(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】マメ科タンパク質とカゼインとの混合物を含有する食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/185 20160101AFI20220113BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20220113BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20220113BHJP
【FI】
A23L33/185
A23L33/19
A23K10/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540929
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(85)【翻訳文提出日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075835
(87)【国際公開番号】W WO2020064821
(87)【国際公開日】2020-04-02
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 護一
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 紗矢香
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文奈
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA06
2B150AB03
2B150AE31
2B150CE11
4B018LB10
4B018LE06
4B018MD15
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD21
4B018MD36
4B018MD57
4B018MD71
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF02
(57)【要約】
本発明は、組成物の重量を基準にして10~20重量%のタンパク質を含み且つ本明細書に定義される試験Aにより測定したときに0,01~0,2Nの低硬度を有するアルギニンリッチ食品組成物と、マメ科タンパク質源とカゼイン源とを混合することによるその調製プロセスと、さらにはその使用、特に食品加工分野、最も特には食品配合物の調製におけるその使用と、に関する。食品組成物は、好ましくはマメ科タンパク質源とカゼイン源との混合物を含む。マメ科タンパク質源は、好ましくはエンドウタンパク質単離物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に定義される試験Aにより測定したときに0.01~0.2N、好ましくは0.1~0.2Nの硬度を呈することを特徴とする、組成物の重量を基準にして10重量%~20重量%、好ましくは15~20重量%のタンパク質を含む食品組成物。
【請求項2】
前記組成物がマメ科タンパク質源とカゼイン源との混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記マメ科タンパク質源が、エンドウタンパク質単離物、エンドウタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質単離物、ソラマメタンパク質濃縮物、及びそれらの混合物から選択され、特に前記マメ科タンパク質源がエンドウタンパク質単離物であることを特徴とする、請求項2に記載の食品組成物。
【請求項4】
前記カゼイン源が、乳タンパク質濃縮物、ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、マグネシウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、及びそれらの混合物から選択され、特に前記カゼイン源が乳タンパク質濃縮物であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の食品組成物。
【請求項5】
前記マメ科タンパク質源対前記カゼイン源の重量比が50/50~85/15、特に60/40~80/20であることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記組成物の重量を基準にして0.4~1.4重量%、特に0.5~1.3重量%、より特には0.6~1.2重量%のアルギニンを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項7】
下記の工程:
