.0ml、少なくとも10ml、又は10mlを超える最大充填容積(収容可能な液体の最大量を意味する)を含み得る。シリンジはニードルを含み得る。ニードルは任意のゲージでよい。いくつかの実施形態において、シリンジは29ゲージニードルを含む。ニードルは、シリンジと組み立てられていることも、シリンジ使用の前に取り付けられることもある。自己注射装置は、BDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)自己投与装置(ベクトン・ディッキンソン(BD)、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)を含み得る。
【0159】
投与装置は、シリンジ及びニードル並びに所定体積のジルコプラン組成物を含む自己注射装置を含み得る。ジルコプラン組成物は医薬組成物であり得る。組成物は約1mg/mL~約200mg/mLのジルコプラン濃度を含み得る。いくつかの実施形態において、ジルコプラン濃度は約40mg/mLである。所定体積は、対象体重に基づいて事前に決定され得る。いくつかの実施形態において、所定のジルコプラン組成物体積が調節されて、約0.1mg/kg~約0.6mg/kgの投与量での対象へのジルコプラン投与が促進される。体積が調節されて、0.3mg/kgジルコプラン投薬が促進され得る。自己注射装置は、BDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)自己投与装置を含み得る。いくつかの実施形態において、投与装置は、特定の温度又は温度範囲での保存用に調製される。いくつかの投与装置は室温での保存用に調製され得る。いくつかの投与装置は約2℃~約8℃の保存用に調製され得る。
【0160】
プレフィルドシリンジは、ウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)パッシブニードルガード(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickenson)、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)を含み得る。他のプレフィルドシリンジはペン型注射器を含み得る。ペン型注射器は多用量ペンであり得る。いくつかのプレフィルドシリンジはニードルを含み得る。いくつかの実施形態において、ニードルゲージは約20~約34である。ニードルゲージは約29~約31であり得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、本明細書に記載のMGを治療する方法を実施するキットを含む。そのようなキットは、本明細書に記載の1つ以上の投与装置及びキット使用の説明書を含み得る。
【0162】
キット成分は、液体(例えば水性又は有機)媒体中でも、乾燥(例えば凍結乾燥)形態でも包装され得る。キットは、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はバッグを含み得るが、これらに限定されない容器を含み得る。キット容器を使用して、キット成分を小分けにし、保存し、貯蔵し、隔離し、且つ/又は保護できる。キット成分は、共に包装しても、別々に包装してもよい。いくつかのキットは、滅菌された、薬学的に許容できる緩衝剤及び/又は他の希釈剤(例えばリン酸緩衝食塩水)の容器を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、乾燥形態のキット成分の容器を、乾燥した成分を溶解させる溶液の別な容器と共に含む。いくつかの実施形態において、キットは、1種以上のキット成分を投与するためのシリンジを含む。
【0163】
ポリペプチドが乾燥粉末として提供される場合、10マイクログラム~1000ミリグラムのポリペプチド又は少なくともその量若しくは多くともその量がキット中に提供されることが企図される。
【0164】
容器は、ポリペプチド製剤が配置され、好ましくは、好適に配分され得る少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、及び/又は他の入れ物を含み得る。キットは、滅菌された、薬学的に許容できる緩衝剤及び/又は他の希釈剤用の容器も含む。
【0165】
キットは、キット成分を利用すること並びにキットに含まれていない任意の他の試薬の使用のための説明書を含み得る。説明書は、実行可能な変形体を含み得る。
キットは、針刺し傷(syringe wounds)に対処するための1つ以上の物品を含み得る。そのような物品は、アルコールワイプ及び創傷被覆材(例えば、綿球、メッシュパッド、包帯、テープ、ガーゼなど)を含み得るが、これらに限定されない。キットは、使用済みキット成分の廃棄のための廃棄容器をさらに含み得る。廃棄容器は、ニードル及びシリンジなどの鋭利な物体の廃棄のために設計され得る。いくつかのキットは鋭利な物体の廃棄のための説明書を含み得る。
【0166】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、粉末形態又は溶解状態(例えば医薬組成物として)のジルコプランを含む。溶液は水溶液であり得る。溶液はPBSを含み得る。ジルコプラン溶液は、約4mg/ml~約200mg/mlジルコプランを含み得る。いくつかの実施形態において、ジルコプラン溶液は約40mg/mlジルコプランを含む。ジルコプラン溶液は保存剤を含み得る。いくつかの実施形態において、ジルコプラン溶液は保存剤不含である。
【0167】
いくつかの実施形態において、キットは、特定の温度又は温度範囲での保存用に調製される。いくつかのキットは室温での保存用に調製され得る。いくつかのキットは約2℃~約8℃の保存用に調製され得る。
【0168】
IV.定義
バイオアベイラビリティ:本明細書では、用語「バイオアベイラビリティ」は、対象に投与された所与の量の化合物(例えばC5阻害剤)の全身アベイラビリティを指す。バイオアベイラビリティは、対象への化合物の投与後の化合物の未変化体の曲線下面積(AUC)又は最大血清若しくは血漿濃度(Cmax)を測定することにより算定できる。AUCは、化合物の血清又は血漿濃度を縦座標(Y軸)に、時間を横座標(X軸)にプロットする場合の曲線下面積の決定である。一般的に、特定の化合物のAUCは、当業者に公知である方法を使用して、且つ/又は内容が参照により本明細書にその全体として組み込まれるG.S.バンカー(G.S.Banker)、モダン・ファーマシューティクス,ドラッグズ・アンド・ザ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Modern Pharmaceutics,Drugs and the Pharmaceutical Sciences)、第72巻、マルセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、Inc.,1996年に記載の通り計算できる。
【0169】
生体系:本明細書では、用語「生体系」は、細胞膜、細胞内区画、細胞、細胞培養物、組織、器官、器官系、生物、多細胞生物、体液、又はあらゆる生物学的実体内で、少なくとも1つの生物学的機能又は生物学的役割を実行する細胞、一群の細胞、組織、器官、一群の器官、細胞小器官、体液、生物学的シグナル伝達経路(例えば、受容体活性化シグナル伝達経路、荷電活性化(charge-activated)シグナル伝達経路、代謝経路、細胞シグナル伝達経路など)、一群のタンパク質、一群の核酸、又は一群の分子(生体分子を含むがこれに限定されない)を指す。いくつかの実施形態において、生体系は、細胞内及び/又は細胞外シグナル伝達生体分子を含む細胞シグナル伝達経路である。いくつかの実施形態において、生体系はタンパク質分解性カスケード(例えば補体カスケード)を含む。
【0170】
