(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ディープ畳込みニューラルネットワークを使用するレーザ加工プロセスの監視
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220113BHJP
【FI】
B23K26/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528414
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077485
(87)【国際公開番号】W WO2020104103
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】102018129441.7
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ ヨアヒム
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168BA00
4E168CA02
4E168CA03
4E168CA05
4E168CA06
4E168CA11
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB03
(57)【要約】
本発明は、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するためのシステムであって、レーザ加工プロセスの現データに基づいて入力テンソルを求め、伝達関数を使用して、入力テンソルに基づいて出力テンソルを求めるように構成されたコンピューティングユニットを備え、前記出力テンソルが現機械加工結果に関する情報を含み、入力テンソルと出力テンソルとの間の伝達関数が、トレーニング済みニューラルネットワークによって形成される、システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(1)を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するためのシステム(300)であって、
前記レーザ加工プロセスの現データに基づいて入力テンソルを求め、伝達関数を使用して、前記入力テンソルに基づいて出力テンソルを求めるように構成されたコンピューティングユニット(320)であって、前記出力テンソルが現機械加工結果についての情報を含む、コンピューティングユニット(320)、
を備え、
前記入力テンソルと前記出力テンソルとの間の前記伝達関数が、教師ありニューラルネットワークによって形成される、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項2】
請求項1に記載のシステム(300)であって、
前記レーザ加工プロセスの前記現データが、前記レーザ加工プロセスの現イメージデータ及び/又は現プロセスデータを含み、
前記現プロセスデータが現センサデータ及び/又は現制御データを含む、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステム(300)であって、
前記入力テンソルが、生データとしての前記レーザ加工プロセスの現データを含み、又は前記現データからなる、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記レーザ加工プロセスの前記現データが、温度、プラズマ放射、レーザ出力、反射レーザ光若しくは後方散乱レーザ光の輝度、反射レーザ光若しくは後方散乱レーザ光の波長、前記工作物に対する前記レーザ加工プロセスを実施するレーザ加工ヘッドの距離、キーホール深さ、集束位置、集束直径、経路信号、及び/又は前記工作物の表面のイメージのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記レーザ加工プロセス中の前記レーザ加工プロセスの現センサデータを検出するための少なくとも1つのセンサユニット(330)、及び/又は
前記レーザ加工プロセス中の前記工作物(1)の機械加工エリアの現イメージデータを検出するためのイメージ検出ユニット(310)、
をさらに備えることを特徴とするシステム(300)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記教師ありニューラルネットワークが、少なくとも共通の出力層を介して結合される、プロセスデータについての個々のネットワークと、イメージデータについての個々のネットワークとを含み、
前記教師ありニューラルネットワークが、プロセスデータについての入力テンソルと、イメージデータについての入力テンソルとを共通の出力テンソルにマッピングするように構成される、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項7】
請求項6に記載のシステム(300)であって、
前記少なくとも1つの出力層が少なくとも1つの全結合層を含む、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のシステム(300)であって、
プロセスデータについての前記入力テンソルが複数のサンプルに基づき、イメージデータについての前記入力テンソルがイメージを含み、
前記イメージが、プロセスデータについての前記入力テンソルの前記サンプルに時間的に対応する、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記機械加工結果が、機械加工誤り及び/又は前記工作物(1)の機械加工エリアについての情報を含む、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記出力テンソルが、少なくとも1つの機械加工誤りの存在、機械加工誤りのタイプ、機械加工された工作物の表面上の前記機械加工誤りの位置、一定のタイプの機械加工誤りの確率、並びに前記機械加工された工作物の前記表面上の前記機械加工誤りの空間及び/又は平面範囲のうちの1つを含む、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記コンピューティングユニット(320)が、前記出力テンソルをリアルタイムに形成し、前記レーザ加工プロセスを実施するレーザ加工システム(100)に制御データを出力するように構成される、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム(300)であって、
前記教師ありニューラルネットワークが、トレーニングデータに基づく転移学習によって、変化したレーザ加工プロセスに適合され得る、
ことを特徴とするシステム(300)。
【請求項13】
請求項12に記載のシステム(300)であって、
前記トレーニングデータが、
対応する入力テンソルを求めるための前記変化したレーザ加工プロセスのテストデータと、
それぞれの前記テストデータに関連付けられ、前記変化したレーザ加工プロセスの対応する以前に求められた機械加工結果についての情報を含む所定の出力テンソルと、
を含むことを特徴とするシステム(300)。
【請求項14】
レーザビームによって工作物を機械加工するためのレーザ加工システム(100)であって、
機械加工すべき工作物(1)上にレーザビーム(10)を放射するためのレーザ加工ヘッド(101)と、
請求項1から13のいずれか1項に記載のシステム(300)と、
を備えることを特徴とするレーザ加工システム(100)。
【請求項15】
工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するための方法(800)であって、
前記レーザ加工プロセスの現データに基づいて入力テンソルを求めるステップ(810)と、
伝達関数を使用して、前記入力テンソルに基づいて出力テンソルを求めるステップ(820)であって、前記出力テンソルが現機械加工結果についての情報を含む、ステップ(820)と、
を含み、
前記入力テンソルと前記出力テンソルとの間の前記伝達関数が、教師ありニューラルネットワークによって形成される、
