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特表2022-509620改良された演奏時フィンガリング補助具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(54)【発明の名称】改良された演奏時フィンガリング補助具
(51)【国際特許分類】
   G10G 1/02 20060101AFI20220114BHJP
   G10G 7/00 20060101ALI20220114BHJP
   G10D 3/00 20200101ALI20220114BHJP
   G10D 1/02 20060101ALI20220114BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G10G1/02
G10G7/00
G10D3/00
G10D1/02
G09B15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527148
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 US2019061538
(87)【国際公開番号】W WO2020106547
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】16/199,043
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521212029
【氏名又は名称】ウェストン,トビー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン,トビー
【テーマコード(参考)】
5D002
5D182
【Fターム(参考)】
5D002AA01
5D002EE03
5D182AA06
5D182CC10
(57)【要約】
改良された演奏時フィンガリング補助具は、少なくとも一枚のデカールを有し、前記デカールは、指板上に嵌め込むことができ、弦楽器のネックに取り付け可能である。デカールは、弦識別ラベルと、段階位置ラベル群と、複数の音程区分とを備え、それらは、視認性の観点から目立つ色が付けられる。ラベルは、特定の音符と特定の色でペアを構成するものではない。その代わりに、改良された演奏時フィンガリング補助具は、音楽理論を筋肉記憶と関連付けることで、確実に、弾いた音が限りなく完璧な音程になるようにし、アンサンブル演奏時には、調節した音程になるようにする。このようにして、音楽理論が反映され、音楽理論との関連性をより高めることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の弦楽器のネックにおいて、弦の下方に位置する指板上に取り付け可能な、改良された演奏時フィンガリング補助具であって、前記演奏時フィンガリング補助具は、
上面と、下面と、最上端と、最下端と、第1側端と、第2側端とを有するデカールと、
前記上面上に配置される複数の弦識別ラベルであって、前記複数の弦識別ラベルのそれぞれが、前記既存の弦楽器の対応する弦の下に適切に位置する前記最上端に最も近接して配置され、前記複数の弦識別ラベルのそれぞれは、
目立つよう着色された輪郭線を有し、明るい色の山型部であって、第1色を有する山型部と、
前記山型部の内部に配置され、対照的に、かつ目立つように色付けした文字であって、その上にある弦の名称に対応する文字と、を有する、弦識別ラベルと、
前記上面上に、前記第1側端と平行に配置される段階位置ラベル群であって、前記段階位置ラベル群は、演奏中、指を動かせるよう、指の位置を示す複数のラベルを有する、段階位置ラベル群と、
前記既存の弦楽器の各弦の下で、前記上面上の縦方向に配置され、前記段階位置ラベル群の前記複数のラベルのうち、対応する一つの横に詰めて整列する、複数の音程区分であって、前記複数の音程区分のそれぞれは、
明るい色のラベルであって、前記明るい色のラベルのそれぞれが、マイナー・セカンドに対応する全音階および半音階に配置され、各自然音階を認識するため、目立つように色付けした文字を備え、各自然音階を出す際には、対応する明るい色の四角ラベルの上に位置する弦を、前記文字の位置で押さえる、明るい色のラベルと、
全音階間のシャープおよびフラット、つまり、マイナー・セカンドとして演奏される自然音符以外のものである半音を識別するため、目立つように色付けしたラベルと、を有する、複数の音程区分と、
前記上面上に、前記第1側端に最も近接して配置され、前記既存の弦楽器の前記ネック上に、前記指板に隣接して配置される方向ラベルであって、前記方向ラベルは任意の明るい色のラベルに関連するフラット又はシャープを示す方向矢印を有する、方向ラベルと、
を備え、
前記デカールは、前記既存の弦楽器の前記指板に嵌まるような大きさを有し、限りなく完璧な音程、及び、アンサンブル演奏時には調節した音程を奏でられるよう、半音刻みで音階を示し、
前記最上端が前記弦楽器の上駒に当接し、前記第1側端が、前記弦楽器の前記ネック上であって、前記弦楽器の、演奏者に近接、つまり、前記演奏者の親指に近接する側にあり、第2側端が、前記弦楽器の前記ネック上であって、前記指板における反対側にあり、
前記複数の音程区分のそれぞれにより、演奏者が弦を正確に押さえることができ、示されている音程と同じ高さの音を出すことができる、ことを特徴とする、改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項2】
セカンド・ポジション及びサード・ポジションに対応する段階位置ラベル群のラベルに並ぶ、複数の音程区分のそれぞれは、他の区分と比較すると、直前の列の音程区分との距離が比較的近くなっており、これにより、指導時及びアンサンブル演奏時での調節した音程を生み出し、明瞭な音を反射的に再現できる、ことを特徴とする、請求項1に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項3】
前記複数の区分の前記明るい色のラベルのそれぞれは、目立つように色付けした外周を有する四角形の中に配置され、
前記明るい色の四角ラベルの中心で、その上の弦を押さえることで、絶対音程の99%を出すことができ、前記明るい色の四角ラベルの中心からずれたところを押さえると、音程を調節できる、ことを特徴とする、請求項2に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項4】
