(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(54)【発明の名称】マイクロ流体装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20220118BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220118BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220118BHJP
B81C 3/00 20060101ALI20220118BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B01J19/00 321
B81C3/00
B81B3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531022
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 GB2019053361
(87)【国際公開番号】W WO2020109797
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517079180
【氏名又は名称】クァンタムディーエックス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUMDX GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マイケル ウィルシェア
(72)【発明者】
【氏名】ホジャット マダディ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ベネット
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ スカリー
【テーマコード(参考)】
2G058
3C081
4G075
【Fターム(参考)】
2G058CC08
2G058DA07
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA23
3C081BA24
3C081BA29
3C081BA30
3C081CA32
3C081EA27
3C081EA39
3C081EA41
4G075AA03
4G075AA39
4G075AA56
4G075BB05
4G075BB10
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB50
4G075EC25
4G075FA01
4G075FA12
4G075FB02
4G075FB12
(57)【要約】
少なくとも1つの流体流路を備えるマイクロ流体カセット本体と、試薬を収容する少なくとも1つのチャンバと、を備えるマイクロ流体カセットが開示される。チャンバは密封部を備えて、流体がチャンバに入るのを防止する。密封部は、カセット本体内でその場で破壊可能である。カセット本体及びチャンバは、密封部が破壊されたとき、試薬が流路内の流体流に曝されるように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの流体流路を備えるマイクロ流体カセット本体と、
試薬を収容する少なくとも1つのチャンバと、を備えるマイクロ流体カセットであって、
前記チャンバは密封部を備えて、流体が前記チャンバに入るのを防止し、
前記密封部は前記カセット本体内でその場で破壊可能であり、
前記カセット本体及び前記チャンバは、前記密封部が破壊されたとき、前記試薬が前記流路内の流体流に曝されるように構成される、マイクロ流体カセット。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチャンバに隣接する前記カセット本体の表面上に密封層をさらに備えて、前記マイクロ流体カセット外の流体が前記カセット本体に接触するのを防止する、請求項1に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項3】
挿入体をさらに備え、前記挿入体が前記少なくとも1つのチャンバを備える、請求項1又は2に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項4】
前記密封部に穿孔力が加えられたとき、前記密封部をその場で破壊可能である、請求項3に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項5】
前記カセット本体が、前記密封部を破壊するように適合される1つ以上の破封機構を備える、請求項4に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項6】
前記1つ以上の破封機構が、前記密封部を前記カセット本体内でその場で穿孔するように適合される1つ以上の構造体を備え、
前記挿入体が、前記カセット本体内に固定され、前記密封部が前記1つ以上の構造体と接触していない前記カセット本体内の第1の位置から、前記密封部が前記1つ以上の構造体と接触している前記カセット本体内の第2の位置まで移動可能である、請求項5に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項7】
前記1つ以上の構造体は、前記密封部が穿孔されたとき、前記チャンバを通る流体流路が形成され、前記流体流路が前記カセット本体の前記流体流路と流体連通するように適合される、請求項6に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項8】
前記1つ以上の構造体が、第1の流体開口部を囲む第1の環状壁と、第2の流体開口部を囲む第2の環状壁と、を備え、
前記第1の流体開口部及び第2の流体開口部が、前記カセット本体の前記流体流路と流体連通している、請求項7に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項9】
前記環状壁の少なくとも1つが、前記壁の円周の一部の周りに切り欠き領域を含む、請求項8に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項10】
前記カセット本体が、前記1つ以上の構造体及び前記挿入体を囲む密封チャンバを提供するように配置されるカバー要素をさらに備える、請求項6~9のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項11】
前記挿入体が、前記カバー要素の内面に固定される、請求項10に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項12】
