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特表2022-509225多回転システムを用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法
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  • 特表-多回転システムを用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法 図1
  • 特表-多回転システムを用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】多回転システムを用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/425 20190101AFI20220113BHJP
   B29C 48/45 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/685 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/76 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/84 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20220113BHJP
   B29C 48/43 20190101ALI20220113BHJP
【FI】
B29C48/425
B29C48/45
B29C48/685
B29C48/76
B29C48/80
B29C48/84
B29C48/92
B29C48/25
B29C48/43
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530148
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 DE2019101020
(87)【国際公開番号】W WO2020108705
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】102018130102.2
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514054214
【氏名又は名称】グノイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Gneuss GmbH
【住所又は居所原語表記】Moenichhusen 42, D-32549 Bad Oeynhausen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グノイス
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ グノイス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン グノイス
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AA50
4F207AJ08
4F207AP02
4F207AR02
4F207AR07
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK13
4F207KK16
4F207KK43
4F207KK44
4F207KL22
4F207KL23
4F207KL42
4F207KL47
4F207KM04
4F207KM14
(57)【要約】
多回転システム(100)を用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法であって、a)ハウジング(50)のハウジング凹部(51)内で回転する押出スクリュ(101)を備えた第1の押出セクション(1)において、プラスチック粒子を投入し、かつ部分的に溶融させるステップと、b)未溶融のプラスチック粒子を5体積%~50体積%含む部分的に溶融されたプラスチック材料を第2の押出セクション(2)に移送し、ここで、第2の押出セクション(2)は、多回転ユニット(20)とその中で回転する複数のサテライト・スクリュ(26)とを備えた多軸押出セクション(2)として形成されており、多回転ユニット(20)の直径は、第1の押出セクション(1)のスクリュ直径に対して拡大されており、押出セクション(1,2)の間に円錐状移行