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特表2022-509043ヘルメット用のアクティブ・ノイズ・キャンセル・システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ヘルメット用のアクティブ・ノイズ・キャンセル・システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20220113BHJP
   A42B 3/30 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G10K11/178 120
A42B3/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525055
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2019080430
(87)【国際公開番号】W WO2020094733
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】1818094.3
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521194378
【氏名又は名称】ダール・ノイズ・コントロール・システムズ・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベント・エヴェン・フォッスム・フラードマルク
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・ファゲルヴィク・ラーセン
(72)【発明者】
【氏名】ダグ・アクセル・オールセット・ロエ
(72)【発明者】
【氏名】シグムント・アンドレアス・ビルケラン
【テーマコード(参考)】
3B107
5D061
【Fターム(参考)】
3B107BA05
3B107DA01
3B107DA17
3B107EA06
3B107EA07
3B107EA13
3B107EA19
5D061FF02
(57)【要約】
アクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)システムが取り付けプレート(10)を備え、その第1の面がヘルメットの内面に対して配置されて、ヘルメットとともにチャンバーを形成するように構成される。取り付けプレートがヘルメット上に取り付けられたときに、取り付けプレートの第1の面上に設けられたスピーカ(7)がチャンバー内にある。プレート(10)は、スピーカから空間領域への音の伝達を可能にする開口部を有する。少なくとも一つの基準マイク(3)が、音圧レベルを測定するためにプレートの第2の面上に取り付けられる。プレート(10)は、ANCシステムの構成要素のための取り付けプレートとして働き、ヘルメットへのANCシステムの設置のプロセスを簡素化する。プレートはまた、ANCシステムのスピーカを収容するチャンバーを定義するのに役立ち、ANCシステムのスピーカからANCシステムのクワイエットゾーンへの音信号の良好な音響結合を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの第1の側面の定義された空間領域において第1の周波数範囲の音圧を優先的に減衰するための、ヘルメット用のアクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)システムであって、前記ANCシステムが、
取り付けプレートであって、前記取り付けプレートの第1の面が使用時に前記ヘルメットの内面に対して配置されて、前記ヘルメットとともにチャンバーを形成するように構成される、取り付けプレートと、
前記取り付けプレートが前記ヘルメット上に取り付けられたときに、スピーカが前記チャンバー内にあるように、前記取り付けプレートの前記第1の面上に設けられたスピーカであって、前記取り付けプレートは、前記スピーカから前記空間領域への音の伝達を可能にする開口部を有する、スピーカと、
音圧レベルを測定するためにプレートの第2の面上に取り付けられた少なくとも一つの基準マイクと、
前記定義された空間領域において前記第1の周波数範囲にある少なくとも1つのノイズ源からの音信号を少なくとも一部減衰する音信号を生成するために、前記基準マイクからの出力信号に基づいて、前記スピーカを駆動するための駆動信号を決定するANC制御システムと
を備える、ANCシステム。
【請求項2】
前記スピーカを収容するための前記プレートの前記第1の面から延びる音響エンクロージャを備える、請求項1に記載のANCシステム。
【請求項3】
前記ANC制御システムが、第2のマイクからの出力信号に基づいて前記駆動信号を決定するように構成され、前記第2のマイクが、前記空間領域での前記音圧レベルを示す信号を測定するためのものである、請求項1または2に記載のANCシステム。
【請求項4】
前記第2のマイクが前記プレート上に取り付けられている、請求項3に記載のANCシステム。
【請求項5】
前記第2のマイクが前記プレートの前記第2の面上に取り付けられている、請求項4に記載のANCシステム。
【請求項6】
前記プレートの前記第1の面が、前記ヘルメットの前記内面と概ね相補的になるように輪郭付けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載のANCシステム。
【請求項7】
前記プレートの前記第2の面が、人の顔と概ね相補的になるように輪郭付けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載のANCシステム。
【請求項8】
前記スピーカからの音の伝達を可能にする前記開口部の周りの、前記プレートの前記第2の面から延びる音響エンクロージャを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のANCシステム。
【請求項9】
前記ANC制御システムが前記プレート上に取り付けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載のANCシステム。
【請求項10】
前記ANC制御システムが前記スピーカと共通のパッケージに配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のANCシステム。
【請求項11】
ヘルメットの第1の側面の定義された空間領域において第1の周波数範囲の音圧を優先的に減衰するためのアクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)システムを備えるヘルメットであって、
