(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】電気的に増幅されたマリンバ
(51)【国際特許分類】
G10H 3/20 20060101AFI20220113BHJP
G10D 13/08 20200101ALI20220113BHJP
【FI】
G10H3/20
G10D13/08 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548505
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 US2019042301
(87)【国際公開番号】W WO2020091857
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521182629
【氏名又は名称】グロウカ,ジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グロウカ,ジョン
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478NN13
(57)【要約】
電気的に増幅された打楽器は、底面と、複数の基本ノードと、を有する少なくとも1つのトーンバーを有し、基本ノードのそれぞれは、チャネルによって定義されている。トーンバーの底面上の永久磁石は、基本ノードの1つに近接しており、且つ、最大トーンバー振動の場所とアライメントされてはいない。トーンバーの下方において位置決めされたピックアップコイルは、第1永久磁石とアライメントされており、且つ、増幅器との電気通信状態にある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に増幅された打楽器であって、
底面、第1基本ノード、及び第2基本ノードを有する少なくとも1つのトーンバーと、
前記第1基本ノードに近接した前記少なくとも1つのトーンバーの前記底面上の、但し、最大トーンバー振動の場所とはアライメントされていない、第1永久磁石と、
前記少なくとも1つのトーンバーの下方において位置決めされた、且つ、前記第1永久磁石とアライメントされた、少なくとも1つの第1ピックアップコイルと、
前記少なくとも1つの第1ピックアップコイルとの電気通信状態にある増幅器と、を有する打楽器。
【請求項2】
前記第1ピックアップコイルの下方の、且つ、前記第1永久磁石とは反対の極性を有する、第1バックバイアス磁石を更に有する、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項3】
前記第2基本ノードに近接した前記少なくとも1つのトーンバーの前記底面上において配置された第2永久磁石と、
前記少なくとも1つのトーンバーの下方において位置決めされた、且つ、前記第2永久磁石とアライメントされた、第2ピックアップコイルであって、前記増幅器との電気的通信状態にある第2ピックアップコイルと、を更に有する、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項4】
前記第1基本ノードのチャネルを通過する第1支持コードと、前記第2基本ノードのチャネルを通過する第2支持コードと、を更に有し、前記第1及び第2支持コードは、フレームの上方において前記少なくとも1つのトーンバーを吊り下げている、請求項3に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項5】
前記電気的に増幅された打楽器は、マリンバである、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項6】
前記少なくとも1つのトーンバーは、複数のトーンバーを有し、且つ、前記少なくとも1つの第1ピックアップコイルは、複数の第1ピックアップコイルを有する、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項7】
前記第1永久磁石は、前記少なくとも1つのトーンバーの前記第1基本ノードと第1遠端の間において配置されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項8】
前記第1永久磁石は、前記第1基本ノードの内側に配置されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項9】
前記少なくとも1つのトーンバーは、木製トーンバーである、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項10】
前記第1永久磁石は、前記少なくとも1つのトーンバーの前記底面内の空洞の内側において配置されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項11】
