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特表2022-509849心臓補助のためのシステム、当該システムを操作するための方法、及び、心臓支援方法
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  • 特表-心臓補助のためのシステム、当該システムを操作するための方法、及び、心臓支援方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(54)【発明の名称】心臓補助のためのシステム、当該システムを操作するための方法、及び、心臓支援方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/117 20210101AFI20220117BHJP
   A61M 60/569 20210101ALI20220117BHJP
   A61M 60/515 20210101ALI20220117BHJP
   A61M 60/221 20210101ALI20220117BHJP
【FI】
A61M60/117
A61M60/569
A61M60/515
A61M60/221
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530294
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2019083874
(87)【国際公開番号】W WO2020115234
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】18210876.1
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521228776
【氏名又は名称】クセニオス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】シムンディク イヴォ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD10
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH13
4C077HH15
4C077HH18
4C077JJ03
4C077JJ16
4C077JJ19
(57)【要約】
本発明は、システムの吸引ライン(12)から圧力ライン(14)への流体の流れを生成するように構成されたポンプ(18)と、当該ポンプ(18)及び/または調整可能な流量制限器(20)を制御して調整可能な流量及び/または圧力を提供するように構成された制御装置(22)と、を含む、体外での心臓補助システム(10)に関する。制御装置(22)は、流体の流れに挿入される複数の連続的な支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを伴う支援モードを実行するように、及び、複数のそのようなパルスを伴う引き離しモードを実行するように、構成されている。各パルスによって流体の流れに提供されるエネルギの量は、支援モードよりも引き離しモードにおいてより低い。本発明は、更に、当該システム(10)を作動させる方法、及び、治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外での心臓補助のためのシステム(10)であって、
内部管腔を有する少なくとも1つの吸引ライン(12)と、
内部管腔を有する少なくとも1つの圧力ライン(14)と、
前記吸引ライン(12)及び前記圧力ライン(14)に流体的に接続された少なくとも1つのポンプ(18)と、
前記ポンプ(18)及び/または調整可能な流量制限器(20)を制御して、前記圧力ライン(14)内の流体の流れの調整可能な流量及び/または圧力を提供するように構成された制御装置(22)と、
を備え、
前記ポンプ(18)は、流体、特には血液、をポンピングして、前記吸引ライン(12)から前記圧力ライン(14)への流体の流れを可能にするように構成されており、
前記制御装置(22)は、支援モードを実行するように構成され、当該支援モードは、流体の流れに適用される一連の連続的な支援流量及び/または圧力パルスを含み、
前記制御装置(22)は、引き離しモードを実行するように構成され、当該引き離しモードは、流体の流れに適用される一連の連続的な引き離し流量及び/または圧力パルスを含み、
引き離しモードの1パルスによって流体の流れに適用される機械的エネルギは、支援モードにおけるよりも低く、
前記流量及び/または圧力パルスは、好適には、患者の心拍と同期されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
当該システム(10)は、ベースの流体の流れを実装するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
当該システム(10)は、特に前記制御装置(22)が、ポンプ出力の関数として、流量パルス及び/または圧力パルスを生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
当該システム(10)は、特に前記制御装置(22)が、ポンプ出力を収縮させることによって、パルス振幅及び/またはパルス幅を変調するように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム(10)。
【請求項5】
当該システム(10)は、特に前記制御装置(22)が、前記流量制限器(20)を差動的に調整することによって前記流量及び/または圧力パルスを生成し、それによってパルス幅及び/またはパルス振幅を変調するように構成されている
ことを特徴とする請求項3または4に記載のシステム(10)。
【請求項6】
当該システム(10)は、特に前記制御装置(22)が、前記流量制限器(20)を調整して前記流れを減少させる、及び/または、異なる、特にはより長い、持続時間だけ前記流量制限器(22)のサイズを減少させる、ように構成されている
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項7】
当該システム(10)は、患者の心臓のタイミングを測定するように構成された少なくとも1つの心臓センサ(26)を備え、及び/または、患者(16)の1または複数の心臓値を測定するための心臓センサ(26)と接続するように構成されたインタフェースを備え、
当該システム(10)は、特に前記制御装置(22)が、測定された心拍出量に応答して、及び/または、測定された心臓パラメータに応答して、心臓支援を調整するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記制御装置(22)は、少なくとも1つの測定される心臓パラメータが変化するまで、各引き離しパルスによって前記流体の流れに提供されるエネルギの量を低減するように構成されている
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記制御装置(22)は、測定された心拍出量及び/または測定された心臓パラメータに応答して、前記流量パルス及び/または前記圧力パルスを調整するように構成されている、並びに/または、測定された心臓性能に依存して、前記流量及び/または圧力パルスの開始を心周期位相に同期させるように構成されている
ことを特徴とする請求項7または8に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記制御装置(22)は、各引き離しパルスによって前記流体の流れに適用される機械的エネルギ供給を、所定のエネルギ閾値を超えるように、及び/または、所定の流量閾値を超える平均引き離し流量を生成するように、変調するように構成されており、並びに/または、当該システム(10)は、測定される心臓性能の値の1または複数が所定の心臓性能閾値を超えて悪化するのを防ぐのに十分な心臓支援を提供するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記制御装置(22)は、引き離しモードを漸進的な引き離しモードとして実行するように構成されており、
前記引き離しモードは、一連の第1引き離し流量パルス及び/または圧力パルスを含む第1引き離しモードと、一連の第2引き離し流量及び/または圧力パルスを含む後続の第2引き離しモードと、を含んでおり、
1つのパルスによって前記流体の流れに適用される(機械的)エネルギ供給は、第1引き離しモードにおけるよりも第2引き離しモードにおける方が低い
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記制御装置(22)は、所定の時間、及び/または、測定される心臓信号の1または複数の値が改善するまで、第1引き離しモードを実行し、並びに、その後に自動的に第2引き離しモードを実行するように構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載のシステム(10)。
【請求項13】
当該システム(10)は、人工肺装置を含んでいる
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のシステム(10)。
【請求項14】
心臓補助システム(10)を作動させる方法であって、
少なくとも1つのポンプ(18)によって、吸引ライン(12)から圧力ライン(14)への流体の流れを生成するために、流体、特には血液、を体外において圧送する工程
を備え、
当該ポンプ(18)は、制御装置(22)及び/または調整可能な流量制限器(20)によって、当該システム(10)の現在実行されているモードに従って、前記圧力ライン(14)内の前記流体の流れの流量及び/または圧力を調整するようになっており、
前記制御装置(22)は、特には使用中の当該システム(10)によって支援される心臓の心拍に本質的に同期される、前記流体の流れに挿入される複数の連続的な支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを伴う支援モードを提供し、
前記制御装置(22)は、特には使用中の当該システム(10)によって支援される心臓の心拍に本質的に同期される、前記流体の流れに挿入される複数の連続的な引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを伴う引き離しモードを提供し、
各パルスによって前記流体の流れに提供されるエネルギの量は、支援モードにおけるよりも引き離しモードにおける方が低い
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
最初に前記支援モードが実行され、
その後に前記引き離しモードが実行される
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外心臓補助システムに関する。更に、本発明はまた、心臓補助システムを操作するための方法、及び、患者に心臓補助を提供するための方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
