(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】近焦点の矯正AR眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527891
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020014993
(87)【国際公開番号】W WO2020113245
(87)【国際公開日】2020-06-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, ロバート ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA42
2H199CA50
2H199CA66
2H199CA68
2H199CA74
2H199CA82
2H199CA88
(57)【要約】
拡張現実アプリケーション用のヘッドマウントディスプレイは、ヘッドマウントディスプレイのアイリム部の開口内に配置された画像光ガイドを含む。この画像光ガイドは、バーチャル対象をエンコードしてなる角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、アイボックスに向けて方向付けし、これにより、アイボックスまでの過焦点からほぼ無限遠の焦点距離で、バーチャル対象を見ることができるようにする。画像光ガイドの一方側とアイボックスの間の負パワー光学要素は、アイボックスの前で画像担持光ビームを発散させ、これにより過焦点距離よりもアイボックスに近い距離でバーチャル対象を見ることができるようにする。画像光ガイドの反対側にある正パワー光学素子は、上記負パワー光学素子の負の光学パワーを相殺し、これにより、実世界の対象をアイボックスまでの実際の距離で見ることができるようにする。画像光ガイドとアイボックスの間に配置された矯正光学系は、実世界の対象とバーチャル対象の両方を見るための視者の収差を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者が周囲環境内の実世界の対象を見ることができる開口が形成されたアイリム部を有するヘッドマウントディスプレイであって、
前記ヘッドマウントディスプレイの前記アイリム部の前記開口内に配置された画像光ガイドと、複機能光学系と、正パワー光学系とを備え、
前記画像光ガイドは、
平坦かつ平行な内面と外面を有する透過性の平面導波路と、
バーチャル対象をエンコードした角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、画像ソースから前記導波路へと向け、前記内面と外面での内部反射により伝播させるインカップリング光学要素と、
伝搬してきた前記画像担持光ビームを、前記導波路からアイボックスに向け、前記アイボックスから第1の焦点距離でバーチャル対象を見られるようにするアウトカップリング光学要素と、
を有し、
前記複機能光学系は、前記開口内において前記導波路の内面と前記アイボックスとの間の配置された単一の光学素子として形成されるとともに、
(a)前記アイボックスから、より近い第2の焦点距離でバーチャル対象を見るために、前記アイボックスの前で前記画像担持光ビームを発散させる負の光学パワーの寄与と、
(b)実世界の対象とバーチャル対象の両方を前記より近い第2の焦点距離で見ることに関して、視者の光学的収差を低減する矯正光学的寄与と、
を提供し、
前記正パワー光学系は、前記開口内において前記導波路の外面と周囲環境との間に配置され、実世界の対象を矯正された視力で前記アイボックスから実際の距離で見るために、前記複機能光学系の矯正光学的寄与を相殺することなく、前記複機能光学系の負の光学パワーの寄与を相殺する、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記複機能光学系が単一の屈折レンズ要素である、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記第1の焦点距離が過焦点から無限遠に近い距離であり、前記より近い第2の焦点距離が前記過焦点距離よりも短い、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記より近い第2の焦点距離が、1.5メートルから4メートルの間である、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記より近い第2の集束距離が、0.05メートルから1.5メートルの間である、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記矯正光学的寄与が、前記より近い第2の焦点距離での視者の光学的収差を低減するように設定されている、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記複機能光学系が、複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記第1の複機能光学系が取り外し可能であり、表示を異なる光学処方に適合させるために第2の複機能光学系と交換可能である、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記複機能光学系が複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記正パワー光学系が複数の正パワー光学系のうちの第1の正パワー光学系であり、前記第1の複機能光学系および前記第1の正パワー光学系がまとめて取り外し可能であり、前記より近い第2の焦点距離を異なる第3の焦点距離に変更するために、第2の複機能光学系および第2の正パワー光学系と交換可能である、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記第2の複機能光学系が、前記異なる第3の焦点距離での視者の光学的収差を低減するための矯正光学的寄与を提供する、請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
さらに、前記開口内において前記正パワー光学系と前記周囲環境との間に配置された透過性保護外側カバーを備える、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
前記正パワー光学系が、周囲環境に臨む凸状の外面を有するレンズであり、この外面が保護コーティングで処理されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
共通の視野内でバーチャル対象と実世界の対象についての視者のビューを管理するための拡張現実バーチャル像表示システムであって、
内面と外面を含み、バーチャル対象をエンコードした角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、アイボックスに向けて方向付けし、前記アイボックスから第1の焦点距離でバーチャル対象を見られるようにした画像光ガイドと、
単一の光学要素として形成され、前記画像光ガイドの内側と前記アイボックスとの間に配置された複機能光学系であって、
(a)前記アイボックスから、より近い第2の焦点距離でバーチャル対象を見るために、前記アイボックスの前で前記画像担持光ビームを発散させる負の光学パワーの寄与と、
(b)実世界の対象とバーチャル対象の両方を前記より近い第2の焦点距離で見ることに関して、視者の光学的収差を低減する矯正光学的寄与と、
を提供する複機能光学系と、
前記画像光ガイドの外側に配置され、実世界の対象を矯正された視力で前記アイボックスから実際の距離で見るために、前記複機能光学系の矯正光学的寄与を相殺することなく、前記複機能光学系の負の光学パワーの寄与を相殺する正パワー光学系と、
を備えた拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項13】
複機能光学系が単一の屈折レンズ要素である、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項14】
前記第1の焦点距離が過焦点から無限遠に近い距離であり、前記より近い第2の焦点距離が前記過焦点距離よりも短い、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項15】
前記より近い第2の焦点距離が、1.5メートルから4メートルの間である、請求項14に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項16】
前記より近い第2の集束距離が、0.05メートルから1.5メートルの間である、請求項14に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項17】
前記矯正光学的寄与が、前記より近い第2の焦点距離での視者の光学的収差を低減するように設定されている、請求項14に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項18】