・ 50/50~85/15、特に60/40~80/20のマメ科タンパク質源対カゼイン源の重量比で、水と、マメ科タンパク質源、好ましくはエンドウタンパク質単離物と、カゼイン源、好ましくは乳タンパク質濃縮物と、を含む組成物を提供する工程と、
・ 任意選択的に、十分なホモジナイゼーションまで前記組成物を混合する工程と、
・ 任意選択的に、前記組成物をパッケージに導入する工程と、
・ 前記組成物を熱滅菌する工程と、
・ 任意選択的に、前記組成物を冷却する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の食品組成物の調製プロセス。
【請求項8】
前記熱滅菌する工程が、60℃~80℃に含まれる温度、好ましくは70℃で20~60分間に含まれる継続時間、好ましくは30~50分間にわたり行われることを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記熱滅菌する工程が、135℃~150℃に含まれる温度で0.1~15秒間に含まれる継続時間にわたり行われることを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
特殊栄養組成物又は飼料組成物などの食品配合物の調製における、請求項1~6のいずれか一項に記載の又は請求項7~9のいずれか一項に記載のプロセスにより得られうる食品組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を含み且つ低硬度を有するアルギニンリッチ食品組成物と、マメ科タンパク質源とカゼイン源とを混合することによるその調製プロセスと、さらにはその使用、特に食品加工分野、最も特には食品配合物の調製におけるその使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
炭水化物及び脂質とともに、タンパク質は我々の食事のかなりの部分を占める。一般に、摂取されるタンパク質は、肉、魚、卵、乳製品などの動物起源のもの(動物タンパク質という)又は穀物、マメ科植物などの植物起源のもの(植物タンパク質という)のどちらかである。
【0003】
それらの栄養学的役割は、身体のタンパク質の合成に必要とされる基質であるアミノ酸及びエネルギーを提供することである。
【0004】
タンパク質はアミノ酸の配列からなる。20種のアミノ酸が存在し、そのうち9種は身体で合成できないのでヒトに必須であり、したがって、食事により提供されなければならない。
【0005】
従来のアプローチでは、タンパク質の品質は、それらの必須アミノ酸含有量に基づいて評価される。一般則として、動物起源のタンパク質は、植物タンパク質よりもリシンのようなある特定の必須アミノ酸に富んでいるが、乳タンパク質はアルギニンがより乏しい。
【0006】
マメ科タンパク質とりわけエンドウ及びソラマメは、ダイズや乳などの他のタンパク質源と比較して高パーセントのアルギニンを含有するので、介護食品配合物及び闘潰瘍配合物(国際公開第99/58000号パンフレット参照)又は闘サルコペニア配合物など、高レベルのアルギニンを必要とする用途に対する良い選択肢となる。かかる配合物は、その中の微生物レベルを制御するために多くの場合一連の加熱及び冷却工程を含むプロセスにより得られる。
【0007】
残念ながら、エンドウタンパク質が加熱されたとき、冷却後により高い粘度を発生し、より多くの液状配合物を必要とする高齢の人々のような一部の摂取者に適さない製品をもたらすおそれがある。加熱及び冷却工程は、ときにはきわめてハードになることもあるゲル構造をもたらす。
【0008】
ハードテクスチャーを低下させる解決策は、エンドウタンパク質を加水分解することでありうるが、こうするとより苦い風味及びより栄養の少ないタンパク質をもたらす。また、かかる配合物を得るプロセスは、より複雑でコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、滅菌及び冷却工程後に相対的に低い硬度を有し且つ液状状態を保つアルギニンに富んだエンドウベース食品組成物の技術的必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の目的は、組成物の重量を基準にして10%~20重量%、好ましくは15~20重量%のタンパク質を含む食品組成物であり、前記組成物は、本明細書に定義される試験Aにより測定したときに0.01~0.2N、好ましくは0.1~0.2Nの硬
度を呈する。
【0011】
本発明の第2の目的は、本発明の食品組成物を調製するプロセスであり、前記プロセスは、
・ 50/50~85/15、特に60/40~80/20のマメ科タンパク質源対カゼイン源の重量比で、水と、マメ科タンパク質源、好ましくはエンドウタンパク質単離物と、カゼイン源、好ましくは乳タンパク質濃縮物と、を含む組成物を提供する工程と、
・ 任意選択的に、十分なホモジナイゼーションまで組成物を混合する工程と、