前記複数の区分の前記目立つように色付けしたラベルのそれぞれは、一色で色付けされた円形の中に配置され、
前記目立つように色付けした円形ラベルの中心で、その上の弦を押さえることで、同じ弦の下にある、最も近接する明るい色の四角ラベルの中心から、半音ずれた音を出す、ことを特徴とする、請求項3に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項5】
前記デカールは、
前記最上端と、前記第1側端および前記第2側端のそれぞれとを、斜めの角度をもって繋ぐよう配置される一組の上部角縁部と、
前記最下端と、前記第1側端および前記第2側端のそれぞれとを、斜めの角度をもって繋ぐよう配置される一組の下部角縁部と、をさらに備え、
前記上部角縁部および前記下部角縁部のそれぞれは、前記弦楽器の前記ネックを覆う対角をなし、これにより、前記デカールの前記指板への正確な載置が容易になる、ことを特徴とする、請求項4に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項6】
前記デカールは、前記下面の接着剤によって、前記指板に接着される、ことを特徴とする、請求項5に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項7】
前記既存の弦楽器の前記指板上に任意で追加される延長用デカールをさらに備え、
前記延長用デカールは、前記最下端に当接して配置される最上端を有し、
追加の指の位置が、少なくともセブンス・ポジションまで示される、ことを特徴とする、請求項5に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項8】
前記デカールは、静電気的に巻き付くことにより、前記指板に取り付けられる、ことを特徴とする、請求項5に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項9】
前記接着剤は、前記下面上で、前記第1側端および前記第2側端のそれぞれに最も近接する縦方向に長い片として配置され、
前記接着剤は、前記弦楽器の前記指板ではなく、前記弦楽器の前記ネックに接着される、ことを特徴とする、請求項6に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項10】
前記デカールは、一組の側翼部をさらに備え、前記側翼部は、前記楽器の前記ネックの裏側で互いに重なり合うように配置され、裏側において、互いにぴったりと張り付く、ことを特徴とする、請求項8に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項11】
既存の弦楽器のネックにおいて、弦の下方に位置する指板上に取り付け可能な、改良された演奏時フィンガリング補助具であって、前記既存の弦楽器の前記指板上に嵌まるよう、上駒に当接して配置される改良された演奏時フィンガリング補助具であり、前記改良された演奏時フィンガリング補助具は、
不規則な八角形を有するデカールであって、
上面と、
下面と、
最上端と、
前記最上端に平行して配置される最下端と、
第1側端と、
前記最上端に平行して配置される第2側端と、
前記最上端と、前記第1側端および前記第2側端のそれぞれとを、斜めの角度をもって繋ぐよう配置される一組の上部角縁部と、
前記最下端と、前記第1側端および前記第2側端のそれぞれとを、斜めの角度をもって繋ぐよう配置される一組の下部角縁部と、
を備えるデカールと、
前記上面上に配置される複数の弦識別ラベルであって、前記複数の弦識別ラベルのそれぞれが、前記既存の弦楽器の対応する弦の下に適切に位置する前記最上端に最も近接して配置され、前記複数の弦識別ラベルのそれぞれは、
目立つよう着色された輪郭線を有し、明るい色の山型部であって、第1色を有する山型部と、
前記山型部の内部に配置され、目立つように色付けした文字であって、その上にある弦の名称に対応する文字と、を有する、複数の弦識別ラベルと、
前記上面上に、前記第1側端と平行に配置される段階位置ラベル群であって、前記段階位置ラベル群は、前記指板に沿って位置をシフトする際、位置の目安となる半音階を示す複数のラベルを有する、段階位置ラベル群と、
前記既存の弦楽器の各弦の下で、前記上面上の縦方向に配置され、前記段階位置ラベル群の前記複数のラベルのうち、対応する一つの横に詰めて整列する、複数の音程区分であって、前記音程区分のそれぞれは、
明るい色の四角ラベルであって、前記明るい色の四角ラベルのそれぞれが、マイナー・セカンドに対応する全音階および半音階に配置され、各自然音階を認識するため、目立つように色付けした文字を備え、各自然音階を出す際には、対応する明るい色の四角ラベルの上に位置する弦を、前記文字の位置で押さえる、明るい色の四角ラベルと、
全音階間のシャープおよびフラット、つまり、マイナー・セカンドとして演奏される自然音符以外のものである半音を識別するため、目立つように色付けした円形ラベルと、を有する、複数の音程区分と、
前記上面上に、前記第1側端に最も近接して配置され、前記既存の弦楽器の前記ネック上に、前記指板に隣接して配置される方向ラベルであって、前記方向ラベルは任意の明るい色の四角ラベルに関連するフラット又はシャープを示す方向矢印を有する、方向ラベルと、
を備え、
前記デカールは、前記既存の弦楽器の前記指板に嵌まるような大きさを有し、半音刻みで音階を示し、
前記最上端が前記弦楽器の上駒に当接し、前記第1側端が、前記弦楽器の前記ネック上であって、前記弦楽器の、演奏者に近接、つまり、前記演奏者の親指に近接する側にあり、第2側端が、前記弦楽器の前記ネック上であって、前記指板における反対側にあり、
前記複数の音程区分のそれぞれにより、演奏者が弦を正確に押さえることができ、それにより、示されている音程と同じ高さの音を出し、アンサンブル演奏時には調節した音程を奏でることができる、ことを特徴とする、改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項12】
