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特表2022-509018放射線誘発肺障害のためのバイオマーカー及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】放射線誘発肺障害のためのバイオマーカー及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/573 20060101AFI20220113BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220113BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220113BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G01N33/573 A
C12Q1/686 Z
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
G01N33/536 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523754
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 IB2019059379
(87)【国際公開番号】W WO2020089841
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/753,802
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/896,483
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518073309
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ジョー ジー.エヌ.ガルシア
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)を放射線誘発肺障害(RILI)のバイオマーカーとして使用するための方法(例えば、インビトロの方法)を対象としている。被験体からの組織又は血漿試料を提供し、その中のNAMPTのレベルを検出することによる、ヒト被験体におけるRILIの診断、予後、及び/又はモニタリングのためのインビトロの方法であって、健康な対照又は参照値と比較して、被験体からの組織又は血漿試料中のより高いレベルのNAMPTは、被験体におけるRILIの存在を示す方法が、本明細書において提供される。さらに、ヒト被験体から生体試料を得、その試料をNAMPTに特異的に結合する捕捉剤と接触させることによって試料中のNAMPTの存在を検出し、NAMPTと捕捉剤との結合を検出することによって、ヒト被験体におけるNAMPTを検出する方法が、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験体における放射線誘発肺障害(RILI)の診断、予後、及び/又はモニタリングのためのインビトロの方法であって、(a)前記ヒト被験体からの組織又は血漿試料を提供する工程、(b)前記組織又は血漿試料中のニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)のレベルを検出する工程を含み、健康対照値又は参照値と比較して、工程(b)で決定される前記ヒト被験体からの前記組織又は血漿試料中の、より高いレベルのNAMPTは、前記ヒト被験体におけるRILIの存在を示す、方法。
【請求項2】
工程(b)は、NAMPTタンパク質のレベルを検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NAMPTタンパク質のレベルは、オートラジオグラフィー、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学法、又はELISAによって検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NAMPTタンパク質のレベルは、抗NAMPT抗体によって検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗NAMPT抗体は放射標識される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)は、NAMPT mRNAレベルを検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記NAMPT mRNAレベルは、RT-PCRによって検出される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記NAMPT mRNAレベルは、配列番号1の核酸配列の全部又は一部に相補的なプライマー対によって検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト被験体は、RILIの症状を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒト被験体は、RILIを発症するリスクを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト被験体は、放射線療法を受けている癌患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト被験体は、胸部放射線療法を受けている癌患者である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト被験体は電離放射線(IR)に暴露される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記健康対照値又は参照値は、対照被験体のNAMPTの発現レベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記対照被験体は、RILIを有さない被験体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対照被験体は、いかなる肺疾患も有さない被験体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組織は、肺組織、胸部組織、又は扁桃腺組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ヒト被験体中のNAMPTを検出する方法であって、(a)前記ヒト被験体から生体試料を得ること;(b)前記生体試料を、NAMPTに特異的に結合する捕捉剤と接触させることによって、前記生体試料中にNAMPTが存在するかどうかを検出すること;及び(c)NAMPTと前記捕捉剤との結合を検出すること、を含む方法。
【請求項19】
前記捕捉剤はNAMPTタンパク質を検出し、工程(c)におけるNAMPTと前記捕捉剤との結合は、オートラジオグラフィー、ウエスタンブロット分析、IHC、又はELISAによって検出される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記捕捉剤は、抗NAMPT抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗NAMPT抗体は放射標識される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記捕捉剤はNAMPT mRNAを検出し、工程(c)におけるNAMPTと前記捕捉剤との結合はRT-PCRによって検出される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記捕捉剤は、配列番号1の核酸配列の全部又は一部に相補的なプライマー対である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒト被験体は、RILIの症状を示す、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒト被験体は、RILIを発症するリスクを有している、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト被験体は、放射線療法を受けている癌患者である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト被験体は、胸部放射線療法を受けている癌患者である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト被験体は電離放射線(IR)に暴露される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
(d)前記ヒト被験体中のNAMPTのレベルを、健康対照値又は参照値と比較する工程をさらに含み、前記健康対照値又は参照値と比較して、前記ヒト被験体からの前記生体試料中のより高いレベルのNAMPTは、前記ヒト被験体中のRILIの存在を示す、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記健康対照値又は参照値は、対照被験体のNAMPTの発現レベルである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対照被験体は、RILIを有さない被験体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対照被験体は、いかなる肺疾患も有さない被験体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記生体試料は、組織又は血漿である、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記組織は、肺組織、胸部組織、又は扁桃腺組織である、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年10月31日に出願された米国仮特許出願第62/753,802号、及び2019年9月5日に出願された米国仮特許出願第62/896,483号に対する優先権の利益を主張する。これらの優先出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願はASCIIフォーマットで電子的に提出された配列リストを含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2019年10月30日に作成された前記ASCIIコピーは、A105818_1010WO_SL.txtと命名され、サイズは10,316バイトである。
【背景技術】
【0003】
放射線誘発肺障害(RILI)の発症は、胸部放射線療法を受けている個人(例えば、癌患者)又は、例えば、原子力事故から電離放射線(IR)に曝露された個人に身体障害を引き起こす、潜在的に致命的な毒性である。RILIの2つの主要な構成要素のうち、最も顕著なものは、IRに対する重大な炎症反応によって誘発され、IR曝露後4~20週に起こる亜急性合併症である放射線肺炎である。放射線肺炎の発症をもたらすリスク因子は多因子性であるが、全放射線量、線量率分割線量(1日線量の増分)、照射された肺の容積、合併症因子(例えば、肺気腫)及び未知の遺伝因子が含まれる。推定値は様々であるが、放射線肺炎は一般にIRによる肺曝露後の患者の約10%に発生し、これには放射線療法を受けている肺癌患者の5~15%、及び乳房温存手術後に術後放射線療法を受けている場合の限局性放射線肺炎の乳癌患者の約2~3%が含まれる。放射線肺炎の重症度の範囲は、軽度で自然治癒性の非特異的呼吸器症状から機械的人工換気を必要とする重度の呼吸不全まで様々であり、重大な障害又は死亡を伴う。対照的に、第2のRILIの要素である放射線誘発肺線維症(RILF)は、IR曝露後6~24カ月に発現する後期の遅発性の毒性であり、線維症の領域が広範囲に及ぶと、重大な呼吸障害、障害、及び死亡をもたらす可能性がある。残念ながら、肺機能の低下を伴うRILFの発症により、効果的な腫瘍細胞殺滅に必要な放射線量の使用が制限される。RILFの病態生理学には、持続的な炎症、サイトカイン放出、及び血管新生促進性及び線維形成促進性刺激による微小血管の変化が組み込まれている。RILFの管理は、主に支持療法からなる選択肢が限られている。現在までのところ、RILFの発症又は重症度を制限するために利用可能な検証済みの治療法はない。
【0004】
最近の原子力事故、例えば2011年の福島の事故やテロ行為の可能性は、破局的なIR曝露に対する懸念を高めている。驚くことではないが、急性の高用量IR曝露は、急性-亜急性-慢性の炎症を生じ、最終的には肺炎やRILFを含む致命的となり得る多臓器不全を伴う。放射線事故に巻き込まれた被害者の50%超がRILIに罹患しており、8Gyの単回曝露は患者の約30%に肺炎を引き起こし、時には致命的な結果をもたらす。残念ながら、RILI対策は、現在、戦略的な国家の準備の中には含まれず、重大な未対処の医学的及び社会的ニーズである。
【0005】
全胸肺照射(WTLI)、全身照射(TBI)又は部分身体照射(PBI)のいずれかによるRILIの病理生物学は複雑であり、血管透過性を増加させ、ガス移動を障害し、線維症を促進する、抑制されない炎症(例えば、活性酸素種、サイトカイン、炎症細胞など)の有害作用を含む。Toll様受容体(TLR)及びサイトカイン(IL-1β、TNF-α、IL-4など)はRILI発症の寄与因子であるが、IR誘発炎症促進性サイトカイン作用を中和するか、又は炎症細胞の浸潤を遮断するための実験的及び臨床的戦略は期待外れであった。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(例えば、リシノプリルやカプトプリル)、ペントキシフィリン、及び抗酸化薬(例えば、アミホスチン)などの治療法は前臨床モデルでは有望であったが、ヒトでは実質的な臨床的利益を示すことができなかった。また、大型動物モデルでは、実際に試験されたのはわずかである。RILIの標準治療である高用量コルチコステロイドの有用性については、依然として議論の余地がある。急性の有効性にもかかわらず、ステロイドの使用は、芳しくない転帰、持続的なステロイド治療の必要性、頻繁な、致命的な可能性のある再発(「思い出し」肺臓炎)を含む長期的問題を抱えている。複数の研究で、予防的ステロイド投与による有益性はほとんど認められなかった。前臨床試験では、プレドニゾロン(10mg/kg/日)投与中のIR曝露マウスで致死率の低下が認められ、ステロイドの投与を止めると、最終的に肺炎の期間が延長した未投与マウスと同等の死亡率の加速が認められた。また、早期の投与停止は肺炎の重症度を悪化させた。従って、RILIにおけるステロイド使用のコンセンサスが得られていないこと、その限定された有効性、及び重篤な有害作用(致命的になり得る再発)は、RILIに対するより安全で、より効果的な治療戦略の探索を命じており、これは深刻な未対処のニーズである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)を放射線誘発肺障害(RILI)のバイオマーカーとして使用するための方法(例えば、インビトロ方法)を対象としている。
【0007】
第1の態様は、ヒト被験体におけるRILIの診断、予後、及び/又はモニタリングのためのインビトロの方法であって、(a)ヒト被験体からの組織又は血漿試料を提供する工程、(b)組織又は血漿試料中のNAMPTのレベルを検出する工程を含み、健康対照値又は参照値と比較して、工程(b)で決定されるヒト被験体からの組織又は血漿試料中の、より高いレベルのNAMPTは、ヒト被験体におけるRILIの存在を示す、方法を提供する。
【0008】
上記の態様のいくつかの実施形態では、工程(b)は、NAMPTタンパク質のレベルを検出することを含む。特定の実施形態では、NAMPTタンパク質のレベルは、オートラジオグラフィーによって検出される。特定の実施形態では、NAMPTタンパク質のレベルは、ウエスタンブロット分析によって検出される。特定の実施形態では、NAMPTタンパク質のレベルは、免疫組織化学法によって検出される。特定の実施形態では、NAMPTタンパク質のレベルは、ELISAによって検出される。
【0009】
いくつかの実施形態では、NAMPTタンパク質のレベルは、抗NAMPT抗体によって検出される。特定の実施形態では、抗NAMPT抗体は放射標識される。
【0010】
上記の態様の他の実施形態では、工程(b)は、NAMPT mRNAレベルを検出する工程を含む。特定の実施形態では、NAMPT mRNAレベルは、RT-PCRによって検出される。特定の実施形態では、NAMPT mRNAレベルは、配列番号1の核酸配列の全部又は一部に相補的なプライマー対によって検出される。
【0011】
いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、RILIの症状を示す。
【0012】
いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、RILIを発症するリスクを有している。特定の実施形態では、ヒト被験体は、放射線療法を受けている癌患者である。特定の実施形態では、ヒト被験体は、胸部放射線療法を受けている癌患者である。特定の実施形態では、ヒト被験体は、電離放射線(IR)に照射される。
【0013】
上記の態様のいくつかの実施形態では、健康対照値又は参照値は、対照被験体のNAMPTの発現レベルである。特定の実施形態では、対照被験体は、RILIを有さない被験体である。特定の実施形態では、対照被験体は、いかなる肺疾患も有さない被験体である。
【0014】
前述の態様のいくつかの実施形態では、組織は肺組織である。いくつかの実施形態では、組織は胸部組織である。いくつかの実施形態では、組織は扁桃腺組織である。
【0015】
別の態様は、(a)ヒト被験体から生体試料を得る工程;(b)生体試料を、NAMPTに特異的に結合する捕捉剤と接触させることによって、生体試料中にNAMPTが存在するかどうかを検出する工程;及び(c)NAMPTと捕捉剤との間の結合を検出する工程によって、ヒト被験体中のNAMPTを検出する方法を提供する。
【0016】
前述の態様のいくつかの実施形態では、捕捉剤はNAMPTタンパク質を検出し、工程(c)におけるNAMPTと捕捉剤との結合はオートラジオグラフィーによって検出される。前述の態様のいくつかの実施形態では、捕捉剤はNAMPTタンパク質を検出し、工程(c)におけるNAMPTと捕捉剤との結合はウエスタンブロット分析によって検出される。前述の態様のいくつかの実施形態では、捕捉剤はNAMPTタンパク質を検出し、工程(c)におけるNAMPTと捕捉剤との結合はIHCによって検出される。前述の態様のいくつかの実施形態では、捕捉剤はNAMPTタンパク質を検出し、工程(c)におけるNAMPTと捕捉剤との結合は、又はELISAによって検出される。
【0017】
上記の態様のいくつかの実施形態では、捕捉剤は、抗NAMPT抗体である。特定の実施形態では、抗NAMPT抗体は放射標識される。
【0018】
前述の態様のいくつかの実施形態では、捕捉剤はNAMPT mRNAを検出し、工程(c)におけるNAMPTと捕捉剤との結合はRT-PCRによって検出される。特定の実施形態では、捕捉剤は、配列番号1の核酸配列の全部又は一部に相補的なプライマー対である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、RILIの症状を示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、ヒト被験体は、RILIを発症するリスクを有している。特定の実施形態では、ヒト被験体は、放射線療法を受けている癌患者である。特定の実施形態では、ヒト被験体は、胸部放射線療法を受けている癌患者である。特定の実施形態では、ヒト被験体は電離放射線(IR)に曝露される。
【0021】
上記の態様のいくつかの実施形態では、この方法は(d)ヒト被験体中のNAMPTのレベルを、健康対照値又は参照値と比較する工程をさらに含み、健康対照値又は参照値と比較して、ヒト被験体からの生体試料中のより高いレベルのNAMPTは、ヒト被験体中のRILIの存在を示す。
【0022】
いくつかの実施形態では、健康対照値又は参照値は、対照被験体のNAMPT発現のレベルである。特定の実施形態では、対照被験体は、RILIを有さない被験体である。特定の実施形態では、対照被験体は、いかなる肺疾患も有さない被験体である。
【0023】
上記の態様のいくつかの実施形態では、生体試料は、組織又は血漿である。特定の実施形態では、組織は肺組織である。特定の実施形態では、組織は胸部組織である。いくつかの実施形態では、組織は扁桃腺組織である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、放射線曝露から1、2、6、12、及び18週後のマウスの肺組織におけるBALタンパク質の量に対する放射線照射(20Gy)の影響を示すグラフである。また、このグラフには、非照射の対照マウス、及び0.1mg/kgのLPSに暴露されたマウスの肺組織中のBALタンパク質の量も示されている。*はp=0.007を表す
図2図2は、放射線曝露から1、2、6、12、及び18週後のマウスの肺組織におけるBAL発現細胞(BAL細胞)の数に対する放射線照射(20Gy)の影響を示すグラフである。また、このグラフには、非照射の対照マウス、及び0.1mg/kgのLPSに暴露されたマウスの肺組織中のBAL細胞の数も示されている。*はp=0.007を表す
図3図3は、放射線曝露から1、2、6、12、18週後のマウスの肺組織におけるBAL発現マクロファージ(BALマクロファージ)及びBAL発現PMN(BAL PMN)の数に対する放射線照射(20Gy)の影響を示すグラフ表示である。図3Aは、示された時間における照射マウスの肺組織中のBALマクロファージの数を示すグラフである。また、このグラフには、非照射の対照マウス、及び0.1mg/kgのLPSに暴露されたマウスの肺組織中のBALマクロファージの数も示されている。*はp=0.01を表す。図3Bは、示された時間における照射マウスの肺組織中のBAL PMNの数を示すグラフである。また、このグラフには、非照射の対照マウス、及び0.1mg/kgのLPSに暴露されたマウスの肺組織中のBAL PMNの数も示されている。*はp=0.005を表す。
図4図4は、非照射マウス(左パネル)からの肺組織、及び放射線曝露(20Gy)1週後のマウス肺組織(右パネル)のH&E染色の顕微鏡写真を提供する。
図5図5に、20Gyの放射線曝露後の、マウスの肺組織におけるNAMPT発現の分析結果を示す。図5Aは、非照射マウス(左パネル)からの肺組織、及び放射線曝露1週後のマウス肺組織(右パネル)のNAMPT染色の顕微鏡写真を提供する。図5Bは、放射線曝露1週後のマウス肺組織の切片における、肺細胞及びマクロファージのNAMPT染色を示す顕微鏡写真である。
図6図6は、非照射対照マウスの肺組織におけるNAMPT mRNA発現に対する、照射マウス(放射線曝露1週後)の肺組織におけるNAMPT mRNA発現の倍率変化を示すグラフである。また、このグラフには、ビヒクル処理の対照マウスからの肺組織におけるNAMPT mRNA発現に対する、LPS処理マウスからの肺組織におけるNAMPT mRNA発現の倍数変化が示されている。
図7図7は、放射線曝露から8時間後、24時間後、48時間後、1週後、2週後、6週後、12週後、及び18週後におけるマウスの血漿中NAMPTレベルに対する放射線照射(20Gy)の影響を示すグラフである。また、非照射の対照マウス及び0.1mg/kgのLPSに暴露されたマウスの血漿中NAMPTレベルもこのグラフに示されている。*はp<0.05を表す。
図8図8は、放射線曝露から4週後の、野生型(WT)及びNAMPTヘテロ接合体マウスの肺組織中BALタンパク質の量に対する放射線照射(20Gy)の影響を示すグラフである。また、このグラフには、非照射WTマウス及び非照射NAMPTヘテロ接合体マウスの肺組織におけるBALタンパク質の量も示されている。
図9図9は、20Gy胸部放射線照射を受け、ポリクローナルNAMPT中和抗体又はビヒクルのいずれかで処置されたマウスの肺組織中の、BALタンパク質の量を示すグラフである。このグラフは、放射線曝露から4週後の、示されたマウスにおけるBALタンパク質の量を示す。*はp<0.05を表す。
図10図10は、20Gy胸部放射線照射を受け、ポリクローナルNAMPT中和抗体又はビヒクルのいずれかで処置されたマウスの肺組織中の、BAL細胞の数を示すグラフである。このグラフは、放射線曝露から4週後の、示されたマウスにおけるBAL細胞の数を示す。*はp<0.05を表す。
図11図11は、20Gy胸部放射線照射を受け、ポリクローナルNAMPT中和抗体又はビヒクルのいずれかで処置されたマウスの肺組織における、BAL PMN及びBAL発現リンパ球(BALリンパ球)の数のグラフ表示である。左パネルのグラフはBAL PMNの数を示し、右パネルのグラフは、放射線曝露から4週後の、示されたマウスにおけるBALリンパ球の数を示す。*はp<0.05を表す。
図12図12は、ビヒクル対照で処置した照射マウスの肺組織におけるNAMPT mRNA発現に対する、ポリクローナルNAMPT中和抗体で処置した照射マウスの肺組織におけるNAMPT mRNA発現の倍率変化を示すグラフである。
図13図13は、ポリクローナルNAMPT中和抗体又はビヒクル対照のいずれかで処置された照射マウスにおける、NAMPTの血漿中レベルを示すグラフである。
