(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】補強材を有するローラシャフト
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20220113BHJP
E06B 9/42 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
E06B9/17 T
E06B9/42 A
E06B9/17 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547923
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019079519
(87)【国際公開番号】W WO2020089220
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521178389
【氏名又は名称】ベスタダム,エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クリムス,ペトル
(72)【発明者】
【氏名】ミュリー,バーナード
(57)【要約】
一端がフレーム(7)に結合された駆動部に取り付けられ、他端がフレーム(7)に固定されたピボット上の軸受に取り付けられた管として形成された巻取シャフト(2)を備えるローラ巻取機構であって、ローラ巻取機構は、ローラ巻取シャフト(2)に挿入され、駆動部(8)とは反対側でフレーム(7)にしっかりと定着されたシャフト補強材(6)を備え、シャフト補強材(6)の曲げ方向は、巻取シャフト(2)の予想される撓みとは反対方向であり、補強材(6)の初期の湾曲は、その長さに沿ったその変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない巻取シャフト(2)の軸と一致するような変形であるような湾曲であり、補強材(6)には、その長さに沿って互いに離間された転がり支持軸受(10)が設けられている、ローラ巻取機構。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管として形成された巻取シャフト(2)を備えるローラ巻取機構であって、前記ローラ巻取機構は、湾曲したシャフト補強材(6)であって、その長さに沿って互いに離間された支持軸受(10)が設けられ、前記巻取シャフト(2)が前記シャフト補強材(2)から独立して回転することができるように前記巻取シャフト(2)に挿入される、シャフト補強材(6)を備えることを特徴とする、ローラ巻取機構。
【請求項2】
前記シャフト補強材は、両端間に中央部分を有し、前記シャフト補強材は、前記中央部分に極値を有する、請求項1に記載のローラ巻取機構。
【請求項3】
一端がフレーム(7)に結合された駆動部(8)に取り付けられ、他端が前記フレーム(7)に固定されたピボット(13)上の軸受(9)に取り付けられた管として形成された巻取シャフト(2)を備える、請求項1~請求項2のいずれかに記載のローラ巻取機構であって、前記ローラ巻取シャフト(2)に挿入され、前記駆動部(8)とは反対側で前記フレーム(7)にしっかりと定着されたシャフト補強材(6)を備え、前記シャフト補強材(6)の曲げ方向は、前記巻取シャフト(2)の予想される撓みとは反対方向であり、前記補強材(6)の初期の湾曲は、その長さに沿ったその変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない前記巻取シャフト(2)の軸と一致するような変形であるような湾曲であり、前記補強材(6)には、その長さに沿って互いに離間された転がり支持軸受(10)が設けられていることを特徴とする、ローラ巻取機構。
【請求項4】
前記補強材(6)は、中空または中実の輪郭の形状を有し、前記支持軸受(10)の内径と前記補強材(6)の外面との間に、前記補強材(6)の断面形状およびサイズに対応する穴を有する成形インサート(12)があり、前記インサートの円筒外面は、前記補強材(6)に対する前記巻取シャフト(2)の回転を可能にするように前記支持軸受(10)の内側リングの内面の形状およびサイズに対応することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のローラ巻取機構。
【請求項5】
前記補強材(6)は、断面が円形または多角形の形状を有する、請求項1~請求項4のいずれかに記載のローラ巻取機構。
【請求項6】
前記補強材(6)は、断面が円形または正多角形の形状を有する、請求項1~請求項5のいずれかに記載のローラ巻取機構。
【請求項7】
