(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】経口医薬製剤のための深共晶溶媒プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20220113BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220113BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220113BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220113BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220113BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220113BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20220113BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20220113BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20220113BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220113BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220113BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220113BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220113BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220113BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/14
A61K31/403
A61K38/13
A61K31/196
A61K31/192
A61K31/496
A61P9/12
A61P37/06
A61P29/00
A61P31/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548497
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 NL2019050697
(87)【国際公開番号】W WO2020085904
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521177658
【氏名又は名称】セラノヴォ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バスティアーン・クルフト
(72)【発明者】
【氏名】ニアル・ホジンズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC31
4C076DD25E
4C076DD37E
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4C076DD45E
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4C076DD49E
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4C076DD59E
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4C076DD67B
4C076EE23E
4C076FF15
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4C084AA03
4C084BA09
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4C084BA24
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4C084NA02
4C084ZB08
4C086AA01
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4C086BC50
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA02
4C086ZA42
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206FA33
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA37
4C206MA72
4C206NA02
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、経口医薬製剤プラットフォームにおいて、又は経口医薬製剤プラットフォームとして使用される共晶混合物(EM)、好ましくは深共晶溶媒(DES)に関する。これらのプラットフォームは、有効医薬成分(API)、特に難水溶性APIの溶解性及び生物学的利用能を向上させる。本発明の深共晶溶媒(DES)組成物は、特定のモル比でのグリコールとポリマー可溶化剤成分との組合せを使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールとポリマー可溶化剤成分との組合せを含む深共晶溶媒(DES)組成物であって、前記ポリマー可溶化剤成分が、有機酸のエステル及びラクトン;ジカルボン酸;ジカルボン酸のエステル;ジオール及びトリオールのエステル、エーテル、及びカーボネート;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、グリコールと前記ポリマー可溶化剤成分のモル比が、12:1~1:10の間の範囲、好ましくは8:1~1:2の間の範囲、より好ましくは4:1~1:1の間の範囲であり;前記組成物が少なくとも1種のDES構成成分を更に含む、深共晶溶媒(DES)組成物。
