(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法およびこれを利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シート
(51)【国際特許分類】
A61K 35/35 20150101AFI20220113BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220113BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220113BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K35/35
A61P3/10
A61P17/00
A61K38/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020501355
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2019013856
(87)【国際公開番号】W WO2021071001
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0124693
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519134452
【氏名又は名称】ロキット ヘルスケア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソク ファン ユー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084DC11
4C084MA02
4C084NA10
4C084NA14
4C084NA20
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC351
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA32
4C087MA63
4C087NA14
4C087NA20
4C087ZA89
4C087ZC35
(57)【要約】
本明細書は、A)自己脂肪組織を抽出する段階;B)2mm~3mmのポア(pore)直径を有する第1フィルターを利用して、自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;C)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を、450μm~550μmのポア直径を有する第2フィルター、および150μm~250μmのポア直径を有する第3フィルターに順次に通過させて、自己脂肪組織を粉砕する段階;D)25μm~75μmのポア直径を有する第4フィルターに捕集される前記粉砕された自己脂肪組織を抽出して、脂肪組織抽出物を収得する段階;E)3Dスキャナを利用して患者の皮膚欠損領域の3次元データを収得した後、これを基礎として3Dプリンタを利用して、皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階;F)前記脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含む第1液を前記3Dモールド内に塗布して、前駆層(proto-layer)を形成する段階;G)トロンビンを含む第2液を前記前駆層上に塗布して、皮膚再生層に硬化させる段階;およびH)前記3Dモールドを除去する段階;を含む、糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法およびこれを利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートに関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)自己脂肪組織を抽出する段階;
B)2mm~3mmのポア(pore)直径を有する第1フィルターを利用して、自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;
C)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を、450μm~550μmのポア直径を有する第2フィルター、および150μm~250μmのポア直径を有する第3フィルターに順次に通過させて、自己脂肪組織を粉砕する段階;
D)25μm~75μmのポア直径を有する第4フィルターに捕集される前記粉砕された自己脂肪組織を抽出して、脂肪組織抽出物を収得する段階;
E)3Dスキャナを利用して患者の皮膚欠損領域の3次元データを収得した後、これを基礎として3Dプリンタを利用して、皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階;
F)前記脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含む第1液を前記3Dモールド内に塗布して、前駆層(proto-layer)を形成する段階;
G)トロンビンを含む第2液を前記前駆層上に塗布して、皮膚再生層に硬化させる段階;および
H)前記3Dモールドを除去する段階;を含む、
糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項2】
前記段階B)~段階G)は、30分以内に完了することを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項3】
前記第1フィルターは、ステンレス材質のシリンジフィルターであることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項4】
前記段階C)は、フィルターバック(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、これを外部圧力を加えてフィルターに通過させて、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を粉砕するものであることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項5】
前記第1液内のフィブリノーゲンは、60IUのフィブリノーゲンを40%~60%に希釈したものであることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項6】
