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特表2022-509834低い1フィラメント当たりのデニールのヤーンを有する医療用テキスタイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】低い1フィラメント当たりのデニールのヤーンを有する医療用テキスタイル
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/33 20210101AFI20220117BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220117BHJP
   D03D 3/02 20060101ALI20220117BHJP
   A61F 2/06 20130101ALI20220117BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
D03D15/00 F
D03D1/00 Z
D03D3/02
A61F2/06
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530138
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2019063655
(87)【国際公開番号】W WO2020113039
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/773,669
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】タスカン,メブリュト
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C097
4L048
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097AA27
4C097DD12
4C097EE08
4C097FF12
4C097MM04
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA35
4L048AB07
4L048AB11
4L048BA01
4L048BB04
4L048CA08
4L048CA11
4L048CA15
4L048DA22
4L048EB00
(57)【要約】
低dpfヤーンを含む加工テキスタイル、および低dpfヤーンを含む医学的適用。低dpfヤーンの1フィラメント当たりのデニールは、0.50未満であり、加工テキスタイルの水透過性は、500mL/分/cm未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低dpfヤーンを含む加工テキスタイルであって、低dpfヤーンの1フィラメント当たりのデニールが、0.50未満であり、加工テキスタイルの水透過性が、500mL/分/cm未満である、加工テキスタイル。
【請求項2】
低dpfヤーンが、ポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンである、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項3】
低dpfヤーンのデニールが、15~25である、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項4】
加工テキスタイルの水透過性が、300mL/分/cm未満である、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項5】
加工テキスタイルが、100~450の範囲の1インチ当たりのエンド数および75~200の範囲の1インチ当たりのピック数を含む、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項6】
加工テキスタイルが、325~400の範囲の1インチ当たりのエンド数および100~175の範囲の1インチ当たりのピック数を有する、請求項5に記載の加工テキスタイル。
【請求項7】
加工テキスタイルが、約150の1インチ当たりのエンド数および約100の1インチ当たりのピック数を有する、請求項5に記載の加工テキスタイル。
【請求項8】
加工テキスタイルが、織物のテキスタイルであり、加工テキスタイルの緯糸が、低dpfヤーンを含む、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項9】
加工テキスタイルが、織物のテキスタイルであり、加工テキスタイルの経糸および緯糸が、低dpfヤーンを含む、請求項8に記載の加工テキスタイル。
【請求項10】
加工テキスタイルが、20デニール68フィラメントPETヤーンを含む、請求項8に記載の加工テキスタイル。
【請求項11】
加工テキスタイルが、平織、綾織、2/2綾織、緯畝織、または繻子織である、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項12】
