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特表2022-509052ウォッシュコートで基材をコーティングするための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ウォッシュコートで基材をコーティングするための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/18 20060101AFI20220113BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220113BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20220113BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220113BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20220113BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220113BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20220113BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20220113BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B05B1/18 101
B01J35/04 301B
B01J35/04 301E
B01J27/224 A ZAB
B01J37/02 101B
B01D53/86 222
B01D53/86 228
B01D53/86 245
B01D53/86 280
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B05C5/00 101
B05D1/28
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525284
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 GB2019053332
(87)【国際公開番号】W WO2020109771
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】1819454.8
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】バーゲス、ネイル
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ、ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】トムソン、クレイグ
【テーマコード(参考)】
4D075
4D148
4F033
4F041
4G169
【Fターム(参考)】
4D075AC13
4D075AC71
4D075AC82
4D075AC84
4D075AC86
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075AC96
4D075AE01
4D075CA34
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA19
4D075DA21
4D075DB01
4D075DC16
4D075EA05
4D075EA06
4D075EA07
4D075EA10
4D075EA12
4D075EC01
4D075EC10
4D148AA06
4D148AA08
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA11Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA32Y
4D148BA33Y
4D148BB02
4F033AA01
4F033BA03
4F033DA05
4F033EA01
4F033JA02
4F033JA03
4F033NA01
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA02
4F041BA13
4F041BA35
4F041BA59
4G169AA01
4G169AA04
4G169BA07A
4G169BB01B
4G169BC69A
4G169BD04B
4G169BD05B
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA09
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA25
4G169EA27
4G169FB79
(57)【要約】
基材の面上にウォッシュコートを堆積させるためのウォッシュコートシャワーヘッドは、ウォッシュコートを受け入れるための入口を有するハウジングと、シャワーヘッドプレートと、バッフルと、を備える。ハウジング及びシャワーヘッドプレートは、バッフルがシャワーヘッド空洞内に配置された状態でシャワーヘッド空洞を画定している。シャワーヘッドプレートは、基材の面に向けてウォッシュコートを排出するための複数のノズル開口を有する。バッフルは、不透過性中央本体と、不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、複数のアームは、不透過性中央本体の周囲に円周方向に配置された複数の流れ開口を画定している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の面上にウォッシュコートを堆積させるためのウォッシュコートシャワーヘッドであって、前記基材は、前記ウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置されており、前記ウォッシュコートシャワーヘッドは、
前記ウォッシュコートを受け入れるための入口を有するハウジングと、
シャワーヘッドプレートと、
バッフルと、を備え、
前記ハウジング及び前記シャワーヘッドプレートは、シャワーヘッド空洞を画定しており、前記バッフルは、前記シャワーヘッド空洞内に配置されており、
前記シャワーヘッドプレートは、前記基材の前記面に向けて前記ウォッシュコートを排出するための複数のノズル開口を備え、
前記バッフルは、不透過性中央本体と、前記不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、前記複数のアームは、前記不透過性中央本体の周囲に円周方向に配置された複数の流れ開口を画定しており、
前記バッフルは、前記不透過性中央本体が前記シャワーヘッドプレートから離間されているように、前記シャワーヘッド空洞内に取り付けられており、
前記不透過性中央本体は、前記入口を通って前記シャワーヘッド空洞に入ったウォッシュコートが、前記不透過性中央本体の周りを流れて前記複数の流れ開口を通るように向けられた後に、前記シャワーヘッドプレートの前記ノズル開口を通って排出されるように、前記ハウジングの前記入口の下方に位置合わせされている、ウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項2】
前記バッフルは、前記不透過性中央本体から延びている4つのアームを備え、前記4つのアームは、前記不透過性中央本体の周囲に円周方向に配置された4つの流れ開口を画定しており、任意選択的に、前記4つのアームは、前記不透過性中央本体の周囲に円周方向に等間隔で配置されている、請求項1に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項3】
前記複数のアームは、前記不透過性中央本体から半径方向に延びており、任意選択的に、前記複数のアームの各々の幅が、前記不透過性中央本体の近位の位置から前記不透過性中央本体の遠位の位置まで増大している、請求項1又は2に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項4】