前記カバー要素が弾性変形可能である、請求項10又は11に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項13】
前記カバー要素が、前記挿入体を前記第1の位置に保持するように配置され、前記挿入体を前記第2の位置に移動させるように弾性変形可能である、請求項12に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項14】
前記カセット本体が、前記1つ以上の構造体を囲む外壁をさらに備え、
前記外壁が、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記挿入体の移動を誘導するように成形される、請求項13に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項15】
前記密封部が、大気温度を実質的に上回る温度に曝されたときにその場で破断可能である、請求項1~14のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項16】
前記密封部が、指向性光線に曝されたときにその場で破壊可能であり、
前記マイクロ流体カセットが、光が前記カセットを通過して前記密封部に接触することを可能にする少なくとも1つの経路を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセット。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のマイクロ流体カセットと、
前記マイクロ流体カセットを受容するように適合されるマイクロ流体診断デバイスであって、前記マイクロ流体カセットの密封部を破壊するように適合される1つ以上のアクチュエータを備えるマイクロ流体診断デバイスと、を備える、マイクロ流体診断システム。
【請求項18】
前記1つ以上のアクチュエータが、前記マイクロ流体カセット本体を受容するように成形される開口部を含む、請求項17に記載のマイクロ流体診断システム。
【請求項19】
前記1つ以上のアクチュエータが可動作動部材を備える、請求項17又は18に記載のマイクロ流体診断システム。
【請求項20】
前記1つ以上のアクチュエータが熱源を備える、請求項17~19のいずれか一項に記載のマイクロ流体診断システム。
【請求項21】
前記1つ以上のアクチュエータが指向性光源を備える、請求項17~20のいずれか一項に記載のマイクロ流体診断システム。
【請求項22】
試薬を収容し、密封部を備えて流体がチャンバに入るのを防止する少なくとも1つのチャンバを備えるマイクロ流体カセット本体に対する挿入体であって、
前記密封部は、カセット本体内でその場で破壊可能である、マイクロ流体カセット本体に対する挿入体。
【請求項23】
少なくとも1つの流体流路を備えるマイクロ流体カセット本体を提供するステップと、
試薬を収容する少なくとも1つのチャンバを提供するステップと、を含むマイクロ流体カセットの製造方法であって、
前記チャンバは密封部を備えて流体が前記チャンバに入るのを防止し、
前記密封部は前記カセット本体内でその場で破壊可能であり、
前記カセット本体及び前記チャンバは、前記密封部が破壊されたときに前記試薬が前記流路内の流体流に曝されるように構成される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスに関し、より詳細には、このようなデバイスと共に使用されるマイクロ流体カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体診断デバイスは、患者から提供される流体サンプルに基づいて、健康状態の迅速なポイントオブケア診断を提供することができる。このようなデバイスは、マイクロ流体カセットに収容される流体サンプルと相互作用し、流体サンプルに対して診断検査を行うことを可能にする診断電子機器又は他の構成要素を備え得る。このようなデバイスと共に使用するマイクロ流体カセットは、典型的には複数の流体流路を含み、流体流路は、流体サンプルがカセットを通過し、カセット内に収容される様々な試薬と相互作用することを可能にする。マイクロ流体診断デバイスは、カセットの異なる撮像/感知位置で流体サンプルを撮像/感知することによって、流体サンプルを使用して診断検査を行うことができる。
【0003】
マイクロ流体診断デバイスから正確で信頼できる結果を確実に得ることを助けるために、カセット内で使用される試薬は、良好な状態に維持されて水分及び他の汚染物質から離れていることが望ましい。乾燥試薬又は湿潤試薬を使用するとき、水分が問題となることがある。しかし、乾燥(又は凍結乾燥)試薬を使用するときには水分が特に問題となる。なぜならこのような試薬は親水性であり、少量の水分でもこのような試薬と相互作用し、このような試薬の有効性を潜在的に低下させる可能性があるからである。
【0004】
また、製造コストが低く、使用者が操作しやすく、試薬を著しく劣化させずに貯蔵寿命が長いマイクロ流体カセットを提供することが望ましい。
【0005】
マイクロ流体カセットの製造中に、カセットの流体流路上に試薬を直接堆積させることが知られている。しかしこの装置では、たとえマイクロ流体カセットが製造中に密封されていても、大気中の水分又はカセット内に意図的に貯蔵された流体から生じる蒸気が経時的に試薬に接触し、劣化させる可能性がある。これにより、カセットを使用して行う診断検査の有効性を低下させ、及び/又はカセットの貯蔵寿命を短くする可能性がある。
【0006】
特許文献1は、乾燥物質をキャリア要素上に堆積させてカセットの開口部に導入し、カセットの流体流路の壁を形成するカセット装置を開示している。この装置により、カセットの製造性を向上させることができる。しかし、流体流路内に試薬を直接堆積させることに関して、上述したものと同様の欠点がある。すなわち、カップ挿入後に乾燥物質がカセット内に露出し、経時的に、特に水分/蒸気によって劣化する傾向がある。また、この装置は、流体流れが生じた後にキャリア要素上に保持される乾燥物質の「デッドゾーン」をもたらす可能性があり、又はこの影響を低減するために使用する乾燥物質の量をより少なくする必要があり得る。
【0007】
特許文献2は、乾燥化学薬品を容器内に保持してカセットの開口部に導入し、カセットの流体流路の壁を形成するカセット装置を開示している。容器は、容器をカセットに挿入する前に手動で又は自動で取り外すことができる蓋又はフィルムを含み得る。この装置では、使用直前に蓋又はフィルムを取り外して容器をカセットに導入するという追加のユーザステップが必要である。さらに、たとえ挿入する際に取り外し可能な蓋又は密封部が自動で取り外されても、容器がカセットに導入される直前に容器内の乾燥化学物質が依然として局所環境に曝され、それによって試薬が劣化するリスクがある。さらに、容器をカセットに挿入する前に、カセット(及びその結果、流体流路)の開口部が局所環境の水分に曝されるか、又はそうでなければ、容器の挿入前に水分及び他の汚染物質がカセットに入るのを防止するために、追加の潜在的に複雑な密封機構が必要となる。加えて、容器内に保持される乾燥化学物質を回収しようとすると、さらなるステップが必要となる場合がある。
