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特表2022-509833順次蒸着誘電体膜を含む固体電解キャパシタ
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  • 特表-順次蒸着誘電体膜を含む固体電解キャパシタ 図1
  • 特表-順次蒸着誘電体膜を含む固体電解キャパシタ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】順次蒸着誘電体膜を含む固体電解キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/07 20060101AFI20220117BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20220117BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20220117BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20220117BHJP
   H01G 9/025 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H01G9/07
H01G9/15
H01G9/00 290A
H01G9/00 290E
H01G9/028 G
H01G9/025
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530137
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2019063539
(87)【国際公開番号】W WO2020112954
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/772,665
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】エイブイエックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ペトルジレック,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー,ミッチェル・ディー
(57)【要約】
焼結多孔質陽極体を含む固体電解キャパシタ素子;順次蒸着により形成され、前記陽極体の上に配されている誘電体膜;及び前記誘電体膜の上に配されている固体電解質;を含むキャパシタを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結多孔質陽極体を含む固体電解キャパシタ素子;順次蒸着により形成され、前記陽極体の上に配されている誘電体膜;及び、前記誘電体膜の上に配されている固体電解質;を含むキャパシタ。
【請求項2】
前記誘電体膜が約10ナノメートル以上の厚さを有する請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記誘電体膜が、原子層堆積、分子層堆積、又はそれらの組み合わせによって形成される、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記誘電体膜が五酸化タンタルを含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記蒸着された誘電体膜は、タンタル含有前駆体化合物から形成される、請求項4に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記前駆体化合物がハロゲン化タンタルである、請求項5に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記前駆体化合物が、タンタルアルコキシド、アルキルアミドタンタル化合物、又はそれらの組み合わせである、請求項5に記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記多孔質陽極体が、タンタル、酸化ニオブ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記固体電解質が二酸化マンガンを含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記固体電解質が導電性ポリマーを含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項11】
前記固体電解質が複数の導電性ポリマー粒子を含む、請求項10に記載のキャパシタ。
【請求項12】
前記導電性ポリマー粒子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はその誘導体を含む、請求項11に記載のキャパシタ。
【請求項13】
前記導電性ポリマー粒子がまた、ポリマー対イオンを含む、請求項11に記載のキャパシタ。
【請求項14】
前記キャパシタ素子が、前記固体電解質の上に配されている金属粒子層を含む陰極被覆を更に含み、前記金属粒子層が、樹脂ポリマーマトリックス内に分散された複数の導電性金属粒子を含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項15】
前記陽極体と電気的に接続された陽極終端;前記固体電解質と電気的に接続された陰極終端;前記キャパシタ素子を封入し、前記陽極終端及び前記陰極終端の実装面を露出させたままにしているハウジング;を更に含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項16】
前記誘電体膜全体が順次蒸着によって形成される、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項17】
前記誘電体膜の一部のみが順次蒸着によって形成される、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項18】
固体電解キャパシタ素子を形成する方法であって、順次蒸着プロセスによって多孔質焼結陽極体上に誘電体膜を形成することを含み;前記プロセスは、前記陽極体を前記陽極体の表面に結合する気体状前駆体化合物と接触させること;及びその後に前記陽極体を気体状酸化剤と接触させて前記前駆体化合物を酸化させること;及びその後に前記誘電体膜上に固体電解質を形成すること;を含む反応サイクルに前記陽極体をかけることを含む、上記方法。
【請求項19】
前記前駆体化合物がタンタル含有前駆体化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆体化合物がハロゲン化タンタルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記前駆体化合物が、タンタルアルコキシド、アルキルアミドタンタル化合物、又はそれらの組み合わせである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記多孔質陽極体が、タンタル、酸化ニオブ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記酸化剤が約310℃以下の沸点を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記酸化剤が、水、酸素、オゾン、ペルオキシド、アルコール、ハロゲン化物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記陽極体を、前記反応サイクル中に約400℃以下の温度に加熱する、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化剤と接触させる前に、前記陽極体を不活性ガスと接触させることを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記陽極体を気体状前駆体化合物と接触させること、及びその後に前記陽極体を気体状酸化剤と接触させることを含む1以上の追加の反応サイクルに前記陽極体をかけることを更に含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月29日の出願日を有する米国仮特許出願第62/772,665号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固体電解キャパシタ(例えばタンタルキャパシタ)は、通常は、金属粉(例えばタンタル)を金属リード線の周囲にプレスし、プレスした部品を焼結し、焼結した陽極を陽極酸化し、その後、固体電解質を施すことによって製造される。固有導電性(intrinsically conductive)ポリマーは、それらの有利な低い等価直列抵抗(ESR)及び「非燃焼/非発火」故障モードのために、固体電解質としてしばしば使用される。かかる電解質は、酸化剤(例えばトルエンスルホン酸鉄(III)、又は塩化鉄(III))、及び溶媒(例えばブタノール)の存在下における液体モノマー(例えば3,4-ジオキシチオフェン、EDOT)の溶液相重合によって形成することができる。溶液重合された導電性ポリマーを使用する従来のキャパシタに関する問題の1つは、高速スイッチオン又は動作電流スパイク中に経験する高い電圧において故障する傾向があることである。
【0003】
