(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】2,3-ジヒドロ-イソインドール-1-オン化合物を用いた組合せ療法及び様々な変異を有する患者を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20220113BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220113BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220113BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220113BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/496
A61K31/495
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530883
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 US2019063993
(87)【国際公開番号】W WO2020113216
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520145562
【氏名又は名称】アプトース バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ライス, ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086BC50
4C086CB05
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示は、血液癌(例えば、急性骨髄性白血病(AML))の治療のために、2,3-ジヒドロ-イソインドール-1-オン化合物あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグを単独でまたは抗がん剤と組み合わせて投与するための方法を含む。本開示はさらに、対象における変異型IDH1活性を低減または阻害することに関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の
【化11】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つのさらなる抗がん剤とを含む、医薬的組合せ。
【請求項2】
前記抗がん剤がBCL-2(B細胞リンパ腫2)タンパク質阻害剤である、請求項1に記載の医薬的組合せ。
【請求項3】
前記BCL-2タンパク質阻害剤が、ベネトクラクス、ナビトクラクス、及びABT-737からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項2に記載の医薬的組合せ。
【請求項4】
前記組合せが化合物7及びベネトクラクスである、請求項3に記載の医薬的組合せ。
【請求項5】
前記化合物7及びベネトクラクスがいずれも経口用剤形である、請求項4に記載の医薬的組合せ。
【請求項6】
前記組合せが、化合物7及びベネトクラクスの両方を含む単一の医薬組成物である、請求項4に記載の医薬的組合せ。
【請求項7】
前記医薬組成物が経口投薬用組成物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記経口投薬用組成物が錠剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
化合物7及びベネトクラクスが対象に同時投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
化合物7及びベネトクラクスが同日内に対象に同時投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ベネトクラクスの投薬量が約1mg~約150mgの範囲である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項12】
化合物7の投薬量が約1mg~約300mgの範囲である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ベネトクラクスの投薬量が約1mg~約150mgの範囲である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項14】
化合物7の投薬量が約1mg~約300mgの範囲である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象におけるがんを治療する方法であって、その必要のある前記対象に、治療有効量の化合物7:
【化12】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つのさらなる抗がん剤とを投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記さらなる抗がん剤がベネトクラクスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが血液悪性腫瘍またはB細胞悪性腫瘍である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
治療される前記B細胞悪性腫瘍が、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが血液悪性腫瘍である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記血液悪性腫瘍が白血病である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記白血病が、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、前リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、成人T細胞急性リンパ性白血病、3系統骨髄異形成を伴う急性骨髄性白血病、混合系統白血病、好酸球性白血病、及び/またはマントル細胞リンパ腫である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記白血病が急性骨髄性白血病である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記がんが骨髄異形成症候群(MDS)または骨髄増殖性腫瘍(MPN)である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月30日に出願された米国特許仮出願第62/773,686号の優先権を主張し、その開示内容の全体があらゆる目的において参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、患者がIDH1変異を示すがん(例えば、血液のがん)の治療のための2,3-ジヒドロ-イソインドール-1-オン化合物、またはその医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、及び異性体に関する。
【背景技術】
【0003】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)は、イソクエン酸の2-オキソグルタル酸(すなわち、α-ケトグルタル酸)への酸化的脱炭酸を触媒する。これらの酵素は2つの異なるサブクラスに属し、その一方は電子受容体としてNAD(+)を利用し、他方はNADP(+)を利用する。5種類のイソクエン酸デヒドロゲナーゼが報告されており、そのうちの3種類はNAD(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼで、ミトコンドリアマトリックスに局在しており、2種類はNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼで、一方はミトコンドリア、他方は主にサイトゾルに存在する。各NADP(+)依存性アイソザイムはホモ二量体である。
【0004】
IDH1(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(NADP+)、サイトゾル性)は、IDH、IDP、IDCD、IDPC、またはPICDとしても知られている。この遺伝子にコードされるタンパク質は、細胞質及びペルオキシソームで見られるNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。これはPTS-1ペルオキシソーム標的化シグナル配列を含む。ペルオキシソーム内にこの酵素が存在することは、ペルオキシソーム内還元のためのNADPHの再生(例えば、2,4-ジエノイル-CoAから3-エノイル-CoAへの変換)及び2-オキソグルタル酸を消費するペルオキシソーム反応(すなわち、フィタン酸のアルファ-ヒドロキシル化)における役割を示唆するものである。細胞質酵素は、細胞質NADPH産生において重要な役割を果たしている。
【0005】
ヒトIDH1遺伝子は、414個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする。ヒトIDH1のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれGenBank登録番号NM_005896.2及びNP_005887.2に認めることができる。IDH1のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、例えば、Nekrutenko et al.,Mol.Biol.Evol.15:1674-1684(1998);Geisbrecht et al.,J.Biol.Chem.274:30527-30533(1999);Wiemann et al.,Genome Res.11:422-435(2001);The MGC Project Team,Genome Res. 14:2121-2127(2004);Lubec et al.(UniProtKBに提出(DEC-2008));Kullmann et al.(EMBL/GenBank/DDBJデータベースに提出(JUN-1996));及びSjoeblom et al,Science 314:268-274(2006)にも記載されている。
【0006】
非変異型の、例えば野生型のIDH1は、イソクエン酸からα-ケトグルタル酸(α-KG)への酸化的脱炭酸を触媒することにより、例えば、正反応で、NAD+(NADP+)をNADH(NADPH)に還元する。
イソクエン酸+NAD+(NADP+)→α-KG+CO2+NADH(NADPH)+H+
【0007】
ある特定のがん細胞に存在するIDH1の変異により、酵素の新たな能力が生じ、α-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)へのNAPH依存的還元を触媒することが分かっている。2HGの産生は、がんの形成及び進行に寄与すると考えられている(Dang,L et al,Nature 2009,462:739-44)。
そのため、変異型IDH1の阻害は、がんの治療において可能性を秘めている。したがって、IDH1変異型の阻害剤が現在必要とされている。本発明はその必要性に対応するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nekrutenko et al.,Mol.Biol.Evol.15:1674-1684(1998)
【非特許文献2】Geisbrecht et al.,J.Biol.Chem.274:30527-30533(1999)
【非特許文献3】Wiemann et al.,Genome Res.11:422-435(2001)
【非特許文献4】The MGC Project Team,Genome Res. 14:2121-2127(2004)
【非特許文献5】Sjoeblom et al,Science 314:268-274(2006)
【非特許文献6】Dang,L et al,Nature 2009,462:739-44
【発明の概要】
【0009】
本開示は、化合物7、その医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、及び異性体に関する。
【化1】
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における変異型IDH1の活性または発現を阻害または低減する方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、変異型IDH1は少なくとも1つの点変異を含む。例えば、少なくとも1つの点変異は、G97X、R100X、R132X、H133X、及びA134X(Xは、任意のアミノ酸の可能性を意味する)からなる群より選択される1つ以上の残基上にある。いくつかの実施形態において、G97X変異はG97Dであり、及び/またはH133X変異はH133Qであり、及び/またはA134X変異はA134Dである。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132HまたはR132Cである。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132Hである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳類(例えば、ヒト)である。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示の方法はさらに、野生型または変異型Fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)の活性または発現の阻害または低減を、その必要のある対象において行うことを含む。いくつかの実施形態において、FLT3は変異型である。例えば、いくつかの実施形態において、変異型FLT3は、少なくとも1つの点変異を含む(例えば、少なくとも1つの点変異は、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある)。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異はFLT3のチロシンキナーゼドメイン内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異はFLT3の活性化ループ内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、及び696からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸残基位置上にある。いくつかの実施形態において、変異型FLT3はさらなるITD変異を含む。いくつかの実施形態において、変異型FLT3は、FLT3-D835H、FLT3-D835V、FLT3-D835Y、FLT3-ITD-D835V、FLT3-ITD-D835Y、FLT3-ITD-D835H、FLT3-F691L、FLT3-ITD-F691L、FLT3-K663Q、FLT3-ITD-K663Q FLT3-N841I、FLT3-ITD-N841I、FLT-3R834Q FLT3-ITD-834Q、FLT3-D835G、FLT3-ITD-D835G、FLT3-Y842C、及びFLT3-ITD-Y842Cからなる群より選択される1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示は、がんの治療の必要のある対象において、それを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含み、対象がIDH1の変異形態を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、がんは血液悪性腫瘍またはB細胞悪性腫瘍である。例えば、治療されるB細胞悪性腫瘍は、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、変異型IDH1は少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、G97D、R100X、R132X、H133Q、及びA134Dからなる群より選択される1つ以上の残基上にある。いくつかの実施形態において、R132X変異は、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132HまたはR132Cである。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132Hである。
【0014】
いくつかの実施形態において、患者は、NPMl、FLT3、TET2、CEBPA、DNMT3A、MLL、及びこれらの組合せのいずれかの同時変異を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、化合物7は、対象における野生型または変異型Fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)の活性または発現を阻害及び/または低減する。いくつかの実施形態において、FLT3は変異型である。いくつかの実施形態において、変異型FLT3は、少なくとも1つの点変異を含む(例えば、少なくとも1つの点変異は、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある)。いくつかの実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITDである。
【0016】
いくつかの実施形態において、血液悪性腫瘍は白血病である。例えば、白血病は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、前リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、成人T細胞急性リンパ性白血病、3系統骨髄異形成を伴う急性骨髄性白血病、混合系統白血病、好酸球性白血病、及び/またはマントル細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、白血病は急性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態において、対象は再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、がんは骨髄異形成症候群(MDS)または骨髄増殖性腫瘍(MPN)である。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、急性骨髄性白血病の治療の必要のある対象において、それを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含み、対象がIDH1の変異形態を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する。
【0019】
1つの実施形態において、単一の医薬組成物及び/または組合せ組成物中にある少なくとも1つの治療活性薬剤は抗がん剤である。
【0020】
特定の実施形態において、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグ、ならびに少なくとも1つの治療活性薬剤は、単一の医薬組成物及び/または組合せ組成物に製剤化することができる。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、治療有効量の化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、少なくとも1つのさらなる抗がん剤とを含む医薬的組合せであり得る。特定の実施形態において、抗がん剤はBCL-2(B細胞リンパ腫2)タンパク質阻害剤である。別の特定の実施形態において、BCL-2タンパク質阻害剤は、ベネトクラクス、ナビトクラクス、及びABT-737からなる群のうちの1つ以上から選択される。別の実施形態において、BCL-2タンパク質阻害剤はベネトクラクスである。
【0022】
別の実施形態において、医薬的組合せは、化合物7及びベネトクラクスの両方を経口用剤形内に含む。特定の実施形態において、化合物7及びベネトクラクスの両方が同じ経口用剤形内にある。特定の実施形態において、経口用投薬組成物は錠剤である。
【0023】
別の実施形態において、化合物7及びベネトクラクスは、対象に同時投与される。
【0024】
