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特表2022-509125耐火性マトリックス材料を用いた複雑な物体の付加的な製造
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  • 特表-耐火性マトリックス材料を用いた複雑な物体の付加的な製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】耐火性マトリックス材料を用いた複雑な物体の付加的な製造
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/62 20060101AFI20220113BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
G21C3/62 100
C23C16/42
G21C3/62 500
G21C3/62 600
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527963
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019044276
(87)【国際公開番号】W WO2020106334
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】62/769,588
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513137673
【氏名又は名称】ユーティー-バットル,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】カート エー.テッラーニ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピー.トランメル
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン シー.ジョリー
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030BA37
4K030CA05
4K030FA10
4K030JA10
(57)【要約】
耐火性マトリックス材料を用いた三次元物体の製造方法を提供する。この方法は、粉末ベースの耐火性マトリックス材料からグリーン体を付加的に製造し、続いて化学蒸気浸透(CVI)によって緻密化することを含む。耐火性マトリックス材料は、耐火性セラミック又は耐火性金属とすることができる。一つの実施形態では、マトリックス材料がバインダジェット印刷工程に従って堆積されて、複雑な形状を有するグリーン体を生成する。CVIプロセスは、その密度を増加させ、気密シールを提供し、機械的完全性を有する物体をもたらす。CVI反応器内の温度が増大することにつれて、CVIプロセスの開始前に、残留バインダ含有物は解離し、グリーン体から除去される。CVIプロセスは、完成した物体の全ての内部及び外面に完全に緻密なコーティングを選択的に堆積させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、物品の製造方法:
炭化ケイ素の粉末原料を提供すること;
前記粉末原料の連続層上にバインダを選択的に堆積させて、炭化ケイ素が30重量%を超える寸法安定性物体を製造すること;
前記物体を化学蒸気浸透(CVI)反応器内に配置し、その中の温度を上昇させ、それによって前記物体を脱バインダすること;及び
前記CVI反応器内に、ケイ素及び炭化水素を含む前駆体ガスを高温で導入し、それによって、前記高温での前駆体ガスの破壊によって、炭化ケイ素が前記物体に浸透し、前記物体を緻密化された外層で封止すること、ここで、前記物体は、炭化ケイ素の85重量%を超える密度と共に、実質的に純粋な炭化ケイ素微細構造及び高い耐熱性を有する、。
【請求項2】
前記前駆体ガスは、メチルトリクロロシラン(MTS)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末原料の連続層上にバインダを堆積させることが、周囲温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CVI反応器内の温度を上昇させることが、前記CVI反応器を850℃~1300℃に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記物体が、アンダーカット、オーバーハング、又は内容積を有する三次元物体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記物体が、核燃料要素、熱交換器、又はタービンブレードの一部分を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記物体は、内容積を含み、前記CVI反応器内に前記物体を配置する前に、前記内容積に核燃料粒子を充填することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
