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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】粒状拘束媒体を用いた積層造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20220113BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220113BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220113BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y30/00
B28B1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530245
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 FR2019052865
(87)【国際公開番号】W WO2020109745
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】1872173
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596096180
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】513023066
【氏名又は名称】アンスティトゥー ナショナル デ サイエンシーズ アプリーク ドゥ リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】518184432
【氏名又は名称】エコール・シューペリウール・ドゥ・シミ・フィジーク・エレクトロニーク・ドゥ・リヨン
【氏名又は名称原語表記】ECOLE SUPERIEURE DE CHIMIE PHYSIQUE ELECTRONIQUE DE LYON
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】マーケット クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】コーティアル エドウィン-ジョフリー
(72)【発明者】
【氏名】デルバレ アリゼ
(72)【発明者】
【氏名】コリィ アーサー
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
【Fターム(参考)】
4F213AA19
4F213AA21
4F213WA25
4F213WB01
4F213WK01
4F213WL02
4F213WL22
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
3次元物体を形成するための材料の堆積を実施する積層造形プロセスおよび装置である。接触領域(12)で相互作用する個別の固体要素の形態をとる材料(9)のみからなる粒状相(6)および気体間隙相(13)、を含む応力を受けた粒状媒体(8)内の懸濁液の材料を堆積させる少なくとも1つのステップは実行される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体を形成するための材料の堆積を含む積層造形プロセスであって、
-接触領域(12)で相互作用する個別の固体要素の形態をとる材料(9)のみからなる粒状相(6)、および
-気体間隙相(13)を含む、応力を受けた粒状媒体(8)内の懸濁液の材料を堆積する少なくとも1つのステップが実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記粒状相の安息角が40°未満であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記粒状相の圧縮率が200m/N未満であることを特徴とする請求項1および2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記粒状相のCarr指数が25未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