前記第1永久磁石は、前記少なくとも1つのトーンバーの前記底面に装着されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項12】
複数のピックアップコイルは、フレーム上において取り付けられた少なくとも1つのリボンに沿って線形で構成されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項13】
複数のピックアップコイルは、フレーム上において取り付けられた複数の線形で構成されたリボンに沿って線形で構成されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項14】
前記第1永久磁石は、前記第1基本ノードにおいて配置されている、請求項1に記載の電気的に増幅された打楽器。
【請求項15】
電気的に増幅された打楽器であって、
底面、第1基本ノード、及び第2基本ノードを有する少なくとも1つのトーンバーと、
前記第1基本ノードに近接した状態の、且つ、最大トーンバー振動の場所とはアライメントされていない、前記少なくとも1つのトーンバーの前記底面上の第1永久磁石と、
前記少なくとも1つのトーンバーの下方において位置決めされた、且つ、前記第1永久磁石とアライメントされた、少なくとも1つの第1ピックアップコイルと、
前記少なくとも1つの第1ピックアップコイルの下方の第1バックバイアス磁石と、
前記少なくとも1つの第1ピックアップコイルとの電気通信状態にある増幅器と、を有し、
複数のピックアップコイルは、フレーム上において取り付けられた少なくとも1つのリボンに沿って線形で構成されている、打楽器。
【請求項16】
前記少なくとも1つのトーンバーは、複数のトーンバーを有し、且つ、
前記少なくとも1つの第1ピックアップコイルは、複数の第1ピックアップコイルを有する、請求項15に記載の電気的に増幅された打楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月31日付けで出願された米国仮特許出願第62/753,075号の優先権を主張するものであり、この特許文献の内容は、そのすべてが本明細書に包含される。
【0002】
技術分野
[001] 本発明は、電気的に増幅されたマレットキーボード打楽器に関する。更に詳しくは、本発明は、マリンバ、シロフォン、又は複数のトーンバーを有するその他のインスツルメントなどの、電気的に増幅されたマレットキーボード打楽器に関し、この場合に、磁石が、そのノード及び電気ピックアップの近傍においてトーンバーのそれぞれに装着されている。
【背景技術】
【0003】
背景技術
[002] マリンバは、マレットキーボード打楽器のいくつかのタイプのうちの1つである。シロフォンと同様に、マリンバは、異なる長さの一連のトーンバーから構成されており、これらのトーンバーが、マレット又はハンマーによって打撃された結果、トーンバーの振動により、楽音が生成される。マリンバは、通常、トーンバーの下方を下向きに延在する増幅用の共鳴管を含む。
【0004】
[003] 電気インスツルメントの登場に伴って、マリンバ及び類似のインスツルメントを電気的に増幅するための試みが実施されている。通常は、マイクロフォンが、トーンバーの近傍において、或いは、共鳴器管内において、配置されている。一般に、マイクロフォンは、トーンバーの中心近傍において位置決めされており、その理由は、これが、インスツルメントによって生成されるサウンドの主要供給源であることが一般に受け入れられているからである。但し、それぞれのトーンバーごとに別個のマイクロフォンを使用すれば、不格好になり、且つ、実際的ではなくなる、のみならず、高価にもなる。又、これらの設計が、楽器の周りに配置される周辺マイクロフォンとの比較において、大きな利点を提供するものではないことも、一般に受け入れられている。
【0005】
[004] マリンバ及びシロフォンなどの打楽器を電気化するための代替的な試みの1つは、電気ギター及びその他の弦楽器において使用されているピックアップに類似した磁気リラクタンストランスデューサ内において電気信号を生成する能力を有する金属トーンバーにより、従来の木製トーンバーを置換することから構成されている。又、任意選択により、木製トーンバーは、ギタータイプのピックアップトランスデューサが電気信号を生成することを許容するべく装着される小さな金属のシートを有することもできる。但し、強磁性トーンバー又は木製トーンバーに対する金属アタッチメントは、これまでのところ、木製トーンバーの好ましい豊かな一連の倍音特性を生成する能力を有してはいない。
【0006】
