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特表2022-509677無方向性電磁鋼板およびその製造方法
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  • 特表-無方向性電磁鋼板およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20220114BHJP
   C22C 38/16 20060101ALI20220114BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20220114BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/16
C21D8/12 A
H01F1/147 175
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531074
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2019016492
(87)【国際公開番号】W WO2020111783
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153084
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ホン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ス-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ス
【テーマコード(参考)】
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4K033AA01
4K033CA00
4K033CA01
4K033CA05
4K033CA06
4K033CA08
4K033CA09
4K033CA10
4K033DA01
4K033FA01
4K033FA03
4K033FA10
4K033FA13
4K033FA14
4K033HA01
4K033HA03
4K033JA01
4K033KA00
5E041AA02
5E041BD09
5E041CA04
5E041NN01
(57)【要約】
【課題】Mn、Cu、S間の関係を適切に制御し、硫化物の分布を制御することによって、磁性を改善した無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、数1および数2を満たすことを特徴とする。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[式2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および式2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、下記数1および数2を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および式2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【請求項2】
CおよびNのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
Nb、TiおよびVのうちの1種以上をそれぞれ0.004重量%以下さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
P:0.02%以下、B:0.002%以下、Mg:0.005%以下およびZr:0.005%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
直径150~300nmの硫化物個数が直径20~100nmの硫化物個数の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
直径150~300nmの硫化物を含み、
前記直径150~300nmの硫化物のうちのMnとCuを同時に含む硫化物の面積分率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
鋼板の厚さが0.1~0.3mmであることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
平均結晶粒直径が40~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、下記数1および数2を満たすスラブを加熱する段階と、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、
前記冷延板を最終焼鈍する段階とを含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および数2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【請求項10】
前記スラブを加熱する段階で、1200℃以下の温度で加熱することを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記熱間圧延する段階で仕上げ圧延温度は750℃以上であることを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱間圧延する段階の後、850~1150℃の範囲で熱延板焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記冷間圧延する段階は、1回の冷間圧延段階、または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延段階を含むことを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記中間焼鈍の温度は850~1150℃であることを特徴とする請求項13に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、Mn、Cu、S間の関係を適切に制御し、硫化物の分布を制御することによって、磁性を改善した無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換させるモータに主に使用されるが、その過程で高い効率を発揮するために無方向性電磁鋼板の優れた磁気的特性を求める。特に最近は環境にやさしい技術が注目されるようになり、また電気エネルギー使用量全体の過半を占めるモータの効率を増加させることが非常に重要になってきており、このために優れた磁気的特性を有する無方向性電磁鋼板の需要も増加している。
