(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ネコインフルエンザの治療および/または予防において使用するためのスルホン化されたポリスチレン誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/795 20060101AFI20220114BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220114BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220114BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61K31/795
A61P31/14
A61P31/22
A61P43/00 121
A61K31/522
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527090
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 PL2019050071
(87)【国際公開番号】W WO2020117080
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512276474
【氏名又は名称】ユニベルシテット ヤギエロンスキ
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET JAGIELLONSKI
【住所又は居所原語表記】ul. Golebia 24, PL-31-007 Krakow, Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】シノヴィエツ,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】パショータ,マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】パイロク,クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】ノワコウスカ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】スズクズビアルカ,クシシュトフ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086FA04
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC61
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、単独でまたは組み合わせ療法で、ネコインフルエンザ、特に、ネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染症の治療および/または予防において使用するための、式Iのスルホン化されたポリスチレン誘導体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコインフルエンザ、特に、ネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染症の治療および/または予防において使用するための、式I:
【化1】
のスルホン化されたポリスチレン誘導体(式I中、Mが金属陽イオンであり、zが1から3までの整数であり、nが7から6000の範囲の整数である)。
【請求項2】
塩の形態であることを特徴とする、請求項1に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項3】
ナトリウム塩の形態であることを特徴とする、請求項2に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項4】
少なくとも1.5kDa、好ましくは少なくとも8kDaの分子量を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項5】
8kDaから1200kDaの範囲の分子量を有することを特徴とする、請求項4に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項6】
8kDa、19.3kDa、35kDa、46kDa、93.5kDa、200kDa、400kDa、780kDa、および1200kDaからなる群から選択される分子量を有することを特徴とする、請求項5に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項7】
93.5kDaまたは780kDaの分子量を有することを特徴とする、請求項6に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項8】
ネコヘルペスウイルスがネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項9】
組み合わせ療法で使用するためのものであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項10】
組み合わせ療法が、ネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染症の治療のための別の作用物質の同時使用を伴うことを特徴とする、請求項9に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項11】
他の作用物質がヌクレオシド類似体であることを特徴とする、請求項10に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【請求項12】
ヌクレオシド類似体がアシクロビル(ACV)および/またはペンシクロビル(PCV)であることを特徴とする、請求項11に記載のスルホン化されたポリスチレン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、ネコインフルエンザ、特に、ネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染症の治療および/または予防において使用するための、スルホン化されたポリスチレン誘導体、特にポリスチレンスルホン酸ナトリウムに関する。
【背景技術】
【0002】
「ネコインフルエンザ」と呼ばれるネコにおける上気道疾患(URTD)は、一般的な疾患であり、その症候としては、咳、くしゃみ、鼻水、眼の発赤、発熱、または鼻および眼からの膿性分泌物の出現が含まれる[1、2]。この疾患は、動物シェルターおよび猫預かり所における主な死因の1つであると考えられている[3]。この疾患の主なウイルス性の病因的因子は、ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1、FeHv-1)およびネコカリシウイルス(FCV)である[1、3~5]。
【0003】
ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1、FeHv-1)は、エンベロープを有するDNAウイルスを包含するHerpesviridae科のメンバーである。ヘルペスウイルスは、ヒト、ならびに多くの動物種、すなわち哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、および魚類に感染する病原体である[6]。ヒトで見られる最も一般的な病原体の1つは、主に顔面で生じる潰瘍の原因となる単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)であるが、身体の他の領域でも感染が可能である。ヘルペスウイルスによって生じる感染は、より重度の疾患または死亡の発生をもたらし得る[6、7]。ネコヘルペスウイルスはHSV-1に関連し、世界中でネコの集団に広がっている。ネコの集団の最大90%がこの病原体について血清反応陽性であること、その一方で、ウイルスの80%が潜伏状態で存在していることが推定されている[8、9]。FHV-1感染は、上気道の炎症、粘膜の感染、ならびに眼の感染(角膜の潰瘍、急性結膜炎、および角膜炎)に主に関連しており、これらは失明をもたらし得る[10~13]。さらに、細菌の同時感染は命に関わる可能性があるため、子猫および免疫不全の個体にとって特に危険である。
【0004】
ネコヘルペスウイルスは主に上皮組織において複製し、急性炎症をもたらす[13]。上皮細胞に感染した後、ウイルスは、逆行性経路によって感覚ニューロンの内部に、すなわち細胞体に向かって運ばれ、その後、潜伏状態に入る。潜在ウイルスはエピソーム形態で生じるが、これは再活性化され得、疾患は、宿主の免疫系が弱った場合に再発し得る[8、14、15]。
【0005】
ヒトにおけるヘルペスウイルス感染を処置するために、ヌクレオシド類似体が現在使用されている。アシクロビル、ペンシクロビル、イドクスウリジン、シドビル(cidovir)、およびビダラビンは、この群に属する。これらの分子は、ウイルスDNAポリメラーゼの活性中心をブロックすることによって、ウイルスの複製を阻害する。ヌクレオシド類似体は不活性形態で細胞に送達され、ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(TK)によって行われるリン酸化の結果として活性化が生じる。次の段階では、分子の別の2つのリン酸化が、宿主のGMPキナーゼによって生じる[16、17]。三リン酸化された化合物は、ウイルスDNAポリメラーゼによって、ポリヌクレオチド鎖の伸長反応の際の基質として使用され得、誘導体がDNAに組み込まれると、伸長は停止する。ヌクレオシド類似体は、宿主のポリメラーゼよりもウイルスのポリメラーゼに対して非常に高い親和性を有する[18]。驚くべきことに、類似の疾患症候およびウイルスの系統発生学的類似性にもかかわらず、個々の薬剤の有効性プロファイルは、ヒトとネコとで異なっている。ヒトにおいて安全かつ効果的な一部の薬剤は、ネコに対して毒性である[19~21]。例えば、アシクロビル(ACV)は、ヒトにおいてHSV-1ウイルスの複製の非常に効果的な阻害剤であるが、ネコにおいては、これは同様に高い活性は示さず、その生物学的利用能は低かった[22]。バラシクロビル(VCV)は、肝臓エステラーゼによってACVに変換される化合物であり、これもヘルペスウイルス感染を処置するためにヒトにおいて非常に多く使用されている[23]。VCVはインビトロで抗ウイルス活性が高いにもかかわらず、この薬剤を摂取したネコは疾患の症候を改善させず、加えて、動物に死をもたらす骨髄抑制または肝臓および腎臓の壊死などの多くの副作用があった[24]。しかし、別のアシクロビル誘導体であるペンシクロビル(PCV)は、効果的かつ安全な解決策であると思われる[20、25、26]。加えて、PCVの前駆体であるファムシクロビルが、ネコにおけるFHV感染の処置および予防において試験されており、安全であることが示されている[27、28]。ファムシクロビルは肝臓のアルデヒドオキシダーゼによってPCVに変換され[29、30]、細胞に運ばれ、ACVと同様にウイルスのTKによってリン酸化される。次いで、別の2つのリン酸化が細胞の酵素によって行われ、ウイルスの遺伝物質のポリヌクレオチド鎖の伸長が阻害される[31]。しかし、ネコにおけるPCVの濃度は予想よりもはるかに低く、このことは、ネコにおける肝臓のアルデヒドオキシダーゼの活性が他の哺乳類におけるよりもはるかに低く、そのため、前駆体、すなわちファムシクロビルが、活性形態、すなわちPCVに変換されないこととおそらく関係している[26、27、32]。
【0006】
FCVは、正の極性を有する一本鎖RNAの形態の遺伝物質を含有する、エンベロープを有さないウイルスを含む、Caliciviridae科のメンバーである。系統発生学的関係を理由として、カリシウイルスはこれまでのところ、Lagovirus、Nebovirus、Norovirus、Sapovirus、およびVesivirusという5つのタイプに分けられている[45]が、2019年2月に、国際ウイルス分類委員会(ICTV)は、Caliciviridae科のメンバーの遺伝的多様性が大きいことを理由に、(前述の5つに加えて)Bavovirus、Minovirus、Nacovirus、Nebovirus、Recovirus、およびValovirusという6つの新たな属が分類されている新たな分類を定めた。この科のウイルスは、ヒトおよび動物の両方に感染することができる。この科の最も良く知られている代表的なウイルスの1つは、哺乳類において非細菌性の胃腸炎を生じさせるノロウイルスおよびサポウイルスである。ラゴウイルスは、ウサギにおいて致命的な出血熱を生じさせる。ネコにおいて、FCVは、免疫系が不全の個体にとって特に危険な上気道の炎症を生じさせることが多い[46~48]。FCVは、世界中のネコの集団において見られる病原体である[45、49]。これは通常、穏やかな結膜炎および上気道の炎症を生じさせるが、症候にはまた、潰瘍および慢性的な口内炎、流涎、ならびに稀に、急性滑膜炎を伴う跛行が含まれる[50~52]。FCVの遺伝物質は一本鎖RNAであり、高いゲノム多様性は、ウイルスが、変化する環境条件に非常に迅速に適応し得ることを意味する[53]。FCVに対する比較的効果的なワクチンが存在し、感染が動物の生命を脅かすことは通常ないが、二次細菌感染は、ネコに大きな脅威を及ぼす[54]。ここ数年、いわゆるVS-FCV(強毒全身性FCV)に属するFCV株もネコの集団で発生していることが示されており、これらの株は、多臓器不全に関連して最大60%の死亡率を伴う、エピデミックの原因である。文献によると、ある株は、出血熱の症候を生じさせた[48、55~58]。FCVによって生じる感染の処置は、二次細菌感染を予防することを目的とした抗生物質療法にのみ基づく。現在、FCVに直接作用する治療物質は、獣医学用の医薬では使用されていない。重要なこととして、非常に高いインビトロでの抗ウイルス活性が、塩化リチウム[59]およびメフロキン[60]などの化合物について実証されている。残念ながら、ネコにおけるインビボでのこれらの化合物の有効性に対して、研究は行われていない[59、60]。さらに、インビトロでFCV感染を同様に阻害するリバビリンは、ネコに使用するには、経口投与後の毒性が強すぎる[61]。
