(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】複数のばね補償される関節を有するロボットマニピュレータ
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B25J19/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548546
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 US2019058790
(87)【国際公開番号】W WO2020092516
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521186018
【氏名又は名称】アプトロニック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ペイン, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】フォックス, ジョナス アレクサン
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ, ブラッドリー アーロン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS15
3C707BS22
3C707BT08
3C707DS01
3C707ES03
3C707HS27
3C707HT36
3C707KS33
3C707KS35
3C707LU06
3C707LV18
(57)【要約】
ロボットマニピュレータは、それぞれが、4本のバーから成るリンケージ機構と、重力補償ばねと、ばね調節機構と、ばね調節アクチュエータと、慣性アクチュエータとを含む、複数のばね補償される関節を備える。重力補償ばねは、2つの異なるばね取付点において、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に結合され、重力負荷力に対向する揚力を提供する。ばね調節機構は、ばね取付点のうちの1つの位置を改変するように結合される。ばね調節アクチュエータは、ばね調節機構を移動させるように結合され、ばね取付点の位置を改変し、ばねによって提供される揚力の量を調節する。慣性アクチュエータは、4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードを加速させ、操作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
下側リンクに平行に配列される上側リンクと、第2の側面リンクに平行に配列される第1の側面リンクとを含む4本のバーから成るリンケージ機構であって、前記第1の側面リンクおよび第2の側面リンクは、それらの遠位端において、前記上側リンクおよび下側リンクの間に結合され、平行四辺形構造を形成する、4本のバーから成るリンケージ機構と、
前記平行四辺形構造に結合される少なくとも1つの重力補償ばねであって、前記少なくとも1つの重力補償ばねは、2つの異なるばね取付点において、前記4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に取り付けられる、少なくとも1つの重力補償ばねと、
ばね調節機構であって、前記ばね調節機構は、前記少なくとも1つの重力補償ばねの一端に結合され、前記ばね取付点のうちの少なくとも1つの位置を調節するように構成される、ばね調節機構と、
ばね調節アクチュエータであって、前記ばね調節アクチュエータは、前記ばね調節機構を移動させるように結合され、前記少なくとも1つのばね取付点の位置を改変し、前記装置によって取り扱われるペイロードが変化するときに前記少なくとも1つの重力補償ばねによって印加される重力補償トルクの量を動的に改変する、ばね調節アクチュエータと
を備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの重力補償ばねは、2つの重力補償ばねを含み、前記2つの重力補償ばねのそれぞれは、前記平行四辺形構造内に対角線的に結合され、2つの異なるばね取付点において、前記4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ばね調節機構は、スライダを備え、前記スライダは、前記少なくとも1つのばね取付点を前記第1の側面リンクに略平行である軸に沿って並進させることによって、前記少なくとも1つのばね取付点の位置を調節するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ばね調節機構は、スライダを備え、前記スライダは、前記少なくとも1つのばね取付点を前記下側リンクに略平行である軸に沿って並進させることによって、前記少なくとも1つのばね取付点の位置を調節するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ばね調節機構は、付加的な4本のバーから成るリンケージに結合されるスライダを備え、前記付加的な4本のバーから成るリンケージは、前記少なくとも1つのばね取付点を前記第1の側面リンクの境界を越えて延在させ、前記スライダが、前記少なくとも1つのばね取付点を、前記第1の側面リンクを通して延在する軸に平行ではない軸に沿って並進させることを可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
慣性アクチュエータをさらに備え、前記慣性アクチュエータは、前記4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、前記4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、前記ペイロードを加速させ、操作する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記慣性アクチュエータは、角柱線形アクチュエータであり、前記角柱線形アクチュエータは、前記4本のバーから成るリンケージ機構の下側リンクと第1の側面リンクとの間に対角線的に結合される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記慣性アクチュエータは、ステータと、ロータとを備える回転アクチュエータであり、前記ステータは、前記第1の側面リンクに結合され、前記ロータは、前記下側リンクに結合される、または、逆もまた同様である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記慣性アクチュエータは、角柱線形アクチュエータであり、前記角柱線形アクチュエータは、前記上側リンクに結合され、前記慣性アクチュエータの長手方向軸が前記上側リンクと平行であるように配列される、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記慣性アクチュエータの一端と前記第1の側面リンクとの間に結合されるスライダクランク機構をさらに備え、前記スライダクランク機構は、前記慣性アクチュエータの線形運動を前記装置の回転運動に変換するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
スライダクランク機構と、前記慣性アクチュエータと前記4本のバーから成るリンケージ機構の1つ以上のリンクとの間に結合される付加的な4本のバーから成るリンケージとをさらに備え、前記スライダクランク機構および前記付加的な4本のバーから成るリンケージは、前記慣性アクチュエータの線形運動を前記装置の回転運動に変換するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
ロボットマニピュレータであって、
複数のばね補償される関節であって、それぞれが、
下側リンクに平行に配列される上側リンクと、第2の側面リンクに平行に配列される第1の側面リンクとを含む4本のバーから成るリンケージ機構であって、前記第1の側面リンクおよび第2の側面リンクは、それらの遠位端において、前記上側リンクおよび下側リンクの間に結合され、平行四辺形構造を形成する、4本のバーから成るリンケージ機構と、
少なくとも1つの重力補償ばねであって、前記少なくとも1つの重力補償ばねは、2つの異なるばね取付点において、前記4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に結合され、重力負荷力(F
g)に対向する方向における揚力(F
b)を提供する、少なくとも1つの重力補償ばねと、
ばね調節機構であって、前記ばね調節機構は、前記少なくとも1つの重力補償ばねの一端に結合され、前記ばね取付点のうちの少なくとも1つの位置を改変する、ばね調節機構と、
ばね調節アクチュエータであって、前記ばね調節アクチュエータは、前記少なくとも1つのばね取付点の位置を改変し、前記少なくとも1つの重力補償ばねによって提供される前記揚力(F
b)の量を調節するように、前記ばね調節機構を移動させるように結合される、ばね調節アクチュエータと
を含む、複数のばね補償される関節
を備える、ロボットマニピュレータ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの重力補償ばねは、2つの重力補償ばねを備え、前記2つの重力補償ばねのそれぞれは、2つの異なるばね取付点において、前記4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に対角線的に結合される、請求項12に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項14】
前記ばね調節機構は、
前記第1の側面リンクに隣接し、それに平行に位置付けられる主ねじと、
前記主ねじおよび前記少なくとも1つの重力補償ばねの一端に結合されるスライダと
を備える、請求項12に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項15】
前記ばね調節アクチュエータは、前記主ねじに結合され、前記第1の側面リンクに略平行である軸に沿って前記主ねじを上下に並進させることによって、前記少なくとも1つのばね取付点の位置を調節するように構成される、請求項14に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項16】
前記ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードの前記力および/またはトルクを測定するように結合されるセンサと、
前記センサおよび前記ばね調節アクチュエータに結合されるフィードバックコントローラであって、前記フィードバックコントローラは、前記センサの出力を使用し、前記少なくとも1つのばね取付点を改変し、リアルタイムで前記揚力を動的に調節し、動的に変動するペイロード上の重力負荷力を補償するように構成される、フィードバックコントローラと
をさらに備える、請求項12に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項17】
各ばね補償される関節はさらに、慣性アクチュエータを備え、前記慣性アクチュエータは、前記4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、前記4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、前記ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードを加速させ、操作する、請求項12に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項18】
前記慣性アクチュエータは、角柱線形アクチュエータであり、前記角柱線形アクチュエータは、前記上側リンクに結合され、前記慣性アクチュエータの長手方向軸が前記上側リンクと平行であるように配列される、請求項16に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項19】
各ばね補償される関節はさらに、前記慣性アクチュエータと前記4本のバーから成るリンケージ機構の1つ以上のリンクとの間に結合されるスライダクランク機構と、Hoekenのリンケージとを備え、前記スライダクランク機構および前記Hoekenのリンケージは、前記慣性アクチュエータの線形運動を前記ばね補償される関節の回転運動に変換するように構成される、請求項18に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項20】
