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特表2022-509044ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有するハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有するハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/48 20060101AFI20220113BHJP
   D02G 3/28 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
D02G3/48
D02G3/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525067
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2019018556
(87)【国際公開番号】W WO2020138996
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0170216
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョンハ
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036MA06
4L036MA33
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA18
4L036PA21
4L036PA26
4L036PA46
4L036UA07
4L036UA25
(57)【要約】
本発明によれば、アラミドマルチフィラメント糸とアラミド紡績糸とからなるアラミドハイブリッド下撚糸が、汎用下撚糸とともに上撚りされた合撚糸を提供することによって、高い強度および高いモジュラスを有するだけでなく、ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有することによって、タイヤの高性能化および軽量化を実現できる、ハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸が共に下撚りされて形成された第1下撚糸;および
第2マルチフィラメント糸が下撚りされて形成された第2下撚糸;が一緒に上撚りされた合撚糸を含み、
前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、
前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、
前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である、ハイブリッドタイヤコード。
【請求項2】
所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸の長さは前記第2下撚糸の長さの1.005~1.050倍である、請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項3】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸は第1撚り数をそれぞれ有する、請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項4】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸は共に第2撚り数で上撚りされており、
前記第2撚り数は前記第1撚り数と同じである、請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項5】
前記第1マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度(thickness)を有し、
前記第1紡績糸は30~8 ′S(英国式綿番手Neで30~8(S))の繊度を有し、
前記第2マルチフィラメント糸は500~3000デニール(denier)の繊度を有する、請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項6】
前記第1下撚糸に対する前記第2下撚糸の重量比は20:80~80:20である、請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項7】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸上にコートされた接着剤をさらに含む、請求項1に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項8】
ASTM D885/D885M-10a(2014)により測定される切断強度(tear tenacity)が8.0~15.0g/d(デニール)であり、
ASTM D885/D885M-10a(2014)により測定される切断伸度(elongation at break)が5~15%であり、
JIS-L 1017(2002)により実施されるディスク疲労テスト後の強力保持率(strength retention rate)が95%以上である、請求項7に記載のハイブリッドタイヤコード。
【請求項9】
第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸を合糸(doubling)してハイブリッド糸(hybrid yarn)を製造する第1段階;
前記ハイブリッド糸を下撚りして第1下撚糸を製造する第2段階;
