IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シュタール インタナショナル ベーフェーの特許一覧

特表2022-509931揮発性有機化合物を実質的に含まず、高固形分を有する水性ポリウレタン分散体を調製する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(54)【発明の名称】揮発性有機化合物を実質的に含まず、高固形分を有する水性ポリウレタン分散体を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20220118BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525777
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 NL2019050792
(87)【国際公開番号】W WO2020111944
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】2022104
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501236847
【氏名又は名称】シュタール インタナショナル ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リック・アンドレアス・ルイス・ヤンセン
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA13
4J034CA22
4J034CB01
4J034CD08
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF32
4J034DG03
4J034DG04
4J034DM01
4J034DN01
4J034GA33
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA14
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB17
4J034QC05
4J034RA07
(57)【要約】
ポリウレタンの分散体が、少なくとも50質量パーセントの固形分を有し、アセトン若しくは他の溶媒、又は250℃未満の沸点を有するアミンを含有しないように、x個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有し(x+y≧2であり、x及びyは0以上である)、塩を形成できる追加の官能基を有する少なくとも1種の延長剤Bを有するポリウレタン分散体を調製する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を実質的に含まないポリウレタン分散体を調製する方法であって、
i)アセトンの非存在下で、イソシアネート、親水基を有するポリオールを含んでもよいポリオール及び成分Aから、ポリウレタンプレポリマーを合成する工程であり、前記成分Aが、x個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有し(x及びyの両方が、それぞれ独立に0又は0超であることができ、x+y≧2である)、塩を形成できる追加の官能基を有する、工程と、
ii)得られたプレポリマーを、場合により他の添加剤を含む水相に分散させる工程と、
(iii)プレポリマーを水中に分散させる前に、分散させるのと同時に、又は分散させた後に、アルカリ金属水酸化物等の1種又は複数の中和剤を加える工程と、
(iv)分散させる工程と同時に又はそれに続いて、ポリウレタンの分散体が少なくとも50質量パーセントの固形分を有するように、成分Bを含む1種又は複数の延長剤と反応させることによってポリウレタンを形成する工程であり、前記成分Bが、x個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有し(x及びyの両方が、それぞれ独立に0又は0超であることができ、x+y≧2である)、塩を形成できる追加の官能基を有する、工程と
を含む、方法。
【請求項2】
成分A及び/又は成分Bに存在する追加の官能基が、カルボキシレート基、スルホネート基及びホスフェート基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分Bが、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウム等の1つ又は複数のアミノ基及び1つ又は複数のスルホネート基を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成分Aが、カルボキシ含有ジオールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
イソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、又は芳香族及び脂肪族ジイソシアネートの混合物、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート及びそれらの混合物、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシル-メタン-4,4'-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン(2,2,4-異性体、2,4,4-異性体若しくはそれらの混合物)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルニルジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、並びに/又は1,5-ナフチレンジイソシアネートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール若しくはポリシロキサンポリオール、又はそれらの混合物、及び場合により分子量500未満のジオール又はトリオールの群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水性ポリウレタン分散体の固形分が、少なくとも55質量パーセントであり、好ましくは少なくとも60質量パーセントである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
成分Bの量が、プレポリマーの量中に存在するイソシアネート官能基に対して、0.05~0.50モル当量の成分Bに由来するイソシアネート反応性基が、加えられるような量であり、残留しているイソシアネート官能基が、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサンメチル-アミン、又はアミン末端ポリエーテル等の他の延長剤によって延長され、用いられる延長剤の総量が、延長剤の総量中のイソシアネート反応性基のプレポリマー中のイソシアネート基に対する比が、0.7:1~2.0:1の範囲になるような量である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プレポリマーの総質量に基づいて計算した成分Aの量が、0.1~5質量パーセントの間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水性ポリウレタン分散体が、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満の総VOC含有量を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られる分散体。
【請求項12】
請求項11に記載の分散体から得られる塗料又は塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に揮発性有機化合物を含まず、したがって溶媒を含有しない、揮発性アミンを含まず、アセトン若しくは酢酸メチル又は他のいくつかの揮発性溶媒の非存在下で調製される、高固形分の水性ポリウレタン分散体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンの水性分散体は、塗料組成物製造の基礎原料として周知である。それらは、場合により着色剤、顔料、艶消剤等の添加剤と組み合わせ、保護塗料又は化粧塗料に使用されてもよい。ポリウレタンは、良好な耐化学薬品性、耐水性、耐溶剤性、靭性、耐摩耗性、耐久性等の多くの望ましい特性を有することができる。
【0003】
当該技術分野で周知であるように、水性ポリウレタン分散体は、特に有利には、イオン性分散基を有するイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを水性媒体に分散し、次いでこのプレポリマーを水性媒体に分散させながら、活性水素含有鎖延長剤と反応させることによって調製される。例えば、US4046729及びUS4066591を参照されたい。
【0004】
水中でのポリウレタンの分散性は、適切な側鎖イオン性基をポリウレタンプレポリマーの構造体に組み込むことによって達成される場合が多い。好適であれば、外部からの界面活性剤を付加的に適用することができる。好ましくは、少なくとも1つの酸性基を有するイソシアネート反応性化合物をポリイソシアネートと反応させることによって、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、又はホスフェート基等のアニオン性基を、ポリウレタン骨格に組み込む。最も一般的なのは、カルボン酸官能性化合物を組み込むことである。カルボン酸官能基は一般に、ポリウレタンプレポリマーを水中に分散させる前又はその間に、揮発性第三級アミンで中和される。中和剤として揮発性第三級アミンを適用することの不利な点は、塗膜形成の間に蒸発し、したがって環境汚染を引き起こすことになること、及び塗膜形成の間のこの蒸発は、多くの場合不完全であり、硬化塗料に揮発性アミンが残留する結果となり、次いで塗料の寿命の間に徐々に蒸発する可能性があることである。揮発性アミンは、水性ポリウレタン分散体中の揮発性有機化合物(VOC)の総含有量に寄与する。
【0005】
初期には、水性ポリウレタン分散体は、水以外に溶媒を含有しており、この溶媒はプレポリマー調製段階の間に、加工助剤として使用された。依然として、多くの市販の水性ポリウレタン分散体が、溶媒を含有している。水性ポリウレタン分散体はまた、溶媒を使用せずに作製できることが周知である。これは溶媒の使用を回避して行うことができるが、やはり水性ポリウレタン分散体の調製の間にアセトンを使用し、その後水性ポリウレタン分散体からアセトンを蒸留して取り除くことによって達成できるが、いくらかの量のアセトンが水性ポリウレタン分散体に留まることになるという不利な点を有する。溶媒は、アセトンを含め、水性ポリウレタン分散体中のVOCの総含有量に寄与する。
【0006】
