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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】薄型の多層積層体
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/10 20060101AFI20220117BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C03C27/10 E
B32B17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530154
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 US2019062520
(87)【国際公開番号】W WO2020112467
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/773,560
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デイネカ,マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ジョナサン アール
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA03A
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AG00D
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00C
4F100GB41
4F100JB14C
4F100JK07C
4F100JK07E
4F100JK12A
4F100JN01
4G061AA01
4G061AA03
4G061BA01
4G061BA02
4G061BA03
4G061CD02
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA30
4G061DA32
4G061DA36
4G061DA43
(57)【要約】
積層されたガラス系物品が提供される。ガラス系物品は、第1のガラス系層と、第2のガラス系層と、第1のガラス系層と第2のガラス系層との間に配置されたポリマー層とを少なくとも含む。第1および第2のガラス系層のうちの少なくとも一方は、200μm以下の厚さを有し、ポリマー層は、100μm以下の厚さを有する。ポリマー層は、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する。積層されたガラス系物品を作製する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
第1のガラス系層と、
第2のガラス系層と、
前記第1のガラス系層と前記第2のガラス系層との間に配置された第1のポリマー層と
を備え、
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層のうちの少なくとも一方が、200μm以下の厚さを有し、前記第1のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、前記第1のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する、
物品。
【請求項2】
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層の両方が、200μm以下の厚さを有する、請求項1記載の物品。
【請求項3】
第3のガラス系層と、
前記第2のガラス系層と前記第3のガラス系層との間に配置された第2のポリマー層と
をさらに備え、
前記第3のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、前記第2のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、前記第2のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する、請求項1または2記載の物品。
【請求項4】
第4のガラス系層と、
第5のガラス系層と、
第6のガラス系層と、
前記第3のガラス系層と前記第4のガラス系層との間に配置された第3のポリマー層と、
前記第4のガラス系層と前記第5のガラス系層との間に配置された第4のポリマー層と、
前記第5のガラス系層と前記第6のガラス系層との間に配置された第5のポリマー層と
をさらに備え、
前記第4のガラス系層、前記第5のガラス系層、および前記第6のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する、請求項3記載の物品。
【請求項5】
前記第1のガラス系層が、5N以上のヌープスクラッチ閾値を有する、かつ/または
前記第1のガラス系層が、0.5N以上のビッカーススクラッチ閾値を有する、かつ/または
前記第1のガラス系層が、アルミノホウケイ酸塩である、かつ/または
前記第1のガラス系層が、実質的にROを含まず、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、請求項1から4までのいずれか1項記載の物品。
【請求項6】
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層が、100μm以下の厚さを有する、かつ/または
前記第1のポリマー層が、50μm以下の厚さを有する、かつ/または
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層が、前記第1のポリマー層の厚さよりも大きい厚さを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の物品。
【請求項7】
前記第1のポリマー層が、前記弾性率を前記厚さで除算したとき1MPa/μm以上の比を有する、かつ/または
前記第1のポリマー層が、紫外線硬化性樹脂を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記物品の弾性率が、前記第1のガラス系層の主面に対して垂直な方向で30GPaを超える、かつ/または
前記物品が、400nm~750nmの波長範囲において90%以上の透過率を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の物品。
【請求項9】
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、および側面を有するハウジングと、
前記ハウジング内に少なくとも部分的に設けられた電気コンポーネントであって、前記電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面に設けられているかまたは前記前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、
前記ディスプレイの上に配置されたカバーガラスと
を備え、