前記ヘルメットの内層のくぼみに配置されたスピーカと、
取り付けプレートであって、前記取り付けプレートの第1の側面が前記ヘルメットの内面に対して配置されて、前記取り付けプレートと前記内層とが前記スピーカを含むチャンバーを形成するように、前記取り付けプレートが前記くぼみの上に配置され、前記取り付けプレートが前記スピーカから前記定義された空間領域への音の伝達を可能にする開口部を有する、取り付けプレートと、
前記定義された空間領域から離れたヘルメットの第1の側面上のそれぞれの場所の音圧レベルを測定するためにプレートの第2の面上に取り付けられた少なくとも一つの基準マイクと、
前記定義された空間領域において前記第1の周波数範囲にある少なくとも1つのノイズ源からの音信号を少なくとも一部減衰する音信号を生成するために、前記基準マイクからの出力信号に基づいて、前記スピーカを駆動するための駆動信号を決定するANC制御システムと
を備える、ヘルメット。
【請求項12】
前記スピーカを収容するための前記プレートの第1の面から延びる音響エンクロージャを備える、請求項11に記載のヘルメット。
【請求項13】
前記ANC制御システムが、第2のマイクからの出力信号に基づいて前記駆動信号を決定するように構成され、前記第2のマイクが、前記空間領域での前記音圧レベルを示す信号を測定するためのものである、請求項11または12に記載のヘルメット。
【請求項14】
前記第2のマイクが前記プレート上に取り付けられている、請求項13に記載のヘルメット。
【請求項15】
前記第2のマイクが前記プレートの前記第2の面上に取り付けられている、請求項14に記載のヘルメット。
【請求項16】
前記プレートの第1の面が、前記ヘルメットの前記内面と概ね相補的になるように輪郭付けられている、請求項11~15のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項17】
前記プレートの前記第2の面が、人の顔と概ね相補的になるように輪郭付けられている、請求項11~16のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項18】
前記スピーカからの音の伝達を可能にする前記開口部の周りの、前記プレートの前記第2の面から延びる音響エンクロージャを備える、請求項11~17のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項19】
前記ANC制御システムが前記プレート上に取り付けられている、請求項11~18のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項20】
前記ANC制御システムが前記スピーカと共通のパッケージに配置されている、請求項11~19のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項21】
前記プレートが、前記ヘルメットの前記内層および裏地層の間に設けられる、請求項11~20のいずれか一項に記載のヘルメット。
【請求項22】
前記プレートが、少なくとも一つの第2の開口部を備え、前記裏地層が前記第2の開口部を通る留め具によって前記内層に固定される、請求項21に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、著しい風切り音、またはエンジン/排気騒音、または他の不必要な騒音が存在する可能性の高い状況で使用するための、アクティブ・ノイズ・キャンセルのシステムを有するヘルメットに関する。そのようなヘルメットは、例えば、モーターサイクリスト、自転車乗り、またはスカイダイビング、アルペンスキー、スキージャンプ、その他のモータースポーツなどの極端なまたはダイナミックなスポーツに従事する人によって使用され得る。本願はまた、ヘルメットにおいて使用するためのANCシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
良好なパッシブな遮音特性をもつヘルメットにより、ヘルメットのユーザに対する風切り音の効果を低減することが原理的に可能である。しかしながら、これによりヘルメットの重量およびサイズが追加され、また、風切り音を十分に減衰させるのに十分な遮音材を追加することは、通常現実的には不可能である。また、パッシブな遮音材を提供することは、中高域の周波数(音環境およびユーザシナリオにより、通常1kHzから2kHz以上)の有用な音情報がユーザから減衰されるという潜在的な不利益を有する。モーターサイクリストは、例えば、近くの道路車両や道路利用者の騒音を聞くことができないか、聞こえにくくなり、これは潜在的に危険である可能性がある。一般に、風切り音および重要な交通音は、互いに異なる周波数帯にある。従って、風切り音のような不要な音を含む周波数にある音を優先的に減衰させ、一方で潜在的に有用あるいは重要な音情報を含む周波数帯では、ほとんどあるいは全く減衰しないことが望ましく、この結果、(風切り音あるいは他の不要な音のレベルを下げることによって)ユーザにとって改善された環境を生じ、ユーザは潜在的に有用あるいは重要な音情報を聴くことができる。
【0003】
一つの周波数帯において優先的に音の減衰を達成する一方法は、アクティブ・ノイズ・コントロールである。アクティブ・ノイズ・コントロールの基本的な物理的方法は知られている。この方法では、オリジナルの音と反対位相(「逆位相」、「アンチノイズ」、「アンチサウンド」とも呼ばれる)の同じ振幅の音波を放出するノイズ・キャンセル・スピーカを使用して、音が減衰される。オリジナルの音波とノイズ・キャンセル・スピーカからの音波とは、互いに破壊的に干渉して、互いを効果的に打ち消し合う。アクティブ・ノイズ・キャンセルを持つヘルメットの例は、EP1538601に記載されている。
【0004】
原理的には、所望の周波数帯におけるオリジナルの音波の完全な減衰は、少なくとも空間の領域において、アクティブ・ノイズ・コントロールを使用して達成することができる。しかしながら、完全な減衰には、ノイズ・キャンセル・スピーカが、所望の周波数帯のオリジナルの音波に正確に等しい振幅を有し、オリジナルの音波に対して正確に逆位相である音波を生成する必要があり、このことは、特に、移動する個人のヘルメットによって生成される風切り音に対してなど典型的なケースなどのノイズ環境が経時的に変化するようなケース、あるいは、音源が信号特性および/または位置に関して経時的に変わる可能性のあるケースでは、実際に達成が困難であることがある。アクティブ・ノイズ・キャンセル・システムの例は、参照により本明細書にその内容が組み込まれる、共同係属中の英国特許出願1815899.8に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビルトインのアクティブ・ノイズ・キャンセル・システムを内蔵して製造されたヘルメットが現在利用可能である。しかしながら、製造プロセスを簡素化するとともにコストを抑えるために、ANCシステムをヘルメットの製造中に、ヘルメットにより統合し易くすることが望ましい。さらに、ヘルメットの既存のモデルが、現在ANCシステムを内蔵して製造されていない場合に、ヘルメットのデザインを変更する必要なく、そのような既存のモデルにANCシステムを設けることができることが望ましい。また、一部のユーザは、新しいヘルメットを購入する必要なく既存のヘルメットにアクティブ・ノイズ・キャンセル・システムを適合することを好み、これがヘルメットに対する任意の構造変更を必要とせずになされることが望ましい。
