(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(54)【発明の名称】眼科手術用医療装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20220118BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20220118BHJP
【FI】
A61F9/007 200B
A61F9/007 200C
A61B34/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531859
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019083900
(87)【国際公開番号】W WO2020115249
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521240402
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】508106611
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ド ラ ルシェルシュ シアンティフィック (セーエヌエールエス)
(71)【出願人】
【識別番号】521240424
【氏名又は名称】アキュサージカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュピュラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ポワニェ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハダッド,ヤシネ
(57)【要約】
外科用装置用の制御ユニットであって、外科用装置(2)は、
遠位と呼ばれ、患者(5)と接触するように構成され、患者(5)内に配置されるように構成された端部を含む少なくとも1つの手術器具と、
手術器具が取り付けられた少なくとも1つのロボット可動要素(7)であって、手術器具を動かすように構成された、ロボット可動要素(7)と、
患者(5)上の取得領域で深度画像(22)を取得するように構成された少なくとも1つの深度撮像器具(8)であって、撮像器具(8)は、患者(5)上の取得領域を動かすように構成されており、制御ユニット(1)は、少なくとも1つのロボット可動要素(7)及び/又は撮像器具(8)に情報を送信して、取得領域の位置を手術器具の遠位端の位置と実質的に一致させるように構成されている、少なくとも1つの深度撮像器具(8)と、
を備える、制御ユニット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用装置(2)用の制御ユニット(1)であって、前記外科用装置(2)は、
遠位と称され、患者(5)と接触するように構成され、前記患者(5)内に配置されるように構成された端部(4)を含む、少なくとも1つの手術器具(3)と、
前記手術器具(3)が取り付けられた少なくとも1つのロボット可動要素(7)であって、前記手術器具(3)を動かすように構成された、少なくとも1つのロボット可動要素(7)と、
前記患者(5)上の取得領域(9)で少なくとも1つの深度画像(22)を取得するように構成された少なくとも1つの深度撮像器具(8)であって、前記患者(5)上の前記取得領域(9)を動かすように構成されている、少なくとも1つの深度撮像器具(8)と、
を備え、
前記制御ユニット(1)は、前記取得領域(9)の前記位置が前記手術器具(3)の前記遠位端(4)の位置と略一致するように、前記少なくとも1つのロボット可動要素(7)及び/又は前記撮像器具(8)に情報を送信するよう構成されている、
制御ユニット(1)。
【請求項2】
遠位と称され、患者(5)と接触するように構成され、前記患者(5)内に配置されるように構成された端部(4)を備える少なくとも1つの手術器具(3)と、
前記手術器具(3)が取り付けられる少なくとも1つのロボット可動要素(7)であって、前記手術器具(3)を動かすように構成された、少なくとも1つのロボット可動要素(7)と、
