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特表2022-509817同時に行われる血液試料のスポット検査および保存
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  • 特表-同時に行われる血液試料のスポット検査および保存 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】同時に行われる血液試料のスポット検査および保存
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/12 20060101AFI20220117BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220117BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01N1/12 B
G01N37/00 101
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021529738
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019056918
(87)【国際公開番号】W WO2020112272
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/772,135
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521226509
【氏名又は名称】ウィーブル ヘルス コープ.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ブランドン ティー.
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AB16
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA14
2G052CA02
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA39
2G052DA08
2G052DA09
2G052DA15
2G052DA22
2G052GA30
2G052HC02
2G052HC06
2G052HC32
2G052JA02
2G052JA03
(57)【要約】
【解決手段】血液試料採取および/または保存装置は、指先の血液試料が採取される口を包含する2部構造のハウジングを含む。試料が採られた後に、試料を保護して保存するとともに、随意にハウジング内で試料を処理するために、2部構造のハウジングは閉位置に動かされる。また、保存された試料にアクセスして、さらに処理するために、ハウジングは開くこともできる。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを含む生体液試料採取装置であって、
前記ハウジングは、
試料採取ウェルと、
前記試料採取ウェルに隣接して配設された2つ以上の毛細管または他のマイクロ流体流路と、
所定の容量の流体が前記試料採取ウェルから2つ以上の前記毛細管に吸い上げられるように構成された、機械的に作動する液体制御器と、
前記毛細管および/またはマイクロ流体流路に隣接して配設された2つ以上の媒体であって、媒体のうちの少なくとも1つは、前記装置内に搬送対象である前記液体の一部を保持するように構成された、2つ以上の媒体と
を内包する、装置。
【請求項2】
前記媒体は、前記毛細管の出口に隣接して、互いに平行に配設された採取用膜と免疫測定用ストリップとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記媒体は、免疫測定用ストリップの上に積み重ねられる採取用膜をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1の媒体は、搬送対象である血液試料を保存する採取用膜であり、第2の媒体は、免疫測定用ストリップであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第1の媒体は、検出のために血液試料の分子をコンジュゲートまたは他の分子に結合する表面を設けることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第1の媒体は、血液試料の検査結果を速やかに出し、第2の媒体は、後の検査機関での検査のために血液試料を採取することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、