前記不透過性中央本体は、平面視で円形である、請求項1~3のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項5】
前記不透過性中央本体は、前記ハウジングへの前記入口の直径よりも大きい直径を有し、任意選択的に、前記入口の中心長手方向軸と前記不透過性中央本体の中心軸とが一致している、請求項1~4のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項6】
前記不透過性中央本体は、20~55mm、好ましくは25~50mm、より好ましくは27、35又は50mmであるように選択された直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項7】
前記ハウジングの前記入口は、25.4mm(1インチ)までの内径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項8】
前記入口に面する前記不透過性中央本体の上面は、突出部を備え、好ましくは、前記突出部は、円錐形状の表面又は一部円錐形状の表面である、請求項1~7のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項9】
前記バッフルは、前記ハウジング及び前記シャワーヘッドプレートの少なくとも一方に取り付けられており、好ましくは、前記バッフルは、前記ハウジングにのみ取り付けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項10】
前記バッフルは、前記ハウジングの前記入口を取り囲むが前記ハウジングの前記入口に衝突しない、前記ハウジングの取付ポイントに取り付けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項11】
前記バッフルは、前記複数のアームと、前記ハウジング及び前記シャワーヘッドプレートの少なくとも一方との間に延びている固定具によって取り付けられている、請求項1~10のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項12】
前記固定具は、前記複数のアームの各々の遠位端部から延びている、請求項11に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項13】
前記固定具は、前記不透過性中央本体の中心軸上を中心とする、65~75mm、好ましくは70mmのピッチの円直径上に配置されている、請求項11又は12に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項14】
前記シャワーヘッド空洞は、12~40mmの深さ、好ましくは15~30mmの深さを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項15】
前記不透過性中央本体は、5~10mmの間隔で前記シャワーヘッドプレートから離間されている、請求項1~14のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッドの一部を形成するためのバッフルであって、前記バッフルは、不透過性中央本体と、前記不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、前記複数のアームは、前記不透過性中央本体の周囲に円周方向に配置された複数の流れ開口を画定している、バッフル。
【請求項17】
- 前記複数のアームは、前記不透過性中央本体から半径方向に延びており、及び/又は、
- 前記複数のアームの各々の幅が、前記不透過性中央本体の近位の位置から前記不透過性中央本体の遠位の位置まで増大しており、及び/又は、
- 前記不透過性中央本体は、平面視で円形であり、及び/又は、
- 前記不透過性中央本体は、20~55mm、好ましくは25~50mm、より好ましくは27、35又は50mmであるように選択された直径を有し、及び/又は、
- 前記不透過性中央本体の上面が、突出部を備え、好ましくは、前記突出部は、円錐形状の表面又は一部円錐形状の表面であり、及び/又は、
- 前記複数のアームは、固定具を接続するための取付ポイントを備え、及び/又は、
- 前記取付ポイントは、前記複数のアームの各々の遠位端部に配置されており、及び/又は、
- 前記取付ポイントは、前記不透過性中央本体の中心軸上を中心とする、65~75mm、好ましくは70mmのピッチの円直径上に配置されている、請求項16に記載のバッフル。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載のウォッシュコートシャワーヘッドを備える、基材コーティング装置。
【請求項19】
ウォッシュコートシャワーヘッドを使用してウォッシュコートで基材をコーティングする方法であって、
前記ウォッシュコートシャワーヘッドは、
入口を有するハウジングと、
シャワーヘッドプレートと、
バッフルと、を備えるタイプのものであり、
前記ハウジング及び前記シャワーヘッドプレートは、シャワーヘッド空洞を画定しており、前記バッフルは、前記シャワーヘッド空洞内に配置されており、
前記シャワーヘッドプレートは、複数のノズル開口を備え、
前記バッフルは、不透過性中央本体と、前記不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、前記複数のアームは、前記不透過性中央本体の周囲に円周方向に配置された複数の流れ開口を画定しており、
前記バッフルは、前記不透過性中央本体が前記シャワーヘッドプレートから離間されているように、前記シャワーヘッド空洞内に取り付けられており、及び
前記不透過性中央本体は、前記ハウジングの前記入口の下方に位置合わせされており、
前記方法は、
- 前記基材を前記ウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置する工程と、
- 前記入口から前記シャワーヘッド空洞を介して前記シャワーヘッドプレートの前記ノズル開口にウォッシュコートを通過させる工程と、
- 前記ウォッシュコートを前記ノズル開口からフィルタ基材の面に向けて排出する工程と、を含み、
前記ウォッシュコートが前記シャワーヘッド空洞を通過する間、前記ウォッシュコートは、前記バッフルの前記不透過性中央本体の周りを流れて前記複数の流れ開口を通るように向けられた後に、前記シャワーヘッドプレートの前記ノズル開口を通って排出される、方法。
【請求項20】
前記基材は、ウォールフローフィルタ基材及びフロースルー基材から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ウォッシュコートは、酸化触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒、NOx吸着剤組成物、三元触媒組成物、アンモニアスリップ触媒[ASC]又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで1~3000cPの粘度、好ましくは50rpmのブルックフィールドで100~3000cPの粘度、より好ましくは50rpmのブルックフィールドで600cP未満の粘度を有し、一実施形態では、前記ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで100~3000cPの粘度を有し、別の実施形態では、前記ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで1~350cPの粘度、より好ましくは50rpmのブルックフィールドで1~100cPの粘度を有する、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ウォッシュコートは、ボア内で移動可能であるピストンを使用して、ウォッシュコートの供給部から前記ウォッシュコートシャワーヘッドに供給され、前記ボアは、38mm~170mmの内径を有し、前記ピストンは、45~150mm/sで動かされる、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ウォッシュコートは、前記ウォッシュコートシャワーヘッドに9~540cm-1の速度で、好ましくは9~270cm-1の速度で供給される、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、ウォッシュコートで基材をコーティングするための装置及び方法に関する。特に、本開示は、排気ガスの浄化に使用される基材のコーティングに関する。
