(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】高い硬度およびヤング率を有するイオン交換可能な不透明なガーナイト-スピネルガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/02 20060101AFI20220117BHJP
C03C 3/062 20060101ALI20220117BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20220117BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20220117BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20220117BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20220117BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C03C10/02
C03C3/062
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/097
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530153
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2019062519
(87)【国際公開番号】W WO2020112466
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ビール,ジョージ ホールジー
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,アレクサンドラ ライ チン カオ アンドリューズ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,シャーリーン マリー
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
4G062BB06
4G062CC10
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB04
4G062DB05
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4G062DE04
4G062DF01
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4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ04
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK04
4G062KK05
4G062KK07
4G062MM12
4G062NN01
4G062NN08
4G062NN33
(57)【要約】
不透明なガーナイト-スピネルガラスセラミックを提供する。ガラスセラミックは、(MgxZn1-x)Al2O4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、正方晶ZrO2、MgTa2O6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相とを含む。ガラスセラミックは、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する。ガラスセラミックはイオン交換することができる。ガラスセラミックを製造する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックであって、
(Mg
xZn
1-x)Al
2O
4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、
正方晶ZrO
2、MgTa
2O
6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相と
を含み、
前記ガラスセラミックが、可視範囲で不透明であり、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する、
ガラスセラミック。
【請求項2】
xが0より大きい、請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
前記ガラスセラミックが、Li
2OおよびNa
2Oの少なくとも一方をさらに含む、かつ/または
前記ガラスセラミックが、35モル%以上60モル%以下のSiO
2をさらに含む、かつ/または
前記ガラスセラミックが、
35モル%~55モル%のSiO
2と、
18モル%以上のAl
2O
3と、
5モル%以上のMgOと、
2モル%以上のP
2O
5と
をさらに含む、かつ/または
前記ガラスセラミックが、
0モル%~14モル%のZnOと、
0モル%~5モル%のTiO
2と、
0モル%~5モル%のNa
2Oと、
0モル%~5モル%のLi
2Oと、
0モル%~2モル%のBaOと、
0モル%~4モル%のB
2O
3と、
0モル%~1モル%のCaOと、
0モル%~3モル%のEu
2O
3と、
0モル%~6モル%のTa
2O
5と、
0モル%~5モル%のLa
2O
3と、
0モル%~0.1モル%のAs
2O
5と、
0モル%~0.3モル%のSnO
2と
をさらに含む、かつ/または
ZrO
2+TiO
2+Eu
2O
3+Ta
2O
5+La
2O
3≦6モル%である、かつ/または
前記ガラスセラミックが、TiO
2を実質的に含まない、かつ/または
ZrO
2+TiO
2+Eu
2O
3+Ta
2O
5+La
2O
3≦5.5モル%であり、前記ガラスセラミックが、
La
2O
3、
Ta
2O
5および
2モル%以上のLi
2O
の少なくとも1つを含む、かつ/または
ZrO
2+TiO
2+Eu
2O
3+Ta
2O
5+La
2O
3≦5.1モル%であり、前記ガラスセラミックが、2モル%未満のLi
2Oを含み、La
2O
3およびTa
2O
5を実質的に含まない、請求項1または2記載のガラスセラミック。
【請求項4】
前記ガラスセラミックが、少なくとも35質量%の結晶化度を示す、かつ/または
前記ガラスセラミックが、100GPa以上125GPa以下のヤング率を有する、かつ/または
前記ガラスセラミックが、8GPa以上13GPa以下の硬度を有する、かつ/または
前記ガラスセラミックが、実質的に無色である、かつ/または
前記ガラスセラミックが、前記ガラスセラミックの表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域をさらに含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項5】
前記第2の結晶相が、正方晶ZrO
2を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項6】
前記ガラスセラミックが、ZrO
2を実質的に含まず、前記第2の結晶相が、MgTa
2O
6を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項7】
前記ガラスセラミックが、造核剤を実質的に含まず、前記第2の結晶相が、ムライトおよびコーディエライトを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項8】
消費者向け電子製品であって、
前面、背面および側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられた電気コンポーネントであって、前記電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面に設けられているかまたは前記前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板と
を備え、
前記ハウジングの少なくとも一部が、請求項1から7までのいずれか1項記載のガラスセラミックを含む、
消費者向け電子製品。
【請求項9】
可視範囲で不透明であるガラスセラミックを形成するために、前駆体ガラスをセラミック化するステップ
を含む方法であって、
前記ガラスセラミックが、
(Mg
xZn
1-x)Al
2O
4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、
正方晶ZrO
2、MgTa
2O
6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相と
を含み、
前記ガラスセラミックが、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する、
方法。
【請求項10】
35モル%~55モル%のSiO
2と、
18モル%以上のAl
2O
3と、
5モル%以上のMgOと、
2モル%以上のP
2O
5と、
0モル%~14モル%のZnOと、
0モル%~5モル%のTiO
2と、
0モル%~5モル%のNa
2Oと、
0モル%~5モル%のLi
2Oと、
0モル%~2モル%のBaOと、
0モル%~4モル%のB
2O
3と、
0モル%~1モル%のCaOと、
0モル%~3モル%のEu
2O
3と、
0モル%~6モル%のTa
2O
5と、
0モル%~5モル%のLa
2O
3と、
0モル%~0.1モル%のAs
2O
5と、
0モル%~0.3モル%のSnO
2と
を含むガラス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2018年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/773,682号の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、不透明なガラスセラミック組成物に関する。より詳細には、本明細書は、電子デバイス用のハウジングに形成することができる不透明なガーナイト-スピネル(gahnite-spinel)ガラスセラミックに関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレットおよびウェアラブルデバイス(例えば、腕時計およびフィットネストラッカー等)等の携帯用電子デバイスは、小型化および複雑化し続けている。そのため、かかる携帯用電子デバイスの少なくとも1つの外表面に対して一般に使用される材料も複雑化し続けている。例えば、携帯用電子デバイスが消費者需要を満たすためにより小さくかつ薄くなるにつれ、これらの携帯用電子デバイスに使用されるハウジングもより小さくかつ薄くなり、結果として、これらのコンポーネントの形成に使用される材料の性能要件が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、携帯用電子デバイスに使用するために、より高い耐損傷性等の性能を示す材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様(1)によれば、ガラスセラミックが提供される。ガラスセラミックは、(MgxZn1-x)Al2O4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、正方晶ZrO2、MgTa2O6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相とを含み、ガラスセラミックは、可視範囲で不透明であり、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する。
