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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(54)【発明の名称】活性炭電極材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/318 20170101AFI20220114BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20220114BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20220114BHJP
【FI】
C01B32/318
H01M4/583
H01G11/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526429
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019060833
(87)【国際公開番号】W WO2020102136
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/760,730
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506427565
【氏名又は名称】ピッツバーグ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Pittsburg State University
【住所又は居所原語表記】1701 South Broadway Street,Pittsburg,KS 66762,United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】521204895
【氏名又は名称】ミズーリ ソイビーン マーチャンダイジング カウンシル
【氏名又は名称原語表記】Missouri Soybean Merchandising Council
【住所又は居所原語表記】734 South Country Club Drive, Jefferson City, MO 65109, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラム グプタ
(72)【発明者】
【氏名】パワン カホール
【テーマコード(参考)】
4G146
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA06
4G146AA15
4G146AB01
4G146AB05
4G146AC04A
4G146AC04B
4G146AC05A
4G146AC05B
4G146AC06A
4G146AC06B
4G146AC08A
4G146AC08B
4G146AC09A
4G146AC09B
4G146AC10A
4G146AC10B
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC17B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD23
4G146AD24
4G146BA31
4G146BD02
4G146BD09
4G146BD10
4G146BD11
4G146CB02
5E078AA01
5E078AA02
5E078AB02
5E078BA65
5E078BA66
5E078BA67
5E078BA71
5E078BA73
5E078BB02
5E078BB05
5E078BB07
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050FA17
5H050FA19
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA20
(57)【要約】
sp3混成無秩序炭素相に相応するDバンドカーボンと、sp2混成グラファイト相に相応するGバンドカーボンとを、制御された割合で含む活性炭粒子を含む活性炭粉末。さらに、前記活性炭粒子は、前記活性炭粒子の約0.3原子%~約1.8原子%の範囲の量の窒素を含み、その窒素原子の少なくともいくつかはGバンドカーボンの結晶格子構造内の炭素原子を置き換えている。また、前記カーボン粒子は、約900m2/g~約2,500m2/gの範囲の表面積、約1nm~約4nmの範囲の平均細孔幅、約300m2/g~約1,350m2/gの範囲のミクロ孔表面積、および約1,000m2/g~約3,000m2/gの範囲の、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有する細孔の累積表面積を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭粒子を含む活性炭粉末であって、前記活性炭粒子は約900m2/g~約2,500m2/gの範囲であるブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有し、且つ前記活性炭粒子は、
(a) 以下:
(i) sp3混成無秩序カーボン相に相応するDバンドカーボン、および
(ii) sp2混成グラファイト相に相応するGバンドカーボン
を含むカーボン、
ここで、前記DバンドカーボンとGバンドカーボンとは、ラマン分光法を使用して特定して、Dバンドカーボン(ID)およびGバンドカーボン(IG)の相対強度が、IG/IDの比0~約2の範囲であるように達する比率である、
(b) X線光電子分光法によって特定して、活性炭粒子の約0.3原子%~約1.8原子%の範囲の量の窒素、
ここで、前記窒素原子の少なくともいくつかは、Gバンドカーボンのsp2混成グラファイト相の結晶格子構造内の炭素原子を置き換えている、
(c) 直径2nm~5nmの範囲を有するメソ孔および直径2nm未満を有するミクロ孔
を含み、前記活性炭粒子は、
(i) バレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法により特定される平均細孔幅: 約1nm~約4nmの範囲、
(ii) t-プロット法により特定されるミクロ孔表面積: 約300m2/g~約1,350m2/gの範囲、および
(iii) 0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積: 約1,000m2/g~約3,000m2/gの範囲
を有する、前記活性炭粉末。
【請求項2】
前記活性炭粒子のBET表面積が、約1,300m2/g~約2,200m2/gの範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項3】
前記IG/ID比が、約0~約1.5の範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項4】