図14図14は、ヒト組織及び血液中でのNAMPT発現に対する放射線照射の影響の分析結果を図示したものであり、図14Aは、非照射(下部パネル)又は8Gyの電離放射線(IR)に24時間曝露(上部パネル)されたヒト扁桃腺上皮組織の、NAMPTに対する免疫組織化学(IHC)染色を示す顕微鏡写真を提供する。図14Bは、対照被験体(n=268)又は乳癌(n=50)若しくは肺癌(n=34)に対する放射線療法を受けている被験体の、NAMPTの血漿中レベルを示すグラフである。*はp<0.0001を表す。図14Cは、対照被験体(n=70)又は放射線肺炎患者(n=19)のNAMPTの血漿中レベルを示すグラフである。*はp<0.001を表す。図14Dは、対照被験体(n=245)又は放射線誘発急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者のNAMPTの血漿中レベルを示すグラフである。
図15図15は、20Gyの全胸郭肺照射(WTLI)に曝露されたWT C57/B6マウスの肺組織におけるNAMPT発現を図示したものである。図15Aは、WTLI曝露の4週後のWTLI曝露マウスの、肺組織におけるNAMPT発現を示す顕微鏡写真である。挿入図には、偽曝露マウス(非照射マウス)の肺組織におけるNAMPT発現を示す顕微鏡写真も示されている。図15Bは、WTLI曝露の12週後のWTLI曝露マウスの、肺組織におけるNAMPT発現を示す顕微鏡写真である。挿入図には、偽曝露マウス(非照射マウス)の肺組織におけるNAMPT発現を示す顕微鏡写真も示されている。図15Cは、WTLI曝露後18週目のWTLI照射マウスの、肺組織におけるNAMPT発現を示す顕微鏡写真である。挿入図には、偽照射マウス(非照射マウス)の肺組織におけるNAMPT発現を示す顕微鏡写真も示されている。図15Dは、WTLI曝露から4、12、及び18週後のWTLI曝露マウスの肺組織におけるNAMPT発現(%面積)のグラフ表示である。また、陰性対照としてこのグラフに示されているのは、偽曝露マウス(非照射マウス)の肺組織におけるNAMPT発現である。
図16図16は、非照射(「非放射」)又は20Gyの、WTLI曝露(「RILI」)を受けたWTマウス(「対照」)若しくはNAMPTヘテロ接合マウス(Nampt+/-)の、肺組織におけるBALタンパク質の量及びBAL細胞の数のグラフ表示である。図16Aは、20GyのWTLI曝露4週後の、WT又はNAMPTヘテロ接合体マウスの、肺組織中におけるBALタンパク質の量を示すグラフである。また、このグラフには、非照射WT又はNAMPTヘテロ接合体マウスの、肺組織中のBALタンパク質の量も示されている。図16Bは、20GyのWTLI曝露4週後のWT又はNAMPTヘテロ接合体マウスの肺組織におけるBAL細胞の数を示すグラフである。このグラフには、非照射WT又はNAMPTヘテロ接合マウスの肺組織中のBAL細胞の数も示されている。*はp<0.05を表す。
図17図17は、20GyのWTLIに曝露されたWTマウス、20GyのWTLIに曝露され、抗NAMPT pAb若しくはビヒクル対照のいずれかで処置されたWTマウス、又は20GyのWTLI曝露されたNAMPTヘテロ接合体マウス(Nampt+/-)における、WTLI曝露から4週後の肺障害及び炎症、BALタンパク質レベル、BAL細胞の数、並びにNAMPTの血漿中レベルを図示したものである。図17Aは、WTLI曝露WTマウスの肺組織におけるH&E染色を示す顕微鏡写真である。また、挿入図に、偽曝露マウス(非照射マウス)の肺組織におけるH&E染色を示す顕微鏡写真を示す。図17Bは、WTLI曝露NAMPTヘテロ接合体マウスの肺組織におけるH&E染色を示す顕微鏡写真である。図17Cは、抗NAMPT pAbで処置したWTLI照射WTマウスの肺組織におけるH&E染色を示す顕微鏡写真である。図17Dは、抗NAMPT pAb又はビヒクルで処置したWTLI曝露WTマウスの、肺組織におけるBALタンパク質の量(図17D、左パネル)及びBAL細胞の数(図17D、右パネル)のグラフ表示である。図17Eは、抗NAMPT pAb又はビヒクル(「対照」)で処置した、WTLI曝露(「RILI」)WTマウスにおけるNAMPTの血漿中レベルを示すグラフである。また、このグラフには、偽IR暴露(「非放射」)マウスに対するNAMPTの血漿中レベルも示されている。*はp<0.05を表す。
図18図18は、20GyのWTLIに暴露されたWTマウス、20GyのWTLIに曝露され、抗NAMPT pAbで処置されたWTマウス、又は20GyのWTLIに曝露されたNAMPTヘテロ接合体マウス(Nampt+/-)の、肺組織における炎症、コラーゲン沈着、並びに平滑筋アクチン(SMA)及びIL-6発現を図示したものである。図18Aは、WTLI曝露WTマウスの、肺組織におけるH&E染色を示す顕微鏡写真である。図18Bは、抗NAMPT pAbで処置したWTLI曝露WTマウスの、肺組織におけるH&E染色を示す顕微鏡写真である。図18Cは、WTLI照射WTマウスの肺組織における、トリクローム染色によって検出されたコラーゲンの沈着を示す顕微鏡写真である。図18Dは、NAMPTヘテロ接合体マウスの肺組織における、トリクローム染色によって検出されたコラーゲンの沈着を示す顕微鏡写真である。図18Eは、20GyのWTLIに曝露されたWT若しくはNAMPTヘテロ接合体マウスの、WTLI曝露から12週後の肺組織におけるSMA及びIL-6の発現(図18E、左パネル)、又は20GyのWTLIに曝露され、抗NAMPT pAbの非存在下若しくは存在下で処置されたWTマウスの、WTLI曝露から18週後の肺組織におけるSMAの発現(図18E、右パネル)のウエスタンブロット分析を図示したものである。図18Eには、負荷対照として、ビンキュリン発現のウエスタンブロット分析も示されている。
図19図19は、マウス肺障害モデルにおける炎症及び損傷に対するヒト化抗NAMPT抗体(NN、SS、K、N、XX、P、及びUU)のインビボ試験の結果を示す。図19Aは、対照マウス、又は抗NAMPT pAb若しくはヒト化抗NAMPT抗体(NN、SS、K、N、XX、P、又はUU)で処置した、LPS誘導「1ヒット」肺障害モデル由来のマウスにおける肺障害スコアを示すグラフである。図19Bは、対照マウス、又は抗NAMPT pAb若しくはヒト化抗NAMPT抗体(NN、SS、K、N、XX、P、又はUU)で処置した、LPS/VILI誘導「2ヒット」肺障害モデル由来のマウスにおける肺障害スコアを示すグラフである。図19Cは、ヒト化抗NAMPT抗体Pの存在下(図19C、下部パネル)又は不在下(図19C、上部パネル)で処置された、LPS/VILI誘導「2ヒット」肺障害モデル由来のマウスの、肺組織のH&E染色を示す顕微鏡写真を提供する。
図20図20は、放射線を含む様々な損傷刺激に応答する全身性炎症カスケードの活性化及び多臓器機能不全におけるNAMPTの役割、並びにNAMPTのこのような有害な作用の軽減における抗nAMPT抗体の可能性の模式図である。
図21図21は、放射標識抗NAMPTモノクローナル抗体(mAb)プローブによる、NAMPT発現検出を図示したものである。図21Aは、対照マウス(左パネル)及び照射2週後に8Gyの部分身体照射(PBI)を受けたマウス(右パネル)における、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによるNAMPT発現の検出を示すオートラジオグラフである。図21Bは、対照マウスの肺組織における、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによる、NAMPT発現の検出を示す図21A(左パネル)の拡大画像を提供する。図21Cは、照射2週後に8GyのPBIを受けたマウスの、肺組織における99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによるNAMPT発現の検出を示す、図21A(右パネル)の拡大画像を提供する。図21Dは、対照マウスの肺組織における、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによるNAMPT発現の検出を示すオートラジオグラフィー画像である。図21Eは、LPS気管内注射24時間後の、LPSチャレンジマウスの肺組織における、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによるNAMPT発現の検出を示すオートラジオグラフィー画像である。図21Fは、20GyのWTLI曝露5日後の、WTLI曝露マウスの肺組織における、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによるNAMPT発現の検出を示すオートラジオグラフィー画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、全ゲノム核酸を含まない単離された核酸分子、RNA又はDNAをいう。
【0026】
本明細書で互換的に使用される場合、「NAMPTポリヌクレオチド」又は「NAMPTをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ハイブリダイゼーション及び増幅を可能にするために、全ゲノム核酸を本質的に又は実質的に含まない単離されたNAMPTコード核酸分子をいうが、これに限定されない。従って、「NAMPTをコードするポリヌクレオチド」とは、哺乳動物又はヒトの全ゲノムDNAから単離された、又はそれから精製された、野生型NAMPTコード配列(配列番号1)を含むDNAセグメントをいう。NAMPTオリゴヌクレオチドは、ヒトNAMPTをコードするcDNA配列であり、NAMPTをコードする配列の少なくとも5つの連続するヌクレオチドと同一である、例えば、配列番号1の少なくとも5つの連続するヌクレオチドと同一であるような核酸分子をいう。本明細書で言及される場合、NAMPTポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに相補的な配列は、いくつかの実施形態では、被験体(例えば、試験被験体)からの試料(例えば、生体試料)中のヒトNAMPTの発現を検出するために使用され得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「プライマー」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅方法で使用されて、目的の遺伝子に対応するポリヌクレオチド配列、例えば、ヒトNAMPTのcDNA若しくはゲノム配列又はその一部に基づいてヌクレオチド配列を増幅することができるオリゴヌクレオチドをいう。典型的には、ポリヌクレオチド配列増幅のための、PCRプライマーの少なくとも1つは、そのポリヌクレオチド配列に配列特異的である。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、及び使用される方法を含む多くの因子に依存する。例えば、診断及び予後の適用では、標的配列の複雑さに依存してオリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には少なくとも10、又は15、又は20、又は25、又はそれ以上のヌクレオチドを含み得るが、より少ないヌクレオチド又はより多くのヌクレオチドを含み得る。プライマーの適切な長さを決定することに関与する因子は、当業者に容易に知られている。本開示では、「プライマー対」という用語は、標的DNA分子の反対側の鎖に、又は増幅されるヌクレオチド配列に隣接する標的DNAの領域にハイブリダイズする一対のプライマーを意味する。本開示では、「プライマー部位」という用語は、プライマーがハイブリダイズする標的DNA又は他の核酸の領域を意味する。いくつかの実施形態では、配列番号1に対応する核酸などの核酸に選択的にハイブリダイズするように設計されたプライマー対は、選択的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下でテンプレート核酸と接触される。所望の用途に応じて、プライマーに対して完全に相補的な配列へのハイブリダイゼーションのみを可能にする、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件を選択し得る。他の実施形態では、核酸の増幅がプライマー配列との1つ以上のミスマッチを含むことを許して、低くしたストリンジェンシー下でハイブリダイゼーションを行い得る。ハイブリダイズしたら、テンプレート-プライマー複合体を、テンプレート依存性核酸合成を促進する1つ以上の酵素と接触させる。「サイクル」とも呼ばれる複数回の増幅は、十分な量の増幅産物が生成されるまで行われる。
【0028】
「cDNA」という用語は、テンプレートとしてRNAを用いて調製されたDNAを指すことが意図される。ゲノムDNA又はRNA転写体とは反対に、cDNAを使用する利点は、安定性、及び組換えDNA技術を用いて配列を操作する能力である。さらに、cDNAはポリペプチドのコード領域を表し、イントロン及び他の調節領域を排除するので、有利であり得る。特定の実施形態では、核酸は、NAMPT配列などのcDNAコード配列に相補的又は同一である。
【0029】
「遺伝子」という用語は、本明細書では単純化のために、機能的タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードする核酸単位を指すために使用される。当業者によって理解されるように、この機能的用語は、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質及び変異体を発現する、又は発現するように適合させ得るゲノム配列、cDNA配列、及びより小さな操作された遺伝子セグメントを含む。
【0030】
本明細書で使用される場合「NAMPT遺伝子」又は「NAMPTタンパク質」という用語は、任意の天然に存在する改変体若しくは変異体、種間のホモログ若しくはオルソログ、又はヒトNAMPT遺伝子若しくはNAMPTタンパク質の人工改変体をいう。ヒト野生型NAMPT mRNAのDNA配列はGenBankアクセッション番号NM_005746(本明細書では配列番号1として提供される)に記載されており、これはNAMPTタンパク質(例えば、本明細書中では配列番号2として提供されるNAMPTタンパク質のアイソフォーム)をコードする。本出願の意味内のNAMPTタンパク質は、典型的にはヒト野生型NAMPTタンパク質に対して、少なくとも約80%、又は90%、又は95%以上の配列同一性を有する。
【0031】
本開示では、「又は」という用語は、一般に、内容が別段の明確な指示をしていない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「遺伝子発現」という用語は、特定のタンパク質(例えば、ヒトNAMPTタンパク質)をコードするRNA分子を形成するためのDNAの転写、又はポリヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の翻訳をいうために使用される。言い換えれば、目的の遺伝子(例えば、ヒトNAMPT遺伝子)によってコードされるmRNAレベル及びタンパク質レベルの両方は、本開示では「遺伝子発現レベル」という用語によって包含される。
【0033】
本開示では、「生体試料」又は「試料」という用語は、生検及び剖検試料などの、組織(例えば、肺組織、胸部組織、扁桃腺組織など)の切片、並びに組織学的目的のために採取された凍結切片、又はそのような試料のいずれかの処理された形態を含む。生体試料は血液及び血液画分又は産物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球など)、痰又は唾液、リンパ及び舌組織、培養細胞、例えば、初代培養物、外植片、及び形質転換細胞、肺生検組織などを含む。生体試料は、典型的には真核生物から得られ、これは哺乳動物であってもよく、霊長類であってもよく、ヒト被験体であってもよい。
【0034】
本開示では、「生検」という用語は診断又は予後評価のために、組織(例えば、肺組織、胸部組織、扁桃腺組織など)試料を切り取るプロセス、及び組織標本自体を指す。当該技術分野でよく知られている任意の生検手法は、本発明の診断及び予後診断の方法に適用することができる。適用される生検手法は、他の要因の中でもとりわけ、評価されるべき組織タイプ(例えば、肺組織、胸部組織、扁桃腺組織など)に依存する。代表的な生検手法には、切除生検、切開生検、針生検、外科的生検、及び骨髄生検が含まれるが、これらに限定されない。広範囲の生検手法は、それらの間で選択し、最小限の実験でそれらを実施する当業者によく知られている。
【0035】
本開示では、「単離された」核酸分子という用語は、単離された核酸分子と通常関連する他の核酸分子から分離された核酸分子を意味する。従って、「単離された」核酸分子は、単離された核酸が由来する生物のゲノム中の、核酸の一方又は両方の末端に天然に隣接するヌクレオチド配列を含まない核酸分子(例えば、PCR又は制限エンドヌクレアーゼ消化によって生成されるcDNA又はゲノムDNAフラグメント)を含むが、これらに限定されない。このような単離された核酸分子は一般に、操作の便宜のために、又は融合核酸分子を生成するために、ベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)に導入される。さらに、単離された核酸分子は、組換え核酸分子又は合成核酸分子などの操作された核酸分子を含むことができる。例えば、制限消化されたゲノムDNAを含有する、例えば核酸ライブラリー(例えば、cDNA若しくはゲノムライブラリー)又はゲル(例えば、アガロース若しくはポリアクリルアミン)内の、数百から数百万の他の核酸分子の間に存在する核酸分子は、「単離された」核酸ではない。
【0036】
本出願において、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で使用される場合、この用語はアミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結される、全長タンパク質(すなわち、抗原)を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。
【0037】
「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。本出願の目的のために、アミノ酸類似体は天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合する炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチルメチオニンスルホニウムを指す。このような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)又は改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。本出願の目的のために、アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を指す。アミノ酸は国際公開第01/12654号パンフレットに開示されているように、天然に存在しないD-キラリティーを有する化合物を含み得、これは、このようなD-アミノ酸の1つ以上を含むポリペプチドの安定性(例えば、半減期)、生物学的利用能、及び他の特徴を改善し得る。いくつかの場合において、治療用ポリペプチドの1つ以上の、及び潜在的には全てのアミノ酸は、D-キラリティーを有する。本明細書では、アミノ酸は、一般に知られている3文字記号、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨される1文字記号のいずれかによって言及され得る。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般に受け入れられている一文字コードによって言及され得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、2つ以上のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列を記載する文脈において、「同一」又は「同一」パーセントという用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、又は手動アラインメントと目視検査により測定される比較ウィンドウ若しくは指定された領域にわたって最大の一致を求めて比較し、整列させたときに、同一であるか、又は同一のアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを指定されたパーセンテージで有する、2つ以上の配列又は部分配列(例えば、本発明の方法で使用される変異体NAMPTタンパク質は、参照配列、例えば、野生型ヒトNAMPTタンパク質に対して、少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは約85%、90%、91%、92%、93、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する)をいう。このような配列は、「実質的に同一である」といわれる。ポリヌクレオチド配列に関しては、この定義は試験配列の補体をも指す。好ましくは、同一性は、少なくとも約50アミノ酸又はヌクレオチド長の領域にわたって、より好ましくは75~100アミノ酸又はヌクレオチド長の領域にわたって存在する。配列比較では、典型的には、1つの配列が参照配列として働き、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することも、代替パラメータを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。核酸及びタンパク質の配列比較では、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズム、並びに以下で議論されるデフォルトパラメーターが使用される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、20~600、通常は約50~約200、より通常は約100~約150からなる群から選択される連続する位置の数の任意の1つのセグメントへの言及を含み、ここで、配列は2つの配列が最適に整列された後に、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実施(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP,BESTFIT,FASTA及びTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)により、又は手動アラインメントと目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照されたい)により行うことができる。
【0040】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するための適切なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1977)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationウェブサイト、ncbi.nlm.nih.govで公に入手可能である。このアルゴリズムは最初に、データベース配列中の同じ長さの単語と整列された場合に、ある正の値の閾値スコアTに一致するか、又はそれを満たす、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、前出)。これらの初期隣接ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するシードとして働く。次いで、ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。ヌクレオチド配列では、累積スコアは、パラメータM(1対のマッチング残基に対する報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向の単語ヒットの延長は、累積アラインメントスコアが最大達成値から量Xだけ低下した場合、累積スコアが1つ以上の負のスコアリング残基アラインメントの累積によりゼロ以下になった場合、又はいずれかの配列の末端に達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用の)は、デフォルトとして、28のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、M=1、N=-2、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0041】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin and Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸を参照核酸と比較した場合の最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は参照配列に類似していると考えられる。
【0042】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生される抗体と免疫学的に交差反応性であることである。従って、ポリペプチドは典型的には例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合は、第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に記載するように、2つの分子又はそれらの補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというさらに別の指標は、配列を増幅するために同じプライマーを使用することができることである。
【0043】