【0002】
コーティングされたモノリシック基材を含む多くの排出制御デバイスが毎年製造されている。このようなデバイスの主な用途の1つは、発電所によって生成される排気ガス、又は内燃機関、特に乗物の内燃機関によって生成される排気ガスなどの、排気ガスを処理するためのものである。モノリシック基材は、排気ガスを基材内のチャネル壁上のコーティングに接触させる複数のチャネルを含んでいる。このコーティングは、ヒトの健康に有害であるか又は環境に優しくない排気ガスの成分を捕捉、酸化及び/又は低減することができる。モノリシック基材はまた、内燃機関によって生成される煤などの、煤(すなわち粒子状物質)を除去することができるフィルタ基材であってもよい。
【0003】
排気ガスを浄化するための基材は、典型的には、排気ガスが通って流れるための通路を備えるモノリシック基材を含んでもよい。基材は、触媒コーティングであってよいコーティングを備えてよい。コーティングは、基材の通路を通過するウォッシュコートとして基材に塗布されてよい。基材にコーティングを塗布するための様々な方法が知られている。そのような方法の1つは、基材の第1の面(例えば、上面)にウォッシュコートを塗布し、基材の反対側の第2の面(例えば、下面)を少なくとも部分的な真空にさらして、通路を通してウォッシュコートの移動を達成することを含む。コーティング後、基材を乾燥させ、焼成することができる。
【0004】
基材は、基材の第1の面と第2の面との両方において各通路が開放しており、通路が基材の全長にわたって延びているフロースルー基材として構成されてよい。したがって、基材の第1の面を通って通路に入った排気ガスは、この排気ガスが基材の第2の面を出るまで、同じ通路内で基材を通過する。あるいは、基材は、フィルタ基材として構成されてよく、このフィルタ基材では、いくつかの通路が基材の第1の面において目封止され、他の通路が基材の第2の面において目封止されている。このような構成では、基材の第1の面を通って第1の通路に入った排気ガスが、その第1の通路に沿って、基材に沿う途中まで流れ、次いで、基材のろ過壁を通って第2の通路に入る。次いで、排気ガスは、前述の第2の通路に沿って通過し、基材の第2の面から出る。このような構成は、ウォールフローフィルタとして当該技術分野において知られている。
【0005】
コーティングされたフィルタ基材又は製品は、例えば、酸化触媒(例えば、触媒化スートフィルタ[CSF])、選択的触媒還元(SCR)触媒(例えば、このため、製品を選択的触媒還元フィルタ[SCRF]触媒と呼ぶことができる)、NOx吸着剤組成物(例えば、このため、製品をリーンNOxトラップフィルタ[LNTF]と呼ぶことができる)、三元触媒組成物(例えば、このため、製品をガソリンパティキュレートフィルタ[GPF]と呼ぶことができる)、アンモニアスリップ触媒[ASC]又はこれらの2つ以上の組み合わせを含むフィルタ基材(例えば、選択的触媒還元(SCR)触媒とアンモニアスリップ触媒[ASC]とを含むフィルタ基材)であってよい。
【0006】
基材は、1回の付与でコーティングされてよく、ウォッシュコートは、基材が単一の向きに維持された状態で、1回の工程で基材に塗布されてよい。あるいは、基材は、2回の付与でコーティングされてもよい。例えば、1回目の付与では、基材が、第1の向きにおいて、第1の面が最も上にあり、第2の面が最も下にある。コーティングは、第1の面に塗布され、基材の長さの一部分をコーティングする。次いで、第2の面が最も上になるように、基材が反転させられる。次いで、1回目の付与でコーティングされなかった基材の部分をコーティングするために、コーティングが第2の面に塗布される。有利には、2回付与のプロセスは、基材の各端部に異なるコーティングを塗布することを可能にすることができる。
【0007】
基材の最良の性能を提供するために、コーティングされた基材の表面積が最大になるように、基材が完全にコーティングされることを確保することが有益であり得る。しかしながら、基材の部分が、(例えば、2回付与のプロセスで)1層よりも多くのウォッシュコートの層でコーティングされないことを確保することも、これが基材内での圧力損失の増大につながり得るため、有益である。したがって、基材にウォッシュコートを塗布するプロセスは、基材の信頼性が高く制御可能なコーティングプロファイルを達成することが望ましい。
【0008】
コーティングされたフィルタ基材を製造する際の課題の1つは、フィルタ基材のチャネルの壁上への均一なコーティングの塗布に関する。これは、フィルタ基材の各チャネルが、概して、ただ1つの開放端部を有する(他方の端部は、通常、目封止によって閉鎖されている)ためであり、このことは、ウォッシュコートの塗布にとって問題となる。フィルタ基材のチャネルに、所望のコーティング深さ、チャネルの全てにわたる均一なコーティング深さ及び各チャネル内の均一なウォッシュコート分布を得るようにウォッシュコートを塗布することは困難であり得る。
【0009】
国際公開第99/47260号は、モノリシックな支持体をコーティングするための一般的な方法を記載している。フロースルーハニカム基材をコーティングする方法は、国際公開第99/47260号に例示されている。この方法は、典型的には、比較的高い粘度を有するウォッシュコートを塗布するために使用される。
【0010】
フィルタ基材の壁上にウォッシュコートを均一に塗布するための良好な結果を示す方法の1つは、国際公開第2011/080525号に記載されている。国際公開第2011/080525号は、複数のチャネルを含むハニカムモノリス基材を、触媒成分を含む液体でコーティングする方法を記載しており、この方法は、(i)ハニカムモノリス基材を実質的に垂直に保持する工程と、(ii)予め決定された量の液体を基材の下端部でチャネルの開放端部を介して基材内に導入する工程と、(iii)基材内の導入した液体を密封維持する工程と、(iv)維持した液体を含む基材を反転させる工程と、(v)基材の反転した下端部で基材のチャネルの開放端部に真空を加え、液体を基材のチャネルを介して吸収する工程と、を含んでいる。
【0011】
フィルタ基材の壁上にウォッシュコートを塗布するための別の方法は、国際公開第2015/145122号に記載されている。この方法は、液体をフィルタ基材の上端面上に均一に堆積させるように配置された複数の開口を含む「シャワーヘッド」を利用する。
【0012】
いくつかの製品では、比較的低い粘度及び最小のレオロジー特性を有するフィルタ基材のためのウォッシュコートを使用することが望まれ得る。本出願人は、このことが、基材の信頼性が高く制御可能なコーティングプロファイルを達成することに関連する問題を引き起こし得ることを見出した。なぜならば、ウォッシュコートのレオロジーが、基材の上面にウォッシュコートを均一に塗布することが困難であることを意味するからである。具体的には、基材の上面へのウォッシュコートの塗布は、ノズル開口のアレイを備えるシャワーヘッドプレートを備える、ウォッシュコートのシャワーヘッドを使用することによって行ってよい。低粘度のウォッシュコートでは、シャワーヘッドプレートからのウォッシュコートの均一な排出を確実にすることが困難であることが判明している。このことは、基材の領域に塗布されるウォッシュコートが過度に少ない場合の、コーティング後の基材の未コーティング部分の問題、又はあるいは、基材の領域に塗布されるウォッシュコートが過度に多い場合の、過剰の基材が基材の下面から引き出される「引き通し」の問題を生じさせ得る。
【0013】
米国特許出願公開第2012/0021896号は、触媒層の原料を含んだ流体を基材に排出するように構成されたノズルであって、流体を基材の第1の端面へ向けて排出する排出口を備えるノズルを教示している。ノズルは、ノズル内の流体の流れの変化を生じさせるメッシュ又は穿孔付き板の形態のデフレクタを備えてよい。