窒素の量が、前記活性炭粒子の約0.5原子%~約1.7原子%の範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項5】
窒素の量が、前記活性炭粒子の約0.4原子%~約1.8原子%の範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項6】
BJT法によって特定される前記平均細孔幅が、約2nm~約4nmの範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項7】
BJT法によって特定される前記平均細孔幅が、約1nm~約2nmの範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項8】
t-プロット法により特定される前記ミクロ孔表面積が、約300m2/g~約1,300m2/gの範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項9】
t-プロット法により特定される前記ミクロ孔表面積が、約600m2/g~約1,200m2/gの範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項10】
0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積が、約1,400m2/g~約2,600m2/gの範囲である、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項11】
前記活性炭粒子が、電流密度1A/gで約130F/g~約330F/gの範囲である比キャパシタンス(Csp)を有する、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項12】
前記活性炭粒子が、電流密度1A/gで約160F/g~約210F/gの範囲である比キャパシタンスを有する、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項13】
前記活性炭粒子が、電流密度1A/gで約110F/g~約260F/gの範囲である比キャパシタンスを有する、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項14】
前記活性炭粒子が、電流密度1A/gで約100F/g~約250F/gの範囲である比キャパシタンスを有する、請求項1に記載の活性炭粉末。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の活性炭粉末の活性炭粒子の製造方法であって、
・ 炭化されていない植物材料の粉末、部分的に炭化された植物材料の粉末、またはそれらの組み合わせを含む前駆体の活性化熱分解処理を実施すること、
ここで、前記活性化熱分解処理は、
- 前記前駆体を活性化剤と混合して、前駆体と活性化剤との混合物を形成すること、
ここで、前記活性化剤は、前記活性化熱分解処理の間に前記前駆体中の炭素と反応することにより、活性化熱分解処理後に実施される洗浄処理の間に除去されるために適した1つ以上の生成物を形成するように選択される、およびそれらの組み合わせ、および
- 前記前駆体と活性化剤との混合物を、熱分解の不活性雰囲気下、熱分解温度で、且つ前駆体の炭化を完了させるために充分な熱分解時間の間、加熱することにより、活性化された熱分解材料を形成すること、を含む、
および、
・ 炭素と活性化剤との間の反応の1つ以上の生成物を、前記活性化された熱分解材料から減少または除去するために適した1つ以上の洗浄液を用いて、前記活性化された熱分解材料の洗浄処理を実施することにより、活性炭粉末の活性炭粒子を形成すること
を含む、前記方法。
【請求項16】
前記活性化熱分解処理の前に熱による前処理をさらに含み、ここで、前記熱による前処理は、炭化されていない植物材料粉末を、前処理の不活性雰囲気下で、前処理温度で、且つ前記炭化されていない植物材料粉末中の揮発分、低安定性分子を放出するために充分な前処理時間の間、加熱することにより、活性化熱分解処理のために適した部分的に炭化された植物材料粉末を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記前駆体が、炭化されていない植物材料粉末からなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記前駆体が、部分的に炭化された植物材料粉末からなる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化剤が、KOH、NaOH、ZnCl2、H3PO4、蒸気およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化剤がKOHである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記前駆体と前記活性化剤とが、約1:0.5~約1:3の範囲の質量比である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記洗浄処理の洗浄液の少なくとも1つが、HCl溶液および脱イオン水を含む溶液であり、その際、次の洗浄液が脱イオン水である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
活性炭粉末を乾燥させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記前処理の不活性雰囲気が窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記前処理温度が約250℃~約500℃の範囲であり、且つ
前記前処理時間が約1時間~約2時間の範囲である、
請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記前処理の不活性雰囲気が窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記前処理温度が約300℃~約400℃の範囲であり、且つ
前記前処理時間が約1時間~約2時間の範囲である、
請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記前駆体と活性化剤とが約1:0.5~1:3の範囲の質量比であり、
前記熱分解の雰囲気が窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記熱分解温度が約600℃~約900℃の範囲であり、且つ
前記熱分解時間が約1時間~約2時間の範囲である、
請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記前駆体と活性化剤とが約1:1~1:2の範囲の質量比であり、
前記熱分解の雰囲気が窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記熱分解温度が約700℃~約850℃の範囲であり、且つ