ことを特徴とする方法(800)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するためのシステム、及びレーザビームによって工作物を機械加工するための機械加工システムに関し、前記機械加工システムは、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するためのそのようなシステムを含む。本開示はさらに、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームによって工作物を機械加工するための機械加工システムでは、レーザ光源又はレーザ光ファイバの端部から出るレーザビームが、ビーム誘導及び集束オプティクスによって、機械加工すべき工作物上に集束され、又はコリメートされる。機械加工は、たとえばレーザ切断、はんだ付け、又は溶接を含み得る。レーザ加工システムは、たとえばレーザ加工ヘッドを含み得る。
【0003】
工作物のレーザ溶接又ははんだ付けでは特に、溶接又ははんだ付けプロセスを継続的に監視すること、及び処理の品質を保証することが重要である。そのようなレーザ加工プロセスを監視するための現在の解決策は通常、インプロセス監視と呼ばれるものを含む。
【0004】
インプロセス監視、すなわちレーザ加工プロセスの監視は通常、温度値、プラズマ放射、レーザ加工ヘッドのレーザ出力、後方散乱レーザ出力の量及びタイプなどのレーザ加工プロセスのいくつかの信号又はパラメータが互いに独立して記録及び評価されるという点で実施される。たとえば、信号又はパラメータの測定値が、パラメータに対応する信号を取得するために、一定の期間にわたって継続的に測定又は検出される。蒸気毛管(キーホールとも呼ばれる)及び蒸気毛管の周囲の溶融プールの幾何形状も、レーザ加工プロセス中のイメージ処理及び評価によって監視される。
【0005】
この後に、個々の信号を処理済み及び分類することが続き、個々の信号のそれぞれについて、フィルタプロセスのための様々な設定値、中央値又は平均値の計算、包絡曲線、しきい値などが熟練の専門家によって設定されなければならない。信号が分類されるとき、信号が一定の誤り基準を満たすかどうかに関して信号が検査される。たとえば、信号が事前定義されたしきい値未満か、それとも超過するかが検査される。この目的で、個々の信号が、いわゆる包絡曲線がその周りに配置された、事前定義された基準曲線と比較される。別の基準は、たとえば、包絡曲線にわたる信号の積分である。
【0006】
レーザ加工プロセス中に信号が事前定義された誤り基準を満たす場合、インプロセス監視によって誤りが出力される。これは、機械加工誤りが生じたという通知をインプロセス監視が生成することを意味する。
【0007】
したがって、信号の分類と、キーホール及び溶融プールの幾何形状の監視とは、レーザ加工プロセスの品質を記述する。信号又はパラメータ曲線の分類と、キーホール及び溶融プールの幾何形状の監視とに基づいて、機械加工誤りが検出及び分類され、それに基づいて、機械加工される工作物が、たとえば「良好」(すなわち、さらなる機械加工又は販売に適している)又は「不良」(すなわち、スクラップとして)とラベル付け又は分類される。さらに、レーザ加工プロセスが実行中の間、プロセスの制御パラメータは、信号若しくはパラメータ、又はキーホール及び溶融プールの幾何形状を監視することを介して影響を受け得る。したがってレーザ加工プロセスが制御され得る。
【0008】
従来型システムでは、品質を記述する特性が、使用される材料、適用されるレーザ出力、溶接速度などに大きく依存するので、信号処理及び分類は複雑である。これは、多数のパラメータを使用して信号の分類を適合しなければならないことを意味する。新しい材料又は機械加工プロセスの変更にレーザ加工を採用することは、分類パラメータ及びイメージ処理のパラメータの変更を必要とする。たとえば製品変更によるレーザ加工の調節ごとに、パラメータを再び設定又は再調整することが必要となる。
【0009】
その複雑さのために、信号処理と信号の分類はどちらも、各信号又は各パラメータについて別々に、すなわち他の信号又はパラメータとは独立して実施される。したがって、信号処理と信号の分類の両方についてのパラメータの設定、たとえば包絡曲線の作成など、及びイメージ処理が、専門家によって実施されなければならない。
【0010】
これらのシステムの複雑さは、設定すべきパラメータ数のために非常に高いので、信号又はパラメータ曲線又はキーホール及び溶融プールの幾何形状のうちのどの特徴がレーザ加工プロセスを監視し、機械加工誤りを検出するために使用され得るかということも、当技術分野の専門家のみによって判断及び実施され得る。
【0011】
したがって、専門家のトレーニングは複雑であり、非常に長い。さらに、パラメータの設定及び再調整は、レーザ加工システムの顧客における製造での長い生産中断を必要とする。さらに、不正確なパラメータ化の危険が高い。
【0012】
したがって、従来型システムでは、レーザ加工システムは、個々の信号又はパラメータ曲線と、キーホール及び溶融プール幾何形状の監視のみに基づいて監視される。したがって、レーザ加工プロセスのすべての信号又はパラメータを考慮に入れ、同時にキーホール及び溶融プール幾何形状を考慮に入れる監視は実施されていない。
【0013】
図3Aは、レーザ加工プロセス、たとえば溶接プロセスのプラズマ放射を表す例示的信号と、それぞれの包絡曲線内のレーザ加工プロセスの温度の信号とを示す。どちらの信号も包絡線内にあり、したがって溶接は正確であると分類される。包絡線を越える信号の積分が、定義されたしきい値未満であるからである。
【0014】
図3Bでは、信号は明らかにそれぞれの包絡曲線の上にある。包絡曲線を越える積分についてのしきい値の対応するパラメータ化では、信号は欠陥があると分類され、機械加工誤りが検出される。
【0015】
図3Cは、3つの異なる信号の曲線を示す。各信号曲線は個々に正確であると分類される。しかしながら、実際には欠陥のある溶接がある。それを認識するために、複数の信号の曲線を使用しなければならないことになり、場合によっては専門家が検査しなければならないことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、確実に、迅速に、かつ複雑なパラメータ化プロセスなしに処理誤りを検出することである。本発明の目的はまた、レーザ加工プロセスの実行中に、好ましくはリアルタイムに機械加工誤りを検出することである。
【0017】
さらに、本発明の目的は、機械加工誤りの検出を自動化し、したがって好ましくはリアルタイムでのプロセス監視を可能にするシステムを提供することである。
【0018】
本発明の目的はまた、変化した機械加工プロセス又は異なる工作物材料などの変化した環境又は変化した状況に機械加工誤りの検出が迅速かつ容易に適合され得るシステムを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、多数のパラメータを考慮に入れながら機械加工誤りの検出が実施されるシステムを提供することである。
【0020】
さらに、本発明の目的は、工作物表面上の機械加工エリアから記録された生データに基づいて機械加工誤りの検出が実施される(いわゆる「エンドツーエンド」処理又は解析)システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態及び別の開発が、対応する従属請求項の主題である。
【0022】
本発明は、レーザ加工プロセスの機械加工結果、具体的には機械加工誤りの検出の判定、及び機械加工エリアの判定又は特徴付けが、レーザ加工プロセスの現センサデータ、制御データ、及び/又はイメージデータを入力データ、好ましくは生データとして受け取るディープニューラルネットワークを使用して実施されるという概念に基づく。
【0023】
本開示の一態様によれば、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するためのシステムが提供され、システムは、レーザ加工プロセスの現データに基づいて入力テンソルを求め、伝達関数によって前記テンソルに基づいて現機械加工結果についての情報を含む出力テンソルを求めるように構成されたコンピューティングユニットであって、入力テンソルと出力テンソルとの間の伝達関数が教師ありニューラルネットワークによって形成される、コンピューティングユニットを備える。機械加工結果は、工作物の機械加工誤り及び/又は機械加工エリアについての情報を含み得る。
【0024】
