(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(54)【発明の名称】プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤及びその製造と使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5575 20060101AFI20220118BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220118BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220118BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220118BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220118BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220118BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220118BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220118BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K31/5575
A61P9/10 103
A61P9/10
A61P7/02
A61P9/10 101
A61P3/10
A61P17/02
A61P17/00
A61P9/00
A61P9/04
A61K9/19
A61K47/44
A61K47/24
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/10
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529847
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2019113557
(87)【国際公開番号】W WO2020108193
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】201811423561.7
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521083865
【氏名又は名称】シーアン リーバン ジャオシン バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ルータオ
(72)【発明者】
【氏名】アン, ロン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, イー
(72)【発明者】
【氏名】パン, ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, タオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC18
4C076CC21
4C076DD38
4C076DD41F
4C076DD43Z
4C076DD63F
4C076DD67Q
4C076EE53A
4C076FF16
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4C076GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA03
4C086MA03
4C086MA05
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4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA40
4C086ZA45
4C086ZA54
4C086ZA89
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤及びその製造と使用。
【解決手段】本発明は、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤及びその製造と使用を提供する。前記凍結乾燥製剤は、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル500~4000部、乳化剤500~2000部、共乳化剤0~10部、凍結乾燥保護剤5000~50000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する。本発明のプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤は血管刺激が小さく、薬物安定性が良く、医薬活性および治療効果が同種のプロスタグランジンE1の製品に比べて優れている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル(前記注射用オイルは、大豆油、中鎖油、オリーブ油、茶油、トウモロコシ油、またはヒマシ油のうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)500~4000部、乳化剤(前記乳化剤は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンから選択されることが好ましい)500~2000部、共乳化剤(前記共乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、及びオレイン酸ナトリウムのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)0~10部、凍結乾燥保護剤(前記凍結乾燥保護剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、グルコース、およびマルトースのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)5000~50000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤。
【請求項2】
重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル500~4000部、乳化剤500~1500部、共乳化剤0~10部、凍結乾燥保護剤5000~20000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