応力を受けた粒状媒体(8)が置かれる周囲条件は、個別要素(9)の間に存在することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粒状相(6)は、単相材料であり、前記単相材料は、架橋され、非結晶の、又は結晶化されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記粒状相(6)は粉末状ポリマーであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記粒状相(6)は粉末状脱水シリカゲルであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記粒状相(6)は粉末状ポリ酢酸ビニルであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記粒状相(6)は粉末状ポリメチルメタクリレートであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
粒状相(6)が重炭酸ナトリウムからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記粒状相(6)は砂からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記粒状相(6)はセノスフェアからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記セノスフェアの平均直径が100から200μmであることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記セノスフェアが生成される材料の密度が0.6から0.8g/cmであることを特徴とする請求項13および14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
前記セノスフェアの嵩密度が0.3から0.5g/cmであることを特徴とする請求項13から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記堆積された材料は、粘度が10-1mPa.sと10mPa.sとの間に含まれ、好ましくは10mPa.sと10mPa.sとの間に含まれることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記応力を受けた粒状媒体の圧力を調整するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記応力を受けた粒状媒体の温度を制御するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記気体間隙相は不活性ガスを含むことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記気体間隙相は空気を含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記粒状相(6)は、粉砕シリコーンの粒状物からなることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかに記載のプロセスを実施するための積層造形装置であって、
応力を受けた粒状媒体(8)を含む印刷用トレイを備え、前記粒状媒体は、接触領域(12)で相互作用する個別の固体要素の形態をとる材料(9)のみからなる粒状相(6)および気体間隙相(13)を含むことを特徴とする、積層造形装置。
【請求項24】
前記応力を受けた粒状媒体(8)の圧力を調整するための装置(11)を備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形(additive manufacturing)の分野に関し、部品が製造される材料をこの部品製造中に処理するためのプロセスおよび装置に関する。
【0002】
積層造形法は「3Dプリント」とも呼ばれ、付加的に材料を積層して3次元部品を製造することを可能にする技術である。なお、本明細書において、「印刷」という用語は、積層造形プロセスを用いた部品の製造を示すものとして使用され、「印刷された材料」という用語は、このプロセス中に形成される材料であって、作製された部品の全部又は一部を構成する材料を示すものとする。
【背景技術】
【0003】
現在、ほとんどの積層造形プロセスは、3つの大きなファミリー、すなわち、材料の堆積を伴うプロセス、選択的凝固(consolidation)を含むプロセス、及び結合剤の粉末への噴射を伴うプロセス、に分類される。