前記巻取シャフト(2)は、アルミニウム、鋼(好ましくは、圧延成形鋼)、またはガラス繊維などの複合材料で作られる、請求項1~請求項6のいずれかに記載のローラ巻取装置。
【請求項8】
前記補強材(6)は、鋼(好ましくは、ロール状鋼)、複合材料(好ましくは、ガラス繊維複合材料)、またはチタンで作られる、請求項1~請求項7のいずれかに記載のローラ巻取装置。
【請求項9】
前記巻取シャフト(2)は、少なくとも1250g/mの線形重量を支持するのに適した、50mm未満、好ましくは45mm未満の外径と、少なくとも4m、好ましくは少なくとも5mの長さとを有する、請求項1~請求項8のいずれかに記載のローラ巻取装置。
【請求項10】
前記巻取シャフト(2)は、少なくとも500g/mの線形重量を支持するのに適した、40mm未満、好ましくは30mm未満の外径と、少なくとも3m、好ましくは少なくとも4mの長さとを有する、請求項1~請求項9のいずれかに記載のローラ巻取装置。
【請求項11】
前記巻取シャフト(2)は、少なくとも4000g/mの線形重量を支持するのに適した、100mm未満、好ましくは78mm未満の外径と、少なくとも5m、好ましくは少なくとも6mの長さとを有する、請求項1~請求項10のいずれかに記載のローラ巻取装置。
【請求項12】
ローラ巻取機構を組み立てるのに適したキットであって、
-管として形成された巻取シャフト(2)と、
-前記巻取シャフト(2)に挿入されるように構成された、湾曲したシャフト補強材(6)と、
-前記シャフト補強材(6)の長さに沿って互いに離間されるように構成された転がり支持軸受(10)と
を備えるキット。
【請求項13】
-フレーム(7)と、
-一端が前記フレーム(7)に結合されるように構成された駆動部(8)に取り付けられ、他端が前記フレーム(7)に固定されたピボット上の軸受に取り付けられた管として形成された巻取シャフト(2)と、
-前記ローラ巻取シャフト(2)に挿入されるように構成され、前記駆動部(8)の反対側で前記フレーム(7)にしっかりと定着されるように構成されたシャフト補強材(6)であって、前記シャフト補強材(6)の曲げ方向は、前記巻取シャフト(2)の予想される撓みと反対方向であり、前記補強材(6)の初期の湾曲は、その長さに沿ったその変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない前記巻取シャフト(2)の軸と一致するような変形であるような湾曲である、シャフト補強材(6)と、
-前記シャフト補強材(6)の長さに沿って互いに離間されるように構成された転がり支持軸受(10)と
を備える、請求項12に記載のローラ巻取機構を組み立てるのに適したキット。
【請求項14】
前記キットは、前記巻取シャフト(2)に取り付けるのに適したブラインド(4)をさらに備える、請求項12~請求項13のいずれかに記載のキット。
【請求項15】
前記シャフト補強材(6)には、その長さに沿って互いに離間される前記転がり支持軸受(10)が設けられ、前記駆動部(8)が前記ローラ巻取シャフト(2)に挿入される、請求項12~請求項14のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製ローラシャッタ、窓ローラシャッタ、ローラガレージドア、防火ローラシャッタなどの種々のタイプのローラ巻取装置またはローラシャッタのローラ巻取機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドは、特に太陽光線から内部を効果的に保護するのに役立つだけでなく、その魅力的で実用的な装飾要素としての機能も果たす、一種の遮蔽物である。ブラインドはさらに、吸音機能を有し、防火材による安全性を提供し、プロジェクタ用のスクリーンとして、また光調節器として使用され得る。ブラインドは、遮光面積に対する配置の観点から、室内用と室外用とに分けられ得る。
【0003】
ローラブラインド巻取機構の基礎になるのは巻取シャフトであり、この巻取シャフトには、薄板外装、布または箔などの遮蔽要素が巻き付けられる。巻取シャフトのサイズは、巻取遮蔽要素の重量に合わせて寸法決めされ、特に重い布製ローラブラインドでは、シャフトの変形は、目に見える欠陥であると考えられる布のうねりを引き起こすので重要である。シャフトのサイズは、通常、巻取遮蔽要素が隠される設置スペースまたはカセットによって制限される。
【0004】
シャフト剛性は、主にその直径によって決定され、最大撓みは、均一な連続負荷による自由ビームの最大撓みの式に従って決定され得る。
【数1】
ここで、qは連続負荷[N/mm](巻いた状態のロールローラシャッターの重量と負荷の重量とシャフト自体の重量との合計で求められる)である。
Iはビーム長[mm]であり、
Eはヤング率[MPa]であり、
Jは断面[mm
4]の軸方向二次慣性モーメントである。