本開示では、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「高ストリンジェンシー」という用語は、プローブがその標的部分配列に、典型的には核酸の複雑な混合物中でハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる環境下では異なるであろう。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションについての広範なガイドは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出され、当業者によって容易に理解されるであろう。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度pHにおける特定の配列について、融点(T)より約5~10℃低くなるように選択される。Tは標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下)である(標的配列が過剰に存在するので、Tでは平衡状態でプローブの50%が存在する)。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションでは、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下の通りとすることができる:50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でのインキュベーション、又は5×SSC、1%SDS、65℃でのインキュベーション、0.2×SSC及び0.1%SDS中、65℃での洗浄を伴う。
【0044】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。このことは、例えば、核酸のコピーが遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮重を用いて作製される場合に生じる。このような場合、核酸は、典型的には中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1MのNaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリダイゼーション及び1×SSC中、45℃での洗浄を含む。陽性ハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、類似のストリンジェンシーな条件を提供するために、代替のハイブリダイゼーション及び洗浄条件が利用できることを容易に認識する。ハイブリダイゼーションパラメーターを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参考文献で提供されるが、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel,et al.がある。
【0045】
「発現カセット」は、宿主細胞中で特定のポリヌクレオチド配列の転写を可能にする一連の、特定の核酸エレメントを用いて組換え的又は合成的に作製された核酸構築物である。発現カセットは、プラスミド、ウイルスゲノム、又は核酸フラグメントの一部であり得る。典型的には、発現カセットは、プロモーターに作動可能に連結された、転写されるべきポリヌクレオチドを含む。この文脈において「作動可能に連結される」とは、コード配列の転写を指示するプロモーターなどの、エレメントの適切な生物学的機能を可能にする相対位置に配置された、ポリヌクレオチドコード配列及びプロモーターなどの2つ以上の遺伝子エレメントを意味する。発現カセット中に存在し得る他のエレメントには、転写を増強するもの(例えば、エンハンサー)及び転写を終結するもの(例えば、ターミネーター)、並びに発現カセットから産生された組換えタンパク質に特定の結合親和性又は抗原性を付与するものが含まれる。
【0046】
「免疫グロブリン」又は「抗体」(本明細書中で互換的に使用される)という用語は、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる、基本的な4ポリペプチド鎖構造を有する抗原結合タンパク質をいい、前記鎖は例えば、抗原に特異的に結合する能力を有する鎖間ジスルフィド結合によって安定化されている。重鎖及び軽鎖の両方がドメインに折り畳まれる。「抗体」という用語は、免疫学的アフィニティーアッセイに用いることができる、抗体の抗原結合フラグメントやエピトープ結合フラグメント、例えばFabフラグメントも指す。多くの十分にキャラクタライズされた抗体フラグメントが存在する。従って、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合に対する抗体C末端を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってV-Cに連結された軽鎖であるFabの二量体F(ab)’を産生する。F(ab)’を穏やかな条件下で還元して、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊し、それによって(Fab’)ダイマーをFab’モノマーに変換することができる。Fab’モノマーは本質的に、ヒンジ領域の一部を有するFabである(例えば、他の抗体フラグメントのより詳細な説明については、Fundamental Immunology,Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照されたい)。種々の抗体フラグメントは、完全な抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、フラグメントが化学的に又は組換えDNAの方法論を利用することのいずれかによって、新たに合成できることを理解するであろう。従って、抗体という用語はまた、抗体全体の改変によって産生された、又は組換えDNAの方法論を使用して合成されたいずれかの抗体フラグメントを含む。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、所望の生物学的活性を示す抗体の任意の形態、又はそのフラグメントをいう。このように、それは最も広い意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、二特異的抗体)、及び抗体フラグメントを、それらが所望の生物学的活性を示す限りは包含する。
【0047】
いくつかの実施形態で、本明細書に記載されているのは、NAMPTに結合する抗体、例えば、抗NAMPT抗体、又はその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、抗NAMPT抗体(例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)は、検出アッセイで(例えば、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学分析、ELISA、及び/又はオートラジオグラフ分析で)NAMPTを検出するなど、NAMPTに結合し、NAMPTを検出する(例えば、生体試料から)検出抗体などの検出剤として使用される。特定の実施形態では、抗NAMPT抗体(例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)は、検出アッセイで(例えば、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学分析、ELISA、及び/又はオートラジオグラフ分析で)NAMPTを検出するなど、NAMPTに結合し、NAMPTを検出する(例えば、生体試料から)捕捉剤として使用される。いくつかの実施形態では、NAMPTに結合する抗体、例えば、抗NAMPT抗体、又はその抗原結合フラグメントは、検出の容易さのために標識化される。いくつかの実施形態では、抗NAMPT抗体などのNAMPTに結合する抗体、例えば、抗NAMPT抗体又はその抗原結合フラグメントは、放射標識され(例えば、放射性同位元素で標識され(例えば、H、125I、35S、14C、若しくは32P、99mTcなどで標識され))、酵素的に標識され(例えば、酵素で標識され(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で))、蛍光標識され(例えば、フルオロフォアで標識され)、化学発光剤で標識され、並びに/又は化合物で標識される(例えば、ビオチン及びジゴキシゲニンで)。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗NAMPT抗体は抗体阻害剤として使用される。いくつかの実施形態では、抗体阻害剤(例えば、抗NAMPT抗体阻害剤)は中和抗体と考えられ得る。NAMPTに結合する抗体の定義には、NAMPT抗体結合フラグメントが含まれる。本明細書で使用される場合、「NAMPT結合フラグメント」又は「その結合フラグメント」という用語は、NAMPT活性を阻害するその生物学的活性を、なお実質的に保持する抗体のフラグメント又は誘導体を包含する。従って、「抗体フラグメント」又はNAMPT結合フラグメントという用語は、完全長抗体の一部、一般にその抗原結合領域又は可変領域を指す。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)及びFvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、sc-FV);並びに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。典型的には、結合フラグメント又は誘導体は、そのNAMPT阻害活性の少なくとも50%を保持する。好ましくは、結合フラグメント又は誘導体は、そのNAMPT阻害活性の約又は少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%を保持する。NAMPT結合フラグメントは、その生物学的活性を実質的に変化させない、保存的アミノ酸置換を含み得ることも意図される。
【0049】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体をいい、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、天然に生じる可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性エピトープに向けられる。対照的に、慣習的な(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には異なるエピトープに対して向けられた(又はそれに対して特異的である)多数の抗体を含む。「モノクローナルな」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、任意の特定の方法による抗体の生産が必要であるとは解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)によって最初に報告されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、又は組換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら(1991)及びMarksら(1991)によって報告された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト(例えば、ネズミ)抗体並びにヒト抗体からの配列を含有する抗体の形態をいう。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンの配列のそれである。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの、少なくとも一部を含む。
【0051】
モノクローナル抗体を生成するための、任意の好適な方法を使用し得る。例えば、レシピエントは、NAMPT又はそのフラグメントで免疫が付与され得る。任意の好適な免疫付与方法を使用し得る。そのような方法は、アジュバント、他の免疫賦活薬、繰り返しの追加免疫、及び1つ以上の免疫化経路の使用を含むことができる。
【0052】
「特異的に結合する」という語句は、タンパク質又はペプチドに対する特定の分子の結合関係を記載する文脈において使用される場合、タンパク質及び他の生物学的製剤の不均一集団におけるタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。従って、指定された結合アッセイ条件下で、指定された結合剤(例えば、抗体)はバックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に結合し、試料中に存在する他のタンパク質に実質的に有意な量で結合しない。例えば、抗NAMPT抗体(例えば、放射標識された(例えば、H、125I、35S、14C、又は32P、99mTcなどで標識されるなどの、放射性同位体元素で標識された)抗NAMPT抗体、酵素的に標識された(例えば、酵素で、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などで標識された)抗NAMPT抗体、蛍光標識された(例えば、フルオロフォアで標識された)抗NAMPT抗体、化学発光剤で標識された抗NAMPT抗体、及び/又は化合物で標識された抗NAMPT抗体)は、バックグラウンドの少なくとも約2倍でNAMPTに結合することができ、生体試料中に存在する他のタンパク質に有意な量で実質的に結合せず、生体試料中の(例えば、試験被験体又は対照被験体からの生体試料中の)NAMPT検出のための検出剤及び/又は捕捉剤として使用することができる。そのような条件下での抗体の特異的結合は、特定のタンパク質、又はその類似の「姉妹」タンパク質以外のタンパク質に対する特異性おいて選択された抗体を必要とし得る。特定のタンパク質と、又は特定の形態で、特異的な免疫反応性を示す抗体を選択するために、種々の免疫アッセイ形式を使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性を示す抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用され得る免疫アッセイ形式及び条件の記載については、Harlow&Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988)を参照されたい)。典型的には、特異的又は選択的結合反応は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10~100倍超である。他方、「特異的に結合する」という用語は、別のポリヌクレオチド配列と二本鎖複合体を形成するポリヌクレオチド配列を参照する文脈で使用される場合、「ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション法」という用語の定義で提供されるように、ワトソン-クリック塩基対形成に基づく「ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション」を表す。
【0053】
本出願で使用される場合、「増加」又は「減少」は比較対照、例えば、確立された正常レベル又は確立された標準対照からの検出可能な正又は負の量的変化を指す。増加は典型的には正常値又は対照値の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又はそれ以上であり、また少なくとも約2倍又は少なくとも約5倍、さらには約10倍も高くなり得る正の変化である。同様に、減少は、典型的には少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又は正常値若しくは対照値を下回る負の変化である。「より多い」、「より少ない」、「より高い」、及び「より低い」などの、比較基準からの量的変化又は差異を示す他の用語は、本出願では、上記と同じ様に使用される。例えば、試験被験体におけるより高いNAMPT発現は、試験被験体の生体試料中のNAMPT発現のレベルが、NAMPT発現の正常レベル、対照レベル、健康な対照レベル、又は参照レベル(例えば、RILIの発症前の被験体由来の、同じ型の生体試料中のNAMPT発現レベル、又は健康対照被験体(例えば、RILIを有さない被験体及び/又は如何なる肺疾患も有さない被験体)などの対照被験体由来の同じ型の生体試料中のNAMPT発現レベル)の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又はそれより高いことを示す。対照的に、「実質的に同じ」又は「実質的に変化がない」という用語は、標準対照値からの量の変化がほとんど又は全くないことを示し、典型的には標準対照の+10%以内、又は標準対照から±5%、2%以内、若しくはそれ未満の変動である。
【0054】
「阻害する」又は「阻害」という用語は、本明細書で使用される場合、標的生物学的プロセス(例えば、細胞シグナル伝達、細胞増殖、炎症、発現、及び疾患/状態の重篤度)に対する任意の検出可能な負の効果をいう。典型的には、阻害剤が適用されない対照と比較した場合、阻害剤(例えば、抗NAMPT抗体)適用時の標的プロセス(例えば、mRNAレベル又はタンパク質レベルのいずれかでのNAMPTの発現)で、阻害は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又はそれ以上の減少として反映される。
【0055】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション法」は、既知の配列のポリヌクレオチドプローブを用いて、適切なハイブリダイゼーション条件下で、ワトソン-クリック塩基対を形成する能力に基づき、所定のポリヌクレオチド配列の存在及び/又は量を検出するための方法を指す。このようなハイブリダイゼーション法の例としては、サザンブロット、ノーザンブロット、及びインサイチュハイブリダイゼーションが挙げられる。
【0056】
「標識」、「検出可能な標識」、又は「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、放射性同位元素又は放射標識(例えば、H、125I、35S、14C、又は32P、99mTcなど)、蛍光色素、フルオロフォア、化学発光剤、高電子密度試薬、酵素(例えば、HRPなどのELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン、並びに例えば、放射性成分をペプチドに組み込むことによって検出可能にされ得るか、又はペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用され得るタンパク質が含まれる。典型的には、検出可能な標識は、定義された結合特性(例えば、既知の結合特異性を有するポリペプチド又はポリヌクレオチド)でプローブ又は分子に(例えば、抗NAMPT抗体などの抗体に)付着され、プローブ又は分子、従ってその結合標的(例えば、標識化抗NAMPT抗体の結合標的としてのNAMPT)の存在を容易に検出可能にする。
【0057】
本明細書で互換的に使用される「正常レベル」又は「標準対照」又は「対照レベル」又は「健康対照レベル」又は「参照レベル」は、確立された正常で無病の生体試料中に、例えば、RILI発症前の被験体由来の生体試料中に、又は対照被験体、例えば健康対照被験体(例えば、RILIを有さない被験体及び/又は如何なる肺疾患も有さない被験体)由来の生体試料中に存在する、ポリヌクレオチド配列又はポリペプチド、例えば、NAMPTゲノムDNA、mRNA、又はタンパク質の規定の量又は濃度をいう。正常レベル値、標準対照値、対照レベル値、健康対照レベル値、又は参照レベル値は、本発明の方法の使用に適しており、試験試料中(例えば、試験被験体の生体試料中)に存在するNAMPTゲノムDNA、mRNA、又はタンパク質の量を比較するための基礎として役立つ。正常レベル値、標準対照値、対照レベル値、健康対照レベル値、又は参照レベル値は、試料の性質、及びそのような対照値が確立された被験体の性別、年齢、民族性などの他の因子に応じて変化し得る。
【0058】
従来の定義で、健康で肺疾患(特にRILI)に罹患していないヒトを記述する文脈で使用される場合、「平均」という用語は、肺疾患(特にRILI)がなく、疾患を発症する既知のリスクがない無作為に選択された健康なヒトの群を代表する特定の特性、特に、その人の生体試料(例えば、細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)、又は血漿)中に見出されるNAMPTゲノム配列のコピー又はNAMPT mRNA若しくはタンパク質の量を指す。この選択された群は、これらの個体間の生体試料中における、NAMPT mRNA又はタンパク質の平均コピー数及び平均の量が、妥当な精度で、健康なヒトの母集団におけるNAMPT遺伝子の対応するコピー数及びNAMPT mRNA/タンパク質の量を反映するように、十分な数のヒトを含むべきである。さらに、選択されたヒトの群は、一般に、RILIの兆候に関して生体試料が試験される被験体(例えば、試験被験体)のそれと類似の年齢である。さらに、性別、民族性、病歴などの他の要因も考慮され、好ましくは、試験被験体と、「平均」値を確立する選択された個体群の間のプロファイルが密接に一致する。
【0059】
本出願で使用される「量」という用語は、目的のポリヌクレオチド又は目的のポリペプチド、例えば、試料中に存在するヒトNAMPTゲノムDNA、NAMPT mRNA、又はNAMPTタンパク質の量を指す。そのような量は絶対用語、すなわち、試料中のポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの総量、又は相対用語、すなわち、試料中のポリヌクレオチド若しくはポリペプチドの濃度で表され得る。
【0060】
本出願で使用される「治療する」又は「治療する」という用語は、関連する状態の任意の症状の排除、軽減、緩和、反転、又は発症若しくは再発の予防若しくは遅延につながる行為を表す。言い換えれば、「治療する」状態は、その状態に対する治療的介入及び予防的介入の両方を包含する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を生じるのに十分な量の所与の物質の量を指す。例えば、NAMPT阻害剤(例えば、抗NAMPT抗体)の有効量は、治療目的でNAMPT阻害剤を与えられた患者においてRILIの症状、重症度、及び/又は開始が減少、反転、排除、予防、若しくは遅延されるような、NAMPT mRNA又はタンパク質発現又は生物学的活性の減少したレベルを達成するための前記阻害剤の量である。これを達成するのに十分な量は、「治療有効用量」として定義される。用量範囲は、投与される治療薬の性質、並びに投与経路及び患者の病態の重症度などの他の因子によって変化する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「被験体」又は「治療を必要とする被験体」という用語は、RILIのリスク又は実際の罹患により医学的治療を求める個体を含む。また、被験体には、治療レジメンの操作を求める治療を現在受けている個人も含まれる。治療を必要とする被験体又は個人には、RILIの症状を示すもの、又はRILIを発症するリスクがあるもの(例えば、胸部放射線療法を受けているがん患者及び/又は電離放射線(IR)に被曝している被験体、例えば、原子力事故によるもの)が含まれる。例えば、治療を必要とする被験体には、過去にRILIの関連症状を患っている個体、RILIに罹患している個体、及び誘発物質又は事象に曝露されたもの(例えば、胸部放射線療法を受けている癌患者及び/又は、例えば、原子力事故でIRに被曝した被験体)が含まれる。「治療を必要とする被験体」は、任意の年齢であり得る。
【0063】
本明細書で使用される場合「試験被験体」は本明細書に記載の方法によって、RILIの診断、予後、及び/又はモニタリングについて試験される被験体(例えば、ヒト)を指す。試験被験体には、RILIの症状を示す被験体、及びRILIを発症するリスクがある被験体(例えば、胸部放射線療法を受けている癌患者及び/又は、例えば原子力事故からIRに被曝した被験体)を含み得る。いくつかの実施形態では、試験被験体は、過去にRILIの関連症状を患ったことがある個体、RILIに罹患している被験体、及び/又は誘発物質又は事象に曝露された被験体(例えば、胸部放射線療法を受けている癌患者及び/又は、例えば、原子力事故からIRに被曝した被験体)であり得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「対照被験体」又は「健康対照被験体」はRILIを患っていない被験体(例えば、ヒト)及び/又は肺疾患を全く有していない被験体(例えば、ヒト)を指す。対照被験体又は健康対照被験体由来の生体試料は、NAMPT発現の、正常レベル、健康対照レベル、又は参照レベルを示す。
【0065】
NAMPTタンパク質の「阻害剤」、「活性化因子」、及び「モジュレーター」はNAMPTタンパク質の結合又はシグナル伝達のためのインビトロ及びインビボアッセイを用いてそれぞれ同定される、阻害分子、活性化分子、又は調節分子、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、並びにそれらの相同体及び模倣体を指すために使用される。「モジュレーター」という用語は、阻害剤及び活性化剤を含む。阻害剤は、例えば、部分的又は全体的に結合を遮断し、活性化を低減させ、防止し、遅延させ、NAMPTタンパク質の活性を不活性化させ、感受性を低下させ、又はダウンレギュレートする薬剤である。いくつかの場合では、阻害剤は中和抗体(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体)のようにNAMPTタンパク質に直接的又は間接的に結合する。阻害剤は、本明細書で使用される場合、不活化剤及びアンタゴニストと同義である。活性化因子は、例えば、NAMPTタンパク質の活性化を刺激し、増加させ、促進し、増強し、感作し、又はアップレギュレートする薬剤である。モジュレーターには、NAMPTタンパク質リガンド又は結合パートナー(天然に存在するリガンド及び合成的に設計されたリガンドの改変を含む)、抗体及び抗体フラグメント、アンタゴニスト、アゴニスト、炭水化物含有分子を含む小分子、siRNA、RNAアプタマーなどが含まれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼIIの開始部位の周囲にクラスターを形成する一群の転写制御モジュールを指す。プロモーターがどのように組織化されるかについての考えの多くは、HSVチミジンキナーゼ(tk)やSV40初期転写単位のプロモーターを含むいくつかのウイルスプロモーターの解析に由来する。より最近の研究によって増大したこれらの研究は、プロモーターは不連続の機能的モジュールから構成され、各々はほぼ7ないし20bpのDNAからなり、且つ転写活性化タンパク質について1つ以上の認識部位を含有することを示した。