【請求項2】
前記グリコールが、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、テトラグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ブタンジオール、PEG400及びポリグリセロールからなる群から選択され、好ましくはプロピレングリコールである、請求項1に記載のDES組成物。
【請求項3】
前記DES構成成分が、少なくとも1種のNADES構成成分を含む、請求項1に記載のDES組成物。
【請求項4】
前記DES構成成分が、有機酸、フェノール化合物、テルペノイド、脂肪酸、有機塩基、糖又は甘味料、グリコール、アミノ酸、コリン化合物等の第四級アンモニウム化合物、及びこれらのクラスの誘導体からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のDES組成物。
【請求項5】
リンゴ酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸、ピメリン酸、グルコン酸、酢酸、及び/又はニコチンアミド等のそれらの誘導体のうちの1種であり得る有機酸;プロペニルグアエトール、イソオイゲノール、トコフェロール、没食子酸プロピル、チラミン、ブチルパラベン、及びバニリンのうちの1種であり得る1種又は複数種のフェノール化合物;テルピネオール、ペリリルアルコール、及びメントールのうちの1種であり得る1種又は複数種のテルペノイド;ノナン酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸アスコルビルのうちの1種であり得る1種又は複数種の脂肪酸;尿素及びグアニンのうちの1種であり得る1種又は複数種の有機塩基;スクロース、グルコース、フルクトース、又はラクトースのうちの1種であり得る糖又は甘味料;アラニン、グルタミン酸、又はグルタミン酸塩のうちの1種であり得るアミノ酸;塩化コリン、チアミン硝酸塩、又はカルニチンであり得る第四級アンモニウム化合物、のうちの1種又は複数種を含む、請求項1に記載のDES組成物。
【請求項6】
前記DES/NADES構成成分が、前記ポリマー可溶化剤成分に対する各構成成分のモル比が0.1:1~4:1の間の範囲、好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、より好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲で用意された、請求項1から5のいずれか一項に記載のDES組成物。
【請求項7】
有効医薬成分(API)を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のDES組成物。
【請求項8】
1種又は複数種のポリマー沈澱阻害剤(PPI)を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のDES組成物。
【請求項9】
PPIとAPIの質量比が、0.2:1~20:1の間、好ましくは0.35:1~10:1の間、又はより好ましくは0.5:1~5:1の間である、請求項8に記載のDES。
【請求項10】
好ましくは前記DES全体の質量に対して0.25~10%の間の質量百分率で存在する1種又は複数種の崩壊剤を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のDES。
【請求項11】
経口投与のための、請求項1から10のいずれか一項に記載のDES。
【請求項12】
グリコール及び請求項1に規定のポリマー可溶化剤を混合して、液体を作製する工程と;1種又は複数種のDES構成成分、好ましくはNADES構成成分を前記液体に添加して、DESを形成する工程と;1種又は複数種のAPIを前記DESに可溶化する工程とを含む、医薬組成物を調製する方法。
【請求項13】
1種又は複数種のPPIを前記医薬組成物に可溶化する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
崩壊剤を前記医薬組成物に混合する、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
深共晶溶媒(DES)組成物の調製におけるグリコールとポリマー可溶化剤成分との組合せの使用であって、前記ポリマー可溶化剤成分が、有機酸のエステル及びラクトン;ジカルボン酸;ジカルボン酸のエステル;ジオール及びトリオールのエステル、エーテル、及びカーボネート;並びにこれらの混合物からなる群から選択される、使用。
【請求項16】
グリコール及び前記ポリマー可溶化剤成分が、12:1~1:10の間の範囲、好ましくは8:1~1:1.5の間の範囲、より好ましくは4:1~1:1の間の範囲のモル比で使用される、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口医薬製剤プラットフォームにおいて、又は経口医薬製剤プラットフォームとして使用される共晶混合物(EM)、好ましくは深共晶溶媒(DES)に関する。これらのプラットフォームは、有効医薬成分(API)、特に難水溶性APIの溶解性及び生物学的生物学的利用能(bioavailability)を向上させる。液体製剤は、固体分散等の高度な固体製剤技術に比べて利点があると認められている。例えば、液体製剤は、用量柔軟性を示し、多くの場合、開発がより速く、スケールアップのプロセスが簡単である。
【0002】
特に、本発明は、液体製剤、特に非水性液体製剤の作製に使用されるプラットフォームを対象とする。即ち、難水溶性有効医薬成分の製剤化を目的とした液体製剤プラットフォームである。特定の有効成分に関して、液体製剤を設計することができ、設計された液体製剤は経口投与され、有効成分の生物学的利用能を向上させるであろう。
【0003】
DESは、その構成成分の融点よりも低い融点を有する液体である。本発明は、周囲条件(室温(25℃);1気圧)で液体であり、使用した用量においてヒト又は動物への毒性が無視できる深共晶溶媒を使用する。NADESは、天然に存在する又は天然由来の構成成分から構成されるDESである。DESは、医薬組成物に使用される場合、それを用いて治療されるヒト又は動物に対して許容できないほどの毒性を有するべきではない。
