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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】走査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01N29/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547906
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2019079194
(87)【国際公開番号】W WO2020084116
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】1817501.8
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521181596
【氏名又は名称】ドルフィテック、アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】DOLPHITECH AS
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】エスキル、スコグルンド
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク、リングバル
(72)【発明者】
【氏名】トーレ、マグネ、スカール
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC09
2G047CA01
2G047DB02
2G047EA12
2G047GA13
2G047GB02
2G047GE03
(57)【要約】
物体を撮像するための走査装置であって、走査装置が、物体に向けて超音波信号を送信するための送信機と、物体から超音波信号を受信するための受信機と、支持体であって、送信機および受信機が結合される、支持体と、を備え、走査装置が、非平面構成で支持体と共に動作して物体の非平面表面を走査することができる、走査装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像するための走査装置であって、前記走査装置が、
物体に向けて超音波信号を送信するための送信機と、
物体から超音波信号を受信するための受信機と、
走査面を画定する支持体であって、前記送信機および前記受信機が前記支持体に結合されている、支持体と
を備え、
前記走査装置が、非平面構成で前記支持体と共に動作して物体の非平面表面を走査することができ、
前記走査装置が、前記支持体の前記構成に依存して前記送信機による超音波信号の前記送信を制御するように構成されている、走査装置。
【請求項2】
前記走査装置が、前記支持体が前記非平面構成にあることにより、前記走査装置の走査面が、
凹状構成、
凸状構成、
部分球面構成、および
複数の非平行平面を有する構成
の1つまたは組み合わせを含むように構成されている、請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記走査装置が、前記支持体の前記構成に依存して前記送信機による超音波信号の前記送信を制御するように構成されている、請求項1または2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記走査装置が、振動素子の直線配列を、超音波信号を送信するよう制御するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項5】
前記走査装置が、振動素子の非直線配列を、超音波信号を送信するよう制御するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項6】
前記支持体が、前記走査装置を物体の非平面表面に押し付ける際に前記非平面構成を採るように配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項7】
前記支持体が柔軟である、請求項1から6のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項8】
前記支持体が、前記走査装置の本体から離れて延在する可撓性リップを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項9】
前記走査装置の前記本体に当接する前記支持体の部分が、前記リップよりも剛性である、請求項8に記載の走査装置。
【請求項10】
前記リップが、2つの次元において屈曲するように構成されている、請求項8または9に記載の走査装置。
【請求項11】
前記支持体が、外力によって作用されないときに非平面構成を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項12】
前記非平面構成が第2の平面に結合された第1の平面を含む場合、前記2つの平面が、前記平面の第1の側に180度未満の角度で、前記平面の第2の側に180度より大きい角度で結合され、前記走査装置が、前記第1の側と前記第2の側の一方または両方に対して物体を走査するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項13】
前記走査装置が、前記第1の平面上に配置された1つの送信機と、前記第2の平面上に配置された別の送信機とを備える、請求項12に記載の走査装置。
【請求項14】
前記走査装置が、前記第1の平面上の前記送信機および前記第2の平面上の前記送信機の一方と背中合わせに配置されたさらなる送信機を備える、請求項13に記載の走査装置。
【請求項15】
前記送信機と前記受信機とが、第1の送信機および第2の送信機と第1の受信機および第2の受信機とをそれぞれ備え、前記支持体が第1の支持部分および第2の支持部分を備え、前記走査装置が、
前記第1の送信機、前記第1の受信機、および前記第1の支持部分を備え、前記第1の送信機および前記第1の受信機が前記第1の支持部分に結合されている、第1の走査モジュールと、
前記第2の送信機、前記第2の受信機、および前記第2の支持部分を備え、前記第2の送信機および前記第2の受信機が前記第2の支持部分に結合されている、第2の走査モジュールと
を備え、
前記第1の走査モジュールおよび前記第2の走査モジュールが、前記支持体が前記非平面構成を採ることを可能にするように互いに対して移動可能である、請求項1から14のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項16】
前記第1の走査モジュールおよび前記第2の走査モジュールが、互いに対して枢動可能である、請求項15に記載の走査装置。
【請求項17】
前記第1の走査モジュールと前記第2の走査モジュールの一方または両方が、曲面と平面の一方、またはそれらの組み合わせを備える、請求項15または16に記載の走査装置。
【請求項18】
前記走査装置が、撮像のために物体に面するための結合材料を備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項19】
物体の内部を撮像するための超音波走査装置を動作させる方法であって、前記走査装置が、超音波信号を送信および受信するように構成された振動素子のマトリックス配列を備え、前記方法が、
前記マトリックス配列の非平面構成を決定することと、
前記マトリックス配列を、前記決定された非平面構成に依存して超音波信号を放射するよう制御することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記マトリックス配列を制御することが、前記マトリックス配列の振動素子の直線配列を、超音波信号を放射するよう制御することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マトリックス配列を制御することが、前記マトリックス配列の振動素子の非直線配列を、超音波信号を放射するよう制御することを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
物体の内部を撮像するための超音波走査装置を動作させる方法であって、前記走査装置が、超音波信号を送信および受信するように構成された振動素子のマトリックス配列を備え、前記方法が、
前記マトリックス配列を変更して、前記マトリックス配列に非平面構成を採らせることと、
前記走査装置を移動させて物体と接触させることと、
前記マトリックス配列を、超音波信号を放射し、反射超音波信号を受信するよう制御することと
を含む、方法。
【請求項23】
前記マトリックス配列を変更することが、前記マトリックス配列の2つの部分間のジョイントを駆動することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マトリックス配列の前記部分のうちの少なくとも1つが、共通の平面上に配列された複数の振動素子を備える、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
振動子モジュールによって送信された超音波をターゲット物体に結合するために前記振動子モジュールに取り付けるための結合シューであって、前記結合シューが、
超音波を前記結合シューに結合するために前記振動子モジュールの超音波放射面に当接させるための振動子結合面と、
超音波を前記ターゲット物体に結合するために前記ターゲット物体に面するための探触子面と、
前記結合シューの周囲の少なくとも一部を形成する側面であって、前記振動子結合面および前記探触子面の少なくとも一方と交差している、側面と
を含み、
前記結合シューの前記周囲が、超音波減衰構造を備える、結合シュー。
【請求項26】
前記超音波減衰構造が、前記結合シュー内の側方反射の強度を、
前記側方反射の路程長を増加させること、および
前記側方反射のエネルギーを吸収すること
のうちの1つまたは複数によって低減させる、請求項25に記載の結合シュー。
【請求項27】
前記側面が前記振動子結合面および前記探触子面の少なくとも一方に対して約90度の角度である、請求項25または26に記載の結合シュー。
【請求項28】
前記側面が、前記探触子面に対して鋭角である、請求項25から27のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項29】
前記側面が、前記振動子結合面から前記探触子面への方向に外側に傾斜している、請求項25から28のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項30】
前記超音波減衰構造が、少なくとも1つの超音波周波数において前記結合シューのバルクよりも大きい吸収を有する材料を含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項31】
前記超音波減衰構造が、異なるインピーダンスの複数の層を備える、請求項25から30のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項32】
前記超音波減衰構造が、複数の粒子を含み、前記粒子が、前記結合シューの前記バルクとは異なるインピーダンスを有する材料のものである、請求項25から31のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項33】
前記複数の粒子が、異なるサイズおよび/または材料の粒子を含む、請求項32に記載の結合シュー。
【請求項34】
前記複数の粒子が、
金属、
タングステン、
ニッケル、
鋼、および
酸化鉄
を含む群より選択される材料の粒子を含む、請求項32から33のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項35】
前記超音波減衰構造が、1つまたは複数の突出部および/または窪みを備える、請求項25から34のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項36】
前記超音波減衰構造が、
湾曲した突出部、
湾曲した窪み、
角のある突出部、および
角のある窪み