【0007】
上記の例は、FHVまたはFCVなどのウイルスによって生じ得るネコにおける呼吸器症候群を処置および/または予防するための現在利用可能な作用物質が、効果が不十分であり、および/または毒性が強すぎることを示している。したがって、ネコにとって安全でありながら、両ウイルスの感染および伝染を効率的に低減させる、効果的な治療物質を見出すことが必要とされている。
【0008】
スルホン化されたポリスチレン誘導体が知られている。これらの抗微生物特性、特に抗ウイルス性も知られており、例えば高カリウム血症を処置するための医薬におけるこれらの使用も知られている。代表的な既知のスルホン化されたポリスチレン誘導体は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、PSSNa)である。これは、その抗菌活性および抗ウイルス活性が知られている。これは、HIV、HPV、HSV-1、HSV-2、Gardnerella vaginalis、Chlamydia trachomatis、およびNeisseria gonorrhoeaeを含む多くの病原体の複製を阻害することが示されている[33~37]。しかし、これまでのところ、FCVウイルスまたはFHV-1ウイルスによって生じる感染のケースでそれを使用できる可能性は実証されていない。HSVのケースでは、PSSNaポリマーが、細胞表面へのビリオンの結合を防ぐことによって複製を阻害することが示されており、このことは、感染した細胞から健康な細胞へのウイルスの伝染を、より困難にする[35]。提案された作用メカニズムが感染の初期段階における抗ウイルス活性を伴うことを考慮すると、PSSNaがヘパラン硫酸(HS)模倣体であること、すなわち、PSSNaが、HSVへの接着分子として機能する、感染した細胞の表面に存在するHSを、「模倣」し得ることを示唆している。加えて、フコサノイド(fucosanoids)、硫酸デキストラン、および硫酸マンナンなどの他のヘパラン硫酸模倣体が、接着物質へのHSV-1ウイルスおよびHSV-2ウイルスの結合をブロックすることが示されている[38~41]。さらに、これもHS模倣体であると考えられているIV型λ-カラギーナンは、FHV-1ウイルスに結合することができ、FHV-1ウイルスと接着因子(HS)との相互作用がブロックされる。インビトロでのIV型λ-カラギーナンの使用で得られた結果が有望なものであったという事実にもかかわらず、この化合物を含有する調製物をネコで投与した後に、健康状態の改善は見られなかった[42]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ネコヘルペスウイルスおよびカリシウイルス、特にFHV-1およびFCVの複製の新規な阻害剤、特に、ネコヘルペスウイルスおよびネコカリシウイルスによって生じる感染症の治療および/または予防に現在利用可能なものと異なる作用メカニズムを有する、このタイプの感染のための組み合わせ療法にも適切な作用物質を得ることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本特許出願において記載されている発明の目的は、ネコインフルエンザ、特に、ネコカリシウイルスまたはヘルペスウイルス、特にFHV-1によって生じる感染の処置および/または予防において使用するための、新規の効果的な作用物質を得ること、ネコインフルエンザ、特に、ネコカリシウイルスまたはヘルペスウイルスによって生じる感染の処置および/または予防において使用するための、このタイプの感染のための既に利用可能な治療法との組み合わせ療法において使用することができる、新規の効果的な作用物質を得ること、ならびに、このタイプの感染を処置するためのこのような調製物の使用の可能性を実証することである。
【0011】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲で提示されている解決策で達成された。驚くべきことに、これらの目的は、スルホン化されたポリスチレン誘導体を使用して達成され得ることが分かった。
【0012】
本発明は、ネコインフルエンザ、特に、ネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染症の治療および/または予防において使用するための、式I:
【化1】
のスルホン化されたポリスチレン誘導体に関するものであり、式中、Mは金属陽イオンであり、zは1から3までの整数であり、nは7から6000の範囲の整数である。
【0013】
好ましくは、本発明に従って使用されるスルホン化されたポリスチレン誘導体は、塩の形態であり、さらに好ましくは、スルホン化されたポリスチレン誘導体は、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(PSSNa)である、ナトリウム塩の形態である。
【0014】
好ましくは、本発明に従って使用されるスルホン化されたポリスチレン誘導体は、少なくとも1.5kDa、さらに好ましくは少なくとも8kDaの分子量を有する。
【0015】
さらに好ましくは、本発明に従って使用されるスルホン化されたポリスチレン誘導体は、8kDaから1200kDaの範囲の分子量を有し、さらに好ましくは、当該誘導体は、8kDa、19.3kDa、35kDa、46kDa、93.5kDa、200kDa、400kDa、780kDa、および1200kDaからなる群から選択される分子量を有し、最も好ましくは、当該誘導体は、93.5kDaまたは780kDaの分子量を有する。
【0016】
好ましくは、ネコヘルペスウイルスまたはネコカリシウイルスによって生じる感染は、ネコインフルエンザである。
【0017】
好ましくは、ネコヘルペスウイルスによって生じる感染は、ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)によって生じる感染である。
【0018】
好ましくは、本発明に従うと、スルホン化されたポリスチレン誘導体は、ネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染の処置のための別の作用物質の同時使用を好ましくは含む、組み合わせ療法における使用のためのものである。
【0019】
同時使用は、本明細書において、本発明の化合物を、1つの製剤または別個の製剤で、好ましくは、ネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染の処置のための別の作用物質と同時に投与することを意味する。
【0020】
さらに好ましくは、FHV-1感染を処置するためのこのような他の作用物質は、ヌクレオシド類似体、さらに好ましくは、アシクロビル(ACV)および/またはペンシクロビル(PCV)である。
【0021】
本発明に従ったスルホン化されたポリスチレン誘導体は、好ましくは塩の形態、特にナトリウム塩である。代表的なスルホン化されたポリスチレン誘導体は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)である。別のポリスチレンスルホン酸塩の例は、カルシウム塩またはカリウム塩であり得る。
【0022】
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)などのスルホン化されたポリスチレン誘導体は、当業者に知られている任意の方法によって調製することができる。これらの化合物は次いで、適切な薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、および/または基質と共に、医薬組成物に含まれ得る。このタイプの組成物は、例えば局所経路、鼻経路、または経口経路などの任意の投与経路による投与に適切な製剤の形態で調製することができる。このタイプの組成物は、例えば、局所製剤、例えば軟膏剤、または経口製剤、例えば溶液もしくは懸濁液の形態であり得る。
【0023】
本発明に従って使用するための化合物は、ネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染の予防および/または処置を可能にし、二次感染のリスクを低減させる。本発明に従って使用するための化合物は、ネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルスによって生じる感染の経過の軽減をさらに可能にする。本発明に従って使用するための化合物は、ネコインフルエンザの原因となるウイルスのインビトロでの複製をほぼ完全に阻害し、加えて、毒性が非常に低いかまたは検出不可能であるという点で、非常に効果的である。さらに、本発明に従って使用するための化合物は、ネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスまたはネコヘルペスウイルス、特にFHV-1によって生じる感染の組み合わせ療法において、スルホン化されたポリスチレン誘導体、特に、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩と異なる作用メカニズムを特に有する、このタイプの感染を処置するために使用される少なくとも1つのさらなる作用物質と共に使用するのに適している。このタイプの感染を処置するために使用されるこのような他の作用物質の例は、ヌクレオシド類似体である。本発明に従って使用するための化合物は、ペンシクロビル(PCV)と共に使用するのに特に適している。ポリスチレンのスルホン化誘導体およびヌクレオシド類似体のこの組み合わされた使用によって、インビボで非常に重要である相乗効果が可能となり、FHV-1によって生じるネコインフルエンザ、特に、ネコヘルペスウイルスによって生じる感染の治療の有効性を増大させ、それにより、使用される治療物質の用量を低下させ、これらの治療物質の考えられる毒性および副作用を低減させることが可能となる。これによって、この目的のために使用される現在利用可能な治療物質に対して耐性のネコインフルエンザ、特にネコカリシウイルスによって生じる感染、またはネコヘルペスウイルスによって生じる感染を処置することも可能となる。
【0024】
本研究によって、スルホン化されたポリスチレン誘導体、好ましくはPSSNaが、感染した細胞には作用しないが、好ましくはFHV-1などのヘルペスウイルスに結合し、これによってこのウイルスの拡散をブロックし、このウイルスが原因となる感染を制限することが示された。このことから、このような誘導体は非常に効果的である。加えて、これは毒性が非常に低く、副作用を生じさせない。
【0025】
本研究はまた、ポリスチレンのスルホン化誘導体、好ましくはPSSNaが、現在市販されている作用物質と異なる抗ウイルス活性メカニズムを有することも示した。このことから、これは、相乗効果を達成するために、ネコヘルペスウイルスによって生じる感染のケースで使用される他の抗ウイルス薬との、好ましくはヌクレオシド類似体、特にアシクロビルおよび/またはペンシクロビルとの組み合わせ療法において、効果的に使用することができる。これによって、ネコヘルペスウイルスによって生じる感染のための治療の有効性を増大させること、使用される作用物質の用量を低減させること、および適切な治療的または予防的有効性を維持しながら毒性を低減させること、およびネコヘルペスウイルスの現在利用可能な治療に耐性な突然変異体によって生じる感染の効果的な処置が可能となる。
【0026】
FCVのための接着因子がシアル酸であり[62]、その模倣体が研究対象のポリマーであるHSではないという事実にもかかわらず、本発明者らは、高分子量のポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩が、F9実験株と6つの臨床株K1、K2、K3、K5、K8、およびK10との両方によって生じる、FCVによって誘発されるインビトロでの感染を効果的に阻害することを示した。阻害は感染の後期段階で主に見られるが、抗ウイルス活性は、感染の初期段階でも見られる。
【0027】
本研究はまた、使用するポリスチレンスルホン酸ナトリウムの分子量が大きいほど、FCVに対するその活性が高いことも示した。例えば、8kDaの分子量を有するポリマーは、より小さい分子量を有するポリスチレンスルホン酸塩のポリマーと類似の抗ウイルス活性を有する。逆に、35kDaを超える分子量を有するポリスチレンスルホン酸塩ポリマーは、有意に高い抗ウイルス活性を示す。活性の差は、より高い分子量のPSSNaが、細胞表面へのウイルスの接着を阻害することによって、感染の初期段階においてもFCVの感染プロセスを阻害するという事実に少なくとも部分的に起因する。
【0028】
本発明をここで、実施形態および図面によって説明するが、これらは、本発明の保護範囲を特許請求の範囲に規定されるものにいかなる点においても限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】Crandell-Reesネコ腎臓由来細胞(CrFK)の生存に対する様々な分子量のポリマーの効果についての研究の結果を示す図である。結果は2つの選択された濃度について示されており、これらの濃度はそれぞれ、試験した最高濃度、および高い抗ウイルス活性が示された濃度であった:500μg/ml(
図1A)および20μg/ml(
図1B)。値は、100%としての未処置のコントロール細胞の生存に対して正規化されたものである。
【0030】
【
図2】ポリマーの分子量とFHV-1ウイルスに対するその活性との間の関係を示す図である。リアル・タイムPCRを使用して、培地1ml中のウイルスDNAのコピー数を決定し(