緩衝剤:本明細書では、用語「緩衝剤」は、pHの変化に抵抗する目的で溶液に使用される化合物を指す。そのような化合物は、酢酸、アジピン酸、酢酸ナトリウム、安息香酸、クエン酸、安息香酸ナトリウム、マレイン酸、リン酸ナトリウム、酒石酸、乳酸、メタリン酸カリウム、グリシン、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、及び酒石酸ナトリウムを含み得るが、これらに限定されない。
【0171】
クリアランス率:本明細書では、用語「クリアランス率」は、特定の化合物が生体系又は流体から除去される速度を指す。
化合物:本明細書では、用語「化合物」は個々の化学物質を指す。いくつかの実施形態において、特定の化合物は、(立体異性体、幾何異性体、及び同位体を含むがこれらに限定されない)1つ以上の異性体又は同位体形態で存在し得る。いくつかの実施形態において、化合物は、唯一のそのような形態で提供又は利用される。いくつかの実施形態において、化合物は、(立体異性体のラセミ混合物を含むがこれに限定されない)2つ以上のそのような形態の混合物として提供又は利用される。当業者は、いくつかの化合物が異なる形態で存在し、異なる性質及び/又は(生物学的活性を含むがこれに限定されない)活性を示すことを認識するだろう。そのような場合に、本開示に従って使用するための特定の形態の化合物を選択又は回避することは当業者の通常の技量の範囲内にある。例えば、非対称に置換された炭素原子を含む化合物は、光学活性又はラセミ形態で単離できる。
【0172】
環状又は環化された:本明細書では、用語「環状」は、連続的ループの存在を指す。環状分子は円形である必要はなく、サブユニットの切れ目のない鎖を形成するように結合する必要があるのみである。環状ポリペプチドは、2つのアミノ酸が架橋部分により結合するときに形成された「環状ループ」を含み得る。環状ループは、架橋されたアミノ酸の間に存在するポリペプチドに沿ってアミノ酸を含む。環状ループは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のアミノ酸を含み得る。
【0173】
下流事象:本明細書では、用語「下流」又は「下流事象」は、別の事象の後で、且つ/又はその結果として起こるあらゆる事象を指す。いくつかの場合において、下流事象は、C5切断及び/又は補体活性化の後で、且つその結果として起こる事象である。そのような事象は、C5切断産物の生成、MACの活性化、溶血、及び溶血関連疾患(例えばPNH)を含み得るが、これらに限定されない。
【0174】
平衡解離定数:本明細書では、用語「平衡解離定数」又は「KD」は、2種以上の作用物質(例えば2種のタンパク質)が可逆的に分離する傾向を表す値を指す。いくつかの場合において、KDは、二次作用物質の総レベルの半分が一次作用物質と会合する、一次作用物質の濃度を示す。
【0175】
半減期:本明細書では、用語「半減期」又は「t1/2」は、所与のプロセス又は化合物濃度が最終的な値の半分に達するのにかかる時間を指す。「終末相半減期」又は「終末相t1/2」は、ある因子の濃度が偽平衡に達した後で、その因子の血漿濃度が半分に減少するのに要する時間を指す。
【0176】
同一性:本明細書では、ポリペプチド又は核酸に言及される場合の用語「同一性」は、配列間の相対的な関係を指す。用語は、ポリマー配列の間の配列の相似性の程度を記述するように使用され、ギャップアラインメント(存在する場合)が特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)により検討されている状態で、一致するモノマー成分のパーセンテージを含み得る。関連するポリペプチドの同一性は、公知の方法により容易に計算できる。そのような方法には、他の者により以前に記載されたもの(レスク,A.M.(Lesk,A.M.)著、コンピュテーショナル・モレキュラー・バイオロジー(Computational Molecular Biology)、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、1988年;スミス,D.W.(Smith,D. W.)著、バイオコンピューティング:インフォマティクス・アンド・ゲノムプロジェクツ(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク、1993年;グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)ら編、コンピュータ・アナリシス・オブ・シーケンスデータ パート1(Computer Analysis of Sequence Data,Part 1)、ヒューマナ・プレス(Humana Press)、ニュージャージー、1994年;フォン・ハインジェ,G.(von Heinje,G.)著、シーケンス・アナリシス・イン・モレキュラー・バイオロジー(Sequence Analysis in Molecular Biology)、アカデミック・プレス(Academic Press)、1987年;グリブスコフ,M.(Gribskov,M.)ら編、シーケンス・アナリシス・プライマー(Sequence Analysis Primer)、M.ストックトン・プレス(M.Stockton Press)、ニューヨーク、1991年;及びカリロ(Carillo)ら著、アプライド・マセマティクス,ソサイエティ・フォー・インダストリアル・アンド・アプライド・マセマティクス・ジャーナル(Applied Math,SIAM J)、1988年、第48巻、p.1073)があるが、これらに限定されない。
【0177】
阻害剤:本明細書では、用語「阻害剤」は、特定の事象;細胞シグナル;化学経路;酵素反応;細胞プロセス;2つ以上の実体の間の相互作用;生物学的事象;疾患;障害;又は病態の発生を遮断又はその減少を起こすあらゆる作用物質を指す。
【0178】
初期負荷投与量:本明細書では、「初期負荷投与量」は、1つ以上のその後の投与量とは異なり得る治療剤の最初の投与量を指す。初期負荷投与量を使用して、その後の投与量が投与される前に、治療剤の初期濃度又は活性のレベルが達成され得る。
【0179】
静脈内:本明細書では、用語「静脈内」は、血管内の部分を指す。静脈内投与は、典型的には、血管(例えば静脈)への注射による血液中への化合物の送達を指す。
インビトロ:本明細書では、用語「インビトロ」は、生物(例えば、動物、植物、又は微生物)内ではなく、人工環境(例えば、試験管又は反応容器内、細胞培養物中、ペトリ皿内など)中で起こる事象を指す。
【0180】
インビボ:本明細書では、用語「インビボ」は、生物(例えば、動物、植物、又は微生物若しくはその細胞若しくは組織)内で起こる事象を指す。
ラクタムブリッジ:本明細書では、用語「ラクタムブリッジ」は、分子中の化学基の間にブリッジを形成するアミド結合を指す。いくつかの場合において、ラクタムブリッジは、ポリペプチド中のアミノ酸の間に形成される。
【0181】
リンカー:本明細書での用語「リンカー」は、2つ以上の実体を結合するのに使用される原子団(例えば10~1,000原子)、分子、又は他の化合物を指す。リンカーは、そのような実体を、共有結合性又は非共有結合性の(例えば、イオン性又は疎水性)相互作用により結合し得る。リンカーは、2つ以上のポリエチレングリコール(PEG)単位の鎖を含み得る。いくつかの場合において、リンカーは切断可能であり得る。
【0182】
分時換気量:本明細書では、用語「分時換気量」は、1分あたりの吸いこまれた又は対象の肺から吐き出された空気の体積を指す。
非タンパク質構成:本明細書では、用語「非タンパク質構成」は、非天然アミノ酸など、非天然の成分を有するものなど、あらゆる非天然のタンパク質を指す。
【0183】
患者:本明細書では、「患者」は、治療を探し求めるか若しくは治療を必要とし得て、治療を要求し、治療を受けており、治療を受けるだろう対象、又は特定の疾患若しくは病態のために訓練された専門家のケアを受けている対象を指す。
【0184】
医薬組成物:本明細書では、用語「医薬組成物」は、有効成分を治療上有効であるようにする形態及び量の少なくとも1種の有効成分(例えばC5阻害剤)を有する組成物を指す。