部(21)が形成されており、かつハウジング(50)に対して円錐状の間隙(52)が形成されているステップと、c)流れ方向で円錐状移行部(21)の下流に存在しかつサテライト・スクリュ(26)の露出した駆動ピニオン(23)を備えた駆動ゾーン(23,24)に通すことにより、残りのプラスチック粒子を非加圧で可塑化させるステップと、d)駆動ゾーン(23,24,25)において完全に溶融されたプラスチック材料を、真空を適用した脱気ゾーンに送るステップと、e)脱気ゾーンにおいてプラスチック溶融物から揮発成分を除去するステップと、f)プラスチック溶融物を吐出押出セクション(3)に搬送するステップとを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多回転システム(100)を用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法であって、少なくとも以下のステップ:
a)ハウジング(50)のハウジング凹部(51)内で回転する少なくとも1つの押出スクリュ(101)を備えた第1の押出セクション(1)において、前記プラスチック粒子を投入し、かつ前記プラスチック粒子を少なくとも部分的に溶融させるステップと、
b)前記少なくとも部分的に溶融されたプラスチック材料を第2の押出セクション(2)に移送し、ここで、前記第2の押出セクション(2)は、多回転ユニット(20)とその中で回転する複数のサテライト・スクリュ(26)とを備えた多軸押出セクション(2)として形成されており、前記多回転ユニット(20)の直径は、前記第1の押出セクション(1)のスクリュ直径に対して拡大されており、前記押出セクション(1,2)の間に円錐状移行部(21)が形成されており、かつ前記ハウジング(50)に対して円錐状の間隙(52)が形成されているステップと、
c)前記駆動ゾーン(23,24,25)において完全に溶融されたプラスチック材料を、真空を適用した脱気ゾーンに送るステップと、
d)前記脱気ゾーンにおいて前記プラスチック溶融物から揮発成分を除去するステップと、
e)前記プラスチック溶融物を吐出押出セクション(3)に搬送するステップと
を含む方法において、
- 前記ステップb)において、前記部分的に溶融されたプラスチック材料が、低温のプラスチック溶融物として、未溶融でかつ未脱水のプラスチック粒子5体積%~50体積%を含み、
- 前記プラスチック材料の少なくとも一部を、流れ方向で前記円錐状移行部(21)の下流に存在しかつ前記サテライト・スクリュ(26)の露出した駆動ピニオン(23)を備えた駆動ゾーン(23,24)に通すことにより、残りのプラスチック粒子を非加圧で可塑化させ、かつ
- 前記低温のプラスチック溶融物を、前記真空ゾーンに入る直前に再加熱し、それにより、前記残りのプラスチック粒子を溶融させ、かつその際に貯蔵されていた残留水分を放出させる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記固形プラスチック粒子の溶融を、前記駆動ゾーン(23,24,25)を通過する際に衝撃加熱によって生じさせる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記部分的に溶融されたプラスチック材料が、前記第1の押出セクションから前記第2の押出セクション(1,2)への移送の際に、未溶融の残留粒子を10体積%~40体積%含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記押出スクリュ(10)の投入および計量ゾーン(10,12)を、その内部を流れる流体により調温し、前記流体が、前記プラスチック粒子を構成するプラスチックのガラス転移温度と溶融温度Tsとの間にある入口温度を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記多軸押出セクション(2)の充填量が、100%未満である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ハウジング(50)に対して前記押出スクリュ(101)を軸線方向に移動させることにより、前記押出スクリュ(101)の前記円錐状移行部(21)と前記ハウジング凹部(51)との間の円錐状の間隙(52)の幅を調整する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記円錐状の間隙(52)の幅を、前記第1の押出セクション(1)の前記計量ゾーン(12)の端部における圧力に応じて調整し、ここで、高圧であれば、前記円錐状の間隙(52