【0008】
本発明の特定の実施形態の目的は、これらの欠点の一部又は全部を対処するカセット装置を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2821138号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/014826号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、少なくとも1つの流体流路を備えるマイクロ流体カセット本体と、試薬を収容する少なくとも1つのチャンバと、を備えるマイクロ流体カセットが提供される。チャンバは密封部を備えて、流体がチャンバに入るのを防止する。密封部は、カセット本体内でその場で破壊可能である。カセット本体及びチャンバは、密封部が破壊されたとき、試薬が流路内の流体流に曝されるように構成される。
【0011】
任意に、マイクロ流体カセットは、少なくとも1つのチャンバに隣接するカセット本体の表面上に密封層をさらに備えて、マイクロ流体カセット外の流体がカセット本体に接触するのを防止する。
【0012】
任意に、マイクロ流体カセットは挿入体をさらに備え、挿入体は、少なくとも1つのチャンバを備える。
【0013】
任意に、密封部に穿孔力が加えられたとき、密封部をその場で破壊可能である。
【0014】
任意に、カセット本体は、密封部を破壊するように適合される1つ以上の破封機構を備える。
【0015】
任意に、1つ以上の破封機構は、密封部をカセット本体内でその場で穿孔するように適合される1つ以上の構造体を備え、挿入体は、カセット本体内に固定され、密封部が1つ以上の構造体と接触していないカセット本体内の第1の位置から、密封部が1つ以上の構造体と接触しているカセット本体内の第2の位置まで移動可能である。
【0016】
任意に、1つ以上の構造体は、密封部が穿孔されたとき、チャンバを通る流体流路が形成され、流体流路がカセット本体の流体流路と流体連通するように適合される。
【0017】
任意に、1つ以上の構造体は、第1の流体開口部を囲む第1の環状壁と、第2の流体開口部を囲む第2の環状壁と、を備え、第1の流体開口部及び第2の流体開口部は、カセット本体の流体流路と流体連通している。
【0018】
任意に、環状壁の少なくとも1つは、壁の円周の一部の周りに切り欠き(cut-out)領域を含む。
【0019】
任意に、カセット本体は、1つ以上の構造体及び挿入体を囲む密封チャンバを提供するように配置されるカバー要素をさらに備える。
【0020】
任意に、挿入体はカバー要素の内面に固定される。
【0021】
任意に、カバー要素は弾性変形可能である。
【0022】
任意に、カバー要素は、挿入体を第1の位置に保持するように配置され、挿入体を第2の位置に移動させるように弾性変形可能である。
【0023】
任意に、カセット本体は1つ以上の構造体を囲む外壁をさらに備え、当該外壁は、第1の位置と第2の位置との間の挿入体の移動を誘導するように成形される。
【0024】
任意に、密封部は、大気温度を実質的に上回る温度に曝されたときにその場で破壊可能である。
【0025】
任意に、密封部は、指向性光線に曝されたときにその場で破壊可能であり、マイクロ流体カセットは、光がカセットを通過して密封部に接触することを可能にする少なくとも1つの経路を含む。
【0026】
任意に、カセットは、カセット本体の周りに延在する少なくとも1つのガスケット又はビードをさらに含み、ガスケット又はビードは、挿入体との接触時にカセット本体と挿入体との間に流体不透過性密封部を提供するように配置される。
【0027】
第2の態様によれば、第1の態様によるマイクロ流体カセットと、マイクロ流体カセットを受容するように適合されるマイクロ流体診断デバイスと、を備えるマイクロ流体診断システムが提供される。デバイスは、マイクロ流体カセットの密封部を破壊するように適合される1つ以上のアクチュエータを備える。
【0028】
任意に、1つ以上のアクチュエータは、マイクロ流体カセット本体を受容するように成形される開口部を含む。
【0029】
任意に、1つ以上のアクチュエータは可動作動部材を備える。
【0030】
任意に、1つ以上のアクチュエータは熱源を備える。
【0031】
任意に、1つ以上のアクチュエータは指向性光源を備える。
【0032】
第3の態様によれば、試薬を収容する少なくとも1つのチャンバを備えるマイクロ流体カセット本体に対する挿入体が提供され、チャンバは密封部を備えて流体がチャンバに入るのを防止し、密封部はカセット本体内でその場で破壊可能である。
【0033】
第4の態様によれば、マイクロ流体カセットの製造方法が提供され、本方法は、少なくとも1つの流体流路を備えるマイクロ流体カセット本体を提供するステップと、試薬を収容する少なくとも1つのチャンバを提供するステップと、を含み、チャンバは密封部を備えて流体がチャンバに入るのを防止する。密封部はカセット本体内でその場で破壊可能であり、カセット本体及びチャンバは、密封部が破壊されたときに試薬が流路内の流体流に曝されるように構成される。
【0034】
また、本明細書には、複数の密封試薬収容挿入体の製造方法が記載されている。本方法は、キャリア構造体上の複数の所定の位置に複数の挿入体を載せるステップを含む。本方法は、各挿入体のチャンバに試薬を充填するステップをさらに含む。本方法は、各挿入体のチャンバ上に密封部を設けて、チャンバ内の試薬を密封するステップをさらに含む。
【0035】
任意に、キャリア構造体及び挿入体は、挿入体がキャリア構造体上の所定の位置に保持され得るように成形される。
【0036】
本発明の特定の実施形態によれば、カセット本体と、カセット本体内でその場で破壊可能な密封試薬収容チャンバと、を含むマイクロ流体カセット装置が提供される。本発明の特定の実施形態は、試薬を密封チャンバ内に維持し、使用時又は使用直前にのみ露出させることができ、これにより、試薬は、水分又は他の物質との接触による劣化が低減されるか、又は劣化せずに貯蔵できる。本発明の特定の実施形態は、完全な密封部を有する試薬収容チャンバを有する完全に組み立てられたカセット装置を提供する。本発明の特定の実施形態は、湿度制御がそれほど厳しくない環境でカセット装置を組み立て、輸送し、貯蔵することができる。本発明の特定の実施形態は、通常は互換性のない試薬を同じカセットで使用できる。