前述の概念及び以下でより詳細に論じられる追加の概念の全ての組合せは、(このような概念が相互に矛盾しない限り)本明細書で開示される本発明の主題の一部として企図されることを理解されたい。詳細には、本開示の最後に示される特許請求される主題の全ての組合せは、本明細書で開示される本発明の主題の一部として企図されている。また、本明細書で明示的に用いられている専門用語のうち、参照により援用される任意の開示にも示され得る専門用語には、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味を付与すべきであることも認識されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】初代患者試料由来のFLT3-ITD及びIDH-1変異型AML細胞が化合物7に対し感受性が高いことを示すボルケーノプロットである。
【
図2】AML患者(患者118例)由来の悪性骨髄または末梢血細胞に対する化合物7のIC
50値を示すスキャッタープロットであり、これらのAML患者はIDH1の変異、FLT3-ITDの変異、及び/またはIDH2の変異を有する。
【
図3】TP53野生型またはTP53変異を有する初代患者試料由来のAML細胞における化合物7の薬物感受性の曲線下面積(AUC)値を示すスキャッタープロットである。
【
図4】IDH野生型、IDH1変異、IDH2変異、SRF2変異、及びIDH2/SRF2変異を有する初代患者試料由来のAML細胞における化合物7の薬物感受性の曲線下面積(AUC)値を示すスキャッタープロットである。
【
図5】ASXL1野生型またはASXL1変異を有する初代患者試料由来のAML細胞における化合物7の薬物感受性の曲線下面積(AUC)値を示すスキャッタープロットである。
【
図6】AML患者由来の悪性骨髄または末梢血細胞に対する化合物7、ベネトクラクス、及び化合物7とベネトクラクスとの組合せのIC
50値を示すプロットである。
【
図7】B細胞癌患者由来の悪性骨髄または末梢血細胞に対する化合物7、ベネトクラクス、及び化合物7とベネトクラクスとの組合せのIC
50値を示すプロットである。
【
図8】CLLまたはALL患者由来の悪性骨髄または末梢血細胞に対する化合物7、ベネトクラクス、及び化合物7とベネトクラクスとの組合せのIC
50値を示すプロットである。
【
図9】AMLまたはMDS/MPN患者由来の悪性骨髄または末梢血細胞に対する化合物7、ベネトクラクス、及び化合物7とベネトクラクスとの組合せのIC
50値を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、対象における変異型IDH1の活性または発現を阻害または低減する方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、及び異性体を、がん(例えば、この遺伝子の異常な活性化によって駆動される血液癌)の治療のために投与することを含む、方法を提供する。さらに、変異型IDH1(例えば、R132H IDH1)に関連するB細胞悪性腫瘍の治療に関する前述の課題の観点で、化合物7が、B細胞悪性腫瘍細胞株(例えば、AML細胞株)に対してより強力であり、また、従来のIDH1治療薬剤(例えば、Tibsovo(登録商標))よりも強力であることが分かった。さらに、化合物7は、B細胞悪性腫瘍で作用するさらなるキナーゼ(FLT3、BTK、AURK、c-Srcなど)を阻害する。
【0027】
定義
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、こうした用語が限定的であるようには意図されていないことを理解されたい。
【0028】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、本出願が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本出願の実施または試験の際には、本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法及び材料を使用できるが、本明細書では代表的な方法及び材料を記載する。
【0029】
本明細書全体における「1つの実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」に対する言及は、その実施形態との関連で記載されている特定の要素、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書全体において、様々な箇所で「1つの実施形態(one embodiment)において」または「一実施形態(an embodiment)において」という表現が見られても、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、その特定の要素、構造または特徴は、いずれかの好適な形で、1つ以上の実施形態で組み合わせることができる。また、本明細書及び添付の請求項で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象が含まれる。また、「または」という用語は、文の内容による別段の明確な定めがない限り、概して、「及び/または」を含めた意味で用いられることにも留意されたい。
【0030】
別段の指示がない限り、本明細書及び請求項で使用される成分、反応条件などの量を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、反対の指示がない限り、本明細書及び添付の請求項で示される数値パラメーターは、本出願によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0031】
本明細書全体において、ある特定の量に関して数値範囲が示されている。これらの範囲は、その中の全ての部分範囲を含むことを理解されたい。したがって、「50~80」という範囲には、考えられる全ての範囲(例えば、51~79、52~78、53~77、54~76、55~75、60~70など)が含まれる。さらに、所定の範囲内の全ての値は、その範囲に含まれる範囲の終点であってもよい(例えば、50~80という範囲には、55~80、50~75などの終点を伴った範囲が含まれる)。
【0032】
化合物7とは、1-{3-フルオロ-4-[7-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イル]-フェニル}-3-(2,4,6-トリフルオロフェニル)ウレアを指し、以下の構造を有する。
【化2】
【0033】
本発明は、化合物7の医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、及びこれらの異性体も含む。
【0034】
「医薬的に許容される塩」には、酸基付加塩及び塩基付加塩の両方が含まれる。
【0035】
化合物7の医薬的に許容される塩は、無機酸または有機酸に由来する「医薬的に許容される酸付加塩」とすることができ、このような塩は、アニオンを含む医薬的に許容される無毒性酸付加塩とすることができる。例えば、この塩には、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、有機酸カルボン(carbonic)酸(例えば、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸など)、及びスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸など)によって形成される酸付加塩が含まれ得る。
【0036】
化合物7の医薬的に許容される塩は、当技術分野で周知されている従来の方法によって調製することができる。具体的には、本発明に従う「医薬的に許容される塩」は、例えば、水混和性の有機溶媒(例えば、アセトン、メタノール、エタノール、またはアセトニトリルなど)に化合物7を溶解し、それに過剰量の有機酸または無機酸の水性溶液を添加し、このようにして得られた混合物を沈殿または結晶化させることによって調製することができる。さらに、そこから溶媒または過剰な酸をさらに蒸発させ、次いで混合物を乾燥するか、または例えば吸引フィルターを使用することによって抽出物を濾過することにより、調製することができる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「エステル」という用語は、-(R)n-COOR’という化学的構造を有する化学部分を指し、式中、別段の指示がない限り、R及びR’はそれぞれ独立的に、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(芳香族環によって酸素原子に接続する)及びヘテロ脂環(芳香族環によって接続する)からなる群から選択されており、nは0または1である。
【0038】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、in vivoで代謝活性化を経て親薬物を産生する前駆化合物を指す。プロドラッグは、場合によってはその親薬物よりも容易に投与できるため、しばしば有用である。例えば、いくつかのプロドラッグは、その親薬物が生体内で不十分な生体利用能を示すのとは異なり、経口投与を介して生体内で利用可能となる。さらにプロドラッグは、その親薬物に比べて、医薬組成物中での溶解性の改善を示し得る。例えば、薬物の溶解性は細胞膜透過性に悪影響を及ぼし得るため、化合物7は、薬物送達効率を高めるためにエステルプロドラッグの形態で投与することができる。そして、エステルプロドラッグ形態の化合物がひとたび標的細胞内に入ると、代謝的に加水分解されてカルボン酸及び活性実体となる。
【0039】
化合物7の水和物または溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。本明細書で使用する場合、「溶媒和物」とは、溶媒和によって形成される複合体(溶媒分子と、本発明の活性薬剤の分子もしくはイオンとの組合せ)、または溶質イオンもしくは分子(本発明の活性薬剤)及び1つ以上の溶媒分子からなる凝集体を意味する。溶媒は水であってもよく、その場合、溶媒和物は水和物であり得る。水和物の例としては、限定されるものではないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、六水和物などが挙げられる。当業者は、本発明の化合物の医薬的に許容される塩が溶媒和物形態でも存在し得ることを理解するはずである。溶媒和物は典型的には、本発明の化合物の調製プロセスの一部である水和反応を介し、または本発明の無水化合物に水分が自然に吸収されることにより、形成される。水和物を含む溶媒和物は、化学量論比で、例えば、溶媒和物分子または水和物分子当たり2個、3個、4個の塩分子で構成され得る。別の可能性は、例えば、2個の塩分子が、3個、5個、7個の溶媒分子または水和物分子と化学量論的に関連することである。結晶化に使用される溶媒、例えば、アルコール(特にメタノール及びエタノール)、アルデヒド、ケトン(特に、アセトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)は、結晶格子内に埋め込まれ得、特に医薬的に許容される溶媒である。
【0040】
本開示の化合物またはその医薬的に許容される塩は、アトロプ異性体化が可能なように1つ以上のキラリティー軸を含むことができる。アトロプ異性体は、単結合の周りの回転障害が原因で生じる立体異性体であり、立体的歪みまたは他の寄与因子によるエネルギー差によって、個々の配座異性体を単離可能にするだけの十分に高い回転障壁が生じている。本開示は、本明細書で具体的に示されているかにかかわらず、このような考えられる全ての異性体、ならびにそのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むように意図されている。光学活性異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を用いて調製するか、または従来の技法、例えば、クロマトグラフィー及び分別結晶を用いて分割することができる。個々のアトロプ異性体を調製/単離するための従来の技法としては、好適な光学的に純粋な前駆体からキラル合成すること、あるいは例えばキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、ラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)を分割することが挙げられる。
【0041】
「立体異性体」とは、同じ結合で結合した同じ原子で構成されているが、異なる3次元構造を有し相互に交換できない化合物を指す。本発明では、アトロプ異性体に関する場合、様々な立体異性体及びそれらの混合物が企図されている。
【0042】
本明細書で使用する場合、IDH1の異常な活性化は、疾患、障害、または状態をもたらす多様、異常、非定型、異常、または不規則であるIDH1挙動を含むように意図されている。前述の疾患、障害、及び状態としては、限定されるものではないが、がん(例えば、AML)が挙げられる。がんの場合、疾患、障害、及び状態は、制御されない細胞増殖を特徴とし得る。
【0043】
IDH1に関連する疾患の具体的な例としては、限定されるものではないが、神経膠腫、多形膠芽腫、傍神経節腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、前立腺癌、甲状腺癌、結腸癌、軟骨肉腫、胆管癌、末梢性T細胞リンパ腫、黒色腫などが挙げられる(L.Deng et al.,Trends Mol.Med.,2010,16,387;T.Shibata et al.,Am.J.Pathol.,201 1,178(3),1395;Gaal et al.,J.Clin.Endocrinol. Metab.2010;Hayden et al.,Cell Cycle,2009;Balss et al.,Acta Neuropathol.,2008)。
【0044】
本発明における化合物7は、製剤または医薬中に治療有効量で存在することができ、この有効量は、例えば、生物学的作用(例えば、ある特定の細胞(例えば、がん細胞)のアポトーシス、ある特定の細胞の増殖の低減)をもたらし得る量、または疾患もしくは状態の症状の改善、緩和、減弱、もしくは除去をもたらし得る量である。また、当該用語は、細胞増殖速度を低減もしくは停止する(例えば、腫瘍の成長を減速もしくは停止する)、または増殖するがん細胞の数を低減する(例えば、腫瘍の一部もしくは全部を除去する)ことも指す。
【0045】
上記のような治療が疾患、障害、または状態の防止を指す場合には、当該治療は予防的治療と称される。前述の予防的薬剤の投与は、疾患または障害を防止する、または代替的にその進行を遅らせるように、増殖性障害に特徴的な症状が発現する前に生じ得る。
【0046】
本明細書で使用する場合、細胞増殖を「阻害する」または「低減する」という用語は、当業者に知られている方法を用いて測定した場合に、本出願の方法、組成物、及び組合せに供しない増殖細胞に比べて、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%、細胞増殖を減速させる、細胞増殖の量を減少させる、または例えば停止させることを意味する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「アポトーシス」という用語は、内在性の細胞の自己破壊または自殺プログラムを指す。細胞は、誘導刺激に応答して、細胞収縮、細胞膜の小疱形成、ならびにクロマチン凝縮及び断片化を含めた一連の事象を経る。これらの事象により、細胞は、膜結合性粒子(アポトーシス小体)の集まりに変換され、その後、これらはマクロファージに貪食される。
【0048】
本明細書で使用する場合、「多倍数体」または「多倍数体」とは、細胞が、通常の二倍体数(「2n」)よりも大きい一倍体数(「n」)の数倍である複数の染色体を有する状態を指す。「多倍数体(polyploid)細胞」または「多倍数体(polyploidy)細胞」という用語は、多倍数体状態の細胞を指す。言い換えると、多倍数体の細胞または生物は一倍体染色体数の3倍以上を有する。ヒトの場合、染色体の通常の一倍体数は23であり、染色体の通常の二倍体数は46である。
【0049】
「哺乳類」には、ヒト、実験動物及び家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)などの飼育動物ならびに野生動物などの非飼育動物の両方が含まれる。本明細書で使用する場合、「患者」または「対象」という用語にはヒト及び動物が含まれる。
【0050】
「非哺乳類」には、非哺乳類の無脊椎動物及び非哺乳類の脊椎動物(例えば、鳥(例えば、ニワトリもしくはカモ)または魚)が含まれる。
【0051】
「医薬組成物」とは、本開示の化合物と、哺乳類(例えば、ヒト)への生物活性化合物の送達用に当技術分野で一般的に受け入れられている媒体との調合物を指す。このような媒体としては、上記用途のための全ての医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤が挙げられる。
【0052】
「有効量」とは、治療有効量または予防有効量を指す。「治療有効量」とは、所望の治療結果(例えば、腫瘍サイズの低減、寿命の延長、または平均余命の延長)を達成するのに必要な投薬量及び期間の有効量を指す。化合物の治療有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別、及び体重などの因子、ならびに当該化合物が対象における所望の応答を誘発する能力に従って変動し得る。投薬レジメンは、最適な治療応答をもたらすように調整することができる。治療有効量は、治療的に有益な作用が、化合物のいかなる毒性作用または有害作用も上回る量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防的結果(例えば、腫瘍サイズの縮小または細胞増殖の減速)を達成するのに必要な投薬量及び期間の有効量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患前のまたは疾患の早期段階にある対象で使用し、そのため予防有効量は治療有効量未満であり得る。
【0053】
本明細書で使用する場合、「ブルトン型チロシンキナーゼ」またはBTKという用語は、例えば、米国特許第6,326,469号(GenBank受託番号NP000052)で開示されているHomo sapiens由来のブルトン型チロシンキナーゼを指す。
【0054】
本明細書で使用する場合、「共有結合BTK阻害剤」という用語は、BTKと反応して共有結合複合体を形成する阻害剤を指す。いくつかの実施形態において、共有結合BTK阻害剤は不可逆BTK阻害剤である。
【0055】
本明細書で使用する場合、「非共有結合BTK阻害剤」という用語は、BTKと反応して非共有結合複合体または相互作用を形成する阻害剤を指す。いくつかの実施形態において、非共有結合BTK阻害剤は可逆BTK阻害剤である。
【0056】
本明細書で使用する場合、「医薬的組合せ」、「治療的組合せ」、または「組合せ」という用語は、組合せ療法で使用するための、少なくとも2つの治療活性薬剤を含む単一の剤形、または少なくとも2つの治療活性薬剤を一緒にもしくは別々に含む別々の剤形を指す。例えば、一方の治療活性薬剤を1つの剤形に製剤化し、他方の治療活性薬剤を単一のまたは異なる剤形に製剤化することができる。例えば、一方の治療活性薬剤を固体経口用剤形に製剤化し、第2の治療活性薬剤を非経口投与用の溶液剤形に製剤化することができる。
【0057】
「抗がん剤」という用語は、がんまたは腫瘍成長によって引き起こされる状態を治療、低減、防止、または改善し得る化学物質及び生物製剤を指す。
【0058】
「組成物」または「製剤」という用語は、固体、液体、気体、またはこれらの混合物などの物理的形態における1つ以上の物質を意味する。組成物の1つの例は、医薬組成物、すなわち、医学的治療に関連する、そのために調製される、またはそれで使用される組成物である。
【0059】
「同時投与(co-administration)」または「同時投与(coadministration)」という用語は、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、(b)少なくとも1つのさらなる治療活性薬剤(例えば、抗がん剤)とを、協調的な様式で一緒に投与することを指す。例えば、同時投与は、同時(simultaneous)投与、順次投与、重複投与、間隔を空けた投与、持続投与、またはこれらの組合せであり得る。
【0060】
1つの実施形態において、同時投与は、1つ以上の治療サイクルにわたって行われる。「治療サイクル」とは、化合物7の化合物あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、少なくとも1つの治療活性薬剤を同時投与するための所定の期間を意味する。典型的には、各治療サイクルの終わりに患者を検査して本発明の組合せ療法の効果を評価する。1つの実施形態において、同時投与は1~48治療サイクルにわたって行われる。別の態様において、同時投与は1~36治療サイクルにわたって行われる。別の態様において、同時投与は1~24治療サイクルにわたって行われる。
【0061】