)を広げ、低圧であれば、前記円錐状の間隙(52)を狭くする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記軸線方向に移動可能となるように配置された押出スクリュが、上流側に配置された前記ハウジング上のばね要素に支持されており、前記溶融物の粘度により前記押出スクリュを減衰させ、前記溶融物中で前記押出スクリュが支持されている、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するための多回転システム(100)であって、前記多回転システム(100)は、少なくとも1つのハウジング(50)と、脱気ゾーンにおいて少なくとも1つのハウジング開口部(54)を備え、かつ前記ハウジング開口部(54)に真空が適用されるハウジング凹部(51)と、前記ハウジング凹部(51)において回転可能な押出スクリュ(101)とを備え、前記多回転システム(100)は、
- 前記押出スクリュ(101)上に少なくとも1つの投入ゾーン(11)と計量ゾーン(12)を備えた第1の押出セクション(1)と、
- 多回転ユニット(20)とその中で回転する複数のサテライト・スクリュ(26)とを備えた多軸押出セクション(2)として形成された第2の押出セクション(2)であって、前記多回転ユニット(20)の直径は、前記第1の押出セクション(1)のスクリュ直径に対して拡大されている、第2の押出セクション(2)と、
- 前記押出セクション(1,2)の間で前記押出スクリュ(101)上に形成された前記円錐状移行部(21)であって、ここで、前記円錐状移行部(21)と前記ハウジング凹部(51)との間には、円錐状の間隙(52)が形成されている、円錐状移行部(21)と、
- 流れ方向で前記円錐状移行部(21)の下流に存在し、かつ前記サテライト・スクリュ(26)の露出した駆動ピニオン(23)を備えた駆動ゾーン(23,24)と、
- 吐出押出セクション(3)と
を少なくとも備えた多回転システム(100)において、
前記ハウジング(50)に対して前記押出スクリュ(101)を軸線方向に移動させることにより、前記円錐状の間隙(52)を調整できることを特徴とする、多回転システム(100)。
【請求項10】
前記サテライト・スクリュ(25)の前記ピニオン(23)の長さと、前記脱気ゾーンの軸線方向の延びとの比が、1:40~1:6である、請求項8記載の多回転システム(100)。
【請求項11】
- 前記計量ゾーン(12)において前記円錐状移行部(21)の上流に配置された少なくとも1つの圧力センサと、
- 前記押出スクリュ(101)を前記ハウジング(50)に対して軸線方向に移動することができる作動装置と、
- 前記圧力センサおよび前記作動装置に接続された制御ユニットと
を特徴とする、請求項8または9記載の多回転システム(100)。
【請求項12】
前記投入ゾーン(11)の上流側にばね要素が設けられており、前記ばね要素により前記押出スクリュ(101)が前記ハウジング(50)に支持されている、請求項9から11までのいずれか1項記載の多回転システム(100)。
【請求項13】
前記押出スクリュ(101)が、少なくとも前記第1の押出セクション(1)において、内部流路を流れる流体によって調温可能である、請求項9から12までのいずれか1項記載の多回転システム(100)。
【請求項14】
前記ハウジング(50)が、少なくとも前記第1および第2の押出セクション(1)において調温可能である、請求項9から13までのいずれか1項記載の多回転システム(100)。
【請求項15】
前記押出スクリュ(101)の吐出ゾーン(30)が、前記多回転ユニット(20)に比べて低下した直径を有する、請求項9から14までのいずれか1項記載の多回転システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多回転システムを用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法に関する。
【0002】
重縮合物、特にPETなどの加水分解性プラスチックを押出工程で処理する際の基本的な問題は、さらなる加工が可能な均質なプラスチック溶融物を得るためには、所定の滞留時間と、単位時間あたりの所定の入熱量とが必要であるが、一方で、水分を含む場合には、滞留時間中のこの入熱こそがプラスチックの加水分解を引き起こすという点にある。しかし、特にリサイクル工程では固形物を完全に乾燥させてから押出工程に導入すると経済的でないため、PETリサイクル材は常に湿った状態であると考えなければならない。そのため、水分を含んだ固形プラスチックを押出機に投入し、溶融して脱気することで水分を凝縮物として抜き出し、それにより加水分解を停止させるか、またはさらには粘度を上昇させる逆反応を生じさせる。