【0037】
本発明の特定の実施形態によれば、マイクロ流体カセットは、少なくとも1つのチャンバに隣接する密封層を備える。本発明の特定の実施形態は、密封試薬収容チャンバを含む流体密封カセット装置を提供する。本発明の特定の実施形態は、劣化せずに貯蔵でき、試薬を環境に曝さずに使用に移すことができ、チャンバ密封部を自動的に破壊できるので、ユーザが行うステップの数を減らすことができるカセットを提供する。
【0038】
本発明の特定の実施形態によれば、チャンバを備える挿入体が提供される。本発明の特定の実施形態は、容易かつ簡便に製造できる試薬収容チャンバを提供する。
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、穿孔力が加えられたときにその場で破壊可能な密封部が提供される。本発明の特定の実施形態は、例えば機械的手段によって、密封部をその場で作動させるための信頼できる単純な手段を提供することができる。
【0040】
本発明の特定の実施形態によれば、破封機構がカセット本体の一部として提供される。本発明の特定の実施形態は、一体型破封機構を含む、密封自己内蔵型カセットユニットを提供することができる。
【0041】
本発明の特定の実施形態によれば、密封部をカセット本体内でその場で穿孔するように適合される1つ以上の構造体が提供される。本発明の特定の実施形態は、単純かつ信頼できる機械的破封機構を提供することができる。本発明の特定の実施形態は、カセットの完全性を損なうことなく、カセット本体に機械的な力が加えられたときに作動させることができる破封機構を提供することができる。本発明の特定の実施形態は、少量の機械的力を受けたときに破壊可能な密封部を提供することができる。
【0042】
本発明の特定の実施形態によれば、1つ以上の構造体は、チャンバを通る流体流路を提供することができる。本発明の特定の実施形態は、チャンバを通して流体を導くことによって、試薬収容チャンバを通る改善された流体流特性を提供することができる。これにより、チャンバから試薬の全て又は相当量を除去できる。本発明の特定の実施形態は、流体流が生じた後にチャンバ内に保持される試薬の「デッドゾーン」(すなわち体積)をより小さくできる。
【0043】
本発明の特定の実施形態によれば、大気温度を実質的に上回る温度に曝されたときにその場で破壊可能な密封部が提供される。本発明の特定の実施形態は、密封部を作動させるための単純かつ簡便な手段を提供することができる。作動は、カセットと物理的に接触せず、かつ試薬を劣化させずに、影響を受け得る。
【0044】
本発明の特定の実施形態によれば、指向性光線に曝されたときにその場で破壊可能な密封部が提供され、マイクロ流体カセットは、光がカセットを通過して密封部に接触することを可能にする少なくとも1つの経路を含む。本発明の特定の実施形態は、密封部を作動させるための単純かつ簡便な手段を提供することができる。作動は、カセットと物理的に接触せず、改善された精度で影響を受け得る。
【0045】
本発明の特定の実施形態によれば、マイクロ流体カセットと、マイクロ流体カセットのチャンバの密封部を破壊するように適合される少なくとも1つのアクチュエータを備えるマイクロ流体診断デバイスと、を備えるマイクロ流体診断システムが提供される。本発明の特定の実施形態は、カセットの操作に必要なユーザステップがより少ないシステムを提供する。本システムの実施形態は、密封部を作動させる自動化された手段を提供する。
【0046】
本発明の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータは、マイクロ流体カセット本体を受容するように成形される開口部を含む。特定の実施形態は、カセット本体が開口部を通過し、カセット本体に接触する開口部の形状によって密封部を作動させる装置を提供することができる。本発明の特定の実施形態は、密封部を作動させる単純な機械的手段を提供する。
【0047】
本発明の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータは、可動作動部材を備える。本発明の特定の実施形態は、その場で使用して密封部を作動させることができる制御可能な機械的部材を提供する。本発明の特定の実施形態は、完全に自動化できる、正確かつ制御可能な密封部作動手段を提供する。
【0048】
本発明の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータは、熱源又は指向性光源を備える。本発明の特定の実施形態は、カセットとの物理的な接触を必要とせずに密封部を作動させる、制御可能かつ自動化された密封部作動手段を提供する。
【0049】
本発明の特定の実施形態によれば、マイクロ流体カセット本体に対する試薬収容挿入体が提供される。本発明の特定の実施形態は、カセット本体内でその場で破壊可能な密封部を含む挿入体を提供する。本発明の特定の実施形態は、容易かつ迅速に製造でき、製造時に密封して、流体又は他の外部材料が試薬に接触して潜在的に劣化させるのを防止できる挿入体を提供する。本発明の特定の実施形態は、使用時までカセット内に密封できる挿入体を提供する。
【0050】
本発明の特定の実施形態によれば、マイクロ流体カセットの製造方法が提供される。本発明の特定の実施形態は、改良されたマイクロ流体カセットの単純で迅速かつ費用対効果の高い製造方法を提供する。
【0051】
本発明の様々なさらなる構成及び態様は、特許請求の範囲において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体診断システムの概略図である。
【
図2】本発明の特定の実施形態による、カセットチャンバの密封部が破壊される前後のマイクロ流体カセット装置の概略図である。
【
図3】本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体カセット装置のさらなる概略図である。
【
図4】本発明の特定の実施形態による方法の概略流れ図である。
【
図5】本発明の一実施形態による挿入体の断面図である。
【
図6】
図6aは、本発明の一実施形態によるマイクロ流体カセット本体の一部の断面図である。
図6bは、
図6aのマイクロ流体カセット本体の上面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるマイクロ流体カセット本体の一部を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるカバー要素を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態による、組み立てられたカセット挿入装置の断面図である。
【
図11】カセット挿入装置を通る流体流通路を示す簡略図である。