US2015/0030502A1は、体外での生命支援のための構成を開示している。当該システムは、インターベンション(介入性)心臓病学での使用に適している。特に、当該システムは、患者の拡張期圧を増大させて、心筋の酸素バランスを改善することを可能にする。この目的のために、当該システムのポンプは、拍動流のために波状にサージング(急上昇)及びサブサイディング(沈静化)したポンプ出力を生成し得る。この拍動流は、患者の心臓機能及び血流を支援するために、患者の心原性システムに提供され得る。従って、例えば心原性ショックのために心臓の機能が不十分な患者が、当該心臓が再生するまで、治療されることができる。拍動支援は、連続的で均一な流れ支援と比較して、より少ない量の循環作動薬(イノトロープ)の適用を必要とし得る。
【0003】
しかしながら、治療が終了されるべき時に、問題が生じる可能性がある。患者の心臓が、支援に依存するようになってしまっている可能性がある。従って、心臓支援を伴う治療が終了される際、心臓システムが未だ十分に回復していない可能性がある。
【0004】
心臓の回復を改善するために、心臓は、外因性の心臓支援からゆっくりと引き離され得る。この目的のために、パルスの数が減らされ得る。例えば、支援パルスは、1つおきの心拍または2つおき(1/3)の心拍で提供されるのみとなり得る。このような離脱モードは、i-cor同期心臓補助装置(Synchronized Cardiac Assist System)によって予見される。
【0005】
このような引き離しモードは、心臓補助の終了を想定する場合に役立ち得るが、次の点が考慮されるべきである。心臓を1つおきまたは2つおきの心拍だけで支援することにより、全体の平均流量が減少する。平均流量が閾値を下回ると、流量の不一致及び関連するアラームが発生し得る。このような状況は、ユーザに、以前に適用されていた通常の心臓支援に戻ることを強制し得る。更に、Wang S.等は(「新規な脈動性の体外生命支援システムのインビトロ血行力学的評価:エネルギ損失に対する灌流モード及び回路構成要素の影響」、人工臓器2015、39(1):59-66)、そのような条件下のパルスは、いわゆる「血行力学的エネルギ」のより高い余剰をもたらす、ということを報告した。「血行力学的エネルギ」とは、各パルスによって投与される支援量(ドーズ)に関連する。従って、前述の引き離しモードは、外因性の心臓支援から心臓を引き離すための最も好ましい選択肢ではないように思われる。状況によっては、前記の引き離しモードは、心周期が支援されないままである場合は常に、心臓と患者に追加のストレスを生成することさえある。
【0006】
GB2214667Aは、人工心肺装置による「バイパス段階」(患者の心臓活動は停止している)での心臓機能の提供状態から、カウンターパルセーションに基づく支援モード(「引き離し段階」)への切り替え方法を開示している。人工心肺装置は、「バイパス段階」中、患者の心臓機能(停止している)を人工心肺装置の機能に完全に置き換えるように作用する。「引き離し段階」は、人工心肺装置から患者を切り離す際の循環の問題を克服するために、カウンターパルセーションを使用する。更に、GB2214667Aは、人工心肺装置が患者を支援できない場合に備えて、十分な灌流を提供するために、「アシストモード」(カテーテル法に基づく別の支援モード)を実装することを提案している。US4175264は、1つおきまたは3つおき(1/4)の心拍で心臓を支援するための支援モードのみを開示している-但し、時間経過しても支援のレベルは低下しない-。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の目的は、体外での心臓支援からの改善された引き離しを可能にするアプローチを提供することである。
【0008】
前記の目的は、独立請求項によって達成される。好適な実施形態は、更に好適な実施形態を伴って、従属請求項によって詳述される。一態様の有利な実施形態は、他の態様の好適な実施形態であり得て、その逆もまた同様である。
【0009】
本発明の第1の態様は、体外での、あるいは移植された体内での、心臓補助のためのシステムに関する。当該システムは、内部管腔を有する少なくとも1つの吸引ラインと、内部管腔を有する少なくとも1つの圧力ラインと、を備える。更に、当該システムは、前記吸引ライン及び前記圧力ラインに流体的に接続された少なくとも1つのポンプを備え得て、当該ポンプは、当該システムの使用中、流体、特には血液、をポンピングして、前記吸引ラインから前記圧力ラインへの流体の流れを生成するように構成され得る。
【0010】
また、当該システムは、前記ポンプ及び/または調整可能な流量制限器を制御して、前記圧力ライン内の流体の流れの調整可能な流量及び/または圧力を提供するように構成された制御装置を備え得る。付加的ないし代替的に、前記流体の流れの調整可能な流量及び/または圧力が、前記吸引ライン内でも提供され得る。当該システムは、あらゆる原因の心原性ショック及び心停止の治療、特に長期生存率を高めるための緊急後治療、のために特に使用され得る。当該システムは、例えば、インターベンション(介入性)カテーテル検査手順中、循環器系の支援のためにも使用され得る。当該システムは、ウェアラブルな心臓補助装置、特にはウェアラブルな心室補助装置、として構成され得て、非静止の治療を可能にする。
【0011】
制御装置は、特には使用中の当該システムによって支援されている心臓の心周期に本質的に同期されて、すなわち、患者の心拍に本質的に同期されて、流体の流れに適用される複数の連続的な支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを伴う支援モードを実行するように構成され得る。制御装置は、付加的に、特には使用中の当該システムによって支援されている心臓の心周期に本質的に同期されて、流体の流れに適用される複数の連続的な引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを伴う引き離しモードを実行するように構成され得る。各パルスによって流体の流れに提供されるエネルギの量、特には運動エネルギの量は、支援モードにおけるよりも引き離しモードにおける方が低い。好適には、引き離しパルスは、患者の各心拍に提供され得るか、または例えば、1つおきの心周期に提供され得る。
【0012】
通常の支援モードのパルスよりも少ないエネルギを有するパルスを伴う本発明の引き離しモードにより、患者を心臓支援から引き離す時、最適化された心臓支援が保証され得る。引き離しパルスのエネルギは、平均の流れのレベルに調整され得て、その結果、余剰の血行力学的エネルギ(SHE)が、全く生成されないか、または、少なくともより少なく生成されて、及び/または、患者に供給される。余剰の血行力学的エネルギは、エネルギ等価圧力にも関連し得る。SHEは、好適には単一のパルスの持続時間について、時間の経過に伴う圧力(mmHg)を掛けた流体流量の積分(l/min)を、流体流量の積分(l/min)で割ったものとして定義され得る。SHEは、心臓血管系及び/または心臓を支援及び/または補助するための用量(ドーズ)としても考慮され得る。
【0013】
前述の引き離しモードを適用することにより、心臓は、低下される心臓支援に苦しむことが少なくなる。心臓補助のためのシステムは、支援モードと引き離しモードとの間で切り替えられる、ないし、交互にされるが、心臓支援は、例えば各心拍毎または1つおきの心拍毎に、支援モードと同じ周波数で依然として提供され得る。それでも、支援の範囲は、患者が低下される心臓支援に時間の経過と共に徐々に適応できるように、有利に適応される。従って、患者は、他の場合における瞬間的な支援の喪失や、例えば各心拍毎の代わりに1つおきの心拍毎の補助提供に突然変化するような支援頻度の瞬間的な変化に苦しむことがない。これにより、本発明は、好適には、2つの別個のモード、すなわち、支援モード及び引き離しモードを組み合わせることを許容する。従って、本発明は、2つの異なるモードを、同時に、並列的に、または交互に、実行するように構成されたシステムを提供する。そのような状況下では、心臓は、一方では過度に支援的な外因性の拍動を補償し、他方では次の心周期に対する支援拍動の欠如を補償する、ということを要求されない。代わりに、時間の関数として心臓支援を穏やかに減らすことを許容する引き離しモードを適用するときに、均質の準連続的な支援が保証され得る。特に、患者を心臓支援から引き離す時でさえ、各心拍に対して十分な酸素供給が保証され得る。本発明装置によって適用される引き離しモードの性質は、心肺バイパス手術の後、あるいは、心臓移植や冠状動脈バイパス移植片介入のような何らかの心臓介入の後、において支援から引き離す時に、特に有益であると考えられる。これら介入時には、心臓活動は、本質的に例えば人工心肺装置によって置換され得る。
【0014】
従って、「心臓補助」とは、典型的には、心臓機能が停止する心臓介入の過程での補助としては理解されない(すなわち、典型的には、心臓機能が人工心肺装置によって完全に置き換えられることを指すものではない)。むしろ、それは、患者の心臓の血液ポンプ機能を支援するものとして理解され得る。換言すれば、そのような支援は、(心臓手術中に人工心肺装置が行うように)患者自身の心臓活動を完全に置き換える代わりに、患者の本来の心臓性能が人工的に変更ないし強化されるというように、患者自身の心臓システムの任意の自発的活動に加えて提供される。ポンプは、好適には、赤血球などの血球への損傷を防止することによって有益である、斜流ポンプなどの非閉塞性血液ポンプである。制御装置のそれぞれの制御アルゴリズムは、支援モードまたは引き離しモードに対して独立に選択され得る。
【0015】
吸引/圧力ラインは、それぞれ、カニューレを含み得る。特に、吸引ラインは、静脈カニューレを含み得て、圧力ラインは、動脈カニューレを含み得る。前記2つのラインの少なくとも1つは、心臓、特には人間の心臓、特には「大動脈心室」としても指定される左心室、内に導入可能であるように構成され得る。流体の流れは、各ラインの内部管腔を通って流れ得る。ポンプは、流体が吸引ラインから当該ポンプを通って圧力ラインに流れるように、両ラインの内部管腔に流体的に接続され得る。吸引ラインは、また、流体リザーバ、特には、例えば専用の分岐を有する血液リザーバ、に付加的に接続され得る。そのようなアプローチは、同時に輸血を提供し、及び/または、患者の心臓系において十分な血液量を維持しながら、出血している患者の治療を許容し得る。両方のラインは、流体を内部管腔内に吸引し、続いて、当該流体を当該内部管腔から排出するための入口及び出口通路を含み得る。特には、患者の血流に対する血液が対象である。両ラインは、使い捨てであり得て、及び/または、当該システム、特にはポンプ、に対して交換可能に接続され得る。これにより、2人以上の患者の治療に当該システムを使用する場合において、衛生基準が満たされる。代替的または追加的に、カニューレが、使い捨てであり得て、及び/または、交換可能に当該システムに接続され得る。
【0016】
