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特表2022-509530適応動的効率最適化を利用した高効率の並列電力変換システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(54)【発明の名称】適応動的効率最適化を利用した高効率の並列電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20220113BHJP
   H02M 3/07 20060101ALI20220113BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20220113BHJP
   H02M 7/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H02M3/07
H02M7/493
H02M7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548553
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 US2019058888
(87)【国際公開番号】W WO2020092586
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/817,651
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/752,893
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521179995
【氏名又は名称】アジリティ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AGILITY, LLC
【住所又は居所原語表記】1249 Becket Drive NE, Atlanta, GA 30319 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】ヤング, ジェイソン
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB01
5H730BB82
5H730BB88
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
5H730FG01
5H730FG22
5H770AA01
5H770DA22
5H770EA27
5H770GA11
5H770GA19
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA03Y
(57)【要約】
複数の電力変換器(12a~12n)を制御して、複数の電力変換器のそれぞれを、感知された入力電力(22)及び感知された出力電力(24)の関数としてオン状態又はオフ状態とすることにより、オン状態の電力変換器のうちの1つ以上を最適な電力効率範囲内で動作させるためのシステム(10)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力システムにおける複数の電力変換器を制御するためのシステムであって、
電力を第1の電力レベルと第2の電力レベルとの間で変換するための、アレイを形成する複数の電力変換器と、
入力電力を前記第1のレベルで供給するための、複数の前記電力変換器に入力側で結合された共通入力電力線と、
出力電力を前記第2のレベルで負荷に供給するための、複数の前記電力変換器に出力側で結合された共通出力電力線と、
前記電力変換器の電力出力を制御するための、複数の前記電力変換器に結合された制御装置と、
前記共通入力電力線上の前記入力電力を感知して入力電力信号を前記制御装置に送信するための、前記共通出力電力線及び前記制御装置に結合された入力感知回路と、
前記共通入力電力線上の前記出力電力を感知して出力電力信号を前記制御装置に送信するための、前記共通出力電力線及び前記制御装置に結合された出力感知回路と、
を備え、
前記制御装置は、複数の前記電力変換器のそれぞれを制御して、複数の前記電力変換器のそれぞれを、感知された前記入力電力及び感知された前記出力電力の関数としてオン状態又はオフ状態に切り換えることにより、前記オン状態の複数の前記電力変換器のうちの1つ以上を最適な電力効率範囲内で動作させるように構成されている、
システム。
【請求項2】
複数の前記電力変換器はそれぞれ、前記電力を前記第1の電力レベルから前記第2の電力レベルに変換するためのスイッチトキャパシタ型DC-DCステップダウン電力変換器を含み、前記第2の電力レベルは前記第1の電力レベルよりも低い、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の前記電力変換器はそれぞれ、DC-DC電力変換器、DC-AC電力変換器又はAC-DC電力変換器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
複数の前記電力変換器はそれぞれ、電力が蓄積された複数のキャパシタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
複数の前記キャパシタは、並列構成、直列構成、並列-直列構成又は直列-並列構成で電気接続されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、プロセッサと、ルックアップテーブルと、プロセッサによって受信された時に、前記プロセッサに対して、
複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出し、
1つ以上の前記電力変換器の前記電力に基づいて、前記ルックアップテーブルにアクセスし、複数の前記電力変換器のうちのいずれを前記制御装置が前記オン状態及び前記オフ状態とするかを前記ルックアップテーブルから決定する、
ように指示する命令を格納するためのメモリと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、
複数の前記電力変換器を制御するための命令を格納するためのメモリユニットと、
前記入力電力信号及び前記出力電力信号を調整して、調整出力電力信号を生成するための信号調整器と、
前記調整出力電力信号をDC調整出力電力信号に変換するためのAC-DC変換器と、
前記DC調整出力電力信号を処理し、格納されている前記命令に基づき、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上を制御するための制御装置出力信号を生成して、複数の前記電力変換器を前記オン状態及び前記オフ状態とするためのプロセッサと、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記調整出力電力信号は、調整出力電圧成分と調整出力電流成分とを含み、前記プロセッサは、
前記調整出力電力信号の前記調整出力電力成分及び前記調整出力電流成分を平均化するためのフィルタと、
前記調整出力電力成分及び前記調整出力電流成分の平均に基づいて、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出して電力算出出力信号を生成するための電力算出ユニットと、
前記電力算出出力信号のノイズを低減するためのヒステリシスユニットと、
前記オン状態又は前記オフ状態とすべき複数の電力変換器に対応する、複数の前記電力変換器のうちの少なくとも1つの電力変換器の複数の電力レベルに関連する情報を格納するためのルックアップテーブルと、
を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記ルックアップテーブルに基づき、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上を前記オン状態及び前記オフ状態とするための1つ以上の出力制御信号を生成する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御装置の前記電力レベルは、前記負荷の前記電力要求に対応する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記入力電力信号は、入力電圧成分及び入力電流成分を有し、前記出力電力信号は、出力電圧成分及び出力電流成分を有し、前記信号調整器は、
前記入力電圧成分及び前記出力電圧成分をバッファリングして、これらからノイズを除去し、前記入力電圧成分及び前記出力電圧成分を前記制御装置によって使用される選択された電圧レベルにスケーリングするための電圧調整ユニットと、
前記入力電流成分及び前記出力電流成分をフィルタリングするための電流調整ユニットと、