【0067】
各プロモーター中の少なくとも1つのモジュールは、RNA合成の開始部位を配置するように機能する。これの最良の、よく知られている例は、TATAボックスであるが、哺乳動物ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーター及びSV40後期遺伝子のプロモーターのように、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーターにおいては、開始部位を覆う不連続エレメントそれ自体が開始の場所を固定するのを助ける。
【0068】
本発明の文脈における「診断」又は「診断の」という用語は、本明細書に記載の方法によって、NAMPTをバイオマーカーとして使用して、試験被験体におけるRILIの存在又は性質を同定することなど、RILIの存在又は性質を同定することを意味する。診断方法は、その感度及び特異性によって異なる。診断アッセイの感度は、検査で陽性の疾患個体のパーセンテージ(真の陽性のパーセンテージ)である。アッセイによって検出されない疾患個体は偽陰性である。罹患しておらず、アッセイで検査が陰性である被験体を真陰性と呼ぶ。診断アッセイの特異度は、1から偽陽性率を引いたものであり、ここで偽陽性率とは、疾患がなくても検査で陽性となる者の割合と定義される。特定の診断方法は、状態の確定診断を提供しないかもしれないが、その方法が診断を助ける陽性の指示を提供する場合には十分である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「予後」という用語は、症例の性質及び症状によって示される、RILIの予想される転帰並びにRILIからの回復の見通しに関する予測を指す。例えば、本明細書に開示されているのは、NAMPTをバイオマーカーとして使用して、RILIの予想される転帰、及び試験被験体におけるRILIからの回復の見通しを予測する方法である。予後陰性又は予後不良は、治療後の生存期間又は生存率が低いことによって定義される。逆に、陽性又は良好な予後は、治療後の生存期間又は生存率の上昇によって定義される。通常、予後は無増悪生存期間又は全生存期間として提供される。
【0070】
「進行をモニターする」という用語は、本発明の目的では、試験被験体におけるRILIの進行を観察することを意味する。いくつかの実施形態では、治療中(例えば、抗NAMPT抗体などのNAMPT阻害剤を用いて)の試験被験体(例えば、RILI罹患被験体)は、適用された治療の効果(例えば、RILIの重症度に対する効果及び/又はNAMPTの発現に対する効果)について規則的にモニタリングされ、これにより、医師は処方した治療が有効であるか否かを治療中の初期段階で推定することができ、従って、治療レジメンを適宜調整することができる。
【0071】
放射線誘発肺障害(RILI)、放射線肺炎及び放射線線維症は、信頼できるRILIバイオマーカー及び新規治療戦略に対するニーズが満たされないままの、胸部放射線照射が潜在的に生命を脅かす結果である。RILIの発症に対する炎症の寄与は、IR曝露個体における損傷シグナルを減少させ、その後の炎症負荷を軽減するアプローチを支持する。
【0072】
ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)
ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)は、プレB細胞コロニー増強因子(PBEF)又はビスファチンとしても知られている。ヒトNAMPT遺伝子(NAMPT)は、7番染色体(セグメント7q22.3;塩基対106,248,285~106,286,326)に位置する。NAMPTのヒトcDNA配列は、GenBankアクセッション番号NM_005746に提供されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。この配列はまた、配列番号1に対応する。NAMPT遺伝子は、細胞内NAMPT(iNAMPT)と細胞外NAMPT(eNAMPT)の2つの形態で存在するタンパク質をコードし、iNAMPTはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)合成を触媒する。NAMPT遺伝子によってコードされるタンパク質配列は、配列番号2として提供される。
【0073】
NAMPTは、B細胞の成熟に対する効果に基づき、炎症促進性サイトカインとして特徴付けられており(Samal et al.,Mol Cell Biol 14:1431-1437(1994))、全身性NAD生合成酵素としてベータ細胞におけるインスリン分泌を調節することが報告されている(Revollo et al.,Cell Metab 6:363-375(2007))。NAMPTはCD14単球、マクロファージ、樹状細胞中でIL-6、TNF-α、IL-Iβの産生を亢進させ、T細胞の有効性を増強し、Bリンパ球、Tリンパ球の両者の発生に関与することが示されている(Sun et al.,Cytokine&Growth Factor Reviews 24:433-442(2013))。NAMPT酵素の結晶構造は、Kimら(J Mol Biol 362:66-77(2006))によって詳細に記述されている。NAMPTは、NAD生合成を可能にするために、哺乳類においてニコチンアミドをニコチンアミドモノヌクレオチドに変換する、NADサルベージ経路の律速酵素である。細胞外NAMPTタンパク質の成熟形態は、約120kDaのホモダイマーである(Takahashi et al.,J Biochem 147:95-107(2010))。NAMPT酵素の機能を低下又は阻害する変異は、白血病及び肺動脈高血圧症(PAH)などの障害を生じる病態生理学的過程を低下させ得ることが確立されている。
【0074】
NAMPTは、ヒトではTLR4遺伝子によりコードされるタンパク質であるToll様受容体4(TLR4)のリガンドとして同定されている。TLR4は膜貫通タンパク質であり、パターン認識受容体(PRR)ファミリーに属するtoll様受容体ファミリーのメンバーである。TLR4の活性化により、細胞内NF-κΒシグナル伝達経路の形成や炎症性サイトカイン産生がもたらされ、自然免疫系の活性化を担う。TLR4は、多くのグラム陰性菌(例えば、ナイセリア属の種(Neisseria spp.))に存在する成分であるリポ多糖(LPS)を認識することで最もよく知られており、グラム陽性菌を選択する。そのリガンドはまた、いくつかのウイルスタンパク質、多糖、並びに低密度リポタンパク質、ベータ-デフェンシン、及び熱ショックタンパク質などの種々の内因性タンパク質を含む。ヒトTLR4遺伝子は9番染色体(セグメント9q32-q33)に位置する(Georgel et al.,PLoS ONE 4(11):e7803(2009))。ヒトTLR4遺伝子産物の核酸配列は、当該技術分野でよく知られている。例えば、NCBI参照配列:AAY82268.1、Homo sapiens toll-like receptor 4(TLR4)、mRNAを参照されたい。ヒトTLR4のアミノ酸配列は、当該技術分野でよく知られている。例えば、GenBankアクセッション番号AAY82268を参照されたい。
【0075】
NAMPTは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び人工呼吸器誘発肺障害の病態生理学において役割を有する強力な炎症誘発性サイトカインとして同定されている。iNAMPT及びeNAMPTは両者とも、代謝、ストレス応答、アポトーシス、加齢、及び線維症の調節と関連付けられている。eNAMPTは、重篤な危機的疾患において臓器機能不全、サイトカインストーム、及び死亡をもたらす調節不全の炎症反応を大幅に増幅する。iNAMPTは癌において新薬の開発につながる可能性が非常に高い治療標的である;しかし、iNAMPT酵素阻害剤は、許容できない毒性のため、第II相及び第III相臨床癌試験で失敗している。
【0076】
本開示は、RILIにおけるバイオマーカーとしてのNAMPTの使用を対象としている。また、RILIにおける治療標的としてのNAMPTを使用するための方法及び組成物も開示される。
【0077】
RILIにおけるバイオマーカーとしてのNAMPTの使用
RILIにおけるバイオマーカーとしてのNAMPTの使用方法(例えば、インビトロ法)及び組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、NAMPT(例えば、DNA、RNA、及び/又はNAMPTのタンパク質発現)の発現は、RILIの発症前の被験体におけるNAMPTの発現と比較して、又は健康対照被験体(例えば、RILI及び/又は任意の肺疾患を有さない被験体)などの対照被験体におけるNAMPTの発現と比較して、RILIを有する被験体ではより高い(例えば、5%以上、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又はそれ以上)。例えば、NAMPT(例えば、DNA、RNA、及び/又はNAMPTのタンパク質発現)の発現は、RILIの発症前の被験体の組織又は血漿におけるNAMPTの発現と比較して、又は健康対照被験体(例えば、RILI及び/又は任意の肺疾患を有さない被験体)などの対照被験体の組織又は血漿におけるNAMPTの発現と比較して、RILIを有する被験体の組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿では、高くなり得る(例えば、5%以上、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、又はそれ以上)。
【0078】
いくつかの実施形態では、被験体(例えば、RILIを発症するリスクがある被験体)の組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPTの発現の増加は、被験体におけるRILIの発生を示し得る。或いは、被験体(例えば、RILIを発症するリスクがある被験体)の組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPT発現の増加は、被験体におけるRILIの発生を示し得る。さらに又は或いは、被験体の組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPTの発現の増加は、被験体のRILIを発症するリスクが増加していることを示し得る。RILIを発症するリスクがある被験体(例えば、ヒト)は、胸部放射線療法を受けている癌患者であり得る。さらに又は或いは、RILIを発症するリスクがある被験体(例えば、ヒト)は、例えば、原子力事故からの電離放射線(IR)に被曝した被験体であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPT発現が、正常レベル(又は標準対照レベル、対照レベル、健康対照レベル、若しくは参照レベル)より高い被験体(例えば、ヒト)は、RILIを有する被験体であることを示す。さらに又は或いは、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPT発現が、正常レベルよりも高い被験体(例えば、ヒト)は、RILIを発症するリスクが増大している被験体であることを示す。いくつかの実施形態では、NAMPT発現の正常レベル(又は標準対照レベル、対照レベル、健康対照レベル若しくは参照レベル)は、RILI発病前の被験体の組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPTの発現レベルである。いくつかの実施形態では、NAMPT発現の正常レベル(又は標準対照レベル、対照レベル、健康対照レベル若しくは参照レベル)は、健康対照被験体(例えば、RILI及び/又は任意の肺疾患を有さない被験体)などの対照被験体の組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿におけるNAMPTの発現レベルである。
【0080】
本開示の方法の目的のために、試験被験体(例えば、RILIを有することが疑われる被験体及び/又はRILIを発症するリスクのある被験体)の生体試料におけるNAMPT発現は、同じ種類の生体試料におけるNAMPT発現の正常レベル(又は標準対照レベル、対照レベル、健康対照レベル若しくは参照レベル)(例えば、RILIの発病前の被験体からの同じ種類の生体試料におけるNAMPT発現レベル及び/又は対照被験体からの同じ種類の生体試料におけるNAMPT発現のレベル)と比較されるべきことが考えられるべきである。例えば、本開示の方法の目的のために:試験被験体の肺組織におけるNAMPT発現は、肺組織におけるNAMPT発現の正常レベルと比較されるべきであり;試験被験体の扁桃腺組織におけるNAMPT発現は、扁桃腺組織におけるNAMPT発現の正常レベルと比較されるべきであり;試験被験体の胸部組織におけるNAMPT発現は、胸部組織におけるNAMPT発現の正常レベルと比較されるべきであり;且つ/又は、試験被験体の血漿におけるNAMPT発現は、血漿におけるNAMPT発現の正常レベルと比較されるべきである。
【0081】
正常レベルのNAMPT発現が定義又は同定される、1つ以上の標準が作成され得ることが考えられる。そうすると、この標準は所与の被験体(例えば、RILIを有することが疑われる被験体及び/又はRILIを発症するリスクのある被験体などの試験被験体)における発現が正常であるか、又は正常を上回るかを決定する方法として参照され得る。作成される標準の種類は、NAMPT発現を評価するために使用されるアッセイ又は試験に依存する。いくつかの実施形態では、ある基準に基づいて、試料にスコアが割与えられ、ある数値又は範囲に入る又は超える数値は「正常超過」であると考えられる。いくつかの実施形態では、アッセイによって、NAMPT発現の特定の測定値、量又はレベルが、NAMPT発現の正常レベルを有する組織又は血漿で観察される測定値、量又はレベルを約又は多くとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%又はそれを越える(例えば、RILIの発病前の被験体の組織若しくは血漿で観察された測定値、量若しくはレベルを超える、又は対照被験体(例えば、RILIを有さない被験体及び/若しくは如何なる肺疾患も有さない被験体)の組織若しくは血漿で観察された測定値、量若しくはレベルを超える)ことが示されるならば、NAMPT発現は正常超過と考えられる。好ましい実施形態では、アッセイによって、NAMPT発現の特定の測定値、量又はレベルが、NAMPT発現の正常レベルを有する組織又は血漿で観察される測定値、量又はレベルを約又は多くとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%又はそれを越えて(例えば、RILIの発病前の被験体の組織又は血漿で観察された測定値、量又はレベルを超えて、又は対照被験体(例えば、RILIを有さない被験体)の測定値、量又はレベルを超えて)上回ることが示されるならば、NAMPT発現は、正常超過であると考えられる。或いは、いくつかの実施形態では、アッセイによって、NAMPT発現の特定の測定値、量又はレベルが、NAMPT発現の正常レベルを有する細胞、組織又は血漿で観察されたNAMPTの測定値、量又はレベルを、約又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれより多く超える標準偏差であることが示されるならば、NAMPT発現は正常超過であると考えられる。他の場合において、NAMPT発現の測定値、量又はレベルが、NAMPT発現の正常レベルを有する細胞、組織又は血漿で観察されたNAMPTの測定値、量又はレベルの、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又はそれを超える倍率(これらには概略の値が含まれる)であるならば、NAMPT発現は正常超過であると考えられ得る。
【0082】
NAMPT発現の評価
NAMPTレベルは試験被験体(例えば、RILIを有することが疑われる被験体、及び/又はRILIを有するリスクが増加している被験体)などの被験体からの試料からアッセイされ得ることが考えられる。いくつかの実施形態では、被験体からの試料は生体試料を指す。いくつかの実施形態では、生体試料は、組織生検又は切片(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織などからの生検又は切片)、血液試料、洗浄液、綿棒、擦過物、乳頭吸引液、又は身体から抽出され得、細胞を含む他の組成物を含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、生体試料は血漿を含む。特定の実施形態では、被験体(例えば、試験被験体)からの試料は組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)生検の全部又は一部を含有し得る。さらなる実施形態では、被験体(例えば、試験被験体)からの試料は、肺組織生検の全部又は一部を含み得、これは両側生検又は片側生検からのものであり得る。
【0083】
本明細書では、細胞、組織又は血漿における(例えば、被験体(例えば、試験被験体)の細胞、組織又は血漿におけるなど)NAMPTの発現を評価するための方法が提供される。細胞、組織又は血漿におけるNAMPTの発現は、それらの発現に関する情報を直接的又は間接的に提供する多くの方法によって評価することができる。従って、NAMPT発現を評価する方法は、対応するタンパク質を評価又は測定すること、対応する転写物を評価又は測定すること、対応する転写物又はゲノム配列の配列を決定すること、及びNAMPT活性をアッセイすることを含むが、これらに限定されない。NAMPTは、米国特許第9,409,983号明細書(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているのと同様の方法を使用して、生体試料(例えば、細胞、組織、血漿)などにおいて検出することができる。
【0084】
I.一般的方法論
本明細書中に開示される方法を実施するには、分子生物学の分野における日常的な手法を利用する。本開示における一般的な使用方法を開示する基本的なテキストは、Sambrook and Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd ed.2001);Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);and Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994))を含む。
【0085】
核酸については、サイズがキロ塩基(kb)又は塩基対(bp)のいずれかで与えられる。これらは、アガロース又はアクリルアミドゲル電気泳動から、配列決定された核酸から、又は公表されたDNA配列から得られる推定値である。タンパク質については、サイズはキロダルトン(kDa)又はアミノ酸残基数で与えられる。タンパク質サイズはゲル電気泳動から、配列決定されたタンパク質から、誘導されたアミノ酸配列から、又は公表されたタンパク質配列から推定される。
【0086】
市販されていないオリゴヌクレオチドは、例えば、Van Devanter et.al.,Nucleic Acids Res 12:6159-6168(1984)に記載されているような自動合成装置を使用して、Beaucage and Caruthers,Tetrahedron Lett 22:1859-1862(1981)によって最初に記述された固相ホスホラミダイトトリエステル法に従って、化学的に合成することができる。オリゴヌクレオチドの精製は、当該技術分野で認められている任意の方法を用いて、例えば、Pearson and Reanier,J Chrom 255:137-149(1983)に記載されているような、天然アクリルアミドゲル電気泳動又はアニオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行われる。
【0087】
本発明で用いられる目的の配列、例えばヒトNAMPT遺伝子のポリヌクレオチド配列は、例えばWallace et al.,Gene 16:21-26(1981)の二本鎖テンプレートの連鎖終止反応法を用いて確認することができる。
【0088】
II.組織試料の取得とNAMPT mRNA又はDNAの解析
本開示は、RILIの、存在の検出手段として、発症リスクの評価手段として、診断手段として、予後診断手段として、及び/又は進行若しくは治療有効性をモニターする手段として、被験体の細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿試料中に見出されるNAMPT mRNA又はNAMPTゲノムDNAの量を測定する方法(例えば、インビトロ法)に関する。従って、本開示の方法(例えば、RILIの診断、予後、及び/又はモニタリングのために、NAMPTをバイオマーカーとして使用するインビトロ方法)を実施する第1の工程は、試験被験体から細胞、組織、又は血漿試料を得、その試料からmRNA又はDNAを抽出することである。
【0089】
A.試料の取得及び調製
生体試料(例えば、細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿)は、本開示の方法を使用して、RILIについて試験又はモニターされるべき人から得られる。試験被験体(例えば、RILIを有することが疑われる被験体及び/又はRILIを発症するリスクのある被験体)並びに対照被験体(例えば、RILI及び/又は如何なる肺障害をも患っていない被験体)の両方から、同じ種類の生体試料を採取すべきである。試験被験体などの被験体からの生体試料の採取は、病院又はクリニックが一般的に従う、標準的なプロトコルに従って行われる。適切な量の生体試料(例えば、細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿)が採取され、さらなる調製の前に、標準的な手順に従って保存され得る。
【0090】
本明細書中に開示される方法に従って、被験体(例えば、試験被験体)の生体試料中に見出されるNAMPT mRNA又はDNAの分析は、例えば、細胞、組織、又は血漿を使用して実施され得る。核酸抽出のために生体試料を調製する方法は、当業者によく知られている。例えば、被験体(例えば、試験被験体)の組織は、細胞内に含有されている核酸を放出するために、細胞膜を破壊する処理を最初に行うべきである。
【0091】
B.DNA及びRNAの抽出及び定量
生体試料からDNAを抽出するための方法はよく知られており、分子生物学の分野で日常的に実施されている(例えば、Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d ed.,2001に記載されている)。RNAの混入は、DNA分析の妨害を避けるために排除すべきである。
【0092】
同様に、生体試料からmRNAを抽出するための多数の方法が存在する。mRNA調製の一般的な方法は、例えば、Sambrook and Russell(前出)に従うことができ、これを参照されたい;種々の市販の試薬又はキット(例えば、Trizol試薬(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)、Oligotex Direct mRNA Kits(Qiagen、Valencia,Calif)、RNeasy Mini Kits(Qiagen、Hilden、Germany)、及びPolyATtract.RTM.Series 9600.TM.(Promega,Madison,Wis.))はまた、試験被験体からの生体試料からmRNAを得るために使用され得る。これらの方法のうちの2つ以上の組み合わせを使用することもできる。RNA調製物から全ての混入DNAが排除されることが必須である。従って、試料の注意深い取り扱い、DNaseでの徹底的な処理、及び増幅及び定量段階における適切な陰性対照を使用すべきである。
【0093】
1.PCRに基づくDNA又はmRNAレベルの定量的決定
DNA又はmRNAが試料から抽出されると、ヒトNAMPTゲノムDNA又はmRNAの量を定量し得る。DNA又はmRNAレベルを決定するための好ましい方法は、増幅に基づく方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、特に、mRNAの定量分析では逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)である。
【0094】
NAMPTゲノムDNAは直接増幅に供されるが、mRNAは最初に逆転写されなければならない。増幅工程の前に、ヒトNAMPT mRNAのDNAコピー(cDNA)を合成しなければならない。これは、別個の工程として、又はRNAを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応の変形である、均一逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で実施することができる逆転写によって達成される。リボ核酸のPCR増幅に適した方法は、Romero and Rotbart in Diagnostic Molecular Biology:Principles and Applications pp.401-406,Persing et al.,eds.,Mayo Foundation,Rochester,Minn(1993);Egger et al.,J Clin Microbiol 33:1442-1447,(1995);及び米国特許第5,075,212号明細書に記載されている。
