(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】動きおよび/または変形を検出するのに適したスマートテキスタイル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0536 20210101AFI20220113BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20220113BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61B5/0536
G01B7/16 R
G06N3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524040
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2019080214
(87)【国際公開番号】W WO2020094628
(87)【国際公開日】2020-05-14
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505026125
【氏名又は名称】インリア・インスティテュート・ナショナル・ドゥ・ルシェルチェ・アン・インフォマティック・エ・アン・アートマティック
【氏名又は名称原語表記】INRIA INSTITUT NATIONAL DE RECHERCHE EN INFORMATIQUE ET EN AUTOMATIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プガシュ,ガナ
(72)【発明者】
【氏名】ダニー,デヴィッド
【テーマコード(参考)】
2F063
4C127
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA30
2F063BB01
2F063BC09
2F063DA02
2F063DA05
2F063EC00
2F063LA09
2F063LA19
4C127AA06
4C127GG10
4C127LL13
(57)【要約】
本発明は、動きおよび/または変形を検出するのに適したテキスタイルであって、少なくとも2つの方向に伸長可能な導電性の布地(8)と、布地(8)の周縁部に沿って実質的に規則的に配置された電極(12)と、すべての電極(12)が逐次励起されるようなパターンに従って2つずつ電極(12)の励起を制御するように、および非励起電極(12)における電圧を毎回測定するように設計されたコントローラ(14)と、ニューラルネットワーク推論エンジンを含む計算機(22)と、を備える。計算機(22)は、所与の励起サイクルで非励起電極(12)で取得した電圧測定値を受け取ってニューラルネットワーク推論エンジンに供給するように、およびテキスタイルの変形を引き起こした動きに特徴的な測定値を返すように設計される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動きおよび/または変形を検出するのに適したテキスタイルであって、
少なくとも2つの方向に伸長可能な導電性の布地(8)と、
前記布地(8)の周縁部に沿って実質的に規則的に配置された電極(12)と、
すべての前記電極(12)が逐次励起されるようなパターンに従って2つずつ前記電極(12)の励起を制御するように、および非励起の前記電極(12)における電圧を毎回測定するように設計されたコントローラ(14)と、
ニューラルネットワーク推論エンジンを含む計算機(22)と、
を備え、
前記計算機(22)は、所与の励起サイクルで前記非励起電極(12)で取得した電圧測定値を受け取って前記ニューラルネットワーク推論エンジンに供給するように、および前記テキスタイルの変形を引き起こした動きに特徴的な測定値を返すように設計されることを特徴とする、
テキスタイル。
【請求項2】
前記コントローラ(12)は、隣接パターン、反対パターンおよび横方向パターンからなる群から選択されるEIT励起パターンに従って前記電極(12)を励起するように設計される、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項3】
前記ニューラルネットワーク推論エンジンは、前記テキスタイルの変形を引き起こした動きに特徴的な測定値と、前記コントローラ(14)が適用したものと同じ励起パターンに従って得られた前記非励起電極(12)で取得した電圧測定値とを用いて学習を行う、請求項1または2に記載のテキスタイル。
【請求項4】
前記ニューラルネットワークは、1つのパーセプトロンを有する、請求項3に記載のテキスタイル。
【請求項5】
前記電極(12)の励起パターンと前記非励起電極(12)で取得した電圧測定値とを実現するために、前記コントローラ(14)によって制御される2つのデマルチプレクサ(16)と2つのマルチプレクサ(18)とをさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のテキスタイル。
【請求項6】
前記電極(12)を励起するために、前記デマルチプレクサ(16)によって使用される電流を生成するための電流源(20)をさらに備える、請求項5に記載のテキスタイル。
【請求項7】