セカンド・ポジション及びサード・ポジションに対応する段階位置ラベル群のラベルに並ぶ、複数の音程区分のそれぞれは、他の区分と比較すると、直前の列の音程区分との距離が比較的近くなっており、これにより、指導時及びアンサンブル演奏時での調節した音程を生み出し、明瞭な音を反射的に再現できる、ことを特徴とする、請求項11に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項13】
前記デカールは、前記下面の接着剤によって、前記指板に接着されている、ことを特徴とする、請求項11に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項14】
前記デカールは、静電気的に巻き付くことにより、前記指板に取り付けられる、ことを特徴とする、請求項11に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項15】
前記接着剤は、前記下面上で、前記第1側端および前記第2側端のそれぞれに最も近接する縦方向に長い片として配置され、
前記接着剤は、前記弦楽器の前記指板ではなく、前記弦楽器の前記ネックに接着する、ことを特徴とする、請求項13に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項16】
前記既存の弦楽器の前記指板上に任意で追加される延長用デカールをさらに備え、
前記延長用デカールは、前記最下端に当接して配置される最上端を有し、
追加の指の位置が、少なくともセブンス・ポジションまで示される、ことを特徴とする、請求項11に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項17】
三つの弦識別ラベルと、単一音階のみを有する複数の音程区分60と、のみを有するデカールを更に備え、
複数の、少なくとも二つの異なる弦楽器の指導手法が異なるなかで、前記弦楽器のそれぞれが共通して有する特定の弦での演奏学習が容易になる、ことを特徴とする、請求項11に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【請求項18】
前記デカールは、一組の側翼部をさらに備え、前記側翼部は、前記楽器の前記ネックの裏側で互いに重なり合うように配置され、裏側において、互いにぴったりと張り付く、ことを特徴とする、請求項13に記載の改良された演奏時フィンガリング補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された演奏時フィンガリング補助具に関し、特に、基礎となる、半音階を示す音楽理論に沿った弦楽器演奏時に、より正確に指の位置を正す、改良された演奏時フィンガリング補助具に関する。
【0002】
本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、色分けおよび指の位置の色付けを最小限にしたものである。特に、弦識別ラベル、段階位置ラベル群、そして複数の音程区分が、はっきりと分かりやすく色付けされ、西洋音楽表現の旋法・音階を生み出す音楽理論と、音階および半音階の配置とを示すよう、明確化されている。音程群および弦の音律とともに、人差し指の位置を関連付けてポジションが示されており、希望すれば、アンサンブル演奏が可能なようにもなっている。
【0003】
したがって、改良された演奏時フィンガリング補助具は、弦楽器を演奏する際のガイドや、指導の補助として、また、正しく置かれた指、正しい指のポジション取り、そして、場面に応じて、限りなく完璧な音程あるいは調節した音程で出された対応する音と、音楽理論とを関連付けるための関連補助として機能する。
【背景技術】
【0004】
従来技術において、楽器演奏用の多種多様なフィンガリング補助具が知られている。
【0005】
フィンガリング補助具の大半は、多色ラベルを備えており、こうしたラベルは、特定の音符や音程を出すための指の位置を、繰り返される特定の色と関連づけるものである。色と音とを関連付けても、半音階の実際の理論とは結び付かず、むしろ、音楽を理解するうえでの概念的枠組みが欠如したまま、手軽さだけが強調されてしまっている。従来技術における他の考案物においても、弦楽器の弦の下に、音符の名称を示すラベルがただ配置されている。こうした従来技術は、音符の位置を示すのみで、練習生に目的の文字を探させ、そこに指を置かせるだけのものだが、それだけでは、半音階の基礎となる音楽理論を正確に関連付けられているとは言えない。単に「音を探して見つければよい」という心構えでは、音符の関係性を捉えることは難しく、音符間の半音階の音程と、音程の繰り返しにおける音階の相対配置も、多くの場合、見過ごされている。
【0006】
さらに、従来技術における既存の考案物は、一般的に、特定の音符と関連付けられる特定のフレットを識別するか、フレットのない楽器の場合は、その音が出るおおよその領域を識別する。しかしながら、こうした目印の上や周りにある指の位置範囲で、常に調った音程が示される、あるいは、完全な音程が生まれるわけではない。
【0007】
対応する弦を押さえる際、練習生の指がずれることがある。正確な位置から僅かに、たった数微分音ずれただけでも、出た音の音楽性に影響が出る。しかしながら、アンサンブルやオーケストラで演奏する際、このような僅かな位置ずれが、建設的あるいは破壊的に音の調和に作用することで、心地よい音調と不快な思いとの差につながる。これは、若い奏者に多く、正しくチューニングした楽器を演奏していたとしても、弦を押さえる際、普段の癖で、完全な音程から僅かにずれた位置に指を置いてしまうことに起因する。
【0008】