【0006】
態様(2)によれば、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方をさらに含む、態様(1)記載のガラスセラミックが提供される。
【0007】
態様(3)によれば、Li2OおよびNa2Oをさらに含む、態様(1)記載のガラスセラミックが提供される。
【0008】
態様(4)によれば、xが0より大きい、態様(1)から(3)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0009】
態様(5)によれば、35モル%以上60モル%以下のSiO2をさらに含む、態様(1)から(4)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0010】
態様(6)によれば、35モル%~55モル%のSiO2と、18モル%以上のAl2O3と、5モル%以上のMgOと、2モル%以上のP2O5とをさらに含む、態様(1)から(5)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0011】
態様(7)によれば、0モル%~14モル%のZnOと、0モル%~5モル%のTiO2と、0モル%~5モル%のNa2Oと、0モル%~5モル%のLi2Oと、0モル%~2モル%のBaOと、0モル%~4モル%のB2O3と、0モル%~1モル%のCaOと、0モル%~3モル%のEu2O3と、0モル%~6モル%のTa2O5と、0モル%~5モル%のLa2O3と、0モル%~0.1モル%のAs2O5と、0モル%~0.3モル%のSnO2とをさらに含む、態様(1)から(6)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0012】
態様(8)によれば、ZrO2+TiO2+Eu2O3+Ta2O5+La2O3≦6モル%である、態様(1)から(7)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0013】
態様(9)によれば、前記ガラスセラミックが、TiO2を実質的に含まない、態様(1)から(8)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0014】
態様(10)によれば、ZrO2+TiO2+Eu2O3+Ta2O5+La2O3≦5.5モル%であり、ガラスセラミックが、La2O3、Ta2O5および2モル%以上のLi2Oの少なくとも1つを含む、態様(1)から(9)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0015】
態様(11)によれば、ZrO2+TiO2+Eu2O3+Ta2O5+La2O3≦5.1モル%であり、ガラスセラミックが、2モル%未満のLi2Oを含み、La2O3およびTa2O5を実質的に含まない、態様(1)から(9)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0016】
態様(12)によれば、ガラスセラミックが、少なくとも35質量%の結晶化度を示す、態様(1)から(11)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0017】
態様(13)によれば、ガラスセラミックが、35質量%以上60質量%以下の結晶化度を示す、態様(1)から(12)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0018】
態様(14)によれば、ガラスセラミックが、100GPa以上125GPa以下のヤング率を有する、態様(1)から(13)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0019】
態様(15)によれば、ガラスセラミックが、8GPa以上13GPa以下の硬度を有する、態様(1)から(14)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0020】
態様(16)によれば、ガラスセラミックが、実質的に無色である、態様(1)から(15)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0021】
態様(17)によれば、第2の結晶相が、正方晶ZrO2を含む、態様(1)から(16)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0022】
態様(18)によれば、ガラスセラミックが、ZrO2を実質的に含まず、第2の結晶相が、MgTa2O6を含む、態様(1)から(16)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0023】
態様(19)によれば、ガラスセラミックが、造核剤を実質的に含まず、第2の結晶相が、ムライトおよびコーディエライトを含む、態様(1)から(16)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0024】
態様(20)によれば、ガラスセラミックの表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域をさらに含む、態様(1)から(19)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックが提供される。
【0025】
態様(21)によれば、消費者向け電子製品が提供される。消費者向け電子製品は、前面、背面および側面を有するハウジングと、少なくとも部分的にハウジング内に設けられた電気コンポーネントであって、電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、ディスプレイが、ハウジングの前面に設けられているかまたは前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、ディスプレイ上に配置されたカバー基板とを備え、ハウジングの少なくとも一部が、態様(1)から(19)までのいずれか1つ記載のガラスセラミックを含む。
【0026】
態様(22)によれば、消費者向け電子製品が提供される。消費者向け電子製品は、前面、背面および側面を有するハウジングと、少なくとも部分的にハウジング内に設けられた電気コンポーネントであって、電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、ディスプレイが、ハウジングの前面に設けられているかまたは前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、ディスプレイ上に配置されたカバー基板とを備え、ハウジングの少なくとも一部が、態様(20)記載のガラスセラミックを含む。
【0027】
態様(23)によれば、方法が提供される。方法は、可視範囲で不透明であるガラスセラミックを形成するために、前駆体ガラスをセラミック化するステップを含む方法であって、ガラスセラミックは、(MgxZn1-x)Al2O4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、正方晶ZrO2、MgTa2O6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相とを含み、ガラスセラミックは、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する。
【0028】
態様(24)によれば、セラミック化するステップの前に、前駆体ガラス中に核を形成するステップをさらに含む、態様(23)記載の方法が提供される。
【0029】
態様(25)によれば、核を形成するステップが、前駆体ガラスを少なくとも700℃の温度で少なくとも1時間にわたって熱処理するステップを含む、態様(24)記載の方法が提供される。
【0030】
態様(26)によれば、セラミック化するステップが、前駆体ガラスを少なくとも750℃の温度で少なくとも30分にわたって熱処理するステップを含む、態様(23)から(25)のいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0031】
態様(27)によれば、方法が、別の核生成ステップを含まない、態様(23)記載の方法が提供される。
【0032】
態様(28)によれば、ガラスセラミックを形成するために、セラミック化するステップが、前駆体ガラスにレーザーを照射するステップを含む、態様(23)記載の方法が提供される。
【0033】
態様(29)によれば、ガラスセラミックをイオン交換するステップをさらに含む、態様(23)から(28)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0034】
態様(30)によれば、イオン交換するステップが、ガラスセラミックを混合イオン交換浴と接触させるステップを含む、態様(29)記載の方法が提供される。
【0035】
態様(31)によれば、ガラスが提供される。ガラスは、35モル%~55モル%のSiO2と、18モル%以上のAl2O3と、5モル%以上のMgOと、2モル%以上のP2O5と、0モル%~14モル%のZnOと、0モル%~5モル%のTiO2と、0モル%~5モル%のNa2Oと、0モル%~5モル%のLi2Oと、0モル%~2モル%のBaOと、0モル%~4モル%のB2O3と、0モル%~1モル%のCaOと、0モル%~3モル%のEu2O3と、0モル%~6モル%のTa2O5と、0モル%~5モル%のLa2O3と、0モル%~0.1モル%のAs2O5と、0モル%~0.3モル%のSnO2とを含む。
【0036】