前記ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードの前記力および/またはトルクを測定するように結合されるセンサと、
前記センサおよび前記慣性アクチュエータに結合されるフィードバックコントローラであって、前記フィードバックコントローラは、前記センサの出力を使用し、前記慣性アクチュエータによって印加される力を動的に調節し、動的に変動するペイロードを操作し、加速させるように構成される、フィードバックコントローラと
をさらに備える、請求項18に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項21】
前記複数のばね補償される関節は、第1のばね補償される関節と、第2のばね補償される関節とを含む、請求項12に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項22】
第1のヨーアクチュエータと、第2のヨーアクチュエータと、第3のヨーアクチュエータとをさらに備え、
前記第1のヨーアクチュエータは、機械的接地に結合され、
前記第1のばね補償される関節は、前記第1のヨーアクチュエータと前記第2のヨーアクチュエータとの間に結合され、
前記第2のばね補償される関節は、前記第2のヨーアクチュエータと前記第3のヨーアクチュエータとの間に結合される、
請求項21に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項23】
前記第3のヨーアクチュエータに結合されるピッチアクチュエータと、前記ピッチアクチュエータに結合されるロールアクチュエータと、前記ロールアクチュエータに結合されるエンドエフェクタとをさらに備える、請求項22に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項24】
第1のヨーアクチュエータと、第2のヨーアクチュエータと、アクチュエータおよびエンドエフェクタの連続チェーンとをさらに備え、
前記第1のヨーアクチュエータは、機械的接地に結合され、
前記第1のばね補償される関節は、前記第1のヨーアクチュエータと前記第2のヨーアクチュエータとの間に結合され、
前記第2のばね補償される関節は、前記エンドエフェクタにさらに結合される、前記第2のヨーアクチュエータとアクチュエータの前記連続チェーンとの間に結合される、
請求項21に記載のロボットマニピュレータ。
【請求項25】
前記アクチュエータの連続チェーンは、
前記第2のばね補償される関節の一端に結合される第1のアクチュエータであって、前記第1のアクチュエータは、前記エンドエフェクタを傾斜軸を中心として回転させるように構成される、第1のアクチュエータと、
前記第1のアクチュエータに結合される第2のアクチュエータであって、前記第2のアクチュエータは、前記エンドエフェクタを上下に回転させるように構成される、第2のアクチュエータと、
前記第2のアクチュエータに結合される第3のアクチュエータであって、前記第3のアクチュエータは、前記エンドエフェクタを左右に回転させるように構成される、第3のアクチュエータと
を備える、請求項24に記載のロボットマニピュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Dr. Nicholas Paine、Jonas Alexan Fox、およびBradley Aaron Resh
(関連出願の相互参照)
本願は、その開示全体が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2018年10月30日に出願され、「Robotic Manipulator Having A Plurality Of Spring Compensated Joints」と題された、米国仮出願第No.62,752,802号の継続出願であり、その優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、ロボットマニピュレータに関し、より具体的には、ばね補償される関節を備える、ロボットマニピュレータに関する。
【背景技術】
【0003】
ロボットマニピュレータは、3次元(3-D)空間環境においてペイロードの位置および配向を操作するように設計される。いくつかのロボットマニピュレータは、関節運動される関節によって相互接続される、複数のロボットリンクを含む。過去70年にわたって、ロボットマニピュレータが、ロボットマニピュレータの各関節において歯車付き電動モータを含み、運動をもたらす、アクチュエータの連続チェーンを使用して構築されてきた。歯車付き電動モータは、電力の普及および電動モータの効率に起因して、アクチュエータタイプのための主な選択肢であり、これは、良好な重量あたり電力を有するが、不十分な重量あたりトルクを有する。結果として、伝動装置が、典型的には、電動モータの速さを低下させ、トルクを増加させるために使用される。今日では、大部分のロボットマニピュレータが、高度に歯車付きの電動モータの連続チェーンを使用して構築される。残念ながら、高度に歯車付きの電動モータを使用することが、これらのロボットマニピュレータの見掛け上の慣性を増加させ、環境との衝突が、可能性として考えられることであるとき、それらの安全性およびロバスト性を低減させる。
【0004】
概して、ロボットマニピュレータが、慣性、摩擦、重力、および外部トルクを含む、種々のトルクを受けることが、周知である。簡略図が、ロボットマニピュレータの単一のリンク10が受け得る、種々のトルクを実証するために、
図1に提供される。簡略図では、長さ(l)において重心(m)を有するリンク10が、リンクの自由移動端部12が、回転し、それによって、リンクの配向(θ)を調節することを可能にするような方法において、一端において、機械的接地20に取り付けられる。リンクの配向(θ)が変化するにつれて、リンク上のトルク(τ
a)も、以下に従って変化する。
【化1】
式中、「τ
i」は、慣性トルクを表し、「τ
b」は、粘性摩擦トルクを表し、「τ
g」は、重力トルクを表し、「τ
ext」は、リンク上の外部トルクを表す。慣性トルクは、リンクの加速度の大きさに依存する一方、粘性摩擦トルクは、リンクの速度に依存する。外部トルクは、例えば、ヒトがリンク上を押動するステップ等の外乱によって生成される。典型的には、他のトルク源よりはるかに大きい、重力トルクは、一定であり、位置に依存する。ロボットマニピュレータおよびそのペイロード上での重力の効果を補償するために、ロボットアクチュエータ内で使用されるアクチュエータは、典型的には、大量のトルクを発生させることが要求される。
【0005】
最近、重力平衡技法が、マニピュレータ上の重力トルク(τg)の少なくとも一部を相殺し、それによって、運動の間の要求されるアクチュエータ労力を減少させるために、ロボットマニピュレータにおいて使用されている。例えば、いくつかのロボットマニピュレータは、マニピュレータの基部関節内に重力補償ばねを組み込んでもよい。しかしながら、従来のロボットマニピュレータ内に含まれるばねは、これが、理想的には、その運動がペイロードを有保していないときの重力のない環境内にある場合と同様に挙動するように、ロボットの重量を釣り合わせるためのみに使用される、受動的要素である。ばねは、少なくとも部分的に、重力トルクを相殺するために使用されることができるが、従来のロボットマニピュレータは、マニピュレータが物体を拾い上げ、ペイロードの重量が変化するときにばねによって印加される重力補償トルクの量を動的に改変するための手段を提供しない。本限界は、ばねではなく、アクチュエータが、付加的なペイロードを持ち上げるために必要とされるトルクを提供しなければならないため、従来のロボットマニピュレータを有意に妨害する。
【0006】
長年にわたって、カウンタウェイト、ばね、および平行四辺形を使用する重力平衡機構が、平衡アームランプ、TV搭載部、およびビデオカメラ支持部等の多くの用途において使用され、負荷に対する重力の効果を補償している。これらの機構は、多くの用途において有用であるが、負荷に対する重力を補償するために受動的要素(すなわち、ばね)のみを使用する。負荷を空間環境の中で移動させるために、機構のオペレータまたはユーザが、負荷を加速させ、操作するために必要とされる力を印加しなければならない。
【0007】
例えば、
図2Aは、反対のリンクの並進を可能にするが、その回転を可能にしない方法において、リンク32間の運動を制約する、n個の平行四辺形(例えば、4本のバーから成るリンケージ)の連続チェーンを含む、重力平衡機構30の概念図を提供する。本性質のため、平行四辺形の中の1つのリンクが、機械的に接地される場合、その反対側(すなわち、自由移動側)に印加される任意のトルクが、機構を通して接地に直接伝送される。重力平衡機構30の自由移動側に印加される重力負荷を補償するために、重力補償ばね(k
i・・・k
n)が、各平行四辺形内に、取付点AとBとの間に対角線的に取り付けられてもよい。そのような様式において結合されると、ばねは、負荷上の重力(F
g)に対向する、揚力(F
b)を提供する。
【0008】
図2Bは、重力補償ばね(k
i)がばね取付点AおよびBにおいて平行四辺形の2つのリンクの間に対角線的に取り付けられるときに
図2Aに示される単一の平行四辺形内で発生される、張力および圧縮力(F
a、F
b、およびF
c)を図示する。
図2Bに示されるように、平行四辺形内に発生される力は、重力補償ばねとこれが接続されるリンクとの間に形成される三角形の幾何学的長さに比例する。力ベクトルの加算を使用すると、張力および圧縮力は、以下のように表現され得る。
【化2】
式中、「a」は、取付点Aと平行四辺形の1つの角との間の長さであり、「b」は、取付点Bと平行四辺形の同一の角との間の長さであり、「c」は、ばねの長さである。上記の方程式では、「F
c」は、長さ「c」のばねによって発生される、復元力であり、「F
b」は、重力負荷力(F
g)に対向する、長さ「b」に沿って発生される、揚力であり、「F
a」は、長さ「a」に沿って発生される、引張力である。
【0009】
理想的なばねの場合では、重力補償ばねによって提供される揚力(F
b)は、以下のように表現され得る。
【化3】
式中、「k」は、ばね定数である。理想的なばねに関して、揚力(F
b)は、ばね長(c)から独立しており、したがって、いかなる配向(θ)に関しても一定である。言い換えると、理想的なばねを伴って構成されると、重力平衡機構30は、外力またはトルクが、固定される重力負荷力(F
g)のために機構の任意の配向(θ)において重量を平衡させるために必要とされないため、等弾性を呈する。しかしながら、非ゼロの自由長を有する実際のばねは、配向(θ)から独立している、理想的なばね特性を再現するために、法外に大きいばねを要求する。実際のばねを伴って構成されると、ばねによって提供される揚力(F
b)は、多くの場合、上側位置において低すぎ、下側位置において高すぎ、全ての配向において等弾性挙動を呈さない、重力平衡機構30をもたらす。
【0010】
概して、重力平衡機構の等弾性挙動が、ばね取付点Bを移動させることによって、上側および下側位置において改良され得ることが、周知である。例えば、米国特許第7,618,016号は、カメラ安定デバイスのための等弾性の支持アームの形態における重力平衡機構の実践的実装を開示する。第‘016号特許において説明される等弾性の支持アームは、ばねによって上向きに付勢される平行四辺形リンクを使用し、オペレータが手動でばね終端高を調節し、平行四辺形リンクの側面からオフセットし得る、機構を提供する。そのような調節は、オペレータによって回転され、(a)ばね取付点を上昇/降下させ、ばねによって提供される揚力を増加/減少させる、および/または(b)ばね取付点をリンクの側面から離れるように/それに向かって枢動させ、上側および下側位置における重力平衡を増加/減少させ得る、調節可能なノブによって、第‘016号特許の一実施形態において提供される。
【0011】
第‘016号特許に開示される手動のばね調節手段は、極端位置における支持アームの等弾性挙動を改良するために使用されることができるが、カメラ安定デバイスのオペレータは、ばね調節機構を調節すること、および具体的なペイロードを加速および操作するために必要な力を印加することに関わる。オペレータは、手動でばね位置を調節し(例えば、1つ以上のノブを調節することによって)、具体的なペイロードに適応しなければならないため、第‘016号特許に開示される等弾性の支持アームは、動作の全体を通して動的に変化するペイロードを支持することはできない。これは、カメラ撮影者の用途のために容認可能であるが、絶えず変化するペイロードを取り扱うロボットマニピュレータにとっては不十分である。加えて、第‘016号特許に開示される等弾性の支持アームは、直交座標空間内にペイロード(例えば、カメラ)を位置付けるために使用されることができるが、平行四辺形リンクは、支持アームの基部フレームに平行なままであり、したがって、ペイロードの配向を変化させることはできない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