前記熱分解時間が約1時間~約2時間の範囲である、
請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記前駆体と活性化剤とが、約1:0.125~1:1の範囲の質量比であり、
前記熱分解の雰囲気が窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記熱分解温度が約700℃~約850℃の範囲であり、且つ
前記熱分解時間が約1時間~約2時間の範囲である、
請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記植物材料粉末が、非穀粒の大豆の植物部分、オレンジの皮、バナナの皮、茶葉、トウモロコシストーバー、およびそれらの組み合わせに由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記植物材料粉末が、殻、茎、葉、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される非穀粒の大豆の植物部分に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の活性炭粉末を含む電極。
【請求項32】
請求項31の電極を含む電池。
【請求項33】
請求項31の電極を含むスーパーキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2018年11月13日に提出された米国仮出願第62/760730号(U.S. Prov. Pat. App. No. 62/760,730)の優先権を主張し、その全文は参照をもって本願に含まれるものとする。
【0002】
技術分野
本発明はエネルギー貯蔵装置のための電極材料に関する。より具体的には、本発明はエネルギー貯蔵装置、例えば電池およびスーパーキャパシタにおける電極材料として使用するための活性炭材料に関する。
【0003】
発明の要約
本発明の1つの実施態様は、活性炭粒子を含む活性炭粉末であって、前記活性炭粒子が約900m2/g~約2,500m2/gの範囲のブルナウアー・エメット・テラー(BET)表面積を有する、前記活性炭粉末に関する。前記活性炭粒子は、
(a) 以下:
(i) sp3混成無秩序カーボン相に相応するDバンドカーボン、および
(ii) sp2混成グラファイト相に相応するGバンドカーボン
を含むカーボン、
ここで、前記DバンドカーボンとGバンドカーボンとは、ラマン分光法を使用して特定して、Dバンドカーボン(ID)およびGバンドカーボン(IG)の相対強度が、IG/IDの比0~約2の範囲であるように達する比率である、
(b) X線光電子分光法によって特定して、活性炭粒子の約0.3原子%~約1.8原子%の範囲の量の窒素、
ここで、前記窒素原子の少なくともいくつかは、Gバンドカーボンのsp2混成グラファイト相の結晶格子構造内の炭素原子を置き換えている、
(c) 直径2nm~5nmの範囲を有するメソ孔および直径2nm未満を有するミクロ孔
を含み、前記活性炭粒子は、
(i) バレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法により特定される平均細孔幅: 約1nm~約4nmの範囲、
(ii) t-プロット法により特定されるミクロ孔表面積: 約300m2/g~約1,350m2/gの範囲、および
(iii) 0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積: 約1,000m2/g~約3,000m2/gの範囲
を有する。
【0004】
本発明の1つの実施態様は、前記活性炭粉末の上述の活性炭粒子の製造方法に関する。前記方法は、
・ 炭化されていない植物材料の粉末、部分的に炭化された植物材料の粉末、またはそれらの組み合わせを含む前駆体の活性化熱分解処理を実施すること、
ここで、前記活性化熱分解処理は、
- 前記前駆体を活性化剤と混合して、前駆体と活性化剤との混合物を形成すること、
ここで、前記活性化剤は、前記活性化熱分解処理の間に前記前駆体中の炭素と反応することにより、活性化熱分解処理後に実施される洗浄処理の間に除去されるために適した1つ以上の生成物を形成するように選択される、およびそれらの組み合わせ、および
- 前記前駆体と活性化剤との混合物を、熱分解の不活性雰囲気下、熱分解温度で、且つ前駆体の炭化を完了させるために充分な熱分解時間の間、加熱することにより活性化された熱分解材料を形成すること、
を含む、
および、
・ 炭素と活性化剤との間の反応の1つ以上の生成物を前記活性化された熱分解材料から減少または除去するために適した1つ以上の洗浄液を用いて、前記活性化された熱分解材料の洗浄処理を実施することにより、活性炭粉末の活性炭粒子を形成すること
を含む。
【0005】
本発明の1つの実施態様は、上述の活性炭粉末を含む電極に関する。
【0006】
本発明の1つの実施態様は、上述の電極を含む電池に関する。
【0007】
本発明の1つの実施態様は、上述の電極を含むスーパーキャパシタに関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、市販のカーボンおよび本発明の実施態様の活性炭の比キャパシタンスを掃引速度および電流密度の関数として示すグラフを包含する。
図2図2は、葉:KOHの質量比1:0(活性化されていない)、1:0.5、1:1および1:2での大豆の葉に由来するカーボンのXRDパターンを包含する。
図3図3は、葉:KOHの質量比1:0.5、1:1、および1:2で活性化された大豆の葉に由来するカーボンの窒素吸脱着等温線を包含する。
図4図4は、葉:KOHの質量比1:0.5、1:1、および1:2で活性化された大豆の葉に由来する活性炭のBJH細孔径分布のプロットを包含する。
図5図5は、殻:KOHの質量比1:0.5、1:1、1:2、および1:3で活性化された大豆の殻材料に由来するカーボンのラマンスペクトルを包含する。
図6図6は、茎:KOHの質量比1:0.5、1:1、1:2、および1:3で活性化された大豆の茎材料に由来するカーボンのラマンスペクトルを包含する。
図7図7は、葉:KOHの質量比1:0(活性化されていない)、1:0.5、1:1、および1:2で活性化された大豆の葉材料に由来するカーボンのラマンスペクトルを包含する。
図8図8は、示された大豆材料:KOHの質量比で活性化された大豆の殻、茎および葉材料に由来するカーボンの走査型電子顕微鏡(SEM)像を包含する。
図9図9は、殻:KOHの質量比1:0(活性化されていない、SB-殻-1)、1:0.5(SB-殻-2)、1:1(SB-殻-3)、1:2(SB-殻-4)、および1:3(SB-殻-5)で活性化された大豆の殻に由来するカーボンのXRDパターンを包含する。
図10図10は、茎:KOHの質量比1:0(活性化されていない、SB-茎-1)、1:0.5(SB-茎-2)、1:1(SB-茎-3)、1:2(SB-茎-4)、および1:3(SB-茎-5)で活性化された大豆の茎に由来するカーボンのXRDパターンを包含する。