を更に含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記電流調整ユニットは、前記入力電流成分及び前記出力電流成分をフィルタリングするためのローパスフィルタを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記入力電力信号及び前記出力電力信号を調整して調整電力信号を生成するための信号調整器と、
複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の周波数を変化させるための、前記制御装置及び複数の前記電力変換器に結合されたクロック選択ユニットと、
前記制御装置及び前記選択ユニットに結合された比較ユニットと、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、第1の出力制御信号を生成し、前記比較ユニットは、前記調整出力電力信号及び前記第1の出力制御信号を受信し、これに応答して出力比較信号を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御装置は、第1の出力制御信号を生成し、前記比較ユニットは、前記調整出力電力信号及び前記第1の出力制御信号を受信し、前記調整出力電力信号の値が前記第1の出力制御信号の値よりも大きい場合に、これに応答して出力比較信号を生成する、請求項4に記載のシステム。
【請求項16】
前記出力比較信号は前記クロック選択ユニットに送信され、前記クロック選択ユニットは次いで、出力信号を複数の前記電力変換器に送信し、前記クロック選択ユニットからの前記出力信号に応答して、前記オフ状態の前記電力変換器のうちの1つ以上の前記キャパシタの蓄積されている前記電力が、前記共通出力電力線に送出される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記クロック選択ユニットは、前記周波数を生成するための1つ以上のクロック生成器と前記周波数を選択するためのセレクタとを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
電力システムの複数の電力変換器を制御するための方法であって、
電力を第1の電力レベルと第2の電力レベルとの間で変換するための、アレイを形成する複数の電力変換器を提供することと、
複数の前記電力変換器の電力出力を制御するための、複数の前記電力変換器に結合された制御装置を提供することと、
前記制御装置及び入力電力線に結合された入力感知回路によって、前記入力電力線上の入力電力を感知し、入力電力信号を前記制御装置に送信することと、
前記制御装置及び出力電力線に結合された出力感知回路によって、前記出力電力線上の出力電力を感知し、出力電力信号を前記制御装置に送信することと、
複数の前記電力変換器のそれぞれを制御して、感知された前記入力電力及び感知された前記出力電力の関数としてオン状態又はオフ状態に切り換えることにより、前記オン状態の複数の前記電力変換器のうちの1つ以上を最適な電力効率範囲内で動作させることと、
を含む方法。
【請求項19】
前記複数の電力変換器はそれぞれ、前記電力を前記第1の電力レベルから前記第2の電力レベルに変換するためのスイッチトキャパシタ型DC-DCステップダウン電力変換器を含み、前記第2の電力レベルは前記第1の電力レベルよりも低い、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出することと、
1つ以上の前記電力変換器の前記電力に基づいて、ルックアップテーブルにアクセスし、複数の前記電力変換器のうちのいずれを前記制御装置が前記オン状態及び前記オフ状態とするかを前記ルックアップテーブルから決定することと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記制御装置は、
複数の前記電力変換器を制御するための命令を格納するためのメモリユニットと、
前記入力電力信号及び前記出力電力信号を調整して調整出力電力信号を生成するための信号調整器と、
前記調整出力電力信号をDC調整出力電力信号に変換するためのAC-DC変換器と、
前記DC調整出力電力信号を処理し、格納されている前記命令に基づき、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上を制御するための制御装置出力信号を生成して、複数の前記電力変換器を前記オン状態及び前記オフ状態とするためのプロセッサと、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記調整出力電力信号は、調整出力電圧成分と調整出力電流成分とを含み、前記プロセッサは、
前記調整出力電力信号の前記調整出力電力成分及び前記調整出力電流成分を平均化するためのフィルタユニットと、
前記調整出力電力成分及び前記調整出力電流成分の平均に基づいて、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の前記電力を算出し、電力算出出力信号を生成するための電力算出ユニットと、
前記電力算出出力信号のノイズを低減するためのヒステリシスユニットと、
前記オン状態又は前記オフ状態とすべき複数の電力変換器に対応する複数の前記電力変換器のうちの少なくとも1つの電力変換器の複数の電力レベルに関連する情報を格納するためのルックアップテーブルと、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記制御装置は、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上を前記ルックアップテーブルに基づいて前記オン状態及び前記オフ状態とするための1つ以上の出力制御信号を生成する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記入力電力信号及び前記出力電力信号を調整して、調整出力信号を生成することと、
複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の周波数を変化させることと、
前記制御装置によって生成された制御信号の値と前記調整出力電力信号の値とを比較し、前記調整出力電力信号の前記値が前記制御信号の前記値よりも大きい場合に、比較信号を生成することと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記比較信号に応答して、前記オフ状態の前記電力変換器のうちの1つ以上のキャパシタの蓄積されている電力を前記出力電力線に送出することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記制御装置は第1の出力制御信号を生成し、前記方法は更に、
信号調整器によって、前記入力電力信号及び前記出力電力信号を調整して調整出力電力信号を生成することと、
クロック選択ユニットによって、複数の前記電力変換器のうちの1つ以上の周波数を変化させることと、
比較ユニットによって、前記調整出力電力信号と前記第1の出力制御信号とを比較し、前記調整出力電力信号の値が前記第1の出力制御信号の値よりも大きい場合に、これに応答して出力比較信号を生成することと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記クロック選択ユニットに前記出力比較信号を送信し、前記クロック選択ユニットは次いで、複数の前記電力変換器に出力信号を送信することと、
前記クロック選択ユニットからの前記出力信号に応答して、前記オフ状態の複数の前記電力変換器のそれぞれの1つ以上のキャパシタの蓄積されている電力を前記出力電力線に送出することと、
を更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記クロック選択ユニットは、周波数を生成するための1つ以上のクロック生成器と前記周波数を選択するためのセレクタとを含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本発明は、2018年10月31日出願の米国仮特許出願第62/752,893号及び2019年3月13日出願の米国仮特許出願第62/817,651号の優先権を主張し、これらの出願の内容は本願中に引用をもって援用される。
【0002】
発明の背景
本発明は、電力変換システムに関し、より詳細には、システム構成部品の電力使用を最適化する電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の電力変換システムが知られており、典型的には磁気式の電力変換器を使用して、電流又は電圧などの電力パラメータを第1のレベルから第2のレベルに変換する。典型的な磁気式の電力変換器は、電力を第1のレベルと第2のレベルとの間で変換するために変圧器を使用する。従って、電力が第1のレベルから第2のレベルに増加する場合には、電力変換器はステップアップ電力変換器と呼ばれる。同様に、電力が第1のレベルから第2のレベルに減少する場合には、電力変換器はステップダウン電力変換器と呼ばれる。