25マイクロメートル~100マイクロメートルの厚みを有する、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項13】
コーティングされていない状態で500mL/分/cm未満の水透過性を有する、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項14】
平布または織物チューブである、請求項1に記載の加工テキスタイル。
【請求項15】
加工テキスタイルを形成する方法であって、
低dpfヤーンを用意するステップであって、低dpfヤーンの1フィラメント当たりのデニールが0.50未満であるステップと
低dpfヤーンから加工テキスタイルを織って、水透過性500mL/分/cm未満を有する加工テキスタイルを形成するステップ
を含む方法。
【請求項16】
緯糸ヤーンとして低dpfヤーンを使用して織るステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
低dpfヤーンが、40超のフィラメントを有する20デニールヤーンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
織った後に加工テキスタイルをカレンダー処理するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の加工テキスタイルを含む、埋め込み可能な医療用デバイス。
【請求項20】
埋め込み可能な医療用デバイスが、血管グラフトまたは心臓弁補綴デバイスである、請求項19に記載の埋め込み可能な医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2018年11月30日に出願された米国特許仮出願第62/773,669号の利益および優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、低い1フィラメント当たりのデニール(denier per filament)のヤーンから形成された織布に対するものである。特に、本発明は、低い水透過性、改善された組織浸潤、表面の滑らかさおよび粘着性、ならびに減少した厚みを有する、埋め込み可能な医療用テキスタイルに対するものである。
【背景技術】
【0003】
[0003]人工心臓弁および血管内グラフトなどの医療用デバイスにおいて、血液を輸送するための導管および血液とネーティブな組織との間の障壁として働く、水不透過性の布が必要とされている。
【0004】
[0004]医療用テキスタイルチューブは、介入治療が必要とされる場合、血流用の導管を作るために、血管内動脈瘤修復(EVAR)術式において使用されてきた。ステントグラフトと呼ばれることもある織物構造体は、血管内部位を通る血流のための導管としてもまた働きながら、動脈瘤への血流を遮断する障壁を作る。例えば、2002年5月2日に公開されたGreenhalghによる「Graft having region for biological seal formation」と題された米国特許出願公開第2002/052649号およびGreenhalghによる「Woven stent/graft structure」、米国特許第6,159,239号を参照されたい。ほとんどの医療処置は、テキスタイルチューブの周りに縫い付けられたワイヤー/金属の足場を使用し、足場は、修復が必要な脆弱な領域を支持するために働く。
【0005】
[0005]低侵襲手術において、埋め込まれたデバイスは、カテーテルに基づく送達系を通じて送達される。布は、低い水透過性および良好な縫合強度もまた有しながら、カテーテル中に圧縮されるのに充分薄く、柔軟である必要がある。例えば、血管内動脈瘤修復(EVAR)術式において、テキスタイルは、送達デバイス内のスペースの最大30%まで占める。
【発明の概要】
【0006】
[0006]実施形態において、改変されたテキスタイルは、低dpfヤーンを含む。低dpfヤーンの1フィラメント当たりのデニールは、0.50未満であり、改変されたテキスタイルの水透過性は、500mL/分/cm未満である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[0007]実施形態に従って、低dpfフィラメントヤーンから形成された、加工テキスタイルの電子顕微鏡像である。
図2】[0008]実施形態に従って、低dpfフィラメントヤーンから形成された、加工テキスタイルの電子顕微鏡像である。
図3】[0009]比較される従来の加工テキスタイルの電子顕微鏡像である。
図4】[0010]実施形態に従って、低dpfフィラメントヤーンから形成された、加工テキスタイルの電子顕微鏡像である。
図5】[0011]実施形態に従って、低dpfフィラメントヤーンから形成された、加工テキスタイルの電子顕微鏡像である。
図6】[0012]比較される従来の加工テキスタイルの電子顕微鏡像である。