【0003】
これに関連して、重要な改善策の1つが国際公開第2003033240号に記載されている多回転システムであり、該多回転システムは、押出スクリュを備えており、該押出スクリュは、プラスチック材料を投入して溶融させるための投入および計量ゾーンと吐出ゾーンとの間に、いわゆる多回転ユニットを備えている。該多回転ユニットは、他のゾーンに比べて直径が明らかに大きく、また、回転する複数のサテライト・スクリュを備えている。該多回転システムでは、単軸および二軸スクリュシステムに比べて脱気性能の大幅な向上が達成される。その結果、該多回転ユニット内でのプラスチック溶融物の滞留時間を非常に短く抑えることができる。
【0004】
含水率が高くなるとすでに計量ゾーンで広範囲の加水分解が始まってしまい、この加水分解をその後に多回転ユニット内で解消することはもはや不可能であることが多いという問題は依然としてそのままである。いずれにせよ、多回転ユニットが固有粘度を上昇させる能力は、プロセス全体において以前の損傷を完全にまたは部分的に取り除くためにのみ利用されるものであり、加工されたプラスチックの初期特性を超えるような改善は得られない。
【0005】
計量ゾーン内でのプラスチックの滞留時間を短くするためには、スクリュをより高速に回転させる必要があるが、そうするとより大きな剪断力が作用し、単位時間あたりの入熱量が増加する。これにより、またも化学分解プロセスが促進され、さらに剪断作用によってプラスチックが損傷される。確かに理論的には、スクリュ回転数を低く抑え、かつ計量ゾーンを短く抑えることが考えられる。しかしその場合、プラスチックを全体的に溶融させるためには、押出セクションの外部加熱性能を大幅に増加させなければならず、その上プラスチックが周辺側で燃焼するおそれもある。上述のジレンマを解消するための公知の唯一の方法は、投入された固形物を押出機に導入する前にインラインでの予備乾燥をより強度に行うことであるが、時間およびコストの面で相応の欠点がある。
【0006】
したがって本発明の課題は、多回転システムを用いた重縮合物の固形プラスチック粒子の処理方法であって、加工プロセスにおける固有粘度の低下を遅らせるか、回避するか、またはさらには固有粘度を高める方法を提供することである。
【0007】
本発明による解決策は、請求項1の特徴を有する方法にある。本方法の実施に際しては、改良された請求項8に記載の多回転システムが提案される。
【0008】
驚くべきことに、本発明によれば、押出機における計量プロセスに関する当業者の従来の概念を超えることによって、記載された課題の大幅な改善が達成されることが判明した。当業者の従来の考え方によれば、例えば押出機内の圧力は、溶融挙動に影響を与える重要なパラメータである。またこれまでは、完全に溶融および均質化させたプラスチック溶融物のみを次の加工段階に移送することが常に目指されてきた。
【0009】
本発明では、ここで大きく異なるアプローチをとっている。本発明による方法の中核を成す特徴は、プラスチック溶融物が投入および計量ゾーンを通過する際に、明らかに視認可能な分の未溶融プラスチック粒子をなおも含むことである。固形分は、少なくとも5%、有利にさらには10%超である。上限は、固形分が40%~50%となるように選択することが望ましい。本発明によれば、脱気前にプラスチックを完全に溶融および均質化させなくてもよいため、例えば、外部加熱を低減し、スクリュの回転を遅くし、第1の押出セクションの設計を短くし、かつ/または、押出スクリュの内部冷却を行うことにより、計量ゾーンの入熱量を低減させることができる。
【0010】
もう1つの有利な特徴は、まだ固体状態にあるプラスチック粒子の溶融が、本質的に第2の押出セクション内で衝撃加熱によって行われ、これが特に、真空引き部が接続されているハウジング開口部の直前で行われることである。衝撃加熱は、まだ固体状態にある粒子を含むプラスチック溶融物をサテライト・スクリュの駆動軸に通すことで行われる。駆動軸は、ハウジングのボアにある歯部とかみ合っている。固形粒子が歯部に導かれることで局所的な高い摩擦および圧迫が生じ、これにより、残りの固形粒子が非常に迅速に可塑化されるだけでなく、すでに溶融している嵩高い部分が周囲で追加的に加熱される。歯部は多回転ユニットの全周を占めているわけではないため、プラスチック溶融物の全量が歯部に導かれるわけでなく、バイパスを介してこれを迂回する流れも形成される。しかし、局所的な衝撃加熱の影響は、歯部の近傍領域にも及ぶ。