【
図12】
図12a~
図12dは、複数の密封挿入体の製造方法を示す図である。
図12e~12hは、マイクロ流体カセット上にカセット挿入装置を提供する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照して単に例として説明するが、添付の図面では、同様の部品には対応する符号が付されている。
【0054】
図1は、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体診断システム100の簡略概略図である。システム100は、マイクロ流体カセット本体102と、少なくとも1つのチャンバ103と、を備えるマイクロ流体カセット101を備える。カセット101は、本明細書において、特に
図2を参照してより詳細に説明するカセットに実質的に対応し得る。
【0055】
システム100は、カセット101を受容するように適合されるマイクロ流体診断デバイス104をさらに備える。診断デバイス104は、カセット101が診断デバイス104に挿入され、診断デバイス104と相互作用することを可能にするカセット受容領域を含み得る。診断デバイス104は、カセット101と相互作用し、カセット内に収容される流体サンプルに対して診断検査を行うことを可能にする構成要素をさらに備え得る。例えば、診断デバイス104は、流体サンプル(図示せず)上で診断感知及び/又は撮像を行う1つ以上の診断感知及び/又は撮像構成要素を備え得る。また、診断デバイス104は、流体サンプルを加熱及び/又は冷却する構成要素を備え得る。
【0056】
診断デバイスは、1つ以上のアクチュエータ105を備える。1つ以上のアクチュエータ105は、以下でより詳細に説明するように、その場でカセット101のチャンバの密封部を破壊するように適合される。
【0057】
使用時、カセット101は診断デバイス104に挿入される(大きな矢印で示す)。カセット101が診断デバイス104に挿入された後、チャンバ103の密封部が1つ以上のアクチュエータ105を介してその場で破壊される。次いで、流体サンプルがカセット101の流体流路に導入され、サンプルに対して診断検査が行われる。
【0058】
1つ以上のアクチュエータ105は、カセット本体102を受容するように成形される開口部を含み得る。すなわち、1つ以上のアクチュエータ105は、カセット本体102の外形に対応するように成形される開口部を含み得る。開口部の形状は、カセット本体102が開口部を通過するときに、カセット本体102の周りに微小又は無視できる量のクリアランスがあるようになっている。その結果、カセット本体102が開口部を通過するとき、カセット本体102から延出する構造体が開口部の縁部に接触することになる。以下でより詳細に説明するように、特定の実施形態では、この接触を利用してカセット本体102の他の構成要素と相互作用して、チャンバの密封部103をその場で破壊することができる。
【0059】
代替的に又は追加的に、1つ以上のアクチュエータ105は、可動作動部材を備え得る。可動作動部材は、マイクロ流体カセット101と接触していない位置から、マイクロ流体カセット101と接触する位置へ移動し得る。可動作動部材は、カセット101が診断デバイス104に挿入された後、カセット101の一部に力を加えてチャンバの密封部103をその場で破壊し得る。
【0060】
代替的に又は追加的に、1つ以上のアクチュエータ105は、加熱要素などの熱源を備え得る。1つ以上のアクチュエータは、カセット101又はカセット101の領域に熱を加えて、チャンバ103の密封部をその場で破壊し得る。以下でより詳細に説明するように、この実施形態では、チャンバの密封部103は、熱が加えられたときに劣化する材料で構成されてもよく、又は劣化する材料を含んでもよい。
【0061】
代替的に又は追加的に、1つ以上のアクチュエータ105は、レーザなどの指向性光源を備え得る。1つ以上のアクチュエータ105は、チャンバの密封部103に指向性光を照射して、密封部をその場で破壊し得る。以下でより詳細に説明するように、この実施形態では、チャンバの密封部103は、指向性光に曝されたときに劣化する材料で構成されてもよく、又は劣化する材料を含んでもよい。
【0062】
図2は、同じマイクロ流体カセット200を2つの異なる構成で示す概略図である。カセット200は、カセット本体201を備える。カセット本体201は、少なくとも1つの流体流路202を備える。流体流路202は、流体サンプルがカセットを通過することを可能にする。流体流路202は、流体流路壁によって囲まれている。
図2に示す例では、カセットは上側薄膜層210をさらに備え、カセット本体201は凹部領域を含み、流体流路壁は凹部領域と薄膜層210とを含む。
【0063】
カセット200は、試薬204を収容する少なくとも1つのチャンバ203をさらに備える。本明細書では、試薬という用語は、化学分析又は他の反応に使用する物質又は混合物を指すために使用される。特定の実施形態では、試薬204は、乾燥物質又は凍結乾燥物質であってもよい。特定の実施形態では、チャンバ203は、窒素などの不活性ガスをさらに収容し得る。これにより、試薬の劣化をさらに抑え、及び/又はより感度の高い試薬の使用を可能にし得る。不活性ガスは、窒素が豊富な大気中でチャンバ203を密封する間にチャンバ203に導入され得る。
【0064】
特定の実施形態では、試薬204は、液体又は気体であってもよい。
【0065】
チャンバ203は密封部205を備えて、流体がチャンバ203に入るのを防止する。密封部205は、カセット本体201内でその場で破壊可能である。本明細書では、「その場で(in situ)」という用語は、少なくとも1つのチャンバがカセット本体201内に密封されている間を指すために使用され得る。
【0066】
特定の実施形態では、密封部205は、箔(例えばアルミニウムを含む)、熱可塑性又はポリプロピレン(PP)箔複合材料で構成される。典型的には、密封部205は、熱かしめ、レーザ溶接又は薄い接着剤などの適切な接着剤によって固定(すなわち密封)される。特定の実施形態では、密封部205の厚さは約20ミクロンである。
【0067】
特定の実施形態では、密封部205は、密封部に穿孔力が加えられたとき、及び/又は密封部が大気温度を実質的に上回る温度に曝されたとき、及び/又は密封部が指向性光線に曝されたときに、破壊可能であってもよい。
【0068】
カセット本体201及びチャンバ203は、密封部205が破壊されたとき、チャンバ203内の試薬204が流体流路202内の流体に曝されるように構成される。これは、チャンバ203を流体流路202に隣接して配置することによって達成され得る。流体流路に対するチャンバ203の位置によって、流体流路202内の流体を試薬204に強制的に接触させ得る。
【0069】