前記ハウジング内に配設されるとともに、2つ以上の前記媒体を支持する取り外し可能な支持要素をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
機械的に作動する液体制御器は、前記毛細管と同一線上に配設されるとともに、流体を前記毛細管から前記媒体に分配するように配置された1つ以上のプランジャを含むことを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記媒体は、紙、繊維、プラスチック、ガラス、またはマイクロ流体検出器のうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
血液試料を採取する方法であって、該方法は、
ハウジングと、前記ハウジングが開位置にあるときに曝される試料採取ウェルとを有する血液試料採取装置を設ける工程と、
定容量の前記血液試料を、機械的に作動する液体制御器を介して、2つ以上の毛細管または他のマイクロ流体流路に吸い上げる工程と、
前記毛細管および/またはマイクロ流体流路に隣接して2つ以上の媒体を配設する工程であって、前記媒体のうちの少なくとも1つは、搬送対象である流体の一部を前記装置内に保持するよう構成される、工程と
を含む方法。
【請求項11】
前記媒体は、前記毛細管の出口に隣接して、互いに平行に配設された採取用膜と免疫測定用ストリップとをさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記媒体は、免疫測定用ストリップの上に積み重ねられる採取用膜をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1の媒体は、搬送対象である血液試料を保存する採取用膜であり、第2の媒体は、免疫測定用ストリップであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第1の媒体は、検出のために血液試料の分子をコンジュゲートまたは他の分子に結合する表面を設けることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
血液試料の検査結果を速やかに出す工程と、後の検査機関での検査のために血液試料を採取する工程と、をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
2つ以上の前記媒体を支持するために、前記ハウジング内に取り外し可能な支持要素を配設する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
流体を前記毛細管から前記媒体に分配するように、前記毛細管と同一線上に配設された1つ以上のプランジャを操作する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
媒体は、紙、繊維、プラスチック、ガラス、またはマイクロ流体検出器のうちの1つ以上であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月11日出願の「Simultaneous Spot Test and Storage of Blood Samples」と題する同時係属中の米国仮特許出願第62/772,135号の優先権を主張する。また、本出願は、2018年10月19日出願の「Fluid Sample Collection Device」と題する同時係属中の米国特許出願第16/164,988号に関する。これらの同時係属中の出願の全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本特許出願は、体液試料を採取するための装置および方法に関する。
【0003】
背景情報
診断検査に使用される血液は、ほとんどの場合は、皮下注射針を用いて患者から取り出されて試験管に採取される。その後、採取された血液は、包装され、各種診断検査が実施される遠方の検査機関に発送される。しかし、多くの診断検査は、実際に採取される試料よりも遥かに少ない容量の試料しか必要としない。また、いくつかの検査では、試料から細胞成分を分離させる必要がある。
【0004】