前記複機能光学系が、複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記第1の複機能光学系が取り外し可能であり、表示を異なる光学処方に適合させるために第2の複機能光学系と交換可能である、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項19】
前記第2の複機能光学系の負の光学パワーの寄与が、前記第1の複機能光学系の負の光学パワーの寄与と同じであり、前記第2の複機能光学系の矯正光学的寄与が前記第1の複機能光学系の矯正光学的寄与と異なる、請求項18に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項20】
前記複機能光学系が複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記正パワー光学系が複数の正パワー光学系のうちの第1の正パワー光学系であり、前記第1の複機能光学系および前記第1の正パワー光学系がまとめて取り外し可能であり、前記より近い第2の焦点距離を異なる第3の焦点距離に変更するために、第2の複機能光学系および第2の正パワー光学系と交換可能である、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項21】
前記第2の複機能光学系が、前記異なる第3の焦点距離での視者の光学的収差を低減するための矯正光学的寄与を提供する、請求項20に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項22】
さらに、前記正パワー光学系と周囲環境との間に配置された透過性保護外側カバーを備え、この透過性保護外側カバーから周囲環境が見える、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項23】
前記正パワー光学系が周囲環境に臨む凸状の外面を有するレンズであり、この外面から周囲環境が見え、この外面が保護コーティングで処理されている、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項24】
前記画像光ガイドは、
平坦かつ平行な内面と外面を有する透過性の平面導波路と、
角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、画像ソースから前記導波路へと向け、前記内面と外面での内部反射により伝播させるインカップリング光学要素と、
伝搬してきた前記画像担持光ビームを前記導波路からアイボックスに向けるアウトカップリング光学要素と、
を有する請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バーチャル像を実世界のビューに重ねて表示するように動作可能なニアアイディスプレイを含む拡張現実システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)として、周囲環境の遮るものの少ないビューとともにバーチャル像コンテンツを表示するために、目立たない光学系を備えた通常の眼鏡の形態の採用が増えてきている。画像発生器は眼鏡のテンプルに沿って支持することができ、実質的に透明な画像光ガイドは、生成された画像をバーチャル像として着用者の目に送る。このバーチャル像は、画像光ガイドを通して見ることができる着用者の実世界のビューに投影される。
【0003】
画像コンテンツは、角度的に関連付けられたビームの集合として画像光ガイドに沿って伝送することができる。2つの角度次元における各ビームの相対的な角度方向は、生成された画像内の異なる位置(例えば、ピクセル)に対応する。通常、ビーム自身は、視野内の固有の角度位置にある遠距離の光点に対応するかのように、コリメートされる。したがって、コリメートされたビームが共通のアイボックス内の重なり合う位置に向けられると、着用者の目は、アイボックスからの生成された画像を、無限遠に近い距離にあるバーチャル像としてみる。ただし、着用者が関心を持っている現実世界の対象は、はるかに近くに位置している可能性があり、焦点を合わせるために目の調節が必要である。同じシーン内で異なる焦点調節を必要とするバーチャル対象と実世界の対象を見ると、眼精疲労を引き起こす。
【0004】
近視、遠視、乱視などの屈折異常によって引き起こされる着用者の視力の問題も、従来の眼鏡に似た目立たないHMDに課題をもたらす。目立たないHMDに適合するために、矯正レンズを含む着用者の眼鏡を取り外すと、HMDを介した実世界の対象とバーチャル対象の両方の着用者の視界が、損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、HMDの着用者に提示される実世界の対象とバーチャル対象間の焦点の不一致および着用者自身の焦点能力に影響を与える視力の問題のいずれかまたは両方を管理するためのHMDの改善を特徴とする。着用者の眼は、バーチャル像から実像へと移す必要があり、本開示は、同じ視野内で実世界の対象と一緒にバーチャル対象を見るための着用者の目に対する要求を低減する。
【0006】
本開示によるHMDは、着用者が周囲環境内の実世界の対象を見ることができる開口を備えたアイリム部を有する。多くのHMDは各眼に提供されるアイリム部で両眼視をサポートするように配置されているが、ここでは種々の改良例が単眼視をサポートする単一のアイリム部に関して記述されている。ただし、対称配置の第2のアイリム部を両眼視または立体視をサポートするために使用することができることを理解すべきである。
【0007】
ヘッドマウントディスプレイのアイリム部の開口内に配置された画像光ガイドは、平坦かつ平行な内面および外面を有する透過性の平面導波路と、インカップリング光学要素、およびアウトカップリング光学要素を含む。インカップリング光学要素は、バーチャル対象をエンコードした角度的に関連する画像担持光ビームを導波路に向け、これにより、画像担持光ビームを平行な内面と外面での内部反射により伝搬させる。アウトカップリング光学要素は、伝搬してきた画像担持光ビームを導波路からアイボックスに向け、これにより、アイボックスからの第1の焦点距離でバーチャル対象を見られるようにする。単一の光学要素として形成された複機能光学系が、開口内において導波路の内面とアイボックスの間に配置されている。この複機能光学系は、(a)前記アイボックスから、より近い第2の焦点距離でバーチャル対象を見るために、前記アイボックスの前で前記画像担持光ビームを発散させる負の光学パワーの寄与と、(b)実世界の対象とバーチャル対象の両方を前記のより近い第2の焦点距離で見ることに関して、視者の光学的収差を低減する矯正光学的寄与と、を提供する。正パワー光学系が開口内において導波路の外面と周囲環境との間に配置されている。この正パワー光学系は、実世界の対象を矯正された視力で前記アイボックスから実際の距離で見るために、前記複機能光学系の矯正光学的寄与を相殺することなく、前記複機能光学系の負の光学パワーの寄与を相殺する、
【0008】
前記第1の焦点距離は、好ましくは、過焦点距離からほぼ無限遠までの距離であり、前記のより近い第2の焦点距離は、好ましくは、過焦点距離よりも短く、たとえば、1.5メートルから4メートルの間、または0.05メートルから1.5メートルの間とすることができる。矯正光学的寄与は、前記のより近い第2の焦点距離での視者の光学収差を低減するために設定されることが好ましい。
【0009】
前記複機能光学系は、複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系とすることができる。第1の複機能光学系は、ディスプレイを異なる光学処方に適合させるために、取り外し可能であり、第2の複機能光学系と交換可能である。前記正パワー光学系も、複数の正パワー光学系のうちの第1の正パワー光学系とすることができる。第1の複機能光学系と第1の正パワー光学系は、まとめて取り外し可能であり、前記のより近い第2の焦点距離を異なる第3の焦点距離に変更するために、第2の複機能光学系および第2の正パワー光学系と交換可能である。第2の複機能光学系も、異なる第3の焦点距離での観察者の光学的収差を低減するための矯正光学的寄与を提供することができる。複機能光学系と正パワー光学系の両方を、それぞれ単一の屈折レンズ要素として形成することができる。
【0010】
透過性の保護外側カバーは、開口内において正パワー光学系と周囲環境との間に配置することができる。あるいは、正パワー光学系を、周囲環境に面する凸状の外面を有するレンズとして形成し、この外面を保護コーティングで処理してもよい。
【0011】
本開示による拡張現実バーチャル像表示システムは、特に実世界の対象を過焦点距離よりも短い距離で見ることを意図している場合(この場合、目の大きな調節を必要とする)に、共通の視野内でバーチャル対象と実世界の対象についての視者の視界を管理する。画像光ガイドは、バーチャル対象をエンコードした角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、アイボックスに向けて方向付けし、前記アイボックスから第1の焦点距離でバーチャル対象を見られるようにする。複機能光学系は単一の光学要素として形成され、前記画像光ガイドの内側と前記アイボックスとの間に配置される。この複機能光学系は、(a)前記アイボックスから、より近い第2の焦点距離でバーチャル対象を見るために、前記アイボックスの前で前記画像担持光ビームを発散させる負の光学パワーの寄与と、(b)実世界の対象とバーチャル対象の両方を前記のより近い第2の焦点距離で見ることに関して、視者の光学的収差を低減する矯正光学的寄与と、を提供する。正パワー光学系は、前記画像光ガイドの外側に配置され、実世界の対象を矯正された視力で前記アイボックスから実際の距離で見るために、前記複機能光学系の矯正光学的寄与を相殺することなく、前記複機能光学系の負の光学パワーの寄与を相殺する。