第2マルチフィラメント糸を下撚りして第2下撚糸を製造する第3段階;および
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸を一緒に上撚りして合撚糸を製造する第4段階;を含み、
前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、
前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、
前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である、ハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項10】
前記第2、第3、および第4段階は一つの撚糸機によって行われる、請求項9に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項11】
前記第2、第3、および第4段階が行われる時前記ハイブリッド糸に加えられる張力は、所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸の長さが前記第2下撚糸の長さの1.005~1.050倍になる程度であり、前記第2マルチフィラメント糸に加えられる張力より小さい、請求項9に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項12】
前記第2段階の下撚りと前記第3段階の下撚りは第1撚り数でそれぞれ行われる、請求項9に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項13】
前記第4段階の上撚りは第2撚り数で行われ、
前記第2撚り数は前記第1撚り数と同じである、請求項12に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項14】
前記第1マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度を有し、
前記第1紡績糸は30~8 ′S(英国式綿番手Neで30~8(S))の繊度を有し、
前記第2マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度を有する、請求項9に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【請求項15】
前記合撚糸をRFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤またはエポキシ系接着剤を含む接着剤溶液に浸漬させる段階;
前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を70~200℃で30~120秒間乾燥させる段階;および
乾燥された前記合撚糸を200~250℃で30~120秒間熱処理する段階;をさらに含む、請求項9に記載のハイブリッドタイヤコードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2018年12月27日付韓国特許出願第10-2018-0170216号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、相異する物性を有する異種の糸からなるハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法に関し、より具体的には、高い強度(tenacity)および高いモジュラスを有するだけでなく、ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有することによってタイヤの高性能化および軽量化を実現できるハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤ、コンベヤーベルト、V-ベルト、ホースなどのゴム製品の補強材として、繊維コード、特に接着剤で処理された繊維コード[いわゆる、「ディップコード(dip cord)」]が広く用いられている。繊維コードの材料としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維などがある。最終ゴム製品の性能を向上させる重要な方法の一つは、補強材として使用される繊維コードの物性を向上させることである。
【0004】
タイヤの補強材として使用される繊維コードをタイヤコードという。自動車の性能向上および道路状態の改善により、車両の走行速度が次第に増加しており、高速走行時にもタイヤの安定性および耐久性を維持させることができるタイヤコードに対する研究が活発に進められている。
【0005】
また、環境に優しい車両に対する要求の増加に伴い、良好な燃費のための車両の軽量化が大きなイシュー(課題、論点)として浮び上がっている。したがって、タイヤの軽量化のための高性能タイヤコードに対する研究も活発に進められている。
【0006】
繊維/金属/ゴムの複合体であるタイヤは最外側に位置して路面と接触するトレッド(tread)、前記トレッドの下地側にあるキャッププライ(cap ply)、前記キャッププライの下地側にあるベルト(belt)、および前記ベルトの下地側にあるカーカス(carcass)を含む。
【0007】
高速走行時のベルト(例えば、鋼鉄ベルト)の変形を防止するための、キャッププライ用タイヤコードとして、ナイロンマルチフィラメント糸とアラミドマルチフィラメント糸で製造されたハイブリッドタイヤコードが開発された。前記ナイロン-アラミドハイブリッドタイヤコードは、ナイロンの高い収縮応力により、高速走行時におけるベルトの変形の防止に有利であり、アラミドの高いモジュラスにより、長時間の駐車によるタイヤの変形(いわゆる、「フラットスポット」)の防止に有利である。