1つの実施形態において、各治療サイクルは約3日以上である。別の実施形態において、各治療サイクルは約3日~約60日である。別の実施形態において、各治療サイクルは約5日~約50日である。別の実施形態において、各治療サイクルは約7日~約28日である。別の実施形態において、各治療サイクルは28日である。1つの実施形態において、治療サイクルは約29日である。別の実施形態において、治療サイクルは約30日である。別の実施形態において、治療サイクルは約1ヵ月の治療サイクルである。別の実施形態において、各治療サイクルは約4~約6週間である。
【0062】
IDH1及び他の変異遺伝子活性を阻害する方法
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における変異型IDH1の活性または発現を阻害または低減する方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、変異型IDH1は少なくとも1つの点変異を含む。例えば、少なくとも1つの点変異は、G97X、R100X、R132X、H133X、及びA134X(Xは、任意のアミノ酸残基である)からなる群より選択される1つ以上の残基上にある。いくつかの実施形態において、G97X変異はG97Dであり、及び/またはH133X変異はH133Qであり、及び/またはA134X変異はA134Dである。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132HまたはR132Cである。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132Hである。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、対象における変異型IDH1の活性または発現を阻害または低減する方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を投与することを含み、変異がR132Hである、方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0064】
いくつかの実施形態において、対象は、NPMl、FLT3、TET2、CEBPA、DNMT3A、MLL、及びこれらの組合せのいずれかの同時変異を有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、対象は、IDH1、IDH2、TP53(腫瘍タンパク質p53遺伝子)、ASXL1(付加的性コーム様1(additional sex combs like 1))遺伝子、及びSRSF2(セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2遺伝子)のうちの1つ以上の変異形態を有する。特定の実施形態において、変異は対象の体細胞内にある。別の実施形態において、変異は1つのアレル内にある。特定の実施形態において、対象はさらに、FLT3の変異形態を有する。別の特定の実施形態において、FLT3の変異形態はチロシンキナーゼドメイン変異である。別の特定の実施形態において、変異は、Cancer Cell.2018 Aug 13;34(2):186-195(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載された任意の変異型である。
【0066】
いくつかの実施形態において、対象は、IDH1、IDH2、及びTP53のうちの1つ以上の変異形態を有する。
【0067】
特定の実施形態において、対象はTP53変異を有する。別の実施形態において、TP53変異は対象の体細胞のミスセンス変異である。別の実施形態において、変異はコドン125から300の間である。別の実施形態において、変異は、TP53遺伝子のDNA結合ドメインをコードする領域内にある。別の特定の実施形態において、変異は、TP53遺伝子の1つ以上のコドン175、248、及び273にある。別の特定の実施形態において、変異は、TP53遺伝子の1つ以上のコドン196、213、245、282、及び306にある。
【0068】
別の実施形態において、遺伝子変異は、Cold Spring Harb Perspect Biol.2010 Jan;2(1):a001008(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている任意の変異であり得る。
【0069】
別の実施形態において、遺伝子変異は、Nature,2018,Oct;562(7728):526-531(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている任意の変異であり得る。
【0070】
別の実施形態において、対象はASXL1遺伝子に変異を有する。特定の実施形態において、ASXL1の変異は、グアニンヌクレオチドの重複(c.1934dupG)に由来するものであり、これは別名NM_015338.5:c.1934dup;p.Gly646Trpfs*12(ASXL1 c.1934dupG)として知られている。
【0071】
別の実施形態において、対象は、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(Srsf2)遺伝子に変異を有する。特定の実施形態において、Srsf2変異は、Srsf2のタンパク質のアミノ酸95に変異をもたらす。別の特定の実施形態において、Srsf2変異は、Srsf2のタンパク質のアミノ酸変異Pro95His、Pro95Leu、及びP95Argをもたらす。特定の実施形態において、Srsf2変異は、タンパク質のアミノ酸変異Pro95Hisをもたらす。
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示の方法はさらに、野生型または変異型Fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)の活性または発現の阻害または低減の必要のある対象(すなわち、変異型IDH1の活性または発現を有する対象)において、それを行うことを含む。FLT3とは、FLT3遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。野生型FLT3とは、非変異形態のタンパク質を指す。FLT3は、膜近傍領域内の活性化内部縦列重複(ITD)及びチロシンキナーゼドメインまたはFLT3の活性化ループ内の点変異を含めた一連の変異を経ることができる。点変異は、DNA配列中の1つの塩基対が修飾されたときに生じる。例えば、F691Lは、位置691のアミノ酸のフェニルアラニンからロイシンへの変化を定義することを意味する。
【0073】
いくつかの実施形態において、FLT3は変異型である。例えば、いくつかの実施形態において、変異型FLT3は少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある。したがって、1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はD835上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はF691上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はK663上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はY842上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はN841上にある。
【0074】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異はFLT3のチロシンキナーゼドメイン内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異はFLT3の活性化ループ内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、及び696からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸残基位置上にある。
【0075】
1つの実施形態において、変異型FLT3はさらなるITD変異を含む。1つの実施形態において、ITD-変異は、FTD駆動型血液癌(例えば、AML)の非常に不良な予後に関連する。
【0076】
いくつかの実施形態において、変異型FLT3は、FLT3-D835H、FLT3-D835V、FLT3-D835Y、FLT3-ITD-D835V、FLT3-ITD-D835Y、FLT3-ITD-D835H、FLT3-F691L、FLT3-ITD-F691L、FLT3-K663Q、FLT3-ITD-K663Q FLT3-N841I、FLT3-ITD-N841I、FLT-3R834Q FLT3-ITD-834Q、FLT3-D835G、FLT3-ITD-D835G、FLT3-Y842C、及びFLT3-ITD-Y842Cからなる群より選択される1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である。
【0077】
本明細書で開示されるいずれかの方法の1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置686上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置687上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置688上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置689上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置690上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置691上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置692上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置693上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置694上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置695上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置696上にある。別の実施形態において、少なくとも1つの点変異は、任意の残基686~696の位置に対応するアミノ酸残基上に存在する。
【0078】
別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-D835Hである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-D835Vである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-D835Yである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-D835Vである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-D835Yである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-D835Hである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-F691Lである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-K663Qである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-N841Iである。別の実施形態において、変異型FLT3は、FLT3-D835G、FLT3-Y842C、及び/またはFLT3-ITD-Y842Cである。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示は、異常な(例えば、過剰発現する)野生型または変異型BTKの活性または発現の阻害または低減の必要のある対象(すなわち、変異型IDH1の活性または発現を有する対象)において、それを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0080】
ある特定の実施形態において、BTKは野生型である。1つの実施形態において、野生型BTKは対象内で異常である(例えば、過剰発現する)。別の実施形態において、野生型BTKは対象内で過剰活性または高活性である。
【0081】
ある特定の実施形態において、BTKは変異型BTKである。BTK変異は、当業者には容易に明らかな様々な因子(例えば、挿入変異、欠失変異、及び置換変異(例えば、点変異))によって引き起こされ得る。1つの実施形態において、変異型BTKは少なくとも1つの点変異を含む。
【0082】
様々な点変異が、本開示の範囲内で企図されている。例えば、少なくとも1つの点変異は、BTK上の任意の残基に対するものであり得る。いくつかの実施形態において、BTK遺伝子内の変異には、アミノ酸位置L11、K12、S14、K19、F25、K27、R28、R33、Y39、Y40、E41、I61、V64、R82、Q103、V113、S115、T117、Q127、C154、C155、T184、P189、P190、Y223、W251、R288、L295、G302、R307、D308、V319、Y334、L358、Y361、H362、H364、N365、S366、L369、I370M、R372、L408、G414、Y418、I429、K430、E445、G462、Y476、M477、C481、C502、C506、A508、M509、L512、L518、R520、D521、A523、R525、N526、V535、L542、R544、Y551、F559、R562、W563、E567、5578、W581、A582、F583、M587、E589、S592、G594、Y598、A607、G613、Y617、P619、A622、V626、M630、C633、R641、F644、L647、L652、V1065、及び/またはA1185の変異が含まれる。いくつかの実施形態において、BTK遺伝子内の変異は、L11P、K12R、S14F、K19E、F25S、K27R、R28H、R28C、R28P、T33P、Y3S9、Y40C、Y40N、E41K、I61N、V64F、V64D、R82K、Q103Q5FSSVR、V113D、S115F、T117P、Q127H、C1545、C155G、T184P、P189A、Y223F、W251L、R288W、R288Q、L295P、G302E、R307K、R307G、R307T、D308E、V319A、Y334S、L358F、Y361C、H362Q、H364P、N365Y、S366F、L369F、I370M、R372G、L408P、G414R、Y418H、I429N、K430E、E445D、G462D、G462V、Y476D、M477R、C481S、C502F、C502W、C506Y、C506R、A508D、M5091、M509V、L512P、L512Q、L518R、R520Q、D521G、D521H、D521N、A523E、R525G、R525P、R525Q、N526K、V535F、L542P、R544G、R544K、Y551F、F559S、R562W、R562P、W563L、E567K、S578Y、W581R、A582V、F583S、M587L、E589D、E589K、E589G、S592P、G594E、Y598C、A607D、G613D、Y617E、P619A、P619S、A622P、V626G、M630I、M630K、M630T、C633Y、R641C、F644L、F644S、L647P、L652P、V10651、及びA1185Vから選択される。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はシステイン残基上にある。1つの実施形態において、システイン残基はBTKのキナーゼドメイン内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、残基E41、P190、及びC481からなる群より選択される1つ以上にある。いくつかの実施形態において、BTKの変異はアミノ酸位置481(すなわち、C481)にある。C481点変異は、任意のアミノ酸部分で置換され得る。いくつかの実施形態において、BTKの変異はC481Sである。1つの実施形態において、残基C481の点変異は、C481S、C481R、C481T、及び/またはC481Yから選択される。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、E41K、P190K、及びC481Sからなる群より選択される1つ以上である。
【0083】
治療方法
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示は、がんの治療の必要のある対象において、それを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含み、対象がIDH1の変異形態を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、がんは血液悪性腫瘍またはB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、がんはB細胞悪性腫瘍である。例えば、治療されるB細胞悪性腫瘍は、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍はマントル細胞リンパ腫(MCL)である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍はバーキットリンパ腫である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)である。
【0085】