のうちの1つまたは複数を備える、請求項25から35のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項37】
前記突出部および/または前記窪みが、略半球形状を有する、請求項35から36のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項38】
前記超音波減衰構造が、前記結合シューの前記周囲に沿った1つまたは複数の列に配列された複数の突出部および/または窪みを備える、請求項25から37のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項39】
前記複数の突出部および/または窪みのうちの少なくとも2つが互いに当接する、請求項38に記載の結合シュー。
【請求項40】
第1の列が第1の方向に第2の列からオフセットされ、前記第1の列の突出部および/または窪みが、前記第1の方向と交差する、第2の方向に前記第2の列の突出部および/または窪みからオフセットされる、請求項38から39のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項41】
前記複数の突出部および/または窪みが、前記結合シューの周りに円周方向に設けられている、請求項38から40のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項42】
前記複数の突出部および/または窪みが、前記結合シューの周りの円周方向と交差する方向に前記側面に沿って中間に整列している、請求項38から41のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項43】
前記1つまたは複数の突出部および/または窪みが、前記結合シューの表面に露出している、請求項35から41のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項44】
前記結合シューが、
前記振動子モジュールの一部分を受けるための凹部、または
複数の振動子モジュールのそれぞれの部分を受けるための複数の凹部
を備える、請求項25から43のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項45】
結合シューが、
エポキシ、
エラストマー、
アクアリーン、
プレキシガラス、および
Rexolite
を含む群からの材料を含む、請求項25から44のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項46】
前記結合シューが、前記ターゲット物体の表面に適合するための弾性材料を含む、請求項25から45のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項47】
前記結合シューが、前記ターゲット物体の表面に適合するように整形され、前記探触子面が、
平坦面、
凸面、および
凹面
のうちの1つまたは複数を備える、請求項25から46のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項48】
前記結合シューが、
前記平坦面が前記振動子結合面に対して角度をなしている、
前記凸面および/または前記凹面が部分球面を含む、ならびに
前記凸面および/または前記凹面が部分円筒面を含む、
のうちの1つまたは複数であるように構成される、請求項47に記載の結合シュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を撮像するための走査装置、例えば、物体の表面下の構造的特徴を撮像するための走査装置に関する。この走査装置は、層間剥離、剥離、および剥落などの表面下の材料欠陥を撮像するのに特に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
超音波は、物体を検出し、距離を測定するために使用することができる振動音圧波である。伝えられた音波は、異なる音響インピーダンス特性を有する材料に遭遇すると反射および屈折する。これらの反射および屈折が検出および分析される場合、結果として得られるデータを使用して、音波が伝わった環境を記述することができる。
【0003】
超音波を使用して、物体の特定の構造的特徴を識別することができる。例えば、超音波は、試料中の欠陥のサイズおよび位置を検出することによって非破壊試験に使用され得る。積層構造内の異なる層、衝撃損傷、ボアホールなどといった、構造的特徴の様々な材料、試料深度および種類をカバーする、非破壊試験から利益を得ることができる広範な用途がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、広範な異なる用途でうまく機能することができる感知装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、物体を撮像するための走査装置が提供され、この走査装置は、
物体に向けて超音波信号を送信するための送信機と、
物体から超音波信号を受信するための受信機と、
支持体であって、送信機および受信機が結合される、支持体と
を備え、
走査装置は、非平面構成で支持体と共に動作して物体の非平面表面を走査することができる。
【0006】
走査装置は、支持体が非平面構成にあることにより、走査装置の走査面が、凹状構成、凸状構成、部分球面構成、および複数の非平行平面を有する構成、のうちの1つ、またはそれらの組み合わせを含むように構成され得る。
【0007】
走査装置は、非平面構成に依存して送信機による超音波信号の送信を制御するように構成され得る。走査装置は、支持体の構成に依存して送信機による超音波信号の送信を制御するように構成され得る。
【0008】
走査装置は、振動素子の直線配列を、超音波信号を送信するよう制御するように構成され得る。走査装置は、振動素子の非直線配列を、超音波信号を送信するよう制御するように構成され得る。
【0009】
支持体は、走査装置を物体の非平面表面に押し付ける際に非平面構成を採るように配置され得る。支持体は柔軟であり得る。
【0010】
支持体は、走査装置の本体から離れて延在する可撓性リップを備え得る。走査装置の本体に当接する支持体の部分は、リップよりも剛性であり得る。リップは、2つの次元において屈曲するように構成され得る。
【0011】
支持体は、外力によって作用されないときに非平面構成を有し得る。
【0012】
非平面構成が第2の平面に結合された第1の平面を含む場合、2つの平面は、それらの平面の第1の側に180度未満の角度で、それらの平面の第2の側に180度より大きい角度で結合され、走査装置は、第1の側と第2の側の一方または両方に対して物体を走査するように構成され得る。走査装置は、第1の平面上に配置された1つの送信機と、第2の平面上に配置された別の送信機とを備え得る。走査装置は、第1の平面上の送信機および第2の平面上の送信機の一方と背中合わせに配置されたさらなる送信機を備え得る。
【0013】
送信機と受信機とは、第1の送信機および第2の送信機と第1の受信機および第2の受信機とをそれぞれ備え得、支持体は第1の支持部分および第2の支持部分を備え得る。走査装置は、第1の送信機、第1の受信機、および第1の支持部分を備え、第1の送信機および第1の受信機が第1の支持部分に結合されている、第1の走査モジュールと、第2の送信機、第2の受信機、および第2の支持部分を備え、第2の送信機および第2の受信機が第2の支持部分に結合されている、第2の走査モジュールと、を備え得、第1の走査モジュールおよび第2の走査モジュールは、支持体が非平面構成を採ることを可能にするように互いに対して移動可能であり得る。
【0014】
第1の走査モジュールおよび第2の走査モジュールは、互いに対して枢動可能であり得る。第1の走査モジュールと第2の走査モジュールの一方または両方が、曲面と平面の一方、またはそれらの組み合わせを備え得る。
【0015】
走査装置は、撮像のために物体に面するための結合材料を備え得る。
【0016】
本発明の別の態様によれば、物体の内部を撮像するための超音波走査装置を動作させる方法が提供され、走査装置は、超音波信号を送信および受信するように構成された振動素子のマトリックス配列を備え、方法は、
マトリックス配列の非平面構成を決定することと、
マトリックス配列を、決定された非平面構成に依存して超音波信号を放射するよう制御することと、
を含む。
【0017】
マトリックス配列を制御することは、マトリックス配列の振動素子の直線配列を、超音波信号を放射するよう制御することを含み得る。マトリックス配列を制御することは、マトリックス配列の振動素子の非直線配列を、超音波信号を放射するよう制御することを含み得る。
【0018】
本発明の別の態様によれば、物体の内部を撮像するための超音波走査装置を動作させる方法が提供され、走査装置は、超音波信号を送信および受信するように構成された振動素子のマトリックス配列を備え、方法は、
マトリックス配列を変更して、マトリックス配列に非平面構成を採らせることと、
走査装置を移動させて物体と接触させることと、
マトリックス配列を、超音波信号を放射し、反射超音波信号を受信するよう制御することと
を含む。
【0019】
マトリックス配列を変更することは、マトリックス配列の2つの部分間のジョイントを駆動することを含み得る。マトリックス配列の部分のうちの少なくとも1つが、共通の平面上に配列された複数の振動素子を備え得る。
【0020】
本発明の別の態様によれば、振動子モジュールによって送信された超音波をターゲット物体に結合するために振動子モジュールに取り付けるための結合シューが提供され、結合シューは、
超音波を結合シューに結合するために振動子モジュールの超音波放射面に当接させるための振動子結合面と、
超音波をターゲット物体に結合するためにターゲット物体に面するための探触子面と、
結合シューの周囲の少なくとも一部を形成する側面であって、側面が、振動子結合面および探触子面の少なくとも一方と交差している、側面と
を備え、
結合シューの周囲は、超音波減衰構造を備える。
【0021】
超音波減衰構造は、側方反射の路程長を増加させること、および側方反射のエネルギーを吸収すること、のうちの1つまたは複数によって結合シュー内の側方反射の強度を低減し得る。側面は、振動子結合面および探触子面の少なくとも一方に対して約90度の角度であり得る。側面は、探触子面に対して鋭角であり得る。側面は、振動子結合面から探触子面への方向に外側に傾斜していてもよい。
【0022】
超音波減衰構造は、少なくとも1つの超音波周波数において結合シューのバルクよりも大きい吸収を有する材料を備え得る。超音波減衰構造は、異なるインピーダンスの複数の層を備え得る。超音波減衰構造は、複数の粒子を含み得、粒子は、結合シューのバルクとは異なるインピーダンスを有する材料のものである。複数の粒子は、異なるサイズおよび/または材料の粒子を含み得る。複数の粒子は、金属、タングステン、ニッケル、鋼、および酸化鉄、からなる群より選択される材料の粒子を含み得る。
【0023】
超音波減衰構造は、1つまたは複数の突出部および/または窪みを備え得る。超音波減衰構造は、湾曲した突出部、湾曲した窪み、角のある突出部、および角のある窪み、のうちの1つまたは複数を備え得る。突出部および/または窪みは、略半球形状を有し得る。超音波減衰構造は、結合シューの周囲に沿った1つまたは複数の列に配列された複数の突出部および/または窪みを備え得る。複数の突出部および/または窪みのうちの少なくとも2つは互いに当接し得る。第1の列は第1の方向に第2の列からオフセットされ得、第1の列の突出部および/または窪みは、第1の方向と交差する、第2の方向に第2の列の突出部および/または窪みからオフセットされ得る。複数の突出部および/または窪みは、結合シューの周りに円周方向に設けられ得る。複数の突出部および/または窪みは、結合シューの周りの円周方向と交差する方向に側面に沿って中間に整列し得る。
【0024】
1つまたは複数の突出部および/または窪みは、結合シューの表面に露出し得る。
【0025】
結合シューは、振動子モジュールの一部分を受けるための凹部、または複数の振動子モジュールのそれぞれの部分を受けるための複数の凹部、を備え得る。結合シューは、エポキシ、エラストマー、アクアリーン(aqualene)、プレキシガラス、およびRexolite(レキソライト)、を含む群からの材料を含み得る。結合シューは、ターゲット物体の表面に適合するための弾性材料を含み得る。