付加的な特徴および利点が以下の詳細な説明に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明らかであり、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む、本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識される。
【0037】
上述の概要および以下の詳細な説明がどちらも様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を示し、本明細書と共に、特許請求される主題の原理および作用を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本明細書に開示および記載される実施形態による圧縮応力層を表面上に有するガラスセラミックの横断面を概略的に示す図である。
【
図2A】本明細書に開示されるガラスセラミック物品のいずれかを組み込んだ例示的な電子デバイスの平面図である。
【
図3】一実施形態によるガラスセラミックのトンネル電子顕微鏡(TEM)画像である。
【
図4】比較ガラスサンプル、比較ガラスセラミックサンプル、および一実施形態によるガラスセラミックについての波長の関数としての全透過率のプロットである。
【
図5】二酸化炭素レーザーの照射によって局所的にセラミック化した、一実施形態による前駆体ガラスの正面および側面からの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、様々な実施形態による不透明なガーナイト-スピネルガラスセラミックについて詳細に言及する。特に、不透明なガーナイト-スピネルガラスセラミックは、高い硬度を有し、イオン交換することができる。したがって、不透明なガーナイト-スピネルガラスセラミックは、携帯用電子デバイスにおけるハウジングとしての使用に適している。
【0040】
以下の記載において、同様の引用符号は、図面に示される幾つかの図を通して同様または対応する部分を指定する。他に規定のない限り、「上部」、「下部」、「外側」、「内側」等の用語が便宜上の言葉であり、限定的な用語と解釈されるべきではないことも理解される。群が要素の群またはその組合せの少なくとも1つからなると記載される場合には常に、その群が個別にまたは互いに組み合わせた任意の数の列挙される要素からなる場合があることが理解される。他に規定のない限り、値の範囲は、列挙される場合、範囲の上限および下限の両方、ならびにその間の任意の範囲を含む。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」、「an」および対応する定冠詞「the」は、他に規定のない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書および図面に開示される様々な特徴があらゆる組合せで用いられ得ることも理解される。
【0041】
他に規定のない限り、本明細書に記載されるガラスおよびガラスセラミックの組成は全て、モルパーセント(モル%)単位で表され、構成要素は酸化物ベースで提示される。他に規定のない限り、温度は全て、セルシウス度(℃)単位で表される。
【0042】
「実質的に」および「約」という用語が、任意の定量的な比較、値、測定または他の表現に起因し得る特有の不確実性の度合いを表すために本明細書で用いられる場合があることに留意されたい。また、これらの用語は、問題となる主題の基本的な機能に変化を生じさせることなく、定量的表現が規定の参照から変動し得る度合いを表すために本明細書で用いられる。例えば、「K2Oを実質的に含まない」ガラスは、K2Oがガラスに積極的に添加またはバッチ添加されていないが、汚染物質として非常に少量、例えば約0.01モル%未満の量で存在する可能性があるガラスである。本明細書で用いられる場合、「約」という用語が値を修飾するために用いられるときには、厳密な値も開示される。
【0043】
ガラスセラミックは、第1の結晶相と、第2の結晶相と、残留ガラス相とを含有する。第1の結晶相は、本明細書ではガラスセラミックの重量の最大部分を占める結晶相と定義される、主要な結晶相であり得る。したがって、第2の結晶相は、ガラスセラミックのうち、第1の結晶相の重量パーセントを下回る重量パーセントで存在し得る。幾つかの実施形態では、ガラスセラミックは、3つ以上の結晶相を含み得る。
【0044】
実施形態では、第1の結晶相は、(MgxZn1-x)Al2O4[式中、xは1未満である]を含む。結晶相(MgxZn1-x)Al2O4は概して、xが0である場合に結晶相が純粋なガーナイトであることを理解した上で、ガーナイト-スピネル固溶体と称されることがある。実施形態では、xは0以上、例えば約0.1以上、約0.2以上、約0.3以上、約0.4以上、約0.5以上、約0.6以上、約0.7以上、約0.8以上または約0.9以上であり得る。実施形態では、xは1.0未満、例えば約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下または約0.1以下であり得る。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、xは0以上1.0未満、例えば約0.1以上約0.9以下、約0.2以上約0.8以下、約0.3以上約0.7以下、または約0.4以上約0.6以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲であり得る。
【0045】
結晶相は、或る結晶子サイズを有する。ガラスセラミックの不透明な性質は、少なくとも一部には大きな結晶子サイズに起因し得る。本明細書で用いられる結晶子サイズは、他に規定のない限り、5~80度の2θで走査する粉末X線回折(XRD)分析によって決定される。結晶子サイズは、相同定および定量分析に用いられるソフトウェアパッケージであるMDI Jadeで利用可能なシェラー式関数を用いて推定した。
【0046】
実施形態では、第2の結晶相は正方晶ジルコニア(ZrO2)、MgTa2O6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む。ガラスセラミック中に存在する第2の結晶相は、前駆体ガラスの組成およびセラミック化スケジュールによって決まり得る。ガラスセラミックにおける正方晶ZrO2の形成は、前駆体ガラス中のZrO2の存在を必要とする。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、セラミック化時に正方晶ZrO2結晶相が(MgxZn1-x)Al2O4結晶相より先に結晶化し、(MgxZn1-x)Al2O4結晶相の核生成部位として働くと考えられる。さらに、いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ガラスセラミック中に含まれる全てのTiO2が正方晶ZrO2相に分配され、正方晶ZrO2相の造核剤として働くと考えられる。前駆体ガラスがZrO2を実質的に含まない、または含まない場合、MgTa2O6が第2の結晶相であり得る。前駆体ガラスが造核剤を実質的に含まない、または含まない場合、ムライトおよびコーディエライトの第2の結晶相が生じ得る。幾つかの実施形態では、前駆体ガラスの組成およびセラミック化条件により、上記のもの以外に付加的な結晶相を含むガラスセラミックが生じる可能性がある。
【0047】
実施形態では、ガラスセラミックの全結晶化度は硬度、ヤング率および耐引掻き性等の機械的特性の向上をもたらすのに十分に高い。本明細書で用いられる場合、全結晶化度は質量%で提示され、ガラスセラミックの総重量に対するガラスセラミック中に存在する全ての結晶相の質量%の総和を指す。実施形態では、全結晶化度は約35質量%以上、例えば約40質量%以上、約45質量%以上、約50質量%以上、約55質量%以上、またはそれ以上である。実施形態では、全結晶化度は約60質量%以下、例えば約55質量%以下、約50質量%以下、約45質量%以下、約40質量%以下、またはそれ以下である。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミックの全結晶化度は、約35質量%以上約60質量%以下、例えば約40質量%以上約55質量%以下、約45質量%以上約50質量%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲である。ガラスセラミックの全結晶化度は、上記のように収集されたXRDデータのリートベルト定量分析によって決定される。リートベルト分析は、XRDデータをモデル化した後、同定された相の既知の格子因子およびスケール因子に基づいてサンプル中の相の濃度を決定するために最小二乗法を用いる。
【0048】
ガラスセラミックは可視範囲で不透明である。本明細書で用いられる場合、ガラスセラミックは、可視範囲(380nm~760nm)で50%未満の透過率を示す場合に不透明とみなされる。透過率は、本明細書で用いられる場合、全透過率を指し、150mmの積分球を備えるPerkin ElmerのLambda 950 UV/VIS/NIR分光光度計を用いて測定される。サンプルを、広角散乱光の収集が可能となるように球の入射窓に取り付けた。全透過率データを、球の出射窓上の参照Spectralon反射ディスクを用いて収集した。全透過率パーセント(%T)は、オープンビーム(open beam)ベースライン測定値に対して算出した。実施形態では、ガラスセラミックは、可視範囲で50%未満、例えば約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、またはそれ以下の透過率を示す。
【0049】
実施形態では、ガラスセラミックは白色に見える。実施形態では、ガラスセラミックは、無色または実質的に無色であり得る。本明細書で用いられる場合、実質的に無色とは、以下の色座標空間を指す:L*>90、a* -0.2~0.2、およびb* -0.1~0.6。色座標は、積分球を備えた構成のUV/Vis/NIR分光光度計を用いて測定される。測定は、380nm~770nmの波長に対して2nm間隔で光源D65、AおよびF2を用い、10°の観測角(observer)で行った。CIE表色系において色空間を決定する手順は、「Standard practice for computing the colors of objects by using the CIR system」(ASTM E308-08)により詳細に記載されている。
【0050】
