(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】混合金属化合物による処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/06 20060101AFI20220113BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220113BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220113BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220113BHJP
A61P 5/18 20060101ALI20220113BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K33/06
A61P9/00
A61P13/02
A61P7/00
A61P5/18
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547962
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2019001149
(87)【国際公開番号】W WO2020084349
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521353274
【氏名又は名称】エアジェン ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ペトコヴィッチ ピー マーティン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA04
4C086HA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA81
4C086ZC06
4C086ZC51
(57)【要約】
血管石灰化を治療及び/又は予防する方法は、それを必要とする対象に混合金属化合物を投与することを含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管石灰化を予防及び/又は軽減する方法であって、
それを必要とする対象に、有効量の式(I)の混合金属化合物
M
II
1-x.M
III
x(OH)
2A
n-
y.zH
2O(I)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、x=Σny、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10である)を投与することを含む方法。
【請求項2】
血管石灰化を予防及び/又は軽減する方法であって、
それを必要とする対象に、有効量の式(II)の混合金属化合物
M
II
1-aM
III
aO
bA
n-
c.zH
2O(II)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10である)を投与することを含む方法。
【請求項3】
血管石灰化を予防及び/又は軽減する方法であって、
それを必要とする対象に、有効量の式(VI)の混合金属化合物
M
ll
1-aM
III
aO
b(A
n-)
c.zH
2O(VI)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、1>a>0.4、0<b≦2、0<z≦5であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、そして2+a-2b-cn=0である)を投与することを含む方法。
【請求項4】
血管石灰化を予防及び/又は軽減する方法であって、
それを必要とする対象に、有効量の式(VII)の混合金属化合物
M
ll
1-aM
III
a(OH)
d](A
n-)
c.zH
2O(VII)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、1>a>0.4であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、2+a-d-cn=0、Σcn<0.9a、0≦d<2、0<z≦5である)を投与することを含む方法。
【請求項5】
M
IIがMgを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
M
IIがMgである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
M
IIIが鉄を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
A
n-が炭酸塩を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
M
IIがマグネシウムを含み、M
IIIが鉄を含み、A
n-が炭酸塩を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合金属化合物が、カルシウムを実質的に含まない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
それを必要とする前記対象が高リン酸血症を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
それを必要とする前記対象が上昇したFGF23を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
それを必要とする前記対象が高リン酸尿症を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
それを必要とする前記対象が再発性尿路結石症を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
それを必要とする前記対象が特発性高カルシウム尿症を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
それを必要とする前記対象が副甲状腺機能亢進症を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
それを必要とする前記対象が慢性腎疾患を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
それを必要とする前記対象が慢性腎疾患ステージ3~5を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
それを必要とする前記対象が慢性腎疾患ステージ3~4を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
それを必要とする前記対象が慢性腎疾患ステージ5を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
それを必要とする前記対象が、慢性腎疾患に続発する副甲状腺機能亢進症を有する、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
それを必要とする前記対象が慢性腎疾患を有しない、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象がヒトである、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
投与されると、前記混合金属化合物が前記少なくとも1種の二価金属を放出し、前記少なくとも1種の二価金属が血管組織によって優先的に吸収される、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の二価金属がMgである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記混合金属化合物を受けていないコントロール対象と比較して、血管組織中のリン酸塩の蓄積に対してマグネシウムを増加させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも約200mgの前記混合金属化合物を投与することを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記混合金属化合物がMg
4Fe
2(OH)
12CO
3・nH
2Oであり、式中、nが2から8である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
副甲状腺ホルモンが少なくとも16%減少する、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記混合金属化合物を受けていないコントロール対象と比較して、血管石灰化の程度が、前記対象において石灰化している血管組織の40%未満に減少する、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象の動脈組織又は心臓組織において血管石灰化が防止される、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする対象における血管石灰化を予防及び/又は軽減するための薬剤の製造における混合金属化合物の使用であって、前記混合金属化合物が式(I)
M
II
1-x.M
III
x(OH)
2A
n-
y.zH
2O,(I)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、x=Σny、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10である)のものである、使用。
【請求項33】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする対象における血管石灰化を予防及び/又は軽減するための薬剤の製造における混合金属化合物の使用であって、前記混合金属化合物が式(II)
M
II
1-aM
III
aO
bA
n-
c.zH
2O(II)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10である)のものである、使用。
【請求項34】
必要とする対象における血管石灰化を予防及び/又は軽減するための薬剤の製造における混合金属化合物の使用であって、前記混合金属化合物が式(VI)
M
ll
1-aM
III
aO
b(A
n-)
c.zH
2O(VI)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、1>a>0.4、0<b≦2、0<z≦5であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、そして2+a-2b-cn=0である)のものである、使用。
【請求項35】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする対象における血管石灰化を予防及び/又は軽減するための薬剤の製造における混合金属化合物の使用であって、前記混合金属化合物が式(VII)
M
ll
1-aM
III
a(OH)
d](A
n-)
c.zH
2O(VII)
(式中、M
IIは少なくとも1種の二価金属であり、M
IIIは少なくとも1種の三価金属であり、1>a>0.4であり、A
n-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、2+a-d-cn=0、Σcn<0.9a、0≦d<2、0<z≦5である)のものである、使用。
【請求項36】
M
IIがMgを含む、請求項32から35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
M
IIがMgである、請求項32から35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
M
IIIが鉄を含む、請求項32から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
A
n-が炭酸塩を含む、請求項32から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
M
IIがマグネシウムを含み、M
IIIが鉄を含み、A
n-が炭酸塩を含む、請求項32から39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記混合金属化合物がカルシウムを実質的に含まない、請求項32から40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
それを必要とする前記対象が高リン血症を有する、請求項32から41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象がFGF23を上昇させている、請求項32から42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が高リン酸尿症を有する、請求項32から43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が再発性尿路結石症を有する、請求項32から44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が特発性高カルシウム尿症を有する、請求項32から45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が副甲状腺機能亢進症を有する、請求項32から46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が慢性腎疾患を有する、請求項32から47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が慢性腎疾患ステージ3~5を有する、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が慢性腎疾患ステージ3~4を有する、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が慢性腎疾患ステージ5を有する、請求項49に記載の使用。
【請求項52】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が、慢性腎疾患に続発する副甲状腺機能亢進症を有する、請求項49~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
血管石灰化を予防及び/又は軽減することを必要とする前記対象が慢性腎疾患を有しない、請求項42から47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記対象がヒトである、請求項32から53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
投与すると、前記混合金属化合物が前記少なくとも一種の二価金属を放出し、前記少なくとも一種の二価金属が血管組織によって優先的に吸収される、請求項32から54のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項56】
前記少なくとも一種の二価金属がMgである、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
前記混合金属化合物を受けていないコントロール対象と比較して、血管組織中のリン酸塩の蓄積に対してマグネシウムを増加させることを含む、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
少なくとも約200mgの前記混合金属化合物を投与することを含む、請求項32から57のいずれか一項に記載の使用。
【請求項59】
前記混合金属化合物がMg
4Fe
2(OH)
12CO
3・nH
2Oであり、式中、nが2から8である、請求項32から58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項60】
副甲状腺ホルモンが少なくとも16%減少する、請求項32から59のいずれか一項に記載の使用。
【請求項61】
前記混合金属化合物を受けていないコントロール対象と比較して、前記対象において血管石灰化の程度が石灰化した血管組織の40%未満まで低減される、請求項32から60のいずれか一項に記載の使用。
【請求項62】
前記対象の動脈組織又は心臓組織において血管石灰化が防止される、請求項32から61のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
2018年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/750,791号の優先権の利益は、本明細書によって主張され、本開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、混合金属化合物の使用方法、混合金属化合物の使用、及び特定の用途のための混合金属化合物に関し、例えば、血管石灰化の予防又は低減並びに血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモン(PTH)レベルを低下させるための医薬用途を含む。
【背景技術】
【0003】
血管石灰化(VC)は、血管系におけるミネラルの病理学的沈着である。これは、内膜石灰化及び中膜石灰化を含む様々な形態を有し、心臓の弁内に存在する。血管石灰化の伝統的な危険因子には、年齢、男性、喫煙、糖尿病、高血圧性脂質異常症及び他のアテローム性動脈硬化の危険因子が含まれる。血管石灰化を有する患者は、有害心血管イベントのリスクが高い。
【0004】
高リン血症は、慢性腎疾患の患者に一般的に見られる。心血管疾患は、慢性腎疾患を有する患者における最も一般的な死因であり、血管石灰化は、心血管リスクの強力な予測因子であり得る。CKD患者では、ミネラル代謝障害が血管石灰化の進行を引き起こし及び/又は促進し得る。ミネラル代謝を調節する重要な因子は、カルシウム、リン酸塩、副甲状腺ホルモン(PTH)、ビタミンD、及び線維芽細胞群因子-23(FGF23)である。
【0005】
血管石灰化は、特発性高カルシウム尿症を有する対象など、再発性尿路結石症を有する患者にも見られる。(Ha,51 Korean J.Urol 54-49(201)。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、血管石灰化を予防する方法であり、本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。それを必要とする対象は、高リン血症を有する対象であり得る。それを必要とする対象は、上昇したリン酸塩レベルを有する対象であり得る。それを必要とする対象は、慢性腎疾患(CKD)を有する対象であり得る。それを必要とする対象は、上昇したFGF23を有する対象であり得る。それを必要とする対象は、高リン酸尿症を有する対象であり得る。対象は副甲状腺機能亢進症を有し得る。副甲状腺機能亢進症は、慢性腎疾患に続発し得る。それを必要とする対象は、前述の条件の任意の組み合わせを有し得る。
【0007】
それを必要とする対象は、上昇したFGF23及び/又は高リン酸尿症を有する非CKD対象であり得る。それを必要とする対象は、尿路結石症を有する非CKD対象であり得る。それを必要とする対象は、特発性高カルシウム尿症を有する非CKD対象であり得る。それを必要とする対象は、高リン血症を有する非CKD対象であり得る。それを必要とする対象は、前述の条件の任意の組み合わせを有し得る。
【0008】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、対象は血液透析療法を受けていることができる。
【0009】
本開示の別の態様は、血清又は血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させる方法であり、本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0010】
本開示の別の態様は、血清又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの上昇を予防する方法であり、本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0011】
本開示の別の態様は、血管石灰化の予防と血清又は血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させることの両方の方法であり、本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を必要とする対象に投与することを含む。
【0012】
本開示の別の態様は、血管石灰化を予防することと、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの上昇を予防することとの両方の方法であって、有効量の本明細書に記載の混合金属化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0013】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の任意の治療若しくは方法のための、又は本明細書に記載の治療若しくは使用のための医薬の製造のための、本明細書に記載の混合金属化合物の使用である。
【0014】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の使用、治療若しくは方法のための、又は本明細書に記載の使用、治療若しくは方法のための医薬の製造のための混合金属化合物を含む組成物である。例えば、上記組成物としては、本明細書に記載の混合金属化合物及び賦形剤、例えば本明細書に記載の錠剤又は液体形態の賦形剤を挙げることができる。
【0015】
本明細書に記載の方法、使用、又は物品の任意の態様では、以下に提供される実施例を含む、本明細書に記載の様々な実施形態から1以上の追加的な特徴を選択することができる。例えば、対象はヒト患者であり得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患ステージ3~5を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患ステージ3~4を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患ステージ5(別名、末期腎疾患)を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患を有し、血液透析療法を受けている可能性がある。治療を必要とする対象は、副甲状腺機能亢進症を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患に続発する副甲状腺機能亢進症を有し得る。治療を必要とする対象は、高リン酸血症を有し得る。治療を必要とする対象は、副甲状腺機能亢進症及び高リン酸血症を有し得る。上記方法は、血清リン酸塩の減少及び血清マグネシウム濃度の増加の両方を含むことができる。上記方法は、対象がもはや高リン酸血症を有しない程度まで血清リン酸塩を減少させることを含むことができる。上記方法は、血清クレアチニン濃度に有意に影響を及ぼさないことを含み得る。上記方法は、血清カルシウム濃度に有意に影響を及ぼさないことを含み得る。上記方法は、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモン濃度を16%以上低下させることを含み得る。上記方法は、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモン濃度を30%以上、又は少なくとも31%低下させることを含み得る。上記方法は、動脈組織における石灰化を予防することを含み得る。上記方法は、心臓組織の石灰化を予防することを含み得る。上記方法は、動脈及び心臓組織を含む1以上の組織(大動脈弓、頸動脈、腸間膜(上腸間膜を含む)、大動脈(胸部及び上行を含む)、腸骨(左腸骨を含む)、大腿骨(右大腿骨及び左大腿骨を含む)、腹腔、外陰部(左外陰部を含む)、及び腎臓(右腎及び左腎を含む)を含むがこれらに限定されない)における石灰化を予防することを含み得る。上記方法は、動脈及び心臓組織を含む1以上の組織(大動脈、頸動脈、遠位、及び外陰部を含むがこれらに限定されない)における石灰化を予防することを含み得る。上記方法は、血管石灰化の程度を、未治療の対象と比較して、少なくとも30%、又は少なくとも44%、又は少なくとも52%、又は少なくとも66%減少させることを含み得る。
【0016】
本明細書中に記載される組成物及び方法については、任意選択の特徴(成分、その組成範囲、置換基、条件及び工程を含むがこれらに限定されない)が本明細書中に提供される様々な態様、実施形態及び実施例から選択されることが企図される。
【0017】
さらなる態様及び利点は、図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、当業者には明らかになるであろう。方法、使用、及び物品は様々な形態の実施形態が可能であるが、以下の説明は、本開示が例示的であり、本発明を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図するものではないという理解の下、特定の実施形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の方法とコントロール方法との比較研究の概略図である。
【
図2A】
図2Aは、時間(実験週)の関数として血清クレアチニンを示すグラフである。
【
図2B】
図2Bは、時間(実験週)の関数として血清クレアチニンを示すグラフである。
【
図2C】
図2Cは、時間(実験週)の関数として血清リン酸塩を示すグラフである。
【
図2D】
図2Dは、時間(実験週)の関数として血清リン酸塩を示すグラフである。
【
図2E】
図2Eは、時間(実験週)の関数として血清カルシウムを示すグラフである。
【
図2F】
図2Fは、時間(実験週)の関数として血清カルシウムを示すグラフである。
【
図3A】