したがって、システムは、レーザ加工プロセスの機械加工結果を独立して、直接的に求めることができる。たとえば、レーザ加工システムによって機械加工された工作物内の機械加工誤りがあるかどうかが判定され得る。さらに、工作物の機械加工エリアが所定の特徴又は所定の幾何形状を有するかどうか、たとえば、キーホールが形成されたがどうか、又は溶融プールがどの範囲を有するかが判定され得る。それに基づいて、さらなる誤りを回避するためにレーザ加工プロセスのパラメータが設定され得る。したがって、レーザ加工プロセス又はレーザ加工システムは、監視するためのシステムを使用して制御され得る。
【0025】
一般には、伝達関数を形成するニューラルネットワークの使用は、機械加工誤りが存在するかどうか、及びどの機械加工誤りが存在するかをシステムが自律的に検出し得るという利点を有する。したがって、誤り検出のためにアクセス可能となるために、検出されたセンサデータを前処理する必要はもはやない。さらに、機械加工品質を特徴付け、又は何らかの機械加工誤りを示す誤り基準を定義することは不要である。誤り基準のパラメータ化を指定し、又は適合させることも不要である。これにより、レーザ加工プロセスの監視が簡略化される。レーザ加工のエキスパートが前述のステップを実施し、又は前述のステップに付き添う必要はない。本明細書で開示される態様によるレーザ加工プロセスを監視するためのシステムは、機械加工誤りの検出と、キーホール及び溶融プールの幾何形状の決定とを、独立して、すなわち自動的に実施し、システムは容易に適合され得る。
【0026】
したがって、出力テンソルを用いて、システムは、機械加工エリア自体の状態、たとえば機械加工エリアの範囲、いわゆるキーホール又は蒸気毛管の存在、溶融プールの存在、溶融プール内のキーホールの位置及び/又は深さ、溶融プールの範囲又は形状についての情報などの、現監視エリアの現機械加工結果についての情報を含み得る。
【0027】
さらに、システムは機械加工誤りを検出し、そのタイプを示すことができ得る。出力テンソルは、たとえば、以下の情報のうちの少なくとも1つを含み得る:少なくとも1つの機械加工誤りの存在、機械加工誤りのタイプ、一定のタイプの機械加工誤りの確率、機械加工された工作物の表面上の機械加工誤りの位置。機械加工誤りのタイプは以下のうちの少なくとも1つであり得る:ポア、穴、工作物を貫く溶接溶込みの欠如、偽フレンド、スパッタ、又はギャップ。
【0028】
したがって、コンピューティングユニットは、レーザ加工プロセスが依然として実行中の間に、レーザ加工プロセスの現機械加工エリアについての出力テンソルを決定するように構成され得る。機械加工結果の直接的決定により、レーザ加工プロセスをリアルタイムに監視することが可能となり得る。コンピューティングユニットは、出力テンソルをリアルタイムに形成し、レーザ加工プロセスを実施するレーザ加工システムに制御データを出力するように構成され得る。最も単純なケースでは、出力テンソルは、工作物の機械加工が良好であるか、それとも不良であるかに関する情報を含み得る。この情報に基づいて、レーザ加工プロセスは、たとえばプロセスパラメータをそれに応じて適合させることによって制御され得る。たとえば、レーザ出力が増大又は低減され得、レーザの集束位置が変更され得、レーザ加工システムの機械加工ヘッドと工作物との間の距離が変更され得る。
【0029】
入力テンソルと出力テンソルとの間の伝達関数が、教師付きニューラルネットワーク又はトレーニング済みニューラルネットワークによって形成される。言い換えれば、コンピューティングユニットはニューラルネットワークを含み得る。ニューラルネットワークは、誤りフィードバック又は逆伝播によってトレーニングされたものであり得る。
【0030】
ニューラルネットワークは教師付きディープニューラルネットワーク、たとえば教師付きディープ畳込みニューラルネットワーク又は畳込みネットワークであり得る。畳込みネットワークは、10から40の畳込み層、好ましくは34の畳込み層を有し得る。さらに、畳込みネットワークは少なくとも1つのいわゆる「全結合」層を有し得る。
【0031】
ニューラルネットワークは転移学習のために構成され得る。言い換えれば、ニューラルネットワークは、変化したレーザ加工プロセスの変化した要件に適合され得る。具体的には、コンピューティングユニットは、たとえばトレーニングデータに基づく転移学習によって、変化したレーザ加工プロセスにニューラルネットワークを適合させるように構成され得る。
【0032】
トレーニングデータは、対応する入力テンソルと、所定の出力テンソルとを求めるための、変化したレーザ加工プロセスのテストデータを含み得、所定の出力テンソルは、テストデータに関連付けられ、変更されたレーザ加工プロセスの対応する以前に求められた機械加工結果についての情報を含む。機械加工結果は、たとえばエキスパートによって識別された、機械加工誤りについての情報を含み得る。ニューラルネットワークを適合し、又はトレーニングするために、トレーニングデータは、そのようなテストデータの複数のセット及び関連する出力テンソルを含み得る。テストデータは、以前のレーザ加工プロセス中に少なくとも1つのセンサユニットによって検出されたセンサパラメータの値、及び/又は以前のレーザ加工プロセス中に使用された制御パラメータの値に基づき得る。
【0033】
したがって、伝達関数を形成するニューラルネットワークは、変化した状況又は変化したレーザ加工プロセスに適合され得る。この目的で、伝達関数が修正される。変化した状況は、たとえば、機械加工すべき工作物が異なる材料、異なる度合いの汚れ及び/又は厚さを有すること、あるいはレーザ加工のパラメータが変化することを含み得る。転移学習では、ニューラルネットワークをトレーニング又はティーチングするために使用されるトレーニングデータセット、あるいは縮小されたトレーニングデータセットが新しい例で補足され得る。
【0034】
したがって、本明細書で説明される態様による機械加工誤りを検出するためのシステム内の転移学習のために構成されたトレーニング済みニューラルネットワークの使用は、変化した状況にシステムが迅速に適合され得るという利点を有する。
【0035】
入力テンソルは、生データとしてレーザ加工プロセスの現データを含み、又は構成され得る。したがって、入力テンソルが作成される前に現データを前処理する必要はない。したがって、入力テンソルの形成に先行するデータ処理ステップが省略され得る。ニューラルネットワークは、生データに基づいて直接的に出力テンソルを求める。
【0036】
コンピューティングユニットが、入力テンソル内の同一の現時点に対応する機械加工プロセスの複数の現データを組み込み、伝達関数によってそれらを出力テンソルに対応付けるように構成され得る。レーザ加工プロセスのすべての関連する現データの同時処理のために、機械加工結果の決定は、より確実に、高速に行われ得る。これは、レーザ加工プロセスをより確実に、精密に監視することを可能にする。
【0037】
入力テンソルはレーザ加工プロセスの現データを含み得、レーザ加工プロセスの現データは、取得されたセンサデータ及び/又は制御データを含み、たとえば512サンプルを含み、各サンプルが時点に関連付けられる。センサデータ及び制御データは、以下ではプロセスデータとも呼ばれる。入力テンソルは、512サンプルの上に256サンプルごとにウィンドウを置くことによって、それぞれの現データから形成される。これは、次々に作成される2つの入力テンソル間のサンプルの重複を保証する。イメージが各サンプルについて取り込まれ、イメージは、イメージ取込みの時点を介してセンサデータ及び/又は制御データのそれぞれのサンプルに関連付けられ得る。したがって、各入力テンソルは、たとえば、それぞれの時点に対応する機械加工プロセスのセンサデータ、イメージデータ、及び/又は制御データなどのデータを含み得る。すなわち、センサデータ又はイメージデータがそれぞれの時点で記録され、制御データが、レーザ加工システムの制御ユニットによってそれぞれの時点で機械加工プロセスに適用された。このようにして生成された入力テンソルは、レーザ加工プロセスの実行中の所与の時点についての最後のn個の取得されたセンサデータ及び/又は最後のn個の取得されたイメージデータ及び/又は最後のn個の使用された制御データを含み得る。最も単純なケースでは、n=1である。
【0038】