実施形態では、ガラスセラミックは、例えば耐引掻き性の増大をもたらすことによって、ガラスセラミックが損傷を受けにくくなるような硬度を有し得る。本明細書で用いられる場合、硬度はナノインデンタを用いて測定され、他に指示のない限り、GPaで記載される。ナノインデンタ測定は、ダイヤモンドバーコビッチチップを使用し、AgilentのG200ナノインデンタで実行される連続剛性測定法を用いて行った。連続剛性測定法では、チップを試料表面に押し込みながらチップに負荷される小さな正弦波変位信号(45Hzで1nmの振幅)を用い、荷重、深さおよび接触剛性を連続的に決定する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ガラスセラミックの硬度は、少なくとも一部は(MgxZn1-x)Al2O4およびそれに含まれる二次結晶相、例えば正方晶ZrO2の硬度によるものと考えられる。
【0051】
実施形態では、ガラスセラミックは約7.5GPa以上、例えば約7.6GPa以上、約7.7GPa以上、約7.8GPa以上、約7.9GPa以上、約8.0GPa以上、約8.1GPa以上、約8.2GPa以上、約8.3GPa以上、約8.4GPa以上、約8.5GPa以上、約8.6GPa以上、約8.7GPa以上、約8.8GPa以上、約8.9GPa以上、約9.0GPa以上、約9.1GPa以上、約9.2GPa以上、約9.3GPa以上、約9.4GPa以上、約9.5GPa以上、約9.6GPa以上、約9.7GPa以上、約9.8GPa以上、約9.9GPa以上、約10.0GPa以上、約10.1GPa以上、約10.2GPa以上、約10.3GPa以上、約10.4GPa以上、約10.5GPa以上、約10.6GPa以上、約10.7GPa以上、約10.8GPa以上、約10.9GPa以上、約11.0GPa以上、約11.1GPa以上、約11.2GPa以上、約11.3GPa以上、約11.4GPa以上、約11.5GPa以上、約11.6GPa以上、約11.7GPa以上、約11.8GPa以上、約11.9GPa以上、約12.0GPa以上、12.1GPa以上、約12.2GPa以上、約12.3GPa以上、約12.4GPa以上、約12.5GPa以上、約12.6GPa以上、約12.7GPa以上、約12.8GPa以上、約12.9GPa以上、またはそれ以上の硬度を有する。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミックは、約7.5GPa以上約13.0GPa以下、例えば約8.0GPa以上約12.5GPa以下、約8.5GPa以上約12.0GPa以下、約9.0GPa以上約11.5GPa以下、約9.5GPa以上約11.0GPa以下、約10.0GPa以上約10.5GPa以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の硬度を有する。
【0052】
実施形態によるガラスセラミックは、約90.0GPa以上、例えば約92.0GPa以上、約94.0GPa以上、約96.0GPa以上、約98.0GPa以上、約100.0GPa以上、約102.0GPa以上、約104.0GPa以上、約106.0GPa以上、約108.0GPa以上、約110.0GPa以上、約112.0GPa以上、約114.0GPa以上、約116.0GPa以上、約118.0GPa以上、約120.0GPa以上、122.0GPa以上、124.0GPa以上、またはそれ以上のヤング率を有し得る。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミックは、約90.0GPa以上約125.0GPa以下、例えば約92.0GPa以上約123.0GPa以下、約94.0GPa以上約121.0GPa以下、約96.0GPa以上約119.0GPa以下、約98.0GPa以上約117.0GPa以下、約100.0GPa以上約115.0GPa以下、約102.0GPa以上約113.0GPa以下、約104.0GPa以上約111.0GPa以下、約106.0GPa以上約109.0GPa以下、約107.0GPa以上約108.0GPa以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲のヤング率を有する。本開示において挙げられるヤング率値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に規定される一般的なタイプの共鳴超音波分光法によって測定される値を指し、他に規定のない限り、GPaで記載される。
【0053】
ガラスセラミックは、ガラスセラミックの構造的完全性に悪影響を与えることなく、約800℃までの温度でガラスセラミックの付加的な処理を可能にするのに十分に高い歪点および徐冷点を有し得る。この付加的な処理は、イオン交換等の化学強化を含み得る。これらの高い処理温度では、例えば付加的な処理に要する時間の短縮によって付加的な処理の効率を高めることができる。実施形態では、歪点は約900℃以下、例えば約700℃以上約900℃以下であり得る。これらの歪点は、熱安定性の改善およびイオン交換処理が可能な温度範囲の拡大を可能にする。歪点が過度に低いと、ガラスセラミックの付加的な処理が困難になる恐れがある。歪点が過度に高いと、前駆体ガラス組成物の製造が困難になる恐れがある。
【0054】
ここで、不透明なガーナイト-スピネルガラスセラミックの組成を説明する。本明細書に記載されるガラスセラミックの実施形態では、構成成分(例えばSiO2、Al2O3、Li2O、Na2O等)の濃度は、他に規定のない限り、酸化物ベースのモルパーセント(モル%)で与えられる。実施形態によるガラスセラミックの成分について以下で個別に論考する。或る成分の様々に挙げられる範囲がいずれも、任意の他の成分について様々に挙げられる範囲のいずれかと個別に組み合わせられ得ることを理解されたい。
【0055】
本明細書に開示されるガラスセラミックの実施形態では、SiO2が最大の構成要素である。純粋なSiO2は、比較的低いCTEを有し、アルカリを含まない。しかしながら、純粋なSiO2は高い融点を有する。したがって、SiO2の濃度が高まるとガラスの溶融が困難となり、これが前駆体ガラスの成形性に悪影響を与えることから、ガラスセラミック中のSiO2の濃度が過度に高いと、ガラスセラミックの形成に使用される前駆体ガラス組成物の成形性が低下する恐れがある。実施形態では、ガラス組成物は概して、約35.0モル%以上、例えば約40.0モル%以上、約45.0モル%以上、約50.0モル%以上、約55.0モル%以上、またはそれ以上の量のSiO2を含む。実施形態では、ガラス組成物は、約60.0モル%以下、例えば約55.0モル%以下、約50.0モル%以下、約45.0モル%以下、約40.0モル%以下、またはそれ以下の量のSiO2を含む。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラス組成物は、約35.0モル%以上約60.0モル%以下、例えば約35.0モル%以上約55.0モル%以下、約40.0モル%以上約50.0モル%以下、約45.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のSiO2を含む。
【0056】
実施形態のガラスセラミックは、Al2O3をさらに含み得る。Al2O3は、ガラス組成物から形成されたガラス溶融物におけるその四面体配位のために、ガラスセラミックの形成に使用される前駆体ガラス組成物の粘度を上昇させる可能性があり、Al2O3の量が過度に高いとガラス組成物の成形性が低下する。しかしながら、Al2O3の濃度とガラス組成物中のSiO2の濃度およびアルカリ酸化物の濃度とのバランスを取ることで、Al2O3によりガラス溶融物の液相温度を低下させ、それにより液相粘度を高め、フュージョン成形法等の或る特定の成形法とのガラス組成物の適合性を改善することができる。前駆体ガラス中のAl2O3はまた、前駆体ガラスをセラミック化してガラスセラミックを形成する際にガーナイト-スピネル結晶相の形成に必要とされるアルミニウムを供給する。実施形態では、ガラス組成物は概して、約18.0モル%以上、例えば約19.0モル%以上、約20.0モル%以上、約21.0モル%以上、約22.0モル%以上、約23.0モル%以上、約24.0モル%以上、約25.0モル%以上、またはそれ以上の濃度のAl2O3を含む。実施形態では、ガラス組成物は、約26.0モル%以下、例えば約25.0モル%以下、約24.0モル%以下、約23.0モル%以下、約22.0モル%以下、約21.0モル%以下、約20.0モル%以下、約19.0モル%以下、またはそれ以下の量のAl2O3を含む。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラス組成物は、約18.0モル%以上約26.0モル%以下、例えば約19.0モル%以上約25.0モル%以下、約20.0モル%以上約24.0モル%以下、約21.0モル%以上約23.0モル%以下、約22.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のAl2O3を含む。
【0057】
実施形態のガラスセラミックは、ZnOをさらに含み得る。前駆体ガラス中のZnOは、前駆体ガラスをセラミック化してガラスセラミックを形成する際にガーナイト-スピネル結晶相の形成に必要とされる亜鉛を供給する。実施形態では、ガラス組成物は概して、0モル%以上、例えば約1.0モル%以上、約2.0モル%以上、約3.0モル%以上、約4.0モル%以上、約5.0モル%以上、約6.0モル%以上、約7.0モル%以上、約8.0モル%以上、約9.0モル%以上、約10.0モル%以上、約11.0モル%以上、約12.0モル%以上、約13.0モル%以上、またはそれ以上の濃度のZnOを含む。実施形態では、ガラス組成物は、約15.0モル%以下、例えば約14.0モル%以下、約13.0モル%以下、約12.0モル%以下、約11.0モル%以下、約10.0モル%以下、約9.0モル%以下、約8.0モル%以下、約7.0モル%以下、約6.0モル%以下、約5.0モル%以下、約4.0モル%以下、約3.0モル%以下、約2.0モル%以下、約1.0モル%以下、またはそれ以下の量のZnOを含む。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%超約15.0モル%以下、例えば約1.0モル%以上約14.0モル%以下、約2.0モル%以上約13.0モル%以下、約3.0モル%以上約12.0モル%以下、約4.0モル%以上約11.0モル%以下、約5.0モル%以上約10.0モル%以下、約6.0モル%以上約9.0モル%以下、約7.0モル%以上約8.0モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のZnOを含む。
【0058】