[005] 又、トーンバーへの金属プレートの追加は、木製トーンバーを有する通常のマリンバのサウンドを忠実に複製する高品質電気信号を生成することに失敗している。従って、マイクロフォン又は磁気リラクタンストランスデューサを使用して、マリンバ及びシロフォンを電気化するための試みは、いずれも、これまでのところ、マリンバと、マリンバの特徴を示す周波数のアレイにおいて、微妙な共鳴、ハーモニクス、音色をキャプチャする方式と、を十分に増幅することに失敗している。従来のピックアップは、数平方インチにおいて凝縮されているギターとは異なり、大きなエリアにわたってピックアップするための物理的制限を有している。
【0007】
[006] トーンバーの一次ノードは、トーンバーをインスツルメントのフレームに接続している装着地点において見出される。演奏の際に、ノードは、実質的に且つ理論的に静止状態において留まっている。一般に、トーンバーのノードの近傍においてマイクロフォン又はその他のトランスデューサを配置することは、直観に反しており、その理由は、これらが、マリンバのサウンドを電気信号に変換する際に、非効率的なものになるからである。トーンバーは、通常、その振動の振幅が、少なくとも、弦楽器の弦によって生成される相対的に大きな振動を少なくとも1桁だけ下回っている、木材又はその他の固体材料から製造されている。従って、そのマイクロフォン及び/又はトランスデューサは、振動を検出するべく、共鳴管内において、或いは、トーンバーの中間の直接下方において、配置しなければならないものと一般に受け入れられている。残念ながら、この位置決めは、インスツルメントの特性を示すサウンドの損失を結果的にもたらす。
【0008】
[007]
図1は、基本ノード18を有するマリンバのトーンバー16の3つの最低振動モード10、12、及び14の誇張された例を示している。これらのモードのそれぞれにおいて、ノード18の位置は、発振していない。トーンバー16の異なる領域は、特定のモードに応じて、変化する量において発振している。基本周波数とも呼称される第1モード10を除いて、トーンバーのすべてのモードは、振幅がゼロである少なくとも更なる1つのノードを有する。第1モード10及び第3モード14において、トーンバー16の中心20は、最大振幅を有していることがわかる。但し、トーンバー16の中心20は、第2モード12のノードの場所であり、且つ、従って、このモードにおいては、ゼロの振幅を示している。
【0009】
[008] トーンバー16は、打撃された際に、単一モードのみにおいて振動するわけではない。その代わりに、トーンバーは、
図2に示されているように、すべてのモードの重畳によって形成される振動パターンを有する。簡潔性を目的として、
図2は、第1の3つのモード10、12、及び14の重畳のみを示している。当業者は、実際には、トーンバーの全体的な振動に寄与するいくつかの更なるモードが存在していることを理解するであろう。これらの複数のモードの共通的な特徴の1つは、これらのそれぞれのものが、その基本ノードにおいて静止状態において留まっている、という点にある。トーンバー16の真ん中において配置されたセンサは、偶数のモードから、まったく信号を検出することにならないであろう。但し、
図2に示されているように、振動の振幅及び周波数は、ノード18の近傍の場所22においてオーバーラップしている。従って、位置22において配置されたセンサは、バーのすべてのモードからの寄与から形成された振動パターンを示すことになる。
【0010】
[009] 現在のシステムの上述の欠点は、従来のシステムの問題のいくつかのものの概要の提供を意図したものに過ぎず、且つ、すべてを網羅することを意図したものではない。当技術分野の状態に伴うその他の問題及び様々な非限定的な実施形態のいくつかのものの対応する利益については、以下の詳細な説明を参照した際に、更に明らかとなろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[010] 以上の内容に鑑み、マリンバ、イディオフォン、又はトーンバーを有するマレットキーボード打楽器の固有のサウンド品質及び特性をキャプチャする能力を有する、トランスデューサを使用する電気的に増幅されたマリンバを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
[011] 複数の線形でアライメントされたトーンバーを有する、電気的に増幅されたマレットキーボード打楽器が開示されている。それぞれのトーンバーは、底面と、バーのそれぞれがフレームの上方において吊り下げられている複数の一次又は横断ノードと、を有する。トーンバーは、横断的に、捩れ的に、或いは、横方向に、振動している。磁石が、ノードに近接した状態において、トーンバーの底面に装着されている。フレームに装着されたピックアップコイルが、磁石とアライメントされており、且つ、トーンバーが打撃された際に、電気信号を増幅器に送信している。磁石は、外部に位置する、又は埋め込まれた、永久磁石又は電磁石であってよい。