【0095】
PCRの一般的な方法は当該技術分野でよく知られており、従って、本明細書では詳細には説明しない。プライマーを設計する際の、PCR法、プロトコル、及び原理のレビューについては、例えば、Innis,et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.,1990を参照されたい。PCR試薬及びプロトコルはまた、Roche Molecular Systemsなどの商業的ベンダーから入手可能である。
【0096】
PCRは、最も一般的には、熱安定性酵素を用いた自動化プロセスとして実施される。このプロセスでは、反応混合物の温度は、変性領域、プライマーアニーリング領域、及び伸長反応領域を通して自動的に循環される。この目的のために特に適合された機械は、商業的に入手可能である。
【0097】
標的ゲノムDNA又はmRNAのPCR増幅は、典型的には本開示を実施する際に使用されるが、しかしながら当業者は、試料中のこれらのDNA又はmRNA種の増幅は、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写媒介増幅、及び自己持続配列複製又は核酸配列ベースの増幅(NASBA)などの任意のよく知られた方法によって達成され得、これらの各々は十分な増幅を提供することを認識している。最近開発された分岐DNA技術もまた、試料中のDNA又はmRNAの量を定量的に決定するために使用し得る。臨床試料中の核酸配列の、直接定量のための分岐DNAシグナル増幅に関するレビューについては、Nolte,Adv Clin Chem 33:201-235(1998)を参照されたい。
【0098】
制限部位の一本鎖にヌクレオチド5’-[アルファチオ]-三リン酸を含む標的分子の増幅を達成するために、制限エンドヌクレアーゼ及びリガーゼを使用する等温増幅法もまた、本発明の核酸の増幅に有用であり得る。米国特許第5,916,779号明細書に開示のストランド変位増幅(SDA)は、複数ラウンドのストランド置換及び合成、すなわちニック翻訳を含む核酸の等温増幅を実施する別の方法である。
【0099】
他の核酸増幅手順は、核酸配列ベースの増幅(NASBA)及び3SRを含む転写ベースの増幅システム(TAS)を含む(国際公開第88/10315号パンフレットは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。欧州特許出願第329822号明細書は、本開示に従って使用され得る、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA、及び二本鎖DNA(dsDNA)を循環して合成することを含む核酸増幅プロセスを開示している。国際公開89/06700号パンフレット(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的一本鎖DNA(「ssDNA」)へのプロモーター領域/プライマー配列のハイブリダイゼーション、引き続く、配列の多くのRNAコピーの転写に基づく核酸配列増幅スキームを開示している。このスキームは環状ではなく、すなわち、新しいテンプレートは、得られたRNA転写物から作製されない。他の増幅方法には、「RACE」及び「片側PCR」が含まれる(Frohman,1990;Ohara et al.,1989)。
【0100】
任意の増幅又はプライマー伸長などの工程に続いて、増幅又はプライマー伸長産物をテンプレート及び/又は過剰プライマーから分離することが望ましい。一実施形態では、増幅産物は、標準的な方法を使用するアガロース、アガロース-アクリルアミド又はポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離される(Sambrook et al.,2001)。分離した増幅産物を切り出し、さらなる操作のためにゲルから溶出させ得る。低融点アガロースゲルを使用して、分離されたバンドはゲルを加熱し、続いて核酸を抽出することによって除去され得る。
【0101】
核酸の分離はまた、当該技術分野でよく知られたクロマトグラフィー技術によっても実施され得る。吸着、分配、イオン交換、ヒドロキシルアパタイト、モレキュラーシーブ、逆相、カラム、ペーパー、薄層、及びガスクロマトグラフィー、並びにHPLCを含む、本発明の実施において使用され得る多くの種類のクロマトグラフィーが存在する。
【0102】
特定の実施形態では、増幅産物は可視化される。典型的な可視化方法は、臭化エチジウムでゲルを染色し、UV光下でバンドを可視化することを含む。或いは、増幅産物が放射性標識ヌクレオチド又は蛍光定量標識ヌクレオチドで一体的に標識されるならば、分離された増幅産物はx線フィルムに露光され得るか、又は適切な励起スペクトル下で可視化され得る。
【0103】
一実施形態では、増幅産物の分離に続いて、標識された核酸プローブを増幅されたマーカー配列と接触させる。プローブは好ましくは発色団に結合されるが、放射標識されてもよい。別の実施形態では、プローブは、抗体若しくはビオチンなどの結合パートナー又は検出可能な部分を有する別の結合パートナーと結合される。
【0104】
特定の実施形態では、検出はサザンブロッティング及び標識プローブとのハイブリダイゼーションによる。サザンブロッティングに関与する技術は当業者によく知られている(Sambrook et al.,2001を参照)。上記の一例は、米国特許第5,279,721号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、核酸の自動電気泳動及び移動のための装置及び方法を開示している。この装置は、ゲルの外部操作なしに電気泳動及びブロッティングを可能にし、本発明による方法を実施するのに理想的に適している。
【0105】
本開示の実施において使用され得る核酸検出の他の方法は、米国特許第5,840,873号明細書、同第5,843,640号明細書、同第5,843,651号明細書、同第5,846,708号明細書、同第5,846,717号明細書、同第5,846,726号明細書、同第5,846,729号明細書、同第5,849.487号明細書、同第5,853,990号明細書、同第5,853,992号明細書、同第5,853,993号明細書、同第5,856,092号明細書、同第5,861,244号明細書、同第5,863,732号明細書、同第5,863,753号明細書、同第5,866,331号明細書、同第5,905,024号明細書、同第5,910,407号明細書、同第5,912,124号明細書、同第5,912,145号明細書、同第5,919,630号明細書、同第5,925,517号明細書、同第5,928,862号明細書、同第5,928,869号明細書、同第5,929,227号明細書、同第5,932,413号明細書及び同第5,935,791号明細書に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
RNAのcDNAへの逆転写(RT)と、それに続く相対的定量PCR(RT-PCR)は、NAMPTをコードする転写産物などの、細胞から単離された特定のmRNA種の相対的濃度を決定するために使用することができる。特定のmRNA種の濃度が異なることを決定することによって、特定のmRNA種をコードする遺伝子が差次的に発現することが示される。
【0107】
特に意図されるのは、Hacia et al.(1996)及びShoemaker et al.(1996)によって記述されたものなどの、チップベースのDNA技術である。簡潔にいえば、これらの手法は、多数の遺伝子を迅速且つ正確に分析するための定量的方法を含む。遺伝子にオリゴヌクレオチドでタグを付けることによって、又は固定プローブアレイを使用することによって、チップ技術を使用して、標的分子を高密度アレイとして分離し、そしてハイブリダイゼーションに基づいてこれらの分子をスクリーニングすることができる(Pease et al.,1994;及びFodor et al.,1991も参照されたい)。この技術は、本開示の診断方法に関して、NAMPTの発現レベルを評価することと併せて使用され得ることが考えられる。
【0108】
2.その他の定量法
NAMPT DNA又はmRNAはまた、当業者によく知られた他の標準的な技術を使用して検出することができる。検出工程は典型的には増幅工程が先行するが、本発明の方法では増幅は必要とされない。例えば、DNA又はmRNAは、増幅工程が先行するか否かにかかわらず、サイズ分画(例えば、ゲル電気泳動)によって同定され得る。試料をアガロース又はポリアクリルアミドゲル中で泳動させ、よく知られた技術(例えば、Sambrook及びRussell、前出)に従って臭化エチジウムで標識した後、標準比較体と同じサイズのバンドが存在すれば、それは標的DNA又はmRNAの存在の指標であり、その後、その量は、バンドの強度に基づいて対照と比較され得る。或いは、NAMPT DNA又はmRNAに特異的なオリゴヌクレオチドプローブを、このようなDNA又はmRNA種の存在を検出するために使用することができ、プローブによって与えられるシグナルの強度に基づき、標準比較体と比較してDNA又はmRNAの量を示す。
【0109】
配列特異的プローブのハイブリダイゼーションは、他の種の核酸を含む特定の核酸を検出するよく知られた方法である。十分にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下では、プローブは、実質的に相補的な配列にのみ特異的にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは、様々に変わる配列ミスマッチの量が許容されるよう、緩和することができる。
【0110】
当該技術分野でよく知られている、多数のハイブリダイゼーションフォーマットは、溶液相、固相、又は混合相ハイブリダイゼーションアッセイを含むがこれらに限定されない。以下の記事は、種々のハイブリダイゼーションアッセイフォーマットの概要を提供する:Singer et al.,Biotechniques 4:230,1986;Haase et al.,Methods in Virology,pp.189-226,1984;Wilkinson,In situ Hybridization,Wilkinson ed.,IRL Press,Oxford University Press,Oxford;及びHames and Higgins eds.,Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,IRL Press,1987。
【0111】
ハイブリダイゼーション複合体は、よく知られた技術によって検出される。標的核酸、すなわち、mRNA又は増幅DNAに特異的にハイブリダイズし得る核酸プローブは、ハイブリダイズした核酸の存在を検出するために典型的に使用される、いくつかの方法のいずれか1つによって標識することができる。検出の1つの一般的な方法は、H、125I、35S、14C、又は32P、99mTcなどで標識されたプローブを使用する、オートラジオグラフィーの使用である。放射性同位体の選択は、合成の容易さ、安定性、及び選択された同位体の半減期による、研究の好みに依存する。他の標識には、フルオロフォア、化学発光剤、及び酵素で標識された抗リガンド又は抗体に結合する化合物(例えば、ビオチン及びジゴキシゲニン)が含まれる。或いは、プローブは、フルオロフォア、化学発光剤又は酵素などの標識と直接結合することができる。標識の選択は、必要とされる感度、プローブとの結合の容易さ、安定性要件、及び利用可能な計測手段に依存する。
【0112】
本発明を実施するために必要なプローブ及びプライマーは、よく知られた手法を用いて合成及び標識することができる。プローブ及びプライマーとして使用されるポリヌクレオチド並びにオリゴヌクレオチド(例えば、NAMPTポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチド)は、Needham-VanDevanter et al.,Nucleic Acids Res 12:6159-6168,1984に記載されているような、自動合成装置を使用して、Beaucage and Caruthers,Tetrahedron Letts,22:1859-1862,1981によって最初に記述された固相ホスホラミダイトトリエステル法に従って化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチドの精製は、Pearson and Regnier,J Chrom,255:137-149,1983に記載されているように、天然アクリルアミドゲルの電気泳動又はアニオン交換HPLCのいずれかによる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態では、NAMPT発現は、NAMPT転写を評価することによって評価される。NAMPTの転写は、NAMPT転写物を増幅すること、又はNAMPT転写物に対してノーザンブロット法を実施することを含む方法を含む、種々の方法によって評価することができる。NAMPT転写物の増幅は、当業者によく知られた定量的ポリメラーゼ連鎖反応で利用することができる。或いは、ヌクレアーゼ保護アッセイは、NAMPT転写物を定量するために実施され得る。プローブと標的との間のハイブリダイゼーションを利用する他の方法、例えば蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)又はRNAインサイチュハイブリダイゼーション(RISH)もまた、NAMPT転写を評価するために考えられる。別の実施形態では、NAMPTのRNA発現は、グローバルゲノム配列含有量又は疾患特異的バイオマーカーのいずれかを含むように製造することができるマイクロアレイを使用して測定される。
【0114】
C.NAMPT検出のためのポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド
本明細書には、NAMPT発現を検出することができるポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドが記載されている。本明細書中に記載されるポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、NAMPTをコードする核酸配列(例えば、配列番号1)の全て又は一部に相補的であり得る。これらの核酸はNAMPT発現を評価し、判断し、定量し、又は決定するために、直接的又は間接的に使用され得る。
【0115】
NAMPT配列の全部又は一部に相補的な核酸配列は、本明細書に記載の方法で使用することが考えられる。特定の実施形態では、配列番号1からの配列を含む、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1095、1100、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000又はそれ以上の連続したヌクレオチド、ヌクレオシド又は塩基対(又はそれらから導き出せる任意の範囲)に相補的な核酸がある。
【0116】
本明細書中に記載のヌクレオチド配列の周りに設計された種々のプローブ及びプライマーは、上記のような任意の長さであり得る。配列に数値を、例えば、第1の残基は1、第2の残基は2などと割り当てることによって、すべてのプライマーをn~n+yで定義するアルゴリズムを提案することができる:ここで、nは1から配列の最後の数までの整数であり、yはプライマーの長さから1を引いたものであり、n+yは、配列の最後の数を超えない。従って、10量体では、プローブは塩基1~10、2~11、3~12などに対応する。15量体では、プローブは塩基1~15、2~16、3~17などに対応する。20量体では、プローブは塩基1~20、2~21、3~22などに対応する。
【0117】
13~100ヌクレオチド、好ましくは長さが17~100ヌクレオチド、又はいくつかの態様では、長さが1~2キロ塩基以上までのプローブ又はプライマーの使用は、安定且つ選択的な二本鎖分子の形成を可能にする。そのようなプローブ又はプライマーは、上記のように、配列番号1の様々な長さに相補的であり得る。得られるハイブリッド分子の安定性及び/又は選択性を増加させるために、長さが20塩基を超える連続した区間にわたって相補的配列を有する分子が一般に好ましい。一般に、20~30ヌクレオチド、又は所望の場合はそれより長い1つ以上の相補的配列を有する、ハイブリダイゼーションのための核酸分子を設計することが好ましい。そのようなフラグメントは、例えば、化学的手段でフラグメントを直接合成することによって、又は組換え産生のために選択された配列を組換えベクターに導入することによって、容易に調製され得る。
【0118】
プローブは、本明細書で開示した配列の、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990若しくは1000の連続した塩基、又はそれらから導き出せる任意の範囲に相補的(「相補性」とも呼ばれる)であり得る。いくつかの実施形態では、配列は配列番号1である。
【0119】
或いは、本明細書で開示した配列の、多くとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、若しくは1000の連続した塩基、又はそれらから導き出せる任意の範囲に相補的(「相補性」とも呼ばれる)であり得る。いくつかの実施形態では、配列は配列番号1である。
【0120】
従って、本明細書に記載のヌクレオチド配列は、DNA及び/若しくはRNAの相補的区間を有する二本鎖分子を選択的に形成するか、又は試料からDNA若しくはRNAを増幅するためのプライマーを提供する能力のために使用し得る。想定される用途に応じて、標的配列に対するプローブ又はプライマーの様々な程度の選択性を達成するために、様々なハイブリダイゼーション条件を用いることが望ましい。
【0121】
高い選択性を必要とする用途では、典型的にはハイブリッドを形成するために比較的高いストリンジェンシー条件を用いることが望ましい。例えば、約50℃~約70℃の温度で約0.02M~約0.10MのNaClによって提供されるような、比較的低い塩及び/又は高温条件。そのような高ストリンジェンシー条件は、プローブ又はプライマーとテンプレート又は標的鎖との間のミスマッチを、もしあったとすると、ほとんど許容せず、そして特定の遺伝子(例えば、NAMPT遺伝子)を単離するために、又は特定のmRNA(例えば、NAMPT mRNA)転写物を検出するために特に適切である。一般に、ホルムアミドの量を増加させることによって、条件をよりストリンジェントにすることができることが理解される。
【0122】
特定の適用、例えば、部位特異的変異誘発については、より低いストリンジェンシー条件が好ましいことが理解される。これらの条件下では、ハイブリダイズする鎖の配列が完全に相補的ではなく、1つ以上の位置でミスマッチしていても、ハイブリダイゼーションは起こり得る。条件は、塩濃度を増加させること及び/又は温度を低下させることによって、より緩いストリンジェントにし得る。例えば、中程度のストリンジェンシー条件は、約37℃~約55℃の温度で、約0.1~0.25MのNaClによって提供され、一方、低ストリンジェンシー条件は、約20℃~約55℃の範囲の温度で、約0.15M~約0.9Mの塩によって提供され得る。ハイブリダイゼーション条件は、所望の結果に応じて容易に操作することができる。
【0123】
他の実施形態では、ハイブリダイゼーションは例えば、50mMのTris-HCl(pH8.3)、75mMのKCl、3mMのMgCl、1.0mMのジチオトレイトールの条件下で、約20℃~約37℃の間の温度で達成され得る。利用される他のハイブリダイゼーション条件は、約40℃~約72℃の範囲の温度で、約10mMのTris-HCl(pH8.3)、50mMのKCl、1.5mMのMgClを含み得る。
【0124】
特定の実施形態では、ハイブリダイゼーションを決定するために、標識などの適切な手段と組み合わせて、本明細書に記載された規定の配列の核酸を使用することが有利である。検出可能な、蛍光、放射性、酵素、又はアビジン/ビオチンなどの他のリガンドを含む、多種多様な適切なインジケーター手段が当該技術分野でよく知られている。好ましい実施形態では、放射性又は他の環境的に望ましくない試薬の代わりに、蛍光標識又はウレアーゼ、アルカリホスファターゼ若しくはペルオキシダーゼなどの酵素タグを使用することが望まれ得る。酵素タグの場合、相補的核酸含有試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するために、視覚的に、又は分光光度法で検出可能な検出手段を提供するために使用することができる、比色インジケーター基質が知られている。
【0125】
一般に、本明細書に記載のプローブ又はプライマーは、NAMPT発現の検出のための、PCRのような溶液ハイブリダイゼーションにおける、及び固相を使用する実施形態における試薬として有用であることが想定される。固相を利用する実施形態では、検査用DNA(又はRNA)は、選択されたマトリックス又は表面に吸着又はそうでない場合には付着する。その後、この固定された一本鎖核酸は、所望の条件下で、選択されたプローブとのハイブリダイゼーションに供される。選択された条件は、特定の状況(例えば、G+C含量、標的核酸の種類、核酸の供給源、ハイブリダイゼーションプローブのサイズなどに依存する)に依存する。目的とする特定の適用のための、ハイブリダイゼーション条件の最適化は、当業者によく知られている。ハイブリダイズした分子を洗浄して非特異的に結合したプローブ分子を除去した後、結合した標識の量を決定することによって、ハイブリダイゼーションを検出及び/又は定量する。代表的な固相ハイブリダイゼーション法は、米国特許第5,843,663号明細書、同第5,900,481号明細書及び同第5,919,626号明細書に記載されている。本開示の実施で使用され得るハイブリダイゼーションの他の方法は、米国特許第5,849,481号明細書、同第5,849,486号明細書及び同第5,851,772号明細書に記載されている。本明細書のこのセクションで特定された、これら及び他の参考文献の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
増幅のためのテンプレートとして使用される核酸(例えば、NAMPTの増幅のためのテンプレートとして使用される核酸)は、標準的な方法論に従って、細胞、組織、血漿、又は他の試料から単離され得る(Sambrook et al.,2001)。特定の実施形態では、分析は、テンプレート核酸の実質的な精製を行わないで、全細胞若しくは組織ホモジネート又は生物学的流体試料に対して行われる。核酸は、ゲノムDNAであっても、分画されたRNAであっても、全細胞RNAであってもよい。RNAが使用される場合、最初にRNAを相補的DNAに変換することが望まれ得る。
【0127】
III.ポリペプチドの定量
A.試料の採取
本開示は、RILIの、存在の検出手段として、発症リスクの評価手段として、診断手段として、予後診断手段として、及び/又は進行若しくは治療有効性をモニターする手段として、被験体の細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿試料中に見出されるNAMPTタンパク質の量を測定する方法(例えば、インビトロ法)に関する。従って、本開示の方法(例えば、RILIの診断、予後、及び/又はモニタリングのために、NAMPTをバイオマーカーとして使用するインビトロ方法)を実施する第1の工程は、試験被験体から細胞、組織、又は血漿試料を得、その試料からタンパク質を抽出することである。
【0128】
A.試料の取得及び調製
生体試料(例えば、細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿)は、本開示の方法を使用して、RILIについて試験又はモニターされるべき人から得られる。試験被験体(例えば、RILIを有することが疑われる被験体及び/又はRILIを発症するリスクのある被験体)並びに対照被験体(例えば、RILI及び/又は如何なる肺障害をも患っていない被験体)の両方から、同じ種類の生体試料を採取すべきである。試験被験体などの被験体からの生体試料の採取は、病院又はクリニックが一般的に従う、標準的なプロトコルに従って行われる。適切な量の生体試料(例えば、細胞、組織(例えば、肺組織、扁桃腺組織、胸部組織など)又は血漿)が採取され、さらなる調製の前に、標準的な手順に従って保存され得る。
【0129】
本明細書中に開示される方法に従って、被験体(例えば、試験被験体)の生体試料中に見出されるNAMPTタンパク質の分析は、例えば、細胞、組織、又は血漿を使用して実施され得る。タンパク質抽出のために生体試料を調製する方法は、当業者によく知られている。例えば、被験体(例えば、試験被験体)の組織は、細胞内に含有されているタンパク質を放出するために、細胞膜を破壊する処理を最初に行うべきである。
【0130】