前記第2液内のトロンビンは、500IUのトロンビンを40%~60%に希釈したものであることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項7】
前記第1液内の脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンの体積比は、3:1~5:1であることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項8】
前記第1液は、インスリン、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor)、顆粒性白血球(granulocytes)、リンパ球(lymphocytes)、内皮細胞(endothelial cells)、単核白血球(monocytes)、大食細胞(macrophages)、脂肪組織由来幹細胞(adipose-derived stem cells)、アディポサイトカイン(adipocytokines)、アディポネクチン(adiponectin)、レプチン(leptin)、IL-6,IL-1β、MCP-1およびPAI-1よりなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項9】
脂肪組織抽出物、フィブリノーゲンおよびケラチノサイト(keratinocyte)を含む追加の第1液を前記皮膚再生層上に塗布して追加の前駆層を形成した後、トロンビンを含む追加の第2液を前記追加の前駆層上に塗布して表皮再生層に硬化させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項10】
前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの厚さは、少なくとも1mmであることを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法を利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法およびこれを利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性足部病症とは、特に、糖尿病を有するヒトの足の皮膚創傷による皮膚組織がただれて生じる足の潰瘍を意味する。これは、糖尿病による神経病症や末梢血管疾患が糖尿病患者の足に潰瘍を起こしたり、傷感染が悪化して生じる現象である。糖尿病を有する患者の約20%が、必ず一回以上は糖尿病性足部病症を病むことになり、そのうち1~3%程度の患者が足の一部を切断する手術を受けている。
【0003】
また、外傷による場合を除いた、足の一部を切断することになる原因のうち半分以上が糖尿病性足部病症であることが知られている。このように、糖尿病性足部病症は、糖尿病患者の生活の質を低下させる非常に重要な原因であって、これを治療するための手段が必要である。特に、糖尿病性足部病症により壊死される領域の皮膚組織を回復させて正常な生活を可能にするための研究が必要であるのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、糖尿病性足部病症患者の壊死部位の皮膚を正常皮膚に回復させることができる糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法およびこれを利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施様態は、A)自己脂肪組織を抽出する段階;B)2mm~3mmのポア(pore)直径を有する第1フィルターを利用して、自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;C)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を、450μm~550μmのポア直径を有する第2フィルター、および150μm~250μmのポア直径を有する第3フィルターに順次に通過させて、自己脂肪組織を粉砕する段階;D)25μm~75μmのポア直径を有する第4フィルターに捕集される前記粉砕された自己脂肪組織を抽出して、脂肪組織抽出物を収得する段階;E)3Dスキャナを利用して患者の皮膚欠損領域の3次元データを収得した後、これを基礎として3Dプリンタを利用して、皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階;F)前記脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含む第1液を前記3Dモールド内に塗布して、前駆層(proto-layer)を形成する段階;G)トロンビンを含む第2液を前記前駆層上に塗布して、皮膚再生層に硬化させる段階;およびH)前記3Dモールドを除去する段階;を含む、糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法を提供する。
【0006】
本発明の他の実施様態は、前記製造方法を利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法は、糖尿病性足部病症患者に適合した皮膚再生シートを迅速に製造することによって、高い細胞活性および細胞成長因子の皮膚再生促進効果を期待することができるので、効果的に患部の回復を具現することができる。
【0008】
本発明による糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法は、糖尿病性足部病症患者の患部と一致する形状(すなわち、模様および深さが一致する形状)の皮膚再生シートを製造することになって、より効果的に患部の回復が可能である。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、下記の発明の詳細な説明、請求範囲および図面によりさらに明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例による脂肪組織抽出物の収得過程を段階的に示すものである。
【
図2】実施例の患者オーダーメード型3Dモールドの製造過程を示すものである。
【