【0012】
複機能光学系は、好ましくは単一の屈折レンズ要素である。前記第1の焦点距離は、好ましくは、過焦点距離からほぼ無限遠までの距離であり、前記のより近い第2の焦点距離は、好ましくは、過焦点距離よりも短く、たとえば、1.5メートルから4メートルの間、または0.05メートルから1.5メートルの間である。矯正光学的寄与は、前記のより近い第2の焦点距離での視者の光学収差を低減するために設定されることが好ましい。
【0013】
前記複機能光学系を複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系とすることができる。前記第1の複機能光学系は取り外し可能であり、表示システムを異なる光学処方に適合させるために第2の複機能光学系と交換可能である。前記第2の複機能光学系の負の光学パワーの寄与は、前記第1の複機能光学系の負の光学パワーの寄与と同じであり、前記第2の複機能光学系の矯正光学的寄与は前記第1の複機能光学系の矯正光学的寄与と異なる。
【0014】
前記複機能光学系を、複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系とすることができ、前記正パワー光学系を、複数の正パワー光学系のうちの第1の正パワー光学系とすることができる。前記第1の複機能光学系と前記第1の正パワー光学系は、好ましくはまとめて取り外し可能であり、前記のより近い第2の焦点距離を異なる第3の焦点距離に変更するために、第2の複機能光学系および第2の正パワー光学系と交換可能である。第2の複機能光学系は、好ましくは、異なる第3の焦点距離での視者の光学収差を低減するために矯正光学的寄与を提供する。
【0015】
透過性の保護外側カバーを、正パワー光学系と実際の対象が見える周囲環境との間に配置することができる。あるいは、正パワー光学系をレンズとして構成し、レンズの周囲環境に面した凸状の外面を保護コーティングで処理してもよい。
【0016】
前記画像光ガイドは、平坦かつ平行な内面と外面を有する透過性の平面導波路と、角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、画像ソースから前記導波路へと向け、前記内面と外面で内部反射により伝播させるインカップリング光学要素と、伝搬してきた前記画像担持光ビームを前記導波路からアイボックスに向けるアウトカップリング光学要素と、を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図面は明細書の一部としてここに組み込まれる。ここに記載された図面は、現在開示されている主題の実施形態を示し、本開示の選択された原理および教示を示している。しかしながら、図面は、現在開示されている主題のすべての可能な実施を例示するものではなく、本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態によるバーチャル像表示システムの画像光ガイドの上面図であり、画像ソースからの光が画像光ガイドに沿って、バーチャル像を見ることができるアイボックスへと伝送される様子を示している。
【0019】
【
図2】本開示の一実施形態によるバーチャル像表示システムの画像光ガイドの斜視図であり、この画像光ガイドは、画像担持光ビームの伝送を管理するために、インカップリング回折光学要素、中間の回転回折光学要素、およびアウトカップリング回折光学要素を含む。
【0020】
【
図3】本開示の一実施形態によるHMDのアイリム部の概略上面図であり、このアイリム部は、拡張現実アプリケーション用に構成され、同じ視野内に実世界の対象とバーチャル対象を見るために、外側保護カバーと画像光ガイドを含む。
【0021】
【
図4】
図3のアイリム部に矯正光学系を加えたHMDのアイリム部を示す概略上面図である。
【0022】
【
図5】
図3のアイリム部に、負パワー光学系と正パワー光学系の両方を加えたHMDのアイリム部を示す概略上面図である。
【0023】
【
図6】
図5のアイリム部に
図4の矯正光学系を加えたHMDのアイリム部を示す概略上面図である。
【0024】
【
図7】本開示の一実施形態による拡張現実アプリケーション用のHMDにおいて、外側保護カバーと画像光ガイドを含むアイリム部を、右テンプル部および鼻ブリッジ部とともに示す平断面図である。
【0025】
【
図8】
図7のHMDに負パワー光学系と正パワー光学素子の両方を追加したHMDにおいて、画像光ガイドを含むアイリム部を右テンプル部および鼻ブリッジ部とともに示す平断面図である。
【0026】
【
図9】
図8のHMDに矯正光学系を加えたHMDにおいて、画像光ガイドを含むアイリム部を右テンプル部および鼻ブリッジ部とともに示す平断面図である。
【0027】
【
図10】
図9のHMDの負パワー光学系と矯正光学系を、単一の光学要素で両方の機能を発揮する複機能光学系に置き換えたHMDにおいて、画像光ガイドを含むアイリム部を右テンプル部および鼻ブリッジ部とともに示す平断面図である。
【0028】
【
図11A】本開示の一実施形態によるHMDにおいて、アイリム部内で1セットの光学系を別のセットの光学系と交換する方式で、正パワー光学系と複機能光学系の両方を収容する交換モジュールの正面図である。
【0029】
【
図11B】本開示の一実施形態による交換モジュールの平断面図であり、共通のレンズハウジング内に設けられた正パワー光学系と複機能光学系を示す。
【0030】
【
図11C】本開示の実施形態によるHMDにおいて、右テンプル部と鼻ブリッジ部との間にスライド可能に取り付けられた交換モジュールと画像光ガイドを含むアイリム部の平断面図である。
【0031】
【
図11D】
図11CのHMDを交換用モジュールが取り外され状態で示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、明示的に指定されている場合を除いて、様々な代替の態様を想定し得ることを理解するべきである。添付の図面に示され、以下の明細書に記載される特定のアセンブリおよびシステムは、本明細書で定義される本発明の概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、開示された実施形態について特定の寸法、方向、またはその他の物理的特性は、特に明記しない限り、限定的であると見なされるべきではない。また、本明細書に記載の様々な実施形態における同様の要素は、一般に、本出願において同様の参照番号で言及される。
【0033】
図1は、単眼型の画像光ガイド10の従来構造の一つを簡略化して示す断面図であり、この画像光ガイド10は、平面導波路12(planer waveguide)と、インカップリング回折光学要素IDO(インカップリング回折光学素子;in-coupling diffractive optic)と、アウトカップリング回折光学要素ODO(アウトカップリング回折光学素子;out-coupling diffractive optic)と、を備えている。平面導波路12は、光学ガラスやプラスチックからなる透明な基板Sを有している。基板Sは、平行な平坦面からなる内側表面14(内面)および外側表面16(外面)を有している。この例では、インカップリング回折光学要素IDOは、平面導波路12の内側表面14に配置される透過型回折格子として示されている。しかしながら、インカップリング回折光学要素IDOは、入光する画像担持光WIを平面導波路12へと回折するものであれば、反射型回折格子、または、体積ホログラムや他のホログラフィック回折素子等の他の回折光学要素であってもよい。インカップリング回折光学要素IDOは平面導波路12の内側表面14に配置されても、外側表面16に配置されてもよく、画像担持光WIが平面導波路12に近づく方向に応じて、透過型であっても、反射型であってもよい。
【0034】
バーチャル表示システムの一部として使用される場合、インカップリング回折光学要素IDOは、実像、バーチャル像、またはハイブリッド像のソース18からの画像担持光WIと結合して、平面導波路12の基板Sに送り込む。画像ソース18により形成された実際の画像又は画像の次元が、最初に、重なり合う角度的に関連付けられたビームのアレイに変換され(例えば、焦点に向かって集束され)、インカップリング回折光学要素IDOに呈示される。角度的に関連付けられたビームは、バーチャル像の異なる位置をエンコードしている。典型的には、角度的に関連付けられたビームの1つを形成する各束内の光線は平行に延びるが、角度的に関連付けられたビームは、画像の線形ディメンジョンに対応する2つの角度ディメンジョンで定義することができる角度で、互いに相対的に傾斜している。