図3Aは、時間(日)の関数として血清リン酸塩を示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、時間(日)の関数として血清リン酸塩を示すグラフである。
【
図3C】
図3Cは、時間(日)の関数として血清マグネシウムを示すグラフである。
【
図3D】
図3Dは、時間(日)の関数として血清マグネシウムを示すグラフである。
【
図3E】
図3Eは、時間(日)の関数として血清カルシウムを示すグラフである。
【
図3F】
図3Fは、時間(日)の関数として血清カルシウムを示すグラフである。
【
図4A】
図4Aは、時間(日)の関数として副甲状腺ホルモンレベルを示すグラフであ
【
図4B】
図4Bは、時間(日)の関数として副甲状腺ホルモンレベルを示すグラフである。
【
図5A】
図5Aは、時間(日)の関数としてFGF23レベルを示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、時間(日)の関数としてFGF23レベルを示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、比較試験における血清ビタミンD代謝産物レベルを示すグラフであ
【
図6B】
図6Bは、比較試験における血清ビタミンD代謝産物レベルを示すグラフであ
【
図6C】
図6Cは、比較試験における血清ビタミンD代謝産物レベルを示すグラフであ
【
図6D】
図6Dは、比較試験における血清ビタミンD代謝産物レベルを示すグラフであ
【
図6E】
図6Eは、比較試験における血清ビタミンD代謝産物レベルを示すグラフであ
【
図6F】
図6Fは、比較試験における血清ビタミンD代謝産物レベルを示すグラフである。
【
図7A】
図7Aは、比較試験における組織リン酸塩レベルを示すグラフである。
【
図7B】
図7Bは、比較試験における組織リン酸塩レベルを示すグラフである。
【
図7C】
図7Cは、比較試験における組織カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図7D】
図7Dは、比較試験における組織カルシウムレベルを示すグラフである。
【
図7E】
図7Eは、比較試験における石灰化率を示すグラフである。
【
図7F】
図7Fは、比較試験における石灰化率を示すグラフである。
【
図8】
図8は、平均リン酸塩に対する、マグネシウム対リン酸塩の平均比を示すグラフであって、平均値を決定するために使用されるデータを示す挿入図を伴うグラフである。
【
図9A】
図9Aは、平均リン酸塩の関数として平均カルシウムを示すグラフである。
【
図9B】
図9Bは、平均リン酸塩の関数として平均マグネシウムを示すグラフである。
【
図10A】
図10Aは、比較試験の試験対象の様々な領域における組織マグネシウム:リン酸の比を示すグラフである。
【
図10B】
図10Bは、比較試験の試験対象の様々な領域における組織マグネシウム:リン酸の比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
慢性腎疾患(CKD)においてよく起こる高リン血症は、血管石灰化(VC)に関連しており、これは心血管リスクをさらに増加させる。リン酸塩は、CKDにおける血管系において優先的な沈着を示す。血清リン酸濃度は、食事からのリン酸吸収(正の相関)及びCKDの重症度(正の相関)に依存する。PTHは、重度のCKD及びリン酸塩の増加を伴って上昇する。血管石灰化は、CKDの重症度及び食事からのリン酸塩吸収に依存する。
【0020】
血清リン及びマグネシウムのレベルは、両方とも心血管死亡率と相関する。インビトロ及びインビボ研究は、複数の分子機序による血管石灰化に対するマグネシウムの保護的役割を示唆している。血液透析患者における観察研究は、血清マグネシウムを増加させる保護効果が血清リンを低下させる保護効果に相加的であることを示唆している。
【0021】
混合金属化合物、混合金属化合物(例えば錠剤及び液体製剤)を含む関連組成物、そのような化合物及び組成物の製造方法、並びに関連する使用は、米国特許第6,926,912号、第7,799,251号、第8,568,792号、第9,242,869号、第9,168,270号、第9,907,816号、第9.314.481号、第9.066,917号、及び第9,566,302号、並びに米国特許出願公開第2008/0206358号、第2010/0125770号、及び第2010/0203152号に記載されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。これらの化合物は、リン酸塩結合能を有することが示されている。
【0022】
理論に拘束される意図はないが、二価金属としてマグネシウムを含む混合金属化合物は、さらに、リン酸塩結合中に二価金属の一部を放出することができると考えられる。驚くべきことに、本明細書に開示される混合金属化合物の投与からのマグネシウムの吸収は、血管組織によるマグネシウムの優先的な吸収をもたらすことが見出された。血管組織によるそのような優先的な吸収に加えて、マグネシウムの蓄積の結果として生じる、リン酸塩に対する相対的なマグネシウムの増加は、マグネシウムの保護機能及びリン酸塩の減少の両方を介して血管石灰化を阻害又は減少させると考えられる。そのような混合金属化合物の1つは、一般式[Mg4Fe2(OH)12]・CO3・4H2Oを有する鉄マグネシウムヒドロキシカーボネートであり、一般にフェルマゲートと呼ばれる。フェルマゲートは、高リン酸血症を制御する、カルシウムを含まないマグネシウム放出リン酸結合剤である。
【0023】
血管石灰化を治療する方法は、本明細書に記載の混合金属化合物のいずれか1種以上をそれを必要とする対象に投与することを含むことができ、上記対象は慢性腎臓障害を有する。上記方法は、二価金属として少なくともマグネシウムを含む混合金属化合物を投与することを含むことができる。上記方法は、二価金属がマグネシウムである混合金属化合物を投与することを含むことができる。
【0024】
血管石灰化を治療する方法は、本明細書に記載の混合金属化合物のいずれか1種以上をそれを必要とする対象に投与することを含むことができ、上記対象は高リン酸血症を有する。上記対象は、慢性腎臓障害をさらに有し得る。あるいは、上記対象は、非慢性腎臓障害対象であり得る。上記方法は、二価金属として少なくともマグネシウムを含む混合金属化合物を投与することを含むことができる。上記方法は、二価金属がマグネシウムである混合金属化合物を投与することを含むことができる。
【0025】
血管石灰化を治療する方法は、本明細書に記載の混合金属化合物のいずれか1種以上をそれを必要とする対象に投与することを含むことができ、上記対象はFGF23の上昇及び/又は高リン酸尿症を有する。上記対象は、慢性腎臓障害をさらに有し得る。あるいは、上記対象は、非慢性腎臓障害対象であり得る。上記方法は、二価金属として少なくともマグネシウムを含む混合金属化合物を投与することを含むことができる。上記方法は、二価金属がマグネシウムである混合金属化合物を投与することを含むことができる。
【0026】
血管石灰化を治療する方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の混合金属化合物のいずれか1種以上を投与することを含むことができ、対象は尿路結石症を有する。上記対象は、再発性尿路結石症を有し得る。上記対象は、特発性高カルシウム尿症をさらに有し得る。あるいは、上記対象は、非慢性腎臓障害対象であり得る。上記方法は、二価金属として少なくともマグネシウムを含む混合金属化合物を投与することを含むことができる。上記方法は、二価金属がマグネシウムである混合金属化合物を投与することを含むことができる。
【0027】
マグネシウムはミネラル代謝において重要な役割を果たす。血清マグネシウムレベルの低下は、末期腎疾患における血管石灰化に関連すると考えられている。
【0028】
したがって、本開示の一態様は、血管石灰化を予防する方法であって、本明細書に記載の混合金属化合物(任意にはフェルマゲート)の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0029】
本開示の別の態様は、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させる方法であって、本明細書に記載の混合金属化合物(任意にはフェルマゲート)の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0030】
本開示の別の態様は、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの上昇を予防する方法であって、本明細書に記載の混合金属化合物(任意にはフェルマゲート)の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0031】
本開示の別の態様は、血管石灰化を予防することと、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させることとの両方の方法であって、本明細書に記載の混合金属化合物(任意にはフェルマゲート)の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0032】
例えば、副甲状腺ホルモン(PTH)は、少なくとも約16%、約30%又は約31%減少し得る。
【0033】
本開示の別の態様は、血管石灰化を予防することと、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの増加を予防することとの両方の方法であって、本明細書に記載の混合金属化合物(任意にはフェルマゲート)の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0034】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、血清カルシウム濃度は、上記混合金属化合物の投与によって実質的に変化しないか又は影響を受けない状態を維持し得る。
【0035】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、血清クレアチニン濃度は、混合金属化合物の投与によって実質的に変化しないか又は影響を受けないことができる。
【0036】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、血清リン酸塩を減少させることができる。混合金属化合物がマグネシウムを含有する様々な実施形態では、血清マグネシウムを増加させることができ、血清リン酸塩を減少させることができる。そのような実施形態では、血管組織におけるマグネシウム:リン酸塩の蓄積の比が増加し得る。
【0037】
本明細書に開示される方法のいずれにおいても、石灰化は、心臓組織又は動脈組織のいずれか1種以上において治療、低減、及び/又は予防することができる。例えば、血管石灰化は、大動脈、カラトイド、遠位動脈、冠動脈CMR、及び外陰部のいずれか1種以上において治療、減少、及び/又は予防することができる。
【0038】
方法、使用、及び物品は、特に明記しない限り、以下でさらに説明される追加の任意選択の要素、特徴、及びステップ(図面に示され、実施例に記載されるものを含む)のうちの1以上の任意の組み合わせを含む実施形態を含むと考えられる。
【0039】
人体に対して実施される方法の特許を禁止する管轄区域においては、組成物のヒト対象への「投与」の意味は、ヒト対象が任意の手法(例えば、経口、吸入、局所適用、注射、挿入など。)で自己投与するであろう調整された物質を処方することに限定されるものとする。特許可能な主題を定義する法律又は規制に則った最も広い合理的な解釈が意図されている。人体に対して実施される方法の特許を禁止しない管轄区域では、組成物の「投与」は、人体に対して実施される方法と前述の活動の両方を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、指定されたものに加えて、他の薬剤、要素、ステップ、又は特徴を含む可能性を示す。
【0041】
本明細書で処置される対象又は本明細書に記載される使用の対象は、脊椎動物又は哺乳動物であり得、ヒト患者であり得る。
【0042】
治療を必要とする対象は、慢性腎疾患を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患ステージ3~5を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患ステージ3~4を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患ステージ5又は末期腎疾患を有し得る。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患を有し、血液透析療法を受けることができる。治療を必要とする対象は、慢性腎疾患に続発する副甲状腺機能亢進症を有し得る。治療を必要とする対象は、高リン酸血症を有し得る。治療を必要とする対象は、単独で、又は慢性腎疾患及び/若しくは副甲状腺機能亢進症に加えて、高リン血症を有し得る。治療を必要とする対象は、高リン酸血症及び副甲状腺機能亢進症、任意で二次性副甲状腺機能亢進症を有し得る。
【0043】
上記方法は、血清リン酸塩の減少及び血清マグネシウム濃度の増加の両方を含むことができる。上記方法は、対象がもはや高リン酸血症を有しない程度まで血清リン酸塩を減少させることを含むことができる。上記方法は、血清クレアチニン濃度に有意に影響を及ぼさないことを含み得る。上記方法は、血清カルシウム濃度に有意に影響を及ぼさないことを含み得る。
【0044】
上記方法は、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモン濃度を16%以上低下させることを含み得る。上記方法は、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモン濃度を30%以上、又は少なくとも31%低下させることを含み得る。
【0045】
上記方法は、動脈組織における石灰化を予防することを含み得る。上記方法は、心臓組織の石灰化を予防することを含み得る。上記方法は、動脈及び心臓組織を含む1以上の組織(大動脈弓、頸動脈、腸間膜(上腸間膜を含む)、大動脈(胸部及び上行を含む)、腸骨(左腸骨を含む)、大腿骨(右大腿骨及び左大腿骨を含む)、腹腔、外陰部(左外陰部を含む)、及び腎臓(右腎及び左腎を含む)を含むがこれらに限定されない)における石灰化を予防することを含み得る。この方法は、動脈及び心臓組織(大動脈、頸動脈、冠動脈CMR、遠位、及び外陰部を含むがこれらに限定されない)を含む1種以上の組織における石灰化を予防することを含むことができる。上記方法は、血管石灰化の程度を、未治療の対象と比較して、少なくとも30%、又は少なくとも44%、又は少なくとも52%、又は少なくとも66%減少させることを含み得る。
【0046】
本開示の方法は、2.5から4.5mg/dL(0.8から1.45mmol/L)の目標血清リン濃度を達成するように調整することができる混合金属化合物の投与を含むことができる。例えば、混合金属化合物の投与量は、所望の目標血清リン酸塩濃度を達成するために、2週間ごとに500mg(1日3回)を最大10週間まで、最大用量3000mg(1日3回)まで用量設定することができる。例えば、最初の混合金属化合物の用量500mgは、≧5.5~7.5mg/dL(≧1.78~2.42mmol/L)の血清リン濃度を有する患者に与えることができ、最初の混合金属化合物の用量1000mgは、>7.5mg/dL(>2.42mmol/L)の血清リン濃度を有する患者に与えることができる。
【0047】
目標血清リン濃度に達するか、又は、対象が設定用量の10週分を完了し、血清リンが最小で1.0mg/dL(0.32mmol/L)まで減少した後は、上記用量は、(i)血清リンが>4.5mg/dLである場合には、用量を毎月500mg(1日3回)の増分で最大3000mgまで増加させることができ、(ii)血清リンが<2.5mg/dLである場合には、毎月500mgの増分で減少させることができ、あるいは、(iii)2.5から4.5mg/dL(0.8から1.45mmol/L)の血清リンレベルを達成するように維持することができる。
【0048】
本明細書に開示される方法の実施形態では、上記混合金属化合物は、0.1から500mg/体重kgの範囲、又は1から200mg/体重kgの範囲の量で投与することができ、(単独で、又は任意の剤型で)活性を示す化合物は、所望の結果を得るために毎日投与することが企図される。それにもかかわらず、患者の体重、適用方法、患者の動物種、及び薬物に対するその個々の反応、又は製剤の種類、又は薬物が適用される時間若しくは間隔によって、上記の量から逸脱することが、その時々において必要にある場合がある。特別な場合には、上記の最小量未満を使用すれば十分である場合もあるが、他の場合には、上記の最大用量を超えなければならない場合がある。より大きい用量については、用量をいくつかのより小さい単回用量に分割することが望ましい場合がある。最終的に、用量は、主治医の裁量による。1つのタイプの実施形態については、食事の直前(例えば食事の1時間前以内)又は食物と一緒に摂取する投与が企図される。
【0049】
ヒト成人投与のための単回固体単位用量は、例えば、1mg~1g又は10mg~800mgの混合金属化合物を含むことができる。
【0050】
本明細書の開示の方法のいずれにおいても、上記混合金属化合物は、単独で、又は1種上の追加の活性薬剤と組み合わせて投与することができる。上記1種以上の追加の活性薬剤は、例えば、本明細書で特定される状態、すなわち、対象が有し得る状態、及び、血管石灰化に関連するか又はそれをもたらし得る状態のうちのいずれか1以上の状態を治療するための活性薬剤、又は、患者の他の基礎疾患を治療している活性薬剤であってもよい。
【0051】
例えば、慢性腎疾患を有する対象の場合、上記混合金属化合物は、ビタミンD療法と組み合わせて投与され得る。上記ビタミンD療法は、例えば、Rayaldee、25(OH)D3、又は他のビタミンD天然化合物若しくは合成類似体のうちの1種以上であり得る。予防的及び/又は治療的使用に適した任意のビタミンD化合物、及びそれらの組み合わせは、リン酸塩結合混合金属化合物と組み合わせて本開示の方法で使用することが企図される。ビタミンD前ホルモン、プロホルモン、活性ビタミンDホルモン、及びその他の代謝産物、並びにビタミンDの合成類似体も活性化合物として有用であり、本開示の方法における併用療法で使用することができる。具体例としては、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、25-ヒドロキシビタミンD3、25-ヒドロキシビタミンD2、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD2、1α,25-ジヒドロキシビタミンD4、及び1,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD2(パリカルシトール)及び1α-ヒドロキシビタミンD3(ドクセルカルシフェロール)を含むビタミンD類似体(すべてのヒドロキシ及びジヒドロキシ形態を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
慢性腎疾患対象はまた、上記リン酸塩結合混合金属化合物に加えて、慢性腎疾患に関連する状態及び症状を治療するために、血圧薬、コレステロール薬、エリスロポエチン、利尿薬、カルシウムサプリメント、ビタミンD療法、及びビタミンDのうちの1種以上を投与され得る。例えば、方法は、上記リン酸塩結合混合金属化合物に加えて、上記のようなビタミンD療法、カルシミメティック、カルシウム塩、ニコチン酸、鉄、カルシウム塩、血糖及び高血圧制御剤、抗新生物剤、CYP24の阻害剤、及びビタミンD剤を分解することができる他のシトクロムP450酵素の阻害剤のうちの1種以上の投与を含むことができる。そのような活性物質は、様々な実施形態において上記混合金属化合物と組み合わせて投与され得る。
【0053】
血管石灰化の測定及びモニタリング
本明細書の実施形態のいずれかでは、血管石灰化は、任意の公知の方法を使用して測定及び/又は観察することができる。大動脈又は冠動脈のコンピュータ断層撮影(CT)が一般的に使用される。側腹部(腹部大動脈)又は胸部(大動脈弓)及び手のX線撮影を使用して、血管石灰化の有無を検出することができる。心エコー図(ECG)を使用して、例えば、僧帽弁輪、大動脈弁尖、及び大動脈根の石灰化を検出することもできる。マルチ検出器列スキャナ又は電子ビームスキャナのいずれかを使用した胸部及び腹部の低線量、非ECG同期及び非造影増強CTスキャンもまた、心血管石灰化を評価するために使用することができる。
【0054】
混合金属化合物
ここで、本明細書で使用する上記混合金属化合物及びその関連組成物をさらに詳細に説明する。上記のように、米国特許第6,926,912号、第7,799,251号、第8,568,792号、第9,242,869号、第9,168,270号、第9,907,816号、第9.314.481号、第9.066,917号、及び第9,566,302号、並びに米国特許出願公開第2008/0206358号、第2010/0125770号、及び第2010/0203152号に記載されているような混合金属化合物又はその製剤を本開示の方法で使用することができる。
【0055】
混合金属化合物は、無機材料を医薬用途に使用する際に特有の課題をもたらす。例えば、治療効果を達成するための混合金属化合物の使用(又は他の薬学的機能的使用)は、例えば、薬物においては非典型的な物理吸着(イオン交換)及び化学吸着(化学結合の形成)などの表面プロセスに依存し得る。これに対し、ほとんどの薬物の治療活性は、典型的により可溶性である有機化合物に基づく。
【0056】
さらに、腎臓患者に対しては、高い1日量及び反復長期的(習慣的)な投与量が必要であるが、水分摂取量が制限されているため、その1日の総丸剤数は錠剤負荷が低いことを要する。その結果、最終生成物(例えば、錠剤)においては、高用量の原薬が必要とされるので、通常の製剤とは異なり、最終生成物は混合金属化合物原薬の特性に非常に影響を受けやすい。このことは、重要な物理的特性を含む錠剤の特性、及び造粒などの錠剤製造プロセスが、単に、賦形剤の特性というよりはむしろ、主に混合金属化合物活性物質の特性によってしばしば影響を受けることを意味する。医薬用途に必要な制御及び稠度を有するそのような有意な量の混合金属化合物を含む医薬製品の製造を可能にするためには、国際公開第2011/015859号に開示されているように、上記混合金属化合物の数々の対立する化学的特性及び物理的特性を制御する手段が必要である。
【0057】
混合金属化合物は、主層及びアニオン種を含む層間ドメインに2種類の金属カチオンを有する合成又は天然の層状水酸化物を指定するために使用される、いわゆる「層状複水酸化物」(LDH)として存在する。この幅広い化合物のファミリーは、層間ドメインがカチオン種を含むより一般的なカチオン性粘土と比較して、アニオン性粘土と呼ばれることもある。LDHは、対応する[Mg-Al]系鉱物のポリタイプの1種を参照して、ハイドロタルサイト様化合物としても報告されている。(「層状複水酸化物:現在及び将来」、ed,V Rives、2001版、Nova Science、を参照されたい。)
【0058】
混合金属化合物とは、化合物の原子構造が、その構造全体にわたって均一に分布した少なくとも2種の異なる金属のカチオンを含むことを意味する。混合金属化合物という用語は、2種の塩の結晶の混合物を含まず、各結晶タイプは1種の金属カチオンのみを含む。混合金属化合物は、典型的には、2種の異なる単一金属塩の単純な固体物理的混合物とは対照的に、異なる単一金属化合物の溶液からの共沈の結果である。本明細書で使用される混合金属化合物は、同じ金属タイプであるが2つの異なる原子価状態の金属(例えばFe(II)及びFe(III)を有する化合物)並びに1つの化合物中に2を超える異なる金属タイプを含む化合物を含む。
【0059】
ホスフェート結合剤として機能する無機固体混合金属化合物の種類は、国際公開第99/15189号に開示されている。例えば、アルミニウムを実質的に含まず、本明細書で述べるリン酸塩結合試験によって測定される場合、2~8のpH範囲にわたって存在するリン酸塩の総重量の少なくとも30重量%のリン酸塩結合容量を有する混合金属化合物。いくつかの実施形態においては、そのような混合金属化合物は、鉄(Ill)並びにマグネシウム、カルシウム、ランタン及びセリウムのうちの少なくとも1種を含むことができる。いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、ヒドロキシルアニオン及びカーボネートアニオンのうちの少なくとも1種を含むことができ、任意で、さらに、硫酸塩、塩化物及び酸化物のうちの少なくとも1種を含むことができる。ある種の実施形態においては、上記混合金属化合物は、カルシウムを含まないか、又は実質的に含まない。いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、マグネシウム及び鉄のそれぞれを含有する混合金属ヒドロキシカーボネートであり得、ハイドロタルサイト構造を持ち得る。いくつかの実施形態においては、未熟成のハイドロタルサイトを使用することができる。無機固体は水不溶性であり、経口投与用であり得る。
【0060】
本明細書に開示される方法で使用するための混合金属化合物は、水不溶性リン酸結合剤であり得る。非水溶性リン酸結合剤とは、そのリン酸結合剤の25℃の蒸留水に対する溶解度が0.5g/リットル以下、又は0.1g/リットル以下、又は0.05g/リットル以下であることを意味する。
【0061】
上記混合金属化合物はまた、非晶質(非結晶性)材料を含んでもよい。非晶質という用語は、X線回折技術の検出限界未満の結晶子サイズを有する結晶相、又はある程度の秩序化を有するが結晶回折パターンを示さない結晶相、及び/又は短距離秩序を示すが長距離秩序を示さない真の非晶質材料のいずれかを意味する。
【0062】
それらの水溶性のために、無機混合金属化合物は、例えばリン酸塩結合又は固定化が起こり得る十分な表面積が提供されるように、微細化された粒子形態であることが好ましい。上記無機混合金属化合物粒子は、例えば、1から20マイクロメートル、又は2から11マイクロメートルの重量中央粒径(d50)を有することができる。上記無機混合金属化合物粒子のd90(すなわち、粒子の90重量%がd90値未満の直径を有する)は、例えば、100マイクロメートル以下とすることができる。