【0026】
結合シューは、ターゲット物体の表面に適合するように整形され得、探触子面は、平坦面、凸面、および凹面、のうちの1つまたは複数を備える。結合シューは、平坦面が振動子結合面に対して角度をなしている、凸面および/または凹面が部分球面を備える、ならびに凸面および/または凹面が部分円筒面を備える、のうちの1つまたは複数であるように構成され得る。
【0027】
本発明の別の態様によれば、振動子モジュールによって送信された超音波をターゲット物体に結合するために振動子モジュールに取り付けるための結合シューが提供され、結合シューは、超音波を結合シューに結合するために振動子モジュールの超音波放射面に当接させるための振動子結合面と、超音波をターゲット物体に結合するためにターゲット物体に面するための探触子面と、結合シューの周囲の少なくとも一部を形成する側面であって、振動子結合面および探触子面の少なくとも一方と交差している、側面と、を備え、探触子面は、ターゲット物体の表面に適合するように構成されている。
【0028】
任意の態様の任意の1つまたは複数の特徴が、任意の他の態様の1つまたは複数特徴と組み合わされ得る。これらは、単に簡潔にするために、本明細書には完全に記載されていない。
【0029】
次に、例として添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】物体を撮像するためのデバイスを示す図である。
図2】走査装置および物体の例を示す図である。
図3】走査装置の機能ブロックの例を示す図である。
図4】例示的な走査装置を示す分解図である。
図5】振動素子の例示的な配列を示す図である。
図6】電極配列の例を示す図である。
図7】オーバーレイされた電極配列の例を示す図である。
図8a】電極配列の別の例を示す図である。
図8b】電極配列の別の例を示す図である。
図8c】電極配列の別の例を示す図である。
図9】走査装置の非平面構成の例を示す図である。
図10a】走査装置の非平面構成の別の例を示す図である。
図10b】走査装置の非平面構成の別の例を示す図である。
図10c】走査装置の非平面構成の別の例を示す図である。
図11a】1つまたは複数のジョイントによって結合された複数の平面を備える走査装置の例を示す図である。
図11b】1つまたは複数のジョイントによって結合された複数の平面を備える走査装置の例を示す図である。
図12】1つの次元において屈曲した振動子の例を示す図である。
図13】振動子モジュールおよび結合シューの例を示す図である。
図14】湾曲した角を有する結合シューの例を示す図である。
図15】湾曲した探触子面を有する結合シューの例を示す図である。
図16】湾曲した探触子面を有する結合シューを示す下からの斜視図である。
図17】湾曲した探触子面を有する結合シューの別の例を示す図である。
図18】角のある探触子面を有する結合シューの2つの例を示す図である。
図19】結合シューの別の例を示す図である。
図20】複数の振動子モジュールのための結合シューの例を示す図である。
図21】広がった側面を有する結合シューの例を示す図である。
図22】超音波減衰構造を有する結合シューの例を示す図である。
図23】超音波減衰構造を有する結合シューの別の例を示す図である。
図24】超音波減衰構造を有する結合シューの別の例を示す図である。
図25A】結合シューの超音波減衰構造のさらなる例を示す図である。
図25B】結合シューの超音波減衰構造のさらなる例を示す図である。
図25C】結合シューの超音波減衰構造のさらなる例を示す図である。
図26A】窪みを備える結合シューを示す斜視図である。
図26B図26Aの結合シューを示す側面図である。
図27A】窪みを備える別の結合シューを示す斜視図である。
図27B図27Aの結合シューを示す側面図である。
図27C図27Aの結合シューを示す側面図である。
図27D図27Aの結合シューの断面図である。
図28A】窪みを備える別の結合シューを示す斜視図である。
図28B図28Aの結合シューを示す側面図である。
図28C図28Aの結合シューを示す側面図である。
図28D図28Aの結合シューを示す断面図である。
図29A】窪みを備える別の結合シューを示す斜視図である。
図29B図29Aの結合シューを示す側面図である。
図29C図29Aの結合シューを示す側面図である。
図29D図29Aの結合シューを示す断面図である。
図30】振動子を備える別の振動子モジュールと、振動子モジュールに取り付けるための複数の結合シューとを示す図である。
図31A】振動子モジュールと結合シューとの間の取り付け具を示す図である。
図31B図31Aの振動子モジュールおよび結合シューを示す側面図である。
図31C図31Bの線A-Aに沿った断面図である。
図32】可撓性リップを有する走査装置を示す図である。
図33図32の走査装置の電極配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
走査装置は、物体の表面下の異なる深さに位置する構造的特徴に関する情報を収集し得る。この情報を取得する1つの方法は、物体に向けて音波パルスを送信し、任意の反射を検出することである。人間のオペレータが物体の表面下の構造的欠陥のサイズ、形状、および深さを認識および評価することができるように、収集された情報を描写する画像を生成することが有用である。これは、表面下の構造的欠陥が危険であり得る多くの産業用途にとって不可欠な活動である。一例が、航空機の整備である。
【0032】
通常、オペレータは、オペレータが見たい構造が物体の表面下にあるため、装置によって生成された画像に完全に依拠することになる。したがって、オペレータが物体の構造を効果的に評価できるように情報が撮像されることが重要である。
【0033】
超音波振動子は、電気信号によって圧電材料を振動させ、超音波信号を生成するように駆動される、圧電材料を利用する。逆に、音響信号が受信される場合、超音波振動子は圧電材料を振動させ、検出することができる電気信号を発生させる。
【0034】
振動子を備える別の走査装置が撮像対象の物体の表面に密着することができることが望ましい。走査装置は、様々な方法で物体の表面に密着し得る。走査装置は、走査装置が物体に押し付けられるときに物体の表面に適合するように柔軟であり得る。走査装置は、物体に対して走査装置を配置する前に、物体の表面形状に適合するように予め構成されてもよい。
【0035】
走査装置を様々な表面形状を有し得る様々な物体に密着させることを可能にすることにより、走査装置の利用が高まる。走査装置が撮像対象の物体に密着する場合、走査装置と物体との間の結合、例えば、走査装置と物体との間の超音波信号の結合は改善される可能性が高い。結合の改善は、エネルギー損失がより低くなる可能性が高いため、物体の撮像の改善をもたらす可能性が高い。
【0036】
よって、走査装置と物体との間の適合性を改善することにより、走査装置でその物体を走査する結果が改善される可能性が高い。
【0037】
ある範囲の異なる形状の物体に密着することができる走査装置を提供することにより、同じ走査装置を、それによって得られる結果に大きな悪影響を及ぼすことなく様々な物体に使用することができるため、効率が改善される可能性が高い。
【0038】
物体の表面下を撮像するための、本明細書に記載される走査装置などの手持ち式デバイスの例が図1に示されている。デバイス101は、一体型ディスプレイを有することもできるが、この例では、タブレットコンピュータ102に画像を出力する。タブレットとの接続は、図示のように、有線とすることもでき、または無線とすることもできる。デバイスは、超音波信号を送信および受信するためのマトリックス配列103を有する。好適には、配列は、振動素子の配列を形成するように交差パターンで配列された複数の電極を備える超音波振動子によって実装される。振動素子は、送信と受信との間で切り替えられ得る。図示の手持ち式装置は、超音波信号を物体に結合するための乾式結合層104などの結合層を備える。結合層はまた、振動子が送信から受信に切り替わるための時間を可能にするために超音波信号を遅延させる。乾式結合層は、超音波信号を結合するために液体を使用する傾向がある他の撮像システムに優るいくつかの利点を提供する。これは、産業環境では実際的ではない可能性がある。ときどき使用されるように、液体カプラがブラダに収容されている場合、これにより正確な深さ測定値を得ることを困難になり、これは非破壊試験用途には理想的ではないすべての例において、結合層が設けられる必要はない。
【0039】
マトリックス配列103は二次元であるため、画像を取得するために物体を横切ってマトリックス配列を移動させる必要はない。典型的なマトリックス配列は、約30mm×30mmであり得るが、マトリックス配列のサイズおよび形状は、用途に合わせて変えることができる。デバイスは、オペレータによって物体に対して真っ直ぐに保持され得る。一般に、オペレータはすでに、物体のどこに表面下の欠陥または材料欠陥があり得るか、例えば、構成要素が、衝撃を受けている可能性があるか、または応力集中を引き起こす可能性がある1つまたは複数のドリルまたはリベット穴を備える可能性があること、を適切に理解しているであろう。デバイスは反射パルスをリアルタイムで適切に処理するので、オペレータはデバイスを任意の関心領域に簡単に配置することができる。
【0040】
手持ち式デバイスはまた、オペレータがパルス形状および対応するフィルタを変更するために使用することができるダイヤル105または他のユーザ入力デバイスも備える。最も適切なパルス形状は、撮像されている構造的特徴の種類およびそれが物体内のどこに位置するかに依存し得る。オペレータは、ディスプレイを介してタイムゲーティングを調整することによって、異なる深さで物体を見ることができる。装置に、タブレット102などの手持ち式ディスプレイに、または一体型ディスプレイに出力させることは、オペレータがディスプレイ上で見えるものに応じて物体上で振動子を容易に移動させ、または装置の設定を変更し、瞬間的な結果を得ることができるので、有利である。他の配置では、オペレータは、非手持ち式ディスプレイ(PCなど)と物体との間を歩いて、物体上の新しい設定または位置が試験されることになるたびに再走査し続けなければならない可能性がある。
【0041】
物体の表面下の構造的特徴を撮像するための走査装置が図2に示されている。装置は、全体として201で示されており、送信機202と、受信機203と、信号プロセッサ204と、画像生成器205とを備える。いくつかの例では、送信機および受信機は、超音波振動子によって実装され得る。送信機および受信機は、例示を容易にするためにのみ、図2において互いに隣接して示されている。送信機202は、撮像対象の物体206に向けて特定の形状を有する音波パルスを送信するように適切に構成される。受信機203は、物体からの送信された音波パルスの反射を受信するように適切に構成される。物体の表面下特徴が、207に示されている。
【0042】
装置の一実施形態に含まれる機能ブロックの例が図3に示されている。
【0043】
この例では、送信機および受信機は、振動素子312のマトリックス配列を備える超音波振動子301によって実装される。振動素子は、超音波を送信および/または受信する。マトリックス配列は、交差パターンで配列されたいくつかの平行な細長い電極を備え得、交点は、振動素子を形成する。送信機電極は、特定の形状を有するパルスパターンを特定の電極に供給する送信機モジュール302に接続される。送信機制御部304は、作動される送信機電極を選択する。所与の時点に作動される送信機電極の数は変動し得る。送信機電極は、個別にまたはグループ単位で順に作動され得る。好適には、送信機制御部は送信機電極に、一連の音波パルスを物体に送信させ、生成された画像が連続的に更新されることを可能にする。送信機電極はまた、特定の周波数を使用してパルスを送信するようにも制御され得る。周波数は、100kHz~30MHzであり得、好ましくは0.5MHz~15MHzであり、最も好ましくは0.5MHz~10MHzである。
【0044】