無方向性電磁鋼板の磁気的特性は、主に鉄損と磁束密度で評価する。鉄損は、特定の磁束密度と周波数で発生するエネルギー損失を意味し、磁束密度は、特定の磁場下で得られる磁化の程度を意味する。鉄損が低いほど同一条件でエネルギー効率が高いモータを製造することができ、磁束密度が高いほどモータを小型化させ銅損を減少させることができるため、低い鉄損と高い磁束密度を有する無方向性電磁鋼板を作ることが重要である。
モータの作動条件に応じて考慮しなければならない無方向性電磁鋼板の特性も変わる。モータに使用される無方向性電磁鋼板の特性を評価するための基準として多数のモータが商用周波数50Hzで1.5T磁場が印加された時の鉄損であるW15/50を最も重要視している。しかし、多様な用途のモータが全てW15/50鉄損を最も重要視しているのではなく、主な作動条件により他の周波数や印加磁場での鉄損を評価する。特に最近の電気自動車駆動モータに使用される厚さ0.35mm以下の無方向性電磁鋼板では、1.0Tまたはそれ以下の低磁場と400Hz以上の高周波で磁気的特性が重要な場合が多いため、W10/400などの鉄損で無方向性電磁鋼板の特性を評価する。
【0003】
無方向性電磁鋼板の磁気的特性を増加させるために通常使用される方法は、Siなどの合金元素を添加することである。このような合金元素の添加を通じて鋼の比抵抗を増加させることができるが、比抵抗が高くなるほど渦電流損失が減少して全体鉄損を低めることができるようになる。反面、Si添加量が増加するほど磁束密度が劣位になり、脆性が増加するという短所があり、一定量以上添加すると冷間圧延が不可能で商業的生産が不可能になる。特に電磁鋼板は、厚さを薄くするほど鉄損が低減する効果を得ることができるが、脆性による圧延性低下は致命的な問題になる。一方、Si以外に追加的な鋼の比抵抗増加のためにAl、Mnなどの元素を添加する試みがなされた。
特にMnの添加は、鋼の脆性増加を最小化しながら、比抵抗を増加させることができるため、比抵抗が大きく考慮される高周波用途の無方向性電磁鋼板製造方法に積極的に活用されている。ただし、Mnの添加量が増加するほど、Mnと化学的に結合しやすい硫黄と結合して硫化物が形成され、合金鉄に含有された不純物が析出物を形成して磁性を悪化させることがある。このような理由のため、Mn添加による鋼の鉄損向上は非常に難しい製造技術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が目的とするところは無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することであり、より具体的にMn、Cu、S間の関係を適切に制御し、硫化物の分布を制御することによって、磁性を改善した無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、下記数1および数2を満たすことを特徴とする。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および数2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【0006】
本発明の無方向性電磁鋼板は、CおよびNのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下にさらに含み、
Nb、TiおよびVのうちの1種以上をそれぞれ0.004重量%以下さらに含み、
P:0.02%以下、B:0.002%以下、Mg:0.005%以下およびZr:0.005%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
直径150~300nmの硫化物個数が直径20~100nmの硫化物個数の2倍以上であり、
直径150~300nmの硫化物を含み、直径150~300nmの硫化物中のMnとCuを同時に含む硫化物の面積分率が70%以上であり、
鋼板の厚さが0.1~0.3mmであり、
平均結晶粒直径が40~100μmであることを特徴とする。
【0008】
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、下記数1および数2を満たすスラブを加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、冷延板を最終焼鈍する段階とを含むことを特徴とする。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および式2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【0009】
スラブを加熱する段階では、1200℃以下の温度で加熱することができる。
熱間圧延する段階で仕上げ圧延温度は750℃以上であり、
熱間圧延する段階の後、850~1150℃の範囲で熱延板焼鈍する段階をさらに含む。
冷間圧延する段階は、1回の冷間圧延段階、または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延段階を含み、
中間焼鈍温度は850~1150℃である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無方向性電磁鋼板の最適合金組成を提示することによって、適切な硫化物系析出物を形成して、磁性に優れた無方向性電磁鋼板を製造することができる。
また、磁性に優れた無方向性電磁鋼板を通じてモータおよび発電機の効率向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】MnおよびCuを同時に含む硫化物の電子顕微鏡写真である。
図2】MnおよびCuを同時に含む硫化物の電子顕微鏡写真である。
図3】MnおよびCuを同時に含む硫化物の電子顕微鏡写真である。