これらの問題の幾つかを克服する試みにおいて、幾つかの用途においては、代替の固体電解質材料として予め作製された導電性ポリマースラリーもまた使用されている。これらのキャパシタに関しては高電圧環境において幾つかの利益が達成されているが、それにもかかわらず問題が残っている。例えば、非常に高い電圧の用途においては、誘電体層の品質が部品の故障を引き起こす可能性がある。例えば、高圧配電システムは高電圧をキャパシタに供給する可能性があり、これにより特に高速スイッチオン中又は動作電流スパイク中に、突入電流又は「サージ」電流を引き起こす可能性がある。キャパシタが故障なく耐えることができるピークサージ電流は、誘電体の品質に部分的に関係する可能性がある。より薄い領域はより厚い隣接する領域よりも低い抵抗を有するため、より薄い領域で消費される電力は一般により大きい。したがって、サージ電流が印加されると、これらのより薄い領域は弱い「ホットスポット」に発達し、最終的には誘電体の劣化及び故障につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、高電圧で信頼性を持って使用できる改良された電解キャパシタに対する必要性が現在存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、焼結多孔質陽極体を含む固体電解キャパシタ素子;順次蒸着により形成され、陽極体の上に配されている誘電体膜;及び、誘電体膜の上に配されている固体電解質;を含むキャパシタが開示される。
【0006】
本発明の別の実施形態によれば、固体電解キャパシタ素子を形成する方法が開示される。この方法は、順次蒸着プロセスによって多孔質焼結陽極体上に誘電体膜を形成することを含み;かかるプロセスは、陽極体を陽極体の表面に結合する気体状前駆体化合物と接触させること;及びその後に陽極体を気体状酸化剤と接触させて前駆体化合物を酸化させること;及びその後に誘電体膜上に固体電解質を形成すること;を含む反応サイクルに陽極体をかけることを含む。
【0007】
下記において、本発明の他の特徴及び実施態様をより詳細に示す。
当業者に向けた本発明のベストモードを含む本発明の完全かつ可能な開示を、添付の図面を参照して本明細書の残りの部分においてより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に従って形成することができるキャパシタの一実施形態の概略図である。
図2図2は、本発明で使用することができる順次蒸着システムの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同一又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。
当業者であれば、この説明は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定することを意図するものではなく、より広い態様が例示的な構成において具現化されることを理解されたい。
【0010】
一般的に言うと、本発明は、焼結多孔質陽極体、陽極体の上に配されている誘電体膜、及び誘電体の上に配されている固体電解質を含むキャパシタ素子を含む固体電解キャパシタに関する。特に、誘電体膜は、原子層堆積(ALD)、分子層堆積(MLD)などによる順次蒸着(sequential vapor deposition)によって形成される。理論によって限定されることは意図しないが、かかる順次蒸着プロセスを使用することによって、比較的均一な構造及び/又は厚さを有する誘電体膜の形成をもたらし、これは高電圧で経験される電流サージに対して、酸化物欠陥がより脆弱である位置で陽極体を保護するのを助けることができると考えられる。その結果、キャパシタは、種々の異なる条件下で比較的高い「ブレークダウン電圧」(キャパシタが故障する電圧)を示すことができる可能性がある。ブレークダウン電圧は、例えば、約2ボルト以上、幾つかの実施形態においては約5ボルト以上、幾つかの実施形態においては約10ボルト以上、幾つかの実施形態においては約30ボルト以上、幾つかの実施形態においては約60ボルト以上、幾つかの実施形態においては約80ボルト~約300ボルトであり得る。かかる高いブレークダウン電圧は、キャパシタを約35ボルト以上、幾つかの実施形態においては約50ボルト以上、幾つかの実施形態においては約60ボルト~約300ボルトのような高い定格電圧で使用することを可能にすることができる。
【0011】
本キャパシタはまた、その湿潤キャパシタンスの高いパーセントも示し得、これにより、キャパシタが雰囲気湿分の存在下で小さなキャパシタンスの損失及び/又は変動しか有しないようにすることが可能になる。この性能特性は、式:
湿潤対乾燥キャパシタンス=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
によって求められる「湿潤対乾燥キャパシタンスパーセント(wet-to-dry capacitance percentage)」によって定量される。
【0012】
本キャパシタは、約50%以上、幾つかの実施形態においては約60%以上、幾つかの実施形態においては約70%以上、幾つかの実施形態においては約80%~100%の湿潤対乾燥キャパシタンスパーセントを示すことができる。乾燥キャパシタンスは、120Hzの周波数及び約23℃の温度において測定して、約30ナノファラド/平方センチメートル(nF/cm)以上、幾つかの実施形態においては約100nF/cm以上、幾つかの実施形態においては約200~約3,000nF/cm、幾つかの実施形態においては約400~約2,000nF/cmであり得る。キャパシタンスは、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZ計を使用し、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を使用して測定することができる。
【0013】
また、得られるキャパシタのESRは、100kHzの動作周波数及び約23℃の温度で測定して、約200ミリオーム以下、幾つかの実施形態においては約150ミリオーム以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約100ミリオームのように比較的低くすることができる。等価直列抵抗は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZ計、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を使用して測定することができる。本キャパシタはまた、約40%以上、幾つかの実施形態においては約45%以上、幾つかの実施形態においては約50%以上、幾つかの実施形態においては約60%以上(例えば約60%~約85%)の相対湿度のような高い湿度レベルなどの極端な条件下であっても、良好な電気特性を維持することができる。相対湿度は、例えばASTM-E337-02,方法A(2007)にしたがって求めることができる。キャパシタは、例えば、高湿度雰囲気(例えば60%の相対湿度)に曝露された際に上述の範囲内のESR値を示し得る。
【0014】
本キャパシタはまた、約50マイクロアンペア(μA)以下、幾つかの実施形態においては約40μA以下、幾つかの実施形態においては約20μA以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約10μAの漏れ電流(DCL)を示すこともできる。漏れ電流は、漏れ試験計を使用して、23℃±2℃の温度及び定格電圧(例えば16ボルト)において、最小で60秒(例えば、180秒、300秒)後に測定することができる。また、キャパシタの損失係数(dissipation factor)を比較的低いレベルに維持することもできる。損失係数は、一般にキャパシタ内で生じる損失を指し、通常は理想的なキャパシタ性能のパーセントとして表される。例えば、本発明のキャパシタの損失係数は、通常は、120Hzの周波数及び約23℃の温度において求めて約1%~約25%、幾つかの実施形態においては約3%~約15%、幾つかの実施形態においては約5%~約10%である。損失係数は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZ計を使用し、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を使用して測定することができる。
【0015】
ここで、キャパシタの種々の実施形態をより詳細に説明する。
I.キャパシタ素子:
A.陽極体:
多孔質陽極体は、バルブメタル(すなわち酸化することができる金属)又はバルブメタル系化合物、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、それらの合金、それらの酸化物、それらの窒化物などを含む粉末から形成することができる。例えば粉末は、1:1.0±1.0、幾つかの実施形態においては1:1.0±0.3、幾つかの実施形態においては1:1.0±0.1、幾つかの実施形態においては1:1.0±0.05のニオブ対酸素の原子比を有する酸化ニオブ、例えばNbO0.7、NbO1.0、NbO1.1、及びNbOのようなニオブの導電性酸化物を含み得る。他の実施形態においては、粉末はタンタルを含み得る。例えばかかる実施形態においては、粉末は、タンタル塩(例えば、フルオタンタル酸カリウム(KTaF)、フルオタンタル酸ナトリウム(NaTaF)、五塩化タンタル(TaCl)など)を還元剤と反応させる還元プロセスから形成することができる。還元剤は、液体、気体(例えば水素)、又は固体、例えば金属(例えばナトリウム)、金属合金、又は金属塩の形態で提供することができる。例えば一実施形態においては、タンタル塩(例えばTaCl)を約900℃~約2,000℃、幾つかの実施形態においては約1,000℃~約1,800℃、幾つかの実施形態においては約1,100℃~約1,600℃の温度で加熱して蒸気を形成することができ、それを気体還元剤(例えば水素)の存在下で還元することができる。かかる還元反応の更なる詳細は、MaeshimaらのWO-2014/199480に記載されている。還元後、生成物を冷却、粉砕、及び洗浄して粉末を形成することができる。
【0016】