・ 任意選択的に、組成物をパッケージに導入する工程と、
・ 組成物を熱滅菌する工程と、
を含む。
【0012】
本発明の第3の目的は、特殊栄養組成物や飼料組成物などの食品配合物の調製における本発明の又は本発明のプロセスにより得られうる食品組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】表1の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【
図2】表2の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【
図3】表3の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【
図4】表4の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【
図5】表5の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【
図6】表6の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【
図7】表7の組成物の写真を提示する。本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的では、「食品組成物」又は「食品配合物」という用語は、動物又はヒトにより摂取可能な組成物を意味することが意図される。食品組成物の例は、ヒト摂取食材、動物飼料、及び飲料を含む。
【0015】
本発明の食品組成物は、本明細書に定義される試験Aにより測定したときに0.01~0.2N、好ましくは0.1~0.2Nの硬度を呈する。
【0016】
本発明の食品組成物は、組成物の重量を基準にして10重量%~20重量%、好ましくは11~20重量%、12~20重量%、13~20重量%、14~20重量%、さらにより好ましくは15~20重量%のタンパク質を含む。
【0017】
本発明の目的では、「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により連結された一連のアミノ酸により構成されたポリペプチドマクロ分子のモノ鎖又はポリ鎖を意味することが意図される。本発明では、「タンパク質」という用語は、ソラマメやエンドウのようなマメ科植物から得られるタンパク質及びカゼインを包含する。
【0018】
タンパク質レベルを定量するための当業者に周知のいずれの参照アッセイ法も使用可能である。好ましくは、窒素合計(%/粗製物単位)の決定が行われ、結果に係数6.25
が乗算される。タンパク質分野で周知のこの方法は、タンパク質が平均で16%の窒素を含有するという観測に基づく。
【0019】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、マメ科タンパク質源とカゼイン源との混合物を含む。
【0020】
本発明との関連では、「カゼイン」という用語は、関連リンタンパク質のファミリー(αS1、αS2、β、κ)を意味することが意図される。これらのタンパク質は、通常、哺乳動物乳に見いだされる。たとえば、牛乳は、約80重量%のタンパク質を含み、人乳は、約20重量%~45重量%のタンパク質を含む。本発明との関連では、「カゼイン源」という用語は、カゼインを含む組成物を意味することが意図される。カゼイン源は、ウシに由来しうるが、ヤギのような他の動物にも由来しうる。カゼインの最も一般的な形態は、ナトリウムカゼイネートであるが、カリウムカゼイネートや乳タンパク質濃縮物(MPC)のような他の形態も存在する。
【0021】
好ましい実施形態では、カゼイン源は、乳タンパク質濃縮物、カルシウムカゼイネート、ナトリウムカゼイネート、マグネシウムカゼイネート、カリウムカゼイネート、及びそれらの混合物から選択されうる。より好ましくは、カゼイン源は、乳タンパク質濃縮物でありうる。
【0022】
本発明との関連では、「マメ科植物」という用語は、ジャケツイバラ科(Caesalpiniaceae)、ネムノキ科(Mimosaceae)、又はマメ科(Papilionaceae)に属するいずれかの植物、たとえば、アルファルファ、クローバー、ルーピン、エンドウ、ビーン、ブロードビーン、ホースビーン、又はヒラマメ、より特にはエンドウを意味することが意図される。「マメ科タンパク質」という用語は、たとえば、抽出及び任意選択的にさらなる修飾により、マメ科植物から誘導されるタンパク質を意味することが意図される。「マメ科タンパク質源」という用語は、マメ科タンパク質を含む組成物、たとえば、マメ科タンパク質単離物又は濃縮物を意味することが意図される。
【0023】
好ましい実施形態では、マメ科タンパク質源は、エンドウタンパク質単離物、エンドウタンパク質濃縮物、ソラマメタンパク質単離物、ソラマメタンパク質濃縮物、及びそれらの混合物でありうる。より好ましくは、マメ科タンパク質源は、エンドウタンパク質単離物でありうる。