装置およびロボットマニピュレータの種々の実施形態の以下の説明は、添付の請求項の主題をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
一実施形態によると、本開示による装置は、概して、4本のバーから成るリンケージ機構と、少なくとも1つの重力補償ばねと、ばね調節機構と、ばね調節アクチュエータとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本装置は、例えば、ロボットマニピュレータ内に含まれる、ばね補償される関節であってもよい。他の実施形態では、本装置は、重力補償機構であってもよい。
【0014】
開示される装置では、4本のバーから成るリンケージ機構は、概して、下側リンクに平行に配列される、上側リンクと、第2の側面リンクに平行に配列される、第1の側面リンクとを含んでもよい。第1および第2の側面リンクは、それらの遠位端において、上側および下側リンクの間に結合され、平行四辺形構造を形成してもよい。少なくとも1つの重力補償ばねは、平行四辺形構造に結合されてもよく、2つの異なるねじ取付点において、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの重力補償ばねは、そのそれぞれが、平行四辺形構造内に対角線的に結合され、2つの異なるばね取付点において、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に取り付けられ得る、2つの重力補償ばねを含んでもよい。
【0015】
ばね調節機構は、少なくとも1つの重力補償ばねの一端に結合され、ばね取付点のうちの少なくとも1つの位置を調節してもよい。ばね調節アクチュエータは、ばね調節機構を移動させるように結合され、少なくとも1つのばね取付点の位置を改変し、本装置によって取り扱われるペイロードが変化するときに重力補償ばねによって印加される、重力補償トルクの量を動的に改変してもよい。
【0016】
本開示では、ばね調節機構は、種々の異なる方法において実装されてもよい。いくつかの実施形態では、ばね調節機構は、第1の側面リンクに略平行である軸に沿って、または下側リンクに略平行である軸に沿って少なくとも1つのばね取付点を並進させることによって、少なくとも1つのばね取付点の位置を調節するように構成される、スライダを含んでもよい。他の実施形態では、ばね調節機構は、付加的な4本のバーから成るリンケージに結合される、スライダを含んでもよい。そのような実施形態では、付加的な4本のバーから成るリンケージは、少なくとも1つのばね取付点を第1の側面リンクの境界を越えて延在させ、スライダが、少なくとも1つのばね取付点を、第1の側面リンクを通して延在する軸に平行ではない、軸に沿って並進させることを可能にしてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、本装置はさらに、4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、ペイロードを加速および操作し得る、慣性アクチュエータを含んでもよい。
【0018】
本開示では、慣性アクチュエータは、種々の異なる方法において実装されてもよい。いくつかの実施形態では、慣性アクチュエータは、4本のバーから成るリンケージ機構の下側リンクと第1の側面リンクとの間に対角線的に結合される、角柱線形アクチュエータであってもよい。他の実施形態では、慣性アクチュエータは、ステータと、ロータとを備える、回転アクチュエータであってもよく、ステータは、第1の側面リンクに結合され、ロータは、下側リンクに結合される、または逆もまた同様である。さらに他の実施形態では、慣性アクチュエータは、上側リンクに結合され、慣性アクチュエータの長手方向軸が上側リンクと平行であるように配列される、角柱線形アクチュエータであってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、本装置はさらに、慣性アクチュエータの一端と第1の側面リンクとの間に結合される、スライダクランク機構を含んでもよい。そのような実施形態では、スライダクランク機構は、慣性アクチュエータの線形運動を本装置の回転運動に変換するように構成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、本装置はさらに、スライダクランク機構と、慣性アクチュエータと4本のバーから成るリンケージ機構の1つ以上のリンクとの間に結合される、付加的な4本のバーから成るリンケージとを含んでもよい。そのような実施形態では、スライダクランク機構および付加的な4本のバーから成るリンケージは、慣性アクチュエータの線形運動を本装置の回転運動に変換するように構成されてもよい。
【0021】
一実施形態によると、本開示によるロボットマニピュレータは、概して、アクチュエータの連続チェーンと、ロボットマニピュレータが、空間環境においてそのペイロードの位置および配向を操作することを可能にする、複数のばね補償される関節とを含んでもよい。ロボットマニピュレータの各ばね補償される関節は、概して、4本のバーから成るリンケージ機構と、少なくとも1つの重力補償ばねと、ばね調節機構と、ばね調節アクチュエータとを含んでもよい。
【0022】
4本のバーから成るリンケージ機構は、下側リンクに平行に配列される、上側リンクと、第2の側面リンクに平行に配列される、第1の側面リンクとを含んでもよい。第1および第2の側面リンクは、それらの遠位端において、上側および下側リンクの間に結合され、平行四辺形構造を形成してもよい。少なくとも1つの重力補償ばねは、2つの異なるばね取付点において、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に結合され、ペイロード上に、重力(Fg)に対向する方向における揚力(Fb)を提供してもよい。ばね調節機構は、少なくとも1つの重力補償ばねの一端に結合されてもよく、ばね取付点のうちの少なくとも1つの位置を改変するように構成されてもよい。ばね調節アクチュエータは、少なくとも1つのばね取付点の位置を改変し、重力補償ばねによって提供される揚力(Fb)の量を動的に調節するように、ばね調節機構を移動させるように結合されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの重力補償ばねは、そのそれぞれが、2つの異なるばね取付点において、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間に対角線的に結合され得る、2つの重力補償ばねを含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、ばね調節機構は、第1の側面リンクに隣接し、それに平行に位置付けられる、主ねじと、主ねじおよび少なくとも1つの重力補償ばねの一端に結合される、スライダとを含んでもよい。そのような実施形態では、ばね調節アクチュエータは、主ねじに結合され、第1の側面リンクに略平行である、軸に沿って主ねじを上下に並進させることによって、少なくとも1つのばね取付点の位置を調節するように構成されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、ロボットマニピュレータはさらに、センサと、センサおよびばね調節アクチュエータに結合される、フィードバックコントローラとを含んでもよい。センサは、ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードの力および/またはトルクを測定するように結合されてもよい。フィードバックコントローラは、センサの出力を使用し、少なくとも1つのばね取付点を改変し、リアルタイムで揚力を動的に調節し、動的に変動するペイロード上の重力負荷力を補償するように構成されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、各ばね補償される関節はさらに、4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードを加速させ、操作する、慣性アクチュエータを含んでもよい。いくつかの実施形態では、慣性アクチュエータは、4本のバーから成るリンケージ機構の上側リンクに結合され、慣性アクチュエータの長手方向軸が上側リンクと平行であるように配列される、角柱線形アクチュエータであってもよい。いくつかの実施形態では、各ばね補償される関節はさらに、慣性アクチュエータと4本のバーから成るリンケージ機構の1つ以上のリンクとの間に結合される、スライダクランク機構と、Hoekenのリンケージとを含んでもよい。そのような実施形態では、スライダクランク機構およびHoekenのリンケージは、慣性アクチュエータの線形運動をばね補償される関節の回転運動に変換するように構成されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、ロボットマニピュレータはさらに、センサと、センサおよび慣性アクチュエータに結合される、フィードバックコントローラとを含んでもよい。センサは、ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードの力および/またはトルクを測定するように結合されてもよい。フィードバックコントローラは、センサの出力を使用し、慣性アクチュエータによって印加される力を動的に調節し、動的に変動するペイロードを操作し、加速させるように構成されてもよい。
【0028】
一実施形態では、ロボットマニピュレータは、ロボットマニピュレータを上下に移動させるように構成される、複数のばね補償される関節と、ロボットマニピュレータを左右に枢動させるように構成される、複数のヨーアクチュエータと、エンドエフェクタを上下に移動させるように構成される、ピッチアクチュエータと、エンドエフェクタを回転させるように構成される、ロールアクチュエータとを含んでもよい。1つの例示的実装では、ロボットマニピュレータは、機械的接地に結合される、第1のヨーアクチュエータと、第1のヨーアクチュエータと第2のヨーアクチュエータとの間に結合される、第1のばね補償される関節と、第2のヨーアクチュエータと第3のヨーアクチュエータとの間に結合される、第2のばね補償される関節と、第3のヨーアクチュエータに結合される、ピッチアクチュエータと、ピッチアクチュエータに結合される、ロールアクチュエータと、ロールアクチュエータに結合される、エンドエフェクタとを含んでもよい。
【0029】
別の実施形態では、ロボットマニピュレータは、ロボットマニピュレータを上下に移動させるように構成される、複数のばね補償される関節と、ロボットマニピュレータを左右に枢動させるように構成される、複数のヨーアクチュエータと、アクチュエータの連続チェーンと、エンドエフェクタとを含んでもよい。1つの例示的実装では、ロボットマニピュレータは、機械的接地に結合される、第1のヨーアクチュエータと、第1のヨーアクチュエータと第2のヨーアクチュエータとの間に結合される、第1のばね補償される関節と、第2のヨーアクチュエータと、さらに、エンドエフェクタに結合される、アクチュエータの連続チェーンとの間に結合される、第2のばね補償される関節とを含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、アクチュエータの連続チェーンは、第2のばね補償される関節の一端に結合される、第1のアクチュエータと、第1のアクチュエータに結合される、第2のアクチュエータと、第2のアクチュエータに結合される、第3のアクチュエータとを含んでもよい。第1のアクチュエータは、エンドエフェクタを傾斜軸を中心として回転させるように構成されてもよく、第2のアクチュエータは、エンドエフェクタを上下に回転させるように構成されてもよく、第3のアクチュエータは、エンドエフェクタを左右に回転させるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示の他の利点が、以下の詳細な説明の熟読および付随の図面の参照に応じて明白な状態になるであろう。
【0032】
【