【0185】
薬学的に許容できる:句「薬学的に許容できる」は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合い、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適である化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すように本明細書で使用される。
【0186】
薬学的に許容できる賦形剤:本明細書での句「薬学的に許容できる賦形剤」は、医薬組成物中に存在し、患者において実質的に非毒性且つ非炎症性である性質を有する、活性薬剤(例えば、活性薬剤ジルコプラン及び/又はその活性代謝物若しくはその変形体)以外のあらゆる成分を指す。いくつかの実施形態において、薬学的に許容できる賦形剤は、活性薬剤を懸濁又は溶解させることが可能なビヒクルである。賦形剤は、例えば:粘着防止剤、酸化防止剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(着色剤)、軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、被膜形成剤又はコーティング、着香剤、香料、流動促進剤(流動増大剤(flow enhancers))、滑沢剤、保存剤、印刷用インク、吸着剤、懸濁剤又は分散化剤、甘味剤、及び水和の水を含み得る。例示的な賦形剤には下記があるがこれらに限定されない:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトール。
【0187】
血漿コンパートメント:本明細書では、用語「血漿コンパートメント」は、血漿により占められる血管内空間を指す。
塩:本明細書では、用語「塩」は、カチオン及び結合アニオンでできた化合物を指す。そのような化合物は、塩化ナトリウム(NaCl)又は酢酸塩、塩化物、炭酸塩、シアン化物、亜硝酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩を含むがこれらに限定されない他の種類の塩を含み得る。
【0188】
試料:本明細書では、用語「試料」は、源から採取された、且つ/又は分析若しくは処理用に提供されたアリコート又は部分を指す。いくつかの実施形態において、試料は、組織、細胞、又は構成部分(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血液(amniotic cord blood)、尿、膣液、及び精液を含むがこれらに限定されない体液)など、生体源由来である。いくつかの実施形態において、試料は、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の外部片、呼吸器管、腸管、及び泌尿生殖器管、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、又は器官を含むがこれらに限定されない生物全体又はその組織、細胞、若しくは構成部分のサブセット、又はその一部若しくは部分から調製されたホモジネート、ライゼート、又は抽出物であり得るか、又はそれを含み得る。いくつかの実施形態において、試料は、タンパク質などの細胞成分を含み得るニュートリエントブロス又はゲルなどの媒体であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態において、「一次」試料は源のアリコートである。いくつかの実施形態において、一次試料は1つ以上の処理(例えば分離、精製など)工程に付されて、分析又は他の使用のための試料が調製される。
【0189】
皮下:本明細書では、用語「皮下」は、皮膚の下の空間を指す。皮下投与は、皮膚の下への化合物の送達である。
対象:本明細書では、用語「対象」は、例えば、実験、診断、予防、及び/又は治療目的で、本開示による化合物又は方法が投与又は適用され得るあらゆる生物を指す。典型的な対象は動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ対象、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)を含む。いくつかの用途において、対象はヒトである。
【0190】
実質的に:本明細書では、用語「実質的に」は、問題にしている特徴又は性質の全体又は全体に近い程度又は度合を示す定性的状態を指す。生物学分野の当業者は、生物学的及び化学的現象が、完了に至り、且つ/又は完全性まで進行するか、又は絶対的な結果を達成するか若しくは避けることが、皆無ではないとしても稀であることを理解するだろう。したがって、用語「実質的に」は、本明細書において、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を記録するように使用される。
【0191】
治療上有効な量:本明細書では、用語「治療上有効な量」は、疾患、障害、及び/又は病態を患っているか又はかかりやすい対象に投与される場合に、疾患、障害、及び/又は病態を治療し、その症状を改善し、診断し、予防し、且つ/又はその発症を遅延させるのに充分である、送達される薬剤(例えばC5阻害剤)の量を指す。
【0192】
1回換気量:本明細書では、用語「1回換気量」は、(特別の努力がない状態で)呼吸の間に追い出される空気の通常の肺の容量を指す。
Tmax:本明細書では、用語「Tmax」は、対象又は流体中の化合物の最大濃度が維持される期間を指す。
【0193】
治療すること:本明細書では、用語「治療すること」は、特定の疾患、障害、及び/又は病態の1つ以上の症状又は特徴を、部分的又は完全に緩和し、寛解させ、改善し、軽減し、その発症を遅延させ、その進行を阻害し、その重症度を減少させ、且つ/又はその発生率を減少させることを指す。治療は、疾患、障害、及び/若しくは病態の徴候を示していない対象に、且つ/又は疾患、障害、及び/若しくは病態の早期の徴候しか示していない対象に、疾患、障害、及び/又は病態と関連する病状を起こすリスクを減少させる目的で投与され得る。
【0194】
治療投与量:本明細書では、「治療投与量」は、治療適応症に対処又は緩和する過程で投与される治療剤の1つ以上の投与量を指す。治療投与量は、体液又は生体系中の治療剤の所望の濃度又は活性のレベルを維持するために調整され得る。
【0195】
分布容積:本明細書では、用語「分布容積」又は「Vdist」は、血液又は血漿中と同じ濃度で体内に全量の化合物を含むのに要する流体の体積を指す。分布容積は、化合物が血管外組織に存在する程度を反映し得る。大きい分布容積は、化合物が血漿タンパク質成分と比べて組織成分と結合する傾向を反映する。臨床状況で、Vdistを使用して、化合物の負荷投与量を決定し、その化合物の定常状態濃度を達成できる。
【0196】
V.等価物及び範囲
本発明の種々の実施形態が詳細に示され、説明されてきたが、形態又は詳細の種々の変更が、添付される請求項により定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずになされ得ることが当業者により理解されるだろう。
【0197】
当業者は、定型的な実験を利用するのみで、本明細書に記載の本発明による具体的な実施形態の多くの等価物を認識するか、又は確認できるだろう。本発明の範囲は、上記説明に限定されないものではなく、添付される請求項に述べられる通りである。
【0198】
請求項において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記(the)」などの冠詞は、そうでないと示されない限り又は文脈から明らかでない限り、1つ又は2つ以上を意味し得る。群の1つ以上のメンバーの間に「又は」を含む請求項又は説明は、そうでないと示されない限り又は文脈から明らかでない限り、1つ、2つ以上、又は全ての群メンバーが、所与の製品又はプロセスに存在し、利用され、又は他の点で関係する場合、満たされているとみなされる。本発明は、群のまさに1メンバーが、所与の製品又はプロセスに存在し、利用され、又は他の点で関係する実施形態を含む。本発明は、2つ以上又は全ての群のメンバーが、所与の製品又はプロセスに存在し、利用され、又は他の点で関係する実施形態を含む。