US2005/003102は、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基並びに塩を形成できる追加の官能基を有する化合物を含む特定のヒドロキシ官能性成分をジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートと反応させ、得られた生成物の水との分散体を形成し、この分散体を鎖延長剤としてのアミン官能性材料と反応させることによって調製される、水性でUV硬化性のポリウレタン乳濁液を記載する。ポリウレタンプレポリマー形成は、後に蒸留して取り除かれるアセトン等の溶媒の存在下で実行される。更に、塩の形成に使用できる塩基及び酸のリストは、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等の揮発性アミンを含むが、これらはやはりVOCに寄与する。
【0007】
残留VOCの存在は望ましくない。このVOCが硬化塗料の寿命の間に放出されると、特に硬化塗料が車両内部のような狭い空間で使用される場合、人間がVOCに曝される場合があり、これにより頭痛、悪心、疲労等が引き起こされる可能性があるからである。更に、いくつかの国が、会社が一定期間に放出してもよいVOCの量を制限する法を有しており、このことはVOCの量を削減するさらなる動機となっている。
【0008】
高固形分のポリウレタン分散体の使用は有利であるが、これは、同じウェット厚さの水性ポリウレタン分散体を塗布すると、厚みの大きな硬化塗料が得られるという事実による。同様の厚みの硬化塗料が所望される場合、高固形分の水性ポリウレタン分散体を使用すると、少量の水を蒸発するだけでよく、時間及びエネルギーを節約することを意味する。厚みの大きな硬化塗料が所望される場合、これは水性ポリウレタン層の1つのウェット層を乾燥して硬化することによって常に達成されることが可能であるとは限らないので、望ましい乾燥層の厚みが得られるまで、ウェットの塗料を塗布する工程と、乾燥して硬化する工程と、次いで再びウェットの塗料を塗布する工程と、乾燥して硬化する工程とを含むいくつかの工程が必要となる。高固形分の水性ポリウレタン分散体を使用すると、高固形分の水性ポリウレタン分散体からできている各層によって、乾燥した大きな厚みが得られるので、同じウェット厚さが塗布される限りにおいて、使用する塗料層の数を減らすことができ、これにより加工工程が省かれる。
【0009】
50(質量/質量)%超の高固形分を有するポリウレタン分散体が、いくつかの先行技術文献に記載されている。50%以上の高固形分を有する水性ポリウレタン分散体の例は、US2009/0099082、US2011/0171277、US2009/0214651、及びUS3,989,869に見ることができる。しかしこれらの文書に記載されている方法は、溶媒を使用しており、溶媒を蒸発させてポリウレタン分散体の高固形分を達成するが、これは、高額な費用を伴う追加のプロセス工程であり、溶媒を回収するための工程、又は少なくとも溶媒が環境問題を引き起こすのを防ぐための工程を更に必要とする場合があるので望ましくない。さらなる不利な点は、溶媒の残量が水性ポリウレタン分散体に留まり、それによりVOCの含有量を増加させることになることである。
【0010】
EP1153051B1は、ラジカル重合によって次いでポリマー骨格に組み込まれる反応性揮発性アミン化合物(第三級アミノ官能性アクリルモノマー)で中和される、ペンダントカルボン酸基を伴うアニオン性ポリウレタンの水性分散体を記載している。未反応遊離モノマーは、最終生成物に留まっており、したがって依然として揮発性アミンを含有している。このモノマーは、不純物も含有している可能性があり、加水分解によって望ましくない副生成物であるジメチルエタノールアミンが生成する可能性がある。
【0011】
EP3205679A1、US9617453及びEP1717257A1は、溶媒を含まない水性ポリウレタン分散体を調製する方法を記載しており、これらの分散体のVOCの放出は少ないが、中和剤として揮発性アミンが使用されている。
【0012】
US2015/079406A1は、揮発性アミン及びN-アルキル-ピロリジノンを実質的に含まないポリウレタンの水性分散体を調製する方法を記載するが、これもやはりアクリル酸モノマー及びそれに次ぐラジカル重合の使用を伴う。この方法は、したがってポリウレタン/アクリルポリマー分散体の調製を記載する。同様にCN107814907は、VOCゼロであり、揮発性アミンを含まないポリウレタン/ポリアクリレートの水性分散体を調製する方法を記載する。
【0013】
US2010/098867A1は、中和剤としてアルカリ金属水酸化物を使用し、揮発性アミンを含まないカルボキシル化アニオン性ポリウレタンの水性分散体を調製する方法を記載するが、得られたポリウレタン分散体の固形分は、40%未満である。
【0014】
US6172126は、共溶媒を含まない水性ポリウレタン分散体を調製する方法を記載する。しかし揮発性アミンが中和剤として使用されており、プレポリマー段階の間、この方法では後に蒸留して取り除かれるアセトンが使用されている。アセトンによる方法を介して作製されるこのようなポリウレタン分散体は、蒸留工程の後にも、分散体中に残留するいくらかの量のアセトンを有することになる。
【0015】
同様にEP2066712B1は、プレポリマーを調製するための反応、又はさらなる鎖延長反応、さもなければ両方の反応工程が、酢酸メチルの存在下で実行されることを特徴とする、水性ポリウレタン-ポリ尿素分散体を調製する方法を記載する。酢酸メチルは、これに続く工程で蒸留して取り除かれるが、いくらかの量の酢酸メチルは、蒸留工程の後にも分散体中に留まることになる。この方法でも、揮発性アミンが中和剤として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US4046729