図2A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図2B)。複製試験を、様々な分子量を有するポリマーを20μg/mlの濃度で使用して行った。比較群と未処置コントロールとの間の統計上有意な差の存在を判定するために、テューキーのポスト・ホック検定によってサポートされる一元配置ANOVA分散分析を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
***:p<0.001、
**:p<0.01、
*:p<0.05の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、平均±SEMで示されている。
【0031】
【
図3】ポリマー濃度とFHV-1ウイルスに対するその活性との間の関係を示す図である。リアル・タイムPCRを使用して、培地1ml中のウイルスDNAのコピー数を決定し(
図3A、
図3B)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図3C、
図3D)。複製試験を、様々な濃度の93.5kDaの分子量を有するポリマー(
図3A、
図3C)および780kDaの分子量を有するポリマー(
図3B、
図3D)を使用して行った。値は、ウイルスコントロールに対して正規化されている。
【0032】
【
図4】PSSNaポリマーの作用メカニズムについての研究の結果を示す図である。4つの機能試験を行って、PSSNaポリマーによるFHV-1ウイルスの複製が阻害される段階を同定した。リアル・タイムPCRを使用して、培地1ml中のウイルスDNAのコピー数を決定し(
図4A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図4B)。試験Iを、様々な濃度の93.5kDaの分子量を有するポリマー(
図4C)および780kDaの分子量を有するポリマー(
図4D)を使用して行った。比較群と未処置ポリマーコントロールとの間の統計上有意な差の存在を判定するために、テューキーのポスト・ホック検定によってサポートされる一元配置ANOVA分散分析を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
***:p<0.001、
**:p<0.01、
*:p<0.05の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、平均±SEMで示されている。
【0033】
【
図5】PSSNaポリマーによるCrFK細胞のFHV-1ウイルス感染の阻害の可視化を示す図である。個々のチャネルおよび3つのチャネルの組み合わせが個別に示されている。青のチャネルは細胞核を示し、赤のチャネルはF-アクチンであり、一方、緑のチャネルはFHV-1ビリオンである。この図は、コントロール細胞(ブランク)、ウイルスコントロール、93.5kDaのPSSNaで処置した細胞、および780kDaのPSSNaで処置した細胞の可視化を示す。スケール・バーは10μmを示している。
【0034】
【
図6】ImageJ FiJiで作成された試験II(
図6A)および試験III(
図6B)を行った後の共焦点顕微鏡で得られた画像の定量分析を示す図である。細胞当たりのウイルス量は、細胞当たりのカウント数(ウイルスコントロールについて得られた平均に対する%)として示されている。結果は、平均±SEMで示されている。データは、10の異なる細胞の分析から得たものである。画像は、3つの独立した実験から得たものである。比較群間の統計上有意な差の存在を判定するために、テューキーのポスト・ホック検定によってサポートされる一元配置ANOVA分散分析を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
****:p<0.0001の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、平均±SEMで示されている。
【0035】
【
図7】ポリマー濃度とFHV-1 K7臨床株に対するその活性との間の関係を示す図である。培養培地1ml当たりのウイルスDNAの数における対数変化(
図7A)を、リアル・タイムPCRによって決定し、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンにおける対数変化を決定することができた(PFU/ml)(
図7B)。試験は、2つの異なる分子量(93.5kDaおよび780kDa)を有するPSSNaポリマーを3つの異なる濃度(20、200、および500μg/ml)で使用して行った。値は、ウイルスコントロール、すなわち、ポリマーとインキュベートされていない感染細胞に対して正規化された。結果は、平均±SEMで示されている。
【0036】
【
図8】共焦点面当たりのカウント(ビリオン)数として示されている、FHV-1ウイルスに結合するPSSNaポリマーの能力の分析を示す図である。カウント数は、各サンプルについて12の面から登録した。所与のデータがパラメトリック検定を使用するための要件を満たさなかったことを理由に、ダンのポスト・ホック検定によってサポートされる非パラメトリックなクラスカル・ウォリス検定を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
****:p<0.0001、
***:p<0.001、
**:p<0.01の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、中央値±四分位範囲で示された。
【0037】
【
図9】ポリマーの分子量とその抗FCV活性との間の関係を示す図である。リアル・タイムRT-qPCR反応を使用して、培地1ml中のウイルスRNAのコピー数を決定し(
図9A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図9B)。試験は、様々な分子量を有するポリマーを200μg/mlの濃度で使用して行った。比較群と未処置ポリマーコントロールとの間の統計上有意な差の存在を判定するために、テューキーのポスト・ホック検定によってサポートされる一元配置ANOVA分散分析を行った。互いのウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
****:p<0.0001、
**:p<0.01、
*:p<0.05の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、平均±SEMで示されている。
【0038】
【
図10】ポリマー濃度とFCVに対するその活性との間の関係を示す図である。リアル・タイムRT-qPCR反応を使用して、培地1ml中のウイルスRNAのコピー数を決定し(
図10A、
図10B)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図10C、
図10D)。試験は、様々な濃度の93.5kDaの分子量を有するポリマー(
図10A、
図10C)および780kDaの分子量を有するポリマー(
図10B、
図10D)を使用して行った。値は、ウイルスコントロールに対して正規化されている。
【0039】
【
図11】PSSNaポリマーの作用メカニズムについての試験の結果を示す図である。FCV感染がPSSNaポリマーによって阻害される段階を同定するために、200μg/mlの濃度のポリマーを使用して、以下に記載する4つの機能試験を行った。リアル・タイムRT-qPCR反応を使用して、培地1ml中のウイルスRNAのコピー数を決定し(
図11A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図11B)。試験IIIは、様々な濃度の93.5kDaの分子量を有するポリマー(
図11C)および780kDaの分子量を有するポリマーを使用して行った(
図11D)。比較群と未処置ポリマーコントロールとの間の統計上有意な差の存在を判定するために、テューキーのポスト・ホック検定によってサポートされる一元配置ANOVA分散分析を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
***:p<0.001、
**:p<0.01の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、平均±SEMで示されている。
【0040】
【
図12】1000μg/mlの濃度のPSSNaポリマーによる、CrFK細胞のFCV感染の阻害の可視化を示す図である。個々のチャネルおよび3つのチャネルの組み合わせが個別に示されている。青のチャネルは細胞核を示し、赤のチャネルはF-アクチンであり、一方、緑のチャネルはFCVビリオンである。この図は、コントロール細胞、ウイルスコントロール、93.5kDaの分子量を有するPSSNaで処置された細胞、および780kDaの分子量を有するPSSNaで処置された細胞の可視化を示す。スケール・バーは10μmを示している。
【0041】
【
図13】ImageJ FiJiで作成された試験II(A)および試験III(B)を行った後の共焦点顕微鏡で得られた画像の定量分析を示す図である。細胞当たりのウイルス量は、細胞当たりのカウント数(ウイルスコントロールについて得られた平均に対する%)として示されている。結果は、平均±SEMで示されている。データは、10の異なる細胞の分析から得たものである。画像は、3つの独立した実験から得たものであった。比較群間の統計上有意な差の存在を判定するために、テューキーのポスト・ホック検定によってサポートされる一元配置ANOVA分散分析を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
****:p<0.0001の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。
【0042】
【
図14】ポリマー濃度とFCV臨床株に対するその活性との間の関係を示す図である。リアル・タイムRT-qPCR反応を使用して、培養培地1ml当たりのウイルスRNAの数を決定し、一方、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた。試験は、2つの異なる分子量(93.5kDaおよび780kDa)を有するポリマーを3つの異なる濃度(200、500、および1000μg/ml)で使用して行った。値は、ウイルスコントロール、すなわち、ポリマーとインキュベートされていない感染細胞に対して正規化された。結果は、平均±SEMで示されている。
【0043】
【
図15】共焦点面当たりのカウント(ビリオン)数として示されている、ウイルスに結合するPSSNaポリマーの能力の分析を示す図である。カウントは、各サンプルについて12の面から行われた。所与のデータがパラメトリック検定を使用するための要件を満たさなかったことを理由に、ダンのポスト・ホック検定によってサポートされる非パラメトリックなクラスカル・ウォリス検定を行った。ウイルスコントロールと統計上有意に異なっていた値には、
****:p<0.0001、
**:p<0.01の印が付けられ、一方、統計的に異なっていなかった値には、「ns」と印が付けられた。結果は、中央値±四分位範囲で示された。
【0044】
【
図16】PSSNa-PEGヒドロゲルの抗ウイルス活性のインビトロでの分析を示す図である。100、50、40、30、25、20、15、および10mg/mlの濃度のPEG400の細胞傷害性を、XTT試験によって判定した(A)。結果は、100%であるコントロール細胞(ポリマーで処置されていない)に対して正規化した。ウイルス複製アッセイを、FHV-1(B、C)およびFCV(D、E)について、PEG400(30mg/ml)およびPSSNa1000kDa(200μg/ml)の存在下で、CrFK細胞を使用して行った。ウイルス感染の阻害はリアル・タイムPCRによって判定し、1ミリリットル当たりのDNA(FHV-1について)もしくはRNA(FCVについて)のコピー数における対数変化として示し(B、D)、またはプラーク・アッセイを使用して、PFU/mlの数値における対数変化として示した(C、E)。結果を、ウイルスコントロール、すなわち、ポリマーで処置されていない感染細胞に対して正規化し、3つの独立した実験の平均±SEMで示した。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0045】
以下に記載する全ての試験および実験手順は、別段のことが明らかに示されていない限り、市販されている試験キット、試薬、および器具を、使用されるキット、試薬、および器具の製造者の推奨に従って使用して行った。上記で示された試験パラメータは、本発明が属する技術分野において使用される標準的な一般的に知られている方法を使用して測定した。
【実施例1】
【0046】
CrFK細胞の生存に対する、様々な分子量のポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の効果
ポリマーの細胞傷害性を、XTT Viability Assay Kit(Biological Industries、イスラエル)を使用して決定したが、このキットは、代謝活性細胞の、基質をその着色された誘導体に変換する能力を定量するものである。許容状態のCrFK細胞系(Crandell-Reesネコ腎皮質、Felis catus、Crandell-Rees Feline Kidney Cells、ATCC(登録商標)CCL-94(商標))を使用して、実験を行った。試験条件は標準的なものであった。細胞を、3%FBS(熱不活化型ウシ胎児血清)、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、および様々な分子量を有するPSSNaポリマーを添加したDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)培地において、48時間培養した。
図1は、2つの選択されたポリマー濃度:500μg/ml(
図1A、試験した最高濃度)および20μg/ml(