前記患者(5)上の取得領域(9)で深度画像(22)を取得するように構成された少なくとも1つの深度撮像器具(8)であって、前記患者(5)上の前記取得領域(9)を動かすように構成されている、少なくとも1つの深度撮像器具(8)と、
請求項1に記載の制御ユニット(1)と、
を備える、外科用装置(2)。
【請求項3】
前記撮像器具(8)は、水平と称される第1の切断軸(12)に沿った第1の深度画像と、垂直と称される第2の切断軸(13)に沿った第2の深度画像とを取得するように構成されており、前記切断軸(12,13)は交点(14)で交差し、前記制御ユニット(1)は、前記交点(14)の位置が前記手術器具(3)の前記遠位端(4)の前記位置と略一致するように、前記ロボット可動要素(7)及び/又は前記撮像器具(8)に情報を送信するよう構成されている、請求項2に記載の外科用装置(2)。
【請求項4】
前記外科用装置(2)は、前記ロボット可動要素(7)を制御するための器具(15)を備え、前記制御器具(15)は、前記制御ユニット(1)に情報を送信するように構成されている、請求項3に記載の外科用装置(2)。
【請求項5】
前記ロボット可動要素(7)はロボット可動アームである、請求項4に記載の外科用装置(2)。
【請求項6】
前記交点(14)は動かされるように構成されており、前記制御ユニット(1)は、前記手術器具(3)の前記遠位端(4)が前記交点(14)とリアルタイムで略一致するように、前記ロボット可動要素(7)に情報を送信するよう構成されている、請求項4又は5に記載の外科用装置(2)。
【請求項7】
前記交点(14)は動かされるように構成されており、前記制御ユニット(1)は、前記交点(14)が前記手術器具(3)の前記遠位端(4)とリアルタイムで略一致するように、前記撮像器具(8)に情報を送信するよう構成されている、請求項4又は5に記載の外科用装置(2)。
【請求項8】
前記交点(14)は所定の位置に動かされるように構成されており、前記制御ユニット(1)は、前記交点(14)が前記所定の位置に配置されたときに前記手術器具(3)の前記遠位端(4)が前記交点(14)と略一致するように、前記ロボット可動要素(7)に情報を送信するよう構成されている、請求項5から7のいずれか一項に記載の外科用装置(2)。
【請求項9】
前記ロボット可動要素(7)は動かされるように構成されており、前記制御ユニット(1)は、前記手術器具(3)の前記遠位端(4)が前記交点(14)とリアルタイムで略一致するように、前記ロボット可動要素(7)に情報を送信するよう構成されている、請求項5から8のいずれか一項に記載の外科用装置(2)。
【請求項10】
前記外科用装置(2)は、解剖学的表面の二次元顕微鏡画像(21)を取得するように構成された外科用顕微鏡(10)を備え、前記顕微鏡画像(21)は、前記深度撮像器具(8)の前記取得領域(9)及び前記切断軸(12,13)を含み、前記顕微鏡画像(21)はスクリーン(20)上に投影される、請求項5から9のいずれか一項に記載の外科用装置(2)。
【請求項11】
前記手術器具(3)の位置(23)をOCT画像(22)上に表示するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の外科用装置(2)。
【請求項12】
超音波、SM-OCT、SS-OCT、SDOCT又はOCTAによって得られた深度画像(22)を表示するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の外科用装置(2)。
【請求項13】
前記手術器具(3)の位置(23)を顕微鏡画像(21)上に表示するように構成されている、請求項11又は12に記載の外科用装置(2)。
【請求項14】
請求項13に記載の外科用装置(2)の動作方法であって、前記方法は患者の外部で実行され、前記方法は、
変位命令を前記制御器具(15)に送信するステップ(17)と、
前記制御ユニット(1)によって、前記ロボット可動要素(7)の変位命令又は前記撮像器具の前記取得領域(9)の変位命令を取得するステップ(18)と、
コマンドを前記ロボット可動要素(7)又は前記取得領域(9)に送信して、前記取得領域(9)の前記位置が前記手術器具(3)の前記端部の前記位置と略一致するように前記手術器具(3)又は前記取得領域(9)を動かすステップ(19)と、
を含む、方法。
【請求項15】