カセット200は、少なくとも1つのチャンバ203に隣接するカセット本体201の表面上に密封層206をさらに備える。密封層206は、カセット200外の流体がカセット本体201及び/又は流体流路202に接触するのを防止し得る。また、密封層206は、カセット本体201及び/又は流体流路202内の流体がカセット200から漏れ出るのを防止し得る。
【0070】
図2に示す実施形態では、カセット200は、カセット本体201に対する挿入体208をさらに備え、挿入体208は、少なくとも1つのチャンバ203を備える。この実施形態では、カセット本体201は、挿入体208を受容するように成形される開口部を含む。開口部は、挿入体208の1つ以上の対応する凹部と協働して挿入体208をカセット本体201に固定するように配置される1つ以上の突出部212を含み得る。突出部及び凹部は、
図2に示す2つの構成によって図示されるように、カセット本体201内の第1の位置213と第2の位置214との間で、挿入体を流体流路202に向かって、又は流体流路202から離れるように移動させ得る。挿入体208をカセット本体201に固定し、挿入体208がカセット本体201に対して移動できるようにする他の機構、例えばカセット本体201内に設けられる先細挿入体及び対応する先細開口部を使用し得ることが理解されるだろう。
【0071】
カセット本体201は、密封部205を破壊する1つ以上の破封機構を備え得る。
図2に示す例では、破封機構は、密封部をカセット本体内でその場で穿孔するように適合される構造体209を備える。構造体は、開口部に向かって延在する細長要素を備える。構造体209は、密封部が構造体209と強制的に接触したときに密封部205を破壊できるように構成される。
【0072】
上述したように、挿入体208は、カセット本体201内の第1の位置213と第2の位置214との間で移動可能である。第1の位置213では、チャンバ203は構造体209と接触していない。第2の位置214では、チャンバ203は構造体209と接触し、密封部205は破壊されている。様々な破封構造体を設け得ることが理解されるだろう。例えば、
図2に示すような単一の細長要素の代わりに、2つ以上の細長要素を設けてもよい。さらなる破封構造体の例は、
図3並びに
図6a及び6bを参照して説明する。
【0073】
1つ以上の構造体209は、密封部205が穿孔されたとき、チャンバ203を通る流体流路が形成され、流体流路203がカセット本体201の流体流路202と流体連通するように適合される。これにより、チャンバ203を通る流体流通路を提供することができ、その結果、より多量の試薬204をチャンバ203から除去する。
【0074】
上述したように、特定の実施形態では、密封部205は、大気温度を実質的に上回る温度に曝されたときに破壊可能であってもよい。この例では、密封部205は、熱が加えられたときに変化する物理的特性を有する材料で構成されてもよく、この材料を含んでもよく、又はこの材料を使用して固定されてもよい。
【0075】
特定の実施形態では、密封部205は、レーザなどの指向性光線に曝されたときに破壊可能であってもよい。この実施形態では、カセット200は、光がカセット200を通過して密封部205に接触することを可能にする少なくとも1つの導光路を含み得る。密封部205は、指向性光が照射されたときに変化する物理的特性を有する材料で構成されてもよく、この材料を含んでもよく、又はこの材料を使用して固定されてもよい。
【0076】
図3は、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体カセット300の簡略概略図である。
【0077】
カセット本体301は、
図2を参照して説明したように、第1の細長要素302を備える破封機構を備える。破封機構は、第2の細長要素303と第3の細長要素304とをさらに備える。第2の細長要素及び第3の細長要素は、第1の細長要素302の両側に位置し、第1の細長要素302から離間して、カセット本体301内に流体流路305が形成されている。
【0078】
典型的には、カセット本体301は、第2の細長要素及び第3の細長要素から離間した第4の細長要素306及び第5の細長要素307をさらに備え、第2の細長要素及び第3の細長要素と協働して挿入体をカセット本体301に保持する。
【0079】
また、
図3は、本明細書に記載されるように、チャンバ309と密封部310とを備える挿入体308を示す。
【0080】
また、
図3は、使用中の構成311におけるマイクロ流体カセット300を示す。挿入体308はカセット本体301に固定されており、密封部は破封機構によって破壊されている。
【0081】
図4は、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体カセットの製造方法400の概略流れ図である。
【0082】
本方法は、本明細書に記載されるような少なくとも1つの流体流路を備えるマイクロ流体カセット本体を提供するステップ401を含む。本方法は、本明細書に記載されるように、試薬を収容する少なくとも1つのチャンバを提供するステップ402をさらに含み、チャンバは密封部を備えて、流体がチャンバに入るのを防止する。密封部はカセット本体内でその場で破壊可能である。カセット本体及びチャンバは、密封部が破壊されたときに試薬が流路内の流体流に曝されるように構成される。
【0083】
図5は、本発明の一実施形態による挿入体の断面図を示す簡略図である。
【0084】
挿入体500は、本体501を含む。本体501は、第1の閉空間502を含む。使用前に、第1の閉空間502は試薬で充填され、密封されて試薬収容チャンバを提供する。
【0085】
また、本体501は第2の閉空間503を含む。この実施形態では、第2の閉空間503は、第1の閉空間502に対向して位置し、第1の閉空間502に実質的に対応した形状であり、本体501が実質的にH字形状の断面を有する。これにより挿入体500が対称的になり、挿入体500を製造して使用前に試薬を充填することが容易になる。
【0086】
第2の閉空間503を使用して、
図8を参照して説明したカバー800などの別の構造体に挿入体500を固定できる。
【0087】
図6aは、本発明の一実施形態によるマイクロ流体カセット本体の一部の断面図である。
図6bは、
図6aのカセット本体の上面図である。
【0088】
カセット本体600は、マイクロ流体カセットの1つ以上のマイクロ流体チャネルの上に重なるように配置される表面を含む。
【0089】
カセット本体600は、第1の開口部602及び第2の開口部603を含む。使用時に、開口部602、開口部603は、カセット本体600の下に位置するマイクロ流体チャネルを有する流体流通路を提供する。
【0090】