受信機電極は、物体から放射される音波を感知する。これらの音波は、物体に送信された音波パルスの反射である。受信機モジュールは、これらの信号を受信および増幅する。信号は、アナログ・デジタル変換器によってサンプリングされる。受信機制御部は、受信機電極を、送信機電極が送信した後に受信するよう適切に制御する。装置は、送信および受信を交互に行い得る。一実施形態では、電極は、送信と受信の両方が可能であり得、その場合、受信機制御部および送信機制御部は、電極をそれらの送信状態と受信状態との間で切り替える。好ましくは、装置において送信される音波パルスと受信されるそれらの反射との間に多少の遅延がある。装置は、電極が送信から受信に切り替わるのに必要な遅延を提供するための結合層を含み得る。遅延は、相対深度が計算されるときに補償され得る。結合層は、好ましくは、送信された音波の低減衰を提供する。
【0045】
各振動素子は、画像内の画素に対応し得る。言い換えれば、各画素は、振動素子のうちの1つで受信された信号を表し得る。これは、1対1対応である必要はない。単一の振動素子が2つ以上の画素に対応し得、その逆も可能である。各画像は、1つのパルスから受信された信号を表し得る。「1つの」パルスは、通常、多くの異なる振動素子によって送信されることを理解されたい。「1つの」パルスのこれらのバージョンはまた、異なる時点にも送信され得、例えば、マトリックス配列を、配列の各行を順に作動させることによって振動素子の「波」を作動させるように構成することもできる。しかしながら、試料の単一の画像を生成するために使用されるのはパルスの反射であるため、この送信パルスの集合は依然として「1つの」パルスを表すと考えることができる。試料の画像のビデオストリームを生成するために使用される一連のパルス内のすべてのパルスについても同じことが当てはまる。
【0046】
パルス選択モジュール303は、送信されるべき特定のパルス形状を選択する。これは、振動子によって超音波パルスに変換される電子パルスパターンを送信機モジュールに供給するパルス発生器を含み得る。パルス選択モジュールは、メモリ314に格納された複数の予め定義されたパルス形状にアクセスすることができる。パルス選択モジュールは、自動的にまたはユーザ入力に基づいて送信されるパルス形状を選択し得る。パルスの形状は、撮像されている構造的特徴の種類、その深さ、材料の種類などに応じて選択され得る。一般に、パルス形状は、オペレータに物体の高品質画像を提供するために、信号プロセッサ305が収集することができ、かつ/または画像エンハンスメントモジュール310が改善することができる情報を最適化するように選択されるべきである。
【0047】
図4に、走査装置を構成する層が分解図で示されている走査装置400を示す。振動子は、圧電材料の両側に送信機回路404および受信機回路406を有するPVDF402などの圧電材料層を備える。送信機回路および受信機回路は、非常に薄いプリント回路基板から形成され得る。一例では、送信機回路および受信機回路は、(図4に概略的に示される)可撓性ベース層上に平行線として堆積させた複数の細長い電極を備える。送信機回路および受信機回路は、一緒に積層され得る。これらは、それぞれの電極が直角に重なって交差パターンを形成するように配列され得る。交点は、振動素子の配列を形成する。
【0048】
いくつかの例では、送信機回路および受信機回路は、それぞれポリイミド薄膜上に堆積された銅から形成される。各銅層は電極を形成する。電極はまた、他の材料、例えば金からも形成され得る。電極層を、圧電層に接合することができる。他の例では、電極は圧電層上に直接堆積され得る。
【0049】
振動子はまた、送信機回路および受信機回路と圧電層とを支持するための支持体408も備える。
【0050】
走査装置は、乾式結合などの結合層410、例えばエラストマー層も備え得る。結合層は、走査装置の表面を形成し得る。結合材料は、可撓性および/または圧縮性であり得る。
【0051】
図5を参照すると、いくつかの例では、振動子電極(すなわち、送信機502および/または受信機504の電極)は、幅506が210μmであり得る。よって、送信機電極と受信機電極との交差によって形成される振動素子は、サイズ210×210μmである。隣接する電極間のギャップ508は、40μmとすることができる。隣接する振動素子間のピッチ510は、250μmとすることができる。
【0052】
送信機電極および受信機電極の数は、スケーラブルである。したがって、振動子は、任意の所望のサイズおよび形状で設計することができる。電極の幅もまた、電極当たりのエネルギー出力の量を調整するためにスケーラブルである。電極の幅はまた、所望の焦点に応じて調整することもできる。電極間の距離も変化させることができる。一般には、圧電層の可能な限り大きな面積を刺激することによって超音波エネルギーを最大化するために、隣接する電極間に小さなギャップを有することが好ましい。電極の厚さは、周波数、エネルギーおよびビーム焦点などの要因を制御するように選択され得る。ベースフィルムの厚さは、信号の形状、周波数およびエネルギーなどの要因を制御するように選択され得る。PVDFの厚さもまた、信号の形状、周波数、およびエネルギー(これらもまた、送信パルス形状に依存する)を変化させるように適合させることができる。いくつかの例では、振動素子間のピッチを125μmまで縮小することができる。
【0053】
送信機電極配列または受信機電極配列の一方または他方を形成するための電極の例が図6に示されている。図には明確にするために限られた数の個別電極が図に示されている。いくつかの例では128個の電極がある。他の例ではより多くのまたはより少ない電極を設けることができる。電極をドライバおよび/または受信電子機器に結合するための接続領域602が設けられている。好適には、接続領域は、標準的な接続に結合するための標準的なサイズのものである。標準的な接続は、最大128個の電極に接続するように構成され得る。(604に示されている)振動素子を形成するための電極配列の領域は、接続領域とは異なる幅のものであり得る。図示されているように、配列はわずかに細長い。
【0054】
図6の配列にそれと直角に別の配列をオーバーレイする例が図7に示されている。配列の一方は送信機電極として作用し、配列の他方は受信機電極として作用する。この例では、電極の重なりによって画定される領域は正方形であり、したがって正方形の振動子配列を画定する。各振動素子は、送信機電極と受信機電極との交点によって形成される。他の例では、異なるサイズおよび/または形状の電極配列を提供することができる。これは、異なるサイズおよび/または形状の振動子配列をもたらすことができる。そのような異なる電極配列のいくつかの例が図8a~図8cに示されている。他の形状および/またはサイズも可能である。
【0055】
電極の幅および/または間隔を、そのような電極配列において変化させることができる。電極は、それらの長さに沿って等幅である必要はない。電極は、配列内、および/または送信機電極配列および受信機電極配列の他方の1つまたは複数の他の電極と等幅である必要はない。電極は、配列内の隣接する電極から等間隔に配置される必要はない。
【0056】
支持体は、少なくとも1つの非平面構成を採るように適切に配置され、それによって走査装置は物体の非平面表面に適合可能である。好適には、支持体が非平面構成を採る場合、走査装置の走査面は非平面形状を採る。走査装置が物体の非平面表面に適合可能であることにより、走査装置が物体の内部を走査することが可能になる。走査装置は、好適には、非平面構成の支持体と共に動作して、物体の非平面表面を走査することができる。例えば、走査装置は、超音波信号を物体に結合し、物体からの超音波反射を受信することができる。本構成は、超音波信号を物体の内外により効率的に結合することができ、それによってより高い精度および/またはより短い走査時間を可能にする。
【0057】
好適には、送信機および受信機は、支持体が非平面構成にあるときに物体の非平面表面に適合する。送信機と物体の非平面表面との適合性は、送信機によって送信された超音波信号の物体への効率的な結合を容易にする。受信機と物体の非平面表面との適合性は、物体によってまたは物体内で反射された超音波信号の受信機への効率的な結合を容易にする。送信機および受信機は、支持体の非平面構成に適合し得る。例えば、送信機および受信機は、支持体と同じ表面形状を採り得る。
【0058】
支持体は、支持構造を備え得る。支持体は、送信機および受信機に構造的支持を提供し得る。支持体は、送信機および受信機を少なくとも部分的に包囲または収容し得る。いくつかの例では、支持体は、ハウジング、例えばフレームを備えることができる。支持体は、送信機および受信機を収容し得る。好適には、支持体は走査面を画定する。
【0059】
支持体と送信機および受信機の一方または両方との間の結合は、直接的である必要はない。例えば、送信機と支持体との間および/または受信機と支持体との間に少なくとも1つの他の材料または構造があってもよい。
【0060】
いくつかの例では、走査装置は、支持体が非平面構成にあることにより、走査装置の走査面が、凹状構成、凸状構成、部分球面構成、および複数の非平行平面を有する構成のうちの1つ、またはそれらの組み合わせを含むように構成される。
【0061】
そのような構成の例が図9に示されている。この例では、走査装置900は支持体902を備える。振動子904を形成する、送信機および受信機が、支持体上に設けられている。振動子の前方には乾式結合層906が設けられている。支持体は、超音波信号を吸収または減衰するように構成された材料を含み得る。このようにして、そうしないと超音波走査に干渉する可能性がある送信機の背後からの反射が低減される。
【0062】
走査装置は、物体908を走査するように構成される。支持体、よって走査装置の表面形状は、物体の表面形状と一致するように構成される。この例では、支持体は、外側に突出する三角形の形状を採る。これは、物体の内側に突出する三角形の表面形状と一致する。よって、走査装置は、物体内を効率的に走査するように(例えば、物体の内部の特徴910を識別するために)物体との密着を形成することができる。
【0063】
図10a~図10cに図示される他の例では、支持体1002は、それぞれ、内側に突出する三角形、凸形状、および凹形状を採ることができる。いずれの場合も、支持体は非平面構成を採る。よって、走査装置は、物体の対応する非平面表面に適合可能である。
【0064】
いくつかの例では、非平面構成は、第2の平面に結合された第1の平面を含む。2つの平面は、それらの平面の第1の側に180度未満の角度で、それらの平面の第2の側に180度より大きい角度で結合される。走査装置は、第1の側と第2の側の一方または両方に対して物体を走査するように構成される。
【0065】
平面の第1の側に向かって、平面は互いの方へ傾斜している。走査装置は、被試験体の凸状または外側の角に隣接して配置され得、角は平面の第1の側に向かって配置される。好適には、走査構成は、平面の角度が物体上の外面間の角度に対応するように構成される。この手法は、第1の平面が物体の第1の外面と位置合わせされ、第2の平面が物体の第2の外面と位置合わせされるように、物体の外側の角が第1の平面および第2の平面によって画定された角度に適合することを可能にする。この構成により、走査装置が物体の角またはその付近を効率的に走査することが可能になる。例えば、走査装置は、物体を角の両側で角の両側に対して走査するように構成される。そのような走査からの結果により、角/角付近の物体の内部構造のより改善された見え方が得られる。本構成は、単一の走査装置を使用して、単一の走査でそのような走査が得られることを可能にする。これにより、走査装置をまず角の一方の側に移動させ、次いで角の別の側に移動させる必要がないため、走査の効率を高めることができる。
【0066】
平面の第2の側に向かって、平面は互いから離れる方へ傾斜している。走査装置は、被試験体の凹状または内側の角に隣接して配置され得、平面の第2の側は角に向かって配置される。好適には、走査構成は、平面の角度が、角の中へ互いに向かい合う物体上の表面間の角度に対応するように構成される。この手法は、第1の平面が物体の1つの表面と位置合わせされ、第2の平面が物体の別の表面と位置合わせされるように、走査装置の第1の平面および第2の平面が物体の内側の角に受け入れられることを可能にする。この構成により、走査装置が物体の角またはその付近を効率的に走査することが可能になる。例えば、走査装置は、物体を角の両側で角の両側に対して走査するように構成される。そのような走査からの結果により、角/角付近の物体の内部構造のより改善された見え方が得られる。本構成は、単一の走査装置を使用して、単一の走査でそのような走査が得られることを可能にする。これにより、走査装置をまず角の一方の側に移動させ、次いで角の別の側に移動させる必要がないため、走査の効率を高めることができる。