使用する材料に関係なく、粉末の比電荷は、通常は、所望の用途に応じて約2,000~約800,000マイクロファラド・ボルト/グラム(μF・V/g)で変動する。当該技術において公知なように、比電荷は、キャパシタンスに使用した陽極酸化電圧をかけ、次にこの積を陽極酸化電極体の重量で割ることによって求めることができる。例えば、約2,000~約70,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約5,000~約60,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約10,000~約50,000μF・V/gの比電荷を有する低電荷粉末を使用することができる。かかる粉末は、高電圧用途のために特に望ましい。勿論、他の実施形態においては、約70,000~約800,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約80,000~約700,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約100,000~約600,000μF・V/gの比電荷を有するもののような高電荷粉末を使用することもできる。
【0017】
粉末は、一次粒子を含む自由流動性の微細粉末であってよい。粉末の一次粒子は、一般的に、場合によっては粒子を70秒間の超音波振動にかけた後に、例えばBECKMAN COULTER Corporation製のレーザー粒径分布分析装置(例えばLS-230)を使用して求めて、約5~約500ナノメートル、幾つかの実施形態においては約10~約400ナノメートル、幾つかの実施形態においては約20~約250ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。一次粒子は、通常は三次元の粒子形状(例えば球状又は角状)を有する。かかる粒子は、通常は比較的低い「アスペクト比」、すなわち粒子の平均直径又は幅を平均厚さで割った値(D/T)を有する。例えば、粒子のアスペクト比は、約4以下、幾つかの実施形態においては約3以下、幾つかの実施形態においては約1~約2であってよい。一次粒子に加えて、粉末は、一次粒子の凝集(又は凝塊化)によって形成される二次粒子のような他のタイプの粒子を含んでいてもよい。かかる二次粒子は、約1~約500マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有していてよい。
【0018】
粒子の凝集は、粒子を加熱することによるか、及び/又はバインダーを使用することによって行うことができる。例えば、凝集は、約0℃~約40℃、幾つかの態様においては約5℃~約35℃、幾つかの態様においては約15℃~約30℃の温度で行うことができる。また好適なバインダーとしては、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロースポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、及びフルオロオレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えばナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートのコポリマー;並びに脂肪酸及びワックス、例えばステアリン酸及び他の石鹸脂肪酸、植物性ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)などを挙げることができる。
【0019】
得られる粉末は、任意の従来の粉末プレス装置を使用して圧縮してペレットを形成することができる。例えば、ダイと1つ又は複数のパンチを含むシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を使用することができる。或いは、ダイと単一の下方パンチのみを使用するアンビルタイプの圧縮プレス成形機を使用することができる。シングルステーション式圧縮プレス成形機は、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、圧印加工、又はサイジングのような種々の能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレスのような幾つかの基本的タイプで入手可能である。粉末は、ワイヤ、シートなどの形態であってよい陽極リードの周囲に圧縮することができる。リードは、陽極体から長手方向に伸長させることができ、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタンなど、並びにそれらの導電性酸化物及び/又は窒化物のような任意の導電性材料から形成することができる。リードの接続はまた、他の公知の技術を使用して、例えば、リードを陽極体に溶接するか、或いは形成中(例えば圧縮及び/又は焼結の前)に陽極体内部にそれを埋め込むことによって達成することもできる。
【0020】
バインダーは、プレス後にペレットを真空下で一定の温度(例えば約150℃~約500℃)において数分間加熱することによって除去することができる。或いは、バインダーは、ペレットを、Bishopらの米国特許第6,197,252号に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。その後、ペレットを焼結して多孔質の一体部材を形成する。ペレットは、通常は約700℃~約1900℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1800℃、幾つかの実施形態においては約900℃~約1600℃の温度で、約5分~約100分、幾つかの実施形態においては約8分~約15分焼結する。これは1以上の工程で行うことができる。所望の場合には、焼結は、酸素原子の陽極体への移動を制限する雰囲気中で行うことができる。例えば、焼結は、真空中、不活性ガス中、水素中などの還元又は不活性雰囲気中で行うことができる。雰囲気は、約10Torr~約2000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約1000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約930Torrの圧力であってよい。水素と他の気体(例えばアルゴン又は窒素)の混合物を使用することもできる。
【0021】
B.誘電体膜:
上述のように、誘電体膜は、原子層堆積(ALD)、分子層堆積(MLD)などのような順次蒸着によって形成される。かかるプロセスは、通常は、前駆体気体状化合物を反応させて陽極体上に金属酸化物をin situで形成することを含む。前駆体化合物は気体状態で用意することができ、次にin situで反応させて金属酸化物を堆積させる。前駆体化合物はまた、液体又は固体状態で用意することもでき、その場合には、一般に気化させて気体状化合物にし、次にin situで反応させて被覆を堆積させる。しかしながら、陽極体をまず気体状前駆体化合物に曝露して、それが完全に分解することなく反応して露出表面に結合するようにすることができる。その後、気体状共反応物質(例えば酸化剤)を成長表面に曝露して、そこで堆積した前駆体化合物と反応させることができる。反応が完了したら、残留する蒸気副生成物を(例えば不活性ガスを使用して)除去することができ、次に陽極体を更なる順次反応サイクルにかけて、目標の膜厚を達成することができる。かかる方法の1つの利点は、半反応が自己制御性であることである。即ち、前駆体化合物が先の共反応物質への曝露の間に形成された部位と反応すると、前駆体反応によって形成された表面部位は共反応物質に対して反応性であるが、前駆体化合物自体に対しては反応性ではないので、表面反応は停止する。これは、定常状態の成長中において、前駆体化合物は、通常は、表面が相当な時間反応種に曝露された場合であっても、それぞれの半反応サイクルの間に多くても1つの単分子層(例えば分子フラグメント)しか堆積しないことを意味する。中でも、これにより陽極体の全表面にわたってコンフォーマルである薄膜被覆の形成が可能になり、これによりキャパシタの種々の特性を向上させることができる。
【0022】
前駆体化合物は、使用される誘電体膜のタイプに応じて変化し得る。例えば、誘電体膜は、通常はタンタルの酸化物(例えば、タンタルペントキシド、Ta)、ニオブの酸化物(ニオブペントキシド、Nb)のような金属酸化物を含む。タンタルの酸化物を含む誘電体膜を形成する場合、無機タンタル気体状前駆体化合物、例えば、タンタルハロゲン化物(例えば、フッ化タンタル(TaF)、塩化タンタル(TaCl)、ヨウ化タンタル(TaI)など);有機タンタル気体状前駆体化合物、例えば、タンタルアルコキシド(例えば、タンタルメトキシド(Ta(OCH)、タンタルエトキシド(Ta(OCHCH)など)、アルキルアミドタンタル化合物(例えば、ペンタキス(ジメチルアミド)タンタル、トリス(ジエチルアミド)(エチルイミド)タンタル、トリス(ジエチルアミド)(tert-ブチルイミド)タンタル(TBTDET)、tert-ブチルイミド-ビス(ジエチルアミド)シクロペンタジエニル)タンタル(TBDETCp)など;並びにかかる化合物の組み合わせなどのタンタル含有気体状前駆体化合物を使用することができる。これら及び他のタイプのタンタル前駆体化合物の例は、Vaartstraらの米国特許第7,030,042号に記載され得る。
【0023】
また、共反応物質は、誘電体膜の形成に包含される特定のタイプの反応に応じて変化してもよい。しかしながら、通常は、共反応物質は、前駆体化合物(例えば、タンタル含有前駆体化合物)を酸化することができる気体状酸化剤である。この目的のための好適な酸化剤の例としては、例えば、水、酸素、オゾン、ペルオキシド(例えば過酸化水素)、アルコール(例えばイソプロパノール)、ハロゲン化物(例えば、CuCl、FeCl、FeBr、I、POBr、GeCl、SbI、Br、SbF、SbCl、TiCl、POCl、SOCl、CrOCl、SCl、O(CHSbCl、VCl、VOCl、BF、(CH(CHO・BF、(CO(BF)、MoCl、BF・O(C等)などが挙げられる。特定の実施形態においては、反応温度を比較的低いレベルで維持することができるように、比較的低い沸点を有する揮発性酸化剤を使用することが望ましい。例えば、酸化剤は、約310℃以下、幾つかの実施形態においては約300℃以下、幾つかの実施形態においては約80℃~約280℃の沸点を有していてよい。
【0024】