図7】[0013]低dpfフィラメントヤーンから形成された、加工テキスタイル、および比較される従来の加工テキスタイルの平均孔径による水透過性のグラフである。
図8】[0014]実施形態による二股グラフトの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0015]可能な限り、同じ部分を示すために、全図面を通じて同じ参照番号が、使用されることになる。
[0016]当技術分野のこれらの弱点に対処するために、細胞拡大の間、浸潤を増加させる広い表面積の基材として埋め込み可能な医療用デバイスにおいて使用するための、織物、組物、または編物の加工テキスタイルが、提供される。輪郭誘導は、組織が拡大するときに、増殖する組織細胞が表面の輪郭特徴に従う自然な傾向である。ある医学的適用、例えば、心臓手術(例えば、ステント留置、心臓弁置換または修復)において、組織は、拡大して、治癒過程の一部として、テキスタイルにコロニー形成する。テキスタイル構造物、例えば、ステントへのコロニー形成は、組織へのテキスタイルの結合メカニズムの形態である。本発明の加工テキスタイルは、加工テキスタイルの経糸または緯糸の少なくとも1つに低い1フィラメント当たりのデニールのマルチフィラメントヤーンを取り入れ、結果として、表面積を増加させ、小さい孔径をもたらす。テキスタイルから形成された埋め込み可能な医療用デバイスは、埋め込まれたテキスタイルの改善された組織コロニー形成を示す。一実施形態において、織物のテキスタイルは、20デニール68フィラメントの低dpfポリエステルを使用して形成される。同様の1インチ当たりのピック数、1インチ当たりのエンド数、および織成パターンの20デニール18フィラメントPET構造体と比較して、20/68低dpf PETは、小さい孔およびより低い水透過性を有することによって、比較対象より優れている。
【0009】
[0017]加工テキスタイルは、現在の市販製品と比較して、改善した医学的転帰をもたらす構造特性またはコーティング特性を包含する。これらの特性は、水透過性、滑らかさ、コーティングの硬さ、多孔性、およびテキスタイルコーティングの界面化学などの生理化学的特性の変更を含むことができる。さらに、代表的な実施形態は、適切な縫合強度、例えば、8N超をなお実現することができる。
【0010】
[0018]流体密封のテキスタイルを提供するために、代表的な実施形態による布は、およそ75~200の1インチ当たりのピック数(「PPI」)で、およそ100~450の1インチ当たりのエンド数(「EPI」)、典型的には、少なくとも150の1インチ当たりのエンド数を含む。いくつかの実施形態において、布は、100~175PPIで、およそ325~400EPIを含んでよい。その他の実施形態において、布は、100PPIで、約150EPIを含む。さらなるその他の実施形態において、テキスタイルは、100~175PPIで、およそ165~300EPIを含んでよい。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、平らなテキスタイルである。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、2つの面を含む、平らな織物のチューブとして製造される。
【0011】
[0019]テキスタイルは、多様な織物、編物、組物構造体、例えば、限定されるわけではないが、二本針棒編み、トリコット経編み、平織、綾織、畝織(例えば、経畝または緯畝)、繻子織、綿繻子織(sateen)、模紗織、および/または杉綾織から形成されてよい。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、平織、綾織、緯畝、または繻子織から形成される。一実施形態において、テキスタイルは、平織から形成される。一実施形態において、テキスタイルは、2/2綾織から形成される。
【0012】
[0020]実施形態において、織物、組物、編物構造体は、様々な繊維断面を有する、フィラメント、繊維、またはヤーンを含んでよい。いくつかの実施形態において、断面は、円形、楕円形、複葉形の(例えば、二葉形、三葉形、四葉形)、三角形、ライマメ形、小葉形、扁平形、および/またはドッグボーン形の断面を含んでよい。いくつかの実施形態において、繊維および/またはヤーンは、シングルもしくはマルチフィラメント繊維またはヤーンであってよい。いくつかの実施形態において、構造体は、海島型の断面を有する繊維を含んでよい。加工テキスタイルは、単一または複数の層状のテキスタイルであってよい。
【0013】
[0021]いくつかの実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルは、少なくとも5デニール、少なくとも7デニール、少なくとも10デニール、少なくとも12デニール、少なくとも15デニール、少なくとも18デニール、少なくとも20デニール、50デニール未満、45デニール未満、35デニール未満、30デニール未満、25デニール未満、23デニール未満、21デニール未満、ならびにそれらの範囲および部分範囲のヤーンデニールを有する、マルチフィラメントヤーンを含む。いくつかの実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルは、少なくとも5デニール、少なくとも7デニール、少なくとも10デニール、少なくとも12デニール、少なくとも15デニール、少なくとも18デニール、少なくとも20デニール、30デニール未満、25デニール未満、23デニール未満、21デニール未満、ならびにそれらの範囲および部分範囲のヤーンデニールを有するマルチフィラメントヤーンから成る。