ポンピング動作は、低圧側から高圧側へ流体の流れを生成しながら、吸引ラインの圧力を低下させ、圧力ラインの圧力を上昇させることに帰結し得る。ポンプは、好適には、例えば熱によって及び/または機械的に、血液または血球を損傷しないように設計される。ポンプは、プロペラ、特にはインペラ、等の可動ポンピング部と、モータと、を有し得る。ポンピング部の動き及び/またはモータによって提供される起動、特にはモータ及び/またはプロペラの1分あたりの回転数が、制御装置によって制御され得る。
【0017】
各モードのパルスは、継続的に、すなわち順々に、例えば準連続的に、区別できる及び/または連続的なパルスとして、発出され得る。モードが変更される度に、ラグ期間またはダウンタイムが発生し得る。好ましくは、モードは、2つのパルスの間の期間内でのみ変更される。従って、制御装置は、モード変更を開始することによってパルスを早期に終了することはなく、別のエネルギレベルを供給する次のパルスを引き出す前に、モード変更を予見するだけである。モードが変更されるか、及び/または、システムが非アクティブ化されるまで、パルスは連続して提供され得る。
【0018】
好適には、パルスは、患者の心臓の生理学的動作モード、特には彼の心拍数、に同期される。例えば、心周期ごとに、1または複数のパルスが適用され得る。同期はまた、追加的または代替的に、異なる心室の生理学的動作モード及び/または一般的に心電計の測定に関連し得る。このような同期は、患者の心臓血管系、特には患者の心臓の心室、の異なる部位に配置された幾つかの圧力及び/または吸引ラインを含むシステム、に特に有用であり得る。好ましくは、パルスは、ECGによって記録される「Rスパイク」とも呼ばれるR波に同期され得る。これは、心臓による血液放出の時間の指標として捉えられ得る。高度な心臓補助のために、パルスは、好適には、患者の大動脈弁が閉じられる時にそれらが本質的に圧力ラインの出口に到達するというように、生成される。当該目的のために、制御装置は、特にはパルスのタイミングがR波に基づいている時、システム、特にはポンプとラインとそれぞれの流体輸送時間、に待ち時間を実装するように構成され得る。
【0019】
システム内の拍動圧力は、当該心臓補助システムが当該患者に動作可能に接続される時、流体流路に沿って走る、特には当該患者の心臓系をも通過する、圧力波であり得る。システム内の拍動流量は、当該心臓補助システムが当該患者に動作可能に接続される時、流体流路に沿って通過する、特には当該患者の心臓系をも通過する、流れ波であり得る。圧力波と流れ波とは、結合され得て、特には、それらは、ポンプ速度及び/または流量制限器の設定の変化のために、位相シフトされ得る。圧力パルスと流量パルスの位相シフトは、患者によって必要とされる時はいつでも増大された血流を確立し得る。一方、独立して、例えば大動脈心室が閉じる時など、パルスの送達がより少ない応力を及ぼす時はいつでも、位相シフトは心臓系での圧力を増大させる。これにより、圧力ラインが患者の心室に接続される時、不所望の逆流が回避される。従って、圧力ラインは、好適には、左心室または左心室から患者の循環系に血液を導く大動脈に接続され得て、一方、吸引ラインは、好適には、右心室または右心室に血液を供給する静脈に接続され得る。
【0020】
1または複数の流量制限器が、両ラインのいずれかの任意の場所で、または、ポンプ内で、予見され得る。あるいは、流量制限器が、流体の流れがそこを通過することを許容するために、システムを流体的に接続する任意の他の部分内で実現され得る。
【0021】
各パルスから生じる付加的なエネルギは、好適には、圧力ライン内の流体に適用され得て、圧力ラインにおける流量及び/または圧力を増大させる。吸引ラインから流体を吸引する時、当該エネルギが当該流体に適用され得る。これにより、吸引ラインでの圧力の低下、及び/または、吸引ラインでの流量の増大が典型的に起こり得る。吸引ラインでのこの圧力の低下と流量の増大は、吸引ラインの配置に依存して、患者の心臓機能を支援するのに有益であり得て、例えば、心臓の左心室部分の後負荷を低減し得る。
【0022】
適用されるモードは、例えば当該システムの一構成要素としての入力装置を使用することによって、選択及び/または変更され得る。そのような入力装置の例は、タッチスクリーンまたはボタンであり得る。入力装置はまた、各モードの平均流れ及び/または任意のモードに従うパルスのSHE等、各モードのパラメータのセットを定義し得る。当該パラメータのセットはまた、特には他のモードのために規定された設定とは独立に、あるいは、それに関連して、任意のモードのパルスの、持続時間、形状、絶対的及び/または相対的な最大及び/または平均の流量変化及び/または圧力パルス、等のパルスの特性を更に定義することを許容し得る。これは、心周期のパルスに対してより高度な類似性を有するパルスを送達することを許容し得て、これにより、患者の心臓への追加のストレスを低減することを許容し得る。好適には、平均流れは、各動作モードについての患者の個々の心臓補助のレベルに調整される。代替的または追加的に、制御装置は、支援モードでの必要とされる平均流れに基づいて、引き離しモードでの適切な平均流れを決定し得る。従って、引き離しは、減少された(例えば、最小化された)緊張、及び/または、改善された(例えば、最適化された)心臓支援を用いて実行される。
【0023】
システムの好適な一実施形態では、当該システムは、ベースの流体の流れを提供するように構成される。特に、制御装置は、ベースの流体の流れを調整するように構成される。ベースの流れは、心臓系のための基本的な支援を保証し得て、デフォルトの支援として、患者の十分な血流と、その組織への十分な酸素供給と、を保証し得る。更に、ベースの流れは、システム内の血液の凝固を防ぎ得る。更なる利点として、ベースの流れを提供することにより、パルスを送達する時の待ち時間を短縮し得る。引き離しモードと支援モードのベースの流体の流れは、同じであり得る、あるいは、引き離しモードのベースの流体の流れ(引き離しベースフロー)は、支援モードのベースの流体の流れ(支援ベースフロー)とは異なり得る。これにより、(支援ベースフローと比較して)低減された引き離しベースフローが、引き離しプロセスを改善するために確立され得る。例えば、これにより、引き離しプロセス期間が短縮されて、心臓がより短い時間内にその生理学的(支援されていない)状態に戻る。
【0024】
システムは、複数のポンプを含み得る。特に、ベースの流体の流れを供給するために第1ポンプが使用され得て、パルスを生成するために第2ポンプが使用され得る。第1ポンプは、その連続運転のため、増大された半減期を示し得るため、メンテナンスの労力が軽減される。第2ポンプは、より短い反応時間によって特徴付けられ得て、これにより、パルス送達に特に好適であり得る。従って、システムのニーズに応じたポンプの個々の特性により、全ての個々の要件に準拠する単一のポンプを使用するよりも、より安価でより信頼性の高いシステムを確立し得る。他方のポンプの機能不全の場合にベースフローとパルス生成の両方を可能にするよう、少なくとも1つの機能的なポンプが残される、というように例えば2つのポンプを設けておくことにより、2つのポンプは、冗長性のレベルを確立することで、システムの継続的な動作を保証し得る。同様に、制御装置は、ベースフローを保証するために第1ポンプを制御し、パルスを送達するために第2ポンプを制御する、というように構成され得る。
【0025】
ベースの流体の流れは、心臓補助動作の下で患者に供給されるベースの流量及び/またはベースの圧力を含み得る。ベースの流量及び/またはベースの圧力は、ゼロであり得る。好適には、ベースの流量及びベースの圧力は、ゼロより大きい所定の値に設定され、特に、それらの各々または少なくとも1つは、患者の生理学的(支援されていない)心臓機能を表すパラメータ、特には患者の心臓の測定パラメータ及び/または判定パラメータ、に応じて、所定の値に設定される。当該値は、入力装置及び/または介護者によって、自動的に設定され得る。ベースの流量及び/またはベースの圧力は、連続的にゼロであってもよく、及び/または、ゼロより大きくてもよく、連続的なベースの流体の流れ支援にパルスが適用される場合でも、時間が経過しても不変であり得る。ベースの流量は、ポンプの基本動作及び/または流量制限器の基本設定によって規定され得て、従って、流量制限器及び/またはポンプの設定によって調整され得る。
【0026】
例えば、システムは、0.2l/minから最大1.5l/minの間のベースフローを提供するように構成され得る。最大の平均引き離し流れは、0.5l/minから2.5l/minであり得る。平均流れは、パルスに起因する流れピークを考慮または無視することによって計算され得る。好適には、平均流れは、ベースフローと、パルスから生じる追加の流れと、に基づいて計算される。
【0027】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、ベースのポンプ性能を越えてパルスを生成する時、ポンプの出力、特にはポンプ速度、を増大させることによって、流量パルス及び/または圧力パルスを生成するように構成される。例えば、そのモータに供給される電圧及び/または電流を調整することによってポンプを調整することは、パルスを生成するための効率的で信頼性の高い選択肢である。ポンプ出力を調整するための別の例示的な選択肢は、ポンプのブレード及び/またはベーンの位置及び/または有効角度を調整することである。例えば、(圧力パルスを加えるための)ポンプ出力の増大は、典型的には、支援モードと比較して引き離しモードを適用する時に、低減される。パルスエネルギは、事前に決定され得るので、増大されるポンプ出力もまた、典型的には事前に決定され、及び/または、ユーザまたは介護者によって変更され得る。例えば、ユーザまたは介護者は、パルス持続時間を調整することができ、これは、増大されるポンプ出力によって対応して影響される。パルスを生成するために、ポンプまたはその構成要素、例えばインペラは、通常、パルス持続時間よりも短い期間で加速される(例えば、ポンプのrpmが、より高い値まで、例えば最大値まで、増大される)。その後、ピーク速度は、ベースの流体の流れ特性に戻るようベースの速度にまで低減され得る、または、0にまで低減され得る。これは、例えば2ポンプシステムに適用する時に好適である。ポンプの増大された出力は、アクチュエータ、例えばブレーキや、逆電圧特性の適用によって、アクティブに停止されてもよい。そのような措置は、例えば、パルスの波形を、患者の生理学的(支援されていない)心臓パルスの波形により類似するように調整することを許容し得る。
【0028】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを生成するために、並びに、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを生成するために、ポンプ出力を調整するように構成される。引き離し流量または圧力パルスは、より小さなパルス振幅及び/またはより小さなパルス幅によって特徴付けられる。結果として、引き離しパルスは、拍動性の心臓補助システムの構造的再設計を必要とすることなく、支援パルスよりも少ないエネルギを患者の心臓系に導入する。引き離しモードによって適用されるパルスのエネルギがより少ないということは、支援モードのパルス設定と比較して、1パルス中において、増大されるポンプ出力の期間の短縮(例えば、より短いパルス持続時間に帰結する)及び/またはポンプの振幅の低下(例えば、ポンプの回転数増大の減少、従って、ピーク回転数の低下に関連)を意味し得る。ポンプ出力は、プロペラの加速に依存し得る。例えば、プロペラは、支援モードと比較して、引き離しモード中のパルスについて、ピークrpmを示さない(より小さな振幅)、及び/または、延長された期間でピークrpmを示さない(より小さなパルス幅)。好ましくは、ポンプのパルス持続時間(パルス幅)及びピーク速度(パルス振幅)の両方が、支援モードパルスよりも引き離しモードパルスにおいて小さい。ポンプユニットのポンプ速度は、電気ポンプに印加される電圧及び/または電流によって制御され得る。