凍結乾燥前に100mlあたり、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10mg、大豆油0.5~4g、卵黄レシチン0.5~1.5g、オレイン酸ナトリウム0~0.01g、ラクトース5~20gおよびグリセロール0.2~1.5gを成分として含有する、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記凍結乾燥保護剤とプロスタグランジンE1メチルエステルとの重量比は20~500:0.01である、請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
重量%で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.0001~0.01%、注射用オイル(前記注射用オイルは、大豆油、中鎖油、オリーブ油、茶油、トウモロコシ油、またはヒマシ油のうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)0.5~4%、乳化剤(前記乳化剤は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンから選択されることが好ましい)0.5~2%、共乳化剤(前記共乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、及びオレイン酸ナトリウムのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)0~0.01%、凍結乾燥保護剤(前記凍結乾燥保護剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、グルコース、およびマルトースのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)5~50%、グリセリン0.2~1.5%、pH調整剤適量を含み、残部が注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造する、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項6】
重量%で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.0001~0.01%、注射用オイル0.5~4%、乳化剤0.5~1.5%、共乳化剤0~0.01%、凍結乾燥保護剤5~20%、グリセリン0.2~1.5%、pH調整剤適量を含み、残部が注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造することを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10重量部、大豆油500~4000重量部、卵黄レシチン500~1500重量部、オレイン酸ナトリウム0~10重量部、乳糖5000~20000重量部、グリセリン20~1500重量部、クエン酸ナトリウムまたは塩酸適量を含み、残部が原料の総重量を100×10
3部とする注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造することを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
a.プロスタグランジンE1メチルエステルと乳化剤を油性溶媒中に均一に分散して油相とする工程、
b.グリセリンおよび凍結乾燥保護剤を、適量の注射用水に溶解して水相とする工程、
c.共乳化剤を油相又は水相に溶解する工程、
d.油相を水相に撹拌しながら添加するか、又は水相を油相に撹拌しながら添加し、剪断して初乳を得る工程(20℃~50℃の一定温度条件下で剪断して初乳を取得することが好ましい)、
e.初乳を均質化して均一なエマルジョンを得た後、注射用水で全量にメスアップし、pH調整剤でpHを4.5~6.5に調整する工程、
f.得られたエマルジョンに凍結乾燥保護剤を加えて、攪拌・溶解、濾過・除菌、分注、凍結乾燥(凍結乾燥過程は、-50℃~-35℃で100~200分間予備凍結し、次いで-25℃~-15℃、70~90mTorrの条件で420~540分間真空引きし、次いで5~15℃、50~70mTorrの条件で240~360分間真空引きし、次いで35℃~45℃、35~45mTorrの条件で300~420分間真空引きすることを含むことが好ましい)、シーリングを行い、凍結乾燥剤を得る工程、を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載の製造方法で製造したプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤。
【請求項10】
請求項1~4又は請求項9のいずれか1項に記載のプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の血管拡張薬の製造における使用(前記血管拡張薬は、微小循環障害(前記微小循環障害は、閉塞性血栓性血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、凍傷、火傷、又は床擦れに起因することが好ましい)、冠動脈心疾患、狭心症、心不全、肺性心疾患、脳梗塞、羊水塞栓症、または強皮症を治療することが好ましい)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関し、具体的には、本発明はプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤及びその製造と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンE1(PGE1)は天然の内因性血管拡張薬であり、ヒト細胞で合成可能であり、細胞機能を調節する重要な物質であり、生体内で蓄積することがなく、耐性を生じさせることがなく、無毒で、侵襲性の副作用がなく、治療効果が確実であり、外因性薬物より優れている。PGE1は生理活性が極めて強く、広い薬理活性を有しており、臨床的には心脳血管疾患、糖尿病合併症、呼吸器疾患、肺高血圧症、肝腎症候群(HRS)、肝不全、腎症等に応用できるが、血管を拡張して心臓負荷を軽減する作用だけでなく、ナトリウム排出、利尿、強心、冠動脈循環改善、心筋保護、微小循環改善等の効能を併せて有することが研究により見出されている。
【0003】
しかしながら、現在市販されている一般的なプロスタグランジンE1の脂肪乳注射液自体は、化学的安定性が悪く、高温滅菌によりプロスタグランジンE1の含有量が低下するとともに、分解産物であるPGA1の含有量が著しく上昇し、且つ製品の保存条件が過酷であり(0~5℃)、有効期間が短くて僅か1年であるという明らかな欠点を有する。プロスタグランジンE1自体が炎症誘発物質であるため、臨床現場でヒトに応用すると強い痛みを感じさせ、静脈炎を引き起こすことにより、本品の普及が制限されている。
【0004】
上記欠点に対して、重慶薬友は優帝爾というプロスタグランジンE1凍結乾燥エマルション(特許文献1)を開発した。この市販品は濾過除菌により高温滅菌による含有量の損失を回避し、且つプロスタグランジンE1が水性製剤において安定性が悪いという欠点を克服し、有効期間を延長したものではあるが、その処方においてシクロデキストリンを凍結乾燥保護剤として採用しており、シクロデキストリンが注射用補助剤として一定の安全リスクを有し、特にβ-シクロデキストリン注射投与により明らかな腎毒性、溶血及び注射部位壊死を引き起こすため、製剤の安全リスクが大きく、且つ注射痛の問題が解決されていない(優帝爾明細書)。