【0014】
[0022]実施形態において、組物、編物、織物のテキスタイルは、様々な数の繊維およびヤーンデニール(den)を有する、複数の繊維またはヤーンを含んでよい。いくつかの実施形態において、ヤーンデニールは、少なくとも10den、少なくとも12den、少なくとも15den、少なくとも17den、少なくとも20den、200den未満、150den未満、120den未満、100den未満、80den未満、60den未満、40den未満、35den未満、33den未満、30den未満、28den未満、25den未満、23den未満、21den未満、ならびにそれらの範囲および部分範囲であってよい。
【0015】
[0023]いくつかの実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルのヤーンは、0.50dpf未満、0.40dpf未満、0.35dpf未満、0.33dpf未満、0.30dpf未満、0.28dpf未満、0.26dpf未満、0.24dpf未満、0.10dpf超、0.12dpf超、0.15dpf超、0.18dpf超、0.20dpf超、0.22dpf超、ならびにそれらの範囲および部分範囲の平均の1フィラメント当たりのデニール(dpf)を有するマルチフィラメントヤーンを含む。いくつかの実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルのヤーンは、0.50dpf未満、0.40dpf未満、0.35dpf未満、0.33dpf未満、0.30dpf未満、0.28dpf未満、0.26dpf未満、0.24dpf未満、0.10dpf超、0.12dpf超、0.15pf超、0.18dpf超、0.20dpf超、0.22dpf超、ならびにそれらの範囲および部分範囲の平均の1フィラメント当たりのデニール(dpf)を有するフィラメントから成る。一実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルは、0.30dpf未満のフィラメントから成るヤーンを含む。一実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルは、0.30dpf未満のフィラメントからさらに成るヤーンから成る。
【0016】
[0024]いくつかの実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルは、フィラメントが8.0マイクロメートル未満、6.0マイクロメートル未満、5.5マイクロメートル未満、5.0マイクロメートル未満、4.8マイクロメートル未満、4.5マイクロメートル未満、少なくとも約2.0マイクロメートル、少なくとも約3.0マイクロメートル、少なくとも約3.5マイクロメートル、少なくとも約4.0マイクロメートル、ならびにそれらの範囲および部分範囲の平均断面を有する、マルチフィラメントヤーンを含む。いくつかの実施形態において、組物、編物、または織物のテキスタイルは、フィラメントが6.0マイクロメートル未満、5.5マイクロメートル未満、5.0マイクロメートル未満、4.8マイクロメートル未満、4.5マイクロメートル未満、少なくとも約2.0マイクロメートル、少なくとも約3.0マイクロメートル、少なくとも約3.5マイクロメートル、少なくとも約4.0マイクロメートル、ならびにそれらの範囲および部分範囲の平均断面を有する、1本または複数のマルチフィラメントヤーンから成る。
【0017】
[0025]組物の、編物、または織物のテキスタイルは、均一または不均一な厚みを示してよい。いくつかの実施形態において、テキスタイルの厚みは、テキスタイルの面全体にわたり実質的に均一である。いくつかの実施形態において、テキスタイルの厚みは、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも40マイクロメートル、少なくとも42マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも60マイクロメートル、約61マイクロメートル、100マイクロメートル未満、90マイクロメートル未満、80マイクロメートル未満、70マイクロメートル未満、65マイクロメートル未満、62マイクロメートル未満、ならびにそれらの範囲および部分範囲であってよい。
【0018】