前記外科用装置(2)を較正するための初期位置合わせ動作を含み、前記位置合わせ動作により、前記制御ユニット(1)が、前記深度画像及び前記顕微鏡画像(21)の座標系内の任意の点を前記ロボット可動要素(7)の前記座標系内の位置に変換すること、並びにその逆を可能にする変換行列を計算することが可能になる、請求項14に記載の動作方法。
【請求項16】
前記位置合わせ動作は、
前記手術器具(3)の遠位端(4)が前記顕微鏡画像(21)内に見えるように、前記手術器具(3)を前記顕微鏡画像(21)内で動かす第1のステップと、
前記遠位端(4)の前記位置を前記顕微鏡画像(21)内で手動又は自動で特定する第2のステップと、
前記取得領域(9)の前記位置を、前記取得領域(9)が前記手術器具(3)の前記遠位端(4)と一致するように更新する第3のステップと、
前記遠位端(4)の前記深度座標を、少なくとも1つのOCT画像(22)上で手動又は自動で特定する第4のステップと、
を含み、
前記位置合わせ動作は、前記遠位端(4)の異なる位置に対して複数回、好ましくは3回行われる、
請求項15に記載の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的方法及び外科用装置に関する。特に、眼科手術のための外科的方法及び外科用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術は繊細な処置である。使用される手術器具は、手術領域に適合した寸法(数百マイクロメートル程度)を有し、表面が数平方ミリメートルから約1平方センチメートルの治療対象の手術領域にわたって眼内へと動かされる。
【0003】
いくつかの処置では、器具を眼内に挿入する必要がある。特に網膜手術の場合、眼球の後面に存在する網膜に到達するには、硝子体を通していくつかの手術器具を挿入する必要がある。
【0004】
外科用処置は、
-少なくとも1つの手術器具と、
-撮像システムと、
-撮像システムから取得された画像を表示するためのスクリーンと、
を備える外科用装置の使用を必要とする。
【0005】
撮像システムは、一方では網膜の表面を視覚化するための眼科用顕微鏡と、他方では、OCTとして知られている光干渉断層撮影によって画像を得ることを可能にする、眼科用顕微鏡の視野内に配置されたイメージャとを備える。OCT画像は、眼の深度図である。より正確には、これは、1つ以上の切断軸に沿った、すなわち二次元の眼の断面図であり、網膜の解剖学的構造を深さ方向に視覚化することを可能にする。OCTによって得られた画像は、スクリーン上又は眼科用顕微鏡内に表示される。眼科用顕微鏡及びOCTイメージャは、重要かつ相補的な情報を外科医に提供する。
【0006】
他のシングルスライスの深度撮像技術は、従来技術から公知である。超音波、SM-OCT(スペックル変調OCT)、SS-OCT(掃引ソースOCT)、SD-OCT(スペクトルドメインOCT)又はOCTA(OCT血管造影)は、眼の深度図、より具体的には1つ以上の切断軸に沿った眼の断面図を提供する撮像技術である。
【0007】
処置中に手術器具が眼内に挿入され、硝子体を通過する。手術器具の端部が手術領域と接触する。外科医は、処置の間、手術領域にわたって手術器具を操作する。外科医は、手術器具の端部をガイドするために、手術器具の端部が位置する解剖学的構造を視覚化する必要があり、従って、取得されたOCT画像が手術器具の端部と恒久的に一致するように、OCTイメージャの切断軸を動かす。これにより、処置の間、手術器具の端部の解剖学的構造をスクリーン上に視覚化することができる。手術器具の端部の位置が変わると、OCTイメージャの視野が手術器具の端部の位置と一致しなくなるため、外科医はOCT切断軸を動かさなければならない。
【0008】
実際には、外科医は、手術器具を自らの手で動かし、OCTイメージャの切断軸は、足又はフットペダルやフットジョイスティックなどのフットジョイスティック制御を使用して動かす。これは、外科医が典型的には両手を使用して2つの手術器具(例えば、クランプ及び照明器具)を操作し、OCT切断軸の移動並びに眼科用顕微鏡の倍率及び焦点の調整に使用できるのは自分の足のみであるためである。従って、手術を行う際の困難の1つは、複数の手術器具及び撮像システムを同時に取り扱うことに関する。
【0009】