図1】
図1(先行技術)は、単一のリンクロボットマニピュレータが受ける種々のトルクを実証する、簡略図である。
【0033】
【
図2A】
図2A(先行技術)は、n個の平行四辺形(例えば、4本のバーから成るリンケージ)の連続チェーンを備える、重力平衡システムの概念図であり、各平行四辺形は、取付点AおよびBにおいて、平行四辺形の2つのリンクの間に対角線的に結合される、重力補償ばねを含む。
【0034】
【
図2B】
図2B(先行技術)は、
図2Aに示されるリンケージおよび重力補償ばね内で発生される、張力および圧縮力を図示する、ベクトル図である。
【0035】
【
図3】
図3は、複数のばね補償される関節を有する、ロボットマニピュレータの一実施形態を図示する、側面斜視図であり、各関節は、重力補償ばねと、ばね調節機構と、ばね調節アクチュエータと、慣性アクチュエータとを含む。
【0036】
【
図4】
図4は、ばね取付点Bに位置付けられるばね調節機構を描写する、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図である。
【0037】
【
図5】
図5は、ばね取付点Aに位置付けられるばね調節機構を描写する、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図である。
【0038】
【
図6】
図6は、ばね調節機構の代替実施形態を描写する、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図である。
【0039】
【
図7】
図7は、関節の側面リンクと下側リンクとの間に結合される慣性アクチュエータを描写する、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図である。
【0040】
【
図8】
図8は、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図であり、関節は、第1の代替実施形態による、慣性アクチュエータを含む。
【0041】
【
図9】
図9は、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図であり、関節は、第2の代替実施形態による、慣性アクチュエータを含む。
【0042】
【
図10】
図10は、
図3のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、単一のばね補償される関節の簡略図であり、関節は、第3の代替実施形態による、慣性アクチュエータを含む。
【0043】
【
図11】
図11は、複数のばね補償される関節を有するロボットマニピュレータの別の実施形態を図示する、側面斜視図であり、各関節は、少なくとも1つの重力補償ばねと、ばね調節機構と、ばね調節アクチュエータと、慣性アクチュエータとを含む。
【0044】
【
図12】
図12は、単一のばね補償される関節、および
図11のロボットマニピュレータ内に含まれ得る、アクチュエータの連続チェーンの側面図である。
【0045】
【0046】
本開示は、種々の修正および代替形態を受けやすいが、その具体的な実施形態が、実施例として図面に示され、本明細書に詳細に説明されるであろう。しかしながら、図面およびその詳細な説明が、本開示を開示される特定の形態に限定することを意図しておらず、逆に、本開示が、添付の請求項によって定義されるような本開示の精神および範囲に該当する全ての修正、同等物、および代替物をカバーするものとすることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図3-13は、複数のばね補償される関節を含む、ロボットマニピュレータの種々の実施形態を描写する。下記により詳細に説明されるように、開示されるロボットマニピュレータの各関節は、4本のバーから成るリンケージ機構と、2つの異なるばね取付点において、4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合される、少なくとも1つの重力補償ばねと、重力補償ばねの一端に結合され、ばね取付点のうちの少なくとも1つの位置を調節するように構成される、ばね調節機構と、少なくとも1つのばね取付点の位置を改変し、ばねによって提供される揚力(F
b)を調節するように結合される、ばね調節アクチュエータと、4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、ロボットアクチュエータによって取り扱われるペイロードを加速させ、操作する、慣性アクチュエータとを含んでもよい。
【0048】
重力平衡技法を利用する、従来の重力平衡機構およびロボットマニピュレータとは異なり、
図3-13に描写されるロボットマニピュレータは、能動的作動およびフィードバック制御を使用し、ばねによって提供される揚力の量を調節し、ペイロードが変化するときにばねによって印加される、重力補償トルクの量を動的に改変する。これは、開示されるロボットマニピュレータが動的に変動するペイロードとの重力平衡を維持することを可能にし、重量にかかわらず、ペイロードを加速させ、操作するために必要とされるアクチュエータ労力を低減させる。
【0049】
図3は、本開示の一実施形態による、複数のばね補償される関節110を有する、ロボットマニピュレータ100の概念図である。
図3に示される実施形態では、ロボットマニピュレータ100は、第1のばね補償される関節110Aと、第2のばね補償される関節110Bとを含む。2つのみのばね補償される関節が、
図3に示されるが、ロボットマニピュレータ100が、1つ以上の付加的な関節およびアクチュエータを含み、より大きい範囲の運動を提供し得ることに明白に留意されたい。
【0050】
下記により詳細に説明されるように、ロボットマニピュレータ100の各ばね補償される関節110は、4本のバーから成るリンケージ機構(111、112、113、114)と、重力補償ばね115と、ばね調節機構116と、ばね調節アクチュエータ117と、慣性アクチュエータ118とを含む。いくつかの実施形態では、開示されるばね補償される関節の1つ以上の構成要素は、本明細書に説明される機能性を留保しながら、
図3に明示的に描写されるものと異なるように構成および/または実装されてもよい。本開示は、そのような構成および代替実装全てを包含すると見なされる。
【0051】
図3に示される実施形態では、第1のばね補償される関節110Aが、一端において、機械的接地に結合される、第1のヨーアクチュエータ120Aに結合される。第1のばね補償される関節110Aの反対端部が、ひいては、第2のばね補償される関節110Bの一端に結合される、第2のヨーアクチュエータ120Bに結合される。第2のばね補償される関節110Bの反対端部が、ひいては、ピッチアクチュエータ130、ロールアクチュエータ140、およびエンドエフェクタ150に結合される、第3のヨーアクチュエータ120Cに結合される。ロボットマニピュレータ100内に含まれる、ヨーアクチュエータ120、ピッチアクチュエータ130、ロールアクチュエータ140は、マニピュレータの位置および配向を変化させるために駆動され得る、慣性アクチュエータである。
【0052】
図3に示されるロボットマニピュレータ100は、ロボットマニピュレータが、3-D空間環境においてそのペイロードの位置および配向を制御することを可能にする、ばね補償される関節およびアクチュエータの連続チェーンを含む。例えば、各ヨーアクチュエータ120A、120B、および120Cは、重力ベクトルに対して直交する平面においてロボットマニピュレータを左右に枢動させるように構成される一方、ばね補償される関節110Aおよび110Bは、関節配向角θを調節することによってロボットマニピュレータを上下に移動させるように構成される。自由移動端部(例えば、ロボットマニピュレータの手首部分)において、ヨーアクチュエータ120Cは、エンドエフェクタ150を左右に枢動させるように構成され、ピッチアクチュエータ130は、エンドエフェクタ150を上下に回転させるように構成される一方、ロールアクチュエータ140は、エンドエフェクタをその主軸の周囲で回転させるように構成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、ヨーアクチュエータ120、ピッチアクチュエータ130、およびロールアクチュエータ140は、実質的に任意のタイプの回転アクチュエータ(例えば、電気式、油圧式等)を伴って実装されてもよい。1つの例示的実装では、ヨーアクチュエータ120、ピッチアクチュエータ130、およびロールアクチュエータ140は、それぞれ、ギヤボックスまたは駆動トレインに結合される電動モータを含む、ある形態の歯車付き電磁回転アクチュエータを伴って実装されてもよい。他の実施形態では、ヨーアクチュエータ120は、アクチュエータの線形運動を回転運動に変換するための付加的な手段が、提供される場合、線形アクチュエータを伴って実装されてもよい。例えば、ヨーアクチュエータ120が、線形アクチュエータを伴って実装される場合、付加的なスライダクランク機構が、各関節において提供され、関節において、線形アクチュエータの線形運動を回転運動に変換することができる。
【0054】
別の実施形態では、アクチュエータの実質的に異なる構成が、ロボットマニピュレータ100の自由移動端部(例えば、手首部分)において、ヨーアクチュエータ120C、ピッチアクチュエータ130、およびロールアクチュエータ140の代わりに使用されてもよい。
図3に示される実施形態と同様に、代替の手首設計は、最後のばね補償される関節(例えば、関節110B)とエンドエフェクタ150との間に直列に結合される、3つの回転アクチュエータを含んでもよい。しかしながら、代替の手首設計では、最後のばね補償される関節に結合される第1の回転アクチュエータ(例えば、45°アクチュエータ)が、Z軸からある鋭角(例えば、約45°)変位される、傾斜軸を中心としてエンドエフェクタ150を回転させるように構成されてもよい。第1の回転アクチュエータに結合される第2の回転アクチュエータ(例えば、ピッチアクチュエータ)は、エンドエフェクタ150を上下に回転させるように構成されてもよく、第1の回転アクチュエータに結合される第3のアクチュエータ(例えば、ヨーアクチュエータ)は、エンドエフェクタ150を左右に回転させるように構成されてもよい。
【0055】
そのような様式において構成されると、第1、第2、および第3の回転アクチュエータは、エンドエフェクタ150がその主軸(例えば、垂直軸)に沿って回転することを可能にし、これは、物体を拾い上げ、その主軸を中心として回転するときに役立つ。第1、第2、および第3の回転アクチュエータはまた、チェーンの中の最後の関節の持続的回転を可能にし、これは、ねじ回しを回すようなタスクのために役立つ。2つの一般的な操作ポーズはまた、代替の手首設計、すなわち、1)上から下への操作(例えば、頭上から何かを拾い上げること)、および2)水平操作(例えば、水平にアクセス可能な棚上に位置する物体等の何かを横に拾い上げること)にも適応される。
【0056】
図3に戻ると、各ばね補償される関節110Aおよび110Bは、下側リンク112に平行に配列される、上側リンク111と、第2の側面リンク114に平行に配列される、第1の側面リンク113とを備える、4本のバーから成るリンケージ機構を含む。第1および第2の側面リンク113および114は、それらの遠位端において、上側および下側リンク111および112の間に結合され、平行四辺形構造を形成し、これは、反対のリンクの並進を可能にするが、その回転を可能にしない方法において、4本のバーから成るリンケージ機構のリンク間の運動を制約する。本性質のため、エンドエフェクタ150に(すなわち、自由移動端部において)印加される任意のトルクが、ロボットマニピュレータ100の直列に結合されるアクチュエータおよび関節を通して、機械的接地に直接伝送される。
【0057】
一般に、重力補償ばね115は、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間の各ばね補償される関節110A/110Bの平行四辺形構造に結合されてもよい。
図3に示される例示的実施形態では、ばね115が、下側リンク112上の取付点Aと第1の側面リンク113上の取付点Bとの間に対角線的に結合される。そのような様式において結合されると、ばね115は、重力負荷力(F
g)に対向する方向における揚力(F
b)を提供する。しかしながら、重力補償ばね115が、
図3に示されるように4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に対角線的に取り付けられることなく、揚力(F