【発明の概要】
【0014】
第1の態様では、本開示は、基材の面上にウォッシュコートを堆積させるためのウォッシュコートシャワーヘッドであって、基材は、ウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置されており、ウォッシュコートシャワーヘッドは、
ウォッシュコートを受け入れるための入口を有するハウジングと、
シャワーヘッドプレートと、
バッフルと、を備え、
ハウジング及びシャワーヘッドプレートは、シャワーヘッド空洞を画定しており、バッフルは、シャワーヘッド空洞内に配置されており、
シャワーヘッドプレートは、基材の面に向けてウォッシュコートを排出するための複数のノズル開口を備え、
バッフルは、不透過性中央本体と、不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、複数のアームは、不透過性中央本体の周囲に円周方向に配置された複数の流れ開口を画定しており、
バッフルは、不透過性中央本体がシャワーヘッドプレートから離間されているように、シャワーヘッド空洞内に取り付けられており、
不透過性中央本体は、入口を通ってシャワーヘッド空洞に入ったウォッシュコートが、不透過性中央本体の周りを流れて複数の流れ開口を通るように向けられた後に、シャワーヘッドプレートのノズル開口を通って排出されるように、ハウジングの入口の下方に位置合わせされている、ウォッシュコートシャワーヘッドを提供する。
【0015】
有利には、このようなバッフルを含む本開示のウォッシュコートシャワーヘッドは、基材のより均一なコーティングをもたらすことができ、特に、より信頼性が高く制御可能なコーティングプロファイルを生成することができる。したがって、ウォッシュコートシャワーヘッドの使用は、コーティングされた基材の表面積の最大化を可能にすることができる一方で、コーティングの重なりの程度及び/又はウォッシュコートの引き通しを最小限に抑えることができる。
【0016】
バッフルは、不透過性中央本体から延びている複数のアーム、例えば4つのアームを備えてよく、複数(例えば4つ)のアームは、不透過性中央本体の周囲に円周方向にに配置された複数(例えば4つ)の流れ開口を画定しており、任意選択的に、複数(例えば4つ)のアームは、不透過性中央本体の周囲に円周方向にに等間隔で配置されていてよい。複数のアームは、不透過性中央本体から半径方向に延びていてよく、任意選択的に、複数のアームの各々の幅が、不透過性中央本体の近位の位置から不透過性中央本体の遠位の位置まで増大していてよい。好ましくは、4つのアームが提供されてよい。
【0017】
不透過性中央本体は、平面視で円形であってよい。不透過性中央本体は、ハウジングへの入口の直径よりも大きい直径を有してよく、任意選択的に、入口の中心長手方向軸と不透過性中央本体の中心軸とが一致していてよい。不透過性中央本体は、20~55mm、好ましくは25~50mm、より好ましくは27、35又は50mmであるように選択された直径を有してよい。
【0018】
ハウジングの入口は、25.4mm(1インチ)までの内径を有してよい。
【0019】
入口に面するに面する不透過性中央本体の上面が突出部を備えてよく、好ましくは、突出部は、円錐形状の表面又は一部円錐形状の表面である。
【0020】
有利には、上面に突出部を設けることは、ウォッシュコートがシャワーヘッドプレートの周囲に向けられる際に、ウォッシュコートシャワーヘッド内の乱流を最小限に抑えることが見出されている。
【0021】
バッフルは、ハウジング及びシャワーヘッドプレートとの少なくとも一方に取り付けられていてよく、好ましくは、バッフルは、ハウジングにのみ取り付けられている。バッフルは、ハウジングの入口を取り囲むがハウジングの入口に衝突しない、ハウジングの取付ポイントに取り付けられていてよい。バッフルは、複数のアームと、ハウジング及びシャワーヘッドプレートの少なくとも一方との間に延びている固定具によって取り付けられていてよい。固定具は、複数のアームの各々の遠位端部から延びていてよい。固定具は、65~75mm、好ましくは70mmのピッチの円直径上に配置されていてよく、不透過性中央本体の中心軸上に中心が置かれていてよい。好ましくは、固定具は、不透過性中央本体の直径の外側に配置されている。
【0022】
有利には、固定具を不透過性中央本体の直径の外側に位置決めすることは、固定具と、入ってくるウォッシュコートとの干渉を最小限に抑えることができ、基材の上面上へのウォッシュコートのより均一な分配がもたらされることが見出されている。
【0023】
シャワーヘッド空洞は、12~40mmの深さ、好ましくは15~30mmの深さを有してよい。
【0024】
不透過性中央本体は、5~10mmの間隔でシャワーヘッドプレートから離間されていてよい。
【0025】
有利には、不透過性中央本体をシャワーヘッドプレートから5~10mmの間隔で配置することは、シャワーヘッド空洞内のウォッシュコートの循環を改善することができ、特に、十分なウォッシュコートがシャワーヘッドプレートの上面の中心に戻るように流れて、基材の上面上へのウォッシュコートのより均一な分配を達成することができることが見出されている。
【0026】
第2の態様では、本開示は、上述のウォッシュコートシャワーヘッドの一部を形成するためのバッフルであって、バッフルは、不透過性中央本体と、不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、複数のアームは、不透過性中央本体の周囲に円周方向にに配置された複数の流れ開口を画定している、バッフルを提供する。
【0027】
複数のアームは、不透過性中央本体から半径方向に延びていてよく、及び/又は複数のアームの各々の幅が、不透過性中央本体の近位の位置から不透過性中央本体の遠位の位置まで増大していてよく、及び/又は、不透過性中央本体は、平面視で円形であってよく、及び/又は、不透過性中央本体は、20~55mm、好ましくは25~50mm、より好ましくは27、35又は50mmであるように選択された直径を有してよく、及び/又は、不透過性中央本体の上面が、突出部を備えてよく、好ましくは、突出部は、円錐形状の表面又は一部円錐形状の表面であり、及び/又は、複数のアームは、固定具を接続するための取付ポイントを備えてよく、及び/又は、取付ポイントは、複数のアームの各々の遠位端部に配置されていてよく、及び/又は、取付ポイントは、65~75mm、好ましくは70mmのピッチの円直径上に配置されていてよく、不透過性中央本体の中心軸上に中心が置かれていてよい。
【0028】
第3の態様では、本開示は、上述のウォッシュコートシャワーヘッドを備える基材コーティング装置を提供する。
【0029】
第4の態様では、本開示は、ウォッシュコートシャワーヘッドを使用してウォッシュコートで基材をコーティングする方法であって、
ウォッシュコートシャワーヘッドは、
入口を有するハウジングと、
シャワーヘッドプレートと、
バッフルと、を備えるタイプのものであり、
ハウジング及びシャワーヘッドプレートは、シャワーヘッド空洞を画定しており、バッフルは、シャワーヘッド空洞内に配置されており、
シャワーヘッドプレートは、複数のノズル開口を備え、
バッフルは、不透過性中央本体と、不透過性中央本体から延びている複数のアームと、を備え、複数のアームは、不透過性中央本体の周囲に円周方向にに配置された複数の流れ開口を画定しており、
バッフルは、不透過性中央本体がシャワーヘッドプレートから離間されているように、シャワーヘッド空洞内に取り付けられており、
不透過性中央本体は、ハウジングの入口の下方に位置合わせされており、
方法は、
- 基材をウォッシュコートシャワーヘッドの下方に配置する工程と、
- 入口からシャワーヘッド空洞を介してシャワーヘッドプレートのノズル開口にウォッシュコートを通過させる工程と、
- ウォッシュコートをノズル開口からフィルタ基材の面に向けて排出する工程と、を含み、
ウォッシュコートがシャワーヘッド空洞を通過する間、ウォッシュコートは、バッフルの不透過性中央本体の周りを流れて複数の流れ開口を通るように向けられた後に、シャワーヘッドプレートのノズル開口を通って排出される、方法を提供する。
【0030】