いくつかの実施形態において、がんは血液悪性腫瘍である。血液悪性腫瘍の例としては、限定されるものではないが、白血病、リンパ腫、ホジキン病、及び骨髄腫が挙げられ、さらに急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、急性未分化白血病(AUL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、前リンパ球性白血病(PML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、成人T細胞ALL、3系統脊髄形成異常を伴うAML(AMLITMDS)、混合系統白血病(MLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、及び多発性骨髄腫(MM)が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態において、血液悪性腫瘍は白血病である。例えば、白血病は、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、前リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、成人T細胞急性リンパ性白血病、3系統骨髄異形成を伴う急性骨髄性白血病、混合系統白血病、好酸球性白血病、及び/またはマントル細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態において、白血病は急性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態において、対象は再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、がんは、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、カポジ肉腫、リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、小児異型奇形腫瘍/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色種)、小児胆管癌、肝外膀胱癌、骨癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、カルチノイド腫瘍、胃腸の原発不明癌、心(心臓)腫瘍、原発性リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、非浸潤性乳管癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、骨の悪性線維性組織球腫、及び骨肉腫、胆嚢癌、胃(Gastric)(胃(Stomach))癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、性腺外癌、卵巣癌、精巣癌、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、脳幹癌、有毛細胞白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、組織球腫、ランゲルハンス細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、腎細胞癌、ウィルムス腫瘍及び他の小児腎臓腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、白血病、慢性リンパ球性癌、慢性骨髄性癌、有毛細胞癌、口唇及び口腔癌、肝臓癌(原発性)、非浸潤性小葉癌(LCIS)、肺癌、非小細胞癌、小細胞癌、リンパ腫、皮膚T細胞(菌状息肉腫及びセザリー症候群)、ホジキン癌、非ホジキン癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、男性乳癌、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、黒色腫、眼内(眼)癌、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、原発不明転移性扁平上皮頸部癌、NUT遺伝子が関与する正中管癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性腫瘍、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口部癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇及び口腔咽頭癌、骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫、上皮癌、低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症、パラガングリオーマ、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、直腸癌、腎細胞(腎臓)癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、ユーイング癌、カポジ癌、骨肉腫(骨癌)、軟組織癌、子宮癌、セザリー症候群、皮膚癌、小児黒色腫、メルケル細胞癌、非黒色種、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、皮膚癌(非黒色種)、原発不明小児扁平上皮頸部癌、転移癌、胃(Stomach)(胃(Gastric))癌、T細胞リンパ腫、皮膚癌、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂と尿管の移行上皮癌、原発不明小児癌、小児には稀な癌、尿道癌、子宮癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに女性の癌からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、変異型IDH1は少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、G97D、R100X、R132X、H133Q、及びA134Dからなる群より選択される1つ以上の残基上にある。いくつかの実施形態において、R132X変異は、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132HまたはR132Cである。いくつかの実施形態において、R132X変異はR132Hである。
【0089】
いくつかの実施形態において、対象は、NPMl、FLT3、TET2、CEBPA、DNMT3A、MLL、及びこれらの組合せのいずれかの同時変異を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、FLT3は変異型ではない。いくつかの実施形態において、FLT3は、患者内でIDH1と共に追加的に変異している。例えば、いくつかの実施形態において、変異型FLT3は少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある。したがって、1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はD835上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はF691上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はK663上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はY842上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はN841上にある。
【0091】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異はFLT3のチロシンキナーゼドメイン内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異はFLT3の活性化ループ内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、及び696からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸残基位置上にある。
【0092】
1つの実施形態において、変異型FLT3はさらなるITD変異を含む。1つの実施形態において、ITD-変異は、FTD駆動型血液癌(例えば、AML)の非常に不良な予後に関連する。
【0093】
いくつかの実施形態において、変異型FLT3は、FLT3-D835H、FLT3-D835V、FLT3-D835Y、FLT3-ITD-D835V、FLT3-ITD-D835Y、FLT3-ITD-D835H、FLT3-F691L、FLT3-ITD-F691L、FLT3-K663Q、FLT3-ITD-K663Q FLT3-N841I、FLT3-ITD-N841I、FLT-3R834Q FLT3-ITD-834Q、FLT3-D835G、FLT3-ITD-D835G、FLT3-Y842C、及びFLT3-ITD-Y842Cからなる群より選択される1つ以上の変異を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である。
【0094】
本明細書で開示される任意の方法の1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置686上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置687上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置688上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置689上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置690上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置691上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置692上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置693上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置694上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置695上にある。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はアミノ酸残基位置696上にある。別の実施形態において、少なくとも1つの点変異は、任意の残基686~696の位置に対応するアミノ酸残基上に存在する。
【0095】
別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-D835Hである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-D835Vである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-D835Yである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-D835Vである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-D835Yである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-D835Hである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-ITD-F691Lである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-K663Qである。別の実施形態において、変異型FLT3はFLT3-N841Iである。別の実施形態において、変異型FLT3は、FLT3-D835G、FLT3-Y842C、及び/またはFLT3-ITD-Y842Cである。
【0096】
FLT3は、がん治療における標的の1つである。FLT3の異常な活性化に関連する疾患、障害、及び状態の例としては、FLT3の変異によるFLT3の過剰な刺激から生じるもの、または異常に多量のFLT3の変異による異常に多量のFLT3活性から生じる障害が挙げられる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、FLT3の過剰活性は、がんを含む多くの疾患の病因と関連付けられている。FLT3の過剰活性に関連するがんとしては、限定されるものではないが、骨髄増殖性障害(例えば、血小板減少症、本態性血小板増加症(ET)、原因不明の骨髄化生、骨髄線維症(MF)、骨髄様化生を伴う骨髄線維症(MMM)、慢性特発性骨髄線維症(UIMF)、及び真性赤血球増加症(PV)、血球減少症、及び前悪性骨髄異形成症候群)、がん(例えば、神経膠腫癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、食道癌、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、ならびに血液悪性腫瘍(脊髄形成異常、多発性骨髄腫、白血病、及びリンパ腫を含む))が挙げられる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示は、急性骨髄性白血病の治療の必要のある対象において、それを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含み、対象がIDH1の変異形態を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象における障害を治療する方法であって、芽細胞、例えば、白血病性芽細胞、例えば、骨髄芽球または骨髄系芽球の低減をもたらすのに十分な量の化合物7またはその医薬的に許容される塩をその必要のある対象に投与し、それによって障害を治療することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、障害は、進行性血液悪性腫瘍、例えば、IDH1の変異型アレルの存在を特徴とする進行性血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態において、進行性血液悪性腫瘍はIDH1の変異型アレルを特徴としており、このIDH1変異により、患者内でa-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)にNAPH依存的還元するのを触媒するという新たな酵素の能力が生じる。1つの実施形態において、変異型IDH1はR132X変異を有する。1つの実施形態において、R132X変異は、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gから選択される。別の態様において、R132X変異はR132HまたはR132Cである。1つの実施形態において、R132X変異はR132Hである。
【0099】
いくつかの実施形態において、障害は、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、B急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、B急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、及びリンパ腫(例えば、T細胞リンパ腫)から選択され、それぞれがIDH1の変異アレルの存在を特徴とする。いくつかの実施形態において、障害は、進行性IDH1変異陽性再発性及び/または難治性AML(R/R AML)、未治療のAML、ならびにMDSから選択される。
【0100】
治療方法は、変異型IDH1に駆動される細胞増殖性障害を発症するリスクがあるまたは発症しやすい対象を治療するための予防的方法及び治療的方法の両方を提供する。1つの例において、本発明は、IDH1に関連する細胞増殖性障害を防止するための方法であって、化合物7もしくはその医薬的に許容される塩または化合物7を含む医薬組成物の予防有効量を、その必要のある対象に投与することを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、予防的治療は、疾患または障害を防止する、または代替的にその進行を遅らせるように、IDH1に駆動される細胞増殖性障害に特徴的な症状が発現する前に生じ得る。
【0101】
1つの実施形態において、当該方法は、変異型IDH1を発現する細胞のアポトーシスの誘導の必要のある対象においてそれを行い、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0102】
1つの実施形態において、がんを治療する方法は、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することにより、IDH1変異を有する対象におけるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の活性または発現を阻害または低減することを含む。
【0103】
ある特定の実施形態において、BTKは野生型である。1つの実施形態において、野生型BTKは対象内で異常である(例えば、過剰発現する)。別の実施形態において、野生型BTKは対象内で過剰活性または高活性である。
【0104】
ある特定の実施形態において、BTKは変異型BTKである。BTK変異は、当業者には容易に明らかな様々な因子(例えば、挿入変異、欠失変異、及び置換変異(例えば、点変異))によって引き起こされ得る。1つの実施形態において、変異型BTKは少なくとも1つの点変異を含む。
【0105】
様々な点変異が、本開示の範囲内で企図されている。例えば、少なくとも1つの点変異は、BTK上の任意の残基に対するものであり得る。いくつかの実施形態において、BTK遺伝子内の変異には、アミノ酸位置L11、K12、S14、K19、F25、K27、R28、R33、Y39、Y40、E41、I61、V64、R82、Q103、V113、S115、T117、Q127、C154、C155、T184、P189、P190、Y223、W251、R288、L295、G302、R307、D308、V319、Y334、L358、Y361、H362、H364、N365、S366、L369、I370M、R372、L408、G414、Y418、I429、K430、E445、G462、Y476、M477、C481、C502、C506、A508、M509、L512、L518、R520、D521、A523、R525、N526、V535、L542、R544、Y551、F559、R562、W563、E567、5578、W581、A582、F583、M587、E589、S592、G594、Y598、A607、G613、Y617、P619、A622、V626、M630、C633、R641、F644、L647、L652、V1065、及び/またはA1185の変異が含まれる。いくつかの実施形態において、BTK遺伝子内の変異は、L11P、K12R、S14F、K19E、F25S、K27R、R28H、R28C、R28P、T33P、Y3S9、Y40C、Y40N、E41K、I61N、V64F、V64D、R82K、Q103Q5FSSVR、V113D、S115F、T117P、Q127H、C1545、C155G、T184P、P189A、Y223F、W251L、R288W、R288Q、L295P、G302E、R307K、R307G、R307T、D308E、V319A、Y334S、L358F、Y361C、H362Q、H364P、N365Y、S366F、L369F、I370M、R372G、L408P、G414R、Y418H、I429N、K430E、E445D、G462D、G462V、Y476D、M477R、C481S、C502F、C502W、C506Y、C506R、A508D、M5091、M509V、L512P、L512Q、L518R、R520Q、D521G、D521H、D521N、A523E、R525G、R525P、R525Q、N526K、V535F、L542P、R544G、R544K、Y551F、F559S、R562W、R562P、W563L、E567K、S578Y、W581R、A582V、F583S、M587L、E589D、E589K、E589G、S592P、G594E、Y598C、A607D、G613D、Y617E、P619A、P619S、A622P、V626G、M630I、M630K、M630T、C633Y、R641C、F644L、F644S、L647P、L652P、V10651、及びA1185Vから選択される。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はシステイン残基上にある。1つの実施形態において、システイン残基はBTKのキナーゼドメイン内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、残基E41、P190、及びC481からなる群より選択される1つ以上にある。いくつかの実施形態において、BTKの変異はアミノ酸位置481(すなわち、C481)にある。C481点変異は、任意のアミノ酸部分で置換され得る。いくつかの実施形態において、BTKの変異はC481Sである。1つの実施形態において、残基C481の点変異は、C481S、C481R、C481T、及び/またはC481Yから選択される。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、E41K、P190K、及びC481Sからなる群より選択される1つ以上である。
【0106】
いくつかの実施形態において、B細胞リンパ腫は、変異型BTKポリペプチドを有する複数の細胞を特徴とする。いくつかの実施形態において、変異型BTKポリペプチドは、共有結合及び/または不可逆BTK阻害剤による阻害への耐性を付与する1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、変異型BTKポリペプチドは、野生型BTKのアミノ酸位置481でシステインに共有結合する共有結合及び/または不可逆BTK阻害剤による阻害への耐性を付与する1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、変異型BTKポリペプチドは、PCI-32765(イブルチニブ)、PCI-45292、PCI-45466、AVL-101/CC-101 (Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-263/CC-263(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-292/CC-292(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、AVL-291/CC-291(Avila Therapeutics/Celgene Corporation)、CNX 774(Avila Therapeutics)、BMS-488516(Bristol-Myers Squibb)、BMS-509744(Bristol-Myers Squibb)、CGI-1746(CGI Pharma/Gilead Sciences)、CGI-560(CGI Pharma/Gilead Sciences)、CTA-056、GDC-0834(Genentech)、HY-11066(さらに、CTK4I7891、HMS3265G21、HMS3265G22、HMS3265H21、HMS3265H22、439574-61-5、AG-F-54930)、ONO-4059(Ono Pharmaceutical Co.,Ltd.)、ONO-WG37(Ono Pharmaceutical Co.,Ltd.)、PLS-123(Peking University)、RN486(Hoffmann-La Roche)、HM71224(Hanmi Pharmaceutical Company Limited)、LFM-A13、BGB-3111(Beigene)、KBP-7536(KBP BioSciences)、ACP-196(Acerta Pharma)、またはJTE-051(Japan Tobacco Inc)から選択される共有結合及び/または不可逆阻害剤による阻害への耐性を付与する1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、変異型BTKポリペプチドは、イブルチニブによる阻害への耐性を付与する1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの場合において、複数の細胞は少なくとも2つの細胞を含む。ある特定の実施形態において、BTK変異型は、非共有結合BTK阻害剤による阻害への耐性を付与する1つ以上のアミノ酸置換を含む。ある特定の実施形態において、BTK変異型は、可逆的BTK阻害剤による阻害への耐性を付与する1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0107】