【0035】
画像担持光WIは、インカップリング回折光学要素IDOにより回折され(概ね1次回折され)、それにより、画像担持光WGとして平面導波路22内に再方向付けられる。画像担持光WGは、平坦かつ平行をなす内側表面14と外側表面16での全内部反射(Total Internal Reflection:TIR)により、平面導波路12の長手の次元Xに沿ってさらに伝送される。画像担持光WGは、TIRにより定められた境界に合わせて、角度的に関連付けられたビームの異なる組み合わせになるように回折されるが、角度的にエンコードされた形態(インカップリング回折光学要素IDOのパラメータにより導かれる形態)で、画像情報を保持する。アウトカップリング回折光学要素ODOは、エンコードされた画像担持光WGを受け取り、これを回折して(これも概ね1次回折)、画像担持光WOとして平面導波路12の外へと送る。画像担持光WOは、アイボックスEとして言及される空間の近くの領域に向かう。このアイボックスE内において伝送されたバーチャル像を視者の目で見ることができる。アウトカップリング回折光学要素ODOはインカップリング回折光学要素IDOに対して対称に設計され、これにより、出力された画像担持光WOの角度的に関連付けられたビームにおいて、画像担持光WIの元々の角度的関係を復元するようになっている。さらにアウトカップリング回折光学要素ODOは、オリジナルの視野点の位置的角度的な関係(positional angular relationships)を修正して、有限距離で収束する出力バーチャル像を生成することができる。
【0036】
しかしながら、アイボックスE(このアイボックスEは、バーチャル像を見ることができる領域のサイズを定義する)に存在する角度的に関連付けられたビーム間のオーバーラップの1つのディメンションを増大させるために、アウトカップリング回折光学要素ODOは、制限された厚みTの平面導波路12とともに配置されている。これにより、アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WCと多数回遭遇し(multiple encounters)、各遭遇時において画像担持光WGの一部だけを回折する。アウトカップリング回折光学要素ODOの長手に沿う多数回遭遇は、画像担持光WOの角度的に関連付けられたビームの各々を一次元で拡大する効果を有し、これにより、ビームがオーバーラップするアイボックスEの一次元を拡大する。拡大されたアイボックスEは、バーチャル像を見るための観察者の目の位置に対する感度(精度)を減じる。
【0037】
アウトカップリング回折光学要素ODOは、平面導波路12の内側表面14に配置された透過型の回折格子として示されている。しかし、インカップリング回折光学要素IDOと同様に、アウトカップリング回折光学要素ODOは平面導波路12の内側表面14に配置されても、外側表面16に配置されてもよく、画像担持光WGが平面導波路12から出る方向に応じて、透過型であっても、反射型であってもよい。さらに、アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WGをアイボックスEに向かって伝播する画像担持光WOとして平面導波路12から回折するものであれば、体積ホログラムや他のホログラフィック回折素子等の他の回折光学要素であってもよい。
【0038】
図2の斜視図は、2次元で、すなわち画像のx軸及びy軸に沿ってアイボックスEを拡大するように構成された画像光ガイド20を示している。第2の次元のビーム拡大を達成するために、インカップリング回折光学要素IDOは、画像担持光WGを格子ベクトル(grating vector)k1を中心に平面導波路22に沿い中間回転光学要素TO(intermediate turning optic)に向けて回折する。この中間回転光学要素の格子ベクトルk2は、画像担持光WGを反射モードで平面導波路22に沿いアウトカップリング回折光学要素ODOに向けて回折するように、配向されている。画像担持光WGの一部のみが、中間回転光学要素TOとの多数の遭遇のうちの各遭遇により回折され、それにより、アウトカップリング回折光学要素ODOに向かって進む画像担持光WGの角度的に関連付けられたビームの各々を、横方向に拡大する。
中間回転光学要素TOは画像担持光WGを、アウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk3と少なくとも概ねアライメントする方向へと、方向転換する。画像担持光WGの角度的に関連付けられたビームを、画像担持光WOとして平面導波路22から出る前に、第2の次元で縦方向に拡大するためである。描かれた格子ベクトルk1、k2、k3等の格子ベクトルは、平面導波路22の平行な平面上を延び、回折光学要素の回折フィーチャ(例えば、溝、線、又は罫線(ルーリング;ruling))と垂直な方向を向く。格子ベクトルは、それぞれの回折光学要素IDO、TO、及びODOの周期又はピッチd(すなわち、溝間の中心距離)に反比例する大きさを有する。
【0039】
図2の画像光ガイド20において、インカップリング回折光学要素IDOは、入力画像担持光WIを受け取る。この画像担持光WIは、プロジェクタ等のイメージソース18によって生成された画像内における個々のピクセル又は等価な位置に対応する、角度的に関連付けられたビームの集合を含む。バーチャル像を作成するための角度的にエンコードされたビームの全範囲は、実際のディスプレイと集束光学系によって、又はビームの角度をより直接的に設定するためのビームスキャナーによって、又はスキャナーと共に用いられる一次元の実際のディスプレイ等の組合せによって、生成することができる。画像光ガイド20は、画像担持光WGと、配向の異なる中間回転光学要素TOおよびアウトカップリング回折光学要素ODOとの多数遭遇を提供することによって、画像の二次元において拡大された角度関連ビームの集合を出力する。平面導波路22の示された方向において、中間回転光学要素TOはy軸方向のビーム拡大を提供し、アウトカップリング回折光学要素ODOはx軸方向に同様のビーム拡大を提供する。インカップリング回折光学要素IDO、中間回転光学要素TO、アウトカップリング回折光学要素ODOの回折フィーチャの、それぞれの周期d、並びにそれぞれの格子ベクトルの配向は、画像光ガイド20から画像担持光WOとして出力される画像担持光WIの、角度的に関連付けられたビーム間の意図された関係を維持しながら、二次元のビーム拡大を提供する。
【0040】
すなわち、画像担持光WIの画像光ガイド20への入力は、インカップリング回折光学要素IDOによって角度的に関連付けられたビームの異なる集合にエンコードされるが、画像を再構築するために必要な情報は、インカップリング回折光学要素IDOの系統的な効果により、保持される。中間回転光学要素TOはインカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間の中間に位置し、画像担持光WGのエンコーディングに大きな変化を引き起こさないように構成される。アウトカップリング回折光学要素ODOは、通常、インカップリング回折光学要素IDOに対して対称(symmetric)の態様で構成される。例えば同じ周期を共有する回折フィーチャを含む。同様に、中間回転光学要素TOの周期も、インカップリング回折光学要素IDO及びアウトカップリング回折光学要素ODOの共通の周期と一致する。中間回転光学要素TOの格子ベクトルk2は、他の格子ベクトルに対して45度を向くように図示されている。この配向は可能ではあるが、好ましくは、中間回転光学要素TOの格子ベクトルk2はインカップリング回折光学要素IDO及びアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk1、k3に対して60度に配向され、画像担持光WGを120度回転させる。中間回転回折要素TOの格子ベクトルk2をインカップリング回折光学要素IDO及びアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk1、k3に対して60度に配向することによって、インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk1、k3もまた、互いに対して60度に配向される。格子ベクトルの大きさは、回転光学要素TOとインカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの共通のピッチに基づくため、3つの格子ベクトルk1、k2、k3(線分として方向付けされる)が正三角形を形成し、その合計はゼロとなる。これにより、色分散を含む望ましくない収差を引き起こしかねない非対称の効果が避けられる。このような非対称効果は、3つの格子ベクトルk1、k2、k3の大きさが等しくなくても、3つの格子ベクトルk1、k2、k3の合計がゼロとなるような相対的な向きによっても回避できる。
【0041】