【0199】
用語「含んでいる(comprising)」が開放型であるものとし、追加の要素又は工程の包含を許すが要求しないことが留意される。用語「含んでいる」が本明細書で使用される場合、用語「からなる(consisting of)」及び「又は含んでいる(or including)」も包含され、開示される。
【0200】
範囲が与えられる場合、端点は含まれる。さらに、特記されない限り又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値が、本発明の異なる実施形態における述べられた範囲内のあらゆる具体的値又は副範囲を、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、その範囲の下限の単位の10分の1までとり得ることが理解されるべきである。
【0201】
さらに、従来技術内にある、本発明の任意の特定の実施形態が、請求項のいずれか1つ以上から明確に排除され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は当業者に公知であるとみなされるため、それらは、排除が本明細書中に明確に述べられてないとしても排除され得る。任意の特定の実施形態の本発明の組成物(例えば、任意の核酸又はそれによりコードされるタンパク質;任意の製造方法;任意の使用方法など)は、従来技術の存在に関連するかどうかを問わず、何らかの理由でいずれか1つ以上の請求項から排除され得る。
【0202】
全ての引用された源、例えば、参照文献、刊行物、データベース、データベースエントリー、及びそこに引用された技術は、引用文中に明白に述べられていないとしても、参照により本願に組み込まれる。引用された源の発言と本願が矛盾する場合、本願中の発言が優先するものとする。
【0203】
項及び表の見出しは限定的でないものとする。
【実施例】
【0204】
実施例1.ジルコプラン水溶液の調製
ポリペプチドは、標準的な固相Fmoc/tBu方法を使用して合成した。リバティ(Liberty)自動マイクロ波ペプチド合成装置(シーイーエム(CEM)、マシューズ、ノースカロライナ州)で、リンクアミド樹脂と共に標準的なプロトコルを使用して合成を実施したが、マイクロ波の能力のない他の自動合成装置も使用できる。全てのアミノ酸は商業的供給源から得た。使用したカップリング試薬は、2-(6-クロロ-1-H-ベンゾトリアゾール-1イル)-1,1,3,3,-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)であり、塩基はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)であった。ポリペプチドは、95%TFA、2.5%TIS、及び2.5%水により3時間樹脂から切断し、エーテルによる沈殿により単離した。粗製のポリペプチドは、C18カラムを使用する逆相分取HPLCで、アセトニトリル/水0.1%TFAの30分にわたる20%~50%の勾配により精製した。純粋なポリペプチドを含むフラクションを回収し、凍結乾燥させ、全ポリペプチドをLC-MSにより分析した。
【0205】
ジルコプラン(配列番号1;CAS番号:1841136-73-9)は、15個のアミノ酸(そのうち4つは非天然アミノ酸である)、アセチル化N-末端、及びC末端カルボン酸を含む環状ペプチドとして調製した。コアペプチドのC末端リジンは修飾された側鎖を有し、N-ε-(PEG24-γ-グルタミン酸-N-α-ヘキサデカノイル)リジン残基を形成する。この修飾された側鎖は、パルミトイル基により誘導体化されたL-γグルタミン酸残基に結合したポリエチレングリコールスペーサ(PEG24)を含む。ジルコプランの環化は、L-Lys1及びL-Asp6の側鎖の間のラクタムブリッジによるものである。ジルコプラン中のアミノ酸は全てL-アミノ酸である。ジルコプランは、3562.23g/molの分子量及びC172H278N24O55の化学式を有する。
【0206】
エクリズマブと同様に、ジルコプランは、C5のC5a及びC5bへのタンパク質分解切断を遮断する。エクリズマブとは違い、ジルコプランはC5bにも結合でき、C6結合を遮断でき、それがその後のMACの集合を妨げる。
【0207】
ジルコプランは、40mg/mLのジルコプランを、pH7.0の50mMリン酸ナトリウム及び76mM塩化ナトリウムの滅菌された保存剤不含製剤中に含む注射用の水溶液として調製した。得られた組成物を使用して、現行の適正製造基準(cGMP)に従って医薬品を調製したが、医薬品は、BDウルトラセーフプラス(ULTRASAFE PLUS)(商標)(ベクトン・ディッキンソン(BD)、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)自己投与装置内に配置された29ゲージの12.7mm(1/2インチ)ステーキドニードル(staked needle)と共にプレフィルド1mlガラスシリンジを含んでいた。
【0208】
実施例2.ジルコプラン投与及び保存
皮下(SC)又は静脈内(IV)注射によりジルコプランを投与し、投与される投与量(投与量体積)をmg/kgの方式で対象体重に基づいて調整する。これは、1組の固定された投与量と、1組の体重が並んだ組合せ表(bracket)を使用して達成する。全体として、ヒト投薬は、43~109kgの幅広い体重範囲を支持する。より多い体重(109kg超)を呈する対象には、個々の場合に応じて、メディカルモニターと相談して対応する。
【0209】
ジルコプランを2℃~8℃[36°F~46°F]で保存する。いったん対象に分配されると、ジルコプランを制御された室温(20℃~25℃[68°F~77°F])で最長30日間保存し、高温又は光への曝露などの過度の温度変動の源から保護する。室温から外れたジルコプランの保存は避けることが好ましい。ジルコプランは、これらの条件下で最長30日間保存できる。
【0210】
実施例3.ジルコプラン重症筋無力症治療評価
多施設共同、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験を実施して、gMGを有する対象の治療におけるジルコプラン安全性、忍容性、及び予備的有効性を評価した。試験デザインの模式図を
図2に表す。試験の間、0.1mg/kgジルコプラン、0.3mg/kgジルコプラン、又はマッチングプラセボのSC投与を連日受け取るように対象を1:1:1の比でランダム化した。ランダム化は、スクリーニング定量的重症筋無力症(QMG)スコア(17以下対18以上)に基づいて層化した。
【0211】
試験の主要部分は、最長4週間のスクリーニング期間及び12週間の治療期間を含んでいた。治療期間の間、対象は、第1日来院の後、最初の2回の来院(第8日及び第15日)のためにクリニックに毎週戻り、それに続いて第4週(第29日)、第8週(第57日)、及び第12週(第84日)に来院し、安全性、忍容性、及び予備的有効性を評価した。追加の評価は、生活の質(QOL)調査票、バイオマーカ試料、薬物動態、薬力学、及び任意選択のゲノム薬理学を含んでいた。安全性評価は、身体診察、バイタルサイン、心電図、臨床検査、AE、及び免疫原性を含んでいた。
【0212】
ジルコプラン及びマッチングプラセボは、自己投与装置内に配置された29ゲージ、12.7ミリメートル(1/2インチ)ステーキドニードルを有する1mLガラスシリンジに事前充填された滅菌された保存剤不含水溶液として供給した。正確なmg/kg投与量範囲を達成するように、充填体積を対象体重範囲に基づいて調整した。対象に、SC投与量を連日自己投与するように指示した。
【0213】