実施形態のガラスセラミックは、MgOをさらに含み得る。前駆体ガラス中のMgOは、前駆体ガラスをセラミック化してガラスセラミックを形成する際にスピネル固溶体を含有する結晶相の形成に必要とされるマグネシウムを供給する。実施形態では、ガラスセラミック中のMgOの量は、約5.0モル%以上、例えば約6.0モル%以上、約7.0モル%以上、約8.0モル%以上、約9.0モル%以上、約10.0モル%以上、約11.0モル%以上、約12.0モル%以上、約13.0モル%以上、約14.0モル%以上、約15.0モル%以上、またはそれ以上である。実施形態では、ガラスセラミック中のMgOの量は、約16.0モル%以下、例えば約15.0モル%以下、約14.0モル%以下、約13.0モル%以下、約12.0モル%以下、約11.0モル%以下、約10.0モル%以下、約9.0モル%以下、約8.0モル%以下、約7.0モル%以下、約6.0モル%以下、またはそれ以下である。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミック中のMgOの量は、約5.0モル%以上約16.0モル%以下、例えば約6.0モル%以上約15.0モル%以下、約7.0モル%以上約14.0モル%以下、約8.0モル%以上約13.0モル%以下、約9.0モル%以上約12.0モル%以下、約10.0モル%以上約11.0モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲である。ガラスセラミック中のZnOに対するMgOの比率が高い実施形態では、ガラスセラミックの不透明性が高まる。
【0059】
実施形態のガラスセラミックは、CaOをさらに含み得る。実施形態では、ガラスセラミック中のCaOの量は、0モル%以上約1.0モル%以下、例えば約0.1モル%以上約0.9モル%以下、約0.2モル%以上約0.8モル%以下、約0.3モル%以上約0.7モル%以下、約0.4モル%以上約0.6モル%以下、約0.5モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲である。
【0060】
ガラスセラミックは、P2O5をさらに含み得る。P2O5を含めることで、ガラスセラミックのイオン交換可能性を高めることができる。実施形態では、ガラスセラミックは、約2.0モル%以上、例えば約2.5モル%以上のP2O5、約3.0モル%以上、約3.5モル%以上、約4.0モル%以上、約4.5モル%以上、約5.0モル%以上、またはそれ以上の量のP2O5を含有し得る。実施形態では、ガラスセラミックは、約2.0モル%以上約6.0モル%以下、例えば約2.5モル%以上約5.5モル%以下、約3.0モル%以上約5.0モル%以下、約3.5モル%以上約4.5モル%以下、約2.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のP2O5を含有し得る。
【0061】
実施形態のガラスセラミックは、B2O3をさらに含み得る。B2O3は、前駆体ガラスの固有の耐損傷性を高めることができる。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上約4.0モル%以下、例えば約0.5モル%以上約3.5モル%以下、約1.0モル%以上約3.0モル%以下、約1.5モル%以上約2.5モル%以下、約2.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のB2O3を含む。
【0062】
実施形態のガラスセラミックは、造核剤をさらに含み得る。造核剤は、ガラスセラミックの形成に用いられる前駆体ガラスにおける核の形成を可能にする。幾つかの実施形態では、造核剤により、別の核生成ステップなしにガラスセラミックをセラミック化することが可能である。造核剤は、ZrO2、TiO2、Eu2O3、Ta2O5およびLa2O3から選択することができる。実施形態では、ガラスセラミック中の造核剤の総量は、0モル%以上、例えば約1.0モル%以上、約2.0モル%以上、約3.0モル%以上、約4.0モル%以上、約5.0モル%以上、またはそれ以上の量であり得る。実施形態では、ガラスセラミック中の造核剤の総量は、約6.0モル%以下、例えば約5.0モル%以下、約4.0モル%以下、約3.0モル%以下、約2.0モル%以下、約1.0モル%以下、またはそれ以下の量であり得る。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミック中の造核剤の総量は、0モル%以上約6.0モル%以下の量、例えば約1.0モル%以上約5.0モル%以下、約2.0モル%以上約4.0モル%以下、約1.0モル%以上約3.0モル%以下、約2.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量であり得る。幾つかの実施形態では、ガラスセラミックは、約5.5モル%以下の量の造核剤を含有することができ、La2O3、Ta2O5、および約2モル%以上のLi2Oの少なくとも1つを付加的に含有する。幾つかの実施形態では、ガラスセラミックは、約5.1モル%以下の量の造核剤を含有することができ、2モル%未満のLi2Oを付加的に含有し、La2O3およびTa2O5を実質的に含まない。
【0063】
実施形態では、ガラスセラミックは、0モル%以上約3.0モル%以下の量、例えば約0.5モル%以上約2.5モル%以下、約1.0モル%以上約2.0モル%以下、約1.5モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のEu2O3を含有し得る。
【0064】
実施形態では、ガラスセラミックは、0モル%以上約6.0モル%以下の量、例えば約1.0モル%以上約5.0モル%以下、約2.0モル%以上約4.0モル%以下、約1.0モル%以上約3.0モル%以下、約2.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のTa2O5を含有し得る。
【0065】
実施形態では、ガラスセラミックは、0モル%以上約5.0モル%以下の量、例えば約1.0モル%以上約4.0モル%以下、約2.0モル%以上約3.0モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のLa2O3を含有し得る。
【0066】
実施形態では、ガラスセラミックは、ZrO2を唯一の造核剤として含み得る。造核剤として作用することに加え、前駆体ガラスにおけるZrO2の存在は、セラミック化プロセス中の正方晶ZrO2の結晶化を促進する。前駆体ガラス組成物中の唯一の造核剤としてのZrO2の使用により、外観が無色のガラスセラミックの製造が可能となる。実施形態では、ガラスセラミック中のZrO2の量は、0モル%超、例えば約1.0モル%以上、約2.0モル%以上、約3.0モル%以上、約4.0モル%以上、約5.0モル%以上、約6.0モル%以上、約7.0モル%以上、約8.0モル%以上または約9.0モル%以上である。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミック中のZrO2の量は、0モル%超約10.0モル%以下、例えば約1.0モル%以上約9.0モル%以下、約2.0モル%以上約8.0モル%以下、約3.0モル%以上約7.0モル%以下、または約4.0モル%以上約6.0モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲である。
【0067】
実施形態では、ガラスセラミックは、造核剤としてTiO2を含み得る。TiO2は効果的な造核剤である。しかしながら、前駆体ガラス中のTiO2の量が過度に高いと、得られるガラスセラミックが望ましくない有色の外観を有する恐れがある。TiO2を含むガラスセラミックは、可視範囲で黄色または褐色の外観を有し得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、Ti4+からTi3+への還元によりガラスセラミックの有色の外観が生じると考えられる。実施形態では、ガラスセラミック中のTiO2の量は、0モル%以上、例えば約1.0モル%以上、約2.0モル%以上、約3.0モル%以上、約4.0モル%以上、またはそれ以上である。実施形態では、ガラスセラミック中のTiO2の量は、約5.0モル%以下、例えば約4.0モル%以下、約3.0モル%以下、約2.0モル%以下、約1.0モル%以下、またはそれ以下である。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラスセラミック中のTiO2の量は、0モル%以上約5.0モル%以下、例えば約1.0モル%以上約4.0モル%以下、または約2.0モル%以上約3.0モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲である。実施形態では、ガラスセラミックは、TiO2を実質的に含まない、または含まない。
【0068】
ガラスセラミックは、1つ以上のアルカリ金属酸化物を含み得る。アルカリ金属酸化物は、例えばイオン交換プロセスによるガラスセラミックの化学強化を促進する。ガラスセラミック中のアルカリ金属酸化物(例えばLi2O、Na2OおよびK2O、ならびにCs2OおよびRb2Oを含む他のアルカリ金属酸化物)の総和は、「R2O」と称されることがあり、R2Oはモル%で表すことができる。幾つかの実施形態では、ガラスセラミックは、アルカリ金属酸化物の混合物、例えばLi2OおよびNa2Oの組合せ、Na2OおよびK2Oの組合せ、Li2OおよびK2Oの組合せ、またはLi2O、Na2OおよびK2Oの組合せを含み得る。実施形態では、ガラスセラミックは、Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方を含有する。ガラスセラミックにアルカリ金属酸化物の混合物を含めることで、より迅速かつより効率的なイオン交換が生じ得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、アルカリ金属酸化物がセラミック化時にガラスセラミックの残留ガラス相に偏析すると考えられる。
【0069】
ガラスセラミックへのリチウムの添加は、イオン交換プロセスを可能にし、さらに前駆体ガラス組成物の軟化点を低下させる。実施形態では、ガラス組成物は概して、0モル%以上、例えば約0.5モル%以上、約1.0モル%以上、約1.5モル%以上、約2.0モル%以上、約2.5モル%以上、約3.0モル%以上、約3.5モル%以上、約4.0モル%以上、約4.5モル%以上、またはそれ以上の量のLi2Oを含む。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、約5.0モル%以下、例えば約4.5モル%以下、約4.0モル%以下、約3.5モル%以下、約3.0モル%以下、約2.5モル%以下、約2.0モル%以下、約1.5モル%以下、約1.0モル%以下、約0.5モル%以下、またはそれ以下の量のLi2Oを含む。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラス組成物は、0.0モル%以上約5.0モル%以下、例えば約0.5モル%以上約4.5モル%以下、約1.0モル%以上4.0モル%以下、約1.5モル%以上約3.5モル%以下、約2.0モル%以上約3.0モル%以下、約2.5モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のLi2Oを含む。