隣接する核燃料粒子間で、前記物体の前記内容積に、炭化ケイ素粉末原料を導入することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粉末原料の連続層上にバインダを選択的に堆積させることは、前記物体内に冷却チャネルを画定することを含み、前記冷却チャネルは、前記物体の下面から前記物体の上面まで延在する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記内容積内に、可燃性吸収体又は中性子減速材を配置することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
下記を含む、一体型核燃料要素:
実質的に純粋な炭化ケイ素微細構造を有する燃料収容体であって、少なくとも20ミクロンの厚さを有する炭化ケイ素の緻密化された外層を含み、内容積及びその下部から上部まで延在する少なくとも1つの冷却チャネルを画定する、前記燃料収容体、並びに
前記燃料収容体の内容積内に含まれる複数の燃料粒子であって、核分裂性材料を含み、炭化ケイ素粉末が、複数の燃料粒子のうちの隣接するもの間に配置され、前記複数の燃料粒子は、50%を超える充填率を達成する、前記燃料粒子。
【請求項12】
前記炭化ケイ素の高密度化された外層は、両端の値を含んで00ミクロンと200ミクロンとの間の厚さを有する、請求項11に記載の一体型核燃料要素。
【請求項13】
前記燃料収容体は、前記下部と前記上部との間に延在する六角形の側壁を含む、請求項11に記載の一体型核燃料要素。
【請求項14】
前記少なくとも1つの冷却チャネルは、複数の曲線状通路を含む、請求項11に記載の一体型核燃料要素。
【請求項15】
前記少なくとも1つの冷却チャネルは、収束している第一の部分と発散している第二の部分とを含む、請求項11に記載の一体型核燃料要素。
【請求項16】
前記少なくとも1つの冷却チャネルは、垂直軸に対してゼロでない角度で冷却ガスを方向付けるように構成される、請求項11に記載の一体型核燃料要素。
【請求項17】
下記を含む、一体型核燃料要素の製造方法:
耐火性セラミック又は耐火性金属の粉末原料を提供すること;
前記粉末原料の連続層上にバインダを選択的に堆積させて、内容積を画定する寸法安定性燃料収容体を生成すること;
核分裂性物質を含有する複数の核燃料粒子を、前記燃料収容体の内容積内に堆積させること;
追加の粉末原料を、前記燃料収容体の前記内容積内に振動充填して、前記燃料収容体内に燃料コンパクトを得ること、及び
化学蒸気浸透を行って燃料収容体を高密度化し、前記燃料コンパクトをその中に封止すること、を含み、化学蒸気浸透は、第一の成分として耐火性セラミック又は耐火性金属の元素を有し、かつ第二の成分として炭化水素を有する、前駆体ガスを用いて行われ、高密度化された燃料収容体は、実質的に純粋な微細構造及び気密封止された外面を含む。
【請求項18】
前記耐火性セラミックは、SiC、ZrC、及びCからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記耐火性金属は、Mo及びWからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の燃料粒子は、核分裂性ウランを含むTRISO(三構造等方性)燃料粒子である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の燃料粒子は、核分裂性ウランを含むBISO(双構造等方性)燃料粒子である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の燃料粒子は、核分裂性ウランを含む裸のウラン含有球体である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年7月31日に出願された米国仮出願第62/769,588号の利益を主張し、その開示は、その全体が基準により組み込まれる。
【0002】
連邦政府主催の研究・開発に関する声明