ジルコプランの投与量は目標投与量及び体重により決定して、体重ごとの固定投与量組合せ表を使用して達成した。これらの組合せ表は、治療量未満の投薬を避けるために各対象が目標最低投与量以上を受け取るように、体重区分により分類した。0.1mg/kg投与量では、対象は、最低で0.1mg/kg(範囲:0.10~0.14mg/kg)の固定投与量を受け取った。0.3mg/kg投与量では、対象は、最低で0.3mg/kg(範囲:0.30~0.42mg/kg)の投与量を受け取った。表2は、ジルコプラン0.1及び0.3mg/kg投与量の投与量提示(dose presentations)をまとめるものである。より高い体重(150kg超)を呈した対象には、個々の場合に応じて対応した。マッチングプラセボを、2種の提示、0.1mg/kg投与量では0.220mL及び0.3mg/kg投与量では0.574mLで与えた。
【0214】
【0215】
スクリーニング
スクリーニングを実施して、対象試験適格性を決定した。スクリーニングはQMGスコア算定を含んでいた。ジルコプラン治療に最適な患者集団は、スクリーニング及びベースラインで(少なくとも10時間、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤療法、例えばピリドスチグミンをやめる)算定して12以上のQMGスコアを、4以上の試験項目で2以上のスコアと共に有することが期待された。スクリーニングの間に評価した他の適格性基準には、18~85の年齢;スクリーニング時点のgMG診断[米国重症筋無力症財団(Myasthenia Gravis Foundation of America)(MGFA)基準による;クラスII~IVa];AChR自己抗体の陽性血清;ベースラインに先立つ少なくとも30日間コルチコステロイド投与量の変化がないこと、又は12週間の治療期間の間にコルチコステロイド投与量の変化が起こると見込まれないこと;及びベースラインに先立つ少なくとも30日間、投与量を含む免疫抑制療法に変化がないこと、又は12週間の治療期間の間に、投与量を含む免疫抑制療法の変化が起こると見込まれないことがあった。妊娠の可能性がある女性の対象は、スクリーニング時に陰性血清妊娠試験及び治験薬の最初の投与に先立つ24時間以内に陰性の尿妊娠試験を有する必要があり、妊娠の可能性がある性的に活動的な女性対象(すなわち、閉経後ではなく、子宮摘出術、両側卵巣摘出術、又は両側卵管結紮術を受けていない女性)及び全男性対象(精管切除術により断種手術されていない)は、試験の間効果的な避妊を用いることに合意した。
【0216】
スクリーニングの間、MGFA基準に従ったgMG診断(クラスII~IVa)と共に疾患既往歴の収集;AChR自己抗体の血清;QMGスコア算定;身長体重測定;バイタルサインの評価[心拍数(HR)、体温、及び座位での血圧];12誘導心電図;以前のナイセリア・メニンジティディス(Neisseria meningitidis)ワクチン接種の評価;臨床検査用の血液試料の収集[血液学的、化学的、凝固、アデノシンデアミナーゼ(ADA)試験、及び薬理ゲノミクス分析];尿検査用の尿試料の収集;及び妊娠可能な女性用の血清妊娠試験を含む、病歴及び人口統計の調査を含む評価を実施した。
【0217】
以下の基準のいずれかを満たす対象を試験から除外した:(1)ベースラインに先立つ6か月以内の胸腺摘出、又は12週間の治療期間の間に計画されている胸腺摘出;(2)局所基準(local standard)により決定された異常な甲状腺機能;(3)筋特異的キナーゼ(MuSK)又はリポタンパク質受容体関連ペプチド4(LRP4)の既知の陽性血清;(4)臨床評価に基づく重症筋無力症の最小症状状態(Minimal Manifestation Status)(MMS);(5)スクリーニング時の腎疾患における食事の改善(Modification of Diet in Renal Disease)(MDRD)式に基づく、60mL/分/1.73m2未満の糸球体濾過量計算値:
【0218】
【0219】
;(6)基準値上限の2倍(×ULN)を超える総ビリルビン又はトランスアミナーゼ[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)]により定義される肝機能試験(LFT)の上昇;(7)髄膜炎菌性疾患の既往歴;(8)ベースラインに先立つ2週間以内の現在若しくは最近の全身性感染症又はベースラインに先立つ4週間以内のIV抗生物質を要する感染症;(9)妊娠中、妊娠する予定、又は授乳中の女性対象;(10)スクリーニングに先立つ2週間以内の全身麻酔を要する最近の手術又はスクリーニング若しくは12週間の治療期間の間に予定されている手術;(11)ベースラインに先立つ30日又は実験薬の5半減期以内(どちらか長い方)の実験薬又は別の補体阻害剤による治療;(12)ベースラインに先立つ6か月以内のリツキシマブによる治療;(13)IV免疫グロブリンG(IVIG)若しくは血漿交換(PLEX)による進行中の治療又はベースラインに先立つ4週間以内の治療;(14)先の12か月以内の手術、化学療法、又は放射線を要する活動性の新生物(良性胸腺腫以外)(悪性腫瘍の既往歴を有する対象であって、治癒的切除を受けたか、又はスクリーニングに先立つ少なくとも12か月間他の面で治療を要さず検出可能な再発がない対象は許容される);(15)臨床判断に基づく固定性の筋力低下(「燃え尽き」MG);(16)対象が試験に参加することを不適にする著しい内科的又は精神的障害の既往歴;及び(17)実験的治療介入を含む別の同時の臨床試験への参加(観察研究及び/登録研究への参加は許可される)。
【0220】
治療期間
ランダム化された対象は、第1日来院で、0.1mg/kgジルコプラン、0.3mg/kgジルコプラン、又はマッチングプラセボを皮下投与で受け取った。クリニック内教育(in-clinic education)及び訓練後、全ての対象は、SC投与量の盲検化された治験薬を、ランダム化治療割当てに従い、その後の12週間連日自己注射した。注射装置を、試験の間の使用のために提供した。対象は、試験全体にわたり、ピリドスチグミン、コルチコステロイド、又は免疫抑制薬を含む、安定な投与量のgMGの標準治療(SOC)療法を受け続けるように期待された。治験来院日の投薬は、QMGスコアリング及び採血[薬物動態的(PK)及び薬力学(PD)分析のため]が完了するまで保留した。救援療法が同時に投与される日には、治験薬投薬は、救援療法の投与及びPK/PDサンプリングの後まで保留した。救援療法は、対象臨床状態の悪化によるgMG療法の漸増を含んだ。救援療法の間、対象は免疫グロブリン(IVIG)又は血漿交換治療を受けた。
【0221】
試験の主要部分の間、全対象の試験参加の全継続期間は、最長4週間のスクリーニング期間及び12週間の治療期間を含む、最長およそ16週間であった。試験の延長部分が、継続したジルコプラン投与のために利用可能になった。
【0222】
対象は、ランダム化にしたがって、試験の主要部分の治療期間の間の第1日から第84日まで、0.1mg/kgジルコプラン、0.3mg/kgジルコプラン、又はマッチングプラセボによる治療を受けた。第84日来院を完了した対象(プラセボアームにランダム化された者を含む)には、試験の延長部分においてジルコプランによる治療を継続する選択肢があった。
【0223】
試験終了及び最終試験手順は、体重測定;併用薬の見直し及び文書化;症状に基づく身体診察;バイタルサインの評価(例えば、心拍数、体温、及び座位での血圧);12誘導心電図;臨床検査用の血液試料の収集(血液学的、化学的、凝固、ADA試験、薬物動態的分析、薬力学分析、及びバイオマーカ分析);尿検査用の尿の収集;妊娠可能な女性では尿妊娠検査;QMGスコア算定;並びにMG-ADL、MG-QOL15r、及びMGコンポジット(MGC)の算定を含んでいた。
【0224】
試料分析
試験の主要部分の間、PK及びPD分析用の血液試料を、表3に表される時点で全対象から収集した。PK及びPD分析用の延長部分血液試料収集を、救援療法シナリオ下で同一であるように設計した。さらに、延長部分の第36週で採られた血液を、主要部分採血に関して記載された「第1日」スケジュールに従うように計画した。