図4】MnおよびCuを同時に含む硫化物の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは他の部分の「直上に」にあるか、またはその間にまた他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「直上に」あると言及する場合、その間にまた他の部分が介されない。
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量の分、残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
異なって定義しなかったが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
以下、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0013】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、数1および数2を満たす。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3.00≦[Cu]/[S]≦7.00
数1および式2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【0014】
以下、無方向性電磁鋼板の成分限定の理由を説明する。
Si:1.5~4.0重量%
シリコン(Si)は、鋼の比抵抗を増加させて鉄損中の渦流損失を低めるために添加される主要元素である。Siが過度に少なく添加されると、鉄損が劣化するという問題が発生する。反対にSiが過度に多く添加されると、磁束密度が大きく減少し、加工性に問題が発生することがある。したがって、前述した範囲でSiを含むことができる。具体的にSiを2.0~3.9重量%含むがさらに具体的にSiを2.5~3.8重量%含むこととする。
Al:0.7~2.5重量%
アルミニウム(Al)は、Siと共に比抵抗を増加させて鉄損を減少させる重要な役割を果たし、また、磁気異方性を減少させて圧延方向と圧延垂直方向との磁性偏差を減少させる役割を果たす。Alが過度に少なく添加されると、微細窒化物を形成して磁性改善効果が得難いこともある。Alが過度に多く添加されると、窒化物が過多に形成されて磁性を劣化させることがある。したがって、前述した範囲でAlを含むがより具体的にAlを1.0~2.0重量%含むこととする。
【0015】
Mn:1.0~2.0重量%
マンガン(Mn)は、材料の比抵抗を高めて鉄損を改善し、硫化物を形成させる役割を果たす。Mnが過度に少なく添加されると、硫化物が微細に形成されて磁性劣化を起こすことがある。反対にMnが過度に多く添加されると、MnSが過多に析出され、磁性に不利な{111}集合組織の形成を助長して磁束密度が急激に減少することがある。より具体的にMnを0.9~1.9重量%含む。
Cu:0.003~0.020重量%
銅(Cu)は、高温で準安定硫化物を形成することができる元素であり、多量で添加時には表面部の欠陥を招く元素である。適正量の添加時、硫化物の大きさを増加させ、分布密度を減少させて磁性を改善させる効果がある。より具体的にCuを0.005~0.015重量%含む。
S:0.005重量%以下
硫黄(S)は、微細な析出物であるMnS、CuS、(Mn、Cu)Sを形成して磁気特性を悪化させ、熱間加工性を悪化させるため、低く管理する。具体的に0.0001~0.005重量%含むが、さらに具体的に0.0005~0.0035重量%含むこととする。
【0016】
本発明の無方向性電磁鋼板は、CおよびNのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下さらに含む。より具体的にC:0.005重量%以下およびN:0.005重量%以下をさらに含むこととする。
C:0.005重量%以下
炭素(C)は、磁気時効を起こし、その他不純物元素と結合して炭化物を生成して磁気的特性を低下させるため、低いほど好ましい。Cをさらに含む場合、0.005重量%以下にさらに含むが、より具体的には0.003重量%以下にさらに含むこととする。
N:0.005重量%以下
窒素(N)は、母材内部に微細で長いAlN析出物を形成するだけでなく、その他不純物と結合して微細な窒化物を形成して結晶粒成長を抑制して鉄損を悪化させる。したがって、Nをさらに含む場合、0.005重量%以下にする。より具体的には0.003重量%以下とする。
【0017】
本発明の無方向性電磁鋼板は、Nb、TiおよびVのうちの1種以上をそれぞれ0.004重量%以下さらに含む。より具体的にNb、TiおよびVをそれぞれ0.004重量%以下含むこととする。
ニオビウム(Nb)、チタン(Ti)およびバナジウム(V)は、鋼内析出物形成傾向が非常に強い元素であり、母材内部に微細な炭化物または窒化物または硫化物を形成して結晶粒成長を抑制することによって鉄損を劣化させる。したがって、Nb、Ti、Vのうちの1種以上をさらに含む場合、それぞれの含有量は、それぞれ0.004重量%以下とし、より具体的にそれぞれ0.002重量%以下とする。
本発明の無方向性電磁鋼板は、P:0.02%以下、B:0.002%以下、Mg:0.005%以下およびZr:0.005%以下のうちの1種以上をさらに含む。より具体的にP:0.02%以下、B:0.002%以下、Mg:0.005%以下およびZr:0.005%以下含むこととする。
【0018】
これら元素は、微量であるが、鋼内介在物形成などを通じた磁性悪化を招くため、P:0.02%以下、B:0.002%以下、Mg:0.005%以下、Zr:0.005%以下に管理される。
残部は、Feおよび不可避な不純物からなる。不可避な不純物については、製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは当該分野で広く知られているため、具体的な説明は省略する。本発明で前述した合金成分以外に元素の追加を排除するのではなく、本発明の技術思想を害しない範囲内で多様に含まれ得る。追加元素をさらに含む場合、残部であるFeを代替して含む。
前述したように、本発明でMn、Cu、S間の関係を適切に制御し、硫化物の分布を制御することによって、磁性を向上させることができる。