【0008】
しかし、前記ナイロン-アラミドハイブリッドタイヤコードは、S-Sカーブパターン上で、初期にナイロン物性が発現して低いモジュラスを示すのであるから、タイヤの全体的な骨組みの役割をなすことでタイヤの形態安定性に甚大な影響を及ぼす、カーカス用タイヤコードとしては適しない。
【0009】
したがって、ナイロンマルチフィラメント糸より高いモジュラスを有するポリエステル(例えば、PET)マルチフィラメント糸でもってナイロンマルチフィラメント糸を代替したポリエステル-アラミドハイブリッドタイヤコードがカーカス用タイヤコードとして開発された。
【0010】
しかし、前記2種類のハイブリッドタイヤコードに共通して使用されるアラミドマルチフィラメント糸の低い切断伸度に起因して、前記ポリエステル-アラミドハイブリッドタイヤコードを使用する場合に、耐疲労特性が低いだけでなく、ゴムに対する接着力が弱いという短所があり、これに対する改善が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような関連技術の制限および短所に起因する問題点を防止できるハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法を提供する。
【0012】
したがって、本発明の一観点は、高い強力および高いモジュラスを有するだけでなく、ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有することによってタイヤの高性能化および軽量化を実現できるハイブリッドタイヤコードを提供することにある。
【0013】
本発明の他の観点は、高い強力および高いモジュラスを有するだけでなく、ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有することによってタイヤの高性能化および軽量化を実現できるハイブリッドタイヤコードを高い生産性および安いコストで製造できる方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の特徴および利点は、以下に記載されたものであり、部分的にはそのような技術から自明なものである。または、本発明の実施を通じて、本発明のさらに他の特徴および利点を理解することができるであろう。本発明の目的および他の利点は、発明の詳細な説明および特許請求の範囲で特定された構造によって実現されて達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の一実施例により、本明細書では、第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸が一緒に下撚りされて形成された第1下撚糸;および、第2マルチフィラメント糸が下撚りされて形成された第2下撚糸;が一緒に上撚りされた合撚糸を含み、前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である、ハイブリッドタイヤコードが提供される。
【0016】
所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸の長さは前記第2下撚糸の長さの1.005~1.050倍であり得る。
【0017】
前記第1マルチフィラメント糸は500~3000デニール(denier)の繊度を有し得、前記第1紡績糸は30~8 ′Sの番手を含む繊度を有し得る。また、前記第2マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度を有し得る。
【0018】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸は、第1撚り数をそれぞれ有し得る。
【0019】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸は一緒に第2撚り数で上撚りされているのであり得、前記第2撚り数は前記第1撚り数と同一であり得る。
【0020】
前記第1下撚糸に対する前記第2下撚糸の重量比は20:80~80:20であり得る。
【0021】
前記ハイブリッドタイヤコードは、前記第1下撚糸と前記第2下撚糸上にコートされた接着剤をさらに含み得る。
【0022】
ASTM D885/D885M-10a(2014)により測定される前記ハイブリッドタイヤコードの切断強度(tear tenacity)は8.0~15.0g/dであり得、ASTM D885/D885M-10a(2014)により測定される前記ハイブリッドタイヤコードの切断伸度(elongation at break)は5~15%であり得、JIS-L 1017(2002)により実施されるディスク疲労テスト後の前記ハイブリッドタイヤコードの強力保持率(strength retention rate)は95%以上であり得る。
【0023】
本発明の他の観点により、第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸を合糸(doubling)してハイブリッド糸(hybrid yarn)を製造する第1段階;前記ハイブリッド糸を下撚りして第1下撚糸を製造する第2段階;第2マルチフィラメント糸を下撚りして第2下撚糸を製造する第3段階;および前記第1下撚糸と前記第2下撚糸を一緒に上撚りして合撚糸を製造する第4段階;を含み、前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、前記第2マルチフィラメント糸は、ナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である、ハイブリッドタイヤコードの製造方法が提供される。