図11図11は、殻:KOHの質量比1:0(活性化されていない、SB-殻-1)、1:0.5(SB-殻-2)、1:1(SB-殻-3)、1:2(SB-殻-4)、および1:3(SB-殻-5)で活性化された大豆の殻に由来するカーボンの窒素吸脱着等温線を包含する。
図12図12は、茎:KOHの質量比1:0(活性化されていない、SB-茎-1)、1:0.5(SB-茎-2)、1:1(SB-茎-3)、1:2(SB-茎-4)、および1:3(SB-茎-5)で活性化された大豆の茎に由来するカーボンの窒素吸脱着等温線を包含する。
図13図13は、殻:KOHの質量比1:0(活性化されていない、SB-殻-1)、1:0.5(SB-殻-2)、1:1(SB-殻-3)、1:2(SB-殻-4)、および1:3(SB-殻-5)で活性化された大豆の殻に由来する活性炭のBJH細径分布のプロットを包含する。
図14図14は、茎:KOHの質量比1:0.5(SB-茎-2)、1:1(SB-茎-3)、1:2(SB-茎-4)、および1:3(SB-茎-5)で活性化された大豆の茎に由来する活性炭のBJH細孔径分布のプロットを包含する。
図15図15は、様々な電解質中での試料SB-殻-3(つまり殻:KOHの質量比1:1で大豆の殻から誘導された活性炭)の比キャパシタンスの変化を、印加電流密度の関数として示す。
図16図16は、市販のカーボンおよび窒素ドープされた市販のカーボンの充放電プロファイルである。
図17図17は、本発明の1つの実施態様の活性炭材料を使用して製造されたコインセルスーパーキャパシタについてのキャパシタンス保持の%およびクーロン効率の、充放電サイクル数の関数としてのグラフである。
図18図18は、大豆の茎から、2段階法を使用して製造され且つ1:0.5の質量比を使用して活性化された活性炭の100mV/秒でのCV曲線と、1段階法を使用して製造され且つ1:0.5の質量比を使用して活性化された活性炭の100mV/秒でのCV曲線とを比較するグラフである。
図19図19は、大豆の茎から、2段階法を使用して製造され且つ1:0.5の質量比を使用して活性化された活性炭についての200mV/秒でのCV曲線と、1段階法を使用して製造され且つ1:0.5の質量比を使用して活性化された活性炭についての200mV/秒でのCV曲線とを比較するグラフである。
図20図20は、大豆の茎から2段階法を使用して製造された活性炭と、1段階法を使用して製造された活性炭との、1A/gでの電荷貯蔵容量を比較するグラフであり、ここで各々の棒の上に示される比は、2段階法については予め活性化されたカーボン:活性化剤の比であり、1段階法については大豆の茎:活性化剤の比である。
図21図21は、大豆の茎から2段階法を使用して製造された活性炭と、1段階法を使用して製造された活性炭との、5A/gでの電荷貯蔵容量を比較するグラフであり、ここで各々の棒の上に示される比は、2段階法については予め活性化されたカーボン:活性化剤の比であり、1段階法については大豆の茎:活性化剤の比である。
図22図22は、一段階法を使用して合成された大豆の茎に基づく活性炭(1:0.5)の3つの電流密度(1A/g、5A/g、および10A/g)での電荷貯蔵容量のレート特性を比較するグラフである。
図23図23は、茎:KOH(1:1)の活性炭を用いて一段階法を使用して製造された装置の6M KOH電解質中での、(A)電荷貯蔵容量を印加電流密度の関数として示すグラフ、および(B)電力密度をエネルギー密度の関数として示すグラフ(B)である。
図24図24は、(A)一段階法を使用して製造された、大豆の茎:KOH(1:1)の活性炭を使用する装置についてのキャパシタンス保持およびクーロン効率を充放電サイクルの関数として示すグラフ、(B)装置1、直列に接続された装置1と2、および直列に製造された装置1と2と3の、充放電特性を示すグラフであり、ここで、前記装置の各々は、大豆の茎:KOH(1:1)の活性炭を使用して、一段階で合成されたカーボンを使用して製造され、且つここで、装置1は電解質として6M KOHを利用し、装置2は電解質として6M NaOHを利用し、且つ装置3は電解質として6M LiOHを利用した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
I. 活性炭粒子を含む活性炭粉末
上記で示したとおり、本発明の1つの実施態様は活性炭粒子を含む活性炭粉末に関する。重要なことに、本発明の活性炭粒子は、典型的には廃棄物とみなされる植物に基づく材料に由来する。以下でより詳細に議論されるとおり、出発材料の組成は、前記材料の処理と共に、市販のカーボン粒子の特性と比較して望ましい特性を有する活性炭粒子をもたらすと考えられる。例えば、本発明の活性炭粒子の1つの実施態様は、前記実施態様の活性炭のおかげで、市販のカーボン電極材料の約7.5倍のエネルギー貯蔵容量および安定なレート特性を示し、放電電流密度を3A/gから15A/gへと増加する際にその最初の貯蔵容量の約83%を維持したことが観察された一方で、市販のカーボン粒子は同様の条件下でその最初の貯蔵容量の約16%しか維持しなかった。
【0010】
II. 活性炭粒子の製造方法
A. 植物に基づく材料
上述のとおり、本発明の活性炭粒子は植物に基づく材料に由来する。本質的に、任意の適した植物に基づく材料を使用できるが、経済的および環境的な理由から、典型的には廃棄物とみなされる植物材料またはバイオマスを利用することが望ましい。例えば、適したバイオマスは、非穀粒の大豆の植物部分(例えば葉、殻および茎)、大豆穀粒、柑橘類の果物の皮(例えばオレンジ、レモン、ライム等)、バナナの皮、茶葉、トウモロコシストーバー、トウモロコシ穀粒、トウモロコシ穀粒蒸留物、ヤシ殻、およびそれらの組み合わせを含む。1つの実施態様において、植物に基づく材料/バイオマスは、殻、茎、葉およびそれらの組み合わせからなる群から選択される非穀粒の大豆の植物部分である。この開示および本願内に記載される例の多くがそのような大豆植物材料の実施態様に関するが、これは明示的に示されない限り、限定として解釈されるべきではない。その代わりに、明示的に示されない限り、本願内の教示は他の種類の植物に基づく材料にも同様に該当する。
【0011】
典型的には、植物に基づく材料を機械的な操作、例えば切断、チョッピング、微粉砕、粉砕などに供し、場合により濯いで、植物に基づく材料が乾燥粉末または粒子であるように乾燥させる。
【0012】
特定の理論に束縛されるものではないが、それらの植物に基づく材料の組成は、本発明の活性炭粒子の独自且つ望ましい特性において役割を果たすと考えられる。特定の理論に束縛されるものではないが、前記材料内のタンパク質が窒素原子を含む活性炭粒子をもたらし、その少なくともいくつかは、電気伝導性であるグラファイト相またはGバンドカーボンのsp2混成のグラファイト相の結晶格子構造内の炭素原子を置き換えていると考えられる。
【0013】
B. 熱による前処理