【0013】
[012] 一実施形態において、電気的に増幅された打楽器は、底面と、第1ノードと、第2ノードと、を有する少なくとも1つのトーンバーを有する。基本ノードのそれぞれは、チャネルによって定義されている。トーンバーの底面上の永久磁石は、第1ノードに近接しており、且つ、最大トーンバー振動の場所とアライメントされてはいない。ピックアップコイルが、トーンバーの下方において位置決めされており、且つ、永久磁石とアライメントされている。増幅器が、ピックアップコイルとの電気通信状態にある。
【0014】
[013] 電気的に増幅された打楽器は、任意選択により、ピックアップコイルの下方において、バックバイアス磁石を含む。又、電気的に増幅された打楽器は、任意選択により、第2ノードの近傍においてトーンバーの底面上に配置された第2永久磁石と、少なくとも1つのトーンバーの下方において位置決めされた、且つ、第2永久磁石とアライメントされた、第2ピックアップコイルと、を含む。電気的に増幅された打楽器は、任意選択により、ノードのチャネルを通過し、これにより、フレームの上方において少なくとも1つのトーンバーを吊り下げている支持コードを含む。永久磁石は、任意選択により、トーンバーの第1ノードと遠端の間において配置されている。又、打楽器は、任意選択により、第1ノードの内側に配置された磁石を含む。永久磁石は、任意選択により、トーンバーの底面内の空洞の内側において配置されている。複数のピックアップコイルが、任意選択により、マリンバフレーム上において取り付けられたリボンに沿って線形で構成されている。
【0015】
[014] 従って、本発明の目的は、大規模な聴衆及びステージの環境において、改善されたサウンド品質及び効果的な増幅を有する電気的に増幅されたマリンバを提供する、という点にある。
【0016】
[015] 本発明のこれらの且つその他の目的及び利点については、本明細書及び添付の請求項を参照することにより、明らかとなろう。従って、以上においては、以下のその詳細な説明が更に十分に理解されうるように、且つ、当技術分野に対する本発明の寄与が更に十分に理解されうるように、本発明の相対的に重要な特徴について、かなり広範に概説した。後述することになる、且つ、添付の請求項の主題を形成することになる、本発明の特徴が存在している。
【0017】
図面の簡単な説明
[016] 以下の添付図面との関連において検討する際に、以下の詳細な説明を参照することにより、本発明及び付随するその利点及び特徴の更に十分な理解について、更に容易に理解することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の原理による打楽器のトーンバーの異なる振動モードの図である。
【
図2】本発明の原理による打楽器のトーンバーの異なる振動モードの重畳の図である。
【
図3】本発明の原理による打楽器のトーンバーの斜視図である。
【
図4】本発明の原理による打楽器の複数の並んだ状態のトーンバーの側面図である。
【
図5】本発明の原理による打楽器の一代替実施形態の正面図である。
【
図6】複数のピックアップコイルを有する、且つ、増幅器との電気通信状態にある、リボンの側面図である。
【
図7】本発明の原理による打楽器の一代替実施形態の正面図である。
【
図8】本発明の原理による打楽器の複数の並んだ状態のトーンバーの側面図である。
【
図9】本発明の原理による打楽器の別の代替実施形態の正面図である。
【
図10】本発明の原理による打楽器の別の代替実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態の説明
[027] 本発明は、以下の説明において記述されている、且つ、図面において示されている、構造の詳細に対する、且つ、コンポーネントの構成に対する、その適用に制限されるものではない。本発明は、その他の実施形態の能力を有し、且つ、様々な方法で実施及び実行される能力を有する。又、本明細書において利用されているフレーズ及び用語は、説明を目的としたものであり、且つ、限定として見なされてはならないことを理解されたい。
【0020】
[028] 開示されている主題については、図面を参照して説明するが、これらの図面においては、同一の参照符号が、全体を通じて、同一の要素を参照するべく、使用されている。以下の説明においては、説明を目的として、本開示の様々な実施形態の十分な理解を提供するべく、多数の特定の詳細事項が記述されている。但し、開示されている主題は、これらの特定の詳細事項を伴うことなしに、実施されうることが明らかであろう。その他の例において、周知の構造及び装置は、本明細書における様々な実施形態の説明を促進するべく、ブロック図の形態において示されている。