【0004】
当業者なら既知であるように、難水溶性APIは、経口投与したときに胃腸(GI)管に効果的に吸収されるためには、高度な製剤技術を必要とする。APIが全身のpH範囲で水溶液に溶解しないと、APIの吸収は非常に変動し、不十分になり、それによって、APIの治療効果が制限される。本明細書で使用する「水性環境」は、一般に、in vivoの場合は胃腸液、in vitroの場合は水性試験媒体を意味する。より詳細には、「水性環境」は、水性環境がin vivoで、1.0~2.0の範囲のpHを有する場合は胃を包含し、水性環境がin vivoで、5.0~8.0の範囲のpHを有する場合は腸を包含する。
【背景技術】
【0005】
医薬組成物として使用するための液体製剤を作製する場合、克服すべきいくつかの問題があり、その中で最も関連のあるものを本明細書の以下に説明する。
【0006】
最初に、API又は薬物(以下、本明細書では薬物という用語はAPIの同義語として使用する)を、投与可能量が有効用量に十分な量の薬物を含むように、液体中で十分に高い濃度に到達させなければならない。例えば、1mlで100mgの用量を送達する濃度100mg/mlは一般に許容できる量であるが、同じ用量を送達するために100mlを必要とする濃度1mg/mlは一般に許容できない。
【0007】
更に、APIは、許容できる期間にわたって液体製剤中で安定でなければならない。この点において許容できる期間とは、それに組み込まれている特定のAPIに応じて、液体製剤の許容できる保存期間として解釈してよい。
【0008】
更に、経口投与した場合のAPIは、GI管によって/GI管内で吸収することができる形態でなければならない。例えば、APIは、in vivoの水性環境で可溶化されなければならない。
【0009】
これらの問題が解決された場合又は生じなかった場合、適切な用量のAPIを経口投与し、患者に吸収させることができ、したがって、効果的な製剤が作製される。
【0010】
国際公開第97/00670号では、当時の、有効成分の溶解度を高めるための生物学的に有効な組成物が記載されている。しかし、これらの組成物の欠点は、組成物がポリマー沈殿阻害剤を溶解することができない又は非常に不十分であるため、胃腸(GI)管における生物学的利用能が向上しないことである。更に、記載されている組成物は、経口投与に適していない。したがって、これらの組成物は、前述の問題を解決しない。
【0011】
米国特許出願公開第2012/0232152号及び米国特許出願公開第2012/0014893号では、液体溶媒、例えば、エタノール及びアセトンをベースとする局所用製剤を開示している。これらの製剤は、DESでなく、経口投与に適していない。したがって、これらの組成物は、前述の問題を解決しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第97/00670号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0232152号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0014893号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Vasconcelesら、Drug Discovery Today. 2007、12巻、1068~1075頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、本明細書で前述した問題を有さない、ひいては解決する、又は少なくともそのような問題をかなり低減する医薬組成物を調製する系を提供する。設計した液体中に完全な有効用量のAPIを溶解させることができる。更に、APIは、製剤中で経時的に安定である。更に、APIは、in vivoの水性環境で十分に溶解して、吸収される。
【0015】
第1の態様では、本発明は、グリコールとポリマー可溶化剤成分との組合せを含む深共晶溶媒(DES)組成物であって、ポリマー可溶化剤成分が、有機酸のエステル及びラクトン;ジカルボン酸;ジカルボン酸のエステル;ジオール及びトリオールのエステル、エーテル、及びカーボネート;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、グリコールとポリマー可溶化剤成分のモル比が、12:1~1:10の間の範囲、好ましくは12:1~1:4の間の範囲、より好ましくは12:1~1:2の間の範囲、更により好ましくは8:1~1:2の間の範囲、更により好ましくは8:1~1:1.5の間の範囲、最も好ましくは4:1~1:1の間の範囲であり;組成物が少なくとも1種のDES構成成分を更に含む、深共晶溶媒(DES)組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試料S1、S2及び比較試料S3に関する、溶解容器中のイトラコナゾールの記録濃度(単位:マイクロモル/リットル)と時間(単位:分)の関数
【
図2A】イトラコナゾール(IT)の平均測定血漿中レベル(mg/mL)
【
図2B】ヒドロキシル‐イトラコナゾール(IT-OH)の平均測定血漿中レベル(mg/mL)
【発明を実施するための形態】
【0017】
絶対モル換算では、ポリマー可溶化剤成分とグリコールのモル比は、グリコールの量が0.1~3モルの間の範囲、好ましくは0.5~3モルの範囲、より好ましくは1~2モルの範囲で使用され、それに応じて、ポリマー可溶化剤成分が、0.1~2モルの間の範囲、好ましくは0.25~2モルの間の範囲、より好ましくは0.5~1.5モルの範囲で使用される製剤と言い換えることができる。
【0018】
ポリマー可溶化剤の量を増加させると、本明細書の以下で説明するように、ポリマー沈澱阻害剤(PPI)の増加させた量をDESに溶解させることが可能になる。
【0019】