フロースルー基材(例えば、モノリシックフロースルー基材)及びフィルタ基材(例えば、モノリシックフィルタ基材)、ビーズ並びにセラミック発泡体を含む様々な基材が知られている。しかしながら、好ましくは、基材は、フロースルー基材又はフィルタ基材(例えば、ウォールフローフィルタ基材)から選択される。
【0031】
フロースルー基材は、概して、典型的には、貫通して延びている複数のチャネルを含み、各チャネルは、両端部が開放している(すなわち、入口における開放端部及び出口における開放端部)。チャネルは、複数の壁の間に形成されている。壁は、概して、非多孔質材料を含む。貫通して延びている平行チャネルのアレイを含むフロースルーモノリシック基材は、本明細書では、ハニカムモノリシック基材とも称される。
【0032】
対照的に、フィルタ基材は、複数のチャネルを含み、各チャネルは、開放端部と、閉鎖端部(例えば、閉塞端部又は目封止端部)とを有する。各チャネルは、典型的には、隣り合った又は隣接したチャネルから壁によって隔てられている。壁は、多孔質材料を含むか又は本質的に多孔質材料からなる。このような多孔質材料は、当該技術分野において周知である。
【0033】
一般に、フィルタ基材は、複数の入口チャネルと、複数の出口チャネルとを備える。各入口チャネルは、基材の第1の面における開放端部と、基材の反対側の第2の面における閉鎖端部(例えば、閉塞端部又は目封止端部)とを有し(すなわち、第2の端部は第1の端部に対して反対側の端部である)、各出口チャネルは、基材の第1の面における閉鎖端部(例えば、閉塞端部又は目封止端部)と、基材の反対側の第2の面における開放端部とを有する。
【0034】
フィルタ基材では、基材の第1の面における開放端部と基材の第2の(すなわち、反対側の)面における閉鎖端部とを有する各チャネルは、典型的には、基材の第1の面における閉鎖端部と基材の第2の(すなわち、反対側の)面における開放端部とを有するチャネルに隣接している。チャネル間の流体連通は、基材の壁を介して(例えば、多孔質材料を通して)行われる。
【0035】
壁は、典型的には、0.002~0.1インチ(0.05~2.54mm)、例えば0.005~0.050インチ(0.12~1.27mm)、特に0.010~0.025インチ(0.25~0.64mm)の厚さを有する。
【0036】
典型的には、フィルタ基材のチャネルは、交互に配置された閉鎖端部(例えば、閉塞端部又は目封止端部)と開放端部とを有する。したがって、各入口チャネルは出口チャネルに隣接していてよく、各出口チャネルは入口チャネルに隣接していてよい。フィルタ基材のいずれかの端部から見た場合、チャネルは、チェス盤の外観を有してよい。
【0037】
しかしながら、フィルタ基材は、入口チャネル(すなわち、「第1の」入口チャネル)を有してよく、これは別の入口チャネル(すなわち、「第2の」入口チャネル)に隣接し、任意選択的に、「第1の」出口チャネル及び/又は「第2の」出口チャネルなどの出口チャネルに隣接している。フィルタ基材は、出口チャネル(すなわち、「第1の」出口チャネル)を有してよく、これは別の出口チャネル(すなわち、「第2の」入口チャネル)に隣接し、任意選択的に、「第1の」入口チャネル及び/又は「第2の」入口チャネルなどの入口チャネルに隣接している。
【0038】
フィルタ基材は、1平方インチ当たり100~700個のセル(又は「チャネル」)(「cpsi」)、特に250~400cpsiを有してよい。
【0039】
ウォッシュコートは、液体、典型的には触媒成分を含む。液体は、溶液又は懸濁液であってよい。懸濁液は、ゾルなどのコロイド懸濁液、又は非コロイド懸濁液であってよい。液体が溶液又は懸濁液である場合、液体は水溶液又は水性懸濁液であってよい。典型的には、液体は懸濁液であり、具体的には水性懸濁液である。
【0040】
典型的には、液体は触媒成分を含む。「触媒成分」という表現は、白金族金属(PGM)、担持材料(例えば、耐火酸化物)又はゼオライトなどの、得られる排出制御デバイスの作動に寄与するウォッシュコート配合物に含まれてよい任意の成分を包含する。「触媒成分」という用語は、成分自体が、(例えば、反応速度を増加させる)「触媒」という用語の意味の厳密な意味での触媒活性を有することを必要としないことを理解されたい。例えば、触媒成分は、NOx又は炭化水素を吸蔵又は吸収することができる材料を指すことができる。触媒成分を含む液体(例えば、ウォッシュコート)は、当業者に周知である。液体中に含まれる触媒成分は、製造される製品に依存する。
【0041】
本発明の方法によって得られるか又は本発明の装置を使用して得られるコーティングされたフィルタ基材又は製品は、例えば、酸化触媒(例えば、触媒化スートフィルタ[CSF])、選択的触媒還元(SCR)触媒(例えば、このため、製品を選択的触媒還元フィルタ[SCRF]触媒と呼ぶことができる)、NOx吸着剤組成物(例えば、このため、製品をリーンNOxトラップフィルタ[LNTF]と呼ぶことができる)、三元触媒組成物(例えば、このため、製品をガソリンパティキュレートフィルタ[GPF]と呼ぶことができる)、アンモニアスリップ触媒[ASC]又はこれらの2つ以上の組み合わせを含むフィルタ基材(例えば、選択的触媒還元(SCR)触媒とアンモニアスリップ触媒[ASC]とを含むフィルタ基材)であってよい。
【0042】
「触媒成分」に加えて、液体は、配合補助剤を更に含んでもよい。「配合補助剤」という用語は、フィルタ基材上にコーティングするための液体に、化学的特性又は物理的特性を改変するために含まれる成分を指す。配合補助剤は、例えば、液体中の触媒成分の分散を補助するか又は液体の粘度を変化させることができる。配合補助剤は、最終的にコーティングされたフィルタ基材の製品中に存在しないことがある(例えば、焼成中に分解又は減成され得る)。配合補助剤は、例えば、酸、塩基、増粘剤(例えば、有機化合物増粘剤)又は結合剤であってよい。
【0043】
ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで1~3000cPの粘度、好ましくは50rpmのブルックフィールドで100~3000cPの粘度、より好ましくは50rpmのブルックフィールドで600cP未満の粘度を有してよい。一実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで100~3000cPの粘度を有してよく、別の実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで1~350cPの粘度、より好ましくは50rpmのブルックフィールドで1~100cPの粘度を有してよい。本出願では、全ての粘度の測定値は、Brookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro,MA,USA)から入手可能である、SC4-18のスピンドルを使用したブルックフィールドDV-II+Pro(LV)粘度計で実施された測定に関する。
【0044】
ウォッシュコートは、ボア内で移動可能であるピストンを使用して、ウォッシュコートの供給部からウォッシュコートシャワーヘッドに供給されてよく、ボアは、38mm~170mmの内径を有し、ピストンは、45~150mm/sで動かされる。
【0045】
ウォッシュコートは、ウォッシュコートシャワーヘッドに9~540cm-1の速度で、好ましくは9~270cm-1の速度で供給されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
ここで、本開示の実施形態を例示のみを目的として添付の図面を参照しながら説明する。
図1】コーティング装置の断面図である。
図2図1の一部分の拡大図である。
図3】本開示によるシャワーヘッドの断面斜視図である。
図4】本開示による別のシャワーヘッドの断面図である。
図5】本開示によるバッフルの第1のバージョンの下から見た図である。
図6】本開示によるバッフルの第2のバージョンの側面図である。
図7図6のバッフルの第2のバージョンの下から見た図である。
図8図6のバッフルの第2のバージョンの上から見た斜視図である。
図9】本開示によるバッフルの第3のバージョンの側面図である。
図10図9のバッフルの第3のバージョンの下から見た図である。