【0067】
いくつかの例では、第1の側に面する1つまたは複数の振動子を設けることができる。いくつかの例では、第2の側に面する1つまたは複数の振動子を設けることができる。いくつかの例では、振動子は、第1の側または第2の側のどちらかに対する走査を可能にするように、背中合わせに配置され得る。そのような例では、走査が行われる側を、関連付けられた電子機器によって制御することができる。
【0068】
第1の平面と第2の平面とは直接結合される必要はない。例えば、ジョイントなど、平面間に接合部があってもよい。しかしながら、好適には、走査装置の作動部分、例えば送信機および受信機を含む部分は、第1の平面と第2の平面との間の結合の近くに設けられる。この配置により、走査装置を、物体の角または屈曲部またはその付近を走査するために使用することが可能になる。ジョイントによって結合された複数の平面を備える走査装置の例が図11に示されている。図11aは、全体として1101および1102に示される2つの平面を示している。平面は、ヒンジ1104によって結合されている。図11bは、全体として1105、1106、および1107に示される3つの平面を示している。平面は、2つのヒンジ1108、1110によって結合されている。図11aおよび図11bに示される平面の各々は、それぞれの走査モジュールを形成し得る。各走査モジュールは、それぞれの送信機、受信機、および支持部分を備え得る。
【0069】
図11aおよび図11bには平面が示されているが、図示されている部分のうちの1つまたは複数が曲面を含み得ることが理解されよう。
【0070】
ヒンジは、閾値力を超える力の作用下でヒンジの周りの平面の相対的回転を可能にすることができるような抵抗を有し得る。いくつかの例では、ヒンジは、例えばヒンジに結合されたモータによって駆動され得る。ヒンジの駆動は、関連付けられた電子機器によって制御され得る。例えば、撮像対象の物体の表面形状が既知である場合、平面にその物体を撮像するのに適した非平面構成を採らせるようにヒンジを駆動することができる。いくつかの例では、ヒンジは、走査装置が物体と接触して保持される際にある角度範囲にわたって駆動され得る。角度範囲は、好適には、10度の範囲、5度の範囲、または2度の範囲である。走査装置は、ヒンジがその角度範囲にわたって駆動される際に物体を走査し得る。最適な走査結果(例えば、所与の品質尺度または品質尺度の組み合わせのうちの最高の結果)が得られる角度を決定することができる。この角度からの走査を、さらに処理および/または格納すべき走査として選択することができる。決定された角度を、さらなる走査のために選択することができる。
【0071】
支持体は、外力によって作用されないときに非平面構成を有し得る。支持体は、静止しているとき、例えば物体に押し付けられていないとき、非平面構成を採り得る。
【0072】
支持体は、走査装置を物体の非平面表面に押し付ける際に非平面構成を採るように配置され得る。支持体は柔軟であり得る。
【0073】
支持体は、1つの次元において柔軟であり得る。支持体は、2つ以上の次元において柔軟であり得る。いくつかの例では、支持体は単一の次元において柔軟である。この構成は、走査装置がその次元で異なる曲率に適合することを可能にすることができる。そのような走査装置は、例えば、翼の前縁の比較的高い曲率から翼の上部の比較的低い曲率まで曲率が変化する航空機の翼を横切る走査に適している可能性がある。
【0074】
図12aに、1つの次元において屈曲することによって非平面構成を採っている振動子1202(走査装置の残りの部分は明確にするために省略されている)の例を示す。
【0075】
本明細書で説明されるように、振動素子のマトリックスを備える振動子の複数の動作モードがある。1つのモードでは、隣接する、または略隣接する振動子群を一度に発射することができる。隣接する振動子群は、走査装置内のすべての振動子を備え得る。このモードを、例えば物体の厚さを決定するために、物体の後壁を検出するのに有用であり得る、比較的強力なパルスを放射するために使用することができる。別のモードでは、振動素子を、例えばマトリックスの行に沿って、または列に沿って、ラインごとに(またはライングループ単位で)発射することができる。
【0076】
一度に発射される振動素子の行の例が、図12の1204に示されている。振動子は、振動素子の行が直線のままであるように屈曲している。これは、図12bを参照して例示されている。矢印1206は、放射された超音波パルスを概略的に示している。よって、非平面構成で直線のままである振動素子のラインに沿って発射することにより、平坦なマトリックス配列のようなパルスの送信を可能にすることができる。よって、検出された反射の処理を、標準的な方法で行うことができる。
【0077】
一度に発射される振動素子の列の例が、図12の1208に示されている。振動子は、振動素子の列が湾曲した路程を採るように屈曲している。これは、図12cを参照して例示されている。矢印1210は、放射された超音波パルスを概略的に示している。よって、非平面構成で湾曲した路程を採る振動素子のラインに沿って発射することにより、焦点効果を達成するために送信のタイミングを変更する必要なく、物体内の特定の位置に集中させることができるパルスの送信を可能にすることができる。この集中を、好適には、列の曲率に依存して、列に沿った振動素子の各々からのパルスの送信のタイミングを制御することによってより厳密に制御することができる。
【0078】
より一般的には、採られた非平面構成に依存して1つまたは複数の振動素子を発射することにより、超音波信号の送信、例えば送信方向および/または送信パワーのより優れた制御が可能になる。
【0079】
支持体が2つ以上の次元において柔軟である場合、これにより、走査装置を、撮像対象の物体の領域にわたる曲率の変化に適合させることができる。
【0080】
好適には、送信機および受信機は柔軟である。例えば、送信機はフレキシブル送信機回路を備え得、受信機はフレキシブル受信機回路を備え得る。好適には、フレキシブル送信機回路およびフレキシブル受信機回路は、支持体が非平面構成を採るときに物体の非平面表面に適合するように構成される。
【0081】
走査装置は、例えば正方形や長方形の形態の可撓性のブランケットまたはマットの形態で形成され得るが、任意の形状も可能である。走査装置が形成される形状は、所望の用途に合わせて調整することができる。例えば、翼部などの物体の台形断面が走査される場合、使用される走査装置は、走査対象の台形断面を覆うように寸法決めされた台形マットの形態をとることができる(走査対象の断面よりも大きくてもよく、台形領域を走査するために台形である必要はない)。走査装置は、したがって、撮像対象の物体上に掛けられ得る。走査装置の柔軟性により、走査装置が物体の表面輪郭に適合することが可能になる。走査装置をブランケットまたはマットとして形成することにより、物体のより広い領域を一度に走査することを可能にすることができる。これにより、関心領域を走査するための全体的な走査時間を短縮することができる。
【0082】
走査装置は、互いに結合された複数の振動子を備えることができる。そのような構成により、単一の振動子によって提供される走査解像度を維持しながら、比較的大きな領域を走査することが可能になる。
【0083】
走査装置は、可撓性リップなどのリップを備えることができる。リップは、走査装置の本体から離れる方へ延在し得る。この構成が図32に示されている。走査装置は、全体として3200に示されている。走査装置は、本体3202を備える。本体は、送信機を駆動し、受信機から信号を受信するための電子機器を備える。図示の例では、本体は、支持体を本体に取り付けるために使用される裏当てブロック3204を収容する。裏当てブロックは、すべての例において設けられる必要はない。支持体は、全体として3206に示されている。支持体は、本体3202に当接する部分3208と、本体から延在するリップ3210とを備える。支持体は、裏当て材料3212と結合材料3214とを含む。裏当て材料および結合材料は、振動子3216を挟んでおり、すなわち、振動子の両側に設けられている。振動子は、送信機と受信機とを備える。
【0084】
好適には、支持体は柔軟である。リップは、本体3202に当接する支持体の部分よりも柔軟であり得る。本体に当接する支持体の部分は、いくつかの実装形態では、剛性であり得る。本体に当接する支持体の部分は、図示のように平坦面などの本体の縁部の全体的な形状を保持し得る。
【0085】
好適には、リップは、少なくとも1つの次元において屈曲するように構成される。好ましくは、リップは2つの次元において屈曲することができる。リップは、例えば本明細書の他の箇所に記載されているように、可撓性のブランケットまたはマットの一部を形成し得る。
【0086】
図32では、リップは支持体の平坦部分に結合している。リップは、代替的に、本明細書に記載されるような任意の他の形状の支持体に結合してもよい。本体に当接する支持体の部分は、平坦である必要はなく、突出した形状、例えば凸状曲線、および/または引っ込んだ形状、例えば凹状曲線などの任意の適切な形状を採ることができる。そのような形状の例が図9および図10に示されている。
【0087】
図33に、図32の走査装置で使用するための送信機電極3302および受信機電極3304の例を示す。送信機電極および受信機電極はどちらも、可撓層上にn本の導電材料のラインを備える。2組のn本のラインは、電極がオーバーレイされるときに互いに交差するように配置されている。ラインが交差する点は、送信素子および受信素子を画定する。電極は、電極間に圧電層を挟むように組み立てられる。ラインの本数nは、所望のサイズおよび解像度の送信素子および受信素子のマトリックス配列を提供するように所望に応じて選択することができる。電極3302、3304が電極間の圧電層と共に組み立てられると、得られる配列は振動子3216を形成することができる。
【0088】
好適には、走査装置の一部としてリップを設けることは、走査装置の電子機器および制御システムの変更を必要としない。よって、リップを備える支持体に結合された振動子の電極は、リップを備えない支持体に結合された振動子の電極と同じ方法で走査装置の電子機器および制御システムに結合することができる。例えば、振動子が結合される支持体がリップを備えるか否かにかかわらず、振動子に同数の電極を設けることができる。これは、図33(a)を考察すれば理解することができる。電極3302の一部は走査装置の本体に当接する支持体の部分にあり、電極の一部はリップにある。電極ラインは、走査装置の本体の近くの電極3302の部分からリップまで延在する。電極ラインの本数を増やす必要はない。よって、n本のラインの各々の制御を、同じ電子機器および制御システムを使用して行うことができる。
【0089】
走査装置上にリップを設けることにより、走査装置が、構造の角、すなわち、材料が他の材料と重なり、または接合する領域を効果的に走査することができる。そのような領域は、非破壊試験用途において特に重要なものであり得る。例えば、角は応力の高い領域であり得る。炭素繊維材料は角の周りで屈曲している場合があり、繊維が屈曲する場合に材料を効果的に分析できることが重要である。あるいは、異なる材料が角で接合している場合があり、例えば、異なるセットおよび/または向きの繊維が互いに隣接している可能性がある場合に、そのような接合部を効果的に分析できることが重要であり得る。さらに、いくつかの用途では、樹脂を角に均一に入れることが困難な場合がある。したがって、存在する可能性のある欠陥を特定できるように角の樹脂を分析できることが重要である。
【0090】
リップを、角の周りの試験体に配置することができる。角は、内側または外側に傾斜していてもよく、または内側と外側の屈曲部の組み合わせがあってもよい。可撓性リップは、この角形状または屈曲部の範囲に対応することができる。リップは、振動子がその長さに沿って、またはその長さの少なくともかなりの部分に沿って、例えばその長さの少なくとも半分に沿って、またはその長さの少なくとも4分の3に沿って、試験体の表面に対して略垂直になるように、試験体上に適切に置かれる。この配置は、試験体の内外への音の結合を改善するのを助けることができ、結果として得られる試験体の内部の分析の精度を向上させるのを助けることができる。