この種の処置において外科医が直面する別の困難は、手の自然な震え又は突然の動きであり、これは手術領域の大きさを考慮すると危険であり得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一目的は、外科医による同時操作の数を減らすことである。
【0011】
別の目的は、望ましくない動きが患者に及ぼし得る影響を限定することである。
【0012】
別の目的は、既知の技術で実行される場合よりも正確な手術器具の動き及び位置決めを可能にすることである。
【0013】
この目的のために、第1に、外科用装置用の制御ユニットが提案され、外科用装置は、
-遠位と称され、患者と接触するように構成され、患者内に配置されるように構成された端部を含む少なくとも1つの手術器具と、
-手術器具が取り付けられた少なくとも1つのロボット可動要素であって、手術器具を動かすよう構成された、少なくとも1つのロボット可動要素と、
-患者上の取得領域で少なくとも1つの深度画像を取得するように構成された少なくとも1つの深度撮像器具であって、患者上の取得領域を動かすように構成されている、少なくとも1つの深度撮像器具と、
を備え、
制御ユニットは、取得領域の位置が手術器具の遠位端の位置と略一致するように、少なくとも1つのロボット可動要素及び/又は撮像器具に情報を送信するよう構成されている。
【0014】
有利には、制御ユニットは、外科医の同時操作の数を減らすことを可能にする。制御ユニットはまた、望ましくない動きが患者に及ぼし得る影響を限定し、既知の技術によって実行される場合よりも正確な手術器具の動き及び配置を実行することを可能にする。
【0015】
第2に、外科用装置であって、
-遠位と称され、患者と接触するように構成され、患者内に配置されるように構成された端部を含む少なくとも1つの手術器具と、
-手術器具が取り付けられる少なくとも1つのロボット可動要素であって、手術器具を動かすように構成された、少なくとも1つのロボット可動要素と、
-患者上の取得領域で深度画像を取得するように構成された少なくとも1つの深度撮像器具であって、患者上の取得領域を動かすように構成されている、少なくとも1つの深度撮像器具と、
-前述の制御ユニットと、
を備える外科用装置が提案される。
【0016】
さまざまな追加の特徴を単独で、又は組み合わせて提供してもよい:
-撮像器具は、水平と称される第1の切断軸に沿った第1の深度画像と、垂直と称される第2の切断軸に沿った第2の深度画像とを取得するように構成されており、それらの切断軸は交点で交差し、制御ユニットは、交点の位置が手術器具の遠位端の位置と略一致するように、ロボット可動要素及び/又は撮像器具に情報を送信するよう構成されている;
-外科用装置は、ロボット可動要素を制御するための器具を備え、制御器具は、制御ユニットに情報を送信するように構成されている;
-ロボット可動要素はロボット可動アームである;
-交点は動かされるように構成されており、制御ユニットは、手術器具の遠位端が交点とリアルタイムで略一致するように、ロボット可動要素に情報を送信するよう構成されている;
-交点は動かされるように構成されており、制御ユニットは、交点が手術器具の遠位端とリアルタイムで略一致するように、撮像器具に情報を送信するよう構成されている;
-交点は所定の位置に動かされるように構成されており、交点が所定の位置に配置されたときに手術器具の遠位端が交点と略一致するように、制御ユニットは、ロボット可動要素に情報を送信するよう構成されている;
-ロボット可動要素は動かされるように構成されており、制御ユニットは、手術器具の遠位端が交点とリアルタイムで略一致するように、ロボット可動要素に情報を送信するよう構成されている;
-外科用装置は、解剖学的表面の二次元顕微鏡画像を取得するように構成された外科用顕微鏡を備え、顕微鏡画像は、深度撮像器具の取得領域及び切断軸を含み、顕微鏡画像はスクリーン上に投影される;
-外科用装置は、手術器具の位置をOCT画像上に表示するように構成されている;
-外科用装置は、手術器具の位置を顕微鏡画像上に表示するように構成されている。
【0017】
第3に、上述の外科用装置の動作方法であって、
-変位命令を制御器具に送信するステップと、
-制御ユニットによって、ロボット可動要素の変位命令又は撮像システムの取得領域の変位命令を取得するステップと、
-コマンドをロボット可動要素又は取得領域に送信して、取得領域の位置が手術器具の端部の位置と略一致するように手術器具又は取得領域を動かすステップと、