図1B、高い抗ウイルス活性が示された濃度)についての結果を示す。簡潔に述べると、96ウェル・プレートにおいてCrFK細胞を24時間培養した後、古い培地を除去し、選択されたポリマー濃度を含有する100μlの新鮮な培地を、プレートの各ウェルに添加した。コントロールサンプルは、培地中にポリマーを含有していなかった。ポリマー培地を次いで除去し、20μlの活性化型2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルフェニル)-(2H)-テトラゾリンカルボキシアニリド(XTT)を有する新鮮な培地100μlを、各ウェルに添加した。2時間インキュベートした後、上清を透明な96ウェル・プレートに移し、480nmでの吸光度を、分光光度計を使用して標準的な様式で測定した。得られた結果の値を、100%生存値に指定されたコントロール細胞(ポリマーを有さない)について測定された吸光度に対して正規化した。様々な分子量を有する11のPSSNaポリマーを試験した(1.5、5.4、8、19.3、35、46、93.5、200、400、780、および1200kDa)。
【0047】
得られた結果は、試験された分子量範囲および試験された濃度範囲、すなわち、20μg/mlから500μg/mlのポリマーにおいて細胞傷害性が著しく欠如していることを示している。
【実施例2】
【0048】
ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)の複製に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の効果
ネコヘルペスウイルス1型(株C-27、ATCC:VR-636)に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の活性を決定するために、ウイルス複製に対するこのポリマーの効果についての試験を行った。この実験において、ポリマーは、ウイルス複製の全ての段階、すなわち、感染の前、最中、および後で存在していた。簡潔に述べると、完全にコンフルエントなCrFK細胞を、実験の24時間前に、96ウェル・プレートに播種した。次いで、培地を廃棄し、ポリマーを含有する20μlの新鮮な培地を添加した。プレートを37℃で30分間インキュベートし、次いで、ポリマーを有する培地を廃棄し、ブランクまたはTCID50力価(50%組織培養感染量)=400/mlのFHV-1ウイルス(株C-27)を添加した、3%DMEM中のポリマー溶液、またはポリマーを有さない3%DMEM(コントロールサンプル)50μlを添加した。プレートを37℃で2時間インキュベートし、次いで、細胞を1×PBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去した。最後に、3%DMEM中のポリマー溶液100μlを各ウェルに添加し、細胞を48時間インキュベートした。この時間の後、上清を回収して、以下の通りに、(a)定量PCR(qPCR)および(b)プラーク・アッセイを使用して感染を定量した。
【0049】
(a)qPCR
ウイルスDNAの単離を、製造者によって提供されるプロトコルに従って、Viral DNA/RNA Isolation Kit(A&A Biotechnology、ポーランド)での単離試験を使用して、感染の48時間後に行った。こうして単離されたDNAを、リアル・タイム定量PCR(qPCR)を行うための鋳型とした。糖タンパク質Bの遺伝子配列の保存された断片を増幅するための当技術分野において知られているプライマー、およびこの断片に相補的なプローブを使用した[43]。使用したプライマーおよびプローブの配列を、表1に示す。
【0050】
【0051】
簡潔に述べると、qPCR反応を以下の通りに行った。2.5μlの単離されたウイルスDNAを、1×Kapa Probe Fast qPCR MasterMix混合物(Sigma-Aldrich、ポーランド)、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)および6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)(5’-FAM-TAT ATG TGT CCA CCA CCT TCA GGA TCT ACT GTC GT-TAMRA-3’)で標識された特異的プローブ100nM、ならびに450nMの各スターター(5’-AGA GGC TAA CGG ACC ATC GA-3’および5’-GCC CGT GGT GGC TCT AAA C-3’)を含有する反応物10μlにおいて増幅した。上記の特異的プローブおよびプライマーでFHV-1糖タンパク質B(gB)遺伝子の81bpの配列断片を増幅して、サンプル中のウイルスDNAのコピー数を測定した[43]。反応は、以下の条件下で、サーモサイクラー(CFX96 Touch(商標)Real-197 Time PCR Detection System、Bio-Rad)において行った:95℃で3分、次いで、95℃で15秒および58℃で30秒を39サイクル。
【0052】
適切な標準を、サンプル中のウイルスDNAのコピー数を評価するために調製した。gB配列断片を、上記のプライマーを使用して増幅した。こうして得られたDNAを、InsTAclone PCR Cloning Kit(Thermo Scientific、ポーランド)を使用して、pTZ57R/Tプラスミド(Thermo Scientific、ポーランド)にクローニングした。大腸菌(E.coli)TOP10株(Life Technologies、ポーランド)の形質転換、およびプラスミドベクターの増殖を、標準的な様式で行った。プラスミドを次いで、GeneJET Plasmid Miniprep Kit(Thermo Scientific、ポーランド)を使用して精製し、KpnI制限酵素での消化によって線状化した。線状化されたDNAの濃度を分光光度測定によって評価し、培地1ml中のDNAのコピー数を計算した。8回の連続的な10倍連続希釈物を、リアル・タイムPCRのための鋳型として使用した。FHV-1ウイルスの複製を阻害するポリマーの能力を、培地1ml中のウイルスDNAのコピー数の減少として決定した。
【0053】
b)プラーク・アッセイ
感染性FHV-1ビリオンの定量分析を、24ウェル・プレートに播種したCrFK細胞で行った。80~90%コンフルエントな細胞を、新鮮な、上清の10倍連続希釈物を添加することによって、プレートに播種してから24時間感染させ、その後、細胞を、5%CO2を含有する雰囲気下で、37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を1×PBSで1回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去し、10%熱不活化型ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies、ポーランド)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、および1%メチルセルロース(Sigma-Aldrich、ポーランド)を添加したDMEM培地0.5mlをアプライした。FHV-1ウイルスがプラークを形成するまでにかかった時間は、約72時間である。この時間の後、細胞を固定し、50%(v/v)のメタノール:水に溶解した0.1%クリスタル・バイオレット溶液で染色した。プラークをカウントし、得られた値を、培地1ml当たりのPFU(プラーク形成単位)としてプロットした。
【0054】
この方式で、ポリマーの分子量とFHV-1ウイルスに対するその活性との間の関係を調べた。培地1ml中のウイルスDNAのコピー数を、定量リアル・タイムPCRによって決定し、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた。
図2に示すように、複製試験は、異なる分子量および20μg/mlの濃度を有するポリマーを使用して行った。得られた数値結果を正規化し、ウイルスコントロールに対する対数変化として示した。
【0055】
行った研究は、試験されたポリマーが抗ウイルス活性を有し、FHV-1ウイルスの複製を阻害することを示した。抗ウイルス活性とポリマーの分子量との間の相関はなかった。しかし、8kDaを超える分子量を有するポリマーが最良の抗ウイルス活性を示したことが観察された。8kDa未満の分子量を有するポリマーは、より弱い抗ウイルス活性を示した。
【実施例3】
【0056】
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の抗ウイルス活性と培地中のその濃度との間の関係
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)のIC50(50%阻害濃度、ウイルス複製の50%阻害)を決定するために、ウイルス複製に対する様々な濃度のこのポリマーの効果を試験した。この試験は、実施例2と類似の方法で行った。ポリマー濃度とFHV-1ウイルスに対するその活性との間の関係を調べた。
【0057】
簡潔に述べると、培地1ml中のウイルスDNAのコピー数をリアル・タイムPCRによって決定し(
図3A、
図3B)、その一方で、プラーク試験によって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図3C、
図3D)。複製試験を、様々な濃度の93.5kDaの分子量(
図3A、
図3C)および780kDaの分子量(
図3B、
図3D)を有するポリマーを使用して行った。値は、ウイルスコントロールに対して正規化されている。
【0058】
計算されたIC50値を以下の表2に示す。
【0059】
【0060】
試験されたポリマーは、特に、低い無毒の濃度で、FHV-1ウイルスの複製を阻害することが示された。
【実施例4】
【0061】
PSSNaポリマーの抗ウイルス作用のメカニズムの決定
PSSNaポリマーの作用メカニズムを、以下の通りに研究した。FHV-1ウイルスの複製がPSSNaポリマーによって阻害される段階を同定するために、以下に記載する4つの機能試験を行った。
【0062】
試験I(不活化試験)
濃縮ウイルス懸濁液をポリマーと22℃で1時間、振とうしながらインキュベートし、次いで、サンプルを希釈して、ポリマー濃度を、それが活性であった濃度範囲下まで低減させ、ウイルスの力価を、プラーク・アッセイを使用して評価した。
【0063】
この試験によって、細胞の感染を予防する、ポリマーとウイルスとの間の相互作用を介して、阻害が生じるかどうかを判定することができる。換言すると、試験化合物がウイルスに対する直接的な効果を有するかどうかを判定することができる。
【0064】
試験II(細胞防御試験)
実験の24時間前に播種した細胞を、ポリマーの存在下または不存在下で、37℃で1時間インキュベートした。プレートを次いで1×PBSで2回洗浄して、未結合のポリマー粒子を除去し、その後、偽サンプルまたはウイルス(400TCID50/ml)を有する新鮮な培地を等容積で各ウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。プレートを次いで1×PBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去し、新鮮な培地を細胞にアプライし、37℃で48時間インキュベートした。最後に、上清を回収し、プラーク・アッセイおよびqPCRを使用してウイルス複製を定量した。
【0065】
この試験は、ポリマーが、例えば細胞表面への結合によってエントリー受容体との相互作用を防ぐことで、細胞を感染から「防御」し得るかどうかを判定する。
【0066】
試験III(接着試験)
この試験は、細胞内輸送が阻害される4℃で行った。簡潔に述べると、コンフルエントなCrFK細胞を4℃で20分間冷却した。次いで、ウイルス(400TCID50/ml)を有するまたは有さない、およびポリマーを有するまたは有さない、冷たい新鮮な培地を、細胞にアプライした。プレートを4℃で1時間インキュベートした。細胞内輸送はこの温度で停止したが、細胞受容体へのウイルスの吸着は可能であった。インキュベーションした後、細胞を、氷冷した1×PBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子および未結合のポリマーを除去し、新鮮な培地を添加し、細胞を37℃で48時間インキュベートした。48時間後、上清を回収し、qPCRおよびプラーク・アッセイを使用してウイルスを定量した。
【0067】
この試験によって、接着物質についてのポリマーとウイルスとの競合を介して阻害が生じるかどうか、および/または、接着物質と相互作用しているポリマーが、接着物質とウイルスとの相互作用を防ぐかどうかを判定することができる。
【0068】
試験IV(後期段階の試験:複製、アセンブリ、および放出)
この試験において、細胞をウイルスとインキュベートすることによって感染をまず生じさせ、次いで、インキュベーションの後、未結合のビリオンをPBS溶液で洗い流し、ポリマーをアプライした。簡潔に述べると、非感染性の偽サンプルまたはウイルスサンプル(400TCID50/ml)を等容積で含有する新鮮な培地を、コンフルエントなCrFK細胞にアプライし、次いで、プレートを37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、ウェルを1×PBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去し、次いで、選択されたポリマー濃度を含有する新鮮な培地を、各ウェルに添加した。プレートを37℃で48時間インキュベートした。48時間後、上清を回収し、次いで、PBSを個別にウェルに添加し、細胞を2回の凍結融解サイクルにかけて細胞溶解物を得、プラーク・アッセイおよびqPCRを使用してウイルス複製を定量した。
【0069】
この試験は、ウイルスの複製の阻害が、感染の後期段階、例えば、複製、アセンブリ、放出の段階で生じるかどうかを示す。一方、上清および細胞溶解物におけるウイルス力価の個別の決定によって、阻害がウイルス複製の段階で生じるか感染性ビリオンの放出の段階で生じるかを判定することができる。
【0070】