【0029】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスと比較して、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを定義する時、流量制限器を差動的に調整することによって流量パルス及び/または圧力パルスを生成するように、並びに/または、より短いパルスを送達するために流量制限器を使用するように、構成される。調整可能な断面を有するバルブまたは管腔などの流量制限器が、使用され得る。更に、流量制限器は、ポンプの構成要素が加速されることを必要としないため、ポンプよりも迅速に外部信号に反応し得る。従って、システム、特に制御装置は、ベースの流れの制限設定及び/または支援モードの流れの制限設定と比較して、所定の時間、所定の値に従って、流量調整器を調整することによって、流量パルス及び/または圧力パルスを生成するように構成され得る。そのような実施形態は、ポンプを必要としない場合がある、あるいは、流量制限器がポンプと組み合わせて使用され得る。
【0030】
従って、システムは、流量制限器とポンプとの両方によってパルスの性質を調整するように構成されてもよい。このような状況下では、パルスの波形は、患者の必要に応じて、調整及び適合され得る。更に、そのような設定は、圧力パルス及び流量を独立して制御することを容易に許容し得る。また、流量制限器とポンプとは、冗長システムを確立するために組み合わせて機能し得る。特に、流量制限器がパルスポンプまたは少なくともパルスポンプに取って代わり得るため、システムは単一のベースフローポンプのみに基づくことができる。この場合、ベースフローポンプの出力が適切に増大され得る。
【0031】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスと比較して、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを生成するように、通過流量を減少させるべく流量制限器を調整する、及び/または、流量制限器によるより低い(減少された)通過流量の期間を変更する、特には延長する、ように構成される。好適には、パルスは、引き離しモードを適用する時、パルスを生成し及び/またはエネルギ消費を低減する流量制限器と組み合わせることで、ポンプの出力を変更することなく、ポンプによって送達され得る。
【0032】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、急性心停止の場合に、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを生成する時、ポンプ速度を、毎分2000~5000回転だけ増大する(rpm/分)、好ましくは3000rpm/分~4500rpm/分だけ増大する、代替的にまたは追加的に、3500rpm/分~6000rpm/分だけ増大する、好ましくは4500rpm/分だけ増大する、ように構成される。当該技術的特性は、当該システムをして、より多様な病的心臓状態、特にはあらゆるタイプの心不全、を治療可能とし得る。
【0033】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、代替的または追加的に、約150ミリ秒~約250ミリ秒、好適には約200ミリ秒、のパルス持続時間を有する支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを生成するように構成される。
【0034】
パルス持続時間(パルス幅)は、ベースフローまたはパルスの開始前の期間ゼロないし初期値と比較して、ポンプの加速された速度及び/または増大された速度の持続時間、あるいは、増大された流量及び/または圧力の持続時間、として定義され得る。パルス持続時間は、典型的には、圧力パルス及び/または流量パルスの増大部分と減少部分との位相で構成される。パルスの収縮期部分は、典型的には、特にベースフローと比較して、ポンプ速度及び/または圧力の増加に関連している。パルスの収縮期部分は、総パルス持続時間の約5%~約70%、好ましくは約5%~約30%、より好ましくは約5~約15%、例えば10%、を有し得る。対照的に、拡張期部分は、典型的には、通常はパルスピークに到達した後の、ポンプ速度及び/または圧力の減少に関連している。拡張期部分は、典型的には、ポンプの速度を下げること、アクティブなブレーキング、及び/または、ポンプの惰行、によって達成される。パルスの拡張期部分は、総パルス持続時間の約95%~約30%、好ましくは約95%~約70%、より好ましくは約85~約95%、例えば90%、を有し得る。これにより、生理学的(支援されていない)心臓パルスにより類似した圧力及び流体流量パルスが生成される。
【0035】
当該システムは、例えば、心拍数測定及び/または心電計によって、患者の心停止を検出するように構成され得る。当該システムは、心停止が検出されるときはいつでも、心臓の支援、特にはパルスのエネルギチャージ、を増大させ得る。検出時、事前に設定された増大値が自動的に適用され、緊急治療が利用可能になるまで患者を支援する。これにより、一時的な心停止の悪影響が対処され得る。追加的または代替的に、当該システムは、心停止の検出時の警報機能を含み得る。これにより、制御装置は、自動または手動で起動(トリガー)される緊急心停止動作モードを実行するように構成される。制御装置は、支援モードまたは引き離しモードのいずれかからそのような緊急モードに自動的に切り替わり可能である。好適には、制御装置は、必要とされる心臓支援を保証するために、心停止後に自動的に支援モードに切り替わるように構成される。
【0036】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを生成するために、ポンプ速度を、毎分100~4000回転だけ増大する(rpm/分)、好ましくは500rpm/分~3499rpm/分だけ増大する、ように構成される。システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置は、代替的にまたは追加的に、50ミリ秒~250ミリ秒、好適には75ミリ秒~200ミリ秒、のパルス持続時間を有する引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを送達するように構成される。そのような値を選択することによって、一方では十分な心臓支援のため、他方ではより短い引き離し時間のため、の要件が調整され得て、心臓支援のレベルが時間経過と共に低減され得て、患者の生理学的心臓機能が従来技術を適用するよりも短い時間で完全に再生することを許容し得る。
【0037】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、長方形パルスの形態または波型、特には本質的に正弦波、の流量パルス及び/または圧力パルスを提供するように構成される。正弦波パルスは、瞬間的な圧力及び流量の変化が回避されるため、患者の心臓系にかかる負担が少なくなる。更に、そのようなパルス形状は、より大きな一連のパルスに対して信頼性をもって再現され得て、このことは、患者の心臓が、適用された心臓支援機能によりよく適応することを許容し得る。また、正弦波パルスは、生理学的な心臓の圧力及び流量の波形に本質的に倣う。これにより、所定の期間のポンプ性能は、時間の関数としての波状の特性を確立し得る。
【0038】
システムの好適な一実施形態では、当該システム、特には制御装置が、支援モードで予測される平均流量以下の引き離しモードでの平均流量を可能にするように構成される。追加的または代替的に、当該システム、特に制御装置は、支援モードで提供される平均流量以下である引き離しモードでのベースフローを確立するように構成され得る。低減された平均流量及び/またはベース流量は、促進された方法での心臓支援からの患者の心臓の再生及び/または引き離しを達成することを補助し得る。当該システムはまた、当該システムによって提供される平均流量が閾値レベルを下回ったか否かを判定する警告装置を含み得る。警告装置は、光学的警報信号または音響的警報信号等の警告信号を送達し得る。閾値レベルは、変更され得て、典型的には、支援モードよりも引き離しモードにおける方がより低い値に設定され得る。引き離しモードと支援モードとで、独立の閾値が好まれる。
【0039】
システムの好適な一実施形態では、当該システムは、患者の心拍数及び心臓リズムを判定するために1または複数の心臓値を測定するように構成された少なくとも1つのセンサを含み、及び/または、患者の1または複数の心臓パラメータを測定するための心臓センサ、特には心電計、と接続するように構成されたインターフェースを含む。当該システム、特には制御装置が、測定された心臓のタイミング(心拍数、心臓のリズム、心周期位相のタイミング)及び/または測定された心臓のパラメータに依存して、心臓の支援を調整するように構成される。特に、測定された信号に対するそのような調整は、パルス生成の開始に影響を与え得る。従って、パルスの生成と患者の心周期との同期が可能になる。また、そのような測定は、患者の心臓性能を判定する、及び/または、患者の心臓状態及び/または健康状態をモニタリングする、ためにも使用され得る。特に、心停止が、そのようなセンサのモニタリング(監視)によっても検出され得る。例えば、当該システムは、パルス生成と患者の心電図の心周期のR波とを同期させるように構成され得る。システムの待ち時間が、心臓支援または引き離しパルスの遅延に帰結しないで、但し、支援/引き離しパルス及び患者の生理学的パルス位相の同時かつ収束的な開始を可能にするように、パルスをトリガーすることが更に予見され得る。引き離しまたは支援パルスのタイミングは、心臓弁の作用及び/または心筋の収縮に依存し得る。心電計は、埋め込まれ得る、ないし、体外に配置され得る。心電図は、圧力の収縮期ポイントを判定するために使用され得る。それは、ポンプの出力の増大または加速をアクティブにするための指標として使用され得る。
【0040】
システムの好適な一実施形態では、少なくとも1つのセンサが、以下の心臓信号のうちの少なくとも1つを測定するように構成される:平均動脈圧、収縮期圧、拡張期圧、心拍出量、駆出率、心拍数、心拍、イノトロープレベル、カテコールアミンレベル/投与量、及び、心周期波、特にR波、の測定。心拍の測定は、個々の心臓周期または一連の心臓周期のための心筋機能の開始(発現)、持続時間、及び/または、強度、を含み得る。
【0041】
これらの信号の1または複数が、パルス生成を患者の生理学的心臓動作モードと同期させることを許容し得る。あるいは、幾つかの信号は、個別には測定されないで、他の測定信号から導出または計算されてもよい。