多くの検査では、少量の血液試料しか必要としないので、皮下注射針ではなくフィンガースティックにより、十分な血液を生じさせることができる。しかし、この少量の血液は、遠方の検査機関に容易に搬送することができない。血液が取り出されるのと同時に、速やかに検査方法が使用できない場合には、少量の血液を採取、調製、収容する便利かつ確実な方法が今なお必要とされる。
【0005】
Boston Microfluidics,Inc.に譲渡された米国特許出願公開第2014/0050620号明細書には、生体液試料を採取して安定化させて遠方の検査機関に搬送するための、携帯用の使い勝手の良い装置を実現する方法がいくつか記載されている。これらの装置は、液体試料を採取するためのチャンバを設けた小型の手持ちハウジングを含む。ハウジング自体および/またはハウジング内に位置した機構を動かすことにより、所定の計量された容量の液体試料が採取され始められる。また、これらの装置は、採取された試料を安定化させ、および/または、チャンバに試料を密封することができる。装置の他の機構は、採取された試料と試薬を混合することができる。
【発明の概要】
【0006】
試料採取装置は、血液試料などの体液試料を採取、計量、分析および/または保存するのに使用することができる。患者から採取された液体は最初に、例えば血液滴を指先からウェルに導くことによって、または他の方法によって試料口を介して、装置に差し込まれる。いくつかの構成では、その後、毛細管またはマイクロ流体流路が、試料口から計量された量の血液を取り出して、毛細管現象を介して血液を媒体に付着させる。計量毛細管から媒体に液体を分配するのを促すために、1つ以上のプランジャにより、機械力をさらにもたらしてもよい。
【0007】
好ましい配置構成では、媒体は、2つ以上の膜、免疫測定用ストリップ、または他の基板を含む。例えば、媒体は、採取用膜と免疫測定用ストリップの両方を含んでもよい。採取用膜と免疫測定用ストリップは、毛細管の出口に隣接して、互いに平行に配設されてもよい。採取用膜は、いくつかの毛細管から血液試料を受け取って保存してもよく、免疫測定用(または他の検査用)ストリップは、他の毛細管からもたらされた血液試料を受け取って処理してもよい。プラスチックやガラスなどを基にした膜などの種類の膜、または、マイクロ流体検出器が使用されてもよい。
【0008】
いくつかの構成では、試料は、ハウジング内のアッセイ領域に送られ、ここで、捕捉血液分子が、分析物に結合する表面に曝される。その後、これらの分析物は、分析物を検出可能にするためにコンジュゲートに結合してもよい。例えば、結合した分析物は、結合した表面の光学特性や電気特性を改変し、目視検査や電子回路によって直接検出可能してもよい。
【0009】
同じ血液試料に対して異なるプロセスを並行して実施することができることで、いくつかの利点をもたらす。例えば、1つの膜は、重篤な症状(HIVまたはC型肝炎など)に対して結果を速やかに出す分析物を有してもよく、別の膜は、後の検査機関でのそれほど重篤でない症状の検査(グルコース検査など)のために、血液試料を保存するように設計された、LF-1紙などの採取媒体であってもよい。
【0010】
いくつかの構成では、プランジャは、1つ以上の可動ハウジング部に取り付けられてもよく、これにより、ハウジングが開位置から閉位置に動かされると、毛細管が試料口の血液に曝される。
【0011】
本装置のいくつかの実施形態は、液体が媒体に分配されると液体に係合するように配置された安定剤または抗凝固剤を含む。この薬剤は、ヘパリンおよび/またはEDTAであってもよい。安定剤は、毛細管、プランジャまたは媒体のうちの少なくとも1つの内部に塗布されても、付着されてもよい。また、この構成は、媒体に隣接して位置する、または媒体に位置する乾燥剤を含んでもよい。
【0012】
他の配置構成では、例えばハウジングが開位置から閉位置に動かされて、流体が分配されるときに、保存されている試薬が液体と混合されるように、アッセイ領域は、毛細管と媒体の間に位置してもよい。
【0013】
また、ハウジングは、1つ以上の窓を含んでもよく、この窓は、毛細管および/または媒体の少なくとも一部が窓を通して見ることができるような場所に位置付けられる。望ましくは、2つ以上の媒体の各々を観察する窓を有してもよい。しかし、他の構成では、ハウジングが閉じられているときに、媒体の少なくとも一部が視界から隠れてもよい。これを実際に使用する1つは、米国食品医薬品局(FDA)501(k)と実質的に同等の検査などの臨床試験で使用するために、装置により血液を採取するときであってもよい。
【0014】