【0063】
以下に詳細に記載されるように、本開示の方法での使用に適した混合金属化合物は、式(I)の化合物、式(II)の熱処理化合物、及び/又は式(III)~(VII)の二価金属欠乏化合物であり得る。
【0064】
前述のどの実施形態における、本明細書中の式のいずれにおいても、二価金属対三価金属のモル比を変化させることにより、異なる組成がもたらされ得る。例えば、MII:MIIIカチオンのモル比を1:1、2:1、3:1、4:1に変更することによって、異なる組成材料を得ることができる。
【0065】
本明細書のどの実施形態における、本明細書の式のいずれにおいても、二価金属MlIは、Mg(II)、Zn(II)、Fe(II)、Cu(II)、Ca(II)、La(II)及びNi(II)から1種以上選択することができる。実施形態の1つのクラスにおいて、MlIは、Mg(II)を含む。いくつかの実施形態においては、式(I)の化合物は、カルシウムを含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示される式のいずれにおいても、An-は少なくとも1つのn価アニオンであり得る。上記アニオンAn-は、化合物が電荷中性であるという要件が満たされるように選択されてもよい。An-は、カーボネート、ヒドロキシカーボネート、オキソアニオン(例えば、硝酸塩、硫酸塩)、金属錯体アニオン(例えばフェロシアン化物)、ポリオキソメタレート、有機アニオン、ハロゲン化物、水酸化物及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のアニオンであり得る。いくつかの実施形態においては、上記アニオンは、炭酸塩である。いくつかの実施形態においては、n価のアニオンAn-は、交換可能なアニオンであり、それにより、固体混合金属化合物中のAn-価のアニオンに対するリン酸塩の交換を容易にする。
【0067】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示される式のいずれにおいても、三価金属MIIIは、Mn(III)、Fe(III)、La(III)、Ni(III)及びCe(III)から1種以上選択することができる。これらのうち、Fe(III)が特に企図される。ここで、(II)は二価の状態の金属を意味し、(III)は3価の状態の金属を意味する。
【0068】
いくつかの実施形態においては、上記化合物は、鉄(III)並びに、マグネシウム、カルシウム、ランタン又はセリウムのうちの少なくとも1種、又は、マグネシウム、ランタン又はセリウムのうちの少なくとも1種、若しくはマグネシウムのいずれかを含む。
【0069】
いくつかの実施形態においては、MIIは、マグネシウム、カルシウム、ランタン及びセリウムのうちの少なくとも1種であり得る。また、MIIIは、少なくとも鉄(III)であり得る。さらに、An-は、少なくとも1種のn価アニオンであり、x=Σny、0<x≦0.67、0<y≦1、及び/又は0≦z≦10である。
【0070】
いくつかの実施形態においては、上記化合物は、化合物の重量当たりのアルミニウム金属の重量として表される、200g/kg未満、又は100g/kg未満、又は50g/kg未満のアルミニウムを含むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態においては、10g/kg未満又は5g/kg未満といった低レベルのアルミニウムのみが存在する。
【0072】
さらなるいくつかの実施形態においては、上記化合物はアルミニウム(Al)を含まない。「アルミニウムを含まない」という用語は、「アルミニウムを含まない」と呼ばれる材料が、上記化合物の重量当たりの元素アルミニウムの重量として表される、1g/kg未満、又は500mg/kg未満、又は200mg/kg未満、又は120mg/kg未満を含むことを意味する。
【0073】
いくつかの実施形態においては、化合物は、上記化合物の重量当たりの元素カルシウムの重量として表される、100g/kg未満、又は50g/kg未満、又は25g/kg未満のカルシウムを含む。
【0074】
いくつかの実施形態においては、10g/kg未満又は5g/kg未満といった低レベルのカルシウムのみが存在する。
【0075】
他のいくつかの実施形態においては、上記化合物はカルシウムを含まない。「カルシウムを含まない」という用語は、「カルシウムを含まない」と呼ばれる材料が、材料の重量当たりの元素カルシウムの重量として表される、1g/kg未満、又は500mg/kg未満、又は200mg/kg未満、又は120mg/kg未満を含むことを意味する。
【0076】
いくつかの実施形態においては、化合物は、カルシウムを含まず、アルミニウムを含まない。
【0077】
本明細書に開示される化合物のいずれも、本明細書に記載される方法のうちの1つ以上の方法に使用することができる。いくつかの実施形態においては、上記化合物は医薬品として使用するためのものであり得る。いくつかの実施形態においては、上記化合物は、リン酸塩を結合させるための医薬に使用することができる。いくつかの実施形態においては、化合物は、血管石灰化を予防するため、血管石灰化を減少させるため、血清PTHを低下させるため、又は血清PTHの上昇を示すために使用することができ、並びに任意で、高リン酸血症、代謝性骨疾患、メタボリックシンドローム、腎機能不全、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、急性未治療先端巨大症、慢性腎疾患(CKD)、骨石灰化の臨床的に有意な変化(骨軟化症、無形成性骨疾患、線維性骨炎)、軟部組織石灰化、高リン酸塩に関連する心血管疾患、二次性副甲状腺機能亢進症、リン酸塩の過剰投与、及びリン酸塩吸収の制御を必要とするその他の状態のうちのいずれか1種以上の予防又は治療のために使用することができる。いくつかの実施形態においては、本明細書で定義される化合物のいずれかも、高リン酸血症、腎機能不全、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、急性未治療先端巨大症、慢性腎疾患、及びリン酸塩の過剰投与のうちのいずれか1種の予防又は治療のための医薬品の製造に使用することができる。
【0078】
式Iの混合金属化合物
いくつかの実施形態においては、上記固体混合金属化合物は、式(I)であり得る。
【0079】
MII
1-x.MIII
x(OH)2An-
y.zH2O,(I)
【0080】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、An-は少なくとも1種のn価のアニオンである。ここで、x=[MIII]/[MII]+[MIII]であり、このうち、[MII]は式Iの化合物1モル当たりのMIIのモル数であり、[MIII]は式Iの化合物1モル当たりのMIIIのモル数であることが理解されるであろう。いくつかの実施形態においては、x=Σnyであり、x、y及びzは、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10を満たす。
【0081】
上記式(I)において、Aが複数のアニオンを表す場合、それぞれの価数(n)は変化し得る。「Σny」は、各アニオンのモル数に各アニオンそれぞれの原子価を乗じた値の和を意味する。
【0082】
いくつかの実施形態の一クラスにおいては、0.1<xであり、例えば0.2<x、0.3<x、0.4<x、又は0.5<xである。一実施形態においては、0<x≦0.5である。さらなるいくつかの実施形態においては、0<y≦1、0<y≦0.8、0<y≦0.6、0<y≦0.4、0.05<y≦0.3、0.05<y≦0.2、0.1<y≦0.2、又は0.15<y≦0.2である。
【0083】
いくつかの実施形態においては、0≦z≦10、0≦z≦8、0≦z≦6、0≦z≦4、0≦z≦2、0.1≦z≦2、0.5≦z≦2、1≦z≦2、1≦z≦1.5、1≦z≦1.4、1.2≦z≦1.4であり、又はzは約1.4である。
【0084】
一実施形態においては、0<x≦0.5、0<y≦1、及び0≦z≦10である。
【0085】
本明細書に記載のx、y、及びzの各値を組み合わせることができることが理解されよう。したがって、以下の表に列挙される値のそれぞれの任意の組み合わせが本明細書に具体的に開示され、対応する混合金属化合物が本明細書に記載される使用及び組成物のために企図される。
【表1】
【0086】
式(II)の混合金属化合物
式(II)の混合金属化合物は、式(I)の化合物の熱処理によって調製することができる。
【0087】
式(II)の固体混合金属化合物は、以下の式を有することができる。
【0088】
MII
1-a.MIII
aObAn-
c.zH2O(II)
【0089】
式中、MIIは、少なくとも1種の二価金属(すなわち、2つの正電荷を有する)であり、MIIIは、少なくとも1種の三価金属(すなわち、3つの正電荷を有する)であり、Anは、少なくとも1種のn価のアニオンであり、2+a=2b+Σcnであり、ここで、a=MIIIのモル数(MIIのモル数+MIIIのモル数)であり、Σcn<0.9aである。
【0090】
上記式(II)において、Aが複数のアニオンを表す場合、それぞれの価数(すなわち、アニオンの電荷)(n)は変化し得る。上記式(Ii)において、「Σcn」は、式(II)の化合物1モル当たりの各アニオンのモル数に各アニオンのそれぞれの原子価を乗じた値の和を意味する。
【0091】
いくつかの実施形態においては、zの値は、好適には、2以下、1.8以下、又は1.5以下である。いくつかの実施形態においては、zの値は1以下であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態においては、aは、0.1~0.5、0.2~0.4である。いくつかの実施形態においては、bの値は、1.5以下又は1.2以下である。いくつかの実施形態においては、bの値は、0.2より大きく、0.4より大きく、0.6より大きく、又は0.9より大きい。
【0093】
いくつかの実施形態においては、aが>0.3である場合、Σcn<0.5aであることが好ましい。aが≦0.3である場合、Σcn<0.7aであることが好ましい。
【0094】
各アニオンのcの値は、式2+a=2b+Σcnによって表されるように、電荷的中性の必要性によって決定される。
【0095】
二価金属欠乏混合金属化合物
混合金属化合物はまた、以下により詳細に記載されるように、化学処理によって二価金属を欠乏させることができる。
【0096】
いくつかの実施形態においては、このような混合金属化合物は、式(III)の化合物yであり得る。
【0097】
MII
1-aMIII
a(III)
【0098】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、そして1>a>0.4であり、上記化合物が電荷中性であるように、上記化合物が少なくとも1種のn価のアニオンAn-を含む。
【0099】
いくつかの実施形態においては、二価金属含有量が低減した上記混合金属化合物は、式(IV)の化合物を式(IV)の酸、キレート剤又はこれらの混合物のいずれかで処理することによって得ることができ又は入手可能である。
【0100】
[Mll
1-aMIII
aOb(OH)d](An-)c.zH2O(IV)
【0101】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、そして0<a≦0.4であり、上記化合物が電荷中性であるように、上記化合物が少なくとも1種のn価のアニオンAn-を含む。いくつかの実施形態においては、MIIは、Mg(II)、Zn(II)、Fe(II)、Cu(II)、Ca(II)、La(II)から選択される少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは、Mn(III)、Fe(III)、La(III)及びCe(III)から選択される少なくとも1種の三価金属であり、An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、ここで少なくとも1種のアニオンはカーボネートであり、0<a<0.4;0<b≦2である。各アニオンのcの値は、式2+a-2b-d-cn=0、0<d≦2、0<z≦5で表されるように、電荷的中性の必要性によって決定される。
【0102】
式(IV)の化合物を酸、キレート剤又はそれらの混合物のいずれかと接触させた結果は、式(V)の化合物であり得る。
【0103】
[Mll
1-aMIII
aOb(OH)d](An-)c.zH2O(V)
【0104】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、そして1>a>0.4であり、上記化合物が電荷中性であるように、上記化合物が少なくとも1種のn価のアニオンAn-を含む。いくつかの実施形態においては、式(IV)中のaは、1>a>0.4、0<b≦2、0<d≦2、0<z≦5である。各アニオンのcの値は、式2+a-2b-d-cn=0で表されるように、電荷的中性の必要性によって決定される。
【0105】
いくつかの実施形態においては、0<d≦2である。いくつかの実施形態においては、dは、1.5以下であるか、又はdは、1以下である。いくつかの実施形態においては、0<d≦1、又は0≦d≦1である。
【0106】
いくつかの実施形態においては、dは、0であり、したがって、上記化合物は、式(VI)の化合物である。dが0である場合、任意で、Σcn<0.9aである。
【0107】
Mll
1-aMIII
aOb(An-)c.zH2O(VI)
【0108】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、そして1>a>0.4であり、上記化合物が電荷中性であるように、上記化合物が少なくとも1種のn価のアニオンAn-を含む。いくつかの実施形態においては、式(IV)中のaは、1>a>0.4、0<b≦2、0<z≦5である。各アニオンのcの値は、式2+a-2b-d-cn=0で表されるように、電荷的中性の必要性によって決定される。
【0109】
いくつかの実施形態においては、0<b≦2、又は1.5以下、1.2以下、又は1以下である。いくつかの実施形態においては、0<b≦1.5、又は0≦b≦1.5、又は0<b≦1.2、又は0≦b≦1.2、又は0<b≦1、又は0≦b≦1である。
【0110】
いくつかの実施形態においては、bは、0であり、したがって、上記化合物は、式(VII)の化合物であり得る。
【0111】
Mll
1-aMIII
a(OH)d](An-)c.zH2O(VII)
【0112】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、そして1>a>0.4であり、上記化合物が電荷中性であるように、上記化合物が少なくとも1種のn価のアニオンAn-を含む。いくつかの実施形態においては、式(VII)において、2+a-d-cn=0であり、Σcn<0.9a、0≦d<2、0<z≦5である。
【0113】
bが0でない場合、任意で、cは0.5又は0.15以下であり得る。いくつかの実施形態においては、二価金属欠乏化合物の前述の式のいずれにおいても、0<c≦0.5、又は0<c≦0.15、又は0≦c≦0.15、又は0.01<c≦0.15、又は0.01≦c≦0.15である。
【0114】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示される式のいずれかにおいても、MIIは、Mg(II)、Zn(II)、Fe(II)、Cu(II)、Ca(II)、La(II)、Ce(II)及びNi(II)から選択される少なくとも1種の二価金属であり得る。いくつかの実施形態においては、MIIIは、Mn(III)、Fe(III)、La(III)及びCe(III)から選択される少なくとも1種の三価金属であり得る。MII及びMIII-は、異なる金属であってもよく、又はそれらは同じ金属であるが異なる原子価状態であってもよい。例えば、MIIはFe(II)であり得、MIIIはFe(III)であり得る。MIIIは、アルミニウム蓄積及び毒性合併症が問題とならない治療のためのAl(III)であり得る。いくつかの実施形態においては、上記化合物は、アルミニウムを実質的に又は完全に含まない。
【0115】
いくつかの実施形態においては、Fe(III)を三価金属として使用することができる。二価金属欠乏化合物では、Fe(III)は、欠乏プロセス中にMg(II)と同時に溶解せず、それにより、Mg欠乏化合物の形成を可能にする対照的に、Mg Alから調製される混合金属化合物は、Mg金属とAl金属のより類似した溶解プロファイルのために欠乏化がより困難であり、より等モル比の化合物をもたらす。
【0116】
いくつかの実施形態においては、二価金属欠乏化合物の前述の式のいずれかにおいても、0<z≦5、又は0<z≦2、又は0≦z≦2、又は0<z≦1.8、又は0≦z≦1.8、又は0<z≦1.5、又は0≦z≦1.5である。
【0117】
いくつかの実施形態においては、式(III)、(V)、(VI)、及び(VII)などの二価金属欠乏化合物の前述の式のいずれにおいても、aは1から0.4の間の任意の値であり得る。したがって、1>a>0.4である。いくつかの実施形態においては、0.98>a>0.5、0.98>a>0.6、0.98>a≧0.7、0.95>a≧0.7、0.90>a≧0.7、0.85>a≧0.7、0.80>a≧0.7である。
【0118】
0.98を超える「a」の値の増加は、最大75%のリン酸塩結合のより有意な減少をもたらす。理論に束縛されるものではないが、0.98を超える「a」の値のリン酸塩結合の減少は、二価金属(例えば、マグネシウム)の完全な除去に起因すると考えられる。さらに、鉄の損失のために収率(脱離反応後に単離されるリン酸塩結合剤の量)が著しく低下する。これは、上記化合物を構造的に不安定にし、それによってリン酸結合剤としての効果を低下させる。一方、「a」の値が0.98>a≧0.7である場合、リン酸塩結合は約10%だけ減少し得る。「a」の値が0.7未満である場合、リン酸塩結合はより高いか又は維持される。「a」値が0.8を超える場合、二価金属(マグネシウム)の放出の可能性は、欠乏していないリン酸結合剤中に存在する二価金属の利用可能な総量の依然として50%を超え、それによって金属の潜在的な望ましくない放出をもたらす。その結果、企図される範囲は、それが良好なリン酸塩結合と溶解に利用可能なより少ない量の二価金属との間の最良の妥協点をもたらす、0.80>a≧0.7である。同時に、この範囲は、また、4~6のpH領域内にあり、それによって欠乏していない材料の最大pH緩衝が観察され、結晶性(ハイドロタルサイト)の存在から非結晶性構造への変化が観察される。典型的には、a≧0.7の場合、欠乏化反応の収率は50%以上である。
【0119】
さらに、0.95を超える「a」値の欠乏化合物は、一貫して製造することがより困難であり、リン酸塩結合が減少し、FeOOHの試料のものに近づく(「a」値は1である)。純粋なFeOOH化合物は安定性が低く、安定化剤(例えば炭水化物)の存在を必要とする。pH値が8、9以上に維持された溶液から単離された化合物から得られる「a」の値について、リン酸塩結合は、主に、溶液中のリン酸アニオンと、固体層状複水酸化物又は混合金属化合物中に存在するアニオンとのイオン交換によってのみ起こる。次いで、0.4未満の「a」の値を有する層状複水酸化物構造又は混合金属化合物の最大リン酸塩結合容量は、出発物質内の交換可能なアニオン及びその関連電荷の量によって制限され、加えて、混合金属化合物の層間の空間の利用可能なサイズもまた、0.4未満の「a」値でのリン酸塩の交換を制限している。0.4を超える「a」の値は、安定性の低い層状複水酸化物構造をもたらすことが当業者に知られており、したがって、これらの組成物は、以前は、リン酸塩などのアニオンの効果的な結合剤と考えられていなかった。典型的な層状複水酸化物又はハイドロタルサイト構造が徐々に失われるにもかかわらず、リン酸塩結合は実質的に増加するか、又は、通常、0.4の値を超える「a」の値で維持され、「a」が0.98を超える場合にのみ有意に減少する。三価金属の量がより多いと、三価金属がより少ないが「a」値が0.4未満の化合物で観察されるリン酸塩結合の制限のない試料と比較して、金属水酸化物層上の正味の正電荷がより高いため、良好なリン酸塩結合を維持すると考えられる。さらに、水酸化第二鉄又はクエン酸第二鉄化合物などの単一金属三価金属水酸化物は、リン酸結合剤としてあまり効果的ではなく、いくつかの二価金属の存在が好ましいが、0.4未満の「a」値の混合金属化合物の比をもたらすレベルではないことを示している。さらに、マグネシウム塩及び鉄塩の混合物から調製された単純な混合物は、それほど効果的ではない。
【0120】
事実上、上記混合金属化合物が欠乏剤に曝露されるため、医薬品として使用する前に、可溶化された金属の放出は、その後のさらなる胃内の胃酸と接触時に、腸内において良好なリン酸塩結合活性を維持しながら低減され得る。二価金属の還元の程度は、任意の所与の程度(例えば、わずかな還元から有意な還元まで)に調整することができる。
【0121】
いくつかの実施形態においては、上記固体混合金属化合物は、層状複水酸化物(LDH)である少なくともいくつかの材料を含む。より好ましくは、式(I)の上記混合金属化合物は層状複水酸化物である。本明細書で使用される場合、「層状複水酸化物」という用語は、アニオン種を含む主層及び層間ドメインに2種類の異なる金属カチオンを有する合成又は天然の層状水酸化物を指すために使用される。この幅広い化合物のファミリーは、層間ドメインがカチオン種を含むより一般的なカチオン性粘土と比較して、アニオン性粘土と呼ばれることもある。LDHは、対応する[Mg-Al]系鉱物のポリタイプの1種を参照して、ハイドロタルサイト様化合物としても報告されている。
【0122】
いくつかの実施形態においては、混合金属化合物は、炭酸イオン及びヒドロキシルイオンの少なくとも1種を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、化合物は、MII及びMIIとして、それぞれ、マグネシウム及び鉄(III)を含む。
【0124】
上記固体混合金属化合物は、例えば国際公開第99/15189号に記載されているように、溶液から共沈殿し、続いて遠心分離又は濾過し、次いで乾燥、粉砕及びふるい分けすることによって適切に作製し得る。別法として、混合金属化合物は、微細化された単一の金属塩の均質な混合物を、固体-固体反応が起こり得る温度で加熱することによって形成することができ、混合金属化合物の構造をもたらす。
【0125】
式(I)の上記固体混合金属化合物は、式中のzの値を減少させるために、200℃を超える温度で加熱することによって焼成することができる。
【0126】
いくつかの実施形態においては、式Iの上記化合物は、化合物の結晶のサイズが大きくなること回避し、リン酸塩結合が起こり得る高表面積を維持するために、エージング又は水熱処理なしで形成される。式Iの上記未熟成化合物はまた、任意で、良好なリン酸塩結合を維持するために、合成後経路において微粒子サイズの形態で維持される。
【0127】
いくつかの実施形態においては、混合金属化合物は、少なくともMg2+及び少なくともFe3+を含むことができ、Mg2+対Fe3+のモル比は2.5:1から1.5:1であり、上記混合金属化合物は10,000ppm未満のアルミニウム含有量を有し、上記混合金属化合物の平均結晶サイズは10から20nm(100から200Å)であり、上記化合物の層間硫酸塩含有量は1.8から5重量%(例えば、1.8から3.2重量%など)である。いくつかの実施形態においては、混合金属化合物は、少なくともMg2+及び少なくともFe3+を含むことができ、Mg2+対Fe3+のモル比は1.5:1から2.5:1であり、上記混合金属化合物は10000ppm未満のアルミニウム含有量を有し、上記混合金属化合物の平均結晶サイズは10から20nm(100から200Å)であり、上記混合金属化合物のd50平均粒径は300μm未満である。
【0128】
上記混合金属化合物は、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%の乾燥固形分を有することができる。
【0129】
乾燥されたとき、上記混合金属化合物は、少なくとも80重量%、又は85重量%を超える乾燥固形分を有する。上記乾燥混合金属化合物は、99重量%未満、又は95重量%未満の乾燥固形分を有することができる。上記乾燥混合金属化合物は、90から95重量%の乾燥固形分を有することができる。
【0130】
本明細書で論じられるように、上記化合物は、20nm(200Å)未満の平均結晶サイズを有することができる。いくつかの実施形態においては、上記化合物は、100から200Å、155から200Å、110から195Å、110から185Å、115から165Å、120から185Å、130から185Å、140から185Å、150から185Å、150から175Å、155から175Å、155から165Åの平均結晶サイズを有する。
【0131】
式(I)の化合物の製造方法
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、例えば、硫酸マグネシウム及び硫酸第二鉄の水性混合物と水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムの水性混合物との反応によって形成することができる。沈殿は、約9.8のpH、及び約22℃で開始し反応物の添加時に30℃に至るまで上昇する反応温度で行うことができる。得られた沈殿物を濾過し、洗浄し、乾燥させ、粉砕する。上記合成反応は以下のように表される。
【0132】
4MgSO4+Fe2(SO4)3+12NaOH+(XS+1)Na2CO3→Mg4Fe2(OH)12.CO3.nH2O+7Na2SO4+XSNa2CO3.
【0133】
これにより、典型的には2:1のMg:Feのモル比の混合金属化合物が、反応副生成物である硫酸ナトリウムとともに生成される。硫酸ナトリウムと共に反応混合物に添加した過剰の(XS)炭酸ナトリウムを沈殿物から洗浄する。
【0134】
式(II)の化合物の製造方法