[0026]組物、織物、または編物のテキスタイルは、いずれかの吸収性の材料、非吸収性の材料、または織るのに適切な材料の組合せから形成されてよい。適切な非吸収性の材料としては、限定されるわけではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、およびそれらの組合せが挙げられる。適切な吸収性の材料としては、限定されるわけではないが、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リジン-ポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、コラーゲン、フィブリン、アルギネート、絹、およびそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、足場は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでよい。一実施形態において、テキスタイルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されてよい。一実施形態において、テキスタイルは、丸い形状を有するPET繊維を含む。
【0019】
[0027]いくつかの実施形態において、コーティングが、テキスタイルの繊維またはヤーンに施されてよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、テキスタイルの形成の前に、繊維またはヤーンに塗布されてよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、テキスタイル構造物の形成の後に塗布されてよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、吸収性の材料から形成されてよい。吸収性の材料は、組織の内因性再生を強化し得る。適切な吸収性の材料としては、限定されるわけではないが、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)、リジン-ポリ(グリセロールセバケート)(KPGS)、ポリ(グリセロールセバケートウレタン)(PGSU)、アミノ酸が組み込まれたPGS、およびそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、コーティングは、噴霧もしくは浸漬コーティング、または積層によって塗布されてよい。コーティングは、テキスタイルへの細胞の付着を改善し得る。
【0020】
[0028]ある医学的適用、例えば、心臓弁置換または修復において、水不透過性の障壁を有することが、望ましい可能性がある。いくつかの実施形態において、いずれかのコーティングの前のテキスタイルの水透過性は、500mL/分/cm未満、400mL/分/cm未満、375mL/分/cm未満、350mL/分/cm未満、325mL/分/cm未満、300mL/分/cm未満、275mL/分/cm未満、250mL/分/cm未満、225mL/分/cm未満、200mL/分/cm未満、150mL/分/cm未満、100mL/分/cm未満、75mL/分/cm未満、50mL/分/cm未満、30mL/分/cm未満、20mL/分/cm未満、10mL/分/cm未満、5mL/分/cm未満、3mL/分/cm未満、および/または1mL/分/cm未満である。
【0021】
[0029]生体吸収性または非生体吸収性の材料でテキスタイルをコーティングすることによって、水透過性は、さらに削減できる。適切な非生体吸収性の材料は、ポリウレタン(PU)を含む。適切な生体吸収性のポリマーは、上記の生体吸収性の材料を含む。いくつかの実施形態において、生体吸収性の材料はまた、組織の内因性再生を促進し得る。代替方法として、いくつかの実施形態において、テキスタイルは、カレンダー処理されて、テキスタイルの密度を高め、水透過性を削減し得る。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、カレンダー処理およびコーティングの両方を施されてよい。
【0022】
[0030]いくつかの実施形態において、カレンダー処理などの機械的変化と組み合わせて、経糸および緯糸方向の両方に低dpfヤーンを使用することによって、コーティングを使用せず水透過性6mL/分/cm未満を有するテキスタイルをもたらすことができる。
【0023】
[0031]さらなる特徴、例えば、織り構造またはヤーンの形状の選択は、コロニー形成を最適化するために、患者の状態、年齢および関与する埋め込まれたものの種類に基づいてよい。例えば、患者は再生増殖の様々な段階にあり得、それによりいくつかのトポグラフィーは限定されたコロニー形成能力に影響を受けやすい可能性がある。トポグラフィーは、細胞のコロニー形成を最適化して医学的転帰を改善するのに使用されてよい。
【0024】