b)を提供し得ることを認識されたい。いくつかの実施形態では、重力補償ばね115は、代替として、例えば、プーリを介して対角線的に4本のバーから成るリンケージ機構に跨架する、ケーブルに配向され、取り付けられてもよい。ともに、重力補償ばね、ケーブル、およびプーリは、重力負荷力(F
g)に対向するために必要とされる揚力(F
b)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、重力補償ばね115の1つ以上の特性(例えば、長さ、剛性等)が、ロボットマニピュレータ100が、理想的には、その運動が、ペイロードを有保しているときに重力のない環境にある場合と同様に挙動するように、その重量とそのペイロードを釣り合わせるように選択されてもよい。
【0058】
上記に記載されるように、ロボットマニピュレータ100は、能動的作動およびフィードバック制御を使用し、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)の量を調節し、ペイロードが変化したときにばねによって印加される、重力補償トルクの量を動的に改変することによって、少なくとも1つの点において、重力平衡技法を利用する、従来の重力平衡システムおよびロボットマニピュレータを改良する。それを行うために、各ばね補償される関節110Aおよび110Bは、
図3に示されるように、ばね調節機構116と、ばね調節アクチュエータ117とを含んでもよい。
【0059】
一般に、ばね調節機構116およびばね調節アクチュエータ117は、それによって提供される揚力(F
b)の量を調節するように、重力補償ばね115の1つ以上の取付点の位置を改変するように構成されてもよい。
図3に示される例示的実施形態では、ばね調節機構116は、第1の側面リンク113に隣接し、それに平行に位置付けられる、主ねじ116aと、主ねじに固定して取り付けられる、スライダ116bとを含む。重力補償ばね115の一端は、ばね取付点Aにおいて、下側リンク112に取り付けられる一方、ばねの他端は、ばね取付点Bにおいて、スライダ116bに取り付けられる。
【0060】
図3に示される実施形態では、ばね調節アクチュエータ117は、主ねじ116aに結合され、第1の側面リンク113に平行である軸に沿って主ねじを上下に並進させることによって、ばね取付点Bの位置を調節するように構成される。主ねじ(および、したがって、それに固定して取り付けられる、スライダ116b)を所望の位置まで駆動することによって、ばね調節アクチュエータ117は、ばね取付点Bの位置を改変し、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)を調節するために必要とされる、能動的作動を提供する。一実施形態では、ばね調節アクチュエータ117は、主ねじ116aに直接または間接的に接続される、電動モータを有する、線形アクチュエータであってもよい。1つの例示的実装では、線形アクチュエータのモータシャフトは、主ねじ116aの遠位端の上に直接搭載され、主ねじを上下に駆動してもよい。別の例示的実装では、ベルトシステムが、
図3に示されるように、線形アクチュエータのモータシャフトを主ねじ116aに接続するために使用されてもよい。
【0061】
ばね調節アクチュエータ117は、ペイロードにかかわらず、調節可能な揚力(F
b)を提供し、ロボットマニピュレータ100上の重力トルクの実質的に100%に逆らうように構成される。いくつかの実施形態では、センサおよびフィードバックコントローラが、(例えば、
図11に示されるように)ばね調節アクチュエータ117に結合され、動的に変動するペイロード上の重力負荷力を補償するために必要とされる揚力を調節してもよい。このように、ばね調節機構116、ばね調節アクチュエータ117、およびセンサおよびフィードバックコントローラは、ロボットマニピュレータ100が、ペイロードにかかわらず、ほぼ完全に重力補償されるように、ばねの位置をリアルタイムで動的に調節するために使用されてもよい。
【0062】
ばね調節アクチュエータ117に加えて、各ばね補償される関節110A/110Bは、調節可能な量の力を印加し、ペイロードを加速させ、操作するように構成される、慣性アクチュエータ118を含んでもよい。ばね調節アクチュエータ117が、ロボットマニピュレータ100上の重力トルク(すなわち、最大トルク源)の実質的に100%を相殺する、重力補償トルクを提供するため、慣性アクチュエータ118は、ロボットマニピュレータを点間で移動させるとき、残りのトルク源(すなわち、慣性、摩擦、および外部トルク)を補償することのみ必要である。これは、慣性アクチュエータ118によって消費される労力およびエネルギーを大いに低減させる。
【0063】
ばね調節アクチュエータ117とは異なり、慣性アクチュエータ118は、重力補償ばね115に結合されていない、またはばね取付点AおよびBの位置を改変するように構成されていない。代わりに、慣性アクチュエータ118は、ばね補償される関節110のリンクの間に結合され、関節の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、ペイロードを加速させ、操作する。
図3に示される実施形態では、慣性アクチュエータ118は、ばね補償される関節110の下側リンク112と第1の側面リンク113との間に対角線的に結合され、重力補償ばね115の上方に略平行に配列される。そのような様式において結合されると、慣性アクチュエータ118は、慣性アクチュエータによって印加される力の大きさを能動的に調節し、ロボットマニピュレータ100を上下に移動させ、関節を加速および減速させながら、外乱に逆らうように構成される。
【0064】
第1の側面リンク113が、機械的接地に隣接していると仮定して、例えば、
図3の実施形態に示される慣性アクチュエータ118は、第1の側面リンク113に印加される加速力の大きさを増加させ、関節の対向する側面(すなわち、第2の側面リンク114から成る側面)を上昇させ、それによって、関節の配向角θを増加させ、ロボットマニピュレータ100を上向きの方向に移動させるように圧縮されてもよい。他方では、慣性アクチュエータ118は、第1の側面リンク113に印加される加速力の大きさを減少させ、関節の対向する側面を降下させ、それによって、関節の配向角θを減少させ、ロボットマニピュレータ100を下向きの方向に移動させるように拡張されてもよい。いくつかの実施形態では、慣性アクチュエータ118は、固定されたペイロードを所望の方向に加速/減速し、操作するために必要とされる力を増加または減少させるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、センサおよびフィードバックコントローラは、(例えば、
図11に示されるように)慣性アクチュエータ118に結合され、重量にかかわらず、ペイロードを操作し、加速させるために必要とされる力を動的に調節してもよい。
【0065】
一実施形態では、
図3に示される慣性アクチュエータ118は、ねじ駆動機構の一端に機械的に結合される、電動モータを有する、角柱線形アクチュエータであってもよい。ねじ駆動機構は、ばね取付点Aの近傍の下側リンク112に結合され得る、主ナットに結合されてもよい。このように、慣性アクチュエータ118は、第1の側面リンク113に対して第2の側面リンク114を並進させ、関節の回転運動をもたらすように構成されてもよい。しかしながら、慣性アクチュエータ118が、全ての実施形態において角柱線形アクチュエータに厳密に限定されるわけではなく、代替として、当技術分野において公知である他のタイプのアクチュエータを伴って実装され得ることに留意されたい。さらに、慣性アクチュエータ118が、
図3に明示的に示されるものと異なる様式において、ばね補償される関節110に結合され得ることにも留意されたい。それに厳密に限定されるわけではないが、
図7-10は、異なるタイプの慣性アクチュエータ118が、本開示の種々の実施形態に従ってばね補償される関節110に結合され得る様子を図示する。
【0066】
図3が、4本のバーから成るリンケージ機構(111、112、113、114)と、重力補償ばね115と、重力補償ばね115の1つ以上の取付点の位置を改変するように構成される、ばね調節機構116と、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)を動的に調節するように構成される、ばね調節アクチュエータ117と、重量にかかわらずペイロードを加速させ、操作するために必要とされる力(例えば、加速力)を印加するように構成される、慣性アクチュエータ118とから成る、ばね補償される関節110の1つのみの例示的実施形態を図示することに留意されたい。しかしながら、ロボットマニピュレータ100は、
図3に示される構成要素の特定の配列および実装に厳密に限定されない。いくつかの実施形態では、ロボットマニピュレータ100は、より大きい範囲の運動を提供するための付加的なばね補償される関節およびアクチュエータを含んでもよく、各関節は、4本のバーから成るリンケージ機構(111、112、113、114)と、重力補償ばね115と、ばね調節機構116と、ばね調節アクチュエータ117と、慣性アクチュエータ118とを含む。
【0067】
図4-6は、本開示による、ばね補償される関節110内に含まれ得る、ばね調節機構116の種々の実施形態を図示する。図面の明確化の目的のために示されているわけではないが、ばね調節アクチュエータ117が、
図4-6に示されるばね調節機構116に機械的に結合され、1つ以上のばね取付点(すなわち、A、B、またはAおよびB)の位置を改変し、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)をリアルタイムで動的に調節するであろうことに留意されたい。
【0068】
さらに、ばね調節機構116の例示的実施形態が、
図3および4-6に示されているが、これらの実施形態が、本開示によるばね調節機構の全ての潜在的な実装を網羅する、または含むものではないことにも留意されたい。ある場合には、ばね調節機構の他の実施形態も、本明細書に開示されるばね補償される関節110に結合され、1つ以上のばね取付点(すなわち、A、B、またはAおよびB)の位置を改変し、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)を調節することができる。本開示は、そのような実施形態および実装全てを包含すると見なされる。
【0069】
図4は、
図3に示されるばね調節機構116の簡略表現を描写する。
図4に示されるように、スライダ116bは、第1の側面リンク113を通して延在する軸に沿って摺動し、ばね取付点Bの位置を改変するように構成される。1つの例示的実装では、スライダ116bは、第1の側面リンク113の外周を囲繞し、それに沿って摺動するように構成されてもよい。別の例示的実装では、スライダ116bは、第1の側面リンク113内に形成される溝内で摺動するように構成されてもよい。
図4に示されるように、ばね取付点Bの位置は、長さ「b」を増加または減少させ、それによって、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)を増加または減少させるように変化されてもよい。
【0070】
図5は、ばね取付点Aにおいてばね調節機構を位置付けることによって
図3および4に示されるものと異なる、ばね調節機構116の簡略表現を描写する。
図5に示される実施形態では、重力補償ばね115の一端が、ばね取付点Aにおいてスライダ116bに取り付けられる一方、ばねの他端が、ばね取付点Bにおいて第1の側面リンク113に取り付けられる。本実施形態では、スライダ116bは、下側リンク112を通して延在する軸に沿って摺動し、ばね取付点Aの位置を改変するように構成される。例えば、スライダ116bは、下側リンク112の外周を囲繞し、それに沿って摺動するように構成されてもよい、または下側リンク112内に形成される溝内で摺動するように構成されてもよい。
図5に示されるように、ばね取付点Aの位置は、長さ「a」を増加または減少させ、それによって、重力補償ばね115によって提供される揚力(F
b)を増加または減少させるように調節されてもよい。
【0071】
図6は、本開示による、ばね補償される関節110内に含まれ得る、ばね調節機構116の代替実施形態を描写する。
図4に示される前述の実施形態のように、
図6に示されるばね調節機構116は、ばね取付点Bの位置を改変するように結合される、スライダ116bを含む。しかしながら、前述の実施形態とは異なり、