前記ハウジングおよび前記カバーガラスのうちの少なくとも一方の少なくとも一部が、請求項1から8までのいずれか1項記載の物品を含む、
消費者向け電子製品。
【請求項10】
第1のガラス系層と第2のガラス系層との間に第1のポリマー層を配置するステップと、
前記第1のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、前記第1のポリマー層を硬化させるステップと
を含み、
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層のうちの少なくとも一方が、200μm以下の厚さを有し、前記第1のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2018年11月30日に出願された米国特許仮出願第62/773,560号の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、積層されたガラス系物品、より詳細には、接着剤層が介在する複数のガラス層を含む積層されたガラス系物品および同ガラス系物品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カバーガラス、ガラスバックプレートなどのガラス物品は、LCDおよびLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、現金自動預け払い機(ATM)など、消費者向けおよび商業用電子デバイスの両方に使用されている。これらのガラス物品の一部には、「タッチ」機能が含まれる場合があり、この機能では、ガラス物品に、ユーザの指および/またはスタイラスデバイスを含む種々の物体が接触する必要がある。そのため、ガラスは、引掻き傷などの損傷なしに定期的な接触に耐えるのに十分な強度を有している必要がある。ガラス物品の表面に入った引掻き傷は、実際に、クラックの開始点として働き、ガラスの致命的な破損に繋がる可能性があるため、ガラス物品の強度を低下させる可能性がある。
【0004】
さらに、かかるガラス物品はまた、携帯電話、パーソナルメディアプレーヤー、ラップトップコンピュータおよびタブレットコンピュータなどの携帯用電子機器に組み込まれる場合がある。これらのデバイスに組み込まれているガラス物品は、関連デバイスの輸送中および/または使用中に急激な衝撃による損傷を受けやすい場合がある。急激な衝撃による損傷には、例えば、デバイスの落下による損傷が含まれ得る。かかる機械的な損傷は、ガラスの破損に繋がる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ガラス物品の表面および縁部に発生する機械的な損傷による破損に対して耐性を有する代替のガラス物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様(1)によれば、物品が提供される。物品は、第1のガラス系層と、第2のガラス系層と、第1のガラス系層と第2のガラス系層との間に配置された第1のポリマー層とを備える。第1のガラス系層および第2のガラス系層のうちの少なくとも一方が、200μm以下の厚さを有し、第1のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する。第1のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する。
【0007】
態様(2)によれば、第1のガラス系層および第2のガラス系層の両方が、200μm以下の厚さを有する、態様(1)記載の物品が提供される。
【0008】
態様(3)によれば、第3のガラス系層と、第2のガラス系層と第3のガラス系層との間に配置された第2のポリマー層とをさらに備える、態様(1)または(2)記載の物品が提供される。第3のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、第2のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、第2のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する。
【0009】
態様(4)によれば、第4のガラス系層と、第5のガラス系層と、第6のガラス系層と、第3のガラス系層と第4のガラス系層との間に配置された第3のポリマー層と、第4のガラス系層と第5のガラス系層との間に配置された第4のポリマー層と、第5のガラス系層と第6のガラス系層との間に配置された第5のポリマー層とをさらに備える、態様(3)記載の物品が提供される。第4のガラス系層、第5のガラス系層、および第6のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、第3のポリマー層、第4のポリマー層、および第5のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する。第3のポリマー層、第4のポリマー層、および第5のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する。
【0010】
態様(5)によれば、第1のガラス系層が、5N以上のヌープスクラッチ閾値を有する、態様(1)から(4)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0011】
態様(6)によれば、第1のガラス系層が、0.5N以上のビッカーススクラッチ閾値を有する、態様(1)から(5)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0012】
態様(7)によれば、第1のガラス系層および第2のガラス系層が、100μm以下の厚さを有する、態様(1)から(6)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0013】
態様(8)によれば、第1のポリマー層が、50μm以下の厚さを有する、態様(1)から(7)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0014】
態様(9)によれば、第1のガラス系層が、アルミノホウケイ酸塩である、態様(1)から(8)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0015】
態様(10)によれば、第1のガラス系層が、50モル%~85モル%のSiOと、5モル%~30モル%のBと、5モル%~30モル%のAlとを含む、態様(1)から(9)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0016】
態様(11)によれば、第1のガラス系層が、R’O-RO-Al≦4モル%によって特徴付けられており、式中、R’O=BeO、MgO、SrO、BaO、およびZnOであり、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、態様(1)から(10)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0017】