【0005】
現在、プロスタグランジンE1アルキルエステルは、プロスタグランジンE1のプロドラッグと考えられている。例えば、特許文献2には、プロスタグランジンE1アルキルエステル(C1~4)をインポテンスの治療に用いることが開示されており、プロスタグランジンE1アルキルエステルは脂溶性を高めることにより皮膚を通してより良く吸収され、その後、加水分解酵素によりプロスタグランジンE1に分解されて効果を発揮するため、プロドラッグに属すると考えられている。特許文献3には、プロドラッグであるプロスタグランジンE1アルキルエステルと、油性担体と、皮膚浸透促進剤と、抗炎症剤とを含むプロスタグランジンE1アルキルエステル(C1~5)外用製剤が開示されている。
【0006】
しかし、発明者らの検討の結果、プロスタグランジンE1メチルエステル自体が強い生物活性を有し、良好な薬剤の利用が期待されていることを意外にも発見した。特許文献4には、プロスタジルの脂肪乳製剤が開示されているが、我々は研究過程において、その実施例に基づいて調製したプロスタジルの脂肪乳は、米国薬局方によるエマルション滴粒径測定に関する新方法であるフォトレジスト法(元の常用の動的光散乱法では5μm以上の大きな粒径粒子の数を正確に測定できない)を用いて測定した後、その大きな粒径(>5μm)のエマルション滴が著しく多く、エマルション滴粒径の要件を満たさず、大きなエマルション滴(>5μm)が毛細血管を詰まらせ、塞栓を引き起こし、大きな安全リスクがある。米国では、脂肪乳大粒子を注射して患者を死亡させる医療事故が発生したことがあり、調査研究により、乳剤中に存在する5μm以上のエマルション滴が招いたことが証明されたので、2004年に米国薬局方で乳剤の大きな粒径を測定するための検出方法及び基準が規定された。従来製品に存在する欠点及び不足に鑑みて、本発明は、新規で安定性がよく、安全リスクが少なく、より薬効に優れたプロスタグランジンE1メチルエステル製品を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第201010168597.2号明細書
【特許文献2】米国特許第5681850号明細書
【特許文献3】米国特許第6673841号明細書
【特許文献4】米国特許第4849451号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤を提供することを目的の一つとする。
【0009】
本発明は、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の製造方法を提供することを別の目的とする。
【0010】
本発明は、前記製造方法で製造したプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤を提供することをさらに別の目的とする。
【0011】
本発明は、前記プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の使用を提供することをさらに別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を奏するために、一方では、本発明は、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル500~4000部、乳化剤500~2000部、共乳化剤0~10部、凍結乾燥保護剤5000~50000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤を提供する。
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記注射用オイルは、大豆油、中鎖油、オリーブ油、茶油、トウモロコシ油、またはヒマシ油のうちの1つ又はその複数の組合せから選択される。
【0014】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記乳化剤は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンから選択される。
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記共乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、及びオレイン酸ナトリウムのうちの1つ又はその複数の組合せから選択される。
【0016】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記凍結乾燥保護剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、グルコース、およびマルトースのうちの1つ又はその複数の組合せから選択される。
【0017】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記凍結乾燥製剤は、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル500~4000部、乳化剤500~1500部、共乳化剤0~10部、凍結乾燥保護剤5000~20000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する。
【0018】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前に100mlあたり、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10mg、大豆油0.5~4g、卵黄レシチン0.5~1.5g、オレイン酸ナトリウム0~0.01g、ラクトース5~20gおよびグリセロール0.2~1.5gを成分として含有する。
【0019】
なお、本発明に記載の「前記凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前に100mlあたり、重量部で、…を成分として含有する」における「100mlあたり」とは、凍結乾燥前に調製した100ml当たりの溶液、すなわち各成分を含有する水溶液を意味する。
【0020】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記凍結乾燥保護剤とプロスタグランジンE1メチルエステルとの重量比は20~500:0.01である。
【0021】