【0006】
典型的なモーターサイクルヘルメットは、発泡スチロールフォーム(EPS)などの衝撃で押しつぶされるように設計された材料で形成された、押しつぶし可能な層がある。これは、プラスチック、ガラス繊維、または複合材料などの材料の外殻に提供され、EPS層をサポートし、ヘルメットの侵入に対する保護を提供する。ユーザの快適さを確保するために、通常、パッド入りの生地の裏地がEPS層の内面に設けられている。現在、多くのヘルメットには、ヘルメット装着時にユーザの耳に近い位置にヘルメットの両側のEPS層にくぼみがあり、スピーカを設置して、ユーザが他のユーザと通信できる、および/またはユーザが音楽やユーザの近くのラジオ局が放送する交通情報を聴くことができるシステムを提供できる。このくぼみを使用してアクティブ・ノイズ・キャンセル・システムの構成要素を収容できることは便利であり、これによりANCシステムをヘルメットに再搭載することがより簡単になる。しかしながら、ANCシステムのスピーカからの音信号をANCシステムのクワイエットゾーンに音響結合するための要件は、通信システムのスピーカからの音信号を結合するための要件よりもはるかに厳しい。さらに、良好なノイズキャンセルを得るために、ANCシステムのスピーカからANCシステムの基準マイクへの不要なフィードバックを回避する、あるいは少なくとも低レベルに保つことが重要である。
【発明を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ヘルメットの第1の側面の定義された空間領域において第1の周波数範囲の音圧を優先的に減衰するための、ヘルメット用のアクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)システムを提供し、ANCシステムが、取り付けプレートであって、取り付けプレートの第1の面が使用時にヘルメットの内面に対して配置されて、ヘルメットとともにチャンバーを形成するように構成される、取り付けプレートと、取り付けプレートがヘルメット上に取り付けられたときに、スピーカがチャンバー内にあるように、取り付けプレートの第1の面上に設けられたスピーカであって、取り付けプレートは、スピーカから空間領域への音の伝達を可能にする開口部を有する、スピーカと、音圧レベルを測定するためにプレートの第2の面上に取り付けられた少なくとも一つの基準マイクと、定義された空間領域において第1の周波数範囲にある少なくとも1つのノイズ源からの音信号を少なくとも一部減衰する音信号を生成するために、基準マイクからの出力信号に基づいて、スピーカを駆動するための駆動信号を決定するANC制御システムとを備える。プレートは、ANCシステムの構成要素のための取り付けプレートとして働き、ヘルメットへのANCシステムの設置のプロセスを簡素化する(ANCシステムがヘルメットの製造工程時にあるいは後付けで設置されるかに関わらず)。また、プレートは、ANCシステムのスピーカを収容するチャンバーを定義するのに役立ち、ANCシステムのスピーカからANCシステムのクワイエットゾーンへの音信号の良好な音響結合を提供し、ANCシステムのスピーカからANCシステムの基準マイクへの不要なフィードバックを最小化する。使用されるスピーカのタイプに応じて、スピーカから空間領域への音の伝達を可能にする開口部(例えば、図4(a)または5(a)の開口部13)は、チャンバー内の唯一の開口部であってよく、あるいは開口部13に加えてさらなる開口部があってもよい。例えば、ヘルメットを通してチャンバーから通過し、チャンバーの後部(チャンバーの「後部」はプレートから最も遠い側)とヘルメットの外側の間の通信を提供するさらなる開口部があってもよい。
【0008】
本発明の第2の態様は、ヘルメットの第1の側面の定義された空間領域において第1の周波数範囲の音圧を優先的に減衰するためのアクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)システムを備えるヘルメットを提供し、ヘルメットは、ヘルメットの内層のくぼみに配置されたスピーカと、取り付けプレートであって、取り付けプレートの第1の側面がヘルメットの内面に対して配置されて、取り付けプレートと内層とがスピーカを含むチャンバーを形成するように、取り付けプレートがくぼみの上に配置され、取り付けプレートがスピーカから定義された空間領域への音の伝達を可能にする開口部を有する、取り付けプレートと、定義された空間領域から離れたヘルメットの第1の側面上のそれぞれの場所の音圧レベルを測定するためにプレートの第2の面上に取り付けられた少なくとも一つの基準マイクと、定義された空間領域において第1の周波数範囲にある少なくとも1つのノイズ源からの音信号を少なくとも一部減衰する音信号を生成するために、基準マイクからの出力信号に基づいて、スピーカを駆動するための駆動信号を決定するANC制御システムとを備える。
【0009】
ヘルメットまたはシステムは、スピーカを収納するためのプレートの第1の面から延びる音響エンクロージャを備える。
【0010】
ANC制御システムが、第2のマイクからの出力信号にさらに基づいて駆動信号を決定するように構成され、第2のマイクが、空間領域での音圧レベルを示す信号を測定するためのものである。図2を参照して以下に説明されるように、ANCシステムは、ANCシステムのパラメータが経時的に一定である「静的なシステム」であってよいが、本態様では、ANCシステムは「適応型」であってよく、ANCシステムのパラメータを決定するプロセスが、第2のマイクによる意図されたクワイエットゾーンでの実際の音圧の測定に基づいて、固定または可変のインターバルで繰り返される。
【0011】
第2のマイクは、プレートに取り付けられ得る。繰り返しになるが、これにより第2のマイクが他の構成要素とともにプレートに事前に取り付けられるので、ANCシステムの設置を容易にする。第2のマイクは、プレートの第2の面に取り付けられる。
【0012】
プレートの第1の面は、ヘルメットの内面と概ね相補的になるように輪郭付けられている。