態様(12)によれば、第1のガラス系層が、B≧R’O-RO-Al+4モル%によって特徴付けられており、式中、R’O=BeO、MgO、SrO、BaO、およびZnOであり、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、態様(1)から(11)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0018】
態様(13)によれば、第1のガラス系層が、実質的にROを含まず、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、態様(1)から(12)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0019】
態様(14)によれば、第1のポリマー層が、弾性率を厚さで除算したとき1MPa/μm以上の比を有する、態様(1)から(13)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0020】
態様(15)によれば、第1のポリマー層が、弾性率を厚さで除算したとき10MPa/μm以上の比を有する、態様(1)から(14)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0021】
態様(16)によれば、物品の弾性率が、第1のガラス系層の主面に対して垂直な方向で30GPaを超える、態様(1)から(15)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0022】
態様(17)によれば、第1のガラス系層および第2のガラス系層が、第1のポリマー層の厚さよりも大きい厚さを有する、態様(1)から(16)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0023】
態様(18)によれば、第1のポリマー層が、紫外線硬化性樹脂を含む、態様(1)から(17)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0024】
態様(19)によれば、物品が、400nm~750nmの波長範囲において90%以上の透過率を有する、態様(1)から(18)までのいずれか1つ記載の物品が提供される。
【0025】
態様(20)によれば、消費者向け電子製品が提供される。消費者向け電子製品は、前面、背面、および側面を有するハウジングと、ハウジング内に少なくとも部分的に設けられた電気コンポーネントであって、電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、ディスプレイが、ハウジングの前面に設けられているかまたは前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、ディスプレイの上に配置されたカバーガラスとを備える。ハウジングおよびカバーガラスのうちの少なくとも一方の少なくとも一部が、態様(1)から(19)までのいずれか1つ記載の物品を含む。
【0026】
態様(21)によれば、方法が提供される。方法は、第1のガラス系層と第2のガラス系層との間に第1のポリマー層を配置するステップと、第1のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、第1のポリマー層を硬化させるステップとを含む。第1のガラス系層および第2のガラス系層のうちの少なくとも一方が、200μm以下の厚さを有し、第1のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する。
【0027】
態様(22)によれば、第1のガラス系層および第2のガラス系層の両方が、200μm以下の厚さを有する、態様(21)記載の方法が提供される。
【0028】
態様(23)によれば、第2のガラス系層と第3のガラス系層との間に第2のポリマー層を配置するステップと、第2のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、第2のポリマー層を硬化させるステップとをさらに含む、態様(21)または(22)記載の方法が提供される。第3のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、第2のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する。
【0029】
態様(24)によれば、第3のガラス系層と第4のガラス系層との間に第3のポリマー層を配置するステップと、第4のガラス系層と第5のガラス系層との間に第4のポリマー層を配置するステップと、第5のガラス系層と第6のガラス系層との間に第5のポリマー層を配置するステップと、第3のポリマー層、第4のポリマー層、および第5のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、第3のポリマー層、第4のポリマー層、および第5のポリマー層を硬化させるステップとをさらに含む、態様(23)記載の方法が提供される。第4のガラス系層、第5のガラス系層、および第6のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、第3のポリマー層、第4のポリマー層、および第5のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する。
【0030】
態様(25)によれば、全てのポリマー層を硬化させるステップが同時に行われる、態様(23)または(24)記載の方法が提供される。
【0031】
態様(26)によれば、第1のポリマー層を硬化させるステップが、第1のポリマー層を紫外線に曝すステップを含む、態様(21)から(25)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0032】
態様(27)によれば、第1のポリマー層を硬化させるステップが、第1のポリマー層を加熱するステップを含む、態様(21)から(26)までのいずれか1つ記載の方法が提供される。
【0033】
本明細書に記載の積層されたガラス物品およびそれを形成するための追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、部分的には、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含めて、その説明から当業者には容易に明らかになるか、または本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識される。
【0034】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が種々の実施形態を説明しており、請求された主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることが理解されよう。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解を提供するために記載されており、本明細書に援用され、その一部を構成している。図面は、本明細書に記載されている種々の実施形態を示しており、説明とともに、請求された主題の原理および動作を説明するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、ガラス系物品を含む消費者向け電子デバイスの正面図を概略的に示す図である。