前記活性炭粉末の活性炭粒子の製造方法は、清浄且つ乾燥した植物材料の粒子を含む植物材料粉末の熱による前処理を任意に含み得る。前記熱による前処理は、前処理の不活性雰囲気下で、前処理温度で、且つ植物材料粉末内の揮発分、低安定性分子を放出させるために充分な前処理時間の間、植物材料粉末を加熱することにより、後述する活性化熱分解処理のために適した部分的に炭化された植物材料粉末を生成することを含む。
【0014】
1つの実施態様において、前処理の不活性雰囲気は、窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前処理温度は、約250℃~約500℃の範囲であり、且つ前処理時間は約1時間~約2時間の範囲である。
【0015】
他の実施態様において、前処理の不活性雰囲気は、窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前処理温度は、約300℃~約400℃の範囲であり、且つ前処理時間は約1時間~約2時間の範囲である。
【0016】
熱による前処理が実施される場合、そのような方法は本願において「2段階」または「二段階」法と称され得る。熱による前処理が実施されない場合、そのような方法は本願において「1段階」または「一段階」法と称され得る。意外なことに、任意の熱による前処理を実施しないことは、生じる材料の電荷貯蔵容量が著しく減少することなく、著しく処理時間およびコストを削減する。実際に、これまでのいくつかの結果は、一段解法が実際に電荷貯蔵容量を増加できることを示している。例えば、図18および19に示される2段階のカーボンおよび1段階のカーボンの電流電圧特性は同様である。他方で、図18および19に示される2段階のカーボンに比した1段階のカーボンについてのCV曲線下の大きな領域は、1段階のカーボンが改善された電荷貯蔵容量を有したことを示唆する。明示的に記されない限り、本願内で示される活性炭粉末の特性は、1段階法または2段階法のいずれかによって製造された粉末に該当する。
【0017】
C. 活性化熱分解処理
前記方法は、炭化されていない植物材料粉末、部分的に炭化された植物材料粉末(上述の熱による前処理に供されていることがある)、またはそれらの組み合わせを含む前駆体材料を活性化熱分解処理に供することを含み、前記活性化熱分解処理は、前記前駆体材料を炭化し、且つ高い表面積、改質されたメソ多孔性およびミクロ多孔性、改質された組成、および改質された結晶学的構造に寄与する。混乱を避けるために、部分的に炭化された植物材料粉末の場合、活性化熱分解処理は、部分的に炭化された植物材料粉末の炭化を継続する。
【0018】
1. 前駆体と活性化剤との混合
活性化熱分解処理は、前駆体と活性化剤とを混合して、前駆体と活性化剤との混合物を形成することを含む。活性化剤は、活性化熱分解処理の間に前駆体中の炭素と反応することにより、前記活性化熱分解処理後に実施される洗浄処理の間に除去されるために適した1つ以上の生成物が形成されるように選択される。1つの実施態様において、活性化剤は、KOH、NaOH、ZnCl2、H3PO4、蒸気およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。他の実施態様において、活性化剤はKOHである。
【0019】
生じる活性炭粒子の特性の1つ以上の制御における重要な要因は、活性化剤の選択、および混合物中での活性化剤と前駆体との相対的な量である。KOHが、上述の活性化剤の中で最も反応性または効率的である傾向が観察された。さらに、前駆体に対して活性化剤の量を増加することが、生じる活性炭粒子の表面積を増加する傾向が観察された。
【0020】
活性炭粒子内のメソ孔(つまり、2nm~4nmの範囲の直径を有する細孔)およびミクロ孔(つまり2nm未満の直径を有する細孔)の相対的な量は、前駆体に対する活性化剤の量によって影響されることも観察された。具体的には、活性化剤の相対的な量が増加するにつれ、平均細孔径が減少する傾向があることが観察された。この観察は、一見、直感に反するように思われ、なぜなら、活性化剤の量が増加すると細孔径は増加することが予測されるからである。特定の理論に束縛されるものではないが、平均細孔径の減少は、充分に大きなサイズに達した際に孔が崩壊する結果であり得ると考えられる。
【0021】
さらに、活性化剤の相対的な量が増加するにつれ、活性炭粒子の窒素含有率が減少する傾向があることが観察された(以下でより詳細に述べる)。
【0022】
さらに、活性化剤の相対的な量が増加するにつれ、活性炭粒子の結晶学的構造の均一性が減少する傾向があることが観察された(以下でより詳細に述べる)。特定の理論に束縛されるものではないが、窒素原子(活性炭粒子内のカーボンのグラファイト相またはGバンドカーボン内の炭素原子を置き換え、「グラファイトの窒素」と称されることがある)が活性化プロセスの一部として失われ、グラファイト相またはGバンドのカーボンの結晶学的構造が均一性を失い、その結果、活性化剤の相対的な量が増加するにつれ、活性炭はダイヤモンド相またはDバンドカーボンに対して少ないGバンドカーボンを含有する傾向があると考えられる。
【0023】
1つの実施態様において、前駆体と蒸気ではない活性化剤とは、約1:0.5~約1:3の範囲の質量比である。
【0024】
他の実施態様において、前駆体と蒸気ではない活性化剤とは、約1:1~約1:2の範囲の質量比である。
【0025】
他の実施態様において、前駆体と蒸気ではない活性化剤とは、約1:0.125~約1:1の範囲の質量比である。
【0026】
2. 前駆体と活性化剤との混合物の熱分解
活性化熱分解処理はさらに、前駆体と活性化剤との混合物を、熱分解の不活性雰囲気下で、熱分解温度で、且つ前駆体の炭化を完了するために充分な熱分解時間の間、加熱することにより、活性化された熱分解材料を形成することを含む。
【0027】
1つの実施態様において、熱分解の雰囲気は、窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、熱分解温度は、約600℃~約900℃の範囲であり、且つ熱分解時間は約1時間~約2時間の範囲である。
【0028】
他の実施態様において、熱分解の雰囲気は、窒素、アルゴンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、熱分解温度は、約700℃~約850℃の範囲であり、且つ熱分解時間は約1時間~約2時間の範囲である。
【0029】
D. 洗浄処理
前記方法はさらに、活性化された熱分解材料を洗浄処理に供することを含む。前記洗浄処理は、活性化された熱分解材料を、炭素と活性化剤との間の反応の1つ以上の生成物を、活性化された熱分解材料から減少または除去するために適した1つ以上の洗浄液と接触させることにより、活性炭粉末の活性炭粒子を形成することを含む。
【0030】
1つの実施態様において、洗浄処理の洗浄液の少なくとも1つは、HCl、DI水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される溶解された化合物を含む溶液である。
【0031】