誘電体膜を堆積させるためには、一般に、陽極体を反応容器内で複数のサイクルにかけることが望ましい。例えば、通常の反応サイクルにおいては、気体状前駆体化合物を反応容器に供給し、陽極体の露出表面と反応させることができる。次に、気体状酸化剤を容器に供給し、堆積した前駆体化合物を酸化させることができる。次に、追加のサイクルを繰り返して、通常は約10ナノメートル以上、幾つかの実施形態においては約20ナノメートル~約1,000ナノメートル、幾つかの実施形態においては約30ナノメートル~約800ナノメートル、幾つかの実施形態においては約40ナノメートル~約500ナノメートルである目標厚さを達成することができる。
【0025】
例えば一実施形態においては、反応サイクルは、まず陽極体子を特定の堆積温度に加熱することによって開始される。与えられた反応サイクルのための特定の堆積温度は種々のファクターに基づいて変化し得るが、本発明において使用される技術の1つの特定の利点は、比較的低い温度を使用することができることである。例えば、堆積温度は、約400℃以下、幾つかの実施形態においては約350℃以下、幾つかの実施形態においては約150℃~約300℃であってよい。また、堆積中の反応容器圧力は、通常は約0.2~約5Torr、幾つかの実施形態においては約0.3~約3Torr、幾つかの実施形態においては約0.6~約2Torr(例えば、約1Torr)である。陽極体を堆積温度及び圧力に維持している間に、気体状前駆体化合物を、特定の堆積時間、及び特定の流量で、入口を通して反応容器に供給することができる。気体状前駆体の流量は変化し得るが、通常は約1標準立方センチメートル/分~約1リットル/分である。
【0026】
陽極体の表面と反応させた後、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなど)を反応容器に供給して、ガス及び蒸気副生成物をそれからパージすることができる。次に、入口(前駆体化合物のために使用される入口と同じであっても異なっていてもよい)を通して、気体状酸化剤を反応容器に供給することができる。酸化ガスの流量は変化し得るが、通常は約1標準立方センチメートル/分~約1標準リットル/分の間である。前駆体化合物及び酸化剤の堆積中の反応容器内の温度及び/又は圧力は同じであっても異なっていてもよいが、通常は上記の範囲内である。上記に記載のような反応サイクルの結果として、誘電体膜の1つ又は複数の層を陽極体との界面付近に形成することができ、これは而して本明細書においては1つ又は複数の「界面」層と呼ぶ。上述のように、更なる層はまた、その間に前駆体化合物及び酸化剤を順次供給して陽極体の表面上で反応させる1以上の更なる反応サイクルを使用することによって、1つ又は複数のこれらの界面層上に形成することもできる。
【0027】
本発明の誘電体膜を順次形成するために、種々の公知の蒸着システムを一般に使用することができる。例えば、図2を参照すると、Snehの米国特許第8,012,261号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)においてより詳細に記載されている好適な蒸着システムの一実施形態が示されている。より詳しくは、このシステムは側壁221及び頂部222を含む反応容器200を含み、これらは一緒になって、流量制限部材202(例えばノズルアレイ)を介して堆積チャンバー203に気体状化合物を供給することができるガス分配チャンバー201を画定している。陽極体204は、通常はタングステン、モリブデン、アルミニウム、ニッケルなどのような熱伝導性材料から形成される基材ホルダー205上に配置することができる。ホルダー205を加熱して、陽極体204が反応サイクル中に所望の温度に達することができるようにすることができる。ライン219を介して前駆体化合物及び/又は酸化剤を反応容器200に供給するために、ガス入口214が与えられている。所望の場合には、ブースターチャンバー216を、遮断弁217及びパージ排気遮断弁218と組み合わせて使用することができる。また、熱バリア220を使用して、側壁221と頂部222との間の熱コンダクタンスを抑制することができる。所望の場合には、ドローガスを使用して、所望の場合に反応容器からガスをパージするのを助けることができる。例えば、ガスは、堆積チャンバー203から、ドロー制御チャンバー208中及び真空ポート210に流すことができる。ドローガスライン211、ドロー源遮断弁212、及びドロー源ライン213を通し、ドロー制御チャンバー208を通してドローガスを流して、ドロー制御チャンバー208内のドロー圧を管理することができる。
【0028】
誘電体膜全体又は単に膜の一部は、順次蒸着によって形成することができることを理解すべきである。例えば特定の実施形態においては、膜の一部を最初に陽極酸化によって形成することができる。その後、膜の残りを順次蒸着によって形成して、得られる膜が比較的均質で均一な厚さを有することを確実にすることができる。或いは膜の一部を最初に順次蒸着プロセスによって形成することができ、次に膜の残りを陽極酸化によって形成することができる。使用する場合、陽極酸化は通常は溶液を陽極に適用することによって、例えば陽極体を電解液中に浸漬することによって行われる。水(例えば脱イオン水)のような溶媒が一般的に使用される。イオン伝導度を増大させるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができる化合物を使用することができる。かかる化合物の例としては、例えば、電解質に関して下記に記載するような酸が挙げられる。例えば、酸(例えばリン酸)が、陽極酸化溶液の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.05重量%~約0.8重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.5重量%を構成することができる。所望の場合には、複数の酸のブレンドを使用することもできる。電流を陽極酸化溶液に流して、誘電体層を形成する。化成電圧の値によって誘電体層の厚さが制御される。例えば、電源は、まず、必要な電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚さが陽極の表面全体の上に確実に形成されるようにすることができる。勿論、パルス又はステップ定電位法などの他の公知の方法も使用することができる。陽極酸化を行う電圧は、通常は、約4~約250V、幾つかの実施形態においては約5~約200V、幾つかの実施形態においては約10~約150Vの範囲である。酸化中は、陽極酸化溶液は昇温温度、例えば約30℃以上、幾つかの実施形態においては約40℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約50℃~約100℃に維持することができる。陽極酸化は周囲温度以下で実施することもできる。
【0029】
C.プレコート:
決して必須ではないが、随意的なプレコート層を誘電体膜の上に配して、概して誘電体膜と固形電解質との間に配置されるようにすることができる。プレコートには、例えば、下記の一般式:
【0030】
【化1】
【0031】
(式中、
Mは、ケイ素、チタンなどのような有機金属原子であり;
、R、及びRは、独立して、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)、又はヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど)であり、R、R、及びRの少なくとも1つはヒドロキシアルキルであり;
nは、0~8、幾つかの実施形態においては1~6、幾つかの実施形態においては2~4(例えば3)の整数であり;そして
Xは、グリシジル、グリシジルオキシ、メルカプト、アミノ、ビニルなどのような有機又は無機官能基である)
を有するもののような有機金属化合物を含ませることができる。
【0032】
幾つかの実施形態においては、R、R、及びRはヒドロキシアルキル(例えばOCH)であってよい。しかしながら他の実施形態においては、Rはアルキル(例えばCH)であってよく、R及びRはヒドロキシアルキル(例えばOCH)であってよい。
【0033】
更に、幾つかの実施形態においては、Mはケイ素であってよく、有機金属化合物はアルコキシシランのような有機シラン化合物である。好適なアルコキシシランとしては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、グリシドキシメチルトリブトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、β-グリシドキシエチルトリブトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシエチルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリブトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、γ-プロポキシブチルトリブトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリプロポキシシラン、α-グリシドキシブチルトリブトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)-メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリブトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリブトキシシラン(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリプロポキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリブトキシシランなどを挙げることができる。
【0034】