図2図1の消費者向け電子デバイスの斜視図を概略的に示す図である。
図3】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、ガラス系物品の断面を概略的に示す図である。
図4】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、ガラス系物品の断面を概略的に示す図である。
図5】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、落下試験を受けた後のガラス系物品の写真である。
図6】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、ガラス系物品の断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここでは、複数のガラス系層と、当該ガラス系層の間に配置されたポリマー層とを含むガラス系物品の実施形態を詳細に参照する。その例は、添付の図面に示されている。
【0037】
本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までの範囲として表すことができる。かかる範囲が表現される場合、別の実施形態は、一方の特定の値からおよび/または他方の特定の値までを含む(すなわち、範囲は、明示的に述べられた端点を含む)。同様に、値が近似として表される場合、先行詞「約」を使用することにより、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。例えば、「約1~約2」の範囲には、「1~2」の範囲も明示的に含まれる。同様に、「約1~約2」の範囲もまた、「1~2」の範囲を明示的に含む。さらに、各範囲の端点は、他の端点に関して、および他の端点とは独立して、重要であることが理解されよう。
【0038】
本明細書で使用される方向の用語(例えば、上方、下方、右方、左方、前方、後方、頂部方向、底部方向)は、描かれた図を参照してのみ作成され、絶対的な配向を意味するものではない。
【0039】
別段明記しない限り、本明細書に記載される方法は、そのステップが特定の順序で実行されることを要求するものとして解釈されることも、装置固有の配向が要求されることも決して意図するものでもない。したがって、方法クレームがそのステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、もしくはいずれかの装置クレームが実際に個々の構成要素に対する順序または配向を記載していない場合、あるいはステップが特定の順序に限定されることが特許請求の範囲もしくは説明に具体的に記載されていない場合、または装置の構成要素に対する特定の順序もしくは配向が記載されていない場合、いかなる点においても、順序または配向を推測することを意図したものではない。これは、解釈のための潜在的な非明示的根拠に当てはまるものであり、これには、ステップの配置、動作フロー、構成要素の順序に関するロジックの順序、もしくは構成要素の配向と、文法的な構成または句読点に由来する明白な意味と、本明細書に記載されている実施形態の数または種類と、が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が別段他のことを指示しない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「a」構成要素への言及は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、2つ以上のかかる構成要素を有する態様を含む。
【0041】
本明細書に記載のガラス系物品は、少なくとも2つのガラス系層と、ガラス系層の間に配置されたポリマー層との積層体である。ガラス系層のうちの少なくとも1つは薄く、200μm以下の厚さである。ポリマー層は、ガラス系層よりも薄く、100μm以下の厚さを有し得る。ポリマー層は、剛性が高くなるように選択され、これによって、ガラス系層の急激な屈曲が防止され、積層されたガラス系物品の耐破損性が向上するようになっている。ガラス系物品の耐破損性は、落下試験の結果に示すように、同様の厚さの化学強化された一体型のガラス系物品の耐性を上回ることができる。
【0042】
本明細書に記載のガラス系物品により、化学強化または熱による焼き戻しを必要とせずに、高い耐破壊性が提供される。このため、ガラス系物品の製造を簡素化することができ、コストを低減することができる。さらに、イオン交換強化を必要とせずに高い耐破壊性を実現できるため、ガラス系層は、一部の電子デバイス用途では望ましくないアルカリ金属を含まないか、または実質的に含まないことが可能になる。本明細書で利用される場合、「実質的に含まない」という用語は、構成要素が組成物または物品に積極的に添加されないが、不純物として0.1モル%以下の量で存在し得ることを示す。「ガラス系」という用語は、本明細書では、ガラスおよびガラスセラミック(アモルファス相および結晶相を含む)など、全体的または部分的にガラスで作られた任意の物体を含む意味で使用される。
【0043】
本明細書に開示される積層されたガラス系物品は、他の物品、例えば、ディスプレイを備えた物品(またはディスプレイ物品)(例えば、モニタ、テレビ、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム、ウェアラブルデバイス(例えば、時計)などの消費者向け電子機器)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、トラック、列車、航空機、船舶などを含む車両用の窓)、電化製品の物品、またはある程度の透明性および損傷に対する耐性の向上を必要とする物品に組み込むことができる。本明細書に開示される積層されたガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示的な物品が、図1および図2に概略的に示されている。具体的には、図1および図2は、消費者向け電子デバイス100を示しており、この消費者向け電子デバイス100には、前面104、背面106、および側面108を有するハウジング102と、ハウジング内に少なくとも部分的にまたは完全に設けられ、少なくともコントローラ、メモリ、およびハウジングの前面に設けられているかまたは前面に隣接して設けられているディスプレイ110を含む電気コンポーネント(図示せず)と、ディスプレイの上になるようにハウジングの前面にまたは前面の上に設けられたカバー基板112と、が含まれる。一部の実施形態では、カバー基板112およびハウジング102のうちの少なくとも1つの少なくとも一部は、本明細書に開示される積層されたガラス系物品のいずれかを含み得る。
【0044】
本明細書に記載のガラス系物品は、少なくとも第1のガラス系層、第2のガラス系層、および第1のガラス系層と第2のガラス系層との間に配置された第1のポリマー層を含む。ガラス系物品に含まれる個々のガラス系層およびポリマー層は、以下に記載される特性のいずれかを有するように選択することができる。
【0045】