したがって、本発明の核心は、指示した比のグリコール(G)及び特定のポリマー可溶化剤と、少なくとも1種のDES、好ましくはNADESの構成成分とを一緒にした混合物である。又は言い換えると、指示した比のグリコール(G)及び特定のポリマー可溶化剤と、少なくとも1種のDES構成成分とを一緒に含むDES組成物であって、このDES構成成分が、好ましくは、少なくとも1種のNADES構成成分を含む、DES組成物である。本発明によるDES系における少なくとも1種のDES又はNADES構成成分(本明細書の以下で更に詳細に説明する)の存在は、所与のAPIに対する溶媒を最適化すること、及び/又はAPIの溶解度を高めることに役立つ。時には、2種以上の追加のDES又はNADES構成成分の組合せを含めると、より良い結果が得られる。少なくとも1種のDES構成成分、好ましくはNADES構成成分と、選択されたグリコール又はポリマー可溶化剤構成成分のモル比は、各構成成分について0.1:1~4:1の間の範囲、好ましくは0.2:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.3:1~1:1の間の範囲である。したがって、グリコール、ポリマー可溶化剤構成成分、及びNADES構成成分を使用して製剤化し、選択されたグリコールとポリマー可溶化剤構成成分とNADES構成成分のモル組成が2:0.5:1である例示的なDES系は、NADES構成成分の選択されたポリマー可溶化剤に対するモル比が2になるであろう。したがって、グリコール、ポリマー可溶化剤構成成分、並びに第1及び第2のNADES構成成分(NADES1、NADES2)を使用して製剤化され、グリコールとポリマー可溶化剤とNADES1構成成分とNADES2構成成分のモル組成が2:0.5:1:1である例示的なDES系は、NADES1構成成分のポリマー可溶化剤に対する比が2になり、NADES2構成成分のポリマー可溶化剤に対する比が2になるであろう。
【0020】
API即ち薬物を本発明のDESに添加すると、医薬組成物が得られる。本発明によるDESにおけるAPIの濃度は、設計した液体内でのAPIの最大溶解度、製剤中の所望の濃度、及び生物学的利用能に対する濃度の影響に依存することは言うまでもない。
【0021】
用語「有効医薬成分」(API)は、用語「薬物」、「(生体)有効化合物」、「治療剤」等と互換的に使用することができる。
【0022】
本発明の医薬組成物は、APIの溶解度/生物学的利用能を向上させるために調製された液体DES製剤をベースとする。即ち、本発明は、グリコール、ポリマー可溶化剤、及び1種又は複数種の低毒性(NA)DES構成成分(任意選択で、1種又は複数種の薬学的に許容される生体適合性ポリマー沈澱阻害剤(PPI)(本明細書の以下でより詳細に説明する)等、他の成分又は構成成分と一緒に)から構成されるDESを合わせ持つ。
【0023】
本明細書で前述したように、本発明は、難水溶性有効医薬成分(API)を扱うことを意図している。APIは、例えば、弱塩基性化合物である場合、pH6.8で1mg/mL以下の水溶解度を有し、弱酸性化合物である場合、pH1.2で1mg/mL以下の水溶解度を有し、中性又は非イオン性化合物では、生理的pHが1.0~8.0の間の任意のpHで1mg/mL以下の水溶解度を有することがある。APIの溶解度は、GIの生理的条件を網羅するために1~7.4の範囲のpHを有する水溶液250mLに最高用量強度を添加することによって決定できる。APIの最高用量強度が1~7.4の任意のpHの溶液250mLに溶解しない場合、APIは難水溶性であると考えられる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「弱塩基性化合物」は、任意の特定の新規化学物質、薬物、又は有効医薬成分への言及と同様に、塩基、薬学的に許容される塩、多形体、立体異性体、溶媒和物、エステル、及びこれらの混合物を含み、水性媒体中でプロトン化が不完全な化学塩基である。一実施形態では、本発明の組成物の弱塩基性化合物は、14未満の範囲の少なくとも1つのpKaを有する化合物を指すことができ、ここで、pKaは、測定又は計算によって得ることができる。別の一実施形態では、本発明の組成物の弱塩基性化合物は、14未満の少なくとも1つのpKaを有する化合物を指すことができ、これはより高いpHでより低い溶解度を有する生理的pHの間のpH依存性溶解度を有する。別の一実施形態では、本発明の組成物の弱塩基性薬物は、0.0~10.0の少なくとも1つのpKaを有する化合物を指すことができ、これは生理的pHが1.0~8.0の間ではpH依存性溶解度を有し、pH6.0~8.0付近で最も低い溶解度を有する。別の一実施形態では、弱塩基性化合物は、pH6.8で約1mg/mL以下の溶解度を有する。別の一実施形態では、弱塩基性化合物は、少なくとも1個の塩基性窒素原子を含む。更に別の一実施形態では、弱塩基性化合物は、14未満のpKaを有し、pH6.8で約1mg/mL以下の溶解度を有する。更に別の一実施形態では、弱塩基性化合物は、14未満のpKaを有し、少なくとも1個の塩基性窒素原子を含む。更に別の一実施形態では、弱塩基性化合物は、14未満のpKaを有し、pH6.8で1mg/mL以下の溶解度を有し、少なくとも1個の塩基性窒素原子を含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「弱酸性化合物」は、任意の特定の新規化学物質、薬物、又は有効医薬成分への言及と同様に、酸、薬学的に許容される塩、多形体、立体異性体、溶媒和物、エステル、及びこれらの混合物を含み、水性媒体中で脱プロトン化が不完全な化学塩基である。一実施形態では、本発明の組成物の弱酸性薬物は、14未満の少なくとも1つのpKaを有する化合物を指すことができ、ここで、pKaは、測定又は計算によって得ることができる。別の一実施形態では、本発明の組成物の弱酸性化合物は、14未満の少なくとも1つのpKaを有する化合物を指すことができ、これはより低いpHでより低い溶解度を有する生理的pHの間のpH依存性溶解度を有する。別の一実施形態では、本発明の組成物の弱酸性薬物は、0.0~10.0の少なくとも1つのpKaを有する化合物を指すことができ、これは生理的pHが1.0~8.0の間ではpH依存性溶解度を有し、pH1.0~2.0付近でより低い溶解度を有する。別の一実施形態では、弱酸性化合物は、pH1.0~2.0で約1mg/mL以下の溶解度を有する。別の一実施形態では、弱酸性化合物は、少なくとも1個の酸性官能基を含む。更に別の一実施形態では、弱酸性化合物は、14未満の少なくとも1つのpKaを有し、pH1.2で約1mg/mL以下の溶解度を有する。更に別の一実施形態では、弱酸性化合物は、14未満のpKaを有し、少なくとも1個の酸性官能基を含む。更に別の一実施形態では、弱酸性化合物は、14未満のpKaを有し、pH1.2で1mg/mL以下の溶解度を有し、少なくとも1個の酸性官能基を含む。