【特許文献2】US4066591
【特許文献3】US2005/003102
【特許文献4】US2009/0099082
【特許文献5】US2011/0171277
【特許文献6】US2009/0214651
【特許文献7】US3,989,869
【特許文献8】EP1153051B1
【特許文献9】EP3205679A1
【特許文献10】US9617453
【特許文献11】EP1717257A1
【特許文献12】US2015/079406A1
【特許文献13】CN107814907
【特許文献14】US2010/098867A1
【特許文献15】US6172126
【特許文献16】EP2066712B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
溶媒を含まず、揮発性アミンを実質的に含まず、VOCを実質的に含まないことと、高固形分を有することとが、水性ポリウレタン分散体の特性のより望ましい組み合わせを構成する。したがって本発明の目標は、そのような水性ポリウレタン分散体を提供すること、及びそれらを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、揮発性有機化合物を実質的に含まないポリウレタン分散体を調製する方法であって、
i)アセトン又は他の溶媒の非存在下で、イソシアネート、親水基を有するポリオールを含んでもよいポリオール、ポリウレタンプレポリマー及び成分Aを含むプレポリマーを合成する工程であり、前記成分Aが、x個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有し(x及びyの両方が、それぞれ独立に0又は0超であることができ、x+y≧2である)、塩を形成できる追加の官能基を有する、工程と、
ii)得られたプレポリマーを水、アルカリ金属水酸化物等の1種又は複数の中和剤及び場合により乳化剤を含む水相に分散させ、ポリウレタンの分散体が少なくとも50質量パーセントの固形分を有し、アセトン又は他の溶媒を含有せず、250℃未満の沸点を有するアミン又は他の揮発性化合物を含有しないように、成分Bを含む1種又は複数の延長剤と反応させることによって、ポリウレタンを形成する工程であり、前記成分Bが、x個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有し(x及びyの両方が、それぞれ独立に0又は0超であることができ、x+y≧2である)、塩を形成できる追加の官能基を有する、工程と
を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によって作製される水性ポリウレタン分散体は、望ましい固形分の分散体を作製するために蒸発させるべき(有機)溶媒を使用して調製されない。ポリウレタンプレポリマーは、アセトン又は他のいくつかの揮発性溶媒の非存在下で合成される。
【0020】
本発明との関連で、VOCを実質的に含まないこととは、水性ポリウレタン分散体中のVOCの量が、1000ppm未満であり、好ましくは500ppm未満であり、より好ましくは100ppm未満であることを意味する。
【0021】
VOCは、欧州指令2004/42/ECに従い、101,3kPaの標準圧力で測定した初留点が250℃以下の任意の有機化合物であると考えられているので、本発明との関連で、VOCという用語は、それらの高蒸気圧及び低沸点のために、大気中に素早く蒸発する可能性がある有機化学化合物を指すことになっている。水性ポリウレタン分散体の調製に通常使用されるVOCは、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1-エチル-2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、4-エチルモルフォリン等の種々の溶媒、共溶媒及び揮発性アミンを含む。
【0022】
ポリウレタン分散体は、一般にポリウレタンプレポリマーを水中に分散させることによって作製される。好適なプレポリマーは、イソシアネート成分を使用して作製できる。これらのイソシアネートは、ポリオールと反応する。好ましいプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、又は芳香族及び脂肪族ジイソシアネートの混合物、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート及びそれらの混合物、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシル-メタン-4,4'-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6-ヘキシルジイソシアネート、1,5-ペンチルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン(2,2,4-異性体、2,4,4-異性体、若しくはそれらの混合物)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルニルジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、並びに/又は1,5-ナフチレンジイソシアネートで作製できる。ポリイソシアネートの混合物が使用でき、ウレタン残基、アロファネート残基、尿素残基、ビウレット残基、カルボジイミド残基、ウレトンイミン(uretonimine)残基又はイソシアヌレート残基の導入によって変性されたポリイソシアネートも使用できる。特に好ましいポリイソシアネートは、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びジシクロヘキシル-メタン-4,4'-ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを含む。