【0005】
したがって、管状シャフトの曲げ剛性は、材料の種類および断面特性によって決定され、圧延亜鉛めっき鋼または引抜きアルミニウム(例外的に、炭素複合材)が一般に使用される。パイプの場合、直径は大きな影響を受けるが、主に巻取シャフトの重量を増加させる壁厚が受ける影響は小さい。巻取シャフトの直径は、ローラブラインドの最大幅を制限する要因であり、大きな布製ローラブラインドの場合、シャフトの直径は最大160mmであり得るが、最大2mの幅の窓用の従来の布製ローラブラインドの場合、直径28mmのパイプで十分である。その結果、装置全体の重量が大きくなり、関連する全ての構成要素の寸法を大きくする必要がある。最終的には、コストが高くなり、空間のサイズおよびそのようなシステムの定着部の支持力に対する要求が高くなる。ローラシャッタの幅が広い場合には、ローラシャッタを分割するブラケットでローラシャッタを解決支持する必要がある。さらに、より多くの巻取りが巻取シャフト上で必要である場合、一般的には、より小さい直径の巻取シャフトを使用することが必要であり、これは、上述したように、より大きな撓みおよびより大きな問題につながる。
【0006】
米国特許出願公開第2014/2014/0157547号明細書は、ローラシャフトを制御するための電気システムを開示している。弾性バンドの一端は、シャフトにしっかりと定着され、バンドの残りは、下げられていないブラインド状態で、シャフトの軸に平行な軸上に配置されたスプールに巻き付けられる。ローラブラインドが下げられると、この予め張力がかけられたベルトがシャフトに巻き付けられて、ローラシャッタが停止したときにローラブラインドを固定するのを助ける。巻き戻し時に、電気モータを補助するためにばね作用によってベルトがスプールに巻き戻される。したがって、電気モータは、比較的低い出力を有し得る。この文献は、ローラシャフトの撓みの問題を解決していない。
【0007】
米国特許出願公開第2013/0333848A1号明細書は、ローラシャッタの中空シャフトを制御するための電気システムを開示している。シャフトの内部には、電気モータおよび制御ユニットを備える駆動ユニットを備えた同心円状に配置されたキャリアがあり、この駆動ユニットに隣接して、キャリアの軸に一組のばね付勢のねじりばねが配置されている。これらのねじりばねは、ローラシャッタを下げると予め付勢され、ばねの蓄積されたエネルギーは、ローラシャッタの巻き取り時にローラシャッタを巻き取るのを助ける。上述の文献もまた、ローラシャフトの撓みの問題を解決していない。
【0008】
国際公開第2013/2013/129916(A1)号パンフレットは、同心円状に配置された2つの駆動ユニットを有する電気ローラブラインド制御システムを開示している。好適な実施形態では、駆動ユニット間で、補助ばねユニットがキャリアに同心円状に巻き付けられる。このユニットは、ばね付勢のねじりばねを備え、ばねワイヤの一端はキャリアに取り付けられ、他端はローラシャフトに取り付けられる。ローラブラインドが下げられると、このねじりばねは予め付勢され、ローラブラインドが巻き戻されるときに、ばねの蓄積エネルギーは、ローラブラインドを巻き取るのを助ける。同様に、この文献も、ローラシャフトの撓みの問題を解決していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、巻取シャフトの望ましくない撓みをなくし、そのことにより問題を解決するローラ巻取機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の欠点は、ローラシャフトに挿入され、駆動部とは反対側でフレームにしっかりと定着されたシャフト補強材を備え、シャフト補強材(6)の曲げ方向は、巻取シャフト(2)の予想される撓みとは反対方向であり、この補強材(6)の初期の湾曲は、その長さに沿ったその変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない巻取シャフト(2)の軸と一致するような変形であるような湾曲であり、補強材(6)には、その長さに沿って互いに離間された転がり支持軸受(10)が設けられていることを特徴とする、本発明のローラ巻取機構によって解消される。
【0011】
好適な実施形態では、補強材は、中空または中実の輪郭の形状を有し、支持軸受の内径と補強材の外面との間に、補強材の断面形状およびサイズに対応する穴を有する成形インサートがあり、インサートの円筒外面は、補強材に対する巻取シャフトの回転を可能にするように支持軸受の内側リングの内面の形状およびサイズに対応する。
【0012】
図面を使用して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】取り付けられた巻取シャフトを備えるローラ巻取機構の斜視図である。