図3】実施例による患者オーダーメード型皮膚再生シートを糖尿病性足部病症患者に適用した過程およびこれに伴う結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において任意の部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これは、任意の部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合をも含む。
【0012】
本明細書において任意の部分が或る構成要素を「含む」とするというとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施様態は、A)自己脂肪組織を抽出する段階;
B)2mm~3mmのポア(pore)直径を有する第1フィルターを利用して、自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;
C)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を、450μm~550μmのポア直径を有する第2フィルター、および150μm~250μmのポア直径を有する第3フィルターに順次に通過させて、自己脂肪組織を粉砕する段階;
D)25μm~75μmのポア直径を有する第4フィルターに捕集される前記粉砕された自己脂肪組織を抽出して、脂肪組織抽出物を収得する段階;
E)3Dスキャナを利用して患者の皮膚欠損領域の3次元データを収得した後、これを基礎として3Dプリンタを利用して、皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階;
F)前記脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含む第1液を前記3Dモールド内に塗布して、前駆層(proto-layer)を形成する段階;
G)トロンビンを含む第2液を前記前駆層上に塗布して、皮膚再生層に硬化させる段階;および
H)前記3Dモールドを除去する段階;を含む、糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法を提供する。
【0015】
以下、前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法の各段階について詳細に説明する。
【0016】
段階A):自己脂肪組織を抽出する段階
前記段階A)は、一般的な脂肪吸入術を利用して、糖尿病性足部病症患者の自己脂肪組織を抽出するものでありうる。具体的に、前記段階A)の自己脂肪組織は、脂肪吸入術による抽出物から脂肪吸入術に使用された食塩水および共に混ざって出る血を除去したものでありうる。
【0017】
本発明の一実施様態によれば、前記段階A)は、脂肪吸入術を利用して収得される抽出物内の血および生理食塩水を除去して、自己脂肪組織を抽出するものでありうる。具体的に、前記段階A)は、脂肪吸入術を利用して収得される抽出物を所定の時間の間放置して脂肪層と分離される血および生理食塩水層を取り除いて自己脂肪組織を抽出することができる。このように、血および生理食塩水を除去する場合、より効果的に下記の脂肪組織抽出物を抽出することができ、ひいては、抽出された脂肪組織抽出物は、治療に適合した成長因子および活性細胞をより効果的に含むことができる。
【0018】
段階B):自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階
前記段階B)は、ポアの直径が相対的に大きい第1フィルターを利用して、抽出された自己脂肪組織内の繊維質を除去するものでありうる。具体的に、前記段階B)における前記第1フィルターは、ステンレス材質のシリンジフィルターでありうる。具体的に、前記第1フィルターは、強度の高いステンレス材質のフィルター部を有していて、前記自己脂肪組織から繊維質を効果的に分離させることができる。より具体的に、前記段階B)は、前記第1フィルターの両端に注射器を装着した後、注射器のピストン運動を利用して抽出された自己脂肪組織を2回以上、具体的に2~3回前記第1フィルターを通過させるものでありうる。前記段階B)の場合、一次的に自己脂肪組織内の繊維質を取り除いて、より効果的であり、早い時間のうちに自己脂肪組織の粉砕が行われるようにすることができる。
【0019】
段階C):自己脂肪組織を粉砕する段階
前記段階C)は、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を前記第2フィルターに通過させて自己脂肪組織を粉砕させ、その濾過物を前記第3フィルターに通過させて追加的に自己脂肪組織を粉砕する段階を含むことができる。
【0020】
本発明の一実施様態によれば、前記段階C)は、フィルターバック(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、これを外部圧力を加えてフィルターに通過させて、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を粉砕するものでありうる。具体的に、前記段階C)は、フィルターバックに前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、外部でシリコンしゃもじなどのようなツールを利用して前記繊維質が除去された自己脂肪組織が第2および第3フィルターを順次に通過するようにして、自己脂肪組織が粉砕されるようにするものでありうる。
【0021】
本明細書において、フィルターバックは、柔軟なプラスチック素材の密閉された袋形状のフィルターキットであって、一側に注入口が設けられ、他側に排出口が設けられ、フィルターで内部空間が分画された形態でありうる。
【0022】
前記段階C)における第2フィルターおよび第3フィルターの一例は、Tiss’you社のLipocellキットのフィルターバックを変形して使用することができる。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の目的に合うフィルターを利用することができる。
【0023】
前記段階C)のように、次第にポア直径が小さいフィルターを利用して自己脂肪組織を粉砕する場合、自己脂肪組織を微粉砕するための時間を大きく短縮することができ、脂肪組織抽出物内の細胞が高い細胞活性を維持することができる。具体的に、前記段階C)を利用する場合、物理的な方法で脂肪組織を微粉砕するにも関わらず、効果的に治療に効果的な脂肪組織および活性細胞および活性タンパク質を多量確保することができる長所がある。ひいては、前記段階C)を利用する場合、細胞外基質および成長因子を最適な活性状態で収集可能であり、また、3Dバイオプリンティングを行うことができる物性を有するようにすることができる。