例示的なガラス系物品が図3に示されている。図3のガラス系物品300は、第1のガラス系層310、第2のガラス系層320、およびガラス系層の間に配置された第1のポリマー層315を含む。実施形態では、ガラス系物品は、付加ガラス系層を含み得る。図4に示すように、ガラス系物品400には、第1のガラス系層410、第1のポリマー層415、第2のガラス系層420、第2のポリマー層425、第3のガラス系層430、第3のポリマー層435、第4のガラス系層440、第4のポリマー層445、第5のガラス系層450、第5のポリマー層455、および第6のガラス系層460が含まれる。図4に示されるガラス系物品は6つのガラス系層を含んでいるが、本明細書に記載されるガラス系物品は、2つ以上の任意の数のガラス系層を含み得る。例えば、ガラス系物品は、3つ以上のガラス系層、例えば、4つ以上のガラス系層、5つ以上のガラス系層、6つ以上のガラス系層、またはそれ以上のガラス系層を含んでもよい。概して、ガラス系物品は、ガラス系層の数よりも1つ少ないポリマー層を含み得る。図3および図4に示されるように、ガラス系物品の外側平面は、ガラス系層によって形成され得る。このため、ガラス系物品の特性の少なくとも一部、例えば耐傷性は、外側のガラス系層/露出したガラス系層の特性に起因することになり、これらに実質的に類似し得る。
【0046】
本明細書に開示されるガラス系物品は、200μm以下の厚さを有する少なくとも1つのガラス系層を含む。ガラス系層の厚さが薄いため、層が屈曲して衝撃エネルギーを放散し、破壊を低減または防止することができる。さらに、ガラス系層が薄いことで、ガラス系層に形成されるクラックの可視性を低下させることができる。一部の実施形態では、ガラス系物品の全てのガラス系層は、200μm以下の厚さを有し得る。図3および図4に示されるように、ガラス系物品のガラス系層は、実質的に同等の厚さか、または同等の厚さを有し得る。一部の実施形態では、ガラス系物品に含まれるガラス系層は、異なる厚さを有し得る。実施形態では、ガラス系物品のガラス系層のうちの少なくとも1つは、200μm以下、例えば、190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、120μm以下、110μm以下、100μm以下、90μm以下、またはそれ以下の厚さを有する。実施形態では、ガラス系物品のガラス系層のうちの少なくとも1つは、90μm以上200μm以下、例えば、100μm以上190μm以下、110μm以上180μm以下、120μm以上170μm以下、130μm以上160μm以下、140μm以上150μm以下、およびこれらの端点のいずれかから形成された全てのサブ範囲の厚さを有する。
【0047】
本明細書に開示されるガラス系物品は、100μm以下の厚さを有するガラス系層の間に配置された少なくとも1つのポリマー層を含む。ポリマー層の厚さが薄いことは、ガラス系物品の耐破損性に寄与する。特定の理論に拘束されることを望まないが、薄いポリマー層により、以下に説明するポリマーの剛性と組み合わせて、落下または衝撃を受けたときに個々のガラス系層が急激に屈曲するのを防ぎ、それによってガラス系層の破壊を防ぐことができる。ポリマー層はまた、ポリマー層と接触しているガラス系層の表面を、破壊に繋がり得る新しい欠陥の導入から保護し、一部の実施形態では、ポリマー層と接触している表面に存在する欠陥の成長を低減または防止することができる。一部の実施形態では、ガラス系物品のうちのガラス系層の間に配置された全てのポリマー層は、個別に、100μm以下の厚さを有し得る。実施形態では、ポリマー層は、個別に、100μm以下、例えば、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、4μm以下、またはそれ以下の厚さを有してもよい。実施形態では、ポリマー層は、個別に、2μm以上100μm以下、例えば、4μm以上95μm以下、6μm以上90μm以下、8μm以上85μm以下、10μm以上80μm以下、15μm以上75μm以下、20μm以上70μm以下、25μm以上65μm以下、30μm以上60μm以下、35μm以上55μm以下、40μm以上50μm以下、およびこれらの端点から形成された全てのサブ範囲の厚さを有してもよい。ガラス系物品に複数のポリマー層が含まれる場合、ガラス系物品のポリマー層は、異なる厚さを有し得る。複数のポリマー層がガラス系物品に含まれる他の実施形態では、ポリマー層は、実質的に同等の厚さか、または同等の厚さを有し得る。実施形態では、ポリマー層は、ポリマー層が隣接するガラス系層よりも薄くてもよい。
【0048】
ポリマー層は、比較的剛性が高くてもよく、例えば、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するポリマーであってもよい。ポリマー層材料の剛性により、ガラス系層を拘束し、ガラス系層のクラックの成長を防ぎ、ガラス系層の屈曲および破損を防止することができる。ポリマー層は、1/sのひずみ速度で100MPa以上、例えば105MPa以上、110MPa以上、115MPa以上、120MPa以上、125MPa以上、またはそれ以上の弾性率を有してもよい。実施形態では、ポリマー層の剛性は、ポリマー層の厚さに関係し得、ポリマー層の厚さで除算したポリマー層の弾性率は、1MPa/μm以上、例えば、2MPa/μm以上、3MPa/μm以上、4MPa/μm以上、5MPa/μm以上、6MPa/μm以上、7MPa/μm以上、8MPa/μm以上、9MPa/μm以上、10MPa/μm以上、またはそれ以上である。
【0049】
ポリマー層は、任意の適切なポリマー材料から形成することができる。実施形態では、ポリマー層は、光学的に透明な樹脂などの樹脂を含み得る。ポリマー層は、フロントガラスを修理するために概して利用される樹脂など、市販のものを使用することができる。実施形態では、ポリマー層は、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含み得る。ポリマー層は、400nm~750nmの波長範囲にわたって90%以上、例えば、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはそれ以上の透過率を有してもよい。ガラス系物品に複数のポリマー層が含まれる場合、ガラス系物品のポリマー層は、同じ材料から形成され得る。複数のポリマー層がガラス系物品に含まれる他の実施形態では、ポリマー層は、異なる材料から形成され得る。
【0050】
ガラス系層は、ガラスまたはガラスセラミック材料を含み得る。実施形態では、ガラス系物品に含まれるガラス系層の組成は、実質的に同等の組成か、または同等の組成であり得る。ガラス系層は、アルミノホウケイ酸塩ガラスなどのアルミノケイ酸塩系ガラスであり得る。実施形態では、ガラス系層は、高い耐引掻き性を提供するように選択され得る。ガラス系層は、5N以上、例えば、5.5N以上、6N以上、またはそれ以上のヌープスクラッチ閾値を有してもよい。ガラス系層は、0.5N以上、例えば、1.0N以上、1.5N以上、またはそれ以上のビッカーススクラッチ閾値を有してもよい。ガラス系層の耐傷性は、本明細書に記載のガラス系物品が有用である用途で過去に使用された交換強化ガラス物品の耐傷性よりも高くてもよい。ガラス系層は、400nm~750nmの波長範囲にわたって90%以上、例えば、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはそれ以上の透過率を有してもよい。