を含む方法が提案される。
【0018】
さまざまな追加の特徴を単独で、又は組み合わせて提供してもよい:
-この方法は、外科用装置を較正するための初期位置合わせ(レジストレーション)動作を含み、この位置合わせ動作により、制御ユニットは、深度画像及び顕微鏡画像の座標系内の任意の点をロボット可動要素の座標系内の位置に変換すること、並びにその逆を可能にする変換行列を計算することが可能になり、
-位置合わせ動作は:
-手術器具の遠位端が顕微鏡画像内に見えるように、手術器具を顕微鏡画像内で動かす第1のステップと、
-遠位端の位置を顕微鏡画像内で手動又は自動で特定する第2のステップと、
-取得領域の位置を、取得領域が手術器具の遠位端と一致するように更新する第3のステップと、
-遠位端の深度座標を、少なくとも1つのOCT画像上で手動又は自動で特定する第4のステップと、
を含み、
位置合わせ動作は、遠位端の異なる位置に対して複数回、好ましくは3回行われる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のさらなる特徴及び利点は、非限定的な例として与えられる添付の図面に関連する以下の説明から明らかになるであろう。
【0020】
【
図5】本発明による外科用装置の動作方法の概略図である。
【
図6】手術器具の位置がソフトウェアによって追加された、外科的処置の実際の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明では、OCT画像を取得するためにイメージャを使用する特定の非限定的な場合について説明する。
【0022】
【0023】
図に示す実施形態では、外科用装置2は、眼6に対して外科的介入を実行するように構成及び意図されている。
【0024】
外科用装置2は、患者5と接触するように意図され、より正確には、患者5の眼6の少なくとも深部に配置されるように構成された、遠位と呼ばれる端部4を含む手術器具3を備える。
【0025】
外科用装置2は、手術器具3が取り付けられた少なくとも1つのロボット可動要素7を備える。ロボット可動要素7は、手術器具3を動かすように構成されている。図示の実施形態では、可動要素7は可動アームである。
【0026】
外科用装置2は、患者5の取得領域9で深度画像を取得するように構成されたOCTイメージャ8を備える。OCTイメージャ8は、患者5の取得領域9を動かすことができる。OCTイメージャ8から得られる画像を、以下で「OCT画像22」と称する。外科用装置2は、例えば眼6の網膜などの解剖学的表面の画像を取得するように構成された外科用顕微鏡10を備える。図示の実施形態では、外科用顕微鏡10は眼科用顕微鏡である。眼科用顕微鏡10は、
図2に示す単一の撮像装置11内でOCTイメージャ8と同じ場所に配置されている。眼科用顕微鏡10から得られる画像は、以下で「眼底検査画像21」と称する顕微鏡画像である。取得領域9は、
図4aに示すように、複数の切断軸12、13が通っている正方形の形状である。この図では、交点14で交差する水平切断軸12及び垂直切断軸13が示されている。
図4bは、水平切断軸12に沿った網膜の解剖学的構造を示し、
図4cは、垂直切断軸13に沿った網膜の解剖学的構造を示す。
【0027】
制御ユニット1は、垂直切断軸13及び水平切断軸12の位置が手術器具3の遠位端4の位置と一致するように、ロボット可動要素7に情報25を送信し及び/又はOCTイメージャ8に情報26を送信するように構成されている。換言すれば、交点14は、遠位端4と一致する。この目的のために、制御ユニット1は、ロボット可動要素7の位置に関する情報23を受信するように構成されており、これらの位置情報23は、このロボット可動要素からもたらされる。制御ユニット1はまた、OCTからのデータ24並びにOCTイメージャ8及び眼科用顕微鏡10それぞれからの眼科画像21、22を受信し、OCTイメージャに位置情報26を送信するように構成されている。
【0028】
外科医19は、患者5に直接介入するのではなく、
図2に示す制御器具15に介入する。従って、外科用装置2は、ロボット可動要素の変位に関する情報27を制御ユニット1に送信するように構成された制御器具15を更に備える。図示の実施形態では、制御器具15は制御スタイラスである。
【0029】