本発明は、米国エネルギー省により授与された契約番号DE-AC05-00OR22725に基づく政府支援によりなされた。米国政府は、本発明について特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、種々のエネルギー関連用途のための耐火性材料を使用する複雑な物体の付加的な製造に関する。
【背景技術】
【0004】
今日の世界のエネルギーシステムの大部分は、熱を電気に変換するように設計されている。熱は、例えば、化石燃料、太陽熱方法、又は核分裂若しくは核融合から発生させることができる。熱力学第二法則は、熱機関から最高効率を取り出すためには高い運転温度が必要であることを決定付けている。ランキン又はブレイトンサイクルのような、熱を電気に変換することを可能にする経路の大部分は、熱流体を必要とする。高い効率を達成する能力は、高い流体温度を必要とする。これは、これらの高温に耐えることができる材料から作られる成分を必要とする。これらの材料は、配管、熱交換器、及び電力変換部品と同様に、それぞれ、化石又は核分裂エネルギーシステムにおいて燃焼容器又は炉心を形成することができる。したがって、高温に耐えることができる耐火性材料は、これらの用途において理想的である。
【0005】
耐火性金属又はセラミックからの単純な形状(例えば、配管)の製造は、今日可能であるが、例えば熱交換器、フランジ、及びタービンのような、より複雑性の高い構成要素は、容易には製造されない。複雑な構成要素の製造のために耐火性金属及びセラミックを使用する能力は、これらのエネルギーシステムの熱効率を、従来の手段、例えば高温Niベースの超合金で可能なものをはるかに超えて、大きく改善するのであろう。したがって、例えばセラミック及び金属を含む耐火性材料から構成要素を製造する方法であって、該構成要素がエネルギーシステム及び他の用途に使用するための複雑な三次元形状を有する方法が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
耐火性マトリックス材料を用いて三次元物体を製造する方法が、提供される。この方法は、概して、粉末ベースの耐火性マトリックス材料からのグリーン体(green body)の付加的な製造と、化学ガス堆積、例えば化学気相浸透(CVI)によるグリーン体の緻密化とを含む。耐火性マトリックス材料は、特定の用途に応じて、耐火性セラミック又は耐火性金属を含むことができる。CVI処理は、マトリックス材料の密度を増大させ、気密被覆を提供し、極めて高い温度で優れた機械的完全性を有する物体を形成することができる。
【0007】
一つの実施形態では、この方法は、適切な耐火性マトリックス材料、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、グラファイト(C)、モリブデン(Mo)、又はタングステン(W)の粉末原料を提供することを含む。この方法は、粉末原料の連続層上にバインダを選択的に堆積させて、形成される物体のニアネットシェイプを有する寸法的に安定なグリーン体を生成することを含み、グリーン体は、任意選択的に、アンダーカット、オーバーハング、又は内容積を含む。グリーン体は、脱バインダのためにCVI反応容器内で加熱され、マトリックス材料を高密度化するために前駆体ガスが導入される。得られた物体は、高温に対する耐性に優れた実質的に純粋な微細構造を含む。例示的な物体は、ほんの数例を挙げると、熱交換器、タービン、及びフランジを含む。
【0008】
別の実施形態では、一体型核燃料要素を製造する方法が提供される。この方法は、非燃料マトリックス粉末を用いて燃料収容体(fuel envelope)をバインダ-ジェット印刷することを含む。この方法はさらに、その中に燃料コンパクトを得るために、収容体に核燃料粒子を充填し、かつ付加的なマトリックス粉末を振動充填(vibro-packing)することを含む。この方法は、現在充填されている収容体にCVIを実行して、その中に核燃料を封止することをさらに含む。得られた核燃料要素は、冷却流体、例えばヘリウム(He)ガスの流れを可能にするために内部に一体的に形成された冷却チャネルを含むことができ、好ましい中性子透過度を有する材料、例えばSiCで形成することができる。核燃料粒子は、既存の方法よりも改良された充填率を含むことができ、核燃料要素は、既存の燃料マトリックス材料を焼結するために必要な温度よりもはるかに低い温度で製造することができる。
【0009】