【0026】
用語「中性又は非イオン性化合物」は、任意の特定の新規化学物質、薬物、又は有効医薬成分への言及と同様に、多形体、立体異性体、溶媒和物、エステル、及びこれらの混合物を含む。本発明の組成物の中性又は非イオン性APIは、14未満のpH範囲で中性の形態を有する、又はイオン性官能基を有さない化合物を指すことができる。一実施形態では、中性又は非イオン性化合物は、-2~14.0のpHでpH非依存性溶解度を有する。別の一実施形態では、中性/非イオン性化合物は、-1~12.0のpHでpH非依存性溶解度を有する。別の一実施形態では、中性/非イオン性化合物は、0.0~10.0のpHでpH非依存性溶解度を有する。別の一実施形態では、中性又は非イオン性化合物は、1.0~8.0のpHでpH非依存性溶解度を有する。別の一実施形態では、中性又は非イオン性化合物は、1.0~8.0のpHでpH非依存性溶解度を有し、1.0~8.0のpHで1mg/mL以下の溶解度を有する。
【0027】
難水溶性のAPIは、本発明の医薬組成物中に、治療される系において治療効果を示すのに十分な量で含まれるべきである。所与のAPIの治療上有効な量についての知識は、当業者に既知である。
【0028】
このような組成物では、GI管の様々な水性環境にさらされたとき、使用したAPIが完全に又はかなりの部分が析出しないように注意しなければならない。むしろ、製剤は、薬物の溶解度を、好ましくは、関連媒体における前記APIの平衡溶解度の少なくとも1倍から数倍に一時的に高めるように作用しなければならず、それによって、APIをGI管の意図した部位で吸収できるようになる。
【0029】
前述のように、本発明に含まれるポリマー可溶化剤は、以下のクラス:有機酸のエステル及びラクトン、ジカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、又はジオール及びトリオールのエステル、エーテル、及びカーボネート、並びにこれらの混合物から選択される1種又は複数種の成分を含んでよい。ポリマー可溶化剤が可塑剤と呼ばれ得ることが認識されよう。
【0030】
好ましい一実施形態では、ポリマー可溶化剤として、リンゴ酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルクロノラクトン、及びD-(+)-グルクロン酸γ-ラクトンから選択される有機酸の1種又は複数種のエステル及び/又はラクトンが挙げられる。
【0031】
別の又は更に好ましい一実施形態では、ポリマー可溶化剤として、1種又は複数種のジカルボン酸及び/又はアジピン酸モノメチル、グルタル酸ジメチル、及びグルタル酸モノメチルから選択されるジカルボン酸のエステルが挙げられる。
【0032】
他の又はさらなる好ましい諸実施形態では、ポリマー可溶化剤として、グリセロールカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸1,2-ブチレン、グリセロールホルマール、DL-1,2-イソプロピリデングリセロール、1-ブトキシプロパン-2-オール、トリ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、イソソルビドジメチルエーテル、及びジアンヒドロ-d-グルシトールから選択されるジオール及び/又はトリオールの、1種又は複数種のエステル、エーテル、及びカーボネートが挙げられ得る。
【0033】
前述のように、本発明は、グリコールを含む。そのようなグリコールは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、テトラグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ブタンジオール、PEG400、及びポリグリセロールから選択することができるが、それらだけに限らない。好ましくは、グリコールは、プロピレングリコール(PG)を含む又はからなる。
【0034】
1種又は複数種のグリコールは、選択されたポリマー可溶化剤に対して、12:1~1:10の間、好ましくは12:1~1:4の間の範囲、より好ましくは12:1~1:2の間の範囲、更により好ましくは8:1~1:2の間の範囲、更により好ましくは8:1~1:1.5の間の範囲、最も好ましくは4:1~1:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。グリコールのポリマーを使用する場合、モル比は、前述のようにモノマー単位に基づいて決定される。
【0035】
本発明における液体中に含まれるDES構成成分、好ましくはNADES構成成分は、以下のクラス:有機酸、フェノール化合物、テルペノイド、脂肪酸、有機塩基、糖又は甘味料、グリコール、アミノ酸、第四級アンモニウム化合物、及びこれらのクラスの誘導体のうちの1つに付着する。
【0036】
一実施形態では、これは好ましい場合もあるが、(NA)DES構成成分として、1種又は複数種の有機酸を挙げることができ、この有機酸は、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸、ピメリン酸、グルコン酸、酢酸、及び/又はニコチンアミド等のそれらの誘導体のうちの1種であり得るが、それらだけに限らない。1種又は複数種の有機酸は、前述のように、選択されたグリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0037】
(NA)DES構成成分として、1種又は複数種のフェノール化合物を更に又は代替的に挙げることができ、このフェノール化合物は、プロペニルグアエトール、イソオイゲノール、トコフェロール、没食子酸プロピル、チラミン、ブチルパラベン、バニリンのうちの1種であり得るが、それらだけに限らない。1種又は複数種のフェノール化合物は、前述のように、選択されたグリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0038】