したがって、弦の下の位置で、弦楽器の指板にしっかりと取り付けられるデカールを備える、改良された演奏時フィンガリング補助具が必要とされている。これにより、上にある弦を押さえるため明記された指の位置を識別し、完全な音程が出せるようになると同時に、音程を相対的に結び付け、一つ一つの音符をただ識別するのではなく、音のつながりを反射的に会得する。したがって、本発明は、上面に弦識別ラベルと、段階位置ラベル群と、複数の音程区分とをまとめて有するデカールに含み、楽器の演奏をガイドしつつ、音楽理論を徹底的に教え込み、表記と、楽器を弾いて音を奏でる行為とを結びつける。デカールが取り付けた弦楽器の指板上で、少なくともセブンス・ポジションまで指の位置を示すよう、任意で延長できる延長用デカールも、含まれている。弦楽アンサンブル演奏の指導を促進する目的で、簡略化されたデカールも含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、弦楽器演奏時、練習生のフィンガリングをアシストする目的で考案された。本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、互いに関連付けされた形と色とを用いて、弦楽器の演奏を習得しようとする者に、感覚的に音符を覚えさせ、これにより、音楽符と、正確な指の位置に関する筋肉記憶とを結びつける。さらに、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、例えば、アンサンブル演奏をしながら音律ピッチに効果をもたらすよう、指を最適な位置に導き、それに合わせて出す音の周波を調節する。ここで表記される「音楽符」または「音符」という表現は、例えば、ソルフェージュで使用される音節など、音階における音を示すための、文字以外の表記法も含むものとする。本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、色分けを最小限にし、当分野でよく見られるような複雑な色分け図解ではなく、かわりに、半音階に沿った相対位置における音楽理論と関連付けられた特定のフィンガリング位置を、視覚的に目立たせることに焦点を当てた。複雑な色分けがされたものでは、素早い識別・関連付けのため、半音階を通して、音符が繰り返し特定の色で表され、一般的には、正確な音楽符や半音階音程ではなく、指の位置と、色とを対応させる。特に、楽譜等で、音符に対して前後に書かれている、シャープやフラットといった半音と関連付ける際、あるいは、アンサンブル演奏時に音符の調律が必要となった際、従来の複雑な色分けでは問題が生じる。
【0010】
従来で見られる別の方法では、フレットが分かりやすくなっており、例えば、音符の名称通りの音が出る指板上の領域を広く認識させるものとなっている。しかしながら、演奏者の指が、正確な位置から少しでもずれてしまうと、たった数微分音であっても、音がずれてしまう。アンサンブル演奏においては、この数微分音のずれが、大きなずれを生み、音調が外れてしまうことで、不快感を与えてしまいかねない。指が正しい場所を押さえていたとしても、アンサンブル演奏時の複雑な波形における不協和音干渉を回避するため、弦の調律が必要な場合は、同様に、不協和音が生じ得る。楽器を正しくチューニングしていたとしても、アンサンブル演奏時に音を外してしまいがちな若い演奏者が陥りやすく、こうした状況は、わずかにずれた指の位置や、例えば、平均律にチューニングされた現代楽器の間に生じる、微分音ばらつきの干渉によるものである。子どもの場合、一般的に指が小さく、完全な音程や調節した音程を出す正確な場所の周辺にある、より細かい位置で弦を押さえることができるため、場合によっては、微分音ばらつきを大きくする傾向にある。
【0011】
したがって、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、音楽符および半音階を、楽器のフィンガリングに対応して、より正確に関連付けるよう考案されたもので、これにより、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具を使用して、練習生に音楽理論をより分かりやすく教えることができる。さらに、音楽理論に基づいた指板に沿う動きを表しながら、指の位置を示すために使用されるラベルを、色分けシステムに依存することなく目立たせている。さらに、複数の音程区分は、弦の下に正確に揃えられ、完全な音程および調節した音程が出る特定の領域を示す。したがって、アンサンブル演奏時でも調った音を出すことのできる、音階での指の位置を、演奏中の練習生に示す。各音程区分が、目立つように色付けした輪郭線で示された領域を有し、前記領域において、指の位置が多少調整され、練習生自身が概念的に指の位置を認識して、特定の楽器で音を出す際には、それを指板全体に応用させられる。そのため、個々の楽器による僅かなずれは問題とならなくなる。音律も同様に、例えば、一枚のラベルで位置範囲を示すことで、対応できる。完全な音程と、フィンガリングおよび実際に出す音の名称とを関連付けることは、技術と自己判断力を磨き、楽器演奏を習得するのに役立つとともに、アンサンブル演奏時に音程を調整することができるようになる。練習生は、関連付けられた文字の名称、正確な指の位置、そして半音階の理解を、演奏練習を始めたばかりの頃から系統立てて習得することができる。したがって、当技術分野において、新たに投入された、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具を使用することで、音楽理論を効率的に教え込むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具は、上面と、下面と、最上端と、最下端と、第1側端と、第2側端とを有するデカールを備える。前記デカールは、音程間の間隔が正確に設けられた特定の弦楽器(例えば、バイオリン、ビオラ、チェロ、ダブルベース、そして、これらの楽器を異なる大きさに縮小・拡大したもの)に、ちょうど嵌まるような大きさを有し、これにより、ほぼ正確な比率で楽器の弦を押さえることができ、完璧な調節した音程を生み出す。音程同士の感覚は、必ずしも一定でなくてもよく、調律や弦楽器のネック上のポジションによって、間隔が異なっていてもよい。(例えば、セカンド・ポジションやセカンド・アンド・ハーフ・ポジションに揃えてあるラベルは、他に示されている音程と比較しても、直前の列と近い比較的距離に配置されている。これにより、アンサンブル演奏時の指導をアシストし、こうしたポジションで音を調律させることができる。)
【0013】