【0021】
[029] これに加えて、「又は(or)」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包含的な「又は」を意味するものと解釈されたい。即ち、そうではない旨が規定されていない限り、或いは、文脈から明らかでない限り、「Xは、A又はBを利用する(X employs A or B)」は、自然な包含的順列の任意のものを意味するものと解釈されたい。即ち、XがAを利用している、XがBを利用している、或いは、XがA及びBの両方を利用している、場合に、「Xは、A又はBを利用する」は、上述の例の任意のものの下において充足されている。更には、本明細書及び添付の図面において使用されている冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、一般に、そうではない旨が規定されていない限り、或いは、単数形に導かれることが文脈から明らかでない限り、「1つ又は複数の(one or more)」を意味するものと解釈されたい。これに加えて、本明細書において使用されている「ノード(node)」、「モード(mode)」、「周波数(frequency)」、「極値(extremum)」、「最大値(maxmum)」、及び「重畳(superposition)」という用語は、定在波の参照において使用されているその数学的意味を有する。図面の全体を通じて、図示の様々なコンポーネントは、必ずしも、正確な縮尺で描画されてはおらず、且つ、本発明の原理による、例えば、マリンバなどの、打楽器の特徴を強調表示する且つ識別する表現であるものと解釈されたい。「最大振動」の地点、位置、又は場所は、アンチノード、即ち、局所的な極値である振動の振幅を有するトーンバーのエリアを意味している。音楽的な観点において、モードは、様々な倍音を表している。「基本周波数」は、トーンバーの最低モードであり、且つ、「基本ノード」は、基本周波数の静止地点を意味している。又、これらは、トーンバーがケーブル又はピンによって吊り下げられている地点にも対応している。
【0022】
[030] 楽器の音質をキャプチャする電気的に増幅されたマリンバが開示されている。本発明は、主には、本明細書において、マリンバとの関係において記述されているが、当業者は、本発明が、その他のマレットキーボード打楽器と共にも使用されうることを理解するであろう。本発明の原理による電気的に増幅されたマリンバは、最大信号を示すトーンバー上の場所に近接した状態において、ではなく、そのノードの1つ又は両方において又はその近傍において、それぞれのトーンバーに内蔵された永久磁石を含む。電気コイルによって取り囲まれた磁性又は常磁性コアを有する、弦楽器に使用されるピックアップに類似したピックアップが、磁石の直接下方において配置されている。トーンバーが打撃された際に、トーンバー内の永久磁石の運動によって生成されるピックアップの周りの局所的磁界の変化が、ピックアップ内の電流を変化させる。電流の変化は、電気信号を生成し、これが、次いで、オーディオ信号を生成するべく増幅されている。トーンバー内の磁石の場所に起因して、様々なモード及びその振幅のすべてが、ピックアップによって検出される電気信号に寄与している。従って、ピックアップによって生成される電気信号は、トーンバーの重畳された倍音を含む、マリンバのサウンドを忠実に表している。
【0023】
[031]
図3は、本発明の原理によるマリンバトーンバー30の一端を示している。トーンバー30は、コード32によって吊り下げられている。トーンバー30は、木材又はプラスチックから製造されており、且つ、好ましくは、紫檀から製造されている。一般に、トーンバー30は、強磁性材料から形成されてはおらず、アルミニウムなどの非磁性金属から製造されうるであろう。コード32は、上述のように、振動モードとは無関係に、実質的に垂直方向において大きく発振しない、基本ノード34において配置された、トーンバー30を貫通するチャネル16を通じて延在している。磁石36が、トーンバー30の底面38内において埋め込まれている。この実施形態において、磁石36は、トーンバー30の基本ノード34と遠端40の間において、基本ノード34の近傍に埋め込まれている。ピックアップコイル42が、細長いリボン44に装着されており、細長いリボン44は、磁石35の直接下方に、或いは、その近傍に、位置するように、そのフレームのマリンバのキー支持レールの上部に配置されているか、或いは、これと一体化されている。トーンバー30が打撃された際に、磁石36は、トーンバー30の、いくつかのモード、或いは、倍音、の重畳によって形成されたパターンにおいて発振する。磁石36の発振の全体的な振幅は、相対的に小さく、且つ、磁石の代わりに、金属プレートが使用される場合には、高精度で又は正確に検出されることにならないであろう。但し、振動する磁石は、正確に検出される、且つ、ピッチ及び音色の相対的に微妙な側面を含む、トーンバー30によって生成される真のサウンドに実質的に忠実である、電気信号を生成する能力を有する、局所的な電磁界内の相対的にかなり大きな乱れを生成する。