上記の試験において、培地1ml中のウイルスDNAのコピー数をリアル・タイムPCRによって決定し(
図4A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、ビリオンの数を決定することができた(
図4B)。試験Iは、様々な濃度の93.5kDaのPSSNa(
図4C)および780kDaのPSSNa(
図4D)を使用して行った。
【0071】
行った研究は、ポリマーがウイルスと直接相互作用することを示し、この相互作用によって、CrFK細胞へのウイルスの侵入が予防される。ポリマー濃度が高いほど、FHV-1の結合におけるその有効性が大きいことも示された。非常に強力な感染阻害は接着段階でも見ることができるが、この試験の間にポリマーおよびウイルスが培養培地に同時に存在し、このことによって、ポリマーがウイルスに結合することができ、ウイルスの内在化する能力を阻害することは、注目に値する。抗ウイルス活性はまた、感染の後期段階でも見ることができるが、これは、培地中に存在する子孫ビリオンとポリマーとの相互作用に関連するものであり、第2の独立した作用メカニズムの可能性は、追加の実験によって排除された。
【実施例5】
【0072】
共焦点顕微鏡法による、2つの選択されたPSSNaポリマーによるネコヘルペスウイルス1型の複製の阻害の可視化
スライドを調製するために、CrFK細胞を、実験の24時間前に、標準的な様式で顕微鏡スライドに播種した。細胞を次いで冷却し、4℃で1時間、標準的な様式で、ウイルスの存在下またはウイルスおよびポリマーの存在下でインキュベートした。所定のインキュベーション時間の後、未結合のウイルス粒子を洗い流し、調製物を固定し、標準的な様式で染色した。免疫蛍光染色のために、マウス抗FHV-1一次抗体、および蛍光色素Alexa Fluor 488にコンジュゲートしたヤギ抗マウス二次抗体を使用してビリオンを可視化し、Alexa Fluor 647にコンジュゲートしたファロイジンを使用してF-アクチン・フィラメントを染色し、4’,6’-ジアミジン-2-フェニルインドール(DAPI)を使用して核DNAを染色した。最大の投影画が示されている。
【0073】
図5は、PSSNaポリマーによるCrFK細胞のFHV-1ウイルス感染の阻害の可視化を示す。各々の色についてのシグナルが個別に(青、赤、および緑のチャネル)、ならびに3つ全ての色素についてのシグナルの組み合わせ(組み合わせチャネル)が示されている。細胞核は青で、F-アクチンは赤で、およびFHV-1ビリオンは緑で示されている。この図は、コントロール細胞(偽サンプル)、ウイルスコントロール、93.5kDaのPSSNaで処置した細胞、および780kDaのPSSNaで処置した細胞の可視化を示している。スケール・バーは10μmに対応している。
【0074】
顕微鏡による可視化は、試験されたPSSNaポリマーの存在下での、CrFK細胞上のFHV-1ビリオンの数の有意な減少を示している。この研究によって、ネコヘルペスウイルスによって生じる感染に対するスルホン化されたポリスチレン誘導体の有効性が確認される。
【実施例6】
【0075】
スルホン化されたポリスチレン誘導体およびヌクレオシド類似体の相乗効果の評価
代表的なスルホン化されたポリスチレン誘導体であるPSSNaと、異なる抗ウイルス活性メカニズムを有する典型的なヌクレオシド類似体、すなわち、アシクロビル(ACV)およびペンシクロビル(PCV)との相乗効果は、既知の様式を一部変更して研究した[44]。この実験は、2つの系で行った。1つの系は、一定濃度のPSSNa(化合物II)および様々な濃度の対応する試験用ヌクレオシド類似体(化合物I)を使用し、一方、他の系は、一定濃度の対応する試験用ヌクレオシド類似体(化合物II)および様々な濃度のPSSNa(化合物I)を使用した。簡潔に述べると、XTT試験を上記のようにまず行って、薬物に関連する毒性を排除し、次いで、ウイルスの複製試験を上記のように行って、ACVおよびPCVについての、400TCID50/mlのFHV-1株C-27に対するIC50値を決定する(qPCRを使用する)。次いで、2つのタイプの連続希釈物を調製して、ACV/PCVと780kDaの分子量を有するPSSNaポリマー(PSSNa780)との相乗効果を評価した:(1)化合物IIのIC50に等しい濃度の化合物IIと混合した、化合物IのIC50に等しい濃度から開始した化合物Iの6回の2倍連続希釈物、(2)化合物IのIC50に等しい濃度の化合物Iと混合した、化合物IIのIC50に等しい濃度で開始した化合物IIの6回の2倍連続希釈物。両化合物の最大濃度は、したがって、それらのIC50の半分に等しかった。以前に記載されているように、ウイルス複製アッセイを、完全にコンフルエントなCrFK細胞で行った。48時間後、上清を回収し、ビリオンの数を、定量qPCR反応を標準的な様式で使用して評価した。
【0076】
相乗効果を、式:
【0077】
【数1】
に従った組み合わせ指標(combination index)(CI)を計算することによって評価し、
式中:
d
1は、ビリオン数を50%減少させる、IC
50/2の化合物IIの存在下での、化合物Iの濃度であり、
d
2は、ビリオン数を50%減少させる、IC
50/2の化合物Iの存在下での、化合物IIの濃度であり、
D
1は、化合物IのIC
50であり、
D
2は、化合物IIのIC
50である。
【0078】
CIが示すものとして、薬剤:CI>1の相乗効果はアンタゴニスト効果を意味し、約1のCIは付加的効果を意味し、CI<1は相乗効果を意味する。
【0079】
行った研究は、PSSNaの作用メカニズムと異なる作用メカニズムを有する2つのヌクレオシド類似体、すなわち、アシクロビル(ACV)およびペンシクロビル(PCV)が、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(PSSNa)との相乗効果を示すことを示した。これらの化合物についての計算されたCI値は、PSSNa780/ACVでは0.92であり、PSSNa780/PCVでは0.46であった。この相乗効果は、インビボでの臨床設定で特に関連がある。
【実施例7】
【0080】
93.5kDaおよび780kDaの分子量を有するPSSNaポリマーを伴うまたは伴わないインキュベーションの後の細胞感染の初期段階の阻害の定量分析
実施例5で示した代表的な顕微鏡画像をImageJ FiJiで定量し、細胞当たりのFHV-1 C-27ビリオンの数、すなわち、内在化した粒子および細胞接着粒子の両方をカウントした。細胞当たりのウイルスカウント数のパーセンテージ分析を
図6に示す。細胞防御試験(試験II)の後、FHVビリオンの数はポリマーの存在下で減少しなかったことが示され、このことは、以前に得られた結果と一致している。接着試験(試験III)を行った後、細胞当たりのウイルス量の統計上有意な減少が、93.5kDaの分子量を有するポリマーを使用した後、および780kDaの分子量を有するポリマーを使用した後の両方で、ウイルスコントロールと比較して明らかであったことも確認された。系の各々についての結果は、10個のCrFK細胞の平均カウント数として示されている。顕微鏡画像の定量分析によって、ポリマーは、感染の初期段階において感染を阻害することが示された。細胞当たりのウイルスカウント数の得られたパーセンテージ分析は、顕微鏡による所見と一致している。
【実施例8】
【0081】
FHV-1 K7臨床株の感染性に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の効果
獣医学的株を、クラクフにあるホームレス・アニマル・シェルター(Homeless Animal Shelter)の獣医師の厚意により入手し、これらの獣医師が、上気道感染の症候を示すネコからスワブを採取した。スワブは、ウイルスの臨床サンプルを運ぶための特別なスワブスティックを使用して、喉および鼻腔から採取した。細菌および真菌の感染の可能性を排除するために、FHVビリオンに対する障壁とはならない、孔の直径が0.2μmの無菌の使い捨てフィルターを使用して、サンプルを濾過した。濾過された輸送用培地を、コンフルエントなCrFK細胞を有する12ウェル・プレートに移した。プレートを最大96時間インキュベートし、ウェルを1日に2回モニタリングした。細胞変性効果(CPE)が確認できたら、上清を回収し、プラーク・アッセイ(実施例10bにおいて記載されている手順)にかけた。48時間後、単一の目立つプラークを選択し、無菌のピペットチップを用いてこの部位で寒天に穴をあけた。次いでチップを移し、完全にコンフルエントなCrFK細胞を含有する新たな12ウェル・プレート上で培地をチップと接触させた。細胞変性効果が生じたら、上清を新たな凍結用チューブに移して等しく分け、-80℃で保管した。各株の種の所属を、TKチミジンキナーゼの配列断片のシーケンシングによって確認した。FHV-1 K7臨床株の供給源の特徴を、表3に記載する。
【0082】
【0083】
単離された臨床株FHV-1 K7に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の抗ウイルス活性を決定するために、ウイルス感染に対する、2つの選択された分子量(93.5kDaおよび780kDa)を有する様々な濃度のこのポリマーの効果を試験した。ウイルス複製試験は、実施例2と類似の方法で行った。簡潔に述べると、単離された感染物質1ml当たりのウイルスDNAのコピー数における対数変化を、リアル・タイム定量PCRによって決定し(
図7A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数における対数変化を決定することができた(
図7B)。値は、ウイルスコントロール、すなわち、ポリマーとインキュベートされていない感染細胞に対して正規化された。
【0084】
この試験によって、試験されたポリマーが、低い無毒の濃度で臨床株FHVに対しても抗ウイルス活性を有することが確認された。このポリマーはウイルス複製を完全に阻害し、ウイルスDNAのコピー数と感染性ビリオンの数との両方が、検出閾値を下回っていた。
【実施例9】
【0085】
相互作用試験:PSSNaポリマーでコーティングされた表面へのFHV-1ウイルスの結合能力の分析、直接的なウイルス-ポリマー相互作用の分析
相互作用試験によって、阻害剤とウイルスとの間の直接的な相互作用が存在するかどうかを判定することができる。無菌のカバー・スリップを12ウェル・プレートの内部に置いた。カバー・スリップの負の電荷を相殺するために、カバー・スリップを3%FBSまたはPBS中のウシコラーゲン(Purecol)と37℃で2時間インキュベートし、PBS中でインキュベートしたスライドをコントロールとした。スライドを次いでPBSで2回洗浄し、PBS溶液とインキュベートしたか、または、20μg/mlの濃度のポリマーをウェル当たり1mlの量で添加した。サンプルを、37℃で2時間インキュベートした。このステップは、スライドを、負に荷電したポリマーで被覆するためのものである。次いで、未結合のポリマー粒子をPBS溶液で洗い流した。次のステップは、スライドと、TCID
50が6300万/mlに等しいウイルス懸濁液またはコントロールとの、37℃で2時間のインキュベーションであった。ポリマーとウイルスとの間の直接的な相互作用が存在すれば、ビリオンが、ポリマーで被覆された表面に結合することが推測された。未結合の粒子をPBS溶液で洗い流し、材料を共焦点顕微鏡イメージングのために調製した。免疫蛍光染色を行い、調製物を可視化し、次いで、共焦点面当たりのウイルス粒子の数をImageJ FiJiでカウントした。定量分析を
図8に示す。
【実施例10】
【0086】
FCV感染に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の効果
FCV(F-9、ATCC(登録商標)VR-782(商標)株)に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の抗ウイルス活性を決定するために、ウイルス感染に対する化合物の効果についての試験を行った。この実験において、ポリマーは、ウイルス感染の全ての段階で存在した。この実験において、完全にコンフルエントなCrFK細胞を、96ウェル・プレートへの播種から24時間後に使用した。培地を除去し、ポリマーを含有する新鮮な培地20μlを添加した。プレートを37℃で30分間インキュベートし、次いで、ポリマーを有する培地を除去し、ウイルスを有さない(コントロールサンプル)またはTCID50力価が400/mlのFCVを有する、3%DMEM中のポリマー溶液、またはポリマーを有さない3%DMEM(コントロールサンプル)50μlを添加した。プレートを37℃で1.5時間インキュベートし、次いで、細胞をPBS溶液で2回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去した。最後に、3%DMEM中のポリマー溶液100μlを各ウェルに添加し、細胞を18時間インキュベートした。この時間の後、上清を回収して、以下の通りに、(a)定量RT-PCR(RT-qPCR)および(b)プラーク・アッセイを使用してウイルスの数を評価した。
【0087】
a)RT-qPCR
ウイルスRNAの単離を、製造者によって提供されるプロトコルに従って、市販されているRNA単離キット(Viral DNA/RNA Isolation Kit、A&A Biotechnology、ポーランド)を使用して、標準的な様式で行った。単離されたRNAを、市販されているキット(High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit、Life Technologies、ポーランド)を使用して逆転写(RT)した。こうして得られたcDNAを、定量リアル・タイムPCR(qPCR)を行うための鋳型とした。FCVゲノム配列の保存的な断片を増幅するための当技術分野において知られているプライマー、およびこの断片に相補的なプローブを使用した[63]。使用したプライマーおよびプローブの配列を、表4に示す。
【0088】
【0089】