各外科的処置を開始する前に、初期位置合わせ動作が患者の外部で行われる。位置合わせ動作は、制御ユニット1が切断軸12、13に対する手術器具3の位置を知るように、外科用装置2を較正することからなる。
【0030】
この目的のために、制御ユニット1は、変換行列が格納された記憶ユニット16を備える。変換行列は、OCT画像22における切断軸12、13の位置及び深度をロボット可動要素7の位置と同期させることを可能にする。
【0031】
2つの初期位置合わせ動作を使用することができる。第1の位置合わせ動作は、以下に説明する連続するステップによって実行される。
【0032】
第1のステップにおいて、ロボット可動要素7によって担持された手術器具3は、眼科用顕微鏡10の視野内へと、すなわち、遠位端4が眼底検査画像21内に見えるように、制御器具15を使用して動かされる。第2のステップにおいて、外科医19は眼底検査画像21内で遠位端4の位置を特定する。このステップは、自動または手動で行われてもよい。
【0033】
自動の場合には、制御ユニット1は、眼底検査画像21上で手術器具3の遠位端4を検出し、遠位端4の2つの次元(x、y)に従って座標を決定することができる。手動モードでは、遠位端4はスクリーン20上に示される。外科医19は、マウス、タッチパッド、ジョイスティック、又は任意の他のヒューマン・マシン・インタラクション(HMI)手段を用いて遠位端4を選択する。
図4aの眼底検査画像21上で選択が行われ、座標(x、y)が取得される。第3のステップにおいて、制御ユニット1は、2つの切断軸12、13が手術器具3の遠位端4と一致するように、取得領域9及び切断軸12、13の位置を更新する。従って、手術器具3の遠位端4は、2つの切断軸12、13の交点に位置する。第4のステップにおいて、外科医は、2つの切断軸のうちの1つの上で遠位端4を選択し、z座標を取得する。このステップは、自動または手動で行われてもよい。自動の場合には、制御ユニット1は、OCT画像上で手術器具3の遠位端4を検出し、z座標を決定することができる。
【0034】
眼底検査画像21及び2つの切断軸12、13が歪みを有さない場合、1つの点で十分であり得る。この場合、ロボットと画像との間の位置合わせは、剛体位置合わせアルゴリズムに基づく。一方、画像に歪みが存在する場合は、複数の点を取得する必要があり、取得領域9の中心に1点、取得領域9の周辺部に複数の点を取得することが好ましい。この場合、ロボットと画像との間の位置合わせは、非剛体位置合わせアルゴリズムに基づく。点が多いほど精度が高くなる。ユーザをガイドするために、制御ユニット1は、追加されたそれぞれの点の後に、その点の数での精度を示す二乗平均平方根(RMS)誤差値を表示することができる。
【0035】
位置合わせが完了すると、制御ユニット1は、標準的な位置合わせアルゴリズムを使用して変換行列を計算する。変換行列は、OCT画像及び眼底検査画像の座標系内の任意の点をロボット可動要素の座標系内の位置に変換し、逆もまた同様である。
【0036】
外科医の選択に応じて、第1の位置合わせ動作とは異なる第2の位置合わせ動作を使用することができる。第1のステップでは、ロボットによって担持された外科用器具は、第1の位置合わせプロセスと同様に眼科用顕微鏡の視野内にあるOCTイメージャの取得領域内へと動かされる。第2のステップでは、スクリーン上に表示されるOCT画像内に手術器具の端部が見えるようになるまで、水平切断軸が手術器具の端部に向かって動かされる。外科医は、OCT画像上で手術器具を見ると、手術器具の端部の位置を制御ユニットに示す。この動作は続いて、垂直切断軸についても行われる。第1のプロセスと同様に、この動作を数回繰り返して、対象用途でのRMS誤差を十分に小さくする必要がある。
【0037】
位置合わせ動作の完了後に、外科医は、交点が手術器具の遠位端の位置と一致するようにOCTイメージャが取得領域と水平切断軸及び垂直切断軸とを動かしている間に、制御器具を使用してロボット可動要素を方向付けることができる。逆に、外科医は画像上の点を選択することができ、制御ユニットは、手術器具の遠位端がこの点と一致するように、ロボット可動要素に動くように命令する。
【0038】