また、本発明は、重量%で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.0001~0.01%、注射用オイル0.5~4%、乳化剤0.5~2%、共乳化剤0~0.01%、凍結乾燥保護剤5~50%、グリセリン0.2~1.5%、pH調整剤適量を含み、残部が注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造する、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の製造方法を更に提供する。
【0022】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記注射用オイルは、大豆油、中鎖油、オリーブ油、茶油、トウモロコシ油、またはヒマシ油のうちの1つ又はその複数の組合せから選択される。
【0023】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記乳化剤は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンから選択される。
【0024】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記共乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、及びオレイン酸ナトリウムのうちの1つ又はその複数の組合せから選択される。
【0025】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記凍結乾燥保護剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、グルコース、およびマルトースのうちの1つ又はその複数の組合せから選択される。
【0026】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記方法は、重量%で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.0001~0.01%、注射用オイル0.5~4%、乳化剤0.5~1.5%、共乳化剤0~0.01%、凍結乾燥保護剤5~20%、グリセリン0.2~1.5%、pH調整剤適量を含み、残部が注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造することを含む。
【0027】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記方法は、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10重量部、大豆油500~4000重量部、卵黄レシチン500~1500重量部、オレイン酸ナトリウム0~10重量部、乳糖5000~20000重量部、グリセリン20~1500重量部、クエン酸ナトリウムまたは塩酸適量を含み、残部が原料の総重量を100×103部とする注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造することを含む。
【0028】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記pH調整剤の使用量は、注射用水で全量にメスアップして混合液を調製した後、混合溶液のpHを4.5~6.5に調整する量である。
【0029】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記方法は、以下の工程:
a.プロスタグランジンE1メチルエステルと乳化剤を油性溶媒中に均一に分散して油相とする工程、
b.浸透圧調整剤および凍結乾燥保護剤を、適量の注射用水に溶解して水相とする工程、
c.共乳化剤を油相又は水相に溶解する工程、
d.油相を水相に撹拌しながら添加するか、又は水相を油相に撹拌しながら添加し、剪断して初乳を得る工程、
e.初乳を均質化して均一なエマルジョンを得た後、注射用水で全量にメスアップし、pH調整剤でpHを4.5~6.5に調整する工程、
f.得られたエマルジョンに凍結乾燥保護剤を加えて、攪拌・溶解、濾過・除菌、分注、凍結乾燥、シーリングを行い、凍結乾燥剤を得る工程、を含む。
【0030】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、工程dでは、20℃~50℃の一定温度条件下で剪断して初乳を取得する。
【0031】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、工程fの凍結乾燥過程は、-50℃~-35℃で100~200分間予備凍結し、次いで-25℃~-15℃、70~90mTorrの条件で420~540分間真空引きし、次いで5~15℃、50~70mTorrの条件で240~360分間真空引きし、次いで35℃~45℃、35~45mTorrの条件で300~420分間真空引きすることを含む。
【0032】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、工程fの凍結乾燥過程は、-40℃で150分間予備凍結し、次いで-20℃、80mTorrの条件で480分間真空引きし、次いで10℃、60mTorrの条件で300分間真空引きし、次いで40℃、40mTorrの条件で360分間真空引きすることを含む。
【0033】
更に、本発明は、本発明に記載の製造方法で製造したプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0034】
更に、本発明は、本発明に記載のプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の血管拡張薬の製造における使用を更に提供する。
【0035】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記血管拡張薬は、微小循環障害、冠動脈心疾患、狭心症、心不全、肺性心疾患、脳梗塞、羊水塞栓症、または強皮症を治療する。
【0036】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、微小循環障害は、閉塞性血栓性血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、凍傷、火傷、又は床擦れに起因する。
【0037】
発明者らの研究の結果、プロスタグランジンE1メチルエステル自体が強い生物活性を有し、プロスタグランジンE1より抗凝固作用および血管拡張作用に優れ、良好な薬物開発潜在力を有することを意外にも発見した。発明者らはさらに製剤研究を行って、プロスタグランジンE1メチルエステルの製剤形態として凍結乾燥製剤を選択することにより、本発明により調製したプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤が、従来の製剤と比較して以下のような顕著な特徴を有することを意外にも発見した。
1.本発明のプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤は、具体的な実験例によれば、医薬活性および治療効果が優帝爾よりも優れる。