図11図6のバッフルの第3のバージョンの上から見た斜視図である。
図12a】望ましいコーティングプロファイルの概略図である。
図12b】望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
図12c】望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
図12d】望ましくないコーティングプロファイルの概略図である。
図13】変更されていないウォッシュコートシャワーヘッドから堆積されている低粘度ウォッシュコートを示す。
図14】変更されていないウォッシュコートシャワーヘッドから基材上へ堆積された低粘度ウォッシュコートのx線画像である。
図15】本開示のバッフルの第1のバージョンを使用したウォッシュコートシャワーヘッドから基材上へ堆積されたウォッシュコートのx線画像である。
図16】本開示のバッフルの第2のバージョンを使用したウォッシュコートシャワーヘッドから基材上へ堆積されたウォッシュコートのx線画像である。
図17】本開示のバッフルの第3のバージョンを使用したウォッシュコートシャワーヘッドから基材上へ堆積されたウォッシュコートのx線画像である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
これから、本開示を更に説明する。以下の節において、本開示の異なる態様/実施形態は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は複数の態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。製品に関して開示された特徴は、方法に関して開示された特徴と組み合わされてよく、その逆もまた同様であることが意図される。
【0048】
図1は、基材10をウォッシュコートでコーティングするために使用され得るコーティング装置1の断面図を示す。
【0049】
コーティング装置1は、分注機構を作動させるための装置を含むハウジング40を有する堆積器2を備えてよい。図示のように、分注機構は、堆積器2の下流に配置された導管35に向けて出口43から流体を移動させるために、ボア42内で軸方向に移動可能であるピストン41を備えてよい。
【0050】
コーティング装置1は、堆積器2の出口43にダイヤフラム弁32を介して接続する出口31を有するホッパリザーバ30を画定しているホッパ3を更に備えてよい。ホッパ3は、別の位置で配合され、予混合されたウォッシュコートで充填されていてよい。ウォッシュコートは、ホッパリザーバ30内にポンプ圧送されてもよく、又は重力下でホッパリザーバ30内に好適な導管を通して供給されてもよい。
【0051】
堆積器2の出口43は、導管35に流体接続しており、導管35は、次いで、計量弁4に流体連通するように延びていてよい。ウォッシュコートシャワーヘッド5は、ウォッシュコートシャワーヘッド5が基材10の上方に位置決めされた状態で計量弁4の下面に接続されていてよい。
【0052】
基材10は、ヘッドセット6とパレットインサート8との間に配置されて、位置決めされてよい。真空コーン7を含む真空装置が、基材10の下方に配置されていてよい。
【0053】
図2は、図1のコーティング装置1の拡大された部分を示し、基材10がウォッシュコートシャワーヘッド5及びヘッドセット6に対してどのように位置決めされ得るかをより詳細に示す。
【0054】
基材10は、その長手方向長さに沿って均一な断面形状を有してよい基材本体11を有するモノリシックブロックであってよい。基材本体11は、断面が円形又はほぼ円形の形状を有してよい。基材本体11は直径dを有してよい。
【0055】
基材本体11は、基材本体11の上面12が最も上にあり、基材本体11の下面13が最も下にあるように、ヘッドセット6とパレットインサート8との間に延びているように位置決めされていてよい。ウォッシュコートシャワーヘッド5は、ヘッドセット6の上方に配置されていてよく、好ましくは、ヘッドセット6及び基材10と位置合わせされていてよく、それにより、ウォッシュコートシャワーヘッド5の中心長手方向軸xは、図2に示すように、ヘッドセット6と基材10との両方の中心長手方向軸と一致している。
【0056】
ウォッシュコートシャワーヘッド5は、下側にボルト28によってシャワーヘッドプレート23が連結されてよいシャワーヘッドハウジング21を備えてよい。アダプタプレート27が、同様にボルトによりシャワーヘッドハウジング21の上側に連結されてよい。
【0057】
シャワーヘッドハウジング21は、中心に配置された開口を備えてよい。この開口は、シャワーヘッドハウジング21とシャワーヘッドプレート23との間に画定されるシャワーヘッド空洞24への入口22を画定している。入口22の軸は、長手方向軸xと一致していてよい。アダプタプレート27はまた、長手方向軸xと一致していてよい中心に配置された開口を備えてもよく、シャワーヘッドハウジング21の中央部分20を受け入れるように寸法設定されていてよい。計量弁4は、シャワーヘッドハウジング21の入口22に流体連通され、流体連通の状態に維持されてよい。
【0058】
シャワーヘッドプレート23には、ノズル開口25のアレイが設けられていてよい。
【0059】
使用時には、ダイヤフラム弁32が開放され、(図1に見られるように)ピストンが右に移動することによって、ウォッシュコートがホッパリザーバ30からボア42内に引き込まれる。次いで、ダイヤフラム弁32を閉鎖し、次いで、(図1で見られるように)左に移動する堆積器2のピストン41の作用によって、1回分のウォッシュコートが導管35を通って移動させられる。ウォッシュコートは、計量弁4及び入口22を通ってシャワーヘッド空洞24に入る。次いで、ウォッシュコートはノズル開口25を通過し、落下して基材10の上面12に接触する。次いで、ウォッシュコートは、基材10の通路を通って流下する。基材10を通してのウォッシュコートの流下は、真空コーン7によって基材10の下面13に加えられる吸引力によって少なくとも部分的に促進される。
【0060】
図3図5は、本開示によるバッフル50の第1のバージョンを示す。図3は、本開示によるウォッシュコートシャワーヘッド5を示し、ここではバッフル50がシャワーヘッド空洞24内に設けられている。
【0061】
シャワーヘッド空洞24は、12~40mmの深さ、好ましくは15~30mmの深さを有してよい。シャワーヘッド空洞24は、150~200mmの直径、好ましくは160~170mmの直径を有してよい。シャワーヘッドプレート23は、シャワーヘッド空洞24の全直径にわたって延びていてよい。ノズル開口25は、シャワーヘッドプレート23にわたって配列されていてよい。ノズル開口25は、規則的又は不規則的な配列で配列されていてよい。ノズル開口25は、複数の同心円状の配列で配置されていてよい。
【0062】
バッフル50は、不透過性中央本体51と、不透過性中央本体51から延びており、不透過性中央本体51の周囲に円周方向にに配置された複数の流れ開口53を画定している複数のアーム52とを備える。
【0063】
バッフル50は、ボルト開部口55を通ってアーム52の各々の遠位端部に向かって延びていてよいボルト29によってシャワーヘッドハウジング21に取り付けられてよい。バッフル50の取付ポイントは、シャワーヘッドハウジング21の入口22を取り囲んでいてよいが、この入口22に衝突しないことが好ましい。ボルト29は4mmのボルトであってよい。ボルト開口55の各々は、スタンドオフリング56によって取り囲まれていてよい。このスタンドオフリング56は、バッフル50の上面57とシャワーヘッドハウジング21の上側内面との間の間隔を画定する役割であってよく、同様にバッフル50の下面58とシャワーヘッドプレート23の上側内面との間の間隔26を画定している。各スタンドオフリング56は、4~6mmの高さ、好ましくは4.5mmの高さを有してよい。間隔26は、5~10mm、好ましくは約8mmであってよい。
【0064】
図3図5に示されるバージョン及び以下に記載の他のバージョンの)バッフル50は、図3に示されるように平坦であってよい上面57を備えてもよく、又は図4に示されるように上面57の中心に配置された円錐形状又は一部円錐形状の突出部54を備えてもよい。