【0024】
前記第2、第3および第4段階は一つの撚糸機によって行われ得る。
【0025】
前記第2、第3および第4段階が行われる際に前記ハイブリッド糸に加えられる張力は、所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸の長さが前記第2下撚糸の長さの1.005~1.050倍になる程度であり、前記第2マルチフィラメント糸に加えられる張力より小さいのであり得る。
【0026】
前記第2段階の下撚りと前記第3段階の下撚りは、第1撚り数でそれぞれ行われ得る。
【0027】
前記第4段階の上撚りは第2撚り数で行われ得、前記第2撚り数は前記第1撚り数と同一であり得る。
【0028】
前記第1マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度を有し得、前記第1紡績糸は30~8 ′Sの繊度を有し得、前記第2マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度を有し得る。
【0029】
前記方法は、前記合撚糸をRFL(Resorcinol Formaldehyde Latex;レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)接着剤またはエポキシ系接着剤を含む接着剤溶液に浸漬させる段階;前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を70~200℃で30~120秒間乾燥させる段階;および乾燥された前記合撚糸を200~250℃で30~120秒間熱処理する段階をさらに含み得る。
【0030】
上記のような一般的叙述および以下の詳細な説明は、いずれも本発明を例示するか説明するためのものであり、特許請求の範囲の発明に対するより詳しい説明を提供するためのものとして理解しなければならない。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、アラミドマルチフィラメント糸とアラミド紡績糸とのアラミドハイブリッド下撚糸が、ナイロンまたはポリエステルの下撚糸とともに上撚りされている合撚糸を含む高性能ハイブリッドタイヤコードが提供されうる。すなわち、前記アラミド紡績糸の使用により、ゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有しうるのであり、タイヤの高性能化および軽量化を実現することができる。また、前記アラミドマルチフィラメント糸はアラミド紡績糸とともに使用されるので、低い切断伸度の問題を防止することができるのであり、これと同時にアラミドマルチフィラメントの使用により、高い強力および高いモジュラスを有することができる。
【0032】
また、本発明によれば、アラミドハイブリッド下撚糸と、ナイロンまたはポリエステルの下撚糸をそれぞれ形成する工程(すなわち、下撚り工程)、および、前記アラミドハイブリッド下撚糸とナイロンまたはポリエステルの下撚糸とでもって合撚糸を形成する工程(すなわち、上撚り工程)が、一つの撚糸機によって行われるので、ハイブリッドタイヤコードの生産性を向上させて生産費を減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明のハイブリッドタイヤコードおよびその製造方法の実施例について具体的に説明する。
【0034】
本発明の技術的思想および範囲を逸脱しない範囲内で本発明の多様な変更および変形が可能であることは当業者に自明である。したがって、本発明は特許請求の範囲に記載された発明およびその均等物の範囲内での変更および変形をすべて含む。
【0035】
本明細書で、第1および第2の用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0036】
本明細書で使用される用語の「マルチフィラメント糸(multifilament yarn)」は、多数の連続フィラメント(continuous filaments)からなる糸を意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語の「紡績糸(spun yarn)」は、多数の短繊維(staple fibers)を長さ方向に撚って作った糸を意味する。
【0038】
本明細書で使用される用語の「下撚り(Z-twist)」は、反時計回りに糸を撚ることを意味し、本明細書で使用される用語の「上撚り(S-twist)」は時計回りに糸を撚ることを意味する。
【0039】
本明細書で使用される用語の「合撚糸(cabled yarn)」は、2本以上の下撚糸(Z-twisted yarns)を上撚りして作った糸を意味し、「ローコード(raw cord;原コード)」と呼ばれることもある。
【0040】
本明細書で使用される用語の「タイヤコード」は、前記「ローコード」だけでなくゴム製品に直接適用されるように接着剤がコートされた合撚糸を意味する「ディップコード(dip cord)」までも含む概念である。
【0041】
本明細書で使用される「撚り数(twist number)」は、1m当たりの撚りの回数を意味し、その単位はTPM(Twist Per Meter)である。
【0042】
また、本明細書で使用される「′S」は、同一重量の繊維に対する長さを示すことで、糸の太さを表示するものであり(恒重式)、英国式綿番手(番手、count)を意味する。重量に対する長さを示す方法であるため、値が大きければ大きいほど糸は細く、小さければ太い糸を表す。英国式綿番手の記号はNeであり、これに対する単糸の表記はOO(数字) ′sとする。英国式綿番手の計算は1lb(pound;ポンド)の重量の長さが840yd(yard;ヤード)の何倍になるかを計算することであり、下記式1により計算する。