【0024】
D)脂肪組織抽出物を収得する段階
前記段階D)は、前記段階C)を通じて粉砕された自己脂肪組織を前記第4フィルターで濾過した後、濾過された物質を捨てて、フィルターに捕集される物質を収得するものでありうる。具体的に、前記段階D)は、段階C)を通じて粉砕された自己脂肪組織を生理食塩水と混合した後、前記第4フィルターを利用して濾過して、濾過される物質を分離して除去した後、前記第4フィルターに捕集される物質を脂肪組織抽出物として利用するものでありうる。前記濾過されて除去される物質は、過度に微粉砕されて細胞活性が劣る脂肪組織、血、生理食塩水などを含むことができ、これは、本発明において意図する最終皮膚再生シートの活性を妨害することができるので、除去されなければならない。
【0025】
前記段階D)は、フィルターバックに前記繊維質が除去された自己脂肪組織および生理食塩水を注入した後、前記第4フィルターに濾過される物質を除去するものでありうる。具体的に、前記段階D)は、フィルターバックに前記繊維質が除去された自己脂肪組織および生理食塩水を注入した後、適切な圧力を加えて前記粉砕された自己脂肪組織を前記第4フィルターに濾過させるものでありうる。
【0026】
前記段階D)における第4フィルターの一例は、Tiss’you社のLipocellキットのフィルターバックを変形して使用することができる。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の目的に合うフィルターを利用することができる。
【0027】
本発明によって製造される前記脂肪組織抽出物は、特に糖尿病性足部病症患者の皮膚回復に必要な成長因子(growth factor)、活性細胞および活性タンパク質などを豊富に含有することができる。ひいては、前記脂肪組織抽出物を利用したバイオプリンティング組成物(例えば、第1液)は、バイオプリンティング過程でノズルが詰まらなく、ひいては、適切な粘度を維持して一定の速度で噴出され得るので、精密なバイオプリンティングが要求される皮膚再生シートの製造に適合する。
【0028】
また、前記脂肪組織抽出物は、早い時間のうちに成長因子活性細胞および活性タンパク質などを最大で含有して抽出され得るので、より効果的な治療を可能にすることができる。
【0029】
段階E):皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階
前記段階E)は、当業界において知られた3Dスキャナ装備または3Dプリント装備を利用することができる。ひいては、前記3Dモールドは、前記第1液および第2液の塗布時に患部の立体的形態(すなわち、模様、大きさ、深さなどの3次元的形態)を維持させることができるようにすることができ、皮膚再生シートが製造された後に除去され得る。前記3Dモールドは、当業界において一般的に使用される生体適合性高分子を利用して形成され得る。具体的に、前記3Dモールドは、PCLを利用して製造され得る。前記PCLは、低い溶融点を有し、高い柔軟性を有するので、製造される皮膚再生シートから容易に分離させることができる長所がある。ひいては、PCLは、患部の立体的形状に符合する最適なモールドを製作することができるようにすることができ、患部の立体的形状と同じ3Dモールドを利用して製造された皮膚再生シートは、効果的に患部に密着して回復を助けることができる。
【0030】
段階F):前駆層(proto-layer)を形成する段階
段階G):皮膚再生層に硬化させる段階
本明細書において前駆層(proto-layer)とは、硬化する前のバイオ組成物が塗布された層を意味する。具体的に、3Dモールド内に塗布され、トロンビンを含む組成物により硬化する前の層を意味する。
【0031】
前記段階F)および段階 G)は、それぞれインクジェットバイオプリンティングまたは3Dバイオプリンティングを利用して行われ得る。具体的に、前記段階F)および段階G)は、当業界において知られた2以上のノズルを有するバイオプリンティング装置を利用することができ、それぞれのノズルから前記第1液および第2液をそれぞれ吐出して立体形状を作ることができる。ひいては、前記前駆層の形成時に3Dバイオプリンタまたはインクジェットバイオプリンタを利用して、細胞および細胞外基質の均質な分布を有するようにし、ひいては、硬化後の皮膚再生層内の細胞固まり現象などを防止することができる。
【0032】
本発明の一実施様態によれば、前記段階G)は、30秒~5分以内、具体的に10秒~1分以内に硬化が完了することができる。
【0033】
本発明の一実施様態によれば、前記段階B)~段階G)は、30分以内に完了することができる。具体的に、前記段階B)~段階G)は、脂肪組織抽出以後、1分~15分、または、1分~5分以内に完了することができる。
【0034】
前記製造方法を利用する場合、自己脂肪組織を抽出した後、患者オーダーメード型皮膚再生シートを非常に迅速に製造することができるようになって、患者オーダーメード型皮膚再生シート内の細胞および細胞外基質などの活性を最大化させることができる長所がある。
【0035】
段階H):3Dモールドを除去する段階
前記段階H)は、皮膚再生層を含む糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シート(選択的に後述する表皮再生層を含む)を3Dモールドから分離させるものでありうる。前記3Dモールドから除去された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートは、糖尿病性足部病症患者の皮膚欠損部位に付着して患部の皮膚再生効果を最大化させることができる。
【0036】
第1液および第2液
前記第1液は、脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含むことができる。前記脂肪組織抽出物は、脂肪組織由来基質血管分画および脂肪組織由来細胞外基質を含むことができる。前記脂肪組織由来基質血管分画は、脂肪組織由来幹細胞(adipose derived stem cells)を含むことができる。前記脂肪組織由来基質血管分画は、糖尿病性足部病症患者の患部で皮膚組織に分化して、前記脂肪組織由来細胞外基質と共に患部の回復を助けることができる。前記脂肪組織由来細胞外基質は、糖尿病性足部病症患者の患部で皮膚組織に分化する細胞が固定され得る環境を提供することができる。