【0225】
【0226】
他の全治験来院日では、治験薬の投与前に、単一のPK及びPD試料を収集した。ジルコプラン及びその代謝物の血漿濃度を全血液試料中で測定した。
安全性分析用の血液試料は、第1日の以下の時点で収集した:(i)投薬前(治験薬の最初の投与量投与の前1時間以内)及び(ii)投薬後6時間(±90分)。他の全治験来院で、安全性分析用の試料は、治験薬の投与前に収集した。試験用の追加の血液試料は、試験の延長部分への参加を意図する対象から第84日の投薬後6時間(±90分)で採取した。評価された血液試料分析物には、表4に列記されるものがあった。
【0227】
【0228】
MG病態生理学バイオマーカ分析[例えば、補体結合、補体機能、補体経路タンパク質、自己抗体特性化(力価及び免疫グロブリンクラス)、及び炎症マーカ]が、gMGを有する対象におけるジルコプランの臨床有効性及び安全性へのさらなる洞察を提供するのに利用可能であった。補体タンパク質レベル及び補体活性の評価を利用して、ジルコプランへの応答を評価し、薬物応答の変動に関連する対象特性を理解できる。炎症マーカ試験を利用して、補体機能との相関及びジルコプランに対する臨床反応を評価できる。分析物のリストは、文献、進行中の臨床試験、及び進行中の探索的作業の見直しにより作成して、試験の完了後に仕上げることができる。
【0229】
主要有効性評価項目は、ベースラインから第12週(第84日)へのQMGスコアの変化であった。QMGスコアは、特にMG用に開発され、以前に臨床試験に使用された、標準化された検証済みの定量的な強度スコアリングシステムである。より高いスコアはより重度の障害を表す。最近のデータは、2~3ポイントのQMGスコアの改善が、疾患重症度に応じて臨床的に意味があると考えられ得ることを示唆する[バローン,RJ(Barohn,RJ)ら著、1998年、ニューヨーク科学アカデミーの年報(Ann N Y Acad Sci)、第841巻:p.769-72;カッツバーグ,HD(Katzberg,HD)ら著、2014年、マッスル・アンド・ナーブ(Muscle Nerve)、第49巻(5号):p.661-5]。QMG算定を、各治験来院及びスクリーニング時に実施して、対象適格性を評価した。QMG算定は、試験を通して各来院でほぼ同じ時間帯で(好ましくは午前中に)実施した。対象がコリンエステラーゼ阻害剤(例えばピリドスチグミン)を受け取っている場合、投薬をQMG試験に先立つ少なくとも10時間、保留した。0.3mg/kg及び0.1mg/kg投薬群をプラセボ投薬群と比較し、3つの全治療群に基づいて直線的傾向を評価した。
【0230】
副次的有効性評価項目は、MG-ADL、MG-QOL15r、及びMGコンポジットのベースラインからの第12週変化を含んでいた。実薬投与のそれぞれを、プラセボ群と比較した。第12週でQMGスコアの3ポイント以上の減少を有する対象及び12週間の治療期間にわたり救援療法を必要とする対象で、実薬治療群のそれぞれの評価項目を満たす対象の割合をプラセボ群と比較した。
【0231】
有効性評価項目分析の具体的順序を、対象疲労を減少させ、結果の信頼性を増大させるように整えた。MG-QOL15r分析を最初に実施し、それに続いてMG-ADL分析、QMGスコア算定、及びMGコンポジットとした。試験を通して、同じ評価者を利用して、評価変動性を減少させた。
【0232】
結果
幅広い人口統計学的にバランスのとれた集団の参加者からの試験結果が得られた。試験参加者の試験前のベースライン特性を表5に表す。表中で、「SD」は「標準偏差」を指し、「SOC」は「標準治療」を指す。
【0233】
【0234】
集団は、難治性並びに非難治性疾病状態を示すベースライン疾患特性を有する対象を含んでいた。MGFA分類及び有効性転帰尺度を含むベースライン疾患特性も、試験参加者の間でバランスがとれていた。試験において、15人の対象がプラセボを受け取り、15人の対象が低投与量ジルコプラン(0.1mg/kg)を受け取り、14人の対象が高投与量ジルコプラン(3mg/kg)を受け取った。有意性試験を、0.1の片側アルファで事前に決めた。
【0235】
ベースライン人口統計的特性は、平均年齢(48.4~54.6歳)、人種表現(78.6%~86.7%白人)、平均体重(85.27~110.9kg)及び平均BMI(30.856~36.000)に関して群の間で類似であった。0.3mg/kgジルコプラン、0.1mg/kgジルコプラン、及びプラセボ群において、それぞれ71.4%、46.7%、及び26.7%男性で、性別に関して群の間に不均衡があった。しかし、性別は、gMGにおける治療応答で著しい役割を果たさないことが知られている。
【0236】
疾患の継続期間、以前のMGクリーゼ、以前の胸腺摘出、及びピリドスチグミン、コルチコステロイド療法、免疫抑制剤による以前の治療、又はIVIG若しくはPLEXによる救援療法を含む病歴は、治療群の間でバランスがとれていた。各群の90%を超える対象がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を受け取っていた;85%超がコルチコステロイドを受け取っていた;64.3~80%が免疫抑制療法を受けていた;53.3~71.4%がIVIGを受けていた;及び46.7~60.0%が血漿交換を受けていた。
【0237】
MGFA分類により測定されたMG疾患重症度は治療群の間で類似であり、0.1mg/kgジルコプラン及びプラセボ群における全対象がMGFAクラスII(軽度の疾患重症度)及びIII(中程度の疾患重症度)であったが、0.3mg/kgジルコプラン群はMGFAクラスIV(重症疾患)にも4人の対象を含んでいた。
【0238】
MG特異的ベースライン特性は、主要(QMG)及び第一副次的(MG-ADL)評価項目スコアにわたりバランスのとれており、0.3mg/kgジルコプラン、0.1mg/kgジルコプラン、及びプラセボ群で、それぞれ平均ベースラインQMGスコアが19.1、18.7、及び18.7;並びに平均MG-ADLスコアが7.6、6.9、及び8.8であった。MG-QOL15rは、0.1mg/kgジルコプラン群において0.3mg/kgジルコプラン群よりもおよそ3ポイント高く、0.3mg/kgジルコプラン、0.1mg/kgジルコプラン、及びプラセボ群において、それぞれ平均MG-QOL15rスコアが16.5、19.1、及び15.9であった。MGCは、プラセボ群において他の2群よりも4ポイント超高く、0.3mg/kgジルコプラン、0.1mg/kgジルコプラン、及びプラセボ群において、それぞれ平均MGCスコアが14.6、14.5、及び18.7であった。
【0239】
臨床有効性転帰を表6に与える。表中で、P値は、共分散分析(ANCOVA)モデルに基づく片側であり、ベースライン値を共変量とし、救援療法を受けた対象では最終観測値繰り越し(last observation carried forward)(LOCF)を使用した。「LS」は「最小二乗」を指し、「CFB」はベースラインからの変化を指し、「se」は「標準誤差」を指す。
【0240】
【0241】
0.3mg/kg治療群は、第12週時点でベースラインに対して臨床的に意味があり統計的に有意なQMGスコアの改善(3ポイント以上)を示し(
図3)、プラセボに対する平均の差異は-2.8であった。ベースラインに対して臨床的に意味があり統計的に有意なMG-ADLスコアの改善(2ポイント以上)もこの治療群で第12週に見られ(
図4)、プラセボに対する平均の差異は-2.3であった。臨床的に意味があり統計的に有意な改善は低投与量治療群でも見られ、より高い投与量対象で観察されたものよりもわずかだけ低いベースラインからの変化を表した。より低い投与量治療(0.1mg/kg)では、臨床的に意味があり統計的に有意なQMGスコアの改善は、第12週でプラセボに対する-2.3ポイントの平均の差異で観察された(
図5)。第12週での臨床的に意味があり統計的に有意なMG-ADLスコアの変化も、この群で観察された(プラセボに対する-2.2平均の差異;