2.本発明のプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤は、脂肪乳剤に比べて、エマルション滴の平均粒子径が著しく小さく、大粒子径のエマルション滴の割合が減少し、薬物動態学挙動が予想外に改善されるため、薬効が向上する。
3.凍結乾燥製剤の再溶解後の遊離薬物の含有量を顕著に低減し、特に、明細書の投与方法に従って10倍希釈後に遊離薬物の明らかな増加が見られず、血管内注射の刺激が回避される。
4.製剤の安定性が著しく向上し、製造、輸送および保存条件に対する要求が減少し、有効期間が延長される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実験例1の化合物のADP誘導血小板凝集に対する抑制率とインキュベーション時間との関係を示すグラフである。
【
図2】実験例2の血管環の拡張効能とプロスタグランジンE1濃度との関係を示すグラフである。
【
図3】実験例3の腸間膜微小動脈の管径と投与時間との関係を示すグラフである。
【
図4】ラットにおける40μg/kgのアルプロスタジルの静脈内注射後のアルプロスタジルの血漿中濃度-時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面及び実施例に基づいて詳しく説明するが、本発明の保護範囲はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
本発明化合物1([(1R,2R,3R)-3-ヒドロキシ-2-(S,E)-3-ヒドロキシ-1-エニル)-5-オキソシクロペンチル]ヘプタン酸メチル)の合成(プロスタグランジンE1メチルエステル)
【0041】
【0042】
原料であるPGE1(63mg、0.18mmol)を三口フラスコに加え、続いて、調製した1Mの乾燥THF/Et2O溶液を加えて撹拌し溶解させ、氷浴条件下、反応液にMeI(26mg、1M)溶液をゆっくり滴下し、滴下終了後、KOH(10mg、0.18mmol)及びBu4NBr(6mg、0.018mmol)を加えた。1時間撹拌して反応した後、室温まで加熱し、反応が終了するまでTLCでモニターした。水20mLを添加してクエンチさせ、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離液がn-ヘキサン/EA=1/1)により精製して、白色固体生成物(24.8mg、収率38%)を得た。
LCMS(MS Found:391.3[M+Na]+。
1HNMR(400MHZ,DMSO)(ppm):5.46(s,2H)、5.01(s,1H)、4.57(s,1H)、3.88(s,2H)、3.57(s,3H)、1.9~2.3(m,5H)1.2~1.48(m,19H)、0.85(s,3H)。
【0043】
実施例2
化合物2([(1R,2R,3R)-3-ヒドロキシ-2-(S,E)-3-ヒドロキシ-1-エニル)-5-オキソシクロペンチル]ヘプタン酸エチル)の合成(プロスタグランジンE1エチルエステル)
【0044】
【0045】
原料であるPGE1(63mg、0.18mmol)を三口フラスコに加え、続いて、調製した1Mの乾燥THF/Et2O溶液を加えて撹拌し溶解させ、氷浴条件下、反応液にEtBr(20mg、1M)溶液をゆっくり滴下し、滴下終了後、KOH(10mg、0.18mmol)及びBu4NBr(6mg、0.018mmol)を加えた。1時間撹拌して反応した後、室温まで加熱し、反応が終了するまでTLCでモニターした。水20mLを添加してクエンチさせ、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離液がn-ヘキサン/EA=1/1)により精製して、白色固体生成物(20.5mg、収率29.8%)を得た。
LCMS(MS Found:405[M+Na]+。
1HNMR(400MHZ,DMSO)(ppm):5.46(s,2H)、5.01(s,1H)、4.57(s,1H)、3.88(s,2H)、3.57(s,3H)、1.9~2.3(m,7H)1.2~1.48(m,19H)、0.85(s,3H)。
【0046】
主要薬物含量が異なるプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤
【0047】
実施例3
【0048】
【0049】
調製プロセスは以下のとおりである。
【0050】
油相:大豆油2gを秤取り、卵黄レシチン0.5g、プロスタグランジンE1メチルエステル0.5mgを加え、50℃で溶解するまで剪断した。
【0051】
水相:注射用水90gを秤取し、グリセリン0.75g、乳糖12.5g、オレイン酸ナトリウム0.01gを加え、剪断して均一に混合し、0.1Mクエン酸ナトリウムを加えてpHを6.5に調節し、さらにレシチン2gを加え、10分間剪断し続けた。
【0052】
油相を水相にゆっくりと添加し、50℃で10分間剪断し続けて、初乳を得、100mLになるまで水を添加した。
【0053】
初乳を均質化機に通し、850barの圧力で8回均質化した。
【0054】
均質化した乳剤を無菌濾過し、分注し、-40℃で150分間予備凍結し、次いで-20℃、80mTorrで480分間真空引きし、10℃、60mTorrで300分間真空引きし、40℃、40mTorrで360分間真空引きし、真空引きでキャッピングして凍結乾燥粉末注射剤を得た。
【0055】
実施例4
【0056】
【0057】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0058】
実施例5
【0059】
【0060】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0061】
注射液用オイル、レシチンおよび含有量が異なるプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥剤
【0062】
実施例6
【0063】
【0064】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0065】
実施例7
【0066】
【0067】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0068】
実施例8
【0069】
【0070】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0071】
実施例9
【0072】
【0073】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0074】
実施例10
【0075】
【0076】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0077】
共乳化剤および含有量が異なるプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤
【0078】
実施例11
【0079】
【0080】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0081】