より広い意味で、平面導波路22へと向けられる画像担持光W1は、インカップリング光学要素として格子、ホログラム、プリズム、ミラー、その他のメカニズムのいずれを用いるかに拘わらず、インカップリング光学要素によって有効にエンコードされる。入力時に実行される光の反射、屈折、及び/又は回折は、視者に提示されるバーチャル像を再形成するために、出力によってデコードをされなければならない。中間回転光学要素TOとインカップリング回折光学要素IDO、アウトカップリング回折光学要素ODOの間の対称性が維持されるか否か、画像担持光W1の角度的に関連付けられたビームのエンコーディングが平面導波路22に沿って変化するか否かに拘わらず、中間回転光学要素TOとインカップリング回折光学要素IDO、アウトカップリング回折光学要素ODOは互いに関連付けられ、これにより、平面導波路22から出力される画像担持光WOが画像担持光WIの当初のまたは所望の形態を維持し、意図するバーチャル像を生成するようになっている。
【0042】
文字「R」は、目がアイボックスE内にある視者に見えるバーチャル像の向きを表わしている。図示のとおり、表示されたバーチャル像の中の文字「R」の向きは、画像担持光WIによりエンコードされた文字「R」の向きと一致している。x-y平面における入射画像担持光WIのz軸周りの回転又は角度的配向の変化は、アウトカップリング回折光学要素(ODO)から出射する光の回転又は角度的配向に、対応する対称の変化を引き起こす。画像の配向という観点では、中間回転光学要素TOは光学リレーとして働き、画像担持光WGの角度的にエンコードされたビームを、画像の1つの軸(例えば、y軸)に沿って拡大する。アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WIによってエンコードされたバーチャル像の元の配向を維持しながら、画像担持光WGの角度的にエンコードされたビームを、画像の別の軸(例えば、x軸)に沿って拡大する。中間回転光学要素TOは、典型的には傾斜又は四角形の回折格子であるが、ブレーズド回折格子でもよく、平面導波路22の内側表面又は外側表面に配置することができる。
【0043】
インカップリング回折光学要素IDO、回転回折光学要素TO、アウトカップリング回折光学要素ODOは、好ましくは、オフセット位置から視者の目の近くまで画像光ガイド20によって伝送する時に、一緒になって、バーチャル像を定義する異なる波長のビーム間の角度関係を維持する。そうしながら、インカップリング回折光学要素IDO、回転回折光学要素TO、アウトカップリング回折光学要素ODOは、異なる方法で相対的に配置されかつ配向され、これにより、平面導波路22の全体形状ならびに角度的に関連付けられたビームが平面導波路22に入る方向、平面導波路22から出る方向をコントロールすることができる。
【0044】
上述した画像光ガイド10、20は、拡張現実(AR)アプリケーション用に設計されたヘッドマウントディスプレイ(HMD)での使用に適した画像光ガイドの例として提示されている。拡張現実では、バーチャル像コンテンツが透明な平面導波路12、22を通して見られる現実世界のビューに重ね合わされる。バーチャル像表示システムを単一の平面導波路を備えたものとして描いたが、表示システムは、積み重ねられた形態の複数の平面導波路を備えることができる。これら複数の平面導波路は、画像を異なる色で伝送し、あるいは画像の異なる部分を伝送する。より一般的な意味で、バーチャル像を着用者の目に向けることができる本明細書で企図される画像光ガイドは、様々な形態をとることができ、導波路を通した周囲環境のビューを保持しながら、導波路への光の入射方法、導波路からの光の出射方法を種々採用することができる。つまり、アウトカップリング光学要素と導波路自身は、着用者の導波路を通した周囲環境の視界を過度に妨害しないように構築する必要がある。画像光ガイドによって伝達されるバーチャル対象と、画像光ガイドを通して見られる実世界の対象の両方が、着用者にはっきりと見える必要がある。重ねられたバーチャルコンテンツにより、着用者の周囲環境へのさらなる交流をサポートすることができる。
【0045】
図3は、拡張現実アプリケーション用に構成されたHMDのアイリム部30(eye rim section)の概略図である。アイリム部30は、前述の画像光ガイド10、20等のような画像光ガイド40を含み、画像光ガイド40を通して実世界の視界(ビュー;view)を提供しながら、バーチャル像を着用者の眼32に伝送する。このようにして、着用者の眼32に、画像光ガイド40を通して見ることができる実世界の対象36の中で、バーチャル対象34を提示することができる。画像ソース(図示せず)で生成された画像担持光ビームは、通常、それぞれコリメートされたビーム(バーチャル像を形成するために互いに角度的に関連付けられたビーム)として、画像光ガイドに沿って伝送され画像光ガイドから伝送される。上記のようなバーチャル像表示システムの一部として、画像光ガイド40から出射される画像担持光ビーム42は、あたかも、過焦点から無限遠に近い焦点距離(hyperfocal to near infinite focusing distance;例えば着用者の目から6~7メートルの距離~ほぼ無限遠)で、バーチャル像34から発せられバーチャル像担持光ビーム44を介して伝送されたかのように見える。この状況において、着用者の眼32の瞳孔は、着用者がバーチャル像を見ることができるアイボックス38内に位置している。過焦点距離は、通常の眼または矯正された眼で、調節(すなわち、目の焦点距離の変化)をする必要なく対象を見ることができる最短対象距離を設定する。
【0046】
着用者の眼32に直接出射される画像担持光ビーム42とは対照的に、実世界の対象36からの光ビーム46は、着用者の眼32に到達する前に、透明の保護外側カバー48および画像光ガイド40の両方を透過する。透明の保護外側カバー48は、バーチャル対象34の着用者の視界に影響を与えることなく、実世界の対象36の着用者の視界に影響を与えるフィルタリングや他の光学機能を提供することができる。
【0047】
図4は、HMDのアイリム部50の概略図である。アイリム部50は、アイリム部30と同様に、バーチャル像ディスプレイシステムの一部としての画像光ガイド40と、透明の保護外側カバー48の両方を有する。HMDの一部の着用者は、近視と呼ばれる状態にあり、焦点が合っている遠くの物体を見るのが難しい。この状態は、着用者から所定の距離を超えた実際の対象と、着用者から所定の距離を超えて配置されているように見えるバーチャル対象の両方に、着用者が明確に焦点を合わせる能力に影響を与える。
【0048】
交換可能でカスタマイズ可能な矯正光学系52(光学手段、光学要素、光学部材、光学素子;optic)が、画像光ガイド40の1つまたは複数の導波路と着用者の眼32との間に配置されている。矯正光学系52は、透過光を改質(reformate)するために、屈折または回折のメカニズムを利用することができる。矯正光学系52は、HMDのアイリム部50内に取り外し可能に装着され、着用者の長い距離の視力を正常化するために、所望の光学的矯正(例えば、負の集束パワー(屈折力))を提供する。これは光学処方により評価される。
【0049】
遠方の実世界の対象36からの光ビーム46は、透過性の保護外側カバー48と画像光ガイド40の両方を透過してから、矯正光学系52に遭遇する。矯正光学系52は、光ビーム46を光ビーム54へと再配向または再配置する所望の量の光学パワー(optical power;屈折力)を有し、これにより、着用者の眼32が、重大な収差なしに実世界の対象36に対してより明確に焦点を合わせることができる。同様に、画像光ガイド40から放出された画像担持光ビーム42(この光ビームは、遠方のバーチャル対象34からのバーチャル像担持光ビーム44を擬している)は矯正光学系52に遭遇し、矯正光学系52は画像担持光ビーム42を画像担持光ビーム56へと再配向または再配置し、これにより、着用者の眼32が、重大な収差なしに遠くのバーチャル対象34に対してより明確に焦点を合わせることができる。矯正光学系52は、好ましくは、アイリム部50への取り付けとアイリム部50からの取り外しの両方が可能である。矯正光学系52は近視を矯正するのに特に適しているが、乱視を含む他のタイプの系統的収差(systematic aberration)も矯正することができる。例えば、矯正光学系は、異なる距離での収差を矯正するための多焦点または二焦点光学系として構成することができる。
【0050】
図5は、HMDのアイリム部60の概略図であり、このアイリム部60は、バーチャル対象34(このバーチャル対象はバーチャル像表示システムにより過焦点からほぼ無限遠の焦点距離で生成される)が、はるか近くに見られるようになっている。たとえば、HMDの着用者が通常、所定の目の調節を必要とする範囲内で実世界の対象を見る状況では、同じシーン内でより一層長い焦点距離にあるバーチャル対象を、目の調節を少なくして知覚することが困難である。HMDの着用者は、バーチャル対象と実世界の対象を見るために必要な異なる調節量の間(例えば、調節を殆ど又は全くしない場合と、目の焦点距離の顕著な変化を伴って調節する場合との間)で、切り替えるため、眼精疲労を覚える。
【0051】