[0032]いくつかの実施形態において、テキスタイルは、平らな織物の管状テキスタイルとして形成されたシームレス導管であってよい。織りは、多様な織り、例えば、これらに限定されるわけではないが、平織、斜子織および綾織のいずれかであってよい。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、平らにした管状構造物を形成する平二重織から形成される。織成パターンの特色は、テキスタイルのための適用に応じて変化してよい。しかし、一実施形態において、テキスタイルは、壁が流体に対して実質的に不透過性であるように形成され、その結果、グラフトは、ルーメンの長さに沿って実質的に流体密封であり、入口および出口を含む、ルーメンを形成する。例えば、血管適用に使用される場合、グラフトがグラフトの側壁を通じた血液漏出を妨げながら、管状テキスタイルの軸に沿って血流を可能にする導管を形成するように、グラフトの壁は、血液に対して実質的に不透過性である。
【0025】
[0033]テキスタイルを製作する方法が、記載される。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、平織二重織テキスタイルを製作するように構成された織機で織られる。織機は、多様な種類、例えば、これらに限定されるわけではないが、ジャカード織機、円形織機またはドビー織機のいずれかであってよい。一実施形態において、テキスタイルは、ドビー織機で製作される。
【0026】
[0034]代表的な実施形態において、グラフト全体は、炎症を最小化し、組織再生を促進するために、生体吸収性の材料でコーティングされる。
[0035]布は、洗浄され、次にヒートセットされてよい。一実施形態において、布は、寸法安定性のために約205℃でヒートセットされる。一実施形態において、布は、約149℃(300°F)の温度でカレンダー処理される。
【0027】
[0036]図1は、低い1フィラメント当たりのデニール(dpf)ヤーンから形成された、加工テキスタイル100の実施例を示す。図1の実施形態において、テキスタイルは、布の経糸110および緯糸120の両方にポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを有する、平織である。PETヤーンは、68フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン130(20/68)である。PETフィラメントは、実質的に円形断面および平均直径約5マイクロメートルを有する。
【0028】
[0037]図2は、低い1フィラメント当たりのデニール(dpf)ヤーンから形成された、加工テキスタイル200の実施例を示す。図2の実施形態において、テキスタイルは、マイクロ孔210を示す。テキスタイルは、布の経糸220および緯糸230の両方にポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを有する緯畝である。PETヤーンは、68フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン240(20/68)である。PETフィラメントは、実質的に円形断面および平均直径約5マイクロメートルを有する。測定された孔径x(横幅方向)は、6~10マイクロメートルの範囲である。測定された孔径y(縦方向)は、24~29マイクロメートルの範囲である。
【0029】
[0038]図3は、PETヤーンから形成された、加工テキスタイル300の比較例を示す。図3の比較例において、テキスタイルは、布の経糸310および緯糸320の両方にポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを有する平織である。PETヤーンは、18フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン330(20/18)である。PETフィラメントは、実質的に円形断面および平均直径10マイクロメートル超を有する。
【0030】
[0039]図4は、低い1フィラメント当たりのデニール(dpf)緯糸ヤーンから形成された、加工テキスタイル400の実施例を示す。図4の実施形態において、テキスタイルは、マイクロ孔410を示す。テキスタイルは、布の経糸420および緯糸430の両方にポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを有する緯畝織である。PET緯糸ヤーンは、68フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン440(20/68)である。PET緯糸フィラメントは、実質的に円形断面および平均直径約5マイクロメートルを有する。PET経糸ヤーンは、18フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン440(20/18)である。PET経糸フィラメントは、実質的に円形断面および平均直径10マイクロメートル超を有する。測定された孔径x(横幅方向)は、10~40マイクロメートルの範囲である。測定された孔径y(縦方向)は、10~50マイクロメートルの範囲である。
【0031】