【
図3】先行技術に係るローラ巻取シャフトの概略断面図である。
【
図4】本発明に係るローラブラインド巻取機構の補強材の図である。
【
図5】
図1のローラ巻取シャフト内に配置された巻取シャフト補強システムの断面図である。
【
図6】巻取シャフトが無い状態の補強システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載されている「転がり支持軸受」は、固定補強シャフトに対する巻取シャフトの回転運動を可能にするのに適した任意の軸受を含む。これらの軸受は、回転要素軸受などの回転要素を含み得るが、移動要素または回転要素のない平軸受または回転滑り軸受でもあり得る。
【0015】
本明細書に記載されている「降伏強度」または「降伏点」は、0.2%塑性ひずみのオフセット降伏点で定義される。
【0016】
第1の態様において、本発明は、管として形成された巻取シャフト(2)を備えるローラ巻取機構であって、ローラ巻取機構は、湾曲したシャフト補強材(6)であって、その長さに沿って互いに離間された支持軸受(10)が設けられ、前記巻取シャフト(2)が前記シャフト補強材(2)から独立して回転することができるように前記巻取シャフト(2)に挿入される、シャフト補強材(6)を備える、ローラ巻取機構に関する。
【0017】
支持軸受が設けられた湾曲補強シャフトを巻取シャフトに挿入するために、湾曲補強シャフトを矯正する必要がある。補強シャフトのこの矯正は、好ましくは、完全な弾性変形である。補強シャフトの弾性変形は、巻取シャフトに対する重量反力として作用する。この力は、理想的には、どんな負荷状態でも巻取シャフトの予想される変形とは反対方向の力である。典型的には、この負荷は、ローラブラインドシステムが支持する重量、特に、ローラブラインドシステム自体の重量、ローラブラインドシステムに接続された任意のブラインドの重量、ならびに前記ブラインドを矯正するための任意の負荷の結果となる。
【0018】
この力は、理想的には、予想される変形とは反対方向の力であり、したがって、補強シャフトの力は、巻取シャフトに作用する重量に完全に対抗するが、非理想的なシナリオであっても、先行技術よりも有益である。すなわち、結果として生じる力は、これらの力のベクトル和となる。結果として生じるベクトルのノルムが巻取シャフトに作用する重量のノルムより小さい限りにおいて、巻取シャフトによる撓みは大幅に減少する。
【0019】
したがって、補強シャフトは、巻取シャフトに作用する重量反力をもたらす。この力は、巻取シャフトに作用する重量とは反対方向の力になるように容易に設計され得る。これらの対向する力の結果として、ローラシャフト上の布の重量に起因する応力は、大幅に減少する。このことは、ローラシャフトの寸法安定性および剛性を向上させる。特に、布の重みでローラシャフトが垂れ下がるのを防止する。また、このことは、より比重が高い布の使用を可能にする。さらに、より小さい直径を有するローラシャフトの使用を可能にする。その結果、ローラ巻取機構の長さをより長くすることができる。最後に、有利には、より低いヤング率を有するローラシャフトの使用を可能にする。
【0020】
好適な実施形態では、補強シャフトの矯正は、弾性変形であり、すなわち、巻取シャフトの降伏点未満の変形である。このシャフトの塑性変形をもたらす、補強シャフトに加わる応力は、所望の重量反力をもたらさない。所望の効果をもたらすのは弾性変形のみである。したがって、補強シャフトの挿入時または動作時に巻取シャフトまたは補強シャフトに塑性変形がないことが好ましい。
【0021】
結果として、湾曲補強シャフトは、その降伏点を超えることなく、矯正にされ得る、すなわち真っ直ぐな巻取シャフトに挿入され得ることが望ましい。具体的には、湾曲補強シャフトを巻取シャフトに挿入するときに、0.2%の塑性ひずみのオフセット降伏点を超えるべきではない。
【0022】
好適な実施形態では、第1の態様のローラ巻取機構において、シャフト補強材は両端間に中央部分を有し、シャフト補強材は前記中央部分に極値を有する。
【0023】
本明細書に記載されている極値は、巻取シャフトの軸に対する湾曲補強シャフトの形状を表す曲線の一次導関数が0である点を含む。前記極値は、最小値または最大値のいずれかであり得る。補強シャフトの前記中央領域に前記極値を有することは、重量反力の中央作用を促進する。好ましくは、補強シャフトの極値は、挿入された後の巻取シャフトの中央領域と一致する。これは、巻取シャフトに作用する重量が多かれ少なかれ中央にある場合に有益である。これは、一般に、ブラインドが取り付けられた巻取シャフトの場合である。
【0024】