いくつかの実施形態で上述したように、修飾は、野生型BTKとの比較においてアミノ酸位置481におけるアミノ酸の置換または欠失を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、野生型BTKとの比閣において、位置481におけるアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、BTKポリペプチドのアミノ酸位置481におけるシステインからロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン、メチオニン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸への置換である。いくつかの実施形態において、修飾は、BTKポリペプチドのアミノ酸位置481におけるシステインからセリン、メチオニン、またはスレオニンから選択されるアミノ酸への置換である。いくつかの実施形態において、修飾は、BTKポリペプチドのアミノ酸位置481におけるシステインからセリンへの置換(「C481S」)である。
【0108】
いくつかの実施形態において、BTKの変異は、B細胞増殖性障害においてTEC阻害剤(例えば、ITK阻害剤、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ))への耐性を付与する。いくつかの実施形態において、BTKのC481S変異は、B細胞増殖性障害においてTEC阻害剤(例えば、ITK阻害剤、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ))への耐性を付与する。いくつかの実施形態において、BTKの変異は、B細胞増殖性障害において共有結合BTK阻害剤への耐性を付与する。いくつかの実施形態において、BTKの変異は、B細胞増殖性障害においてイブルチニブ及びアカラブルチニブへの耐性を付与する。
【0109】
1つの実施形態において、共有結合不可逆BTK阻害剤により阻害される変異型BTKの活性は、共有結合不可逆BTK阻害剤により阻害される野生型BTKの活性よりも、阻害の程度が少ない。共有結合不可逆BTK阻害剤の変異型BTKに対するIC50は、野生型BTKに対するよりも少なくとも約1%~少なくとも約1000%高い可能性がある。例えば、共有結合不可逆BTK阻害剤の変異型BTKに対するIC50は、野生型BTKに対するよりも少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、250%、260%、270%、280%、290%、300%、310%、320%、330%、340%、350%、360%、370%、380%、390%、400%、410%、420%、430%、440%、450%、460%、470%、480%、490%、500%、510%、520%、530%、540%、550%、560%、570%、580%、590%、600%、610%、620%、630%、640%、650%、660%、670%、680%、690%、700%、710%、720%、730%、740%、750%、760%、770%、780%、790%、800%、810%、820%、830%、840%、850%、860%、870%、880%、890%、900%、910%、920%、930%、940%、950%、960%、970%、980%、990%~少なくとも1000%高い可能性がある。1つの実施形態において、共有結合不可逆BTK阻害剤の変異型BTKに対するIC50は、野生型BTKに対するよりも少なくとも50%高い。1つの実施形態において、不可逆共有結合BTK阻害剤は、イブルチニブ及び/またはアカラブルチニブである。例えば、不可逆共有結合BTK阻害剤はイブルチニブである。
【0110】
1つの実施形態において、点変異は、BTKのただ1つのアレル上にある。別の実施形態において、点変異は、BTKの2つのアレル上にある。1つの実施形態において、システイン上の点変異は、BTKのただ1つのアレル上に存在する。別の実施形態において、システイン上の点変異は、BTKの2つのアレル上にある。1つの実施形態において、C481上の点変異は、BTKのただ1つのアレル上にある。別の実施形態において、C481上の点変異は、BTKの2つのアレル上にある。1つの実施形態において、C481S点変異は、BTKのただ1つのアレル上にある。別の実施形態において、C481S点変異は、BTKの2つのアレル上にある。
【0111】
1つの実施形態において、対象は哺乳類である。1つの実施形態において、対象はヒトである。
【0112】
本開示の別の態様は、がんの治療の必要のある対象においてそれを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩をその必要のある対象に投与することを含み、変異型IDH1を含む対象がBTKの変異形態を有する、方法に向けられている。
【0113】
本開示の別の態様は、B細胞悪性腫瘍の治療の必要のある対象においてそれを行う方法であって、化合物7またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含み、対象がIDH1の変異形態を有する、方法に向けられている。1つの実施形態において、対象はBTKの変異形態を有する。
【0114】
いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、高リスクCLL、または非CLL/SLLリンパ腫である。いくつかの実施形態において、B細胞増殖性障害は、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキットリンパ腫高悪性度B細胞リンパ腫、または節外性辺縁帯リンパ腫である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、急性または慢性の骨髄性(myelogenous)(または骨髄性(myeloid))白血病、骨髄異形成症候群、または急性リンパ芽球性白血病である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、再発性または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、再発性または難治性マントル細胞リンパ腫、再発性または難治性濾胞性リンパ腫、再発性または難治性CLL、再発性または難治性SLL、再発性または難治性多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、高リスクとして分類されるB細胞増殖性障害である。いくつかの実施形態において、B細胞悪性腫瘍は高リスクCLLまたは高リスクSLLである。
【0115】
したがって、1つの実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍は、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群のうちの1つ以上から選択される。1つの実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍はマントル細胞リンパ腫(MCL)である。別の実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である。1つの実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍はバーキットリンパ腫である。1つの実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍は慢性リンパ性白血病(CLL)である。1つの実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍はマントル細胞リンパ腫(MCL)である。1つの実施形態において、治療されるB細胞悪性腫瘍はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)である。
【0116】
B細胞悪性腫瘍は血液の新生物であり、とりわけ、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、及び白血病を包含する。これらは、リンパ組織(リンパ腫の場合のように)または骨髄(白血病及び骨髄腫の場合のように)のいずれかを起源とし得、これらは全てリンパ球または白血球の制御不能な増殖に関与する。B細胞増殖性障害には多くのサブタイプがある。B細胞増殖性障害の疾患経過及び治療は、B細胞増殖性障害サブタイプに依存するが、各サブタイプ内であっても臨床症状、形態学的外観、及び療法への応答は一様ではない。
【0117】
いくつかの実施形態において、化合物7はオーロラキナーゼの活性を阻害及び/または低減する。オーロラキナーゼ(オーロラ-A、オーロラ-B、オーロラ-C)は、増殖細胞に不可欠であるセリン/スレオニンプロテインキナーゼであり、有糸分裂及び減数分裂における(有糸分裂紡錘体の形成から細胞質分裂に及ぶ)種々のステップの重要な調節因子として同定されている。オーロラファミリーキナーゼは、細胞分裂に不可欠であり、腫瘍形成及びがん感受性と密接に関連付けられている。様々なヒトのがんにおいて、オーロラ-A、オーロラ-B、及び/またはオーロラCのキナーゼ活性の過剰発現及び/または上方調節が観察されている。オーロラキナーゼの過剰発現は、がんの進行及びい生存予後不良と臨床的に相関する。オーロラキナーゼは、細胞周期を調節するリン酸化事象(例えば、ヒストンH3のリン酸化)に関与する。細胞周期の調節不全は、細胞増殖及び他の異常をもたらし得る。
【0118】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、IDH1変異を有する患者を治療する方法を提供し、化合物7は、1つ以上のオーロラキナーゼの活性も阻害及び/または低減する。
【0119】
いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、BTK及び/またはオーロラキナーゼの阻害は、細胞質分裂の失敗及び有糸分裂からの異常終了をもたらし得、これは、多倍数体細胞、細胞周期停止、そして最終的にはアポトーシスを生じ得る。
【0120】
したがって、1つの実施形態において、化合物7の投与は多倍数体を誘導する。別の実施形態において、化合物7の投与はアポトーシスを誘導する。例えば、1つの実施形態において、細胞を化合物7の有効量に接触させ、それによって細胞多倍数体及び/または細胞周期停止及び/またはアポトーシスを引き起こす。細胞はがん細胞または腫瘍細胞であり得る。したがって、1つの実施形態において、化合物7の投与は、がん及び/または腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導する。また別の実施形態において、化合物7の投与は、変異型BTK(例えば、C481S)を発現するがん及び/または腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導する。
【0121】
本開示の任意の実施形態において、化合物7は、野生型BTK及び/または変異型BTKの活性または発現を阻害及び/または低減することができる。したがって、いくつかの実施形態において、化合物7は、野生型BTKの活性または発現を阻害及び/または低減する。他の実施形態において、化合物7は、変異型BTKの活性または発現を阻害及び/または低減する。変異型BTKは少なくとも1つの点変異を含み得る。1つの実施形態において、変異型BTKは、システイン残基上に少なくとも1つの点変異を含む。1つの実施形態において、変異型BTKは、残基C481に少なくとも1つの点変異を含む。いくつかの実施形態において、変異型BTKは少なくともC481S変異を含む。
【0122】
様々な点変異が本開示の範囲内で企図され、上述されている。例えば、少なくとも1つの点変異は、BTK上の任意の残基に対するものであり得る。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異はシステイン残基上にある。1つの実施形態において、システイン残基はBTKのキナーゼドメイン内にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、残基E41、P190、及びC481からなる群より選択される1つ以上にある。いくつかの実施形態において、BTKの変異はアミノ酸位置481にある。C481点変異は、任意のアミノ酸部分で置換され得る。いくつかの実施形態において、BTKの変異はC481Sである。1つの実施形態において、残基C481の点変異は、C481S、C481R、C481T、及び/またはC481Yから選択される。1つの実施形態において、少なくとも1つの点変異は、E41K、P190K、及びC481Sからなる群より選択される1つ以上である。
製剤
【0123】
化合物7、その医薬的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、及び異性体、または化合物7もしくはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物の有効量は、当業者が既知の方法に基づいて決定することができる。
【0124】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物または医薬製剤は、化合物7またはその医薬的に許容される塩と、医薬的に許容される担体とを含む。医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤としては、限定されるものではないが、米国食品医薬品局によってヒトまたは家畜での使用に許容されるものとして承認されている任意のアジュバント、担体、希釈剤、流動化剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、化学調味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が挙げられる。
【0125】
1つの実施形態において、好適な医薬的に許容される担体としては、限定されるものではないが、不活性固体充填剤または希釈剤、及び無菌の水性または有機溶液が挙げられる。医薬的に許容される担体は当業者に周知されており、限定されるものではないが、約0.01~約0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液、または0.8%食塩水が挙げられる。このような医薬的に許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、及び乳濁液であり得る。本出願での使用に適した非水性溶媒の例としては、限定されるものではないが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。
【0126】
本出願での使用に適した水性担体としては、限定されるものではないが、水、エタノール、アルコール/水性溶液、グリセロール、乳濁液、または懸濁液(食塩水及び緩衝媒体を含む)が挙げられる。経口用担体は、エリキシル、シロップ、カプセル、錠剤などであり得る。
【0127】
本出願での使用に適した液体担体は、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリキシル、及び加圧化合物の調製で使用することができる。活性成分は、医薬的に許容される液体担体(例えば、水、有機溶媒、両方の混合物、または医薬的に許容される油もしくは脂質)中に溶解または懸濁することができる。液体担体は、他の好適な医薬添加剤(例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定化剤、または浸透圧調節剤)を含むことができる。
【0128】
本出願での使用に適した液体担体としては、限定されるものではないが、水(上記のような添加剤を部分的に含むもの、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール(例えば、グリコール)を含む)ならびにその誘導体、ならびに油(例えば、分留ココナツ油及びラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与の場合、担体は、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルとすることができる。無菌液体担体は、非経口投与用の化合物を含む無菌液体形態では有用である。本明細書で開示される加圧化合物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の医薬的に許容される噴射剤とすることができる。
【0129】
本出願での使用に適した固体担体としては、限定されるものではないが、不活性物質、例えば、ラクトース、デンプン、グルコース、メチル-セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マンニトールなどが挙げられる。固体担体は、さらに、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、充填剤、流動化剤、圧縮助剤、結合剤、または錠剤崩壊剤として作用する1つ以上の物質を含むことができ、また、カプセル化材料であってもよい。粉末の場合、担体は、微粉化活性化合物と混和した微粉化固体であり得る。錠剤の場合、活性化合物は、必要な圧縮特性を有する担体と好適な割合で混合し、所望の形状及びサイズに固めることができる。粉末及び錠剤は、好ましくは、最大99%の活性化合物を含む。好適な固体担体としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、及びイオン交換樹脂が挙げられる。錠剤は、圧縮または成形によって、任意選択で1つ以上の補助成分と共に作製することができる。圧縮錠剤の調製は、好適な機械内で、粉末または顆粒などの流動形態の活性成分を、任意選択で結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、または界面活性剤もしくは分散剤と混合して圧縮することにより行われ得る。成形錠剤は、不活性希釈液で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。錠剤は、任意選択でコーティングしても刻み目を付けてもよく、また、錠剤中の活性成分が緩徐放出または制御放出されるように、例えば様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて製剤化して、所望の放出プロファイルをもたらすことができる。錠剤は、胃以外の腸の一部で放出させるために、任意選択で腸溶コーティングと共に提供することができる。
【0130】
本出願で使用するのに適した非経口用担体としては、限定されるものではないが、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、ならびに固定油が挙げられる。静注用担体としては、液体及び栄養補充液、電解質補充液、例えば、リンゲルデキストロースに基づくものなどが挙げられる。防腐剤及び他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどが存在してもよい。
【0131】
本出願で使用するのに適した担体は、必要に応じて、当技術分野で知られている従来的な技法を用いて、崩壊剤、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤などと混合することができる。また、担体は、当技術分野で一般的に知られているように、化合物と有害に反応しない方法を用いて滅菌してもよい。
【0132】