[0040]図5は、低い1フィラメント当たりのデニール(dpf)緯糸ヤーンから形成された、加工テキスタイル500の実施例を示す。図5の実施形態において、テキスタイルは、マイクロ孔510示す。テキスタイルは、布の経糸520および緯糸530の両方にポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを有する綾織である。PET緯糸ヤーンは、68フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン540(20/68)である。PET緯糸フィラメントは、実質的に円形断面および平均直径約5マイクロメートルを有する。PET経糸ヤーンは、18フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン540(20/18)である。PET経糸フィラメントは、実質的に円形断面および平均直径10マイクロメートル超を有する。
【0032】
[0041]図6は、(PET)ヤーンから形成された、加工テキスタイル600の比較例を示す。図6の比較例において、テキスタイルは、布の経糸610および緯糸620の両方にポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンを有する綾織である。PETヤーンは、18フィラメントを有する、およそ20デニール(den)ヤーン630(20/18)である。PETフィラメントは、実質的に円形断面および平均直径10マイクロメートル超を有する。
【実施例
【0033】
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
[0042]下の表3の実施例において、2x2綾織が、経糸に(20/18)PETヤーンおよび緯糸に(20/68)PETヤーンを使用して、調製された。
【0037】
【表3】
【0038】
[0043]下の表4の(比較)例において、2x2綾織が、経糸に(20/18)PETヤーンおよび緯糸に(20/18)PETヤーンを使用して、調製された。
【0039】
【表4】
【0040】
[0044]表面積は、低dpfヤーンで作られた布の性能において重要な役割を有する。典型的なフィラメント直径10マイクロメートルを有する18フィラメントの20denヤーンを、5マイクロメートルフィラメント直径の68フィラメントの20denヤーンと比較した場合、側面の表面積が1.9倍増加する。標準の27フィラメントの40デニールを、低い1フィラメント当たりのデニールのヤーン、例えば、136フィラメントの40den(2/20/68)と比較した場合、側面の表面積が2.5倍増加する。
【0041】
[0045]織布中の緯糸ヤーン要素を低い1フィラメント当たりのデニールのヤーンで置き換えることによって、水透過性における大きな減少が、観察される。例えば、1束あたり68フィラメントの20denヤーンが、緯糸領域において20den18フィラメントヤーンに置き換わり、同じ布密度で水透過性を43%削減した。
【0042】
[0046]別名マイクロデニールヤーンとして知られている低dpfヤーンは、医療用の埋め込み可能なテキスタイルのため水透過性を削減する重要な特徴になり得る、多孔性を削減する能力を有する。フィラメントが非常に小さいので、低dpfヤーンは、より大きい直径のフィラメントを有するヤーンよりはるかに平らにでき、より滑らかでより薄い布を作るというさらなる恩恵もまたもたらすことになる。医療用デバイス適用において、デバイスが配置される場合、より滑らかで、より薄い布によって、デバイスは、擦過を削減して送達系から体内に容易に滑り出られる。さらに、多孔性が減少しなかった場合でさえも、代表的な実施形態はなお、同様の孔径を有する従来のテキスタイルより削減された水透過性を表したことが、驚いたことに分かった。代表的な実施形態は、フィラメントが低dpfヤーンで広がる方法に起因して、同じ多孔性でさえもより低い密度を可能にする。すべて20/18ヤーンから作られた比較対象の布と同じ密度として使用される場合、低dpfヤーンの使用は、より低い多孔性をもたらす。従って、同様の多孔性においてでさえも、代表的な実施形態は、より低い水透過性を実現し、これは、ヤーン同士の摩擦の産物であると考えられる。
【0043】
[0047]図7は、加工テキスタイルの水透過性700に関する孔径および表面積の効果をグラフで示す。図7において、低dpfヤーンから形成された加工テキスタイルの、平均孔径の関数としての水透過性は、要素710として示される。同様の面密度を有し従来のヤーンから形成された比較される従来の加工テキスタイルの、平均孔径の関数としての水透過性は、要素720として示される。
【0044】
[0048]図7の実施例において、水透過性試験の間、出発孔径は、試験の静水圧下有意に増加すると、考えられる。低dpf繊維のフィラメントの数が増加することによって、繊維同士の相互作用が上昇し、圧力下、布の孔が開くのを削減するか、または防ぎ、従って、低い水透過性の結果をもたらすと、さらに考えられる。試験された布のいく枚かにおいて、低dpf布は、従来の加工テキスタイルより低い縦糸および横糸密度を有する。
【0045】