実施例12
【0082】
【0083】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0084】
実施例13
【0085】
【0086】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0087】
実施例14
【0088】
【0089】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0090】
凍結乾燥保護剤および含有量が異なるプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤
【0091】
実施例15
【0092】
【0093】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0094】
実施例16
【0095】
【0096】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0097】
実施例17
【0098】
【0099】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0100】
実施例18
【0101】
【0102】
製造プロセスは実施例3と同一であった。
【0103】
比較例1
米国特許US4849451における実施例2に従って調製した。
【0104】
比較例2
比較例1で調製された製剤に本発明の処方で使用する凍結乾燥保護剤を添加して、凍結乾燥を行った。
【0105】
実験例1
インビトロ抗血小板凝集試験における作用
健常成年SDラットを腹腔に10%抱水クロラールを注射して麻酔した後、腹部大動脈で採取したラットの新鮮な全血を3.8%クエン酸ナトリウム溶液で凝結させる遠心管に入れ、900回転で10min遠心して、上層の血小板リッチ血漿(PRP)を採取して用意した。PRPの試験管を取り出して4000回転で10分間遠心し続けて、上層澄血漿(PPP)を採取して用意した。実験では、泰利康信LBY-NJ4型4チャネル血小板凝集装置を用いて、各化合物の抗凝集効能を測定した。
【0106】
300μLのPRPサンプルを含むカップに、2μL、100μMのPGE1、実施例化合物1、実施例化合物2、およびメタノール(溶媒)を先に加え、異なる時間(0、1、2、4、7、10、15min)インキュベートした後、凝集誘導剤である180μMのADP溶液を20μL加え、各サンプルの凝集率を測定し、ADPによる血小板凝集に対する化合物の抑制率を計算した。
抑制率%=(溶媒における凝集率-化合物における凝集率)/溶媒における凝集率×100%
【0107】
結果(
図1示す)から分かるように、PRPにPGE1と実施例化合物1を加えるとすぐに発効し、抑制率が同程度であり、インキュベーション時間の経過につれて実施例の化合物の抗凝集効能が徐々に低下するが、10分後も抑制率が43.66%であるのに対して、PGE1は4分間インキュベーションした後の抑制率が僅かに4.93%であった。実施例化合物2は、添加後すぐに発効しないが、時間の経過につれて効能が徐々に強くなり、10分間インキュベーションした後に最大抑制率51.86%に達した。故に、実施例化合物1は、活性を有する非プロドラッグ化合物であり、PGE1と比較して2倍を超える抗凝集作用を有するものであり、一方、実施例化合物2は、典型的なプロドラッグ型化合物であることが分かる。
【0108】
実験例2
インビトロ血管ストリップ拡張試験
実験は、ニュージーランドウサギ、雄、体重(2.5±0.3)kgの家兎を選択して摘出大動脈環サンプルを用意した。鈍器でウサギに気を失わせて、ウサギ解剖台に固定し、胸大動脈を迅速に分離し、37℃の飽和クレブス液(1000mL当たりNaClを6.9g、KClを0.35g、MgSO4・7H2Oを0.29g、KH2PO4を0.16g、NaHCO3を2.1g、CaCl2を0.28g、グルコースを2g含む)が入り、混合ガス(95%O2、5%CO2)が連続的に導入されるシャーレに入れ、血管内の残存血液を押し出し、周辺の脂肪及び結合組織を丁寧に剥がし、長さ0.5cmの動脈環を数段に切り取って用意した。血管環は、2本のステンレスL字フックで血管腔を貫通し、20mLのバスチューブ内に横に掛けられ、下方が固定され、上方が細いワイヤーでテンショントランスデューサーに接続され、静止張力を0.00gに調節してから、20min安定させた後、さらに3.00gの張力を与え、3.00g前後に維持するように張力レベルを調整し続け、2時間安定させた(15min毎に浴壁に沿ってクレブス液を交換した)。
【0109】
血管環張力の変化を、BL-420Sバイオシミュファクチャリングシステム(成都泰盟科技)を用いて記録した。血管環の収縮が安定した後、バスチューブ中のプロスタグランジンE1の最終質量濃度を0.05、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、3.2、6.4、12.8、25.6nMと順次増加させるようにプロスタグランジンE1と実施例化合物を加え、血管環の拡張効能を記録した。
【0110】
結果(
図2に示す)により、本実験条件下で、家兎摘出血管に対する拡張効力は、実施例1の化合物(EC
50=1.090nM)がPGE
1(EC
50=9.767nM)よりも明らかに優れていることが分かる。
【0111】
実験例3
腸間膜微小循環障害モデル
2.5%ペントバルビタールナトリウム30mg/kgでラットをip麻酔して、背中合わせに固定し、腹正中線に長さ3~4cmで切り込み、盲部の小腸間膜を軽く引き戻し、37℃の生理食塩水を満たした有機ガラス製恒温水浴槽に入れ、腸間膜を湿潤状態に保ちながら、浴槽中央の有機凸型観察台に敷き、固定板を押しつけ、生物顕微鏡(倍率40倍)カメラを用いて顕微鏡での映像を採取し、BI-2000微小循環観測システムを用いて採取した鏡下映像をリアルタイムで解析した。
【0112】
視野を固定し、10分間平衡化した後、選定領域の微小動脈及び微小静脈管径、流速を観察し、次いで選定領域に1:100希釈塩酸アドレナリン生理食塩水を100μL/匹滴下し、正常対照群に同容量の生理食塩水を滴下し、同時に尾静脈を介して直ちに10μg/kgの実施例製剤及び優帝爾を投与し、投与後0.5、1.2、4、6、8、10、12、15minのタイミングで腸管間膜微小動脈の管径を測定した。
【0113】
図3に示すように、管径測量により、実施例3の製剤群は、アドレナリンによる微小循環障害が大幅に改善され、投与後0.5分~10分で全てモデル群と有意の差がある(P<0.05)が、優帝爾では4分でモデル対照群と比較して有意の差がない(P>0.05)。アドレナリンによる循環障害の改善効能は、実施例群が優帝爾より明らかに優れており、両者を比較すると0.5~10minで全て有意の差がある(P<0.05)。
【0114】
実験例4
製剤遊離薬物測定