RILIの存在を検出するか、又は試験被験体においてRILIを発症するリスクを評価する目的のために、生体試料を被験体から収集し得、ヒトNAMPTタンパク質のレベルを測定し、その後、NAMPTタンパク質の正常レベルと比較し得る(例えば、RILIの発症前の被験体における同じ種類の生体試料におけるNAMPTタンパク質のレベルと比較され、及び/又は対照被験体由来の同じ種類の生体試料におけるNAMPTタンパク質のレベルと比較される)。NAMPTの正常レベルと比較して、ヒトNAMPTタンパク質レベルの増加が観察された場合、試験被験体はRILIを有するか、又はRILIを発症するリスクが高くなっていると考えられる。RILI患者における疾患進行のモニタリング又は治療有効性の評価の目的で、疾患の状態を示す情報を提供するために、ヒトNAMPTタンパク質のレベルを測定することができるように、個々の患者からの生体試料を異なる時点で採取し得る。例えば、患者のNAMPTタンパク質レベルが経時的に減少する一般的な傾向を示す場合、患者のRILIの重症度が改善していると考えられるか、又は患者が受けている治療が有効であると考えられる。一方、患者のNAMPTタンパク質レベルに変化がないか、又は増加傾向が続いている場合は、病状の悪化及び患者に与えられた治療の無効性を示すものであろう。一般に、患者に見られるNAMPTタンパク質レベルが高いことは、患者が罹患しているRILIのより重症の形態を示し、疾患のより悪い予後を示す。
【0131】
B.NAMPTタンパク質検出のための試料の準備
被験体からの組織又は血漿試料は本発明に適しており、よく知られている方法によって、及び前のセクションに記載されているようにして得ることができる。本発明の特定の適用では、肺組織は、好ましい試料の種類であり得る。
【0132】
C.ヒトNAMPTタンパク質のレベルの決定
任意の特定の同一性を有するタンパク質、例えば、NAMPTタンパク質は、種々の免疫学的アッセイを使用して検出され得る。いくつかの実施形態では、サンドイッチアッセイは、ポリペプチドに対する特異的結合親和性を有する抗体を用いて、試験試料からポリペプチドを捕捉することによって実施することができる。そうすると、ポリペプチドは、それに対する特異的結合親和性を有する標識抗体を用いて検出することができる。一般的な検出法の一つは、放射性同位元素(例えば、H、125I、35S、14C、又は32P、99mTcなど)により標識された放射標識検出剤(例えば、放射標識抗NAMPT抗体)を用いるオートラジオグラフィーの使用である。放射性同位元素の選択は、合成の容易さ、安定性、及び選択された同位体の半減期による、研究の好みに依存する。検出剤の標識に(例えば、抗NAMPT抗体の標識に)使用することができる他の標識には、フルオロフォア、化学発光剤、フルオロフォア及び酵素(例えば、HRP)で標識された抗リガンド又は抗体に結合する化合物(例えば、ビオチン及びジゴキシゲニン)が含まれる。そのような免疫学的アッセイは、マイクロアレイタンパク質チップなどのマイクロ流体装置を使用して実施することができる。目的のタンパク質(例えば、ヒトNAMPTタンパク質)はまた、ゲル電気泳動(2次元ゲル電気泳動など)及び特異的抗体を使用するウエスタンブロット分析によっても検出することができる。いくつかの実施形態では、所与のタンパク質(例えば、ヒトNAMPTタンパク質)を検出するために、適切な抗体を用いる、標準的なELISA手法を使用することができる。他の実施形態では、所与のタンパク質(例えば、ヒトNAMPTタンパク質)を検出するために、適切な抗体を用いる、標準的なウエスタンブロット分析手法を使用することができる。或いは、所与のタンパク質(例えば、ヒトNAMPTタンパク質)を検出するために、適切な抗体を用いる、標準的な免疫組織化学(IHC)手法を使用することができる。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体(所望の結合特異性を有する抗体フラグメントを含む)の両方を、ポリペプチドの特異的検出のために使用することができる。そのような抗体及び特定のタンパク質(例えば、ヒトNAMPTタンパク質)に対して特異的結合親和性を有するそれらの結合フラグメントは、よく知られている手法によって生成することができる。
【0133】
いくつかの実施形態では、NAMPTタンパク質(例えば、生体試料中のNAMPTタンパク質)は、NAMPTに結合する抗体、例えば、抗NAMPT抗体、又はその抗原結合フラグメントを用いて検出され得る(例えば、検出アッセイで検出され得る)。特定の実施形態では、抗NAMPT抗体は、検出アッセイ(例えば、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学分析、オートラジオグラフィー分析、及び/又はELISA)においてNAMPTを検出するなど、NAMPTに結合し、NAMPTを検出する(例えば、生体試料から)検出抗体などの検出剤として使用される。特定の実施形態では、抗NAMPT抗体は、検出アッセイで(例えば、ウエスタンブロット分析、免疫組織化学分析、オートラジオグラフ分析及び/又はELISAで)NAMPTを検出するなど、NAMPTに結合し、NAMPTを検出する(例えば、生体試料から)捕捉剤として使用される。いくつかの実施形態では、NAMPTに結合する抗体、例えば、抗NAMPT抗体、又はその抗原結合フラグメントは、検出の容易さのために標識化される。いくつかの実施形態では、NAMPTに結合する抗体、例えば、抗NAMPT抗体、又はその抗原結合フラグメントは、放射標識され(例えば、放射性同位元素で標識され(例えば、H、125I、35S、14C、若しくは32P、99mTcなどで標識され))、酵素的に標識され(例えば、酵素で標識され(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で))、蛍光標識され(例えば、フルオロフォアで標識され)、化学発光剤で標識され、並びに/又は化合物で標識される(例えば、ビオチン及びジゴキシゲニンで)。
【0134】
他の方法もまた、本発明を実施する際にNAMPTタンパク質のレベルを測定するために使用され得る。例えば、試料が多数の場合でも標的タンパク質を迅速且つ正確に定量するために、質量分析技術に基づいて様々な方法が開発されてきた。これらの方法は、多重反応モニタリング(MRM)手法を使用する三重四重極(三重Q)装置、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間タンデム質量分析計(MALDI TOF/TOF)、選択的イオンモニタリングSIM)モードを使用するイオントラップ装置、及びエレクトロスプレーイオン化(ESI)ベースのQTOP質量分析計などの高度に洗練された装置を含む。例えば、Pan et al.,J Proteome Res 2009 February;8(2):787-797を参照されたい。
【0135】
特定の態様では、NAMPT発現は、NAMPTタンパク質を評価することによって評価される。いくつかの実施形態では、抗NAMPT抗体は、NAMPTタンパク質を評価するために使用することができる。そのような方法は、IHC、ウエスタンブロット分析、ELISA、免疫沈降、オートラジオグラフィー、又は抗体アレイを使用することを含み得る。特定の実施形態では、NAMPTタンパク質はIHCを使用して評価される。IHCの使用は、NAMPTタンパク質の定量及びキャラクタリゼーションを可能にし得る。IHCはまた、NAMPTタンパク質の発現が決定されるべき試料についての、免疫反応性スコアを可能にし得る。「免疫反応性スコア」(IRS)という用語は、染色の強度(1~3のスケールで、1=弱、2=中、及び3=強)を乗じた陽性細胞の割合を反映するスケール(1~4のスケールで、0=0%、1=<10%、2=10%~50%、3=50%~80%、及び4=>80%)に基づいて計算される数を指す。IRSは、0~12の範囲であり得る。
【0136】
IV.標準対照の確立
本発明の方法を実施するための標準的な対照を確立するために、従来定義されているような肺疾患(特に、RILIなどの任意の形態の肺障害)を有さない健常者の群をまず選択する。これらの個体は、該当する場合、本発明の方法を用いてRILIをスクリーニング及び/又はモニターする目的のための適切な範囲内にある。任意には、個体は、同じ性別、類似の年齢、又は類似の民族的背景を有する。
【0137】
選択された個体(例えば、対照被験体)の健康状態は、以下に限定されないが、個体の全身の身体検査及び病歴の全般的レビューを含む、十分に確立され日常的に使用されている方法によって確認される。
【0138】
さらに、健常者の選択された群は、その群から得られた組織試料中のヒトNAMPTゲノムDNA、NAMPTmRNA、又はNAMPTタンパク質の平均量/濃度が健常者の一般集団中のNAMPTの正常レベル又はNAMPTの平均レベルを代表すると合理的にみなされるように、適度なサイズでなければならない。好ましくは、選択された群は少なくとも10人のヒト被験体を含むことが好ましい。
【0139】
NAMPTゲノムDNA、NAMPTmRNA、又はNAMPTタンパク質の平均値が、選択された健常群又は対照群の各被験体において見出された個々の値に基づいて確立されると、この平均値、又は中央値、又は代表値、又はプロファイルは、NAMPT発現の標準対照とみなされるか、又はNAMPT発現の正常レベルとみなされる。標準偏差もまた、同じプロセスの間に決定される。場合によっては、年齢、性別、又は民族的背景などの別個の特徴を有する別個に定義されたグループについて、別個の標準対照を確立することができる。
【0140】
さらなる実施形態では、NAMPT発現は、NAMPT活性のレベルをアッセイすることによって評価される。
【0141】
RILIにおける治療標的としてのNAMPTの使用
本明細書においては、RILIにおける治療標的としてNAMPTを使用するための方法及び組成物が開示される。いくつかの実施形態では、本開示がRILIを治療するためのNAMPT阻害剤の使用を記載する。いくつかの実施形態では、1種以上のNAMPT阻害剤は、放射線(例えば、全胸肺照射(WTLI)、全身照射(TBI)又は部分身体照射(PBI))などの放射線に曝露された被験体のRILIを治療するために使用される。いくつかの実施形態では、1種以上のNAMPT阻害剤は、放射線療法(例えば、胸部放射線療法)を受けている癌患者などの、放射線療法(例えば、胸部放射線療法)を受けている被験体のRILIを治療するために使用される。いくつかの実施形態では、1種以上のNAMPT阻害剤は、放射線療法(例えば、胸部放射線療法)を受けている癌患者などの、放射線療法(例えば、胸部放射線療法)を受けている被験体のRILIを治療するために使用される。いくつかの実施形態では、1種以上のNAMPT阻害剤は、例えば、原子力事故から、放射線(例えば、WTLI、TBI、又はPBI)に曝露された被験体のRILIを治療するために使用される。いくつかの実施形態では、1種以上のNAMPT阻害剤は、上に記載した診断方法によってRILIを有すると診断された被験体のRILIを治療するために使用される。例えば、上に記載した方法によって、放射線に曝露された被験体及び/又はRILIの発症リスクを有する被験体におけるNAMPTの発現を評価することができ、被験体がRILIを有すると診断されたなら、その被験体を1種以上のNAMPT阻害剤で治療することができる。本明細書に記載されるように、NAMPT阻害剤としてはNAMPTsiRNA、NAMPTリボザイム、NAMPT抗体、及び他のNAMPT結合タンパク質又はNAMPT転写産物の発現を阻害するタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。特に、抗NAMPT抗体は、被験体(例えば、胸部放射線療法を受けている被験体(例えば、癌患者)、又は、例えば、原子力事故からのIRに曝露された被験体)のRILIを治療するために(例えば、NAMPT阻害剤として)使用することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体の1つ以上の組織(例えば、肺組織、扁桃組織、胸部組織など)及び/又は血漿におけるNAMPTの発現を減少させることができる。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体の1つ以上の組織(例えば、肺組織、扁桃組織、胸部組織など)における炎症を減少させることができる(例えば、IL-1、IL-6、IL-12、IL-18、TNF、IFN-ガンマなどの1つ以上の炎症誘発性サイトカインの発現を減少させることができる)。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、対象の1つ以上の組織(例えば、肺組織、扁桃組織、胸部組織など)におけるNFκBの活性化を減少させることができる(例えば、NFκBのリン酸化を減少させることができる)。いくつかの実施形態では、対象のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体の肺障害を減少させることができる。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体における肺線維症(放射線誘発肺線維症(RILF)など)を減少させることができる。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体の肺組織のコラーゲン沈着を減少させることができる。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体の肺組織の平滑筋アクチン(SMA)の発現を減少させることができる。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体の肺組織の筋線維芽細胞転換及び/又は線維化を減少させることができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体に非経口又は経口投与することができる。いくつかの実施形態では、被験体のRILIを治療するために使用することができるNAMPT阻害剤(例えば、ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体などの抗NAMPT抗体)は、被験体に静脈内投与することができる。
【0144】
核酸
RILIの診断、治療、及び予防への応用に使用するための、NAMPT配列に関連するポリヌクレオチド又は核酸分子が、本明細書において開示される。特定の実施形態では、本開示は、ストリンジェントな、又は高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのNAMPT配列の過剰発現の検出に基づいてRILIを診断するために使用することができる核酸に関する。他の実施形態では、本開示は特に、RILIの予防又は治療のためのNAMPT阻害剤として働く核酸に関する。本明細書に開示される核酸又はポリヌクレオチドは、DNA又はRNAであり得、特定の実施形態では、それらはオリゴヌクレオチド(100残基以下)であり得る。さらに、これらは、組換え又は合成で生成され得る。これらのポリヌクレオチド又は核酸分子は、細胞から単離及び精製可能であり得るか、又は合成で生成され得る。いくつかの実施形態では、NAMPTをコードする核酸は、NAMPT発現のレベルを低下させるリボザイム又はsiRNAなどの核酸NAMPT阻害剤の標的である。
【0145】
NAMPTにハイブリダイズする核酸分子は、NAMPT配列の以下の長さの、又は少なくとも以下の長さのヌクレオチド、ヌクレオシド又は塩基対に相補的な連続する核酸配列を含み得る:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6900、7000、7100、7200、7300、7400、7500、7600、7700、7800、7900、8000、8100、8200、8300、8400、8500、8600、8700、8800、8900、9000、9100、9200、9300、9400、9500、9600、9700、9800、9900、10000、10100、10200、10300、10400、10500、10600、10700、10800、10900、11000、11100、11200、11300、11400、11500、11600、11700、11800、11900、12000又はそれ以上(又は、それらから導き出せる任意の範囲)。このような配列は、配列番号1と同一又は相補的であり得る。
【0146】
従って、配列番号1の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、又は5000の連続する塩基(又は、それらから導き出せる任意の範囲)の核酸配列に相補的な、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%、及びそれらから導き出せる任意の範囲の核酸が有する、又は少なくとも若しくは多くとも有する配列が、本開示の一部として意図されている。それらは、本明細書に記載される方法に使用するためのNAMPT阻害剤として、又は検出プローブ若しくはプライマーとして使用され得る。
【0147】
siRNAを含むアンチセンス配列
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される核酸は、アンチセンス構築物をコードし得る。アンチセンス法は、核酸が相補的配列と対合する傾向があるという事実を利用する。相補的とは、ポリヌクレオチドが標準的なワトソン-クリック相補性ルールに従って塩基対を形成できるものであることを意味する。ハイブリダイズする配列に一般的ではない塩基、例えば、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチンなどが含まれても、対の形成は妨げられない。
【0148】
アンチセンスポリヌクレオチドは、標的細胞に導入されると、それらの標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し、転写、RNAプロセシング、輸送、翻訳、及び/又は安定性を妨げる。アンチセンスRNA構築物、又はこのようなアンチセンスRNAをコードするDNAは、インビトロ又はインビボで、宿主細胞内、例えば、ヒト被験体を含む宿主動物内で、遺伝子の転写若しくは翻訳又はその両方を阻害するために使用され得る。
【0149】
アンチセンス構築物は、遺伝子のプロモーター及びその他の制御領域、エクソン、イントロン、又はエクソン-イントロンの境界領域にも結合するよう設計され得る。最も効果的なアンチセンス構築物はイントロン-エクソンのスプライス部位に相補的な領域を含むと考えられる。従って、好ましい実施形態は、イントロン-エクソンのスプライス部位の50~200塩基内の領域に対する相補性を有するアンチセンス構築物を含むことを提示する。いくつかのエクソン配列は、その標的選択性に重大な影響を及ぼすことなく構築物に含まれ得ることが観察された。含まれるエクソン要素の量は、使用される特定のエクソン及びイントロンの配列によって変化し得る。過剰なエクソンDNAが含まれるかどうかは、単に、インビトロでその構築物を試験して、正常な細胞機能が影響を受けるかどうか、又は相補的配列を有する関連遺伝子の発現が影響を受けるかどうかを決定することによって、容易に試験することができる。
【0150】
相補的又はアンチセンスポリヌクレオチド配列は、その全長にわたって実質的に相補的であり、塩基ミスマッチはほとんどない。例えば、15塩基長の配列は、それらが13か所又は14か所で相補的なヌクレオチドを有する場合に相補的であると称され得る。当然ながら、完全に相補的な配列とは、全長にわたって完全に相補的であり、塩基ミスマッチのない配列である。相同性の程度の低い他の配列もまた意図される。例えば、限られた高相同領域を有するが、非相同領域も含むアンチセンス構築物(例えば、リボザイム;以下を参照)が設計され得る。これらの分子は、相同性が50%未満であるが、適切な条件下で標的配列に結合し得る。特定の構築物を作製するために、ゲノムDNAの一部をcDNA又は合成配列と結合させることは有利であり得る。例えば、最終構築物にイントロンが望まれる場合、ゲノムクローンを使用する必要があろう。cDNA又は合成ポリヌクレオチドは、構築物の残存部分により都合の良い制限部位を提供することができ、従って、それらは配列の残りの部分に使用されよう。
【0151】
特定の実施形態では、核酸は、干渉RNA又はsiRNAをコードする。RNA干渉(RNA媒介干渉又はRNAiとも呼ばれる)は、遺伝子発現を減少又はなくすことができるメカニズムである。二本鎖RNA(dsRNA)は減少を媒介することが観察されており、これは多段階プロセスである。dsRNAは、ウイルス感染及びトランスポゾン活性から細胞を防御するように機能すると思われる転写後遺伝子発現サーベイランス機構を活性化する(Fire et al.,1998;Grishok et al.,2000;Kettingら、1999;Lin及びAvery、1999;Montgomery et al.,1998;Sharp and Zamore,2000;Tabara et al.,1999)。これらの機構の活性化は、成熟したdsRNAに相補的なmRNAを破壊の標的とする。RNAiの利点には、非常に高い特異性、細胞膜透過の容易さ、及び標的遺伝子の長期のダウンレギュレーションが含まれる。さらに、dsRNAは、植物、原生動物、真菌、C.エレガンス(C.elegans)、トリパノソーマ属(Trypanasoma)、ショウジョウバエ属(Drosophila)、及び哺乳動物を含む広範な系で遺伝子の発現を抑制することが示されている。RNAiは、転写後に作用し、RNA転写物を標的とし、分解させると一般に理解されている。核RNA及び細胞質RNAの両方が標的とされ得るようである(Bosher and Labouesse,2000)。
【0152】
siRNAは、目的遺伝子の発現を抑制するのに特異的で且つ効果的であるように設計されている。標的配列、すなわち目的の遺伝子又は遺伝子群に存在し、siRNAがそれに対して分解機構を誘導する配列を選択する方法は、その遺伝子又は遺伝子群に特異的な配列を含みつつも、siRNAの誘導機能を妨げ得る配列を回避するように進められる。通常、約21~23ヌクレオチド長のsiRNA標的配列が最も効果的である。この長さは、上記のようにはるかに長いRNAのプロセシングから生じる消化産物の長さを反映する(Montgomery et al.,1998)。siRNAの作製は、主に直接化学合成によって、又はS2細胞に由来するインビトロ系によって行われてきた。化学合成は、2つの一本鎖RNAオリゴマーを作製し、続いて2つの一本鎖オリゴマーを二本鎖RNAにアニーリングすることによって進行する。化学合成の方法は多様である。非限定的な例は、米国特許第5,889,136号明細書、同第4,415,723号明細書及び同第4,458,066号明細書(これらは参照により本明細書に明示的に組み込まれる)、並びにWincott et al.(1995)に示されている。
【0153】
安定性を変化させるため、又は有効性を高めるために、siRNA配列に対しいくつかのさらなる変更を加えることが示唆されている。ジヌクレオチドオーバーハングを有する合成の相補的21マーRNA(すなわち、19個の相補的ヌクレオチド+3’非相補的二量体)は最も高い抑制レベルを提供し得ることが示差されている。これらのプロトコルは、主として、ジヌクレオチドオーバーハングとして2つの(2’-デオキシ)チミジンヌクレオチドの配列を使用する。これらのジヌクレオチドオーバーハングは、RNAに組み込まれた典型的なヌクレオチドと区別するために、しばしばdTaTと表記される。文献は、dTオーバーハングの使用が、主としてRNAの化学合成の費用を減らす必要性に端を発するものであることを示している。また、利用可能なデータは、UUオーバーハングを有するsiRNAと比較して、dTdTオーバーハングのわずかな(<20%)改善しか示さないが、dTaTオーバーハングはUUオーバーハングよりも安定であり得ることが示唆されている。
【0154】
いくつかの実施形態では、本開示は、特定のRNA配列が破壊されるプロセスであるRNA干渉を誘発することができるsiRNAを提供する。siRNAは、100塩基長以下である(又は、その相補性領域において100以下の塩基対を有する)dsRNA分子である。場合によっては、それは2ヌクレオチドの3’オーバーハング及び5’リン酸を有する。特定のRNA配列は、dsRNAと特定のRNA配列との間の相補性の結果として標的化される。本開示のdsRNA又はsiRNAが細胞中の標的RNAの発現の少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上の減少をもたらすことができることは理解されるであろう。本明細書に記載のdsRNA(「dsRNA」という用語は、「siRNA」を含むと理解される)は、RNAiを誘発する能力のために、アンチセンス及びリボザイム分子とは異なっており、区別することができる。構造的に、RNAiのためのdsRNA分子は、dsRNAがRNA分子内に少なくとも1つの相補性領域を有するという点で、アンチセンス及びリボザイム分子とは異なる。相補性(complementary)(「相補性(complementarity)」)領域は、本明細書に開示の配列(又は、その相補体)に対し、少なくとも又は多くとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、若しくは1000個の連続する塩基、又はそれらから導き出せる任意の範囲を含む。いくつかの実施形態では、配列は配列番号1である。いくつかの実施形態では、長いdsRNAが使用されるが、ここで、「長い」とは、1000塩基以上(又は相補性領域において1000塩基対以上)であるdsRNAを指す。用語「dsRNA」には、別段の指示がない限り、「長いdsRNA」及び「中間のdsRNA」が含まれる。いくつかの実施形態では、dsRNAは、siRNA、長いdsRNA、及び/又は「中間の」dsRNA(相補性領域において100~1000塩基又は塩基対の長さ)の使用を排除することができる。dsRNAは、一方の鎖が他方の鎖の領域に相補的な少なくとも1つの領域を有する2つの別個のRNA鎖を有する分子であり得ることが特に意図される。或いは、dsRNAは、一本鎖であるが、上記のように少なくとも1つの相補性領域を有する分子を含み(Sui et al.,2002及びBrummelkamp et al.,2002を参照)、ヘアピンループを有する一本鎖がRNAi用のdsRNAとして使用される。便宜上、dsRNAの長さは、塩基(これは単に一本鎖の長さを指す)又は塩基対(これは相補性領域の長さを指す)を基準に言及され得る。特に、2本鎖からなるdsRNAに関して本明細書で論じられる実施形態は、一本鎖からなるdsRNAに関して使用することが意図され、その逆もまた同様であることが意図される。2本鎖dsRNA分子において、標的mRNAに相補的な配列を有する鎖をアンチセンス鎖と呼び、標的mRNAと同一の配列を有する鎖をセンス鎖と呼ぶ。同様に、一本鎖のみを含むdsRNAでは、アンチセンス領域は標的mRNAに相補的な配列を有し、センス領域は標的mRNAと同一の配列を有すると考えられる。さらに、センス及びアンチセンス領域は、センス鎖及びアンチセンス鎖と同様に、互いに相補的である(すなわち、特異的にハイブリダイズし得る)ことは理解されよう。