【0023】
500~6000の範囲の分子量を有し、プレポリマーの調製に使用することができる高分子ポリオールは、特にジオール、トリオール及びそれらの混合物を含むが、高官能性ポリオールも、例えばジオールとの混合物の微量成分として同様に使用してもよい。ポリオールは、ポリウレタン配合物に使用され、又は使用されることが提唱されるポリマーポリオールの化学分類のうち任意の要素であってもよい。好ましいポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール若しくはポリシロキサンポリオール、又はそれらの混合物の群から選択される。好ましいポリオールの分子量は、700~4000である。500未満の分子量を有し、プレポリマーの調製に場合により使用してもよいポリオールは、特にジオール、トリオール、及びそれらの混合物を含むが、高官能性ポリオールを使用してもよい。そのような低分子量ポリオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、フランジメタノール、グリセロール、及び分子量499までの、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドとそのようなポリオールとの反応生成物が挙げられる。
【0024】
ポリウレタンプレポリマーの水中での分散性は、親水基をプレポリマーに組み込むことによって達成できる。このため、ポリエトキシジオール、ポリ(エトキシ/プロポキシ)ジオール、ペンダントエトキシ又は(エトキシ/プロポキシ)鎖を含有するジオール、ポリエトキシモノオール、ポリ(エトキシ/プロポキシ)モノオール、ペンダントエトキシ又は(エトキシ/プロポキシ)鎖を含有するモノオール、カルボン酸又はスルホン酸若しくはスルホン酸塩を含有するモノオール、又はそれらの混合物等の、他のポリオールがプレポリマー形成の間に存在してもよい。本発明では、少なくとも1つの成分Aが、プレポリマーに組み込まれており、成分Aはx個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有し、x及びyの両方が、それぞれ独立に0又は0超であることができ、x+y≧2であり、成分Aは、カルボキシ基、スルホン酸基又はホスフェート基等の、塩を形成できる追加の官能基を有する。好適な成分Aの例としては、それらに限定されないが、カルボン酸基、例えば、式:R-C-(CH2-OH)2-COOH (式中、Rは、水素又はアルキルである)のジヒドロキシアルカン酸、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸を含有するジオール又はトリオール、並びにスルホン酸基、例えば、4,6-ジアミノベンゼン-1,3-ジスルホン酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ブタンスルホン酸ナトリウム、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-3-スルホプロピル-アンモニウムベタイン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-3-スルホプロピル-アンモニウムベタインプレポリマー(Raschig社製MDAPS PP)を含有するジオール、並びにホスフェート基、例えば、1-グリセロールホスフェート又は2-グリセロールホスフェートを含有するジオールが挙げられる。他の成分Aの例は、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタン-スルホン酸ナトリウム並びに、例えばリジン、システイン及び3,5-ジアミノ安息香酸等のアミノカルボン酸である。
【0025】
好ましくは、成分Aは、カルボキシレート基を含有する。最も好ましくは、成分Aは、カルボキシ含有ジオールである。
【0026】
本発明との関連で、使用されるポリオールの量の大部分が、ポリカーボネート基に由来するポリオールである場合、プレポリマーの粘度が高過ぎるとプレポリマーを押し出すことが非常に難しくなるため、プレポリマーの粘度が望ましい加工温度で高くなり過ぎないように、前記成分Aの量は、好ましくは総プレポリマーの質量に対して2%未満であり、より好ましくは1.5%未満であり、最も好ましくは1%未満である。本発明では、使用されるポリオールの量の大部分が、ポリカーボネート基に由来するポリオールではない場合、プレポリマーを押し出すことが可能であるように、プレポリマーの粘度が望ましい加工温度で高過ぎないことが期待されるので、前記成分Aの量は、総プレポリマーの質量に対してやはり2%超でもよく、前記成分Aの通常の量は、プレポリマーの質量に対して1質量%~5質量%の間である。
【0027】
ポリウレタンプレポリマーは、水への分散性を向上し、適用の間、基板への接着を向上する目的で、性能上の理由から、又は架橋のための潜在的部位として、追加の官能基を含有してもよい。好適な官能基は、高濃度のエトキシ官能基を有するポリアルコキシ官能基、第三級アミン若しくは第四級アミン官能基、ペルフルオロ官能基、ケイ素が組み込まれた官能基、ヒドラジド官能基若しくはヒドラゾン官能基,ケトン、アセト酢酸、若しくはアルデヒド官能基、又はそれらの混合物である。
【0028】