図6に示されるばね調節機構116は、スライダ116bに結合される付加的な4本のバーから成るリンケージ119を含む。4本のバーから成るリンケージ119は、ばね取付点Bを第1の側面リンク113の境界を越えるように拡張し、第1の側面リンク113を通して延在する軸に平行ではない軸に沿ったスライダ116bの並進移動を可能にする。
図6では、ばね取付点Bの位置は、非ゼロの自由長および非ゼロの予負荷力を伴う非理想的ばねが使用されるときの重力補償の「品質」を改良するために調節され得る。
【0072】
図7-10は、本開示による、ばね補償される関節110内に含まれ得る、慣性アクチュエータ118の種々の実施形態を図示する。
図3に示される前述の実施形態のように、
図7-10に示される慣性アクチュエータ118は、概して、関節の回転運動をもたらし、ペイロードを加速させ、操作するために必要とされる力(例えば、加速力)を印加するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、(例えば、
図11に示されるような)センサおよびフィードバックコントローラは、
図7-10に示される慣性アクチュエータ118に結合され、ペイロードを加速させ、操作するために必要とされる力の量を動的に調節しながら、関節上の外乱(摩擦および外部トルク等)を拒絶また補償してもよい。
【0073】
慣性アクチュエータ118の例示的実施形態が、
図3および7-10に示されているが、これらの実施形態が、本開示による慣性アクチュエータの全ての潜在的実装を網羅する、または含むものではないことに留意されたい。いくつかの実施形態では、他のタイプの慣性アクチュエータおよび機構(Hoekenのリンケージ等)が、慣性アクチュエータをばね補償される関節110に結合するために使用されることができる。本開示は、そのような実施形態および実装全てを包含すると見なされる。
【0074】
図7は、慣性アクチュエータ118を備える、ばね補償される関節110の簡略表現を描写する。
図3に示される実施形態のように、
図7に示される慣性アクチュエータ118は、重力補償ばね115と平行に結合され、ばね補償される関節110の下側リンク112と第1の側面リンク113との間に対角線的に取り付けられる。一実施形態では、
図7に示される慣性アクチュエータ118は、上記に説明されるように、ねじ駆動機構の一端に機械的に結合される、電動モータを有する、角柱線形アクチュエータであってもよい。
図7に示されるように、下側リンク112と第1の側面リンク113との間に結合されると、慣性アクチュエータ118は、第2の側面リンク114を第1の側面リンク113に対して並進させ、関節の回転運動をもたらし、慣性アクチュエータによって印加される力の大きさを能動的に調節し、関節を加速させ、ロボットマニピュレータ100を上下に移動させるように構成される。機能的には同等であるが、
図7に示される実施形態は、慣性アクチュエータ118を、ばねの上方と対照的に、重力補償ばね115の下方に配列することによって、
図3に示されるものとわずかに異なる。
【0075】
図8は、本開示による、慣性アクチュエータ118の第1の代替実施形態を備える、ばね補償される関節110の簡略表現を描写する。
図3および7に示される前述の実施形態のように、
図10に示される慣性アクチュエータ118は、ねじ駆動機構の一端に機械的に結合される、電動モータを有する、角柱線形アクチュエータであってもよい。しかしながら、
図3および7に示される前述の実施形態とは異なり、
図8に示される慣性アクチュエータ118は、ばね補償される関節110の上側リンク111に沿って、それと平行に配列される。慣性アクチュエータ118の一端が、スライダ160と、付加的リンク170とを備える、スライダクランク機構に結合される。スライダ160は、上側リンク111を通して長手方向に延在する軸に沿って線形に移動するように構成される。付加的リンク170は、ばね補償される関節110のスライダ160と第1の側面リンク113との間に対角線的に結合される。
【0076】
図8に示されるように結合されると、慣性アクチュエータ118は、慣性アクチュエータによって印加される力の大きさを能動的に調節し、関節を加速させ、ロボットマニピュレータ100を上下に移動させるように構成される。例えば、第1の側面リンク113が、機械的接地に隣接していると仮定して、
図8に示される慣性アクチュエータ118は、第1の側面リンク113に印加される加速力の大きさを増加させ、関節の対向する側面(すなわち、第2の側面リンク114から成る側面)を上昇させ、それによって、関節の配向角θを増加させ、ロボットマニピュレータ100を上向きの方向に移動させるように圧縮されてもよい。他方では、慣性アクチュエータ118は、第1の側面リンク113に印加される加速力の大きさを減少させ、関節の対向する側面を降下させ、それによって、関節の配向角θを減少させ、ロボットマニピュレータ100を下向きの方向に移動させるように拡張されてもよい。
【0077】
図9は、本開示による、慣性アクチュエータ118の第2の代替実施形態を備える、ばね補償される関節110の簡略表現を描写する。
図3、7、および8に示される前述の実施形態とは異なり、
図9に示される慣性アクチュエータ118は、線形アクチュエータの代わりに、回転アクチュエータとして実装される。
図9に示される回転アクチュエータ118は、ばね補償される関節110の第1の側面リンク113と下側リンク112との間に結合される。1つの例示的実装では、
図9に示される回転アクチュエータ118のステータまたは筐体が、第1の側面リンク113に結合されてもよい一方、ロータは、下側リンク112に結合される(または逆もまた同様である)。そのような様式において結合されると、
図9に示される回転アクチュエータ118は、リンク112および113間に印加されるトルクの大きさを能動的に調節し、関節を加速させ、ロボットマニピュレータ100を上下に移動させるように構成される。
【0078】
図10は、本開示による、慣性アクチュエータ118の第3の代替実施形態を備える、ばね補償される関節110の簡略表現を描写する。
図3および7-8に示される前述の実施形態のように、
図10に示される慣性アクチュエータ118は、ねじ駆動機構の一端に機械的に結合される、電動モータを有する、角柱線形アクチュエータであってもよい。
図8に示される前述の実施形態のように、
図10に示される慣性アクチュエータ118はまた、上側リンク111に結合され、慣性アクチュエータの長手方向軸が、上側リンクと平行であるように配列されてもよい。
【0079】
しかしながら、
図3および7-8に示される前述の実施形態とは異なり、
図10に示される慣性アクチュエータ118は、スライダクランク機構および付加的な4本のバーから成るリンケージに結合され、慣性アクチュエータの線形運動をばね補償される関節110の回転運動により効率的に変換する。
図10に示され、下記により詳細に説明されるように、スライダクランク機構は、スライダ180と、クランク182とを含む。
図10に示される付加的な4本のバーから成るリンケージは、第1のリンク190と、第2のリンク192と、第3のリンク194と、第4のリンク196とを含む、Hoekenのリンケージとして実装される。
図10に示される実施形態では、Hoekenのリンケージの第1のリンク190は、4本のバーから成るリンケージ機構の上側リンク111であり、Hoekenのリンケージの第2のリンク192は、4本のバーから成るリンケージ機構の第2の側面リンク114である。
【0080】
図10に示される実施形態では、慣性アクチュエータ118が、ねじ駆動機構118bの一端に機械的に結合される、電動モータ118aを有する、角柱線形アクチュエータとして実装される。慣性アクチュエータ118のねじ駆動機構118bは、ひいては、スライダクランク機構のクランク182に結合される、スライダ180に結合される。電動モータ118aが、ねじ駆動機構118bを駆動するにつれて、スライダ180(例えば、主ナット)は、ねじ駆動機構118bに沿って摺動し、クランク182の一端を4本のバーから成るリンケージ機構の上側リンク111およびHoekenのリンケージの第1のリンク190と平行な方向に摺動させる。
【0081】
クランク182の反対端部が、ひいては、4本のバーから成るリンケージ機構の第2の側面リンク114およびHoekenのリンケージの第2のリンク192に回転状態で結合される、Hoekenのリンケージの第3のリンク194に回転状態で結合される。第4のリンク196の一端が、第3のリンク194に回転状態で結合される一方、第4のリンク196の反対端部が、4本のバーから成るリンケージ機構の上側リンク111およびHoekenのリンケージの第1のリンク190に回転状態で結合される。そのような様式において結合されると、Hoekenのリンケージ(190、192、194、196)は、4本のバーから成るリンケージ機構の第2の側面リンク114を第1の側面リンク113に対して並進させることによって、慣性アクチュエータ118の線形運動をばね補償される関節110の回転運動に変換する。
【0082】
例えば、第1の側面リンク113が、機械的接地に隣接していると仮定して、慣性アクチュエータ118は、Hoekenのリンケージを圧縮し、第2の側面リンク114に印加される加速力の大きさを増加させ、第2の側面リンクを下に引動し、それによって、関節の配向角θを減少させ、ロボットマニピュレータ100を下向きの方向に移動させるように圧縮されてもよい。他方では、慣性アクチュエータ118は、Hoekenのリンケージを伸長させ、第2の側面リンク114に印加される加速力の大きさを減少させ、第2の側面リンクを上に押動し、それによって、関節の配向角θを増加させ、ロボットマニピュレータ100を上向きの方向に移動させるように拡張されてもよい。
【0083】
回転関節を駆動する線形アクチュエータは、典型的には、アクチュエータの線形変位と関節の回転運動との間の非線形関係に起因する、位置依存のトルクプロファイルを有する。本非線形関係は、回転型関節によって被られるトルクが角変位に対して類似の非線形プロファイルを共有する状況において有利であることができる。しかしながら、
図10に示される慣性アクチュエータ118の場合では、慣性トルクは、関節の角度に依存せず、したがって、線形空間と回転空間との間の非線形マッピングは、望ましくない。Hoekenのリンケージ(190、192、194、196)は、これが、ほぼ一定の速さ比を伴って、線形運動を回転運動に結合する機構であるため、本状況において良好に作用し、慣性アクチュエータ118の有効関節トルクが、ばね補償される関節110の運動の範囲の全体を通して一定のままであることを意味する。したがって、
図10に示されるHoekenのリンケージは、例えば、
図8に示される前述の実施形態と比較して、慣性アクチュエータ118の線形運動をばね補償される関節110の回転運動に変換するための、より効率的な機構を提供する。
【0084】
本開示によるばね調節機構116の種々の実施形態が、
図3-6に示され、上記に説明される。別個の実施形態として図示されているが、
図3-6に示されるばね調節機構116のうちの1つ以上のものが、単一の実施形態と組み合わせられ、1つ以上のばね取付点(すなわち、A、B、またはAおよびB)の位置を改変し得ることに留意されたい。
【0085】
本開示による慣性アクチュエータ118の種々の実施形態が、
図3および7-10に示され、上記に説明される。別個の実施形態として図示されているが、
図3および7-10に示される慣性アクチュエータ118のうちの1つ以上のものが、単一の実施形態内で組み合わせられ、ばね補償される関節110内で発生される1つ以上の力(例えば、
図2BのF
a、F
b、および/またはF
c)の大きさを調節し得ることに留意されたい。
【0086】
さらに、図面の明確化の目的のために別個に図示されているが、本開示によるばね補償される関節110が、
図4-6に示されるばね調節機構116のうちのいずれかを
図7-10に示される慣性アクチュエータ118のうちのいずれかと組み合わせ得ることにも留意されたい。
【0087】
図11は、本開示の一実施形態による、複数のばね補償される関節210A/Bを含む、ロボットマニピュレータ200の実践的実装である。
図12は、ロボットマニピュレータの手首部分200内に含まれ、エンドエフェクタ(
図11および12に示されず)の移動をもたらし得る、例示的アクチュエータ(230、240、245)を図示する、ばね補償される関節210Bの側面図を提供する。
図13は、関節内に含まれる種々の内部構成要素をより良好に図示するための、ばね補償される関節210Bの側面断面図を提供する。