【0004】
材料の堆積を伴うプロセスでは、印刷された材料は、ワイヤ、粒状物(granules)または液体の形態で供給され、層ごとに噴射または堆積される供給材料である。例えば、FDM、LDM、またはMJPプロセスが争点となる(FDM、LDM、およびMJPは、それぞれ、溶融堆積モデリング(Fused Deposition Modeling)、液体堆積モデリング(Liquid Deposition Modeling)、およびマルチジェット印刷(MultiJet Printing)の頭字語である)。長いカンチレバー(または巨大なオーバーハング)を持つ複雑な部品を製造するには、これらのプロセスでは、幅木(plinths)と支持部(supports)を使用する必要があり、これらの幅木と支持部は、部品に加えて印刷され、部品を定位置に保持したり、カンチレバー部品の倒壊を防止したりする。このようなプロセスでは、不適切な流動特性(例えば、低粘度、不十分に高い閾値応力、または顕著な揺変性挙動を呈する材料)を有する印刷材料の使用は不可能であるか、あるいは、非常に単純な形状の部品に限定されている。
【0005】
選択的凝固を伴うプロセスでは、印刷材料は、液体形態または粉末形態でタンク内に置かれ、レーザーのようなエネルギー伝達手段により、この材料を層毎に順次走査する。印刷材料自体は、必要に応じて、エネルギー伝達手段の通過前に連続した層内のタンクに分配される。タンク内に収容された印刷材料は、エネルギー供給手段によって走査されたもっぱら正確な位置で固化する。供給材料が存在しない、すなわち、すべての印刷材料がタンクに収納される。プロセスの終了時、初期にタンク内に収納された材料のうち選択的セグメントが、完成品を形成する。選択的凝固を伴うプロセスの例としては、光造形法(stereolithography)、選択的レーザー溶融(SLM)、選択的レーザー焼結(SLS)、さらには電子ビーム溶融(EBM)などである。これらのプロセスは、固体粉末の形態の金属、セラミックまたはポリマーなどの材料、あるいはエネルギーの伝達または光化学活性化(特にUV)を介して設定可能な液体の形態の材料の様々なファミリーに適用可能である。非常に流動性の高い印刷材料の適用は、光源により設定可能な場合にのみ可能であり、軟質材料の適用はそれほど容易ではない。
【0006】
結合剤の粉体への噴射を伴うプロセス(例えば結合剤ジェッティング(jetting))において、結合剤を、タンク内に順次積層配置された粉体に噴射する。結合剤が噴射された場所では、結合剤は粉末と混合して反応し、それにより、結合剤と粉末とからなる固体材料が生成される。印刷材料は、結合剤の噴射後に作成されるため、結合剤と粉末の複合アセンブリで構成される。これらのプロセスでは、堆積時に溶融されている、またはまだ重合されていない単一の印刷材料の均一な部品を製造することができない。単一の、非常に流動性の高い、または軟質印刷材料から部品を製造することは不可能である。
【0007】
特許文献1は、上記した従来のカテゴリーの外の積層造形プロセスを記載している。このプロセスでは、印刷材料はシリコーン系インクである。この印刷材料は、ポリマーマイクロゲル粒子から形成されたゲル中の液状で堆積される。マイクロゲル粒子はそれぞれ、架橋ポリマーネットワークと有機溶媒とを含む。より正確には、マイクロゲル粒子は、鉱物油のような有機溶媒で膨潤される。ゲル中の有機溶媒の質量割合は、90%~99.9%、80~95%、85%超過が好ましい。この文献によれば、シリコーンと有機溶媒との界面張力は、シリコーン系インクがゲルを懸濁相として印刷できる程度であり、これによりシリコーン部品を印刷することができる。記載した例は、平均ミクロゲル粒子径が2μm~6μm、または0.1μm~100μmであることを示す。記載された実施形態によれば、ゲルは、機械的、電気的、放射的、光子的、または他の作用の下で、好ましくは展性または流体となる粒子からなる場合がある。特定の実施形態において、ゲルは、溶媒を除去して、輸送および販売用に容易に袋詰めされ得る粉末を形成するように処理され得るので、基本的に液体である油性製品に必要とされる高価な容器が必要ではない。この場合、使用者は、印刷前に、粉末を適当量の有機溶媒と混合することでゲルを再構成しなければならない。このプロセスにより、従来のプロセスでは不可能ではないが困難であった、しなやかなシリコーン部品を印刷することが可能になる。しかしながら、ゲルの調製(formulation)は複雑であり、貯蔵、安全性および取り扱いに関して問題を提起する。