他の実施態様において、洗浄処理の洗浄液の少なくとも1つは、HCl溶液および脱イオン水を含む溶液であり、その際、次の洗浄液は脱イオン水である。
【0032】
E. 乾燥
前記方法はさらに、活性炭粒子を乾燥させることを含み得る。また、活性炭粒子が凝集している場合、それらを物理的な操作(例えば粉砕)に供してより良好にそれらを分離できる。
【0033】
III. 活性炭粒子
A. 高い表面積
上述のとおり、本発明の活性炭粒子は、それらが電気エネルギー貯蔵用途、例えば電池およびスーパーキャパシタ用の電極のためによく適するようになる特定の特性を有する。1つのそのような特性は比較的高い表面積である。例えば1つの実施態様において、活性炭粒子は、約1,100m2/g~約2,100m2/gの範囲のブルナウアー・エメット-・テラー(BET)表面積を有する。他の実施態様において、活性炭粒子のBET表面積は、約900m2/g~約2,500m2/gの範囲である。さらに他の実施態様において、活性炭粒子のBET表面積は、約1,300m2/g~約2,100m2/gの範囲である。
【0034】
上記のとおり、表面積の程度は、主に活性化剤の選択、およびカーボン前駆体の前記材料に対する相対的な量によって制御され得る。具体的には、より有効な活性化剤、および/または前駆体に対してより多くの活性化剤を選択することによって、より高い表面積が生じる傾向がある。
【0035】
B. DバンドおよびGバンド材料を含むカーボン
活性炭粒子はカーボンを含み、そのカーボンは異なる結晶学的構造を有する。具体的には、前記カーボンは、sp3混成の無秩序カーボン相に相応するDバンドカーボンと、sp2混成のグラファイト相に相応するGバンドカーボンとを含む。
【0036】
1つの実施態様において、DバンドカーボンとGバンドカーボンとは、ラマン分光法を使用して特定して、Dバンドカーボン(ID)とGバンドカーボン(IG)との相対的な強度が、IG/ID比0~約2の範囲であるように達する比率である。
【0037】
他の実施態様において、IG/ID比は約0~約1.7の範囲である。
【0038】
さらに他の実施態様において、IG/ID比は約0~約1.5の範囲である。
【0039】
G相の存在は、D相カーボンの伝導率よりも高い伝導率ゆえに、活性炭の電荷貯蔵容量を改善することが予測される。
【0040】
C. 窒素
上記のとおり、活性炭粒子は窒素も含む。窒素原子の少なくともいくつかは、Gバンドカーボンのsp2混成グラファイト相の結晶格子構造内の炭素原子について置き換えていると考えられる。上述のとおり、活性炭粒子の窒素含有率は、活性化熱分解処理を介して制御または選択することができる。特に、前駆体と活性化剤との質量比が窒素含有率における実質的な役割を果たすことが観察される。特定の理論に束縛されるものではないが、活性化剤と前駆体との間の活性化反応の一部として形成される細孔を介して、窒素が活性炭から侵出するか、または除去され得ると考えられる。
【0041】
X光電子分光法で特定して、窒素が活性炭粒子の約0.5原子%~約1.7原子%の範囲の量であるように、活性炭粒子の窒素含有率を制御することによって、電気貯蔵用途、例えば電池およびスーパーキャパシタの電極における活性炭粒子の望ましい性能が達成されることが観察された。
【0042】
他の実施態様において、窒素の量は活性炭粒子の約0.4原子%~約1.8原子%の範囲である。
【0043】
さらに他の実施態様において、窒素の量は活性炭粒子の約0.5原子%~約1.1原子%の範囲である。
【0044】
D. 細孔
上述のとおり、活性炭粒子は、2nm~4nmの範囲の直径を有するメソ孔および2nm未満の直径を有するミクロ孔も含む。約1,000m2/g~約2,500m2/gの範囲である表面積に加えて、本発明の活性炭粒子の多孔度を様々な方法により特徴付けることができる(例えば下記の表A参照)。
【0045】
1. 平均細孔幅
例えば、活性炭粒子を、メソ孔およびミクロ孔の量の相対的な量の尺度である平均細孔幅の観点で特徴付けることができる。1つの実施態様において、バレット・ジョイナー・ハレンダ(BJH)法により特定される吸着の平均細孔幅は約1nm~約4nmの範囲である。他の実施態様において、平均細孔幅は約1nm~約2nmの範囲である。さらに他の実施態様において、平均細孔幅は約2nm~約4nmの範囲である。
【0046】
細孔径を調整できることにより、広範な電解質の使用が可能になる。適切なサイズにされた細孔により、それらのカーボンの細孔内に電解質イオンが容易にアクセスすることが可能になる。
【0047】
2. ミクロ孔表面積
本発明の活性炭粒子を、ミクロ孔表面積の観点でも特徴付けることができる。例えば、1つの実施態様において、t-プロット法により特定されるミクロ孔表面積は約300m2/g~約1,300m2/gの範囲である。他の実施態様において、ミクロ孔表面積は約1,000m2/g~約1,300m2/gの範囲である。さらに他の実施態様において、ミクロ孔表面積は約600m2/g~約1,200m2/gの範囲である。
【0048】
ミクロ孔の存在は、電解質イオンの吸脱着プロセスのためのより大きな表面積を提供する傾向がある。
【0049】
3. ミクロ孔容積
前記活性炭粒子を、ミクロ孔容積の観点でも特徴付けることができる。例えば、1つの実施態様において、t-プロット法により特定されるミクロ孔容積は約0.1cm3/g~約0.7cm3/gの範囲である。他の実施態様において、ミクロ孔容積は約0.4cm3/g~約0.7cm3/gの範囲である。
【0050】
ミクロ孔容積を制御して、活性炭の電荷貯蔵容量を高めることができると考えられる。
【0051】
4. 特定のサイズのミクロ孔の累積表面
活性炭粒子を、特定のサイズの範囲のミクロ孔の累積表面積の観点でも特徴付けることができる。例えば1つの実施態様において、活性炭粒子は、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積が約1,000m2/g~約3,000m2/gの範囲である。他の実施態様において、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積は、約1,400m2/g~約2,600m2/gの範囲である。さらに他の実施態様において、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積は、約1,700m2/g~約2,700m2/gの範囲である。
【0052】
0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積は、カーボンの電荷貯蔵容量に影響することが観察された。例えば、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積表面積が2,000~2,600m2/gの範囲であることは、細孔内での電解質の比較的容易なアクセスを可能にし、ひいてはより高い電荷貯蔵容量をもたらすと考えられる。
【0053】
5. 特定のサイズのミクロ孔の累積容積