【0013】
プレートの第2の面は、個人の顔と概ね相補的になるように輪郭付けられている。
【0014】
ヘルメットまたはシステムは、スピーカからの音の伝達を可能にする開口部の周りの、プレートの第2の面から延びる音響エンクロージャを有してよい。このことはさらに、ANCシステムのスピーカからANCシステムのクワイエットゾーンへの音信号の音響結合を向上させる。
【0015】
ANC制御システムは、プレートに取り付けられ得る。繰り返しになるが、ANC制御システムが他の構成要素とともにプレート上に事前に取り付けられ得るので、これによりヘルメット内にANCシステムの設置が容易になる。
【0016】
ANC制御システムは、スピーカと共通のパッケージに配置され得る。
【0017】
プレートは、ヘルメットの内層と裏地層との間に設けることができる。
【0018】
プレートは、少なくとも1つの第2の開口部を有し、裏地層は、第2の開口部を通過する留め具によって内層に固定することができる。これにより、プレートをヘルメットに留めるための1つまたは複数の留め具を特別に用意する必要がなくなるため、ヘルメットに修正を加える必要がなくなり、プレートを簡素化することができる。
【0019】
さらなる態様は、ヘルメット上にアクティブ・ノイズ・キャンセル(ANC)システムの構成要素を取り付けるための取り付けプレートを提供し、ANCシステムは、ヘルメットの第1の側面に所定の空間領域において第1の周波数範囲の音圧を優先的に低減する。取り付けプレートの第1の面は、使用時にヘルメットの内面に対して配置されて、ヘルメットとともにANCシステムのスピーカを収容するための音響チャンバーを形成するように構成される。プレートは、スピーカから空間領域への音の伝達を可能にする開口部を備える。プレートは、音圧レベルを測定するための、プレートの第2の面上に少なくとも一つの基準マイクを取り付けるための取り付け手段を有する。前述のように、プレートは、ANCシステムの構成要素のための取り付けプレートとして働くので、ヘルメットへのANCシステムの設置のプロセスを簡素化する(ANCシステムがヘルメットの製造工程時にあるいは後付けで設置されるかに関わらず)。また、プレートは、ANCシステムのスピーカのための音響チャンバーを定義するように機能し、ANCシステムのスピーカからANCシステムのクワイエットゾーンへの音信号の良好な音響結合を提供し、ANCシステムのスピーカからANCシステムの基準マイクへの不要なフィードバックを最小化する。
【0020】
発明のさらなる態様は、ANCシステムのスピーカと共通のパッケージに配置されたANC制御システムを提供する。
本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照してこれから説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】適応型マルチチャネルフィード-フォワードANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)システムのシステムレイアウトの概要を示す図である。
図2】一次経路および二次経路を示す、マルチチャネルフィード-フォワードANCシステムのブロック回路図である。
図3】ANCヘルメットの一実施形態による、基準マイクの配置を示すヘルメットの側面図である。
図4(a)】本発明のANCシステムで使用するための支持体と組み合わせられた音響バッフルプレートの概略斜視図である。
図4(b)】図4(a)のプレートの下からの概略斜視図である。
図4(c)】図4(a)のプレートの側面図である。
図5(a)】本発明のANCシステムで使用するための別の組み合わせた支持体と音響バッフルプレートの概略斜視図および側面図である。
図5(b)】本発明のANCシステムで使用するための別の組み合わせた支持体と音響バッフルプレートの概略斜視図および側面図である。
図6】は、本発明のANCシステムで使用するための別の支持体と組み合わせられた音響バッフルプレートの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、フィード-フォワードANCシステムの一般的な概略レイアウトを示す。システムは、以下の主要構成要素を有する:
- スピーカ7;
- ユーザの耳が位置するであろう、指定の「クワイエットゾーン」2での音圧レベルを測定するためのエラーマイク3;
- 所望のクワイエットゾーンに向かって進む音波についての情報を提供するように、クワイエットゾーンから離れたそれぞれの場所において瞬間的な音圧レベルを測定するための1つまたは複数の基準マイク4および5;
- スピーカのための駆動信号を生成するための制御ユニット6;
- 電源(典型的にはバッテリ、図1に示さず)。
【0023】
より詳細には、太陽の記号1(A、B、およびC)は、風切り音など、減衰が望まれる不要なノイズの音源の場所の例を示す。目的は、ユーザがヘルメットを装着しているときにユーザの耳が位置するであろう、停止の記号2によって示される空間の領域(すなわち、「クワイエットゾーン」)での音圧レベルを最小にすることである。(図1は、ヘルメットの片側に一つのクワイエットゾーンを作るためのレイアウトを示しているが、第2のANCシステムが、ユーザのもう片方の耳のためにヘルメットのもう片方に第2のクワイエットゾーンを提供するために必要とされる。2つのANCシステムは、互いに完全に独立しているか、1つまたは複数の構成要素(例えば、制御ユニットなど)が、両方のANCシステムで共通していてもよい。)
【0024】
図1のシステムの全体的な機能は以下の通りである:
1. エラーマイク3は、クワイエットゾーンの場所での瞬間的な音圧レベルを測定し、クワイエットゾーンの場所における測定した音圧レベルを示す出力信号を提供する。
2. 基準マイク4および5はそれぞれ、クワイエットゾーンから離れたそれぞれの場所での瞬間的な音圧レベルを測定し、基準マイクの場所における測定した音圧レベルを示す出力信号(「基準」信号)を提供する。信号は、所望のクワイエットゾーンに向かって進む音波についての情報を提供することを目的とし、該音波は将来的にクワイエットゾーンにて音圧を生じ、該音圧は、クワイエットゾーンからの基準マイクの距離および音信号の進む速さと、基準マイクの場所とクワイエットゾーンとの間の伝達関数の他の特性とによって決定される。(しかしながら、音波が所望のクワイエットゾーンに向かって進んでいるかどうかにかかわらず、基準マイクは潜在的に自身の場所でのすべての音波を測定でき、したがって、クワイエットゾーンに実際に進む音波と、基準マイクからの出力から得られた所望のクワイエットゾーンに向かって進む音波についての情報とは相違があり得ることに留意すべきである。基準マイクの指向性の程度および向きは、基準マイクからの出力がクワイエットゾーンに実際に進む音波をどれだけ正確に表すかに影響を与えることがある。) 複数の基準マイクの使用により、一つの基準マイクのみを使用した単一のチャネルのフィード-フォワードシステムとは異なる、マルチチャネルのフィード-フォワードシステムが提供される。