【0051】
一部の実施形態では、ガラス系層は、任意の適切な量のSiOを含み得る。SiOはガラス系層の最大の構成要素であるため、SiOは、ガラス組成物から形成されるガラス網目の主要な構成要素である。ガラス組成物中のSiOの濃度が高すぎると、SiOの濃度が高いほどガラスの溶融が困難になってガラスの成形性に悪影響を与えるため、ガラス組成物の成形性が低下する可能性がある。一部の実施形態では、ガラスコア層のガラス組成物は、約50モル%~約85モル%、例えば、約55モル%~約80モル%、約60モル%~約75モル%、約65モル%~約70モル%、およびこれらの端点のいずれかによって形成されるサブ範囲の量のSiOを含んでもよい。
【0052】
ガラス系層はまた、任意の適切な量のAlを含み得る。Alは、SiOと同様に、ガラス網目形成物として機能し得る。Alは、ガラス組成物から形成されたガラス溶融物において四面体配位することにより、ガラス組成物の粘度を増加させ、Alの量が多すぎる場合にガラス組成物の成形性を低下させる可能性がある。しかしながら、Alの濃度がガラス組成物中のSiOの濃度およびアルカリ酸化物の濃度と平衡している場合、Alは、ガラス溶融物の液相線温度を下げることができ、それによって液相線粘度を高め、溶融成形プロセスなどの特定の成形プロセスとのガラス組成物の適合性を改善することができる。ガラス系層にAlを含めると、相分離が防止され、ガラス内の非架橋酸素(NBO)の数が減少する。さらに、Alは、ガラス系物品の積層前または積層後に、ガラス系層がイオン交換によって強化された場合に、イオン交換の有効性を向上させることができる。一部の実施形態では、ガラス系層は、約5モル%~約30モル%、例えば、約10モル%~約25モル%、約15モル%~約20モル%、およびこれらの端点のいずれかによって形成されるサブ範囲の量のAlを含んでもよい。
【0053】
ガラス系層はまた、所望の耐傷性を得るのに十分な任意の量のBを含み得る。ガラス系層にBを含めると、ガラスの本来の損傷に対する耐性が高まる。一部の実施形態では、ガラス系層は、約5モル%~約30モル%、例えば、約10モル%~約25モル%、約15モル%~約20モル%、およびこれらの端点のいずれかによって形成されるサブ範囲の量のBを含んでもよい。
【0054】
ガラス系層は、任意の適切な量のアルカリ金属酸化物を含み得る。ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物(例えば、LiO、NaO、およびKO、ならびにCsOおよびRbOを含む他のアルカリ金属酸化物)の合計は、「RO」と称され得、ROは、モル%で表され得る。一部の実施形態では、ガラス系層は、ROを実質的に含まないか、または含まない場合がある。他の実施形態では、ガラス系層は、0モル%を超える量のROを含み得、かかるガラス系層により、ガラス系層のイオン交換強化が可能となる。
【0055】
ガラス系層は、任意の適切な量のアルカリ金属酸化物を含み得る。ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物(BeO、MgO、SrO、BaO、およびZnO)の合計は、「R’O」と称され得、R’Oは、モル%で表され得る。
【0056】
ガラス系層中のアルカリ金属酸化物、アルカリ金属酸化物、およびアルミナの含有量は、所望の特性を実現するために平衡であり得る。これらの成分の平衡をとることにより、ガラス系層内の非架橋酸素の濃度を低減させることができる。実施形態では、ガラス系層は、R’O-RO-Alが4モル%以下、例えば3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、またはそれ以下であることを特徴とする。実施形態では、ガラス系層中のホウ素酸化物はまた、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属酸化物、およびアルミナの含有量に対して平衡であり得る。実施形態では、ガラス系層は、R’O-RO-Al+4モル%以上の量のBを含む。
【0057】
一部の実施形態では、ガラス系物品のガラス系層は、約50モル%~約85モル%のSiO、約5モル%~約30モル%のAl、および約5モル%~約30モル%のBを含む組成物を有し得る。ガラス系層の例示的な組成が以下の表Iに提供されている。ガラス系層は、米国特許第7,851,394号明細書および/または米国特許第7,534,734号明細書に従って作製されたガラス組成物を含み得、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に援用されている。
【0058】
【表1】
【0059】
本明細書に記載のガラス系物品は、無色透明として視認され得る。実施形態では、ガラス系物品は、400nm~750nmの波長範囲にわたって90%以上、例えば、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、またはそれ以上の透過率を有してもよい。
【0060】
ガラス系物品は、ガラス系層の主面に対して垂直な方向に30GPa以上の弾性率を有し得る。この弾性率は、ガラス系物品が破壊することなく衝撃エネルギーを吸収する能力に寄与し得る。
【0061】
ガラス系物品は、任意の適切な形状を有し得る。実施形態では、ガラス系物品は実質的に平坦または平面である。一部の実施形態では、ガラス系物品は、開口部またはノッチを含み得、例えば、カメラ、スピーカー、マイクロフォン、または指紋センサを収容するための開口部を含み得る。
【0062】
ガラス系物品は、任意の適切な積層プロセスによって作製することができる。概して、ガラス系物品は、ガラス系層間にポリマー層を配置し、次にポリマー層を硬化させることで作製され、1/sのひずみ速度で100MPa以上のポリマー層の弾性率が実現される。ガラス系物品に3つ以上のガラス系層が含まれる場合、追加される付加ガラス系層ごとに配置ステップを繰り返して、積層体スタックを形成することができる。複数のポリマー層が存在する実施形態では、全てのポリマー層を同時に硬化させることができる。
【0063】
ガラス系物品は、積層後に所望の形状に切断または機械加工することができる。ガラス系物品に大きな圧縮応力がないために、少なくとも部分的にこれが可能となる。実施形態では、ガラス系層は、積層体スタックの組み付けおよび硬化の前に、所望の最終形状に切断および機械加工することができる。
【0064】
ポリマー層の配置は、所望の厚さのポリマー層を作製し得る任意の方法で実施することができる。実施形態では、ポリマー層は、ドクタブレード、ローラ、スプレーシステム、または当技術分野で既知の他の任意の技術を使用して配置することができる。ガラス系層間にポリマー層を配置した後、ガラス系層に圧力を印加して、積層体から気泡または過剰なポリマーを除去することができる。
【0065】
ポリマー層の硬化は、任意の適切な技術で実施することができる。実施形態では、ポリマー層は、積層体を紫外線に照射すことによって硬化させることができる。実施形態では、ポリマー層は、積層体全体を熱処理することによって、またはポリマー層を局所的に加熱することによって硬化させることができる。例えば、積層体をオーブン、炉、またはホットプレート上に配置して、ポリマー層を熱処理および硬化してもよい。一部の実施形態では、紫外線照射と熱処理との組み合わせを使用して、ポリマー層を硬化させることができる。一部の実施形態では、硬化プロセスは、ポリマー層のある程度の収縮を誘発して、ガラス系層をさらに拘束し得る。