また、カセット本体600は、カセット本体600から延出し、第1の開口部602及び第2の開口部603をそれぞれ取り囲む第1の環状壁604及び第2の環状壁605を含む。第1環状壁604及び第2の環状壁605は、外向きに延在する突出部を提供し、突出部は、接触時に挿入体の密封部を穿孔する破封構造体として作用することができる。
【0091】
カセット本体600は、
図5を参照して説明した挿入体のような挿入体との接触面を提供するように配置される。挿入体が環状壁604、環状壁605に向かって移動すると、環状壁604、環状壁605は、試薬収容チャンバの密封部を穿孔する。続いて、第1の開口部602及び第2の開口部603を介して、チャンバとマイクロ流体チャネルとの間に流体流通路が形成される。
【0092】
第1の環状壁604及び/又は第2の環状壁605の端部は、
図6aに示すように、角度を付けることができる。これにより、密封部との接触点をより小さくすることで、環状壁604、環状壁605の密封部穿孔能力を向上させることができる。
【0093】
一方又は両方の環状壁604、環状壁605の円周周りには、材料が除去された切り欠き領域を提供するセクションを設けることができる。有利には、切り欠き領域を設けることにより、チャンバ内での流体と試薬との混合を促進することで、試薬収容チャンバを通る流体流特性を改善することができる。この実施形態では、第1の環状壁604には切り欠き領域606が設けられているが、第2の環状壁605には設けられていない。
【0094】
また、カセット本体600は外壁601を含む。外壁601は、第1の環状壁604及び第2の環状壁605を囲み、挿入体を第1の環状壁604及び第2の環状壁605に向かって及び離れるように移動させるガイドとして作用する。
【0095】
典型的には、カセット本体600は、接触時に挿入体によって密封する1つ以上のガスケット又はビード(当接面を提供するカセット本体の領域)を含む。適切なガスケット又はビードを設けることにより、使用中にカセット本体600と挿入体との間に流体不透過性密封部を形成するのに必要な力を低減することができる。
【0096】
典型的には、ガスケット又はビードは、環状壁604、環状壁605と外壁601との間でカセット本体600の基部の周りに延びる連続面として提供される。
【0097】
ガスケットが提供される場合、典型的には、ガスケットは、環状壁604、環状壁605に隣接してカセット本体600の基部に位置決めされるように配置される別個の構成要素として提供される。ガスケットは、熱可塑性エラストマー(TPE)材料で構成することができる。ガスケットは、適切な添加剤製造工程を用いて製造することができる。
【0098】
特定の実施形態では、ガスケット又はビードは提供されず、カセット本体600と挿入体との間の密封は、構成要素間の接触などの他の手段によって提供されることが理解されるだろう。
【0099】
図7は、本発明の一実施形態によるマイクロ流体カセットの一部を示す図である。この実施形態では、カセット本体は、
図6a及び
図6bを参照して説明したタイプの第1のカセット挿入装置700と、第2の挿入装置701と、第3のカセット挿入装置702と、を含む。
【0100】
図8は、本発明の一実施形態によるカバー要素を示す図である。
【0101】
カバー要素800は、流体不透過性密封部を介して固定されるように配置されて、マイクロ流体カセット本体の一部を形成する。カバー要素800は、典型的には端部801で密封されて、内部チャンバ802を提供する。カバー要素800は、カセット本体及び挿入体の領域を囲むことができるように成形される。
【0102】
カバー要素800は弾性変形可能である。典型的には、カバー要素800は、熱可塑性エラストマーのような変形可能な材料で構成される。
【0103】
カバー要素800は、挿入体がカバー要素800の内面に固定できるように配置される。この実施形態では、カバー要素800は、挿入体の一部の形状に対応するように成形される領域803を含み、カバー要素800と挿入体との間で摩擦嵌合させる。
【0104】
図9は、
図5、
図6a~
図6b及び
図8をそれぞれ参照して説明した、挿入体500と、カセット本体600と、カバー要素800と、を含む組み立てられたカセット挿入装置900の断面図である。
【0105】
挿入体500はカバー要素800の内面に固定されており、カバー要素800はカセット本体600の残部に密封されている。明確にするために、挿入体500は、チャンバ内に試薬がなく、チャンバが密封されていない状態で示している。
【0106】
ここで
図10a~
図10dを参照して、カセット挿入装置900の使用状態を説明する。
【0107】
カセット挿入装置900は、カセットがマイクロ流体診断デバイスに挿入された後、最初に使用可能な構成になっている。これを
図10aに示す。
【0108】
また、マイクロ流体診断デバイスの一部である可動作動部材1000も
図10aに示す。カバー要素800の内面に固定されている挿入体500は、最初は環状壁と接触せず、密封部を破壊する前の第1の位置にある。
【0109】
次に、可動作動部材1000は、カバー要素800に向かって移動する。作動部材1000は、カバー要素800及び挿入体500と接触し、カバー要素800及び挿入体500をカセット本体600に向かって変位させ始める。これを
図10bに示す。カバー要素800及び挿入体500のカセット本体600に向かう移動方向は、カセット本体600の外壁が挿入体500と接触することで誘導される。
【0110】
作動部材1000は、カバー要素800及び挿入体500をカセット本体600に向かって移動させ続ける。挿入体500が
図10cに示す第2の位置に移動すると、カセット本体600の環状壁が挿入体500の密封部と接触して穿孔する。この構成では、挿入体500がカセット本体600に対して密封され、挿入チャンバは、カセット本体600の流体開口部を介してマイクロ流体チャネルと流体連通している。
【0111】
この構成では、マイクロ流体検査はマイクロ流体診断デバイスによって行うことができる。マイクロ流体診断デバイスでは、流体が挿入体500を通って流れ、挿入体500の中に収容される試薬と相互作用する。
図11は、マイクロ流体検査中に挿入体500を通る流体流の典型的な方向を示す簡略図である。
【0112】
処理後、
図10dに示すように、作動部材1000は、典型的にはカセット本体600から離れるように移動する。カバー要素800の弾性により、典型的にはカバー要素800が元の形状に戻り、それによって挿入体500もカセット本体600から離れるように移動する。
【0113】
カバー要素800とカセット本体600との間の流体不透過性密封部により、カセットは全体的に密封されたままであり、流体がカセット内から漏出するのを防止する。
【0114】
ここで
図12a~