デカールは、非常に薄いフィルムからなるよう考案される。最上端は、弦楽器の上駒に当接し、第1側端および第2側端のそれぞれが、弦楽器のネック上に、指板の両側に配置されている。指板(一般的には、上に湾曲した形状を有する)上により合致するよう、また、指板の両側において、ネック上に載置することが容易になるよう、デカールは、一組の上部角縁部および一組の下部角縁部を有する。一組の上部角縁部は、それぞれ、斜めの角度をもって、最上端と、第1側端および第2側端のうち、対応する端との間に配置される。同様に、一組の下部角縁部は、それぞれ、斜めの角度をもって、最下端と、第1側端および第2側端のうち、対応する端との間に配置される。したがって、一組の上部角縁部および一組の下部角縁部は、デカールの対角を形成し、第1側端および第2側端のそれぞれを、楽器のネック上に適切に取り付けるよう、デカールが指板の縁を覆う。一組の上部角縁部および一組の下部角縁部によって形成される対角により、楽器の指板およびネックにデカールを取り付ける際、気泡や凹凸が生じることが防がれる。同時に、デカールを指板上に平らになるよう取り付け、最適な配置とするため、ネックの側面に沿った接触を最小限にとどめる。これは、正確な音響および音符の調律の確保に不可欠である。
【0014】
上面は、弦識別ラベルと、段階位置ラベル群と、複数の音程区分とを備える。これらにより、西洋音楽の半音階を画定する、半音階の音程を包括的に使用者に理解させ、指の位置を示す明るい色の四角ラベルの場所により、正確な指の位置が確定できる。ここで、上にある弦が、明るい色の四角ラベルのそれぞれが有する輪郭線の中心で押さえられた場合、対応する音符を、少なくとも99%正しい旋律で引くことができる。これについては、後述される。また、調節した音程の場合は、当該四角ラベル上の中心からずれた箇所で弦を押さえることで可能となる。
【0015】
弦識別ラベルは、最上端に最も近接して、上面の横方向にわたり、詰めて並んでいる。弦識別ラベルは、弦楽器の各弦の下で適切な距離をもって配置され、明るい色の山型部を備える。各山型部の底部は、弦楽器の上駒にほぼ当接している。各山型部は、目立つように色付けした輪郭線を有し、その頂点が弦楽器のブリッジ側を指すような向きとなっている。各山型の内側において、目立つように色付けした文字が設けられる。文字の色、および輪郭線の色は、ほとんどの実施形態において、同色で考案される。山型部の色は、輪郭線や文字と区別できる色であるよう、考案される。例えば、山型部は、目立たせるため、蛍光イエローであってもよく、輪郭線および文字は、コントラストを際立たせるため、蛍光ブルーであってもよい。すべての実施形態において、各山型部の色は、山型部間で統一され、輪郭線および文字の色とは異なっている。したがって、各弦識別ラベルにより、ラベル上にある弦を指板上で押さえずに弾いた時(各弦を解放して弾いた時)と同じ音の名称のついた弦を識別することができる。
【0016】
段階位置ラベル群は、第1側端に最も近接して、上面上の縦方向に配置される。段階位置ラベル群は、最上端と最下端の間で、第1側端に最も近接して配置され、指板に沿った縦方向で半音を表す複数のラベルを含む。ここで考えられ得る好ましい実施形態では、複数のラベルはローマ数字で表される。ローマ数字は、全音階およびマイナー・セカンドを示し、半音階ごとに、1/2の記号を付したファースト・ポジションからフォース・ポジション(マイナー・セカンドは例外とする)に対応する。したがって、段階位置ラベル群は、デカールの上面に、縦方向かつ第1側端に近接して、半音階を明示する。段階位置ラベル群は、演奏者にポジションシフトを示し、一連の位置のなかで、正確な位置を示す目印となる。ここで開示される実施形態では、段階位置ラベル群は、以下に示すラベルを含む。これらのラベルは、表1に示す対応する音程とともに、バイオリンの弦(G線、D線、A線、E線)ごとに設けられ、音階は、段階位置ラベルおよび上にある弦に対して横方向に展開される。特定の段階位置ラベルに対して横に整列する、対応する明るい色の四角ラベルの箇所で弦を押さえた場合に、対応して出る音も示される。以下の表1を参照されたい。
【0017】
【表1】
【0018】
段階位置ラベル群間の間隔は、必ずしも一定ではない。ここに示す実施形態において、特にバイオリンでの使用を想定しているため、セカンド・ポジションを示すラベル(ここでは、ローマ数字のIIで示す)およびサード・ポジションを示すラベル(ここでは、ローマ数字のIIIで示す)は、直言のラベルとの距離と比較しても、比較的近い位置に配置される。このように、セカンド・ポジションとサード・ポジションに対応するラベル間の相対間隔を調節することで、指導用やアンサンブル演奏用などの所望の場面に対して、セカンド・ポジションとサード・ポジションで出す音の調律ができる。これについては、以下で説明する。
【0019】
複数の音程区分は、デカールが取り付けられた特定の弦楽器の各弦の下で、上面上に縦方向に配置される。複数の音程区分は、さらに、段階位置ラベル群を構成する複数のラベルのそれぞれの横に詰めて整列するよう、配置される。これにより、横に整列した音程区分それぞれの音階における音程や位置が認識できる。複数の音程区分は、明るい色の四角ラベルを備え、前記四角ラベルは、完全な音程および/または調節した音程の範囲で、上にある弦の押さえるべき正しい位置を使用者に示す。音階で示す各位置は自然音符に対応する。特定の音程区分の中心から外れた箇所で上にある弦を押さえるか、音程区分が既に調節した音程(上記に例示したセカンド・ポジションおよびセカンド・アンド・ハーフ・ポジション)を出す位置になっている場合は、区分の弦中心を押さえることで、指の位置を調整して、調律を行う。したがって、区分上の指の位置を調節することで、音を高くしたり低くしたりすることができ、それにより、(ソロでもアンサンブルでも)演奏者自身の耳で、音楽性にあふれた演奏を行うことができる。したがって、当分野でよく見られる、単なる機械的なフィンガリング機構とは対照的に、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具によって、位置と音を感覚的に結び付け、出す音の予測ができるようになる。
【0020】
弦識別ラベルの山型部と同様に、明るい色の四角ラベルは、それぞれ、目立つように色付けした外周輪郭線と、その中心に目立つように色付けした文字を有する。目立つように色付けした文字は、それぞれ、対応する上の各弦を、当該明るい色の四角ラベルで押さえた時に出る自然音符に対応している。したがって、明るい色の四角ラベルは、それぞれ、音を出す位置に応じて、完全な音程または調節した音程を出す指の位置を画定する領域を取り囲んでいる。明るい色の四角ラベルのそれぞれの内側で、指の位置をわずかに変化させることで、楽器の個体差によるずれを補正し、演奏者が、所望の音程を出すにあたり、正しい位置を決定することができる。上にある弦の中心を外れつつも、その下の明るい色の四角ラベル上の範囲内(例えば、上駒に近い外周側)を押さえることで、出す音の調律に際して適切なフィンガリングが可能となり、平均律の楽器同士でアンサンブルを行うと、不協和音が生まれがちだが、そのようなことを避けることができる。