プレコートをキャパシタ体に施す特定の方法は、所望のように変化させることができる。1つの特定の実施形態においては、化合物を有機溶媒中に溶解し、スクリーン印刷、浸漬、電気泳動被覆、噴霧などによって、溶液として部品に施す。有機溶媒は変化させることができるが、通常は、メタノール、エタノールなどのようなアルコールである。有機金属化合物は、溶液の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約5重量%を構成することができる。また、溶媒は、溶液の約90重量%~約99.9重量%、幾つかの実施形態においては約92重量%~約99.8重量%、幾つかの実施形態においては約95重量%~約99.5重量%を構成することができる。施したら、次に部品を乾燥してそれから溶媒を除去して、有機金属化合物を含むプレコートを形成することができる。
【0035】
D.固体電解質:
固体電解質が誘電体の上に配されて、一般にキャパシタのための陰極として機能する。固体電解質には、二酸化マンガン、導電性ポリマーなどのような当該技術において公知の種々の導電性材料を含ませることができる。二酸化マンガン固体電解質は、例えば硝酸マンガン(Mn(NO)の熱分解によって形成することができる。このような技術は例えば、Sturmerらの米国特許第4,945,452号に記載されている。また、好適な導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを挙げることができる。チオフェンポリマーは、固体電解質における使用に特に適している。例えば特定の実施形態においては、下式(I):
【0036】
【化2】
【0037】
(式中、
は、線状又は分岐のC~C18アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-又はイソ-プロピル、n-、イソ-、sec-、又はtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシルなど);C~C12シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなど);C~C14アリール基(例えば、フェニル、ナフチルなど);C~C18アラルキル基(例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリル、メシチルなど)であり;
qは、0~8、幾つかの実施形態においては0~2の整数、一実施形態においては0である)
の繰り返し単位を有する「外因性」導電性チオフェンポリマーを固体電解質において用いることができる。このようなポリマーを形成するのに好適なモノマーの1つの商業的に好適な例は、3,4-エチレンジオキスチオフェンであり、これは、Clevios(商標)Mの名称でHeraeusから入手可能である。
【0038】
式(I)のポリマーは、一般に、ポリマーに共有結合していない別の対イオンの存在を通常は必要とする点で「外因性」導電性であるとみなされる。対イオンは、導電性ポリマーの電荷を中和するモノマー又はポリマーアニオンであってよい。ポリマーアニオンは、例えばポリマーカルボン酸(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等);ポリマースルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニルスルホン酸等);などのアニオンであってよい。酸はまた、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と、アクリル酸エステル及びスチレンのような他の重合性モノマーとのコポリマーのようなコポリマーであってもよい。更に、好適なモノマーアニオンとしては、例えば、C~C20アルカンスルホン酸(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸);脂肪族C~C20カルボン酸(例えば2-エチルヘキシルカルボン酸);脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸);場合によってC~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸、又はテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、又はヘキサクロロアンチモネート);などのアニオンが挙げられる。特に好適な対アニオンは、ポリマーカルボン酸又はスルホン酸(例えばポリスチレンスルホン酸(PSS))のようなポリマーアニオンである。かかるポリマーアニオンの分子量は、通常は、約1,000~約2,000,000、幾つかの実施形態においては約2,000~約500,000の範囲である。
【0039】
また、ポリマーに共有結合しているアニオンによって少なくとも部分的に補償(compensate)されている主鎖上に配置されている正電荷を有する固有導電性ポリマーを使用することもできる。例えば、好適な固有導電性チオフェンポリマーの1つの例は、次式(II):
【0040】
【化3】
【0041】
(式中、
Rは(CH-O-(CH-L(式中、Lは結合又はHC([CHH)である)であり;
aは、0~10、幾つかの実施形態においては0~6、幾つかの実施形態においては1~4(例えば1)であり;
bは、1~18、幾つかの実施形態においては1~10、幾つかの実施形態においては2~6(例えば、2、3、4、又は5)であり;
cは、0~10、幾つかの実施形態においては0~6、幾つかの実施形態においては1~4(例えば1)であり;
Zは、SO 、C(O)O、BF 、CFSO 、SbF 、N(SOCF 、C 、ClO 等のようなアニオンであり;
Xは、水素、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、又はカリウム)、アンモニウム等のようなカチオンである)
の繰り返し単位を有していてよい。
【0042】
1つの特定の実施形態においては、式(II)におけるZはスルホネートイオンであって、固有導電性ポリマーは次式(III):
【0043】
【化4】
【0044】
(式中、R及びXは上記に規定した通りである)
の繰り返し単位を含む。式(II)又は(III)において、aは好ましくは1であり、bは好ましくは3又は4である。更に、Xは好ましくはナトリウム又はカリウムである。
【0045】
所望の場合には、ポリマーは他のタイプの繰り返し単位を含むコポリマーであってよい。かかる実施形態においては、式(II)の繰り返し単位は、通常はコポリマー中の繰り返し単位の全量の約50モル%以上、幾つかの実施形態においては約75モル%~約99モル%、幾つかの実施形態においては約85モル%~約95モル%を構成する。勿論、ポリマーは、100モル%の式(II)の繰り返し単位を含む点でホモポリマーであってもよい。かかるホモポリマーの具体例としては、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸,塩)、及びポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-プロパンスルホン酸,塩)が挙げられる。
【0046】
導電性ポリマーは、種々の方法でキャパシタ素子中に組み込むことができる。例えば特定の実施形態においては、導電性ポリマーは、誘電体上でin situで重合することができる。他の実施形態においては、導電性ポリマーは、予め重合された粒子の形態で適用することができる。かかる粒子を使用する1つの利益は、これらによって、従来のin-situ重合プロセス中に生成する、イオン移動のために高電界下で絶縁破壊を引き起こす可能性があるイオン種(例えばFe2+又はFe3+)の存在を最小にすることができることである。而して、導電性ポリマーをin-situ重合によるのではなく予め重合された粒子として適用することによって、得られるキャパシタは比較的高い「ブレークダウン電圧」を示すことができる。所望の場合には、固体電解質は、1つ又は複数の層から形成することができる。複数の層を使用する場合、1つ以上の層に、in situ重合によって形成された導電性ポリマーを含ませることが可能である。しかしながら、非常に高いブレークダウン電圧を達成することが所望の場合、固体電解質は、望ましくは主として上記記載の導電性粒子から形成して、それが一般にin situ重合によって形成される導電性ポリマーを含まないようにすることができる。使用される層の数にかかわらず、得られる固形電解質は、通常は合計で約1マイクロメートル(μm)~約200μm、幾つかの実施形態においては約 2μm~約50μm、幾つかの実施形態においては約5μm~約30μmの厚さを有する。
【0047】
使用する場合、導電性ポリマー粒子は、通常は、約1~約80ナノメートル、幾つかの実施形態においては約2~約70ナノメートル、幾つかの実施形態においては約3~約60ナノメートルの平均径(例えば直径)を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折などのような公知の技術を使用して求めることができる。粒子の形状も変化し得る。例えば1つの特定の実施形態においては、粒子は球状の形状である。しかしながら、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状などのような他の形状も本発明によって意図されることを理解すべきである。
【0048】