【0091】
リップが角を覆って配置される場合、リップの特性を使用して、角の分析の精度を向上させることができる。例えば、リップは、特定の曲率半径、例えば10mmを有し得る。リップが90度の屈曲部を覆って配置されるときに、リップの曲率半径を考慮に入れることができ、(信号の送信および/または受信における)信号の処理は曲率半径を補償することができる。この手法は、分析の精度を向上させることができる。
【0092】
結合シュー
上記の説明では、走査装置が非平面物体の走査をどのようにして可能にし得るかを説明している。上記の例では、走査装置を、非平面構成の支持体と共に動作させることができる。次に、非平面物体の走査を可能にする別の手法を説明する。この別の手法を、上記の(1つまたは複数の)手法と一緒に、特徴の任意の所望の組み合わせで、および/または独立して使用できることに留意されたい。これにより、システムの使用の柔軟性が高まる。
【0093】
図13を参照すると、振動子モジュール1302は振動子1304を備える。振動子モジュールには、超音波信号が被試験体に向かって送信される方向に振動子の前に位置する乾式結合が設けられ得る。乾式結合は図13には示されていない。結合シュー1306は、振動子モジュールに取り付けるために適切に設けられる。結合シューは、任意の好都合な方法で振動子モジュールに取り付け可能とすることができる。例えば、結合シューは、その上部に、締まりばめを介して振動子モジュールと係合するように寸法決めされた凹部を備え得る。結合シューは、スナップばめ接続によって、振動子モジュールに取り付け可能なシューホルダと係合することによって、または任意の他の好都合な方法で振動子モジュールに取り付け可能であり得る。
【0094】
結合シューは、好適には、超音波信号が通過することを可能にする材料を含む。結合シューは、振動子モジュールが凹部内に位置するときなどに、振動子モジュールの超音波放射面に隣接するように配置された振動子結合面を備える。振動子結合面は、超音波を結合シューに結合するように振動子モジュールの超音波放射面に当接することができる。結合シューは、ターゲット物体に面するように配置された探触子面を備える。探触子面は、超音波をターゲット物体に結合するためのものである。結合シューは、結合シューの周囲の少なくとも一部を形成する側面を備える。側面は、振動子結合面および探触子面の少なくとも一方と交差する。
【0095】
好適には、結合シューは、振動子にインピーダンス整合される。これにより、振動子結合シュー界面における、例えば結合シューの振動子結合面における望ましくない反射を低減または回避することができる。このようにして、送信された超音波のエネルギーを結合シューに効率的に渡すことができる。結合シューは、弾性材料を含み得る。結合シューは、エラストマーを含み得る。結合シューは、Aqualene材料、ACE材料、AquaSilox材料およびAqualink材料(カナダ、Innovation Polymersから入手可能)のうちの1つまたは複数を含み得る。そのような材料の例には、以下が含まれる。
【0096】
Aqualene300(ショアA硬度58、(5MHzでの)減衰量0.35dB/mm)、
Aqualene320(ショアA硬度35、(5MHzでの)減衰量0.15dB/mm)、
Aqualene200(ショアA硬度40、(5MHzでの)減衰量0.48dB/mm)、
ACE400(ショアA硬度40、(5MHzでの)減衰量0.5dB/mm)、
ACE410(ショアA硬度42、(5MHzでの)減衰量0.77dB/mm)、
AquaSilox100(ショアA硬度23、(5MHzでの)減衰量0.8dB/mm)、および
Aqualink100(ショアA硬度5、(5MHzでの)減衰量0.4dB/mm)。
【0097】
結合シューは、硬質材料を含み得る。結合材料は、プレキシガラスを含み得る。結合材料は、架橋プラスチックを含み得る。結合材料は、Rexolite(C-Lec Plastics Inc.から入手可能)を含み得る。
【0098】
結合シューには、所望に応じた厚さが設けられ得る。結合シューの厚さは、被試験体の深さ、被試験体の後面の深さ、被試験体の関心対象の特徴の深さ、被試験体の材料、および結合シューを介した送信のための超音波の周波数または周波数範囲のうちの1つまたは複数に依存して決定され得る。
【0099】
状況によっては、送信された超音波を被試験体により効果的に結合するため、および/または物体からの反射超音波信号を振動子に向かってより効果的に結合するための液体結合媒質を設けることが望ましい。そのような液体結合は、水性ゲルなどのゲルや水を含み得る。
【0100】
図14を参照すると、振動子1404を備える振動子モジュール1402に、結合シュー1406を設けることができる。結合シューは、丸みを帯びた角1408を備える。そのような丸みを帯びた角(または湾曲した縁部)により、液体結合媒質を結合シューと物体との間に流すことができる。鋭い角は、結合媒質を物体の表面から削り取りやすい可能性がある。よって、結合シューに湾曲した縁部を設けることにより、物体の内外への超音波の結合を増加させることができる。これは、超音波走査の精度を高めることにつながり得る。
【0101】
結合シューの探触子面、すなわち、超音波がそこに向けて送信されるべきである物体に面する表面は、平面である必要はない。結合シューの探触子面は、振動子結合面と平行である必要はない。結合シューの代替構成は、振動子自体を変更する必要なく、振動子モジュールが異なる形状の物体をより効果的に検査することを可能にすることができる。しかしながら、例えば本明細書の他の箇所に記載されているような振動子のそのような変更は、本明細書に記載されている異なる結合シューと共に使用され得ることに留意されたい。
【0102】
結合シューの一例が図15に示されている。結合シュー1506は、湾曲した探触子面1508を備える。湾曲した探触子面は、結合シューが、球面(または部分球面)状の物体または円筒(または部分円筒)状の物体などの湾曲した物体の曲率により厳密に一致することを可能にする。例えば、結合シュー1506を使用して、振動子モジュールとパイプの外面との間のより良好な結合を可能にすることができる。図15の結合シューの別の図が図16に示されている。図16は、結合シューが凹状の円筒状曲面を備えるように、湾曲が一方向に延在していることを示している。よって、図16に示される結合シューを使用して、振動子モジュールをパイプの外面に結合することができる。
【0103】
結合シューは弾性であり得る。結合シューの弾性により、結合シューの探触子面1508とパイプの外面との間の曲率の差に適応することができる。結合シューを用いて適応することができる曲率不一致の許容範囲は、結合シューの弾性に依存する。様々なサイズの結合シューが設けられ得る。好ましくは、結合シューには、一般的なパイプの曲率に一致する曲率が設けられる。
【0104】
再び図15を参照すると、結合シュー1506の探触子面1508の曲率によって画定される円部分の外周が破線1510で示されている。この円の直径は1512に示されている。好適には、結合シューの曲率は、標準的なパイプ直径に一致するように構成される。例えば、結合シューには、100mm、150mm、200mm、250mm、300mm、500mmなどのパイプ直径に一致するように構成された曲率が与えられ得る。
【0105】
探触子面1508の湾曲は、図16に示されるように単一の方向である必要はない。他の例では、湾曲は、結合シューが球面状の凹面または部分球面状の凹面を備えるように、直交方向において同じであり得る。結合シューは、様々な曲率を有する探触子面を備え得る。例えば、結合シューは、パイプエルボの曲率に一致するように構成され得る。様々なパイプ、例えば(上記のような)標準直径のパイプおよび/または様々な角度で屈曲するパイプのパイプエルボの曲率に一致する様々なサイズの結合シューが設けられ得る。
【0106】
図17に、結合シュー1706の別の例を示す。例示の結合シューは、凸状曲線を有する探触子面1708を備える。探触子面1708は、好ましくは、球面または部分球面の曲線である。よって、結合シュー1706を使用して、被試験体の丸みを帯びた内側の角に結合することができる。被試験体のある範囲の湾曲への効果的な結合を提供するように、様々な曲率半径に一致するように構成された様々なサイズの結合シューが提供され得る。
【0107】
図18に、結合シュー1806、1807の代替構成の図を示す。上側結合シュー1806は、探触子面1808に楔形の凹部または窪みを備える。下側結合シュー1807は、探触子面1809に楔形の突出部を備える。これらの結合シューは、それぞれ、試験体の外側または内側の角度に適応するように構成される。
【0108】
図19に、結合シュー1906の別の構成を示す。例示の結合シューは、試験体1912の溶接部1910の周りの撮像に有用である。結合シューは、振動子モジュール1902が面法線に対してある角度で保持されるように試験体1912の表面と位置合わせすることができる探触子面を備える。これにより、振動子モジュールが、面法線に対してある角度で試験体を通して超音波信号を送信することが可能になる。結合シューは、それが結合されるべきである振動子モジュールの長手方向軸に関して非対称であり得る。一方の側1906aに対する結合シューの部分は、他方の側1906bに対する結合シューの部分よりも振動子モジュールの一方の側にさらに延在し得る。これにより、溶接部の下を撮像するように振動子モジュールを配置するのを助けることができる。
【0109】
上述の結合シューは、単一の振動子モジュールに取り付けるように構成されている。状況によっては、複数の振動子モジュールが取り付け可能であり得る結合シューを提供することが望ましいであろう。例えば、所望の走査を得るために、単一の振動子モジュールが表面に沿ってまたは試験体を横切って移動される必要があり場合がある。一度に2つ以上の振動子モジュールに取り付けることができる結合シューを使用することは、単一の振動子モジュールを使用する場合と比較して、試験体のより大きな部分を一度に走査することができることを意味し得る。そのような構成は、より速い走査を容易にすることができる。単一の結合シューに取り付けられた振動子モジュール間に既知の関係があることになるため、これには走査位置合わせに関する利点もあり得る。これにより、異なる振動子モジュールから得られたデータのその後の処理を簡素化することができる。
【0110】
そのような結合シューの例が図20に示されている。結合シュー2006は、振動子モジュール2002a、2002b、2002c、2002dを受け入れるための複数の凹部(ここでは4つ)を備える。結合シューの探触子面を、走査対象の試験体に依存して、所望に応じて構成することができる。図示のように、結合シュー2006の探触子面は、パイプ2012の外面と係合するための凹状湾曲部を備える。結合シュー2006内の振動子モジュールのこの配置は、複数の振動子モジュールが取り付けられた結合シューをパイプの長手方向軸に沿って単に移動させることによって、(単一の振動子モジュールを使用する場合と比較して)パイプの外周のより大きな部分を走査すること可能にすることができる。
【0111】
図20に示される結合シュー2006は、4つの振動子モジュールに取り付けることができる。他の例では、結合シューを、より多数またはより少数の振動子モジュールに取り付けるように構成することができる。例えば、1つの構成では、結合シューを、パイプの全周にわたって、またはパイプの外周の大部分にわたって係合するように構成することができる。これを達成するために、結合シューは、パイプの外側に取り付け可能であるように弾性であり得る。結合シューは、結合シューがパイプの外側に取り付けられることを可能にするジョイントなどの可撓性部分を備え得る。振動子モジュールはその場合、振動子モジュールがパイプを取り囲むように結合シューに取り付けられるように設けられ得る。よってこの配置は、そのような結合シューをパイプの長さに沿って移動させることによってパイプの外周が一度に走査されることを可能にする。