【0037】
本発明の一実施様態によれば、前記第1液は、インスリン、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor)、顆粒性白血球(granulocytes)、リンパ球(lymphocytes)、内皮細胞(endothelial cells)、単核白血球(monocytes)、大食細胞(macrophages)、脂肪組織由来幹細胞(adipose-derived stem cells)、アディポサイトカイン(adipocytokines)、アディポネクチン(adiponectin)、レプチン(leptin)、IL-6、IL-1β、MCP-1およびPAI-1よりなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。具体的に、前記第1液は、糖尿病性足部病症患者の患部においてのインスリン濃度より高い含量のインスリンを含むか、インスリン様成長因子を含むことができ、これを通じて、糖尿病性足部病症患者の患部の毛細血管の壊死によるインスリン供給の不足を補完して、患部の回復が効果的に行われるようにすることができる。
【0038】
前記第1液内のフィブリノーゲンは、前記第2液内のトロンビンと反応してフィブリンフィブリンネットワークを形成することができ、これは、前記皮膚再生層内の活性細胞が十分に固定されるようにする役割をすることができる。
【0039】
本発明の一実施様態によれば、前記第1液内のフィブリノーゲンは、60IUのフィブリノーゲンを40%~60%に希釈したものでありうる。
【0040】
また、本発明の一実施様態によれば、前記第2液内のトロンビンは、500IUのトロンビンを40%~60%に希釈したものでありうる。
【0041】
前記フィブリノーゲンおよびトロンビンの濃度が前記範囲を超過すれば、前記皮膚再生層内のフィブリングルーの含量が過度に高くなって、皮膚細胞への分化が効果的でなく、細胞生存率が低くなる問題が発生し得、ひいては、前記皮膚再生層の硬度が過度に高くなって、患部適合性が低下し得る。ひいては、前記フィブリノーゲンおよびトロンビンの濃度が前記範囲未満である場合、前記皮膚再生層の硬度が過度に低くなって、ハンドリングが困難であり、製造された皮膚再生シートの流れ性が過度に高くて、患部への適用時に効果的でない問題が発生し得る。すなわち、前記フィブリノーゲンおよびトロンビンの濃度が前記範囲内である場合、細胞生存率を最大化させ、製造された皮膚再生シートの硬度および流れ性が適切であり、患部に適用時に最大の効果を具現することができ、ひいては、皮膚再生シート内のタンパク質および活性細胞の分布が均一に維持されて、効果的な治療が可能にすることができる。
【0042】
本発明の一実施様態によれば、前記第1液は、アプロチニンをさらに含むことができる。前記アプロチニン(aprotinin)は、すい臓から分泌されるプロテイン分解酵素の抑制剤であって、総58個のアミノ酸からなるポリペプチドである。主に牛の肺から抽出され、血液中では、フィブリンの分解を阻止して、止血作用をするものと知られている。
【0043】
本発明の一実施様態によれば、前記アプロチニンは、1mlの第1液当たり900KIU~1,100KIU(kininogen Inactivator Unit)、具体的に1000KIUで含まれ得る。
【0044】
本発明の一実施様態によれば、前記第2液は、塩化カルシウム溶液内にトロンビンが分散したものでありうる。具体的に、前記第2液は、5mg~6.5mgの塩化カルシウムを含むことができる。
【0045】
前記第1液および第2液の溶媒は、水、具体的には、生理食塩水でありうる。また、前記第1液内のフィブリノーゲンと前記第2液内のトロンビンは、常用のフィブリングルーキットを通じて入手することができる。
【0046】
本発明は、フィブリノーゲンおよびトロンビンから構成されるフィブリングルーを接着剤として使用し、これは、ヒアルロン酸接着剤またはコラーゲン接着剤より高い粘性を確保することができるので、前記皮膚再生層は、患部との優れた接着力を有し、ひいては、適切な強度を維持することができる。
【0047】
本発明の一実施様態によれば、前記第1液内の脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンの体積比は、3:1~5:1でありうる。前記第1液内の脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンの体積比が前記範囲内である場合、製造される皮膚再生シートの強度および細胞分化能が最も効果的に具現され得る。
【0048】
皮膚再生層
本発明の一実施様態によれば、前記皮膚再生層は、フィブリンマトリックス内に微粉砕された脂肪組織由来細胞および活性因子が備えられたものでありうる。具体的に、前記皮膚再生層は、脂肪組織由来細胞外基質、脂肪組織由来基質血管分画の他に多様な細胞および/または、活性因子を含むことができる。
【0049】
表皮再生層
本発明の一実施様態によれば、脂肪組織抽出物、フィブリノーゲンおよびケラチノサイト(keratinocyte)を含む追加の第1液を前記皮膚再生層上に塗布して追加の前駆層を形成した後、トロンビンを含む追加の第2液を前記追加の前駆層上に塗布して表皮再生層に硬化させる段階をさらに含むことができる。前記追加の第1液および追加の第2液は、前述した第1液および第2液の塗布方法と同じ方法を利用して前記3Dモールド内に塗布され得る。
【0050】
本発明の一実施様態によれば、前記追加の第1液は、脂肪組織抽出物、フィブリノーゲンおよびケラチノサイトを含むものであって、前述した第1液にケラチノサイトをさらに含むものでありうる。ひいては、前記追加の第2液は、前述した第2液と同じものでありうる。
【0051】
前記追加の第1液は、硬化した前記皮膚再生層上に塗布されて追加の前駆層を形成し、追加の第2液が前記追加の前駆層上に塗布されて皮膚再生層に硬化することができる。
【0052】
すなわち、前記表皮再生層は、前述した皮膚再生層と同様に、フィブリンマトリックス内に微粉砕された脂肪組織由来細胞および活性因子を具備し、これに加えて、ケラチノサイトがさらに備えられたものでありうる。
【0053】
前記表皮再生層は、前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの一部として含まれ得、特に患部の最外郭に位置して、患部の表皮再生をより効果的に助けることができる。具体的に、前記皮膚再生層は、効果的に患部の真皮層の回復を助けることができ、前記表皮再生層は、患部の最外郭に位置して、前記患部の表皮層の回復を助けることができるので、早い回復が可能であるという長所がある。