また、シリコーン堆積ノズルは、不完全にしか閉じない溝をゲル内に残すので、印刷速度が遅くなり、印刷部分に欠陥が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開番号第2018/057682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の積層造形プロセスを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、3次元物体を形成するための材料の堆積を含む積層造形プロセスに関し、このプロセスでは、接触領域で相互作用する個別の固体要素の形態をとる材料のみからなる粒子状の相、および気体間隙相、を含む、応力を受けた粒状媒体内の懸濁液の材料を堆積する少なくとも1つのステップが実行される。
【0011】
このような積層造形プロセスは、流動特性を有する材料、特に流体材料、軟質材料、および粘弾性材料に適している。このように、有機組織のような複雑な形状の3D物体は、応力を受けた粒状媒体によって、製造された部品の表面全体に応力が加えられるために、要求される品質でかつ高速の印刷速度で印刷することができる。応力を受けた粒状媒体が作られる個別要素は、その容器に適合し、個別要素表面に対する個別要素表面のドライフローによってその中に印刷される物体の形状に適合する。
【0012】
粒状媒体は、作られる要素が互いに応力を受けるので、「応力を受けた(stressed)」といわれ、故に、それ自体が印刷材料に応力を与えることが可能である。好ましい例では、粒状媒体は、粒状媒体の各要素に作用する重力によって応力を受ける。粒状媒体を含むトレイは、粒状媒体を、その壁の間に維持することによって、重力によるこうした応力を補うことができる。
【0013】
本発明の別の主題は、上述のようなプロセスを実施するための積層造形装置である。この装置は、接触領域において相互作用する個別の固体要素の形態をとる材料のみからなる粒状相と、気体間隙相とを含む、応力を受けた粒状媒体を含む印刷用トレイを備える。
【0014】
装置の一実施形態によれば、後者は、応力を受けた粒状媒体の圧力を調整する装置を含む。
【0015】
積層造形プロセスは、単独で、または組み合わせて、以下の追加の特徴を含むことができる。
-粒状相の安息角が40°未満である。
-粒状相の圧縮率が200m/N未満である。
-粒状フェーズのCarr指標が25未満である。
-応力を受けた粒状媒体が置かれる周囲条件が個別要素間に存在する。
-粒状相は、架橋、非晶質、又は結晶化している単相材料である。
-粒状相は粉末状ポリマーである。
-粒状相は粉末状脱水シリカゲルである。
-粒状相は粉末状ポリ酢酸ビニルである。
-粒状相は粉末状ポリメチルメタクリレートである。
-粒状相は重炭酸ナトリウムで構成されている。
-粒状相は砂で構成されている。
-粒状相はセノスフェアで構成されている。
-セノスフェアの平均直径は100から200μmである。
-セノスフェアが作られる材料の密度は0.6から0.8g/cmである。
-セノスフェアの嵩密度は0.3から0.5g/cmである。
-堆積材料の粘度は、10-1mPa.sと10mPa.sとの間であり、好ましくは10mPa.sと10mPa.sとの間である。
-プロセスは、応力を受けた粒状媒体の圧力を調整するステップをさらに含む。
-プロセスは、応力を受けた粒状媒体の温度を制御するステップをさらに含む。
-気体間隙相は不活性ガスを含む。
-気体間隙相は空気を含む。
-堆積材料は、架橋後にシリコーンエラストマを形成する架橋可能なシリコーン組成物である。
-粒状相は粉砕したシリコーンの粒状物から成る。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して、以下に示されるその完全に非限定的な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による装置の一般的な概略図である。
図2図1による装置の応力媒体の拡大図である。
図3】応力を受けた粒状媒体における、図1の装置のノズルの作用を示す。
図4】応力を受けた粒状媒体における、図1の装置のノズルの作用を示す。
図5】応力を受けた粒状媒体における図1の装置のノズルの作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明による積層造形装置を概略的に示す。この装置は、本例では、プレート2と、材料を堆積するヘッドとを備えた3Dプリンタ1である。材料堆積ヘッドはここでは印刷ノズル3である。