【0070】
Li2Oと同様、Na2Oはガラスセラミックのイオン交換可能性を補助し、さらに前駆体ガラス組成物の融点を低下させ、前駆体ガラス組成物の成形性を改善する。実施形態では、ガラス組成物は概して、0モル%以上、例えば約0.5モル%以上、約1.0モル%以上、約1.5モル%以上、約2.0モル%以上、約2.5モル%以上、約3.0モル%以上、約3.5モル%以上、約4.0モル%以上、約4.5モル%以上、またはそれ以上の量のNa2Oを含む。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、約5.0モル%以下、例えば約4.5モル%以下、約4.0モル%以下、約3.5モル%以下、約3.0モル%以下、約2.5モル%以下、約2.0モル%以下、約1.5モル%以下、約1.0モル%以下、約0.5モル%以下、またはそれ以下の量のNa2Oを含む。実施形態において上記の範囲がいずれも任意の他の範囲と組み合わせられ得ることを理解されたい。実施形態では、ガラス組成物は、0.0モル%以上約5.0モル%以下、例えば約0.5モル%以上約4.5モル%以下、約1.0モル%以上4.0モル%以下、約1.5モル%以上約3.5モル%以下、約2.0モル%以上約3.0モル%以下、約2.5モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のNa2Oを含む。
【0071】
実施形態では、ガラスセラミックは、BaOを付加的に含み得る。ガラスセラミックにBaOを含めることで、ガラスセラミック中の残留ガラス相の屈折率が増大する。BaOは、溶融時の系の酸化状態を維持するために、ガラス溶融物に炭酸塩としても硝酸塩としても添加することができ、TiO2が組成物中に存在する場合のTi4+からTi3+への還元を防ぐ。BaOは、TiO2の存在によるガラスセラミックの望ましくない着色を防ぐように作用することができる。実施形態では、ガラスセラミックは、0モル%以上約2.0モル%以下、例えば約0.5モル%以上約1.5モル%以下、約1.0モル%、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量のBaOを含有し得る。
【0072】
実施形態では、ガラスセラミックは、1つ以上の清澄剤を任意に含み得る。幾つかの実施形態では、清澄剤は、例えば酸化スズ(SnO2)および/または酸化ヒ素を含み得る。実施形態では、SnO2は、0.3モル%以下、例えば0モル%以上0.3モル%以下、0.1モル%以上0.2モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量でガラス組成物中に存在し得る。実施形態では、酸化ヒ素は、0モル%以上0.1モル%以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の量でガラスセラミック中に存在し得る。実施形態では、酸化ヒ素は漂白剤としても作用することができる。実施形態では、ガラスセラミックは、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を含まない、または実質的に含まない場合がある。
【0073】
上記から、実施形態によるガラスセラミックは、任意の好適な方法、例えばスロット成形、フロート成形、圧延法、フュージョン成形法等によって成形される前駆体ガラス物品から形成され得る。
【0074】
前駆体ガラス物品は、その成形方法によって特徴付けることができる。例えば、前駆体ガラス物品は、フロート成形可能(すなわち、フロート法によって成形される)、ダウンドロー可能、特にフュージョン成形可能またはスロットドロー可能(すなわち、フュージョンドロー法またはスロットドロー法等のダウンドロー法によって成形される)と特徴付けることができる。
【0075】
本明細書に記載される前駆体ガラス物品の幾つかの実施形態は、ダウンドロー法によって成形され得る。ダウンドロー法では、比較的未処理の表面を有する、均一な厚さを有するガラス物品が製造される。ガラス物品の平均曲げ強度は、表面傷の量およびサイズに左右されるため、接触が最小限であった未処理の表面は、より高い初期強度を有する。加えて、ダウンドローガラス物品は、非常に平らで滑らかな表面を有し、高コストの研削および研磨を行うことなく、その最終用途に用いることができる。
【0076】
前駆体ガラス物品の幾つかの実施形態は、フュージョン成形可能(すなわち、フュージョンドロー法を用いて成形可能)と記載されることもある。フュージョン法では、溶融ガラス原料を受容するチャネルを有するドロータンクが使用される。チャネルは、チャネルの長さに沿ってチャネルの両側に上部が開口した堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスが堰から溢れ出る。重力により、溶融ガラスがドロータンクの外表面を2つの流れるガラス膜として流れ落ちる。ドロータンクのこれらの外表面は、下方内側に伸び、ドロータンクの下の端部で合流する。2つの流れるガラス膜は、この端部で合流して融合し、単一の流れるガラス物品を形成する。フュージョンドロー法は、チャネルを越えて流れる2つのガラス膜が融合することから、得られるガラス物品の外表面のいずれも、装置のどの部分とも接触しないという利点をもたらす。このため、フュージョンドローガラス物品の表面特性は、かかる接触の影響を受けない。
【0077】
本明細書に記載される前駆体ガラス物品の幾つかの実施形態は、スロットドロー法によって形成され得る。スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法では、溶融原料ガラスをドロータンクに供給する。ドロータンクの下部には、スロットの長さを延長するノズルを有する開放スロットがある。溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続したガラス物品としてアニーリング領域へと下方に引き出される。
【0078】
ガラスセラミックは、任意の好適な条件下で前駆体ガラスをセラミック化することによって形成することができる。セラミック化は、前駆体ガラス中に結晶核を形成する目的での別の核生成処理を必ずしも含むわけではない。別の核生成ステップなしに透明なガラスセラミックを製造することができれば、製造プロセスの複雑さが軽減され、エネルギーおよび時間の節約がもたらされる。幾つかの実施形態では、核生成処理を含めることで、製造される結晶子サイズの付加的な制御が可能となり得る。
【0079】
実施形態では、セラミック化は、約750℃以上、例えば約800℃以上、約850℃以上、約900℃以上、約950℃以上、約1000℃以上、約1050℃以上、約1100℃以上、またはそれ以上の温度で行われる。実施形態では、セラミック化は、約750℃以上約1100℃以下、例えば約800℃以上約1050℃以下、約850℃以上約1000℃以下、または約900℃以上約950℃以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の温度で行われる。
【0080】
実施形態では、セラミック化は、約30分以上、例えば約1.0時間以上、約1.5時間以上、約2.0時間以上、約2.5時間以上、約3.0時間以上、約3.5時間以上、約4.0時間以上、約4.5時間以上、約5.0時間以上、約5.5時間以上、約6.0時間以上、約6.5時間以上、約7.0時間以上、約7.5時間以上、約8.0時間以上、約8.5時間以上、約9.0時間以上、約9.5時間以上、約10.0時間以上、約10.5時間以上、約11.0時間以上、約11.5時間以上、約12.0時間以上、約12.5時間以上、約13.0時間以上、約13.5時間以上、約14.0時間以上、約14.5時間以上、約15.0時間以上、約15.5時間以上、約16.0時間以上、約16.5時間以上、約17.0時間以上、約17.5時間以上、約18.0時間以上、約18.5時間以上、約19.0時間以上、約19.5時間以上、約20.0時間以上、約20.5時間以上、約21.0時間以上、約21.5時間以上、約22.0時間以上、約22.5時間以上、約23.0時間以上または約23.5時間以上にわたる。実施形態では、セラミック化は、約30分以上約24.0時間以下、例えば約1.0時間以上約23.0時間以下、約1.5時間以上約22.0時間以下、約2.0時間以上約21.0時間以下、約2.5時間以上約20.0時間以下、約3.0時間以上約19.0時間以下、約3.5時間以上約18.0時間以下、約4.0時間以上約17.0時間以下、約4.5時間以上約16.0時間以下、約5.0時間以上約15.0時間以下、約5.5時間以上約14.0時間以下、約6.0時間以上約13.0時間以下、約6.5時間以上約12.0時間以下、約7.0時間以上約11.0時間以下、約7.5時間以上約10.0時間以下、または約8.0時間以上約9.0時間以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の時間にわたる。
【0081】
別の核生成処理を含む実施形態では、核生成処理は、約700℃以上、例えば約750℃以上、約800℃以上、約850℃以上、約900℃以上、約950℃以上または約1000℃以上、またはそれ以上の温度で行われる。実施形態では、核生成処理は、約700℃以上約1000℃以下、例えば約750℃以上約950℃以下、または約800℃以上約900℃以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の温度で行われる。
【0082】
実施形態では、核生成処理は、0分超、例えば約30分以上、約1.0時間以上、約1.5時間以上、約2.0時間以上、約2.5時間以上、約3.0時間以上、約3.5時間以上、約4.0時間以上、またはそれ以上にわたる。実施形態では、セラミック化は、約30分以上約4.0時間以下、例えば約1.0時間以上約3.5時間以下、または約1.5時間以上約3.0時間以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の時間にわたる。
【0083】
実施形態では、セラミック化は、前駆体ガラスにレーザーを照射することによって行うことができる。レーザーの使用は、前駆体ガラス物品の領域または部分の局所的なセラミック化を可能にし、かかる局所的なセラミック化は、ガラスセラミック中に残留応力および張力を生じ得る。次いで、応力および張力により、携帯電子デバイス用のハウジングまたはバックプレートの端部等の機械的強度が増大したガラスセラミック物品の領域を作り出すことができる。実施形態では、セラミック化プロセスに使用されるレーザーは、二酸化炭素レーザーであり得る。さらに、セラミック化プロセスにおけるレーザーの使用は、ガラスセラミック中のセラミック領域のパターン形成を可能にする。