【0024】
[032] 磁石36は、好ましくは、遠端40よりも基本ノード34に近接した状態において配置されており、且つ、一般には、ノード34と遠端40の間の中間地点よりも、基本ノード34から離れていてはならない。遠端40は、トーンバー30の振動の局所的最大値であり、且つ、従って、トーンバー30のいくつかのモードの共鳴を正確に検出するのに適してはいない。ピックアップコイル42は、垂直方向において、磁石36とアライメントされており、且つ、トーンバー30の底面38に実際的な範囲において近接した状態において配置されている。磁石36が、最大振動の地点において配置されてはいないことから、ピックアップコイル42は、局所的振動最大値におけるピックアップよりもトーンバーに近接した状態において位置決めすることができる。磁石の発振パターンは、トーンバー30の、モード、又は倍音、のすべてのものの周波数に依存している。又、本発明の原理による電気的に増幅されたマリンバは、ピックアップコイルから受け取られた電気信号をフィルタリングする、イコライズする、又はその他の方法で操作する、ための様々な電気コンポーネントをも含む。これらの装置については、当技術分野において周知であることから、本明細書における詳述を省略している。この実施形態のピックアップコイル42は、コイル48によって取り囲まれたフェライトコア46を含む。当業者は、これが、楽器の増幅においてピックアップのために使用されている通常のタイプのコイルではないことを理解するであろう。
【0025】
[033] シロフォン及びマリンバなどの、トーンバーを使用する打楽器は、通常、並んだ状態において構成された、且つ、少なくとも1つの、通常はいくつかの、オクターブをカバーする、複数のトーンバーを含む。従って、本発明の原理による電気的に増幅されたトーンバーのコンポーネントは、完成した打楽器を提供するべく、線形の構成において反復されている。
図2は、このような構成を示しており、この場合に、トーンバー30は、並んだ状態の一連のトーンバー30の一部分であり、これらのトーンバー30のそれぞれは、異なる長さを有し、これにより、異なる、但し、その他の面では同一の、トーンを生成している。トーンバー30は、リボン44を有するフレーム46上においてコード32によって支持されており、リボン44は、ピックアップコイル42が磁石36のそれぞれとアライメントされるように、フレーム46の上部に沿って配置されている。この実施形態において、磁石36は、底面38と同一平面上に位置するように、トーンバー30の底面内の空洞の内側において埋め込まれている。シロフォン及びマリンバは、いずれも、異なる数のトーンバーを有する、異なるサイズにおいて提供されていることから、6つ、或いは、6の倍数、のトーンバーを有するマリンバ又はシロフォンと共に使用されるのに適した、いくつかのピックアップコイル42を有するリボン44を提供することが望ましい場合がある。任意選択により、リボン44は、1つのオクターブをカバーするのに十分なピックアップコイルを含むことができる。それぞれ、6の任意の倍数の、或いは、任意の数の、オクターブを有する、シロフォン又はマリンバ上において使用されるように、このようなリボンの2つ以上を組み合わせることができる。
【0026】
[034]
図4は、ピックアップ42が磁石36とアライメントされるように、リボン44に沿って構成された磁石36及びピックアップ42をそれぞれが有する、複数のトーンバー30の側面図を示している。トーンバー30は、異なる、但し、その他の面では同一である、トーンを提供するべく、異なる長さを有する。リボン44は、マリンバのフレーム49上において休止している。又、
図4は、隣接するトーンバー30の間において配置された、且つ、コード32を支持する、ブレース39をも示している。
【0027】
[035]