【0065】
図5に最も明確に見られるように、バッフル50(円錐形状又は一部円錐形状の突出部54が設けられているか否かに関わらない)は、4つのアーム52a~52dが設けられた十字形状を有してよい。好ましくは、4つのアーム52a~52dは、不透過性中央本体51の周囲に円周方向にに等間隔で配置されており、それにより、アーム52a~52dは、その隣接したアームから各90°離間されている。同様に、バッフル50は、不透過性中央本体51の周囲に円周方向に等間隔で配置された4つの流れ開口53a~53dを備えてよく、それにより、流れ開口53a~53dは、その隣接した流れ開口から各90°離間されている。
【0066】
アーム52a~52dの長さは、不透過性中央本体51の直径に比べて相対的に短くてよい。アーム52a-4は、均一な幅及び深さを有してよい。図5の図示の例では、ボルト開口55は、70mmのピッチの円直径上に配置されていてよく、不透過性中央本体51は、25mmの半径r及び50mmの直径を有してよい。
【0067】
バッフル50は、ステンレス鋼、例えば、タイプ316で形成されていてよい。
【0068】
バッフル50の第1のバージョンは、円形の断面形状及び約175mm未満、より具体的には172.8mm未満の直径を有する基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すことができる。バッフル50の第1のバージョンはまた、非円形の断面形状を有する基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すこともできる。更に、バッフル50の第1のバージョンは、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)、小型ディーゼル用の触媒化スートフィルタ(LDD CSF)又はガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)用の基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すことができる。
【0069】
図6図8は、本開示によるバッフル50の第2のバージョンを示す。図7及び図8に最も明確に見られるように、バッフル50(円錐形状又は一部円錐形状の突出部54が設けられているか否かに関わらない)は、4つのアーム52a~52dが設けられた十字形状を有してよい。第1のバージョンと同様に、4つのアーム52a~52dは、不透過性中央本体51の周囲に円周方向に等間隔で配置されていてよく、それにより、アーム52a~52dは、その隣接したアームから各90°離間されている。同様に、バッフル50は、不透過性中央本体51の周囲に等間隔で配置された4つの流れ開口53a~53dを備えてよく、それにより、流れ開口53a~53dは、その隣接した流れ開口から各90°離間されている。
【0070】
アーム52a~52dの長さは、第1のバージョンよりも長い。図7の図示の例では、ボルト開口55は、70mmのピッチの円直径上に配置されていてよく、不透過性中央本体51は、17.5mmの半径r及び35mmの直径を有してよい。したがって、不透過性中央本体51の面積が減少させられていて、流れ開口53a~53dの開放面積がバッフル50の第1のバージョンと比較して増大させられている。
【0071】
アーム52a-4は、均一な深さを有してよい。アーム52a~52dの幅は先細になっていてよい。複数のアーム52a~52dの各々の幅は、不透過性中央本体51の近位の位置から不透過性中央本体51の遠位の位置まで増大していてよい。
【0072】
バッフル50は、ステンレス鋼、例えば、タイプ316で形成されていてよい。
【0073】
バッフル50の第2のバージョンは、約250mmよりも大きい、より具体的には266.7mmよりも大きい直径を有する基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すことができる。更に、バッフル50の第2のバージョンは、大型ディーゼルフィルタ(HDD)用の基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すことができる。
【0074】
図9図11は、本開示によるバッフル50の第3のバージョンを示す。図10及び図11に最も明確に見られるように、バッフル50(円錐形状又は一部円錐形状の突出部54が設けられているか否かに関わらない)は、4つのアーム52a~52dが設けられた十字形状を有してよい。第1のバージョン及び第2のバージョンと同様に、4つのアーム52a~52dは、不透過性中央本体51の周囲に円周方向に等間隔で配置されていてよく、それにより、アーム52a~52dは、その隣接したアームから各90°離間されている。同様に、バッフル50は、不透過性中央本体51の周囲に円周方向に等間隔で配置された4つの流れ開口53a~53dを備えてよく、それにより、流れ開口53a~53dは、その隣接した流れ開口から各90°離間されている。
【0075】
アーム52a~52dの長さは、第2のバージョンよりも長い。図10の図示の例では、ボルト開口55は、70mmのピッチの円直径上に配置されていてよく、不透過性中央本体51は、13.5mmの半径r及び27mmの直径を有してよい。したがって、不透過性中央本体51の面積が減少させられていて、流れ開口53a~53dの開放面積がバッフル50の第2のバージョンと比較して増大させられている。
【0076】
アーム52a-4は、均一な深さを有してよい。第2のバージョンと同様に、アーム52a~52dの幅は先細になっていてよい。複数のアーム52a~52dの各々の幅は、不透過性中央本体51の近位の位置から不透過性中央本体51の遠位の位置まで増大していてよい。
【0077】
バッフル50は、ステンレス鋼、例えば、タイプ316で形成されていてよい。
【0078】
バッフル50の第3のバージョンは、170mm~275mmの直径、より具体的には172.8mm~266.7mmの直径を有する基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すことができる。更に、バッフル50の第3のバージョンは、触媒化スートフィルタ(CSF)用の基材10をコーティングする際に特定の有益な使用を見出すことができる。
【0079】
使用中、ウォッシュコートは、堆積器2のピストン41を使用してウォッシュコートの供給部からウォッシュコートシャワーヘッド5に供給されてよい。ピストン41はボア42内で移動可能であり、ボア42は38mm~170mmの内径を有してよく、ピストン41は45~150mm/sで動かされてよい。ウォッシュコートは、導管35に沿って計量弁4を通り、ウォッシュコートシャワーヘッド5内へと移動させられる。ウォッシュコートは、ウォッシュコートシャワーヘッド5に7~640cm-1の速度で供給されてよい。
【0080】
ウォッシュコートは、入口22を通ってシャワーヘッド空洞24に入ってよい。ウォッシュコートは、シャワーヘッドプレート23に到達する前にバッフルの(存在する場合には円錐形状又は一部円錐形状の突出部を含む)不透過性中央本体51に接触する。したがって、ウォッシュコートは、シャワーヘッド空洞24の周囲に向けて横方向に偏向させられ、それにより、ウォッシュコートは、シャワーヘッドプレート23の中心又はその付近に位置するノズル開口25にはすぐに到達しない。ウォッシュコートは、バッフルの複数の流れ開口53a~53dを通って流れ、次いで、シャワーヘッド空洞24内で循環してノズル開口25を通過する。アーム52a~52d及び流れ開口53a~53dの寸法及び形状の構成により、十分なウォッシュコートがシャワーヘッドプレート23の中心に戻るように再循環することを可能にすることができ、それにより、ノズル開口25を通してのウォッシュコートの均一又はほぼ均一な排出が達成される。
【0081】
次いで、ウォッシュコートは、基材10の上面12上に堆積させられ、真空コーン7によって加えられた吸引力によって基材本体11の通路に引き通される。
【0082】