【実施例
【0066】
本明細書に記載の実施形態は、以下の実施例によってさらに明確となるであろう。
【0067】
積層されたガラス系物品は、6つのガラス系層を所望の形状に切断することによって調製され、ガラス系層は、上記の表Iの組成を有し、100μmの厚さを有していた。市販のUltraBond45cps樹脂を第1のガラス系層の上に塗布し、第2のガラス系層を樹脂層の上に配置した。次に、層をプレスしてポケットまたは気泡を取り除き、余分な樹脂のしみ出しを行った。樹脂および付加ガラス系層の塗布を、6つのガラス系層を含む積層体スタックが生成されるまで繰り返した。次に、積層体スタックに市販のGE 15W F15T8 BLBランプからの紫外線を照射して、樹脂を硬化させた。次に、硬化したガラス系物品を落下試験車両に取り付け、180グリットの酸化アルミニウムサンドペーパー上に落下させ、高さ20cmから始めて、落下高さ220cmまで10cm刻みで増加させた。次に、220cmの落下高さでも破損しなかった試料を、30グリットのサンドペーパーを使って同じテストプロトコルでテストした。図5は、180グリットのサンドペーパーに20回、30グリットのサンドペーパーに20回落下させた後の、落下試験車両に取り付けられたガラス系物品を示している。図5に示されるように、ガラス系物品500には、衝撃の結果として窪みが示されるが、破壊されたようには見えない。
【0068】
図5のガラス系物品と同じ手順を使用して作製されたガラス系物品の断面が図6に示されている。図6のガラス系物品600には、それぞれが上記の表Iの組成を有する6つの100μm厚のガラス系層610、620、630、640、650、および660が含まれる。ガラス系物品には、33.125μmの厚さを有する第1のポリマー層615、21.287μmの厚さを有する第2のポリマー層625、28.75μmの厚さを有する第3のポリマー層635、21.287μmの厚さを有する第4のポリマー層645、および27.507μmの厚さを有する第5のポリマー層655が含まれる。
【0069】
同じ手順を使用するものの、ガラス系層を3つ、ポリマー層を2つのみとした第2の試料を作製した。この試料は、180グリットのサンドペーパーへの平均落下高さ98cmで破損した。よって、より薄く、より柔軟性のあるガラス系物品は、6つのガラス系層の物品ほどに頑丈ではなかった。
【0070】
ガラス系物品を、異なる厚さを有し、表Iの組成を有する2つのガラス系層と、単一のポリマー層と、を用いて作製した。ガラス系層の厚さおよびポリマー層の平均厚さを、以下の表IIに示す。市販のUltraBond45cps樹脂を、熱処理と紫外線(UV)照射の組み合わせで硬化した。試料AおよびBを室温で硬化させた。試料C、D、およびEは、表IIに示す温度および前硬化時間で硬化前に熱処理を行い、その後、表IIに示す時間、UV照射しながら熱処理温度で硬化させ、UV照射しながら室温で硬化させた。
【0071】
【表2】
【0072】
表IIに示す平均クラック長さは、薄いガラス層を120グリットのサンドペーパーに接触させた状態で、硬化したガラス系物品に3インチ(約76.2mm)の高さからボールを落とした後の最大クラック長さとして測定した。
【0073】
ガラス系物品を、異なる厚さを有し、表Iの組成を有する2つまたは3つのガラス系層および1つまたは2つのポリマー層を用いて作製した。ガラス系層の厚さおよびポリマー層の平均厚さを、以下の表IIIに示す。市販のUltraBond45cps樹脂を、熱処理と紫外線(UV)放射の組み合わせで硬化した。試料C、D、およびEは、表IIIに示す温度および前硬化時間で硬化前に熱処理を行い、その後、表IIIに示す時間、UV照射しながら熱処理温度で硬化させた。試料GおよびIは、表IIIに示す時間、UV照射による硬化の前に熱処理を行わなかった。
【0074】
【表3】
【0075】
表IIIに示す平均クラック長さは、薄いガラス層を120グリットのサンドペーパーに接触させた状態で、硬化したガラス系物品に3インチ(約76.2mm)の高さからボールを落とした後の最大クラック長さとして測定した。
【0076】
請求された主題の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対して種々の修正および変形が行われ得ることは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載の種々の実施形態の修正例および変形例を包含することを意図しているが、かかる修正例および変形例は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にある。
【0077】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0078】
実施形態1
物品であって、
第1のガラス系層と、
第2のガラス系層と、
前記第1のガラス系層と前記第2のガラス系層との間に配置された第1のポリマー層と
を備え、
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層のうちの少なくとも一方が、200μm以下の厚さを有し、前記第1のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、前記第1のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する、
物品。
【0079】
実施形態2
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層の両方が、200μm以下の厚さを有する、実施形態1記載の物品。
【0080】
実施形態3
第3のガラス系層と、
前記第2のガラス系層と前記第3のガラス系層との間に配置された第2のポリマー層と
をさらに備え、
前記第3のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、前記第2のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、前記第2のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する、実施形態1または2記載の物品。
【0081】
実施形態4
第4のガラス系層と、
第5のガラス系層と、
第6のガラス系層と、
前記第3のガラス系層と前記第4のガラス系層との間に配置された第3のポリマー層と、
前記第4のガラス系層と前記第5のガラス系層との間に配置された第4のポリマー層と、
前記第5のガラス系層と前記第6のガラス系層との間に配置された第5のポリマー層と
をさらに備え、
前記第4のガラス系層、前記第5のガラス系層、および前記第6のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層が、100μm以下の厚さを有し、前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層が、1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有する、実施形態3記載の物品。