【0004】
磁気式の電力変換器の使用には、コアの周囲に配置された巻線を通常は使用しているために電力損失が生じるという短所がある。更に、従来の磁気式の変圧器及びインバータの効率曲線は、典型的には定格負荷の50%付近でピークとなり、その後は負荷が最大定格負荷に近づくにつれて降下し始める。また、従来の変圧器は、低負荷時にも効率が低下する。低負荷時の効率低下の主な原因は、大きなスイッチングトランジスタの高キャパシタンスのゲートを切り換えるように構成された制御回路及び装置ドライバを動作させることによる電力損失であり、高負荷時の効率低下の主な原因は、高電流での抵抗性損失である。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、制御装置を使用して電力変換器アレイの動作を制御する電力変換システムに関する。制御装置は、負荷に電力を供給しながら適切な数の電力変換器を最適な電力効率範囲内で動作させることによって、電力変換器アレイを制御する。制御装置は、選択ユニットと協働して、電力変換器の各々特定の動作周波数を任意に選択する。電力変換システムは更に、システムによって供給される瞬時電力の測定値をしきい値と比較して、システムが制御装置のバイパスを必要とするか否かを判断し、蓄積されている電力を負荷に直接に放出するようにオフ状態の電力変換器に指示するための任意の比較ユニットを含んでもよい。
【0006】
本発明は、電力を第1のレベルから第2のレベルに変換するための、アレイを形成する複数の電力変換器を備える電力システムの複数の電力変換器であって、第1のレベルの入力電力を供給するための共通入力電力線に入力側で結合され、第2のレベルの電力を負荷に供給するための共通出力電力線に出力側で結合された複数の電力変換器を制御するためのシステムに関する。システムはまた、複数の電力変換器の電力出力を制御するための、複数の電力変換器に結合された制御装置と、共通入力電力線上の入力電力を感知して入力電力信号を制御装置に送信するための入力感知回路と、共通出力電力線上の出力電力を感知して出力電力信号を制御装置に送信するための出力感知回路と、を含む。制御装置は、複数の電力変換器のそれぞれを制御して、複数の電力変換器のそれぞれを、感知された入力電力及び感知された出力電力の関数としてオン状態又はオフ状態に切り換えることにより、オン状態の複数の電力変換器のうちの1つ以上を最適な電力効率範囲内で動作させるように構成されている。
【0007】
本発明によれば、電力変換器は、電力を第1の電力レベルから第2の電力レベルに変換するためのスイッチトキャパシタ型DC-DCステップダウン電力変換器を含むことができ、第2の電力レベルは第1の電力レベルよりも低い。あるいは、電力変換器は、DC-DC電力変換器、DC-AC電力変換器又はAC-DC電力変換器を含んでもよい。別の一実施形態では、各電力変換器は、電力が蓄積された複数のキャパシタを含んでもよい。キャパシタは任意に、並列構成、直列構成、並列-直列構成又は直列-並列構成で電気接続されてもよい。
【0008】
本発明の別の一態様によれば、制御装置は、プロセッサと、ルックアップテーブルと、プロセッサによって受信された時に、プロセッサに対して、複数の電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出し、1つ以上の電力変換器の電力に基づいて、ルックアップテーブルにアクセスし、複数の電力変換器のうちのいずれを制御装置がオン状態及びオフ状態とするかをルックアップテーブルから決定するように指示する命令を格納するためのメモリと、を含むことができる。
【0009】
別の一態様によれば、制御装置は、複数の電力変換器を制御するための命令を格納するためのメモリユニットと、入力電力信号及び出力電力信号を調整して、調整出力電力信号を生成するための信号調整器と、調整出力電力信号をDC調整出力電力信号に変換するためのAC-DC変換器と、DC調整出力電力信号を処理し、格納されている命令に基づき、複数の電力変換器のうちの1つ以上を制御するための制御装置出力信号を生成して、複数の電力変換器をオン状態及びオフ状態とするためのプロセッサと、を含むことができる。調整出力電力信号は、調整出力電圧成分と調整出力電流成分とを含むことができ、プロセッサは、調整出力電力信号の調整出力電力成分及び調整出力電流成分を平均化するためのフィルタと、調整出力電力成分及び調整出力電流成分の平均に基づいて、複数の電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出して電力算出出力信号を生成するための電力算出ユニットと、電力算出出力信号のノイズを低減するためのヒステリシスユニットと、オン状態又はオフ状態とすべき複数の電力変換器に対応する、複数の電力変換器のうちの少なくとも1つの電力変換器の複数の電力レベルに関連する情報を格納するためのルックアップテーブルと、を含む。このように、制御装置は、ルックアップテーブルに基づき、複数の電力変換器のうちの1つ以上をオン状態及びオフ状態とするための1つ以上の出力制御信号を生成する。制御装置の電力レベルは、負荷の電力要求に対応する。
【0010】
信号調整器は、入力電圧成分及び出力電圧成分をバッファリングして、これらからノイズを除去し、入力電圧成分及び出力電圧成分を制御装置によって使用される選択された電圧レベルにスケーリングするための電圧調整ユニットと、入力電流成分及び出力電流成分をフィルタリングするための電流調整ユニットと、を含むことができる。電流調整ユニットは、入力電流成分及び出力電流成分をフィルタリングするためのローパスフィルタを含んでもよい。
【0011】
更に別の一態様によれば、システムは、入力電力信号及び出力電力信号を調整して調整電力信号を生成するための信号調整器と、複数の電力変換器のうちの1つ以上の周波数を変化させるための、制御装置及び複数の電力変換器に結合されたクロック選択ユニットと、制御装置及び選択ユニットに結合された比較ユニットと、を含むことができる。制御装置は、第1の出力制御信号を生成し、比較ユニットは、調整出力電力信号及び第1の出力制御信号を受信し、これに応答して出力比較信号を生成する。詳細には、比較ユニットは、調整出力電力信号及び第1の出力制御信号を受信し、調整出力電力信号の値が第1の出力制御信号の値よりも大きい場合に、これに応答して出力比較信号を生成する。
【0012】
更に、出力比較信号がクロック選択ユニットに送信され、クロック選択ユニットは次いで、出力信号を複数の電力変換器に送信し、クロック選択ユニットからの出力信号に応答して、オフ状態の電力変換器のうちの1つ以上のキャパシタの蓄積されている電力が、共通出力電力線に送出される。クロック選択ユニットは、周波数を生成するための1つ以上のクロック生成器と周波数を選択するためのセレクタとを含む。
【0013】
本発明はまた、電力システムの複数の電力変換器を制御するための方法であって、電力を第1の電力レベルから第2の電力レベルに変換するための、アレイを形成する複数の電力変換器を提供することと、複数の電力変換器の電力出力を制御するための、複数の電力変換器に結合された制御装置を提供することと、制御装置及び入力電力線に結合された入力感知回路によって、入力電力線上の入力電力を感知し、入力電力信号を制御装置に送信することと、制御装置及び出力電力線に結合された出力感知回路によって、出力電力線上の出力電力を感知し、出力電力信号を制御装置に送信することと、複数の電力変換器のそれぞれを制御して、感知された入力電力及び感知された出力電力の関数としてオン状態又はオフ状態に切り換えることにより、オン状態の複数の電力変換器のうちの1つ以上を最適な電力効率範囲内で動作させることと、を含む方法に関する。
【0014】
電力変換器は、好適には、電力を第1の電力レベルから第2の電力レベルに変換するためのスイッチトキャパシタ型DC-DCステップダウン電力変換器を含み、第2の電力レベルは第1の電力レベルよりも低い。
【0015】
別の一態様によれば、本方法は、複数の電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出することと、1つ以上の電力変換器の電力に基づいて、ルックアップテーブルにアクセスし、複数の電力変換器のうちのいずれを制御装置がオン状態及びオフ状態とするかをルックアップテーブルから決定することと、を含む。
【0016】
制御装置は、複数の電力変換器を制御するための命令を格納するためのメモリユニットと、入力電力信号及び出力電力信号を調整して調整出力電力信号を生成するための信号調整器と、調整出力電力信号をDC調整出力電力信号に変換するためのAC-DC変換器と、DC調整出力電力信号を処理し、格納されている命令に基づき、複数の電力変換器のうちの1つ以上を制御するための制御装置出力信号を生成して、複数の電力変換器をオン状態及びオフ状態とするためのプロセッサと、を含むことができる。