活性炭粒子を、特定のサイズ範囲のミクロ孔の累積容積の観点でも特徴付けることができる。例えば、1つの実施態様において、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積容積は、約0.35cm3/g~約1.6cm3/gの範囲である。他の実施態様において、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積容積は、約0.6cm3/g~約1.1cm3/gの範囲である。さらに他の実施態様において、0.285nm~1.30nmの範囲の水力半径を有するミクロ孔の累積容積は、0.4cm3/g~約1.4cm3/gの範囲である。
【0054】
ミクロ孔の累積容積および表面積は、上述の細孔サイズ範囲内の多孔性の度合いを定量化する代替的な手段である。
【0055】
E. 活性炭粒子の比キャパシタンス
前記活性炭粒子は、エネルギー貯蔵用途、例えば電池およびスーパーキャパシタにおける電極材料として使用するために特によく適している。そのような用途についてのそれらの適性は、比キャパシタンス(Csp)の観点で評価できる。
【0056】
1つの実施態様において、二段階法を使用して製造される活性炭粒子は、電流密度1アンペア/グラム(A/g)で、約130ファラド/グラム(F/g)~約330F/gの範囲である比キャパシタンスを有する。他の実施態様において、電流密度1A/gでの比キャパシタンスは約160F/g~約210F/gの範囲である。さらに他の実施態様において、電流密度1A/gでの比キャパシタンスは約110F/g~約260F/gの範囲である。
【0057】
1つの実施態様において、一段階法を使用して製造された活性炭粒子は、電流密度1アンペア/グラム(A/g)で約100F/g~約250F/gの範囲である比キャパシタンスを有し、電流密度5アンペア/グラム(A/g)で、比キャパシタンスは約80ファラド/グラム(F/g)~約175F/gの範囲であり、且つ電流密度10アンペア/グラム(A/g)で、比キャパシタンスは約60ファラド/グラム(F/g)~約160F/gの範囲である。
【0058】
IV. エネルギー貯蔵装置
本発明の活性炭粒子をエネルギー貯蔵装置において試験し、前記活性炭粒子は高いレート安定性を有する装置に寄与した。
【0059】
例えば、放電電流を3A/gから15A/gに増加すると、二段階の活性炭粒子から形成された電極はその初期の電荷貯蔵容量の80%より多くを保持した。さらに、それらの二段階のカーボン粒子を使用して製造されたスーパーキャパシタ装置は、5,000サイクルを上回る充放電調査で、その初期の電荷貯蔵容量の95%より多くを保持し、ほぼ100%のクーロン効率を有した。
【0060】
例えば、放電電流を1A/gから5A/gに増加すると、一段階の活性炭粒子から形成された電極はその初期の電荷貯蔵容量の約78.5%を保持した。さらに5A/gから10A/gに増加すると、さらに4.5%の電荷容量の損失しか観察されなかった(つまり、その初期の電荷貯蔵容量の約74%を保持)(図22に示す)。さらに、それらの一段階のカーボン粒子を使用して製造されたスーパーキャパシタ装置は、10,000サイクルを上回る充放電調査で、その初期の電荷貯蔵容量の90%より多くを保持し、ほぼ100%のクーロン効率を有した(図24(A)参照)。
【実施例
【0061】
V. 実施例
A. 合成
活性炭の試料を大豆の葉、茎および殻から合成した。前記大豆材料を洗浄し、60℃で乾燥させた。乾燥させた材料を微細な粉末に破砕した。この粉末が、一段階法を使用して製造される試料のための前駆体となった。二段階法を使用して製造される試料については、粉末を350℃で2時間、窒素雰囲気下での熱による前処理に供し、植物材料粉末内の揮発分、低安定性分子を放出することにより、部分的に炭化した植物粉末を製造し、それは活性化および熱分解のために適した前駆体であった。
【0062】
前記前駆体の活性化熱分解処理を実施した。活性化熱分解処理は、前駆体とKOH活性化剤とを混合して、前駆体と活性化剤との混合物を形成することを含んだ。KOHが活性化熱分解処理の間に前駆体中の炭素と反応することにより、前記活性化熱分解処理後に実施される洗浄処理の間に除去されるために適した1つ以上の生成物が形成された。特に、少なくとも式(1):
6KOH+2C(前駆体からの) → 2K+3H2+2K2CO3 (1)
の反応が生じると考えられる。
【0063】
前駆体:活性化剤の様々な質量比(例えば1:0.125、1:0.25、1:0.5、1:1、1:2、および1:3)を選択して、生じる活性炭の(例えば表面積に及ぼす)効果を評価した。例えば、1グラムの前駆体を1グラムのKOHペレットと混合して、1:1の質量比を実現した。KOH活性化剤と混合されていない試料を対照として使用した。
【0064】
次に、前駆体と活性化剤との混合物を、熱分解の不活性雰囲気の窒素下で(管状炉内での窒素流の下で)、熱分解温度約800℃で、熱分解時間約2時間の間、加熱し、それは前駆体の炭化を完了させることにより活性化された熱分解材料を形成するために充分であった。
【0065】
その後、活性化された熱分解材料を粉末に粉砕し、炭素と活性化剤との間の反応の1つ以上の生成物(この場合は炭酸カリウム)を減少または除去するために適した1つ以上の洗浄液を用いた洗浄処理に供した。特に、前記材料を1MのHCl水性洗浄液で洗浄し、引き続き脱イオン水で洗浄した。塩酸が炭酸カリウムと反応して二酸化炭素ガスを形成し、それは放出され、溶質の塩化カリウムは脱イオン水で除去された。活性炭粒子を60℃で終夜乾燥させた。
【0066】
1. 比キャパシタンス
図1に示されるとおり、大豆の葉からのカーボンは、電池およびスーパーキャパシタのために使用される市販のカーボンよりも実質的に大きい比キャパシタンスを有する。大豆の葉からのカーボンは、市販のカーボンに比して遙かに高いエネルギー貯蔵容量を有した。例えば10A/gで、市販のカーボンは16F/gを蓄える一方で、大豆の葉からのカーボンは121F/gを蓄え、7.5倍を上回るエネルギー貯蔵容量である。さらに、大豆の葉からのカーボンは、より安定なレート特性を示す。例えば放電電流密度を3A/gから15A/gに増加させると、市販のカーボンはその初期の電荷貯蔵容量の16.3%しか保持しなかった一方で、大豆の葉からのカーボンはその初期の電荷貯蔵容量の83.1%を保持した。
【0067】
2. X線回折
合成されたカーボン試料を、粉末X線回折法(島津のX線回折装置)を使用し、2θ-θスキャンおよび線源としてCuKα1(λ=1.5406Å)を使用して評価した。図2、9、および10は、葉、殻および茎からの、活性化されていないカーボンおよび様々な質量比のKOHで活性化されたカーボンのXRDパターンを示す。活性炭試料において、24°および44°の2θ付近に中心があるXRDピークが、グラファイトカーボンの(002)および(100)面に対応する。グラファイト相の存在は、電極材料としての適性を示す。広く且つ強度が低いピークは、カーボン試料の無秩序の性質を示す。一般に、KOHの質量比が増加すると、グラファイトカーボンのピークは広くなる傾向があり、且つ強度が低下する傾向があり、カーボン試料中のグラファイト構造の減少を示唆する。それらの観察は、カーボン試料のグラファイト化の度合いが主に化学的な活性化に応じていることを明らかにする。