【0082】
実施形態5
前記第1のガラス系層が、5N以上のヌープスクラッチ閾値を有する、実施形態1から4までのいずれか1つ記載の物品。
【0083】
実施形態6
前記第1のガラス系層が、0.5N以上のビッカーススクラッチ閾値を有する、実施形態1から5までのいずれか1つ記載の物品。
【0084】
実施形態7
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層が、100μm以下の厚さを有する、実施形態1から6までのいずれか1つ記載の物品。
【0085】
実施形態8
前記第1のポリマー層が、50μm以下の厚さを有する、実施形態1から7までのいずれか1つ記載の物品。
【0086】
実施形態9
前記第1のガラス系層が、アルミノホウケイ酸塩である、実施形態1から8までのいずれか1つ記載の物品。
【0087】
実施形態10
前記第1のガラス系層が、
50モル%~85モル%のSiOと、
5モル%~30モル%のBと、
5モル%~30モル%のAl
を含む、実施形態1から9までのいずれか1つ記載の物品。
【0088】
実施形態11
前記第1のガラス系層が、
R’O-RO-Al≦4モル%によって特徴付けられており、
式中、R’O=BeO、MgO、SrO、BaO、およびZnOであり、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、実施形態1から10までのいずれか1つ記載の物品。
【0089】
実施形態12
前記第1のガラス系層が、
≧R’O-RO-Al+4モル%によって特徴付けられており、
式中、R’O=BeO、MgO、SrO、BaO、およびZnOであり、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、実施形態1から11までのいずれか1つ記載の物品。
【0090】
実施形態13
前記第1のガラス系層が、実質的にROを含まず、RO=LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOである、実施形態1から12までのいずれか1つ記載の物品。
【0091】
実施形態14
前記第1のポリマー層が、前記弾性率を前記厚さで除算したとき1MPa/μm以上の比を有する、実施形態1から13までのいずれか1つ記載の物品。
【0092】
実施形態15
前記第1のポリマー層が、前記弾性率を前記厚さで除算したとき10MPa/μm以上の比を有する、実施形態1から14までのいずれか1つ記載の物品。
【0093】
実施形態16
前記物品の弾性率が、前記第1のガラス系層の主面に対して垂直な方向で30GPaを超える、実施形態1から15までのいずれか1つ記載の物品。
【0094】
実施形態17
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層が、前記第1のポリマー層の厚さよりも大きい厚さを有する、実施形態1から16までのいずれか1つ記載の物品。
【0095】
実施形態18
前記第1のポリマー層が、紫外線硬化性樹脂を含む、実施形態1から17までのいずれか1つ記載の物品。
【0096】
実施形態19
前記物品が、400nm~750nmの波長範囲において90%以上の透過率を有する、実施形態1から18までのいずれか1つ記載の物品。
【0097】
実施形態20
消費者向け電子製品であって、
前面、背面、および側面を有するハウジングと、
前記ハウジング内に少なくとも部分的に設けられた電気コンポーネントであって、前記電気コンポーネントが、少なくともコントローラ、メモリ、およびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面に設けられているかまたは前記前面に隣接して設けられている、電気コンポーネントと、
前記ディスプレイの上に配置されたカバーガラスと
を備え、
前記ハウジングおよび前記カバーガラスのうちの少なくとも一方の少なくとも一部が、実施形態1から19までのいずれか1つ記載の物品を含む、
消費者向け電子製品。
【0098】
実施形態21
第1のガラス系層と第2のガラス系層との間に第1のポリマー層を配置するステップと、
前記第1のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、前記第1のポリマー層を硬化させるステップと
を含み、
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層のうちの少なくとも一方が、200μm以下の厚さを有し、前記第1のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する、
方法。
【0099】
実施形態22
前記第1のガラス系層および前記第2のガラス系層の両方が、200μm以下の厚さを有する、実施形態21記載の方法。
【0100】
実施形態23
前記第2のガラス系層と第3のガラス系層との間に第2のポリマー層を配置するステップと、
前記第2のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、前記第2のポリマー層を硬化させるステップと
をさらに含み、
前記第3のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、前記第2のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する、実施形態21または22記載の方法。
【0101】
実施形態24
前記第3のガラス系層と第4のガラス系層との間に第3のポリマー層を配置するステップと、
前記第4のガラス系層と第5のガラス系層との間に第4のポリマー層を配置するステップと、
前記第5のガラス系層と第6のガラス系層との間に第5のポリマー層を配置するステップと、
前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層が1/sのひずみ速度で100MPa以上の弾性率を有するように、前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層を硬化させるステップと
をさらに含み、
前記第4のガラス系層、前記第5のガラス系層、および前記第6のガラス系層が、200μm以下の厚さを有し、前記第3のポリマー層、前記第4のポリマー層、および前記第5のポリマー層が、100μm以下の厚さを有する、実施形態23記載の方法。
【0102】
実施形態25
全ての前記ポリマー層を硬化させるステップが同時に行われる、実施形態23または24記載の方法。
【0103】
実施形態26
前記第1のポリマー層を硬化させるステップが、前記第1のポリマー層を紫外線に曝すステップを含む、実施形態21から25までのいずれか1つ記載の方法。
【0104】
実施形態27
前記第1のポリマー層を硬化させるステップが、前記第1のポリマー層を加熱するステップを含む、実施形態21から26までのいずれか1つ記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】