【0017】
別の一態様によれば、調整出力電力信号は、調整出力電圧成分と調整出力電流成分とを含み、プロセッサは、調整出力電力信号の調整出力電力成分及び調整出力電流成分を平均化するためのフィルタユニットと、調整出力電力成分及び調整出力電流成分の平均に基づいて、複数の電力変換器のうちの1つ以上の電力を算出し、電力算出出力信号を生成するための電力算出ユニットと、電力算出出力信号のノイズを低減するためのヒステリシスユニットと、オン状態又はオフ状態とすべき複数の電力変換器に対応する複数の電力変換器のうちの少なくとも1つの電力変換器の複数の電力レベルに関連する情報を格納するためのルックアップテーブルと、を含む。制御装置は、複数の電力変換器のうちの1つ以上をルックアップテーブルに基づいてオン状態及びオフ状態とするための1つ以上の出力制御信号を生成する。
【0018】
本発明の方法の別の一態様によれば、システムは、入力電力信号及び出力電力信号を調整して、調整出力電力信号を生成し、複数の電力変換器のうちの1つ以上の周波数を変化させ、制御装置によって生成された制御信号の値と調整出力電力信号の値とを比較し、調整出力電力信号の値が制御信号の値よりも大きい場合に、比較信号を生成するように構成されており、更に、比較信号に応答して、オフ状態の電力変換器のうちの1つ以上のキャパシタの蓄積されている電力を出力電力線に送出するように構成されている。
【0019】
制御装置は第1の出力制御信号を生成し、本方法は更に、信号調整器によって、入力電力信号及び出力電力信号を調整して調整出力電力信号を生成することと、クロック選択ユニットによって、複数の電力変換器のうちの1つ以上の周波数を変化させることと、比較ユニットによって、調整出力電力信号と第1の出力制御信号とを比較することと、調整出力電力信号の値が第1の出力制御信号の値よりも大きい場合に、これに応答して出力比較信号を生成することと、を含む。
【0020】
本方法は更に、クロック選択ユニットに出力比較信号を送信し、クロック選択ユニットは次いで、複数の電力変換器に出力信号を送信することと、クロック選択ユニットからの出力信号に応答して、オフ状態の複数の電力変換器のそれぞれの1つ以上のキャパシタの蓄積されている電力を出力電力線に送出することと、を含む。クロック選択ユニットは、周波数を生成するための1つ以上のクロック生成器と周波数を選択するためのセレクタとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の上記の及びその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せ読むことでより十全に理解されよう。図面において、異なる図面を通し、同様の参照符号は同様の要素を言及する。図面は、本発明の原理を説明するものであり、実寸ではないが、相対的な寸法を示す。
図1図1は、本発明の教示に基づく、電力変換器のアレイから負荷に電力を供給するための電力変換システムの略回路図である。
図2図2は、本発明の教示に基づく、図1の電力変換器の略ブロック図である。
図3図3は、本発明の教示に基づく、図1の制御装置の略ブロック図である。
図4図4は、本発明の教示に基づく、図3の信号調整器の略ブロック図である。
図5図5は、本発明の教示に基づく、図1の電力変換器の電力効率曲線のグラフ図である。
図6図6は、任意の比較ユニット及び任意の選択ユニットを採用した本発明の電力変換システムの第2の実施形態である。
図7図7は、本発明の教示に基づく、図6の選択ユニットの略ブロック図である。
図8図8は、本発明の教示に基づく、様々な周波数で動作する図1の電力変換器の電力効率曲線のグラフ図である。
図9図9は、本発明の教示に基づく、図1及び図6の電力変換システムを動作させる際のステップを説明する略フロー図である。
図10図10は、本発明の教示に基づく、適応動的効率最適化(adaptive dynamic efficiency optimization:ADEO)技術を採用する場合及びシステムがADEOを採用しない場合の図1の電力変換器、並びに従来の磁気式の電力変換器の電力効率曲線のグラフ図である。
図11図11は、本発明の教示に基づく、図1及び図6の電力変換システムの電力変換器のうちの1つ以上の動作周波数を変化させる際のステップを説明する略フロー図である。
図12図12は、本発明の教示に基づく、図1及び図6の電力変換システムの瞬時限定予備(instantaneous limited reserve:ILR)特性を採用する場合のステップを説明する略フロー図である。
図13図13は、本発明の電力変換システムへの使用に適した例示的なルックアップテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本開示で使用する「電力変換器」という用語は、電圧及び電流を含めた電力又は関連する電力成分を1つのレベルから別のレベルに変換することの可能な任意の種類の変換器を含むことが意図されている。電力変換器は、磁気式又は誘導式の変換器及び、スイッチトキャパシタ型電力変換器などの非磁気式の変換器を含むことができる。更に、本開示で企図される電力変換器は、DC-DC変換器、DC-AC変換器、及びAC-DC変換器を含むことができ、ステップアップ電力変換器及びステップダウン電力変換器を含むこともできる。また、DC-DC変換器は、DC-DC変換器の分野で公知のバック変換器又はブースト変換器などの従来のインダクタ利用DC-DC変換器を含むことができる。
【0023】
スイッチトキャパシタ型電力変換器は、磁気式の電力変換器と比較して、負荷曲線のピーク又はピークに近い効率により早く到達可能であり、また、負荷曲線のピークにより近い効率をより長時間にわたって維持する傾向がある。しかしながら、スイッチトキャパシタ型の電力変換器は、ピーク効率への到達前後の電力効率が低下する傾向がある。すなわち、スイッチトキャパシタ型の電力変換器は、より広い動作範囲にわたってピーク効率に近い効率を維持できる一方で、定格負荷範囲内のある点が効率のピークであり、負荷がピーク効率の達成点から遠くなるほど効率が低下する、はっきりした効率曲線を描く。本願発明の発明者らは、最適な効率と、電力変換器をその中で動作させるべき電力範囲とが存在することに気付いた。
【0024】
本開示で使用する「電力」という用語は、電位(VI)を通過し、ワットで表される電流に対応する電圧、電流又は公知の電力を指すことができる。
【0025】
本発明は、図1に示す電力変換システム10に関する。図示の電力変換システム10は、複数の電力変換器と、好適には、共通入力電力線14及び共通出力電力線16に結合された、電力変換器アレイ20を形成する複数のスイッチトキャパシタ型の電力変換器12a、12b及び12nと、を含む。システム10及び負荷26の全体的な電力要求に基づき、任意の数の電力変換器が電力変換器アレイ20の一部を形成し得ることは、当業者であれば容易に理解するであろう。電力変換器12a~12nは、共通出力電力線16に結合されており、相互に並列な電気的構成に配列されている。入力感知回路22が入力電力線14に結合されており、出力感知回路24が出力電力線16に結合されている。外部負荷26が出力電力線16に結合されている。制御装置30が、入力感知回路22、出力感知回路24及び電力変換器12a~12nに結合されている。
【0026】
電力変換器は、好適にはステップダウン電力変換器であるが、所望の場合にはステップアップ電力変換器であってもよい。電力変換器12a、12b及び12nは、入力電力線14に供給された第1の入力電圧Vinを、出力電力線16に供給される第2のより低い電圧Voutに変換するように構成されている。入力感知回路22は、入力電力線14に供給された入力電圧レベル及び入力電流レベルを感知し、これらの電力測定値を制御装置30に供給する。同様に、出力感知回路24は、出力電力線16に供給された出力電流レベル及び出力電圧レベルを感知し、これらの電力測定値も制御装置30に供給する。入力感知回路22及び出力感知回路24は、このように、入力電力線14及び出力電力線16の電圧及び電流を測定又は感知するための好適かつ公知の電圧及び電流のセンサ又は検出器を含む。制御装置30は、感知回路22、24からの入力電圧データ及び入力電流データを処理して、システムの瞬時電力を算出し、電力変換器を制御又は調整するための制御信号を電力変換器12a、12b、12nに供給する。負荷26は、出力電力線16に結合されており、システム10の任意の負荷に対応している。負荷は、例えば、動作のために電力を必要とする任意の種類のリソース、ハードウェア又は装置であってもよい。
【0027】