【0043】
[式1]
綿番手(′S)=(1lb重量に対する繊維の長さ(yd))÷840yd
【0044】
また、前記綿番手は良く知られているように、綿糸の重量が1ポンド(453g)であるときに含まれる840ヤード(768m)の長さの個数を意味し、このような場合を1番手という。前記番手は前記説明したように、数字が大きいほど細い糸を意味する。
【0045】
発明の一実施形態によれば、第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸が共に下撚りされて形成された第1下撚糸;および第2マルチフィラメント糸が下撚りされて形成された第2下撚糸;が共に上撚りされた合撚糸を含み、前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸であるハイブリッドタイヤコードが提供される。
【0046】
具体的には、本発明のハイブリッドタイヤコードは第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸が共に下撚りされて形成された第1下撚糸と第2マルチフィラメント糸が下撚りされて形成された第2下撚糸を含む。前記第1下撚糸と前記第2下撚糸は共に上撚りされている。
【0047】
特に、本発明ではアラミドマルチフィラメント糸とアラミド紡績糸のアラミドハイブリッド下撚糸を用いることによって、従来のナイロンの物性が先に発現して現れる低いモジュラスの問題と、アラミドマルチフィラメントの使用による低い切断伸度などの問題を解決することができる。すなわち、ハイブリッド下撚糸に含まれるアラミド紡績糸によってゴムに対する強い接着力および優れた耐疲労特性を有することができ、タイヤの高性能化および軽量化を実現することができる。また、ハイブリッド下撚糸の製造に共に使用されるアラミドマルチフィラメントはアラミド紡績糸とともに使用されるので物性の低下を防止することができる。したがって、前記アラミドマルチフィラメントにより高い強力および高いモジュラスを実現することができる。
【0048】
好ましくは、本発明によれば、前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である。
【0049】
アラミド短繊維を線状に撚ることによって形成されるアラミド紡績糸は、本発明のハイブリッドタイヤコードとゴムの物理的結合を可能にすることによってアラミドマルチフィラメント糸のゴムに対する低い接着力を補完することができ、結果的にハイブリッドタイヤコードのゴムに対する接着力を向上させることができる。したがって、本発明のハイブリッドタイヤコードは、類似の繊度を有するもののアラミド紡績糸を有しないハイブリッドタイヤコード(すなわち、アラミドマルチフィラメント糸とナイロン/ポリエステルマルチフィラメント糸のみで形成されたハイブリッドタイヤコード)に比べて、ゴムに対する接着力が10%以上高い。
【0050】
また、本発明によれば、ハイブリッドタイヤコード内に存在するアラミド紡績糸が、外部からの衝撃を吸収する緩衝機能を遂行することによって前記ハイブリッドタイヤコードの耐疲労特性を向上させることができる。
【0051】
本発明のアラミドマルチフィラメント糸はパラ-アラミドまたはメタ-アラミドで形成されうるのであり、好ましくはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)[poly(p-phenylene terephthalamide)]で形成されうる。前記アラミドマルチフィラメント糸は、500~3000denierの繊度、20g/d以上の引張強度、および3%以上の切断伸度を有することができる。
【0052】
本発明のアラミド紡績糸の製造に用いられるアラミド短繊維もパラ-アラミドまたはメタ-アラミドで形成されうるのであり、好ましくはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)で形成されうる。前記アラミド紡績糸は30~8 ′Sの番手を含む繊度を有することができる(約170~約660デニールに該当)。前記アラミド紡績糸の番手が30 ′S以上の場合はアラミド紡績糸が過度に細いためにゴムとの物理的接着力向上に役に立たず、8 ′S以下の場合は、相対的に劣るアラミド紡績糸の比率が高まって強度および弾性率が低くなるという問題がある。
【0053】
前記第2マルチフィラメントを構成する前記ナイロンマルチフィラメント糸は、ナイロン6またはナイロン66で形成されうる。前記ポリエステルマルチフィラメント糸は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されうる。前記第2マルチフィラメント糸は、500~3000denierの繊度を有し得る。
【0054】
タイヤコードの物性と生産費をすべて考慮して、前記第1下撚糸に対する前記第2下撚糸の重量比を決定することができる。本発明の一実施例によれば、前記第1下撚糸に対する前記第2下撚糸の重量比は20:80~80:20であり得る。
【0055】
前記第1および第2下撚糸は、同じ撚り方向(第1撚り方向)を有し、同じ撚り数、例えば200~500TPMの第1撚り数をそれぞれ有し得る。
【0056】
前記第1下撚糸と前記第2下撚糸とは一緒に第2撚り数で上撚りされており、前記第2撚り数は、前記第1撚り数と同一であり得る。前記上撚りの方向は、前記第1の撚り方向と逆方向である。
【0057】