別の好適な実施形態では、本発明は、ローラシャフトに挿入され、駆動部とは反対側でフレームにしっかりと定着されるシャフト補強材を備えるローラ巻取機構であって、シャフト補強材の曲げ方向は、巻取シャフトの予想される撓みとは反対方向であり、この補強材の初期の湾曲は、その長さに沿ったその変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない巻取シャフトの軸と一致するような変形であるような湾曲であり、補強材には、巻取シャフトの長さに沿って互いに離間された転がり支持軸受が設けられている、ローラ巻取機構に関する。
【0025】
この実施形態では、重量反力および巻取シャフトに作用する重量は、互いに完全に打ち消し合う。これは、その長さ、直径、降伏係数または巻取シャフトに作用する重量に関係なく、真っ直ぐな巻取シャフトを維持するのに有利である。
【0026】
好適な実施形態では、補強材は、断面が円形または多角形の形状を有する。多角形形状は、回転可能に支承されたローラ巻取機構に対して、補強材を固定された状態に保つのに適している。円形は、補強シャフトに対する転がり支持軸受の向きに関係なく、補強シャフトにラガー(lager)を設けるのに適している。さらに好適な実施形態では、補強材は、断面が円形または正多角形の形状を有する。正多角形は、等しい角度および辺によって定義される。正多角形形状は、補強シャフトへの転がり支持軸受のより容易な接続を可能にするので有利である。さらに、これは、モジュール式転がり支持軸受を用いて異なる長さおよび撓みの補強シャフトのための標準的な形状の使用を可能にする。
【0027】
好適な実施形態では、駆動部(8)はモータであり、前記モータ(8)は、前記巻取シャフト(2)および前記フレーム(7)に結合される。モータは、好ましくは、電気モータである。モータは、モータが作動されると、巻取シャフトは回転するが、フレームおよび補強シャフトは固定されたままになるように結合される。好適な実施形態では、ローラ巻取装置は、前記モータに電気的に結合され、前記モータに電力を供給するように構成された電源ユニットをさらに備える。さらに好適な実施形態では、モータは巻取シャフト(2)内に含まれる。これは、消費者に見えるのが巻取シャフトおよびブラインドに限定されるので、見た目により美しいと考えられる。その結果、垂れ下がらず、または屈曲せず、追加のボックスまたは接続部を有さない、電動式ローラ巻取装置が実現される。
【0028】
好適な実施形態では、巻取シャフトは、アルミニウム、鋼(好ましくは、圧延成形鋼)、ガラス繊維などの複合材料、または他の管状材料で作られる。アルミニウムは、強く、耐久性があるが、軽量の材料である。ローラ巻取装置の重量の低減は、望ましい場合が多く、ローラ巻取装置を表面に容易かつ安全に取り付けるのを可能にする。
【0029】
好適な実施形態では、補強シャフトは、高いヤング率を有する材料で作られる。このことは、より高いヤング率を有する材料は、矯正されて巻取シャフトに挿入されたときに等しい重量反力を得るために必要な湾曲および矯正が小さいので、有利である。好適な実施形態では、ヤング率は、少なくとも180GPa、好ましくは少なくとも190GPa、より好ましくは少なくとも195GPa、さらに好ましくは少なくとも200GPa、最も好ましくは少なくとも205GPaである。
【0030】
好適な実施形態では、補強シャフトは、高い降伏強度を有する材料で作られる。好ましくは、0.2%塑性ひずみRp0.2のオフセット降伏点まで測定された降伏強度は、少なくとも250MPa、好ましくは少なくとも300MPa、より好ましくは少なくとも350MPa、より好ましくは少なくとも400MPa、より好ましくは少なくとも450MPa、より好ましくは少なくとも500MPa、より好ましくは少なくとも550MPa、より好ましくは少なくとも600MPa、より好ましくは少なくとも650MPa、より好ましくは少なくとも700MPa、最も好ましくは少なくとも750MPaである。高い降伏強度は、補強シャフトによって大きな重量反力を生成するのに有益である。このことにより、より高い降伏強度は、より大きい重量、より長い長さ、またはより小さい直径を有する補強シャフトにとって有益になる。
【0031】
別の好適な実施形態では、補強シャフトは、鋼(好ましくは、圧延成形鋼)、ガラス繊維などの複合材料、または他の管状材料で作られる。
【0032】
鋼は、高いヤング率および高い降伏強度を有する。このことは、補強シャフトにとって特に有利である。より好適な実施形態では、ASTM A514鋼などの高強度合金が使用される。
【0033】