一実施形態においては、上記化合物は、式(I)の化合物であり、式中、MIIが1種以上の二価金属であって少なくともMg2+であり、MIIIが1種以上の三価金属であって少なくともFe3+であり、An-が1種以上のn価のアニオンであって少なくともCO3
2-であり、1.0<x/Σyn<1.2、0<x≦0.67、0<y≦1、0<m≦10である。
【0135】
混合金属化合物の分子式を決定することができる方法は、当業者に周知である。分子式は、MII/MIII比の分析(試験方法1)、SO4分析(試験方法5)、CO3分析(試験方法6)及びH2O分析(試験方法10)から決定され得ることが理解されよう。
【0136】
いくつかの実施形態では、0<x≦0.4、0<y≦1及び0<m≦10である。
【0137】
いくつかの実施形態においては、1.05<x/Σyn<1.2、1.05<x/Σyn<1.15、又はx/Σyn=1である。
【0138】
いくつかの実施形態においては、0≦z≦10、0≦z≦8、0≦z≦6、0≦z≦4、0≦z≦2、0≦z≦1、0≦z≦0.7、0≦z≦0.6、0.1≦z≦0.6、0≦z≦0.5、0≦z≦0.3、0≦z≦0.15、又は0.15≦z≦0.5である。水分子数mは、結晶子の表面に吸収され得る水の量並びに層間水を含み得る。水分子の数は、z=0.81-xに照らして、xに関連すると推定される。
【0139】
x、y、z及びmの好ましい値の各々を組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0140】
いくつかの実施形態においては、上記化合物は、アルミニウム含有量が5000ppm未満、又は1000ppm未満、又は約100ppm、又は約30ppmである。
【0141】
いくつかの実施形態においては、上記化合物の総硫酸塩含有量は、1.8から5重量%である。総硫酸塩含有量とは、上記化合物中に存在する硫酸塩の含有量を意味する。これは、例えば試験方法1に従って、周知の方法によって決定することができる。いくつかの実施形態においては、上記総硫酸塩は、2から5重量%、2から3.7重量%、2から5重量%、2から5重量%未満、2.1から5重量%、2.1から5重量%未満、2.2から5重量%、2.2から5重量%未満、2.3から5重量%、又は2.3から5重量%未満である。
【0142】
いくつかの実施形態においては、上記化合物の上記総硫酸塩含有量は、1.8から4.2重量%、2から4.2重量%、2から3.7重量%、2から3.2重量%、2から3.2重量%未満、2.1から3.2重量%、2.1から3.2重量%未満、2.2から3.2重量%、2.2から3.2重量%未満、2.3から3.2重量%、又は2.3から3.2重量%未満であり得る。
【0143】
上記化合物はまた、上記化合物内に結合した一定量の硫酸塩を含有する。この含有量の硫酸塩、層間硫酸塩は、水による洗浄プロセスによって除去されなくてもよい。本明細書で使用される場合、層間硫酸塩の量は、試験方法5に従って決定される硫酸塩の量である。いくつかの実施形態においては、化合物の層間硫酸塩含有量は、1.8から5重量%、1.8から3.2重量%、2から5重量%、2から5重量%未満、2から3.2重量%、2から3.1重量%、2から3.0重量%、2.1から5重量%、2.1から3.2重量%、2.1から3.2重量%未満、2.2から5重量%、2.2から3.2重量%、2.2から3.2重量%未満、2.3から5重量%、2.3から3.2重量%、2.3から3.2重量%未満、2.5から5重量%、2.5から3.2重量%、2.5から3.2重量%未満、及び2.5から3.0重量%であり得る。
【0144】
いくつかの実施形態における混合金属化合物は、少なくともMg2+及び少なくともFe3+を含むことができ、Mg2+対Fe3+のモル比は2.5:1から1.5:1とすることができ、上記混合金属化合物は10000ppm未満のアルミニウム含有量を有することができ、上記混合金属化合物の平均結晶サイズは10から20nm(100から200Å)とすることができ、上記混合金属化合物のd50平均粒径は300μm未満とすることができる。いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物のd50平均粒径は、200μm未満である。
【0145】
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、0.25から0.7cm3/混合金属化合物(g)、0.3から0.65cm3/混合金属化合物(g)、0.35から0.65cm3/混合金属化合物(g)、又は0.3から0.6cm3/混合金属化合物(g)の水細孔容積を有することができる。
【0146】
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物の窒素細孔容積は、0.28から0.56cm3/gであってもよい。本明細書で使用される場合、「窒素細孔容積 」という用語は、試験方法14に従って決定される細孔容積を指す。上記混合金属化合物の窒素細孔容積が0.28から0.56cm3/gである場合、水細孔容積との密接な相関は、水細孔容積を決定する必要がない程度である。
【0147】
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、化合物1グラム当たり80から145m2の表面積を有する。代替の実施形態においては、上記混合金属化合物は、化合物1グラム当たり40から80m2の表面積を有する。
【0148】
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物のd50平均粒径は、100μm未満、50μm未満、20μm未満、10μm未満である。いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物のd50平均粒径は、約5μmである。
【0149】
ある種の実施形態においては、上記混合金属化合物は、焼成された混合金属化合物であり得る。そのような焼成された混合金属化合物は、以下にさらに詳細に記載される。国際公開第99/15189号の化合物の医薬的使用に関連する二価金属(例えばマグネシウム)の放出は、適切な混合金属化合物(例えば層状複水酸化物又はヒドロタルサイト構造を有する化合物)の熱処理によって減少させることができる。M’’がマグネシウム以外の場合も同様に他の二価金属の放出を低減することができる。
【0150】
式(II)の化合物を調製する方法は、出発物質である化合物の構造的詳細の変化をもたらす。したがって、記載されている式(II)は、その元素組成を説明することのみを意図しており、構造の定義として解釈されるべきではない。
【0151】
式(II)の化合物が、MIIとしてマグネシウムを含み、MIIIカチオンとして鉄を含み、アニオンとして炭酸塩を含む場合、それは、好ましくは34°2θでX線回折ピークを示す。より低い温度(≦250℃)では、上記層状複水酸化物からの相反するピークが存在し得る一方で、温度が上昇すると(>400℃)、酸化物MIIOに起因する相反するピークが現れ得るが、これらのピークは、デコンボリューション法を使用して分離し得る。
【0152】
いくつかの実施形態においては、式(II)の固体混合金属化合物は、200℃から600℃の範囲、又は225℃から550℃の範囲、又は250℃から500℃の範囲の温度で式(I)の化合物を熱処理することによって得ることができ又は入手可能である。
【0153】
MII
1-x.MIII
x(OH)2An-
y.zH2O,(I)
【0154】
式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、An-は少なくとも1種のn価のアニオンである。ここで、x=[MIII]/[MII]+[MIII]であり、このうち、[MII]は式Iの化合物1モル当たりのMIIのモル数であり、[MIII]は式Iの化合物1モル当たりのMIIIのモル数であることが理解されるであろう。いくつかの実施形態においては、x=Σnyであり、x、y及びzは、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10を満たす。
【0155】
式(I)は、全体的な電荷的中性を保つように解釈されるべきであり、上記の任意の変形を含むことができることに留意されたい。式(I)及び/又は式(II)において、いずれかの式の化合物のサブクラスは、それぞれ、x又はaが以下の値のいずれか未満であるサブクラス及びx又はaが以下の値のいずれか以上であるサブクラスを含み得、それらの値とは、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45である。そのような一例はサブクラスを含み、aはそれぞれ0.3以上0.3未満である。xの値は好適には0.1から0.5、又は0.2から0.4である。式(I)中、Σnyは、各アニオンの数にその価数を乗じたものである。
【0156】
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、本明細書で先に定義したような式(I)の適切な出発物質を熱処理することによって製造することができる。任意で、固体合成、固体-固体反応、又は、単一若しくは混合の金属酸化物若しくは金属水酸化物の水熱経路又は低温経路を使用した高度に集中的な粉砕、といった他の調製方法を使用して、上記混合金属化合物を調製することができる。
【0157】
式(II)の混合金属化合物は、本明細書で先に定義したような式(I)の適切な出発物質の熱処理によって調製することができ、また、金属MIIの水溶性化合物及び金属MIIIの水溶性化合物の第1の溶液を提供することによって調製することができ、アニオンは、上記第1の溶液から沈殿を生じないように選択される。水溶性水酸化物(例えばNaOH)及びアニオンAnの水溶性塩の第2の溶液も提供される(カチオンは、水酸化物と沈殿しないように、又は水酸化物からの金属に伴うアニオンと沈殿しないように選択される)。次いで、上記2つの溶液を混合し、上記混合金属化合物の出発材料を共沈殿によって形成する。これは、固体結晶性材料を含み、通常、いくつかの固体非晶質材料も存在する。好ましくは、そのように形成された上記材料の少なくとも一部は、層状複水酸化物及び/又はハイドロタルサイト構造であり、通常はまた、いくつかの非晶質及び/又は結晶性が低い材料を含み、好ましくは共沈殿後、上記材料は次いで濾過又は遠心分離され、洗浄され、次いで加熱によって乾燥される。
【0158】
いくつかの実施形態においては、上記材料は、沈殿反応の副生成物である水溶性塩を除去するために洗浄される。かなりの量のこれらの可溶性塩を固体沈殿物と混合したままにしておくと、その後のその材料の加熱により、得られた固体に上記可溶性塩が取り込まれ、リン酸塩の結合挙動に悪影響を及ぼす可能性がある。上記材料は、後述するように乾燥した後の水溶性塩(水への溶解度が1g/リットル以上)の残存量が、固形混合金属化合物の15重量%未満、又は10重量%未満、又は5重量%未満となるように洗浄することができる。
【0159】
濾過又は遠心分離及び洗浄の後、乾燥は、任意で、低温(例えば、最大120℃など)で行われ、例えば、オーブン乾燥、噴霧乾燥又は流動床乾燥によって行われる。
【0160】
任意で、上記乾燥材料は、熱処理に先立つ処理で、粉砕及び/又はふるい分け及び/又は任意の他の適切な手法によって過大粒子を除去してもよく、例えば熱処理される材料を実質的に直径100μm以下の粒子に制限してもよい。好ましくは、ふるい分けにより測定した場合に、10重量%未満の粒子の直径が106μm超であり、又は5%未満である。ある種の実施形態では、ふるい分けによって測定した直径が106μmを超える粒子はない。次いで、得られた乾燥材料は、例えばオーブン乾燥又は回転式焼成機又は流動床乾燥機によって、例えば少なくとも200℃、又は225℃から550℃の範囲、又は250℃から500℃の範囲の温度で、必要な熱処理に直接供する。任意で、ウェットケーキ材料は、低温乾燥(例えば、最大120℃など)及び粉砕をしないで、200℃を超える温度に直接供してもよい。
【0161】
上記加熱は、本明細書の以下に記載される試験を使用して金属M’’の損失を測定する場合、未処理化合物からの損失と比較して、熱処理化合物からの金属MIIの溶液への損失量を、少なくとも5重量%、又は10重量%、又は15重量%、又は20重量%、又は25重量%、又は30重量%、又は35重量%、又は40重量%、又は45重量%、又は50重量%減少させることができる。
【0162】
本開示の物質は、式(I)の少なくとも1種の化合物を含有してもよいが、出発材料を製造するための上述した方法はまた、例えば式(II)の中間生成物及び最終生成物中に他の材料を存在させてもよく、例えば、共沈殿プロセス中にも形成され得る単一(混合ではなく)金属化合物を存在させてもよい。
【0163】
上記加熱は、200℃から600℃、又は225℃から550℃、又は250℃から500℃の範囲の温度で行うことができる。いくつかの実施形態においては、これにより、本明細書でより詳細に記載される条件下で、式(I)の非加熱化合物から失われるものと比較して、溶液に失われる金属MIIの量を少なくとも50重量%減少させることができる。上記熱処理化合物からの金属MIIの溶液への損失量の減少を少なくしたい場合には、上記温度は好適に低く、いくつかの実施形態では200℃未満であり得る。
【0164】
上記加熱は、200℃から600℃、又は225℃から550℃、又は250℃から500℃の範囲の加熱環境で、1分以上、又は5分以上、又は1時間以上行うことができる。上記化合物は、10時間以下、又は5時間以下、又は3時間以下、加熱環境中に置くことができる。上記熱処理化合物からの金属MIIの溶液への損失量の減少を少なくしたい場合には、上記時間は好適に短く、いくつかの実施形態では1分未満であり得る。
【0165】
上述したような加熱は、式(I)による化合物の焼成をもたらす。上記焼成は、式(II)による物質の形成をもたらすと考えられる。これにより、式(II)による化合物のaの値は、式(I)による対応する未処理化合物のxの値以下になる。上記焼成は、焼成の温度及び/又は時間に関して過剰でないことが好ましく、これは、焼成温度が3時間を超えて600℃を超えてはならないことを意味し、そうでない場合には、最適未満のリン酸塩結合性能が見出され得る。
【0166】
過剰な焼成は、式(II)からのΣcn/aの値を0.03未満へ減少させる。したがって、Σcn/aは、0.03より大きく、又は0.05より大きく、又は0.09より大きく、又は0.10より大きくすることができると考えられる。過剰な焼成はまた、スピネル結晶構造の形成をもたらし得るので、本開示の上記物質は、X線回折によってスピネル構造を示さないことが好ましい。スピネルは0.67のa値を有するので、式(II)の化合物は、0.66以下、又は0.5以下、より好ましくは0.3以下のa値を有することが好ましい。
【0167】
ある種の実施形態において、式(II)の化合物の焼成は、そこから物質が焼成によって得られ又は入手可能となるところの式(I)の化合物のリン酸塩結合容量と比較して、少なくとも10%高いリン酸塩結合容量を有する物質をもたらすことができる。
【0168】
焼成の程度を観察するための適切な方法は、105℃における結晶性表面水の損失パーセントの測定によるものである。これは、試料を周囲条件(2O℃、20%RH)で数日間貯蔵することにより平衡含水量に到達させて、当該試料を秤量し、次いで105℃で4時間加熱し、減少した重量の確定のために再秤量することによって測定され、百分率で表される。105℃で乾燥させると、表面に吸収された水(すなわち、非化学的に結合した水又は結晶表面上の水)が除去される。
【0169】
いくつかの実施形態においては、焼成後の上記混合金属化合物は、結晶体の2重量%未満、又は1.5重量%未満、又は1重量%未満の表面吸収水を有する。
【0170】
二価金属欠乏混合金属化合物の製造方法
いくつかの実施形態においては、式(I)の化合物又は式(II)の化合物を酸、キレート剤又はそれらの混合物で処理することによって混合金属化合物を得ることができ又は入手可能である。
【0171】
いくつかの実施形態においては、式(V)の化合物は、式(IV)の化合物を酸、キレート剤又はそれらの混合物と接触させることによって製造することができ、b)任意で、得られた化合物を熱処理に供する。
【0172】
本明細書に記載の他の混合金属化合物と同様に、式(III)又は(V)の化合物は、式(III)又は(V)の化合物及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物として提供することができる。
【0173】
いくつかの実施形態においては、拡張X線吸収微細構造(EXAF)解析によって決定された約2θ(オングストローム)のM-O結合距離を有する金属の酸化物-水酸化物を含む、二価の金属欠乏化合物を提供することができる。より具体的には、Mg Fe混合金属化合物に由来する欠乏化合物について、中心吸収鉄原子とその最近接酸素原子との間の距離は、1.994θ(第1シェル距離)である。中心吸収鉄原子とその最近接鉄原子との間の距離(M-O-M距離)は、3.045θ(第2シェル距離)である。M-O結合距離の想定される範囲は、1.5~2.5θの間であり、M-O-M距離の別の範囲は2~4θの間である。制御された条件下では、典型的なハイドロタルサイトXRDシグネチャを有する1未満の二価対三価のモル比を有する混合金属化合物を維持しながら、層状水酸化物構造又は熱処理された混合金属化合物などの上記混合金属化合物からより可溶性の金属を除去することが可能であり、それにより、例えばリン酸塩結合が改善又は維持され、リン酸塩結合反応中に二価又は三価の金属イオン(例えば、マグネシウムなど)の放出がより少ない金属欠乏混合金属化合物を生成する。これに加えて、又はこれに代えて、上記金属欠乏混合金属化合物を熱処理して、リン酸塩結合を増加させ、金属(例えば、マグネシウム)の放出をさらに減少させてもよい。上記金属欠乏混合金属化合物は、国際公開第99/15189号の混合金属化合物、国際公開第2007/0088343号に記載されているような式(I)の化合物、及び国際公開第2006/085079号パンフレットに記載されているような式(II)の化合物よりも優れたリン酸塩結合特性を有する。上記金属欠乏混合金属化合物は、マグネシウム欠乏であってもよい。マグネシウムが欠乏した混合金属化合物は、より可溶性の二価マグネシウムイオンの含有量がより低く、より可溶性の低い三価鉄の含有量がより多く、リン酸塩結合に使用される固体混合金属化合物について以前に報告されたものよりも有意に低い二価Mg対三価Feの比の範囲をもたらす。
【0174】
いくつかの実施形態においては、出発材料中の硫酸アニオンの代わりに炭酸塩を使用することができ、これにより、より清浄な化合物を得るのを助けることができ、すなわち、上記混合金属化合物の酸性化後に欠乏生成物中に残存する硫酸塩をより少量にすることができる。これは、炭酸アニオンの酸性化が水及び二酸化炭素の形成のみをもたらすためである。
【0175】
本開示の物質は、式(I)又は(IV)の化合物のうちの少なくとも1種を含有し得る。式(III)又は(V)の化合物などの二価金属欠乏化合物を調製するプロセスはまた、式(III)又は(V)の化合物に加えて他の材料の存在をもたらす場合があり、例えば、(混合とは対照的に)単一の金属化合物も当該プロセス中に形成され得る。 式(III)又は(V)の化合物を調製する方法は、出発物質である化合物の構造の変化をもたらし得る。したがって、式(III)又は(V)は、式(III)又は(V)の化合物の元素組成のみを記載し、構造の定義を提供しない。
【0176】
いくつかの実施形態においては、式(III)又は(V)の化合物は、化合物の結晶のサイズが大きくなるのを回避し、高い表面積を維持するために、エージング又は水熱処理なしで形成することができる。いくつかの実施形態においては、式III又はVの化合物は、合成後経路中に微粒子サイズ形態で維持することができ、これは良好なリン酸塩結合の維持を助けることができる。いくつかの実施形態においては、体積基準(d90)で90%の式III又はVの化合物が200ミクロン未満の粒径を有し、より好ましくは体積基準(d90)で90%の式III又はVの化合物が100ミクロン未満の粒径を有し、最も好ましくは体積基準(d90)で90%の式III又はVの化合物が50ミクロン未満の粒径を有する。
【0177】
欠乏剤は、HCI、H2SO4、クエン酸、EDTA、HNO3、酢酸及び硫酸アルミニウム[AI2(SO4)3]及びこれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態においては、酸又はキレート剤は、塩酸である。
【0178】
欠乏剤の濃度は、約0.01Mから約5Mの範囲であり得る。いくつかの実施形態においては、上記構造体は、0.01Mから5Mの濃度、又は、0.1Mから2M若しくは0.5Mから1.5Mの濃度の欠乏剤を使用して(例えば、マグネシウムなどで)欠乏化される。
【0179】
いくつかの実施形態においては、上記プロセスは、金属MIIの量を、未処理の式(IV)の化合物のそれと比較して、少なくとも1重量%減少させ、又は少なくとも2重量%、若しくは少なくとも3重量%、若しくは少なくとも4重量%、若しくは少なくとも5重量%、若しくは少なくとも6重量%、若しくは少なくとも7重量%、若しくは少なくとも8重量%、若しくは少なくとも9重量%減少させる。
【0180】
いくつかの実施形態においては、塩酸(HCI)による処理は、0.01Mから5Mの範囲、又は0.1Mから2Mの範囲、又は0.5Mから1.5Mの範囲の濃度のHCIを用いて行うことができる。
【0181】
いくつかの実施形態においては、上記処理は、少なくとも1分、又は2分、又は3分、又は4分、又は5分以上、15分以上、1時間以上の期間適用することができる。
【0182】
一実施形態においては、0<a≦0.4である式(IV)の化合物を、1時間以下、又は30分以下、又は15分以下で処理することができる。
【0183】
処理時間の最適値は、処理の条件、例えば出発物質の量、酸濃度、酸の種類、処理pH、所望の欠乏レベルなどに応じて変化し得る。より強い酸を使用すると処理時間は短くなるのに対し、より弱い酸強度で処理時間は増加する。弱すぎる酸強度は製造時間を増加させ、必要な酸の量を増加させるので、任意で、酸強度は弱くしすぎない(0.1M未満)。
【0184】
上述したような処理は、式(IV)による化合物又は式(I)による化合物又は式(II)による化合物からの二価金属イオンの還元をもたらす。その結果、処理化合物のaの値は、対応する未処理化合物のaの値以上となる。
【0185】
上記欠乏処理は、酸及び/又はキレート剤の濃度及び/又は曝露時間に関して、好ましくは過剰ではなく、これは、当該処理が2時間を超える処理を超えてはならないことを意味し、そうでない場合、最適未満のリン酸塩結合性能が見出され得る。
【0186】
pH=3未満の酸での処理(すなわち、平衡pH3に達するまで化合物を酸と十分な時間接触させ、次いで十分な時間(最初の添加の合計のため及びpHを一定に維持するために、例えば、30分間という時間を採用することができる。)、その平衡値で維持すること)により、aの値が0.98を超えて増加し、リン酸塩結合が有意に減少する。したがって、aは、0.99未満、より好ましくは0.95未満、さらにより好ましくは0.9未満、最も好ましくは0.85未満であることが好ましい。酸による過剰な処理は、リン酸塩結合性能又は調製収率の著しい低下を伴う上記化合物の完全な溶解をもたらし得るため、上記化合物は完全に溶解しないことが好ましい。
【0187】
pH 5以下の酸で処理すると、ハイドロタルサイトのXRD信号が完全に失われる。理論に束縛されるものではないが、pH5以下で得られた二価金属欠乏化合物は、結晶性ハイドロタルサイトから非結晶相への転移の結果であると考えられる。非結晶相は構造的に安定であるが、pH3以下のp値で得られると、三価金属イオンの放出も開始する。それゆえに、材料が欠乏する最適なpH範囲が存在する。pH5で得られた欠乏化合物は、典型的には0.85以下のa値を有するので、式(III)化合物は0.85以下、又は0.8以下、又は0.4以上、又は0.5以上、又は0.6以上、又は0.7以上のa値を有することができると考えられる。ある特定の実施形態においては、aの値が0.7以上であることは、aの値が0.7の欠乏化合物が、リン酸塩結合中の溶液中への二価金属の放出をおよそ50%減らすため、好ましい。同等のリン酸塩結合容量を仮定すると、50%少ないマグネシウムを含有するマグネシウム欠乏Mg Fe混合金属化合物(すなわち、3から4.5gの実施例A)の同等の1日平均用量は、血清マグネシウムを0.12から0.18mmol/lの間で増加させると予想される一方、欠乏のない同等の化合物を腎臓患者が摂取する際に使用する場合には、0.24から0.36mmol/lの増加が予想される。対照的に、正常に機能している腎臓を有する対象は、0.95mmol/lの平均ベースラインからみた欠乏化合物又は非欠乏化合物のいずれを摂取した場合であっても、血清マグネシウムの増加を認めないであろう。少量(例えば、0.12mmol/l未満の血清マグネシウムの増加をもたらす)のマグネシウム補充、又はさらに大量(例えば、0.24mmol/lを超える血清マグネシウムの増加をもたらす)のマグネシウム補充の制御された使用は、本明細書に記載の患者にとって有益であり得る。
【0188】
いくつかの実施形態においては、式(III)、(V)、(VI)及び/又は(VII)の二価金属欠乏化合物は、それの酸若しくはキレート剤での処理によって当該二価金属欠乏化合物が得られ又は入手可能となるところの未処理の出発化合物と比較して、標準的なリン酸塩結合法(試験法11a)に従って測定した場合において、少なくとも5%高いリン酸塩結合容量を有し、又は代表的な試験法(試験法11b又は方法11c)に従って測定した場合において、25%以下のリン酸塩結合容量の減少を有することができる。
【0189】
一実施形態においては、酸添加の程度を観察する方法は、複合ガラス電極(VWR6621759)を使用してpHメーター(Jenway3520)でpHを連続的に測定することによるものである。上記pHメーターは、測定前にpH4、7及び10の緩衝液で校正される。上記溶液のpHは、最小体積の酸及び/又はキレート剤溶液を使用して室温20+/-5℃で調整される。pH調整のために添加される総体積は、決して総体積の60%を超えない。
【0190】