3. 制御ユニット6は、少なくとも基準マイクからの信号の情報を使用することによって信号フィルタを決定する。これらのフィルタは、スピーカ7の駆動信号を生成するために基準マイクからの信号に適用される。次いで、駆動信号は、スピーカ7に送信される。1つまたは複数のノイズ源とクワイエットゾーンとの間の一次経路が変わる、あるいは、制御ユニットの一つまたは複数のフィルタ推定値と異なる場合、適応型システムを示す1つまたは複数の対応する制御フィルタもまた変わることがある。
4. クワイエットゾーン2において、スピーカ7からの音出力は、不要な音の音源1から届くノイズと干渉し、それにより(スピーカからの出力が正確に決定されている場合)音圧レベルを下げる。
【0025】
一般に、制御ユニットは、例えば、クワイエットゾーンでの予想されるノイズのパラメータを最小まで下げる、あるいは、クワイエットゾーンでの予想されるノイズのパラメータをしきい値以下に下げるなど、いくつかの最小化基準を使用してフィルタを決定する。例えば、音の平均二乗値を最小化する目的の「最小平均二乗」アルゴリズムを使用する既知のANCシステムがある。いくつかの場合、制御ユニットは、ある周波数範囲の音(不要な音に対応する)を優先的に減衰するためにフィルタを決定する一方で、別の周波数帯の音(有用な音に対応する)は減衰しない、あるいはより少ない程度だけ減衰する。概要としては、将来的にクワイエットゾーンに届くと予想される音の信号についての情報が基準マイクの出力から分かる。この情報は、駆動信号を生成するフィルタを算出するために使用され、駆動信号は、スピーカに、ノイズ源からの到着する音信号と干渉する音信号を放出させ、(スピーカからの出力が正確に決定されている場合)1つまたは複数のノイズ源から到着する音信号を減衰する。
【0026】
図2は、図1に対応するANCシステムのブロック概略図である。示されるように、音がエラーマイク3に到達できる経路の2つのセットがあり(所望のクワイエットゾーンに近い位置にあり、所望のクワイエットゾーンでの音圧を測定すると仮定される)、経路のこれらのセットは、「一次経路」および「二次経路」と呼ばれる。
【0027】
「一次経路」は、クワイエットゾーンへの図1の音源1A、1B、1C(各音源に対する1つの伝送関数)からクワイエットゾーンへの音響経路のセット(複数の伝達関数)である。上に説明したように、音源は、音を発生させるヘルメットの実際のパーツであってよく、あるいは、音がヘルメットの外部の音源によって生成されていたとしても、ヘルメットの装着者がそこから発せられた音であると感じる点または領域である「仮想の」音源であってもよい。また上に説明したように、音源1A、1B、1Cから特定の時間にクワイエットゾーンに到達すると予想される音についての情報は、以前に基準マイクから出力された基準信号から既知であると意図されている一方、情報が正確である保証はない。このことは、一次経路の各チャネルに「未知のノイズ」を追加することによって、図2に示される。(「チャネル」は、音源1A、1B、1Cの一つから特定の時間においてクワイエットゾーンに到達する音への寄与を、以前に音源に関連付けられた基準マイクから出力された基準信号から決定したものであり、図2は3つの基準マイクに対応する3つのチャネルを示し、したがって、図1に示すシステムに対応するが、図1に示される2つではなく3つの基準マイクを有する。)「未知のノイズ」は、予測誤差として考えられてよく、特定のチャネルに沿って所与の時間にクワイエットゾーンに到着が予測される音と、チャネルに沿ってその時間に実際に到着する音との間の差異を表す。一般に、1つのチャネルの「未知のノイズ」は、別のチャネルの未知のノイズと異なることがある。
【0028】
「二次経路」は、基準マイク、制御ユニット6、およびスピーカ7を通って、クワイエットゾーンおよびエラーマイク3への信号経路のセットである。1つのマイクが2つ以上の音源から信号を出力するように(図1に示すように)配置され得るので、音源および基準マイクの数が同じである必要はない。上に説明したように、制御ユニット6は、以前に基準マイクの出力に基づいて特定の時点でスピーカための駆動信号を決定する。数学的に、制御ユニットは、各基準マイクからの信号にそれぞれのフィルタを適用することによって、スピーカのための駆動信号を決定すると考えられる。この実施形態では、制御ユニットおよびスピーカは、「フィード-フォワード」システムを形成し、スピーカによって生成された音信号が、基準マイクからの出力信号に基づく。
【0029】
クワイエットゾーンでのトータルの音は、潜在的な「未知のノイズ」と同じく、(既知の音源から音響的に伝送される音である)一次経路を介して到着する音と、(基準マイク、制御ユニット、およびスピーカ7を通って)二次経路を介して到着する音との合計である。
【0030】
クワイエットゾーンの実際の音圧は、クワイエットゾーンでの、またはクワイエットゾーンに近いマイク3によって測定される。
【0031】
制御ユニットは、任意の便利な方法で実装され得る。一例として、マイクロプロセッサまたは他のプログラム可能な論理回路を使用して実装されてよく、別の例では、アナログ回路として実装されてよい。
【0032】
図2のANCシステムは、フィルタが経時的に一定である「静的システム」である。これは、(図1のエラーマイクによって提供されるような)誤差信号からコントローラに戻る信号経路がないことによって示される。ノイズ・キャンセル・システムの安定性に関わる理由や、主要な経路が変化せず、十分な減衰量が得られている場合には、静的なシステムを使用することができる。ANCシステムは、レイアウトがエラーマイクを含む場合にも静的であるとして設計され得る。他のANCシステムは、後述のように「適応型」であり、適応型システムにおいて、フィルタを決定するプロセスは、図2に点線によって示されるように、(エラーマイク3によって)クワイエットゾーンでの実際の音圧の測定に基づいて、固定または可変のインターバルで繰り返される。
【0033】