更に又は代替的に、(NA)DES構成成分として、1種又は複数種のテルペノイドを挙げることができ、このテルペノイドは、テルピネオール、ペリリルアルコール、及びメントールのうちの1種であり得るが、それらだけに限らない。1種又は複数種のテルペノイドは、前述のように、グリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0039】
更に又は代替的に、(NA)DES構成成分として、1種又は複数種の脂肪酸を挙げることができ、この脂肪酸は、ノナン酸(nonanic acid)、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸アスコルビルのうちの1種であり得るが、それらだけに限らない。1種又は複数種の脂肪酸は、前述のように、グリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、更により好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、より好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0040】
別の一実施形態では、(NA)DES構成成分として、1種又は複数種の有機塩基を挙げることができ、この有機塩基は、尿素及びグアニンのうちの1種であり得るが、それらだけに限らない。1種又は複数種の有機塩基は、前述のように、グリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0041】
更に、(NA)DES構成成分として、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、キシロース、スクロース、イノシトール、キシリトール、サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファームカリウム、及びリビトール、並びにそれらのリン酸塩からなる群から選択される1種又は複数種の糖又は甘味料を挙げることができるが、それらだけに限らない。1種又は複数種の糖又は甘味料は、前述のように、グリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0042】
更に、(NA)DES構成成分として、1種又は複数種のアミノ酸を挙げることができる。適切なアミノ酸は、例えば、アラニン、グルタミン酸、グルタミン酸塩、アスパラギン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、プロリン、及びスレオニンから選択することができるが、それらだけに限らない。1種又は複数種のアミノ酸は、前述のように、グリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0043】
別の一実施形態では、(NA)DES構成成分として、1種又は複数種の第四級アンモニウム化合物を挙げることができ、この第四級アンモニウム化合物は、塩化コリン、チアミン硝酸塩(thiamine mononitrate)、及びカルニチンのうちの1種であり得るが、それらだけに限らない。1種又は複数種の脂肪酸は、前述のように、グリコール又はポリマー可溶化剤成分に対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。
【0044】
本発明のさらなる一実施形態では、(NA)DES構成成分として、複数のグリコールを挙げることができる。これは特に、グリコールがプロピレングリコール(PG)を含む場合に当てはまる。追加のグリコールは、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、及びポリグリセロールから選択することができるが、それらだけに限らない。1種又は複数種の追加のグリコールは、PGに対して、0.1:1~4:1の間、好ましくは0.1:1~2:1の間の範囲、より好ましくは0.2:1~1.75:1の間の範囲、更により好ましくは0.3:1~1.5:1の間の範囲のモル比で含まれていてよい。グリコールのポリマーを使用する場合、モル比は、前述のように、モノマー単位に基づいて決定される。
【0045】
DESのpHの改変は、濃酸又は濃塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて行うことができる。
【0046】
医薬組成物は、基本的に経口施用を目的としている。即ち、APIは、胃腸管を介して治療されるヒト又は動物の系に入ることを意図している。
【0047】
これにより、常にではないにしても多くの場合、ポリマー沈澱阻害剤(PPI)が本発明のDESに組み込まれることになる。
【0048】
ポリマー沈澱阻害剤(PPI)は有用であることが実証されており、胃腸(GI)管における難水溶性APIの薬物溶解性及び生物学的利用能の向上に広く使用されている。この点において、Vasconcelesら、Drug Discovery Today. 2007年、12巻、1068~1075頁の刊行物並びにそれに記載のPPI及び/又はその中の参考文献に記載のPPIを参照されたく、それらのPPIは、API沈殿を低減するように作用し、それによって、過飽和状態が作り出され、その結果、GI管に浸透することができる分子の薬物生物学的利用能が向上する。
【0049】
したがって、本発明は更に、本発明によるDESにおける1種又は複数種の薬学的に許容される生体適合性PPIの可溶化を対象とする。好ましくは、1種又は複数種のPPIは、0.25:1~20:1の間のAPIに対する質量比で可溶化される。例えば、10mgのAPIが1mlのDESに可溶化されている場合、2.5~200mgの間のPPIがDESに可溶化される。本発明によるDESの好ましい諸実施形態では、PPIとAPIの質量比は、0.2:1~20:1の間、好ましくは0.35:1~10:1の間、又はより好ましくは0.5:1~5:1の間である。
【0050】
PPIは、好ましくは、選択されたグリコール/ポリマー可溶化剤画分をDES/NADES構成成分と組み合わせた後、DESに可溶化される。これについては本明細書の以下を参照されたい。