【0011】
特に多回転ユニットの全長や、これにプロセス技術的に関連する部分である脱気ゾーンに応じて駆動ピニオンの長さを定めることによって、衝撃加熱の程度に影響を及ぼすことができる。したがって本発明によれば、それぞれサテライト・スクリュに伝達されるべきトルクがピニオン長の下限のみを形成するMRS押出機が好ましく使用されるが、そうでない場合には、上述の効果を達成しかつ高めるために、ピニオン長を強度の観点から必要な長さよりも大幅に長く選択することができる。長さの比が1:40~1:6であるのが特に適していることが判明しており、その際、ピニオン長はそれぞれ、駆動部の直後の脱気ゾーンの長さに関連付けて設定されている。
【0012】
衝撃加熱は、プラスチック溶融物が真空脱気ゾーンに入る直前に行われる。よって、大幅に加熱されて完全に溶融した、依然として水分を含むプラスチックが脱気ゾーンに入るまでの滞留時間は無視できるほど短く、水分がプラスチック溶融物に作用する時間が短縮されてごくわずかになる。
【0013】
最後に、本発明は、押出機内でのプラスチックの溶融および均質化が常に高圧下で行われなければならないという見解を覆すものである。実際に、本発明による方法では、第1の押出セクションと第2の押出セクションとの間の円錐状移行部の領域にしか高圧が存在しない。これに、空間的に近接して歯付き駆動領域が続き、これにまた真空流入ゾーンが近接している。つまり、なおも円錐状移行部にかかる比較的高い動圧は、押出スクリュに沿った短い軸線方向の経路の後にすでに完全に低下しており、この経路は、多回転ユニットの長さの半分を大幅に下回り、特に20%を下回る。衝撃加熱が行われるサテライト・スクリュの駆動歯部の領域では、すでにプラスチック溶融物の圧力はほぼ完全に低下しており、少なくとも、可塑化挙動にもはや影響を及ぼさない程度の残圧にまですでに低下している。この意味で、本発明による方法では、サテライト・スクリュの歯部の領域とそれに続く真空窓に入るまでの長手方向の領域とにおいて、プラスチック溶融物に最初に連行された固形粒子の「非加圧での可塑化」を生じさせる。
【0014】
要するに、第1の押出セクションでは、まだ必ずしもすべての体積分が、加工されるプラスチックのプラスチック溶融温度を上回るまで加熱されているわけではないため、擬似的に低温の(unterkuehlt)プラスチック溶融物が生成される。低温のプラスチック溶融物は、真空ゾーンに入る直前の段階になってから再加熱され、それにより、残りの粒子が溶融し、その際に貯蔵されていた残留水分が放出される。そして、残りの粒子から蒸発する水は、特にその加水分解作用を発揮し得る前に、その直後に真空ゾーンで吸い取られる。
【0015】
よって、以下の本質的な効果が得られる。すなわち、本発明による方法が実施されると、プラスチック溶融物の加水分解および加工時の剪断によるプラスチック溶融物の損傷が大幅に減少する。
【0016】
- 溶融時に第1の押出セクションで水が放出される場合には、そこでの温度は意図的に溶融温度の閾値に抑えられるため、水は低い温度レベルでしかその損傷作用を発揮することができない。そのため、加水分解は少なくとも遅くなる。
- 入熱量を低減するために、第1の押出セクションでのスクリュ回転数を低く抑えることができ、それにより、剪断による不利な影響も同様に低減される。
- プラスチック粒子に含まれる水分の一部は、第1の押出セクションでもなおもまったく放出されず、ビヒクルとしての残った固形物を介して次のセクションに輸送される。そこでは、放出と吸取りとが、ほぼ同時に行われる。
- 確かに、プラスチック溶融物が駆動歯部を通過する際にも強度に剪断される。しかしその直後に真空効果が始まり、それにより水が凝縮物として除去されること、またさらには温度が十分に高いことから、重縮合反応が始まることができ、これにより分子鎖が伸長して損傷が修復される。
【0017】
本発明による方法を説明されたように実施することができ、かつ有利な効果を得るためには、特に狙いどおりに監視して必要に応じて再調整しなければならない操作パラメータがある。これは、円錐状移行部の間隙幅またはそれに関連する動圧である。間隙が狭すぎると動圧が大きくなり、第1の押出セクションの押出スクリュの搬送性能が、第2の押出セクションに一定の体積流を移送するのに不十分なものとなる。この場合、第1の押出セクション内での滞留時間が大幅に増加するが、これはまさに避けるべきことである。
【0018】
一方で、間隙が広すぎると、第1の押出セクションでの流速が高まる。しかし、それでは次のセクションへと流れる固形分が多すぎて、次のセクションのサテライト・スクリュの駆動部に過度の負荷がかかり、閉塞やさらには歯部の破損を招きかねない。