プレポリマーに存在する任意の酸性基をアニオン性基に変換することは、水性分散体の形成前、形成後、又は形成と同時であるが、一般に延長剤との反応の前に、成分Aに由来し、塩を形成できる前記追加の官能基を中和することによって達成できる。好適な中和剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、又はN-ブチルジエタノールアミン若しくはN,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N',N'-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン若しくはそれらの混合物等の非揮発性第三級アミンを含む。好ましくは、アルカリ金属水酸化物が、主要な又は唯一の中和剤として使用され、好ましくは、水相に加えられる。本発明との関連で、中和剤の量は、0.60~1.20の間、好ましくは0.70~1.20の間、最も好ましくは0.75~1.10の間の中和剤の当量が、プレポリマーの量中に存在する、塩を形成できる官能基に対して加えられるようにする。
【0029】
本発明の実施に有用なポリウレタンプレポリマーは、化学量論的過剰の有機ポリイソシアネートを、500~6000の範囲の分子量を有するポリマーポリオール及び他方の要求されるイソシアネート反応性化合物と、約30℃~約130℃の間の温度で、実質的に無水条件下で、イソシアネート基とヒドロキシ基との間の反応が、実質的に完了するまで反応させることによって、従来の方法で調製できる。ポリイソシアネート及び活性水素含有成分は、好適にはイソシアネート基の数のヒドロキシ基の数に対する比が、約1.1:1~約6:1の範囲、好ましくは1.5:1~3:1の範囲内の比率になるように反応させる。必要に応じて、カルボン酸ビスマス、カルボン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、第一スズオクトエート又はトリエチレンジアミン等の触媒を、プレポリマー形成を支援するために使用してもよい。
【0030】
本発明の実施に有用なプレポリマーは、分散工程の条件下で実質的に液体であるべきであるが、これらのプレポリマーが、Brookfield LVF粘度計を使用して90℃の温度で測定し、100,000mPa.s未満の粘度を有するべきであることを意味する。
【0031】
本発明は、延長剤の使用を含み、延長剤は、延長剤をポリウレタンプレポリマーのイソシアネート官能基(functionality)と反応させることによって、ポリウレタンプレポリマーの分子量を構築するのに使用される。プレポリマーと反応させる活性水素含有延長剤は、好適にはポリオール、アミノアルコール、アンモニア、第一級脂肪族アミン又は第二級脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、芳香脂肪族アミン又は複素環アミン、特にジアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物又は置換ヒドラジンである。水溶性延長剤が好ましく、水自体が有効である場合がある。本明細書で有用な、好適な延長剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピルアミン)、トリレンジアミン、キシレンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、3,3'-ジニトロベンジジン、4,4'メチレンビス(2-クロロアニリン)、3,3'-ジクロロ-4,4'-ビフェニルジアミン、2,6-ジアミノピリジン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、メタンジアミン、m-キシレンジアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサンメチル-アミン、例えばHuntsman Chemical社製のJeffamine D-230等のアミン末端ポリエーテル、及びアクリレート又はその加水分解生成物とジエチレントリアミンの付加物が挙げられる。同様に好適なのは、ヒドラジン、アセトンアジン等のアジン類、例えば、ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレン-ビス-ヒドラジン、カルボジヒドラジン、ジカルボン酸及びスルホン酸のヒドラジド、アジピン酸モノ-又はジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、1,3-フェニレンジスルホン酸ジヒドラジド、オメガ-アミノ-カプロン酸ジヒドラジド、ラクトン類をガンマ-ヒドロキシ酪酸ヒドラジド、ビス-セミ-カルバジド、上記のグリコールのうちの任意のグリコールのビス-ヒドラジド炭酸エステル等のヒドラジンと反応させることによって作製されたヒドラジド類等の置換ヒドラジン等の材料である。同様に好適なのは、延長剤の混合
物である。
【0032】
本発明によれば、延長剤は、x個のヒドロキシ基及びy個のアミン基を有する成分Bを含み、x及びyの両方が、それぞれ独立に0又は0超であることができ、x+y≧2であり、成分Bは、カルボキシレート、スルホネート又はホスフェート基等の塩を形成できるさらなる官能基を有する。好適な成分B延長剤の例としては、それらに限定されないが、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウム(例えばEvonik社製のVestamin A95)、リジン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロパン-1-スルホン酸、3-(2-アミノエチルアミノ)プロパン-1-スルホン酸(Raschig社製のPoly-EPS)のポリマー、N-(2-アミノエチル)-β-アラニネートナトリウム(BASF社製のPUD Salt)が挙げられる。好ましくは、成分Bは、スルホネート基を含有し、最も好ましくは1つ又は複数のスルホン酸ナトリウム基を含有し、場合により1つ又は複数のアミノ基を組み合わせて含有する。特に好ましい化合物Bは、2-[(2-アミノエチル)-アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムである。