【0054】
糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シート
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記製造方法を利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートを提供する。前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートは、前述した皮膚再生層だけからなり得、または、前述した皮膚再生層と表皮再生層を全部含むこともできる。
【0055】
本発明の一実施様態によれば、前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの厚さは、少なくとも1mmでありうる。具体的に、前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの厚さが1mm未満である場合、真皮層から皮膚細胞の再生がなされないので、患部の回復が遅くなったり、回復される皮膚の表面が不均一になり得る。より具体的に、前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの厚さは、1mm~10mm、または、1mm~5mmでありうる。
【0056】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を取って詳細に説明することとする。しかしながら、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形され得、本発明の範囲が下記で記述する実施例に限定されると解されない。本明細書の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0057】
[実施例]
(1)脂肪組織抽出物の収得
糖尿病性足部病症患者を麻酔した後、脂肪吸入術を利用して糖尿病性足部病症患者の腹部から70ml~150mlの吸入物を抽出し、約5分間放置した後、脂肪組織と共に混ざって出た食塩水および血を沈めて、沈殿物を除去して、自己脂肪組織を収得した。
【0058】
次に、患者の脂肪が入れた注射器と新しい注射器をポアが2.4mmのステンレスシリンジフィルター(Adnizer,SKT-AN-2400,BSL)が含まれたコネクターの両方向注入口に装着し、ピストン運動で脂肪がフィルターを2~3回通過するようにして、自己脂肪組織から繊維質を除去した。
【0059】
次に、繊維質が除去された脂肪をポア直径が500μmのPETフィルターが備わったFilter bag(Adipose tissue processing device,Tiss’you)に注入し、シリコンしゃもじを利用して取り除く。ひいては、ポア直径が200μmのPETフィルターが備わったFilterbag(Adipose tissue processing device,Tiss’you)を利用して、500μmのフィルターを通過した脂肪を同じ方法で取り除いた。ひいては、200μmフィルターを通過した脂肪をポア直径が50μmのPETフィルターが備わったFilter bag(Adipose tissue processing device,Tiss’you)に同量の生理食塩水とともに注入し、生理食塩水とその他異物を取り除いて脂肪組織抽出物を収得した。
【0060】
図1は、実施例による脂肪組織抽出物の収得過程を段階的に示したものである。具体的に、
図1のAは、シリンジフィルターを利用して自己脂肪組織から繊維質を除去する過程を示すものである。
図1のB~Cは、Filter bagに繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、シリコンしゃもじを利用して自己脂肪組織がフィルターを通過するようにすることを示すものである。
図1のDは、最終収得された脂肪組織抽出物を示すものである。
【0061】
(2)第1液および第2液の製造
Beriplastキット(Beriplast P Combi-Set,CSL Behring L.L.C.)のフィブリノーゲン(60IU)溶液とトロンビン(500IU)溶液をそれぞれ生理食塩水で50%希釈した。
【0062】
50%に希釈されたフィブリノーゲン溶液と前記脂肪組織抽出物を1:4の体積比で混合して第1液を製造した。そして、前記50%に希釈されたトロンビン溶液を第2液として使用した。
【0063】
(3)患者オーダーメード型3Dモールドの製造
蒸気滅菌して消毒した10cm×10cmラテックス付きガラス板の中央に原点を表示した。そして、患者の患部より1mm~2mm大きいサイズで透析膜(Dialysis membrane)1枚を四角形の形態に切った後、生理食塩水に濡らしてラテックス付きガラス板の重点に付着した。ガラス板の原点を3Dバイオプリンタ機(INVIVO,ROKIT HELTHCARE)のベッドの原点に合わせてガラス板ベッドレーベリングを合わせた。ひいては、患部の模様と大きさに合うPCL 3Dモールドを製作するために、患部の模様を写真撮影し、3Dモデリングファイルに変換した。次に、3Dモデリングファイルを3Dバイオプリンタ機(INVIVO,ROKIT HELTHCARE)に入力し、Medical grade PCL(RESOMER C 209,EVONIK,MW 45,000)1g~2gを3Dバイオプリンタ機(INVIVO,ROKIT HELTHCARE)のAir-dispenserに入れた後、80℃~100℃の温度および600kPa~800kPaの圧力条件で3Dモールドを出力した。
【0064】
図2は、実施例の患者オーダーメード型3Dモールドの製造過程を示すものである。具体的に、
図2のAは、ラテックス付きガラス板に透析膜を付着したことを示すものである。
図2のBは、糖尿病性足部病症患者の患部を示すものであり、
図2のCは、患者の患部を3Dモデリングした結果である。ひいては、
図2のDは、最終製造された患者オーダーメード型3Dモールドを示すものである。
【0065】
(4)患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造
3Dバイオプリンタ機(INVIVO,ROKIT HELTHCARE)のベッドの原点に合うように出力された3Dモールドを3Dバイオプリンタ機(INVIVO,ROKIT HELTHCARE)に装着した。
