(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】燃料タンクのフィラーパイプ用の漏斗状インサート
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20220113BHJP
F16L 9/19 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B60K15/04 F
B60K15/04 E
F16L9/19 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547976
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2019059348
(87)【国際公開番号】W WO2020089827
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518148098
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ニッケル,ベルント エム.
(72)【発明者】
【氏名】スプリングホルツ,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】グラディッチュ,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3D038
3H111
【Fターム(参考)】
3D038CA03
3D038CA04
3D038CA19
3D038CA24
3D038CC14
3D038CD12
3D038CD14
3H111BA15
3H111CA16
3H111CB28
3H111DA09
3H111DA14
3H111DB08
(57)【要約】
本発明は、自動車用燃料タンクのフィラーパイプ(10)用の漏斗状インサート(12)に関する。漏斗状インサート(12)は、給油ノズルを受けるように、フィラーパイプ(10)の端部領域に配置されており、漏斗状インサート(12)の外側とフィラーパイプ(10)との内側の間には空間がある。空間には、流体バリヤが配置されている。本発明によれば、流体バリヤは、漏斗状インサート(12)の外周上に配置されたシール体(14)の形態をなしており、シール体は、フィラーパイプ(10)の内側に支持されたシールリップ(16)を、部分的に又は周方向に延在するように備え、シール体は、漏斗状インサート(12)の材料よりも高い柔軟性を有する材料からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用燃料タンクのフィラーパイプ(10)用の漏斗状インサート(12)であって、
該漏斗状インサート(12)は、給油ノズルを受けるように、前記フィラーパイプ(10)の端部に配置されており、
該漏斗状インサート(12)の外側と前記フィラーパイプ(10)との内側の間には空間があり、
前記空間には、流体バリヤが配置されており、
前記流体バリヤは、前記漏斗状インサート(12)の外周上に配置されたシール体(14)の形態をなしており、
前記シール体は、前記フィラーパイプ(10)の内側に支持されたシールリップ(16)を、部分的に又は周方向に延在するように備え、
前記シール体は、前記漏斗状インサート(12)の材料よりも高い柔軟性を有する材料からなる
漏斗状インサート。
【請求項2】
請求項1に記載の漏斗状インサートであって、
前記漏斗状インサート(12)は、POM材料からなり、
前記シール体(14)は、HDPE材料からなる
漏斗状インサート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の漏斗状インサートであって、
前記漏斗状インサート(12)は、複数の掛止突起を備え、
前記掛止突起により、前記シール体(14)は、前記漏斗状インサート(12)に掛止される
漏斗状インサート。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の漏斗状インサートであって、
前記シール体(14)は、二色射出成型工程により、前記漏斗状インサート(12)と共に製造されている
漏斗状インサート。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の漏斗状インサートであって、
前記シール体(14)は、前記漏斗状インサート(12)に、接着されているか、溶着されているか、締め付けられているか、リベット締めされている
漏斗状インサート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の漏斗状インサートであって、
前記漏斗状インサート(12)及び前記シール体は、静電気を、フィラーパイプ又は挿入された給油ノズル又はその両方に放電する手段を備える
漏斗状インサート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の漏斗状インサートであって、
前記シール体(14)は、50%を超える破断伸び値を有する
漏斗状インサート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の漏斗状インサートであって、
前記シール体(14)は、
製造時の公差によって生じる前記フィラーパイプに対する前記漏斗状インサート(12)の半径方向の距離のずれを、少なくとも±5mmの範囲内に補償できるように設計されている
漏斗状インサート。
【請求項9】
燃料タンク用フィラーパイプ(10)であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の漏斗状インサート(12)を備え、
該フィラーパイプ(10)と前記漏斗状インサート(12)との間の距離は、10~30mmである
フィラーパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許文献は、2018年10月31日に出願されたヨーロッパ特許出願18203732.5号の利益及びその優先権を主張するものであり、ここに参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、自動車用燃料タンクのフィラーパイプ用の漏斗状インサートに関する。この漏斗状インサートは、フィラーパイプの端部領域に配置されており、給油ノズルを受けるようになっている。漏斗状インサートの外側とフィラーパイプの内側の間には空間があり、この空間には、流体バリヤが配置されている。
【背景技術】
【0003】
このような漏斗状インサートは、自動車に給油する際に給油ノズルの外端を保持し案内する。給油作業の完了時に、給油ノズルに向かって燃料を流し戻すことにより燃料の流れを停止させる。燃料が漏斗状インサートを過ぎて外へ流れたり、フィラーパイプから吹き返したりことを防止するために、漏斗状インサートとフィラーパイプとの間に流体バリヤを配置する。コスト上の理由で、フィラーパイプは、通常は、寸法における多少の公差がある高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)プラスチック材料から製造され、これにより壁厚に幾分かの変化が生じ、そのため漏斗状インサートとフィラーパイプとの間の間隙の大きさが変わってしまう。この間隙の大きさは流体バリヤによって対応可能でなければならない。例えば、流体バリヤは、漏斗状インサートとフィラーパイプとの間の距離が変わっても架け渡すのに十分な柔軟性を有しなければならない。なお、フィラーパイプと異なり、漏斗状インサートは給油ノズルと協働する誤給油防止装置を備えるので、該インサートは、高精度の型を用いて製造する必要がある。そのため、インサートは、通常は、POMから又は他の寸法的に安定したプラスチック材料から製造され、あまり柔軟性を有しない。POM等の寸法的に安定したプラスチック材料から作られたシールリップでは、一定でない間隙幅を柔軟に封止できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のことから、本開示が対処する課題は、フィラーパイプに関する公差に損壊することなく対応可能な流体バリヤを有する漏斗状インサートを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、請求項1に記載した特徴を組み合わせたものを提案する。本開示の有利な実施形態及び改良は、従属請求項から明らかになるものとする。
【0006】
本開示によれば、流体バリヤは、漏斗状インサートの外周上に配置されたシール体の形態をなしており、このシール体は、フィラーパイプの内側に支持された周方向に延在するシールリップを備え、漏斗状インサートの材料よりも高い柔軟性を有する材料からなる。シール体は、漏斗状インサートとは別体として製造可能であり、漏斗状インサートがフィラーパイプに据え付けられる前に漏斗状インサート上に配置されるか、又は、二色射出成型工程により漏斗状インサートと共に製造可能である。
【0007】
漏斗状インサートは寸法的に安定したプラスチック材料から製造されており、シール体は、柔軟性のあるプラスチック材料から製造される。漏斗状インサートはPOMプラスチック材料からなり、シール体は50%を超える破断伸び値を有するHDPEプラスチック材料からなることが好ましい。破断伸び値が高ければ、組立てや作業の際に生じた変形・振動・変位等が長時間にわたっても、それによってシール体が損なわれないように、確実にできる。
【0008】
漏斗状インサート及びシール体は、寸法における公差が比較的低くなるように製造可能であるが、フィラーパイプの製造時に数ミリメートルの公差が生じ得る。このような一連の違いがありながらも、シール体は、しっかりと封止することを確実にする。このように、シール体は、半径方向の寸法のずれ、すなわちフィラーパイプと漏斗状インサートとの間の距離の差が、目標値に対して少なくとも±5mmに補償できるように設計されている。
【0009】
以下、図面に概略的に示す実施形態を参照して、本開示より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】燃料容器用のフィラーパイプの端部領域を通る縦断面をである。このフィラーパイプは、誤給油防止装置を受ける漏斗状インサートを有する。
【
図2】
図1における漏斗状インサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すHDPEプラスチック材料製のフィラーパイプ10においては、その給油側端部領域に、POMプラスチック材料製の漏斗状インサート12(
図2)とを備えている。そして、このインサートは、機能性部品(詳細は記載せず)を受けるようになっている。漏斗状インサート12は、該機能性部品との連結部分では、高い精度で製造される必要があり、このことはPOM材料を使用する正当な理由となる。しかしながら、フィラーパイプ10は安価なプラスチック材料HDPEから製造されており、製造工程が原因で、寸法、特に壁厚が、数ミリメートル変わってしまう可能性がある。
【0012】
さらに、HDPE材料は、燃料を吸収したことや温度が変化したことにより膨張や収縮をしてもよい。
【0013】
図1から分かるように、環状の間隙は、漏斗状インサート12の外側とフィラーパイプ10の内壁との間に形成される。給油作業の際に、燃料がこの環状の間隙を通って給油口へ戻ることを防止するものであり、給油作業を早く終わらせることができる。そのため、シールリップ16を有するシール体14は、漏斗状インサート12上に配置される。このシールリップは、フィラーパイプ10と漏斗状インサート12との間の距離の変化が元から存在したかに作業発生したかによらず、これに確実に対応可能であるような半径方向のサイズを有する。このため、シールリップ16にはある程度の柔軟性が必要であり、それはPOMプラスチック材料ではできない。そのため、シール体14は、より大きい柔軟性を有する材料から、特にHDPEプラスチック材料から製造されている。
【0014】
例示的な実施形態に示すように、シール体14は、漏斗状インサート12に掛止されており、そのために、漏斗状インサート12は、その周に亘って配置された複数の掛止突起18を備える。これの代わりに、二色射出成型工程により、シール体14を漏斗状インサート12と共に製造することもできる。
【国際調査報告】