【0021】
自然音符間の半音は、目立つように色付けした円形ラベルによって表される。目立つように色付けした円形ラベルは、それぞれ、自然音符に対する半音階ごとに配置され、それにより、その直前・直後の自然音符に対するシャープやフラットをそれぞれ示す。目立つように色付けした円形ラベルは、明るい色の四角ラベルや弦識別ラベルの色と区別される単色を有するよう考慮される。目立つように色付けした円形ラベルは、山型部の、目立つように色付けした輪郭線、および/または、明るい色の四角ラベルの目立つように色付けした外周輪郭線と同じ色であってもよい。
【0022】
方向ラベルは、デカールの上面で、第1側端に最も近接する箇所に配置される。演奏者が方向ラベルを見れば、明るい色の四角ラベルのそれぞれによって示される自然音符を基準としてフラットやシャープの音を出すには、弦に沿ってどの方向に指を動かせばいいのかが分かる。したがって、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具を使用すれば、練習生は、指の位置と、半音階での正しい位置とを、(求められている音の位置だけでなく)全体として、自然に関連付けることができ、シャープやフラットは、自然音符の位置と相対的に関連付けられる。したがって、練習生は、音楽理論と、特定の色と、特定の音や指板上のある位置と結びつけるのではなく、弾いた音およびその音を出した際の筋肉記憶とを結びつけるため、各音は、全体の一部として強く認識されるようになる。
【0023】
本発明におけるデカールの初心者版も、本発明の開示として考案される。初心者版は、特定の弦楽器を習得しようとする音楽初心者の使用を想定した、シンプルな表示を有するデカールを備えている。ここで考えられ得る本実施形態において、初心者版は、バイオリンでの使用が想定される。初心者版では、弦識別ラベルは、三本の弦のみ識別し、音程区分はニ長調音階のみ示す。
【0024】
弦に関して、バイオリン、ビオラ、チェロ、そしてベースは、全て、D線とA線を共通して有している。そのため、この二弦で出せる音からなる音階を主に使用することで、さらに、最小限のスキルでアンサンブルに参加して合奏を行うことができ、弦楽アンサンブルを学ぶ良い導入機会となる。初心者版では、目立つように色付けした円形ラベルが省略され、F♯とC♯が明るい色の四角ラベルで示され、初期位置の理解や、完全な音程を出す際の音階との関連付けをアシストする。
【0025】
指板上に、指の位置を少なくともセブンス・ポジションまで選択的に拡張するため、延長用デカールをさらに備えていてもよい。延長用デカールは、前述のデカールと同様の方法で、指板上に取り付け可能である。ただし、デカールを取り付ける特定の弦楽器の上駒に当接するのではなく、先に取り付けたデカールの最下端に直接当接するよう、延長用デカールの最上端を配置する。同様に、延長用デカールは、指の位置を、少なくともセブンス・ポジションまで示す。
【0026】
以上、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具におけるより重要な特徴の大枠を説明した。以下の詳細な説明により、より理解が進み、本分野における本発明の貢献が、より評価されるであろう。
【0027】
本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具の目的は、本発明を特徴付ける種々の新規の特徴と併せて、本開示の一部をなす請求の範囲で特に言及される。改良された演奏時フィンガリング補助具のさらなる理解のため、その動作上の利点、および、使用によって得られる特定の目的は、添付の図面および説明で言及される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、一実施形態に係る、改良された演奏時フィンガリング補助具の正面上図である。
図2図2は、一実施形態に係る、改良された演奏時フィンガリング補助具の後方上面図であって、演奏補助具を弦楽器のネックに取り付けるために配置した接着片を示す。
図3図3は、バイオリンのネック上に、一実施形態に係る、改良された演奏時フィンガリング補助具を設置した際の、等角使用図である。
図4図4は、一実施形態に係る延長用デカールの使用図である。
図5図5は、一実施形態に係る、改良された演奏時フィンガリング補助具の初心者版の正面上図である。
図6図6は、一実施形態に係る、改良された演奏時フィンガリング補助具の初心者版の後方上面図である。
図7図7は、一実施形態に係るデカールの後方上面図であって、デカールは、取り付けられ得る楽器のネックの裏側で、ちょうど重なりあうような大きさの側翼部を有する。
図8図8は、一実施形態に係るデカールの後方上面図であって、デカールは、弦楽器のネックに取り付けられ、ちょうど重なりあうような大きさの側翼部を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面、特に、図1乃至図8を参照しながら、改良された演奏時フィンガリング補助具の例について以下に説明する。ここで、前記補助具には、本発明の改良された演奏時フィンガリング補助具の原理および概念が採用され、概して、参照符号10が付される。
【0030】
図1乃至図8を参照すると、本発明の実施形態に係る、改良された演奏時フィンガリング補助具10は、バイオリンのネックに取り付けられた状態で表される。しかしながら、当業者からすれば、例示される、改良された演奏時フィンガリング補助具10は、種々の弦楽器(例えば、特に、バイオリン、ビオラ、チェロ、ベース、そして、これらの楽器の中でも、異なる大きさに縮小・拡大されたもの)を念頭に考案されたものであることは明らかである。ここで、デカール(後述)上に配置されたラベルは、適切な間隔で配置され、これにより、前記補助具が取り付けられた特定の弦楽器において、例示の発明10が機能する。以下の説明および図面では、バイオリン上に取り付けられる例が示されている。
【0031】