図5は、本発明の原理による電気的に増幅されたトーンバー50の一代替実施形態を示している。トーンバー50は、トーンバーの設計において一般に見出される、且つ、トーンバー50の振動の振幅を一般に増大させるように機能する、薄い中央領域52を含む。トーンバー50は、ポケット56によって定義された2つの基本ノード54を有する。ピン57が、トーンバー50を支持するべく、キーレール支持部58から上向きに、且つ、ポケット56内に、延在している。ピン57は、トーンバー振動の減衰を低減又は防止するべく、ゴムなどの弾性材料から形成されたヘッド59を含む。又、ポケット56は、トーンバー50の減衰を防止するべく、詰め物を含むこともできる。磁石60は、ノードに近接した且つこれの内側の場所において、トーンバー50の底面62に付着されている。即ち、磁石60は、ノード54と中央領域52の間において位置決めされている。この実施形態において、磁石60は、トーンバー50の底面62に直接的に付着されており、且つ、トーンバー自体内の空洞内に配置されてはいない。磁石60は、ノード54に近接しており、且つ、最大振動、即ち、アンチノード、の領域内には位置してはいないことから、トーンバー50の、いくつかのモード、又は倍音、の重畳によって形成されたパターンにおいて発振する。
図5に示されている実施形態は、トーンバー30に内蔵された単一磁石36のみを有する
図3に示されている実施形態とは対照的に、それぞれのトーンバー50上において2つの磁石60を含んでいる。一般に、それぞれのトーンバー上における、1つではなく、2つの磁石の使用は、強力な信号を提供する。但し、本発明の原理に従って動作するには、単一の磁石/トーンバーのみで十分である。
【0028】
[036]
図5に示されているピックアップコイル64は、マリンバ又はシロフォンのフレーム58の上部に沿って配置されうる細長いリボン68に装着されている。磁石60をトーンバー50の底部62に付着させ、且つ、既存のシロフォン又はマリンバ上の磁石60の下方においてリボン68上のピックアップコイル64をアライメントする、ことが、相対的に簡単である。従って、既存の打楽器を電気的に増幅されたインスツルメントに変換するべく、これらの装置により、既存の打楽器を改造することができる。
図6には、8つのピックアップコイル64を有する単一オクターブリボン69と、増幅器81及び/又はその他の電子機器との電気通信のためのワイヤ80と、が示されている。この実施形態のピックアップコイル64は、ワイヤが巻回された電気コイル72によって取り囲まれた中央フェライトコア70を有する。これに加えて、ピックアップコイル64のそれぞれは、バックバイアス磁石74をも含む。バックバイアス磁石74は、永久磁石又は電磁石であってよい。バックバイアス磁石の使用は、局所的電磁界を安定化させ、これにより、ピックアップコイル64の感度を増大させる。金属プレート又は強磁性トーンバーの代わりに、バックバイアス磁石74の使用を磁石60の使用と組み合わせることにより、トーンバー50が打撃された際にピックアップコイル64によって生成される電気信号の品質が改善される。バックバイアス磁石は、フェライトコアに対するキー磁石の吸着と相互作用しており、その理由は、これが反対の極性を有するからである。又、この結果、トーンバーの減衰、或いは、振動の周波数に影響しうるトーンバー上における「ドラッグ」が、防止される。
【0029】
[037]
図7は、本発明の原理による電気的に増幅された打楽器において使用される電気的に増幅されたトーンバー90の別の代替実施形態を示している。トーンバー90は、トーンバー90が増大した振動振幅を示すことを許容する薄い中央領域92を有する。薄い中央領域92は、それぞれ、第1及び第2横方向領域91及び93の間に位置しており、これらの領域は、相対的にかなり厚い。又、トーンバー90は、フレーム98の上方においてトーンバー90を保持している、図示されてはいない、支持コードを収容するべく、それぞれ、チャネル96及び97によって定義された、第1基本ノード94及び第2基本ノード95をも含む。トーンバー90の底面102上の第1磁石100は、第1基本ノード94と第1遠端104の間において、ほぼ真ん中において位置決めされている。第1磁石100は、トーンバー90の底面102内の空洞106内において部分的に位置しており、且つ、更に、底面102から下向きに部分的に突出している。
図8は、並んだ状態において構成されたいくつかのトーンバーの第1横方向領域91の側面図を示している。チャネル96を通じて延在するコード132は、隣接するトーンバーの間において配置された一連のブレース134によって支持されている。
【0030】
[038] この実施形態において、第1ピックアップコイル110は、フレーム98の第1面112に内蔵されている。第1ピックアップコイル110は、フェライトコア114と、コイル116と、バックバイアス磁石118と、を含む。第1ピックアップコイル110は、フレーム98の第1面112から上向きに延在しており、更には、フレーム98の第1面112の内側において部分的に収容されている。第1ピックアップコイル110が上向きに延在している程度は、第1磁石100と第1ピックアップコイル110の間の距離を低減するべく、調節可能であってもよい。又、同様に、第1磁石100は、第1ピックアップコイル110に相対的に近接した状態となるべく、下向きに運動しうるように、垂直方向において調節可能であってもよい。第1磁石100は、トーンバー90内において永久的に固定されていてもよく、或いは、着脱自在であってもよい。又、ピックアップは、任意選択により、エポキシ又は電気埋込み用樹脂内に封入されてもよい。