次に、巻取シャフトに挿入する前の補強シャフトの好適な形状についてより詳細に説明する。補強シャフトの中心軸を曲線として表す場合、この曲線は好ましくは平面曲線である。すなわち、曲線が平面内に収まる。これは、一方向の力を平衡させるのに有益である。重量は、重力の性質から、ブラインドの向きに関係なく、この目的のための一方向の力と考えられるので、補強シャフトの軸が平面曲線であることが有益である。
【0034】
好適な実施形態では、補強シャフトの軸の少なくとも中央部分は、カテナリー曲線形状に適合され得る。より好ましくは、シャフトは、重み付きカテナリー曲線形状に適合され得る。特に、この重み付きカテナリー曲線形状は、曲線y=a cosh(x/b)で表すことができ、coshは双曲線余弦関数であり、xおよびyは曲線を表す変数であり、aおよびbはパラメータである。a=bの場合、カテナリー曲線は重み付けされない。これは、巻取シャフトがブラインドよりも著しく重い場合に、近似として使用され得る。ただし、巻取シャフトおよび補強シャフトの重量が巻取シャフトに作用する総重量に比べて小さい場合には、aおよびbを独立したパラメータとして扱う必要がある。
【0035】
この形状は、前記形状を有する巻取シャフトに加わる張力または圧縮力が、支持すべき重量によって相殺される形状に平行であるので、好ましい。これらの曲線は、弧に沿った重量および/または応力の分布に関して当技術分野で周知である。
【0036】
別の実施形態では、補強シャフトの軸の少なくとも中央部分を曲線として表す場合、この曲線は、曲線y=a x2で表される放物線の形状によって近似され得る。好適な実施形態では、理想的なカテナリー曲線は、テイラー展開によって近似され得る。より好ましくは、前記テイラー展開は、偶数指数を有する成分のみを含む。これは、対称曲線を得るためには、好ましい。補強シャフトは、巻取シャフトが重力に対して垂直に掛けられることを想定して、対称であるのが好ましい。補強シャフトの形状を放物線またはテイラー級数として近似することで、制御およびモデル化がより容易になり、したがって、より容易な製造が可能になる。
【0037】
補強シャフトは、中央部分と2つの端部とを備える。中央部分は、上述したように、理想的には、特定の曲線に適合される。しかしながら、端部は前記曲線に一致する必要はない。これらの端部は、異なる形で湾曲し得る。これらの端部は、フレームに対して容易に固定することができるように、補強シャフトを所定の位置に保持するのに適した直線状であり得る。
【0038】
本発明の巻取シャフトは、それらが支持することができる線形重量の関数として定義される。この線形重量は、場合によっては追加の負荷を有するブラインドの重量に近似すると考えられる。したがって、線形重量は、均一で、巻取シャフトの全長にわたる負荷に対して測定される、または試験される。ブラインドの高さ、ブラインドの比重、およびブラインドに取り付けられた可能負荷の追加重量は、これから計算され得る。
【0039】
好適な実施形態では、巻取シャフトは、50mm未満、好ましくは47mm未満、最も好ましくは45mm未満の外径と、少なくとも4m、好ましくは少なくとも4.5m、最も好ましくは少なくとも5mの長さとを有する。これは、少なくとも1250g/mの線形重量を支持するのに適している。
【0040】
好適な実施形態では、巻取シャフトは、40mm未満、好ましくは35mm未満、より好ましくは32mm未満、最も好ましくは30mm未満の外径と、少なくとも3.5m、好ましくは少なくとも4m、最も好ましくは少なくとも4.5mの長さとを有する。これは、少なくとも500g/mの線形重量を支持するのに適している。
【0041】
好適な実施形態では、巻取シャフトは、100mm未満、好ましくは80mm未満、より好ましくは78mm未満、最も好ましくは75mm未満の外径と、少なくとも5m、好ましくは少なくとも6m、最も好ましくは少なくとも7mの長さとを有する。これは、少なくとも4000g/mの線形重量を支持するのに適している。
【0042】
これらの好適な実施形態は、小さい外径を有する長い巻取シャフト上に大きい線形重量を有するブラインドを掛けるのを可能にする。このことにより、ローラブラインド装置をより小さな空間の中にまとめることができ、見た目に美しい外観を得ることができる。その一方で、巻取シャフトは、補強シャフトの存在により、経時的に線形重量を受けることで曲がることはない。同じ管の長さおよび直径に対して、より大きい線形重量を支持することができるのは、例えば、より長い、またはより高い比重を有するブラインドを提供するのに有利である。より高い比重を有するブラインドは、より暖かく、断熱性に優れ、透光性が低く、または単により多くの選択肢を提供するための材料であり得る、より重い材料の使用を可能にする。
【0043】
第2の態様では、本発明は、ローラ巻取機構を組み立てるのに適したキットであって、
-管として形成された巻取シャフト(2)と、