希釈剤を本発明の製剤に添加することができる。希釈剤は、固体の医薬組成物及び/または組合せの嵩を増やし、当該組成物及び/または組合せを含む医薬品剤形を患者及び介護者にとって扱いやすい剤形にすることができる。固体の組成物及び/または組合せのための希釈剤としては、例えば、微結晶性セルロース(例えばAVICEL)、マイクロファインセルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT(登録商標))、塩化カリウム、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、及びタルクが挙げられる。
【0133】
本開示の目的において、本開示の医薬組成物は、医薬に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを含む製剤において、経口、非経口、吸入スプレー、局所、または直腸を含む様々な手段による投与用に製剤化することができる。本明細書で使用する場合、非経口という用語は、様々な注入技法を用いた皮下、静脈内、筋肉内、または胸骨内の注射を含む。本明細書で使用する場合、動脈内及び静脈内注射にはカテーテルによる投与が含まれる。
【0134】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で周知されている任意の従来的な方法を使用することにより、任意のタイプの製剤及び薬物送達システムに調製することができる。本発明の医薬組成物は、注入用製剤に製剤化することができ、このような製剤は、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、筋肉内、皮下、または骨内を含む経路によって投与することができる。また、経口投与することも、直腸、腸、または鼻腔の粘膜を介し非経口投与することもできる(Gennaro,A.R.,ed.(1995)Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照)。好ましくは、組成物は、経腸的にではなく局所的に投与される。例えば、組成物は、注射するか、または標的化薬物送達システム(例えば、リザーバー製剤もしくは持続放出製剤)を介し送達することができる。
【0135】
本発明の医薬製剤は、当技術分野で周知されている任意の方法(例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセス)によって調製することができる。上記のように、本発明の組成物は、活性分子を医薬用調製物に加工するのを容易にする1つ以上の生理的に許容される担体(例えば、賦形剤及びアジュバント)を含むことができる。
【0136】
適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。注射用には、例えば組成物を水性溶液中で、好ましくは、生理的に適合性の緩衝液(例えば、ハンクス液、リンガー液、または生理食塩緩衝液)中で製剤化することができる。経粘膜または経鼻投与用には、浸透すべきバリアに適切な浸透剤が製剤で使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られている。本発明の1つの実施形態において、本発明の化合物は経口用製剤で調製することができる。経口投与用には、活性化合物を当技術分野で知られている医薬的に許容される担体と組み合わせることによって、化合物を容易に製剤化することができる。このような担体により、本開示の化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして対象による経口摂取用に製剤化することが可能になる。また、化合物は、従来の坐剤基剤(例えば、カカオバターまたは他のグリセリド)を含む直腸用組成物(例えば、坐剤または停留浣腸)中で製剤化することもできる。
【0137】
経口用の医薬調製物は、固体賦形剤として得ることができ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、所望の場合は好適なアジュバントを添加した後に、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣錠コアを得る。好適な賦形剤は、詳細には、充填剤(例えば、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む))、セルロース製剤(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)製剤)であり得る。また、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))を用いることもできる。また、湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムなど)を添加することもできる。
【0138】
糖衣錠コアは好適なコーティングと共に提供される。この目的において、濃縮された糖溶液が使用されてもよく、これは任意選択で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または色素を、識別のため、または活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるため、錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0139】
経口投与用の医薬製剤としては、ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチン及び可塑剤(、例えば、グリセロールまたはソルビトール)で作製された軟質の密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意選択で安定剤との混合物中に、活性成分を含むことができる。軟質カプセルの場合、活性化合物は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁することができる。加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与用の全ての製剤は、このような投与に適した投薬量であるものとする。
【0140】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、経皮的に(例えば、皮膚パッチを介して)、または局所的に投与することができる。1つの態様において、本発明の経皮用または局所用製剤はさらに、1つ以上の浸透増強剤または他のエフェクター(送達される化合物の移動を強化する薬剤を含む)を含み得る。好ましくは、経皮または局所投与は、例えば、位置特異的送達が所望される状況で使用され得る。
【0141】
吸入による投与用には、本発明の化合物は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適な気体)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で好都合に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、適切な投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定される。吸入器または吹き入れ器で使用するための(例えば、ゼラチンの)カプセル及びカートリッジを製剤化することができる。これらは典型的には、化合物の粉末混合物及び好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)を含む。注射による(例えば、ボーラス注射または持続注入による)非経口投与用に製剤化された組成物は、単位剤形(例えば、アンプルまたは多回用量容器)で、添加された保存剤と共に提示され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中で懸濁液、溶液、または乳濁液などの形態をとることができ、また、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤などの調合剤を含むことができる。非経口投与用の製剤には、水性溶液または水溶性形態の他の組成物が含まれる。
【0142】
活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射用懸濁液として調製することもできる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)及び合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド)、またはリポソームを挙げることができる。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン)を含み得る。任意選択で、懸濁液は、化合物の溶解度を高めて高度に濃縮された溶液の調製を可能にする好適な安定剤または薬剤を含むこともできる。代替的に、活性成分は、使用する前に好適な担体(例えば、無菌パイロジェンフリー水)を用いて構成するために粉末形態をとってもよい。
【0143】
上記のように、本発明の組成物はリザーバー製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用型製剤は、植え込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、本発明の化合物は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいはやや難溶の誘導体(例えば、やや難溶の塩)として、製剤化することができる。
【0144】
本発明の治療方法で使用される任意の組成物に関して、治療有効用量は、まず当技術分野で周知されている様々な技法を用いて推定することができる。例えば、細胞培養アッセイから得られた情報に基づき、動物モデルでIC50を含む循環濃度範囲を達成するように用量を製剤化することができる。同様に、ヒト対象に適切な投薬量範囲は、例えば、細胞培養アッセイ及び他の動物の試験から得られたデータを用いて決定することができる。
【0145】
薬剤の治療有効用量とは、対象における症状の改善または生存期間の延長をもたらす薬剤の量を指す。このような分子の毒性及び治療効果は、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬的手順によって(例えば、LD50(個体群の50%に対し致死的な用量)及びED50(個体群の50%において治療的に有効な用量)を決定することにより)決定され得る。有毒と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これはLD50o/ED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す薬剤が求められている。
【0146】
投薬量は、好ましくは、毒性がわずかであるまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内に収まる。投薬量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。正確な製剤、投与経路、及び投薬量は、対象の状態の詳細を考慮して、当技術分野で十分に知られている方法に従って選択するものとする。
【0147】
加えて、投与される薬剤または組成物の量は、年齢、体重、性別、健康状態、治療される対象の疾患の程度、苦痛の重篤度、投与様式、及び処方する医師の判断を含む様々な因子に依存する。
【0148】
本開示の化合物または医薬組成物は、単一または複数の単位剤形で製造及び/または投与することができる。
【0149】
特定の実施形態において、本発明は、活性成分としての本明細書で開示される化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグの治療有効量と、医薬的に許容される賦形剤または担体とを組み合わせて含む、医薬組成物及び/または医薬的組合せを提供する。賦形剤は、様々な目的で製剤に添加される。
【0150】
いくつかの実施形態において、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、少なくとも1つの治療活性薬剤とを、単一の医薬組成物及び/または医薬的組合せに製剤化することができる。いくつかの実施形態において、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、少なくとも1つの治療活性薬剤とを、医薬的に許容される賦形剤または担体を含む別々の医薬組成物及び/または医薬的組合せに製剤化する。
【0151】
1つの実施形態において、単一の医薬組成物及び/または組合せ組成物中にある少なくとも1つの治療活性薬剤は抗がん剤である。
【0152】
特定の実施形態において、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグ、ならびに少なくとも1つの治療活性薬剤は、単一の医薬組成物及び/または組合せ組成物に製剤化することができる。
【0153】
特定の実施形態において、本発明は、治療有効量の以下:
【化3】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つのさらなる抗がん剤とを含む医薬的組合せであり得る。特定の実施形態において、抗がん剤はBCL-2(B細胞リンパ腫2)タンパク質阻害剤である。別の特定の実施形態において、BCL-2タンパク質阻害剤は、ベネトクラクス、ナビトクラクス、及びABT-737からなる群のうちの1つ以上から選択される。別の実施形態において、BCL-2タンパク質阻害剤はベネトクラクスである。
【0154】
別の実施形態において、医薬的組合せは、化合物7及びベネトクラクスの両方を経口用剤形内に含む。特定の実施形態において、化合物7及びベネトクラクスの両方が同じ経口用剤形内にある。特定の実施形態において、経口用投薬組成物は錠剤である。
【0155】
別の実施形態において、化合物7及びベネトクラクスは、対象に同時投与される。
【0156】
特定の実施形態において、ベネトクラクスの投薬量は約1mg~約150mgの範囲である。特定の実施形態において、範囲は約10から125mgの間である。特定の実施形態において、範囲は約10から100mgの間である。特定の実施形態において、範囲は約20から75mgの間である。特定の実施形態において、範囲は約30から70mgの間である。
【0157】
特定の実施形態において、化合物7の投薬量は約1mg~約500mgの範囲である。特定の実施形態において、範囲は約10から300mgの間である。特定の実施形態において、範囲は約20から200mgの間である。特定の実施形態において、範囲は約30から150mgの間である。特定の実施形態において、範囲は約50から100mgの間である。
【0158】
活性成分及び賦形剤は、当技術分野で知られている方法に従って、組成物及び/または組合せ、ならびに剤形に製剤化することができる。
【0159】
1つの実施形態において、剤形は、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、医薬的に許容される賦形剤及び担体とを別々の構成要素として含むキットとして提供することができる。1つの実施形態において、剤形は、化合物7あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグと、少なくとも1つの追加の治療活性薬剤と、医薬的に許容される賦形剤及び担体とを別々の構成要素として含むキットとして提供することができる。いくつかの実施形態において、剤形キットは、医師及び患者が、使用前に、化合物7の化合物あるいはその医薬的に許容される塩、エステル、溶媒和物、及び/またはプロドラッグを医薬的に許容される賦形剤及び担体と共に溶解、懸濁、または混合することによって経口用溶液または注射用溶液を製剤化するのを可能にする。
【0160】
本発明についての全般的な説明をしてきたが、本発明は、以下の実施例を参照することを通じてより容易に理解されるであろう。実施例は、例として提供するものであり、本発明を限定するようには意図されていない。別段の明記がない限り、条件及び手順は、当技術分野で一般的に知られているように実施される。
【0161】
本発明の特定の実施形態
【0162】
実施形態1.対象における変異型IDH1の活性または発現を阻害または低減する方法であって、
【化4】
またはその医薬的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【0163】
実施形態2.前記変異型IDH1が少なくとも1つの点変異を含む、実施形態1に記載の方法。
【0164】
実施形態3.前記少なくとも1つの点変異が、G97X、R100X、R132X、H133X、及びA134Xからなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態2に記載の方法。
【0165】
実施形態4.前記G97X変異がG97Dであり、及び/または前記H133X変異がH133Qであり、及び/または前記A134X変異がA134Dである、実施形態3に記載の方法。
【0166】
実施形態5.前記R132X変異が、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gからなる群より選択される、請求項実施形態に記載の方法。
【0167】
実施形態6.前記R132X変異がR132HまたはR132Cである、実施形態5に記載の方法。
【0168】
実施形態7.前記R132X変異がR132Hである、実施形態7に記載の方法。
【0169】
実施形態8.前記少なくとも1つの点変異が、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0170】
実施形態9.前記少なくとも1つの点変異が、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0171】
実施形態10.前記対象が哺乳類である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【0172】
実施形態11.前記対象がヒトである、実施形態10に記載の方法。
【0173】
実施形態12.前記方法が、野生型または変異型Fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)の活性または発現の阻害または低減の必要のある対象においてそれを行うことをさらに含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0174】
実施形態13.前記FLT3が変異型である、実施形態12に記載の方法。
【0175】
実施形態14.前記変異型FLT3が少なくとも1つの点変異を含む、実施形態13に記載の方法。
【0176】
実施形態15.前記少なくとも1つの点変異が、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態14に記載の方法。
【0177】
実施形態16.前記変異型FLT3が、D835に少なくとも1つの変異を含む、実施形態14に記載の方法。
【0178】
実施形態17.前記変異型FLT3が、F691に少なくとも1つの変異を含む、実施形態14に記載の方法。
【0179】
実施形態18.前記変異型FLT3が、K663に少なくとも1つの変異を含む、実施形態14に記載の方法。
【0180】
実施形態19.前記変異型FLT3が、N841に少なくとも1つの変異を含む、実施形態14に記載の方法。
【0181】
実施形態20.前記少なくとも1つの点変異がFLT3のチロシンキナーゼドメイン内にある、実施形態14に記載の方法。
【0182】
実施形態21.前記少なくとも1つの点変異がFLT3の活性化ループ内にある、実施形態14に記載の方法。
【0183】
実施形態22.前記少なくとも1つの点変異が、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、及び696からなる群より選択される1つ以上のアミノ酸残基位置上にある、実施形態14に記載の方法。
【0184】
実施形態23.前記変異型FLT3がさらなるITD変異を含む、実施形態14に記載の方法。
【0185】
実施形態24.前記変異型FLT3が、FLT3-D835H、FLT3-D835V、FLT3-D835Y、FLT3-ITD-D835V、FLT3-ITD-D835Y、FLT3-ITD-D835H、FLT3-F691L、FLT3-ITD-F691L、FLT3-K663Q、FLT3-ITD-K663Q FLT3-N841I、FLT3-ITD-N841I、FLT-3R834Q FLT3-ITD-834Q、FLT3-D835G、FLT3-ITD-D835G、FLT3-Y842C、及びFLT3-ITD-Y842Cからなる群より選択される1つ以上の変異を有する、実施形態14に記載の方法。
【0186】
実施形態25.前記少なくとも1つの点変異が、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である、実施形態22に記載の方法。