図示の電力変換器12a、12b及び12nは、いかなる種類の電力変換器であってもよく、好適には、スイッチトキャパシタ型の電力変換器を含む。更に、電力変換器は、DC-DC変換器、DC-AC変換器又はAC-DC変換器のいずれであってもよく、好適にはDC-DC変換器である。本発明の電力変換システム10での使用に適した種類のスイッチトキャパシタ型の電力変換器の例に、米国Helix Semiconductor社製のMxC200 DC-DC電力変換器が挙げられる。図2は、電力変換器アレイ20の一部としての使用に適した電力変換器の簡略化された一例を図示したものである。図示の電力変換器12aは、1つ以上のキャパシタに加えて、選択された電力変換回路(図示せず)を含むことができる。キャパシタは、電力変換器内に組み込まれても、又は例えばフライングキャパシタなどのように、電力変換器に付随していてもよい。一実施形態では、電力変換器は、変換器が達成すべく設計されているステップダウン電圧のレベル又は大きさに基づく任意の好適な電気的構成に配列された一連のキャパシタ36a、36b及び36cを含むことができる。一実施形態では、キャパシタは、Helix Semiconductor社製のMuxCapacitor(登録商標)トポロジを有するキャパシタであってもよい。このように、キャパシタは、並列構成、直列構成、並列-直列構成、又は好適には図示の直列-並列構成で電気的に接続することができる。本発明の例では、muxcapacitor36a、36b、36cはそれぞれ、例えばゲイン0.5などの選択されたゲインを有するように設計することができるが、任意の選択されたゲイン特性を有するように設計可能である。muxcapacitorは、Helix Semiconductor社が販売するMxC200電力変換器に含まれている。図示の例では、muxcapacitor36aは、muxcapacitor36b及び36cと直列に結合されており、muxcapacitor36bと36cとは並列に接続されている。この例に加えて、例えば入力電圧が48Vである場合、muxcapacitor36aの出力は分岐38で24Vであり、この電圧レベルが、並列接続されているmuxcapacitor36b及び36cに供給される。muxcapacitor36b、36cは、電圧を24Vの中間電圧から12Vの出力電圧へと更に低下させる。電圧変換器を任意の選択された方法で構成することが可能であり、図2は簡略化を目的として変換器のステップダウン動作特性を図示したものであることは、当業者であれば容易に理解するであろう。加えて、キャパシタ及び/又はmuxcapacitorは、所望の出力電圧に応じた任意の好適な構成に接続可能である。共通入力電力線14が、必要な動作電力を電力変換器に供給してもよい。muxcapacitorは、電力をその中に蓄積するように構成されている。
【0028】
図示の電力変換システム10は、電力を供給されるべき負荷26の種類に応じて、いかなる好適な数の電力変換器であってもよい。例えば、比較的大きな電力変換システムには1000個もの電力変換器が存在してもよいが、比較的小さな電力変換システムには5個のみの電力変換器が存在してもよい。一実施形態では、本発明は、電力変換器の好適なアレイ20を配列して、1kW以上の電力システムを形成することを企図している。詳細には、複数の電力変換器が電力変換器アレイ20として接続されて、48Vdcから12Vdcに変換された1000Wの電力を生成する。例えば、図示のアレイ中の電力変換器12a、12b、12nはそれぞれ、例えば電力が約2.0W~約6.0W、各変換器の電力容量が約15Wなどの選択された電力レベルでピーク効率に達するように設計されてもよい。
【0029】
図示の制御装置30は、負荷26の電力要求に応じて適切な数の電力変換器をイネーブル又はターンオンするように電力変換器アレイ20の電力変換器12a~12nを制御することを企図されている。制御装置30は、電力変換システム10の電力変換器のピークに近い電力効率を維持又は達成しながら適切な数の電力変換器を制御しターンオン又はイネーブルするように適合又は構成されている。
【0030】
図3及び図4は、制御装置30及び関連するシステム構成部品の詳細を図示したものである。制御装置30は、入力感知回路22によって生成された入力電力信号42及び出力感知回路24によって生成された出力電力信号44を調整するための信号調整ユニット50を含む。感知回路22及び24は、電力線14及び16の入力及び出力された電圧及び電流をそれぞれ感知し、これらに応答して出力電力信号を生成する。詳細には、入力電力信号42及び出力電力信号44の電力信号の(感知された電圧などの)電圧成分が、電圧スケーリング及びバッファリングユニット52を含むことができる電圧調整ユニットに供給され、ここで電圧がスケーリング及び調整されて、電力信号中の任意の不要なノイズが除去され、電圧がシステム構成部品による使用に適した電圧レベルにスケーリングされる。好適な電圧範囲が、約0.0V~約3.3Vの範囲内であってもよい。同様に、入力電力信号42及び出力電力信号44の電力信号の(感知された電流などの)電流成分が、電流検出ゲイン及びフィルタリングユニット54などの電流調整ユニットに供給され、ここで電流が感知されて、アナログ-デジタル(A-D)変換器60による使用に好適となるようにフィルタリングされる。電流検出ゲイン及びフィルタリングユニット54は、好適な電流感知抵抗器を使用して入力電流信号を変換して信号を出力し、この信号は、A-D変換器60による使用に好適となるように増幅(すなわちゲイン)及びフィルタリングされることを必要とする。電流検出ゲイン及びフィルタリングユニット54のフィルタリング部分は、例えばローパスフィルタなどの好適なフィルタを使用して、増幅前に信号ノイズを除去する。例えば、電流検出ゲイン及びフィルタリングユニット54は、電流信号のフィルタリングにバターワースローパスフィルタを使用することができるが、他の種類のフィルタを使用してもよい。
【0031】
制御装置30は更に、それぞれ電圧スケーリング及びバッファリングユニット52並びに電流検出ゲイン及びフィルタリングユニット54からの出力信号56、58を含む出力電力信号59を信号調整器50から受信し、これらのアナログ出力信号をデジタル出力信号62に変換するA-D変換器60を含む。変換された出力信号62は、プロセッサ又は処理ユニット70に導入される。プロセッサ70は、1つ以上のメモリユニット72及びデジタル-アナログ(D-A)変換器74と通信を行うように構成されている。プロセッサ70は、メモリユニット72からの命令に応答し、これを処理する任意の好適な論理回路を含むことができる。一実施形態では、プロセッサ70は、市販の又はカスタム設計のマイクロプロセッサユニットによって提供されてもよい。プロセッサ70が、命令レベル並列、スレッドレベル並列、様々なキャッシュレベル及び/又はマルチコアプロセッサを利用してもよい。メモリユニット72は、データを格納し、プロセッサ70による任意の記憶位置へのアクセスを可能とするように構成されている。メモリユニット72は、プロセッサ70によって使用されるソフトウェア、信号情報及びその他の実行可能な命令を格納することができる。メモリ72は、単一のメモリモジュールであってもよく、あるいは、制御装置内のもしくはシステム10全体にわたって配置された、又は電力変換システム10と通信を行うハードウェアもしくはネットワークの一部分としての一連のメモリモジュールとして実装されてもよい。メモリ72は、いかなる好適な種類のメモリであってもよく、揮発性及び/又は不揮発性メモリを含むことができ、これらの例として、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)又は、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、バーストSRAM又は同期バーストSRAM(BSRAM)、高速ページモードDRAM(FPM DRAM)、エンハンストDRAM(EDRAM)、拡張データ出力RAM(EDO RAM)、拡張データ出力DRAM(EDO DRAM)、バースト拡張データ出力DRAM(BEDO DRAM)、シングルデータレート同期式DRAM(SDR SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDR SDRAM)、ダイレクトラムバスDRAM(DRDRAM)又はエクストリームデータレートDRAM(XDR DRAM)、不揮発性リードアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ不揮発性静的RAM(nvSRAM)、強誘電RAM(FeRAM)、磁気抵抗RAM(MRAM)、相変化メモリ(PRAM)、導電性ブリッジRAM(CBRAM)、Silicon-Oxide-Nitride-OxideSilicon(SONOS)、抵抗変化型メモリ(RRAM)、レーストラック、Nano-RAM(NRAM)又はMillipedeメモリを含めた任意の変形を挙げることができる。メモリユニット72はまた、演算装置によってアクセスされる情報を格納するために使用可能な、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又はその他の光学的記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置、あるいは任意のその他の非伝送媒体を非限定的に含むことができる。対照的に、通信媒体が、搬送波などの変調データ信号又はその他の搬送機構中のコンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータを具現化してもよい。本開示で定義される「コンピュータ可読記憶媒体」は、通信媒体を含まない。従って、コンピュータ記憶装置又はメモリ媒体は、伝播する信号自体として解釈されるべきではなく、また一時的な性質のものとして言及されるべきではない。伝播された信号がコンピュータ記憶媒体中に存在してもよいが、伝播された信号自体は、非一時的であることを意図されるコンピュータ記憶媒体の例ではない。メモリユニット72が制御装置30内に図示されているが、メモリユニットが遠隔に分散又は配置され、ネットワーク又はその他の通信リンクを介してアクセスされてもよいことが理解されよう。プロセッサ70は、任意の好適なバスシステムを介してメモリユニット72と通信を行うことができる。