【0051】
本発明に有用なポリマー沈澱阻害剤は、pH範囲が14未満の水性媒体に溶解するポリマーを指す。これらは、極性又は荷電した官能基を有するイオン性又は中性ポリマーでよい。好ましくは、PPIは、水溶性ポリマーである。適切なPPIは、N-ビニルラクタムのホモポリマー及びコポリマー、特に、N-ビニルピロリドンのホモポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、N-ビニルピロリドン及び酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルのコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、例えばSoluplus(登録商標)等、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー又はポリオキシエチレンポリプロピレングリコールとしても知られるエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー、例えばPoloxamer(登録商標)等、ラウロイルポリオキシグリセリド、セルロースエステル及びセルロースエーテル;特にメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、高分子ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー等、酢酸ビニルポリマー、例えば酢酸ビニル及びクロトン酸のコポリマー等、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル(部分的に鹸化された「ポリビニルアルコール」とも呼ばれる)、ポリビニルアルコール、オリゴ及び多糖、例えば、カラゲナン、ガラクトマンナン、及びキサンタンガム等、並びにこれらの1種又は複数種の混合物からなる群から選択することができる。
【0052】
本質的に、本発明のDESの好ましい諸実施形態は、少なくとも5種の成分:グリコール、特定のポリマー可溶化剤、深共晶溶媒(好ましくは、天然の深共晶溶媒)構成成分、ポリマー沈澱阻害剤、及び有効医薬成分から構成される。
【0053】
更に別の好ましい一実施形態では、本発明のDESは崩壊剤も含む。崩壊剤は、水性環境内の製剤の溶解速度を増加させるポリマーである。これらの成分は一般に既知であり、溶解速度を増加させるために固体製剤で使用されるが、本発明のDESのような粘性液体製剤でも同じ機能を果たすことが分かった。崩壊剤(使用する場合)は、液体DES製剤全体に均一に混合する。
【0054】
崩壊剤は、使用する場合、DES組成物全体の質量に対して0.5%~10%の間の質量比で含まれる。
【0055】
適切な崩壊剤として、Kollidon CL(登録商標)(BASF(登録商標)社)、微結晶性セルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、キトサン、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらだけに限らない。
【0056】
本発明の医薬製剤の構成成分は、好ましくはすべてGRAS(Generally Recognized As Safe(一般的に安全と認められている))認証されたものであるが、少なくともすべてが、関連する用量において「薬学的に許容される」と見なされる。
【0057】
さらなる一態様では、本発明は、深共晶溶媒(DES)組成物の調製における、好ましくは医薬組成物の調製におけるグリコールとポリマー可溶化剤成分との組合せの使用であって、この組成物が、グリコールとポリマー可溶化剤成分との組合せを含み、このポリマー可溶化剤成分が、有機酸のエステル及びラクトン;ジカルボン酸;ジカルボン酸のエステル;並びにジオール及びトリオールのエステル、エーテル、及びカーボネート;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、グリコール及びポリマー可溶化剤成分が、グリコールとポリマー可溶化剤成分のモル比が12:1~1:10の間の範囲、好ましくは12:1~1:2の間の範囲、好ましくは8:1~1:1.5の間の範囲、より好ましくは4:1~1:1の間の範囲で使用される、使用に関する。
【0058】
別の一態様では、本発明は、医薬組成物を調製する方法に関する。この方法は、グリコール及び特定のポリマー可溶化剤を混合して、液体、好ましくは液体コアを作製する工程と;1種又は複数種のDES構成成分、好ましくはNADES構成成分を前記液体に添加して、DESを形成する工程と;1種又は複数種のAPIを前記DESに可溶化する工程とを含む。DES構成成分は、本明細書で前述したように、対象のAPIの溶解度を増加させるのに役立つ。
【0059】
この方法の好ましい一実施形態では、続いて、1種又は複数種のPPIを前記医薬組成物に可溶化する。
【0060】
本発明の方法の更に好ましい一実施形態では、崩壊剤を前記医薬組成物に混合する。
【0061】
次に、本発明を以下の実施例を参照して更に詳細に説明するが、それらは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0062】
以下の実施例において、次の略語を使用する:TEC-クエン酸トリエチル;PC-炭酸プロピレン;PG-プロピレングリコール;CA-クエン酸;MA-リンゴ酸;LA-乳酸;CC-塩化コリン;Nic-ニコチンアミド;TY-チラミン;AC-アセトイン;TG-テトラグリコール;ASP-パルミチン酸アスコルビル;DEM-リンゴ酸ジエチル;VA-バニリン;BPA-ブチルパラベン;PEG-ポリエチレングリコール400;PRG-没食子酸プロピル;BG-ブチレングリコール;ME-メントール;NL-ネロリドール;ISE-イソオイゲノール;SAC-サッカリン;TRO-トロメンタミン(Tromentamine)。
【0063】
(実施例1)
カルベジロール、シクロスポリン、フルフェナム酸、イブプロフェン、イトラコナゾール、及びケトコナゾールの溶解度を、本発明によるDES製剤の範囲で決定した。DES系は、プロピレングリコール、特定のポリマー可溶化剤、及び1種又は複数種の(NA)DES構成成分を含有した。表1は、試験薬物の概要、それらの水への溶解度、使用したDES組成物の詳細、及び試験薬物の各DES製剤への溶解度を示す。