図1または図2のシステムでは、ある基準マイクあるいは各基準マイクは、所与の時点で音源1およびクワイエットゾーン2の間の点での音圧をサンプリングする。これにより、将来的にクワイエットゾーンに到達すると予想されるノイズと(うまくいけば強く)相関した信号にアクセスすることができる。音圧をサンプリングする時間と、そのサンプル音波がクワイエットゾーンに到達すると予想される時間との間の時間差が、信号がANCシステムを通って通過する(マイクから、制御ユニット6を通して、スピーカ7まで、クワイエットゾーンに音を提供する)時間より大きい場合、因果関係により、システムは「アンチノイズ」を生み出すことができ、それによりクワイエットゾーンの音に破壊的に干渉し、ノイズ源1からのノイズを減衰し、クワイエットゾーンの音圧レベルを低減する結果をもたらす。クワイエットゾーンにおいて基準信号およびノイズの間の相互相関関数の幅は、十分な時間差がないことを多少補うことができる。可能であれば、基準マイク4、5を、監視対象の音源の近くに配置することが望ましい場合があり、これにより、基準マイクからの信号の時間差が大きくなる。
【0034】
図1に示される3つの音源のケースでは、理想の駆動信号dが、次のように表される:
d(t) = -F1(t) {n1(t - δ1)} - F2{n2(t - δ2)} - F3{n3(t - δ3)} (1)
【0035】
数式1は、niは、i番目のノイズ源からの音信号であり、δiは、i番目のノイズ源からの音信号の時間の進みであり、Fi(t)は、時間tのi番目のノイズ源からの音信号についてのフィルタ/伝達関数である。
【0036】
図3は、ヘルメットの左側、すなわち、装着者の左耳に対する、基準マイク4、5およびエラーマイク3の可能な場所の例を示す。ヘルメットには、装着者の右耳に対するヘルメットの右側にクワイエットゾーンを生成する第2のANCシステムが提供され得る。一般に、右側のANCの基準マイクおよびエラーマイクは、左側のANCシステムの基準マイクおよびエラーマイクに対応する場所に配置されているが、原理的には、右側のANCシステムおよび左側のANCシステムは互いに異なってよい。左側のANCシステムおよび右側のANCシステムは、共通の制御ユニットおよび電源を共有してよく、あるいは、個別の制御ユニットおよび/または共通の電源をそれぞれが有してもよい。
【0037】
数式(1)に示されるように、制御ユニットは、以前の基準マイクからの出力に基づいて特定の時間の間にスピーカのための駆動信号を生成し、駆動信号により意図したクワイエットゾーンに到着する音をスピーカが打ち消すことを目的とする。制御ユニットは、特に、特定の時点で基準マイクによって測定された音信号がクワイエットゾーンに伝搬するのにかかる時間を決定する、クワイエットゾーンに対する1つの/各基準マイクについての予想された場所に基づいて駆動信号を生成する。したがって、ANCシステムの構成要素がヘルメットに設けられると、互いに対して、およびクワイエットゾーン/ユーザの耳の場所に対して正確な位置に設置され、これを行うのを怠ると、達成されるノイズキャンセルが劣化するであろう。繰り返しになるが、このことは、ANCシステムが製造中にヘルメットに組み込まれる場合に確認するのは比較的簡単であるが、ANCシステムを既存のヘルメットに後付けする場合は達成がより困難である。
【0038】
図4(a)~4(c)は、本発明の支持体と組み合わせられた音響バッフルプレート10を示す。図4(a)は、プレートの概略斜視図であり、図4(b)は、下からのプレートの概略斜視図であり、図4(c)は、プレートの側面図および端面図である。プレート10は、既存のヘルメットにANCシステムを後付けするために使用され、ヘルメットのEPS層の既存のスピーカのくぼみを使用し、それによりヘルメットへの構造的変更の必要を避けて、その構造的完全性が損なわれないようにする。さらに、プレート10は、基準マイクに対する、およびオプションでANCシステムの他の構成要素に対する取り付け点あるいは地点を提供し、その結果、クワイエットゾーンに対する構成要素の正確な位置が確保され、基準マイクがプレート10上のそれぞれの取り付け手段に取り付けられ、スピーカがプレートに取り付けられると、基準マイクおよびスピーカがクワイエットゾーンに対するそれらの正確な位置となる。
【0039】
使用に際し、プレート10は、図4(a)のビューから隠れている面が、ヘルメットのEPS層を向き、図4(a)に見える面がユーザの頭を向くようにヘルメットに取り付けられる。図4(a)に見えない面は、「下向きの」面(図4(a)のプレートの向きを基準に)と呼ばれるか、「内」面(ヘルメットに取り付けられたときのプレートの向きを基準に)と呼ばれ、図4(a)に見える面は、「上向きの」面(図4(a)のプレートの向きを基準に)と呼ばれるか、「外」面(ヘルメット上に取り付けられたときのプレートの向きを基準に)と呼ばれる。
【0040】
図4(a)~4(c)の実施形態では、プレートは、エラーマイクに対する地点/取り付け点11、および基準マイクに対する1つまたは複数の地点/取り付け点を有する(2つのそのような地点/取り付け点12は、図4(a)に示されるが、本発明は、2つの地点/取り付け点12に限定されない)。マイクは、任意の適切な方法でそれぞれの地点/取り付け点に付けられてよく、例えば、適切な留め具を使用して機械的に取り付けられ、および/または接着剤などを使用して取り付けられてよい。
【0041】
図4(a)~4(c)のプレート10には、ANCシステムのスピーカからクワイエットゾーンに音を伝達可能にするための音響開口部13が提供される。好ましくは、図4(b)に示されるように、プレートには、スピーカをハウジングするためのその内面から延びるハウジング15が提供される。ハウジング15は一般に、音響開口部13とは反対に延びて、スピーカからクワイエットゾーンに音の良好な伝達を可能にする。これは、図4(b)に示されている。ハウジング15の外部サイズは、ヘルメットのEPS層のくぼみのサイズより少しだけ小さく、ハウジングの内部サイズは、所望のスピーカを収容するためにかなり大きい。図4(b)は、円形の内部断面および外部断面を有するハウジングを示しているが、本発明は原則としてこれに限定されない。
【0042】
一実施形態では、スピーカを受け入れるためのEPSのくぼみを有するヘルメットにANCシステムを適合させると、ANCシステムのスピーカは、存在する場合、音響開口部13がスピーカと整列するようにハウジング15内のプレート10に取り付けられる。次いで、プレートは、スピーカがEPS層のくぼみに配置されるようにヘルメット上に取り付けられる。それにより、スピーカは、ヘルメット(特に、ヘルメットの粉砕可能EPS層によって)およびプレート10によって形成される半密閉型チャンバーに配置される。プレート10は、例えば、以下に説明するようにヘルメットに固定されており、それによって、くぼみの位置にスピーカを保持する。このことは、必要とされる組み立て工程の数を減らすので、設置プロセスを簡素化する。
【0043】