【0042】
システムの好適な一実施形態では、制御装置が、支援モードの実行中に、測定された心臓値の少なくとも1つが(所定の)閾値レベルを下回るか上回るまで、各引き離しパルスによるエネルギの量を低減するように構成される。これは、患者に心臓支援が必要か否か、及び、どの程度必要であるか、をシステムが自動的に判定することを許容し得る。当該機能は、好ましくは安全マージンを含んで、可能な限り低い程度で患者の心臓を支援することを補助し得る。このようなシステムは、必要とされる心臓支援のレベルの初期的または継続的な分析にも使用され得る。このような試験(分析)は、初めて引き離しモードを実行するとき、または、心臓支援期間中に所定の間隔で、適用され得る。心臓支援レベルが十分であると判定されると、例えばパルスエネルギレベルが、特に引き離しモードのために、必要とされる最小パルスエネルギレベルとして制御装置によって事前設定され得る。不十分な心臓機能を定義する閾値は、典型的には、少なくとも1つの心臓パラメータに対して個別に定義される。試験中、エネルギレベルは、継続的または段階的に低減され得る。好ましくは、エネルギ低減は、多数のパルスとして、例えば、不連続に実行される。例えば、修正された支援レベルに心臓系が適応することを許容するべく、所与のエネルギレベルの少なくとも5ないし10のパルスが適用されるべきである。低減されたエネルギレベルが医学的に許容可能な心臓信号に帰結する場合、心臓系がより低いパルスエネルギに再び適応するために、パルスエネルギが更に低減され得る。
【0043】
システムの好適な一実施形態では、制御装置が、流量パルス及び/または圧力パルス、特にはそれらのエネルギ及び/または持続時間、を調整するように構成される。当該調整は、心周期の測定された信号から導き出され得る。また、システムないし制御装置は、測定された心臓信号に基づいて、流量パルス及び/または圧力パルスの生成を患者の心拍に同期させるように構成され得る。パルス生成と心拍とは、例えば、パルスの開始が(例えば、ECGによって測定されるような)心周期の開始(発現)に直接的に関連するように、同期され得る。代替的にまたは追加的に、予測制御機能が、制御装置内に実装され得る。制御装置は、一連の先行する心拍を記録及び分析することによって、次の心拍を予測するように構成され得る。以前に測定された様々なパルスについて記録された観測に依存して、次のパルスの特性及び開始が、当該心拍の前に計算される。
【0044】
システムの好適な一実施形態では、制御装置が、所定のエネルギ閾値を超える引き離しパルスを送達するように、及び/または、所定の流量(流速)閾値を超える平均引き離し流量(流速)を生成するように、構成される。これにより、システムは、測定された心臓信号(例えば、心臓の性能を表す)の1または複数が、測定されたパラメータ/信号ごとに個別に定義された所定の閾値を下回るかまたは上回ることを防ぐ心臓支援用に構成される。このような閾値は、引き離しモードでの動作時の不十分な心臓支援を打ち消し得る。特に、当該システムは、測定された心臓信号がそのような閾値を下回ったり上回ったりしない限り、心臓支援のレベルを自動的に低減させるように構成され得る。これにより、低レベルの心臓支援のあらゆるリスクが最小限に抑えられ、患者の安全が確実に維持される。代替的または追加的に、当該システムは、心臓信号のいずれかが所定の閾値を下回るかまたは上回る時はいつでも、警告信号を提供するように構成され得る。適切な閾値は、システム内に配線接続された閾値であってもよいし、ユーザまたは介護者によって定義されてもよい。警告信号が知覚されることを許容するべく、当該システムは、ディスプレイ、タッチスクリーン、及び/または、スピーカー、などの出力デバイスを備え得る。代替的または追加的に、当該システムは、ユーザに警報機能を提示する携帯電話及び/または遠隔医療センターに接続(リンク)され得る。システムを支援モードで使用する時、閾値が適用され得る。制御装置は、閾値を個別に設定することを許容するように構成され得る。
【0045】
システムの好適な一実施形態では、制御装置が、引き離しモードのエネルギレベルを連続的に変更することによって引き離しモードを実行するように構成される。この場合、引き離しモードは、複数の第1引き離し流量パルス及び/または第1引き離し圧力パルスを伴う第1引き離しモードと、複数の第2引き離し流量パルス及び/または第2引き離し圧力パルスを伴う第2引き離しモードと、を含み得る。第2引き離しモードの各パルスのエネルギレベルは、第1引き離しモードのパルスのエネルギレベルよりも低い。3番目、4番目などの一連の引き離しモードのパルスが後続し、その各々が、先行する引き離しモードのパルスシリーズよりも低いパルスエネルギレベルを示す。そのような引き離しモードは、患者を心臓支援から徐々に離脱させることを許容する。それは、心臓支援を、ほぼ連続的に削減し得る。例えば、パルスエネルギレベルは、以前の(より高い)値と比較して、各パルスまたは例えば少なくとも5または10パルスの各パルスシリーズについて、0.001%以下、好ましくは0.00001%以下、等のインクリメントステップずつ低減され得る。この場合、漸進的な引き離しが選択肢となり得る。それは、患者の心臓系に僅かに妥協するだけであり、僅かなまたは最小のパルスエネルギ低減の区分ステップによって心臓支援を削減させる。
【0046】
パルスの開始またはパルスエネルギレベルの増大は、前述のように設定及び/または適応され得る。次のパルスは、デッド期間またはパルス合間によって、特には第1及び第2引き離しパルスによって提供されるエネルギの徐々の調整のための幾つかのランピングパルスによって、前のパルスから分離され得る。漸進的な引き離しモードは、複数の第1及び第2引き離しパルスを含み得る。第1パルスまたは(同じエネルギレベルの)第1パルスシリーズは、第2パルスまたは(同じエネルギレベルであるが、第1引き離しモードのパルスシリーズよりも少ない心臓支援を提供する)第2パルスシリーズによって、自動的に置き換えられ得る、あるいは、特にはボタンやタッチスクリーン等のシステムの入力装置を用いて、手動制御によって設定され得る。
【0047】
システムの好適な一実施形態では、制御装置が、第1引き離しモードを所定の期間実行し、その後、第2引き離しモード、第3引き離しモード等を、各々例えば事前設定された期間、自動的に実行するように構成される。制御装置は、この目的のために、タイマー機能を含み得る。あるいは、当該タイマー機能は、手動入力によって作動され得る、または、システム自体の心臓支援情報(例えば、パルスのエネルギレベル)に基づいて、及び/または、心臓信号の分析に基づいて、制御装置によって作動され得る。
【0048】
従って、制御装置は、所定の支援モード期間の後に、支援モードから引き離しモードに自動的に切り替わるように構成され得る。引き離しは、それによって心臓系を外因性心臓支援に依存させてしまい得る外因性の心臓エネルギ供給への心臓の永続的な依存を打ち消すために不可欠であると考えられている。制御装置はまた、所定の期間の後に、より低い心臓支持を伴う第2引き離しモードに切り替わるように、及び/または、例えばシステムをシャットダウンして支援を自動的に終了するように、構成され得る。代替的または追加的に、故障や心機能不全が検出された場合、特には緊急状態の場合、警告信号が送信され得る。
【0049】
システムの好適な一実施形態では、制御装置が、測定された心臓信号の1または複数が所定の閾値に到達するまで、第1引き離しモードを実行するように構成される。その後、第2引き離しモードフェーズ(より少ない心臓支援を適用する)が、自動的に実行される。そのような対処法(レジメン)が、第3、第4などの引き離しモードフェーズによって継続され得る。心臓が所与の心臓支援レベルで十分に回復すると、当該システムは、心臓補助を自動的に削減することを許容し得る。制御装置は、提供されるパルスエネルギを低減するように構成され得る。例えば、測定された心臓信号及び/または判定された一回拍出量に依存して、第1及び第2引き離しモードフェーズのΔEを定義し得る。制御装置はまた、第2引き離しモードフェーズでの低減された心臓支援適用の結果としての不十分な心臓性能に応答して、心臓支援を増大させるかもしれない。このように、引き離しモードは、患者の心臓支援のニーズを十分に満たすべく、更に自動的に精練(改良)されてもよい。このようなシステム制御は、患者のニーズに応じた自動的な引き離し調整モードとして定義され得る。この場合、当該調整は、患者の心臓状態にリアルタイムで反応し得る。当該システムの支援の終了及び/またはシャットオフも、前記の原則に基づいて制御され得る。
【0050】
システムの好適な一実施形態では、当該システムが、流体の流れを酸素について豊かにするように構成された人工肺装置を含む。このような酸素供給モジュールは、更なる心臓支援のために提供される。心臓組織は、増大される酸素供給で再生し得る。制御装置は、酸素供給モジュールを制御して、流体の流れに供給される流体の部分酸素ガス圧を測定することによって酸素供給を調整するように構成され得る。部分酸素ガス圧は、実行される支援または引き離しモード及び/または適用されるパルスエネルギに依存して変化し得る。
【0051】
本発明の第2の態様は、心臓補助システム、特に第1の態様によって説明されたようなシステム、を操作するための方法に関する。従って、第1の態様は第2の態様でも完全に読めて、その逆も同様である。
【0052】
当該方法は、特には少なくとも1つのポンプによって、吸引ラインから圧力ラインへの流体の流れを生成するために、流体、特には血液、を圧送(ポンピング)する工程を含み得る。当該少なくとも1つのポンプは、調整可能な流量制限器と選択的に組み合わされて、特には制御装置によって、当該システムの実行モードに従って、圧力ライン内の流体の流れの流量及び/または圧力を調整するように制御され得る。支援モードは、患者の心臓系に適用され、特には患者の心臓の生理学的心周期に本質的に同期される、一連の連続する支援流量パルス及び/または支援圧力パルスによって動作する。パルス供給は、制御装置によって制御される。更に、一連の連続する引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスによって特徴付けられる引き離しモードが、特には(制御装置によって)患者の心周期に本質的に同期されて、流体の流れに適用される。引き離しモードのパルスエネルギレベルは、支援モードのパルスエネルギレベルよりも低い。従って、患者は、改善された引き離し技術を用いることによって心臓支援を受け、それによって、心臓の生理学的な一回拍出量を再確立する。
【0053】
心臓補助システムの動作中、流体の流れが、吸引ラインから当該吸引ラインを通って、圧力ラインに向かって当該圧力ラインを通って、特には両ラインの内部管腔を通って、生成される。流体の流れは、ポンプを通過する。パルスは、好ましくは、流れる流体に適用され得て、あるいは、好ましさは劣るが、流体のあらゆる流れが、パルスの適用によってのみトリガーされ得て、パルスの不在は流れを停止させ得る。従って、結果として生じる流体の流れは、時間の関数として、連続的または離散的であり得る。支援モード及び/または引き離しモードのいずれかが、本発明の方法に従って実行され得る。当該方法はまた、モード(例えば、前述のモードのいずれか)間を切り替える工程を含み得る。典型的には、所与の時点で実行されるのは1つのモードのみ(例えば、引き離しモードのみまたは支援モードのみ)である。