【0033】
本発明によれば、成分A及び成分Bは、同一でも異なる化合物でもよいが、後者が好ましい。
【0034】
本発明との関連で、延長剤は、又は延長剤の混合物が使用される場合、延長剤のうちの少なくとも一方は、成分Bである。成分Bは唯一の延長剤として使用され得るが、好ましくは他の種類の延長剤と組み合わせて使用される。好ましくは成分Bの量は、0.02~0.70の間、好ましくは0.05~0.50の間、及び最も好ましくは0.05~0.30の間のイソシアネート反応性基の当量が、プレポリマーに存在するイソシアネート官能基に対して加えられるような量であり、残留しているイソシアネート官能基は、他の延長剤によって延長される。他の延長剤の中で好ましいものは、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサンメチル-アミン、及び例えばHuntsman Chemical社製のJeffamine D-230等のアミン末端ポリエーテルである。
【0035】
用いられる延長剤の総量は、プレポリマー中の遊離NCO基にほぼ等しくあるべきであり、総延長剤中の活性水素のプレポリマー中のNCO基に対する比は、好ましくは0.7:1~2.0:1の範囲である。当然のことながら、延長剤として水が使用される場合、延長剤と分散媒体の両方として機能する水は、遊離NCO基に対して著しく過剰に存在するので、これらの比は適用できないであろう。
【0036】
ポリウレタンプレポリマーは、分散後の若干の期間、若干のイソシアネート反応性を保持し得るが、本発明においては、ポリウレタンプレポリマー分散体は、完全に反応したポリウレタンポリマー分散体と考えられる。また、本発明のために、ポリウレタンプレポリマー又はポリウレタンポリマーは、例えば尿素基等の他の種類の構造体を含むことができる。
【0037】
水性ポリウレタン分散体は、分散体の総質量に対して、少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも55wt%、より好ましくは少なくとも60wt%のポリウレタンポリマー粒子を含む。当業者によって通常行われているように、質量百分率は、どの成分が蒸発し、どの成分が蒸発しないか考慮に入れて、事前に計算される。固形分百分率は、後の段階で測定して確認される。そこで、少量を秤量し、次いで105℃のオーブンに1時間入れ、残留している量を計測する。この調節工程で、徐々に蒸発する成分が存在する場合、より高く又はより長い温度/時間レジームも選択できる。
【0038】
必要に応じて、ある量の乳化剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、安定剤、酸化防止剤及び/又は沈降防止剤が、プレポリマー又は水相に含まれてもよく、又は水性ポリウレタン分散体に加えられてもよい。
【0039】
このように調製されたプレポリマーと水相とを混合してポリウレタン分散体を得るが、延長剤が水とは異なる場合、延長剤は、分散工程の前に水相に加えることができ、又は分散工程の間に加えられることができ、又は分散工程の後に分散体に加えられることができる。場合により、中和剤と、乳化剤、消泡剤、難燃剤、増粘剤、安定剤、酸化防止剤及び/若しくは沈降防止剤等の非希釈又は水で希釈した添加剤とを、水相又は分散体に加えることができる。
【0040】
本発明の水性ポリウレタン分散体の粘度は、Brookfield LVF粘度計を使用して25℃で測定した場合、一般に1000mPa.s未満であり、好ましくは750mPa.s未満であり、より好ましくは500mPa.s未満であり、最も好ましくは250mPa.s未満である。
【0041】
上記の具体的な実施形態は、すべて本発明に従った実施形態である。種々の実施形態を、相互に組み合わせてもよい。ある特定の実施形態に記載された特徴は、物理法則がそのような組み合わせを禁じない限り、他の特定の実施形態に従ってもよく、組み込まれてもよく、又そうでない場合は組み合わせてもよい。
【0042】
本発明は、下記の非限定的な実施例によって更に詳細に論じられる。これらの実施例で参照される成分の部及び百分率は、明細書の他の部分及び特許請求の範囲と同様に、そうであると明示しない限り、これらの成分が存在する総組成物の質量に対するものである。
【実施例
【0043】
(実施例1)
ポリウレタン分散体の調製
窒素雰囲気下で、415gの分子量2000のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、57gのヘキサンジオール由来の分子量1000のポリカーボネートジオール、及び4gのジメチロールプロパン酸の混合物を、撹拌しながら50℃に加熱した。70gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート及び25gのヘキサメチレンジイソシアネートを加え、混合物を85℃に加熱し、1.5時間攪拌してポリウレタンプレポリマーを形成した。反応物を冷却し、残留NCOの量を測定した。プレポリマーを、390gの水、15gのSynperonic PE/L62(Croda社製乳化剤)、1.2gの水酸化カリウム、及び13gのVestamin A95(Evonik社製2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムの溶液)からなる水相に分散させた。次いで、8gのヒドラジン水和物を加え、分散体を15分間攪拌した。分散体の固形分は、60%であった。分散体の粘度は、Brookfield LVF粘度計を使用して25℃で測定し、200mPa.sであった。