【0024】
好適なエンドウタンパク質単離物又は濃縮物は、当業者に公知の通常の利用可能なプロセスによりエンドウから抽出可能である。欧州特許第1400537号明細書に開示されるプロセスなどの湿式プロセスにより得られるエンドウタンパク質単離物はとくに好ましい。
【0025】
「エンドウ」という用語は、本明細書では、その最広義の許容される意味で考慮され、特に、
・ 「マルエンドウ」及び「シワエンドウ」のすべての品種と、
・ 品種が一般に意図される使用(ヒト摂取食品、動物飼料、及び/又は他の使用)が何であろうとも、「マルエンドウ」及び「シワエンドウ」のすべての突然変異品種と、
を含む。
【0026】
本願では、「エンドウ」という用語は、エンドウ属(Pisum)に属するエンドウの品種、より特にはピサム・サティバム(Pisum sativum)を含む。
【0027】
突然変異品種は、特に、「新規なエンドウデンプンの開発」というタイトルのC-L
HEYDLEYらの論文Proceedings of the Symposium 10 of the Industrial Biochemistry and Biotechnology Group of the Biochemical Society,1996,pp.77-87に記載されるように、「r突然変異体」、「rb突然変異体」、「rug3突然変異体」、「rug4突然変異体」、「rug5突然変異体」、及び「lam突然変異体」として知られるものである。
【0028】
好ましい実施形態では、前記マメ科タンパク質はマルエンドウに由来する。
【0029】
エンドウは、動物飼料のタンパク質源としてだけでなくヒト摂取食品としても、欧州及びフランスで広く生育されてきたタンパク質リッチ種子を有するマメ科植物である。
【0030】
すべてのマメ科植物タンパク質と同じように、エンドウタンパク質は、3つの主要クラスのタンパク質:グロブリン(エンドウタンパク質の約50~60重量%)、アルブミン(エンドウタンパク質の約20~25重量%)、及び「不溶性」タンパク質からなる。さらに、エンドウグロブリンは3つのファミリー:レグミン、ビシリン、及びコンビシリンに分類可能である。
【0031】
エンドウタンパク質の価値は、その良好な乳化能、そのアレルゲン性の欠如、及びその低いコストにあり、そのため経済的機能性成分となる。
【0032】
さらに、エンドウタンパク質は持続可能な開発に有利に寄与し、そのカーボンインパクトは非常に肯定的である。この理由は、エンドウが大気中窒素を固定するので、エンドウ培養が環境に優しく窒素肥料を必要としないことにある。
【0033】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、50/50~85/15、より特には60/40~80/20のマメ科タンパク質源対カゼイン源の重量比を呈する。
【0034】
本発明の食品組成物は、関連栄養要求量に従ってアルギニンリッチ食品組成物としての資格を得るのに十分なマメ科タンパク質の量を有しうる。たとえば、JASPEN(日本静脈経腸栄養学会(Japanese Society for Parenteral
& Enteral Nutrition))のガイドラインによれば、圧迫潰瘍に罹患している人々に対するアルギニンの推奨量は、7.5g/日であるべきである。エンドウタンパク質単離物中のアルギニンの平均含有率は、タンパク質合計含有率の約6.5重量%である。85%タンパク質リッチ単離物では、アルギニンは5.5g/100g単離物に相当する。比較として、乳タンパク質濃縮物中のアルギニンの平均含有率は、タンパク質の合計重量の約3重量%である。
【0035】
本発明との関連では、「アルギニン」という用語は、下記の式により表されるアミノ酸を意味することが意図される。マメ科タンパク質中とくにエンドウタンパク質中の前記アミノ酸の量は相対的に高い。
【化1】
【0036】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、組成物の重量を基準にして0.4重量%~1
.4重量%、特に0.5重量%~1.3重量%、より特には0.6重量%~1.2重量%のアルギニンを含む。
【0037】
本発明の食品組成物は、風味剤、安定化剤、ゲル化剤、乳化剤、甘味剤、可溶性繊維、不溶性繊維、デンプン、デキストリン、又はポリオールなどの添加剤をさらに含みうる。
【0038】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、マルトデキストリン、好ましくは組成物の全重量を基準にして16~20重量%のマルトデキストリン、さらにより好ましくは組成物の全重量を基準にして約16重量%、17重量%、18重量%、18.5重量%、18.8重量%、19重量%、又は20重量%のマルトデキストリンをさらに含む。