【0032】
図示のプロセッサ70は、A-D変換器60から受信した変換された電力信号62の電力成分(すなわち電流及び電圧)を平均化するためのフィルタユニット80を含むことができる。フィルタリングされた出力信号82は次いで、複数の電力変換器の又は電力変換システム10の電力と、所望の場合には電力効率とを、電力信号の電圧成分及び電流成分に基づいて算出するように構成された電力算出ユニット84に搬送される。電力算出ユニット84は、ヒステリシスユニット88に導入される電力算出出力信号86を生成する。ヒステリシスユニット88は、スイッチングレベル又はしきいレベルを、選択された方向に、逆方向のしきいレベルとは異なるレベルで設定することによって、システム10の下流で発生する任意のクロック信号伝達に悪影響を及ぼす可能性のある出力信号90のチャタリング又はノイズを低減させる。ヒステリシスユニットは、測定された電力レベルが変換器のスイッチングレベル(例えば、図13の3.90W)又はその近傍である場合に、制御装置による電力変換器の急速なターンオン及びターンオフ(すなわち、チャタリング)を防止する役割を果たす。ヒステリシスユニット88は、電力が電力算出ユニット84によって算出された後に適用され、ヒステリシスユニットは、算出された電力が以前の電力算出結果と比較してヒステリシス量よりも大きく変化している場合以外は、出力信号90をルックアップテーブル(LUT)92に送信しない。制御装置は、LUT92を使用して、電力変換システム10の正しい電力構成を迅速に決定する。詳細には、ルックアップテーブルは、電力変換器12a~12nを選択された最適な電力効率範囲内で動作させながら負荷26の電力要求を満たすために動作させるべき電力変換器アレイ20の電力変換器12a~12nの適切な数を決定する。LUT92は、負荷によって要求される様々な総電力レベルを、動作させるべき電力変換器の対応する数と連関させる多次元テーブルであってもよい。本発明での使用に適したルックアップテーブル92の簡略化されたバージョンの一例を、図13に示す。図示の例示的なルックアップテーブル92は、総電力定格が約20Wの電力変換器システムのための二次元ルックアップテーブルに関する。この20Wの電力変換器システムは、6個の電力変換器12a~12nから構成することができ、これらの電力変換器は、例えば2つの別個の回路基板194及び196にわたって取り付けられ、各回路基板194、196がこれらの電力変換器のうちの3個を含むなどの、任意の選択された方法で取り付けられてもよい。図示の例示的なテーブルでは、入力変数は測定電力192であり、出力は、制御装置30によって生成されて各回路基板に送信される制御信号であり、回路基板は、何個の電力変換器をターンオンして、図6及び図7に示す選択ユニット110によって決定された高速クロック周波数で動作させるかを制御する。図示のルックアップテーブル92は、システムの20Wの電力範囲内の一連の測定電力メトリックを含む。図示のように、基板の設定が0である場合は、これに関連する全ての電力変換器は低速クロック周波数で動作し、従って、ターンオフされるか又はディセーブルされ、設定が1である場合には、電力変換器のうちの少なくとも1つがターンオンされて高速クロック周波数で動作し、一方、他の2つの電力変換器は低速クロック周波数で動作してターンオフされる。ルックアップテーブル92では、電力システムレベルが3.9W未満である場合、6個の電力変換器全てがターンオフされ、低速クロック周波数で動作する。電力の増加に伴い、第1の回路基板の電力変換器は一度に1つずつオン状態に切り換えられる。例えば、電力レベルが3.91~6.5Wである場合、第1の電力変換器がターンオンされ、第2の電力変換器は6.51~9.1Wの電力レベルでターンオンされ、第3の電力変換器は9.11~12.7Wの電力レベルでターンオンされる。この間、第2の回路基板の全ての電力変換器はターンオフされ、低速クロック周波数で動作する。12.71を超える電力レベルでは、第1の回路基板の電力変換器に加えて、第2の回路基板の電力変換器も、電力の増加に伴って一度に1つずつターンオンされる。電力変換器は、好適には、別の電力変換器がターンオンされている間にオンに切り換えられ、それぞれの最適な電力効率範囲内で動作する。すなわち、制御装置30は、最適な電力効率範囲内で動作している時には電力変換器のオン状態を維持し、負荷が更なる電力を必要とし、かつ、そうするとオン状態の電力変換器が最適な電力効率範囲外で動作する場合には、更なる電力変換器をターンオンする。ルックアップテーブル92が、システムの総電力、使用される電力変換器の数及び、電力変換器の電気的な取付けに使用される回路基板又はブレードの数に基づく任意の好適なフォーマット又は構成を有し得ることは、当業者であれば容易に理解するであろう。プロセッサ70はまた、シリアルインターフェース(例えばユニバーサルシリアルバス(USB))を介するなどの任意の好適な通信方法に従ってユーザからの命令を受信するための、汎用非同期送受信機(UART)装置98を含むことができる。プロセッサ70が図示の制御装置30の任意の構成要素の機能を含むか又は実施することができ、また図3に示す構成が好適な構成の一例に過ぎないことは、当業者であれば容易に理解するであろう。
【0033】
制御装置は、ルックアップテーブル(LUT)92に格納されている情報に基づいて一対の出力信号を生成し、このうち出力信号94は、電力変換器12a~12nのうちの1つ以上のクロック周波数などの周波数を調節するために選択ユニット110に送信され、出力信号96は、デジタル-アナログ(D-A)変換器74に供給され、ここでデジタル信号からアナログ信号に変換され、次いで、迅速な応答時間を必要とする負荷電力状態に対処するために比較ユニット120に送信される。制御装置が、複数の出力信号ではなく単一の出力信号を、図示されるように並列にではなく直列に生成してもよいことは、当業者であれば容易に理解するであろう。
【0034】
本実施形態では、図示の電力変換器12a~12nは、約0W~約15Wの動作電力負荷範囲を有し、これらの電力変換器は、約2.6Wの定格負荷電力で約97%のピーク動作電力効率近くに達するように構成されている。図5に示すように、電力変換器12a~12nはそれぞれ、ターンオンされている変換器の負荷電流に対する電力効率特性を有し、この特性は負荷によって要求される電力に対応することがグラフに示されている。グラフ100に示すように、各電力変換器は、負荷26に比較的低い負荷電流を供給している時に、ピーク電力効率を達成することが可能である。電力変換器は、約2.6Wの定格負荷電力に等しい約0.25~0.30アンペアの負荷電流で約97%のピーク電力効率を達成することができる。また、各電力変換器は、変換器の定格電力範囲のほぼ全体にわたって90%超の電力効率を維持することが可能であることも図示されている。本開示で使用される「最適な電力効率範囲」は、約90%超、好適には約95%超の変換器電力効率及び/又はシステム電力効率を意味することが意図されている。上述の範囲は、各変換器の電力が約2.0W~約6.0W、好適には約2.5W~約5.0Wの範囲内となるように電力変換器12a~12nのそれぞれを動作させることも企図している。電力レベルは、既知の電気的変換技術に従って、図5図8及び図10のグラフに示す負荷電流レベルと容易に連関させることができる。アレイ20内で使用される電力変換器の種類によっては、電力変換器をその最適な電力効率範囲外で動作させてもよいことは、当業者であれば容易に理解するであろう。そのように動作させる場合、電力変換器は、(例えば立方センチメートル当たりのワット数がより高いなど)密度の効率を犠牲にし、従って電力変換器当たりの電力はより高くなる。
【0035】