別の実施形態では、一体型核燃料要素は、角柱状ブロックとして積層可能な六角形構造体を含むことができ、マトリックスは、燃料構成要素を保持し、一体型クラッド構造体を提供する。積み重ねると、各核燃料要素の冷却チャネルは、垂直に隣接した核燃料要素の冷却チャネルと流体連通している。緻密化された高純度の耐火性収容体は、中性子照射下における原子炉内の通常の運転温度、例えば、高温ガス冷却炉(HTFR)反応器内で800℃から1200℃の間の温度に耐えることができる。更に、冷却チャネルの形及び表面特徴は、熱エネルギーが冷却ガスに最適に伝達されるので、その中の核燃料の冷却を改善するために最適化された形状で製造することができる。さらなる実施形態は、核燃料要素内に可燃性吸収体及び/又は中性子減速材を含む。
【0010】
本明細書に記載されるように、本方法は、高い耐熱性が望まれる用途において複雑な形状を有する物体を製造するために容易に適合される。グリーン体の付加的な製造は、概して室温で行われ、CVI炉は、焼結温度よりはるかに低い温度で作動する。その中に含まれる核燃料を有する実施態様において、核燃料粒子の充填率が50%を超えていることが見出され、プレスされ焼結された核燃料に見られる充填密度を上回り、その結果、核燃料集合体がより小さくなる。
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴は、実施形態の説明及び図面を参照することによって、より完全に理解され、認識されるのであろう。
【0012】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるか、又は図面に示される、動作の詳細、又は構成要素の構成及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、様々な他の実施形態で実施することができ、本明細書に明示的に開示されていない代替の方法で実施され、又は実行することができる。さらに、本明細書で使用される語法及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。「含む(including)」及び「含む(comprising)」ならびにそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの均等物、ならびにそれらの追加の項目及び均等物を包含することを意味する。さらに、列挙は、様々な実施形態の説明において使用されてもよい。特に明記しない限り、列挙の使用は、本発明を構成要素の任意の特定の順序又は数に限定するものと解釈されるべきではない。また、列挙の使用は、列挙されたステップ又は構成要素と組み合わせることができる、又はそれらに組み込むことができる任意の追加のステップ又は構成要素を、本発明の範囲から除外するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一つの実施形態に従う、耐火性材料を使用して物体を製造するためのフローチャートである。
図2図2は、密で気密な外層を有するCVI後のSiC試験片の断面図である。
図3A-B】図3A及び3Bは、本発明の一つの実施形態に従って製造される例示的な物体(熱交換器及びタービンブレード)である。
図4図4は、一体型核燃料要素の付加的な製造を示す工程図である。
図5図5は、追加の実施形態に従う、一体型核燃料要素の上面斜視図を含む。
図6図6は、図5の一体型核燃料要素の底面斜視図を含む。
図7図7は、製造工程の異なる段階における核燃料収容体の説明図である。
図8図8は、耐火性材料の電子顕微鏡写真及び粒度分布である。
図9図9は、加熱中のグリーン部分の代表的な重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で論じるように、本実施形態は、概して、耐火性マトリックス材料を使用して多種多様な物体を製造するための方法に関する。この方法は、粉末ベースの耐火性マトリックス材料からグリーン体を付加的に製造し、続いてCVIを介して緻密化することを含む。製造方法は、概して、以下のパートIで議論され、続いて、以下のパートIIで、この方法に従って形成された一体型核燃料要素の説明が続く。核燃料要素に関連して記載されているが、本方法は、複雑な三次元物体が例えば熱交換器、フランジ、タービン翼を含む、高耐熱性を必要とするあらゆる用途において、効果的に適用可能である。同様に、ちょうど核燃料が耐火性マトリックス内に埋め込まれ得るように、他の構成要素及びデバイスがマトリックス内に組み込まれ得る。
【0015】
I.製造方法