【0187】
実施形態26.前記少なくとも1つの点変異が、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である、実施形態22に記載の方法。
【0188】
実施形態27.がんの治療の必要のある対象においてそれを行う方法であって、前記対象に化合物7:
【化5】
またはその医薬的に許容される塩を投与することを含み、前記対象がIDH1の変異形態を有する、前記方法。
【0189】
実施形態28.前記がんが血液悪性腫瘍またはB細胞悪性腫瘍である、実施形態27に記載の方法。
【0190】
実施形態29.治療される前記B細胞悪性腫瘍が、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群のうちの1つ以上から選択される、実施形態28に記載の方法。
【0191】
実施形態30.治療される前記B細胞悪性腫瘍がマントル細胞リンパ腫(MCL)である、実施形態31に記載の方法。
【0192】
実施形態31.治療される前記B細胞悪性腫瘍がB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である、実施形態31に記載の方法。
【0193】
実施形態32.治療される前記B細胞悪性腫瘍がバーキットリンパ腫である、実施形態31に記載の方法。
【0194】
実施形態33.治療される前記B細胞悪性腫瘍が慢性リンパ性白血病(CLL)である、実施形態31に記載の方法。
【0195】
実施形態34.治療される前記B細胞悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、実施形態31に記載の方法。
【0196】
実施形態35.化合物7が、変異型IDH1の活性または発現を阻害及び/または低減する、実施形態27に記載の方法。
【0197】
実施形態36.前記変異型IDH1が少なくとも1つの点変異を含む、実施形態35に記載の方法。
【0198】
実施形態37.前記少なくとも1つの点変異が、G97D、R100X、R132X、H133Q、及びA134Dからなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態36に記載の方法。
【0199】
実施形態38.前記R132X変異が、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gからなる群より選択される、実施形態37に記載の方法。
【0200】
実施形態39.前記R132X変異がR132HまたはR132Cである、実施形態38に記載の方法。
【0201】
実施形態40.前記R132X変異がR132Hである、実施形態39に記載の方法。
【0202】
実施形態41.患者が、NPMl、FLT3、TET2、CEBPA、DNMT3A、MLL、及びこれらの組合せのいずれかの同時変異を有する、実施形態27~40のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施形態42.化合物7が、対象における野生型または変異型Fms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)の活性または発現を阻害及び/または低減する、実施形態27~41のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施形態43.前記FLT3が変異型である、実施形態42に記載の方法。
【0205】
実施形態44.前記変異型FLT3が少なくとも1つの点変異を含む、実施形態43に記載の方法。
【0206】
実施形態45.前記少なくとも1つの点変異が、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態44に記載の方法。
【0207】
実施形態46.前記変異型FLT3がFLT3-ITDである、実施形態43に記載の方法。
【0208】
実施形態47.前記血液悪性腫瘍が白血病である、実施形態28に記載の方法。
【0209】
実施形態48.前記白血病が、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、前リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、成人T細胞急性リンパ性白血病、3系統骨髄異形成を伴う急性骨髄性白血病、混合系統白血病、好酸球性白血病、及び/またはマントル細胞リンパ腫である、実施形態47に記載の方法。
【0210】
実施形態49.前記白血病が急性骨髄性白血病である、実施形態48に記載の方法。
【0211】
実施形態50.前記対象が再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する、実施形態49に記載の方法。
【0212】
実施形態51.急性骨髄性白血病の治療の必要のある対象においてそれを行う方法であって、前記対象に化合物7:
【化6】
またはその医薬的に許容される塩を投与することを含み、前記対象がIDH1の変異形態を有する、前記方法。
【0213】
実施形態52.前記対象が再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する、実施形態50に記載の方法。
【0214】
実施形態53.前記変異型IDH1が少なくとも1つの点変異を含む、実施形態52または53に記載の方法。
【0215】
実施形態54.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、G97、R100X、R132X、H133X、及びA134Xからなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態53に記載の方法。
【0216】
実施形態55.前記G97X変異がG97Dであり、及び/または前記H133X変異がH133Qであり、及び/または前記A134X変異がA134Dである、実施形態54に記載の方法。
【0217】
実施形態56.前記R132X変異が、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gからなる群より選択される、実施形態54に記載の方法。
【0218】
実施形態57.前記R132X変異がR132HまたはR132Cである、実施形態56に記載の方法。
【0219】
実施形態58.前記R132X変異がR132Hである、実施形態56に記載の方法。
【0220】
実施形態59.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、同じアレル上に存在する2つ以上の点変異である、実施形態53~58のいずれかに記載の方法。
【0221】
実施形態60.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、異なるアレル上に存在する2つ以上の点変異である、実施形態53~58のいずれかに記載の方法。
【0222】
実施形態61.前記対象が哺乳類である、実施形態51~60のいずれかに記載の方法。
【0223】
実施形態62.前記対象がヒトである、実施形態61に記載の方法。
【0224】
実施形態63.患者が、NPMl、FLT3、TET2、CEBPA、DNMT3A、MLL、及びこれらの組合せのいずれかの同時変異を有する、実施形態51~62のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
実施形態64.FLT3が変異型である、実施形態63に記載の方法。
【0226】
実施形態65.前記変異型FLT3が少なくとも1つの点変異を含む、実施形態64に記載の方法。
【0227】
実施形態66.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、D835、F691、K663、Y842、及びN841からなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態65に記載の方法。
【0228】
実施形態67.前記変異型FLT3がFLT3-ITDである、実施形態64に記載の方法。
【0229】
実施形態68.前記対象がBTK上に変異を有する、実施形態51~67のいずれかに記載の方法。
【0230】
実施形態69.前記変異が少なくとも1つの点変異である、実施形態68に記載の方法。
【0231】
実施形態70.前記点変異がシステイン残基上にあり、かつBTKのキナーゼドメイン内にある、実施形態69に記載の方法。
【0232】
実施形態71.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、残基E41、P190、及びC481からなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態68に記載の方法。
【0233】
実施形態72.BTKの前記変異がアミノ酸位置481にある、実施形態68に記載の方法。
【0234】
実施形態73.BTKの前記変異が、C481S、C481R、C481T、及び/またはC481Yから選択される、実施形態72に記載の方法。
【0235】
実施形態74.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、C481Sである、実施形態72に記載の方法。
【0236】
実施形態75.前記がんが、神経膠腫、多形膠芽腫、傍神経節腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、前立腺癌、甲状腺癌、結腸癌、軟骨肉腫、胆管癌、末梢性T細胞リンパ腫、及び黒色腫からなる群より選択される、実施形態27及び35~46のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
実施形態76.前記がんが、神経膠腫、軟骨肉腫、及び胆管癌から選択される、実施形態75に記載の方法。
【0238】
実施形態77.前記対象がBTK上に少なくとも1つの変異を有する、実施形態27~50及び75~76のいずれかに記載の方法。
【0239】
実施形態78.前記変異が少なくとも1つの点変異である、実施形態77に記載の方法。
【0240】
実施形態79.前記点変異がシステイン残基上にあり、かつBTKのキナーゼドメイン内にある、実施形態78に記載の方法。
【0241】
実施形態80.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、残基E41、P190、及びC481からなる群より選択される1つ以上の残基上にある、実施形態78に記載の方法。
【0242】
実施形態81.BTKの前記変異がアミノ酸位置481にある、実施形態78に記載の方法。
【0243】
実施形態82.BTKの前記変異が、C481S、C481R、C481T、及び/またはC481Yから選択される、実施形態81に記載の方法。
【0244】
実施形態83.前記変異が少なくとも1つの点変異であり、C481Sである、実施形態82に記載の方法。
【0245】
実施形態84.がんの治療の必要のある対象においてそれを行う方法であって、前記対象に化合物7:
【化7】
【0246】
またはその医薬的に許容される塩を投与することを含み、前記対象が、IDH1、IDH2、TP53、ASXL1、及びSRSF2のうちの1つ以上の変異形態を有する、前記方法。
【0247】
実施形態85.前記対象がFLT3の変異形態をさらに有する、実施形態84に記載の方法。
【0248】
実施形態86.FLT3の前記変異形態がチロシンキナーゼドメイン変異である、実施形態85に記載の方法。
【0249】
実施形態86.前記対象が、IDH1、IDH2、及びTP53のうちの1つ以上の変異形態を有する、実施形態84に記載の方法。
【0250】
実施形態87.前記TP53変異が前記対象の体細胞のミスセンス変異である、実施形態86に記載の方法。
【0251】
実施形態88.前記変異がコドン125から300の間である、実施形態87に記載の方法。
【0252】
実施形態89.前記変異が、TP53遺伝子のDNA結合ドメインをコードする領域内にある、実施形態87に記載の方法。
【0253】
実施形態90.前記変異が、前記TP53遺伝子のコドン175、248、及び273にある、実施形態87に記載の方法。
【0254】
実施形態91.前記変異が、前記TP53遺伝子のコドン196、213、245、282、及び306にある、実施形態87に記載の方法。
【0255】
実施形態92.前記変異が前記ASXL1遺伝子の変異である、実施形態84に記載の方法。
【0256】
実施形態93.ASXL1の前記変異がグアニンヌクレオチドの重複(c.1934dupG)に由来する、実施形態92に記載の方法。
【0257】
実施形態94.前記変異がセリン/アルギニンリッチスプライシング因子2(SRSF2)にある、実施形態84に記載の方法。
【0258】
実施形態95.前記Srsf2変異がタンパク質のアミノ酸95の変異をもたらす、実施形態94に記載の方法。
【0259】
実施形態96.前記Srsf2変異が、タンパク質のアミノ酸変異Pro95His、Pro95Leu、及びP95Argをもたらす、実施形態95に記載の方法。
【0260】
実施形態97.前記Srsf2変異がタンパク質のアミノ酸変異Pro95Hisをもたらす、実施形態96に記載の方法。
【0261】
実施形態98.前記がんが血液悪性腫瘍またはB細胞悪性腫瘍である、実施形態84~97のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
実施形態99.治療される前記B細胞悪性腫瘍が、マントル細胞リンパ腫(MCL)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群のうちの1つ以上から選択される、実施形態98に記載の方法。
【0263】
実施形態100.治療される前記B細胞悪性腫瘍がマントル細胞リンパ腫(MCL)である、実施形態99に記載の方法。
【0264】
実施形態100.治療される前記B細胞悪性腫瘍がB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)である、実施形態99に記載の方法。
【0265】
実施形態101.治療される前記B細胞悪性腫瘍がバーキットリンパ腫である、実施形態99に記載の方法。
【0266】
実施形態102.治療される前記B細胞悪性腫瘍が慢性リンパ性白血病(CLL)である、実施形態99に記載の方法。
【0267】
実施形態103.治療される前記B細胞悪性腫瘍がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、実施形態99に記載の方法。
【0268】
実施形態104.前記がんが血液悪性腫瘍である、実施形態99に記載の方法。
【0269】
実施形態105.前記血液悪性腫瘍が白血病である、実施形態84~97のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
実施形態106.前記白血病が、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、前リンパ球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、成人T細胞急性リンパ性白血病、3系統骨髄異形成を伴う急性骨髄性白血病、混合系統白血病、好酸球性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、及び/またはマントル細胞リンパ腫である、実施形態105に記載の方法。
【0271】
実施形態107.前記白血病が急性骨髄性白血病である、実施形態106に記載の方法。
【0272】
実施形態108.前記対象が再発性または難治性急性骨髄性白血病を有する、実施形態106に記載の方法。
【0273】
実施形態109.化合物7が、治療的有効量の以下:
【化8】
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つのさらなる抗がん剤とを含む医薬的組合せ内にある、実施形態1~108のいずれかに記載の方法。
【0274】
実施形態110.前記抗がん剤がBCL-2(B細胞リンパ腫2)タンパク質阻害剤である、実施形態109に記載の方法。
【0275】
実施形態111.前記BCL-2タンパク質阻害剤が、ベネトクラクス、ナビトクラクス、及びABT-737からなる群のうちの1つ以上から選択される、実施形態110に記載の方法。
【0276】
実施形態112.前記組合せが化合物7及びベネトクラクスである、実施形態111に記載の方法。
【実施例】
【0277】
合成:材料及び方法
様々な出発物質は、当技術分野で周知されている従来的な合成方法に従って調製することができる。出発物質のいくつかは、試薬の製造業者及び供給業者(例えば、限定されるものではないが、Aldrich、Sigma、TCI、Wako、Kanto、Fluorchem、Acros、Abocado、Alfa、Flukaなど)から市販されている。
【0278】
本開示の化合物は、以下の従来的な方法及びプロセスにより、容易に入手可能な出発物質から調製することができる。本発明の化合物を製造するには、典型的または最適なプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応体のモル比、溶媒、圧力など)としての別段の指定がない限り、異なる方法も使用され得る。最適な反応条件は、用いられる特定の反応体または溶媒に応じて変動し得る。ただし、このような条件は、当業者が従来的な最適化プロセスにより決定することができる。
【0279】
加えて、当業者は、ある特定の反応が起こる前に、いくつかの官能基を様々な保護基を用いて保護/脱保護することができることを認識する。特定の官能基を保護及び/または脱保護するのに適した条件ならびに保護基の使用については、当技術分野で周知されている。
【0280】
例えば、様々な種類の保護基がT.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Second edition,Wiley,New York,1991及び上記で引用された他の参考文献に記載されている。
【0281】
本発明の1つの実施形態において、本発明の化合物7は、以下に示されるようなスキーム1に従って中間体の化合物Dを合成し、次いで化合物Dを反応スキーム2の手順に供することにより、調製することができる。ただし、上記の化合物Dの合成方法は反応スキーム1に限定されない。
スキーム1
【化9】
【0282】
反応スキーム1の出発物質(すなわち、化合物A)を調製するための方法は国際特許公開第WO2012/014017号に記載されており、化合物Dの調製については米国特許出願公開第US2015/0336934号に記載されている。
【0283】
実施例1:1-{3-フルオロ-4-[7-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-1-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イル]-フェニル}-3-(2,4,6-トリフルオロ-フェニル)-ウレア(化合物7)の合成
【化10】
【0284】
2,4,6-トリフルオロ安息香酸(0.08g、0.45mmol)をジエチルエーテル(5.7mL)中に分散させ、五塩化リン(PCl5、0.11g、0.52mmol)をゆっくりと添加し、次いで1時間にわたって撹拌した。反応が完了したら、有機溶媒を室温未満の減圧下で濃縮し、次いで反応溶液にアセトン(3.8mL)を添加することにより希釈した。続いて、水(0.28mL)に溶解したアジ化ナトリウム(NaN3、0.035g、0.545mmol)を0℃でゆっくりと反応溶液に滴下した。室温で2時間撹拌した後、このようにして形成された2,4,6-トリフルオロベンゾイルアジドを酢酸エチルで希釈し、次いで水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、THF(2mL)中に分散し、4-(4-アミノ-2-フルオロフェニル)-7-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)イソインドリン-1-オン(化合物D、0.073g、0.23mmol)を含むTHF(7.5mL)を添加し、次いで90℃で3時間にわたって撹拌した。反応が完了したら、溶媒を減圧下で濃縮し、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:塩化メチレン:メタノール=20:1)によって精製して、化合物7(0.026g、収率:23%)を得た。1H-NMR (300 MHz, DMSO-d): 14.46-14.37 (m 1H), 9.47-9.45 (br m, 1H), 9.37 (s, 1H), 8.45 (d, J=l.8Hz, 1H), 8.30-8.27 (br m, 1H), 7.63-7.46 (m, 3H), 7.31-7.26 (m, 3H), 7.09-6.84 (m, 1H), 4.42 (s, 2H), 2.31-2.21 (m, 3H). LCMS [M+1]: 496.3.