簡潔に述べると、qPCR反応を以下の通りに行った。2.5μlの単離されたウイルスDNAを、1×Kapa Probe Fast qPCR MasterMix混合物(Sigma-Aldrich、ポーランド)、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)および6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)(5’-FAM-CTT AAA TAY TAT GAT TGG GAY CCC CA-TAMRA-3’)で標識された特異的プローブ100nM、ならびに450nMの各スターター(5’-CAA CCT GCG CTA ACG-3’および5’-TCC CAY ACA GTT CCA AAT T-3’)を含有する反応物10μlにおいて増幅した。前述の特異的プローブおよびプライマーを使用して、FCVゲノムに由来する151bpの配列断片を増幅して、サンプル中のウイルスRNAのコピー数を測定した[63]。反応は、以下の条件下で、サーモサイクラー(CFX96 Touch(商標)Real-197 Time PCR Detection System、Bio-Rad)において行った:95℃で3分、次いで、95℃で15秒および51℃で30秒を39サイクル。
【0090】
適切な標準を、サンプル中のウイルスRNA分子の初期数を評価するために調製した。cDNA転写された配列断片を、上記のプライマーを使用して増幅した。こうして得られたDNAを、InsTAclone PCR Cloning Kit(Thermo Scientific、ポーランド)を使用して、pTZ57R/Tプラスミド(Thermo Scientific、ポーランド)にクローニングした。大腸菌TOP10株(Life Technologies、ポーランド)の形質転換、およびプラスミドベクターの増殖を、標準的な様式で行った。プラスミドを次いで、GeneJET Plasmid Miniprep Kit(Thermo Scientific、ポーランド)を使用して精製し、KpnI制限酵素での消化によって線状化した。線状化されたDNAの濃度を分光光度測定によって評価し、1ミリリットル当たりのコピー数を計算した。8回の10倍連続希釈物を、リアル・タイムPCRのための鋳型として使用した。FCVの複製を阻害するポリマーの能力を、培地1ミリリットル当たりの、対数関数としてのウイルスRNAのコピー数の減少として決定した。
【0091】
b)プラーク・アッセイ
FCVの感染性ビリオンの定量分析を、低融点アガロースを使用して、プラーク・アッセイによって行った。回収された上清の10倍連続希釈物を調製し、次いで細胞にアプライし、1時間インキュベートした。次いで、培地を除去し、DMEM培養培地と混合した0.6%液体アガロースを細胞にアプライした。プレートを室温で約20分間インキュベートし、次いで、プレートをインキュベーターに移した。プラークが形成されるために必要な時間は、約24時間であった。この時間の後、細胞を最低でも12時間(アガロースに浸透するために必要な時間)、4%ホルムアルデヒドの溶液で固定し、次いで、50%(v/v)のメタノール:水に溶解した0.1%クリスタル・バイオレット溶液で染色した。プラークをカウントし、1ml当たりのPFU(プラーク形成単位)数としてプロットした。
【0092】
行った研究は、試験されたポリマーが抗ウイルス活性を示し、FCVの複製を阻害することを示した。抗ウイルス活性とポリマー分子量との間の正の関係が実証された。結果を
図9にまとめる。
【実施例11】
【0093】
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の抗ウイルス活性と培地中のその濃度との間の関係
ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(PSSNa)のIC
50を決定するために、ウイルス感染に対する様々な濃度のこのポリマーの効果を試験した。この試験は、実施例10と類似の方法で行った。ポリマー濃度とFCVに対するその活性との間の関係を調べた。簡潔に述べると、1ml当たりのウイルスRNAのコピー数を、RT-qPCRによって決定し(
図10A、
図10B)、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図10C、
図10D)。試験は、様々な濃度の93.5kDa(
図10A、
図10C)および780kDa(
図10B、
図10D)の分子量を有するポリマーを使用して行った。値は、ウイルスコントロールに対して正規化されている。
【0094】
計算されたIC50値を以下の表5に示す。
【0095】
【0096】
行った研究は、試験されたポリマーが抗ウイルス活性を有し、低い無毒の濃度でFCVの複製を阻害することを示した。
【実施例12】
【0097】
PSSNaポリマーの抗ウイルス作用メカニズムの決定
PSSNaポリマーの作用メカニズムを決定するため、およびPSSNaがFCVによって誘発される細胞感染を阻害する段階を同定するため、以下に記載する4つの機能試験を、200μg/mlのポリマー濃度で行った。
【0098】
試験I(不活化試験)
濃縮ウイルス懸濁液をポリマーと22℃で1時間、振とうしながらインキュベートし、次いで、サンプルを希釈して、ポリマー濃度を、それが活性である濃度範囲下まで低減させた。ウイルス力価を、プラーク・アッセイを使用して評価した。
【0099】
試験Iによって、ポリマーとウイルスとの間の相互作用を介して阻害が生じるかどうかを判定することができ、言い換えると、試験化合物がウイルスに対して直接的な効果を有するかどうかを判定することができる。
【0100】
試験II(細胞防御試験)
完全にコンフルエントなCrFK細胞を、ポリマーの存在下または不存在下で、37℃で1時間インキュベートした。プレートを次いで1×PBSで2回洗浄して、未結合のポリマー粒子を除去し、その後、ウイルスを有さない(コントロールサンプル)またはウイルスを有する(400TCID50/ml)新鮮な培地を等容積で各ウェルに添加し、37℃で1.5時間インキュベートした。プレートを次いで1×PBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去した。新鮮な培地を細胞にアプライし、これを37℃で18時間インキュベートした。最後に、培養上清を回収して、感染性ウイルス粒子の数およびウイルスRNAのコピー数を、それぞれプラーク・アッセイおよびRT-qPCR反応を使用して定量することによって、複製効率を評価した。
【0101】
この試験は、ポリマーが、例えば細胞表面への結合によってエントリー受容体との相互作用を防ぐことで細胞を感染から「防御」し得るかどうかを判定する。
【0102】
試験III(接着試験)
この試験は、細胞内輸送が阻害される4℃で行った。簡潔に述べると、完全にコンフルエントなCrFK細胞を4℃で20分間冷却した。次いで、ポリマーを有するまたは有さない、ウイルスを有さない(コントロールサンプル)またはウイルスを有する(400TCID50/ml)新鮮な培地を、細胞にアプライした。プレートを4℃で1時間インキュベートした。細胞内輸送はこの温度で停止したが、細胞受容体へのウイルスの吸着は可能であった。インキュベーションした後、細胞を、氷冷した1×PBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子および未結合のポリマーを除去し、新鮮な培地を添加し、細胞を37℃で18時間インキュベートした。18時間後、上清を回収し、RT-qPCRおよびプラーク・アッセイを使用してウイルス粒子の数を定量した。
【0103】
この試験によって、接着物質についてのポリマーとウイルスとの競合を介して阻害が生じるかどうか、および/または、接着物質と相互作用しているポリマーが、接着物質とウイルスとの相互作用を防ぐかどうかを判定することができる。
【0104】
試験IV(後期段階:複製、アセンブリ、および放出)
この試験において、細胞をウイルスとインキュベートすることによって感染をまず生じさせ、感染後にのみ、ポリマーをアプライした。非感染性のサンプルまたはウイルスサンプル(400TCID50/ml)を含有する新鮮な培地を、コンフルエントなCrFK細胞にアプライし、次いで、プレートを37℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーションの後、ウェルをPBSで2回洗浄して、未結合のウイルス粒子を除去し、次いで、選択されたポリマー濃度を含有する新鮮な培地を、各ウェルに添加した。プレートを、37℃で18時間インキュベートした。18時間後、上清を回収し、次いで、PBSを個別にウェルに添加し、細胞を2回の凍結融解サイクルにかけて細胞溶解物を得、次いで、プラーク・アッセイおよびRT-qPCRを使用してウイルス複製を定量した。
【0105】
この試験によって、ウイルスの拡散の阻害が、感染の後期段階、例えば、複製、アセンブリ、または放出の段階で生じるかどうかを判定することができる。
【0106】
各機能試験を行った後、細胞を37℃で18時間インキュベートした。この時間の後、上清(および試験IVのケースでは細胞溶解物)を回収し、プラーク試験およびRT-qPCR試験をリアル・タイムで行って、感染が阻害される段階を同定した。例外として、試験Iでは、技術的理由からプラーク試験のみを行うことができた。
【0107】
上記の試験において、培地1ml中のウイルスRNAのコピー数をリアル・タイムRT-qPCRによって決定し(
図11A)、その一方で、プラーク・アッセイによって、サンプル中の感染性ビリオンの数を決定することができた(
図11B)。試験は、様々な濃度の93.5kDa(
図11C)および780kDa(
図11D)の分子量を有するポリマーを使用して行った。
【0108】
研究の結果として、PSSNaポリマーが感染の後期段階(IV試験)で、おそらくウイルス複製の段階で、抗ウイルス活性を示すことが分かった。感染の後期段階における、93.5kDaおよび780kDaの分子量を有するポリマーの抗ウイルス性の有効性は同様であり、一方、一般試験における高分子量のポリマー(
図11)はより効果的であり、このことは、その作用にさらなるメカニズムが存在する可能性を示している。この所見は試験IIIの結果と一致しており、このことは、高分子量のポリマーは、感染の初期段階の、ウイルスが細胞表面に接着する段階にもウイルス感染を阻害するが、一方で、分子量がより低いポリマーはこの段階でウイルスを阻害する能力は有していなかったことを示している(
図11C、
図11D)。
【実施例13】
【0109】
共焦点顕微鏡法による、93.5kDaおよび780kDaの分子量を有するPS SNaポリマーによるFCVによる初期段階の細胞感染の阻害の可視化
共焦点顕微鏡を使用したイメージングのための準備を行うために、CrFK細胞を実験の24時間前に顕微鏡スライドに播種した。細胞を次いで冷却し、4℃で1時間、標準的な様式で、ウイルスの存在下またはウイルスおよびポリマーの存在下でインキュベートした。所定のインキュベーション時間の後、未結合のウイルス粒子を洗い流し、調製物を固定し、標準的な様式で染色した。免疫蛍光染色のために、FCVカプシドタンパク質に対する一次抗体(カタログ番号:sc-80785、Santa Cruz CA、USA)を使用し、その後、ビリオンを可視化するためのAlexa Fluor 488(Invitrogen、ポーランド)とコンジュゲートした二次抗体、F-アクチンを染色するためのAlexaにコンジュゲートしたファロイジンFluor 647(Invitrogen、ポーランド)、および核DNAを染色するためのDAPI(Sigma-Aldrich、ポーランド)を使用した。最大の投影画が示されている。
【0110】
図12は、PSSNaポリマーによる、FCVによって誘発されるCrFK細胞感染の阻害の可視化を示す。各々の色についてのシグナル(青、赤、および緑のチャネル)、ならびに3つ全ての色素からのシグナルの組み合わせ(組み合わせチャネル)が個別に示されている。細胞核(核DNA)は青で示されており、F-アクチンは赤で示されており、FCVビリオンは緑で示されている。この図は、未感染コントロール細胞、ウイルスコントロール、1000μg/mlのPSSNa93.5で処置した細胞、および1000μg/mlのPSSNa780で処置した細胞の可視化を示している。スケール・バーは10μmに対応している。
【0111】
顕微鏡による可視化は、780kDaという高分子量のPSSNaポリマーの存在下での、CrFK細胞中に存在するFCVビリオンの数の有意な減少を示しており、一方、93.5kDaの分子量を有するポリマーを使用した後のFCVビリオンの数の減少は顕著ではない。この研究によって、特に高分子量のスルホン化されたポリスチレン誘導体が、FCVによって誘発される感染を感染の初期段階でも有効に阻害することが確認される。
【実施例14】
【0112】
93.5kDaおよび780kDaの分子量を有するPSSNaポリマーを伴うまたは伴わないインキュベーションの後の細胞感染の初期段階の阻害の定量分析
実施例13における代表的な顕微鏡画像をImageJ FiJiで定量し、細胞当たりのFCV F9ビリオンの数、すなわち、内在化した粒子および細胞表面接着粒子の両方をカウントした。細胞防御試験(試験II)の後、FCV F9ビリオンの数はポリマーの存在下で減少しなかったことが示され、このことは、以前に得られた結果と一致している。接着試験(試験III)を行った後、細胞当たりのウイルス数の統計上有意な減少がウイルスコントロールと比較して顕著であったことも確認されたが、これは、高分子量のポリマーのケースにおいてのみであった。系の各々についての結果は、10個のCrFK細胞の平均カウント数として示されている。顕微鏡画像の定量分析によって、780kDaの分子量を有するポリマーは、感染の初期段階においても感染を阻害することが示された。93.5kDaの分子量を有するポリマーでは、コントロール細胞と、阻害剤とインキュベートされた細胞との間に統計上有意な差はなかった。細胞当たりのウイルスカウント数の得られたパーセンテージ分析は、顕微鏡による所見と一致している。