ウォッシュコートは、液体、典型的には触媒成分を含む。液体は、溶液又は懸濁液であってよい。懸濁液は、ゾルなどのコロイド懸濁液、又は非コロイド懸濁液であってよい。液体が溶液又は懸濁液である場合、液体は水溶液又は水性懸濁液であってよい。典型的には、液体は懸濁液であり、具体的には水性懸濁液である。
【0083】
典型的には、液体は触媒成分を含む。「触媒成分」という表現は、白金族金属(PGM)、担持材料(例えば、耐火酸化物)又はゼオライトなどの、得られる排出制御デバイスの作動に寄与するウォッシュコート配合物に含まれてよい任意の成分を包含する。「触媒成分」という用語は、成分自体が、(例えば、反応速度を増加させる)「触媒」という用語の意味の厳密な意味での触媒活性を有することを必要としないことを理解されたい。例えば、触媒成分は、NOx又は炭化水素を吸蔵又は吸収することができる材料を指すことができる。触媒成分を含む液体(例えば、ウォッシュコート)は、当業者に周知である。液体中に含まれる触媒成分は、製造される製品に依存する。
【0084】
本発明の方法によって得られるか又は本発明の装置を使用して得られるコーティングされたフィルタ基材又は製品は、例えば、酸化触媒(例えば、触媒化スートフィルタ[CSF])、選択的触媒還元(SCR)触媒(例えば、このため、製品を選択的触媒還元フィルタ[SCRF]触媒と呼ぶことができる)、NOx吸着剤組成物(例えば、このため、製品をリーンNOxトラップフィルタ[LNTF]と呼ぶことができる)、三元触媒組成物(例えば、このため、製品をガソリンパティキュレートフィルタ[GPF]と呼ぶことができる)、アンモニアスリップ触媒[ASC]又はこれらの2つ以上の組み合わせを含むフィルタ基材(例えば、選択的触媒還元(SCR)触媒とアンモニアスリップ触媒[ASC]とを含むフィルタ基材)であってよい。
【0085】
「触媒成分」に加えて、液体は、配合補助剤を更に含んでもよい。「配合補助剤」という用語は、フィルタ基材上にコーティングするための液体に、化学的特性又は物理的特性を改変するために含まれる成分を指す。配合補助剤は、例えば、液体中の触媒成分の分散を補助するか又は液体の粘度を変化させることができる。配合補助剤は、最終的にコーティングされたフィルタ基材の製品中に存在しないことがある(例えば、焼成中に分解又は減成され得る)。配合補助剤は、例えば、酸、塩基、増粘剤(例えば、有機化合物増粘剤)又は結合剤であってよい。
【0086】
ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで1~3000cPの粘度、好ましくは50rpmのブルックフィールドで100~3000cPの粘度、より好ましくは50rpmのブルックフィールドで600cP未満の粘度を有してよい。一実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで100~3000cPの粘度を有してよく、別の実施形態では、ウォッシュコートは、50rpmのブルックフィールドで1~350cPの粘度、より好ましくは50rpmのブルックフィールドで1~100cPの粘度を有してよい。(全ての測定値は、SC4-18のスピンドルを使用したブルックフィールドDV-II+Pro(LV)粘度計で得られた)。
【0087】
基材容積を最大限に使用するとともに、基材10の各部分への複数のコートの塗布及びウォッシュコートの引き通しを防止するために、一貫した予測可能なコーティングプロファイルを達成することが望ましい。例えば、図12aに概略的に示されるように、平坦なコーティングプロファイルが望ましい。図示のように、基材10は、ウォッシュコートによってコーティングされたコーティング済みの部分45と、ウォッシュコートが到達していない未コーティングの部分46とを有する。コーティング済みの部分45と未コーティングの部分46との間の境界面は平坦であり、このことは、望ましい結果である。
【0088】
図12bは、コーティング済みの部分45と未コーティングの部分46との間の望ましくない「V字形」の境界面を示す。この境界面は、過度に多くのウォッシュコートが基材10の上面12の中央部分に塗布された結果であると考えられ、ウォッシュコートが低粘度である場合の特定の問題であり得る。
【0089】
図12cは、図12bのコーティングプロファイルと同様のコーティングプロファイルを示すが、基材の外周部分が適切にコーティングされる前に、ウォッシュコートが基材の下面13の中央部分から引き出される場合にどのように引き通しが生じ得るのかを示す。
【0090】
最後に、図12dは、コーティング済みの部分45と未コーティングの部分46との間の「M字形」の境界面を有する別の望ましくないコーティングプロファイルを示す。この境界面は、ウォッシュコートがノズル開口25を通過する前に、ウォッシュコートがシャワーヘッドプレート23の中心に戻るように十分に再循環することができない結果であると考えられる。
【0091】
比較例
固形分が10%であり、ブルックフィールドDV-II+Pro(LV)及びSC4-18スピンドルを使用して、スピンドル回転速度25~100rpmにわたってニュートン粘度が5cPである基材用の触媒ウォッシュコートを調製した。
【0092】
図1のコーティング装置1を使用してウォッシュコートを炭化ケイ素フィルタ基材上にコーティングした場合、バッフルが存在しないウォッシュコートシャワーヘッド5を利用すると、図13に示されるように、ウォッシュコートシャワーヘッド5の中央孔からより多くのウォッシュコートが吐出される。
【0093】
このことは、図14に示すV字形の不均一なコーティングプロファイルをもたらすことが見出された。この図は、ウォッシュコートのコーティングの質量密度がより高いため、ウォッシュコートのコーティングが、露出した明るい基材に対して暗く示された基材のx線画像である。
【0094】
実施例1
図14に見られる効果を改善するために、図3図5に示されたようなバッフル50の第1のバージョンを、図3に示されたようなシャワーヘッドハウジング21に加えた。
【0095】
次いで、このバッフルプレート50及び上記の比較例と同じ触媒ウォッシュコートを使用して、直径143.8mmの炭化ケイ素フィルタ基材10をコーティングした。図15のx線画像によって示されたように、より均一なコーティングプロファイルが得られた。この図では、ウォッシュコートのコーティングの質量密度がより高いため、ウォッシュコートのコーティングが、露出した明るい基材に対して暗く示されている。
【0096】
実施例2
図14に見られる効果を改善するために、図6図8に示されたようなバッフル50の第2のバージョンをシャワーヘッドハウジング21に加えた。
【0097】
次いで、このバッフルプレート50及び上記の比較例と同じ触媒ウォッシュコートを使用して、直径330.3mmの炭化ケイ素フィルタ基材10をコーティングした。図16のx線画像によって示されたように、より均一なコーティングプロファイルが得られた。この図では、ウォッシュコートのコーティングの質量密度がより高いため、ウォッシュコートのコーティングが、露出した明るい基材に対して暗く示されている。
【0098】
実施例3
図14に見られる効果を改善するために、図9図11に示されたようなバッフル50の第3のバージョンをシャワーヘッドハウジング21に加えた。
【0099】
次いで、このバッフルプレート50及び上記の比較例と同じ触媒ウォッシュコートを使用して、直径172.8mmの炭化ケイ素フィルタ基材10をコーティングした。図17のx線画像によって示されたように、より均一なコーティングプロファイルが得られた。この図では、ウォッシュコートのコーティングの質量密度がより高いため、ウォッシュコートのコーティングが、露出した明るい基材に対して暗く示されている。
【0100】
上述したように、本出願人は、本明細書に記載されたようなバッフル50を含むウォッシュコートシャワーヘッド5を使用して、所望の平坦又はほぼ平坦なコーティングプロファイルを広範囲のサイズの基材にわたって達成することができることを見出した。
【0101】
疑義を回避するために、本明細書に確認された全ての文書の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c
図12d
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】