図6)。プールされた低及び高投与量ジルコプラン治療群(n=29)の平均変化に対するプラセボのベースラインからのMG-ADLの変化を
図7に示すが、プラセボに対するジルコプラン治療の統計的に有意な利点を示す(プラセボに対する-2.2平均の差異;p=0.047、両側)。第12週でのプラセボに対して高投与量群における治療応答者をプラセボ応答者と比較する際に、QMGスコア及びMG-ADLの最高レベルの改善は全てジルコプラン治療群であり、各カットオフレベルで改善する患者が、プラセボと比べてジルコプランでは全般的により多くいた。
【0242】
ジルコプランは救援治療の必要性を減少させ、救援を要したのは、低投与量治療群ではわずか1人の対象(7%)、高投与量治療群では0人の対象であった(プラセボ群で救援療法を要したのは3人の対象(20%)であったのに比べて)。有意な評価項目差異は、以前の療法共変量(免疫抑制療法、IVIG、又はPLEX)に基づいて治療群の間で全く観察されず、全てP値が0.20を超えた。
【0243】
QMG及びMG-ADL評価項目に関して応答者分析を実施した。QMG総スコアでの臨床的に意味がある応答は、QMGの確立された臨床的に重要な最小変化量(minimal clinically important difference)(MCID)の上端と一致した3ポイント以上の改善と定義した(バローン(Barohn)ら著、1998年;カッツバーグ(Katzberg)ら著、2014年)。QMGで3ポイント以上のカットオフを使用する第12週での応答者の比率は、プラセボ(n=8/15)群と比べて、0.3mg/kgジルコプラン(n=10/14)及び0.1mg/kgジルコプラン(n=10/15)を受け取った対象で高かった(
図8)。追加の事前に計画した分析は、0.1mg/kgジルコプラン及びプラセボ群でそれぞれ3人及び2人の対象が悪化したのに対して0.3mg/kgジルコプラン群において悪化した対象がいないことを含め、QMGの全カットオフでジルコプラン治療された群の利点を示した。これらの差異はいずれも統計的に有意ではないが、例外は、7ポイント以上及び11ポイント以上の改善カットオフでの0.1mg/kgジルコプラン群対プラセボであり(表7)、多重検定の補正は実施しなかった。全体として、データは一次分析と一致しており、全般的にプラセボ群よりもジルコプラン治療アームでのより高い臨床反応を示す。
【0244】
【0245】
MG-ADL総スコアでの一般的に認められているMCIDは2ポイント以上の改善である(ウルフ(Wolfe)ら著、1999年;ムッピディ(Muppidi)ら著、2011年)。分析は、少なくとも11ポイントの差異までのより高いカットオフも含んだ。MG-ADLの2ポイント以上のカットオフを使用する第12週での応答者の比率は、プラセボ(n=8/15)群より、0.3mg/kg(n=10/14、71.4%)及び0.1mg/kg(n=10/15)でジルコプランを受け取った対象で高かった(
図9及び表8)。
【0246】
【0247】
最小症状発現(MSE)評価項目を算定して、ジルコプラン療法により何人の対象からMG症状がなくなるのか、又は事実上なくなるのか(0又は1のMG-ADL総スコアの達成に基づく)を決定した。この試験において、0.1mg/kgジルコプランの26.7%(4/15)及びプラセボ群の13.3%(2/15)と比べて、0.3mg/kgジルコプラン群の35.7%(5/14)の対象が0又は1のMG-ADLを達成した(プラセボ補正された率を
図10に示す)。さらに、高投与量治療群の達成パーセントは、26週間エクリズマブ治療で観察されたよりも高かった(ビッシング,J.(Vissing,J.)ら著、2018年、アメリカン・アソシエーション・オブ・ニューロマスキュラ・アンド・エレクトロダイアグノスティック・メディシンアブストラクト(AANEM Abstract)193に提示されたエクリズマブ試験結果に基づく)。この分析は、疾患負荷の主観的な認知の改善がジルコプランにより短い期間内で達成できる程度の大きさを明確に示した。0.3mg/kgジルコプラン群でより高い比率の患者がMSEを達成する用量反応は、この分析でもやはり明らかであった。
【0248】
薬物動態及び薬力学データの評価にはわずかしかサンプリングを実施しなかった。定常状態ジルコプラン血漿濃度は治療の最初の2週間以内に達成され、さらなる蓄積は全く観察されなかった(
図11)。0.3mg/kgジルコプラン投与量群における定常状態での(2週間以降)ジルコプランのトラフレベルは7,168ng/mL~13,710ng/mLの範囲であったが、それらは、0.1mg/kgジルコプラン投与量群において2,364ng/mL~7,290ng/mLであった。0.3mg/kgジルコプラン投与量は、ヒツジ赤血球(sRBC)溶血アッセイ(トラフで95%以上阻害)により測定される通り、完全な終末補体経路阻害を一貫して達成した。0.1mg/kg投与量のジルコプランは、対照的に、完全な溶血阻害を一貫して達成したのではなかった(
図12)。薬物動態的結果と薬力学的結果はgMGを有する患者において密接に相関し(
図13)、およそ9,000ng/mlを超えるジルコプラン血漿濃度による終末補体経路の完全な阻害を示している。
【0249】
全体として、高投与量と低投与量の両ジルコプラン治療は有効であり、有害作用は最低限で、より高い投与量がよりしっかりした臨床的改善をもたらした。
実施例4.延長部分
上記実施例に記載の試験の主要部分における治療期間の終わりに、全対象に、延長部分選択基準を満たすことを条件に、試験の延長部分でジルコプランを受け取る選択肢を与えた。試験の主要部分の間ジルコプラン治療アームに割り付けられた対象は、同じ投与量の治験薬を延長部分の間受け取り続けた。試験の主要部分の間プラセボアームに割り付けられた対象を、0.1mg/kgジルコプラン又は0.3mg/kgジルコプランのSC投与を連日受け取るように1:1の比でランダム化した。延長部分の最初の12週間の間の評価及び来院は、全対象で試験の主要部分と同一であり、プラセボから実薬治療に移る対象の適切なモニタリングを確実にし、治療割付けの盲検化を維持した。
【0250】
延長部分への受け入れの選択基準には下記があった:(1)AChR自己抗体の陽性血清;(2)妊娠の可能性がある女性対象ではスクリーニング時に陰性の血清妊娠試験及び治験薬の最初の投与に先立つ24時間以内に陰性の尿妊娠試験;(3)妊娠の可能性がある性的に活動的な女性対象(すなわち、閉経後ではなく、子宮摘出術、両側卵巣摘出術、又は両側卵管結紮術を受けていない女性)及び全男性対象(精管切除術により断種手術されていない)では、試験の間効果的な避妊を用いる同意;(4)試験の主要部分の除外基準により認可されていないあらゆる医薬品の使用又はあらゆる他の併用薬の変更された投薬、ただし医学的に適応の場合は除く;(5)及び試験の主要部分への登録以降新たな病状がないこと。
【0251】
試験の延長部分の間、胸腺摘出、リンパ節切除、又は他の外科的切除を受けた対象から得た生検材料切片を、探索的な免疫組織化学的及びバイオマーカ分析のために送った。
41人の患者が試験の12週間延長部分を完了した(24週間の全治療期間)。持続した応答が以下のそれぞれで観察された:(1)QMG、ベースラインより8.7ポイント減少、p<0.0001(
図14);(2)MG-ADL、ベースラインより4.5ポイント減少、p<0.0001(
図15);(3)MGコンポジット、ベースラインより10.2ポイント減少、p<0.0001(
図16);及びMG-QOL15r、ベースラインより7.5ポイント減少、p=0.0006(
図17)。
【0252】
12週間後に実薬に移ったプラセボ対象も、迅速で臨床的に意味があり統計的に有意な各評価項目の改善を経験した:(1)QMG、治療前レベル(12週間プラセボ治療と関連するレベル)より3.1ポイント減少、p=0.01(
図14);(2)MG-ADL、治療前レベルより3.6ポイント減少、p=0.0004(
図15);(3)MGコンポジット、治療前レベルより5.5ポイント減少、p=0.004(