前記計算機(22)は、関節の測定値を返すように設計される、請求項1~6のいずれか1項に記載のテキスタイル。
【請求項8】
実質的に非導電性の布地(6)と、前記布地(6)に固定された請求項1~7のいずれか1項に記載のテキスタイル(4)と、を備える、スマート衣料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のテキスタイル(4)を備える、変形センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる「スマート」テキスタイルの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートテキスタイルは、ウエアラブル技術の一種である。これらのテキスタイルを用いた衣料によって、着用者が衣料とやりとりをしたり、身体的活動を測定したり、電話を遠隔操作したりすることができる。
【0003】
これは、コンピューティング、デジタルまたは電子部品を導入し、革新的なポリマー材料やクロミック材料、さらに導電性の繊維や材料を使用することで達成される。
【0004】
スマート衣料の用途の多くは、健康やスポーツなどの分野にある。例えば、BioSerenity社は、てんかんの発作を検出するためのスマート衣料を提供している。Cityzen Sciences社は、スポーツ選手向けのスマート衣料を提供している。これらは、テキスタイルに配置されたセンサを使用して、活動量や生理学的データをリアルタイムで測定する。
【0005】
Google社とLevi’s社は、導電性の繊維を使用した異なるアプローチのスマートジャケットを共同で開発した。このジャケットによって、袖口との様々なタイプの接触を介して、電話でのやりとりが可能となる。
【0006】
スマート衣料の別の可能な用途として、人間の動きや姿勢を捉えることが挙げられる。これまでに提案されてきた多くの解決策は、一般に、カメラや慣性センサに基づいている。しかしながら、これらの解決策には、多くの欠点がある。例えば、画像解析に基づく解決策では、精密である場合には大きなスペースが必要となり、純粋に外見を重視している場合には精度が劣る。同様に、慣性センサに基づく解決策では、精度が低く、較正が複雑となる。
【0007】
ロボット工学の分野では、導電性材料の表面における電界の再構築に基づく電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)など、いくつかの興味深い技術が提案されてきた。この非侵襲的な技術は、患者の皮膚の表面に電極を貼り付けて電界の変化を測定することで体内を検出するための医療用画像処理に既に使用されている。
【0008】
電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)は、Katoらによる論文(“Tactile sensor without wire and sensing element in the tactile region based on eit method”、IEEE sensors、792~795、2007)およびYaoとSoleimaniによる論文(“A pressure mapping imaging device based on electrical impedance tomography of conductive fabrics”、Sensor Review、32(4):310~317、2012)において、触覚センサ(圧力センサ)を提案するために用いられている。Nagakuboらによる論文(“A deformable and deformation sensitive tactile distribution sensor”、IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics、ROBIO、1301~1308、2007)、Alirezaeiらによる論文(“A highly stretchable tactile distribution sensor for smooth surfaced humanoids”、7th IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots、167~173、2007、および“A tactile distribution sensor which enables stable measurement under high and dynamic stretch”、IEEE Symposium on 3D User Interfaces(3DUI)、87~93、2009)、およびTawilらによる論文(“Improved image reconstruction for an eit-based sensitive skin with multiple internal electrodes”、IEEE Transactions on Robotics、27(3):425~435、2011)では、ロボットのための「人工皮膚」タイプの触覚デバイスを提案している。彼らのアプローチは、導電性の布地の縁部に接続された電極を使用して電流を流し、電圧を測定し、逆問題解析を適用して圧力による抵抗率の局所的な変化を再構築するというものである。