一実施形態によれば、n=512であり、第1の入力テンソルが現センサ及び/又は制御データ、言い換えれば現プロセスデータを含み、第2の入力テンソルが現イメージデータを含む。すなわち、第1の入力テンソルは、それぞれのセンサデータ、制御データ、及び/又はイメージデータの最後の512のサンプル又は値を含む。典型的なサンプリングレート100kHzでは、次元m×512のデータセットが5.12msごとに生成される。ただし、mは、(取得された)センサデータ及び(受信又は使用された)制御データを含む、m個の異なるタイプのデータの数を表す。次元m×512の第1の入力テンソルが、2.56msごとにこれらのデータセットから形成される。約391イメージ/sの対応するイメージ取得速度(すなわち、イメージが2.56msごとに記録される)では、イメージデータの第2の入力テンソルが、プロセスデータの第1の入力テンソルごとに生成され得る。たとえば、現プロセスデータの入力テンソルに対応して、512×512ピクセルのイメージが取得される。したがって、それに対応して生成されたイメージデータの入力テンソルは、このケースでは次元512×512を有する。
【0039】
現センサデータは、1つ以上の温度、プラズマ放射、様々な波長での反射レーザ光若しくは後方散乱レーザ光の輝度、キーホール深さ、及び/又はレーザ加工プロセスを実施するレーザ加工ヘッドと工作物との間の距離を含み得る。制御データは、レーザ加工ヘッド上のレーザの出力パワー、集束位置、集束直径、レーザ加工ヘッドの位置、機械加工速度、及び/又は経路信号を含み得る。イメージデータは、工作物の表面のイメージ、たとえば工作物の機械加工エリアのイメージを含み得る。機械加工エリアは溶融プール及び/又はキーホールを含み得る。
【0040】
経路信号は、レーザ加工プロセスを実施するレーザ加工システムの制御信号であり得、前記経路信号は、工作物に対するレーザ加工ヘッドの移動を制御する。機械加工信号の決定に経路信号を含めることにより、たとえば、生じた機械加工誤りの工作物上の位置が迅速かつ容易に突き止められ得る。どの時点で、工作物のどのエリアがレーザ加工システムによって機械加工され、又は機械加工されたかが知られているからである。したがって、システムは、レーザ加工プロセス中に誤りが生じた時点を示すことができ得る。代替として、システムは、既知の機械加工速度、定義された開始時点としての既知の時点、及び入力テンソルの時間マッピングだけに基づいて時点を計算し得る。入力テンソルの時間マッピングは、入力テンソルの生成速度と、開始時点以降に生成された入力テンソル数から得られる。
【0041】
さらに、システムは、レーザ加工プロセス中のレーザ加工プロセスの現センサデータを検出するための少なくとも1つのセンサユニットを備え得る。したがって、センサユニットによって検出されたセンサデータは、センサユニットによって検出又は測定されたパラメータ、たとえば温度などの物理パラメータの値を表す。少なくとも1つのセンサユニットは、温度センサ、光センサ、又はプラズマセンサを備え得る。センサユニットは、距離センサ、たとえば三角測量システム及び/又はOCT(「光コヒーレンストモグラフィ」)システムをさらに備え得る。距離センサは、工作物の表面までの距離、たとえばレーザ加工システムのレーザ加工ヘッドと工作物表面との間の距離を求めるために使用され得る。
【0042】
さらに、システムは、レーザ加工プロセス中の工作物の機械加工エリアの現イメージデータを検出するための少なくとも1つのイメージ検出ユニットを備える。イメージ検出ユニットは、カメラ又はカメラシステム、具体的には2D及び/又は3Dカメラシステム、好ましくは入射光LED照明を有するものを備え得る。イメージ検出ユニットはステレオカメラシステムを備え得る。好ましくは、イメージデータは、レーザ加工プロセスの機械加工エリアを含む工作物表面の区間の2次元イメージ又は2次元撮像に対応する。機械加工エリアは、いわゆる溶融プール及びキーホールを含み得る。言い換えれば、イメージデータは溶融プール及びキーホールのイメージを含み得る。
【0043】
イメージ検出ユニットとセンサユニットの取得速度は同一であり得る。言い換えれば、イメージ検出ユニットとセンサユニットのデータが、それぞれの事前定義された期間について相関し得る。イメージ検出ユニット及びセンサユニットは、常に同一の時点でそれぞれのデータを取得し得る。たとえば、温度センサが温度測定を行う時点で、イメージ検出ユニットが工作物のイメージを記録し得る。
【0044】
レーザ加工プロセスの現データは、レーザ加工プロセスの現センサデータ及び/又は現イメージデータ及び/又は現制御データを含み得る。センサデータ及び制御データは、以下ではプロセスデータとも呼ばれる。センサデータは、センサユニットによって検出又は測定された少なくとも1つのパラメータの値を表す。制御データは、レーザ加工プロセス又はレーザ加工システムの少なくとも1つの制御パラメータの値を表す。
【0045】
好ましくは、コンピューティングユニットは、前記現データを受け取るように構成された少なくとも1つのインターフェースを含む。少なくとも1つのインターフェースは、たとえば、ニューラルネットワークをトレーニング又は適合するためのトレーニングデータ、あるいはレーザ加工システムの制御データ、及び/又はセンサユニットのセンサデータ、及び/又はイメージ検出ユニットからのイメージデータを受け取るように構成され得る。したがって、システムは、たとえばインターフェースを介して、レーザ加工プロセスを実施するレーザ加工システムの制御機構から少なくとも1つの制御パラメータの値を受け取るように構成され得る。
【0046】
センサデータを分類するためのネットワークアーキテクチャは通常、イメージデータを分類するためのネットワークアーキテクチャとは異なる。
【0047】
一実施形態によれば、イメージデータとプロセスデータを同時に使用するために、プロセスデータ及びイメージデータを分類するそれぞれのニューラルネットワークが、最後又は最後から2番目の隠れ層の後で相互接続される。イメージデータ及びプロセスデータの入力テンソルの特徴表現が、それぞれのネットワークの最後の隠れ層に配置される。これらの接続された特徴の分類は、以下の全結合層で行われる。
【0048】
この手順は、ネットワーク全体をトレーニングするときにトレーニングしなければならないのが数層だけであり、プロセスデータのみに制限された使用中に、プロセスデータのためにトレーニングされたネットワークが再び使用され得るという利点を有する。この手順について、イメージデータ及びプロセスデータのためのネットワークが別々にトレーニングされる。したがって、ネットワークは、イメージデータからなる入力テンソルと、プロセスデータからなる入力テンソルの、特徴ベクトルへのマッピングを学習している。
【0049】
xが自然数であるとして、入力テンソルは、レーザ加工プロセスの実行中の過去のx個の時点についての現データを含み得、x個の時点のそれぞれについて、入力テンソルは、この時点に対応するイメージデータと、センサ又は制御データ、すなわちプロセスデータとを含み得る。時点xは互いに等距離、たとえばそれぞれ256ms又は512又は1024msであり得る。入力テンソルが伝達関数から出力テンソルにマッピングされ得、すなわちイメージデータ及び制御データ又はセンサデータが共通の伝達関数によって処理される。
【0050】
一実施形態によれば、ネットワークの2つの分岐が渡され、それぞれの入力テンソルの特徴が1つの層で接続される。ネットワークの一方の分岐はイメージデータを有し、ネットワークの他方の分岐はプロセスデータ及び入力テンソルを有する。この手法は、いわゆる「特徴レベル融合」と呼ばれる。テンソルでのイメージデータとプロセスデータの組合せは、ある状況では効果的ではないことがあるので、両方のネットワークは容易に再び分離され、個々に使用され得る。
【0051】
本開示の別の態様によれば、レーザビームによって工作物を機械加工するためのレーザ加工システムが提供され、前記機械加工システムは、機械加工すべき工作物上にレーザビームを放射するためのレーザ加工ヘッドと、本明細書で説明される態様のうちの1つによる、機械加工誤りを検出するためのシステムとを備える。好ましくは、検出ユニットはレーザ加工ヘッド上に配置される。
【0052】
別の態様によれば、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するための方法が提供され、方法は、レーザ加工プロセスからの現データに基づいて1つ以上の入力テンソルを求めるステップと、伝達関数を使用して、1つ以上の入力テンソルに基づいて出力テンソルを求めるステップとを含み、出力テンソルは現機械加工結果についての情報を含み、入力テンソルと出力テンソルとの間の伝達関数が、教師ありニューラルネットワークによって形成される。