【0084】
実施形態では、ガラスセラミックはまた、例えばイオン交換によって化学強化され、限定されるものではないが、ディスプレイカバー等の用途のための耐損傷性のガラスセラミックが作製される。
図1を参照すると、ガラスセラミックは、ガラスセラミックの表面から圧縮深さ(DOC)まで延びる圧縮応力下の第1の領域(例えば、
図1の第1および第2の圧縮層120、122)と、ガラスセラミックのDOCから中心または内部領域まで延びる引張応力または中心張力(CT)下の第2の領域(例えば、
図1の中心領域130)とを有する。本明細書で使用される場合、DOCは、ガラスセラミック内の応力が圧縮から引張へと変化する深さを指す。DOCでは、応力が正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に移るため、0の応力値を示す。
【0085】
当該技術分野で通常用いられる慣例によると、圧縮または圧縮応力は負の(<0)応力として表され、張力または引張応力は正の(>0)応力として表される。しかしながら、本明細書全体を通して、CSは正の値または絶対値、すなわち、本明細書で列挙されるように、CS=|CS|として表される。圧縮応力(CS)は、ガラスの表面で最大となる可能性があり、CSは、関数に応じて表面からの距離dと共に変化し得る。再び
図1を参照すると、第1の圧縮層120は、第1の表面110から深さd
1まで延び、第2の圧縮層122は、第2の表面112から深さd
2まで延びる。これらのセグメントが共にガラスセラミック100の圧縮またはCSを規定する。圧縮応力(表面CSを含む)は、折原製作所(日本)製のFSM-6000等の市販の計器を用いて、表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折と関連する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存する。SOCは、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM規格C770-16(その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする)に記載される手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。
【0086】
どちらの圧縮応力領域(
図1の120、122)の圧縮応力も、ガラスの中心領域(130)において蓄積された張力によってバランスが保たれる。最大中心張力(CT)およびDOC値は、当該技術分野で既知の散乱光偏光器(SCALP)技術を用いて測定される。
【0087】
圧縮応力層は、ガラスをイオン交換溶液に曝露することによってガラス内に形成することができる。実施形態では、イオン交換溶液は溶融硝酸塩であり得る。幾つかの実施形態では、イオン交換溶液は、溶融KNO3、溶融NaNO3またはそれらの組合せであり得る。或る特定の実施形態では、イオン交換溶液は、約100%以下の溶融KNO3、例えば約95%以下の溶融KNO3、約90%以下の溶融KNO3、約80%以下の溶融KNO3、約75%以下の溶融KNO3、約70%以下の溶融KNO3、約65%以下の溶融KNO3、約60%以下の溶融KNO3、またはそれ以下を含み得る。或る特定の実施形態では、イオン交換溶液は、約10%以上の溶融NaNO3、例えば約15%以上の溶融NaNO3、約20%以上の溶融NaNO3、約25%以上の溶融NaNO3、約30%以上の溶融NaNO3、約35%以上の溶融NaNO3、約40%以上の溶融NaNO3、またはそれ以上を含み得る。他の実施形態では、イオン交換溶液は、約80%の溶融KNO3および約20%の溶融NaNO3、約75%の溶融KNO3および約25%の溶融NaNO3、約70%の溶融KNO3および約30%の溶融NaNO3、約65%の溶融KNO3および約35%の溶融NaNO3、または約60%の溶融KNO3および約40%の溶融NaNO3、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲を含み得る。実施形態では、他のナトリウム塩およびカリウム塩、例えば亜硝酸ナトリウムもしくは亜硝酸カリウム、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または硫酸ナトリウムもしくは硫酸カリウムをイオン交換溶液に使用することができる。実施形態では、イオン交換溶液はケイ酸、例えば約1質量%以下のケイ酸を含み得る。
【0088】
ガラスセラミックをイオン交換溶液の浴に浸漬するか、イオン交換溶液をガラスセラミックに噴霧するか、または他の形でイオン交換溶液をガラスセラミックに物理的に適用することによって、ガラスセラミックをイオン交換溶液に曝露することができる。ガラスセラミックへの曝露の際に、イオン交換溶液は、実施形態によると、400℃以上500℃以下、例えば410℃以上490℃以下、420℃以上480℃以下、430℃以上470℃以下、または440℃以上460℃以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の温度であり得る。実施形態では、ガラスセラミックは、4時間以上48時間以下、例えば8時間以上44時間以下、12時間以上40時間以下、16時間以上36時間以下、20時間以上32時間以下、または24時間以上28時間以下、ならびに上述の値の間のあらゆる範囲および部分範囲の時間にわたってイオン交換溶液に曝露され得る。
【0089】
イオン交換プロセスは、例えば米国特許出願公開第2016/0102011号明細書(その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする)に開示されるような圧縮応力プロファイルの改善をもたらす処理条件下にてイオン交換溶液中で行うことができる。
【0090】
イオン交換プロセスを行った後、ガラスセラミックの表面の組成が成形時のガラスセラミック(すなわち、イオン交換プロセスを受ける前のガラスセラミック)の組成とは異なり得ることを理解されたい。これは、成形時のガラス中の或る種のアルカリ金属イオン、例えばLi+またはNa+が、それぞれより大きなアルカリ金属イオン、例えばNa+またはK+に置き換えられたためである。しかしながら、ガラス物品の深さの中心または中心付近のガラスセラミックの組成は、実施形態では、イオン交換プロセスによる変化が最も少なく、成形時のガラスセラミックと実質的に同じ、または同じ組成を有し得る。
【0091】
本明細書に開示されるガラスセラミック物品は、別の物品、例えばディスプレイを有する物品(または表示装置)(例えば携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム等を含む家電製品)、建築用品、輸送手段(例えば自動車、列車、航空機、船舶等)、電気器具、または幾らかの透明性、耐引掻き性、耐摩耗性もしくはそれらの組合せを必要とする任意の物品に組み込むことができる。本明細書に開示されるガラスセラミック物品のいずれかを組み込んだ例示的な物品を
図2Aおよび
図2Bに示す。具体的には、
図2Aおよび
図2Bには、前面204、背面206および側面208を有するハウジング202と、少なくとも部分的にまたは完全にハウジング内にあり、少なくともコントローラ、メモリ、およびハウジングの前面にあるかまたはそれに隣接したディスプレイ210を含む電気コンポーネント(図示せず)と、ディスプレイを覆うようにハウジングの前面にあるかまたはそれを覆うカバー基板212とを備える消費者向け電子デバイス200を示す。幾つかの実施形態では、カバー基板212および/またはハウジング202の少なくとも一方の少なくとも一部が、本明細書に開示されるガラス物品のいずれかを含み得る。
【実施例】
【0092】
実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかとなる。これらの実施例が上記の実施形態を限定するものではないことを理解されたい。
【0093】
以下の表1の組成を有する前駆体ガラスを調製した。表1では、全ての成分がモル%であり、ガラス組成物の様々な特性は、本明細書に記載の方法に従って測定した。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
密度値は、ASTM C693-93(2013)の浮力法によって測定した値を指す。硬度は、上記のようにナノインデンタを用いて測定した。ヤング率およびせん断弾性率は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に規定される一般的なタイプの共鳴超音波分光法によって測定した。前駆体ガラスの屈折率(RI)は、589.3nmの波長で測定した。
【0099】
【0100】
ガラスセラミックを前駆体ガラス組成物から形成するセラミック化スケジュールを表2に提示する。他に指示のない限り、セラミック化スケジュールは、前駆体ガラスを炉内で室温から5℃/分の昇温速度で指定の処理条件まで加熱し、指定の時間にわたって保持することを含み、次いで炉を周囲温度まで冷却した。低速昇温1条件を指定するセラミック化スケジュールは、前駆体ガラスを炉内で室温から5℃/分の昇温速度で700℃まで、続いて1℃/分の昇温速度で指定の処理条件まで加熱することを含むものであった。
【0101】
前駆体ガラス組成物のセラミック化によって形成されたガラスセラミックの相構成を、X線回折(XRD)分析に基づいて決定し、以下の表4に記載する。ガラスセラミック中に存在する残留ガラス、ガーナイトおよび正方晶ZrO2相の質量%での量を、リートベルト定量分析を用いて測定した。相構成決定において検出された相を以下の表3に記載する。
【0102】
【0103】
表1の組成物から表2のセラミック化スケジュールを用いてガラスセラミックを作製した。得られるガラスセラミックの特性およびガラスセラミックを作製したセラミック化スケジュールを以下の表4に記載する。さらに、表4に記載するように、ガラスセラミックの一部をイオン交換した。表5に記載する密度差は、ガラスセラミックを成形した際の前駆体ガラスの密度の変化を指す。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
結晶子サイズはオングストロームで記載する。結晶子サイズについて「*」と指定する場合、関連する相の結晶子サイズは決定されなかった。
【0114】
図3は、1000℃で4時間セラミック化した後のガラス組成物5のトンネル電子顕微鏡(TEM)画像である。
図3の最も暗い部分は残留ガラス相に対応し、灰色の部分はガーナイト-スピネル固溶体結晶相に対応し、最も明るい部分はチタン含有正方晶ZrO