最後に、Pugachらによる論文(“Electronic hardware design of a low cost tactile sensor device for physical human-robot interactions”、IEEE XXXIII International Scientific Conference Electronics and Nanotechnology、ELNANO、445~449、2013、および“Neural learning of the topographic tactile sensory information of an artificial skin through a self-organizing map”、Advanced Robotics、29(21):1393~1409、2015、および“Touch-based admittance control of a robotic arm using neural learning of an artificial skin”、2016 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems(IROS)、3374~3380、2016)では、導電性フィルム内の抵抗の分布を再構築し、圧力ポイントを特定するために、ニューラルネットワークを使用することが記載されている。
【0009】
ただし、スマート衣料へのEITの適用は、すべて圧力測定のためのみに限定されている。伸長した部分を測定することができる適用は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した適用では、腕、肩または膝の動き(例えば伸展)などの活動を確実に測定することができない。このタイプの測定は、例えば筋骨格系障害(またはMSD)などの予防を含む健康に関連した予防の観点から特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、この状況を改善する。この目的のために、本発明は、動きおよび/または変形を検出するのに適したテキスタイルを提案している。該テキスタイルは、少なくとも2つの方向に伸長可能な導電性の布地と、布地の周縁部に沿って実質的に規則的に配置された電極と、すべての電極が逐次励起されるようなパターンに従って2つずつ電極の励起を制御するように、および非励起電極における電圧を毎回測定するように設計されたコントローラと、ニューラルネットワーク推論エンジンを含む計算機と、を備える。計算機は、所与の励起サイクルで非励起電極で取得した電圧測定値を受け取ってニューラルネットワーク推論エンジンに供給するように、およびテキスタイルの変形を引き起こした動きに特徴的な測定値を返すように設計される。
【0012】
実際、EIT法の原理を適用することで、伸長可能な導電性の布地が配置されている箇所の関節の動きを判断することができ、人間の動きを捉えるためのスマート衣料を作製することができる。
【0013】
様々な代替例として、本発明による衣料は、以下の特徴を1つまたは複数有することができる。
・ コントローラは、隣接パターン、反対パターンおよび横方向パターンからなる群から選択されるEIT励起パターンに従って電極を励起するように設計され、
・ ニューラルネットワーク推論エンジンは、テキスタイルの変形を引き起こした動きに特徴的な測定値と、コントローラが適用したものと同じ励起パターンに従って得られた非励起電極で取得した電圧測定値とを用いてトレーニングを行い、
・ ニューラルネットワークは、1つのパーセプトロンを有し、
・ テキスタイルは、電極の励起パターンと非励起電極で取得した電圧測定値とを実現するために、コントローラによって制御される2つのデマルチプレクサと2つのマルチプレクサとをさらに備え、
・ テキスタイルは、電極を励起するために、デマルチプレクサによって使用される電流を生成するための電流源をさらに備え、
・ 計算機は、関節の測定値を返すように設計される。
【0014】
また、本発明は、実質的に非導電性の布地と、その布地に固定された上述したようなテキスタイルと、を備えるスマート衣料に関し、上述したようなテキスタイルを備える変形センサに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的に例示する以下の説明からより明確になるであろう。
【
図1】本発明による動きを検出するのに適したテキスタイルを組み込んだ衣料の模式図である。
【
図2】
図1に示す動きを検出するのに適したテキスタイルの模式図である。
【
図3】本発明のテキスタイルを使用した角度測定の結果と、実際に測定された誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面および以下の説明には、本発明の特定の性質の要素が本質的に含まれる。したがって、これらは、本発明をよりよく理解するのに役立つだけでなく、その定義にも適宜貢献することができる。
【0017】
図1は、動きを検出するのに適したテキスタイル4を組み込んだスマート衣料2の模式図である。衣料2は、テキスタイル4が固定される非導電性または絶縁性の布地6を備える。布地6へのテキスタイル4の固定は、テキスタイル4の周縁部での縫い付け、接着、部分融合または織り込みを含む、任意の適切な方法で実施することができる。