サンプル処理方法:各実施例の凍結乾燥乳に各々10mlの二重エマルジョンを加え、同時に1部を採取して水で10倍に希釈し、適量を精秤して20ml褐色栓付きチューブに入れて、テトラヒドロフランを2.5ml加えて均一に混合し、リン酸溶液(1→1000)を15ml加えて均一に混合し、前処理カラム[充填物が粒径70μmのオクタデシルシラン結合シリカゲルであるφ10mm×9mmポリプロピレンチューブ(SEP-PAKC18カラム、Waters)であって、使用前にメタノール10ml、水10mlでリンス]に通し、試験管を10mlの水でリンスし、前処理カラムを通過させた。再び7mlのメタノールで溶離し、溶離液を全量10mlの褐色レトルトに移し、50℃で10分間減圧蒸留し、溶媒を蒸発乾燥し、残渣を1mlの内部標準溶液で溶解して、振とうしてサンプルとした。
【0115】
充填剤としてオクタデシル結合シリカゲルを用い、0.0067mol/Lのリン酸塩緩衝液(pH=6.3)(リン酸二水素カリウム9.07gを取り、水を加えて溶解させて1000mlとし、別途、無水リン酸水素二ナトリウム9.46gを取り、水を加えて溶解させて1000mlとし、pHが6.3になるまで後者を前者に加えて、この液100mlに水を加えて1000mlとし、振とうして得た)-アセトニトリル(70:30)を移動相とした。流速は1ml/分であった。ポストカラム反応液は1mol・L-1のKOH溶液であり、ポストカラム反応管はポリテトラフルオロエチレンチューブ(φ0.5mm×10m)であり、カラム温度は60℃であり、検出波長は278nmであった。サンプル及び対照溶液を各々20μl供給し、内部標準ピーク面積法により計算した。
【0116】
実施例3~18及び優帝爾を生理食塩水で再溶解し、いずれも濃度1μg/mLに、更に、サンプリングして10倍希釈して0.1μg/mLにして、前記再溶解後の各製剤を適量取り、限外濾過遠心管に入れて2800r×min-1で30min遠心限外濾過した後、濾液を1ml取って前記サンプル処理方法に従ってサンプル溶液を調製し、20μlをサンプリングして、各薬物含量である遊離薬物含量を測定した。
【0117】
各実施例の1mLのサンプルにおける二重エマルジョン(1×)と10倍希釈(10×)後のサンプルの遊離率を同時に測定した。
遊離率%=遊離薬物総量/総薬物量×100%
【0118】
測定された各例の遊離率は、以下の表1に示す。
【0119】
【0120】
実験結果により、実施例3~18の薬物再溶解後の遊離薬物は、優帝爾に比べて顕著に低く、且つ優帝爾を明細書の使用方法に従って10倍希釈した後、遊離率が顕著に向上したが、本発明実施例で製造した製剤を希釈した後、遊離薬物の明らかな増加がなかったことが分かる。
【0121】
実験例5
血管刺激試験
ニュージーランドウサギ(体重約2kg)を20匹選び、2組に分けた。実施例製剤と優帝爾はともに生理食塩水で1μg/mlに二重エマルジョン化し、引き続き生理食塩水で0.1μg/mlに希釈した。プロスタグランジンE1臨床的使用量に応じて変換して、0.5μg/kgで耳静脈にゆっくりと点滴し、反対側の耳静脈に同量の生理食塩水を静脈内注射し、1日1回7日間連続して点滴した。血管刺激の程度を最終投与2時間後に目視で評価し、全ての動物を殺した後に注射部位を採取して組織病理学的検査を行って、結果を下記表2及び表3に示す。
【0122】
【0123】
その結果、実施例群では刺激性がほとんどなく(P>0.05)、優帝爾群では明らかな血管刺激を示した(P<0.05)。
【0124】
【0125】
実験例6
製剤安定性試験
実施例3~18、比較例1、2で作製したサンプルの外観及び粒径の測定結果を下記表4に示す。
【0126】
【0127】
PSS社の380ZLS粒度計(動的光散乱法)を用いて平均粒子径を測定し、PSS社のAccusizer780機器(フォトレジスト法)を用いて大粒子径のエマルション滴を測定し、5μmより大きいエマルション滴の百分率を算出した。その結果、実施例3~18で調製したサンプルは、凍結乾燥後の外観が良好であり、再溶解後の平均粒径が比較例1よりも明らかに小さく、且つ大きいエマルション滴(>5μm)の百分率が0.05%を大幅に下回り、比較例1では大きい粒径(>5μm)が基準値を超えて(>0.05%、USP標準)、比較例2では凍結乾燥成形できない。
【0128】
実施例3、5、8、15で作製したサンプルを取り、24時間の長期安定性試験(温度25℃±2℃、湿度60%±10%)を行って、結果を下記表5に示す。
【0129】
【0130】
その結果、本発明実施例で調製したプロスタグランジンE1メチルエステル凍結乾燥製剤は、24ヶ月の長期安定試験において製品品質が安定していた。
【0131】
実験例7
実施例3、6、7、8および比較例1のラットにおける薬物動態学研究
薬物動態学実験では、SD雄ラット12匹/群を用い、投与前に12時間断食させ、自由飲水させた。2つの製剤を、それぞれ40μg/kgの投与量で静脈内投与し、投与後0.5min、1.25min、3min、5min、8min、12min、16min、20min、30min、45minのタイミングで眼窩を採血し、各時点での血漿中濃度(プロスタグランジンE1メチルエステルとプロスタグランジンの合計)を
図4に示す。
【0132】
得られた2つの製剤の薬物動態学パラメータを血漿中濃度グラフから算出したところ、実施例3では、投与後のピーク血漿中濃度が比較例1の群より明らかに高く、半減期が著しく長くなり、バイオアベイラビリティも著しく向上した(表6参照)。
【0133】
【0134】
実施例3、6~8は、比較例1に比べて、製剤のインビボ薬物動態学挙動が著しく改善されたことが分かる。薬物の肺循環における代謝不活化が抑制されているように見られ、この現象は薬物の粒子径に関与する可能性があると思われる。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル(前記注射用オイルは、大豆油、中鎖油、オリーブ油、茶油、トウモロコシ油、またはヒマシ油のうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)500~4000部、乳化剤(前記乳化剤は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンから選択されることが好ましい)500~2000部、共乳化剤(前記共乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、及びオレイン酸ナトリウムのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)0~10部、凍結乾燥保護剤(前記凍結乾燥保護剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、グルコース、およびマルトースのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)5000~50000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤。
【請求項2】