一実施形態においては、上記化合物の二価金属欠乏を観察する方法は、金属酸化物含有量を測定することによるものであり、すなわち、この場合、MgO含有量の測定によれば上記化合物はマグネシウム欠乏である。これは、XRF(PW2400 Wavelength Dispersive XRF Spectrometer)により測定される。
【0191】
一実施形態においては、上記化合物の二価金属欠乏を観察する方法は、リン酸塩結合中に上記化合物から放出されたマグネシウム(又は他の二価金属)の測定によるものである。
【0192】
ある種の実施形態において、処理後のマグネシウム欠乏混合金属化合物は、28重量%未満、又は25重量%未満、又は20重量%未満のMgO含有量を有しうるが、0.5重量%未満のMgO含有量を有しない。
【0193】
リン酸塩はまた、水酸化物の置換による固体中のM(III)金属中心と、リン酸塩上の1つ又は2つの負に帯電した酸素イオンとの間の直接イオン相互作用を介して上記欠乏化合物に結合すると考えられる。最大のリン酸塩結合の増加及び/又はマグネシウム放出の減少は、そのpHがM(II)欠乏材料が由来する出発材料のpH緩衝領域内にある溶液から単離された化合物に関する。非常に低いpH(pH3以下)で単離された欠乏化合物は、より低いリン酸塩結合、より低い収率、及び三価カチオンのより顕著な溶解をもたらす一方で、高いpH値8又は9で単離された欠乏化合物は、出発物質のそれを上回ってリン酸塩結合を改善するか、又はより多くの二価金属の放出を示すには十分に欠乏していない。
【0194】
M(II)欠乏化合物によるリン酸塩除去の増加は、M(II)欠乏完成化合物が由来する混合金属化合物のpH緩衝能の増加と相関する。よって、M(II)欠乏化合物中の水酸化物(OH)基の存在は、式:MII
aMIII
1-a(OH)d、[MII
aMIII
1-a(OH)d](An-)c又は式(III)(V)(VII)(式中、1>a>0.4及び0<d<2である)などのリン酸塩を結合させるために好ましい。
【0195】
リン酸塩結合はM(II)欠乏固体の表面でも起こるので、表面積の量は、M(II)欠乏化合物が結合できるリン酸塩の量を決定する際の1つの重要な属性である。いくつかの実施形態においては、表面積は、10m2/gより大きくてもよく、又は50m2/gより大きくてもよく、又は100m2/gより大きくてもよく、又は250m2/gより大きくてもよい。
【0196】
いくつかの実施形態においては、二価金属欠乏化合物は、本明細書で上述したように適切な出発物質の塩酸による酸処理によって作製することができる。任意で、他の酸及びキレート剤を使用するなど、他の化学物質を使用して本開示の物質を調製することができる。任意で、スラリーの処理、上記化合物を含有する湿潤濾過ケーク、ウェットケーク、乾燥した化合物の粉砕された形態、粉砕されていない形態、あるいは、反応段階中にpHを制御するといったことでも、他の調製経路を用いてもよい。好ましくは、pH10未満であるがpH3以上であり、この範囲の間では、pH5が好ましい。任意で、共沈殿経路のレシピは、より少量の二価塩(すなわち、MgSO4)を使用することによって変更され得る。任意で、他の条件、例えば高温又は低温又は低圧条件を使用してもよい。
【0197】
出発原料は、出発原料の熱処理(焼成)によって調製してもよい。別法として、上記欠乏材料は、リン酸塩結合を改善するために、好ましくは500℃以下の温度で熱処理(焼成)してもよい。スピネル型化合物の形成を回避し、リン酸塩結合を最適化するために、500℃以下の焼成温度が好ましい。上記材料は、処理の副生成物である水溶性塩を除去するために洗浄することが好ましい。相当量のこれらの可溶性塩が単離された固体と混合されたままである場合、その後の固体は、そのリン酸塩結合挙動に悪影響を及ぼす可能性がある。上記材料は、後述するように、水溶性塩(水への溶解度が1g/リットル以上)の残存量が、乾燥後の固形混合金属化合物の15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満となるように洗浄することが好ましい。特に欠乏プロセス(例えば、HCIによる酸処理)により、欠乏処理の副生成物である二価金属の水溶性塩(例えば、MgCI2)が形成される。いくつかの実施形態においては、上記水溶性塩を除去するために、より多くの繰り返し洗浄サイクルが必要とされ得る。
【0198】
上記欠乏化合物を(濾過、遠心分離又はデカンテーションなどの任意の単離手段を用いて)単離し、洗浄した後、乾燥は、好ましくは低温で行われ(例えば、最高で120℃の生成物又はオーブン温度を提供し)、例えばオーブン乾燥、噴霧乾燥又は流動床乾燥によって行われる。
【0199】
任意で、過大粒子を除去するために、酸処理に先立って、粉砕及び/又はふるい分け及び/又は任意の他の適切な手法によって上記乾燥材料を分級してもよい。いくつかの実施形態においては、例えば、処理される材料を実質的に直径100μm以下の粒子に制限するために、上記乾燥材料を処理してもよい。いくつかの実施形態においては、ふるい分けによって測定した場合、10重量%未満(より好ましくは5重量%未満)の粒子の直径が106μmより大きい。いくつかの実施形態においては、ふるい分けによって測定される直径が106μmを超える粒子はない。
【0200】
上記乾燥材料は、必要な処理(例えば濃度0.01Mから5M、0.1から2M、又は0.5から1.5MのHCIによる、5分以上、15分以上、又は1時間以上の期間の処理)に直接供することができる。いくつかの実施形態においては、上記化合物は、1時間以下、又は30分以下、又は15分以下で処理される。
【0201】
任意で、湿潤濾過ケーク又はスラリー材料を直接処理に供してもよい。二価金属欠乏化合物を調製する例示的なプロセスを以下に提供する。
【0202】
すなわち、式(II):
Mll
1-aMIII
aObAn-
c.zH2O(II)(式中、aの値は0.2から0.4である)又は式(I):
Mll
1-aMIII
a(OH)2An-
c.zHO(l)(式中、0<a<0.4である)の化合物(20g)を取得して水(500ml)中でスラリー化するステップ、並びに、上記材料を、0.01Mから5M、0.1から2M、又は0.5から1.5Mの濃度の酸及び/又はキレート剤(例えばHCI)によって、3から9、4から8、又は5から7の範囲から選択される一定に維持されたpH値で60分間、30分間、又は15分間以下の期間維持するステップである。例えば、上記酸及び/又はキレート剤は1M HCIであり得る。次いで、上記スラリーを濾過し、水(200ml)で、又は200ml以上、若しくは600ml以上、若しくは3000ml以上の水で洗浄する。濾過又は遠心分離及び洗浄の後、乾燥は、好ましくは低温で行われ(例えば、最高で120℃の生成物温度を提供し)、例えばオーブン乾燥、噴霧乾燥又は流動床乾燥によって行われる。次いで、例えば、上記材料を実質的に直径100μm以下の粒子に制限するために、過大粒子は、粉砕によってサイズが縮小され、並びに/又は、ふるい分け及び/若しくは任意の他の適切な手法によって除去される。
【0203】
いくつかの実施形態においては、ふるい分けによって測定した場合、上記材料は、直径106μmより大きい粒子を10重量%未満若しくは5重量%未満含み、又は、直径106μmより大きい粒子を含まない。
いくつかの実施形態においては、上記処理は、酸処理化合物からの金属MIIの溶液への損失量の減少を任意の所望量もたらし、例えば、本明細書の以下に記載される試験を用いて金属MIIの損失を測定する場合において、未処理化合物からの損失と比較して、少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%の減少をもたらす。
【0204】
上記出発材料を作製するための、又は二価金属欠乏化合物を作製するための上述したプロセスはまた、他の材料を中間生成物及び/又は最終生成物中に生じさせる場合があり、例えば、単一の(混合とは対照的に)金属化合物が共沈殿又は欠乏プロセス中に形成される場合もある。
【0205】
混合金属化合物の配合
本明細書に記載の任意の混合金属化合物を1種以上の追加の成分又は医薬賦形剤と配合して、組成物、例えば顆粒、錠剤及び液体製剤を作製することができる。いくつかの実施形態においては、最終単位用量は、上記混合金属化合物の顆粒及び上記最終単位用量を構成する任意の他の材料を含むことができる。いくつかの実施形態においては、全体として、上記最終単位用量は、上述した定義を使用して、アルミニウムを含まなくてもよく、及び/又はカルシウムを含まなくてもよい。
【0206】
上述のように、上記固体混合金属化合物又は化合物群は、例えば国際公開第99/15189号に記載されているように、溶液から共沈殿し、続いて遠心分離又は濾過し、次いで乾燥、粉砕及びふるい分けすることによって適切に作製し得る。次いで、上記混合金属化合物を、組成物を作製するための配合プロセス(例えば湿式造粒プロセス)の一部として再び再湿潤させることができ、得られた顆粒を流動床で乾燥させることができる。上記流動床での乾燥度は、製剤(例えば錠剤)の所望の含水量を確定するために使用される。
【0207】
混合金属化合物及びそれを含有する製剤は、本明細書に記載の方法又は使用のための医薬の調製に使用することができる。上記化合物は、任意の適切な医薬組成物形態で製剤化することができるが、特に、経口投与に適した形態、例えば錠剤、カプセル剤などの固体単位用量形態で製剤化することができ、又は本明細書で以下に記載される液体製剤を含む液体(任意で水性の)懸濁液などの液体形態で製剤化することができる。しかしながら、体外投与またさらには静脈内投与に適合された剤形も可能である。適切な製剤は、従来の固体担体、例えばラクトース、デンプン若しくはタルク、又は液体担体、例えば水、脂肪油若しくは流動パラフィンを使用して既知の方法によって製造することができる。使用され得る他の担体としては、ゼラチン、デキストリン並びに大豆、小麦及びサイリウムシードタンパク質などの動物又は植物タンパク質に由来する材料;アカシア、グアー、寒天及びキサンタンなどのガム類;多糖類;アルギネート;カルボキシメチルセルロース;カラギーナン;デキストラン;ペクチン;ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマー;ゼラチン-アカシア複合体などのポリペプチド/タンパク質又は多糖複合体;マンニトール、デキストロース、ガラクトース及びトレハロースなどの糖;シクロデキストリンなどの環状糖;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどの無機塩;並びに、グリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン及びL-フェニルアラニンなどの2から12個の炭素原子を有するアミノ酸、が挙げられる。いくつかの実施形態においては、物質又は薬剤は、式(I)及び/又は式(II)の化合物又は化合物群の30重量%超、50重量%超を含むことができ、例えば、当該物質の最大95重量%又は90重量%を含むことができる。
【0208】
いくつかの実施形態においては、上記混合金属化合物は、1種以上の薬学的に許容される担体と共に単位用量で提供することができる。薬学的に許容される担体は、上記混合金属化合物がその投与を容易にするためにそれとともに製剤化されるところの任意の材料であり得る。担体は、固体、又は、通常は気体であるが圧縮されて液体を形成する材料を含む液体であってもよく、医薬組成物を製剤化する際に通常使用される担体のいずれを使用してもよい。いくつかの実施形態においては、組成物は、0.5重量%から95重量%の活性成分を含有することができる。薬学的に許容される担体という用語は、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを包含する。
【0209】
上記混合金属化合物が医薬組成物の一部である場合、上記混合金属化合物は、任意の適切な医薬組成物形態で製剤化することができ、例えば、粉末、顆粒、顆粒、小袋、カプセル、スティックパック、バトル、錠剤であるが特に経口投与に適した形態で製剤化することができ、例えば、錠剤、カプセルなどの固体単位用量形態、又は、液体懸濁液、特に水性懸濁液などの液体形態、又は、例えば、ゲル、咀嚼バー、分散剤、咀嚼可能な剤形若しくは食用小袋などの半固体製剤で製剤化することができる。食品への直接添加も可能であり得る。
【0210】
体外投与またさらには静脈内投与に適合した剤形も可能である。適切な製剤は、従来の固体担体、例えばラクトース、デンプン若しくはタルク、又は液体担体、例えば水、脂肪油若しくは流動パラフィンを使用して既知の方法によって製造することができる。使用され得る他の担体としては、ゼラチン、デキストリン並びに大豆、小麦及びサイリウムシードタンパク質などの動物又は植物タンパク質に由来する材料、アカシア、グアー、寒天、キサンタンなどのガム類;多糖類;アルギネート;カルボキシメチルセルロース;カラギーナン;デキストラン;ペクチン;ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマー;ゼラチン-アカシア複合体などのポリペプチド/タンパク質又は多糖複合体;マンニトール、デキストロース、ガラクトース及びトレハロースなどの糖;クロデキストリンなどの環状糖;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどの無機塩;グリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニンなどの炭素数2から12のアミノ酸、が挙げられる。
【0211】
錠剤崩壊剤、可溶化剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤、香味剤、pH調整剤、甘味料又は矯味剤などの補助成分も上記組成物に組み込み得る。適切な着色剤としては、赤色、黒色及び黄色酸化鉄、並びにFD&C染料、例えばEllis&Everardから入手可能なFD&C blue No.2及びFD&C red No.40が挙げられる。適切な香味剤としては、ミント、ラズベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、サクランボ及びグレープフレーバー並びにこれらの組み合わせが挙げられる。適切なpH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、酒石酸、塩酸及びマレイン酸が挙げられる。適切な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK及びタウマチンが挙げられる。適切な矯味剤としては、炭酸水素ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着剤又はマイクロカプセル化活性物質が挙げられる。
【0212】
いくつかの実施形態においては、混合金属化合物を唯一の有効成分として使用してもよく、又は別の有効成分と組み合わせて使用してもよい。例えば、混合金属化合物は、ビタミンD、例えば25-ヒドロキシビタミンD化合物、例えば25-ヒドロキシビタミンD3と組み合わせて、即時又は制御(例えば、持続的又は拡張的)放出形態で、使用され得る。
【0213】
以下に詳細に記載されるように、本明細書に開示される化合物のいずれも、顆粒の形態で調製することができる。いくつかの実施形態においては、粒状形態に含まれる場合、上記化合物の体積基準90%(d90)は、1000ミクロン未満の粒径を有することができ、例えば、上記化合物の体積基準90%(d90)は、750ミクロン未満の粒径を有することができ、例えば、上記化合物の体積基準90%(d90)は、500ミクロン未満の粒径を有することができ、例えば、上記化合物の体積基準90%(d90)は、250ミクロン未満の粒径を有することができる。
【0214】
顆粒の含水量は、顆粒中の非化学的に結合した水の含有量で表される。したがって、この非化学的に結合した水は、化学的に結合した水を除外する。化学的に結合した水は、構造水と呼ばれることもある。
【0215】
化学的に結合していない水の量は、顆粒を粉砕し、105℃で4時間加熱し、直ちに重量損失を測定することによって決定される。次いで、追い出された非化学的に結合した水の重量当量を、顆粒の重量百分率として計算することができる。
【0216】
非化学的に結合した水の量が顆粒の3重量%未満である場合、顆粒から形成された錠剤は脆くなり、非常に容易に崩壊する可能性がある。化学的に結合していない水の量が顆粒の10重量%を超える場合、顆粒及び顆粒から調製された錠剤の崩壊時間が増加し、リン酸塩結合速度の関連する低下を伴い、錠剤又は顆粒の貯蔵安定性が許容できないものになり、貯蔵時の崩壊につながる。式(I)中のzH2Oによって提供される水は、(粒状材料の重量に基づく)非化学的に結合した水の3から12重量%の一部を提供し得る。当業者は、標準的な化学的手法に基づいてzの値を容易に決定することができる。材料が提供されると、非化学的に結合した水の量も、本明細書に記載の手順に従って容易に決定することができる。
【0217】
顆粒は、少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%の無機リン酸結合剤を含むことができる。
【0218】
顆粒は、3から12重量%の非化学的に結合した水、又は5から10重量%の水を含むことができる。
【0219】
顆粒の残りの部分は、リン酸結合剤のための薬学的に許容される担体、主に賦形剤又は賦形剤のブレンドを含み、これが顆粒の残部を提供する。したがって、顆粒は、47重量%以下の賦形剤を含み得る。例えば、顆粒は、5から47重量%の賦形剤、又は10から47重量% の賦形剤、又は15から47重量%の賦形剤を含むことができる。
【0220】
適切には、顆粒の少なくとも95重量%が、ふるい分けによる測定で1180マイクロメートル未満の直径を有する。任意で、顆粒の少なくとも50重量%が、ふるい分けによる測定で710マイクロメートル未満の直径を有する。さらに、任意で、顆粒の少なくとも50重量%が、106から1180マイクロメートル、又は106から500マイクロメートルの直径を有する。さらに、任意で、顆粒の少なくとも70重量%が、106から1180マイクロメートル、又は106から500マイクロメートルの直径を有する。
【0221】
顆粒の重量中央粒径は、200から400マイクロメートルの範囲であり得る。
【0222】
より大きい顆粒は、許容できないほど遅いリン酸塩結合をもたらし得る。直径106マイクロメートル未満の顆粒の割合が大きすぎると、顆粒の流動性が悪いという問題につながる可能性がある。したがって、顆粒の少なくとも50重量%、又は少なくとも80重量%は、ふるい分けによる測定で、106マイクロメートルを超える直径を有することができると考えられる。
【0223】
顆粒に含まれ得る賦形剤の例としては、例えば、ラクトース、デンプン又はタルクなどの従来の固体希釈剤、並びにゼラチン、デキストリン及び大豆、小麦及びサイリウムシードタンパク質などの動物又は植物タンパク質に由来する材料;アカシア、グアー、寒天、キサンタンなどのガム類;多糖類;アルギネート;カルボキシメチルセルロース;カラギーナン;デキストラン;ペクチン;ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマー;ゼラチン-アカシア複合体などのポリペプチド/タンパク質又は多糖複合体;マンニトール、デキストロース、ガラクトース及びトレハロースなどの糖;シクロデキストリン等の環状糖;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどの無機塩;並びにグリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン及びL-フェニルアラニンなどの2から12個の炭素原子を有するアミノ酸、が挙げられる。
【0224】
本明細書における賦形剤という用語は、錠剤構造化剤又は接着剤、崩壊剤又は膨潤剤などの補助成分も含む。
【0225】
錠剤のための構造化剤の例としては、アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルトデクチン、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、アルギン酸ナトリウム及び水素化植物油が挙げられる。
【0226】
崩壊剤の例としては、架橋崩壊剤が挙げられる。例えば、適切な崩壊剤としては、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、高分子量ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウムジビニルベンゼンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)及び高分子量ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0227】
いくつかの実施形態においては、上記顆粒として、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドンとしても知られており、例えばBASFからKollidon CL-M(商標)として入手可能)を挙げられる。いくつかの実施形態においては、上記顆粒は、架橋ポリビニルピロリドンを1から15重量%、1から10重量%、2から8重量%含む。上記架橋ポリビニルピロリドンは、50マイクロメートル(すなわち、いわゆるB型架橋PVP)未満の造粒前のd 50重量メジアン粒径を有することができる。このような材料は、微粒子化クロスポビドンとしても知られている。これらのレベルの架橋ポリビニルピロリドンは、錠剤の良好な崩壊をもたらすが、いくつかの他の賦形剤と比較して無機リン酸塩結合剤のリン酸塩結合の阻害が少ない。架橋ポリビニルピロリドンの微粒子化されたサイズは、錠剤が崩壊するときに形成される粒子の粒状性及び硬度を低下させる。
【0228】
いくつかの実施形態においては、上記顆粒は、アルファ化デンプン(プレゲル化デンプンとしても知られる)を含むことができる。いくつかの実施形態においては、上記顆粒は、プレゲル化デンプンの5から20重量%、10から20重量%、12から18重量%を含む。これらのレベルのアルファ化デンプンは、使用中の錠剤の崩壊又はリン酸塩結合を妨げることなく、錠剤の耐久性及び凝集性を改善することができる。アルファ化デンプンは、完全にアルファ化することができ、1から15重量%の水分含有量及び100から250マイクロメートルの重量中央粒径を有する。例示的な材料は、Lycotab(商標)-Roquetteから入手可能な完全にアルファ化されたトウモロコシデンプンである。
【0229】
上記顆粒はまた、保存剤、湿潤剤、酸化防止剤、界面活性剤、発泡剤、着色剤、香味剤、pH調整剤、甘味料又は矯味剤を含み得る。適切な着色剤としては、赤色、黒色及び黄色酸化鉄、並びにFD&C染料、例えばEllis&Everardから入手可能なFD&C blue No.2及びFD&C red No.40が挙げられる。適切な香味剤としては、ミント、ラズベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、サクランボ及びグレープフレーバー並びにこれらの組み合わせが挙げられる。適切なpH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム(すなわち、重炭酸塩)、クエン酸、酒石酸、塩酸及びマレイン酸が挙げられる。適切な甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムK及びタウマチンが挙げられる。適切な矯味剤としては、炭酸水素ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物及び吸着剤が挙げられる。適切な湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム及びドキュセートナトリウムが挙げられる。適切な発泡剤又はガス発生剤は、重炭酸ナトリウムとクエン酸との混合物である。
【0230】
造粒は、
【0231】
i)リン酸塩と結合することができる固体の水不溶性無機化合物を1種以上の賦形剤と混合して均一混合物を生成するステップと、
【0232】
ii)適切な液体を上記均一混合物と接触させ、造粒機で混合して湿潤顆粒を形成するステップと、
【0233】
iii)任意で、上記湿潤顆粒をスクリーンに通して、上記スクリーンのサイズより大きい顆粒を除去するステップと、
【0234】
iv)上記湿潤顆粒を乾燥させて乾燥顆粒を提供するステップと、
【0235】
v)上記乾燥顆粒を粉砕及び/又はふるい分けするステップとを含む、工程によって実行し得る。
【0236】
好適には、上記造粒は湿式造粒によるものであり、
【0237】
i)上記無機固体リン酸結合剤を適切な賦形剤と混合して均一混合物を生成するステップと、
【0238】
ii)上記均一混合物に適切な液体を添加し、造粒機で混合して顆粒を形成するステップと、
【0239】
iii)任意で、上記湿潤顆粒をスクリーンに通して、上記スクリーンのサイズより大きい顆粒を除去するステップと、
【0240】
iv)上記顆粒を乾燥させるステップと、
【0241】
v)上記顆粒を粉砕及びふるい分けするステップとを含む。
【0242】
造粒に適した液体としては、水、エタノール及びそれらの混合物が挙げられる。水が好ましい造粒液である。
【0243】
上記顆粒は、単位用量として使用するために、錠剤を形成し又はカプセルへ組み込んで用いる前に、本明細書で前述のように所望の水分レベルまで乾燥される。
【0244】
固体単位用量形態はまた、放出速度制御添加剤を含み得る。例えば、上記混合金属化合物は、疎水性ポリマーマトリックス内に保持され、体液との接触時にマトリックスから徐々に浸出されるようにしもよい。別法として、上記混合金属化合物は、体液の存在下で徐々に又は急速に溶解する親水性マトリックス内に保持されてもよい。上記錠剤は、異なる放出特性を有する2以上の層を含み得る。上記層は、親水性、疎水性、又は親水性層と疎水性層との混合物であってもよい。多層錠において隣接する層は、不溶性のバリア層又は親水性の分離層によって分離されていてもよい。不溶性のバリア層は、不溶性ケーシングを形成するために使用される材料から形成されてもよい。親水性分離層は、上記分離層が溶解するにつれて錠剤コアの剥離層が露出するように、錠剤コアの他の層よりも可溶性の材料から形成され得る。
【0245】