本発明の一実施例によれば、所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸の長さは前記第2下撚糸の長さの1.005~1.050倍である。すなわち、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、カバーリング構造(第1下撚糸が第2下撚糸をカバーリング)が若干加味されたマージ構造(merged structure)を有する。
【0058】
したがって、第1下撚糸と第2下撚糸が実質的に同じ長さおよび同じ構造を有するマージ構造(すなわち、所定の長さのハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合は、前記第1下撚糸の長さが前記第2下撚糸の長さの1.005倍未満である構造)のハイブリッドコードとは異なり、本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードによれば、タイヤの引張/圧縮が繰り返される際にハイブリッドタイヤコードに加えられるストレスが、第1下撚糸(すなわち、アラミド下撚糸)だけでなく第2下撚糸(すなわち、ナイロン/ポリエステル下撚糸)にも分散されうる。結果的に、本発明のハイブリッドタイヤコードは優れた耐疲労特性を有する。
【0059】
所定の長さのハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸の長さが前記第2下撚糸の長さの1.050倍を超える場合には、従来技術のカバーリング構造と類似の不安定な構造を有するようになるので、物性の偏差によるタイヤ不良率が増加する。
【0060】
本発明の一実施例によるハイブリッドタイヤコードは、タイヤの他の構成(例えば、ゴム)との接着力向上のために前記第1下撚糸と前記第2下撚糸の上にコートされた接着剤をさらに含むディップコード(dip cord)であり得る。前記接着剤はRFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤またはエポキシ系接着剤であり得る。
【0061】
前記ディップコードは、ASTM D885/D885M-10a(2014)により測定される切断強度が8.0~15.0g/dであり、ASTM D885/D885M-10a(2014)により測定される切断伸度が5~15%であり、JIS-L 1017(2002)により実施されるディスク疲労テスト後の強力保持率が95%以上であり得る。
【0062】
また、前記ディップコードは0.3~2.5%の乾熱収縮率(温度:180℃、初荷重:0.01g/d、時間:2分)を有し得る。前記乾熱収縮率は、サンプルを25℃の温度および65%の相対湿度の条件下で24時間放置した後に、テストライト(Testrite)機器を用いて180℃で2分間0.01g/denierの初荷重で測定されたものである。
【0063】
以下では上述した本発明のハイブリッドタイヤコードの製造方法についてより詳細に説明する。
【0064】
発明の他の実施形態により、第1マルチフィラメント糸と第1紡績糸を合糸(doubling)してハイブリッド糸(hybrid yarn)を製造する第1段階;前記ハイブリッド糸を下撚りして第1下撚糸を製造する第2段階;第2マルチフィラメント糸を下撚りして第2下撚糸を製造する第3段階;および前記第1下撚糸と前記第2下撚糸を一緒に上撚りして合撚糸を製造する第4段階;を含み、前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である、ハイブリッドタイヤコードの製造方法が提供されうる。
【0065】
前述したように、前記第1マルチフィラメント糸はアラミドマルチフィラメント糸であり、前記第1紡績糸はアラミド紡績糸であり、前記第2マルチフィラメント糸はナイロンマルチフィラメント糸またはポリエステルマルチフィラメント糸である。
【0066】
前記アラミドマルチフィラメント糸はパラ-アラミドまたはメタ-アラミドで形成されうるのであり、好ましくはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)[poly(p-phenylene terephthalamide)]で形成されうる。
【0067】
前記アラミド紡績糸の製造に用いられるアラミド短繊維もパラ-アラミドまたはメタ-アラミドで形成されうるのであり、好ましくはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)で形成されうる。
【0068】
前記ナイロンマルチフィラメント糸はナイロン6またはナイロン66で形成されることができ、前記ポリエステルマルチフィラメント糸はポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されることができる。前記第2マルチフィラメント糸は500~3000denierの繊度を有し得る。
【0069】
本発明の一実施例によれば、500~3000denierの繊度を有するアラミドマルチフィラメント糸と、30~8 ′Sの番手を含む繊度(約170~約660デニールに該当)を有するアラミド紡績糸とを合糸してアラミドハイブリッド糸を形成する。
【0070】
引き続いて、下撚りと上撚りをすべて行うケーブルコード撚糸機(例えば、Allma社のCable Corder)に前記アラミドハイブリッド糸を500~3000denierの繊度を有するナイロンまたはポリエステルマルチフィラメント糸とともに投入する。
【0071】
前記撚糸機において、アラミド下撚糸を形成するために前記アラミドハイブリッド糸を下撚りする段階と、ナイロン/ポリエステル下撚糸を形成するためにナイロン/ポリエステルマルチフィラメント糸を下撚りする段階とが同時に行われ、合撚糸を形成するために前記アラミド下撚糸と前記ナイロン/ポリエステル下撚糸とを一緒に上撚りする段階が前記下撚り段階に引き続き連続的に行われる。
【0072】