【0054】
第2の態様による当該方法の好適な一実施形態では、支援モードが最初に実行され、その後、引き離しモードが実行される。従って、当該方法は、例えば心原性ショックまたは心停止の後、最初に、心臓機能を支援するために支援モードを適用する。心臓機能、例えば一回拍出量、が支援モードによる心臓支援の結果として生理学的レベルに到達すると、本発明の方法は、心臓自体が可能な限り最良の方法で回復することを許容するべく、患者及び患者の心臓を支援モードから連続的に引き離すことを許容する。
【0055】
当該方法の好適な一実施形態では、ベースの流体の流れが、特には制御装置が当該ベースの流体の流れを調整することにより、当該システムによって確立される。ベースの流れは、所定の設定に調整され得る、あるいは、介護者によって設定された支援レベルに従って調整され得る。
【0056】
当該方法の好適な一実施形態では、流量パルス及び/または圧力パルスは、ベースのポンプ性能と比較して、延長されたパルス持続時間(パルス幅)及び/または増強されたパルス振幅を確立するために、ポンプ性能、特にはポンプ速度、を増大させることによって生成される。当該方法の好適な一実施形態では、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを生成するためのポンプ性能は、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスの場合よりも、少なく増大されるか、または、より短いパルス時間で増大される。
【0057】
当該方法の好適な一実施形態では、流量パルス及び/または圧力パルスは、流量制限器を差動的に調整することによって生成される。従って、流量制限器は、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスと比較して、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスのパルス周期を制限するように調整される。当該方法の好適な一実施形態では、流量制限器は、流量を減らすように調整される。それは、支援流量パルス及び/または支援圧力パルスと比較して、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを適用する時に、延長された期間適用されるように調整され得る。
【0058】
当該方法の好適な一実施形態では、例えば急性心停止の場合、支援流量パルス及び/または支援圧力パルス用に、ポンプ速度は、2000~5000回転/分(rpm/分)、好ましくは3000rpm/分~4500rpm/分、より好ましくは3500rpm/分及び/または4500rpm/分、だけ増大され得る。支援流量パルス及び/または支援圧力パルスは、約150ミリ秒~約250ミリ秒、好ましくは約200ミリ秒、のパルス持続時間を示し得る。
【0059】
当該方法の好適な一実施形態では、引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルス用に、ポンプ速度は、100~4000回転/分(rpm/分)、好ましくは500~3499rpm/分、だけ増大され得る。引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスは、50ミリ秒~250ミリ秒、好ましくは75~200ミリ秒、のパルス持続時間を示し得る。
【0060】
当該方法の好適な一実施形態では、流量パルス及び/または圧力パルスは、波の形態、特には本質的に正弦波、で提供される。
【0061】
当該方法の好適な一実施形態では、(引き離しモード用の)平均流量は、支援モードで当該システムによって提供される平均流量以下であるように提供される。平均流量は、ユーザによって調整され得る、あるいは、事前決定され得る。パルスは、特には定義された当該平均流量に従って、それに応じるように調整され得る。従って、引き離しモードの支援のレベル及び引き離しパルスのエネルギは、他の設定値、例えばベース流量及び/またはベース圧力、に基づいて選択され得る。
【0062】
当該方法の好適な一実施形態では、心臓性能及び/または心臓の拍動周期は、特には、例えば心電図から導出され得る1または複数の測定された心臓信号に基づいて、判定される。心臓支援は、患者の心臓性能が生理学的レベルに到達するように、及び/または、患者の心周期に従うように、調整される。
【0063】
当該方法の好適な一実施形態では、測定される心臓信号は、平均動脈圧、収縮期圧、拡張期圧、心拍出量、駆出率、心拍数、心拍、イノトロープレベル、カテコールアミン用量または血中レベル、及び/または、R波など典型的には心電図検査によって測定される1または複数の他の(電気)信号、の少なくとも1つである。
【0064】
当該方法の好適な一実施形態では、心不全または他の病理学的事象を示して、特には引き離しモードの実行の開始時に測定ないし定義された値から顕著に逸脱する、及び/または、所定のしきい値を下回るか上回る、というような測定された心臓信号の1または複数が記録されない限り、各引き離しパルスによって流体の流れに適用されるエネルギレベルが低減される。
【0065】
当該方法の好適な一実施形態では、流量パルス及び/または圧力パルス、特にはそれらのエネルギ及び/または持続時間は、測定された心臓信号または判定された心臓性能(例えば、一回拍出量)に依存して、調整され得る。それらはまた、測定された信号(例えば、ECG信号)に基づいて、流量パルス及び/または圧力パルスを患者の心周期に同期させるように、調整され得る。
【0066】
当該方法の好適な一実施形態では、各引き離しパルスによって流体の流れに適用されるパルスエネルギレベルが、所定のエネルギ閾値を超えるように設定され得る。平均引き離し流量は、所定の流量しきい値を超えるべきである。それは、測定された心臓信号の1または複数が生理学的値を表すように、例えば所定の心臓性能がより低い閾値レベルを超えた状態を維持するように、調整され得る。
【0067】
当該方法の好適な一実施形態では、引き離しモードは、前進的な引き離しモードとして実行される。当該引き離しモードの実行中、少なくとも複数の第1引き離し流量パルス及び/または第1引き離し圧力パルスが最初に実行される。その後、後続の複数の第2引き離し流量パルス及び/または第2引き離し圧力パルスが実行される。流体の流れに適用される第2パルスエネルギレベルは、制御装置がより高出力の第1引き離しパルスモードのエネルギレベルに戻ることを要求される旨を心臓信号が示さない限り、第1引き離しモードのパルスよりも低い。
【0068】
当該方法の好適な一実施形態では、第1引き離しモードが所定の時間実行され、その後、第2引き離しモードが自動的に実行される。当該方法の別の好適な一実施形態では、第1引き離しモードは、測定される心臓信号の1または複数の値が改善するまで、特に当該第1引き離しモードの実行後に回復した心臓機能を示す所定の閾値レベルを上回るか下回るまで、実行される。その後、第2引き離しモードが自動的に実行される。
【0069】
当該方法の好適な一実施形態では、流体の流れは、特にはシステムの人工肺装置(酸素供給モジュール)によって、酸素によってエンリッチ(豊かに)される。流体の部分酸素ガス圧は、特には制御装置によって、心臓信号と共に測定され得る。心臓機能の改善及び/またはその回復の際、心臓系を外因性酸素供給からも引き離すべく、酸素供給が減少され得る。
【0070】
本発明の第3の態様は、患者に心臓補助を提供するための方法に関する。第3の態様の方法は、本発明の第1の態様によるシステムを使用することができ、これは、本発明の第2の態様に従って操作され得る。従って、第1の態様及び第2の態様は、第3の態様の特徴、利点、及び、好適な実施形態を構成し得て、逆もまた同様である。
【0071】
当該方法は、特には少なくとも1つのポンプによって、流体をポンピングして、吸引ラインから圧力ラインへの流体の流れを生成する工程を備え得る。当該流体は、患者の血液であるか、または、人工の血液代替物等の患者の心臓系と適合性のある血液状代替流体である。吸引ラインは、例えばカテーテルによって、患者の血管、特には静脈や、または患者の心臓の心腔ないし心室、に接続され得て、圧力ラインは、例えばカテーテルによって、患者の別の血管、特には動脈や、患者の心臓の別の心腔ないし別の心室、に接続され得る。ポンプ及び/または調整可能な流量制限器は、特には制御装置によって、現在実行されている心臓補助のモードに従って、圧力ライン内の流体の流れの流量及び/または圧力を調整するように制御され得る。特には患者の心臓の心周期に本質的に同期され、特には制御装置によって提供される、流体の流れに適用される複数の連続的な支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを伴う支援モードが提供され得る。複数の連続的な引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを伴う引き離しモードも同様に、流体の流れに適用され得て、特には患者の心周期に本質的に同期され得て、特には制御装置によって提供され得る。流体の流れに適用されるパルスエネルギレベルは、典型的には、支援モードにおけるよりも引き離しモードにおける方が低い。
【0072】
第2の態様と同様に、当該方法の1つの特徴として、支援モードまたは引き離しモードのいずれかが実行され得る。当該方法はまた、交互の支援/引き離しモードを備えてもよい。通常、所与の時点で実行されるのは1つのモードのみである。好ましくは、支援モードは、1人の特定の患者の治療中に実行される。支援モードによる補助によって患者の心臓が回復すると、引き離しモードが適用される。
【0073】
本明細書において、「血管」とは、動脈及び静脈を指す。しかしながら、それらはまた、心臓の空洞、特には心室または心室、をも含むものと理解され得る。当該方法は、任意選択的に支援パルスまたは引き離しパルスが適用されて、流量及び/または圧力の増大を伴って、血液がある血管から別の血管に輸送、特にはポンプ輸送、されることを許容し得る。当該方法は、例えば心原性ショックまたは心停止またはあらゆるタイプの心不全のような心臓事象に苦しんでいる患者の心臓支援を許容し得る。治療方法としての当該方法は、患者とその心臓系が心臓支援から徐々に引き離されることを許容し得る。従って、心臓支援中毒に起因する心臓機能の喪失が回避される。
【0074】
本発明の更なる特徴は、特許請求の範囲、例示的な実施形態、及び、図面から生じる明細書内に前述された特徴及び特徴の組み合わせ、並びに、以下の例示的な実施形態で言及される特徴及び特徴の組み合わせは、明示された当該組み合わせ内のみでなく、本発明の範囲を逸脱しない他の組み合わせ内でも、使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1図1は、心臓補助システムの概略図を示す。
図2図2は、図1に従うシステムによる同期された心臓補助の設定を示している。
図3図3は、図1に従うシステムによる流体の流れに挿入される流量パルス及び圧力パルスを示している。