【0053】
図を参照しながら本発明が以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】一実施形態による、レーザビームと、機械加工誤りを検出するためのシステムとによって工作物を機械加工するためのレーザ加工システムの概略図である。
【
図2】一実施形態による、レーザ加工プロセスを監視するためのシステムのブロック図である。
【
図3A】例示的センサ値曲線の図解を示す図である。
【
図3B】例示的センサ値曲線の図解を示す図である。
【
図3C】例示的センサ値曲線の図解を示す図である。
【
図4】レーザ加工プロセス中の工作物の機械加工エリアを示す図である。
【
図5】一実施形態によるディープ畳込みニューラルネットワークのブロック図である。
【
図6】一実施形態による、プロセスデータを分類するためのディープ畳込みニューラルネットワークのブロック図である。
【
図7】一実施形態による、イメージデータを分類するためのディープ畳込みニューラルネットワークのブロック図である。
【
図8】一実施形態による、イメージデータ及びプロセスデータを分類するためのディープ畳込みニューラルネットワークのブロック図である。
【
図9】一実施形態による、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
別段に記載されていない限り、以下では、同一であり、同一の効果を有する要素について同一の参照符号が使用される。
【0056】
図1は、本開示の実施形態による、レーザビームによって工作物を機械加工するためのレーザ加工システム100の概略図を示す。レーザ加工システム100は、本開示の実施形態にしたがってレーザ加工プロセスを実施するように構成される。
【0057】
レーザ加工システム100は、レーザ加工ヘッド101、具体的にはレーザ切断ヘッド、レーザはんだ付けヘッド、又はレーザ溶接ヘッドと、機械加工誤りを検出するためのシステム300とを備える。レーザ加工システム100は、レーザビーム10(「機械加工ビーム」又は「機械加工レーザビーム」とも呼ばれる)を供給するためのレーザ装置110を備える。
【0058】
レーザ加工システム100、又はたとえば機械加工ヘッド101などのレーザ加工システム100の部分は、実施形態に従って、機械加工方向20に沿って移動可能であり得る。機械加工方向20は、工作物1に対する、機械加工ヘッド101などのレーザ加工システム100の切断、はんだ付け、若しくは溶接の方向及び/又は移動方向であり得る。具体的には、機械加工方向20は水平方向であり得る。機械加工方向20は「送り方向」とも呼ばれ得る。
【0059】
レーザ加工システム100は、機械加工ヘッド101及び/又はレーザ装置110を制御するように構成された制御ユニット140によって制御される。
【0060】
レーザ加工プロセスを監視するためのシステム300はコンピューティングユニット320を備える。コンピューティングユニット320は、レーザ加工プロセスの現データに基づいて入力テンソルを求め、伝達関数を使用して、入力テンソルに基づいてレーザ加工プロセスの現機械加工結果についての情報を含む出力テンソルを求めるように構成される。
【0061】
言い換えれば、出力テンソルは、1つ以上の算術演算の結果であり得、工作物1がレーザ加工システム100によって機械加工されたときに誤りが生じたかどうか、及びどの誤りが生じたかについての情報を含み得る。さらに、出力テンソルは、工作物表面2上の誤りのタイプ、位置、及びサイズについての情報を含み得る。出力テンソルはまた、工作物1の機械加工エリアについての情報、たとえばキーホール及び/又は溶融プールのサイズ、形状、又は範囲をも含み得る。
【0062】
一実施形態によれば、コンピューティングユニット320が制御ユニット140(図示せず)と組み合わされる。言い換えれば、共通の処理装置で、コンピューティングユニット320の機能が制御ユニット140の機能と組み合わされ得る。
【0063】
一実施形態によれば、システム300は、少なくとも1つのセンサユニット330及びイメージ検出ユニット310をさらに備える。
【0064】
少なくとも1つのセンサユニット330は、レーザ加工システム100によって実施されるレーザ加工プロセスのパラメータの値を検出し、検出した値からセンサデータを生成し、センサデータをコンピューティングユニット320に送るように構成される。検出は継続的又はリアルタイムに行われ得る。一実施形態によれば、センサユニット330は、複数のパラメータの値を検出し、値をコンピューティングユニット320に転送するように構成され得る。値は同時に検出され得る。
【0065】
イメージ検出ユニット310は、工作物1の機械加工された表面2のイメージデータ及び/又はレーザ加工プロセスの機械加工エリアを検出するように構成される。機械加工エリアは、レーザビーム10が現時点で工作物表面に当たり、工作物表面の材料が溶融しており、かつ/又は破壊穴又は穿孔穴が材料内に存在する工作物表面のエリアと定義され得る。具体的には、機械加工エリアは、溶融プール及び/又はキーホールが形成される工作物表面のエリアと定義され得る。一実施形態によれば、イメージ検出ユニット310は機械加工ヘッド101上に配置される。たとえば、イメージ検出ユニット310は、機械加工方向20に対して機械加工ヘッド101の下流側に配置され得る。イメージ検出ユニット310はまた、レーザビーム10及び/又は後で説明される測定ビーム13と同軸に配置され得る。コンピューティングユニット320は、イメージ検出ユニット310によって検出されたイメージデータと、センサユニット330によって検出されたセンサデータとを受け取り、現イメージデータ及び現センサデータに基づいて入力テンソルを形成するように構成される。
【0066】
任意選択で、レーザ加工システム100又はシステム300は、機械加工ヘッド101の端部と機械加工すべき工作物1との間の距離を測定するための測定デバイス120を備える。測定デバイスは、光コヒーレンストモグラフ、具体的には光低コヒーレンストモグラフを備え得る。
【0067】
レーザ装置110は、レーザビーム10をコリメートするためのコリメータレンズ112を含み得る。コヒーレンストモグラフは、光測定ビーム13をコリメートするように構成されたコリメータオプティクス122と、光測定ビーム13を工作物1上に集束させるように構成された集束オプティクス124とを含み得る。
【0068】
図2は、一実施形態による、レーザ加工プロセスを監視するためのシステム300のブロック図を示す。
【0069】
システム300は、コンピューティングユニット320、少なくとも1つのセンサユニット330、及びイメージ検出ユニット310を備える。コンピューティングユニット320は、センサユニット330及びイメージ検出ユニット310に接続され、その結果、コンピューティングユニット320は、イメージ検出ユニット310によって検出されたイメージデータと、センサユニット320によって検出されたセンサデータとを受け取り得る。
【0070】
一実施形態によれば、コンピューティングユニット320は、出力テンソルを求めるためのプロセッサを含む。伝達関数は通常、コンピューティングユニット320のメモリ(図示せず)内に記憶され、又は回路、たとえばFPGAとして実装される。メモリは、別のデータ、たとえば求めた出力テンソルを記憶するように構成され得る。
【0071】
コンピューティングユニット320は入力/出力ユニット322を含み得、入力/出力ユニット322は、具体的には、ユーザとインターフェースするためのグラフィカルユーザインターフェースを含む。コンピューティングユニット320はデータインターフェース321を含み得、データインターフェース321を介して、コンピューティングユニットは、別のコンピューティングユニット、コンピュータ、PCや、データベース、メモリカード、ハードドライブなどの外部記憶ユニットなどの外部位置に出力テンソルを送り得る。コンピューティングユニット320は通信インターフェース(図示せず)をさらに含み得、コンピューティングユニットは、通信インターフェースを用いてネットワークと通信し得る。さらに、コンピューティングユニット320は、出力ユニット322上に出力テンソルをグラフィカルに表示し得る。コンピューティングユニット320は、制御ユニット140に出力テンソルを送るために、レーザ加工システム100の制御ユニット140に接続され得る。