本発明の電力変換システム10は、図6及び図7に示すように、クロック選択ユニット110及び任意の比較ユニット120を含むことができる。別段に定めない限り、様々な図面を通し、同様の参照符号は同様の要素を指す。クロック選択ユニット110は、制御装置30によって生成された出力信号94を受信し、例えば電力変換器アレイ20内の電力変換器12a~12nのうちの1つ以上の動作周波数などの、電力変換システムの1つ以上のパラメータを選択するように構成されている。クロック選択ユニット110は、選択された周波数で動作する電力変換器12a~12nの数をシステム又はユーザが選択又は最適化することを可能にする。一実施形態では、クロック選択ユニット110は、電力変換器をイネーブル又はターンオンする最初の又は第1のクロック周波数と、電力変換器をディセーブル又はターンオフする第2のより低いクロック周波数とを選択することによって、電力変換器12a~12nのうちの1つ以上の動作クロック周波数を選択するように構成することができる。このように、制御装置30は、クロック選択ユニット110を介して、選択された電力変換器12a~12nを使用中にターンオン及びターンオフすることができる。制御装置30は、最初の負荷26のサイズに応じて、電力変換器12a~12nを最適な電力効率範囲内で動作させる一方で、負荷26の電力要求に対処可能な動作させる電力変換器の適切な数を、LUT92に格納されている情報に基づいて決定する。制御装置30のプロセッサ70は、ターンオン又はイネーブルする電力変換器の数を、LUT92にアクセスすることによって決定する。図7に示すように、クロック選択ユニット110は、クロック生成器112及びセレクタ114を含むことができる。クロック生成器112は、セレクタ114に送信されるクロック周波数信号を生成する。セレクタ114はまた、出力信号94を制御装置30から受信する。図示のクロック生成器112は、クロック選択ユニット内に位置してもよく、又は、例えば電力変換器アレイ20内などのシステム内の他の場所に位置してもよい。クロック選択ユニットは、所望の場合にはクロック選択ユニットによって第2のより低い周波数(例えば100kHz)に低減させることのできる、第1の又はより高い周波数(例えば200kHz)を生成するための単一のクロック生成器を使用してもよい。あるいは、クロック生成器112は、別個のクロック信号を異なる周波数(例えば100kHz及び200kHz)で生成するための複数のクロック生成器を含んでもよい。一実施形態では、クロック選択ユニット110は、制御装置30と協働して、1つ以上の電力変換器のクロック周波数をイネーブル又はオンクロック周波数に設定し、残りの電力変換器のクロック周波数を第2のより低いディセーブル又はオフクロック周波数(例えばオフモード又は待機モードなど)に設定してもよい。システムで使用される電力変換器の種類、電力変換システム10の構成及び負荷26のサイズに応じて、クロック周波数を任意の選択された周波数範囲に設定可能であることは、当業者であれば容易に理解するであろう。一実施形態では、クロック周波数は、約0kHz~約250kHzの範囲内であってもよい。より詳細には、オンクロック周波数は、約100kHz又は約200kHzであってもよく、オフクロック周波数は、約50kHzであってもよい。オフクロック周波数はまた、電力変換器がターンオフされても、電力変換器12a~12n内のキャパシタ36a~36cが充電状態を保つことを可能にする。更に、オンクロック周波数は、所与の負荷26に対する電力変換器の最適な又は最大の効率を効果的に達成するのに十分である。選択ユニット110は、制御装置30からの出力信号の受信を補助し、適切な周波数選択を行うための任意の好適な電子回路を使用することができ、また、マルチプレクサ、コンパレータ、FPGAなどのうちの1つ以上を含むことができる。これらの構成要素の動作特性は、当業で周知である。
【0036】
図8に、電力変換器12a~12nをターンオンするのに適した2つの例示的なクロック周波数を示す。グラフ130は、クロック周波数100kHz及び200kHzの場合に負荷26によって要求される、動作中の電力変換器当たりの負荷電流に対する電力変換器の電力効率曲線を示したものである。周波数100kHzのグラフ132は、この周波数で動作している電力変換器が、より低い要求負荷電流でピーク又は最適な電力効率を達成することを示している。周波数200kHzのグラフ134は、電力変換器がより大きい要求負荷電流でピーク又は最適な電力効率を達成するが、より高い電力効率をより幅広い負荷電流範囲にわたって維持することを示している。従って、電力変換システム10は、双方ともに電力変換器をターンオンさせる周波数100kHz又は周波数200kHzのいずれかを、システムで使用される電力変換器の種類及び負荷26のサイズに応じて選択することができる。動作の一例では、選択ユニット110は、電力変換器当たりの負荷電流が約0.0A~約0.5Aである場合に、電力変換器の周波数を100kHzとして選択し、次いで、電力変換器当たりの負荷電流が約0.5A~約1.5Aである場合に、周波数をより高い200kHzに切り換えてもよい。この例では、制御装置30は、全ての電力変換器がターンオンされ、要求される約0.5Aの電力変換器当たりの負荷電流に達するまでは、電力変換器をより低い周波数100kHzで制御するか又は動作させる。これが達成されると、制御装置30は、電力変換器当たりの負荷電流が0.5Aレベル超まで上昇するのに伴い、選択ユニット110を介して周波数を200kHzに増加させる。従って、制御装置30は、電力変換器の動作周波数を負荷26の関数として動的に変化させ、比較的低い負荷にはより低い周波数を使用し、比較的に高い負荷にはより高い周波数を使用することによって、電力変換器を最適な電力効率範囲内で動作させることができる。周波数の範囲及び選択は、システム10又は制御装置30のメモリ72に格納されてもよく、その中に格納されている命令に基づいて、制御装置30が適切なクロック周波数を実行してもよい。
【0037】
本発明の電力変換システム10はまた、負荷が要求する電力が比較的急激に増加して、制御装置の通常のデューティサイクルが遅すぎるか又は遅延し、電力変換器を適切にターンオンして負荷26に電力を供給することができない場合に、負荷26に一時的かつ瞬時に近い電力を供給するための瞬時応答又は限定予備(ILR)回路として機能する任意の比較ユニット120を使用することができる。図示するように、比較ユニット120は、負荷26の瞬間的な電流要求及び電圧要求に関する情報と、入力電力に関する情報とを供給する瞬時電力信号59を制御装置30から受信する。比較ユニット120はまた、比較ユニットの電力しきい信号として機能する出力信号96を制御装置30から受信する。比較ユニット120は、瞬時電力信号59をしきい出力信号96と比較し、電力信号59の値が出力信号96の値よりも大きい場合は、システム10は制御装置30をバイパスし、選択ユニット110を介して信号を電力変換器アレイ20に送信し、電力変換器アレイ20から負荷26に瞬時電力を供給する。図3及び図6に示すように、瞬時電力信号59は、制御装置30のプロセッサ70に供給される前に生成される。従って、信号96は、プロセッサ70内及びプロセッサ外部で発生する、例えばフィルタ80、電力算出ユニット84、ヒステリシスユニット88及びLUT92などによる様々な処理のために時間遅延している。瞬時電力信号59が、出力信号96によって供給され、制御装置30によって決定されたしきい電力レベルよりも大きい場合には、電力変換システム10は、更なる電力が電力変換器アレイ20によって負荷26に供給されることを必要とする。しかし、場合によっては、この電力は、更なる電力変換器をターンオンして必要な電力を負荷に供給する命令を制御装置30が電力変換器アレイ20に供給できるよりも早く負荷26に供給されなければならない。従って、比較ユニット120は、制御装置30をバイパスして出力信号122を生成し、出力信号122は選択ユニット110に送信され、選択ユニット110は次いで、出力信号116を電力変換器アレイ20に送信する。出力信号116が電力変換器アレイ20によって受信されると、オフ状態の電力変換器が、蓄積されている、又は予備のエネルギーを内部キャパシタ36a~36cから直接に負荷26に供給する。電力変換器アレイからの迅速な応答エネルギーが、一時的な更なる電力を負荷26に供給している間に、制御装置30がシステム10からの入力情報を処理して、オン状態に切り換えるべき電力変換器の適切な数を決定し、現在の負荷電力要求を満たす持続的でより耐久性の高い電力源を負荷26に提供する。一実施形態では、制御装置30は、アレイ20内の電力変換器12a~12nの全てをオン状態に切り換えて、負荷26に電力を供給し、次いで、リアルタイムの負荷電力要求に基づいて、オフ状態に切り換えるべき電力変換器の適切な数を決定してもよい。比較ユニット120は、比較演算を行うためにいかなる適切な種類の電子部品を使用してもよく、例えば、コンパレータ、マルチプライヤなどを含むことができ、アナログ部品、デジタル部品、又はこれら双方の組み合わせを使用して実装され得る。