【0064】
【0065】
【0066】
表1のデータから、試験した全DES製剤が、試験薬物の水への溶解度を超える濃度で試験薬物を可溶化するのに適していることが明らかであり、イブプロフェンでは少なくとも100倍、イトラコナゾールでは最大で10,000,000倍である。
【0067】
表1から分かるように、イトラコナゾールは、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、クエン酸、及びリンゴ酸を2:0.5:0.75:0.75のモル比で含む例示的なDESに、最大200mg/mLの濃度で溶解することが分かった。NADES構成成分を含まず、プロピレングリコール、炭酸プロピレンを2:0.5のモル比で含むDESでは、イトラコナゾールの溶解度は低かった(<25mg/ml)。この知見は、NADES構成成分の添加の効果を示している。
【0068】
(実施例2)
表2は、表1による例示的なDES系における広範なポリマー沈澱阻害剤の決定された最小溶解度を示す。
【0069】
示すように、DES液体は、広範なPPIを高濃度で可溶化することができる。
【0070】
実施例1で実証したAPI溶解度とPPI溶解度の両方における幅広さは、本発明によるAPI製剤の性能に寄与している。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
(実施例3)
プロピレングリコール、炭酸プロピレン、クエン酸、及びリンゴ酸を2:0.5:0.75:0.75のモル比で含むDES製剤に、イトラコナゾールを50mg/mlの濃度で添加した。50mg/mLの濃度のイトラコナゾールを含むDES製剤に、いくつかのポリマー沈澱阻害剤(PPI)を添加して、本発明による製剤を形成した。試料1に、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル(BASF(登録商標)社、Kollidon(登録商標)VA64)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースホットメルトエクストルージョン15LV(Dow Chemical(登録商標)社、AFFINISOL(登録商標)HPMC HME 15LV)を、PPIとイトラコナゾールの質量比が0.9:0.9:1になるように添加した。試料2に同じPPIを、PPIとイトラコナゾールの質量比が1.2:1.2:1になるように添加した。
【0077】
PPIを含まない比較試料(S3)と共に試料1(S1)及び試料2(S2)のAPI溶解特性を、装置2を使用して、標準USP溶解法に従って決定した((C)2001米国薬局方協会(The United States Pharmacopeia Convention))。
【0078】
表3は、試料1(S1)及び2(S2)並びにPPIを含まない比較製剤(S3)の組成の概要を示している。
【0079】
【0080】
ポリマー沈澱阻害剤(PPI)の性能を、USP溶解法2に従って分析した。この方法に従って、溶解容器中のイトラコナゾールの濃度が経時的に最も高い試料を、最高の性能を有するものとして分類した。
図1は、試料S1、S2、及び比較試料S3に関して、溶解容器中のイトラコナゾールの記録濃度(単位:マイクロモル/リットル)を時間(単位:分)の関数として表している。本発明による2種の製剤により、イトラコナゾールの濃度がより高くなり、このより高い濃度が経時的に維持される。これは、本発明のプラットフォームで製造した製剤を用いると、薬物溶解度が経時的に向上したことを示している。
【0081】
(実施例4)
APIのin vivo生物学的利用能を評価するために、本発明による2種のイトラコナゾール製剤を選択し、市販のイトラコナゾール製剤Sporanox(登録商標)(例えば、Janssen-Cilag SpA社;イタリア国)と比較した。
【0082】
このため、質量約300gの絶食させた雄のスプラーグ-ドーリーラット(n=3)に、製剤1(F1)、製剤2(F2)、及び比較製剤3(F3)をそれぞれ1.5mgずつ強制経口投与した。投与後、API及びその代謝産物であるヒドロキシル-イトラコナゾールの血漿中レベルを時間の関数として求めた。製剤を投与してから0、1、2、3、5、7、9、12、及び24時間後に試料を回収した。APIレベルを液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって決定した。
図2Aは、イトラコナゾール(IT)の平均測定血漿中レベル(mg/mL)を表す。
図2Bは、ヒドロキシル-イトラコナゾール(IT-OH)の平均測定血漿中レベル(mg/mL)を表す。
【0083】
図2から、製剤1、製剤2を別々に投与したラットのイトラコナゾール及びヒドロキシル-イトラコナゾールの平均血漿中レベルが、比較製剤を投与したラットの各々のAPIの血漿中レベルを超えていることで示されるように、製剤1及び2は、比較製剤に比べてイトラコナゾールの生物学的利用能が向上したことが観察され得る。
【0084】
(比較例1)
表4に示す組成物を調製した。これらの組成物は各々、クエン酸及び他の構成成分を含み、国際公開第97/00670号に開示の実施例1、2、3、5、8、及び9に基づいており、室温で高粘度であることが分かった。各組成物に、ポリマー沈澱阻害剤HPMCポリマー(Dow Chemical(登録商標)社、AFFINISOL(登録商標)HPMC HME 15LV)を50mg/mlの量で添加して、各組成物への溶解度を試験した。HPMCポリマーは、各組成物においてこの濃度では溶解しないことが分かった。
【0085】
【0086】
(実施例5)
比較例1に記載の各比較組成物に、ポリマー可溶化成分を表5に示す量で添加した。次いで、各改変組成物に、ポリマー沈澱阻害剤HPMCポリマー(Dow Chemical(登録商標)社、AFFINISOL(登録商標)HPMC HME 15LV)を50mg/mlの量で添加して、各改変組成物への溶解性を試験した。HPMCポリマーは、各改変組成物においてこの濃度で溶解することが分かった。
【0087】
【国際調査報告】