【0072】
コンピューティングユニット320はさらに、インターフェース321を介してレーザ加工システム100の制御ユニット140から制御データを受け取り、さらに入力テンソル内に制御データを組み込むように構成され得る。制御データは、たとえば、それぞれ所定の時点での、レーザデバイス110の出力パワー、機械加工ヘッド101と工作物1の表面との間の距離、送り方向及び速度を含み得る。
【0073】
コンピューティングユニット320は、現データから伝達関数のための1つ以上の入力テンソルを形成する。本発明によれば、1つ以上の入力テンソルが現生データから形成される。これは、現データがコンピューティングユニット320、センサユニット330、又はイメージ検出ユニット310によってあらかじめ処理されないことを意味する。
【0074】
伝達関数は、教師ありニューラルネットワーク、すなわち事前トレーニング済みニューラルネットワークによって形成される。言い換えれば、コンピューティングユニットはディープ畳込みニューラルネットワークを含む。1つ以上の入力テンソルに伝達関数を適用することによって出力テンソルが作成される。したがって、伝達関数を使用して、出力テンソルが1つ以上の入力テンソルから求められる。
【0075】
出力テンソルは、レーザ加工プロセスの現機械加工結果についての情報又はデータを含む。機械加工結果は、たとえば、生じた機械加工誤り、及び/又は工作物の機械加工エリアについての情報を含み得る。現機械加工誤りについての前記情報は、少なくとも1つの機械加工誤りがあるかどうか、少なくとも1つの機械加工誤りのタイプ、機械加工された工作物1の表面上の機械加工誤りの位置、及び/又は機械加工誤りのサイズ若しくは範囲を含み得る。機械加工エリアについての情報は、キーホールの位置及び/又はサイズ、溶融プールの位置及び/又はサイズ及び/又は幾何形状であり得る。一実施形態によれば、出力テンソルはまた、一定のタイプの機械加工誤りが生じた確率、又はシステムが一定のタイプの機械加工誤りを検出した信頼度をも含み得る。
【0076】
イメージ検出ユニット310は、カメラシステム又はステレオカメラシステム、たとえば入射光LED照明を有するものを備え得る。本発明によれば、イメージデータは、工作物表面の区間の2次元イメージに対応する。言い換えれば、
図4に例として示され、以下で詳細に説明されるように、検出又は記録されたイメージデータは、工作物表面の2次元イメージを表す。
【0077】
一実施形態によれば、コンピューティングユニット320は、出力ユニット322上に入力テンソル及び/又は出力テンソルをグラフィカルに表示するように構成され得る。たとえば、コンピューティングユニット320は、入力テンソル内に含まれるセンサデータ及び/又はイメージデータを、
図3Aから3Cに示されるように、曲線として、又は
図4に示されるように、工作物1の2次元イメージとしてグラフィカルに表示し、これらを出力テンソル内に含まれる情報と重ね合わせ得る。
【0078】
図4は、一実施形態によるイメージデータの図解を示す。より正確には、
図4は、850nmでの溶融プール及びキーホールの例示的イメージを、重ね合わされた幾何形状データと共に示す。コンピューティングユニット320によって求められる出力テンソル内の情報としてそれらが含まれるように、十字2aはキーホールの中心を示し、十字2bは溶融プールの中心を示し、線2cは溶融プールの輪郭を示し、線2dはキーホールの輪郭を示す。周囲の長方形2e(「バウンディングボックス」)は溶融プールの計算されたサイズを示す。
【0079】
溶融プールの所定の幾何形状又はサイズから逸脱するケースでは、レーザ加工プロセス、たとえば溶接の機械加工結果が「不良」と分類されることを示す情報が、出力テンソル内に含まれ得る。このケースでは、レーザ加工プロセスを監視するためのシステム300が、誤りを出力し得る。
【0080】
従来型システムでは、周囲の長方形2eのサイズについての目標仕様又は基準値を指定又は記憶しなければならない。2段階形態的操作(「ブロブ解析」)が計算のために実施される。2進しきい値などの、このために必要とされるパラメータは、従来型システムではエキスパートによって指定されなければならない。この手法では、溶接プロセスに対する変更は、熟練のエキスパートによるパラメータに対する変更を必要とする。本明細書で説明される監視システムによれば、これらの欠点が回避される。
【0081】
図5は、第1の実施形態によるディープ畳込みニューラルネットワーク400のブロック図を示す。
【0082】
図5に示される実施形態によれば、入力テンソル405、415は、レーザ加工システムの様々なタイプ又は種類のセンサデータ、制御データ、及びイメージデータを含む。たとえば、イメージデータについての入力テンソル405は、次元「ピクセル単位のイメージ高さ」×「ピクセル単位のイメージ幅」を有し、センサデータ及び/又は制御データについての入力テンソル415は、次元「センサデータ及び/又は制御データのタイプ数」×「サンプル数」を有する。したがって、イメージデータは、イメージデータを有意な特徴に削減する、ニューラルネットワーク400の「分岐」についての入力テンソル405を形成する。センサデータは、センサデータから有意な特徴を計算する、ニューラルネットワーク400の分岐についての入力テンソル415を形成する。
【0083】
センサデータは、たとえば、1つ以上の温度センサによって測定された温度、対応するセンサによって測定されたプラズマ放射、光センサによって測定された、工作物表面上で反射若しくは後方散乱したレーザ光の輝度、反射レーザ光若しくは後方散乱レーザ光の波長、又は距離センサによって測定されたレーザ加工ヘッドと工作物との間の距離であり得る。
【0084】
制御データは、レーザ加工システムにレーザ加工プロセスを実施させるために制御機構によって生成された制御信号であり得る。制御データは、レーザビーム又は経路信号の集束位置及び集束直径を含み得、前記経路信号は、工作物に対するレーザ加工システムのレーザ加工ヘッドの相対位置を指定する位置信号を表す。
【0085】
センサデータ及び/又は制御データは、ディープ畳込みニューラルネットワークの入力テンソル415を直接的に形成する。同様に、イメージデータは、ディープ畳込みニューラルネットワークの入力テンソル405を直接的に形成する。これは、入力テンソル405、415と出力テンソルとの間でいわゆる「エンドツーエンド」マッピング又は解析が行われることを意味する。イメージデータ及びプロセスデータは、このディープ畳込みニューラルネットワーク内のネットワークで分類されるので、いわゆる「特徴レベル融合」と呼ばれる。
【0086】
コンピューティングユニットは、時点nのそれぞれについて、それぞれの入力テンソル405、415内のそれぞれの時点に対応するセンサデータ、制御データ、及び/又はイメージデータのセットを組み合わせ、伝達関数420を使用して、それを全体として出力テンソルにマッピングするように構成され得る。
【0087】
一実施形態によれば、イメージデータを検出するためのイメージ検出ユニットの検出速度と、センサデータを検出するためのセンサユニットの検出速度は同一であり得、イメージ検出ユニットとセンサユニットは、それぞれ同一時点で検出を実施する。
【0088】
出力テンソル430、したがって出力層は、その中に含まれる情報に対応する次元を有する。出力テンソル430は、たとえば、以下の情報のうちの少なくとも1つを含む:少なくとも1つの機械加工誤りの存在、機械加工誤りのタイプ、機械加工された工作物の表面上の機械加工誤りの位置、一定のタイプの機械加工誤りの確率、機械加工された工作物の表面上の機械加工誤りの空間及び/又は平面の範囲、キーホールの位置及び/又はサイズ、溶融プールの位置及び/又はサイズ及び/又は幾何形状。
【0089】
出力テンソル430は、それぞれのレーザ加工プロセスの制御ユニット(図示せず)に転送され得る。出力テンソル430内に含まれる情報を使用して、制御ユニットは、たとえばレーザ加工プロセスの様々なパラメータを適合させることによって、レーザ加工プロセスを適合させ得る。
【0090】
コンピューティングユニットは、出力テンソル430をリアルタイムに形成するように構成され得る。したがって、レーザ加工プロセスは、本明細書で説明されるレーザ加工プロセスを監視するためのシステムを使用して直接的に制御され得る。