【0019】
印刷ノズル3は、ノズルの端部が有用な印刷容積のあらゆる点を占めることができるように、(例えば、直交座標プリンタでの3つの直交平行移動を介して)プレート2に対して移動可能である。これら3つの平行移動を可能にする機械的装置は、3Dプリンタの分野で周知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0020】
有効な印刷容積は、プレート2に固定された印刷用トレイ4によって画定される。このトレイ4は、本例では、平行六面体であり、上部開口5を備える容器を形成している。
【0021】
トレイ4は、粒状相(granular phase)6及び気体間隙相(gaseous interstitial phase)13からなる応力を受けた粒状媒体8を含む(応力を受けた粒状媒体の拡大図である図2を参照)。図1において、トレイ1は、内部に収容されている応力を受けた粒状媒体8が見えるように透明材料で作られている。
【0022】
応力を受けた媒体8の粒状相6は、独立した単分散の物理要素のセットであり、そのアスペクト比は異なっていてもよい。粒状相は、例えば、粉末固体であってもよいが、ただし、この粉末固体は単分散であり、すなわち、それを構成する全ての粒子は、同じサイズまたは非常に類似したサイズを有する場合、および、均一であること、つまり、どこでも同じ特性、または非常に似た特性を持っている場合に限る。
【0023】
粒状相6は、同じ大きさの固体粒子の連続したネットワークである。換言すれば、粒子は互いに触れ合い、応力を受けた粒状媒体内の粒子間の相互作用は集合機構によって支配される。流体でも固体でもない、応力を受けた粒状媒体は、変形可能であり、分散可能であり、流動可能であるので、固体のように振舞うことはなく、また、例えば圧縮されると膨張するので、液体のように振舞うことはない。本発明による応力を受けた粒状媒体は、従来技術の架橋ポリマーの粒子で充填されたゲルとは異なり、ゲルでは、粒子はそれらを溶媒和させる有機溶媒中にある。従って、これらの従来技術のゲルでは、粒子は必ずしも互いに触れ合っておらず、それらの機械的特性は溶媒和に関連したより複雑な相互作用から生じる。
【0024】
相13は好ましくは空気であり、3Dプリンタ1が置かれる周囲空気も粒状相6の透き間(interstices)に存在する。変形例として、間隙相13は、不活性ガス又は不活性ガス混合物を含むことができる(トレイ4は、所望のガスで充填した密封された筐体内に配置される)。間隙相13はまた、トレイ4が真空下に置かれた後に存在する少量の空気を含んでもよい。
【0025】
3Dプリンタ1の機構およびその軸方向制御のモードは、材料を堆積することによって印刷する3Dプリンタの機構と同一である。したがって、印刷する部品のデジタルモデルを最初に作成し、次に連続する水平面のセットにスライスする。これらのスライスの各々について、ノズル3は、規定された位置に印刷材料を堆積するように命令される。このようにして、完成部品が形成されるまで、印刷材料が層毎に堆積される。
【0026】
印刷材料は、供給チャネル7を介してノズル3に供給され、それは、図1に概略的に示され、選択された印刷材料に適した任意のタイプのものであり得る。
【0027】
供給チャネル7は、ワイヤまたは材料の粒状物の形態をとることができ、この場合、供給材料が熱成形可能であり、それぞれワイヤのコイルまたは粒状の槽の形態でパッケージされている。ワイヤのコイルの場合は、後者を巻き戻して、材料のワイヤをノズル3に送る。粒状物のトレイの場合、後者を、押し出しスクリューで駆動し、ノズル3に送る。いずれの場合も、ノズル3は、ワイヤまたは材料の粒状物をその融点以上に加熱し、この溶融形態でそれを堆積させることができる。
【0028】
供給チャネル7は、例えば、印刷材料が十分に流動性であれば、印刷材料が流れるチューブであってもよい。この場合、印刷材料は、ノズル3または装置の他の場所に取り付けられた、ポンプまたは、シリンジのようなピストンベースの装置(どちらも示されていない)によって流れさせることができる。
【0029】
どのような種類の供給チャネル7であっても、ノズル3は、その端部を介して、堆積するのに十分に流動性のある状態で印刷材料を送出することができる。
【0030】