ここに示される図面とその詳細な説明には、例示の改良された演奏時フィンガリング補助具10の適用範囲を、ここに示す特定の実施形態や、特定の弦楽器のみに制限する意図はない。むしろ、進歩性の範囲の例示にとどまり、基本的な音楽的素養のある人であれば、フレットのない、いかなる弦楽器の使用においても、本発明を還元することができるであろう。
【0032】
ここで、改良された演奏時フィンガリング補助具10は、既存の弦楽器70のネック72の、弦76の下にある指板74上に取り付けられる。改良された演奏時フィンガリング補助具10は、既存の弦楽器70の指板74上に嵌まるよう配置され、上駒78に突き当たって、楽器70の弦76の下にある指板74上に載置される。これにより、特定の弦楽器70の大きさに準じて位置合わせされた半音階のポイントをマークする(例えば、図2参照)。
【0033】
図1に示す通り、改良された演奏時フィンガリング補助具10は、不規則な八角形を有するデカール20を備え、前記デカールは、上面22と、下面24と、最上端26と、最上端26と平行に位置する最下端28とを有する。第1側端30は、最上端26および最下端28に対して直角に配置され、第2側端32は、第1側端30に平行に配置される。デカール20が指板74と同一平面で接触し、第1側端30および第2側端32が、楽器のネック72上で、指板74の端部を覆うよう、一組の上部角縁部34が、最上端26と、第1側端30および第2側端32とを繋ぐかたちで配置されている。各上部角縁部34は、最上端26と、第1側端30および第2側端32のそれぞれを、斜めの角度をもって繋ぐよう配置される。同様に、一組の下部角縁部36は、最下端28から分岐し、最下端28と、第1側端30および第2側端32とを繋げるよう、配置される。各下部角縁部36もまた、最下端26と、第1側端30および第2側端32のそれぞれを、斜めの角度をもって繋ぐよう配置される。角縁部34,36の各組からなる対角によって、指板74を適切に覆って同一平面での接触を維持しつつ、デカール20が楽器70のネック72を包み込んで、より正確な嵌め込みが実現する
【0034】
複数の弦識別ラベル40がデカール20の上面22上に配置されている。複数の弦識別ラベル40のそれぞれは、最上端26に最も近接して配置されることにより、楽器70の上駒78に近接し、既存の弦楽器70において、対応する弦76の下の適切な位置に配置される。複数の弦識別ラベル40のそれぞれは、目立つよう着色された輪郭線44を有する、明るい色の山型部42を備える。これにより、山型部42を視覚的にはっきりと目立たせることができる。複数の弦識別ラベル40の上に、弦76をそれぞれ合わせることによって、デカール20を容易に指板74上に載置することができる。各山型部42の底部は、楽器の上駒78に近接して当接し、各山型部42の頂点は、指板74の下側を向いている。各山型部42は、弦楽器70の対応する弦76の直下に位置するように、デカール20の上面22上に、間隔をもって配置される。この時、弦76は、各山型部42を二等分するよう位置合わせされている。各山型部42には、対応する弦76を指で押さえない場合に出る音が付されており、記載通りの音が、その弦の主音として発せられる。
【0035】
各山型部42は、第1色を有する。目立つように色付けした文字46は、山型部42の内側に、第1色とは対照的な色を有して配置される。この文字46は、その上に位置する弦76の名称に応じたものとなっている。したがって、各山型部42は、見た目にはっきりと、対比的に、鮮やかに、各弦76を示し、弦楽器70を演奏中の演奏者にとって、弦の名称(つまり弦の主音)が瞬時に分かるようなっている。ここで考えられ得る一実施形態において、候補となり得る第1色は、蛍光オレンジであり、外周は、蛍光ブルーである。これら蛍光色の対比により、山型部42がはっきりと示され、各山型部42内の文字46の視認が容易なものとなる。考えられ得るすべての実施形態において、こうした視覚的識別、あるいはそれに類するものが検討される。
【0036】
段階位置ラベル群50は、上面22上において、第1側端30の真横に、平行に配置される。段階位置ラベル群50は、複数のラベル52を有する。複数のラベル52は、1/2から4までの位置に対応する、半音階における半音を示す。したがって、各ラベルは、そのラベルの横に並んだ弦76の長さ位置に応じた、音の高低の目安である。複数のラベル52は、演奏中、指板に沿ってシフトする指の位置をそれぞれ示している。ここで考えられ得る実施形態において、段階位置ラベル群50における複数のラベル52のそれぞれは、ローマ数字で指の位置を、1/2の記号付きローマ数字で半音位置を表すよう構成されている。
【0037】
例示の実施形態において、段階位置ラベル群によって示される間隔は、一定である必要はない。例えば、本例において、ラベル群の中でも、1/2と記載されたラベルとローマ数字のIと記載されたラベルとの間の間隔と比較すると、ローマ数字のIIと記載されたラベルは、直前のラベルとの距離が比較的近くなるよう配置される。同様に、ローマ数字のIIIと記載されたラベルは、II1/2と記載されたラベルとの距離が比較的近くなるよう配置される。このようにラベル間の距離を一定にしないことで、セカンド・ポジションおよびサード・ポジションで(後述)平均律音階が弾けるようになる。不定間隔であることは、指導上の理由で重要であり、楽器でアーティキュレーションを反射的に再現する際や、アンサンブルに参加する際に有効である。
【0038】
複数の音程区分60は、既存の弦楽器70の各弦76の下で、デカール20の上面22上の縦方向に配置され、段階位置ラベル群50の複数のラベル52のうち、対応する一つの横に詰めて整列する。各音程区分60は、明るい色(第2色)の四角ラベル62を備える。明るい色の四角ラベル62のそれぞれは、目立つように色付けした外周輪郭線64を有する。明るい色の四角ラベル62のそれぞれは、全音階(マイナー・セカンドを示すよう対応する場合は半音階も含む)に配置され、目立つように色付けした文字66を備える。文字66は、自然音符を示すもので、演奏時、各文字66に使用者の指が置かれることで、対応する明るい色の四角ラベル62上の弦76が押さえられる。明るい色の四角ラベル62の各位置は、特定の弦楽器70に適するよう、正確に描かれる。これにより、明るい色の四角で囲われた境界それぞれの中心にある特定のラベル62上の弦76から、正確な音程が出る。ここに含まれる実施形態では、第2色は蛍光イエローであり、目立つように色付けした外周輪郭線64は、蛍光ブルーである。考えられ得るすべての実施形態において、こうした視覚的識別、あるいはそれに類するものが維持される。