媒体は、異なる形態を取ってもよい。例えば、互いに離間した一対の係合タブを有するマイラー基板を含んでもよい。その後、媒体は、基板に配設され、係合タブの間の定位置に保持される。
【0015】
2つ以上の媒体を支持し、毛細管の出口に隣接して定位置に保持するために、ハウジング内に骨格を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】使用前の開位置にある血液試料採取装置の等角図である。
図2】閉位置にある採取装置の図である。
図3A】1つの媒体を有する採取装置の構成部品を示す分解図である。
図3B】保存用膜や免疫測定用ストリップなどの複数の媒体を有する別の例示的な装置の分解図である。
図4A図4A図4Bはそれぞれ、媒体と媒体支持部を実装する1つの方法の上面図と側面図である。
図4B図4A図4Bはそれぞれ、媒体と媒体支持部を実装する1つの方法の上面図と側面図である。
図4C】媒体の上面図である。
図4D】支持部の上面図である。
図5】例示的な媒体のより詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、例示的な液体採取装置(100)の等角図である。装置(100)は、液体試料口(102)を支持内包する2部構造のハウジング(101)を含む。ハウジング(101)は、第1のハウジング部(101-A)と第2のハウジング部(101-B)とを含む。この図では、ハウジングは、互いに離間した2つのハウジング部(101-A)、(101-B)を備えて開位置にあり、試料口(102)へのアクセスを設ける。この図では、試料採取ウェル(104)と試料口(102)に隣接して位置する1つ以上の毛細管(105)を部分的に見ることができる。ハウジングにある窓(150)により、ユーザは、液体試料が採取されるプロセス、および/または、装置(100)内に保存されるプロセスでは、液体試料の1つ以上の部分の状況を確認することができる。
【0018】
図2は、装置(100)の類似した等角図である。この図では、血液試料が試料口(102)を介して採られ、2つのハウジング部(101-A)、(101-B)が共に押し込まれて、装置(100)が閉位置におかれる。この閉位置では、窓(150)により、血液採取の状況にアクセスし続けることができる。
【0019】
装置(100)は、典型的には、次のように血液試料を採取するために使用される。装置(100)は、最初は、ウェル(104)へのアクセスを設けるために、図1のように開位置にある。その後、患者自身や医療従事者などのユーザが、ランセットを使用して指先などから血液試料を生じさせる。その後、血液がこぼれるのを最小限に抑えるために、指をウェル(104)または試料口(102)の他の部分の近く、上方または隣に位置付けるか、または、さらには接触するように位置付けて、数滴の全血を採る。
【0020】
その後、血液は最終的に、1つ以上の異なる方法で装置(100)の残りの部分に吸い上げられる。一実施形態に関してより詳細に説明されるように、血液は流動するか、最初にウェル(104)から、毛細管現象を介して、試料口に隣接した1つ以上の採取用毛細管(105)に吸い上げられる。血液が装置(100)に適切に吸い上げられていることをユーザが確認できるように、毛細管は、見た目に透明であってもよい。試料をその後安定化させて収容するために、随意に、毛細管(105)は、ヘパリンおよび/またはEDTAなどの試薬が予め塗布されていてもよい。また、毛細管(105)は、既知かつ所定の容量を有してもよく、その場合は、入ってくる試料が精密に計量される。その後、採取用毛細管(105)は、計量された試料を、装置のハウジング(101)の内部にある媒体に導く。
【0021】
その後、ユーザは、患者自身や医療従事者であってもよいが、2つのハウジング部(101-A)、(101-B)を共に押し込むことによって装置(100)を手動で閉じ、結果として、図2に示されるハウジングの位置にする。以下でより十分に説明されるように、ハウジングを閉じるのに関連した動作は、随意に、試料をさらに処理する1つ以上の機構を実施させ、試料を装置(100)の内部に確実に保存してもよい。
【0022】
窓(150)は、ユーザが試料口(102)、ウェル(104)、および/または採取用毛細管(105)の状態を確認することができる透明な材料の部品を含んでもよい。これにより、(ハウジング(101)が図1の開位置にあるときは)十分な血液試料が装置(100)に吸い上げられているか、または、(ハウジング(101)が図2のように閉位置にあるときは)十分な血液試料が装置に吸い上げられたかを示す。