【0039】
一実施形態では、本発明の食品組成物は、油、典型的にはヒマワリ油をさらに含む。一実施形態では、本発明の食品組成物は、組成物の全重量を基準にして1~5重量%のヒマワリ油、さらにより好ましくは組成物の全重量を基準にして約2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3重量%のヒマワリ油をさらに含む。
【0040】
本発明の食品組成物は、以下に記載の本発明に係るプロセスにより得ることが可能である。
【0041】
本発明の食品組成物について記載した実施例及び好ましい実施形態はすべて、本発明のプロセスに等しく適用される。
【0042】
本発明のプロセスは、水とマメ科タンパク質源とカゼイン源とを含む組成物を提供する工程を含む。
【0043】
マメ科タンパク質源及びカゼイン源は、50/50~85/15、特に60/40~80/20のマメ科タンパク質源対カゼイン源の重量比で混合一体化される。
【0044】
特に、組成物中の水、マメ科タンパク質源、及びカゼイン源の量は、組成物の重量を基準にして10重量%~20重量%、好ましくは11~20重量%、12~20重量%、13~20重量%、14~20重量%、さらにより好ましくは15~20重量%のタンパク質を含む組成物が得られるように調整されうる。
【0045】
マメ科タンパク質源及びカゼイン源は、乾燥粉末として混合されうるとともに、続いて水が添加されうる。代替的に、マメ科タンパク質源及びカゼイン源は、水と直接混合されうる。アジテーター、ホモジナイゼーションポンプ又はホモミキサー、パドルミキサー、及びディスパーザーのようなこの分野で公知の通常の技術を使用可能である。
【0046】
水は、食品、飼料、又は化粧品用途に適合化された周知の源から選択されるであろう。特に、水は、上水、脱イオン水、脱炭酸水、又は蒸溜水でありうる。
【0047】
本発明のプロセスは、十分なホモジナイゼーションまで組成物を混合する工程をさらに含みうる。本発明との関連では、十分なホモジナイゼーションは、組成物が均一懸濁液であるとき、すなわち、非溶解アグリゲートを含まないとき、達成されうる。
【0048】
本発明のプロセスは、組成物をパッケージに導入する工程をさらに含みうる。特に、パッケージは、摂取者に直接施すのに適したもの、たとえば、プラスチックカップ、プラスチックボトル、プラスチックバッグ、金属缶、又はペーパーボトルでありうる。
【0049】
本発明のプロセスは、熱滅菌の工程を含む。一般的には、熱滅菌は、たとえば、酵素及びいずれかの形態の微生物とくに胞子形成細菌を阻害するのに十分な時間にわたり100℃超の温度で、組成物を加熱することにより行うことが可能である。
【0050】
好ましい実施形態では、加熱工程は、60℃~80℃に含まれる温度、好ましくは70℃で、20~60minに含まれる長さ、好ましくは30~50minにわたり行われる。滅菌はまた、高温すなわち135℃~150℃の温度で、通常は15秒間を超えない時間、言い換えるとUHT(超高温)滅菌に対応する0,1~15秒間にわたり行われうる。この技術は、滅菌製品の栄養性及び官能性を保持するという利点を有する。熱滅菌工程は、当業者に公知のデバイス及び技術、たとえば、水浴、油浴、UHT機、直接スチーム注入システム、レトルト機、又はジュール加熱を利用して行うことが可能である。
【0051】
次いで、混合物は、冷却工程、好ましくは4℃で12時間の冷却に付される。
【0052】
本発明によれば、熱滅菌工程は、エンドウタンパク質とカゼイン源との混合物で行われる。この熱処理工程なしでは、エンドウとカゼイン源との懸濁液は、所望の硬度を有する所望のソフトゲルテクスチャーを達成することなく液状懸濁液状態を保つであろう。かかる液状懸濁液サンプルは、その硬度をアッセイするためにテクスチャーアナライザーで分析できないので、熱処理なしで混合物を例証する例を示すことはできない。本発明のプロセスにより得られる食品配合物は、熱滅菌工程の使用にもかかわらず、低いすなわち0.2N未満の硬度を呈する。
【0053】
本発明の食品配合物は、タンパク質を必要とする者、より特にはアルギニンを必要とする者にとくに好適である。したがって、本発明の食品組成物は、特殊栄養組成物や飼料組成物などの食品配合物の調製に使用されうる。特殊栄養組成物の例は、アスリート、軽い運動をする人々、成長期の子供、及び高齢の人々のための食品を含む。
【0054】
食品配合物は、咀嚼及び嚥下の問題たとえば不全失語症を有する人々に栄養を供給するためにとくに使用可能である。これらの人々は、その年齢にかかわらず、肉やビーンなどのハードテクスチャー食品を食べることができない。したがって、本発明の食品組成物は、それらの食事で十分なタンパク質を得るのに役立つであろう。
【0055】
試験方法
硬度の測定:試験A
組成物の硬度は、下記のプロトコル:
1. 85gの食品組成物をプラスチックバッグ(直径3cm、長さ35cm)に導入する