上述のように、開口部13に加えて、くぼみから、EPS層およびヘルメットの外殻を通ってヘルメットの外部まで通過する1つまたは複数の通し穴が存在してよい。代わりに、いくつかのスピーカについて、これらの通し穴は必要ではなく、音響開口部13は、チャンバーの唯一の開口部であってよい。
【0044】
以降により詳細に記載されるように、任意の既存のスピーカがまず、EPS層のスピーカくぼみから剥がされて取り外され、必要に応じて、ヘルメットの制御ボードが交換されること以外は、既存のヘルメットへのANCシステムの後付けは同様に行われる。
【0045】
図4(c)に示すように、良好な音響チャンバーを形成するのを助けるために、内面がヘルメットの内部形状と相補的になるように、プレート10が形成される(例えば、輪郭に沿って)のが望ましい。外面もまた、快適さのためにユーザの頭の期待される形状に従うように、輪郭に沿うことが望ましい。さらに、開口部13を例外として、音響チャンバーの一部を形成するプレートのいずれの部分にも他の開口部を設けないことが望ましい。これにより、ANCシステムのスピーカからANCの基準マイクへの不要なフィードバックを排除または減らすことになる。
【0046】
上述のように、ヘルメットは通常、パッド入り生地の裏地に設けられ、これは一般に、1つまたは複数のクリップまたは他のリーズナブルな留め具によってヘルメットのEPS層に固定され、そのため、裏地は、洗濯/修理または交換のために取り外すことができる。例えば、裏地は、スナップファスナーを使用してEPS層に固定でき、スナップファスナーの一部は裏地に取り付けられ、他の部分はEPS層に取り付けられる。図4(a)~4(c)の実施形態では、プレート10には、生地の裏地をヘルメットに取り付けるためのクリップ/留め具を使用してヘルメットにプレートが固定され得るようにする留め具開口部14が設けられる。スナップファスナーの場合、一例として、プレートが、EPS層上のスナップファスナーの一部の上に開口部14とともに配置され、裏地に取り付けられたスナップファスナーの一部が、EPS層上のスナップファスナーの一部に留められ、裏地をEPS層に固定し、それによりプレートをEPS層に固定する。唯一の固定開口部14が図4(a)に示されているが、2つ以上の固定開口部が提供されてよい。固定開口部が音響チャンバーを形成するプレートの領域から離れて設けられる場合、それらは、ANCシステムによって達成されるノイズキャンセルにほとんどまたはまったく影響を与えない。しかしながら、本発明は所定の位置にプレートを固定するためのこの特定の方法に限定されず、プレートは任意の適切な方法でヘルメットに取り付けられてよい。
【0047】
プレートの内面がヘルメットの内部形状と相補的になるように輪郭を描かれること、音響開口部がスピーカのEPS層のくぼみと整列すること、および取り付け開口部がパッド入りファブリックライニングの留め具と一致することが望ましい場合、取り付けプレートは通常、特定のモデルのヘルメットまたは同じメーカーのヘルメットの関連モデルのグループに固有であろうことを意味する。
【0048】
プレート10は、ポリプロピレン、シリコンなどのプラスチック材料または他の適切な材料などの任意の適切な材料から作ることができる。プレートの厚さは一般に1mmと2mmの間である。プレートは一般に、高さおよび幅において10cm程度であるが、これらの寸法はヘルメットの特定のモデルに適合するために選択され得る。図4(a)および4(b)に示すように、プレートは長方形などの規則的な形状である必要はなく、形状は、ヘルメットの特定のモデルに合わせて選択できる。プレートは、任意の適切な技術、熱成形や3Dプリントなどで形成できる。
【0049】
効果的なノイズキャンセルを提供するために、プレート10とユーザの耳との間に防音または部分的に防音のチャンバーが存在することが望ましい。これは、環状または「ドーナツ」形状に配置された緩衝材16によって提供され得、その結果、それは、音響開口部13を取り囲み、ユーザがヘルメットを着用しているときに、ユーザの耳の周りに接触して、開口部13からユーザの耳までの防音または部分的に防音のチャンバーを提供する。緩衝材16は、スピーカからの音の伝達を可能にするための開口部13を取り巻くエンクロージャを形成し、ユーザの耳に向かって延びている。このことは図5(a)および5(b)に示されている。(実際は、少なくともユーザの頭のサイズの変化、ユーザが眼鏡をかける可能性などに対応しなければならない大量生産されたヘルメットでは、チャンバーを完全に防音することは困難である。しかしながら、チャンバーへのある程度の音漏れは、ユーザが知覚する音のレベルを過度に悪化させることなく許容され得る。
【0050】
修正された実施形態では、プレート10には、図6に示されるように、緩衝材16が取り付けられたその前面の直立部17が提供される。直立部は、プレート10の上面から突き出している部分17aと、緩衝材が取り付けられている表面を提供するための突き出し部分17aに概ね垂直に延びる部分17bを有する。直立部17および緩衝材16は、スピーカからの音を伝達可能にする開口部13を取り巻き、ユーザの耳に向かってプレートの第2の面から延びる音響エンクロージャを形成する。このことはさらに、ANCシステムのスピーカからANCシステムのクワイエットゾーンへの音信号の音響結合を向上させる。直立部17は、ソフトな/柔軟性のあるプラスチック材により作られることが好ましく、ユーザが事故を起こした場合に変形し、ユーザに危険を及ぼさないようにする。
【0051】
上に説明したように、図1のANCシステムには、クワイエットゾーンの音レベルを感知するためのエラーマイクが提供される。理想的には、エラーマイクは、ユーザの耳に隣接するANCシステムのイヤーカップに提供される。しかしながら、エラーマイクがイヤーカップ内に個別に取り付けられる必要がある場合、プレート10とエラーマイクの所望の位置の間の距離に応じて、プレート10上に取り付けられたエラーマイクによってこのことを達成するのが困難であることがある。しかしながら、本発明のさらなる態様では、プレート10では、エラーマイクのための地点/取り付け点11が提供され、エラーマイクが確実かつ安全に取り付けられ得る。これはまた、その製造後にヘルメットにANCシステムを後付けするのを容易にする。本態様では、エラーマイクは、クワイエットゾーン内/クワイエットゾーンにその所望の位置に取り付けられていないが、エラーマイクがプレート10上の既知の位置に取り付けられる、すなわち、ヘルメット上の既知の位置に取り付けられるので、クワイエットゾーンに対するエラーマイクの位置は既知である。エラーマイクがクワイエットゾーンに正しく配置されていれば、エラーマイクによって取得されたはずの信号は、実際の場所でエラーマイクによって取得された信号に伝達関数を適用することによって推定できる。例えば、参照により本明細書にその内容が組み込まれる、https://www.researchgate.net/publication/235898249にて利用可能な、ACOUSTICS2005の議事録の「堅牢な仮想音響センシング」においてハリム等が述べているような、任意の適切な技術がこのために利用され得る。