【0088】
図3に示される前述の実施形態のように、
図11に示されるロボットマニピュレータ200は、ばね補償される関節210およびアクチュエータの連続チェーンを含み、これは、ロボットマニピュレータが3-D空間環境においてペイロードの位置および配向を制御することを可能にする。
図11に示される実施形態では、ロボットマニピュレータ200は、第1のばね補償される関節210Aと、第2のばね補償される関節210Bとを含む。2つのみのばね補償される関節が、
図11に示されているが、ロボットマニピュレータ200が、1つ以上の付加的な関節およびアクチュエータを含み、より大きい範囲の運動を提供し得ることに明白に留意されたい。
【0089】
下記により詳細に説明されるように、ロボットマニピュレータ200の各ばね補償される関節210は、4本のバーから成るリンケージ機構(211、212、213、214)と、少なくとも1つの重力補償ばね215と、ばね調節機構216と、ばね調節アクチュエータ217と、慣性アクチュエータ218とを含む。いくつかの実施形態では、開示されるばね補償される関節の1つ以上の構成要素は、本明細書に説明される機能性を留保しながら、
図11に明示的に描写されるものと異なるように構成および/または実装されてもよい。本開示は、そのような構成および代替実装全てを包含すると見なされる。
【0090】
図11に示される実施形態では、第1のばね補償される関節210Aが、一端において、機械的接地に結合される、第1のヨーアクチュエータ220Aに結合される。第1のばね補償される関節210Aの反対端部が、第2のばね補償される関節210Bの一端に結合される、第2のヨーアクチュエータ220Bに結合される。自由移動端部(例えば、ロボットマニピュレータの手首部分)において、アクチュエータ(例えば、第1のアクチュエータ230、第2のアクチュエータ240、および第3のアクチュエータ245)の連続チェーンが、第2のばね補償される関節210Bの反対端部とエンドエフェクタ(図示せず)との間に結合される。
【0091】
上記に記載されるように、ばね補償される関節210Aおよび210Bは、関節の配向角θを調節することによって、ロボットマニピュレータ200を上下に移動させるように構成される。ヨーアクチュエータ220Aおよび220Bは、重力ベクトル(Fg)に対して直交する平面においてロボットマニピュレータ200を左右に枢動させるように構成される。ロボットマニピュレータの手首部分200内に含まれるアクチュエータ(例えば、第1のアクチュエータ230、第2のアクチュエータ240、および第3のアクチュエータ245)の連続チェーンは、エンドエフェクタ(図示せず)の移動をもたらすように構成される。
【0092】
図11に示される実施形態では、第1のアクチュエータ230は、第2のばね補償される関節210Bに結合され、Z軸からある鋭角(例えば、垂直から約45°)変位される、傾斜軸を中心としてエンドエフェクタを回転させるように構成される。第2のアクチュエータ240(例えば、ピッチアクチュエータ)が、第1のアクチュエータ230に結合され、エンドエフェクタを上下に回転させるように構成される。第3のアクチュエータ245(例えば、ヨーアクチュエータ)が、第2のアクチュエータ240に結合され、エンドエフェクタを左右に回転させるように構成される。
【0093】
いくつかの実施形態では、ロボットマニピュレータ200内に含まれるアクチュエータ(例えば、220A/B、230、240、および/または245)は、それぞれ、あるタイプの回転アクチュエータ(例えば、電気式、油圧式等)を伴って実装されてもよい。1つの例示的実装では、アクチュエータ220A/B、230、240、および245はそれぞれ、ギヤボックスまたは駆動トレインに結合される電動モータを含む、ある形態の歯車付き電磁アクチュエータを伴って実装されてもよい。他の実施形態では、ロボットマニピュレータ200内に含まれるアクチュエータのうちの1つ以上のものは、線形アクチュエータを伴って実装されてもよい。例えば、ヨーアクチュエータ220Aおよび220Bは、付加的なスライダクランク機構が、各関節において提供され、関節において、線形アクチュエータの線形運動を回転運動に変換する場合、線形アクチュエータを伴って実装されてもよい。
【0094】
図3に示される前述の実施形態のように、ロボットマニピュレータ200内に含まれるばね補償される関節210A/Bはそれぞれ、概して、4本のバーから成るリンケージ機構(211、212、213、214)と、少なくとも1つの重力補償ばね215と、ばね調節機構216と、ばね調節アクチュエータ217と、慣性アクチュエータ218とを含んでもよい。下記により詳細に説明されるように、少なくとも1つの重力補償ばね215は、2つの異なるばね取付点(A、B)における、4本のバーから成るリンケージ機構(211、212、213、124)の2つの異なるリンクの間に結合されてもよい。ばね調節機構216は、少なくとも1つの重力補償ばね215の一端に結合され、ばね取付点(Aおよび/またはB)のうちの少なくとも1つの位置を調節し、ばね215によって提供される揚力(F
b)を調節するように構成されてもよい。ばね調節アクチュエータ217は、ばね調節機構216を移動させ、少なくとも1つのばね取付点の位置を改変させ、ロボットマニピュレータ200によって取り扱われるペイロードが変化するときに重力補償ばね215によって印加される、重力補償トルクの量を動的に改変するように結合されてもよい。最後に、慣性アクチュエータ218は、4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に結合され、4本のバーから成るリンケージ機構の回転移動をもたらし、調節可能な量の力を印加し、ロボットマニピュレータ200によって取り扱われるペイロードを加速させ、操作してもよい。
【0095】
図12に最も明確に示されるように、4本のバーから成るリンケージ機構は、概して、下側リンク212に平行に配列される、上側リンク211と、第2の側面リンク214に平行に配列される、第1の側面リンク213とを含んでもよい。第1および第2の側面リンク213および214は、それらの遠位端において、上側および下側リンク211および212の間に結合され、平行四辺形構造を形成してもよい。上記に記載されるように、平行四辺形構造は、反対のリンクの並進を可能にするが、その回転を可能にしない方法において、4本のバーから成るリンケージ機構のリンク間の運動を制約する。したがって、エンドエフェクタ(図示せず)に印加されるいかなるトルクも、ロボットマニピュレータ200の連続的に結合されるばね補償される関節およびアクチュエータを通して械的接地に直接伝送される。
【0096】
上記に記載されるように、少なくとも1つの重力補償ばね215は、4本のバーから成るリンケージ機構の2つのリンクの間の各ばね補償される関節210A/210Bの平行四辺形構造に結合されてもよい。
図11-13に示される実施形態では、2つの重力補償ばね215が、第2の側面リンク214上の取付点Aと第1の側面リンク213上の取付点Bとの間に対角線的に結合される。そのような様式において結合されると、2つの重力補償ばね215はそれぞれ、重力負荷力(F
g)に対向する方向に揚力(F
b)を提供し、それによって、
図3に示される単一の重力補償ばね115によって提供されるものより有意に大きい揚力を提供する。前述のように、重力補償ばね215の特性(例えば、長さ、剛性等)が、ロボットマニピュレータ200が、理想的には、その運動が、ペイロードを運搬するとき、重力のない環境にある場合と同様に挙動するように、その重量とそのペイロードを釣り合わせるように選択されてもよい。
【0097】
上記に記載されるように、全ての実施形態において、重力補償ばね215を4本のバーから成るリンケージ機構のリンクの間に対角線的に取り付けることが、厳密に必要なわけではない。いくつかの実施形態では、重力補償ばね215は、代替として、4本のバーから成るリンケージ機構内に配向され、例えば、プーリを介して対角線的に4本のバーから成るリンケージ機構に跨架する、ケーブルに取り付けられてもよい。ともに、重力補償ばね、ケーブル、およびプーリは、重力負荷力(Fg)に対向するために必要とされる揚力(Fb)を提供してもよい。
【0098】
図11-13に示される実施形態では、ばね調節機構216およびばね調節アクチュエータ217が、重力補償ばね215に結合され、ばね215の1つ以上の取付点の位置を改変し、それによって提供される揚力(F
b)の量を調節してもよい。図示される実施形態では、ばね調節機構216およびばね調節アクチュエータ217は、ばね取付点Bにおいて重力補償ばね215に結合される。しかしながら、ばね調節機構216およびばね調節アクチュエータ217が、ばね取付点Bに厳密に限定されず、代替として、例えば、
図4-6に描写される代替実施形態に示されるように、他のばね取付点に結合され得ることを認識されたい。
【0099】
一実施形態では、ばね調節アクチュエータ217は、直接または間接的に主ねじ217dに接続される、電動モータ217aを有する、線形アクチュエータであってもよい。1つの例示的実装では、電動モータ2l7aのモータシャフトは、主ねじ217dを駆動するように結合および構成される、ギヤボックス217bおよびベルト伝動装置217cに結合されてもよい。
図11-13に示される実施形態では、ばね調節機構216は、ばね取付点Bにおいて、ばね調節アクチュエータ217の主ねじ217dに固定して取り付けられる。
【0100】
ばね調節機構216およびばね調節アクチュエータ217は、第1の側面リンク213に略平行である軸に沿って主ねじ217dを上下に並進させることによって、ばね取付点Bの位置を調節する。主ねじ217d(および、したがって、それに固定して取り付けられる、ばね調節機構216)を所望の位置まで駆動することによって、ばね調節アクチュエータ217は、ばね取付点Bの位置を改変し、重力補償ばね215によって提供される揚力(Fb)を調節するために必要とされる、能動的作動を提供する。
【0101】
いくつかの実施形態では、主ねじ217dは、ばね調節アクチュエータ217が、ばねの力に逆らうためにその位置を保持するエネルギーを絶えず費やす必要がないように、ばね取付点Bの位置を変化させるために前方に駆動可能であるが、後方に駆動可能ではない。しかしながら、他の実施形態では、主ねじ217dは、前方に駆動可能であり、後方に駆動可能であり得る。そのような実施形態では、付加的な制動機構が、ばね調節アクチュエータ217が、その位置を保持するためのエネルギーを絶えず費やさないように防止するために要求され得る。
【0102】
本明細書に説明されるばね調節機構216およびばね調節アクチュエータ217は、調節可能な揚力(Fb)を提供し、ロボットマニピュレータ200上の重力トルクの実質的に100%に逆らう。いくつかの実施形態では、ばね調節アクチュエータ217は、固定されるペイロード上の重力負荷力を補償するために必要とされる揚力を調節するように構成されてもよい。他の実施形態では、センサ300およびフィードバックコントローラ302が、ばね調節アクチュエータ217に結合され、動的に変動するペイロード上の重力負荷力を補償するために必要とされる揚力を調節してもよい。
【0103】
1つの例示的実装では、力/トルクセンサ300が、ロボットマニピュレータの手首部分200内に位置し、ペイロードの力/トルクを直接測定してもよい。力/トルクセンサ300の出力は、ばね調節アクチュエータ217に結合される、フィードバックコントローラ302に供給される。力/トルクセンサ300が、ペイロードの変化を感知すると、フィードバックコントローラ302は、ばね調節アクチュエータ217に信号を供給し、重力補償ばね215の位置を改変し、ペイロードの変化を補償するために必要とされる揚力(Fb)を調節する。アクティブフィードバック制御が、使用されると、重力補償ばね215の位置が、ペイロードにかかわらず、ロボットマニピュレータ200が、ほぼ完全に重力補償されるように、リアルタイムで動的に調節される。
【0104】
慣性アクチュエータ218が、ばね補償される関節210のリンク間に結合され、関節の回転移動をもたらし、調節可能な量を印加し、ペイロードを加速させ、操作する。
図8および10に示される実施形態と同様に、慣性アクチュエータ218は、上側リンク211に結合され、アクチュエータの長手方向軸が上側リンクに平行であるように配列される。
図10に示される実施形態のように、慣性アクチュエータ218は、スライダクランク機構と、Hoekenのリンケージとを含み、アクチュエータの線形運動をばね補償される関節210の回転運動により効率的に変換する。