【0039】
目立つように単色で色付けした円形ラベル68は、弦76の下で、明るい色の四角ラベル62間に配置される。円形ラベルの位置により、全音階間のシャープおよびフラット、つまり、マイナー・セカンドとして演奏される自然音符以外のものである半音を識別する。したがって、目立つように色付けした円形ラベル68のそれぞれは、シャープ音符またはフラット音符を示し、演奏時、目立つように色付けした円形ラベル68のそれぞれに使用者の指が置かれることで、目立つように色付けした円形ラベル68上の対応する弦76が押さえられ、音が出る。
【0040】
複数の音程区分60間の間隔は、一定である必要がなく、また繰り返されている必要もない。複数の音程区分60間の間隔は、特定の演奏楽器のネック上の特定の位置、ひいては、そこから発せられる対応する音と相対関係にある。さらに、演奏される音律の各音符を、視覚的に示すため、所望の音律に対応する各区分60上の相対位置にある各弦76を押さえることができる。ここで考えられ得る一実施形態において、セカンド・ポジション(段階位置ラベル群50のローマ数字のIIで示される)に並ぶ音程区分60は、通常のラベルで示される前列の区分との距離と比較すると、本実施形態でローマ数字のIと記載される段階位置ラベル50に並ぶ、前列の複数の音程区分60との距離が近くなるよう、配置される。同様に、サード・ポジション(段階位置ラベル群50のローマ数字のIIIで示される)に並ぶ音程区分60は、セカンド・アンド・ハーフ・ポジション(段階位置ラベル群50のローマ数字のIIおよび1/2で示される)との距離が比較的近くなるよう配置される。ラベル列間の相対距離の違いは意図的なものであり、楽器演奏における音程の正確さを引き出す点で、弦楽器講師による指導実践に最適である。ラベル列間の間隔にも、ばらつきを追加することが考えられ、これにより、指導目的のアンサンブル演奏において、音律ピッチが合致する。
【0041】
デカール20の上面22で、弦楽器70の演奏者によって識別しやすい位置にある第1側端30に最も近接する場所に、方向ラベル80が配置されている。方向ラベル80は、既存の弦楽器70上のネック72上に、指板74に隣接して配置される。方向ラベル80は、弦76に沿った方向を示す方向矢印82を有し、これにより、任意の明るい色の四角ラベル62に対応する、フラットやシャープの音が出る。したがって、明るい色の四角ラベル62によって、使用者は、それぞれが示す自然音符を識別することができ、方向ラベル80によって、直前のフラットや直後のシャープを直感的に認識することができる。方向ラベル80は、弦76に沿って使用者が移動すべき方向を示しており、これにより、所望のフラットやシャープの音を出すことができると同時に、音を適切に調律することができる。
【0042】
したがって、デカール20は、既存の弦楽器70の指板74に嵌まるような大きさを有し、それにより、半音刻みで奏でられるよう、音階を示している。複数の音程区分60によって、演奏者は、各位置で弦76を正確に押さえることができ、これにより、弦76下に示された音符と同じ高さの音を出すことができるとともに、下にある対応するラベルの中心からずれた箇所上の弦を押さえることによって、音を調律することができる。
【0043】
ここで考えられ得る一実施形態において、下面24の接着剤100によって、デカール20は、指板74に接着する。接着剤100は、接着力の弱い接着剤であることが考えられ、弦楽器70のネック72や指板74を傷つけることなく、デカール20を取り外すことができるようになっている。別の実施形態において、図3に示すに示す通り、接着剤100は、デカール20の下面24に、第1側端30および第2側端32に近接する縦方向に長い片として、配置されている。これにより、接着剤100は、楽器70のネック72において、指板74の両サイドに確実に配置されることになる。本実施形態においても、接着剤100は、接着力の弱い接着剤であるため、楽器70のネック72に接着剤や傷を残したりすることなく、デカールを取り外すことができる。第3実施形態において、図7および図8に示す通り、デカール20は、静電気的に巻き付くことにより、楽器70のネック72に取り付けられることが考えらえる。つまり、デカール20と、楽器70のネック72および指板74との接触が静電気の力で維持される。この実施形態では、デカール20の側翼部38が、楽器70のネック72を一周して、互いに接触できるほどの大きさを有していてもよく、これにより、楽器70のネック72の裏側で重なり合うことで、取付けが実現できる。
【0044】
図5および図6に示す通り、初心者版90もまた、本開示の一部として考案されたものである。図5および図6に示す本実施形態において、初心者版90は、三つの弦識別ラベル40と、ニ長調の音階を構成する音符を示すよう単純化された複数の音程区分60とのみを有する。バイオリン、ビオラ、チェロ、そしてベースの指導はそれぞれ手法が異なるが、それらの楽器の演奏者はみな、D線とA線を共通して使用する。したがって、ニ長調音階の楽曲(例えば、モーツァルトの弦楽四重奏ニ長調,K575アレグレット、パッヘルベルのカノンニ長調、ボロディンの弦楽四重奏第2番ニ長調、など)を用いることで、弦楽アンサンブルの演奏を初心者に指導することが容易になり、練習生にとっても、アンサンブルを学べるという貴重な経験となるだろう。他の単一音階デカール、例えば、イ長調音階(例えば、スズキ・メソッドにも見られるように、A線およびE線でのバイオリン指導に使用)用のデカールも実現可能である。
【0045】
図4に示すように、延長用デカールも本開示の一部として考案されたものである。最上端94をデカール20の最下端28当接させることで、延長用デカール92を弦楽器に追加で取り付けることができる。これにより、指の位置は、少なくともセブンス・ポジションまで示される。したがって、延長用デカール92は、指板74上の指の位置を示し、前述したような段階位置ラベルおよび音程区分を備える。しかしながら、デカール20と併用するため、弦識別ラベルは、延長用デカール92には配置されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】