アイリム部60は、負パワー光学系または発散光学系62を含む。この発散光学系62は、画像光ガイド40から出力される画像担持光ビーム42に作用し、この画像担持光ビーム42を発散画像担持光ビーム72に変換する。この発散画像担持光ビーム72は、バーチャル像担持光ビーム44によってトレースされた見かけの焦点位置を有するバーチャル対象34がより近くに見えるような効果を発揮する。しかしながら、同様にして実世界の対象36までの集束距離を短くすると、バーチャル対象34と実世界の対象36との間の広がった焦点距離の問題は解決されないであろう。さらに、実世界の対象36は、周囲環境内の真の位置に現れないであろう。
【0052】
アイリム部60を通して所望の実世界の視界(ビュー)を復元するために、アイリム部60は、画像光ガイド40と透過性保護外側カバー48との間に配置された正パワー光学系(正屈折力光学系)または収束光学系64を含む。バーチャル対象34および実世界の対象36の両方の視界(ビュー)に影響を与える負パワー光学系62とは対照的に、正パワー光学系64は、実世界の対象36のビューにのみ影響を与える。実世界の対象36からの光ビーム46は、最初に正パワー光学系64によって収束されて光ビーム76となり、次に負パワー光学系62によって発散されて光ビーム78になる。この光ビーム78では、光ビーム46の元の構成が復元される。
【0053】
正パワー光学系64は、光学パワー(屈折力)の大きさ(すなわち、絶対値)が負パワー光学系62と同じであるが、負パワー光学系62とは光学パワーの符号が逆である光学系として定義することができる。例えば、正パワー光学系64の光学パワーは、+nD(正のnディオプター(視度;diopter)の光学パワー)として表すことができる。負パワー光学系62の光学パワーは、-mD(負のmディオプターの光学パワー)として表すことができる。2つの光学系62、64は、(n-m)Dの結合された光学パワーを有し、この結合された光学パワーが実世界の対象36からの光ビーム46に作用する。「n」と「m」が等しく設定される場合、結合された光学パワーはゼロとすることができる。 つまり、(n-m)D =0D(ディオプター)である。負パワー光学系62の効果は、実対象36を見るためにキャンセルすることができるが、負パワー光学系62は、より近い距離でバーチャル対象34を見る光学パワーを保持する。
【0054】
好ましくは、画像光ガイド40の導波路は、実世界の対象36への焦点距離を著しく変化させる重大な光学パワーを与えない。例えば、光学パワーを与えることを回避するために、1つまたは複数の透過性導波路は、アイリム部の開口内において平坦な表面を有するように形成することができる。さらに、1つまたは複数の出力結合光学系は、好ましくは、バーチャル対象34を過焦点から無限遠に近い集束距離で提示する形態で、画像担持光ビームを出力するように構成される。
【0055】
屈折能力において、負パワー光学系62は例えば、平凹レンズ、両凹レンズ、または負メニスカスレンズとして形成することができ、正パワー光学系64は例えば、平凸レンズ、両凸レンズ、または正メニスカスレンズとして形成することができる。あるいは、負パワー光学系62と正パワー光学系64の一方または両方を、ホログラフィック光学要素(HOE)として形成することができる。正パワー光学系64の凸状の外側の面は、透過性の保護外側カバー48を代替することができる。コーティングを、フィルタリングやその他の保護などの目的で、上記凸状の外面に塗布することができる。
【0056】
図6は、
図5のアイリム部60の特徴を組み込んだアイリム部80の概略図である。このアイリム部80は、自己相殺する負パワー光学系62と正パワー光学系64を含むが、
図4の矯正光学系52も組み込んでいる。負パワー光学系62は、バーチャル対象34の焦点距離を着用者の眼32に近づけ、正パワー光学系64は、アイリム部80を通して見える実世界の対象36に対する負パワー光学系62の効果を打ち消す。負パワー光学系62と着用者の眼32との間に位置する交換可能かつカスタマイズ可能な矯正光学系52は、遠距離視力等の着用者の視力を正常化するために、光学的処方によって得られる所望の光学的矯正を提供する。矯正光学体52について前述したような他のタイプの収差もまた矯正することができる。
【0057】
矯正光学系52は、復元された光ビーム78を光ビーム84に再配向または再配置し、これにより、着用者の眼32が、重大な収差なしに実世界の対象36に対してより明確に焦点を合わせることができるようにする。さらに、矯正光学系52は、バーチャル対象34をより近い焦点距離で見えるようにした画像担持光ビーム72を、画像担持光ビーム86へと再配向または再配置し、これにより、着用者の眼32は、重大な収差なく、上記のより近い距離のバーチャル対象34に、より明確に焦点を合わせることができる。
【0058】
矯正光学系52は、負パワー光学系62および正パワー光学系64と同様に、屈折レンズ、回折格子、ホログラフィック光学素子(HOE)またはそれらの組み合わせとして形成することができる。負パワー光学系62と矯正光学系52は、屈折または回折の形態またはそれらの組み合わせの形態で、単一の光学要素に組み込むことができる。このような矯正光学系52と負パワー光学系62の機能を実行する単一の光学要素は、好ましくは、アイリム部80に取り付け可能であり、アイリム部80から取り外し可能である。正パワー光学系64は、特に凸状の外面を有する場合、透過性保護外側カバー48を代替することができる。フィルタリングやその他の保護などの目的で、上記の凸状の外面にコーティングを塗布することができる。
【0059】
好ましくは、実世界の対象36のビューに影響を与えるための光学パワーは、画像光ガイド40からではなく、負パワー光学系62と正パワー光学系64の自己相殺効果と組み合わせて、矯正光学系52によって提供される。画像光ガイドの構築は、画像担持光ビームのそれぞれを実質的にコリメートされた形態で(バーチャル対象34を過焦点から無限遠に近い集束距離で提示する形態で)伝送することによって単純化することができる。負パワー光学系62を矯正光学系52と一緒に配置し、これにより、バーチャル対象34が実世界の対象36の中で着用者の眼32に対して提示される焦点距離を、短縮することができる。
【0060】
図7は、着用者の眼32に対して配向されるようにしたアイリム部100を、HMDの右テンプル部102および鼻ブリッジ部104とともに示す上面図である。アイリム部100は、内側端部でHMDの鼻ブリッジ部104と結合し、外側端部で右テンプル部102と結合する。
【0061】
前述のような画像光ガイド40は、画像光ガイド40を通して実世界のビューを提供しながら、バーチャル像を着用者の眼32に伝送する。画像光ガイド40は、アイリム部100内に固定されているが、右テンプル部分102に設けられた画像ソースとしてのプロジェクタ106からの画像担持光ビームを、結合メカニズム108を通して受ける。前述したように、結合メカニズム108はインカップリング光学要素を含む。
【0062】
アイリム部100はまた、開口110を画成する。この開口110は、取り外し可能および交換可能な透過性保護外側カバー112によって、覆われるか又は少なくとも実質的に覆われる。画像光ガイド40は、単一の透明な平面導波路で描かれているが、アイリム部100は、積み重ねられた(重なり合う)構造で、複数の平面導波路を収容するように構成することができる。
【0063】
図8は、
図7のHMDと同様に、アイリム部120をHMDの右テンプル部102および鼻ブリッジ部104とともに示す上面図である。右テンプル部102は、
図7で使用されたものと同じプロジェクタ106および結合メカニズム108を含み、角度的に関連付けられた画像担持光ビームを画像光ガイド40の平面導波路に向ける。また、
図7のアイリム部100と同様に、アイリム部120は透過性保護外側カバー112を含む。この保護外側カバー112は、残りのアイリム部120に取り付け可能または取り外し可能である。
【0064】
アイリム部120はまた、
図5のアイリム部60のように、負パワー光学系122と正パワー光学系124の両方を含む。負パワー光学系122は、過焦点からほぼ無限遠の集束距離で画像担持光ガイド40から出力された画像担持光ビームを、発散する画像担持光ビームに変換する。この発散する画像担持光ビームにより、バーチャル対象が着用者の眼32の近くに見えるようになる。正パワー光学系124は、周囲環境から開口110を通過する光ビームに対して負パワー光学系の効果を打ち消し、着用者が実際の位置にある実世界の対象を見ることができるようにする。
図5のアイリム部60と同様に、適切なコーティングを有する正パワー光学系124の凸面は、透過性保護外側カバー112に代わって用いることができる。
【0065】
図9は、アイリム部130をHMDの右テンプル部分102および鼻ブリッジ部104とともに示す上面図である。これら構成部は、
図8のアイリム部120と対応する右テンプル102および鼻ブリッジ部104のすべての特徴を備えている。しかしながら、
図6のアイリム部80のように、アイリム部130は交換可能でカスタマイズ可能な矯正光学系132を含む。この矯正光学系132は、負パワー光学系122と着用者の眼32との間に配置される。
【0066】