【0023】
図3Aは、例示的な装置(100)の構成部品のより詳細な分解図である。第1のハウジング部(101-A)は、上部ケース(201-A-1)および下部ケース(201-A-2)から構成され、第2のハウジング部(101-B)は、上部ケース(201-B-1)および下部ケース(201-B-2)から構成される。
【0024】
骨格構造(203)は、2つのハウジング部(101-A)、(101-B)を支持する。ハウジング部(201-A)、(201-B)の垂直壁の内部は、骨格(203)に形成された細長いスロットまたは他の構造に係合してもよく、これにより、少なくとも第2のハウジング部(101-B)は、骨格に沿って前後に摺動することができ、そしてこれにより、ハウジングを開位置または閉位置に動かすことができる。ある配置構成では、第1のハウジング部(101-A)は、骨格(203)の位置に固定されたままである。しかし、第1のハウジング部(101-A)が骨格(203)上を摺動し第2のハウジング部(101-B)が固定されたままである他の実施形態や、両方のハウジング部(101-A)、(101-B)が互いに対して摺動できるようになっている他の実施形態も可能である。
【0025】
また、骨格(203)は、装置(100)の他の構成部品も支持する。例えば、骨格(203)は、インロー部(毛細管支持要素とも呼ばれる)(252)から形成されるような試料採取口(102)の場所を設ける。また、骨格(203)によって、プランジャのラック(202)も支持される。骨格(203)は、採取された試料をさらに乾燥させるための乾燥剤の錠剤(図3に図示せず)を支持するリブ付き部分(230)をさらに含んでもよい。また、骨格(203)は、2つのハウジング部(101-A)、(101-B)が共に押し込まれたときに作動するラチェット式閉鎖(240)を設けた歯を端部に有してもよい。
【0026】
毛細管(204)(他の図では参照符号(105)でも参照される)は、インロー(252)に形成された長手方向の孔(図3には図示せず)に挿入されて、この長手方向の孔によって定位置に保持される。毛細管は、容量が精密に定められた硬質管として形成されてもよく、その場合は、毛細管は、計量機能も果たす。毛細管(204)は、毛細管現象を通して試料採取口(102)にある血液に係合することによって、定められた量の血液を取り出す。インロー(252)は、骨格(203)にある孔(221)に嵌まり込んでもよい。以下でより詳細に説明されるように、インロー(252)は、患者の血液が導かれるウェル(104)の場所を定める。
【0027】
毛細管(204)は、随意に、試薬、ヘパリン、EDTAまたは他の物質で予め塗装されていてもよい。
【0028】
また、1つ以上の毛細管(204)は、所定の量の液体試薬を保存してもよい。このような試薬は、その後、ハウジングが開位置から閉位置に動かされるときに血液試料と共に、または血液試料と並行して分配されてもよい。しかし、他の種類の試薬は、ハウジング内の保存領域に位置していてもよい。保存領域(図では指定せず)は、固体表面または基板などである第1の種類の試薬と、液体保存チャンバである第2の種類とを保持してもよく、各々は、装置(100)によって採取された血液試料の経路に設置される。
【0029】
ある配置構成では、1つ以上のプランジャ(202)が、毛細管(204)の内径に強固に係合し、計量された試料容量をその後の下流の処理工程に押し出すと同時に、過剰な血液試料を遮る遮蔽部を形成する。
【0030】
また、血液採取要素(250)をさらに機械的に支持するために、基板(206)が、骨格(203)に嵌まり込んでもよい。採取要素(250)は、試料媒体(209)(本明細書では膜とも呼ばれる)から構成されてもよく、処理のために、検査機関によって試料媒体(209)が装置(101)から取り外されるときに、試料媒体(209)を取り扱うのに役立つ他の構成部品によって支持および/または定位置に保持される。採取要素(250)のこれらの他の部品には、基板(206)、上部フレーム(208)、媒体支持部(210)、および下部フレーム(211)が挙げられる。上部フレーム(208)および下部フレーム(211)は、外側端部に延在部(222A-)、(222-B)を有してもよい。延在部(222)は、ハウジング(101)から取り外している間およびその後に採取要素(250)を取り扱うのにさらに役立つ。
【0031】