【0066】
そして、ノズルサイズ0.5mm、プリンティング速度10mm/s、押出量300%、充填50%、外壁厚さ0.5mmに設定されたDispenser 1に前記第1液を装着し、ノズルサイズ0.5mm、プリンティング速度10mm/s、押出量500%および充填70%に設定されたDispenser 2に前記第2液を装着した後、前記3Dモールド内に前記第1液を出力し、直ちに前記第2液を出力して硬化させた。ひいては、前記3Dモールドを除去して、患者オーダーメード型皮膚再生シートを収得した。
【0067】
(5)糖尿病性足部病症患者に適用
糖尿病性足部病症患者の患部をきれいにした後、注射器に装着されたスプレーを利用して患部接着面にトロンビンを十分に噴射した。そして、前記製造された患者オーダーメード型皮膚再生シートを患部に付着し、湿潤ドレッシング処理をした後、患部の周辺にスポンジフォームを利用して患部および周囲を保護した。そして、一週間の間隔で患部のドレッシングを交替しつつ、経過を観察した。
【0068】
図3は、実施例による患者オーダーメード型皮膚再生シートを糖尿病性足部病症患者に適用した過程およびこれに伴う結果を示すものである。具体的に、
図3のAは、糖尿病性足部病症患者の患部を示すものであり、
図3のBは、製造された皮膚再生シートを患部に付着したものを示すものである。ひいては、
図3のCは、施術後2週目の患部を示すものである。
図3によれば、本発明による患者オーダーメード型皮膚再生シートを糖尿病性足部病症患者の患部に適用する場合、早い時間のうちに損失された領域が回復することを確認することができた。具体的に、
図3のCを参考すると、施術後2週目に過ぎない治療期間であるにもかかわらず、欠損部位が100%回復して皮膚組織で埋められたことを確認することができた。
【0069】
以上で本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者において、このような具体的技術は、単に好ましい実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではない点は明白だろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言える。
【手続補正書】
【提出日】2020-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)自己脂肪組織を抽出する段階;
B)2mm~3mmのポア(pore)直径を有する第1フィルターを利用して、自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;
C)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を、450μm~550μmのポア直径を有する第2フィルター、および150μm~250μmのポア直径を有する第3フィルターに順次に通過させて、自己脂肪組織を粉砕する段階;
D)25μm~75μmのポア直径を有する第4フィルターに捕集される前記粉砕された自己脂肪組織を抽出して、脂肪組織抽出物を収得する段階;
E)3Dスキャナを利用して患者の皮膚欠損領域の3次元データを収得した後、これを基礎として3Dプリンタを利用して、皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階;
F)前記脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含む第1液を前記3Dモールド内に塗布して、前駆層(proto-layer)を形成する段階;
G)トロンビンを含む第2液を前記前駆層上に塗布して、皮膚再生層に硬化させる段階;および
H)前記3Dモールドを除去する段階;を含む、
糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項2】
前記段階B)~段階G)は、30分以内に完了することを特徴とする請求項1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項3】
前記第1フィルターは、ステンレス材質のシリンジフィルターであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項4】
前記段階C)は、フィルターバック(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、これを外部圧力を加えてフィルターに通過させて、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を粉砕するものであることを特徴とする請求項1
から3のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項5】
前記第1液内のフィブリノーゲンは、60IUのフィブリノーゲンを40%~60%に希釈したものであることを特徴とする請求項1
から4のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項6】
前記第2液内のトロンビンは、500IUのトロンビンを40%~60%に希釈したものであることを特徴とする請求項1
から5のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項7】
前記第1液内の脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンの体積比は、3:1~5:1であることを特徴とする請求項1
から6のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項8】
前記第1液は、インスリン、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor)、顆粒性白血球(granulocytes)、リンパ球(lymphocytes)、内皮細胞(endothelial cells)、単核白血球(monocytes)、大食細胞(macrophages)、脂肪組織由来幹細胞(adipose-derived stem cells)、アディポサイトカイン(adipocytokines)、アディポネクチン(adiponectin)、レプチン(leptin)、IL-6,IL-1β、MCP-1およびPAI-1よりなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1