前述したように、前記下撚りと上撚りを行う時200~500TPMの範囲内で同じ撚り数が適用される。
【0073】
本発明によれば、下撚りと上撚りが一つの撚糸機で行われる連続式方法で合撚糸が製造されるので、アラミドマルチフィラメント糸とナイロン/ポリエステルマルチフィラメント糸を撚糸機でそれぞれ下撚りした後に他の撚糸機でこれらを一緒に上撚りするバッチ式の方法に比べて、ハイブリッドタイヤコードの生産性が向上しうる。
【0074】
本発明の一実施例によれば、前記撚糸機によって前記の下撚りと上撚りが行われる際に前記ハイブリッド糸(すなわち、アラミドハイブリッド糸)に加えられる張力は、前記第2マルチフィラメント糸(すなわち、ナイロン/ポリエステルマルチフィラメント糸)に加えられる張力より小さい。したがって、一つの撚糸機によって下撚りと上撚りが行われるにもかかわらず、所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合は、前記アラミド下撚糸の長さが前記ナイロン/ポリエステル下撚糸の長さよりも、若干、より長いのでありうる。これにより、タイヤの引張/圧縮が繰り返される際にハイブリッドタイヤコードに加えられるストレスが、アラミド下撚糸とナイロン/ポリエステル下撚糸に分散されうるのであり、ハイブリッドタイヤコードが優れた耐疲労特性を有するようになることで、長時間の高速走行でもタイヤの安定性を維持させることができる。
【0075】
本発明の一実施例によれば、前記ハイブリッド糸(すなわち、アラミドハイブリッド糸)に加えられる張力と、前記第2マルチフィラメント糸(すなわち、ナイロン/ポリエステルマルチフィラメント糸)に加えられる張力との差は、所定の長さの前記ハイブリッドタイヤコードの上撚りをアンツイストする場合、前記第1下撚糸(すなわち、アラミド下撚糸)の長さが前記第2下撚糸(すなわち、ナイロン/ポリエステル下撚糸)の長さの1.005~1.050倍になりうるだけの差であり得る。
【0076】
前記撚糸機によって前記下撚りと上撚りが行われる際に、前記ハイブリッド糸(すなわち、アラミドハイブリッド糸)および前記第2マルチフィラメント糸(すなわち、ナイロン/ポリエステルマルチフィラメント糸)に、それぞれ加えられる張力は、前記撚糸機(Allma社のCable Corder)の「Creel Yarn Tension」と「Inner Yarn Tension」を適切にセットすることによって調節することができる。
【0077】
ローコード(raw cord)でないディップコード(dip cord)を製造する実施例の場合、タイヤの他の構成(例えば、ゴム)との接着性向上のために、前記合撚糸をRFL(Resorcinol Formaldehyde Latex)接着剤またはエポキシ系接着剤を含む接着剤溶液に浸漬させる段階、前記接着剤溶液が含浸された前記合撚糸を乾燥させる段階、および乾燥された前記合撚糸を熱処理する段階が、追加的に行われ得る。
【0078】
前記乾燥工程の温度および時間は、前記接着剤溶液の組成によって変わりうるが、通常70~200℃で30~120秒間、前記乾燥工程が行われる。
【0079】
前記熱処理工程は、200~250℃で30~120秒間実施される。
【0080】
前記の浸漬段階、乾燥段階、および熱処理段階は、ロールトゥロール(roll-to-roll)工程によって連続的に行われ得る。
【0081】
前記撚糸機によって製造された合撚糸(ローコード)が、接着剤溶液に浸漬された後に乾燥および熱処理される過程で、前記第2マルチフィラメント糸の過度な収縮を防止するために、連続的に行われる前記の浸漬、乾燥、および熱処理段階にて前記合撚糸(ローコード)に加えられる張力が適宜に調節される。
【0082】
以下、本発明の具体的な実施例および比較例により本発明の効果について説明する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、これらは本発明の権利範囲を制限するものではない。
【0083】
実施例1
1000denierのアラミド[ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)]マルチフィラメント糸と20 ′Sのアラミド[ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)]紡績糸を合糸してアラミドハイブリッド糸を準備した。
【0084】
引き続き、前記アラミドハイブリッド糸と840denierのナイロン66マルチフィラメント糸をケーブルコード撚糸機(Allma社のCable Corder)に投入して360TPMの撚り数で下撚りと上撚りをそれぞれ行うことによって合撚糸を製造した。前記下撚りと上撚りを行う際に、前記アラミドハイブリッド糸と前記ナイロン66マルチフィラメント糸にそれぞれ加えられる張力を調節することによって、前記合撚糸におけるナイロン66下撚糸の長さ(L)に対するアラミド下撚糸の長さ(L)の比率(すなわち、L/L)が1.03になるようにした。
【0085】
引き続き、前記合撚糸をレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)接着剤溶液に浸漬させた。RFL接着剤溶液が含浸された合撚糸を、150℃で100秒間乾燥させて240℃で100秒間熱処理することによってハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0086】
実施例2
ナイロン66マルチフィラメント糸の繊度が1260denierであることを除いては、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0087】
実施例3