図4図4は、図1に従うシステムのための制御アルゴリズムを流れ図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、心臓補助のためのシステム10を概略図で示している。システム10は、内部管腔を有する吸引ライン12と、内部管腔を有する圧力ライン14とを備える。図1から理解されるように、当該システムは、患者16に接続されており、特に、吸引ライン12が静脈または心臓の右心室に接続されており、圧力ライン14が患者16の左心室に接続され、例えば心臓の大動脈弁の近くに位置決めされている。ライン12、14の終端は、例えばカテーテルを使用して、患者16に接続される時、血液が患者16から内部管腔に、及びその逆に、通過することを許容する。
【0077】
システム10は、吸引ライン12及び圧力ライン14に流体的に接続されたポンプ18を備える。ポンプ18は、本質的に心臓の右心室から吸引ライン12への流体の流れを作り出すように血液を圧送(ポンピング)するように構成され、当該流体の流れは、ポンプ18を通過し、圧力ライン14を介して患者16の心臓、特には患者16の大動脈心室、に戻る。当該回路が、流体流路として指定され得る。当該流路を通る流体の流れを制御するために、システム10は、ポンプ18に加えて、本例ではバルブである調整可能な流量制限器20を更に含み得る。当該バルブ20も、流体経路内に配置され、これは、血流も流量制限器20を通過することを意味する。従って、ポンプ18及び流量制限器20の両方が組み合わされて使用され得て、圧力ライン14を通るないし圧力ライン14内の流体の流れ、特には本例では血液、の調整可能な流量及び調整可能な圧力を提供し得る。
【0078】
当該目的のために、システム10は、流量及び圧力を調整するためにポンプ18及び流量制限器20を制御するように構成された制御装置22を備える。例えば、制御装置22は、ポンプ速度、ポンピング作用による圧力上昇、及び/または、ポンピングされる血液量、を制御することができ、並びに/または、流量制限器20の位置状態、例えばバルブが開閉する程度、を調整することもできる。
【0079】
更に、システム10は、制御装置22に機能的に接続された心電計24を備える。例えば、心電計24は、当該心電計24によって測定された信号に対応する信号を制御装置22に送信し得る。当該信号は、例えば、電気接続ケーブルによって送信される電気信号、または、無線で送信される電波、であり得る。これは、制御装置22をして、心電計24によって記録される測定及び/または推定される心臓信号に基づいて、ポンプ18及び調整可能な流量制限器20を制御することを許容する。患者16の心臓信号を測定するために、心電計24は、1または複数のセンサ26を有し、それらは、本例では、患者の皮膚に取り付けられているか、または付着している。
【0080】
更に、システム10はまた、キーボードまたはタッチスクリーンなどの入力装置28を備える。入力装置28は、システム、特には制御装置22、の設定の調整を許容するように構成される。これにより、介護者、ユーザ、または患者16は、当該システム10によって提供される心臓補助を調整することができ、これは、心臓補助のレベル、心臓支援のレベル、及び/または、心臓支援とも呼ばれ得る。
【0081】
更に、システム10はまた、出力装置30を備える。出力装置30は、システム10の設定を表示するように構成され得て、例えば、介護者が所与の瞬間に提供される心臓補助のレベルをチェックすること、及び/または、機能不全または医学的緊急事態の場合に警告信号を送信することを許容する。出力装置30は、例えばディスプレイ及び/またはラウドスピーカーを含み得て、あるいは、特にタッチスクリーンとして構成される場合、入力装置28内に含まれ得る。
【0082】
制御装置22は、例えばコンピュータまたは回路基板として構成され得る。制御装置22は、永続的または非永続的なメモリ装置を含み得て、システム10の制御アルゴリズムであり得るコンピュータ実行可能コードを実行するように構成され得る。制御装置22は、システム10の他の部分、特には心電計24、出力装置30、入力装置28、ポンプ18及び/またはバルブ20、に電気的に接続され得る。代わりに、制御装置22は、前記の構成要素のいずれかに無線で接続されてもよい。更に、システム10は、ウェアラブル(装着可能)な心室補助装置として構成され得て、その場合、患者16に対して移動式の心臓補助が可能化され得る。システム10は、充電可能バッテリなどの電源を備え得る。システム10の一部または全部または構成要素は、冗長に提供され得て、その場合、ポンプ18の損傷したモータ等、構成要素の1つの技術的機能不全または故障の場合でも心臓補助が保証され得る。ウェアラブルな装置として構成される場合、システム10は、ケーシングを含み得て、及び/または、システム10を患者16に取り付けるための手段を含み得る。ウェアラブルな装置の場合、心電計24は、患者16の心臓信号を測定するための別のセンサ装置によって置換され得る。
【0083】
ポンプ18は、好ましくは、斜流ポンプなどの非閉塞性血液ポンプである。流量制限器20は、例えば経路の所与の部分に沿って流路の直径を制限するための電気的及び/または磁気的に可動なプレートを有し、迅速な反応時間を示すバルブとして構成され得る。
【0084】
制御装置22は、流体の流れに適用される複数の連続的な引き離し流量パルス及び/または引き離し圧力パルスを伴う引き離しモードを実行するように構成される。パルスは、当該システム10によって支援される患者16の心周期に本質的に同期される。同期は、心電計24によって記録される心臓信号に基づいて実行され、例えば、患者の心臓のR波の開始と同期される。R波は、患者16の大動脈弁の閉鎖を正確に予測することを許容し得て、従って、パルスと患者16の心周期との同期を制御するために利用可能な心臓信号である。更に、制御装置22はまた、流体の流れに適用される複数の連続的な支援流量パルス及び/または支援圧力パルスを伴う支援モードを実行するように構成される。この場合も、それらのパルスは、使用中のシステムによって支援される患者の心周期に本質的に同期される。パルスと患者16の心周期との同期は、引き離しパルス及び支援パルスに全く同じ方法で採用され得る。例えば、圧力ライン14の端部でのパルス開始及び/またはパルス到着が、支援モード及び引き離しモードの両方について同一に確立され得る。
【0085】
支援モードでは、システム10は、例えば心原性ショックに苦しむ患者16に心臓支援を提供し得る。心原性ショックのために、患者16の心筋は、典型的には損傷を受けており、従って、患者16の末梢に酸素を供給するのに十分な一心拍あたりの血液量出力を排出することができない。また、患者16の心臓自体、酸素支援の欠如に苦しんでいる。従って、心臓補助システム10による外因性の支援がなければ、患者の心臓は、例えば心筋萎縮により、収縮性を更に失う可能性がある。従って、患者の生存率が、進行性心不全のために危険にさらされ、低下され得る。
【0086】
支持モードでシステム10を用いて心臓支援を提供することにより、患者の生理学的な血流特性、及び、患者の末梢ないし心臓への酸素供給16が保証される。酸素の供給を更に改善するために、システム10はまた、人工肺を備え得て、それは、吸引ライン12から圧力ライン14に圧送される血液を、追加の酸素によって、エンリッチにする(豊かにする)ように構成される。これは、当該血液の部分酸素ガス圧力を増大させる。
【0087】
心臓補助システム10による支援により、心臓は回復している可能性があり、心臓補助が終了され得る可能性がある。しかし、突然の終了は、患者16の循環系、特には心臓、にストレスを与えることが見出されて、それは回避されるべきである。また、心臓は、心臓補助に依存してしまう可能性があることも知見された。そうなると、心臓支援の下で十分な一回拍出量を排出するように回復していた場合でも、心臓の支援が無ければ心臓が機能しない状態となる。
【0088】
患者16の心臓を心臓補助無しの状態に調整するために、システム10は、引き離しモードを実行するように構成される。一般に、引き離しモードは、支援モードよりも少ない心臓補助を患者16に供給することを意図されている。従来技術では、引き離しは、1つおきまたは2つおきの心拍にのみ同期する圧力パルス及び流量パルスを提供することによって確立され得る。しかしながら、そのような引き離しモードは、支援されていない断続的な心拍の患者の心臓には供給不足であり、支援されている心拍の心臓には供給過剰であることが見出された。各パルスによって提供される心臓補助のレベルは、心臓エネルギ、特には血行力学的エネルギ(HE)、とも呼ばれ得る。各2番目の心拍に対する過剰な心臓補助と、支援される心拍の間の不十分な心臓補助とは、全体として患者16の心臓に有害であり得て、回避されるべきである。支援のレベルは、余剰の血行力学的エネルギ(SHE)として定義される。
【0089】
改善された引き離しを確立するために、システム10、特に制御装置22は、引き離しモードを実行するように構成される。各パルスによって流体の流れに提供されるパルスエネルギは、支援モードよりも引き離しモードの方が低い。これにより、システム10は、引き離しモードでの動作時に全体的な心臓補助を減らしながら、患者16の各心拍に対する心臓補助を保証し得る。例えば、引き離しモードでの支援のレベル、すなわちパルスエネルギは、入力装置28によって設定され得て、患者16の心臓機能または任意の条件に適合され得る。
【0090】
与えられる支援のレベルはまた、心電計24によって測定される心臓信号に基づいて決定され得る。引き離しモードでは、支援モードで設定及び提供されるエネルギレベルが、心臓支援を提供するためのベースラインと見なされ得る。当該ベースラインレベルは、引き離しモードでシステム10によって提供されるパルスのために低減される。これは、全体的な心臓支援を減らしながら、同期される引き離しパルスで患者16の各心拍を支援することを許容し得る。好ましくは、システム10は、支援モード及び引き離しモードの両方で、患者の各心拍にパルスを同期させる。引き離しモードではパルスエネルギが低下されるため、外因性の支援無しで、心臓性能(例えば一心拍あたりの一回拍出量)を回復するべく心臓が徐々に適合され得る。更に、支援モードのみを適用する場合と比較して、心臓がそれ自体で心臓性能を高めるように訓練されるため、心筋組織の回復が促進され得る。従って、本発明の方法は、回復プロセスを支援し得て、及び/または、心臓補助治療を短縮化し得る。
【0091】
引き離しモードのエネルギレベル及び/または支援モードから引き離しモードへの切り替えは、支援モードを実行する所定の時間の経過に基づいて、及び/または、心電計24によって測定された心臓値に基づいて、制御され得る。引き離しモードのエネルギレベルの調整、及び/または、支援モードから引き離しモードへの切り替えは、制御装置22によって自動的に実行され得る。例えば、システム10は、患者16が、所定の期間及び/または所定の心拍数の間、支援モードで心臓補助を受けた後、自動的に引き離しモードに切り替わるように構成され得る。当該所定の期間の信号は、入力装置28によって設定され得る。更に、測定される心臓信号は、全体的な患者の健康状態及び/または心臓性能を判定するために使用され得る。患者の健康状態及び/または心臓性能に依存して、制御装置22は、心臓補助のレベルを調整するために、引き離しモードに自動的に切り替わる、及び/または、引き離しモードの各パルスのエネルギを低減するように構成され得る。これにより、引き離し期間が短縮される。更に、心臓組織の回復が上手く確立されることが見出された。