2結晶相に対応する。
図3に示されるように、結晶相は樹枝状構造を形成する。
【0115】
図4に、透明な比較ガラスサンプル、透明な比較ガラスセラミックサンプル、およびガラス組成物2のセラミック化によって形成されるガラスセラミックの可視波長範囲で測定された全透過率を提示する。サンプルはそれぞれ、1mm厚であった。
【0116】
図5は、二酸化炭素レーザーの照射によって局所的にセラミック化された一実施形態による前駆体ガラスの正面および側面からの写真である。透明な領域は残留ガラスであり、不透明な領域は結晶相を含有する。
【0117】
本明細書に記載される全ての組成成分、関係および比率は、特に明記しない限り、モル%で提示する。本明細書に開示される全ての範囲は、範囲が開示される前または後に明記されているかを問わず、広く開示される範囲に包含されるあらゆる範囲および部分範囲を含む。
【0118】
特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に様々な変更および変形を加えることができることは当業者には明らかである。このため、かかる変更および変形が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に含まれる限りにおいて、本明細書が本明細書に記載される様々な実施形態の変更および変形を包含することが意図される。
【0119】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0120】
実施形態1
ガラスセラミックであって、
(MgxZn1-x)Al2O4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、
正方晶ZrO2、MgTa2O6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相と
を含み、
前記ガラスセラミックが、可視範囲で不透明であり、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する、
ガラスセラミック。
【0121】
実施形態2
Li2OおよびNa2Oの少なくとも一方をさらに含む、実施形態1記載のガラスセラミック。
【0122】
実施形態3
Li2OおよびNa2Oをさらに含む、実施形態1記載のガラスセラミック。
【0123】
実施形態4
xが0より大きい、実施形態1から3までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0124】
実施形態5
35モル%以上60モル%以下のSiO2をさらに含む、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0125】
実施形態6
35モル%~55モル%のSiO2と、
18モル%以上のAl2O3と、
5モル%以上のMgOと、
2モル%以上のP2O5と
をさらに含む、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0126】
実施形態7
0モル%~14モル%のZnOと、
0モル%~5モル%のTiO2と、
0モル%~5モル%のNa2Oと、
0モル%~5モル%のLi2Oと、
0モル%~2モル%のBaOと、
0モル%~4モル%のB2O3と、
0モル%~1モル%のCaOと、
0モル%~3モル%のEu2O3と、
0モル%~6モル%のTa2O5と、
0モル%~5モル%のLa2O3と、
0モル%~0.1モル%のAs2O5と、
0モル%~0.3モル%のSnO2と
をさらに含む、実施形態6記載のガラスセラミック。
【0127】
実施形態8
ZrO2+TiO2+Eu2O3+Ta2O5+La2O3≦6モル%である、実施形態1から7までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0128】
実施形態9
前記ガラスセラミックが、TiO2を実質的に含まない、実施形態1から8までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0129】
実施形態10
ZrO2+TiO2+Eu2O3+Ta2O5+La2O3≦5.5モル%であり、前記ガラスセラミックが、
La2O3、
Ta2O5および
2モル%以上のLi2O
の少なくとも1つを含む、実施形態1から9までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0130】
実施形態11
ZrO2+TiO2+Eu2O3+Ta2O5+La2O3≦5.1モル%であり、前記ガラスセラミックが、2モル%未満のLi2Oを含み、La2O3およびTa2O5を実質的に含まない、実施形態1から10までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0131】
実施形態12
前記ガラスセラミックが、少なくとも35質量%の結晶化度を示す、実施形態1から11までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0132】
実施形態13
前記ガラスセラミックが、35質量%以上60質量%以下の結晶化度を示す、実施形態1から12までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0133】
実施形態14
前記ガラスセラミックが、100GPa以上125GPa以下のヤング率を有する、実施形態1から13までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0134】
実施形態15
前記ガラスセラミックが、8GPa以上13GPa以下の硬度を有する、実施形態1から14までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0135】
実施形態16
前記ガラスセラミックが、実質的に無色である、実施形態1から15までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0136】
実施形態17
前記第2の結晶相が、正方晶ZrO2を含む、実施形態1から16までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0137】
実施形態18
前記ガラスセラミックが、ZrO2を実質的に含まず、前記第2の結晶相が、MgTa2O6を含む、実施形態1から17までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0138】
実施形態19
前記ガラスセラミックが、造核剤を実質的に含まず、前記第2の結晶相が、ムライトおよびコーディエライトを含む、実施形態1から18までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0139】
実施形態20
前記ガラスセラミックの表面から圧縮深さまで延びる圧縮応力領域をさらに含む、実施形態1から19までのいずれか1つ記載のガラスセラミック。
【0140】
実施形態21
消費者向け電子製品であって、
前面、背面および側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられた電気コンポーネントであって、前記電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面に設けられているかまたは前記前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板と
を備え、
前記ハウジングの少なくとも一部が、実施形態1から19までのいずれか1つ記載のガラスセラミックを含む、
消費者向け電子製品。
【0141】
実施形態22
消費者向け電子製品であって、
前面、背面および側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられた電気コンポーネントであって、前記電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面に設けられているかまたは前記前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板と
を備え、
前記ハウジングの少なくとも一部が、実施形態20記載のガラスセラミックを含む、
消費者向け電子製品。
【0142】
実施形態23
可視範囲で不透明であるガラスセラミックを形成するために、前駆体ガラスをセラミック化するステップ
を含む方法であって、
前記ガラスセラミックが、
(MgxZn1-x)Al2O4[式中、xは1未満である]を含む第1の結晶相と、
正方晶ZrO2、MgTa2O6、ムライトおよびコーディエライトの少なくとも1つを含む第2の結晶相と
を含み、
前記ガラスセラミックが、90GPa以上のヤング率を有し、7.5GPa以上の硬度を有する、
方法。
【0143】
実施形態24
前記セラミック化するステップの前に、前記前駆体ガラス中に核を形成するステップをさらに含む、実施形態23記載の方法。
【0144】
実施形態25
前記核を形成するステップが、前記前駆体ガラスを少なくとも700℃の温度で少なくとも1時間にわたって熱処理するステップを含む、実施形態24記載の方法。
【0145】
実施形態26
前記セラミック化するステップが、前記前駆体ガラスを少なくとも750℃の温度で少なくとも30分にわたって熱処理するステップを含む、実施形態23記載の方法。
【0146】
実施形態27
前記方法が、別の核生成ステップを含まない、実施形態23または26記載の方法。
【0147】
実施形態28
前記ガラスセラミックを形成するために、前記セラミック化するステップが、前記前駆体ガラスにレーザーを照射するステップを含む、実施形態23から27までのいずれか1つ記載の方法。
【0148】
実施形態29
前記ガラスセラミックをイオン交換するステップをさらに含む、実施形態23から28までのいずれか1つ記載の方法。
【0149】
実施形態30
前記イオン交換するステップが、前記ガラスセラミックを混合イオン交換浴と接触させるステップを含む、実施形態29記載の方法。
【0150】
実施形態31
35モル%~55モル%のSiO2と、
18モル%以上のAl2O3と、
5モル%以上のMgOと、
2モル%以上のP2O5と、
0モル%~14モル%のZnOと、
0モル%~5モル%のTiO2と、
0モル%~5モル%のNa2Oと、
0モル%~5モル%のLi2Oと、
0モル%~2モル%のBaOと、
0モル%~4モル%のB2O3と、
0モル%~1モル%のCaOと、
0モル%~3モル%のEu2O3と、
0モル%~6モル%のTa2O5と、
0モル%~5モル%のLa2O3と、
0モル%~0.1モル%のAs2O5と、
0モル%~0.3モル%のSnO2と
を含むガラス。
【国際調査報告】