適切な放出速度制御ポリマーとしては、ポリメタクリレート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アクリル酸ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、カラギーナン、酢酸セルロース、ゼインなどが挙げられる。
【0246】
水性液体と接触すると膨潤する適切な材料としては、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ヒドロキシプロピルセルロース、高分子量ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウム-ジビニルベンゼンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、架橋ポリビニルピロリドン及び高分子量ポリビニルアルコールを含む高分子材料が挙げられる。混合金属化合物を含む固体単位用量形態は、容器に一緒に包装してもよく、又は箔ストリップ、ブリスターパックなどで提供してもよく、例えば、患者の案内のために、それぞれの服用量に対して曜日をマークしてもよい。
混合金属化合物を含む固体単位用量形態は、容器に一緒に包装してもよく、又は箔ストリップ、ブリスターパックなどで提供してもよく、例えば、患者の案内のために、それぞれの服用量に対して曜日をマークしてもよい。
【0247】
例えば高齢患者又は小児患者の場合、患者のコンプライアンスを改善することができる製剤も必要とされている。粉末剤形の製剤は、水で希釈し、再構成し又は分散させることができる。
【0248】
少なくとも1種の混合金属化合物を、薬学的に許容される担体と会合させ、及び任意で、有効成分の製造から生じる副産物を含む任意の他の成分と会合させることを含む、本明細書に記載の医薬組成物の調製方法も提供される。
薬学的に許容される担体は、上記混合金属化合物がその投与を容易にするためにそれとともに製剤化されるところの任意の材料であり得る。担体は、固体、又は、通常は気体であるが圧縮されて液体を形成する材料を含む液体であってもよく、医薬組成物を製剤化する際に通常使用される担体のいずれを使用してもよい。いくつかの実施形態においては、組成物は、0.5重量%から95重量%の活性成分を含有することができる。薬学的に許容される担体という用語は、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを包含する。
【0249】
上記顆粒を単位用量組成物に錠剤化する前に、顆粒を圧縮して錠剤を形成する間に、顆粒の表面及びそれらの間に潤滑剤又は流動促進剤が分布するように、顆粒を潤滑剤又は流動促進剤とブレンドすることができる。
【0250】
必要とされる潤滑剤の最適量は、潤滑剤の粒径及び顆粒の利用可能な表面積に依存し得る。適切な潤滑剤としては、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウム並びにそれらの混合物が挙げられる。潤滑剤は、細粒化された形態、典型的には直径40マイクロメートル(典型的にはふるい分けによって確定される)を超える粒子がない形態で、顆粒に添加される。上記潤滑剤は、顆粒の0.1から0.4重量%、又は0.2から0.3重量%のレベルで顆粒に適切に添加される。より低いレベルは、錠剤ダイスの粘着又は詰まりをもたらし得る一方で、より高いレベルは、リン酸塩結合の速度を低下させ得るか、又は錠剤崩壊を妨げ得る。ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の塩は、潤滑剤として使用することができる。潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。脂肪酸などのいくつかの潤滑剤は、錠剤のコーティング層において孔食及び完全性の喪失をもたらす。これは、コーティング層が乾燥するにつれて上記潤滑剤が部分的に溶融することから生じ得ると考えられる。したがって、いくつかの実施形態においては、上記潤滑剤は55℃を超える融点を有する。
【0251】
いくつかの実施形態において、錠剤は、包装及び流通の間に必要とされる取り扱いのために必要な破砕強度を有する錠剤を形成するために、顆粒を高圧下で圧縮することによって調製することができる。造粒粉末混合物から形成された顆粒の使用は、貯蔵ホッパーから打錠機までの流動性を改善し、それはひいては錠剤加工の効率に恩恵をもたらす。錠剤に使用される無機リン酸結合剤は、典型的には、本明細書で詳細に上述したように、それらの所望の粒径において流動性が乏しい場合がある。錠剤は、錠剤の約50重量%以上の高レベルの無機リン酸結合剤を有することが望ましいので、無機リン酸結合剤は、錠剤形成前に顆粒に形成してもよい。微粉末は、ホッパー、フィードシュー又はダイス内で凝集又は「bridge(隙間に詰まる)」しやすく、したがって、均一な重量又は均一な圧縮の錠剤は容易に得ることができない。たとえ微粉末を十分な程度に圧縮することが可能であったとしても、空気が捕捉されて圧縮される可能性があり、これは排出時に錠剤の割れにつながる可能性がある。顆粒の使用は、これらの問題を克服するのに役立つ。造粒の別の利点は、微粉末からではなく顆粒から調製された場合の最終錠剤のかさ密度の増加であり、最終錠剤のサイズを減少させ、患者のコンプライアンスの可能性を改善する。
【0252】
いくつかの実施形態においては、錠剤は、より大きな用量の嚥下を補助するために、円形であってもよく、又は、一般に、ボーラス又はトルペド形状(二重凸長方形形状の錠剤としても知られる)、すなわち、細長い寸法を有する形状であってもよい。これは、例えば、丸みを帯びた端部を有する円筒の形状、又は、1つの寸法が楕円形かつ直交する寸法が円形若しくは両方が楕円形である形状であってもよい。全体形状のうちの1箇所以上を幾分か平坦化することも可能である。
【0253】
錠剤が「ベリーバンド」を備えた錠剤の形状である場合、ベリーバンドの幅は2mm以上であることが企図される。より小さいベリーバンドは、錠剤の耐水性コーティングの不十分な被覆又はチッピング又は完全性の喪失をもたらし得る。
【0254】
いくつかの実施形態においては、錠剤は、Holland C50錠剤硬度試験機を用いて測定したとき、5から30kgfの硬度を有することができる。
【0255】
いくつかの実施形態においては、錠剤を形成し終えたら、錠剤に耐水コーティングを施すことができる。
【0256】
耐水コーティングは、通常の医薬コーティングプロセス及び機器のいずれかによって錠剤に適用され得る。例えば、錠剤は、スプレーノズル若しくはスプレーガン又は他の噴霧器タイプを備える流動床装置(例えば、「Wurster」タイプの流動床乾燥機)コーティングパン(回転、側面通気、コンベンションなど)によってコーティングされてもよく、又は、ディッピング法及びNiro PharmaSystemsのSupercellタブレットコーターを含むより最近の手法によってコーティングされてもよい。利用可能な機器のバリエーションには、ノズル及び空気の入口及び出口のサイズ、形状、位置、空気の流れパターン、並びに、器具使用の程度が含まれる。加熱された空気は、錠剤を同時に乾燥しながら連続的な噴霧を可能にする方法において、噴霧された錠剤を乾燥させるために使用され得る。不連続又は断続的な噴霧も使用され得るが、一般に、それはより長いコーティングサイクルを要する。ノズルの数及び位置は、コーティング操作により必要に応じて変えることができ、ノズルは、好ましくは、ベッドに対して垂直又はほぼ垂直に向けられるが、必要に応じて、他の照準方向を採用することができる。パンは、複数の動作速度から選択される速度で回転させることができる。コーティング組成物を錠剤に適用することができる任意の適切なシステムを使用することができる。本明細書においては、実質的に任意の錠剤がコーティングされる錠剤として許容される。「錠剤」という用語は、錠剤、ペレット又はピルを含み得る。錠剤は、錠剤の何らかの動きを伴うシステム、例えば、流動床乾燥機又はサイドベントコーティングパン、これらの組み合わせなどの流動床、において効果的にコーティングされるように物理的及び化学的に十分に安定な形態であり得る。錠剤は、直接、すなわちその表面を調整するためのサブコートなしで、コーティングされ得る。もちろん、サブコート又はトップコートを使用してもよい。必要に応じて、同じ又は類似のコーティング塗布システムを、第1若しくは第2のコーティング塗布、又は、それ以上のコーティング塗布の両方に使用することができる。コーティング組成物は、その構成成分の物理的特性に従って調製され、すなわち、可溶性材料は溶解され、不溶性材料は分散される。用いられる混合の種類もまた、成分の特性に基づく。可溶性材料には低せん断液体混合が使用され、不溶性材料には高せん断液体混合が使用される。通常、コーティング配合物は、コロイド状ポリマー懸濁液、及び顔料の懸濁液又は溶液(例えば、赤色酸化物又はキノリン黄色染料)の2つの部分からなる。これらは別々に調製し、使用前に混合する。
【0257】
広範囲のコーティング材料、例えば、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、スチレンとアクリレートとのコポリマー、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸とエチルアクリレートとのコポリマー、メチルメタクリレートとメタクリレートとのコポリマー、メタクリレートと第三級アミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、エチルアクリレートメチルメタクリレートと第四級アミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせを使用することができる。メタクリレートコポリマーの塩、例えばブチル化メタクリレートコポリマー(Eudragit EPOとして市販されている)の塩を使用することができる。
【0258】
上記コーティングは、好適には、コーティングされた錠剤の0.05から10重量%、又は0.5重量%から7重量%存在する。上記コーティング材料は、コーティング材料全体に分散し、錠剤上のコーティング層の均一な着色をもたらし、感じのよい均一な外観を与える赤色酸化鉄顔料(Fe2O3)(乾燥したコーティング層の1重量%以上、又は2重量%以上)と組み合わせて使用することができる。
【0259】
錠剤コアを貯蔵時の湿り損失又は湿気侵入から保護することに加えて、耐水コーティング層はまた、口の中で錠剤が急速に崩壊することを防止するのに役立ち、錠剤が胃に到達するまでこれを遅延させる。この目的を念頭において、上記コーティング材料は、口内に見られるようなアルカリ溶液中では低い溶解度を有し、しかし中性又は酸性溶液中ではより可溶性であることが好ましい。想定されるコーティングポリマーとしては、メタクリレートコポリマーの塩、特にブチル化メタクリレートコポリマー(Eudragit EPOとして市販されている)の塩が挙げられる。上記コーティング層は、コーティングポリマーの少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%を含むことができる。
【0260】
コーティングされた錠剤の水分損失また吸収は、顆粒の非化学的に結合した含水量の測定について本明細書で詳細に上述したように、適切に測定される。調製したばかりのコーティング錠のセットから、一部のものは調製直後に非化学的に結合した水について測定し、他のものは上に詳述したように貯蔵後に測定する。
【0261】
いくつかの実施形態においては、錠剤は、水不溶性無機固体リン酸結合剤を薬学的に許容され得る賦形剤及び場合により任意の他の成分と共に造粒し、圧縮によって顆粒から錠剤を形成し、任意で、そのようにして形成された錠剤に耐水性コーティングを施すことによって作製することができる。
【0262】
いくつかの実施形態においては、顆粒などの医薬組成物は、カプセルで提供することができる。例えば、硬ゼラチンカプセルを用いることができる。他の適切なカプセルフィルムも同様に使用することができる。
【0263】
ヒト成人投与用の錠剤は、例えば、1mgから5g、又は10mgから2g、又は100mgから1g、例えば150mgから750mg、200mgから750mg、又は250mgから750mgの水不溶性無機固体混合金属化合物を含むことができる。
【0264】
いくつかの実施形態においては、単位用量は、少なくとも200mgの水不溶性固体無機混合金属化合物を含むことができる。いくつかの実施形態においては、単位用量は、少なくとも250mg、少なくとも300mg、少なくとも500mg、少なくとも700mg、少なくとも750mgの水不溶性固体無機混合金属化合物を含むことができる。いくつかの実施形態においては、単位用量は、200mg(±20mg)、250mg(±20mg)又は300mg(±20mg)の水不溶性固体無機混合金属化合物を含むことができる。単位用量が錠剤である場合、単位用量の重量は任意のコーティングを含む。
【0265】
錠剤形態は、容器に一緒に包装してもよく、又は箔ストリップ、ブリスターパックなどで提供してもよく、例えば、患者の案内のために、それぞれの服用量に対して曜日をマークしてもよい。
【0266】
開示されている上記混合金属化合物のいずれも、ヒト若しくは動物において、又は、ヒト若しくは動物に対する医薬品として使用するためのものであり得る。開示された混合金属化合物のいずれも、本明細書に記載の状態又は疾患の治療又は治療法において動物又はヒトに使用するための医薬品の製造に使用することができる。
【0267】
本明細書で論じられるように、混合金属化合物及びその製剤は、25℃/60RH及び30℃/65RHで測定される少なくとも12ヶ月の期間にわたって安定である錠剤で提供することができる。より極端な保存条件下(40℃/75RH)では、保存安定性は少なくとも6ヶ月であり得る。
【0268】
上記混合金属化合物は、液体製剤である組成物の形態で使用することもできる。本明細書で使用するための混合金属化合物は、水不溶性無機混合金属化合物を含有する液体製剤の形態で使用することもできる。液体剤形は、嚥下困難な対象に有用な投与手段を提供することができる。特に医薬品の分野では、投与の容易さはまた、最適な患者コンプライアンスを確保するのに役立ち得る。さらに、液体形態は、連続的に可変の用量量を投与することを可能にする。
【0269】
第1の態様では、液体製剤は、
(i)本明細書に記載の水不溶性混合金属化合物、
(ii)キサンタンガム、及び
(iii)
(a)ポリビニルピロリドン、
(b)ローカストビーンガム及び
(c)メチルセルロースのうちの少なくとも1つ、を含み、
上記液体製剤が少なくとも4kGyの量の電離放射線で照射されている。
【0270】
上記液体製剤は、不溶性混合金属化合物、例えば、鉄(III)及びアルミニウムから選択される少なくとも1種の三価金属並びにマグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタン及びセリウムから選択される少なくとも1種の二価金属を含有するものを送達するための担体系を提供する。
【0271】
上記液体製剤は、任意で、油性担体の使用が回避される系を提供する。そのような担体は、高い相対発熱量という欠点を有する可能性がある。そのような高発熱量は、一般に望ましくないと考えられ、食事のカロリー制限中の対象及び/又は上記液体製剤を長期間消費するかもしれない対象には特に適していない。
上記液体製剤は、高負荷の混合金属化合物の送達を可能にするという点でさらに有利である。これは、決められた量の混合金属化合物を送達するのに必要な生成物の体積が許容可能な量内に維持されるという点で有利である。このような高負荷の使用は、流体摂取量を制御することを望む、又はそれを必要とする対象にとって特に有利である。そのような群は、通常、消費する液体の量を制限しなければならない透析患者である。どの水性液体用量製剤も、患者が消費する液体の体積に寄与するので、液体の体積は最小限に保たれなければならない。
【0272】
上記液体製剤は、保存剤成分の添加を必要としない保存液体組成物を提供するという点でさらに有利である。懸濁液材料の特定の組み合わせの選択及び特定の放射線量の選択により、安定で保存された液体製剤が提供され得る。目的の濃度範囲(例えば、約10%w/v)の非緩衝水性系中の混合金属化合物は、比較的高いpH(約9.2から9.4)を提供する。高いpHは、微生物制御に有効な濃度及びヒト集団における組成物での使用に安全なレベルで、既知の市販の防腐剤を使用することを許さない。化学的保存のためには、製剤のpHは、ヒト集団において安全な濃度で防腐剤を使用することを可能にするために、約8.2以下に制限されなければならない。上記防腐剤は、pH8.2より上でいくらかの効能を有するかもしれないが、例えば貯蔵時においては、製剤のpH上昇のマージンはほとんどない。上記混合金属化合物構造からマグネシウムを放出しなければ、pHを大幅に低下させること、すなわち約pH8.0未満にすることはできない。これは、上記混合金属化合物の構造を変化させる効果があり、また、上記混合金属化合物のリン酸塩結合性能などの特性を損なう可能性がある。
【0273】
上記液体製剤に利用される上記混合金属化合物は、本明細書に記載の任意の混合金属化合物、例えば、鉄(III)及びアルミニウムから選択される少なくとも1種の三価金属並びにマグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタン及びセリウムから選択される少なくとも1種の二価金属を含有するものであり得る。例えば、上記混合金属化合物は、少なくとも鉄(III)と、少なくともマグネシウムとを含むことができる。任意で、上記混合金属化合物は、カルシウムを含まなくてもよく、又は実質的に含まなくてもよい。
【0274】
上記液体製剤の物理的安定性は、例えば微粒子化又は湿式粉砕によって、上記混合金属化合物の粒径を、例えばd50平均粒径で、10μm未満、又は約2から10μmの範囲、又は約2から7μmの範囲、又は5μmに減少させることによって改善され得る。
【0275】
上記液体製剤に組み込む前に、上記混合金属化合物を乾燥させることによって、上記液体製剤の物理的安定性をさらに改善することもできる。
【0276】
一態様では、上記混合金属化合物は、液体製剤中に8から12w/v、例えば約10w/vの量で存在する。
【0277】
上記混合金属化合物は、1.6g/ml超又は1.9g/ml超の粒子密度(方法20に従って測定)を有し得る。さらに、上記混合金属化合物の粒子密度と上記液体製剤(典型的には成分(ii)及び成分(iii)を含む)の流体の粒子密度の間の差は、0.2g/mlより大きくすることができる。
【0278】
本明細書に記載されるように、上記液体製剤は、少なくとも4kGyの量の電離放射線で照射される。上記液体製剤には、少なくとも6kGyの量、例えば少なくとも8kGyの量、又は例えば少なくとも10kGyの量の電離放射線を照射することができる。任意で、上記液体製剤は、20kGy以下の量、例えば15kGy以下の量、例えば12kGy以下の量、又は10kGy以下の量の電離放射線で照射され得る。上記液体製剤は、1から15kGy、例えば2から14kGy、例えば4から12kGy又は6から10kGyの量の電離放射線で照射され得る。他の態様では、液体製剤は、4から20kGyの量、例えば4から15kGyの量、例えば4から12kGyの量、又は4から10kGyの量の電離放射線で照射されたものであり得る。任意で、上記液体製剤は、6から20kGyの量、例えば6から15kGyの量、例えば6から12kGyの量、又は6から10kGyの量の電離放射線で照射されている。
【0279】
所望のレベルの照射を提供するために、任意の適切なイオン化照射源を使用することができる。電子ビーム、ガンマ及びX線照射が好適であると考えられる。
【0280】
キサンタンガムは、異なる単糖類、マンノース、グルコース及びグルクロン酸で構成される天然アニオン性バイオ多糖類である。それは、酵素による分解に耐性を有する他の一般的な天然ポリマーを超える利点を有する。キサンタンガムを使用する懸濁液は、一旦降伏応力を超えるとせん断減粘、すなわちせん断入力の増加に伴って粘度が低下するという利点を有する。したがって、沈降が起こる場合、せん断入力を適用して(例えば、液体容器の振盪によって)粘度を低下させることにより沈降した固体の再分散を助けることができる。本明細書で論じられるように、上記液体製剤はキサンタンガムを含有する。当業者は、キサンタンガムが、本明細書に記載の1種以上の目標を達成するのに十分な任意の適切な量で存在し得ることを理解するであろう。
【0281】
一態様では、キサンタンガムは、上記液体製剤の重量に基づいて、10重量%以下の量、又は7重量%以下の量、又は5重量%以下の量、又は3重量%以下の量、又は2重量%以下の量、又は1.5重量%以下の量、又は1重量%以下の量、又は0.8重量%以下の量、又は0.6重量%以下の量、又は0.5重量%以下の量で存在する。
【0282】
一態様では、キサンタンガムは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01重量%以上の量、又は0.02重量%以上の量、又は0.03重量%以上の量、又は0.05重量%以上の量、又は0.08重量%以上の量、又は0.1重量%以上の量、又は0.2重量%以上の量、又は0.3重量%以上の量で存在する。
【0283】
一態様では、キサンタンガムは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01から10重量%の量、又は0.02から7重量%の量、又は0.03から5重量%の量、又は0.05から3重量%の量、又は0.08から2重量%の量、又は0.1から1重量%の量、又は0.2から0.8重量%の量、又は0.2から0.6重量%の量、又は0.2から0.5重量%の量、又は0.3から0.5重量%の量で存在する。
【0284】
本明細書で論じられるように、上記液体製剤は、(a)ポリビニルピロリドン、(b)ローカストビーンガム、及び(c)メチルセルロースのうちの少なくとも1種を含有する。少なくとも、列挙された成分のうちの1種が存在し得ること、列挙された成分のうちの2種が存在し得ること、又は列挙された成分の3種すべてが存在し得ること、が当業者によって理解されよう。列挙された1種、2種又は3種の成分は、本明細書に記載の1以上の目標を達成するのに十分な任意の適切な量で存在してもよい。
【0285】
一態様において、上記液体製剤はポリビニルピロリドンを含有する。一態様において、上記液体製剤はローカストビーンガムを含有する。一態様において、上記液体製剤はメチルセルロースを含有する。一態様において、上記液体製剤はポリビニルピロリドン及びローカストビーンガムを含有する。一態様において、上記液体製剤はポリビニルピロリドン及びメチルセルロースを含有する。一態様において、上記液体製剤は、ローカストビーンガム及びメチルセルロースを含有する。一態様では、上記液体製剤は、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びメチルセルロースを含む。
【0286】
ローカストビーンガムは、高分子量の親水性多糖類である。これは非イオン性であり、したがって、上記混合金属化合物に結合することによってリン酸塩と競合する可能性は低い。
【0287】
一態様では、成分(iii)は、上記液体製剤の重量に基づいて、10重量%以下の量、又は7重量%以下の量、又は5重量%以下の量、又は3重量%以下の量、又は2重量%以下の量、又は1.5重量%以下の量、又は1重量%以下の量、又は0.8重量%以下の量、又は0.6重量%以下の量、又は0.5重量%以下の量で存在する。上記の各量は、(a)ポリビニルピロリドン、(b)ローカストビーンガム、及び(c)メチルセルロースを合わせた総量を指すことが理解されよう。
【0288】
一では、ポリビニルピロリドンは、上記液体製剤の重量に基づいて、10重量%以下の量、又は7重量%以下の量、又は5重量%以下の量、又は3重量%以下の量、又は2重量%以下の量、又は1.5重量%以下の量、又は1重量%以下の量、又は0.8重量%以下の量、又は0.6重量%以下の量、又は0.5重量%以下の量で存在する。
【0289】
一態様では、ローカストビーンガムは、上記液体製剤の重量に基づいて、10重量%以下の量、又は7重量%以下の量、又は5重量%以下の量、又は3重量%以下の量、又は2重量%以下の量、又は1.5重量%以下の量、又は1重量%以下の量、又は0.8重量%以下の量、又は0.6重量%以下の量、又は0.5重量%以下の量で存在する。
【0290】
一態様では、メチルセルロースは、上記液体製剤の重量に基づいて、10重量%以下の量、又は7重量%以下の量、又は5重量%以下の量、又は3重量%以下の量、又は2重量%以下の量、又は1.5重量%以下の量、又は1重量%以下の量、又は0.8重量%以下の量、又は0.6重量%以下の量、又は0.5重量%以下の量で存在する。
【0291】
一態様では、成分(iii)は、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01重量%以上の量、又は0.02重量%以上の量、又は0.03重量%以上の量、又は0.05重量%以上の量、又は0.08重量%以上の量、又は0.1重量%以上の量、又は0.2重量%以上の量、又は0.3重量%以上の量で存在する。上記の各量は、(a)ポリビニルピロリドン、(b)ローカストビーンガム、及び(c)メチルセルロースを合わせた総量を指すことが理解されよう。
【0292】
一態様では、ポリビニルピロリドンは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01重量%以上の量、又は0.02重量%以上の量、又は0.03重量%以上の量、又は0.05重量%以上の量、又は0.08重量%以上の量、又は0.1重量%以上の量、又は0.2重量%以上の量、又は0.3重量%以上の量で存在する。
【0293】
一では、ローカストビーンガムには、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01重量%以上の量、又は0.02重量%以上の量、又は0.03重量%以上の量、又は0.05重量%以上の量、又は0.08重量%以上の量、又は0.1重量%以上の量、又は0.2重量%以上の量、又は0.3重量%以上の量で存在する。
【0294】