図3Bは、図3Aの装置に類似した、別の例示的な装置(100)の分解図である。しかし、この装置(100)は、採取用膜(209)と免疫測定用ストリップ(309)の両方を含む2つの種類の媒体に血液試料を渡す。膜(209)とストリップ(309)は、平行に配置されてもよい。採取用膜(209)は、いくつかの毛細管から血液試料を受け取って保存してもよく、免疫測定用(または他の検査用)ストリップ(309)は、他の毛細管から血液試料を受け取って処理してもよい。
【0032】
2つ以上の種類の媒体の他の配置構成も可能である。例えば、採取用膜(209)および免疫測定用ストリップ(309)は、(互いに平行に位置しているのではなく)互いの上に積み重ねられもよい。検査用ストリップは見えているが、採取用ストリップは見えていないか、あるいはその逆であることが望ましい。いくつかの配置構成では、ラテラルフロー検査に加えて、フロースルー検査が、同じ装置に収蔵されてもよい。検査に加えて、試料を分離(例えば1つの層に赤血球、別の層に血漿)するために、または、競争する分析物を隔離するために、多重層(流路)構成を使用してもよい。
【0033】
第1の毛細管の組からの試料は、ヘパリンなどの抗凝固薬に曝され、本明細書に記載される膜などの試料保存媒体に導かれてもよい。第2の毛細管の組からの試料は、試薬と混合され、(化学媒体の発色変化によって、または、電子センサ出力の表示によってなど)検査表示を速やかに出す(例えば、化学媒体または電子センサによる)現場即時検査に導かれてもよい。
【0034】
ある実施例の使用の場合では、1つの装置によって、HIVまたはC型肝炎などの重大な状態を速やかに示す現場即時検査を行う。同装置は、血液試料を採取し、同時にこれを保存して、その後、遠方の検査機関で、血糖などのそれ程重篤でない検査に使用することができる。
【0035】
他の検査用ストリップは、装置自体内で実施される検査の結果を示す発色バンドを含んでもよい。例えば、検査用ストリップは、HIVまたはC型肝炎の症状を示すように構成されてもよい。HIVの検査の場合は、ストリップは、HIV組換え抗原が塗布された検出領域と、対照領域とを含むニトロセルロース膜であってもよい。
【0036】
全血または血漿中のC型肝炎ウイルスの有無の定性検査用ストリップが利用されてもよい。
【0037】
媒体(209)は、毛細管(105)の出口またはその近接に位置する、様々な種類の血漿分離膜またはフィルタであってもよい。例えば、膜は、Pall(商標) Corporationから入手可能なPall Vivid Plasma Separation membraneなどのセルロース混合エステル膜であってもよい。また、膜(209)は、(General Electric(商標) Companyによって販売されている)LF1ガラス繊維膜であってもよいし,血清または全血を受け取って、その後、血液部分と血漿部分に分離するように設計された他の媒体であってもよい。LF1紙などの媒体は、赤血球の速度を遅らせて、試料を異なって泳動させる繊維構造を有し、その結果、試料が紙に泳動すると、血漿試料が徐々に分離する。膜(209)は、随意に、ヘパリン、EDTA、糖類、または他の安定化剤を予め含浸させておいてもよい。繊維マトリックスを通して赤血球と血漿を分離させるLF1紙は、血液細胞の泳動速度を遅くさせるので、いくつかの実施形態では、LF1紙が好ましい。しかし、液体血液用または乾燥血液用のいずれかの他の種類の分離膜が使用されてもよい。
【0038】
血漿の分離は、赤血球を大きさによって除外する、膜ではないマイクロ構造を通して達成されてもよい。例えば、血漿の分離は、赤血球を選択的に結合することによって達成され、または、向上されてもよい。結合剤は、典型的には、膜またはマイクロ構造に塗布されるが、流路に付着させてもよい。
【0039】
また、試料媒体は、採取された試料に対してアッセイなどの検査を実施するために、様々な化学物質が塗布されていてもよい。これにより、試料媒体(209)の全体または一部は、免疫測定用ストリップ(309)に置き換えられてもよく、または、試料媒体(209)と共にあってもよい。装置(100)が閉じられると、試料が免疫測定用ストリップの試料パッド領域に送られる。
【0040】
媒体自体は、前述のセルロースまたはガラス繊維媒体であってもよく、あるいは、プラスチックまたはガラスなどの他の多孔性媒体または非多孔性媒体であってもよい。媒体として、マイクロ流体チップが挙げられる。
【0041】