必ずしも必須ではないが、導電性ポリマー粒子は分散液の形態で施すことができる。分散液中の導電性ポリマーの濃度は、分散液の所望の粘度、及び分散液をキャパシタ素子に施す特定の方法に応じて変化させることができる。しかしながら、通常ポリマーは、分散液の約0.1~約10重量%、幾つかの態様においては約0.4~5重量%、幾つかの態様においては約0.5~約4重量%を構成する。分散液にはまた、得られる固体電解質の全体的な特性を向上させるための1以上の成分を含ませることもできる。例えば、分散液にバインダーを含ませて、ポリマー層の接着性を更に高め、また分散液中における粒子の安定性をも増加させることもできる。バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂又はセルロースのような有機的性質のものであってよい。また、バインダーの接着能力を増大させるために架橋剤を使用することもできる。かかる架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート又は架橋性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート、又はポリオレフィンを挙げることができ、その後の架橋を含めることができる。また、層を陽極に施す能力を促進させるために、分散剤を使用することもできる。好適な分散剤としては、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばアセトニトリル)、脂肪族スルホキシド及びスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド)、脂肪族及び芳香脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びアニソール)、水、及び任意の上記の溶媒の混合物のような溶媒が挙げられる。特に好適な分散剤は水である。
【0049】
上述したものに加えて、更に他の成分を分散液中で使用することもできる。例えば、約10ナノメートル~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約50ナノメートル~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約100ナノメートル~約30マイクロメートルの寸法を有する通常のフィラーを使用することができる。かかるフィラーの例としては、炭酸カルシウム、シリケート、シリカ、硫酸カルシウム又はバリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維又はガラス球、木粉、セルロース粉末、カーボンブラック、導電性ポリマーなどが挙げられる。フィラーは、粉末形態で分散液中に導入することができるが、繊維のような他の形態で存在させることもできる。
【0050】
イオン性又は非イオン性界面活性剤のような表面活性物質を分散液中で使用することもできる。更に、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はオクチルトリエトキシシランのような接着剤を使用することができる。分散液にはまた、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ-ブチロラクトン又はγ-バレロラクトン)、アミド又はラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、又はピロリドン)、スルホン及びスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)又はジメチルスルホキシド(DMSO))、糖又は糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、又はラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2-フランカルボン酸又は3-フランカルボン酸)、アルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコール)のような、導電性を増加させる添加剤を含ませることもできる。
【0051】
分散液は、スピン被覆、含浸、流し込み、滴下適用、注入、噴霧、ドクターブレード塗布、ブラシ塗布、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)、又は浸漬などによる種々の公知の技術を使用して施すことができる。分散液の粘度は、通常は、約0.1~約100,000mPa・秒(100秒-1の剪断速度で測定)、幾つかの実施形態においては約1~約10,000mPa・秒、幾つかの実施形態においては約10~約1,500mPa・秒、幾つかの実施形態においては約100~約1000mPa・秒である。
【0052】
E.外部ポリマー被覆:
また、固体電解質の上に外部ポリマー被覆を配することもできる。外部ポリマー被覆には、上記に記載のような予め重合された導電性ポリマー粒子(例えば、外因性導電性ポリマー粒子の分散液)から形成される1以上の層を含ませることができる。外部被覆は、キャパシタ体のエッジ領域中に更に浸透して、誘電体に対する接着を増加させて、より機械的に堅牢な部品を与えることができ、これにより等価直列抵抗及び漏れ電流を減少させることができる。一般に、陽極体の内部に含浸させるのではなく、エッジの被覆度を向上させることを意図しているので、外部被覆において使用される粒子は、通常は固体電解質において使用されるものよりも大きな寸法を有する。例えば、固体電解質の任意の分散液において使用される粒子の平均寸法に対する、外部ポリマー被覆において使用される粒子の平均寸法の比は、通常は約1.5~約30、幾つかの実施形態においては約2~約20、幾つかの実施形態においては約5~約15である。例えば、外部被覆の分散液において使用される粒子は、約80~約500ナノメートル、幾つかの実施形態においては約90~約250ナノメートル、幾つかの実施形態においては約100~約200ナノメートルの平均寸法を有していてよい。
【0053】
所望の場合には、外部ポリマー被覆において架橋剤を使用して、固体電解質に対する接着度を増大させることができる。通常は、架橋剤は、外部被覆において使用される分散液を施す前に施す。好適な架橋剤は、例えば、Merkerらの米国特許公開第2007/0064376号に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミンなど);多価金属カチオン、例えば、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce、又はZnの塩又は化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などが挙げられる。特に好適な例としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミンなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
架橋剤は、通常は、そのpHが25℃において求めて1~10、幾つかの態様においては2~7、幾つかの態様においては3~6である溶液又は分散液から施される。酸性化合物を使用して所望のpHレベルの達成を助けることができる。架橋剤のための溶媒又は分散剤の例としては、水、又は有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、カルボン酸エステルなどが挙げられる。架橋剤は、スピン被覆、含浸、流延、滴下適用、噴霧適用、蒸着、スパッタリング、昇華、ナイフ被覆、塗装又は印刷、例えばインクジェット、スクリーン、又はパッド印刷のような任意の公知のプロセスによってキャパシタ体に施すことができる。施したら、ポリマー分散液を施す前に架橋剤を乾燥することができる。次に、所望の厚さが達成されるまでこのプロセスを繰り返すことができる。例えば、架橋剤及び分散液の層を含む外部ポリマー被覆全体の全厚さは、約1~約50μm、幾つかの態様においては約2~約40μm、幾つかの態様においては約5~約20μmの範囲であってよい。
【0055】
F.陰極被覆:
所望の場合には、固体電解質及び他の随意的な層(例えば外部ポリマー被覆)の上に配される陰極被覆を使用することもできる。陰極被覆には、ポリマーマトリクス内に分散されている多数の導電性金属粒子を含む金属粒子層を含ませることができる。粒子は、通常は層の約50重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約98重量%、幾つかの実施形態においては約70重量%~約95重量%を構成し、一方でポリマーマトリクスは、通常は層の約1重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約30重量%を構成する。
【0056】
導電性金属粒子は、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウムなどのような種々の異なる金属、並びにこれらの合金から形成することができる。銀がかかる層において使用するのに特に好適な導電性金属である。金属粒子は、しばしば、約0.01~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.1~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約30マイクロメートルの平均径のような比較的小さい寸法を有する。通常は1つのみの金属粒子層を使用するが、所望の場合には複数の層を使用することができることを理解すべきである。かかる1つ又は複数の層の合計厚さは、約1μm~約500μm、幾つかの実施形態においては約5μm~約200μm、幾つかの実施形態においては約10μm~約100μmの範囲内である。
【0057】
ポリマーマトリクスは、通常は本質的に熱可塑性又は熱硬化性であってよいポリマーを含む。しかしながら、通常は、ポリマーは、銀イオンのエレクトロマイグレーションに対するバリヤとして作用することができ、また陰極被覆における水吸着の程度を最小にするように比較的少量の極性基を含むように選択される。この点に関し、本発明者らは、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどのようなビニルアセタールポリマーがこの目的のために特に好適であることを見出した。例えば、ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをアルデヒド(例えばブチルアルデヒド)と反応させることによって形成することができる。この反応は通常は完全ではないので、ポリビニルブチラールは一般的に残留ヒドロキシル含量を有する。しかしながら、この含量を最小にすることによって、ポリマーはより低い程度の強極性基を有することができる(これを有していないと高い程度の湿分吸着が引き起こされ、且つ銀イオンの移動が引き起こされる)。例えば、ポリビニルアセタール中の残留ヒドロキシル含量は、約35モル%以下、幾つかの実施形態においては約30モル%以下、幾つかの実施形態においては約10モル%~約25モル%にすることができる。かかるポリマーの1つの商業的に入手できる例は、Sekisui Chemical Co., Ltd.から「BH-S」(ポリビニルブチラール)の名称で入手できる。