一態様では、メチルセルロースは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01重量%以上の量、又は0.02重量%以上の量、又は0.03重量%以上の量、又は0.05重量%以上の量、又は0.08重量%以上の量、又は0.1重量%以上の量、又は0.2重量%以上の量、又は0.3重量%以上の量で存在する。
【0295】
一態様では、成分(iii)は、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01から10重量%の量、又は0.02から7重量%の量、又は0.03から5重量%の量、又は0.05から3重量%の量、又は0.08から2重量%の量、又は0.1から1重量%の量、又は0.2から0.8重量%の量、又は0.2から0.6重量%の量、又は0.2から0.5重量%の量、又は0.3から0.5重量%の量で存在する。上記の各量は、(a)ポリビニルピロリドン、(b)ローカストビーンガム、及び(c)メチルセルロースを合わせた総量を指すことが理解されよう。
【0296】
一態様では、ポリビニルピロリドンは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01から10重量%の量、又は0.02から7重量%の量、又は0.03から5重量%の量、又は0.05から3重量%の量、又は0.08から2重量%の量、又は0.1から1重量%の量、又は0.2から0.8重量%の量、又は0.2から0.6重量%の量、又は0.2から0.5重量%の量、又は0.3から0.5重量%の量で存在する。
【0297】
一態様では、ローカストビーンガムは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01から10重量%の量、又は0.02から7重量%の量、又は0.03から5重量%の量、又は0.05から3重量%の量、又は0.08から2重量%の量、又は0.1から1重量%の量、又は0.2から0.8重量%の量、又は0.2から0.6重量%の量、又は0.2から0.5重量%の量、又は0.3から0.5重量%の量で存在する。
【0298】
一態様では、メチルセルロースは、上記液体製剤の重量に基づいて、0.01から10重量%の量、又は0.02から7重量%の量、又は0.03から5重量%の量、又は0.05から3重量%の量、又は0.08から2重量%の量、又は0.1から1重量%の量、又は0.2から0.8重量%の量、又は0.2から0.6重量%の量、又は0.2から0.5重量%の量、又は0.3から0.5重量%の量で存在する。
【0299】
任意で、上記液体製剤の嗜好性は、1種以上の甘味料(単独で、又はソルビトールと組み合わせて)及び/又は香味料の添加によって改善され得る。例えば、アセスルファムK/アスパルテーム、キシリトール、タウマチン(タリン)及びサッカリンなどの甘味料、並びに、バタースコッチ(Butterscotch)、カラメル(Caramel)、バニラ(Vanilla)、マイルドペパーミント(Mild peppermint)、ストロベリー(Strawberry)などの香味料を使用してもよい。
【0300】
上記液体製剤中のキサンタンガム及び成分(iii)(すなわち(a)ポリビニルピロリドン(b)ローカストビーンガム及び(c)メチルセルロースの少なくとも1種)の絶対量は、本明細書のある任意の実施形態において定義される。キサンタンガムと成分(iii)との比は、本明細書に記載の絶対量内の任意の適切な比であり得る。一態様では、キサンタンガム及び成分(iii)は、2:1から1:2の比で存在する。又は、キサンタンガム及び成分(iii)は、約1:1の比で存在する。
【0301】
上記液体製剤が少なくともポリビニルピロリドンを含む場合、上記液体製剤は、(ii)キサンタンガム及び(iii)ポリビニルピロリドンを含むことができ、キサンタンガム及びポリビニルピロリドンは約2:1の比で存在する。この態様では、任意で、上記液体製剤に少なくとも8kGyの量の電離放射線が照射されている。
【0302】
上記液体製剤が少なくともローカストビーンガムを含む場合、任意で、上記液体製剤は、(ii)キサンタンガム及び(iii)ローカストビーンガムを含み、キサンタンガム及びローカストビーンガムは約1:1の比で存在する。この態様では、上記液体製剤は、任意で、少なくとも6kGyの量の電離放射線で照射されている。
【0303】
上記液体製剤が少なくともメチルセルロースを含む場合、任意で、上記液体製剤は、(ii)キサンタンガム及び(iii)メチルセルロースを含み、キサンタンガム及びメチルセルロースは約1:1の比で存在する。この態様では、任意で、上記液体製剤に少なくとも10kGyの量の電離放射線が照射されている。
【0304】
以下の液体製剤が企図される。
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
液体製剤の1つのタイプは、
(i)鉄(III)及びアルミニウムから選択される少なくとも1種の三価金属と、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ランタン及びセリウムから選択される少なくとも1種の二価金属とを含有する混合金属化合物であって、任意で、ファーマゲートである混合金属化合物と、
(ii)上記液体製剤全体に基づいて0.3から0.5重量%の量のキサンタンガムと、
(iii)上記液体製剤全体に基づいて0.3から0.5重量%の量のローカストビーンガムと、を含み、
上記液体製剤は、少なくとも4kGy、例えば4から10kGy、例えば少なくとも6kGy、例えば6から10kGyの量の電離放射線で照射されている。
【0309】
上記液体製剤は、1種以上のさらなる成分を含有し得る。一態様では、上記液体製剤は医薬組成物であり、(iv)1種以上の薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤、希釈剤又は担体をさらに含む。
【0310】
一態様では、上記液体製剤は湿潤剤を実質的に含まない。多くの不溶性薬物は、例えば薬物を分散させるために湿潤剤を必要とし、又は製剤中に気泡が含まれるのを防ぐために消泡剤を必要とする。上記混合金属化合物が1.5から2.5の間のマグネシウム-鉄比を有し、炭酸アニオンを含有する場合、湿潤剤の除外は任意である。「湿潤剤を実質的に含まない」とは、上記液体製剤が、10重量%以下の量、又は1重量%以下の量、又は0.5重量%以下の量、又は0.3重量%以下の量、又は0.22重量%以下の量、又は0.1重量%以下の量、又は0.05重量%以下の量、又は0.02重量%以下の量、又は0.01重量%以下の量、又は0.005重量%以下の量、又は0.001重量%以下の量、又は0.0001重量%以下の量、又は液体製剤の重量に基づいて測定できない量の湿潤剤を含有することを意味する。
【0311】
上記液体製剤の別の態様は、賦形剤の組み合わせが、上記混合金属化合物成分に起因する口の中の「砂のような感覚」を防止する効果を有することである。
【0312】
小袋は、液体製剤を含む単回投与製剤用の容器の便利な形態であり、その包装材料が照射に耐えるように選択され得るというさらなる利点を有する。微生物安定性製剤の長期使用の必要性を回避するだけのために、単回使用に適した小袋を選択することができる。これは、防腐剤を混合金属化合物と組み合わせて使用することが禁止的であるためである。別法として、原材料を照射してもよいが、無菌性を確保するためには、その後に続く製剤構成及び包装環境から微生物及び細菌の汚染源を除去しなければならない。したがって、この方法は、あまり好ましくはないが、本明細書で使用するための液体製剤を製造する方法の範囲内であることが依然として企図される。
【0313】
上記液体製剤は、製剤の調製後5日以内、又は2日以内、又は1日以内、又は液体製剤の調製直後に照射することができる。当業者には、原材料の初期の微生物及び真菌の含有量並びに製剤調製物(すなわち、照射前)の清浄度は、微生物及び真菌の汚染を最小限に抑えるようなものであることが理解されよう。
【0314】
照射に対する耐性を示す小袋などの包装に使用するためのポリマーとしては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリウレタン、PVC、シリコーン、ナイロン、ポリプロピレン(照射グレード)及びフルオロプラスチックが挙げられる。
【0315】
金属箔が小袋の構造材料として使用される場合、例えば、小袋内容物への浸出又は小袋内容物との反応を回避するために材料を選択するときに注意を払わなければならず、あるいは、浸出を回避するために適切なポリマーでコーティングされなければならない。
【0316】
任意の実施形態は、キサンタンガム(0.35%w/v)とローカストビーンガム(0.35%w/v)との組み合わせに基づく液体製剤であって、線量レベル(6kGy)での照射によって保存される液体製剤を含む。別の実施形態は、PVP(0.5%w/v)とキサンタンガム(1.0%w/v)との組み合わせに基づく液体製剤であって、線量レベル(8kGy)での照射によって保存される液体製剤である。別の実施形態は、メチルセルロースとキサンタンガムとの組み合わせに基づく液体製剤であって、線量レベル(10kGy)での照射によって保存される液体製剤である。これらの製剤のそれぞれは、任意で、6%w/vの濃度のソルビトールを含むことが企図される。
【0317】
降伏応力を有する液体製剤は、液体製剤内の固体を理論上永久に懸濁する能力を有する。上記液体製剤は、製造中に取り扱うことができ、使用中には容器から注ぐ及び/又は搾り出すことができなければならないので、降伏値は19Paを超えるべきではない。もちろん、例えば、製剤を小袋から搾り出す場合には、より高い降伏応力値が許容され得るが、(患者の嗜好性及び/又は質感を維持するために)その値は任意で30 Pa未満に制限される。
【0318】
上記液体製剤は、上記混合金属化合物を懸濁液中に維持し、貯蔵時に安定に維持しながら、混合、注入又は圧搾並びに嚥下が容易でなければならない。その結果、高せん断で低粘度であり、低せん断で高粘度である配合物が必要とされている。したがって、高せん断での降伏応力及び低粘度並びに低せん断での高粘度の最適範囲が存在する。0.5から約19Paの上記液体製剤の最適な降伏応力が企図される。
【0319】
リン酸塩結合
【0320】
リン酸塩結合容量は、以下の方法によって決定することができる。すなわち、40ミリモル/リットルのリン酸ナトリウム溶液(pH4)を調製し、リン酸塩結合剤で処理する。次いで、処理されたリン酸塩溶液を濾過した溶液を希釈し、リン含有量についてICP-OESで分析する。
【0321】
この方法に使用される試薬は、リン酸二水素ナトリウム一水和物(BDH、AnalaR(商標)グレード)、1M塩酸、AnalaR(商標)水)、標準リン溶液(10,000pg/ml、Romil Ltd)、塩化ナトリウム(BDH)である。
【0322】
使用される具体的な装置は、ローリングハイブリダイゼーションインキュベーター又は同等物(Grant Boekal HIW 7)、10ml採血管、Reusable Nalgeneスクリューキャップチューブ(30ml/50ml)、10ml使い捨てシリンジ、0.45pm使い捨てシリンジフィルター、ICP-OES(誘導結合プラズマ-発光分光分析装置)である。
【0323】
リン酸二水素ナトリウム5.520g(+/-0.001g)を秤量し、続いていくらかのAnalaR(商標)水を添加し、1リットルのメスフラスコに移すことによって、リン酸溶液を調製する。
【0324】
次いで、1リットルのメスフラスコに1M HCIを混ぜながら滴下し、pHをpH4(+/-0.1)に調整する。次いで、AnaIaR(商標)水を用いて体積を正確に1リットルに調整し、十分に混合する。
【0325】
NaCI溶液は、NaCI5.85g(+/-0.02g)を正確に秤量し、1リットルのメスフラスコに定量的に移し、その後、AnalaR(商標)水で体積を調整し、十分に混合することによって調製する。
【0326】
校正標準は、以下の溶液を100mlメスフラスコにピペットで入れることによって調製する。
【表5】
【0327】
次いで、上記溶液をAnalaR(商標)水で体積を調整し、十分に混合する。後に、これらの溶液をICP-OES装置の校正標準として使用する。次いで、リン酸結合剤試料を以下に記載される手順に従って調製し、ICP-OESによって測定する。ICP-OESの結果は、当初はppmとして表されるが、以下の式を使用してmmolに変換することができる。mmol=(読み取ったICP-OESのppm/分析物の分子量)×4(希釈係数)。
【0328】
各試験試料のアリコート(各アリコートは0.5gのリン酸結合剤を含有する)を30mlのスクリュートップNalgeneチューブに入れる。試験試料が0.5gのリン酸結合剤を含む単位用量である場合は、それをそのまま使用することができる。すべての試料を二連で調製する。リン酸塩溶液の12.5mlアリコートを、試験試料を含むスクリューキャップ付きの各スクリュー頂部チューブにピペットで入れる。次いで、準備したチューブを37℃に予熱したローラーインキュベーターに入れ、30分間などの固定時間、最高速度で回転させる(実施例に示すように他の時間を使用してもよい)。その後、試料をローラーインキュベーターから取り出し、0.45pmシリンジフィルターに通して濾過し、2.5mlの濾液を採血管に移す。7.5mlのAnalaR(商標)水を各2.5mlアリコートにピペットで入れ、十分に混合する。次いで、溶液をICP-OESで分析する。
【0329】
リン酸塩結合容量は、リン酸塩結合(%)=100-(T/S×100)によって決定される。
【0330】
式中、
【0331】
T=リン酸結合剤との反応後の溶液中のリン酸塩の分析値
【0332】
S=リン酸結合剤と反応する前の溶液中のリン酸塩の分析値
【0333】
いくつかの実施形態によれば、上記混合金属化合物は、上記の方法によって測定したときに、30分後に少なくとも30%、10分後に少なくとも30%、5分後に少なくとも30%のリン酸塩結合容量を提供することができる。いくつかの実施形態においては、水不溶性無機固体混合金属化合物は、錠剤に製剤化することができ、上記の方法によって測定したときに、30分後に少なくとも40%、10分後に少なくとも30%、5分後に少なくとも30%、30分後に少なくとも50%、10分後に少なくとも30%、又は5分後に少なくとも30%のリン酸塩結合容量を有することができる。
【0334】
リン酸塩結合測定のpHは、1MのHCI溶液又はNaOH溶液のいずれかを添加することによって変化させることができる。次いで、上記測定値を使用して、様々なpH値でのリン酸塩結合容量を評価することができる。
【0335】
いくつかの実施形態においては、水不溶性無機固体混合金属化合物は、上記方法によって測定したときに、pH3から6、pH3から9、pH3から10、pH2から10において、30分後に少なくとも30%、10分後に少なくとも30%、5分後に少なくとも30%のリン酸塩結合容量を有することができる。
【0336】
いくつかの実施形態においては、水不溶性無機固体混合金属化合物は、上記の方法によって測定したときに、pH3から4、pH3から5、pH3から6において、30分後に少なくとも40%、10分後に少なくとも40%、5分後に少なくとも40%のリン酸塩結合容量を有することができる。
【0337】
いくつかの実施形態においては、水不溶性無機固体混合金属化合物は、上記方法によって測定したときに、pH3から4、pH3から5、pH3から6において、30分後に少なくとも50%、10分後に少なくとも50%、5分後に少なくとも50%のリン酸塩結合容量を有することができる。
【0338】
可能な限り広いpH範囲にわたって高いリン酸塩結合能力を有することが望ましいことが理解されよう。
【0339】
上述した方法を用いてリン酸塩結合容量を表す別の方法は、結合剤によって結合されたリン酸塩を、結合剤1グラム当たりの結合されたリン酸塩のmmolとして表す方法である。
【0340】
リン酸塩結合についてこの表現を使用した場合、いくつかの実施形態においては、適切には、水不溶性無機固体混合金属化合物は、上記の方法によって測定したときに、pH3から6、pH3から9、pH3から10、pH2から10において、30分後に少なくとも0.3mmol/g、10分後に少なくとも0.3mmol/g、5分後に少なくとも0.3mmol/gのリン酸塩結合容量を有することができる。いくつかの実施形態においては、水不溶性無機固体混合金属化合物は、上記の方法によって測定したときに、pH3から4、pH3から5、pH3から6において、30分後に少なくとも0.4mmol/g、10分後に少なくとも0.4mmol/g、5分後に少なくとも0.4mmol/gのリン酸塩結合容量を有することができる。いくつかの実施形態において、水不溶性無機固体混合金属化合物は、上記の方法によって測定したときに、pH3から4、pH3から5、pH3から6において、30分後に少なくとも0.5mmol/g、10分後に少なくとも0.5mmol/g、5分後に少なくとも0.5mmol/gのリン酸塩結合容量を有することができる。
【0341】
上記の試験方法を以下に説明する。
試験方法1 XRF分析
【0342】
XRF分析は、Philips PW2400波長分散型XRF分光計を使用して行うことができる。試料を50:50の四ホウ酸リチウム/メタホウ酸リチウム(高純度)と融合させ、ガラスビーズとして機器に提供する。すべての試薬は、指定されない限り、分析グレード又はその同等物である。AnalaR(商標)水、四ホウ酸リチウム50%メタホウ酸リチウム50%フラックス(高純度グレードICPH Fluore-X50)。1025℃が可能なマッフル炉、延長トング、ハンドトング、Pt/5%Auキャスティングトレイ及びPt/5%/Au皿が使用される。試料1.5g(+/-0.0002g)及び四ホウ酸/メタホウ酸7.5000g(+/-0.0002g)をPt/5%/Au皿に正確に秤量する。12分間で1025℃に設定された炉内に配置する前に、スパチュラを使用して2つの成分を皿の中で軽く混合する。試料の均一性を確実にするために、皿を6分及び9分間撹拌する。また、温度平衡を可能にするために、キャスティングトレイを9分間炉に入れる。12分後、溶融試料をキャスティングトレイに注ぎ、これを炉から取り出し、冷却する。ビーズ組成は、分光光度計を使用して決定される。
【0343】
XRF法を使用して、混合金属化合物のAl、Fe、Mg、Na及び総硫酸塩含有量、並びにMII対MIIIの比を決定することができる。
【0344】
試験方法2 X線回折(XRD)測定
粉末X線回折(XRD)データは、40kV及び55mA、0.02°2θステップサイズ、ステップカウント時間当たり4秒で生成された銅Kα線を使用するPhilips PW1800自動粉末X線回折計で2~70°2θから収集される。15×20mmの照射試料面積を与える自動発散スリットが、0.3mmの受容スリット及び回折ビームモノクロメータと共に使用される。
【0345】
おおよその体積平均結晶子サイズは、Scherrerの式を使用して導き出される以下の表に示される関係を使用して、約11.5°2θ(ピークは通常、ハイドロタルサイト型材料では8から15°2θの範囲にある)における粉末X線回折ピークの半値幅から決定することができる。機器ラインの広がりからのピーク幅への寄与は0.15度であり、これは、同じ条件下でLaB6(NIST SRM 660)の試料の約21.4°2θにおけるピークの幅を測定することによって決定される。
【0346】
【0347】
上記の表の値は、下記のScherrerの式を使用して計算した。
D=K*λ/β*cosΘ 式1
式中、
D=結晶子サイズ(Å)
K=形状係数
λ=使用される放射の波長(Å)
β=FWHM(半値全幅)として測定され、機器線広がり(ラジアンで表される)について補正されたピーク幅
Θ=回折角(ラジアンで測定したピーク位置2Θの半分)
【0348】
形状因子
これは粒子の形状の因子であり、通常は0.8~1.0の間、0.9の値を使用する。
【0349】
放射線の波長
これは、使用される放射の波長である。銅Kα線の場合、使用される値は1.54056Åである。
【0350】
ピーク幅
ピークの幅は、機器及び試料の2組の因子の合計である。
【0351】
機器因子は、通常は、高結晶性試料のピーク幅(非常に狭いピーク)を測定することによって測定される。同じ材料の高結晶性試料が入手できないため、LaB6を用いた。電流測定のために、0.15度の機器値を使用する。
【0352】
したがって、Scherrerの式を使用して結晶子サイズを最も正確に測定するには、機器要因によるピーク幅を測定されたピーク幅から差し引く必要があり、すなわち以下である。
β=B(測定値)-b(測定値)
【0353】
次いで、ピーク幅はScherrerの式でラジアンで表される。
【0354】
ピーク幅(FWHM)は、適切なバックグラウンドを差し引いた後のピークに対して放物線又は別の適切な方法をフィッティングすることによって測定される。
【0355】
ピーク位置
11.5°2θの値を使用して、0.100ラジアンに相当する5.75°の回折角を与えた。
【0356】
試験方法3 リン酸塩結合容量及びMg放出
リン酸二水素ナトリウム5.520g(+/-0.001g)を秤量し、続いてAnalaR(商標)水を添加し、1リットルのメスフラスコに移すことによって、リン酸緩衝液(pH=4)を調製する。
【0357】
次いで、1リットルメスフラスコに1M HClを混ぜながら滴下し、pHをpH4(+/-0.1)に調整する。次いで、AnalaR(商標)水を使用して体積を正確に1リットルに調整し、十分に混合する。
【0358】
各試料0.5g(+/-0.005g)を、Grant OLS 200 Orbital shaker中、37.5℃で40mMリン酸緩衝液(12.5ml)の入ったメスフラスコ(50ml)に添加する。すべての試料を二連で調製する。容器をオービタルシェーカー中で30分間撹拌する。次いで、溶液を0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過する。上清から2.5cm3アリコートをピペットで取り、未使用の採血管に移す。7.5cm3のAnalaR(商標)水を各2.5cm3アリコートにピペットで入れ、スクリューキャップを取り付け、十分に混合する。次いで、校正されたICP-OESで上記溶液を分析する。
【0359】
リン酸塩結合容量は、以下によって決定される。
リン酸塩結合(mmol/g)=SP(mmol/l)-TP(mmol/l)/W(g/l)
式中、
TP=リン酸塩結合剤と反応した後のリン酸塩溶液中のリン酸塩の分析値=溶液P(mg/l)*4/30.97、
SP=リン酸塩結合剤と反応する前のリン酸塩溶液中のリン酸塩の分析値、及び
W=試験方法で使用した結合剤の濃度(g/l)(すなわち、0.4g/10cm3=40g/l)。
【0360】
マグネシウム放出は、以下によって決定される。
マグネシウム放出(mmol/g)=TMg(mmol/l)-SMg(mmol/l)/W(g/l)
式中、
TMg=リン酸塩結合剤と反応した後のリン酸塩溶液中のマグネシウムの分析値=溶液Mg(mg/l)*4/24.31、及び
SMg=リン酸塩結合剤と反応する前のリン酸塩溶液中のマグネシウムの分析値。
【0361】
Fe放出は、上記化合物から放出された鉄の量が少なすぎて検出限界未満であるため、報告されていない。
試験方法4 食品スラリー中のリン酸塩結合及びマグネシウム放出
MCTペプチド2+と栄養補助食品(SHS International)を混合して、0.01M HCl中に20%(w/v)のスラリーを形成する。0.05gの乾燥化合物の別々のアリコートを5cm3の食品スラリーと混合し、室温で30分間絶えず撹拌する。3cm3アリコートを取り出し、4000rpmで10分間遠心分離し、溶液中のリン酸塩及びマグネシウムを測定する。
【0362】
試験方法5 硫酸塩の定量
亜硫酸塩(SO3)は、XRF測定(試験方法1)によって上記化合物中で測定され、以下に従って総硫酸塩(SO4)として表される。
総SO4(wt%)=(SO3)×96/80
総SO4(モル)=総SO4(重量%)/分子量SO4
【0363】
硫酸ナトリウム(上記化合物中に存在する硫酸塩の可溶性形態)
【0364】
XRF測定(試験方法1)により、上記化合物中のNa2Oを測定する。
【0365】
Na2Oは、上記化合物中に存在するNa2SO4の形態におけるより可溶性のSO4の形態と関連していると推測される。
【0366】
その結果、Na2Oのモル数は、可溶性形態の硫酸塩のモル数に等しいと推測され、したがって、以下のように計算される。
可溶性SO4(モル)=Na2O(モル)=Na2Oの重量%/分子量Na2O
【0367】
層間硫酸塩(結合硫酸塩とも呼ばれる上記化合物中に存在する硫酸塩の不溶性形態)。
【0368】
層間硫酸塩は、以下に従って計算される。
層間SO4(モル)=全SO4(モル)-可溶性SO4(モル)
中間層SO4(重量%)=中間層SO4(モル)×分子量SO4
【0369】
試験方法6 Leco法による炭素含有量分析
この方法は、(上記混合金属化合物中に存在する炭酸アニオンの存在を示す)炭素含有量のレベルを決定するために使用される。
【0370】
質量既知の試料を、炉内で純酸素雰囲気中、約1350℃で燃焼させる。試料中のすべての炭素は、CO2に変換され、赤外線検出器によって測定される前に水分トラップを通過する。既知の濃度の標準と比較することにより、試料の炭素含有量を取得することができる。酸素供給装置、セラミック燃焼ボート、ボートランス及びトングを備えたLeco SC-144DR 炭素・硫黄分析装置を使用する。試料0.2g(+/-0.01g)を燃焼ボートに入れて計量する。次いで、当該ボートをLeco炉に入れ、炭素含有量を分析する。分析は二連で行う。
【0371】
%Cは、以下によって決定される。
%C(試料)=(%C1+%C2)/2
式中、C1及びC2は個々の炭素の結果である。
【0372】
試験方法7 Lasentechによる粒度分布(PSD)
【0373】
プロセス中のスラリー中の粒径分布は、Lasentechプローブを用いて測定することができる。d50平均粒径は、この分析手法の一部として得られる。
【0374】
試験方法8 含水率
混合金属化合物の含水量は、実験室用オーブン内で周囲圧力にて105℃で4時間乾燥させた後の重量損失(LOD)から決定される。
【0375】
試験方法9 表面積及び細孔容積(窒素法-N2)
表面積及び細孔容積の測定値は、Micromeritics Tristar ASAP 3000を使用して、ある範囲の相対圧力における窒素ガス吸着を使用して得られる。測定の開始前に、試料を105℃で4時間真空下で脱気する。通常、脱気後に70mTorr未満の真空が得られる。