【0112】
超音波減衰構造
結合シューの周囲は、超音波減衰構造を備えることができる。超音波減衰構造は、側方反射を低減することによって走査の精度をさらに高めることができる。次に、超音波減衰構造を図21図29を参照して説明する。そのような超音波減衰構造を、本明細書に記載される結合シューのいずれか、または実際に任意の他の適切な結合シューで利用することができる。
【0113】
そのような超音波減衰構造は、結合シューの周囲からのまたは周囲内の望ましくない反射、例えば側面からの反射を有用に低減または回避することができる。そのような望ましくない反射は、振動子によって送信された送信超音波ビームのビーム拡散に起因して生じ得る。送信超音波ビームは、特定のビーム幅を有する。ビーム幅は、ビームの強度がビームの最大強度のある割合を超える幅として定義され得る。よってビーム幅は、ビームのエネルギーの所与の割合が伝達される幅を定量化する。この幅を、振動子の数を選択することによって制御することができる。例えば、振動子の数を増やすことによりビーム焦点が増加させることができ、これによりビーム幅が減少し得る。比較的集中したビームは、比較的集中していないビームよりも広がりが小さい可能性がある。
【0114】
しかしながら、任意の所与のビームは、少なくともある程度まで、横方向の横波を含む可能性が高い。これらの横波は、結合シューの側面で反射する可能性があり、得られるデータの精度を低下させる可能性があるスプリアス反射につながる。スプリアス反射は、被試験体の界面によって、または被試験体内で引き起こされず、そのため物体の構造またはその位置には関係しない。したがって、精度を向上させるために、結合シュー内のこれらの横方向の反射を低減または回避することが望ましい。
【0115】
図21に、超音波減衰構造2120を備える結合シュー2016を示す。超音波減衰構造は、フレア部分を備える。側面は、振動子結合面から探触子面への方向に外側に傾斜している。超音波減衰構造は、結合シューの側面からの反射の路程長を増加させるように作用することができる。路程長が増加すると、その路程に沿って進む信号の減衰が大きくなり得る。よって、超音波減衰構造は、側方反射の減衰を増加させることができ、それによって振動子で検出され得るそのような側方反射のエネルギーを減少させることができる。側面が外側に広がる角度2121は、結合シューの厚さ、送信ビームの周波数または周波数範囲、試験体の材料、結合シューの材料、撮像対象の特徴、撮像対象の特徴の深さなどのうちの1つまたは複数に依存して選択することができる。
【0116】
角度の増加は、振動子から離れるより多くの反射を引き起こすことによって、振動子で受信される側方反射を低減させる可能性が高い。しかしながら、より大きい角度は、結合シューの探触子面の面積を増加させる。したがって、側方反射を低減させるのに十分な大きさであり、しかも結合シューがコンパクトで使いやすいままであるように十分に小さいフレア部分を有する結合シュー間のバランスが望ましい。
【0117】
好適には、側面は、約45度未満、または約35度未満、または約25度未満、または約15度未満、または約10度未満、または約5度未満、または約3度未満、または約2度未満の角度2121だけ外側に傾斜している。好適には、角度2121は、振動子で受信される側方反射の強度が少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%低減されるように選択される。
【0118】
超音波減衰構造は、追加的または代替的に、吸音材料を含んでいてもよい。これは、図22に概略的に示されている。結合シュー2206は、結合シューのバルクなど、結合シューの残りの部分とは異なる材料を含む超音波減衰構造2220を備える。好適には、結合シューの材料は、振動子と被試験体の一方または両方にインピーダンス整合される。これにより、振動子結合シュー境界での(例えば、振動子結合面での)反射および/または結合シュー物体境界での(例えば、探触子面での)反射を低減させることができる。好適には、結合シューの材料は、送信および反射されるべき超音波周波数に対して高度に透過的である。これは、結合シューによる送信信号および反射信号の減衰を低減または最小化するためである。
【0119】
超音波減衰構造は、減衰層を備えるか、または減衰層として作用し得る。例えば、超音波減衰構造は、エポキシおよび/または酸化鉄を含むか、またはそれらから形成され得る。超音波減衰構造は、金属粒子または粉末などのインピーダンス不整合材料の粒子を含み得る。粒子は、超音波減衰構造全体に分散され得る。
【0120】
好適には、粒子はある範囲のサイズを有することができる。よって、粒子は、超音波減衰構造を伝播する信号に対する不規則な一連の界面を呈し得る。好適には、粒子のサイズは、最大寸法Xμmの粒子から最大寸法Yμmの粒子までの範囲である。好ましくは、X=0.1μmである。好ましくは、Y=500μmである。Xは、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、5μm以上または10μm以上などであり得る。Yは、500μm以下、450μm以下、400μm以下または300μm以下などであり得る。好ましくは、粒子の最大寸法のサイズ、および/または粒子の最大寸法のサイズ範囲は、超音波減衰構造による吸収および/または散乱のための超音波の周波数または周波数範囲に依存する。
【0121】
複数の粒子は、球状粒子を含み得る。複数の粒子は、球状粒子以外の粒子を含み得る。複数の粒子は、異なる形状の粒子を含み得る。異なる形状の粒子を提供することは、超音波減衰構造内で超音波信号の不規則な反射を引き起こすのに役立ち得る。不規則な反射により、反射数および/または路程長を増加させることができる。
【0122】
複数の粒子は、複数の材料の粒子を含むことができる。好適には、異なる材料は異なる音響インピーダンスを有する。よって、異なる材料の粒子は、超音波信号を異なるように反射する。これは、超音波減衰構造内の不規則な反射を助長することができ、これが反射数の増加および/または路程長の増加につながり得る。粒子の少なくとも一部は、粉末形態であり得る。
【0123】
好適には、粒子は金属を含む。粒子は、複数の金属を含み得る。複数の粒子は、タングステン、ニッケル、チタン、二酸化チタン、鋼および酸化鉄のうちの1つまたは複数の粒子を含み得る。他の材料が所望に応じて提供され得る。好適には、超音波減衰構造内に提供される粒子の材料は、超音波減衰構造の所望の音響インピーダンスに依存して選択される。例えば、超音波減衰構造の材料に鋼粒子を含有させることにより、超音波減衰構造の音響インピーダンスを鋼の音響インピーダンスにより近づけることができる。よって、鋼粒子を含むそのような超音波減衰構造を、鋼材料に対するインピーダンス整合に使用することができる。
【0124】
粒子は、超音波減衰構造内に任意の所望の濃度で提供することができる。好適には、超音波減衰構造内の粒子の濃度は、超音波減衰構造が吸収および/または散乱するように構成される超音波の1つまたは複数の周波数に依存して選択される。粒子は、超音波減衰構造の少なくとも10%(重量で)を形成し得る。粒子は、超音波減衰構造の少なくとも20%(重量で)を形成し得る。粒子は、超音波減衰構造の少なくとも30%(重量で)を形成し得る。粒子は、超音波減衰構造の少なくとも50%(重量で)を形成し得る。粒子は、超音波減衰構造の少なくとも80%(重量で)を形成し得る。
【0125】
超音波減衰構造内にそのような粒子が存在することにより、超音波減衰構造内で追加の反射を生じさせ、超音波減衰構造内の信号の路程長を増加させることができる。そのような路程長の増加は、側方反射の減衰の増加をもたらし得る。各反射で信号強度の損失も発生する。よって、反射数が増加すると、反射損失が増加する。超音波減衰構造は、超音波減衰構造と結合シューのバルクとの間の境界で、結合シューのバルクの材料にインピーダンス整合され得る。これにより、この境界での反射を低減または回避することができ、側方に向けられた信号のより大きな割合が超音波減衰構造に入り、それによって超音波減衰構造内で減衰されることが可能になる。超音波減衰構造のインピーダンスは、超音波減衰構造内で変化し得る。超音波減衰構造のインピーダンスは、例えば、超音波減衰構造と結合シューのバルクとの間の境界からの距離が増加するにつれて、超音波減衰構造内で徐々に変化し得る。
【0126】
超音波減衰構造は、複数の層を備え得る。図23を参照すると、結合シュー2306の超音波減衰構造2320は、2つの層2322、2324を備えることができる。結合シューのバルクに隣接する第1の層2322を、結合シューのバルクにインピーダンス整合することができる。第1の層の外側に設けられた第2の層2324は、第1の層とは異なるインピーダンスのものとすることができる。第2の層は、第1の層と同じインピーダンスのものであり得る。第2の層は、第2の層のバルクに対して異なるインピーダンスを有する材料の粒子を含み得る。図23に示される例は2つの層を備えるが、より多くの層が設けられてもよい。これらの層は、使用される材料および/または組成が異なり得る。例えば、層は、同じかまたは異なるバルクインピーダンスを有する材料を含み得る。層は、それぞれの層のバルクインピーダンスとは異なるインピーダンスを有する材料の粒子を含み得る。層は、別の層、例えば隣接層中の粒子の数、濃度および/または密度とは異なる数、濃度および/または密度の粒子を含み得る。
【0127】
超音波減衰構造は、突出部または窪み(もしくは凹部)を備え得る。そのような突出部または窪みは、本明細書の他の箇所に記載されている超音波減衰構造または結合シューの特徴または特徴の組み合わせを備え得る。そのような窪みの例を、図24図29を参照して説明する。以下の説明は窪みの文脈で提供されるが、窪みの代わりに、または窪みと共に突出部が設けられていてもよいことが理解されよう。突出部と窪みの両方が設けられる場合、窪みと突出部とは交互になっていてもよい。突出部は、記載される窪みのいずれか1つまたは任意の組み合わせと同じ全体的な形状をとり得る。
【0128】
図24に、振動子モジュール2402および振動子モジュールに取り付けられた結合シュー2406の断面を示す。結合シュー2406は、超音波減衰構造2420を備える。例示のように、超音波減衰構造2420は、一連の窪み2430を備える。窪み2430は、超音波減衰構造2420の側面に設けられている。窪みは側面に、側面の底から振動子2404とほぼ同じ高さの側面の部分まで設けられている。代替の実装形態では、窪みは、側面のより大きいかまたはより小さい範囲に沿って設けられ得る。例えば、窪みは、側面の垂直範囲全体に沿って設けられてもよい。窪みは、側面の最下部、側面の最上部または側面の中央部に沿って設けられてもよい。窪みは、側面の約75%、約50%、約25%に沿って設けられてもよい。
【0129】
好適には、側面の突出部および/または窪みは、超音波減衰構造内を伝播する超音波信号に対して非平面界面を提示する。超音波減衰構造は、好適には表面凹凸を備える。表面凹凸は、結合シュー内を伝播する超音波信号に対して非平面界面を呈し得る。この構成により、側面から反射する超音波信号を散乱させることができる。
【0130】
図24に例示される窪みは、部分球面の窪みを備える。窪みは、半球状の窪みであり得る。窪みは、約1mm~約5mmの直径を有し得る。窪みはすべて同じ直径を有し得る。窪みは、ある範囲の直径を有し得る。窪みは、部分球面である必要はない。任意の他の適切な形状の窪みが設けられ得る。窪みは、湾曲した窪み、非球面の楕円形の窪み、放物面の窪みなどであってもよい。窪みは、角があってもよい。超音波減衰構造2520におけるそのような窪みの例が、図25Aに示されている。窪みの側面と側面の法線との間の角度は、好ましくは約45度未満、より好ましくは約35度未満、より好ましくは約25度未満である。
【0131】
窪みは、結合シューの側面に沿って互いに隣接している必要はない。図25Bおよび図25Cに示される例では、部分球面の窪みおよび角度のついた窪みが、側面に沿って互いに間隔をおいて配置されている。隣接する窪み間の間隔は、約0.1mm~約10mmであり得る。好適には、間隔は約0.5mm、約1mm、約2mmである。
【0132】