一つの実施形態に従う方法は、耐火性マトリックス材料を使用する三次元物体の製造を含む。図1を参照すると、この方法は、概して、(a)耐火性原料の選択、(b)耐火性原料を使用するグリーン体の付加的な製造、(c)CVIのための耐火性ガス前駆体の導入、(d)緻密化及びバインダ除去のためのグリーン体のCVI、及び(e)複雑な三次元形状を有する最終部品の完成を含む。このような各操作は、以下に別々に説明される。
【0016】
ステップ10における耐火性原料の選択は、耐火性セラミック粉末原料又は耐火性金属粉末原料の選択を含む。適切な耐火性セラミックは、例えば、SiC、C、又はZrCを含むことができ、適切な耐火性金属は、例えば、Mo又はWを含むことができる。ステップ12において、グリーン体は、三次元物体を製造するために、付加的な製造工程に従って形成される。本実施形態では、グリーン体は、バインダ-ジェット印刷工程によって形成される。Sachsらの米国特許第5,204,055号及びCimaらの米国特許第5,387,380号に任意に記載されているように、バインダ-ジェット印刷法において、耐火性材料の粉末床が、バインダパターンを層ごとに用いて周囲温度で印刷される。より具体的には、粉末原料は、順次の層で、一方が他方の上に堆積される。粉末原料の各層の堆積に続いて、形成される三次元物体のコンピュータモデル(例えば、CADモデル)に従って、液体バインダ材料、例えば、ポリマーバインダが、粉末原料の層に選択的に供給される。
【0017】
三次元物体が完成すると、結合していない粉末が除去され、除去可能なポリマーバインダによって一緒に保持された、ニアネットシェイプのグリーン体が得られる。グリーン体は、数重量%のオーダー、例えば1~5%のバインダ含有量を有し、その理論的限界の約30~55%の密度を有することができる。例えば、グリーン体は、一つの実施形態では30重量%を超えるSiC(又は他の耐火性材料)の寸法安定性物体であり、他の実施形態では、さらに任意選択で50重量%を超えるSiC(又は他の耐火性材料)の寸法安定性物体である。ステップ14では、CVIのためのガス状耐火性前駆体が選択され、その結果、完成した物体は高度に純粋で均一なマトリックスを含み得る。例えば、SiCグリーン体のCVIのためのガス状耐火性前駆体は、MTS分解によってSiCを与えるメチルトリクロロシラン(MTS)を含むことができる。さらに、例えば、ZrCグリーン体のためのガス状耐火性前駆体は、四塩化ジルコニウム(ZrCl)ガスを含むことができ、グラファイト(C)グリーン体のためのガス状耐火性前駆体は、メタン(CH)ガスを含むことができ、Wグリーン体のCVIのためのガス状耐火性前駆体は、六フッ化タングステン(WF)ガスを含むことができ、Moグリーン体のCVIのためのガス状耐火性前駆体は、六フッ化モリブデン(MoF)又は五塩化モリブデン(MoCl)ガスを含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、複合マトリックスは、1つの材料を粉末形態で印刷し、粉末の周りに別の材料をCVIで堆積させることによって実現されてもよい。
【0018】
ステップ16では、グリーン体は、CVI炉(反応容器)に配置され、その中に不活性(例えば、Ar)又は他のもの(例えば、H)であり得るガス前駆物質及びキャリアガスが入れられる。炉内の圧力及び温度、ならびにガス前駆体の組成物、分圧及び流量は、ガス前駆体がグリーン体の細孔内で拡散することを可能にするように選択される。より具体的には、CVIは、ガス前駆体(例えば、MTS又はWF)の温度分解と、分解された前駆体のマトリクス材(例えば、SiC又はW)の細孔内への浸透及びその後の吸着とを伴う。SiCのためのCVI工程は、850℃~1300℃、1000℃~1200℃、任意選択的に1100℃の工程温度を含み、既存の方法での焼結に必要な温度(~2000℃)をはるかに下回る。注目すべきは、CVI炉内の温度が上昇することにつれて、バインダが解離し、CVIプロセスの開始前に除去されることである。CVIプロセスは、最初にグリーン体を均一に緻密化し、グリーン体内部の細孔が閉じるにつれて、CVIは、三次元物体の全ての内表面及び外表面上に完全に緻密な被覆を選択的に堆積させる。緻密化されたグリーン体は、いくつかの実施形態では、85重量%を超えるSiCの密度を含み、他の実施形態では、90重量%を超えるSiCの密度を含むことができる。この現象は、複雑な形状を有するバインダ-ジェット印刷されたSiC試験片の断面を含む図2に、さらに示されている。断面は、20~200μm、さらに任意選択的に50~100μmのオーダーの厚さを有する緻密かつ気密な外層を含む。図2の挿入図にも示されるように、連続CVI SiCマトリックスが、SiC粉末の周囲に堆積され、その結果、微細構造は、元の3D印刷SiC粉末及び連続CVI SiCマトリックスの両方を含む。