【0018】
テキスタイル4は、布地8と、伸長測定モジュール10と、を備える。本明細書に記載の実施例において、布地8は、EeonTexタイプ(登録商標。EeonTex LTT-SLPAという名称でEeonyx社から販売されている布地。)のものであり、72%ナイロンおよび28%スパンデックスから構成された2方向に伸長可能な導電性の布地である。単位面積当たりの質量は約162.72g/m2、厚さは約0.38mm、伸長回復率は85%、および表面処理により調整可能なシート抵抗値は10,000Ω/in2~10,000,000Ω/in2である。代替的に、複数の方向に伸長する能力を有する(すなわち、布地が好ましい方向にのみ実質的に伸長するような好ましい伸長方向を有さない)他の伸長可能な導電性の布地を使用することもできる。
【0019】
布地8は、伸長測定モジュール10に接続された複数の電極に接続される。
図2は、テキスタイル4、および布地8と伸長測定モジュール10との間の関係とをより明確に示している。
【0020】
図2に示すように、布地8は、実質的に円形の形状を有し、本明細書に記載の実施例において、布地8の周縁部に実質的に均等に配置された8つの電極12を受容する。実質的に円形の形状は、特に、肘や膝の測定を実施するのに適している。代替的に、テキスタイル4は、例えば4つなどのより少ない数の電極を備えることができ、例えば16などのより多い数の電極を備えることができる。
【0021】
本明細書に記載の実施例において、伸長測定モジュール10は、コントローラ14と、2つのデマルチプレクサ16と、2つのマルチプレクサ18と、電流源20と、計算機22と、メモリ24と、を備える。
【0022】
本明細書に記載の実施例において、コントローラ14は、ARM32ビットマイクロコントローラ(例えばCortex-M3 RISCプロセッサを使用するAtmel社のSAM3X8E ARM)である。コントローラ14は、受信した信号をサンプリングするための12ビットのアナログ-デジタル変換器を備える。コントローラ14は、一方では接地を毎回移動させることで対の電極12を順次励起するために、他方では他の電極12の端子における電圧降下を測定するために、デマルチプレクサ16とマルチプレクサ18とを制御するように機能する。
【0023】
本明細書に記載の実施例において、デマルチプレクサ16およびマルチプレクサ18は、Maxim Integrated社のMAX306CPI+タイプのものである。これらは、上述したように、コントローラ14が送信した励起信号を多重分離する機能と、電極12における測定信号を多重化する機能と、をそれぞれ有する。機能的な観点から、デマルチプレクサ16およびマルチプレクサ18は、共に励起と測定の機能を果たすという点で、コントローラ14に結合されていると考えることができる。
【0024】
コントローラ14は、布地8におけるその伸長に特徴的な電極12の抵抗の変化を誘発するために、EIT励起パターンに従って励起を行うように設計される。電流源20は、励起電流について多重分離された電流をデマルチプレクサ16に供給する。電流源20は、DCとすることができる。この場合、測定電圧は、電極12において測定される。また、電流源20は、ACとすることができる。この場合、AC電流に対する電圧の振幅およびオフセットが測定される。代替的に、電流源20を省略することもできる。別の代替例において、電極に直接または間接的に接続されたコントローラを使用することで、デマルチプレクサとマルチプレクサとを省略することもできる。
【0025】
EIT伸長パターンとは、以下の中から選択されたパターンを意味する。
・ 隣接パターン:隣接する電極に励起電流を導入し、他の電極における電圧降下を逐次測定する。ここでは、励起を行うために、各電極対を逐次使用する。
・ 反対パターン:正反対の電極に励起電流を導入し、他の電極における電圧を逐次測定する。ここでは、励起を行うために、各電極対を逐次使用する。
・ 横方向パターン:固定軸に対して反対側の電極に励起電流を導入し、他の電極における電圧を逐次測定する。ここでは、励起を行うために、各電極対を逐次使用する。
【0026】
本出願人の研究では、いわゆる「隣接」パターンが最良の結果をもたらした。このパターンが感度と選択性との間の良好な妥協点を提供するという事実に起因することを、本出願人の研究は示唆している。
【0027】
上述したタイプのマイクロコントローラを使用することで、生産コストを抑えることができる。これにより、テキスタイル4の生産を産業化することができる。代替的に、コントローラ14を、別のマイクロコントローラや、プロセッサによって実行されるコードで置き換えることもできる。「プロセッサ」という用語は、コントローラ14の動作に適した任意のプロセッサであると理解されたい。このようなプロセッサは、パーソナルコンピュータのためのマイクロプロセッサ、FPGAまたはSoC(system-on-chip)タイプの専用チップ、グリッド上のコンピューティングリソース、マイクロコントローラ、または後述する実施形態に必要なコンピューティングパワーを供給するのに適した他の任意の形態で、任意の既知の方法で製造されてもよい。また、これらの要素の1つまたは複数を、ASICなどの特殊な電子回路の形態で製造することもできる。プロセッサと電子回路との組み合わせも想定することができる。