アラミドマルチフィラメント糸の繊度が1500denierであり、下撚りと上撚りが300TPMの撚り数でそれぞれ行われたことを除いては、実施例2と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0088】
実施例4
アラミド紡績糸の繊度が16 ′Sであることを除いては、実施例3と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0089】
実施例5
ナイロン66マルチフィラメント糸の代わりに1000denierのPETマルチフィラメント糸が使用され、下撚りと上撚りが460TPMの撚り数でそれぞれ行われたことを除いては、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0090】
実施例6
ナイロン66マルチフィラメント糸の代わりに1500denierのPETマルチフィラメント糸が使用されたことを除いては、実施例4と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0091】
比較例1
前記アラミドマルチフィラメント糸を前記アラミド紡績糸と合糸せず、前記ナイロン66マルチフィラメント糸とともに前記ケーブルコード撚糸機に投入して下撚りと上撚りをそれぞれ行ったことを除いては、実施例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0092】
比較例2
ナイロン66マルチフィラメント糸の繊度が1260denierであることを除いては、比較例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0093】
比較例3
アラミドマルチフィラメント糸の繊度が1500denierであり、下撚りと上撚りが300TPMの撚り数でそれぞれ行われたことを除いては、比較例2と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0094】
比較例4
ナイロン66マルチフィラメント糸の代わりに1000denierのPETマルチフィラメント糸が使用され、下撚りと上撚りが460TPMの撚り数でそれぞれ行われたことを除いては、比較例1と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0095】
比較例5
ナイロン66マルチフィラメント糸の代わりに1500denierのPETマルチフィラメント糸が使用されたことを除いては、比較例3と同様の方法でハイブリッドタイヤコードを完成した。
【0096】
[実験例]
上記の実施例および比較例によって得られたハイブリッドタイヤコードの(i)強力、(ii)切断強度、(iii)切断伸度、(iv)ゴムに対する接着力、および(v)ディスク疲労テスト後の強力保持率を次の方法でそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0097】
*強力(kgf)、切断強度、切断伸度
各ハイブリッドタイヤコード当たり250mm長さのサンプル10個を準備した。引き続き、ASTM D885/D885M-10a(2014)テスト方法により、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)を用いて各サンプルに300m/min引張速度を加えることによって各サンプルの強力、切断強度および切断伸度をそれぞれ測定した。引き続き、10個のサンプルの強力、切断強度および切断伸度の平均値をそれぞれ算出した。
【0098】
*ゴムに対する接着力
ASTM D885/D885M-10a(2014)に規定されているH-Test方法を用いてハイブリッドタイヤコードのゴムに対する接着力を測定した。
【0099】
*ディスク疲労テスト後の強力保持率(%)
強力(疲労前強力)が測定されたハイブリッドタイヤコードをゴムに加硫して試料を製造した後、JIS-L 1017(2002)に規定されたテスト方法にしたがい、ディスク疲労測定機(Disk Fatigue Tester)を用いて、80℃で2500rpmの速度で回転させながら-8%~+8%の範囲内で引張および収縮を16時間の間繰り返すことによって、前記試料に疲労を加えた。引き続いて、前記試料からゴムを除去した後にハイブリッドタイヤコードの疲労後の強力を測定した。前記疲労前強力と疲労後強力に基づいて、下記の式2によって定義される強力保持率を計算した。
【0100】
[式2]
強力保持率(%)=[疲労後強力(kgf)/疲労前強力(kgf)]×100
【0101】
ここで、疲労前および疲労後の強力(kgf)は、ASTM D885/D885M-10a(2014)テスト方法にしたがい、インストロン試験機(Instron Engineering Corp.,Canton,Mass)を用いて、250mmのサンプルに対して300m/minの引張速度を加えながらハイブリッドタイヤコードの切断強力(tear strength)を測定することによって求めた。
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1の結果を見ると、実施例1~6はアラミド紡績糸をアラミドマルチフィラメントとともに使用した下撚糸を使用することによって、比較例1~5に比べて強力、切断強度、切断伸度がいずれも優れるものであった。特に、本発明の実施例1~6は、比較例に比べて顕著に優れたゴムに対する接着力と強力保持率を示して耐疲労特性が向上し、タイヤ高性能化および軽量化を示すことができる。
【0104】
これに対し、比較例1~5は、アラミドマルチフィラメント糸の低い切断伸度により、一定水準の強力と強度を示したとしても、ゴムに対する接着力が不良であるだけでなく強力保持率が不良であり、耐疲労特性が劣る結果を示した。
【国際調査報告】