図2は、応力を受けた粒状媒体8のセグメントの拡大図である。粒状相6は、個別固体要素9の塊である。図2に示すように、自身の重量の影響下で互いに支え合うこれらの個別要素9の自発的な配置により、この塊は、粉末状で非凝集性であるため、トレイ4の形状に適合する。個別要素9は、各個別要素9がその周囲の個別要素9に対して有する接触領域12と支え合うことによって相互作用する。応力を受けた粒状媒体8は、これらの個別要素9と、これらの個別要素9の間の気体間隙相13と、を含む。応力を受けた粒状媒体8の機械的挙動は、個別要素9の間の接触部12の修正のみに起因し、ガス状の間隙相13は影響がなく、後者の相は、個別要素9間の接触部12の領域を修正可能にする限り、応力を受けた粒状媒体8の機械的挙動に関与する。
【0031】
個別要素9は、好ましくは(わずかな弾性変形を除き)変形不能であり、気体間隙相13を一体に形成する空気(または3Dプリンタ1を取り囲む他の流体)で充填された間隙が、互いに支え合う個別要素9の間に生成される。具体的には、応力を受けた粒状媒体の周囲条件も、個別要素間に存在する。したがって、3Dプリンタ1が地球の大気中にある場合、この空気は隙間に存在することになる。同様に、3Dプリンタ1が例えば真空チャンバ内にある場合、この真空は間隙内にも存在する。ここでの真空とは、高い負圧が、粒状相6間の間隙、すなわち、気体相内に生じ、空気をほとんど含まない状況をいう。
【0032】
図3を参照すると、個別要素9が応力を受けた粒状媒体8内で互いに相対的に移動できることにより、ノズル3を、その周りの個別要素9の変位により、媒体8内に導入することができる。図3は、ノズル3の長手軸を切断した概略断面図であり、応力を受けた粒状媒体8内に垂直に導入された後のノズル3を示す。
【0033】
図4を参照すると、同様に個別要素9が互いに相対的に移動できることにより、ノズル3は、応力を受けた粒状媒体8内を移動させ、この移動中に印刷材料を堆積させることができる。ノズルの移動中に、後者は、その経路上に存在する個別要素9をずらし、一方、その裏で、個別要素9は再集合して、残った空隙(void)を充填する。従って、粒状相6はノズルの周りでその均一性を保持し、後流(wake)又は他の外乱(disturbance)は形成されない。
【0034】
応力を受けた粒状媒体8は、堆積された印刷材料の周囲に、印刷材料がノズル3によって与えられた輪郭を維持することを保証する応力を生成する。こうした形態の拘束は、こうした応力がない場合に流動する非常に流動性の高い印刷材料の場合に特に有利である。印刷材料はこの応力を受けた媒体に保持されるため、完成部品の外面完成紙料(furnish)は粒状相6の粒径に依存し得る。
【0035】
粒状相の粒径は、好ましくは1μmから1000μm、有利には25μmから250μm、より有利には75μmから50μmである(与えられた値は分布の「D50」である)。こうした好ましい粒径は、印刷の実施中に粒状相を容易に使用することを可能にするが、粒径は、印刷品質に関して粒状相の最も重要な特性ではない。
【0036】
応力を受けた粒状媒体8は、乾燥することによってその機能を果たし、従って、新たに堆積された材料と応力を受けた媒体との間で反応するリスクなしに、不安定な流体材料又は架橋前の任意のポリマーのようなあらゆる種類プの基材を含むことができる。これは、健康分野において特に有利である。
【0037】
応力を受けた粒状媒体8により、熱的、化学的または光化学的処理または他の任意の操作によって設定されるかどうかにかかわらず、それが設定されるために必要とされる限り、確実に印刷材料が所定の位置に保持される。露光により設定される場合、トレイ4は好ましくは、透明であり、粉末状の固体は光源を吸収しないように少なくとも部分的に半透明であることが好ましい。
【0038】
図5は、製造プロセスにおける部品10のプロファイルを示す、応力を受けた粒状媒体8の垂直断面図である。部品10は、部品が長いカンチレバー及び断面における急激な変化を有しているにもかかわらず、最高の品質で、応力を受けた粒状媒体8により、容易に印刷可能である部品の簡単な例である。このような部品は、ゴム相(ガラス転移温度以上の温度)または液相(融点以上の温度、例えば半結晶性の熱可塑性樹脂をベースとしたポリマーが使用されている)のポリマーまたは架橋性シリコーン組成物のような流体印刷材料で印刷することができる。応力を受けた粒状媒体は、部品のカンチレバー部分及び断面における急激な変化の支持部を提供するだけでなく、印刷材料の各層にバルク応力の形態、すなわち、堆積材料の輪郭全体に応力を提供する。
【0039】