図13に示され、下記により詳細に説明されるように、スライダクランク機構は、スライダ280と、クランク282とを含む。Hoekenのリンケージは、第1のリンク290と、第2のリンク292と、第3のリンク294と、第4のリンク296とを含む。
図11に示される実施形態では、Hoekenのリンケージの第1のリンク290は、4本のバーから成るリンケージ機構の上側リンク211であり、Hoekenのリンケージの第2のリンク292は、4本のバーから成るリンケージ機構の第2の側面リンク214である。
【0105】
図13に示されるように、慣性アクチュエータ218は、ねじ駆動機構218bの一端に機械的に結合される、電動モータ218aを有する、角柱線形アクチュエータとして実装されてもよい。慣性アクチュエータ218のねじ駆動機構218bは、ひいては、スライダクランク機構のクランク282に結合される、スライダ280に結合される。より具体的には、かつ
図13に示されるように、クランク282の一端が、スライダ280に結合され、上側リンク211の下側に結合される、線形ガイド284に沿って摺動するように構成される。電動モータ218aが、ねじ駆動機構218bを駆動するにつれて、スライダ280は、ねじ駆動機構に沿って摺動し、クランク282の一端を、線形ガイド284に沿って、上側リンク211と平行な方向に摺動させる。
【0106】
クランク282の反対端部が、ひいては、4本のバーから成るリンケージ機構の第2の側面リンク214およびHoekenのリンケージの第2のリンク292に回転状態で結合される、Hoekenのリンケージの第3のリンク294に回転状態で結合される。第4のリンク296の一端が、第3のリンク294に回転状態で結合される一方、第4のリンク296の反対端部が、4本のバーから成るリンケージ機構の上側リンク211およびHoekenのリンケージの第1のリンク290に回転状態で結合される。そのような様式において結合されると、Hoekenのリンケージ(290、292、294、296)は、4本のバーから成るリンケージ機構の第2の側面リンク214を第1の側面リンク213に対して並進させることによって、慣性アクチュエータ218の線形運動をばね補償される関節210の回転運動に変換する。
【0107】
例えば、第1の側面リンク213が、機械的接地に隣接していると仮定して、慣性アクチュエータ218は、Hoekenのリンケージを圧縮し、第2の側面リンク214に印加される加速力の大きさを増加させ、第2の側面リンクを下に引動し、それによって、関節の配向角θを減少させ、ロボットマニピュレータ200を下向きの方向に移動させるように圧縮されてもよい。他方では、慣性アクチュエータ218は、Hoekenのリンケージを伸長させ、第2の側面リンク214に印加される加速力の大きさを減少させ、第2の側面リンクを上に押動し、それによって、関節の配向角θを増加させ、ロボットマニピュレータ200を上向きの方向に移動させるように拡張されてもよい。
【0108】
図3に示される前述の実施形態のように、
図13に示される慣性アクチュエータ218は、調節可能な量の力を印加し、ロボットマニピュレータ200を上下に移動させ、ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードを加速させ、操作しながら、外部トルクおよび外乱に逆らうように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、慣性アクチュエータ218は、固定される重量のペイロードを加速/減速させるために必要とされる力を増加/減少させ、固定されるペイロードを所望の方向に操作するように構成されてもよい。他の実施形態では、センサ300およびフィードバックコントローラ302が、慣性アクチュエータ218に結合され、重量にかかわらず、ペイロードを操作し、加速させるために必要とされる力を感知し、動的に調節してもよい。
【0109】
1つの例示的実装では、力/トルクセンサ300が、上記に記載され、
図11に示されるように、ロボットマニピュレータ200の手首部分内に位置し、ペイロードの力/トルクを直接測定してもよい。力/トルクセンサ300の出力が、慣性アクチュエータ218に結合される、フィードバックコントローラ302に供給される。力/トルクセンサ300が、ペイロードの変化を感知すると、フィードバックコントローラ302は、慣性アクチュエータ218に信号を供給し、ペイロードの変化を補償するために必要とされる加速力を調節する。能動的フィードバック制御が、使用されると、ペイロードを操作し、加速させるために必要とされる力は、ロボットマニピュレータ200が、重量にかかわらず、ペイロード間で滑らかに遷移し得るように、リアルタイムで動的に調節される。
【0110】
能動的フィードバック制御が提供されるかどうかにかかわらず、慣性アクチュエータ218によって消費される労力およびエネルギーが、ばね調節アクチュエータ217によって提供される重力補償トルクによって大いに低減される。ばね調節アクチュエータ217が、ロボットマニピュレータ200上に重力トルク(すなわち、最大トルク源)の実質的に100%を相殺する、重力補償トルクを提供するため、慣性アクチュエータ218は、ロボットマニピュレータ200を点間で移動させるとき、残りのトルク源(すなわち、慣性、摩擦、および外部トルク)を補償することのみ必要である。
【0111】
上記に記載されるように、フィードバックコントローラ302は、いくつかの実施形態では、ばね調節アクチュエータ217および慣性アクチュエータ218に結合されてもよい。
図11に示される実施形態では、単一のフィードバックコントローラ302(ブロック図形態において示される)が、ロボットマニピュレータ内に含まれる、アクチュエータ(217、218、220A、220B、230、240、および245)のうちの1つ以上のものを制御するために結合される。しかしながら、複数のフィードバックコントローラ302が、代替として、その中に含有されるアクチュエータを制御するために、ロボットマニピュレータ200の全体を通して位置し得ることを認識されたい。
【0112】
いくつかの実施形態では、センサ300は、上記に記載されるように、フィードバックコントローラ302に結合されてもよい。
図11に示される実施形態では、力/トルクセンサ300(ブロック図の形態において示される)が、ロボットマニピュレータ200の手首部分内に位置し、ロボットマニピュレータによって取り扱われるペイロードの力/トルクを測定するように構成される。センサ300が、ペイロードの変化を感知すると、フィードバックコントローラ302は、ばね調節アクチュエータ217および慣性アクチュエータ218に信号を供給し、ペイロードを操作し、加速させるために必要とされる揚力(F
b)および加速力をリアルタイムで動的に調節する。
【0113】
しかしながら、センサ300が、いくつかの実施形態では、厳密に必要ではなく、省略され得ることを認識されたい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるフィードバックコントローラ302のうちの1つ以上のものが、数学的モデリングおよび電流の検出を通して、ペイロードの変化を検出してもよい。例えば、本明細書に開示されるフィードバックコントローラ302のうちの1つ以上のものが、各ばね補償される関節210A/Bの質量をモデル化し、アクチュエータ(217、218、220A、220B、230、240、および245)のうちの1つ以上のもののモータの中で測定される電流を使用することによって、ロボットマニピュレータ200の質量が(ペイロードを持ち上げることまたは落下させることに起因して)変化するときを検出してもよい。フィードバックコントローラ302が、ロボットマニピュレータ200の質量の変化を検出すると、フィードバックコントローラ302は、ばね調節アクチュエータ217および慣性アクチュエータ218に信号を供給し、ペイロードを操作し、加速させるために必要とされる揚力(Fb)および加速力をリアルタイムで動的に調節してもよい。
【0114】
上記に記載されるように、従来のロボットマニピュレータは、典型的には、関節あたり1つのアクチュエータを含有する一方、いくつかのものは、基部関節(すなわち、第1の間接)において重力補償ばねを含有し、重力トルクを相殺することに役立つ。従来のロボットマニピュレータを改良しようとして、本開示は、作動の問題を3つの別個の構成要素、すなわち、重力補償ばね115/215、ばね調節部116/117/216/217、および慣性作動部118/218に分解し、これは、遂行するために、かなりの程度のエンジニアリング設計労力、制御力学の知識、およびソフトウェア統合を要求する。
【0115】
重力補償ばね115/215、ばね調節機構116/216、およびばね調節アクチュエータ117/217は、本明細書に開示されるロボットマニピュレータ100/200に、ペイロードが、動的に、かつリアルタイムで変動することを可能にする、「スマート重力補償」特徴を提供する。これは、重力平衡技法を利用する、従来の等弾性機構または従来のロボットマニピュレータでは不可能である。いくつかの実施形態では、スマート重力補償特徴は、本システムの重力ベクトルの変化に関して適応することができる。例えば、マニピュレータの接地は、配向を変化させることができ、スマート重力補償特徴は、知覚されるペイロードへの変化を動的に、かつリアルタイムで補償することができる。
【0116】
上記に記載されるように、ばね調節機構116/216およびばね調節アクチュエータ117/217は、ロボットマニピュレータ100/200が、ペイロードの重量にかかわらず、ほぼ完全に重力補償されるように、重力補償ばね115/215の位置を動的に調節するように構成されてもよい。重力補償ばね115/215は、ロボットマニピュレータ100/200の重力だけではなく、ペイロードの重力も支持する。ロボットマニピュレータ100/200が、新しい物体を拾い上げると、重力補償ばね115/215の位置は、ばね調節機構116/216およびばね調節アクチュエータ117/217によって再度調節され、ペイロードの新たに追加される質量を補償するであろう。このように、ロボットマニピュレータ100/200は、ペイロードが追加または除去されるとき、常時、それらに適合している。これは、重力平衡技法を利用する、従来の等弾性機構およびロボットマニピュレータに優る、重要な利点を表す。開示されるロボットマニピュレータでは、重力補償ばね115/215は、慣性アクチュエータ118/218が、ペイロードの静置状態への慣性加速度、またはそれからの慣性加速度を提供し、外乱を補償することのみが必要であるように、重力負荷の100%を支持することが可能である。
【0117】
本開示では、慣性アクチュエータ118/218は、(例えば、マニピュレータアームを加速および減速させることによって)ロボットマニピュレータ100/200を位置付けながら、変動するペイロードを動的に加速させることを補償するように構成される。加えて、本明細書に開示される慣性アクチュエータ118/218は、(例えば、誰かがアームを押動した場合)ロボットマニピュレータ100/200上の外乱力を拒絶または補償するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、慣性アクチュエータ118/218は、プログラムされた機械的インピーダンス(例えば、フィードバック利得)に基づいて外乱を拒絶するように構成されてもよい。例えば、慣性アクチュエータ118/218は、マニピュレータアームが、「軟質なもの」を触知し、外乱(例えば、ヒト安全モード)に伴って容易に移動する、または「硬質なもの」を触知し、最大位置正確度に関する外乱を拒絶するように、ロボットマニピュレータ100/200の機械的インピーダンスを変調させるように構成されてもよい。
【0118】
本発明は、種々の修正および代替形態に適応可能であり得るが、具体的な実施形態が、実施例として示され、本明細書に示されている。しかしながら、本発明が、開示される特定の形態に限定されることを意図していないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付の請求項によって定義されるような、本発明の精神および範囲内にある、修正、同等物、および代替物の全てをカバーするものとする。また、開示されるシステムおよび方法の異なる側面も、種々の組み合わせにおいて、および/または独立して利用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示されるそれらの組み合わせにのみ限定されず、むしろ、他の組み合わせを含み得る。
【国際調査報告】