ハウジングが閉じられた後に、血液試料が膜(209)に保存されていることは、窓(150)によって、目視で確認できる。しかし、同窓または他の窓(150)によって、免疫測定用ストリップ(309)または他の検査用ストリップの発色変化の結果を目視で点検することができてもよい。他の構成では、窓(150)が存在する場合は、窓は、媒体のいくつかを目視で点検することができるのみで、他の媒体は目視で点検することができなくてもよい。これは、装置がFDA501(k)と同等の検査などの検査を遵守して血液試料を採取するために使用される場合は、有用となり得る。
【0042】
あるいは、試料は、ハウジング(101)内のアッセイ領域に送られてもよく、ここで、捕捉分子が試料に曝され、分析物に結合する。その後、これらの分析物は、コンジュゲートに結合して、検出可能になってもよい。また、結合した分析物は、結合した表面の光学特性や電気特性を改変し、直接検出可能になってもよい。
【0043】
ハウジング部を共に閉じる動作により、血液試料が、毛細管現象と機械力の両方によりウェル(104)から毛細管(105)に吸い上げられ、毛細管から出て、試料用膜(209)、免疫測定用ストリップ(309)、または他の媒体に付着するという点が理解されるであろう。特に、プランジャ(202)は、ハウジング部(201-A)に係合し、次いで毛細管(105)は、インロー(252)内の定位置に保持されている。これにより、ハウジング部が共に閉じられると、プランジャ(202)が毛細管(105)に押し入れられて、次いで、血液が膜(209)に押し出される。
【0044】
いくつかの実装形態では、インロー部(252)の1つ以上の区画または部分を作製するのに用いられる材料は、プランジャ(202)が毛細管(105)に押し入れられる間に毛細管(105)を定位置に保持するのに十分な弾性を有していてもよい。また、インロー(252)の弾性は、密封するために、および/または、少なくとも一部の血液が毛細管(105)を通って流動せずに毛細管(105)の周りを流動するのを防止するために選択されてもよい。
【0045】
また、閉じられたハウジング(101)は、試料媒体の上方に小さな隔離された内部空間領域を形成する。この空間領域に位置する1つ以上の乾燥剤の錠剤(図示せず)を用いて、試料の乾燥がさらに促されてもよい。例えば、乾燥剤は、ハウジングが閉位置にあるときに試料媒体(209)が着座するところに隣接して、骨格(203)によって支持されてもよい。
【0046】
ハウジングが閉じられている間またはその後は、骨格(203)の遠端部に設けられたラチェット機構により、ハウジングは閉じたままであるように促される。例えば、歯(240)は、ラチェットポールとして機能してもよく、ハウジングが押し閉じられると、小さな孔(245)またはハウジング部(101-A)の端部にある他の特徴に係合してもよい(図1を参照)。歯(240)は、ハウジング部(101-B)の側面にある小さな孔(245)にアクセスする挟み具を用いて、例えば歯(240)を挟むことによって、ラチェットポールを解除することでしか、ハウジングを開くことができないように形成されてもよい。これにより、ハウジング部(101-A)、(101-B)を共に押し込むことによって装置(100)が閉じられると、血液試料が内部に内包されたままになり、遠方の検査機関に搬送する準備ができる。
【0047】
図4A図4Bはそれぞれ、試料媒体を実装する1つの方法の上面図と側面図であり、この場合は膜(209)と媒体支持部(210)である。図4Cは媒体(209)の上面図であり、図4Dは支持部(210)の上面図である。
【0048】
媒体(209)は、タブ(401)、(402)の下に滑り込むか、または嵌まり込む略直方形の薄い紙又は繊維の膜であってもよい。タブ(401)、(402)は、媒体(209)を定位置に保持するように切り込みが入れられるか、支持部の口(410)として形成されてもよい。また、支持部(210)は、持ち手部(410)を有してもよい。持ち手(410)は、フレーム部(208)、(211)の延在部(222)に適合してもよい。持ち手(410)は、採取媒体(209)をハウジング(101)から取り外すときに採取媒体(209)の取り扱いを容易にする。また、持ち手(410)は、支持体(410)(および/またはフレーム部(208)、(211))がハウジング内により確実に嵌まり込むように形状された周辺端部(412)などの他の特徴を有してもよい。
【0049】