【0019】
最終部品の完成は、ステップ18に示されている。付加的な製造によるグリーン体の形成のために、完成品は、オーバーハング、アンダーカット、及び内容積を含む、ほとんどあらゆる形状を有することができる。例えば図3Aに示すように、グリーン体は、従来の方法に従って容易に形成されない複雑な内容積を各々画定する、マルチチャンネルの一次ループ22及び螺旋状の二次ループ24(又はその逆)を有する熱交換器20を含むことができる。例えば図3Bに代替的に示されるように、本方法は、タービンブレード26、又は従来の方法に従って製造が困難若しくは不可能な他の物体を形成するために使用することができる。
【0020】
II.一体型核燃料要素
ここで、不可欠な核燃料要素とその製造方法について説明する。以下に記載されるように、一体型核燃料要素は、概して、3Dプリントされた耐火性マトリックス材料から形成され、その中に均一に分散した燃料粒子、例えばTRISO核燃料粒子を含む、CVI高密度化燃料収容体を含み、燃料収容体は、任意に角柱状燃料ブロックとして成形される。
【0021】
図4~7に示すように、一体型核燃料要素は、耐火性粉末原料から硬質な収容体30をバインダジェット印刷することによって形成される。収容体30は、核燃料のための少なくとも1つの内容積(又は空洞)32、及び任意選択的に少なくとも1つの冷却チャネル34を有する任意の構造を含むことができる。図示の実施形態では、内容積34は、外側側壁36、内側側壁38、基部40、及び頂部42の間に画定され、内容積32は、キャップ42の1つ又は複数の開口44を通してアクセス可能である。収容体30は、本実施形態では六角形構造を含むが、他の実施形態では、例えば、円筒形、又は軸方向及び半径方向に非対称である構造を含む任意の他の構造を含むことができる。図4に示す実施形態では、単一の冷却チャネル34は、収容体30の中心を通って垂直に延び、基部40を頂部42と相互接続し、それによって、内容積32は、冷却チャネル34を同心円状に取り囲む。図5及び図6の実施形態では、複数の冷却チャネル34は、収容体30を通って垂直方向に延びるが、図5及び図6の冷却チャネルは、非直線又は曲線であり、発散及び/又は収束し、任意選択で、垂直方向に対してゼロでない角度で収容体から冷却ガスを運ぶ(port)点で、図4の冷却チャネルとは異なる。バインダ-ジェット印刷工程は、オーバーハング、アンダーカット、及び内容積を構成させることができるので、内容積及び冷却チャネルは、実質的に任意の形状を達成することができ、図4図6の形状は例示の目的で描かれている。図7は、図5及び図6の核燃料収容体のための一般的な製造工程を示し、左端の図は、燃料収容体のためのCADモデルを示し、センターの図は、3D印刷された収容体を示し、右端の図は、CVI-高密度化された燃料収容体を示す(開示のために、燃料粒子を含まない)。
【0022】
収容体は、概して、非燃料耐火性粉末原料から形成される。例としては、SiC、C、ZrC、Mo、及びWが挙げられる。図8は、燃料収容体の製造に使用するのに適したSiC粉末の形態及びサイズ分布を示す。一連の代替的な形態及び代替的なサイズ分布の耐火性粉末が、代替的な用途において使用され得る。この実施形態では、SiC粉末は、純度>99.5%のSigma Aldrichのα-SiC(六方晶相)原料である。粉末原料は、バインダ-ジェット印刷工程に従って連続層に堆積され、液体バインダは、収容体のCADモデルに従って粉末原料の各層に選択的に供給される。図示の実施形態では、収容体は、ExOne Company(North Huntingdon、PA)からのInnoventバインダジェットシステムを使用して3D印刷される。しかしながら、収容体は、多種多様な代替バインダジェットプリンタを使用して形成することができる。印刷後、粉末床は、水性又は有機系溶媒の大部分を追い出すバインダ硬化工程を受けてもよい。例えば、粉末床を、空気中で約190℃で約6時間加熱することができる。
【0023】
収容体が完全に印刷されると、結合していない粉末が除去され、例えば、図4の左側に示されるニアネットシェイプのグリーン体が得られる。グリーン体の形成に続いて、かつCVIの前に、燃料粒子46が内部燃料空洞に加えられる。燃料粒子は、ウラン又は他の核分裂性元素を含むことができ、裸の燃料核又はコーティングされた粒子、例えば、三構造等方性(TRISO)粒子、二構造等方性(BISO)粒子、及び核分裂性ウランを含む裸のウラン含有(例えば、UO、UC、UN、又はそれらの組み合わせ)球(燃料核)であることができる。さらに任意選択的に、燃料粒子は、裸の燃料核及びコーティングされた粒子の組合せを含むことができる。燃料粒子は、任意の所望の技術に従って、例えばホッパーから、実質的に満杯になるまで、内部空洞に加えられる。次に、追加のマトリックス粉末原料を、隣接する燃料粒子間の空隙を占めるようにして、燃料粒子よりも少なくとも一桁小さい量で加え、同時に、開口44で露出した燃料粒子を覆う。さらに任意に、追加のマトリックス粉末原料を、化学蒸気浸透の前に最大の緻密化を確実にするために、振動充填することができる。