から7のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項9】
脂肪組織抽出物、フィブリノーゲンおよびケラチノサイト(keratinocyte)を含む追加の第1液を前記皮膚再生層上に塗布して追加の前駆層を形成した後、トロンビンを含む追加の第2液を前記追加の前駆層上に塗布して表皮再生層に硬化させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1
から8のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項10】
前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの厚さは、少なくとも1mmであることを特徴とする請求項1
から9のいずれか一項に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1
から10のいずれか一項に記載の製造方法を利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
以上で本発明内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者において、このような具体的技術は、単に好ましい実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではない点は明白だろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言える。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
A)自己脂肪組織を抽出する段階;
B)2mm~3mmのポア(pore)直径を有する第1フィルターを利用して、自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;
C)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を、450μm~550μmのポア直径を有する第2フィルター、および150μm~250μmのポア直径を有する第3フィルターに順次に通過させて、自己脂肪組織を粉砕する段階;
D)25μm~75μmのポア直径を有する第4フィルターに捕集される前記粉砕された自己脂肪組織を抽出して、脂肪組織抽出物を収得する段階;
E)3Dスキャナを利用して患者の皮膚欠損領域の3次元データを収得した後、これを基礎として3Dプリンタを利用して、皮膚欠損領域に対応する3Dモールドを製造する段階;
F)前記脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンを含む第1液を前記3Dモールド内に塗布して、前駆層(proto-layer)を形成する段階;
G)トロンビンを含む第2液を前記前駆層上に塗布して、皮膚再生層に硬化させる段階;および
H)前記3Dモールドを除去する段階;を含む、糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目2)
前記段階B)~段階G)は、30分以内に完了することを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目3)
前記第1フィルターは、ステンレス材質のシリンジフィルターであることを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目4)
前記段階C)は、フィルターバック(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、これを外部圧力を加えてフィルターに通過させて、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を粉砕するものであることを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目5)
前記第1液内のフィブリノーゲンは、60IUのフィブリノーゲンを40%~60%に希釈したものであることを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目6)
前記第2液内のトロンビンは、500IUのトロンビンを40%~60%に希釈したものであることを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目7)
前記第1液内の脂肪組織抽出物とフィブリノーゲンの体積比は、3:1~5:1であることを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目8)
前記第1液は、インスリン、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor)、顆粒性白血球(granulocytes)、リンパ球(lymphocytes)、内皮細胞(endothelial cells)、単核白血球(monocytes)、大食細胞(macrophages)、脂肪組織由来幹細胞(adipose-derived stem cells)、アディポサイトカイン(adipocytokines)、アディポネクチン(adiponectin)、レプチン(leptin)、IL-6,IL-1β、MCP-1およびPAI-1よりなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目9)
脂肪組織抽出物、フィブリノーゲンおよびケラチノサイト(keratinocyte)を含む追加の第1液を前記皮膚再生層上に塗布して追加の前駆層を形成した後、トロンビンを含む追加の第2液を前記追加の前駆層上に塗布して表皮再生層に硬化させる段階をさらに含むことを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目10)
前記糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの厚さは、少なくとも1mmであることを特徴とする項目1に記載の糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シートの製造方法。
(項目11)
項目1に記載の製造方法を利用して製造された糖尿病性足部病症患者オーダーメード型皮膚再生シート。
【国際調査報告】