[0049]実証した通り、低dpfヤーンから形成された、加工テキスタイルは、大幅に削減された水透過性を示す。織り構造は、テキスタイルの表面がいかに滑らかであるかということに重要な役割を果たす。一般に、ヤーンが長く浮けば浮くほど、布はより滑らかになり、布が有する織り模様が多ければ多いほど、より粗い表面になり得る。例えば、繻子構造物は、平織構造物より典型的には滑らかである。低dpfヤーンを使用することにより、滑らかさは、表面積を増加させることによって、さらにもっと高められる。
【0046】
[0050]低dpfヤーンは、より小さいサイズの細胞が湿潤し増殖できる、より小さいスペースを作ることによって、布にさらに恩恵をもたらす。低dpfヤーンのくぼみ内のこれらの細胞のコロニー形成は、埋め込み可能なテキスタイルへのネーティブな組織のよりよい連結を潜在的に可能にすることになる。
【0047】
[0051]加工テキスタイルは、ブロードおよびルーメン埋め込み物の両方のための多様な医学的およびその他の適用において使用されてよく、血管グラフトおよび心臓弁補綴デバイスを含む、グラフト、弁およびその他の物品を形成するのに使用することに特に有利な可能性がある。図8は、加工テキスタイルを含む、二股ルーメン800を図示する。ルーメンおよびその他の埋め込み可能な物品は、例えば、織物のチューブとして、または支持物もしくは骨組みに付加されてよい平布として形成されてよい。
【0048】
[0052]図8に図示されている通り、二股ルーメン800は、本体部分820およびそこから延びる二股部分840を含む。本体部分820は、二股部分840で2つの別々のルーメン860、880に移行する、1つまたは複数の加工テキスタイルを含む、単一のルーメンを形成する。当業者に理解されるであろう通り、本体部分820および二股部分840の両方を含むように示されているが、ルーメン800は、いずれかの個々の区分または部分を含んでよく、適用に応じて、さらに分枝されてよい。本体部分820および二股部分840によって形成された別々のルーメン860、880は、それぞれ、いずれかの適切なサイズ、形、および/または方向を含む。
【0049】
[0053]代表的な実施形態は、20デニール68フィラメントの低DPFポリエステルを使用して形成された、織物のテキスタイルを含む。同様の1インチ当たりのピック数、1インチ当たりのエンド数、および織成パターンの20デニール18フィラメントPET構造体と比較して、20/68低DPF PETは、小さい孔およびより低い水浸透性を有することによって、先行物を凌駕した。さらに、代表的な実施形態は、20デニールヤーンで作られたテキスタイルのための、8N超、例えば10N以上での縫合保持試験で、高い縫合引張強度を示す。驚いたことに、縫合保持は、従来の布より少ないEPIを有してでさえも代表的な実施形態について上昇する。
【0050】
[0054]低DPFヤーンは、医療グレードの適用のために市販されておらず、フィラメントを取り囲む開口部のサイズに起因して、低dpfヤーンは、内皮細胞の成長にとって完全に適切である。
【0051】
[0055]代表的な実施形態は、例えば、いずれかの血管グラフト、心臓弁補綴デバイスならびに粘着性および水不透過性のためのテキスタイルを必要とする中空のルーメン器官において使用されてよい。
【0052】
[0056]編物構造体における低DPFヤーンは、マイクロデニールフィラメントの周りの空きスペースに細胞の成長を増加させるために使用できる。
[0057]この手法は、密度または1インチ当たりのピック数を減少させながら、表面被覆率を増加させるために組物においてもまた利用できる。
【0053】
[0058]代表的な実施形態のためのその他の適用としてはまた、低DPFヤーンの滑らかさに起因して、より低い縫合引張りを有する柔軟な縫合糸、水透過性および柔軟性が手術の成功にとって必須である心血管パッチ、表面積の増加が必要であるが大容量でない創傷ケア適用、ならびに送達系のための薄く、滑らかなテキスタイルを必要とする塞栓保護デバイスが挙げられる。
【0054】
[0059]本発明は、1つまたは複数の実施形態に関連して記載されている一方で、多様な変化がなされてよく、均等物が本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の要素に代替されてよいことが、当業者によって理解されよう。さらに、多くの変更が、本発明の必須の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況または材料を適応させるために、なされてよい。従って、本発明は、本発明を実行するために検討された最良の方法として開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲内にある全ての実施形態を含むことになることが、意図される。さらに、詳細な説明の中で特定された全ての数値は、正確な数値および近似値が、両方とも明示的に特定されているかの如く、解釈されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】