【0091】
図6は、現センサ及び/又は制御データを含む入力テンソルを出力テンソルにマッピングするのに適した、別の実施形態によるディープ畳込みニューラルネットワーク600のブロック図を示す。
【0092】
図6に示される実施形態によれば、入力テンソル630は、レーザ加工システムの4つの異なるタイプのセンサデータ及び/又は制御データ、すなわちプロセスデータの512個の測定値又はサンプルを含む。センサデータ及び制御データは、ディープ畳込みニューラルネットワークの入力テンソル630を直接的に形成する。これは、入力テンソル630と出力テンソル640との間でいわゆる「エンドツーエンド」マッピング又は解析が行われることを意味する。
【0093】
したがって、入力層又は入力テンソル630は次元4×512を有する。
【0094】
ディープニューラルネットワークによって形成された伝達関数は、現監視誤り、すなわちサンプルが得られた時点で生じた機械加工誤りについての情報を含むべきである。出力テンソル640は、たとえば、情報「誤りあり/なし」、誤り「穴」の存在又は確率、誤り「スプラッシュ」の存在又は確率、「ギャップ」誤りの存在又は確率、「偽フレンド/溶接溶込みの欠如」誤りの存在又は確率を含むべきである。したがって、出力テンソル640又は出力層は1×5の次元を有する。
【0095】
したがって、
図6に示される実施形態によるディープ畳込みニューラルネットワーク600は、次元4×512の入力テンソル630を次元1×5の出力テンソル640にマッピングする:R
2048→R
5。
【0096】
出力テンソル640又はその中に含まれる値の検査から、機械加工された工作物が、事前定義された分類アルゴリズムを使用して「良好」又は「不良」と分類され得る。言い換えれば、状況に応じて、工作物が、販売又はさらなる機械加工に適していると分類され(「良好」)、又はスクラップと分類され、若しくは機械加工後のためにマークされ得る(「不良」)。
【0097】
以下で「CNN」と省略されるディープ畳込みニューラルネットワーク600(「Deep Convolutional Neural Net」)は、複数のコアで畳込みを実施する複数の畳込み層610を含み得る。さらに、CNN600は、「全結合」層又はブロック620及び/又は「Leaky ReLu」ブロック又は層650を含み得る。
図6に示されるように、CNNは、たとえば、21個の畳込み層を含み、少なくともいくつかの畳込み層は正規化(バッチ正規化)及び残差ブロックを含む。
【0098】
図7は、現イメージデータを含む入力テンソルを出力テンソルにマッピングするのに適した、一実施形態によるディープ畳込みニューラルネットワーク700のブロック図を示す。
【0099】
図7に示される実施形態によるディープ畳込みニューラルネットワーク700のケースでは、入力テンソル730が、サイズ512×512ピクセルの工作物のイメージ、たとえば工作物の機械加工エリアのイメージを含む。すなわち、入力層730は次元512×512を有する。
【0100】
入力テンソル730は、イメージデータの検出された生データを含む。これらの生イメージデータは、ディープ畳込みニューラルネットワークの入力テンソルを直接的に形成する。これは、入力テンソル730と出力テンソル740との間でいわゆる「エンドツーエンド」マッピング又は解析が行われることを意味する。キーホール又は溶融プールの特徴は、中間ステップでは計算又はパラメータ化されない。
【0101】
伝達関数は、キーホールが存在するかどうかについての情報、並びに/あるいはキーホールの重心若しくは中心の位置についての情報、キーホールの周囲の四角形についての情報、及び/又は溶融プールの周囲の四角形についての情報を提供するためのものである。
【0102】
したがって、出力テンソル740は、値「Pkeyhole」(キーホール存在/非存在)、「XKeyhole」(x方向のキーホールの重心又は中心の位置)、「YKeyhole」(Y方向のキーホールの重心又は中心の位置)、「dXKeyhole」(x方向のキーホールのサイズ)、「dYKeyhole」(Y方向のキーホールのサイズ)、「Xmelt_pool」(x方向の溶融プールの重心又は中心の位置)、「Ymelt_pool」(y方向の溶融プールの重心又は中心の位置)、「dXmelt_pool」(x方向の溶融プールのサイズ)、及び「dYmelt_pool」(y方向の溶融プールのサイズ)を含む。したがって、出力テンソル740又は出力層は9つの値を含み、したがって次元1×9を有する。
【0103】
したがって、
図7に示される実施形態によれば、ニューラルネットワーク700は、次元512×512の入力テンソル730を次元1×9の出力テンソル740にマッピングする:R
262144→R
9。
【0104】
図7に示されるように、CNNは、たとえば、34個の畳込み層710を含み、少なくともいくつかの畳込み層は正規化(「バッチ正規化」)及びいわゆる残差ブロックを含む。畳込みネットワークはまた、2つのいわゆる「全結合」層720を有する。ニューラルネットワーク700は、最後の層750でシリアル化され、シグモイド活性化関数によって出力テンソル740にマッピングされる。
【0105】
層の出力を正規化することにより、「爆発」又は「消失」する勾配の問題が回避され得る。推論プロセスでの挙動は、他の分布のデータに対してより感応性が低い。
【0106】
正規化は通常、「ミニバッチ」にわたる平均値及び標準偏差を含む。その効果は規制である。
【0107】
一実施形態によれば、これらのパラメータは、トレーニング済みディープ畳込みニューラルネットワーク内のハイパーパラメータとして使用される:「Batch Normalization」、「Accelerating Deep Network Training by Reducing Internal Covariate Shift」(セルゲイヨッフェ(Sergey Ioffe)、クリスチャンセゲディ(Christian Szegedy)による)。
【0108】
図7では、「畳込み32 3×3」ブロックは、32個の異なる3×3畳込みフィルタマスクを有する畳込みブロック又は畳込み層を表す。すなわち、ブロック「畳込み32 3×3」は、mが高さ、nが幅、cがチャネル数を表すとして、次元m×n×cの入力テンソル730から次元m×n×32のテンソルを生成する。高さm=512及び幅n=512を有する単一チャネル(c=1)入力テンソルのケースでは、次元512×512×32の出力テンソル740が形成され、その結果、出力テンソルは、次元512×512の32個のイメージを含む。同じことが他の畳込みブロックに当てはまる。
【0109】
図7の畳込みブロック内の表示「/2」は、2の「ストライド」を記述する。すなわち、フィルタコアが前方に2ピクセルシフトし、その結果、次元が半分に削減される。ブロックの上の情報、たとえば「512×512」は、テンソルの次元m×nをチャネル数なしに記述する。
【0110】
表示「残差ブロック」は、値が活性化関数を介して伝えられる前に、前の層の出力(1)が出力層の結果に追加される(1+2)ことを指定する。
【0111】
図8は、イメージデータ及びプロセスデータを分類するためのディープ畳込みニューラルネットワークを示す。一実施形態によれば、ニューラルネットワーク800は
図6及び7の実施形態による、ニューラルネットワーク845、855を含む。このケースでは、ニューラルネットワーク800は、少なくとも1つの全結合層830、及び任意選択で別の全結合層820を、「Leaky ReLu」活性化関数と呼ばれるものとチェイニング又は結合又はリンクすることによって作成される。最後の全結合層830の、出力テンソル840へのマッピングが、シグモイド活性化関数によって実施され得る。それぞれのニューラルネットワーク845、855の2つの入力テンソル805、815が出力テンソル840にマッピングされ、出力テンソル840は以下の構成要素を有する:P(error)、P(hole)、P(spatter)、P(gap)、P(false friend)、「x_keyhole」、「y_keyhole」、「dx_keyhole」、「dy_keyhole」、「x_melt_pool」、「y_melt_pool」、「dx_melt_pool」、及び「dy_melt_pool」。Pは一定のタイプの機械加工誤りの確率を表す。したがって、ニューラルネットワーク800の出力テンソル840は次元1×13を有する。