図16);及びMG-QOL15r、治療前レベルより4.0ポイント減少、p=0.04(
図17)。
【0253】
実施例5.薬理ゲノミクス分析
薬理ゲノミクス分析を、スクリーニング時に得られた血液試料で実施する。ゲノム試験[例えば、デオキシリボ核酸(DNA)配列、DNAコピー数分析、及びリボ核酸発現プロファイリング]を実施するが、それは特定のゲノム特徴が治験薬への応答又は抵抗性と相関するかどうかの探索を含む。
【0254】
実施例6.尿検査
スクリーニングの間並びに全試験及び救援療法来院の間に収集した試料に対して尿検査を実施して、pH、比重、タンパク質(定性的)、グルコース(定性的)、ケトン(定性的)、ビリルビン(定性的)、ウロビリノーゲン、潜血、ヘモグロビン、及び細胞を評価する。必要な場合、顕微鏡検査を実施して、測定を確認する。
【0255】
実施例7.第III相試験
12週間にわたりプラセボに対して0.3mg/kgジルコプラン連日皮下治療を試験する、単一(single)、グローバル、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間、多施設共同試験(n=130)を実施して、gMGを有する対象におけるジルコプランの有効性を評価する。12週間の二重盲検プラセボ対照期間の後、全対象は、非盲検試験延長においてジルコプランを受け取る選択肢を有する。主要試験及び延長試験治療の間及びその後に、MG-ADL(主要評価項目)、QMG、MGコンポジット、及びMG-QOL15rの変化に関して対象を評価する。
【0256】
gMGを有する患者を、主要な組入れ基準を満たすことを条件に試験に登録する:(1)MGFA臨床分類クラスII~IV;(2)抗AChR抗体の陽性血清検査;(3)MG-ADLスコア5以上;(4)QMG総スコア12以上;(5)ランダム化に先立つ少なくとも4週間コルチコステロイド投与量若しくは免疫抑制療法に変化がないこと、又は12週間の治療期間の間に変化が起こると見込まれないこと;且つ、投薬に先立つ少なくとも4週間PLEXを受けてもIVIGを受けとってもおらず、且つ少なくとも12か月の間リツキシマブを受けていなかった。選択は抗AChR陽性状態に基づいており、抗MUSK-抗体陽性患者など、補体結合抗体がないために補体阻害剤療法に応答しないと予測される患者が除外されることを確実にし;且つ試験に参加する全患者が臨床的並びに臨床検査的に確定されたMGの診断を有することを確実にする。試験集団は「治療抵抗性」患者に限定されず、疾患スペクトル全体の患者の登録が許容される。終末補体阻害が、他の全療法を受け尽くした患者にのみ有効であると信じる基本メカニズムはない。
【0257】
実施例8.ジルコプランは自己抗体誘導性補体活性を神経筋接合部(NMJ)で阻害する
ヒト筋管と神経芽細胞腫細胞の共培養物を調製し、インビトロNMJモデルとしてヒト血清と共に培養した。細胞を、10μMジルコプランと共に又はなしで、及びIgG1フォーマットかIgG4フォーマットかの抗アセチルコリン受容体(AChR)637抗体と培養した。IgG1抗体は、補体介在性C5b-9沈着を促進することが知られているが、IgG4抗体は促進しない。その後のC5b-9の沈着を、抗C5b-9抗体(aE11、アブカム(AbCam)、ケンブリッジ、英国)を使用して免疫蛍光法により観察した。C5b-9沈着を、ジルコプランなしで抗AChR 637 IgG1と共に培養した細胞で観察した。C5b-9沈着は、同じ条件下だが10μMジルコプランと共に培養した細胞にはなかった。補体介在性のNMJの破壊はgMGの病因に寄与するので、このデータは、上述のヒト試験で観察された良い方向の臨床反応の機構原理の例となる。
【0258】
実施例9.ジルコプラン透過性
ジルコプランインビトロ透過性を、基底膜モデルを使用して評価した。モデルにおいて、ジルコプランが細胞外マトリックス(ECM)ゲル膜(アレンズ,F.(Arends,F.)ら著、2016年、インテクオープン(IntechOpen)、デジタルオブジェクト識別子:10.5772/62519に記載の通り調製)を通過する拡散を評価し、エクリズマブの拡散と比較した。モデルにおいて、下部リザーバからECMゲル膜により分離された上部リザーバに化合物を導入した。ECMゲル膜は、神経筋接合部の基底板にみられるものを模倣したマトリックス成分を含むように調製した。化合物が膜を通過する透過性を、下部リザーバ内の検出により評価した。上部リザーバに導入したジルコプランの20%超が12時間後に下部リザーバに拡散し、24時間までに60%超が拡散した(
図18参照)。対照的に、24時間後に下部リザーバに拡散したエクリズマブは20%未満であった。結果は、エクリズマブと比べてジルコプランの基底膜を通る優れた透過性(約4倍高い)を実証し、優先的な組織浸透を示唆する。
【0259】
ジルコプランの透過性増大を定量的全身分析(QWBA)により確認した。この試験のために、ジルコプランC末端リジンを14Cにより放射標識し、ラットに投与した。動物をイメージングして、複数の器官及び組織における放射標識されたジルコプランの濃度を経時的に(24時間)測定した。分析した各器官又は組織の濃度曲線下面積(AUC)を血漿AUCのパーセンテージとして表し、以下の表9に表す体内分布値を与えた。シャー,D.K.(Shah,D.K.)ら著、2013年、エムアブス(mAbs)、第5巻:p.297-305に発表されたモノクローナル抗体体内分布試験に基づいた推測されるエクリズマブ体内分布値を比較のために与える。
【0260】
【0261】
これらの結果は、C5阻害剤組織浸透が必要でありエクリズマブ組織浸透が不充分である組織中のC5活性を阻害するためのジルコプランの使用を支持する。
実施例10.ジルコプラン薬物間相互作用
ジルコプランインビボ薬物間相互作用試験を、非ヒト霊長類において、使用可能性がある併用薬物と共に実施した。最初に調査したのは、ジルコプランの薬物動態に対するシクロスポリンAの影響であり、逆も同様であった。シクロスポリンAは、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1及びOATP1B3の公知の阻害剤であり、PNHにおいて使用可能性がある併用薬物である。シクロスポリンA投与後にジルコプラン曝露に対する影響は全く観察されず、ジルコプラン投与後にシクロスポリンA曝露に対する影響は全く観察されなかった。これらの結果は、ジルコプランとシクロスポリンAを組み合わせた投与による、対象における補体関連の適応症(例えば重症筋無力症)を治療する方法を支持する。
【0262】
第2のインビボ薬物間相互作用試験は、ジルコプラン及び胎児性Fc受容体(FcRN)リサイクリングの阻害剤DX-2507、製造性を改善するためのシステインからアラニンへの変異を有するDX-2504の機能的に等価な変形体(ニクソン,A.E.(Nixon,A.E.)ら著、2015年、フロンティアズ・イン・イミュノロジー(Front Immunol.)、第6巻:p.176に記載)により実施した。FcRNを阻害することにより、DX-2504はFc介在性リサイクリングを阻害し、それによりIgG抗体の半減期を減少させる。DX-2504の投与は、高投与量の免疫グロブリンによりFcリサイクリング機構を圧倒することによりIgG抗体の半減期を減少させる静脈内免疫グロブリン(IVIG)治療のモデルとして機能する。ジルコプラン薬物動態及び薬力学は、カニクイザル(Cynomolgus monkey)において、抗FcRNモノクローナル抗体DX-2507の同時投薬により変化しなかった。さらに、ジルコプランレベルの変化は、IVIGの同時治療投与を受けている患者において全く観察されなかった。これらの結果は、ジルコプラン薬物動態に対するFcRN阻害の影響が全くないことを示し、ジルコプランとFcRN阻害剤(DX-2504、DX-2507、又はIVIG)を組み合わせた投与による、対象における補体関連の適応症(例えば重症筋無力症)を治療する方法を支持する。
【配列表】
【国際調査報告】