【0155】
dsRNA分子の単一RNA鎖又は2本の相補的二本鎖は、少なくとも以下の長さ又は多くとも以下の長さであり得る:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6900、7000、7100、7200、7300、7400、7500、7600、7700、7800、7900、8000、8100、8200、8300、8400、8500、8600、8700、8800、8900、9000、9100、9200、9300、9400、9500、9600、9700、9800、9900、10000又はそれ以上(ポリA鎖のない完全長の特定の遺伝子のmRNAを含む)の塩基又は塩基対。dsRNAが2本の別個の鎖から構成される場合、2つの鎖は同じ長さであっても異なる長さであってもよい。dsRNAが一本鎖の場合、鎖は、相補領域に加えて、一方若しくは両方の末端(5’及び/若しくは3’)に、又は相補領域間のヘアピンループを形成するものとして、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個又はそれ以上の塩基を有し得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、dsRNAの1本又は複数本の鎖は100塩基(又は塩基対)以下であり、この場合、それらはsiRNAとも呼ばれ得る。特定の実施形態では、dsRNAの1本又は複数本の鎖は、長さが70塩基未満である。これらの実施形態に関して、1本又は複数本のdsRNA鎖は、長さが5~70、10~65、20~60、30~55、40~50の塩基又は塩基対であり得る。30塩基対以下の相補領域を有するdsRNA(例えば、ステム又は相補部分が30塩基対以下である一本鎖ヘアピンRNA)、又は鎖が30塩基長以下であるdsRNAは、このような分子は、哺乳動物細胞の抗ウイルス応答を回避するので、特に意図される。従って、ヘアピンdsRNA(1本鎖)は、30塩基対以下の相補領域を有する70以下の塩基長であり得る。場合によっては、dsRNAは、細胞内でsiRNAにプロセシングされ得る。
【0157】
化学合成されたsiRNAは、それらが25~100nMの濃度で細胞培養物中に存在する場合に最適に作用することがわかっているが、哺乳動物細胞においては、約100nMの濃度が効果的な発現抑制を達成した。SiRNAは、哺乳動物細胞培養物において、約100nMで最も効果的であった。しかしながら、いくつかの例では、より低濃度の化学的に合成されたsiRNAが使用されている(Caplen et al.,2000;Elbashir et al.,2001)。国際公開第99/32619号パンフレット及び国際公開第01/68836号パンフレットは、siRNAに使用するためのRNAは化学的に又は酵素により合成され得ることを示唆している。これらの文献はいずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。意図された構築物は、標的遺伝子の一部と同一のヌクレオチド配列を含有するRNAを生成するテンプレートを提供する。通常、提供される同一配列の長さは少なくとも25塩基であり、400塩基以上の長さであり得る。長いdsRNAは、インビボで長いdsRNAをsiRNAに変換する内因性ヌクレアーゼ複合体で21~25マーの長さに消化され得る。RNA干渉において使用する上で、化学的に又は酵素により合成されたdsRNAの予想される特性について区別はされていない。
【0158】
同様に、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第00/44914パンフレットには、RNAの一本鎖が酵素、又は部分/全有機合成によって生成され得ることが示唆されている。米国特許第5,795,715号明細書は、単一の反応混合物における2つの相補的DNA配列鎖の同時転写を報告している。ここで、2つの転写物は直ちにハイブリダイズされる。
【0159】
ベクター
治療用又は予防用NAMPT阻害剤で細胞を形質転換し、従って真核生物プロモーター(すなわち、構成的、誘導性、抑制性、組織特異的)の制御下でNAMPT阻害剤核酸配列をコードするように主に設計されたベクターも本明細書に記載されている。ベクターは、また、他の理由がなくとも、インビトロでのそれらの操作を容易にする選択マーカーを含み得る。しかしながら、選択マーカーは組換え細胞の生産に重要な役割を果たし得る。
【0160】
真核生物細胞において蛋白質をコードする遺伝子の転写を制御するプロモーター及びエンハンサーは、多数の遺伝子エレメントから構成される。細胞機構は、各エレメントによって伝達される調節情報を集め、統合することができ、異なる遺伝子が区別できるがしばしば複雑な転写調節のパターンを発生するのを可能にする。
【0161】
本明細書に記載の方法において使用するプロモーターは、いくつかの実施形態では、サイトメガロウイルス(CMV)最初期(IE)プロモーターである。このプロモーターは、INVITROGENから、ベクターpcDNAIIIに含まれて市販されており、本明細書に記載の方法において使用することができる。他のウイルスプロモーター、細胞プロモーター/エンハンサー、及び誘導性プロモーター/エンハンサーを、本明細書に記載に方法において使用し得る。さらに、任意のプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(真核生物プロモーターデータベースEPDBによる)もまた、目的の核酸の発現を駆動するために使用することができる。
【0162】
有用であると判明され得る別のシグナルは、ポリアデニル化シグナルである。このようなシグナルは、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子、ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子、又はSV40から得ることができる。
【0163】
内部リボソーム結合部位(IRES)エレメントは、多重遺伝子、又はポリシストロン性メッセージを作製するために使用することができる。IRESエレメントは、5-メチル化キャップ依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回して、内部の部位で翻訳を開始することができる(Pelletier and Sonenberg,1988)。ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオ及び脳心筋炎)由来のIRESエレメント(Pelletier and Sonenberg,1988)、並びに哺乳動物メッセージ由来のIRES(Macejak and Sarnow,1991)が記載されている。IRESエレメントは、異種のオープンリーディングフレームに連結させることができる。複数のオープンリーディングフレームを、IRESによって各々を隔てて、一緒に転写させることができ、ポリシストロン性メッセージが作製される。IRESエレメントによって、各オープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のために、リボソームに接近することができる。複数の遺伝子が、単一のメッセージを転写する単一のプロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現され得る。
【0164】
いずれにせよ、プロモーターは、遺伝子の上流に機能的に位置した場合に、その遺伝子の発現に導くDNAエレメントであることが理解されよう。本明細書に記載されるほとんどの導入遺伝子構築物は、プロモーターエレメントの下流に機能的に位置する。
【0165】
また、本明細書に開示される組成物(例えば、1種以上のNAMPT阻害剤を含有する組成物)を被験体(例えば、RILIを有する被験体)に投与するための方法が提供される。本明細書に記載される任意の核酸分子は、ベクター中に含まれ得る。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築する能力を十分に備えていよう。そのような組換え技術は、Sambrook et al.,2001及びAusubelet al.,et al.,1996に記載されており、これらのいずれの文献も参照により本明細書に組み込まれる。ベクターは、改変ゲロニンなどの改変ポリペプチドをコードすることに加えて、タグ又は標的分子などの非改変ポリペプチド配列をコードし得る。このような融合タンパク質をコードする有用なベクターとしては、plNベクター(Inouye et al.,1985)、ヒスチジンのストレッチをコードするベクター、並びに後の精製及び分離又は切断のためのグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質の生成に使用するためのpGEXベクターが挙げられる。標的化分子は、被験体の身体における特定の臓器、組織、細胞、又は他の位置へ改変ポリペプチドを向かわせるものである。
【0166】
ベクターは、核酸配列を、それが複製され得る細胞へ導入するために、挿入することができる、キャリア核酸分子である。核酸配列は外因性であり得、これは、その配列がベクターが導入される細胞に対して外来性であるか、又はその配列は細胞中の配列と相同であるが、その配列が通常見出されない宿主細胞の核酸内の位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)及び人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。発現ベクターは、転写され得る遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターである。場合によって、RNA分子は、その後、蛋白質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。発現ベクターは、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の転写及びおそらく翻訳に必要な核酸配列を指す、様々な制御配列を含有し得る。転写及び翻訳を調節する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、後述する、他の機能を果たす核酸配列も含有することができる。
【0167】
組換えDNAの送達のための1つの方法は、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルス発現ベクターは、(a)構築物のパッケージングを支持し、そして(b)そのベクター中にクローニングされた組換え遺伝子構築物を最終的に発現するのに十分なアデノウイルス配列を含有する構築物を含む。アデノウイルスベクターは複製欠損であっても、少なくとも条件付きの欠損であってよく、アデノウイルスベクターの性質は本開示の首尾のよい実施にさほど重要であるとは考えられない。アデノウイルスは、42の異なる既知の血清型又はサブグループA~Fのいずれであってもよい。サブグループCのアデノウイルス5型は、本明細書に開示の方法において使用するための条件付き複製欠損アデノウイルスベクターを得るためには適当な出発材料である。上記のように、本開示による代表的なベクターは、複製欠損性であり、アデノウイルスE1領域を有さない。E1コード配列が除去された位置に形質転換構築物を導入することが、最も都合がよいであろう。しかしながら、アデノウイルス配列内の構築物の挿入位置は、本開示の首尾のよい実施にはさほど重要ではない。目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドはまた、Karlssonら(1986)によって記載されるように、E3置換ベクターの欠失したE3領域の代わりに挿入されてもよいし、ヘルパー細胞株又はヘルパーウイルスがE4欠損を補完するE4領域に挿入されてもよい。
【0168】
レトロウイルスは、逆転写のプロセスによって、感染細胞内でそのRNAを二本鎖DNAに変換する能力を特徴とする一本鎖RNAウイルスの一群である(Coffin,1990)。レトロウイルスベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードする核酸を、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入して、複製欠陥性のウイルスを得る。ビリオンを生成するために、gag遺伝子、pol遺伝子及びenV遺伝子を含むが、LTR及びパッケージング成分を有さない、パッケージング細胞株を構築する(Mann et al.,1983)。cDNAを含む組換えプラスミドがレトロウイルスLTR及びパッケージング配列とともにこの細胞系に(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)導入すると、このパッケージング配列によって、組換えプラスミドのRNA転写物はウイルス粒子にパッケージングされることが可能になり、これが、次いで、培養培地中に分泌される(Nicolas and Rubenstein,1988:Temin,1986;Mann et al.,1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含有する培地を集め、任意に濃縮し、遺伝子導入のために用いる。このレトロウイルスベクターは、広く種々の細胞型に感染することができる。しかし、組み込み及び安定な発現には、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskind et al.,1975)。
【0169】
他のウイルスベクターとしては、アデノ随伴ウイルス(AAV)(米国特許第5,139,941号明細書及び米国特許第4,797,368号明細書に記載されており、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)、ワクシニアウイルス、他のポックスウイルス、レンチウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、及びピコルナウイルスが挙げられる。
【0170】
核酸のプロタミン送達
プロタミンを用いて、発現構築体との複合体を形成することもできる。このような複合体は、その後、細胞に投与するために、上記の脂質組成物とともに製剤化され得る。プロタミンは、DNAに関連する小さな強塩基性の核タンパク質である。核酸の送達におけるそれらの使用は、米国特許第5,187,260号明細書に記載されており、この文献は参照により組み込まれる。
【0171】
核酸送達のための脂質製剤
さらなる実施形態では、核酸は、リポソーム又は脂質製剤中に封入され得る。リポソームは、リン脂質二重膜及び内部水性媒体を特徴とする小胞構造である。多重層リポソームは、水性媒体によって分離された多数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると、自然に形成される。この脂質成分は、閉じた構造を形成する前に自己再構成を受けて、脂質二重層の間に水及び溶解した溶質を捕捉する(Ghosh and Bachhawat,1991)。また、LIPOFECTAMINE(GIBCO BRL)と複合化された遺伝子構築物も意図される。
【0172】
脂質製剤の進歩により、インビボでの遺伝子導入の効率が改善された(Smyth-Templeton et al.,1997;国際公開第98/07408号パンフレット)。等モル比の1.2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)とコレステロールから構成される新規の脂質製剤は、インビボにおける全身性の遺伝子導入を約150倍と大きく増強する。このDOTAP:コレステロール脂質製剤は、「サンドイッチリポソーム」と呼ばれる固有の構造を形成すると言われている。この製剤は、陥入した二重層又はつぼ(vase)構造の間にDNAを「サンドイッチ」することが報告されている。これらの脂質構造の有利な特徴としては、コレステロールによる陽性コロイド安定化、二次元のDNAパッキング及び血清安定性の増大が挙げられる。
【0173】
さらなる実施形態では、リポソームはナノ粒子としてさらに定義される。ナノ粒子は、サブミクロン粒子を指す。サブミクロン粒子は任意のサイズとすることができる。例えば、ナノ粒子は、約0.1、1、10、100、300、500、700、1000ナノメートル又はそれ以上の直径を有し得る。被験体に投与されるナノ粒子は、2以上のサイズとすることができる。当業者に知られる任意の方法を用いて、ナノ粒子を製造することができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は製造プロセスの間に押し出される。ナノ粒子の製造に関する情報は、米国特許出願公開第2005/0143336号明細書、米国特許出願公開第2003/0223938号明細書、米国特許出願公開第2003/0147966号明細書(本明細書において、これらの各文献は参照によりこのセクションに特に組み込まれる)に見出すことができる。
【0174】
特定の実施形態では、脂質:核酸複合体の投与による副次的な炎症を予防又は減少させるために、脂質とともに抗炎症剤が投与される。例えば、抗炎症剤は非ステロイド性抗炎症剤、サリチル酸塩、抗リウマチ剤、ステロイド、又は免疫抑制剤であり得る。
【0175】
DOTAP:Cholナノ粒子は、当業者に知られた任意の方法によって合成することができる。例えば、方法は、Chada et al.,2003、又はTempleton et al.,1997(これらの両文献は、参照により本明細書に特に援用される)に記載される方法に従うものであり得る。
【0176】
当業者であれば、核酸配列を封入するリポソーム又は脂質製剤の使用に精通しているであろう。リポソームは、リン脂質二重膜及び内部水性媒体を特徴とする小胞構造である。多重層リポソームは、水性媒体によって分離された多数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁された場合に自然に形成される。この脂質成分は、閉じた構造を形成する前に自己再構成を受けて、脂質二重層の間に水及び溶解した溶質を捕捉する(Ghosh and Bachhawat,1991)。また、LIPOFECTAMINE(GIBCO BRL)と複合化された遺伝子構築物も意図される。
【0177】
インビトロでの脂質媒介性核酸送達及び外来DNAの発現は非常に成功している(Nicolau and Sene、1982;Fraley et al.,1979;Nicolau et al.,1987)。Wongら(1980)は、培養されたニワトリ胚、HeLa細胞及び肝臓癌細胞における外来DNAの脂質媒介性送達及び発現の実現可能性を実証した。脂質をベースとした非ウイルス性製剤は、アデノウイルス遺伝子治療の代替物となる。多くの細胞培養研究が脂質ベースの非ウイルス性遺伝子導入を実証してきたが、脂質ベースの製剤による全身性の遺伝子送達は限られている。非ウイルス性の脂質ベースの遺伝子送達の主な限界は、非ウイルス性送達ビヒクルを含むカチオン性脂質の毒性である。リポソームのインビボでの毒性は、インビトロとインビボでの遺伝子導入の結果の間の矛盾を部分的に説明する。この矛盾したデータに寄与する別の要因は、血清タンパク質の有無におけるリポソーム安定性の相違である。リポソームと血清タンパク質との間の相互作用は、リポソームの安定性の特性に大きく影響する(Yang and Huang,1997)。カチオン性リポソームは、負に荷電した血清蛋白質を引き付け、それに結合する。血清蛋白質により被覆されたリポソームは、マクロファージによって溶解されるか又は取り込まれ、環境から除去される。現在のインビボリポソーム送達法は、循環におけるカチオン性脂質に関連する毒性及び安定性の問題を回避するために、皮下、皮内、腫瘍内又は頭蓋内注射を用いる。リポソームと血漿蛋白質の相互作用は、インビトロとインビボとの間の遺伝子導入効率の違いの原因である。
【0178】
脂質製剤の製造は、多くは、(I)逆相蒸発、(II)脱水-再水和(III)洗浄剤透析及び(IV)薄膜水和、の後のリポソーム混合物の超音波処理又は連続押出によって達成される。一旦製造されれば、脂質構造物を用いて、循環中で毒性(化学療法剤)又は不安定(核酸)である化合物をカプセル化することができる。リポソームのカプセル化によって、このような化合物について、より低い毒性及びより長い血清半減期が得られた(Gabizon et al.,1990)。特に過剰増殖性疾患を治療する方法において、従来の治療法を増強するか、又は新規な治療法を確立するために、脂質ベースの遺伝子導入戦略が多くの疾患の治療で用いられている。リポソームは、センダイウイルス(hemagglutinating virus)(HVJ)と複合体を形成することができる。これは、細胞膜との融合を容易にし、リポソームカプセル化DNAの細胞への侵入を促進することが示されている。他の実施形態では、リポソームは、核の非ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)と組み合わせて複合体化又は使用することができる。なおさらなる実施形態では、リポソームは、HVJ及びHMG-1の両方と組み合わせて複合体化又は使用することができる。
【0179】
非ウイルス送達のための核酸は、ポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム遠心分離勾配、カラムクロマトグラフィーで、又は当業者に知られた他の任意の手段によって精製することができる。特定の態様では、本発明は、単離された核酸である核酸に関する。本明細書で使用される場合、「単離された核酸」という用語は、細胞成分若しくはインビトロ反応成分のバルク、並びに/又は1つ以上の細胞の全ゲノム核酸及び転写された核酸のバルクを、単離されて含まないか、又はそうでなければ含まない、核酸分子(例えば、RNA分子又はDNA分子)を指す。核酸を単離する方法(例えば、平衡密度遠心法、電気泳動分離法、カラムクロマトグラフィー)は当業者に良く知られている。
【0180】
タンパク質及びポリペプチド
ポリペプチドであるNAMPT阻害剤もまた本明細書において開示される。特定の実施形態では、NAMPTポリペプチド阻害剤は、RILIの治療又は予防に使用される。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書において互換的に使用され、それらはいずれも、「ペプチド」(100以下のアミノ酸残基を有するポリペプチド分子)として理解されるものを包含する。特定の実施形態では、NAMPT阻害剤は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドであり、特定の実施形態では、NAMPT阻害剤は、抗体であるタンパク質又はポリペプチドである。
【0181】
当業者に理解されるように、修飾及び変化は、ポリペプチド又はペプチドNAMPT阻害剤の構造においてなされてもよく、類似の又は他の望ましい特性を有する分子をさらに生成してもよい。例えば、特定のアミノ酸を他のアミノ酸で置き換えることができ、また、構造との相互作用的結合能力を大きく失わずに、蛋白質配列の欠失、置換又は切除を行うことができる。タンパク質の生物学的機能活性を規定するのは、タンパク質の相互作用能力及び性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換は、タンパク質配列(又は、その基礎となるDNAコード配列)において行うことができ、それにもかかわらず、同様の阻害特性を有するタンパク質を得ることができる。従って、NAMPT阻害剤ポリペプチド又はペプチド(又は、基礎となるDNA)の配列において、それらの生物学的有用性又は活性を大きく損なうことなく、様々な変化をなし得ることが意図される。特定の残基がタンパク質又はペプチドの生物学的又は構造的特性に特に重要であることが示される場合(例えば、抗体の結合部位における残基)、このような残基は一般に交換できないこともまた、十分に理解される。
【0182】
アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。アミノ酸側鎖置換のサイズ、形状及びタイプを分析すると、アルギニン、リシン及びヒスチジンは全て、正に荷電した残基であり、アラニン、グリシン及びセリンは全て、同様のサイズであり、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは全てほぼ同様の形状を有することが明らかになる。従って、これらの考慮に基づいて、以下のサブセットを、本明細書において生物学的な機能の等価物として規定する:アルギニン、リシン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;並びにフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン。
【0183】
より定量的な変化を行うには、アミノ酸のハイドロパシーインデックスを考慮することができる。各アミノ酸には、その疎水性及び電荷の特性に基づいてハイドロパシーインデックスが割り当てられており、これらは以下のとおりである:イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リシン(-3.9)及びアルギニン(-4.5)。