2. プラスチックバッグを70℃で40min加熱して4℃で12h冷却する
3. プラスチックバッグを開けて食品組成物を取り出す
4. 厚さ2cmのサンプルをカットする
5. サンプルを金属ディッシュ上に配置し、テクスチャーアナライザーのステージに載せる。テクスチャーアナライザーのプローブとして歯型チップを使用し、プローブを円柱状ゲルの側面に突き刺し、プローブが金属ディッシュのボトムを達するまで降下させる(スピード1mm/sec)
6. 分析を行い、最大ピーク硬度をニュートン(N)単位で測定する
に従って、歯状チップを備えたSHIMAZU EZ-SXなどのテクスチャーアナライザーを用いて測定される。
【0056】
以下の非限定的な実施例により、本発明はよりよく理解されるであろう。
【実施例】
【0057】
実施例では下記の成分が使用される。
・ エンドウタンパク質単離物(PPI-78%wtタンパク質):NUTRALYS
S85F(ROQUETTE製)
・ 乳タンパク質濃縮物(MPC-76%wtタンパク質):MPC480(FONTERRA製)
・ ホエータンパク質濃縮物(WPC-80%wtタンパク質):WPC392(FONTERRA製)
・ ナトリウムカゼイネート(SC-92%wtタンパク質):TATUA 100(TATUA製)
・ カルシウムカゼイネート(CC-92%wtタンパク質):TATUA 200(TATUA製)
・ マグネシウムカゼイネート(MC-91%wtタンパク質):TATUA 600(TATUA製)
・ ダイズタンパク質単離物(SPI-85%wtタンパク質):SOLPEE 4000H(日清オイリオ製)
・ マルトデキストリン:Glucidex(登録商標)19(ROQUETTE製)
・ ヒマワリ油(昭和産業製)
【0058】
実施例はすべて、サンプルを生成するために以下の同一プロトコルを共有する。
1. すべての粉末及び水を秤量する
2. それらを400mlビーカー中で配置してホモジナイゼーションまで磁気撹拌下で混合する
3. プラスチックパッケージ(直径3cm及び長さ35cm)中に85gの組成物を導入する
4. 70℃で40min加熱する
5. 4℃で12h冷却する
【0059】
各成分の型及び量(グラム単位)は、以下の表に示される。各サンプルの硬度は、以上に記載の試験Aに従って測定される。
【0060】
工程3~5は、試験Aの工程1及び2と同一であり、繰り返す必要がない。
【0061】
実施例1:20%タンパク質含有率におけるタンパク質源選択の影響
この実施例では、以上に記載の手順に従って、さまざまなタンパク質源を用いて、組成物の重量を基準にして20重量%のタンパク質を含む組成物を調製した。各成分の重量は、以下の表にグラム(g)単位で示される。タンパク質源間の重量比も、以下の表に示される。ニュートン(N)単位の各組成物の硬度は、以上に記載の試験Aに従って測定された。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
以上の表から、我々は以下のように結論付けることが可能である。
- 50/50~85/15のエンドウタンパク質単離物対カゼイン源の重量比で、エンドウタンパク質単離物と、カゼイン源、たとえば、乳タンパク質濃縮物又はマグネシウムカゼイネートと、の混合物を含む組成物は、低いすなわち0.2N未満、好ましくは0.1N~0.2Nの硬度を有する栄養配合物として使用可能である。
- 表1~7の各組成物の写真を提示する
図1~7は、本発明に係る組成物が液状/ゲル状態に近いソフトテクスチャーを有することを示す。
- エンドウタンパク質単離物単独、カゼイン源単独、又はダイズのような他の植物タンパク質単離物は、加熱工程後に0.2N超の硬度を有する食品組成物をもたらす。
- 50/50~80/20の重量比のエンドウタンパク質単離物とカゼイン源との組合せは、組成物の重量を基準にして0.69重量%~1.12重量%のアルギニンを含む栄養配合物をもたらす。
【0070】
実施例2:タンパク質含有率の影響(比較)
この実施例では、実施例1(20重量%)と比較してより高いタンパク質含有量(25重量%)又はより低いタンパク質含有率(8重量%)を含む組成物を以上に記載の手順に従って調製した。各成分の重量は、以下の表にグラム(g)単位で示される。タンパク質源間の重量比も、以下の表に示される。ニュートン(N)単位の各組成物の硬度は、以上に記載の試験Aに従って測定された。
【0071】
【0072】
【0073】
以上の表8は、組成物の重量を基準にして20重量%~25重量%のタンパク質にタンパク質含有率を上昇させると、特定の摂取者の栄養に適さない食品配合物を生じる高い硬度増加をもたらすことを示す。
【0074】
以上の表9は、低タンパク質含有率を有する組成物が満足な硬度を有するが、そのタンパク質含有率及びアルギニン含有率が低すぎて栄養配合物として有用でないことを示す。
【国際調査報告】