窪みを有する超音波減衰構造を備える結合シューの例が、図26図29に示されている。図26に、平坦な(または略平坦な)物体に結合するための結合シュー2606を示す。結合シュー2606の超音波減衰構造2620には、窪み2630が設けられている。図27図29に、異なる直径のパイプに結合するための湾曲した探触子面を有する例示的な結合シュー2706、2806、2906を示す。それぞれの超音波減衰構造2720、2820、2920が、窪み2730、2830、2930を備える。
【0133】
図30に、振動子3004を備える例示的な振動子モジュール3002を示す。異なる結合シュー3006a~3006fが示されている。結合シューのいずれか1つまたは複数が、超音波減衰構造3020、例えば本明細書に記載される超音波減衰構造を備え得る。図30は、結合シューが振動子モジュールにどのように取り付けられ得るかの例を示している。図示の例では、2つの結合プレート3050が振動子モジュールと係合し得る。結合プレートは、振動子モジュールの外部の水平スロットと、または任意の他の好都合な方法で係合し得る。結合プレートは、ねじ3052が通り得る穴3051を備える。ねじは、結合シューの穴3054と適切に係合する。よって、結合プレートは振動子モジュールと係合し得、結合シューを結合プレートに取り付けることができる。したがって、結合シューを振動子モジュールに対してしっかりと保持することができる。
【0134】
図31Aに、結合プレート3150およびねじ3152を使用して結合シュー3106に取り付けられた振動子モジュール3102を示す。図31Cに、図31Bの線A-Aに沿ってとられた断面図を示す。裏当てブロック3160が、振動子モジュール3102内の振動子3104の上方に示されている。
【0135】
本明細書に記載される装置および方法は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)などの複合材料の剥離および層間剥離を検出するのに特に適している。これは航空機の整備にとって重要である。また、応力集中部分として機能し得るリベット穴の周りの剥落を検出することもできる。この装置は、はるかに大きな構成要素の小さな領域を撮像することが求められる用途に特に適している。この装置は、軽量で携帯可能であり、使いやすい。この装置は、物体上の必要な場所に配置されるように、オペレータが手で容易に持ち運ぶことができる。
【0136】
一実装形態では、振動子を、例えば、ユーザが表面上でペンを走らせて、簡単な厚さ試験、すなわち、閾値より大きいか否かを行うことを可能にするために、ペン先に形成することができる。ペンのLEDで結果を表示することができる。
【0137】
本明細書の各図に示される構造は、装置内のいくつかの機能ブロックに対応することを意図されている。これは例示のためのものにすぎない。図に例示されている機能ブロックは、装置が実行するように構成されている異なる機能を表しており、それらは、装置内の物理的構成要素間の厳密な分割を定義することを意図されていない。いくつかの機能の性能は、いくつかの異なる物理的構成要素に分割されてもよい。1つの特定の構成要素が、いくつかの異なる機能を果たしてもよい。図は、チップ上のハードウェアの異なる部分間、またはソフトウェア内の異なるプログラム、プロシージャもしくは機能間の厳密な分割を定義することを意図されていない。機能は、ハードウェアもしくはソフトウェア、またはこれら2つの組み合わせで実行され得る。任意のそのようなソフトウェアは、好ましくは、メモリ(RAM、キャッシュ、FLASH、ROM、ハードディスクなど)または他の記憶手段(USBスティック、フラッシュ、ROM、CD、ディスクなど)といった非一時的コンピュータ可読媒体に格納される。装置は、ただ1つの物理デバイスを備え得るか、またはいくつかの別個のデバイスを備え得る。例えば、信号処理および画像生成の一部は、携帯型の手持ち式デバイスで実行され得、一部は、PC、PDA、またはタブレットなどの別個のデバイスで実行され得る。いくつかの例では、画像生成の全体が別個のデバイスで実行され得る。本明細書に記載される機能ユニットのいずれも、クラウドの一部として実装され得る。
【0138】
本出願人は、本明細書に記載される各個別の特徴および2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを、そのような特徴または特徴の組み合わせが本明細書で開示される問題を解決するかどうかにかかわらず、特許請求の範囲に限定されずに、そのような特徴または組み合わせが、当業者の一般常識に照らして全体として本明細書に基づいて実行される限りにおいて、本明細書により別個に開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のそのような個別の特徴または特徴の組み合わせからなり得ることを示す。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な変更が行われ得ることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図11(a)】
図11(b)】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【図
図23
【図
図24
図25(a)】
図25(b)】
図25(c)】
図26A
図26B
図27A
図27B
図27C
図27D
図28A
図28B
図28C
図28D
図29A
図29B
図29C
図29D
図30
図31(a)】
図31(b)】
図31(c)】
図32
図33(a)】
図33(b)】
【手続補正書】
【提出日】2021-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像するための走査装置であって、前記走査装置が、
物体に向けて超音波信号を送信するための送信機と、
物体から超音波信号を受信するための受信機と、
走査面を画定する支持体であって、前記送信機および前記受信機が前記支持体に結合されている、支持体と
を備え、
前記走査装置が、非平面構成で前記支持体と共に動作して物体の非平面表面を走査することができ、
前記走査装置が、前記支持体の前記構成に依存して前記送信機による超音波信号の前記送信を制御するように構成されている、走査装置。
【請求項2】
前記走査装置が、前記支持体が前記非平面構成にあることにより、前記走査装置の走査面が、
凹状構成、
凸状構成、
部分球面構成、および
複数の非平行平面を有する構成
の1つまたは組み合わせを含むように構成されている、請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記走査装置が、振動素子の直線配列を、超音波信号を送信するよう制御するように構成されている、請求項1または2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記走査装置が、振動素子の非直線配列を、超音波信号を送信するよう制御するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項5】
前記支持体が、前記走査装置を物体の非平面表面に押し付ける際に前記非平面構成を採るように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項6】
前記支持体が柔軟である、請求項1から5のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項7】
前記支持体が、前記走査装置の本体から離れて延在する可撓性リップを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項8】
前記走査装置の前記本体に当接する前記支持体の部分が、前記リップよりも剛性である、請求項7に記載の走査装置。
【請求項9】
前記リップが、2つの次元において屈曲するように構成されている、請求項7または8に記載の走査装置。
【請求項10】
前記支持体が、外力によって作用されないときに非平面構成を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項11】
前記非平面構成が第2の平面に結合された第1の平面を含む場合、前記2つの平面が、前記平面の第1の側に180度未満の角度で、前記平面の第2の側に180度より大きい角度で結合され、前記走査装置が、前記第1の側と前記第2の側の一方または両方に対して物体を走査するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項12】
前記走査装置が、前記第1の平面上に配置された1つの送信機と、前記第2の平面上に配置された別の送信機とを備える、請求項11に記載の走査装置。
【請求項13】
前記走査装置が、前記第1の平面上の前記送信機および前記第2の平面上の前記送信機の一方と背中合わせに配置されたさらなる送信機を備える、請求項12に記載の走査装置。
【請求項14】
前記送信機と前記受信機とが、第1の送信機および第2の送信機と第1の受信機および第2の受信機とをそれぞれ備え、前記支持体が第1の支持部分および第2の支持部分を備え、前記走査装置が、
前記第1の送信機、前記第1の受信機、および前記第1の支持部分を備え、前記第1の送信機および前記第1の受信機が前記第1の支持部分に結合されている、第1の走査モジュールと、
前記第2の送信機、前記第2の受信機、および前記第2の支持部分を備え、前記第2の送信機および前記第2の受信機が前記第2の支持部分に結合されている、第2の走査モジュールと
を備え、
前記第1の走査モジュールおよび前記第2の走査モジュールが、前記支持体が前記非平面構成を採ることを可能にするように互いに対して移動可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項15】
前記第1の走査モジュールおよび前記第2の走査モジュールが、互いに対して枢動可能である、請求項14に記載の走査装置。
【請求項16】
前記第1の走査モジュールと前記第2の走査モジュールの一方または両方が、曲面と平面の一方、またはそれらの組み合わせを備える、請求項14または15に記載の走査装置。
【請求項17】
前記走査装置が、撮像のために物体に面するための結合材料を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項18】
物体の内部を撮像するための超音波走査装置を動作させる方法であって、前記走査装置が、超音波信号を送信および受信するように構成された振動素子のマトリックス配列を備え、前記方法が、
前記マトリックス配列の非平面構成を決定することと、
前記マトリックス配列を、前記決定された非平面構成に依存して超音波信号を放射するよう制御することと
を含む、方法。
【請求項19】
前記マトリックス配列を制御することが、前記マトリックス配列の振動素子の直線配列を、超音波信号を放射するよう制御することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マトリックス配列を制御することが、前記マトリックス配列の振動素子の非直線配列を、超音波信号を放射するよう制御することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
物体の内部を撮像するための超音波走査装置を動作させる方法であって、前記走査装置が、超音波信号を送信および受信するように構成された振動素子のマトリックス配列を備え、前記方法が、
前記マトリックス配列を変更して、前記マトリックス配列に非平面構成を採らせることと、
前記走査装置を移動させて物体と接触させることと、
前記マトリックス配列を、超音波信号を放射し、反射超音波信号を受信するよう制御することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記マトリックス配列を変更することが、前記マトリックス配列の2つの部分間のジョイントを駆動することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリックス配列の部分のうちの少なくとも1つが、共通の平面上に配列された複数の振動素子を備える、請求項21または22に記載の方法。
【国際調査報告】