【0376】
表面積は、0.08から0.20P/Poの相対圧力範囲で得られた窒素吸着データを使用して、Brunauer、Emmett及びTeller(BET)理論の適用によって計算される。
【0377】
細孔容積は、0.98の相対圧力(P/Po)で吸着されたガスの容積を使用して、窒素吸着等温線の脱着ループから得られる。0.98の相対圧力(STPでcc/g)で吸着されたガスの量は、0.0015468の密度変換係数を掛けることによって液体当量体積に変換される。これにより、報告された細孔体積の数値(cm3/g)が得られる。
P=77Kで試料と平衡状態にある窒素の蒸気分圧。
Po=窒素ガスの飽和圧力。
【0378】
試験方法10 細孔容積(水法)
【0379】
水孔容積
【0380】
目的
【0381】
試料(粉末形態)の内部細孔を水で満たすように、すべての細孔が充填されると、液体の表面張力によって試料の大部分が凝集体を形成し、これが瓶の反転時にガラス瓶に付着する。
【0382】
機器
(1)ねじキャップ付きのワイドネック(30mm)透明ガラス120cm3粉末瓶、寸法:高さ97mm、外径50mm(フィッシャー品番BTF-600-080)
(2)10cm3グレードAビュレット
(3)脱イオン水
(4)直径74mmの上端が直径67mmに先細になったゴム栓、全高49mm
(5)小数点第4位まで校正済みの秤
手順
(1)ガラス瓶内の5.00g(±0.01)の試料に、1cm3アリコートの水を加える。
(2)この添加の後、密封された瓶の底端部をゴム栓に対して4回激しく叩く。
(3)腕の鋭い振りを利用して、手首で瓶を振り、瓶を逆さにして試料を確認する。
a.試料が凝集し、試料の大部分(>50%)が瓶に付着する場合、これが終点である(以下の結果セクションに進む)。試料に遊離水が観察される場合、終点を超えており、試験は廃棄し、新しい試料で再開すべきである。
b.試料が瓶から外れる場合(たとえ凝集が明らかであっても)、さらに0.1cm3の水を添加し、終点(3a)に達するまで上記のステップ(2)から(3)を繰り返す。
【0383】
結果
水の細孔容積は、以下のように計算される。
水孔容積(cm3/g)=添加した水の容積(cm3)/試料重量(g)
【0384】
試験方法11
(a)標準的な方法を用いたリン酸塩結合容量及び可溶性マグネシウム/鉄の定量
40mMリン酸ナトリウム溶液(pH4)を調製し、リン酸塩結合剤で処理する。次いで、遠心分離したリン酸塩溶液と結合剤の混合物の上清を希釈し、Fe、Mg及びPの含有量についてICP-OESによって分析する。後者の分析手法は当業者に周知である。ICP-OESは、誘導結合プラズマ発光分光法の頭字語である。
【0385】
この方法に使用される試薬は、リン酸二水素ナトリウム一水和物(Aldrich)、1M塩酸、AnalaR(商標)水、標準リン溶液(10.000μg/ml、Romil Ltd)、標準マグネシウム溶液(10,000μg/ml、Romil Ltd)、標準鉄溶液(1.000μg/ml)、塩化ナトリウム(BDH)である。
【0386】
具体的な装置は、遠心分離機(Metier2000E)、血液チューブロテータ(Stuart Scientific)、ミニシェーカー(MS 1)、ICP-OES、採血チューブである。リン酸二水素ナトリウム5.520g(+/-0.001g)を秤量し、続いてAnalaR(商標)水を添加し、1リットルのメスフラスコに移すことによって、リン酸緩衝液(pH=4)を調製する。
【0387】
次いで、1リットルのメスフラスコに1M HCIを混ぜながら滴下し、pHをpH4(+/-0.1)に調整する。次いで、AnalaR(商標)水を使用して体積を正確に1リットルに調整し、十分に混合する。
【0388】
各試料0.4g(+/-0.005g)を採血管に秤量し、保持ラックに入れる。すべての試料を二連で調製し、溶液の温度を20℃に維持する。リン酸緩衝液の10mlアリコートを、予め秤量した試験材料が入っている採血管のそれぞれにピペットで入れ、スクリューキャップを取り付けた。上記容器をミニシェーカーで約10秒間撹拌する。上記容器を血液チューブ回転子に移し、30分間(+/-2分間)混合する。次いで、上記容器を3000rpm、20℃で5分間遠心分離する。試料を遠心分離機から取り出し、2.5mlアリコートを上清からピペットで取り、未使用の採血管に移す。7.5mlのAnalaR(商標)水をピペットで各2.5mlアリコートに入れ、スクリューキャップを取り付け、十分に混合する。次いで、校正されたICP-OESで溶液を分析する。
【0389】
リン酸塩結合容量は、以下によって決定される。
リン酸塩結合(mmol/g)=[SP(mmol/l)-TP(mmol/l)]/W(g/l)
式中、Tp=リン酸塩結合剤と反応した後のリン酸塩溶液中のリン酸塩の分析値=溶液P(mg/l)*4/30.97.試験方法11aではTpを使用し、試験方法11b、11cではTpの代わりにTp
1を使用する。
Sp=リン酸塩結合剤と反応する前のリン酸塩溶液中のリン酸塩の分析値、そして、
W=試験方法で使用した結合剤の濃度(g/l)(すなわち、試験方法11 aでは0.4g/10ml=40g/l)である。
【0390】
マグネシウム放出は以下によって決定される。
マグネシウム放出(mmol/g)=[TMg(mmol/l)-SMg(mmol/l)]/W(g/l)
式中、TMg=リン酸塩結合剤と反応した後のリン酸塩溶液中のマグネシウムの分析値=溶液Mg(mg/l)*4/24.31.試験方法11aではTMgを使用し、試験方法11b及び11cではTMgの代わりにTMg
1を使用する。
SMg=リン酸塩結合剤と反応する前のリン酸塩溶液中のマグネシウムの分析値である。
【0391】
鉄放出は以下によって決定される。
鉄放出(mmol/g)=[TFe(mmol/l)-SFe(mmol/l)]/W(g/l)
式中、TFe=リン酸塩結合剤と反応した後のリン酸塩溶液中の鉄の分析値=溶液Fe(mg/l)*4/55.85.試験方法11aではTFeを使用し、試験方法11b、11cではTFeの代わりにTFe
1を使用する。
SFe=リン酸塩結合剤と反応する前のリン酸塩溶液中の鉄の分析値である。
【0392】
(b)0.4gリン酸塩結合剤/10mlにおける代表的な方法を用いたリン酸塩結合容量及び可溶性マグネシウム/鉄の定量
標準的なリン酸塩結合試験方法11(a)は、pH4に調整したリン酸緩衝液の使用を含む。この試験のpHは、上記混合金属化合物の添加後にpH4から約8.5~9に上昇し得る。試験方法11bを使用して、リン酸塩結合中にpHを上昇させる標準的なリン酸塩結合試験とは対照的に、胃中条件下(pH値が3のより低い)の状態のためのより代表的な方法を使用し、リン酸塩結合中に1M HCIを添加することでpHを一定の値に維持することによってリン酸塩結合容量を決定することができる。
【0393】
(リン酸塩結合及びマグネシウム又は鉄放出を測定するための)代表的な方法は、標準的なリン酸塩結合試験方法11(a)に従って続けられ、すなわち、0.4gのリン酸塩結合剤を10mlのリン酸緩衝液に分散させる。溶液の温度は20℃である。pHをモニターするために、試料をSterlin Jarに秤量する。この瓶を、その中に撹拌棒をセットして、撹拌プレート上に配置する。10mlのリン酸緩衝液を試料に添加して以後直ちに、pHプローブを介して30分間pHをモニターし、Dosimat滴定装置を介して送達される1M HCIを用いてpHをpH=3に維持する。pH調整のために添加される酸の総体積は、総体積の61%を超えてはならない。
【0394】
次いで、代表的な方法のリン酸塩結合並びにMg-及びFe-放出データを、以下の式を使用して、酸付加に起因するリン酸塩濃度又は化合物濃度の希釈について補正する(リン酸塩結合及びMg-及びFe-放出は、リン酸塩結合反応の前後の差から測定される)。式中、Vは代表的な方法でpH調整に使用される1M HCl酸の体積(ml)である。
Tp
1=Tp*(10ml+V)/10ml
TMg
1=TMg*(10ml+V)/10ml
TFe
1=TFe*(10ml+V)/10ml
式中、Tp=リン酸結合剤と反応した後のリン酸塩の分析物濃度Tp
1=Tpと同一であるが、酸添加に起因する希釈について補正された濃度、
TMg=リン酸結合剤と反応した後のマグネシウムの分析物濃度TMg
1=TMgと同一であるが、酸添加に起因する希釈について補正された濃度、そして
TFe=リン酸結合剤と反応した後の鉄の分析物濃度TFe
1=TFeと同一であるが、酸添加に起因する希釈について補正された濃度である。
【0395】
30分間のリン酸塩結合後、スラリーを血液試料チューブ(約10ml)に移し、3000 RPMで5分間遠心分離する。次いで、標準的なリン酸塩結合試験方法11(a)に従って、2.5mlの上清を別の収集管でAnalaR水で10mlに希釈し、ICPの分析の準備をする。
【0396】
c)0.2gリン酸塩結合剤/10mlにおける代表的な方法を使用したリン酸塩結合容量及び可溶性マグネシウム/鉄の定量
0.2gリン酸結合剤/10mlを用いる以外は方法11bに記載の方法と同一の方法
【0397】
試験方法14 表面積及び細孔容積(窒素法-N2)
表面積及び細孔容積の測定値は、Micromeritics Tristar ASAP 3000を使用して、ある範囲の相対圧力における窒素ガス吸着を使用して得られる。測定の開始前に、試料を105℃で4時間真空下で脱気する。通常、脱気後に70mTorr未満の真空が得られる。
【0398】
表面積は、0.08から0.20P/Poの相対圧力範囲で得られた窒素吸着データを使用して、Brunauer、Emmett及びTeller(BET)理論の適用によって計算される。
【0399】
細孔容積は、0.98の相対圧力(P/Po)で吸着されたガスの容積を使用して、窒素吸着等温線の脱着ループから得られる。0.98の相対圧力(STPでcc/g)で吸着されたガスの量は、0.0015468の密度変換係数を掛けることによって液体当量体積に変換される。これにより、報告された細孔体積指数(cm3/g)が得られる。
【0400】
P=77Kで試料と平衡状態にある窒素の蒸気分圧。
【0401】
Po=窒素ガスの飽和圧力。
【実施例】
【0402】
以下の実施例は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0403】
実施例1
以下に、CKDのアデニンラットモデルにおける、血清リン酸塩、カルシウム、PTH、及びFGF23を含む鉱物骨障害転帰の重症度、及び血管石灰化の重症度に対するフェルマゲート及び食事性リン酸塩の効果の試験を説明する。
【0404】
本明細書に記載される研究は、フェルマゲート処置が、未処置のコントロールと比較して、2つの食事性リン酸送達方法を用いたアデニン誘発性CKDラットモデルにおいてVCに影響を及ぼし得るかどうかを確かめるために行われた。
【0405】
雄のSprague Dawleyラット(15週)に、0.25%アデニン、0.5%リン酸(PO
4)食餌を与えて、4から5週間にわたってCKD(クレアチニン>250uM)を誘発し、次いで、アデニンを含まない0.5%PO
4食餌を与えた。6週のCKDについて、以下の2種類のPO
4食餌レジメンを試験した。すなわち、中程度のPO
4(0.75% P)食餌(8AM及び4PMに5g±フェルマゲート(FER n=9)未処置コントロール(CON n=6)、一晩で10グラムの食餌、並びに、高及び低PO
4(1から0.5%P)の組み合わせ、すなわち、高(8AM,4PMに1% P 5g±フェルマゲート)、及び、一晩で10gの低(0.5% P)PO
4食餌(FER n=8、CON n=10)及びそれと同量の毎日の食事性PO
4、を試験した。血清カルシウム(Ca)、血清マグネシウム(Mg)、血清PO
4、FGF23、副甲状腺ホルモン(PTH)、ビタミンDメタボローム並びに組織Ca及び組織PO
4を決定した。上記方法は、
図1にグラフで表されている。
【0406】
図2に示される結果は、フェルマゲート処置動物とコントロール動物との間で慢性腎疾患誘発表現型が類似していたことを示す。クレアチニン及びカルシウムのプロファイルは、両方の実験の時間経過にわたって有意に異ならなかった。血清リン酸塩レベルは、食事性リン酸塩の変化及びフェルマゲートの開始(点線)までは同様であった。フェルマゲート処置及び高リン酸塩食餌を開始した後、高リン酸血症はコントロールにおいてのみ見つかった。
【0407】
図3に示す結果は、フェルマゲートがマグネシウムを増加させながら血清リン酸を減少させることを示している。両方の試験において、フェルマゲートは血清Mgを増加させ(203% 0.75%P、p<0.0001;163% 0.5から1%P、p<0.0001、%コントロール、二元配置分散分析)、血清PO
4のレベルはより低かった(67% 0.75%P、p<0.001;64% 0.5から1%P、p<0.001)。
【0408】
図4に示す結果は、コントロール動物では副甲状腺ホルモンレベルが増加したが、フェルマゲート処置ではPTHレベルが驚くほど有意に低かったことを示す(31% 1+0.5%/1%P食餌、p<0.001;16% 0.75%食餌、p<0.001)。
【0409】
図5に示す結果は、FGF23レベルがフェルマゲート処置で有意に変化しなかったことを示している。
【0410】
図6に示す結果は、ビタミンDのプロファイルが群間で類似していたことを示す。犠牲血清中のビタミンDレベルを測定した。コントロールの25-OH-D
3ラクトンのみが異なっていた(p=0.02)。
【0411】
図7に示す結果は、フェルマゲートが血管石灰化を驚くほど防止したことを示している。血管石灰化の程度は、フェルマゲート処置を用いた動脈組織において有意に減少した(79%/65%のCONに対し、35%FER(0.75%P)及び13%FER(0.5~1%P)、それぞれについて、p<0.001)。この阻害は、動物ごとにも明らかであった(VCを有する100%/70%のCONに対し、33%FER(0.75%P)及び13%(FER0.5から1%P)、それぞれについて、p<0.05)。
【0412】
両方の試験で、フェルマゲートは血清Mgを増加させ(203% 0.75%P、p<0.0001;163% 0.5~1%P、p<0.0001、%コントロール、二元配置分散分析)、血清PO4のレベル(67% 0.75%P、p<0.001;64% 0.5~1%P、p<0.001)及びPTHのレベル(16% 0.75%P、p<0.001;31% 0.5~~1%P、p<0.001)はより低かった。VCの程度は、フェルマゲート処置を受けた動脈組織で有意に減少した(CON対35%FER(0.75%P)及び13%FER(0.5から1%P)でそれぞれ79%/65%、p<0.001)。この阻害は、動物ごとにも明らかであった(VCを有する100%/70%のCONに対し、33%FER(0.75%P)及び13%(FER0.5から1%P)、それぞれについて、p<0.05)。フェルマゲート処置は、血管系組織、血清Ca、FGF23、又は血清ビタミンDメタボローム中のMgレベルを有意に変化させなかった。
【0413】
これらの結果は、フェルマゲートが食事性PO4のバイオアベイラビリティを効果的に低下させ、血清PO4及びPTHを減少させ、血清Mgを増加させ、CKD誘発性血管石灰化の発症及び進行を効果的に制限することを実証している。
【0414】
さらに、結晶形成の病理発生において、リン酸塩によるマグネシウムの取り込みの減少があること、高濃度の血清マグネシウムは、ほとんどのフェルマゲート処置において、リン酸カルシウム結晶成長の発達の阻害に関連付けられること、及び、さらなるマグネシウムは、多量のリン酸カルシウム結晶を有するフェルマゲート組織には同様の速度で取り込まれないこと、が観察された。
図8は、マグネシウム対リン酸塩の比をリン酸塩濃度とともに示し、動物ごとの平均値を主グラフに示し、個々の組織を挿入図に示す。
図9は、マグネシウムがカルシウム沈着物結晶中にウィットロカイトよりも低い比率で取り込まれ、ヒドロキシアパタイトと同様であることを示す。
【0415】
両方の研究では、フェルマゲートで処置した動物において、他の組織又は器官ではなく血管組織が、未処置CKD動物と比較して、リン酸塩に比して有意なマグネシウム蓄積を示したことも観察された。血管組織だけがマグネシウム対リン酸塩の比において違いを示した。骨は、未処置CKD動物とフェルマゲートを投与された動物との間でマグネシウム含有量の有意な変化を示さなかった。
図10A及び
図10Bは、これらの結果を示す。
図10A及び
図10Bにおいて、各データ点は、個々のラット由来の単一組織のリン酸塩含有量に対するマグネシウム含有量の比を表す。組織を、すべての処置にわたる各組織型の総平均マグネシウム/リン酸塩に基づいて並べ、評価した非血管組織のうち骨が最も低く、脾臓が最も高かった。組織は以下の通りであった。骨(頭蓋骨及び脛骨)、筋肉(四頭筋及び腹部)、脂肪(皮下及び後腹部)、肝臓、心臓(左心室及び右心室)、肺、脾臓。動脈もまた並べられ、外陰部が最も低い比率であり、頸動脈が最も高かった。動脈を、外陰部(左陰部動脈の2つのセグメント)、遠位血管(左右腸骨、左右大腿骨)、大動脈(胸部、腹部及び弓部)、及び頸動脈(左右)にグループ分けした。
【0416】
GraphPad PRISM 8.1.2を使用して、二元配置分散分析及びサイダックの多重比較検定を用いて比較を行った。処置は両方の試験で有意であり(P<0.001)、フェルマゲートと未治療コントロールとの間で有意に異なる唯一の組織が動脈であった。1%+0.5%食事療法試験では、遠位血管(p<0.001)、大動脈(p<0.05)、冠動脈CMR動脈(p<0.001)、及び頸動脈(p<0.01)は、フェルマゲート処置によるリン酸塩に対するマグネシウムの蓄積が有意に多かった。0.75%試験では、遠位血管動脈(p<0.01)、大動脈(p<0.05)、及び冠動脈CMR動脈(p<0.01)は、フェルマゲート処置によるリン酸塩に対するマグネシウムの蓄積が有意に多かった。
【0417】
上述の説明は、理解を明確にするためにのみ提供されており、本発明の範囲内の修正は当業者には明らかであり得るので、そこからいかなる不必要な制限も解釈されるべきではない。
【0418】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」という単語並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外しないことを意味すると理解される。
【0419】
本明細書を通して、組成物が成分又は材料を含むものとして記載されている場合、当該組成物は、特に記載のない限り、列挙された成分又は材料の任意の組み合わせから本質的に構成され得る、又は、その組み合わせから構成され得ると考えられる。同様に、方法が特定の工程を含むものとして記載されている場合、当該方法は、特に記載のない限り、列挙された工程の任意の組み合わせから本質的に構成され得る、又は、その組み合わせから構成され得ると考えられる。本明細書に例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素又は工程を欠いた状態で適切に実施され得る。
【0420】
本明細書に開示される方法の実施及びその個々のステップは、手動で実行することができ、及び/又は電子機器によってもたらされる若しくは自動化を用いて実行することができる。特定の実施形態を参照してプロセスを説明してきたが、当業者は、上記方法に関連する行為を行う他の方法を使用できることを容易に理解するであろう。例えば、特に記載のない限り、本方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく、様々なステップの順序を変更することができる。さらに、個々のステップのいくつかは、組み合わされてもよく、省略されてもよく、又は追加のステップにさらに細分されてもよい。
【0421】
本明細書で引用されるすべての特許、刊行物及び参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先されるべきである。
【0422】
態様
1.本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、血管石灰化を予防及び/又は減少させる方法。
2.血管石灰化が、心臓組織又は動脈組織、任意で大動脈、カラトイド、冠動脈CMR、遠位動脈、及び外陰部のうちの1種以上において予防又は低減される、態様1の方法。
3.前記血管石灰化が、CKD誘発性の血管石灰化である、態様1又は2の方法。
4.前記投与によって前記対象の血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させることをさらに含む、態様1の方法。
5.前記投与によって、前記対象における血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの上昇を予防することをさらに含む、態様1の方法。
6.本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させる方法。
7.本明細書に記載の混合金属化合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの上昇を予防する方法。
8.前記混合金属化合物が二価金属を含み、前記化合物中の前記二価金属含有量が欠乏していない、態様6又は7の方法。
9.前記混合金属化合物が、0<a≦0.4の値を有し、式中、aは、二価金属のモル数を、二価金属のモル数と三価金属のモル数との和で割ったものである、態様8の方法。
10.前記混合金属化合物が、投与時に二価金属の少なくとも一部を放出する、態様6又は7の方法。
11.前記混合金属化合物がMg4Fe2(OH)12CO3nH2Oを含み、式中、nが2~8である、態様1から10のいずれか1つの方法。
12.前記混合金属化合物がフェルマゲートを含む、態様1から11のいずれか1つの方法。
13.前記対象がヒト患者である、態様1から12のいずれか1つの方法。
14.治療を必要とする前記対象が慢性腎疾患を有する、態様1から13のいずれか1つの方法。
15.対象が慢性腎疾患ステージ3~5を有する、態様14の方法。
16.対象が慢性腎疾患ステージ3~4を有する、態様15の方法。
17.対象が慢性腎疾患ステージ5を有する、態様15の方法。
18.前記対象が血液透析療法を受けている、態様14から17のいずれか1つの方法。
19.前記対象が副甲状腺機能亢進症を有する、態様1から18のいずれか1つの方法。
20.前記副甲状腺機能亢進症が慢性腎疾患に続発する、態様19の方法。
21.前記対象が高リン血症を有する、態様1から20のいずれか1つの方法。
22.前記対象における血清リン酸塩の減少及び血清マグネシウム濃度の増加の両方を含む、態様1から21のいずれか1つの方法。
23.前記対象がもはや高リン酸血症を有しない程度まで血清リン酸塩を減少させることを含む、態様21から22のいずれか1つの方法。
24.前記対象の血清クレアチニン濃度に有意に影響を及ぼさないことを含む、態様1から23のいずれか1つの方法。
25.前記対象の血清カルシウム濃度に有意に影響を及ぼさないことを含む、態様1から24のいずれか1つの方法。
26.前記対象の血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモン濃度を16%以上、又は30%以上、又は少なくとも31%低下させることを含む、態様1から25のいずれか1つの方法。
27.前記対象の動脈組織又は心臓組織の石灰化を予防することを含む、態様1から26のいずれか1つの方法。
28.前記混合金属化合物が式(I)
MII
1-x.MIII
x(OH)2An-
y.zH2O,(I)
(式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIはなくとも1種の三価金属であり、An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10である)の化合物である、態様1から27のいずれか1つの方法。
29.前記混合金属化合物が式(II)
MII
1-aMIII
aObAn-
c.zH2O(II)
(式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、An-は少なくとも1種のn価のアニオンであり、0<x≦0.67、0<y≦1、及び0≦z≦10である)の化合物である、態様1から27のいずれか1つの方法。
30.前記混合金属化合物が式(III)の化合物である、態様1から27のいずれか1つの方法。
31.前記混合金属化合物が式(V)
Mll
1-aMIII
aOb(OH)d](An-)c.zH2O(V)
(式中、MIIは少なくとも1種の二価金属であり、MIIIは少なくとも1種の三価金属であり、そして1>a>0.4であり、上記化合物が電荷中性であるように、前記化合物が少なくとも1種のn価のアニオンAn-を含む)の化合物である、態様1から27のいずれか1つの方法。
32.前記混合金属化合物が粒状材料として提供される、態様31の方法。
33.前記混合金属化合物がアルミニウムを実質的に含まないか又は完全に含まない、態様1から32のいずれか1つの方法。
34.前記混合金属化合物がカルシウムを実質的に含まないか、又は完全に含まない、態様1から33のいずれか1つの方法。
35.前記混合金属化合物が二価金属としてマグネシウムを含む、態様1から34のいずれか1つの方法。
36.前記混合金属化合物が三価金属として鉄を含む、態様1から35のいずれか1つの方法。
37.前記混合金属化合物がアニオンとして炭酸塩を含む、態様1から36のいずれか1つの方法。
38.前記混合金属化合物が、二価金属としてマグネシウムを含み、三価金属として鉄を含む、態様1から37のいずれか1つの方法。
39.前記混合金属化合物が投与時にマグネシウムを放出する、態様38の方法。
40.少なくとも約200mgの前記混合金属化合物を投与することを含む、態様1から39のいずれか1つの方法。
41.血管石灰化を予防又は低減するための医薬品の製造における前記混合金属化合物の使用。
42.前記血管石灰化が、CKD誘発性の血管石灰化である、態様41の使用。
43.血清及び/又は血漿副甲状腺ホルモンレベルの上昇を低減又は予防するための医薬品の製造における混合金属化合物の使用。
44.本明細書に実質的に記載された使用のための方法、使用又は組成物。
【国際調査報告】