応力を受けた媒体は、印刷材料が高温で印刷された場合でも、印刷材料を設定するための安定した媒体を提供する。
【0040】
部品5は、一旦完成すると、応力を受けた粒状媒体8から抽出され、印刷される部品の形状に幅木、支持部または他の外部の付加物を必要としないので、直接使用可能である。部品5が作られる材料は、供給チャネル7を介してノズル3に供給された印刷材料のみである。応力を受けた粒状媒体8内には印刷材料が残っていないので、すぐに再利用して新しい部品を印刷することができる。
【0041】
粒状相は、好ましくは、水和されていない(乳剤なし)、架橋された、または非晶質または結晶化された材料であり、好ましくは、粉砕された固体材料からなる。脱水シリカゲル(この名前はついているが、ゲルではなく固体である)、ポリ酢酸ビニル、またはポリメチルメタクリレートは、間隙相として空気に関連した粒状相により、優れた結果を与える。これは、これらの材料の一つから作られた応力を受けた粒状媒体で、印刷材料として、10-1mPa.sから10mPa.sの範囲の広い粘度を有する材料により複雑な部品を印刷することが可能であるからである。比較として、粘度が10-1mPa.s~10Pa.sに近い材料は、従来の材料堆積プロセス(このようなプロセスは上述した)で印刷することは全く不可能であり、水和ポリマーマイクロゲルの粒子からなるゲル中で印刷することは困難である、すなわち、印刷は可能であるが、低品質レベル(寸法および形状関連の欠陥が存在する)の部品が生成される。
【0042】
本明細書中で述べた全ての粘度は、25°Cでの動的ニュートン粘度、すなわち、測定された粘度が剪断速度と無関係なほどに十分に低い剪断速度でブルックフィールド粘度計を用いてそれ自体公知の方法で測定される動的粘度に対応する。
【0043】
例えば、指示された粘度範囲、すなわち、10mPa.sから10mPa.sの一成分または二成分材料の形態をとる架橋性シリコーン組成物を印刷材料として用いることができ、複雑な部品であっても十分な品質が得られる。
【0044】
また、降伏応力の低い材料を印刷材料として用いてことができる。そのような材料は、それ自体の重量下または堆積層の圧縮下でその形状を維持するのに十分な降伏応力を有していないが、本発明による3Dプリンタにより印刷可能であるという利点がある。もちろん、自重下で形状を維持するのに十分な降伏応力を有する材料を印刷材料として用いてもよい。
【0045】
1つの変形例によれば、3Dプリンタ1は、応力を受けた粒状媒体8の圧力を調整するための装置を備える。これらの手段は、図1の矢印11で示されている。このように、応力を受けた粒状媒体8では、応力が調整可能である。具体的には、粒状媒体の個別要素が隣接する個別要素に及ぼす力は、印刷の品質を保証するために、加圧応力媒体の圧力を調整するために、この装置を介して制御することができる。例えば、空気圧(3Dプリンタ1の筐体の大気圧の上昇)によって、または機械的手段または油圧的手段(トレイ4の壁に力を加えることによる粒状媒体の内圧の増加)によって、加圧を達成することができる。本発明によるプロセスは、この変形例によれば、応力を受けた粒状媒体の圧力を調整するステップを含む。ここで、応力を受けた粒状媒体の圧力は、粒状媒体が形成された要素が互いに作用する圧力を示す。この変形例は、重力のない場所での使用に特に適している。
【0046】
熱可塑性プラスチックの印刷に特に適した別の変形例によれば、応力を加えた粒状媒体8は温度制御される。したがって、応力を受けた粒状媒体8を加熱または冷却して、特定の材料の堆積に適した温度を得ることができる。本発明によるプロセスは、この変形例によれば、応力を受けた粒状媒体の温度を制御するステップを含む。
【0047】
本発明の範囲から逸脱することなく、代替実施形態を想定することができる。例えば、応力を受けた粒状媒体8は、マイクロビーズを含むトレイからなっていてもよい。個別要素9については、個別要素9が互いに相対的に移動可能である限り、他の形態を想定することができる。
【0048】
さらに、応力を受けた粒状媒体8は、層毎の印刷に代わる印刷モード、例えば、3次元で直接印刷するモード、すなわち、3次元空間でノズルを同時に移動させるモードなど、を可能にする。
【0049】