【0092】
制御装置22はまた、患者16の心臓系の状態の試験を実行するように構成され得る。
例えば、制御装置22は、患者16の測定された心臓信号の1または複数が、所定の絶対値だけ、または、パルスエネルギレベルの低減の開始前に記録された初期値に基づく相対的割合だけ、変更されるまで、引き離しモードのパルスのエネルギレベルを低減し得る。これにより、システム10は、引き離しモードでのパルスエネルギレベルを自動的に調整し得る。従って、システム10は、患者の個々の心臓性能に応じて、患者16を心臓補助から徐々に引き離すことができる。そのようなアプローチは、患者16の損なわれた心臓の回復を改善することが見出された。
【0093】
制御装置22の任意の設定またはシステム10の他の設定、特にはエネルギレベルの前述の自動調整に基づく任意の設定は、出力装置30内に表示され得て、これにより、システム10の現在の状態が確認(チェック)され得る。
【0094】
図2は、例えば支援モードによる約2パルスについて、システム10の流体の流れを図で示している。図2では、軸50が「時間(ms)」を表し、軸52が「流量」(リットル/分)を表している。図2に示されるグラフの水平部分54によって示されるように、システム10は、全体的な心臓補助のためのベースフローを可能にし、特にはライン12、14及び/またはポンプ18の管腔内における血液凝固をも回避し、システム10の反応時間を増大させ得る。更に、当該ベースフローに適用されるように、システム10はパルス56を生成し、そのうちの2つが、図2に示されている。パルス56は、対称的な(単一の部分的な)正弦波形状を有する。パルス56は、ポンプ18の毎分回転数(rpm)の増大、例えば3500rpm/分、を反映し得る。1パルスのためのポンプ18の回転数の増大は、所望のパルスエネルギのパルスが生成されるように、調整され得る。ポンプ18の(所与のパルス56のための)時間単位あたりの回転数の増大は、サポー支援モードよりも引き離しモードの方が低い。従って、引き離しモードの場合、流量の支援はより低い。所与のパルスのピークは、典型的には、ポンプ18の最大性能を反映している。その後、ポンプの性能は、パルス生成前のレベルまで低下され、すなわち、ベースフローにとって必要な支援にまで低下される。
【0095】
図示の例では、パルス56は、流体の流れに適用されるエネルギのレベルを決定するパルス持続時間を有する。ポンプ18の(そのベースフロー性能に対する)長期間にわたる性能向上は、パルス56のエネルギを増大させる。例えば、図示の例では、ポンプ18は、支援モードで約200ミリ秒の間加速される。比較すると、引き離しモードでは、ポンプ18の性能は、所与のパルスに対して、200ミリ秒未満、例えば約75msから約200ms、だけしか増大されないため、より短い長さの引き離しパルスに帰結する。追加的または代替的に、ポンプ18のピーク性能(パルス振幅)も、支援モードと比較して、低減され得る。従って、パルスエネルギ及び心臓補助は、支援モードと比較して、引き離しモードで低減される。
【0096】
図2の線58によっても示されるように、全体の平均流量は、それに適用される追加のパルスのために、システム10によって提供されるベース流量よりも高い。平均流量は、適用される全体的な心臓補助を示すパラメータとも見なされ得る。例えば、最大の引き離し流量は、毎分2.5リットルであるように選択され得て、最小の引き離し流量は、毎分1.5リットルであり得る。比較すると、ベース流量は、毎分約0.2リットルから最大毎分1.5リットルに設定され得る。引き離しモードでは平均流量が低減されるが、追加の酸素(平均流量を確立するよりも多い)が依然として患者16の組織に供給される。
【0097】
図3は、システム10によって患者16の心臓補助に提供される例示的なパルスを詳細に示している。軸60(時間)及び軸62(mmHg単位の圧力または1分あたりのリットル単位の流量)を伴うグラフが、曲線64、66を示している。曲線64は、システム10によって生成される圧力パルスを示している。曲線66は、システム10によって生成される流量パルスを示している。流量パルスは、圧力パルスに対して位相シフトされ、圧力パルスに後続している。システム10は、最初に圧力を増大させ、その結果、流量の増大に帰結している。もっとも、流量制限器20によって、圧力パルスと流量パルスの相対的なシフトは調整され得る。特に、圧力パルスと流量とは、互いから分離されていてもよい。
【0098】
好ましくは、圧力パルス及び/または流量パルスは、大動脈弁閉鎖の瞬間に、またはその直後に、患者16の心臓の左心室に到達する。当該アプローチは、患者16自身の生理学的心拍パルスを支援することを許容する。大動脈弁を通る不所望の逆流が、本質的に打ち消される。当該目的のために、制御装置22は、システム10の待ち時間(レイテンシー)も考慮して、パルス生成を患者16の記録されたR波に同期させ得る。待ち時間(レイテンシー)は、例えば加速が開始するまでにポンプ18が遅延期間を示す場合に、発生し得る。また、流体は、圧力ライン14を介して患者16の心臓に遅れて到着し、このことは、同期のために考慮される必要がある可能性がある。
【0099】
図3は、余剰の血行力学的エネルギを測定する方法を示している。余剰の血行力学的エネルギは、パルス持続時間にわたる圧力を掛けた流量の積分を、パルス持続時間の流量の積分で割ったものである(q′=流量、p=圧力、t=パルス持続時間、で以下式を参照)。流量パルスの持続時間は、参照符号68で示されているように、ベース圧力を超える圧力上昇の開始として定義される。当該パルスの終点は、ベース流量に対応する閾値に達する流量に対応し得る(参照符号70)。
【0100】
図4は、システム10を作動させるために制御装置22によって実行され得る制御方法を流れ図で示している。ボックス80は、当該制御方法の第1ステップを示し、これは、システム10による患者16の心臓補助の開始に対応し得る。ボックス82において、患者16が支援モードまたは引き離しモードのいずれのパルスを必要としているかが決定される。決定は、測定される心臓信号に基づき得る、あるいは、例えば介護者によって手動で設定され得る。患者16が心臓補助のために支援モードを必要とする場合、ボックス84に示されるように、制御アルゴリズムは、支援モードを実行することによって続行する。それ以外の場合、制御アルゴリズムは、ボックス86に示されるように、引き離しモードのために必要とされる心臓支援の決定で続行する。引き離し中に必要とされる心臓補助のレベルは、例えば、より高いレベル及びより低いレベルの心臓補助を選択することによって、選択され得る。代替的または追加的に、引き離しモードでの心臓支援のレベルはまた、測定される心臓信号に基づいて決定され得る。
【0101】
図4に示される例では、制御装置は、引き離しモードで2つのレベルの心臓支援を提供することができるが、3つ以上のレベルも、本発明の範囲内に入る。目標エネルギレベルが別の引き離しパルスで区別できる場合でも、制御方法は同じプログラムを実行する。もっとも、制御装置は、例えば測定された心臓信号及び/または判定された心臓性能に基づいて、引き離しモードで予見される心臓補助の2つの(またはそれ以上の)レベル間での自動的な切り替えを許容するよう、そのモードを修正するように構成されてもよい(不図示)。判定ボックス86に続く制御アルゴリズムの一方側のみが説明されている。反対側は、パルスエネルギレベルに関してのみ異なる、ということが理解される。
【0102】
ボックス88によって示されるように、判定ボックス86を通過すると、当該方法は、流れの低減を誘発する。流量低減88は、ボックス90に示されるように、ポンプ18の基本性能に対して、パルスのためのポンプ性能(例えば、ポンプ18の毎分回転数)の増大の調整によって、達成される。その後、判定ボックス92に従って、低減が、必要とされるパルスエネルギレベルに合致するか否か、が判定される。例えば、合致(マッチング)は、提供された平均流量を目標平均流量と比較することによって確立され得る。引き離しモードのエネルギレベルを制御するために平均流量を使用することは、平均流量は容易に測定されるので、有利である。そのようなフィードバックループはまた、患者16の血液の粘度、ライン12、14のキンク(ねじれ)及び曲がり、並びに/または、継続使用に起因するポンプ18の性能の喪失、等の個々の状態を補償することを許容し得る。例えば、平均流量は、システム10のライン12、14のうちの1つ内のフローセンサによって測定され得る。
【0103】
追加的または代替的に、判定ボックス90は、エネルギレベルを低減するために、パルス持続時間の変化をもたらし得る。パルス持続時間の低減が必要とされるパルスエネルギレベルと合致するか否かが、判定ボックス92で判定され得る。引き離し流量のエネルギレベルを制御するために平均流量を測定することは、有益であり得る。なぜなら、それは、個別の測定及びそれらの集約を要求すること無しで、ポンプ18のパルス持続時間とピーク性能との両方、並びに、エネルギレベルへのそれらの影響の、同時の分析または調整を許容するからである。
【0104】
判定ボックス92において実際の平均流量が目標平均流量と合致しない場合、当該方法は、ポンプ18の性能及び/またはパルス持続時間(ポンプ18の増大性能の期間)の更なる低減で続行する。当該方法は、目標値が達成されるまで、ポンプ性能及び/またはパルス持続時間を、個別的にまたは共同で、低減するように設計され得る。図4に示される例では、好ましくは、ポンプ18の性能(毎分回転数)のみがステップ90で変更される。パルス持続時間は、ステップ90でのパルス生成のための(低減された)ポンプ速度のみでは目標流量が達成されない場合に、ステップ94で変更されるのみである。その後、判定ボックス96において、目標値が引き離しパルスによって実現されるか否か、あるいは、更なる低減が要求されるか否か、が判定される。
【0105】
判定ボックス96に従って更なる低減が必要とされる場合、ボックス88に示されるように、更なる低減ループが構想され、ステップを繰り返し実行する。それ以外の場合、制御方法は、ポンプ性能の増大(パルス振幅)及び/またはパルス持続時間(パルス長)の適切な設定と共に、ボックス98の引き離しモードを実行することで続行する。
【符号の説明】
【0106】
10 システム
12 吸引ライン
14 圧力ライン
16 患者
18 ポンプ
20 流量制限器
22 制御装置
24 心電計
26 センサ
28 入力装置
30 出力装置
50 軸
52 軸
54 水平部分
56 パルス
58 線
60 軸
62 軸
64 圧力曲線
66 流量曲線
68 参照符号
70 参照符号
80 ボックス
82 ボックス
84 ボックス
85 ボックス
88 流量低減
90 ボックス
92 ボックス
94 ステップ
96 ボックス
98 ボックス
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】