【0028】
本明細書に記載の実施例において、コントローラ14、デマルチプレクサ16、マルチプレクサ18および電流源20によって、45Hzの周波数でデータを取得することができる。
【0029】
EIT法では、布地を通過する電流によって、電位の体積配分が形成される。電位は、それらの間に電流が注入される活性電極に対する距離に応じて、電流ラインに沿って減少する。単位長さ当たりの電圧降下(電界強度)は、オームの法則に従って、電流の強度と媒体の抵抗に比例する。電圧降下を測定し、電流の値を知ることで、抵抗の値を算出することができる。トモグラフィ再構成アルゴリズムによって、布地の表面のみで測定された電圧を使用して、布地内の抵抗率の空間分布を算出することができる。
【0030】
それにも関わらず、姿勢/動きと布地8の変形との相関関係を示すモデルを解析的に得ることは困難である。このため、本出願人は、計算機22をメモリ24と組み合わせて使用することを提案している。
【0031】
計算機22の機能は、ニューラルネットワークの推論モデルを、電極12における電圧降下の測定値に適用することである。したがって、数千の動きとそれに対応する電圧降下の測定値とでニューラルネットワークをトレーニングすることで、モデルの決定を省略することができる。より詳細には、本出願人は、条件付き学習バラダイムで使用されるLMSネットワーク(Least Mean Squares(最小二乗平均)の略であり、例えば、出力においてソフトマックスフィルタリングのない1つのパーセプトロンのニューラルネットワーク)によって、±5度の精度で関節角度を予測することができることを発見した。
【0032】
図3は、本発明のテキスタイルを使用した角度測定の結果と、実際に測定された誤差を示している。
【0033】
ここで、「条件付き学習バラダイム」という用語は、入力と所望の出力との間の平均二乗誤差が最小になるまでニューラルネットワークのシナプス荷重を変更することを含む、最適化手段を意味する。したがって、ニューラルネットワークは、入力された関節角度を知ることで、無条件の刺激から得られる所望の出力を予測し、この出力と条件付き刺激とを関連付けることを学習することができる。このアーキテクチャは、関節角度の予測と布地8における抵抗の配分を関連付けるパブロフの条件付けに相当する。このように、EIT励起パターンに従って学習を実施することで、本方法のアプローチを忠実に再現することができる。さらに、布地の伸長と関節角度とを関連付けるために、教師ありニューラルネットワークや畳み込みニューラルネットワークなどの別のタイプのニューラルネットワークを適用することもできる。
【0034】
また、1つのパーセプトロンのニューラルネットワーク推論エンジンの適用によって従来のEIT法の逆問題の解決策よりも計算量がはるかに軽くなるため、ニューラルネットワークを使用することは、より単純且つより安価な計算機22の使用を可能にするという点で有利である。本明細書に記載の実施例において、計算機22は、Raspberryタイプのコンピュータまたは適度なコストの他の軽いコンピュータであり、コントローラ14から発信される電圧測定値を用いた1つのパーセプトロンのニューラルネットワーク推論エンジンを実装するのに適している。本明細書に記載の実施例において、計算機22は原理的に記載されている。また、メモリ24は、1つのパーセプトロンのニューラルネットワーク推論エンジンと、コントローラ14から発信された電圧測定値と、その結果としての角度測定値と、を記憶する。メモリ24は、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、任意の形態のフラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、ローカルに分散されたストレージまたはクラウド上のストレージなどの、デジタルデータを受信するのに適した任意のタイプのデータストレージであってもよい。好ましくは、計算機22のメモリによって包含される。
【0035】
したがって、本発明によるテキスタイルは、
・ 邪魔にならず、占有スペースが小さく、
・ カメラを使用したシステムと比較して安価であり、
・ (外部センサの場合に多い)捕捉可視領域の制限を受けにくく、(カメラを使用するシステムとは異なり)閉塞とは無関係であり、
・ ドリフトを受けやすい慣性カメラを用いたシステムとは異なり、長手方向の測定を可能にし、
・ 電極以外のセンサを有さず、
・ 工業環境での使用に適合可能である。
【0036】
また、ニューラルネットワークを使用してEIT法を単純化したことにより、実装が容易であり、コンピュータリソースをあまり必要としない。また、ニューラルネットワークを使用することで、拡張性が保証され、特定の条件に特化した複数の推論エンジンをトレーニングして、固有の測定に適した多数のプロファイルを作成することができる。
【0037】
より一般的には、本発明によるスマートテキスタイルは、柔軟な物体や多関節チェーンの形状の変化を定量化するために用いられる変形センサに使用することができる。例えば、このようなセンサは、シリアルロボットやソフトロボティクスにおいて、または(航空や自動車の分野に適用される)座席の変形を測定するためなどに使用することができる。
【国際調査報告】