具体的に直径150~300nmの硫化物個数は直径20~100nmの硫化物個数の2倍以上である。直径150~300nmの硫化物は、直径20~100nmの硫化物に比べて磁壁移動を妨害して磁気的特性を劣化させる特性が小さいため、直径150~300nmの硫化物個数を多く形成することによって、磁性を向上させることができる。この時、硫化物の直径とは、圧延面(ND面)と平行な面で硫化物を観察した時の直径を意味する。直径とは、硫化物と同一面積の円を仮定した時、その円の直径を意味する。直径150~300nmの硫化物個数と直径20~100nmの硫化物個数との比は、少なくとも5μm×5μm以上の面積で観察する時の個数の比になることができる。より具体的に直径150~300nmの硫化物個数が直径20~100nmの硫化物個数の2倍~3.5倍である。
具体的に直径20~100nmの硫化物の密度は、20~40個/mmであり得る。直径150~300nmの硫化物の密度は、60~100個/mmであり得る。
直径150~300nmの硫化物中のMnとCuを同時に含む硫化物の面積分率が70%以上である。MnまたはCuを単独で含む硫化物に比べてMnとCuを同時に含む硫化物は、そのサイズが大きく、単位面積当たり個数が少ないため、磁壁移動および結晶粒成長を妨害する効果が顕著に低くなり、MnとCuを同時に含む硫化物の面積分率が70%以上である場合に前記効果が克明に現れるため、鋼板の磁性が向上する。
【0019】
鋼板の厚さは0.1~0.3mmであり、平均結晶粒直径は40~100μmである。適切な厚さおよび平均結晶粒直径を有する場合、磁性が向上する。
前述したように、本発明でMn、Cu、S間の関係を適切に制御して、硫化物の分布を制御することによって、磁性を向上させることができる。具体的に無方向性電磁鋼板の鉄損(W15/50)が1.9W/Kg以下、鉄損(W10/400)が9.5W/kg以下、磁束密度(B50)が1.65T以上になる。鉄損(W15/50)は、50Hzの周波数で1.5Tの磁束密度を誘起した時の鉄損である。鉄損(W10/400)は、400HZの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損である。磁束密度(B50)は、5000A/mの磁場で誘導される磁束密度である。より具体的に無方向性電磁鋼板の鉄損(W15/50)が1.9W/Kg以下、鉄損(W10/400)が9.5W/kg以下、磁束密度(B50)が1.65T以上になる。
【0020】
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、冷延板を最終焼鈍する段階とを含む。
まず、スラブを加熱する。
スラブの合金成分については、前述した無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したため、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分が実質的に変動しないため、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は実質的に同一である。
具体的にスラブは、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、数1および数2を満たす。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3.00≦[Cu]/[S]≦7.00
数1および数2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
その他の追加元素については、無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したため、重複する説明は省略する。
【0021】
スラブの加熱温度は制限されないが、スラブは1200℃以下に加熱する。スラブ加熱温度が過度に高ければ、スラブ内に存在するAlN、MnSなどの析出物が再固溶された後、熱間圧延および焼鈍時に微細析出されて結晶粒成長を抑制し、磁性を低下させる。
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板厚さは2.5mm以下とする。熱延板を製造する段階で仕上げ圧延温度は750℃以上であり、具体的に750~1000℃である。熱延板は700℃以下の温度で巻き取らる。
熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板焼鈍温度は850~1150℃である。熱延板焼鈍温度が過度に低ければ、組織が成長しないか、または微細に成長して冷間圧延後焼鈍時に磁性に有利な集合組織を得ることが容易ではない。焼鈍温度が過度に高ければ、結晶粒が過度に成長し、板の表面欠陥が過多になることがある。熱延板焼鈍は、必要に応じて磁性に有利な方位を増加させるために行われるものであり、省略も可能である。焼鈍された熱延板を酸洗する。
【0022】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は0.1mm~0.3mmの厚さに最終圧延する。必要時に冷間圧延する段階は、1回の冷間圧延段階、または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延段階を含むことができる。この時、中間焼鈍温度は850~1150℃である。
次に、冷延板を最終焼鈍する。冷延板を焼鈍する工程で焼鈍温度は、通常無方向性電磁鋼板に適用される温度であれば大きく制限はない。無方向性電磁鋼板の鉄損は、結晶粒サイズと密接に関連しているため、900~1100℃であれば適当である。最終焼鈍過程で平均結晶粒粒径が40~100μmになり、前段階である冷間圧延段階で形成された加工組織が全て(つまり、99%以上)再結晶される。
最終焼鈍後、絶縁被膜を形成する。前記絶縁被膜は、有機質、無機質および有機-無機複合被膜で処理され、その他絶縁が可能な被膜剤で処理することも可能である。
【0023】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明はここに限定されるのではない。
実施例
表1のような成分でスラブを製造した。これを1150℃で加熱し、780℃の仕上げ温度で熱間圧延して、板厚さ2.0mmの熱延板を製造した。熱間圧延された熱延板は、1030℃で100秒間熱延板焼鈍後、酸洗および冷間圧延して厚さを0.15、0.25、0.27、0.30mmに作り、1000℃で100秒間再結晶焼鈍を施行した。