【実施例15】
【0113】
FCV臨床株の感染性に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の効果
獣医学的株を、「Ambuvet」動物病院およびクラクフにあるホームレス・アニマル・シェルターの獣医師の厚意により入手し、これらの獣医師が、上気道感染の症候を示すネコからスワブを採取した。スワブは、ウイルスの臨床サンプルを運ぶための特別なスワブスティックを使用して、喉および鼻腔から採取した。細菌および真菌の感染の可能性を排除するために、約35nmの直径を有するカリシウイルスに対する障壁とはならない、孔の直径が0.2μmの無菌の使い捨てフィルターを使用して、サンプルを濾過した。濾過された輸送用培地を、コンフルエントなCrFK細胞を有する12ウェル・プレートに移した。プレートを最大96時間インキュベートし、ウェルを1日に2回モニタリングした。細胞変性効果(CPE)が確認できたら、上清をプラーク・アッセイ(実施例10bにおいて記載されている手順)のために採取した。24時間後、単一の目立つプラークを選択し、無菌のピペットチップを用いてこの部位で寒天に穴をあけた。次いでチップを移し、完全にコンフルエントなCrFK細胞を含有する新たな12ウェル・プレート上で培地をチップと接触させた。細胞変性効果が生じたら、上清を新たな凍結用チューブに移して等しく分け、-80℃で保管した。各株の種の所属を、主なVP1カプシドタンパク質の配列断片のシーケンシングによって確認した。6つの獣医学的株(FCV K1、K2、K3、K5、K8、およびK10)の供給源の特徴を、表6に記載する。
【0114】
【0115】
単離されたFCV臨床株に対するポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSNa)の抗ウイルス活性を決定するために、ウイルス感染に対する、2つの選択された分子量(93.5kDaおよび780kDa)を有する様々な濃度のこのポリマーの効果を試験した。ウイルス複製アッセイは、実施例9と同様の方法で行った。簡潔に述べると、1ml当たりのウイルスRNAコピーを、逆転写およびリアル・タイム定量PCRによって決定し、その一方で、プラーク・アッセイによって、感染性ビリオンの数を決定することができた(
図14)。値は、ウイルスコントロール、すなわち、ポリマーとインキュベートされていない感染細胞に対して正規化された。
【0116】
行った研究によって、試験されたポリマーが、低い無毒の濃度で全ての単離されたFCV臨床株に対して抗ウイルス活性を有することが確認された。臨床株の各々の複製は少なくとも20倍低減し(FCV K1株)、一方で、2つの株(FCV K5およびK10)のケースでは、感染は完全に阻害された。その結果が実施例10に示されているFCV F9実験株のものと同様の、抗ウイルス活性と分子量との間の正の関係が実証された。
【実施例16】
【0117】
相互作用試験:PSSNaポリマーでコーティングされた表面へのFCVウイルスの結合能力の分析、直接的なウイルス-ポリマー相互作用の分析
相互作用試験によって、阻害剤とウイルスとの間の直接的な相互作用が存在するかどうかを決定することができる。無菌のカバー・スリップを12ウェル・プレートの内部に置いた。カバー・スリップの負の電荷を相殺するために、カバー・スリップを3%FBSまたはPBS中のウシコラーゲン(Purecol)と37℃で2時間インキュベートし、PBS中でインキュベートしたスライドをコントロールとした。スライドを次いでPBSで2回洗浄し、PBS溶液または20μg/mlの濃度のポリマーを、ウェル当たり1mlの量で添加した。サンプルを、37℃で2時間インキュベートした。このステップは、スライドを、負に荷電したポリマーで被覆するためのものである。次いで、未結合のポリマー粒子をPBS溶液で洗い流した。次のステップは、スライドと、TCID50が13,000,000/mlに等しいウイルス懸濁液またはコントロールとの、37℃で2時間のインキュベーションであった。ポリマーとウイルスとの間での直接的な相互作用が存在すれば、ビリオンが、ポリマーで被覆された表面に結合することが推測された。未結合の粒子をPBS溶液で洗い流し、材料を共焦点顕微鏡イメージングのために調製した。免疫蛍光染色を行い、調製物を可視化し、次いで、共焦点面当たりのウイルス粒子の数をImageJ FiJiでカウントした。
【0118】
PSSNa 780kDaでコーティングしたスライドでは、ビリオンの数は、ポリマーでコーティングしていないスライドまたはPSSNa 93.5kDaでコーティングしたスライドよりもはるかに大きかった。FBSでコーティングしたスライドおよびPSSNa93.5でコーティングしたスライドで、共焦点面当たりのビリオン数の統計上有意な増大が同様に示されたことは注目に値するが、この増大は、PSSNa780のケースよりもはるかに小さかった。上記の結果は、PSSNa 780kDaがウイルス粒子と直接相互作用することを示しているが、FCVの感染性に対するこの相互作用の効果は未知である。
【実施例17】
【0119】
PEG-PSSNaヒドロゲルのインビトロでの抗ウイルス活性の判定
この研究の目的は、動物の皮膚に塗布することができるPSSNaを含有する製剤を決定し、次いで、感染プロセスに対するこの製剤の効果およびこの製剤の経皮毒性を判定することであった。
【0120】
第1の段階では、CrFK細胞系を使用するインビトロでの実験に使用することができる、400Daの分子量を有するポリエチレングリコールの最も高い無毒濃度を決定した(PEG、Sigma-Aldrich、ポーランド、Mw=400)(PEG400)。この目的で、100、50、40、30、25、20、15、および10mg/mlの濃度を有する8つのPEGポリマー溶液を調製した。細胞を、特定の濃度のポリマーと48時間インキュベートし、その後、先の実施例と類似のXTTアッセイを行った。30mg/mlを超える濃度はCrFK細胞に対して毒性であることが示されており、さらなる実験に使用することはできない。したがって、その後の試験において、最も高い無毒のPEG400濃度である30mg/mlを使用することが決定された。コントロール(ポリマーで未処置の細胞)に対して正規化された細胞傷害性の結果を、
図16Aに示す。
【0121】
PSSNa-PEGヒドロゲルを調製するために、1000kDaのPSSNa(PSSNa1000kDa)を水に溶解し、次いで、DMEM培養培地に希釈したPEG400溶液を滴下して添加した。溶液中のPSSNa1000kDaの最終濃度は200μg/mlであったが、一方、PEG400の濃度は30mg/mlであった。
【0122】
ヒドロゲル単独が活性物質PSSNaの抗ウイルス活性に影響しないことを確認するために、ウイルス複製試験を行った。簡潔に述べると、CrFK細胞を、感染の前、最中、および後のヒドロゲルの存在下で感染させた。実験は、先の実施例において記載されているものと類似の方法で行った。細胞を18時間(FCV感染)または48時間(FHV-1感染)インキュベートした。この時間の後、上清を回収し、その後リアル・タイムPCRを行い、ウイルス力価をプラーク・アッセイによってチェックした。得られた結果を、FHV-1ウイルス(B、C)についておよびFCVウイルス(D、E)について
図16に示す。
【0123】
ヒドロゲルの組成物が毒性ではなく、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの抗ウイルス活性に影響しないことが実証された。
【実施例18】
【0124】
マウスモデルにおけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの真皮に対する毒性の判定
この実験の目的は、マウスモデルにおけるポリスチレンスルホン酸ナトリウムの最大の無毒の真皮用量を決定することであった。試験材料は、ビャウィストクのExperimental Medicine Center of the Medical Universityから入手したBALB/c系統の6週齢のメスマウスであった。実験番号281/2018についての同意は、Institute of Pharmacology of the Polish Academy of Sciencesの、2nd Local Ethical Commission for Animal Experiments in Krakowから得た。動物は5日間にわたり検疫した。検疫の後、一般的な医学的および獣医学的調査を行った。
【0125】
検疫および実験の間、動物は、以下の制御されたパラメータを有する室内で維持した:温度22℃±2℃、湿度55%±5%、および照明:人工光、光周期:12時間の明期/12時間の暗期。Altrominの維持試料を使用した。ランダムに選択された健康な個体のみが、実験に適しているとされた。動物を群に分け、各実験において、群は5頭の個体を含んでいた:コントロール群-生理食塩水、実験群-50mg/mlのPSSNa、実験群-75mg/mlのPSSNa、実験群-100mg/mlのPSSNa。
【0126】
試験材料を、剃毛した背部の皮膚に、100μl/マウスの容積で1日に1回、7日間、直接塗布した。詳細な臨床的観察を、化合物を投与した日から毎日行った。試験材料を投与する前および観察の間毎日、動物の体重の測定を行った。実験の終わりに動物を安楽死させた。剖検を行い、血液を生化学的分析のために回収した。
【0127】
PSSNa-PEGヒドロゲルを、400Daの分子量を有するPEGと水とを混合することによって(9:1比で、容積/容積)調製した。PSSNaを水に溶解し、次いでPEG溶液に滴下して添加した。真皮に対する毒性の分析を、50、75、および100mg/mlのPSSNa濃度を有するヒドロゲルを使用して行った。検疫の5日後、マウスの背部側面を剃毛し、次いで、100μlのヒドロゲルまたは生理食塩水を、剃毛した皮膚に塗布した。実験は7日間継続し、ヒドロゲルを毎日塗布した。マウスは毎日秤量し、モニタリングした(毎日の体重測定値を表7a~bに示す)。7日後、残っているマウスを頚部脱臼によって安楽死させた。ヒドロゲル注射した部位の皮膚を、発赤、潰瘍、または他の皮膚病変について毎日、以下の健康スケールに従って、念入りにモニタリングした:
0-健康状態良好、明らかな症候なし
1-アパシー、毛の逆立ち
2-背中の曲がった輪郭、わずかな体重減少
3-食欲不振、呼吸努力の増大、およびさらなる体重減少
4-苦痛
5-死亡
【0128】
健康の結果を表8a~bに示す。
【0129】
動物を安楽死させた後、血液、肝臓、腎臓、および脾臓を、さらなる分析のために回収した。生化学的分析には、GLU(mg/dl)、BUN(mg/dl)、ALP(IU/L)、TP(g/dl)、GPT(IU/L)、およびCRE(mg/dl)が含まれた。生化学的分析の結果を表9a~bに示す。
【0130】
動物の研究において、ポリスチレンスルホン酸塩は、50、75、および100mg/mlで皮膚に直接投与した後に臨床的症候を生じさせなかった。臨床的症候は、動物における生化学的試験および体重測定の最中には見られなかった。剖検した後、臓器における変化は肉眼では見られなかった。
【0131】
50、75、および100mg/mlの用量でPEGポリマーと共にヒドロゲルの形態で皮膚に7日間投与されたポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、動物に対して毒性ではなく、動物における抗ウイルス活性試験に、将来的に使用することができる。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0138】
1. Helps, C.R. et al, Factors associated with upper respiratory tract disease caused by feline herpesvirus, feline calicivirus, Chlamydophila felis and Bordetella bronchiseptica in cats: experience from 218 European catteries. Vet Rec, 2005. 156(21): pp. 669-73.
2. Binns, S.H. et al., A study of feline upper respiratory tract disease with reference to prevalence and risk factors for infection with feline calicivirus and feline herpesvirus. J Feline Med Surg, 2000. 2(3): pp. 123-33.
3. Bannasch, M.J. and J.E. Foley, Epidemiologic evaluation of multiple respiratory pathogens in cats in animal shelters. J Feline Med Surg, 2005. 7(2): pp.109-19.
4. Fernandez, M. et al., Prevalence of feline herpesvirus-1, feline calicivirus, Chlamydophila felis and Mycoplasma felis DNA and associated risk factors in cats in Spain with upper respiratory tract disease, conjunctivitis and/or gingivostomatitis. J Feline Med Surg, 2017. 19(4): pp. 461-469.
5. Cohn, L.A., Feline respiratory disease complex. Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2011. 41(6): pp. 1273-89.