重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10部、注射用オイル500~4000部、乳化剤500~1500部、共乳化剤0~10部、凍結乾燥保護剤5000~20000部およびグリセリン200~1500部を成分として含有する、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
凍結乾燥前に100mlあたり、重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10mg、大豆油0.5~4g、卵黄レシチン0.5~1.5g、オレイン酸ナトリウム0~0.01g、ラクトース5~20gおよびグリセロール0.2~1.5gを成分として含有する、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記凍結乾燥保護剤とプロスタグランジンE1メチルエステルとの重量比は20~500:0.01である、請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
重量%で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.0001~0.01%、注射用オイル(前記注射用オイルは、大豆油、中鎖油、オリーブ油、茶油、トウモロコシ油、またはヒマシ油のうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)0.5~4%、乳化剤(前記乳化剤は、卵黄レシチン及び/又は大豆レシチンから選択されることが好ましい)0.5~2%、共乳化剤(前記共乳化剤は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、及びオレイン酸ナトリウムのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)0~0.01%、凍結乾燥保護剤(前記凍結乾燥保護剤は、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール、グルコース、およびマルトースのうちの1つ又はその複数の組合せから選択されることが好ましい)5~50%、グリセリン0.2~1.5%、pH調整剤適量を含み、残部が注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造する、プロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の製造方法。
【請求項6】
重量%で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.0001~0.01%、注射用オイル0.5~4%、乳化剤0.5~1.5%、共乳化剤0~0.01%、凍結乾燥保護剤5~20%、グリセリン0.2~1.5%、pH調整剤適量を含み、残部が注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造することを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
重量部で、プロスタグランジンE1メチルエステル0.1~10重量部、大豆油500~4000重量部、卵黄レシチン500~1500重量部、オレイン酸ナトリウム0~10重量部、乳糖5000~20000重量部、グリセリン20~1500重量部、クエン酸ナトリウムまたは塩酸適量を含み、残部が原料の総重量を100×10
3部とする注射用水である成分を原料として前記凍結乾燥製剤を製造することを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
a.プロスタグランジンE1メチルエステルと
3分の1の乳化剤を油性溶媒中に均一に分散して油相とする工程、
b.グリセリ
ン、凍結乾燥保護剤
及び残りの乳化剤を、適量の注射用水に溶解し
、pH調整剤でpHを4.5~6.5に調整し、水相とする工程、
c.共乳化剤を油相又は水相に溶解する工程、
d.油相を水相に撹拌しながら添加するか、又は水相を油相に撹拌しながら添加し、剪断して初乳を得
た後(20℃~50℃の一定温度条件下で剪断して初乳を取得することが好ましい)、
注射用水で全量にメスアップする工程、
e.初乳を均質化して均一なエマルジョンを
得る工程、
f.得られたエマルジョンに
対して、攪拌・溶解、濾過・除菌、分注、凍結乾燥(凍結乾燥過程は、-50℃~-35℃で100~200分間予備凍結し、次いで-25℃~-15℃、70~90mTorrの条件で420~540分間真空引きし、次いで5~15℃、50~70mTorrの条件で240~360分間真空引きし、次いで35℃~45℃、35~45mTorrの条件で300~420分間真空引きすることを含むことが好ましい)、シーリングを行い、凍結乾燥剤を得る工程、を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項に記載の製造方法で製造したプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤。
【請求項10】
請求項1~4又は請求項9のいずれか1項に記載のプロスタグランジンE1メチルエステル注射用凍結乾燥製剤の血管拡張薬の製造における使用(前記血管拡張薬は、微小循環障害(前記微小循環障害は、閉塞性血栓性血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、凍傷、火傷、又は床擦れに起因することが好ましい)、冠動脈心疾患、狭心症、心不全、肺性心疾患、脳梗塞、羊水塞栓症、または強皮症を治療することが好ましい)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記方法は、以下の工程:
a.プロスタグランジンE1メチルエステルと3分の1の乳化剤を油性溶媒中に均一に分散して油相とする工程、
b.グリセリン、凍結乾燥保護剤及び残りの乳化剤を、適量の注射用水に溶解し、pH調整剤でpHを4.5~6.5に調整し、水相とする工程、
c.共乳化剤を油相又は水相に溶解する工程、
d.油相を水相に撹拌しながら添加するか、又は水相を油相に撹拌しながら添加し、剪断して初乳を得た後、注射用水で全量にメスアップする工程、
e.初乳を均質化して均一なエマルジョンを得る工程、
f.得られたエマルジョンに対して、攪拌・溶解、濾過・除菌、分注、凍結乾燥、シーリングを行い、凍結乾燥剤を得る工程、を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
水相:注射用水90gを秤取し、グリセリン0.75g、乳糖12.5g、オレイン酸ナトリウム0.01gを加え、剪断して均一に混合し、0.1Mクエン酸ナトリウムを加えてpHを6.5に調節し、さらにレシチン(卵黄レシチン)1gを加え、10分間剪断し続けた。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
比較例2
比較例1で調製された製剤に本発明の処方で使用する凍結乾燥保護剤(実施例3と同一)を添加して、凍結乾燥を行った。
【国際調査報告】