【0058】
陰極被覆を形成するためには、通常は、導電性ペーストをキャパシタに、固体電解質の上に重ねて施す。一般にペースト中で1種類以上の有機溶媒を使用する。一般に、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、及びイソプロピルグリコールエーテル);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);アルコール(例えば、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、及びブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、及びメトキシプロピルアセテート);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン);など、並びにこれらの混合物のような種々の異なる有機溶媒を使用することができる。1種類又は複数の有機溶媒は、通常は、ペーストの約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約65重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約60重量%を構成する。通常は、金属粒子は、ペーストの約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約45重量%、幾つかの実施形態においては約25重量%~約40重量%を構成し、樹脂状マトリクスは、ペーストの約0.1重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約8重量%を構成する。
【0059】
ペーストは比較的低い粘度を有していてよく、これによりそれを容易に取り扱ってキャパシタ素子に施すことが可能になる。粘度は、例えば、Brookfield DV-1粘度計(コーンプレート)などを使用して10rpmの速度及び25℃の温度で運転して測定して、約50~約3,000センチポアズ、幾つかの実施形態においては100~約2,000センチポアズ、幾つかの実施形態においては約200~約1,000センチポアズの範囲であってよい。所望の場合には、ペースト中で増粘剤又は他の粘度調整剤を使用して粘度を増加又は減少させることができる。更に、施すペーストの厚さは比較的薄くてもよく、これでもなお所望の特性を達成することができる。例えば、ペーストの厚さは、約0.01~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約25マイクロメートルであってよい。施したら、金属ペーストを場合によっては乾燥して、有機溶媒のような幾つかの成分を除去することができる。例えば、乾燥は、約20℃~約150℃、幾つかの実施形態においては約50℃~約140℃、幾つかの実施形態においては約80℃~約130℃の温度で行うことができる。
【0060】
G.他の構成要素:
所望の場合には、当該技術において公知の他の層をキャパシタに含ませることもできる。例えば、幾つかの実施形態においては、炭素層(例えばグラファイト)を固体電解質と銀層との間に配置して、これによって銀層と固体電解質との接触を更に制限することを助けることができる。
【0061】
II.終端(termination):
キャパシタ素子の層が形成されたら、得られたキャパシタに終端を与えることができる。例えば、それにキャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続される陽極終端、及びそれにキャパシタの陰極が電気的に接続される陰極終端をキャパシタに含ませることができる。導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)のような任意の導電性材料を用いて終端を形成することができる。特に好適な導電性金属としては、例えば、銅、銅合金(例えば、銅-ジルコニウム、銅-マグネシウム、銅-亜鉛、又は銅-鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えばニッケル-鉄)が挙げられる。終端の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの態様においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.07~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。一つの代表的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手できる銅-鉄合金の金属プレートである。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、最終部品を回路基板へ実装することができるのを確実にするために、ニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきすることができる。一つの特定の態様においては、終端の両方の表面をそれぞれニッケル及び銀フラッシュでめっきし、一方で、実装面もスズはんだ層でめっきする。
【0062】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端と陽極終端を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば、樹脂組成物に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及び化合物(例えばシラン化合物)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許出願公開第2006/0038304号に記載されている。任意の種々の技術を用いて、導電性接着剤を陰極終端に施すことができる。例えば、それらの実用上及びコスト節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。陽極リードも、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤などのような当該技術において公知の任意の技術を用いて陽極終端に電気的に接続することができる。陽極リードを陽極終端に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させ、電解キャパシタ素子が陰極終端へ適切に接着することを確実にすることができる。
【0063】
例えば図1を参照すると、電解キャパシタ30が、上面37、下面39、背面38、及び正面36を有するキャパシタ素子33と電気的に接続されている陽極終端62及び陰極終端72を含むものとして示されている。陰極終端72はキャパシタ素子33のいずれの表面とも電気的に接触させてよいが、示されている実施形態における陰極終端72は、導電性接着剤を介して下面39と電気的に接触している。より具体的には、陰極終端72は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触していて、それと概して平行である第1の部品73を含む。陰極終端72にはまた、第1の部品73に対して実質的に垂直で、キャパシタ素子33の背面38と電気的に接触している第2の部品74を含ませることもできる。また、陽極終端62は、第2の部品64に対して実質的に垂直に配置されている第1の部品63を含む。第1の部品63は、キャパシタ素子33の下面39と電気的に接触していて、概してそれと平行である。第2の部品64は、陽極リード16を支持する領域51を含む。図1には示していないが、領域51は、リード16の表面接触及び機械的安定性を更に増大させるために、「U字形」を有していてよい。
【0064】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端72と陽極終端62を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子33をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端72の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば樹脂組成物と共に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及びカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許公開第2006/0038304号に記載されている。任意の種々の技術を用いて導電性接着剤を陰極終端72に施すことができる。例えば、それらの実施上及びコスト節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。
【0065】
一般に、種々の方法を用いて終端をキャパシタに取り付けることができる。例えば一実施形態においては、まず陽極終端62の第2の部品64を、図1において示されている位置まで上方向に屈曲させる。その後、キャパシタ素子33の下面39が接着剤と接触し、陽極リード16が領域51によって受容されるように、陰極終端72上にキャパシタ素子33を配置する。所望の場合には、プラスチックパッド又はテープのような絶縁材料(図示せず)を、キャパシタ素子33の下面39と、陽極終端62の第1の部品63との間に配置して、陽極終端と陰極終端を電気的に絶縁することができる。