【0184】
蛋白質に相互作用的生物学的機能を付与する上でのハイドロパシーアミノ酸インデックスの重要性は、当該技術分野において一般に理解されている(参照により本明細書に基見込まれる、Kyte&Doolittle,1982)。特定のアミノ酸を同様のハイドロパシーインデックス又はスコアを有する他のアミノ酸で置換しても、なお同様の生物学的活性が保持され得るということは知られている。ハイドロパシーインデックスに基づいて変化させる際には、ハイドロパシーインデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内である置換が特にいくらか好ましく、±0.5以内である置換がさらに特に好ましい。同様のアミノ酸の置換を親水性に基づいて効率的に行うことが、特に、それによって作製される生物学的機能的に等価なタンパク質又はペプチドが、本発明の場合のように、免疫学的実施形態での使用を意図する場合に、可能であることも、当該技術分野ではまた理解されている。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,554,101号明細書には、タンパク質の最大局所平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配される場合、その免疫原性及び抗原性、すなわちそのタンパク質の生物学的特性と相関すると記載されている。
【0185】
米国特許第4,554,101号明細書に詳述されているように。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)。
【0186】
類似の親水性値に基づいて変化させる際には、親水性値が+2、±1、又は±0.5の範囲内であるアミノ酸の置換が意図される。アミノ酸変化から生じる機能的に等価なポリペプチドを中心に考察してきたが、遺伝子コードが縮重しており、また2つ以上のコドンが同じアミノ酸をコードし得るということも考慮すれば、これらの変化は、コードするDNAの変化によって影響され得ることは認識されよう。
【0187】
インビトロにおけるタンパク質の生産
実施例に提示する精製方法に加えて、インビトロにおけるタンパク質の生産のための一般的手法を説明する。本開示のいくつかの実施形態によるウイルスベクターを用いた形質導入後、初代哺乳動物細胞培養物を、種々の方法で調製し得る。細胞をインビトロで発現構築物と接触させたまま生存を維持するためには、この細胞が、正しい比率の酸素及び二酸化炭素並びに栄養素との接触を維持し、但し微生物汚染からは保護されることを確保する必要がある。細胞培養技術は詳細に説明されており、参照により本明細書に開示する(Freshney,1992)。
【0188】
前述の1つの実施形態は、タンパク質の生産及び/又は提示のために細胞を不死化するための遺伝子導入の使用を含む。目的タンパク質についての遺伝子を上記したように適当な宿主細胞に導入し、続いて適当な条件下で細胞を培養することができる。実質的に任意のポリペプチドについての遺伝子をこのようにして使用することができる。組換え発現ベクター、及びその中に含まれるエレメントの作成は先に説明した。或いは、生成するタンパク質は、問題となっている細胞によって通常合成される内因性タンパク質であってもよい。
【0189】
本開示の別の実施形態では、自己Bリンパ球細胞株を使用し、これを、免疫遺伝子産物、より具体的には免疫原性活性を有するタンパク質、を発現するウイルスベクターでトランスフェクトする。哺乳動物細胞株の他の例としては、Vero細胞及びHeLa細胞、他のB細胞株及びT細胞株、例えば、CEM、721.221、H9、Jurkat、Rajiなど、並びにチャイニーズハムスター卵巣の細胞株、W138細胞、BHK細胞、COS-7細胞、293細胞、HepG2細胞、3T3細胞、RIN細胞及びMDCK細胞が挙げられる。さらに、挿入された配列の発現を調節する、又は所望される方法で遺伝子産物を修飾しプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)はタンパク質の機能で重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後のプロセシング及び修飾のための特徴的で特異的な機構を有している。発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするために、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。
【0190】
以下に限定されるものではないが、それぞれtha細胞、hgprt細胞又はaprt細胞における、HSVチミジンキナーゼ遺伝子、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含む多くの選択系を使用することができる。また、選択の基礎として抗代謝産物抵抗性を使用することができる:dhfrはピリメタミンに対する抵抗性を付与し、gptはミコフェノール酸に対する耐性を付与し、neoはアミノグリコシドG418に対する耐性を付与し、hygroはハイグロマイシンに対する抵抗性を付与する。
【0191】
動物細胞をインビトロにおいて、2つの態様で、すなわち、培養のバルク全体にわたって懸濁液中で増殖する非足場依存性細胞として、又はそれらの増殖用の固体基質への付着を必要とする足場依存性細胞として(すなわち、単層タイプの細胞増殖)増殖させることができる。連続的に樹立された細胞株からの非足場依存性培養又は懸濁培養は、細胞及び細胞産物の大規模生産の最も広範に使用されている手段である。しかし、懸濁培養細胞は、接着細胞よりも腫瘍形成能があり、タンパク質産生が低いなどの限界がある。
【0192】
抗体産生
本開示のいくつかの実施形態は、NAMPTの阻害剤を含む方法及び組成物に関し、その阻害剤は、NAMPTに結合する抗体である。
【0193】
モノクローナル抗体を生成するための任意の好適な方法を使用し得る。例えば、レシピエントは、NAMPT又はそのフラグメントで免疫が付与され得る。任意の好適な免疫付与方法を使用し得る。このような方法は、アジュバント、他の免疫賦活薬、繰り返しの追加免疫、及び1つ以上の免疫化経路の使用を含むことができる。
【0194】
NAMPTの任意の好適な供給源を、本明細書に開示する組成物及び方法の非ヒト抗体を生成するための免疫原として使用することができる。このような形態としては、当該技術分野で知られる組換え、合成、化学又は酵素による分解手段によって作られた全タンパク質、ペプチド及びエピトープが挙げられるが、これらに限定されない。任意の形態の抗原を用いて、生物学的に活性な抗体を生成するのに十分な抗体を生成することができる。従って、誘導抗原は、単独若しくは当該技術分野で知られる1つ以上の免疫原性増強剤と組み合わせた、単一のエピトープ、複数のエピトープ、又は全タンパク質であってよい。誘導抗原は、単離された完全長タンパク質、(例えば、抗原の少なくとも一部でトランスフェクトされた細胞で免疫化する)細胞表面タンパク質、又は(例えば、タンパク質の細胞外ドメイン部分のみで免疫化する)可溶性タンパク質であってよい。抗原は、遺伝子操作された細胞で産生され得る。抗原をコードするDNAはゲノムDNAであっても非ゲノムDNA(例えば、cDNA)であってもよく、細胞外ドメインの少なくとも一部をコードする。本明細書で使用される場合、「部分」という用語は、目的抗原の免疫原性エピトープを構成する最小数の(場合に応じ)アミノ酸又は核酸を指す。目的細胞の形質転換に好適な任意の遺伝子ベクター、例えば、以下に限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、プラスミド、及びカチオン性脂質などの非ウイルス性ベクターを用いることができる。
【実施例
【0195】
本明細書には、RILIのバイオマーカー及び治療標的としてNAMPTを評価するインビトロ及びインビボ試験が記載されている。以下の実施例は、例示のみを目的として含まれ、限定することを意図しない。
【0196】
実施例1.RILIにおけるNAMPTの役割の探求
RILIにおける炎症カスケードの重要な役割を考慮して、TLR4リガンドであり、損傷関連分子パターンタンパク質である、NAMPTの発現に対する放射線照射の影響を探求した。3群のC57/B6マウスを用いて、RILIにおけるNAMPTの役割を評価した。
【0197】
第1群は、単一線量の胸部放射線照射(20Gy)を受ける野生型(WT)マウスからなった。0.1mg/kgのLPSで処置したマウスを陽性対照とし、非照射マウスを陰性対照(「対照」)とした。18週にわたり特定の時点で、マウスから肺組織を採取した。気管支肺胞洗浄(BAL)タンパク質とサイトカインの量を測定し、細胞数/差次を得、肺組織中におけるNAMPT発現をRT-PCRにより評価した。また肺組織を、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)及びNAMPT染色に供した。さらに、血漿中のNAMPT発現を測定するために、マウスから血液を採取した。対応する分析の結果を図1~7に示す。
【0198】
図1に示すように、対照マウスと比較して、放射線に暴露したマウスは、BALタンパク質レベルの有意な増加(p=0.007)を示し、これは放射線曝露後1週目に始まり、18週の期間全体にわたって継続し、18週目に最大の増加が観察された(6倍)。同様に、図2に示すように、BAL発現細胞(BAL細胞)の数は、照射に暴露されたマウスにおいて有意に増加し(p=0.007)、12週目に最大の増加が観察された(9倍)。図3に示すように、BAL細胞の増加は、放射線曝露後1、12、及び18週目に、BALを発現するマクロファージ(BALマクロファージ;p=0.01)の数の増加(図3A)及びBALを発現するPMN(BAL PMN;p=0.005)(図3B)の数の増加を主に反映した。放射線曝露から1週後のマウスのRILIの発症は、非照射対照からの肺組織と比較して、急性びまん性肺胞損傷を示した肺組織のH&E染色によって確認された(図4)。図5に示すように、NAMPTの発現の増加は、非照射対照の肺組織(図5A、左パネル)と比較して、放射線曝露の1週後に照射マウスの肺組織で観察された(図5A、右パネル;図5B)。照射された肺組織でのNAMPTの発現増加は、RT-PCR分析によりさらに確認された。図6に示すように、NAMPT mRNAの発現は、放射線曝露の1週後で肺組織において増加した(1.4倍)。照射された肺組織におけるNAMPT mRNA発現の増加は、12週目まで持続し、その後、低下した(データは示さず)。さらに、図7に示すように、20Gyの放射線は、早くも放射線曝露後8時間で血漿中のNAMPTレベルを増加させた;血漿中のNAMPTレベルは、放射線曝露後1週で有意に(p<0.05)増加し(1.5倍)、2週目に最大の増加(2.4倍)を観察した。
【0199】
第2の群は、20Gyの胸部放射線照射を受けた、NAMPTヘテロ接合体(Nampt+/-;「Nampt het」)マウスからなり、4週間観察した。非照射のWT及びNAMPTヘテロ接合体マウス、並びに照射WTマウスを対照として用いた。4週後にマウスから肺組織を採取し、肺組織中のBALタンパク質の量を測定した。対応する分析の結果を図8に示す。
【0200】
図8に示すように、BALタンパク質は、放射線曝露後4週で、非照射対照と比較して、WTマウスで有意に増加した。しかしながら、NAMPT(+/-)マウスは、照射WT対照と比較して、4週でBALタンパク質レベルの有意な減少(約20%の減少)とともに、RILIの減少(BAL指数、H&E染色)を示したが、全BAL細胞数の変化は観察されなかった。
【0201】
第3の群は、20Gy胸部放射線照射を受け、ポリクローナルNAMPT中和抗体(pAb)(3×/週)又はPBS(「ビヒクル」)を腹腔内に注射された照射マウスからなった。4週後にマウスから肺組織を採取した。BALタンパク質の量を測定し、細胞数/差次を求め、肺組織でのNAMPT発現をRT-PCRにより評価した。さらに、マウスから血液を採取し、血漿中のNAMPT発現を測定した。対応する分析の結果を図9~13に示す。
【0202】
図9及び10に示すように、NAMPT中和pAbで処置されたマウスは、ビヒクル処置照射マウスと比較して、4週でRILIの減少を示し、BALタンパク質レベル(図9)及び全BAL細胞(図10)は40%~60%減少した。NAMPT中和pAbによる処置後のBAL細胞の減少は、主に、放射線暴露後4週でのBAL PMN数の減少(図11、左パネル)及びBAL発現リンパ球数の減少(BAL-リンパ球;図11、右パネル)を反映したものであった。さらに、図12に示すように、NAMPT中和pAbで処置した照射マウスの肺組織では、ビヒクル処置対照と比較して、NAMPT mRNA発現レベルの11%の減少が観察された。また、図13に示すように、血漿中のNAMPTのレベルは、ビヒクル処置対照と比較して、NAMPT中和pAbで処置した照射マウスにおいて約36%減少した。
【0203】
従って、図1~13に概略を示した結果は、RILIのNAMPTの発現及び分泌の調節異常を明確に示している。これらの知見は、NAMPTがRILIにおける新規のバイオマーカー及び治療標的であり、肺組織における放射線誘発障害の病理生物学に寄与することを示している。
【0204】
実施例2.ヒト組織及び血液中のNAMPT発現に及ぼす放射線照射の影響
RILIにおけるNAMPTの役割をさらに探求するために、ヒト組織及び血液におけるNAMPTの発現に及ぼす放射線照射の影響を探求した。結果を図14に示す。
【0205】
NAMPT発現に及ぼす放射線の影響を評価するために、ヒト扁桃腺上皮組織を8Gyの電離放射線(IR)に24時間曝露した。図14Aに示すように、ヒト扁桃腺組織におけるNAMPT発現は、8GyのIR曝露後に急速且つ顕著に増加した。放射線療法を受けている癌患者のNAMPT発現を試験することにより、NAMPT発現に及ぼす放射線の影響をさらに評価した。図14Bに示すように、乳癌(n=50)又は肺癌(n=34)のための放射線療法を受けている被験体は、対照被験体(n=268)と比較して、NAMPTの血漿中レベルが有意に増加した(p<0.0001)。また、放射線肺炎の患者のNAMPT発現を試験することにより、NAMPT発現に及ぼす放射線の影響を評価した。これらの被験体は、放射線療法開始後、平均6週でRILIを発症した肺癌又は食道癌に対して放射線療法を受けていた。図14Cに示すように、放射線肺炎患者(n=19)は、対照被験体(n=70)よりも4~5倍高いNAMPT血漿中レベルを示した(p<0.001)。NAMPT発現に及ぼす放射線の影響を、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者でのNAMPT発現を試験することによりさらに評価した。図14Dに示すように、ARDS患者(n=338)は、対照被験体(n=245)よりも4~5倍高いNAMPTの血漿中レベルを示した。
【0206】
このように、図14に概略を示した結果は、ヒトRILIにおけるNAMPTの発現及び分泌の調節異常を明確に示している。
【0207】
実施例3.放射線肺炎のインビボモデルを用いたRILIにおけるNAMPTの役割の評価
RILIにおけるNAMPTの役割をさらに評価するために、WT C57/B6マウスとNAMPTヘテロ接合体マウス(Nampt+/-)に20Gyの全胸部肺照射(WTLI)を行い、18週にわたって特定の時点で評価した。結果を図15及び16に示す。
【0208】
図15A~15Cに示すように、WTLI曝露WTマウスは、偽曝露マウス(非照射マウス;挿入図に示す)と比較して、20GyのWTLIの4週後(図15A)、12週後(図15B)及び18週後(図15C)に、特に肺胞マクロファージ及び上皮細胞におけるNAMPT発現の増加、並びに炎症、血管漏出及び炎症性肺障害の増加を示した。図15Dに、IR曝露の4週後、12週後、及び18週後の肺組織におけるNAMPT染色を要約する;偽曝露マウス(非照射マウス)は陰性対照として使用した。一方、NAMPTヘテロ接合体マウス(Nampt+/-)は、20GyのWTLI曝露の4週後におけるNAMPTヘテロ接合体マウスのBALタンパク質レベル(図16A)及びBAL細胞数(図16B)の減少に反映されるように、WTマウスと比較して炎症性肺障害の減少を示した。
【0209】
このように、図15及び16に示す結果は、RILI発症におけるNAMPTの重要な役割を強調し、RILIのバイオマーカーとしてNAMPTを使用する可能性を示す。
【0210】
実施例4.放射線肺炎のインビボモデルを用いたRILIの治療標的としてのNAMPTの検証
RILIの治療標的としてNAMPTを検証するために、実施例3に記載したように、WT C57/B6マウス及びNAMPTヘテロ接合体マウス(Nampt+/-)を、20GyのWTLI(RILIマウス)又は偽IR(非放射マウス)に曝露した。WTマウスに、50μgの抗NAMPT pAb又はビヒクル対照を3×/週で腹腔内注射した。IR曝露から4週後、マウスの肺障害及び炎症、BALタンパク質レベル、BAL細胞数、並びにNAMPTの血漿中レベルを評価した。結果を図17に記載する。
【0211】
偽IR曝露マウス(挿入図に示す)と比較して、WTLI曝露WTマウス由来の肺組織のH&E染色では、肺障害及び炎症の顕著な増加が示された(図17A)。対照的に、20GyのIRに曝露されたNAMPTヘテロ接合体マウスでは、障害が大きく減少した(図17B)。抗NAMPT pAbを注射されたマウスでも、肺障害の大幅な減少が観察された(図17C)。抗NAMPT抗体での処置によるIR誘発損傷の減少は、抗NAMPT pAbを注射されたマウスにおけるBALタンパク質レベル(図17D、左パネル)及びBAL細胞数(図17D、右パネル)の減少にも反映された。抗NAMPT抗体はまた、IR曝露の4週後のIR曝露マウスからの血液中のNAMPTレベルを減少させた(図17E)。
【0212】
このように、図17に記載された結果は、WTLI誘発性の放射線肺炎及び肺障害の改善における抗NAMPT抗体の役割を強調し、RILIの治療標的としてのNAMPTを実証するものである。
【0213】
実施例5.放射線誘発肺線維症のインビボモデルを用いたRILIの治療標的としてのNAMPTの検証
RILIの治療標的としてNAMPTをさらに検証するために、WT C57/B6マウス及びNAMPTヘテロ接合体マウス(Nampt+/-)を、実施例3に記載のように20GyのWTLIに曝露した。WTマウスに、実施例4に記載のように、50μgの抗NAMPT pAb又はビヒクル対照を3×/週で腹腔内注射した。マウスの炎症、コラーゲン沈着、及び筋線維芽細胞移行と線維症の反映である肺組織平滑筋アクチン(SMA)の発現を評価することにより、放射線誘発肺線維症(RILF)について評価した。結果を図18に記載する。
【0214】
図18に示すように、20Gy IRは12週及び18週にRILFを誘発し、これは、炎症の増加(肺組織のH&E染色(図18Aに示す)、及びウエスタンブロット解析でのIL-6の発現の増加(図18Eに示す))、コラーゲン沈着の増加(肺組織のトリクローム染色で検出(図18Cに示す))、及び肺組織SMAの発現の増加(ウエスタンブロット解析で検出(図18Eに示す))に反映された。抗NAMPT pAbは、12週及び18週のIR誘発障害を大きく減少させ、これは、炎症の減少(肺組織のH&E染色(図18Bに示す))、及び肺組織SMAの発現の減少(ウエスタンブロット解析(図18Eに示す))に反映された。同様に、Nampt+/-遺伝子型の保護作用は、トリクローム染色の減少(18週)(図18D)、並びにIR曝露から12週後の肺組織中のSMA及びIL-6のレベルの低下(ウエスタンブロット分析(図18Eに示す))で観察された。
【0215】
従って、図18に記載の結果は、RILFの軽減における抗NAMPT Ab及びヘテロ接合Nampt+/-遺伝子型の役割を強調し、さらに、RILIの治療標的としてのNAMPTを実証するものである。
【0216】
実施例6.全身性炎症傷害を減少させるためのヒト化抗NAMPT抗体プラットフォームの開発
進化的に保存された炎症経路の活性化を抑制する目的で、ヒト化抗NAMPT抗体を開発した。数回のサブクローニングの後、NAMPT誘導NFκBリン酸化を有意に低下させ、マウス炎症性肺障害を軽減させるのに非常に有効な抗NAMPTマウスモノクローナル抗体(mAb)パネルを作製した。これらの高親和性マウス抗NAMPT mAbのうちの2つ(AL303、AL310)(6及び9nMのKdを有する)をヒト化のために選択した。ヒト内皮細胞を利用する50種のヒト化mAb(各マウスmAbに由来する25種)と、炎症性傷害のマウス及びラットの両前臨床モデルのインビトロ及びインビボでの包括的なスクリーニングの結果、我々のリードヒト化抗NAMPT抗体が選択された。ヒト化抗NAMPT抗体の肺傷害を治療する能力を、2つのマウス肺傷害モデル:マウスへのLPSの気管内送達によって開発された肺傷害の「1ヒット」モデル、及びマウスをLPS及び機械的VILIに曝露することによって開発された肺傷害の「2ヒット」モデルを用いて、インビボで試験した。このヒト化抗NAMPT抗体のいずれかを、急性炎症及び傷害を軽減する抗体の能力を評価するために、これらのマウスに投与した。試験の結果を図19に示す。
【0217】
図19Aに示すように、統合肺傷害スコアの分析から、試験した全てのヒト化抗NAMPT抗体がLPS誘発「1ヒット」モデルの肺傷害の軽減に有効であることが示された。しかしながら、最も実質的な効果は、抗NAMPT抗体Pで観察された(45%減少)。図19Bに示すように、統合肺傷害スコアの分析から、試験した全てのヒト化抗NAMPT抗体がLPS/VILI誘発「2ヒット」モデルの肺傷害の軽減に有効であることが示された。しかしながら、最も実質的な効果は、抗NAMPT抗体Pで観察された(42%減少)。図19Cに示すように、抗NAMPT抗体Pはまた、急性炎症性障害のLPS/VILI誘発「2ヒット」モデルにおける組織学的損傷指数の減少に有効であった。従って、ヒト化抗NAMPT抗体「P」を、実行可能なRILI治療戦略として選択した。
【0218】
ヒト化抗NAMPT mAb「P」は、発生の改善、安定な哺乳動物細胞株におけるmAb発現の増強、及び免疫原性の減少のために、VH及びVL配列内の関連するアミノ酸置換に影響を及ぼす配列最適化を受けている。配列改変は、凝集又は翻訳後修飾(酸化、脱アミド化、異性化)、T細胞エピトープ、及びN結合型グリコシル化モチーフなどの構造的及び順序データに基づいた。ヒト化抗NAMPTモノクローナル抗体の開発及び選択の詳細は、米国特許出願第62/883,952号明細書に提示されており、その全体を参照により援用する。
【0219】
図19に記載する結果は、新規の免疫ベースの抗炎症プラットフォームとしての抗NAMPT抗体を強調する。図20に示した模式図に要約するように、NAMPTは、損傷関連分子パターンタンパク質又はDAMPとして機能する、放射線を含む様々な損傷刺激によって放出される免疫エフェクター分子である。TLR4の連結によって、NAMPTは全身性炎症カスケードの活性化、血管透過性の亢進、及び多臓器機能不全に寄与する。抗NAMPT抗体はNAMPTを阻害するため、放射線誘発炎症カスケード、肺毒性及び全身性炎症を抑制して、RILIの症状を軽減する。
【0220】
実施例7.放射標識抗NAMPT抗体は、炎症肺組織におけるNAMPTの発現増加を特定する
放射標識抗NAMPT抗体は、異なる組織におけるNAMPTシグナル伝達経路及びNAMPT発現をインビボで非侵襲的に検出することを目標として開発された。放射標識抗NAMPT mAbを用いてRILIのマウスモデルを画像化することにより、抗NAMPT mAbを治療介入として展開するための最適時間を規定し、原子力事故におけるような全身被爆(TBI)又は部分被爆(PBI)後に、他の特定の放射標識を用いて、炎症及び細胞アポトーシスの主要臓器を調査することが可能になる。99mTcで抗体を特異的に放射標識するために予めプロトコルを最適化した。同様の方法論で、本発明者らは、mAbをヘテロ二官能性リンカーと結合させることによる間接的標識プロトコルを用いて、肺及び他の臓器におけるNAMPT組織発現を検出するために抗NAMPT mAbを放射標識した。放射標識抗NAMPT抗体によるNAMPT発現の検出を試験するために、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブを、対照マウス及び8Gy PBIに曝露したマウスに注入し、生体分布測定及び迅速なオートラジオグラフ画像化を行った。図21A~21Cに示すように、PBI曝露の2週後に、対照マウスと比較して、PBI曝露マウスの肺に、より高い放射能取り込み(1.8倍高い)が観察された。放射標識抗NAMPT抗体によるNAMPTの検出をさらに確認するために、99mTc標識抗NAMPT mAbプローブを、LPS又は20Gy WTLIでチャレンジしたマウスに注入し、生体内分布測定及び迅速なオートラジオグラフ画像化を行った。図21D~21Fに示すように、オートラジオグラフ画像化は、C57/B6マウスにおいて、LPSの注入(気管内)の24時間後、及び胸部照射(20Gy)の5日後の肺組織における99mTc標識抗NAMPT mAbプローブによるNAMPT発現の強力な検出を示した。
【0221】
従って、図21に示すように、放射標識抗NAMPT抗体は、炎症肺組織におけるNAMPT発現の増加を検出するのに有効であった。これは、NAMPTを検出するツールとして放射標識抗NAMPT抗体を利用する可能性を強調するものであり、このことは、本明細書に記載の方法によるRILIのバイオマーカーとしてNAMPTを使用する上で極めて重要である。
【0222】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
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図20
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【国際調査報告】