【0052】
エラーマイクがクワイエットゾーンにおけるそれの所望の位置にないことに対する補完の処理はまた、上記の数式(1)のフィルタFi(t)を調整されたフィルタF’i(t)に置き換えることなどが考えられ、スピーカは調整された音信号を生成して、エラーマイクの異なる位置を補完する。
【0053】
確かに、一実施形態では、ANCシステムは、基準マイクおよびエラーマイクの両方として機能する、単一のマイクのみを含むことがある。マイクからの信号を使用して、上述のように所望のクワイエットゾーンに向かって進む音波についての情報が提供され、エラーマイクがクワイエットゾーンに正しく配置されていればエラーマイクによって調整されていたはずの信号を(上述の伝達関数を適用することによって)推測するためにも使用される。
【0054】
したがって、ANCシステムが適用する必要のあるフィルタは、ANCシステムの構成要素の物理的な配置(すなわち、基準マイク、スピーカ、クワイエットゾーン、およびエラーマイク(提供されれば)の相対的な位置と間隔)に依存するので、取り付けプレートの物理的な構成が、特定のモデルのヘルメット、あるいは同じメーカーの関連するヘルメットモデルのグループに固有である可能性が高いだけでなく、ANCシステムのパラメータが、特定のモデルのヘルメット、あるいは同じメーカーの関連するヘルメットモデルのグループにも概して固有であることが理解されよう。
【0055】
発明のさらなる態様では、ANCシステムのスピーカおよびANCシステムの制御電子機器は、単一のパッケージで提供され、ANCシステムに後付けされているヘルメットのEPS層(および提供されていればスピーカのハウジング15内)に設けられたスピーカのためのくぼみにフィットするような大きさおよび形状を持つ。直径約40mm、高さ約12mmのパッケージにおいて適切なスピーカおよびANC制御ユニットを提供することが可能であることが分かっている。制御電子機器は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装することができる。
【0056】
ANC制御電子機器に加えて、ヘルメットには一般に、ANCシステムの全体の動作を制御するための制御システムが提供される。便宜上、制御システムの構成要素が、以降「コントローラボード」と呼ばれる構成要素上に取り付けられるのが好ましい。繰り返しになるが、これは、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装することができる。コントローラボードは、電源、例えばバッテリ(コントローラボード上に取り付けられるか、他の場所に提供され得る)と通信し、ANCシステムに電力を供給して、ANC制御電子機器を動作させてスピーカを駆動する。コントローラボードはまた、好ましくは、ANCシステムの動作と一緒に、あるいはANCシステムの動作の代わりに、ANC以外の用途、例えば、通信または音楽ストリーミングで動作するようにスピーカを制御する、スピーカ/ANC制御電子機器パッケージの組み合わせに出力を提供することができる。追加でまたは代替的に、コントローラボードはまた、好ましくは、ANCシステムの状態および/またはANCシステムのパフォーマンス統計についての情報を提供するスピーカ/ANC制御電子機器パッケージの組み合わせから信号を受信することができる。追加でまたは代替的に、コントローラボードはまた、好ましくは、バッテリを充電可能なように、電源への接続のための充電入力を有し、ここで電源は充電可能バッテリである。上述のように、ヘルメットには通常、ユーザの左耳用のANCシステムとユーザの右耳用のANCシステムが取り付けられ、左右のANCシステムには別々のコントローラボードがある場合もあれば、左耳のANCシステムと右耳のANCシステムの両方のための単一のコントローラボードがある場合もある。
【0057】
コントローラボードおよびバッテリは、ヘルメットの任意の適切な場所に取り付けられ得る。
【0058】
特に好ましくは、スピーカ/ANC制御電子機器パッケージの組み合わせには、パッケージをヘルメット内の既存の電子コネクタに直接接続させ得る適切な電子コネクタが提供される。ヘルメットにANCシステムと互換性のあるコントローラボードがすでに付属している場合、既存のスピーカを取り外し、ANCスピーカ/ANC制御電子機器パッケージを既存のコネクタに接続し、ANCスピーカ/ANC制御電子機器パッケージをプレート10に取り付けることで、ヘルメットにANCシステムを設けることができる。次いで、バッフル/構成要素支持プレート10は上述のようにヘルメット上に取り付けられ、上述したようにヘルメットのパッド入りの生地の裏地に、例えば留め具を使用してヘルメットに留められる。次いで、エラーマイクおよび1つまたは複数の基準マイクが、プレート10上の地点/取り付け位置11、12に取り付けられ、ANCの設置を完了する。これらは、ANCスピーカ/ANC制御パッケージに事前に接続(例えば、配線など)されていてもよい。
【0059】
ヘルメットに、ANCシステムと互換性をもつコントローラボードがまだ提供されていない場合、上記のステップに加えて、(1つが提供されている場合、既存のコントローラボードを取り外してから)適切なコントローラボードを設置する必要がある。
【0060】
一般に、スピーカ/ANC制御回路パッケージの組み合わせは、以下の接続を必要とする。 - 電源(一般に、3~5V);
- ユーザがANCシステムをON/OFFできるようにするANC有効化/無効化入力;
例えば、以下の1つまたは複数であるような、少なくとも1つの他の入力/出力(デジタルまたはアナログのいずれか):
- 非ANC駆動信号のスピーカへの提供(例えば、ブルートゥース(登録商標)、携帯電話、あるいは他の通信、音楽/オーディオなど);
- ANCシステムのキャリブレーション;
- ANCフィルタ設定の変更(例えば、フィルタに周波数重み付け曲線を実装することにより、フィルタが減衰する周波数のフォーカスを変更する);
- システム更新の配信;
- ANCシステムのステータスを示す出力の提供;
- ANCシステムのパフォーマンス統計を示す出力の提供。
【符号の説明】
【0061】
10 プレート
11、12 地点/取り付け点
13 音響開口部
14 留め具開口部
15 ハウジング
16 緩衝材
17 直立部
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図6
【国際調査報告】