【0031】
[039] 又、
図7に示されている実施形態は、トーンバー90の第2横方向領域93内に配置された、トーンバー90の底面102上の第2永久磁石120をも含む。第2永久磁石120は、ノード95の内側に位置するように、第2基本ノード95と中央領域92の間において位置決めされている。従って、第2永久磁石120は、第2基本ノード95よりも第2遠端105から更に離れている。第2永久磁石120は、空洞122内において収容されており、且つ、空洞122から外に下向きに部分的に延在している。第2永久磁石120は、最大振動の領域内ではなく、或いは、ノード95の近傍において位置決めされており、且つ、アンチノードに近接していないことから、第2ピックアップコイル124は、フレーム98の第2面126に内蔵されている。第2ピックアップコイル124は、中央フェライトコア126と、コア126の周りのコイル128と、バックバイアス磁石130と、を有する。第2ピックアップコイル124は、垂直方向において、第2永久磁石120とアライメントされている。
図7に示されている実施形態は、1つのノードとの関係において遠い位置において位置決めされた第1磁石及びピックアップと、第2ノードの内側において位置決めされた第2磁石及びピックアップと、を有する。この構成は、ピックアップコイルが、その個々のノードとの関係におけるその異なる場所に起因した、2つの磁石の微妙に異なる振動パターンに起因して、微妙に異なる電気信号の検出を許容することができる。
図8は、並んだ状態において構成されたいくつかのトーンバーの第1横方向領域91の側面図を示している。チャネル96を通じて延在するコード132は、隣接するトーンバーの間において配置された一連のブレース134によって支持されている。
【0032】
[040]
図9は、電気的に増幅されたマリンバの電気的に増幅されたトーンバー140の別の代替実施形態を示している。トーンバー140は、図示されてはいない支持コードを収容するべくチャネル144によって定義された基本ノード142を有する。磁石146が、トーンバー140の底面148に装着されている。フレーム152内に内蔵されたピックアップコイル150が、磁石146の下方に位置しており、且つ、垂直方向において、これとアライメントされている。この実施形態において、磁石146は、垂直方向において、ノード142とアライメントされている。ノードとアライメントされた磁石は、「揺動」し、これにより、局所的磁界の相対的に微妙な振動を生成することになる。このような磁石の揺動的振る舞いは、検出が相対的に困難でありうるが、依然として、増幅のための十分な信号を生成する。
【0033】
[041]
図10は、本発明の原理による電気的に増幅されたトーンバー160の別の代替実施形態を示している。トーンバー160は、ゴムヘッドを有する支持ピン165を収容するポケット164によって定義されたノード162を有する。内側磁石168は、ノード162の内側の場所に位置している。内側ピックアップコイル170は、垂直方向において、内側磁石168とアライメントされている。又、トーンバー160は、ノード162と遠端174の間において位置決めされた遠位磁石172をも有する。遠位磁石172は、遠端174よりもノード162に近接している。遠位ピックアップコイル175が、垂直方向において、遠位磁石168とアライメントされている。内側ピックアップコイル170は、フレーム176に内蔵されている。遠位ピックアップコイル174は、フレーム176の上部において配置されたリボン178に装着されている。内側ピックアップコイル170及び遠位ピックアップコイル175の磁界は、反対方向においてアライメントされている。
【0034】
[042] 以上、添付の図面との関係において本発明について説明したが、本明細書において図示又は示唆されているもの以外に、その他の且つ更なる変更が、本発明の精神及び範囲内において実施されうることを理解されたい。図面に示されている実施形態の説明は、その旨が明示的に通知されていない限り、請求項の用語の通常の且つ平易な意味を限定又は定義するものとして解釈してはならない。当業者は、本開示が基づいている概念は、本発明を実施するためのその他の構造、方法、及びシステムの設計用の基礎として容易に利用されうることを理解するであろう。従って、請求項は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲において、そのような等価な構造をも含むものと見なすことが重要である。
【国際調査報告】