各試片に対する厚さ、[Mn]/[Cu]、[Cu]/[S]、直径20~100nm硫化物の分布密度(a)、直径150~300nm硫化物の分布密度(b)、b/a、硫化物中のMnとCuを同時に含む硫化物の分率、W15/50、W10/400、B50を表2に示した。直径20~100nm、150~300nmの硫化物の分布密度は、同一試片に対してTEMで5μm×5μm×20000枚以上を観察して0.5μm以上の面積を測定した時に発見される析出物をEDS分析した結果、Sが検出される析出物の直径を測定して示した。硫化物中のMn、Cu同時包含分率は、前述したTEM EDS観察で発見されたSを含む硫化物全体でMnとCuが同時に検出される硫化物の分率を意味する。図1図4では、MnとCuが同時に検出される硫化物の電子顕微鏡写真を示した。磁束密度、鉄損などの磁気的特性は、それぞれの試片に対して幅60mm×の長さ60mm×枚数5枚の試片を切断して単板磁気測定法(Single sheet tester)で圧延方向と圧延垂直方向に測定して平均値を示した。この時、W15/50は、50Hzの周波数で1.5Tの磁束密度を誘起した時の鉄損であり、W10/400は、400Hzの周波数で1.0Tの磁束密度を誘起した時の鉄損であり、B50は、5000A/mの磁場で誘導される磁束密度を意味する。
【0024】
【表1】
【表2】
【0025】
表1と表2に示すように、合金成分が適切に制御されたA3、A4、B3、B4、C3、C4、D3、D4、E3、E4は、直径20~100nmの硫化物と直径150~300nmの硫化物との比率が適正値を有しているため、磁気的特性が全て優れるように示された。
反面、A1、A2は、Cu含有量が未達または超過となったため、磁性に有害な微細なサイズの硫化物が増加し、粗大なサイズの硫化物形成が抑制されて鉄損が不良で磁束密度も劣位になった。B1、B2は、MnとCuの含有量比、C1、C2は、CuとSの含有量比が外れてそれぞれ磁性に有害なサイズの硫化物が増加し、粗大な複合硫化物形成が抑制されたため、鉄損と磁束密度が劣位になった。D1、D2は、Mn含有量が未達または超過となって鉄損と磁束密度が劣位に示された。E1、E2は、S含有量が超過となって磁性に有害な微細なサイズの硫化物が急激に増加して鉄損と磁束密度が劣位になった。
【0026】
本発明は、前記実施形態に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、下記数1および数2を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および式2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【請求項2】
CおよびNのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
Nb、TiおよびVのうちの1種以上をそれぞれ0.004重量%以下さらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
P:0.02%以下、B:0.002%以下、Mg:0.005%以下およびZr:0.005%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
直径150~300nmの硫化物個数が直径20~100nmの硫化物個数の2倍以上であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項6】
直径150~300nmの硫化物を含み、
前記直径150~300nmの硫化物のうちのMnとCuを同時に含む硫化物の面積分率が70%以上であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
鋼板の厚さが0.1~0.3mmであることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項8】
平均結晶粒直径が40~100μmであることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項9】
重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.7~2.5%、Mn:1~2%、Cu:0.003~0.02%およびS:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、下記数1および数2を満たすスラブを加熱する段階と、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、
前記冷延板を最終焼鈍する段階とを含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[数1]
150≦[Mn]/[Cu]≦250
[数2]
3≦[Cu]/[S]≦7
数1および数2中、[Mn]、[Cu]および[S]は、それぞれMn、CuおよびSの含有量(重量%)を示す。
【請求項10】
前記スラブを加熱する段階で、1200℃以下の温度で加熱することを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記熱間圧延する段階で仕上げ圧延温度は750℃以上であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱間圧延する段階の後、850~1150℃の範囲で熱延板焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9~請求項11のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記冷間圧延する段階は、1回の冷間圧延段階、または中間焼鈍を間に置いた2回以上の冷間圧延段階を含むことを特徴とする請求項9~請求項12のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記中間焼鈍の温度は850~1150℃であることを特徴とする請求項13に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法
【国際調査報告】