【0044】
(実施例2)
ポリウレタン分散体の調製
窒素雰囲気下で、205gの、ペンタンジオール及びヘキサンジオールに由来する分子量2000のポリカーボネートジオール、205gの、ヘキサンジオールに由来する分子量1000のポリカーボネートジオール、4gのジメチロールプロパン酸、及び14gのYmer-120(Perstorp社製直鎖状二官能ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)の混合物を、攪拌しながら50℃に加熱した。115gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート及び30gのヘキサメチレンジイソシアネートを加え、混合物を85℃に加熱し、1.5時間攪拌してポリウレタンプレポリマーを形成した。反応物を冷却し、残留NCOの量を測定した。プレポリマーを、390gの水、15gのSynperonic PE/L62(Croda社製乳化剤)、1.8gの水酸化カリウム、6gのVestamin A95(Evonik社製2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムの溶液)、及び3gのヒドラジン水和物からなる水相に分散させた。次いで、13gのヒドラジン水和物を加え、分散体を15分間攪拌した。分散体の固形分は、60%であった。分散体の粘度は、Brookfield LVF粘度計を使用して25℃で測定し、200mPa.sであった。
【0045】
(実施例3)
ポリウレタン分散体の調製
窒素雰囲気下で、200gの、ペンタンジオール及びヘキサンジオールに由来する分子量2000のポリカーボネートジオール、200gの、ヘキサンジオールに由来する分子量1000のポリカーボネートジオール、4gのジメチロールプロパン酸、及び14gのYmer-120(Perstorp社製直鎖状二官能ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)の混合物を、攪拌しながら50℃に加熱した。100gの3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート及び50gの2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを加えて、混合物を85℃に加熱し、1.5時間攪拌してポリウレタンプレポリマーを形成した。反応物を冷却して、残留NCOの量を測定した。プレポリマーを、390gの水、15gのSynperonic PE/L62(Croda社製乳化剤)、3.7gの水酸化カリウム、6gのVestaminA95(Evonik社製2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムの溶液)、及び3gのヒドラジン水和物からなる水相に分散させた。次いで、13gのヒドラジン水和物を加え、分散体を15分間攪拌した。分散体の固形分は、60%であった。分散体の粘度は、Brookfield LVF粘度計を使用して25℃で測定し、200mPa.sであった。
【0046】
(実施例4)
ポリウレタン分散体の耐溶剤性試験
実施例1~3の各分散体を、600μmの厚みのガラス板に塗布した。塗布された塗膜を伴うガラス板を室温で1日間乾燥し、次いで80℃にて8時間オーブンで乾燥した。乾燥した塗膜試料に、水、エタノール又はMEK(メチルエチルケトン又は2-ブタノン)を溶媒として、溶媒取り込み試験を施した。この試験で、乾燥し秤量された塗膜の断片を水、エタノール、又はMEKに1時間浸漬し、次いで塗膜の質量の増加を測定した。質量増加は、低い方がより良い。
【0047】
【表1】
【0048】
Table 1(表1)に示す耐溶剤性試験の結果は、水に浸漬した際の質量増加が低かったので、本発明の水性ポリウレタン分散体(実施例1~3)から作製した乾燥塗膜が、水に対して良好な耐性を有することを実証する。
【0049】
(実施例5)
VOCに対する分散体の試験
実施例1~3のポリウレタン分散体を、揮発性成分の存在に対して試験した。結果をTable 2(表2)に報告した。
【0050】
総揮発性有機化合物(TVOC)の量を、ヘッドスペース分析によるVDA277法に従って測定した。使用した装置は、Interscience Trace1300ガスクロマトグラフInterscience ISQ(シングル四重極MS)であった。カラムは、Restek Stabil wax(登録商標)-MS、30メートル、0.25mmID、0.25μm dfであった。GCオーブンの温度プログラムについては、3分間50℃で恒温にし、次いで12℃/分の速度で200℃に加熱して、4分間200℃で恒温にした。試料調製ついては、100mgの液体試料をヘッドスペースバイアルに移した。試料をヘッドスペースオーブンに120℃で5時間置き、1mlの蒸気をGCMSに注入した。試料を二度繰り返して測定した。平均TVOC値及び主要放出化合物(>1μgC/g)を報告する。TVOC値は、アセトン当量として計算した。
【0051】
【表2】
【国際調査報告】