【0024】
収容体に燃料粒子及び任意の追加のマトリックス材料を充填し、振動充填した後、収容体をCVI炉内に挿入し、特定のCVIプロセスに理想的な温度まで上昇させる。例えば、850℃~1300℃、1000℃~1200℃、任意選択的に1100℃の温度は、MTSを用いたSiC堆積に理想的であり、一方、<750℃の温度は、WFを用いたW堆積に理想的である。CVI炉内で温度が上昇することにつれて、ポリマーバインダは、~200℃で解離が開始し、500℃で完全に解離する。解離中、CVI炉容器内の連続不活性ガス流は、バインダ解離生成物を浄化する。対象CVI温度に達すると、ガス前駆体がCVI炉内に導入されて、収容体の細孔内に追加のマトリックス材料を堆積させる。収容体内部の細孔が閉じられると、CVI工程は、収容体のすべての内面及び外面に完全に密な被覆を選択的に堆積させる。得られる収容体の微細構造は、核燃料粒子をその中に封止しながら、高純度及び場合により均一なマトリックスを含む。図4の右側に示すように、結果として得られる一体型核燃料要素の断面は、密封された耐火性収容体内に埋め込まれたウラン燃料粒子を有する高密度燃料コンパクトを含む。高密度化収容体中のマトリックス材料の含有量は、いくつかの実施形態では85%を超え、他の実施形態ではさらに任意選択的に90%、他の実施形態ではさらに任意選択的に95%を超える。さらに、マトリクス材(例えば、SiC)は、一体型核燃料要素30の体積比25%未満を含むことができる。図9は、任意の硬化工程の後、Ar中で高温に加熱した際の、水性バインダを用いて製造されたグリーン部品における重量変化を示す。
【0025】
一体型核燃料要素は、概して積層可能な構造を含む。配置され積み重ねられると、各核燃料要素の冷却チャネルは、垂直方向に隣接する核燃料要素の冷却チャネルと流体連通する。緻密化された高純度の耐火性収容体は、例えばブレイトン閉サイクルガスタービン又は他の電力変換手段を有する高温ガス冷却炉(HTGR)の炉心のような、炉心内の通常の作動温度に耐えることができる。加えて、核燃料要素内の核燃料は、従来の燃料よりも増加した充填率を含む。例えば、既存の方法(プレス及び焼結)は、45%までの充填率を提供する。対照的に、本発明の燃料収容体内の核燃料粒子の充填率は、50%を超えることができる。その結果、本発明の不可欠な核燃料要素を含む核燃料集合体は、よりコンパクトにすることができる。さらに、冷却チャネルは、熱エネルギーが冷却ガスに最適に伝達されるので、その中の核燃料コンパクトの冷却を改善するために、最適化された形状及び表面的特徴で製造することができる。
【0026】
上記の説明は、本発明の現在の実施形態の説明である。請求項に規定した発明の技術的思想及び、より広い態様から逸脱せずに、本発明に対し、種々に代替と変更を行うことができ、これらは、均等論を含む特許法の原則に則り解釈されるものである。この開示は、例示の目的で提示され、本発明のすべての実施形態の網羅的な説明として解釈されるべきではなく、また、特許請求の範囲を、これらの実施形態に関連して図示又は説明された特定の要素に限定するものとして解釈されるべきではない。例えば、限定ではなく、記載された発明の任意の個々の要素は、実質的に同様の機能性を提供するか、又は適切な動作を提供する代替要素によって置き換えられてもよい。これには、例えば、当業者に現在知られているものなどの現在知られている代替要素、及び開発時に当業者が代替として認識することができるものなど、将来開発されることができる代替要素が含まれる。さらに、開示された実施形態は、協調して説明され、協働して利益の集合を提供することができる複数の特徴を含む。本発明は、発行された特許請求の範囲に明示的に記載されている範囲を除いて、これらの特徴のすべてを含むか、又は記載された利益のすべてを提供する実施形態のみに限定されない。例えば、冠詞「a」、「an」、「the」又は「said」を使用する、単数形の請求項要素へのいかなる基準も、要素を単数形に限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】