位置合わせ動作が完了したとき、外科用装置の動作方法は、制御器具15を使用して変位命令を送信するステップ17を含む。次いで、方法は、ロボット可動要素又は撮像器具の取得領域を動かすための命令を取得するステップ18と、コマンドをロボット可動要素又は取得領域に送信して、取得領域の位置が手術器具の端部の位置と実質的に一致するように手術器具又は取得領域を動かすステップ19とを含む。コマンドは、一連の命令又は単一の命令である。外科用装置の動作方法は、患者の外部で実行されてもよい。換言すれば、外科用装置の要素が患者と接触していないときに動作方法が実行されてもよい。
【0039】
有利には、装置は、OCT画像22上に器具の位置23を表示するように構成されている。
図6を参照すると、手術器具3がOCT画像22上に重ねて表示されていることが分かる。これは、有利には、施術者が位置合わせの精度を確認することを可能にする。実際に、施術者は、手術器具3をOCT画像22上に表示された位置23と確実に一致させることができる。
【0040】
外科用装置のいくつかの異なる使用が可能である。これらの使用について以下に説明する。
【0041】
第1のオプション:OCTイメージャの位置のサーボ制御
外科用装置の第1の可能な使用によれば、外科医は、制御器具を利用してロボット可動要素を動かす。制御ユニットは、交点が手術器具の遠位端と一致するように、OCTイメージャに取得領域と垂直切断軸及び水平切断軸とを動かすように命令する。
【0042】
これにより、外科医は、解剖学的構造及び手術器具の遠位端をスクリーン上でリアルタイムで見ることができるようになる。
【0043】
第2のオプション:手術器具の位置のサーボ制御
外科用装置の第2の可能な使用によれば、外科医は、取得領域、従って水平切断軸及び垂直切断軸を動かす。従って、外科医は、解剖学的位置を深さ方向において見ることができ、そして介入を決定することができる。外科医が介入を決定すると、外科医は、外科用装置の遠位端を水平切断軸及び垂直切断軸の交点に対応する座標点(x、y)及びOCT画像上に示される深さ方向の点(z)に動かすように制御ユニットに指示する。あるいは、ロボット可動要素は、顕微鏡画像及びOCT画像上の規定された点をリアルタイムで追跡することによって瞬時に動く。この点を、外科医によって特定され、患者の動き(呼吸、心拍)の結果として動く解剖学的ランドマークとすることができる。このランドマークの動きは、顕微鏡画像及び/又はOCT画像に基づき、追跡アルゴリズムを使用して制御ユニットにより計算される。
【0044】
これにより、外科医によって選択された解剖学的位置に移動するロボット可動要素を使用して高精度の手術を実施することが可能になる。この使用は、手術器具の遠位端を(直径10μm未満であり得る)網膜血管の中心に配置する必要がある場合、又はこの遠位端を、例えば網膜下注射を行うために網膜の表面下の正確な深さに配置する必要がある場合に特に有用である。事実、この種の介入は、急激な動きや震えが許容されないため、極めて困難である。実際、外科医の自然な震えは100μm程度である一方で、介入は数マイクロメートル単位で行われる。
【0045】
第3のオプション:OCT画像上の禁止領域の画定
外科用装置の第3の可能な使用によれば、手術器具の遠位端が進入できない進入禁止領域を画定することが可能である。
【0046】
外科医は、スクリーン上でOCT画像及び眼底検査画像に制限領域を画定し、その結果、制御ユニットはこの制限領域への遠位端のアクセスを禁止する。これにより、外科医の突然の望ましくない動き又は震えから特定の解剖学的領域を保護することによって、患者の安全が確保される。
【0047】
第4のオプション:自動スキャンの設定
外科用装置の第4の可能な使用によれば、OCT画像及び/又は眼底検査画像を使用して、スクリーン上に三次元及び/又は二次元経路を画定することが可能である。経路が導出されて有効にされると、制御ユニットは、外科用装置に経路を辿るように命令する。これにより、例えば網膜のレーザ治療のために、正確で且つ制御された動きで複雑な経路に沿って外科的処置を実行することが可能になる。本出願では、外科用装置は、例えば眼内レーザ送信機である。
【0048】
上記の特定の事例について記載されたOCT撮像技術の使用は、本発明を限定するものではない。シングルスライスの深度画像を提供する任意の種類の画像を使用することができる。これには、例えば、超音波、SM-OCT(スペックル変調OCT)、SS-OCT(掃引ソースOCT)、SD-OCT(スペクトルドメインOCT)又はOCTA(OCT血管造影)技術が含まれる。
【国際調査報告】