6. Fields BN, K.D., Howley PM, Fields virology. 6th ed., ed. W.K. Health/Lippincott and W. Wilkins. 2013.
7. Xu, F. et al., Seroprevalence and coinfection with herpes simplex virus type 1 and type 2 in the United States, 1988-1994. J Infect Dis, 2002. 185(8): pp. 1019-24.
8. Gaskell, R.M. and R.C. Povey, Experimental induction of feline viral rhinotracheitis virus re-excretion in FVR-recovered cats. Vet Rec, 1977. 100(7): pp. 128-33.
9. Maggs, D.J. et al., Evaluation of serologic and viral detection methods for diagnosing feline herpesvirus-1 infection in cats with acute respiratory tract or chronic ocular disease. J Am Vet Med Assoc, 1999. 214(4): pp. 502-7.
10. Gould, D., Feline herpesvirus-1: ocular manifestations, diagnosis and treatment options. J Feline Med Surg, 2011. 13(5): pp. 333-46.
11. Hartley, C, Aetiology of corneal ulcers assume FHV-1 unless proven otherwise. J Feline Med Surg, 2010. 12(1): pp. 24-35.
12. Bistner, S.I. et al., Ocular manifestations of feline herpesvirus infection. J Am Vet Med Assoc, 1971. 159(10): pp. 1223-37.
13. Stiles, J., Feline herpesvirus. Clin Tech Small Anim Pract, 2003. 18(3): pp. 178-85.
14. Gaskell, R.M. and R.C. Povey, Re-excretion of feline viral rhinotracheitis virus following corticosteroid treatment. Vet Rec, 1973. 93(7): pp. 204-5.
15. Nasisse, M.P. et al, Isolation of feline herpesvirus 1 from the trigeminal ganglia of acutely and chronically infected cats. J Vet Intern Med, 1992. 6(2): pp. 102-3.
16. Miller, W.H. and R.L. Miller, Phosphorylation of acyclovir diphosphate by cellular enzymes. Biochem Pharmacol, 1982. 31(23): pp. 3879-84.
17. Miller, W.H. and R.L. Miller, Phosphorylation of acyclovir (acycloguanosine) monophosphate by GMP kinase. J Biol Chem, 1980. 255(15): pp. 7204-7.
18. Elion, G.B., The biochemipy and mechanism of action of acyclovir. J Antimicrob Chemother, 1983. 12 Suppl B: pp. 9-17.
19. Maggs, D.J., Update on pathogenesis, diagnosis, and treatment of feline herpesvirus type 1. Clin Tech Small Anim Pract, 2005. 20(2): pp. 94-101.
20. Maggs, D.J. and H.E. Clarke, In vitro efficacy of ganciclovir, cidofovir, penciclovir, foscarnet, idoxuridine, and acyclovir against feline herpesvirus type-1. Am J Vet Res, 2004. 65(4): pp. 399-403.
21. Nasisse, M.P. et al., In vitro susceptibility of feline herpesvirus-1 to vidarabine, idoxuridine, trifluridine, acyclovir, or bromovinyldeoxyuridine. Am J Vet Res, 1989. 50(1): pp. 158-60.
22. Collins, P., The spectrum of antiviral activities of acyclovir in vitro and in vivo. J Antimicrob Chemother, 1983. 12 Suppl B: pp. 19-27.
23. Soul-Lawton, J. et al., Absolute bioavailability and metabolic disposition of valaciclovir, the L-valyl ester of acyclovir, following oral administration to humans. Antimicrob Agents Chemother, 1995. 39(12): pp. 2759-64.
24. Nasisse, M.P. et al., Effects of valacyclovir in cats infected with feline herpesvirus 1. Am J Vet Res, 1997. 58(10): pp. 1141-4.
25. Hussein, I.T., R.V. Menashy, and H.J. Field, Penciclovir is a potent inhibitor of feline herpesvirus-1 with susceptibility determined at the level of virus-encoded thymidine kinase. Antiviral Res, 2008. 78(3): pp. 268-74.
26. Groth, A.D. et al, In vitro cytotoxicity and antiviral efficacy against feline herpesvirus type 1 of famciclovir and its metabolites. Vet Ophthalmol, 2014. 17(4): pp. 268-74.
27. Thomasy, S.M. et al., Evaluation of orally administered famciclovir in cats experimentally infected with feline herpesvirus type-1. Am J Vet Res, 2011. 72(1): pp. 85-95.
28. Malik, R. et al., Treatment of feline herpesvirus-1 associated disease in cats with famciclovir and related drugs. J Feline Med Surg, 2009. 11(1): pp. 40-8.
29. Filer, C.W. et al., Metabolic and pharmacokinetic studies following oral administration of 14C-famciclovir to healthy subjects. Xenobiotica, 1994. 24(4): pp. 357-68.
30. Pue, M.A. et al., Linear pharmacokinetics of penciclovir following administration of single oral doses of famciclovir 125, 250, 500 and 750 mg to healthy volunteers. J Antimicrob Chemother, 1994. 33(1): pp. 119-27.
31. Hussein, I.T. et al, Substrate specificity and molecular modelling of the feline herpesvirus-1 thymidine kinase. Arch Virol, 2008. 153(3): pp. 495-505.
32. Dalvie, D. et al., Interspecies variation in the metabolism of zoniporide by aldehyde oxidase. Xenobiotica, 2013. 43(5): pp. 399-408.
33. Anderson, R.A. et al, Evaluation of poly (styrene-4-sulfonate) as a preventive agent for conception and sexually transmitted diseases. J Androl, 2000. 21(6): pp. 862-75.
34. Christensen, N.D. et al., Papillomavirus microbicidal activities of high-molecular-weight cellulose sulfate, dextran sulfate, and polystyrene sulfonate. Antimicrob Agents Chemother, 2001. 45(12): pp. 3427-32.
35. Herold, B.C. et al., Poly(sodium 4-styrene sulfonate): an effective candidate topical antimicrobial for the prevention of sexually transmitted diseases. J Infect Dis, 2000. 181(2): pp. 770-3.
36. Simoes, J.A. et al., Two novel vaginal microbicides (polystyrene sulfonate and cellulose sulfate) inhibit Gardnerella vaginalis and anaerobes commonly associated with bacterial vaginosis. Antimicrob Agents Chemother, 2002. 46(8): pp. 2692-5.
37. Zaneveld, L.J. et al., Efficacy and safety of a new vaginal contraceptive antimicrobial formulation containing high molecular weight poly(sodium 4-styrenesulfonate). Biol Reprod, 2002. 66(4): pp. 886-94.
38. Ito, M. et al, In vitro activity of mannan sulfate, a novel sulfated polysaccharide, against human immunodeficiency virus type 1 and other enveloped viruses. Eur J Clin Microbiol Infect Dis, 1989. 8(2): pp. 171-3.
39. Baba, M. et al, Sulfated polysaccharides are potent and selective inhibitors of various enveloped viruses, including herpes simplex virus, cytomegalovirus, vesicular stomatitis virus, and human immunodeficiency virus. Antimicrob Agents Chemother, 1988. 32(11): pp. 1742-5.
40. Mohan, P. et al, Sulfonic acid polymers as a new class of human immunodeficiency virus inhibitors. Antiviral Res, 1992. 18(2): pp. 139-50.
41. Zacharopoulos, V.R. and D.M. Phillips, Vaginal formulations of carrageenan protect mice from herpes simplex vims infection. Clin Diagn Lab Immunol, 1997. 4(4): pp. 465-8.
42. Stiles, J. et al., Effects of lambda-carrageenan on in vitro replication of feline herpesvirus and on experimentally induced herpetic conjunctivitis in cats. Invest Ophthalmol Vis Sci, 2008. 49(4): pp. 1496-501.
43. Vogtlin, A. et al., Quantification of feline herpesvirus 1 DNA in ocular fluid samples of clinically diseased cats by real-time TaqMan PCR. J Clin Microbiol, 2002. 40(2): pp. 519-23.
44. Benzekri, R. et al, Anti HSV-2 activity of Peganum harmala (L.) and isolation of the active compound. Microb Pathog, 2018. 114: pp. 291-298.
45. Fields BN, K.D., Howley PM, Fields virology. 6th ed., ed. W.K. Health/Lippincott and W. Wilkins. 2013.
46. Ohlinger, V.F., B. Haas, and H.J. Thiel, Rabbit hemorrhagic disease (RHD): characterization of the causative calicivirus. Vet Res, 1993. 24(2): pp. 103-16.
47. Bank-Wolf, B.R., M. Konig, and H.J. Thiel, Zoonotic aspects of infections with noroviruses and sapoviruses. Vet Microbiol, 2010. 140(3-4): pp. 204-12.
48. Hurley, K.E. et al., An outbreak of virulent systemic feline calicivirus disease. J Am Vet Med Assoc, 2004. 224(2): pp. 241-9.
49. Radford, A.D. et al., Feline calicivirus infection. ABCD guidelines on prevention and management. J Feline Med Surg, 2009. 11(7): pp. 556-64.
50. Dawson, S. et al., Acute arthritis of cats associated with feline calicivirus infection. Res Vet Sci, 1994. 56(2): pp. 133-43.
51. Reubel, G.H., D.E. Hoffmann, and N.C. Pedersen, Acute and chronic faucitis of domestic cats. A feline calicivirus-induced disease. Vet Clin North Am Small Anim Pract, 1992. 22(6): pp. 1347-60.
52. TerWee, J. et al, Comparison of the primary signs induced by experimental exposure to either a pneumotrophic or a 'limping' strain of feline calicivirus. Vet Microbiol, 1997. 56(1-2): pp. 33-45.
53. Arias, A. et al., Norovirus Polymerase Fidelity Contributes to Viral Transmission In Vivo. mSphere, 2016. 1(5).
54. Hurley, K.F. and J.E. Sykes, Update on feline calicivirus: new trends. Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2003. 33(4): pp. 759-72.
55. Coyne, K.P. et al., Lethal outbreak of disease associated with feline calicivirus infection in cats. Vet Rec, 2006. 158(16): pp. 544-50.
56. Pedersen, N.C. et al., An isolated epizootic of hemorrhagic-like fever in cats caused by a novel and highly virulent strain of feline calicivirus. Vet Microbiol, 2000. 73(4): pp. 281-300.
57. Reynolds, B.S. et al., A nosocomial outbreak of feline calicivirus associated virulent systemic disease in France. J Feline Med Surg, 2009. 11 (8) : pp. 633-44.
58. Schulz, B.S. et al., Two outbreaks of virulent systemic feline calicivirus infection in cats in Germany. Berl Munch Tierarztl Wochenschr, 2011. 124(5-6): pp. 186-93.
59. Wu, H. et al., Antiviral effect of lithium chloride on feline calicivirus in vitro. Arch Virol, 2015. 160(12): pp. 2935-43.
60. McDonagh, P. et al., Antiviral effect of mefloquine on feline calicivirus in vitro. Vet Microbiol, 2015. 176(3-4): pp. 370-7.
61. Povey, R.C., Effect of orally administered ribavirin on experimental feline calicivirus infection in cats. Am J Vet Res, 1978. 39(8): pp. 1337-41.
62. Stuart, A.D. and T.D. Brown, Alpha2,6-linked sialic acid acts as a receptor for Feline calicivirus. J Gen Virol, 2007. 88(Pt 1): pp. 177-86.
63. Chander Y, T.A., Sajja S, Ramakrishnan MA, Faaberg KS, Goyal SM, A TaqMan RT-PCR Assay for the Detection of Feline calicivirus. International Journal of Virology, 2007. 3(3): pp. 100-106.
出願人:ユニベルシテット ヤギエロンスキ
代理人:
【国際調査報告】