図6の矯正光学系52のように。矯正光学部132により、着用者は、開口110を通して見える実世界の対象に対してより明確に焦点を合わせることができるとともに、バーチャル対象(プロジェクタにより生成され、画像光ガイド40により伝送され、負パワー光学系122によって、着用者の眼32に、より近い集束距離で提示されたバーチャル像)に対して、より明確に焦点を合わせることができる。
【0067】
上述したように、矯正光学系132は、負パワー光学系122および正パワー光学系124のように、屈折レンズ、回折格子、ホログラフィック光学素子(HOE)またはそれらの組み合わせとして形成することができる。負パワー光学系122と矯正光学系132は組み合わされて、レンズダブレット134の形態で示される単一の光学要素にすることができる。他の屈折または回折形態またはそれらの組み合わせもまた、単一の要素として使用することができる。レンズダブレット134または矯正光学素子132と負屈折力レンズ122の機能を実行する単一の光学要素の別の形態は、好ましくは、残りのアイリム部130に取り付け可能であり、残りのアイリム部130から取り外し可能である。上述したように、正パワー光学系124の適切に処理された凸状の外面は、透過性の保護外側カバー112を代替することができる。
【0068】
矯正光学系132が負パワー光学系122と、レンズダブレット134などの複合光学要素に組み合わされる例として、着用者の眼32から最も遠い正パワー光学系122が、+1ディオプターの光学パワーに寄与すると仮定する。さらに、着用者が所望の視距離での矯正のために-2ディオプターの光学パワーの矯正を必要とすると仮定する。この場合、レンズダブレット134などの複合光学要素は、-3ディオプターの光学パワーに寄与するように構成することができる。-3ディオプターの光学パワーは、+1ディオプターの光学パワーを補償(相殺)し、実世界の対象のビューに影響を与え、生成されたバーチャル対象をより近い焦点距離で提示するために必要な-1ディオプターの光学パワーを保持し、実世界の対象とバーチャル対象の両方に対する着用者のビジョンを、所望する視距離に矯正する。より一般的な意味では、これらの結果を達成するために、処方の光学パワー「c」から正パワー光学系124の光学パワー「p」を引いたものは、レンズダブレット134などの複合光学素子の光学パワー「s」に等しい(すなわち、s=c-p)。
【0069】
図10は、
図9のアイリム部130と同様のアイリム部140の上面図であり、同様の構成要素には同様の番号が付されている。しかしながら、アイリム部140では、複合光学系の例としてのレンズダブレット134が複機能光学系142(多機能光学系;multifunction optic)によって置き換えられている。この複機能光学系142は、単一の光学要素の例としての単純なレンズ144の形態をなし、負パワー光学系122と矯正光学系132の両方の機能を実行する。単一の光学要素としての複機能光学系142は、屈折レンズ、回折格子、ホログラフィック光学要素(HOE)、またはそれらの組み合わせとして形成することができる。
【0070】
複機能光学系142は、着用者の眼32の異なる光学処方に対応して交換可能かつカスタマイズ可能である。複機能光学系142に組み込まれた負の光学パワーによって提供されるより近い焦点距離で、バーチャル対象を見ることにより、着用者の光学的収差を低減する。さらに、複機能光学系142は、複機能光学系142に組み込まれる負の光学パワーの量を変更するようにカスタマイズし、これにより、バーチャル対象が着用者の目に提示される焦点距離を変更することもできる。好ましくは、複機能光学系142の矯正に関する寄与は、変更された焦点距離で実世界の対象とバーチャル対象の両方を見ることに関連して着用者の光学的収差を低減するように設定される。さらに、複機能光学系142の負の光学パワーの変化は、好ましくは、正パワー光学系124の正の光学パワーの対応する変化と合致する。この正パワー光学系124は、周囲環境から開口110を通る光ビームに対する複機能光学系142の負の光学パワーの影響を打ち消すために、同様に交換可能およびカスタマイズ可能である。これにより着用者は実世界の対象を実際の位置で見ることができる。
【0071】
図11A-11Dは、複合レンズホルダー150の特徴を示す。この複合レンズホルダー150は、HMDの受容アイリム部160内において、正パワー光学系124と複機能光学系142の両方を支持しかつ一緒に交換できるようにする。
図11Aにおいて、複合レンズホルダー150は、開口154を画成するリム状のハウジング152を備えている。開口154は、支持された正パワー光学系124および複機能光学系142を通して周囲環境の明確な視界を維持する。
【0072】
図11Bの平断面図において、ハウジング152は、正パワー光学系124と複機能光学系142の外周に係合して、2つの光学系124、142間の所望の光学的アライメントを維持する。ハウジング152はさらにスロット156を備えている。このスロット156は、
図11Cに示される画像光ガイド40等の画像光ガイドを収容するためのクリアランスを提供する。この画像光ガイド40は、HMDのアイリム部160に、より恒久的に取り付けられている。
【0073】
先に提示した図と同様に、
図11Cの平断面図に示されるHMDは、右テンプル部172および鼻ブリッジ部174を含む。右テンプル部172に設けられたプロジェクタ106および結合メカニズム108は、画像担持ビームを、右テンプル部172に支持された画像光ガイド40に送る。しかしながら、右テンプル部172および鼻ブリッジ部174は、それぞれスロット162、164を備えている。これらスロット162,164は、複合レンズホルダー150の開口154とアイリム部160の開口110とをアライメントするようにして、複合レンズホルダー150をスライド可能に受け入れる。これにより、周囲環境および画像光ガイド40の両方から着用者の眼32への光路を受け入れる。好ましくは、複合レンズホルダー150は、正パワー光学系124および複機能光学系142と一緒に、アイリム部160内の画像光ガイド40の事前配置を乱すことなく、右テンプル部172と鼻ブリッジ部174との間の所定の位置にスライドさせることができる。スロット156は、好ましくは、この目的のためのクリアランスを提供する。
【0074】
図11Dは、画像光ガイド40を含むアイリム部160の平断面図であり、複合レンズホルダー150が取り外された状態で示されている。この図では、右テンプル部172および鼻ブリッジ部174のそれぞれのスロット162、164(アイリム部160内に複合レンズホルダー150を受け入れるためのスロット)が、より明確に見える。カスタマイズされた正パワー光学系124と複機能光学系142を含む複合レンズホルダー150は、様々な方法でアイリム部160に固定することができる。例えば右テンプル部172及び/又は鼻ブリッジ部174にねじ込まれる固定ねじ(図示せず)や、可撓性ゴムガスケット(図示せず)等を用いる。
【0075】
複数の複合レンズホルダー150は、正パワー光学系124および複機能光学系142のカスタマイズされた組み合わせで、予め構成することができる。正パワー光学系124および複機能光学系142は、アイリム部160内に交換可能に配置することができる。カスタマイズ可能な正パワー光学系124および複機能光学系142は、個々の複合レンズホルダー150内でも取り外し可能に交換することができる。
【0076】
これらの図は、片方の眼用のアイリム部を備えたHMDの一部のみを、単眼HMDに適合可能であるように、示しているが、フル装備のHMD装置の一部として、対称配置の第2のアイリム部を着用者の他方の眼用として装備することができる。このHMD装置は、着用者の視野内にバーチャル対象と実世界の対象の両方の、両眼視または立体視の視界(ビュー)を提供する。
【0077】
本明細書に記載の実施形態の1つまたは複数の特徴を組み合わせて、図示されていない追加の実施形態を作成することができる。様々な実施形態を詳細に説明したが、それらは例示として提示されたものであり、限定ではないことを理解されたい。開示された主題が、その範囲、精神、または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態、変形、および修正で具体化され得ることは、関連技術の当業者には明らかであろう。したがって、上記の実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その均等物の意味および範囲内にあるすべての変更は、その範囲に含まれることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有しこの開口を介して周囲環境内の実世界の対象を見ることができるアイリム部と、前記開口内に配置された画像光ガイドと、複機能光学系と、正パワー光学系とを備え、
前記画像光ガイドは、
平坦かつ平行な内面と外面を有する透過性の平面導波路と、
バーチャル対象をエンコードした角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、画像ソースから前記
平面導波路へと向ける
ように作用可能であり、前記画像担持光ビームが全内部反射により伝播
するようにしたインカップリング光学要素と、
伝搬してきた前記画像担持光ビームを、前記
平面導波路からアイボックスに向ける