【0112】
図5から8の実施形態で使用されるニューラルネットワークは、トレーニング済みディープ畳込みニューラルネットワーク又は教師ありディープ畳込みニューラルネットワークである。言い換えれば、機械加工誤りを検出するためのシステムの送達前に、CNNは、「良好」及び「不良」な機械加工された工作物表面である例、あるいは「良好」及び「不良」な溶接又ははんだ又は溶接シームである例から学習した。言い換えれば、CNNは、機械加工された工作物表面を「良好」又は「不良」と分類するように学習しており、あるいは機械加工誤りを検出し、機械加工誤りの位置を突き止め、機械加工誤りのタイプに従って機械加工誤りを分類し、機械加工誤りのサイズを求めるように学習している。
【0113】
インプロセス監視のケースでは、システムは、機械加工された工作物表面が機械加工誤りを有するかどうか、又は機械加工エリアがどの幾何学的特性を有するかを確実に判定すべきである。好ましくは、システムは、どの誤りが存在するか(たとえば、ポア、穴、突出し、スパッタ、付着、又は溶接溶込みの欠如、又は「偽フレンド」)を検出し、場合によっては、機械加工誤りの位置も突き止め、工作物表面上の機械加工誤りのサイズを示し得る。CNNをトレーニングし、ハイパーパラメータを設定するために、入力データセット及び対応する出力テンソルがCNNに供給される。指定の入力データセットは、たとえば、前述のようにレーザ加工プロセスのセンサ、イメージ、及び/又は制御データを含む。対応する所定の出力テンソル又は結果テンソルが、それぞれの事前定義された入力データセットに関連付けられる。この出力テンソルは、それぞれの入力データセットについてのそれぞれのレーザ加工プロセスについてのCNNの所望の結果を含む。
【0114】
図8で説明される実施形態に従ってイメージデータ及びプロセスデータについてのネットワークをトレーニングするために、イメージデータ及びプロセスデータについての個々のネットワークが使用される。トレーニングの後、最後の全結合層が、有意な特徴の表現を含む。このようにして求められたそれぞれの個々のネットワークのパラメータを用いて、ネットワークが記載のようにチェイニングされ、チェイニング後の層のみがトレーニングされる。
【0115】
言い換えれば、対応する所定の出力テンソルは、機械加工された工作物表面の区間上に存在する機械加工誤りの分類についての情報、及び/又は機械加工エリアの幾何学的特徴についての情報を含む。出力テンソルの、それぞれの所定の入力データセットへのこのマッピングは手動で実施される(検出されたセンサ、イメージ、及び制御データのいわゆる「ラベリング」)。すなわち、センサ、イメージ、及び制御データの、伝達関数の結果への所定のマッピングが行われる。たとえば、入力データセットについて基礎として使用されるレーザ加工プロセスで機械加工誤りが生じたかどうか、どんなタイプの誤りが存在するか、たとえばx及びy座標を有する2次元座標系を使用して、機械加工された工作物表面上のどの位置に機械加工誤りが存在するか、x及びy方向の機械加工誤りのサイズ、キーホール及び/又は溶融プールが存在するかどうか、キーホール及び/又は溶融プールが互いに対して、又は現機械加工地点に対してどこにあるか、キーホール及び/又は溶融プールがどのエリア及び/又はどの半軸を有するか、などが出力テンソルで指定される。
【0116】
次いで、CNNによって形成された伝達関数が、最適化方法によって求められ、システム300内、好ましくはコンピューティングユニット320のメモリ内に記憶される。最適化プロセスが、たとえばAdam最適化を用いる「逆伝播」プロセスで実施される。推論のために、CNNは、入力データセットの、機械加工結果へのマッピングを提供する。
【0117】
一実施形態によれば、以下のパラメータがトレーニング済みネットワーク内のハイパーパラメータとして使用される:「Batch Normalization」、「Accelerating Deep Network Training by Reducing Internal Covariate Shift」(セルゲイヨッフェ(Sergey Ioffe)、クリスチャンセゲディ(Christian Szegedy)による)。
【0118】
教師ありデイープフォールディングニューラルネットワークが、いわゆる転移学習によって、変化した状況又は変化したレーザ加工プロセスに適合され得るように構成される。ネットワークの基本トレーニングが、システムのコミッショニングより前に実施される。コミッショニング後の機械加工プロセスへの変更の場合、転移学習と呼ばれるものだけが実施される。変化した状況は、たとえば、機械加工すべき工作物が、たとえば材料が変化したときに変化することであり得る。工作物表面の厚さ又は材料組成もわずかに変化し得る。さらに、工作物を機械加工するために他のプロセスパラメータが使用され得る。これにより、他の機械加工誤りが引き起こされ得る。たとえば、様々なタイプの機械加工誤りの確率が変化し得、又は機械加工誤りが異なって形成され得る。これは、変化した状況、及び結果として生じる機械加工誤りの変化にニューラルネットワークを適合しなければならないことを意味する。
【0119】
転移学習はニューラルネットワークの初期ティーチングと同様に進む。しかしながら、通常は、ディープ畳込みニューラルネットワークのいくつかの特定の畳込み層、具体的には最後の2つから3つの畳込み層だけが転移学習で適合される。変更されるニューラルネットワークのパラメータ数は、ニューラルネットワークをトレーニング又はティーチングするときよりも著しく少ない。これにより、顧客において転移学習を迅速に、通常は1時間未満で完了することが可能となる。これは、転移学習では、ニューラルネットワーク全体が再トレーニング又は再ティーチングされるわけではないことを意味する。
【0120】
システム300は、インターフェース321を介して、転移学習のために必要とされるトレーニングデータを受け取り得る。
【0121】
トレーニングデータは、変更されたレーザ加工プロセスのテストデータセットを含み得、転移学習中に、コンピューティングユニットは、テストデータセットから、対応する入力テンソルを形成する。さらに、トレーニングデータは、それぞれのテストデータセットに関連付けられる所定の出力テンソルを含み、エキスパートによって以前に決定された、変更されたレーザ加工プロセスの対応する機械加工結果についての情報を含む。
【0122】
たとえば、テストデータセットは、前のレーザ加工プロセス中に機械加工誤りが生じたときに検出されたセンサデータを含み、関連する出力テンソルは、誤りについての情報、たとえば誤りのタイプ、工作物上の機械加工誤りの位置及び範囲を含む。
【0123】
図9は、工作物を機械加工するためのレーザ加工プロセスを監視するための方法を示す。第1のステップ910は、レーザ加工プロセスからの現データに基づいて入力テンソルを求めることを含む。第2のステップ920では、伝達関数を使用して、入力テンソルに基づいて出力テンソルが求められ、前記出力テンソルは現機械加工結果についての情報を含む。教師ありニューラルネットワークによって伝達関数があらかじめ求められ、形成される。
【0124】
工作物が機械加工されている間にレーザ加工プロセスを監視するための方法が実施され得る。一実施形態によれば、方法は、機械加工された工作物表面全体を通して1回実行される。
【0125】
伝達関数を形成するニューラルネットワークの使用は、機械加工誤りが存在するかどうか、及びどの機械加工誤りが存在するかをシステムが独立して検出し得るという利点を有する。したがって、誤り検出のためにアクセス可能にするために、イメージデータやセンサデータなどの受け取った現データを前処理することはもはや不要である。さらに、検出されたデータから、処理品質又は何らかの機械加工誤りを特徴付ける特徴を抽出する必要はない。さらに、抽出されたどの特徴が機械加工品質の評価又は機械加工誤りの分類のために必要であり、又は関連するかを判断する必要はない。機械加工誤りを分類するための、抽出された特徴のパラメータ化を指定又は適合する必要もない。それによって、レーザ加工システムによる機械加工品質又は機械加工誤りの決定又は評価が簡略化される。レーザ加工のエキスパートが前述のステップを実施し、又は前述のステップに付き添う必要はない。
【国際調査報告】