-巻取シャフト(2)に挿入されるように構成された、湾曲したシャフト補強材(6)と、
-シャフト補強材(6)の長さに沿って互いに離間されるように構成された転がり支持軸受(10)と
を備えるキットに関する。
【0044】
第2の態様の好適な実施形態では、本発明は、ローラ巻取機構を組み立てるのに適したキットであって、
-フレーム(7)と、
-一端がフレーム(7)に結合されるように構成された駆動部(8)に取り付けられ、他端がフレーム(7)に固定されたピボット上の軸受に取り付けられた管として形成された巻取シャフト(2)と、
-ローラ巻取シャフト(2)に挿入されるように構成され、前記駆動部(8)の反対側で前記フレーム(7)にしっかりと定着されるように構成されたシャフト補強材(6)であって、シャフト補強材(6)の曲げ方向は、巻取シャフト(2)の予想される撓みと反対方向であり、この補強材(6)の初期の湾曲は、その長さに沿ったその変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない巻取シャフト(2)の軸と一致するような変形であるような湾曲である、シャフト補強材(6)と、
シャフト補強材(6)の長さに沿って互いに離間されるように構成された転がり支持軸受(10)と
を備えるキットに関する。
【0045】
第2の態様のキットは、有利には、第1の態様のローラ巻取機構を組み立てて、取り付けるために使用され得る。さらに、このキットは、必要に応じて様々なタイプのブラインドと共に使用され得る。このことにより、キットを、異なる重量、特定の重量または密度、高さ、色および質感を有し得る、様々な異なるブラインドと共にモジュール部品として使用することが可能になる。
【0046】
好適な実施形態では、キットは、前記巻取シャフト(2)に取り付けるのに適したブラインド(4)をさらに備える。より好適な実施形態では、キットは、前記巻取シャフトに取り付けられるブラインドを備える。好ましくは、ブラインドは、前記巻取シャフトの周りに巻かれる。別の好適な実施形態では、シャフト補強材(6)には、その長さに沿って互いに離間される前記転がり支持軸受(10)が設けられ、前記駆動部(8)が前記ローラ巻取シャフト(2)に挿入される。ブラインド・巻取シャフトアセンブリの事前組み立ておよび/または補強材・巻取シャフトアセンブリの組み立てにより、ローラ巻取装置の組み立ておよび取り付けがより容易になる。さらに、前記ローラブラインド装置を取り付ける消費者またはローラブラインドの熟練者による組み立てのミスを防止する。
【0047】
図1は、ローラ巻取機構1の一部である、ローラブラインドの巻取シャフト2の斜視図である。これは、
図5および
図6に詳細に示されている。駆動部8の突出部分が示されている。巻取シャフト2の表面には、巻取ローラブラインドの一端を定着させるために、定着溝11が長手方向に設けられ得る。
【0048】
図2は、ローラブラインドの一実施形態の概略側面図である。基礎は、巻取シャフト2であり、巻取シャフト2には、薄板外装、布または箔である遮蔽要素4が巻き付けられ、この遮蔽要素4には、その自由端に、張力を加えるために負荷5が設けられている。巻き付けられた遮蔽要素4は、カセット3内に隠されている。点線は、後述する補強材6の断面を示している。
図3は、自身の重量、遮蔽要素4の重量、および負荷5の重量によってわずかに変形した先行技術の巻取シャフト2を示す。矢印Aは、巻取シャフト2の撓み方向を示す。巻取シャフト2は、一端がフレーム7または壁に接続された駆動部8に接続され、他端がフレーム7に固定されたピン13に接続される。固定軸受9は、ピン13上に内側リングを備え、外側リングには、その内径を有する巻取シャフト2が配置される。駆動部8は、手動式であってもよいし、電気モータのようなものであってもよい。
【0049】
図4は、本発明の巻取機構1の一部である、湾曲したまたは予め応力が加えられたシャフト補強材6を示す。この補強材6は、曲げ平面におけるシャフト2の剛性を高める。シャフト補強材6は、ローラシャフト2に挿入され、駆動部8の反対側でフレーム7にしっかりと定着されるので、シャフト補強材6は回転せず、回転したときでもシャフト2を撓ませる力に対抗する。シャフト補強材6の撓み方向は矢印Bで示されており、巻取シャフト2の予想される撓み方向と反対である。この補強材6の初期の湾曲または予応力付与は、その長さに沿った変形が、最大変形時のその軸がもともと変形していない巻取シャフト2と一致し、したがって、巻取シャフト2が動作中に矯正されるように選択される。補強材6を挿入した後の残留変形の微調整または補償は、重量を調整することによって、または負荷5を分散させることによって行われる。
【0050】
図5は、