ように作用可能であり、前記アイボックスから
バーチャル対象が第1の焦点距離で
見られるようにしたアウトカップリング光学要素と、
を有し、
前記複機能光学系は、前記開口内において前記
平面導波路の内面と前記アイボックスとの間に配置
されるとともに、
(a)前記アイボックスの前で前記画像担持光ビームを発散させる
ように作用可能な負の光学パワーの寄与
であって、バーチャル対象が前記アイボックスから第2の焦点距離で見られ、この第2の焦点距離が前記第1の焦点距離より近い、負の光学パワーの寄与と、
(b)実世界の対象とバーチャル対象の両方を
前記第2の焦点距離で見ることに関して、
光学的収差を低減する
ように作用可能な矯正光学的寄与と、
を提供
するように作用可能な単一の光学素子として形成され、
前記正パワー光学系は、前記開口内において前記
平面導波路の外面と周囲環境との間に配置
され、前記複機能光学系の
前記矯正光学的寄与を相殺することなく、前記複機能光学系の
前記負の光学パワーの寄与を相殺
するように作用可能であり、実世界の対象が矯正された視力で前記アイボックスから実際の距離で見ることができるようにした、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記複機能光学系が単一の屈折レンズ要素である、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記第1の焦点距離が過焦点から無限遠に近い距離であり、
前記第2の焦点距離が前記過焦点距離よりも短い、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記第2の焦点距離が、1.5メートルから4メートルの間である、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記第2の集束距離が、0.05メートルから1.5メートルの間である、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
前記矯正光学的寄与が、
前記第2の焦点距離での
光学的収差を低減するように設定されている、請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
前記複機能光学系が、複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記第1の複機能光学系が取り外し可能であり、表示を異なる光学処方に適合させるために第2の複機能光学系と交換可能である、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
前記複機能光学系が複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記正パワー光学系が複数の正パワー光学系のうちの第1の正パワー光学系であり、前記第1の複機能光学系および前記第1の正パワー光学系がまとめて取り外し可能であり、
前記第2の焦点距離を異なる第3の焦点距離に変更するために、第2の複機能光学系および第2の正パワー光学系と交換可能である、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
前記第2の複機能光学系が、前記異なる第3の焦点距離での
光学的収差を低減するための矯正光学的寄与を提供する、請求項8に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
さらに、前記開口内において前記正パワー光学系と前記周囲環境との間に配置された透過性保護外側カバーを備える、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
前記正パワー光学系が、周囲環境に臨む凸状の外面を有するレンズであり、この外面が保護コーティングで処理されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
共通の視野内でバーチャル対象と実世界の対象についての視者の
視界を管理するための拡張現実バーチャル像表示システムであって、
内面と外面を含み、バーチャル対象をエンコードした角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、アイボックスに向けて方向付け
するように作用可能であり、バーチャル対象が前記アイボックスから第1の焦点距離
で見られるようにした画像光ガイドと、
前記画像光ガイドの内側と前記アイボックスとの間に配置された複機能光学系であって、
(a)前記アイボックスの前で前記画像担持光ビームを発散させる
ように作用可能な負の光学パワーの寄与
であって、バーチャル対象が前記アイボックスから第2の焦点距離で見られ、この第2の焦点距離が前記第1の焦点距離より近い、負の光学パワーの寄与と、
(b)実世界の対象とバーチャル対象の両方を
前記第2の焦点距離で見ることに関して、
光学的収差を低減する
ように作用可能な矯正光学的寄与と、
を提供
するように作用可能な単一の光学要素として形成された複機能光学系と、
前記画像光ガイドの外側に配置
され、前記複機能光学系の
前記矯正光学的寄与を相殺することなく、前記複機能光学系の
前記負の光学パワーの寄与を相殺
するように作用可能であり、実世界の対象が矯正された視力で前記アイボックスから実際の距離で見ることができるようにした正パワー光学系と、
を備えた拡張現実バーチャル像表示装置。
【請求項13】
複機能光学系が単一の屈折レンズ要素である、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項14】
前記第1の焦点距離が過焦点から無限遠に近い距離であり、
前記第2の焦点距離が前記過焦点距離よりも短い、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項15】
前記第2の焦点距離が、1.5メートルから4メートルの間である、請求項14に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項16】
前記第2の集束距離が、0.05メートルから1.5メートルの間である、請求項14に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項17】
前記矯正光学的寄与が、
前記第2の焦点距離での
光学的収差を低減するように設定されている、請求項14に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項18】
前記複機能光学系が、複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記第1の複機能光学系が取り外し可能であり、表示を異なる光学処方に適合させるために第2の複機能光学系と交換可能である、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項19】
前記第2の複機能光学系の負の光学パワーの寄与が、前記第1の複機能光学系の負の光学パワーの寄与と同じであり、前記第2の複機能光学系の矯正光学的寄与が前記第1の複機能光学系の矯正光学的寄与と異なる、請求項18に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項20】
前記複機能光学系が複数の複機能光学系のうちの第1の複機能光学系であり、前記正パワー光学系が複数の正パワー光学系のうちの第1の正パワー光学系であり、前記第1の複機能光学系および前記第1の正パワー光学系がまとめて取り外し可能であり、
前記第2の焦点距離を異なる第3の焦点距離に変更するために、第2の複機能光学系および第2の正パワー光学系と交換可能である、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項21】
前記第2の複機能光学系が、前記異なる第3の焦点距離での
光学的収差を低減するための矯正光学的寄与を提供する、請求項20に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項22】
さらに、前記正パワー光学系と周囲環境との間に配置された透過性保護外側カバーを備え、この透過性保護外側カバーから周囲環境が見える、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項23】
前記正パワー光学系が周囲環境に臨む凸状の外面を有するレンズであり、この外面から周囲環境が見え、この外面が保護コーティングで処理されている、請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【請求項24】
前記画像光ガイドは、
平坦かつ平行な内面と外面を有する透過性の平面導波路と、
角度的に関連付けられた画像担持光ビームを、画像ソースから前記
平面導波路へと向け、前記内面と外面での内部反射により伝播させるインカップリング光学要素と、
伝搬してきた前記画像担持光ビームを前記
平面導波路からアイボックスに向けるアウトカップリング光学要素と、
を有する請求項12に記載の拡張現実バーチャル像表示システム。
【国際調査報告】