【0285】
ゲノミクス解析の実施例
以下のゲノミクス解析実施例2~4に関しては、公表されている手順[Tyner,J.W.,Tognon,C.E.,Bottomly,D.et al. Functional genomic landscape of acute myeloid leukaemia.Nature 562,526-531(2018) doi:10.1038/s41586-018-0623-z;Kurtz,S.E.,Eide,C.A.,Kaempf,A.et al. Molecularly targeted drug combinations demonstrate selective effectiveness for myeloid- and lymphoid-derived hematologic malignancies.PNAS September 5,2017 114(36)7554-7563](その全体が参照により本明細書に援用される)に従って試験を実施した。
【0286】
全ての患者試料の臨床的特徴及び薬物感受性を解析した。AML、CLL、ALL、及びMDS/MPN、ならびにその他の患者試料を、患者の電子医療記録から得られた臨床、予後、遺伝、細胞遺伝学的、及び表面抗原の特性における拡大疾患特異的パネルに関して解析した。AML試料の遺伝的キャラクタリゼーションには、血液悪性腫瘍で共通して変異している遺伝子の臨床的ディープシークエンシングパネルの結果が含まれた(Knight Diagnostic Laboratories,OHSUからのGeneTrailsパネル、UT SouthwesternからのFoundation Medicine報告書)。
【0287】
化合物7及び/またはベネトクラクスを7点濃度系列のウェル内で調製した。単剤に使用するものと同一の7点固定モル濃度系列で48通りの示された対の阻害剤組合せを用いて、類似のプレートを調製した。DMSOの最終濃度は全てのウェルで≦0.1%であった。全ての単剤及び組合せのデスティネーションプレートセットを-20℃で保存し、使用直前に解凍した。初代単核細胞を、収集から24時間以内に単一薬剤及び組合せ阻害剤パネルの全体にわたって平板培養した。細胞をウェル当たり10,000細胞で、FBS(10%)、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びβ-メルカプトエタノール(10-4M)を追加したRPMI 1640培地の入ったアッセイプレートに播種した。5% CO2中37℃で3日間培養した後、MTS試薬(CellTiter96 AQueous One;Promega)を添加し、490nmにおける光学密度を測定し、生の吸光度値を参照ブランク値に合わせて調整し、次いで細胞生存率を決定するために使用した(未処置の対照ウェルを基準に正規化した)。
【0288】
多数の初代白血病試料の各々について、化合物7、ベネトクラクス、または2つの化合物の組合せの7点希釈系列の各用量における正規化された生存率値を解析した。用量濃度をlog10変換し、切片及び傾きに対し最尤推定法を使用することによってプロビット回帰曲線を各7点薬物感受性プロファイルに適合させた。プロビットの単調な形状が、細胞傷害剤または阻害剤と共にインキュベートした試料に典型的に見られる用量反応曲線を反映していることから、このパラメトリックモデルは多項式よりも優先して選択された。100%を超える正規化生存率値(所与プレート上の対照ウェル全体の平均生存率よりも高い細胞生存率を示す)を切断して100%とし、プロビットモデリングに適したパーセンテージ応答変数を生成した。各試料/薬物対に対する適合済みプロビット曲線から、IC50を50%予測生存率を達成するための最低濃度として定義し、試験した用量範囲にわたる曲線の高さを積分することによってAUCを計算した。予測細胞生存率(すなわち、プロビット曲線の高さ)が最低の試験用量で≦50%であった場合、または全用量範囲で>50%であった場合、IC50をそれぞれ最低用量、最高用量として指定した。7用量点全てにおいて100%の正規化生存率を有する感受性プロファイルに関しては、IC50及びAUCをそれぞれ最高試験用量、最大可能AUCとして指定した。7用量点全てにおいて0%の生存率を有する感受性プロファイルに関しては、IC50及びAUCをそれぞれ最低試験用量、最小プロビット由来AUCの直下の値(0.5)として指定した。
【0289】
等モルの薬物組合せの有効性をその構成単剤と比較して定量化するため、各阻害剤三つ組(薬物組合せ及び2つの単剤)に対する特異的なIC50値及びAUC値に基づきCR効果尺度を作成した。IC50 CR値及びAUC CR値をそれぞれ、組合せのIC50またはAUC:2つの単剤の最小IC50またはAUCの比として定義した。プロビット回帰によってモデル化した各感受性プロファイルに、適合曲線の傾きが水平かどうかの検定のP値に基づいた適合統計量を割り当てた。概して、減少する傾きによって得られるより小さい適合統計量はより良好な適合を示し、拡張により、特定の試料/薬物の対についての曲線由来IC50及びAUCにおける信頼度の尺度がもたらされる。1未満のCR効果尺度は、試料が、組合せを構成する単剤のいずれかよりも薬物組合せに対し感受性が高いことを示す。
【0290】
実施例2.化合物7のゲノミクス解析
AML患者から新たに採取した悪性骨髄または末梢血細胞に対する化合物7の応答と体細胞変異及び発現データとの関連性を試験することにより、化合物7のゲノミクス解析を実施した。臨床状態、遺伝子異常、及び遺伝子発現レベルに伴う薬物感受性、全エクソームシークエンシング(n=118)、ならびにRNAシークエンシングを実施した。FLT3-ITD変異を有する患者試料は、野生型(WT)に比べて、化合物7に対する感受性が高かった。さらに、IDH1変異型を有する患者試料は、WTよりも高い感受性を化合物7に示した。最も予想外だったことには、IDH1 R132残基変異体を有する患者試料(n=6)は平均して、WTよりも顕著に高い感受性を化合物7に示した。この関連性は、所与の試験の変異型感受性レベル(Y軸)をその推定効果(X軸)に伴って示す
図1のボルケーノプロットと、各患者試料における化合物7の個別のIC
50を示す
図2のスキャッタープロットとで示されている。
図2は、各AML患者の骨髄試料における細胞殺滅に向けての化合物7のIC
50を示している。
図2に示されているように、IDH1変異を有する全ての患者試料におけるIC
50が特に低い。これは、化合物7がIDH1変異を有する悪性細胞の処置で特に有効であることを示すものである。また、
図2は、FLT3-ITD変異を有する患者試料に対する化合物7の有効性も示している。
【0291】
実施例3.化合物7のゲノミクス解析
【0292】
様々ながん細胞株に対する化合物7の応答と体細胞変異及び発現データとの関連性を試験することにより、化合物7のゲノミクス解析を実施した。阻害剤活性をex vivoアッセイによって評価して、新たに単離した初代患者試料に対する薬物の感受性を決定した。細胞生存率は、72時間の培養後に、テトラゾリウムベースのMTSアッセイならびに薬物の感受性の尺度として計算されたIC50値及び曲線下面積(AUC)値を用いて評価した。ここで使用した培養条件下では、細胞は生存率(>90%)を保持するが増殖はしない。
【0293】
このアッセイは、化合物7が特定の変異を有する悪性細胞の処置で特に有効であることを示している。TP53変異を有するAML癌細胞は、概して、野生型TP53を有するAML細胞よりも様々な薬物に対する感受性が低いが、
図3は、化合物7がTP53変異を有するAML細胞の処置において有効性を保持することをスキャッタープロットで示している。
図4は、化合物7が、IDH野生型AML細胞に比べて、IDH変異を有するAML細胞の処置で実質的により有効であることを示している。また、
図4は、化合物7がSRSF2変異を有するがんに対し、野生型とちょうど同程度に有効であることも示している。このことは、スニチニブ及びクレノラニブなどの多くの他の薬物がSRSF2変異細胞に抵抗性を示すように思われるため、重要である。
同様に、
図5は、化合物7がASXL1変異を有するがんに対し、AML細胞における野生型とちょうど同程度に有効であることも示している。これもまた、スニチニブ及びクレノラニブなどの多くの他の薬剤がASXL1変異細胞に抵抗性を示すように思われるため、重要である。
【0294】
実施例4.ベネトクラクスとの組合せにおける化合物7のゲノミクス解析
【0295】
図6~9は、化合物7及びベネトクラクスが、AML、MDS、及びB細胞癌を含む複数のがんにおいて初代がん細胞株を相乗的に殺滅することを示している。
【0296】
本明細書で論じられている刊行物は、単に本出願の出願日より前にそれらが開示されていたために提供されている。本明細書のいかなる内容も、本発明が先発明によってこのような刊行物に先行する権利を有しないことを承認するものとして解釈すべきではない。
【0297】
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、これらの中の任意の図面及び付属書類を含めて、個々の刊行物、特許、または特許出願、図面、もしくは付属書類が、具体的かつ個々に、あらゆる目的においてその全体が参照により組み込まれていることが示されている場合と同じ程度に、あらゆる目的においてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0298】
本発明を、その提唱された特定の実施形態と共に説明してきたが、さらなる変更が可能であること、また本出願が、概して、本発明の原理に従って、ならびに本発明が関係する技術分野内での既知または通例の実施内に収まる、及び上記で示される本質的な特徴に適用され得る、及び添付の請求項の範囲内に従う本開示からの逸脱を含めて、本発明の任意の変形形態、用途、または適応を網羅するように意図されていることが理解されよう。
【国際調査報告】