【0019】
したがって、本発明によるプロセス制御の目的は、一方では、水分をその中に擬似的に封入された状態で次のセクションに輸送し、吸取り部に近い非常に遅い段階になってからこの水分を放出させるために、可能な限り多くの固形物を移送することである。しかし他方では、ピニオンが閉塞しないように、あるいは未溶融粒子が通過して多回転システムの吐出側で排出されることのないように、固形物含有量を十分に低く抑えることが望ましい。
【0020】
円錐状の間隙の適切な間隙幅は、円錐状移行部で見込まれるプラスチック溶融物の粘度に応じて設計上で予め設定されてもよいし、方法が実施される前に固定的に設定されてもよい。
【0021】
本方法の実施に好ましい請求項8の特徴を有する多回転システムにおいて、間隙幅は、本方法の実施中にハウジングに対して押出スクリュを軸線方向に移動させることによって調整することができる。
【0022】
この目的のために、円錐状移行部の上流にある圧力センサで測定された圧力に応じて、油圧シリンダなどのアクチュエータを制御して押出スクリュを移動させる能動制御ユニットを設けることができる。高圧の場合には、押出スクリュが流れ方向にわずかに前方へと押し出され、間隙が広がる。圧力が低下しすぎた場合には、逆の動きが強制的に行われる。
【0023】
実際には、多回転システムの円錐状移行部の圧力は大きく変動し、20bar~150barの値に達する。目標とする通常運転では、圧力は、好ましくは40bar~60barである。
【0024】
投入スクリュの直径が130mmであり、多回転ユニットのロータの直径が225mmである多回転システムの例では、間隙幅は、通常は例えば5~10mmであり、動的に調整される動作条件に対応できるように、両側に追加の調整ストロークが設けられている。
【0025】
簡便であるが効果的な措置の1つが、ハウジング上の少なくとも1つのばね要素、特に板ばねによって押出スクリュを支持することである。多回転システムでは、計量ゾーンの先端の圧力が円錐部に作用することから、押出スクリュは常に供給部に向かって突っ張った状態にあり、したがってばね要素には張力がかかる。つまり、それにより、押出スクリュは、通常の単軸押出機のように供給部に向かってではなく吐出部に向かって押し付けられる。また、ばね要素は、プラスチック溶融物を案内する部分の外側にしか配置できないため、吐出側には配置できないことも考慮に入れるべきである。むしろ、ばね要素は、押出スクリュを回転させるための駆動部に位置し、それをハウジングに擬似的に固定する必要があり、それによってばね要素は張力を受ける。ばね要素は、固定部と同時回転部との間に位置している。固定部はねじ山を介して伝動装置に接続されており、このねじ山によってスクリュ構造全体を軸線方向に移動させることができる。第1の押出セクションと第2の押出セクションとの間で円錐状移行部での動圧が高くなりすぎた場合には、押出スクリュが軸線方向に前方に移動し、堰間隙が広がる。逆に、動圧が低下した場合には、ばね力により間隙を狭くする。これにより、ばね力と、動圧により円錐状移行部に作用する推力とのバランスがとれる。プラスチック溶融物が多量でかつ粘性を示すことから、追加の減衰要素を必要とせずに振動を防ぐのに十分な抵抗性を示すばね・ダンパーシステムが形成される。
【0026】
以下に、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】多回転システムの断面の一部を示す図。
図2】押出スクリュの側面図、およびその長さにわたる圧力・温度の推移を示す図。
【0028】
図1に、自体公知の多回転システム100の一部を示す。ハウジング50のハウジング凹部51に、異なるゾーンに分割された押出スクリュが配置されている。先に投入されて少なくとも部分的に溶融したプラスチック粒子を均質化する役割を果たす計量ゾーン12と、完全に処理されたプラスチック溶融物が搬出される吐出ゾーン30との間に、多回転ユニット20が配置されている。この多回転ユニット20は、以下の主要な特徴を有する:
- 計量ゾーン12から移行する箇所に円錐状移行部21が形成されており、ハウジング50に向かって、円錐状の間隙52が形成されている。
- 続いて駆動ゾーンが存在し、この駆動ゾーンでは、サテライト・スクリュ26のピニオン23が、ハウジングに接続された回転リング24において歯部24とともに作動する。ピニオン23の間には通路25が存在する。