図12dを参照して、複数の密封挿入体の製造方法を説明する。この方法を使用して、
図5を参照して説明したタイプの挿入体を製造することができる。
【0115】
まず、複数の挿入体をキャリア構造体上に載せる。キャリア構造体は、当該技術分野で既知のように、例えば96ウェルプレートとすることができる。
図12aは、単一の挿入1200をキャリア構造体の一部1201上に載せる様子を示す。
【0116】
次に、
図12bに示すように、試薬1202を挿入体1200のチャンバ領域に提供する。この例では試薬1202は湿潤試薬である。しかし乾燥試薬も使用できる。
【0117】
次に、
図12cに示すように、試薬1202を凍結乾燥させる。
【0118】
次に、
図12dに示すように、挿入体1200のチャンバ上に密封部1203を設けて、チャンバ内の試薬1202を密封する。密封部1203は、流体密封の密封部を提供して、あらゆる水分又は汚染物質が試薬1202に接触するのを防止する。密封部1203は、穿孔に適した箔材料で構成することができる。
【0119】
有利には、挿入体は、処理に対してキャリア構造体上の所定の位置に正確かつ簡便に位置できるように成形される。これにより、挿入体を充填及び密封できる速度及び容易さを向上させることができる。この例では、挿入体1200が反対側に位置する2つの対応する形状の閉空間を有し、そのいずれかを使用して、挿入体をキャリア構造体上に配置することができる。
【0120】
ここで
図12e~
図12hを参照して、マイクロ流体カセット上にカセット挿入装置を提供する方法を説明する。この例では、挿入体1200は、
図12a~
図12dを参照して説明した方法によって準備した挿入体である。
【0121】
図12eに示すように、密封挿入体1200を提供する。
【0122】
次に、
図12fに示すように、挿入体1200をカバー要素1204の内面に固定する。この例では、挿入体1200及びカバー要素1204は、摩擦嵌合するように成形される領域を含む。
【0123】
次に、
図12gに示すように、カバー要素及び挿入体は、マイクロ流体カセット本体1205の一部の上に位置決めされる。
【0124】
次いで、
図12hに示すように、カバー要素1204をカセット本体1205に固定して、流体不透過性密封部を提供する。典型的には、熱かしめ処理を介してカバー要素を固定するが、他の適切な処理も使用できる。
【0125】
特定の実施形態では、カバー要素は透明とすることができ、及び/又は挿入体を着色することができる。有利には、これによりカセット挿入装置の内部構成を視覚的に表示することで、カセット挿入装置の組み立ての容易さを向上させることができる。
【0126】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される全ての構成、及び/又はこのように開示される任意の方法若しくはプロセスの全てのステップは、このような構成及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される各構成は、明示的に別段の記載がない限り、同じ、同等の又は類似の目的を果たす代替的構成に置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される各構成は、同等又は類似の構成の一般的な一連の一例にすぎない。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される構成の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせ、又はこのように開示される任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0127】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しては、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形へ、及び/又は単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、様々な単数形/複数形の置換を本明細書に明確に定めてもよい。
【0128】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「オープンな」用語として意図されていることが当業者には理解されるだろう(例えば、「含んでいる(including)」という用語は「含んでいるがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである)。さらに、導入された請求項の記載の具体的な数字が意図される場合、このような意図は請求項に明示的に記載され、このような記載がない場合にはこのような意図が存在しないということが当業者には理解されるだろう。例えば理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入する導入句「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ以上(one or more)」の使用を含むことができる。しかし、このような句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入により、このように導入された請求項の記載を含むいかなる特定の請求項を、1つのこのような記載のみを含む実施形態に限定することを示すものと解釈されるべきではない。これは、たとえ同じ請求項が「1つ以上」又は「少なくとも1つ」の導入句及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても然りであり(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の導入に使用される定冠詞の使用にも同様のことが当てはまる。加えて、たとえ導入された請求項の記載の具体的な数字が明示的に記載される場合であっても、当業者であれば、このような記載が少なくともその記載された数字を意味すると解釈されるべきであると認めるであろう(例えば、他の修飾語句がなく「2つの記載」とだけある記載は、少なくとも2つの記載又は2つ以上の記載を意味する)。
【0129】
本開示の様々な実施形態が説明の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更が行われ得ることが認識されるだろう。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は限定することを意図するものではなく、真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】