【0038】
本発明の電力変換システム10は、(例えば1kW超などの)高い電力及び電圧レベルに拡張することができる。電力変換アレイ20は、入力電力を比較的高い電力効率(97%又はその近傍)で比較的低い電力レベルに変換する。電力変換システム10は更に、嵩張って効率の悪い変圧器を含めた誘導装置を削減することで高い電力密度を実現する電力変換器アレイ20を採用する。
【0039】
動作に際しては、入力電力が好適な電力源(図示せず)から電力線14、従って変換器アレイ20及びアレイを形成している電力変換器12a~12nに供給される。電力変換器は、好適には、出力電力線16で電圧を入力レベル(例えば48V)から好適な出力レベル(例えば12V)にステップダウン又は低減させるDC-DC変換器である。出力電力は負荷26に供給される。入力感知回路22が、入力電圧及び電流を公知の検出器を使用して測定、感知又は検出し、出力感知回路が、出力電圧及び電流を公知の検出器を使用して測定、感知又は検出する。感知回路22、24によって生成された入力及び出力電力情報は、制御装置30に供給される。
【0040】
電力変換システム10が負荷なし(0.0W)状態又は条件から遷移し、次いで負荷26に供給される電力を増加させ始めると、システムは最初に、電力変換器12aをターンオン又はイネーブルする。第1の電力変換器12aは、約2.6Wで約97%のピーク又は最適効率に達し、約6.0Wまで電力効率をこの近傍に維持する。従って、電力変換器を動作させるのに適した最適な効率の電力範囲は、各電力変換器で約2.5W~約6.0Wである。第1の又は最初の電力変換器12aは、6.0Wを超える電力にも対応可能であるが、そうすると電力変換器は最適な電力効率範囲内で動作しなくなる。電力変換器によって供給される電力が所定の電力レベル(例えば約5.0W)に達すると、制御装置30は、電力負荷を分担させて電力を負荷26に供給するために、第2の電力変換器12bをターンオン又はイネーブルする。電力変換システム10は、各電力変換器が最適な電力範囲内で動作し、従ってピーク又はピーク近傍の効率で動作するように、適切な数の電力変換器12a~12nをターンオンする。
【0041】
図9は、本発明の方法の少なくとも一部を図示した略フロー図である。電力変換システム10は、ステップ140で、入力感知回路22及び出力感知回路24を使用して、入力及び出力された電圧及び電流(例えば電力)を感知する。電流及び電圧情報は、制御装置30に供給される。制御装置30は次いで、ステップ142で、出力感知回路24によって感知された出力電流及び電圧を介して、負荷26の電力要求を監視及び算出する。制御装置は次いで、ステップ144で、電力変換器アレイ20の電力変換器12a~12nのうちの1つ以上をイネーブル又はターンオンし、必要な電力を負荷26に供給する。制御装置30はまた、図6に示すように、制御装置30及び選択ユニット110を介して、電力変換器の動作周波数を決定する。制御装置30は次いで、ステップ146で、電力変換器12a~12nが最適な電力効率範囲内で動作しているか否かを、各電力変換器の電力を監視することによって判定する。電力変換器が最適な電力効率範囲内で動作していない場合には、制御装置は、ステップ148で、動作させる電力変換器の数を制御する。例えば、電力が最適な電力効率範囲を超えている場合には、制御装置は、選択された数の更なる電力変換器をターンオンする。各電力変換器の電力が最適な電力効率範囲未満である場合には、制御装置は、選択された数の電力変換器をターンオフする。電力変換器が最適な電力効率範囲内で動作している場合には、制御装置30は、ステップ150で、動作している電力変換器の数を維持する。図示のプロセスを、アレイ20内の最大数の変換器が動作状態となるまで、一度に一変換器ずつ繰り返してもよい。本発明の適応動的効率最適化(ADEO)技術を使用することで、第2の変換器以降の全ての電力変換器が、最適な電力効率範囲内で動作する。このアプローチにより、電力変換器の従来の効率曲線がなくなり、電力変換システム10が、1kW設計での定格負荷の約0.26%に等しい2.6Wを超える定格負荷範囲内の任意の点で、ピーク又はピークにきわめて近い効率で動作することが可能となる。
【0042】
図10に示すように、本発明のシステム10の電力効率曲線を、従来の磁気式又は誘導式の電力変換器システムの電力効率曲線及び、電力変換器を本発明の適応動的効率最適化を行わずに動作させた場合のシステム10の電力効率曲線と比較する。制御装置30によって実施及び制御される適応動的効率最適化方法のもとで動作させた場合の本発明の電力効率曲線160は、定格電力負荷の約1%未満で約97%のピーク又はピークに近い動作効率に到達することが可能である。電力変換器12a~12nが、これらをそれぞれの最適な電力効率範囲内に維持するために制御装置30によってオフ及びオンに切り換えられると、電力効率曲線160は最適な電力効率範囲内に維持される。対照的に、ADEOを行わずに動作させた場合のシステム10の電力効率曲線は、ADEOを行った場合のシステム10のピーク効率レベルにシステム10が到達せず、より高い負荷電流レベルでピーク電力効率レベルに達することを示している。磁気式の電力変換器を本発明のADEOを行わずに使用した電力変換システムを表す電力効率曲線168もまた、システムが他のシステムよりも低いレベルのピーク効率により高い負荷電流で到達することを示している。
【0043】
任意選択的に、本発明の電力変換システム10は、各電力変換器の動作周波数を使用中に選択するか又は変化させることができる。図11に示すように、システム10は、最初のステップ170で、出力感知回路24を使用して負荷26の電力要求を監視することにより、負荷のサイズを判定する。制御装置30は、電力変換器アレイ20の電力要求を、LUT92に格納されている電力テーブルを参照することで判定してもよい。制御装置は、ステップ172で、電力変換器を動作させるための適切なクロック周波数を、格納されている命令に基づいて選択してもよい。システムは次いで、負荷が必要とする電流を監視してその電力要求を確認し、この情報に基づき、ステップ174で、負荷電流が選択されたしきいレベル(例えば0.5A)未満であるか否かを制御装置が判定してもよい。負荷電流がしきいレベル未満である場合には、システムは、電力変換器12a~12nの現在の周波数(例えば100kHz)を維持してもよい。負荷電流がしきいレベルを上回っている場合には、制御装置30は、ステップ176で、電力変換器の周波数レベルを(例えば200kHzに)調節又は変更してもよい。
【0044】
本発明の電力変換システム10の瞬時限定予備(ILR)特性は、例えば図6及び図12に示されている。システム10は、ステップ180で、入力感知回路22、出力感知回路24並びに制御装置30を介して、入力電力線14及び出力電力線16の瞬時電力を算出する。制御装置30は次いで、ステップ182で、負荷の電力要求を算出し、制御信号を電力変換器アレイ20に送信して、負荷に電力を供給する。次いで、ステップ184で、比較ユニット120が、瞬時電力信号59及び、所望の場合にはこれに関連する任意の値を、制御装置30によって生成された電力制御信号96と比較してもよい。電力制御信号96は、比較ユニット120のしきい値としての役割を果たす。比較ユニット120は次いで、ステップ186で、信号59の瞬時電力値がしきい値96よりも大きいか否かを判定する。瞬時電力値がしきい値以下である場合には、システムは、瞬時電力値の監視及び判定を継続する。一方、瞬時電力値59がしきい値96よりも大きい場合には、ステップ188で、比較ユニット120が出力信号122を生成し、出力信号122は選択ユニット110に送信され、選択ユニット110は、蓄積されている電力を出力電力線16に放出するようにオフ状態又はオフモードの電力変換器に指示する信号を、制御装置30をバイパスして電力変換器アレイ20に送信する。瞬時電力が負荷126に供給され、オン状態とすべき電力変換器12a~12nの適切な数を制御装置が決定している間の初期電力ブーストとなる。
【0045】
従って、本発明が上述の目的を有効に達成することは、これらの説明から明らかであろう。上記の構成において、幾つかの変更を本発明の範囲から逸脱することなく行うことが可能であるが、上記の説明に含まれるか又は添付の図面に示される全ての事項は、限定的な意味としてではなく、例示的なものとして解釈されることが意図されている。
【0046】
また、以下の請求項は、本開示に記載の発明の一般的及び具体的な特徴の全てを網羅し、発明の範囲の全ての文言は、言語上の問題としてこれらに含まれると言うことができる。
【0047】
本発明を説明してきたところで、新規と見なされ、特許証による保護を求める請求の範囲は、以下の通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】