図1のローラシャッタの巻取シャフト2内に配置されたローラ巻取機構1の概略断面図である。シャフト補強材6は、対向縁部で駆動部8に定着される。補強材6は、ピン13の機能に取って代わる。巻取シャフト2は、長さに沿って互いに離間された軸受10によって支持され、そのことにより、巻取シャフト2は、固定補強材6を中心として回転することができる。
【0051】
図6は、覆われていないローラ巻取機構1の斜視図であり、補強材6の縁部における支持軸受10の配置、および補強材6の長さに沿った別の支持軸受10の配置が明確に示されている。支持軸受10は、転がり軸受として設計され、長さに沿って一定の距離で互いに離間される。補強材6は、好ましくは、円形、正方形、長方形または多角形の断面を有し、支持軸受10の内径および補強材6の外面には、巻取シャフト2の補強材6の外面の形状およびサイズに対応する開口部と、軸受10の内側リングの内面の形状およびサイズに対応する円筒外面とを有するインサート12が形成され、このことにより、補強材6に対する巻取シャフト2の回転が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
ローラ巻取機構は、一方向の負荷によって生じる撓みに対する巻取シャフトの抵抗を増大させる必要がある場合に適用可能であり、特に、布製ローラブラインド、スクリーンブラインド、ローラ窓、シャッターブラインド、ローラガレージドア、および特に幅の広いローラシャッタなどの様々なローラブラインド遮光システムに適用可能である。ローラ巻取機構は、巻取シャフトの過度の望ましくない撓みがある場合、より大量の布地を巻き取る必要があり、より小さい直径のシャフトを使用する必要がある場合、長いシャフトを使用する必要がある場合、またはカセットの設置寸法またはサイズに対して大きいシャフト直径を使用することができず、したがって巻取シャフトを補強する必要がある場合に使用され得る。
【0053】
本発明をさらに詳細に説明する以下の非限定的な実施例を使用して本発明についてさらに詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈すべきでもない。
実施例
実施例1
【0054】
直径47mm、長さ5.0mのアルミニウム管を用いたローラブラインドを使用する。この管に挿入されるのは、鋼製の湾曲した補強シャフトであり、この補強シャフトには、その長さに沿って分散された8つの滑り軸受が設けられている。補強材の中央部分の湾曲は、重み付きカテナリー曲線として成形された。この巻取管に取り付けられるのは、高さ2.700m、比重450g/m2の布である。
実施例2
【0055】
直径32mm、長さ4mのアルミニウム管を用いたローラブラインドを使用する。この管に挿入されるのは、鋼製の湾曲した補強シャフトであり、この補強シャフトには、その長さに沿って分散された6つの滑り軸受が設けられている。この巻取管に取り付けられるのは、高さ2700m、比重150g/m2の布である。
実施例3
【0056】
直径78mm、長さ6mの圧延成形鋼管を用いたローラブラインド機構を使用する。この管に挿入されるのは、鋼製の湾曲した補強シャフトであり、この補強シャフトには、その長さに沿って分散された12個の回転要素軸受が設けられている。この巻取管に取り付けられるのは、高さ3m、比重1200g/m2の布である。
実施例4
【0057】
直径63mm、長さ6mの圧延成形鋼管を用いたローラブラインド機構を使用する。この管に挿入されるのは、鋼製の湾曲した補強シャフトであり、この補強シャフトには、その長さに沿って分散された回転要素軸受が設けられている。この巻取管に取り付けられるのは、高さ6m、比重600g/m2の布である。
実施例5
【0058】
3のローラブラインドの組立キットを提供する。キットは、6.10m×103mm×103mmのボックスに入れて提供する。キットは、管を取り付けるためのガイドプロファイルおよびガイドケーブルを備えているか、または備えていない。管は、巻取管内に電気モータが含まれているか、または含まれていない状態で供給される。電気モータが含まれた状態で供給される場合、鋼製の湾曲した補強材は短くなる。しかしながら、補強材は、短くなった長さを埋め合わせるために、より大きく湾曲している。
実施例6
【0059】
3のローラブラインドの組立キットを提供する。キットは、6.10m×131mm×131mmのボックスに入れて提供される。キットは、管を取り付けるためのガイドプロファイルおよびガイドケーブルを備えているか、または備えていない。管は、アルミニウム製巻取管内に電気モータが含まれているか、または含まれていない状態で供給される。電気モータが含まれた状態で供給される場合、鋼製の湾曲した補強材は短くなる。しかしながら、補強材は、短くなった長さを埋め合わせるために、より大きく湾曲している。
【国際調査報告】