また、本発明者らは、印刷を改善する可能性のある粒状相の特性、特に印刷中に低粘度を有する材料の特性を特徴づけた。理論的及び実際的研究により印刷の品質は固体粒状相の粒径にほとんど依存しないことが、直観に反して明らかになった。したがって、大きな粒径の1つの粒状相では、高品質の印刷が得られるが、大きな粒径の別の粒状相では、良くない結果が得られることがある。同様に、小さい粒径の粒状相では高品質の印刷が得られるが、小さい粒径の別の粒状相では良くない結果が得られることがある。
【0050】
ここでいう印刷品質とは、初期デジタルモデルの形状及び寸法を有する3次元部品の製造に関するものである。本発明者らは、印刷品質は、印刷ノズル3の粒状媒体8内への移動によって粒状相6が変位できること、印刷ノズル3の通過後に粒状媒体8に掘られた溝を粒状相6が素早く閉鎖できること、および、粒状相6が、固化する前に、印刷された形状を支持して応力を加えることができることに依存することを明らかにした。
【0051】
以下は、印刷品質に関して、固体粒状相の最も重要な3つの特性である。
-安息角(angle of repose);
-圧縮率;
-鋳造性。
【0052】
安息角は「静止角(angle of rest)」または「臨界安息角(critical angle of repose)」とも呼ばれ、重力の影響下での機械的挙動に関連する粒状相の特性である。安息角は、本例では、規格ISO4324に従って測定する。本実施例では、粒状相6の安息角は40°未満、好ましくは35°未満、さらには30°未満である。
【0053】
粒状相6の圧縮率は、力の作用によりどの程度圧縮されるかを表す。圧縮率はm/Nで表される。本実施例では、粒状相6の圧縮率は200m/N未満、好ましくは50m/N未満である。
【0054】
粒状相6の鋳造性は、その個別要素9間の相対的な動きをいかに容易に許容するか、特に容器の形状にいかに容易に適合するかに関する。鋳造性は、本実施例では、粒状相6のCarr指数によって定量化される。本実施例では、粒状相6のCarr指数は、25未満、好ましくは6未満である。
【0055】
これらの安息角、圧縮率、および鋳造性の特性は、互いに独立して、印刷品質に影響を与え得る。さらに、これらの特性を以下のように組み合わせることにより、高品質な印刷に資する粒状相が得られる。
-40°未満、好ましくは35°未満、さらには30°未満の安息角と、200m/N未満、好ましくは50m/N未満の圧縮率との組み合わせ、
-40°未満、好ましくは35°未満、更には30°未満の安息角と、25未満、好ましくは6未満のCarr指数との組み合わせ、
-200m/N未満、好ましくは50m/N未満の圧縮率と、25未満、好ましくは6未満のCarr指数との組み合わせ、
-40°未満、好ましくは35°未満、または30°未満の安息角と、200m/N未満、好ましくは50m/N未満の圧縮率と、25未満、好ましくは6未満のCarr指数との組み合わせ。
【0056】
一例として、印刷用に粒状相として使用した場合に良好な結果が得られる材料の種類を次の表に示す。
【0057】
特に有利な結果は、中空ビーズであるセノスフェア(cenospheres)からなる粒状相を用いて、中空ビーズの表面の形状および弾性特性の両方により得られる。本例では、セノスフェアは、平均直径が100から200μmであり、その材料の密度が0.6から0.8g/cmであり、その嵩密度(ビーズの中空性を考慮すると)が0.3g/cmから0.5g/cmであり、好ましくは0.34から0.44g/cmである中空ポリマービーズである。
【0058】
これらの材料の中で、粉末PMMA,重炭酸ナトリウム(重曹)、シリカ、及びセノスフェアを用いて最良の結果が得られた。砂、洗浄粉末、および微細塩では、悪くなるが依然として有利な結果が得られる。砂糖と細挽きコーヒーでは、さらに悪くはなるが、高精度を必要としない部品では満足できる結果が得られる。さらに、35°から40°の安息角を有する粉砕シリコーン粒状物からなるか粒状相でも良好な結果が得られる。
【0059】
なお、本明細書において、粒状相の粒子径の値は、「D50」値(D50は、粒度測定に使用される粒度分布の限定子である)である、すなわち、粒子の中央(median)のサイズを示す値である。さらに、別段の規定がない限り、表示された特性は標準温度、圧力および湿度条件下で測定される。
【0060】
さらに、粒状相は異なる材料の顆粒からなっていてもよい。それは、例えば、主材料からなり、極微量の他の材料を含む粒状相であってもよいし、あるいは、例えば、粒状相としての役割において本発明の定義内に入る特性を有する異なる2つの材料の組み合わせであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】