図5は、血液試料が採られた後しばらくして、採取要素(250)がハウジング(101)から取り外され後の採取要素(250)の平面図である。なお、血液載置場所(500)は、試料が採られたときに試料口(102)に隣接して位置していたことに注意されたい。試料媒体(209)の第1の領域(501)は、濾過された赤血球(RBC)を含む。しかし、血液試料の他の部分は、媒体(209)を通って拡散し、試料分離領域(502)と浄化血漿領域(503)を設ける。
【0050】
装置(100)は、使用において、患者が自身の指の一つにランセットを使用した後に表出させた血液を採取するのに極めて便利な手段である。市販で入手可能なランセットが使用されてもよく、一般には、ユーザの選択肢によって、ランセットの種類を選択する。指に血液滴を表出させると、患者は、突出した弾性端部(1030)を横切るように指を滑らせることによって、滴を試料採取口(102)のウェル(104)にすくい入れる。この血液滴は、重力や表面力を通ってウェル(104)の底部に進み、ここで、採取(計量)用毛細管(105)の開口に遭遇する。そこから、血液は、試料保存媒体(209)を含む採取要素(250)にさらに吸い上げられ、2つのハウジング部が共に閉じられると毛細管から血液を押し出すプランジャによってさらに促される。
【0051】
その後、閉じられた装置(100)は、小さな隔離された内部空間領域を形成し、この内部空間領域は、内部ポケットに含まれている乾燥剤の錠剤を活用して、素早く乾燥されてもよい。現在の形態では、LF1紙を採取媒体として使用することによって、赤血球を含まない血漿のスポットと、血漿が減損した全血のスポットとが形成される。LF1紙の構造によって、赤血球の速度を遅らせて、試料を異なって泳動させ、その結果、試料がさらに紙に泳動すると、血漿試料が徐々に分離する。血漿は、多くの試料アッセイに干渉しがちである赤血球を排除しているので、あらゆる定量血液検査にとって遥かに良好である。
【0052】
したがって、装置(100)は、標準的な乾燥血液スポットと比較して、高品質の定量アッセイを行うための遥かに良好な機会をもたらす。さらに、乾燥試料の赤血球部分は、血漿が減損しているが、感染因子を精密に検出するのに未だに十分であるので、乾燥試料の赤血球部分に未だに感染症検査を行うことができる。
【0053】
また、本装置は、血液試料の収容および搬送を行うのに理想的な機構である。本装置が閉じられると、血液試料は外部環境からほぼ遮断され、内部に内包される。本装置は、ユーザによって閉じられると、ラチェット機構を使用して、装置が確実にロックされ、閉じられたままにする。ハウジング(101)の側面にある小さな孔(245)にアクセスする挟み具を使用して、ラチェットポールを解除することでしか、これを開くことができない。
【0054】
見解
A.液体試料を2つ以上の媒体に導く装置
i)液体試料採取装置は、開位置から閉位置に構成可能なハウジングと、流体を採取する試料採取ウェルと、毛細管現象を通して、試料採取ウェルから液体を吸い上げるように配置されるとともに、所定の容量を有する1つ以上の毛細管またはマイクロ流体流路と、ハウジングが開位置から閉位置に動かされると、毛細管から分配される液体を受け取るように配置された2つ以上の媒体とを含むことが、ここで理解される。
ii)媒体は、2つ以上の膜、免疫測定用ストリップ、または他の基板を含んでもよい。例えば、媒体は、採取用膜と、免疫測定用ストリップとを含んでもよい。採取用膜と免疫測定用ストリップとは、毛細管の出口に隣接して、互いに平行に配設されてもよい。採取用膜は、搬送対象である血液試料を受け取って保存してもよく、免疫測定用(または他の検査用)ストリップは、血液試料を受け取って、その場で装置内で処理してもよい。
iii)いくつかの構成では、試料は、ハウジング内にあるアッセイ領域に送られ、ここで、捕捉血液分子が、分析物に結合する表面に曝される。その後、これらの分析物は、コンジュゲートに結合して、本装置で検出可能になってもよい。
iv)別の例では、1つの媒体は、重篤な症状(HIVまたはC型肝炎など)に対して速やかに結果を出す分析物を有する膜でもよく、別の膜は、後の検査機関でのそれほど重篤でない症状の検査(グルコース検査など)のために、血液試料を保存するように設計された、LF-1紙などの採取媒体であってもよい。
v)取り外し可能な支持要素は、1つ以上の媒体を毛細管の出口に隣接して、定位置に支持するために、ハウジング内に配設されてもよい。
【0055】
したがって、上記に照らして、本発明が行われた真の範囲を逸脱することなく、本装置に様々な修飾または追加を行うことができることが理解されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
【国際調査報告】