- 押出スクリュ全体が回転するのに合わせてサテライト・スクリュ26自体も回転し、それを支持しているロータも回転する。サテライト・スクリュ26は、多回転ユニット20の長さの主要部分にわたって延在し、かつハウジングウィンドウ54に沿って通じており、このハウジングウィンドウ54では真空が適用される。
- サテライト・スクリュ26は、その前方の先端が軸受支持体27に支持されており、ここでも、多回転ユニット20の拡大した直径から吐出ゾーン30のより小さい直径へと戻るための円錐部が設けられている。したがって、そこにはもう1つの円錐状の間隙53が形成されている。
【0029】
多回転システム100の構造設計は、この程度までは知られているが、本発明によれば、ハウジング50に対して押出スクリュ全体を軸線方向に移動させることによって円錐状の間隙52の幅を調整することができ、それにより、この間隙幅を狙いどおりに圧力制御に利用し、さらにはなおも未溶融であり円錐状移行部21を通って流される固形分の割合に影響を及ぼすという点で異なる。
【0030】
本発明による方法を理解するために、図2に、その異なるセクション1、2、3を備えた押出スクリュ101の軸線方向の延びに対する圧力pおよび温度Tの定性的な推移を示す。
【0031】
投入および計量押出セクション1では、まず固形物が投入ゾーン11に投入される。圧縮ゾーン13では圧力が生成される。次の計量ゾーン12では、投入されたプラスチックを少なくとも部分的に溶融および均質化させる。しかし本発明によれば、固形物の一部のみを溶融および均質化させ、もう一方の5%~50%、特に10%~40%の部分はプラスチック溶融物中に固形物として残る。
【0032】
図2の温度の推移には、平均質量温度、つまり、溶融プラスチックのうち、押出スクリュに直接接触している部分と、ハウジング内壁に接触している部分との、それぞれの温度のほぼ平均が示されている。しかし本発明によれば、相応して低いコア温度を有するまだ固体状態にある質量部分がそこに含まれているため、結果的に、投入および計量押出セクション1における加工されたプラスチックの平均質量温度は、溶融温度Tsを下回る。
【0033】
本方法は、特にポリエステルの処理に有利である。この場合、結晶化度に応じて、溶融温度は235℃~260℃である。
【0034】
このような低温のプラスチック溶融物を得るために、押出スクリュ101は、少なくとも投入および計量押出セクション1で冷却されている。このために、特に流動温度が90℃~130℃の油が熱媒として使用される。同時に、図2に示されていないハウジング壁が、例えば280℃に加熱される。同一のセクション1で加熱と冷却とを同時に行うことは、矛盾ではない。この内部冷却は、押出スクリュ101の回転により発生する部分的な熱を逃がす役割を果たしており、この熱は、この箇所では通常、プロセス制御に必要な値よりも高くなっている。なぜならば、スクリュ回転数は、多軸押出セクション2で必要とされる回転数に適合されていなければならず、また、押出セクション1のために低下させることができないためである。一方で、ハウジングでの加熱は、搬送されるプラスチック溶融物の固形物負荷割合にかかわらず、溶融プラスチックの潤滑膜を形成する役割を果たしている。
【0035】
この温度は、多軸押出セクション2へと移行する際の押出スクリュ101の回転による入熱によってわずかに上昇するが、搬送されるプラスチック総量の平均温度は、有利に依然として溶融温度Tsをわずかに下回る。駆動ゾーン、つまり駆動ピニオン23の領域を通過する段階でようやく温度が急激に上昇し、実際に明らかにプラスチック溶融温度Tsを上回る。したがって、この段階でようやくプラスチックは完全に溶融し、真空で水分および異物を吸い取ることができかつ重縮合反応を促進して固有粘度を高めることができる温度レベルに達する。
【0036】
多軸押出セクション2の下流にある吐出押出セクション3のさらなる温度推移は、加工品質にとってもはや重要ではないが、常に溶融温度Tsを上回る。
【0037】
図2にはさらに、押出スクリュ101の長さにわたる、押出機内のプラスチック溶融物の圧力の推移を示す。押出スクリュ101の例を示すが、この場合、投入ゾーン11には溝がないため、圧力はそこから円錐状移行部21まで徐々に増加する。
【0038】
円錐状移行部21の下流には、もはや押出スクリュ101上の搬送要素が存在していないため、すぐに圧力低下が生じる。その圧力は、サテライト・スクリュ26でほぼゼロの真空レベルにまで低下する。流れ方向ですぐ上流にあるピニオン23を備えた駆動ゾーンでは、すでに大きな圧力が存在していないため、そこで行われ、かつ残りの固形分の可塑化を生じさせるプラスチック材料の衝撃加熱は、擬似的に非加圧で行われる。
図1
図2
【国際調査報告】