【0066】
次に、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤などのような当該技術において公知の任意の技術を用いて、陽極リード16を領域51に電気的に接続する。例えば、レーザーを用いて陽極リード16を陽極終端62に溶接することができる。レーザーは、一般に誘導放出によって光子を放出することができるレーザー媒体、及びレーザー媒体の元素を励起するエネルギー源を含む共振器を含む。好適なレーザーの1つのタイプは、レーザー媒体が、ネオジム(Nd)がドープされたアルミニウム・イットリウム・ガーネット(YAG)から構成されるものである。励起された粒子はネオジムイオン:Nd3+である。エネルギー源によってレーザー媒体に連続エネルギーを与えて連続レーザービームを放出させるか、或いは放出エネルギーを与えてパルスレーザービームを放出させることができる。陽極リード16を陽極終端62に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させることができる。例えば、ヒートプレスを用いて熱及び圧力を加えて、電解キャパシタ素子33が接着剤によって陰極終端72に適切に接着するのを確実にすることができる。
【0067】
III.ハウジング:
種々の環境中で良好な電気的性能を示す本キャパシタの能力のために、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止する必要はない。それでも、幾つかの実施形態においては、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止するのが望ましい可能性がある。キャパシタ素子は種々の方法でハウジング内に封止することができる。例えば幾つかの実施形態においては、キャパシタ素子をケース内に収容することができ、次にこれに、硬化させて硬化したハウジングを形成することができる熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)のような樹脂材料を充填することができる。かかる樹脂の例としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂はまた特に好適である。光開始剤、粘度調整剤、懸濁助剤、顔料、応力低減剤、非導電性フィラー、安定剤などのような更に他の添加剤を使用することもできる。例えば、非導電性フィラーとしては、無機酸化物粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、シリケート、クレイ(例えばスメクタイトクレイ)など、及び複合材料(例えばアルミナ被覆シリカ粒子)、並びにこれらの混合物を挙げることができる。これとは関係なく、陽極及び陰極終端の少なくとも一部が回路基板上に実装するために露出されるように、樹脂材料でキャパシタ素子を包囲及び封入することができる。このようにして封入した場合には、キャパシタ素子と樹脂材料は一体のキャパシタアセンブリを形成する。例えば、図1に示すように、キャパシタ素子33は、陽極終端62の一部及び陰極終端72の一部が露出されるようにハウジング28内に封入する。
【0068】
勿論、別の実施形態においては、キャパシタ素子を離隔して別個の状態でハウジング内に収容することが望ましい可能性がある。このようにすると、ハウジングの雰囲気を気体状にして、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドンなど、並びにこれらの混合物のような少なくとも1種類の不活性ガスを含ませることができる。通常は、不活性ガスは、ハウジング内の雰囲気の大部分、例えば、雰囲気の約50重量%~100重量%、幾つかの実施形態においては約75重量%~100重量%、幾つかの実施形態においては約90重量%~約99重量%を構成する。所望の場合には、二酸化炭素、酸素、水蒸気等のような比較的少量の非不活性ガスを用いることもできる。しかしながら、かかる場合においては、非不活性ガスは、通常はハウジング内の雰囲気の15重量%以下、幾つかの実施形態においては10重量%以下、幾つかの実施形態においては約5重量%以下、幾つかの実施形態においては約1重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.01重量%~約1重量%を構成する。金属、プラスチック、セラミックなどのような任意の種々の異なる材料を用いて別のハウジングを形成することができる。例えば一実施形態においては、ハウジングは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えばステンレス)、これらの合金(例えば導電性酸化物)、これらの複合材料(例えば導電性酸化物で被覆された金属)などのような金属の1以上の層を含む。他の実施形態においては、ハウジングに、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラス等、並びにこれらの組合せのようなセラミック材料の1以上の層を含ませることができる。ハウジングは、円筒形、D字形、長方形、三角形、角柱形等のような任意の所望の形状を有していてよい。
【実施例
【0069】
本発明は以下の実施例を参照することにより、より良好に理解することができる。
試験手順:
キャパシタンス(湿潤値):
測定試料を、導電率8600μS/cmのリン酸の水溶液に完全に浸漬した。Autolab 85429を使用し、0.5ボルトのDCバイアス及び0.3ボルトのピーク・ツー・ピーク正弦波信号を使用してキャパシタンスを測定した。動作周波数は0.5Hzであり、温度は23℃±2℃であってよい。
【0070】
キャパシタンス(乾燥値):
測定試料を125℃で30分間乾燥させ、湿分を除去した。試料を測定温度に冷却した直後に測定を行った。キャパシタンスは、Kelvinリードを備えたWayne Kerr 6500Bメーターを使用し、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を使用して測定した。動作周波数は120Hzであり、温度は23℃±2℃であってよい。
【0071】
漏れ電流:
漏れ電流は、漏れ試験計を用い、23℃±2℃の温度並びに1及び2Vにおいて最低で300秒間測定することができる。測定回路には抵抗1000オームを使用した。
【0072】
タンタル含有量の評価:
タンタル含有量は、Carl-Zeiss FE-SEM顕微鏡に取り付けられたOxford Instruments EDXモジュールを使用して測定することができる。試料は、埋封されたワイヤに垂直な面内で破断することができる。タンタル含有量は、(a)陽極ペレット表面、(b)破断面上の陽極ペレット表面の真下、(c)破断面上の表面と表面から最も離れた部位との中間点、(d)破断面上の表面から最も離れた部位(中心)の幾つかの部位で測定される。
【0073】
実施例1:
80,000μFV/gの酸化ニオブ(II)粉末を使用して、陽極試料を形成した。それぞれの陽極試料にタンタルワイヤを埋封し、1475℃で焼結し、2.7g/cmの密度にプレスした。得られたペレットは、5.00×3.70×1.90mmの寸法を有していた。ペレットを、85℃の温度において、8.6mS/cmの導電率を有する水/リン酸電解液中で15.0ボルトに陽極酸化して誘電体層を形成した。
【0074】
次に、陽極をトルエンスルホン酸鉄(III)のブタノール溶液(Clevios(登録商標)C、H.C. Starck)中に、次に3,4-エチレンジオキシチオフェン(Clevios(登録商標)M、H.C. Starck)中に浸漬し、重合することによって、導電性ポリマー被膜を形成した。45分間の重合の後、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の薄層が誘電体の表面上に形成された。陽極をメタノール中で洗浄して反応副生成物を除去し、液体電解質中で陽極酸化し、メタノール中で再び洗浄した。このプロセスを4回繰り返した。その後、部品を、固形分2.0%及び粘性20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆後、部品を125℃で15分間乾燥させた。このプロセスを3回繰り返した。その後、部品を、1%の固形分及び粘度60mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆後、部品を125℃で15分間乾燥させた。このプロセスを10回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥させた。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥させた。このようにして470μF/2.5Vキャパシタの複数の部品(180)を作製した。
【0075】
実施例2:
陽極酸化の前に酸化ニオブ(II)ペレット上にTa層を生成させた他は実施例1に記載した方法でキャパシタを形成した。Ta層は、上記のような金属-有機前駆体及び水からの原子層堆積によって調製した。このようにして470μF/2.5Vキャパシタの複数の部品(20)を作製した。形成したら、タンタル含有量を測定した。結果を下表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
種々の電気特性(すなわち、湿潤キャパシタンス、乾燥キャパシタンス、及び漏れ電流)も試験した。結果を下表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、当業者によって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的又は部分的の両方で交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は一例にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
図1
図2
【国際調査報告】