【0068】
3. ラマン分光法
アルゴンイオンレーザーのラマン分光法を使用して、励起源として波長514.5nmを使用してカーボンのGバンドおよびDバンドを特定した。図5~7に示されるとおり、ラマン分光法を使用して、それぞれ大豆の殻、茎および葉から製造されたカーボンのグラファイト相およびダイヤモンド相を特定した。全ての試料において1354および1591cm-1付近の2つの特徴的なピークが観察され、それらはそれぞれカーボンのDバンドおよびGバンドに帰属され得る。グラファイト相の存在は有利であり、なぜなら、これはカーボンの伝導相であるからである。
【0069】
4. 窒素吸脱着等温線
窒素吸脱着等温線を使用して試料の表面積を測定し、それはASAP 2020容積吸着分析器(Micrometrics、米国)を使用して77Kで実施された。分析前に、試料を24時間、90℃で脱ガスして、カーボンの表面上および細孔内に吸着したあらゆるガスを除去した。
【0070】
活性化された、および活性化されていない大豆の葉、殻および茎の窒素吸脱着等温線を図3、11、および12に示す。活性炭の細孔のサイズおよび比表面積が、大豆材料:活性化剤の質量比によって影響されたことが明らかである。全般的に、活性化剤の相対的な量が増加すると、表面積が増加する傾向がある。例えば、殻のカーボンの表面積はKOHを用いた活性化で1m2/gから2005m2/gに増加した。より多い量のKOHを使用して活性化された殻/茎の試料はタイプIの等温曲線を示し、0.35未満の相対圧力(P/P0)で大半のN2吸着、およびP/P0が0.35より上では等温線のほぼ平行な傾き(x軸に対して)を有し、これはカーボン内のミクロ孔に典型的である。他方で、より少ない量のKOHを使用する活性化はタイプIとIVとの組み合わせの等温曲線を示し、0.5より上のP/P0では識別可能なヒステリシスループが出現し、ミクロ孔とメソ孔との両方の構造の存在を示す。対照的に、活性化されていない試料の非常に低いN2吸着は、多孔質構造がほぼ存在しないことを示す。
【0071】
5. BJH細孔分布
これらの観察は、図4、13、および14に示されるBJT細孔径分布のプロットによってさらに確認された。大豆の葉、殻、および茎に由来するカーボンの細孔径は約2nmを中心としている。
【0072】
6. 走査型電子顕微鏡像
全ての試料のミクロ孔構造およびモフォロジーを、電界放出型走査型電子顕微鏡を使用して評価した。走査型電子顕微鏡(SEM)像を図8に示す。SEM像から、KOH活性化が大豆材料に由来するカーボンの表面を改質したことが明らかである。大豆に由来するカーボンの高い多孔度は、電解質イオンのためのより高い表面積をもたらし、電荷貯蔵容量を増加する傾向がある。
【0073】
大豆の葉、殻および茎からの活性炭の細孔および表面積の特徴を下記の表Aに示す。
【0074】
【表1】
【0075】
わかるとおり、それらのカーボンはミクロ孔とメソ孔との存在を示し、そのことはエネルギー貯蔵材料において使用される活性炭に基づく材料にとって有益である。ミクロ孔の存在は、電解質イオンの吸脱着プロセスのためのより大きな表面積を提供する。メソ孔の存在は表面積へのアクセス性を確実にし、いくつかの電解質イオンが、形状的な抵抗を経ずに同時に拡散するためのより広いチャネルを提供する。それらの態様により、本発明の活性炭材料は様々な電解質と共に使用するために適したものになると考えられる。従って、前記材料をスーパーキャパシタまたは電池、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの電池/スーパーキャパシタの製造において使用できる。
【0076】
7. 電解質の影響
種々の電解質中でSB-2(代表的な材料として選択)の電気化学的特性をさらに調査した。アルカリ溶液(KOHおよびLiOH)、酸溶液(H2SO4)および塩溶液(Na2SO4)をこの調査のために使用した。図15は、様々な電解質中での比キャパシタンスの変化を印加電流密度の関数として示す。
【0077】
8. 窒素ドーピングの影響
尿素を使用して市販のカーボンを窒素でドープした。このために、1:2の比の市販のカーボンおよび尿素(200mgの市販のカーボンおよび400mgの尿素)を5mlのDI水中で溶解した。その溶液を2時間、超音波浴中で超音波処理し、次いでその混合物をホットプレート上、85℃で乾燥させた。乾燥粉末を800℃(5℃/分)で2時間、窒素下で炭化した。室温に自然冷却した後、前記粉末をDI水で洗浄した。洗浄した粉末を65℃で、通常の炉内で終夜乾燥させた。市販のカーボン、および窒素ドープされた市販のカーボンの充放電プロファイルを図16に示す。図16においてわかるとおり、窒素ドーピングは市販のカーボンのエネルギー貯蔵容量を改善しなかった。ドーピング法は効果的ではないかもしれないが、この試験は、特許請求される発明の材料によって達成される特性が、少なくとも部分的には、Gバンドカーボンのsp2混成グラファイト相窒素の結晶格子構造において炭素原子を置き換えている、バイオマスからの窒素原子の存在に起因することを示すと考えられる。
【0078】
9. キャパシタンスの保持およびクーロン効率の試験
図17を参照し、本発明の二段階の活性炭材料を電極材料として使用して、コインセルのスーパーキャパシタを形成した。図17に示されるとおり、そのスーパーキャパシタの性能は理想的なキャパシタの性能に非常に類似していた。その装置は8,000回を超える充放電サイクルを経て、性能が非常に安定であり、ほぼ100%のクーロン効率を有した。
【0079】
図24(A)を参照し、本発明の二段階の活性炭材料を電極材料として使用して、コインセルのスーパーキャパシタを形成した。図24(A)に示されるとおり、その装置は10,000回を超える充放電サイクルを経て、性能が非常に安定であり、その初期の電荷貯蔵の90%より多くを保持し、ほぼ100%のクーロン効率を有した。
【0080】
VI. 結論
本発明の原理を例示および説明したが、そのような原理から逸脱することなく、本発明を構成および詳細において変更できることは、当業者には明らかであるはずである。
【0081】
本発明の材料および方法を様々な実施態様および例示的な例に関して説明したが、本発明の概念、主旨および範囲から逸脱することなく、本願内に記載された材料および方法に変更を適用できることは、当業者には明らかである。当業者にとって明らかな全てのそのような類似の置き換えおよび変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の主旨、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
図1
図2-1】
図2-2】
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【国際調査報告】