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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】鳥類幹細胞を含む食品
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0735 20100101AFI20220119BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20220119BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
C12N5/0735
A23L33/00
A23L13/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529086
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(85)【翻訳文提出日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2019082218
(87)【国際公開番号】W WO2020104650
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】18208055.6
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520054792
【氏名又は名称】ヴァルネヴァ エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲアンヌー,ファビエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】レオン,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】マデリーン,ブライス
(72)【発明者】
【氏名】モロー,カリーヌ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B018MD69
4B018MD79
4B018ME02
4B018MF14
4B042AC04
4B042AC10
4B042AD03
4B042AD23
4B042AD36
4B042AD39
4B042AG06
4B042AG07
4B042AK01
4B042AK02
4B042AK04
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP05
4B042AP07
4B042AP16
4B042AP17
4B042AP18
4B042AP30
4B065AA90X
4B065BB12
4B065BB26
4B065BB29
4B065BB32
4B065BB34
4B065BC02
4B065BC03
4B065BC06
4B065BC07
4B065BC09
4B065BC11
4B065BC20
4B065BC26
4B065BC41
4B065BD14
4B065CA41
(57)【要約】
人間および動物が消費するための合成肉製品、およびそのような食品を製造するための方法が開示されている。合成食品は、制御された条件下で、既知組成無血清培地中でin vitroで成長させた鳥類細胞の細胞バイオマスを含むか、または本質的にそれからなり、有害な汚染物質を一切含まない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥類細胞株を懸濁液中で培養することを含む、ヒトまたは動物が消費するための栄養食品をin vitroで製造するプロセスであって、前記鳥類細胞株は、i)鳥類胚性幹細胞に由来し、ii)外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培養培地中で成長することができ、ならびにiii)懸濁液中で継続的に増殖することができるプロセス。
【請求項2】
前記鳥類細胞株が、
a)産卵期付近の発生段階にある胚(複数可)から鳥類胚性幹細胞を単離するステップと;
b)少なくとも1つの外因性成長因子SCF、IGF-1、bFGF、IL-6、IL-6Rおよび/またはCNTF、フィーダー細胞の層、ならびに動物血清を含む基礎培養培地中で前記細胞を少なくとも20継代にわたり培養するステップと;
c)前記成長因子、フィーダー細胞および動物血清を段階的に除去することにより前記培養培地を改変し、少なくとも数継代にわたり細胞をさらに培養するステップと;
d)ステップc)の前記細胞を懸濁液に適応させ、
それにより、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培養培地中で少なくとも50日間増殖可能な樹立された鳥類細胞株を得るステップとを含むプロセスにより得られる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記鳥類細胞株が、
a)産卵期付近の発生段階にある胚(複数可)から鳥類胚性幹細胞を単離するステップと;
b)前記細胞を、外因性成長因子IGF-1およびCNTF、フィーダー細胞の層、ならびに動物血清を含む基礎培養培地中で少なくとも1継代にわたり培養するステップと;
c)ステップb)の前記培養物から前記成長因子を段階的に取りやめ、少なくとも1継代にわたりさらに成長させるステップと;
d)ステップc)の前記培養物から前記フィーダー細胞を段階的に取りやめ、少なくとも1継代にわたり成長させるステップと;
e)ステップd)の前記培養物から前記動物血清を段階的に取りやめ、少なくとも1継代にわたり成長させるステップと;
f)ステップe)の前記細胞を懸濁液に適応させ、
それにより、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培地中で増殖可能な連続鳥類細胞株を得るステップとを含むプロセスにより得られる、請求項1および2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記鳥類細胞株が、ニワトリ胚性幹細胞に由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記鳥類細胞株が、カモ胚性幹細胞に由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記鳥類細胞株が、機能的な内因性レトロウイルスまたは他のウイルス粒子を含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記鳥類細胞株が、SPF種に由来する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記鳥類細胞株が、ニワトリEB14、ニワトリEB系統0、ニワトリEBv13、ニワトリDL43、ニワトリDL46、カモEB24、カモEB26およびカモEB66細胞株からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記鳥類細胞株が、ニワトリDL43、ニワトリDL46、カモEB24およびカモEB26細胞株からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記鳥類細胞株が、ニワトリDL43またはカモEB26である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記細胞株が、ヒトおよび/または動物に対する有害物質を含まない合成または既知組成(CD)培地である培養培地中で成長される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記合成培地が、Ex-Cell(登録商標)GRO-Iおよび/またはHYQ CDM4 Avian培地である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記合成培地またはCD培地に、アミノ酸、ヌクレオチド、ビタミン、サッカリド、脂肪酸、ベータ-メルカプト-エタノール、インスリン、グリシン、コリン、プルロン酸F-68およびピルビン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の成分(複数可)がさらに補充される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
追加の成分が、0~12mM、好ましくは1~5mM、より好ましくは約2.5mMの濃度で使用されるL-グルタミンである、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記培養培地が、植物および/または酵母の加水分解物をさらに含む、請求項11~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記培養培地が、血清を含むいかなる動物製品も含まない、請求項11~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記細胞株が、流加培養条件下で培養される、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記細胞株が、灌流条件下で培養される、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記細胞株が、30リットル、50リットル、100リットル、1000リットル、好ましくは10,000リットル以上の容積のバイオリアクタ内で培養される、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記細胞株が、約37℃、pH7.2、pO約50%、および約40rpm以上の攪拌速度で培養される、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記細胞株が、細胞密度が約10細胞/mLに達するまで培養される、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記細胞株が、細胞密度が約10細胞/mLに達するまで培養される、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記細胞株が、細胞密度が10細胞/mLを超えるまで培養される、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記プロセスの収率が、媒体1gあたり少なくとも約0.5~1gのバイオマスである、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
沈降およびデカンテーションにより細胞バイオマスを採取するステップをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
細胞沈降が、細胞懸濁液へのカルシウム塩の添加によって行われる、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
カルシウム塩が、10~500mg/L、好ましくは50~300mg/L、より好ましくは50mg/Lの最終濃度で使用される塩化カルシウムである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
(ビタミン、コビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、必須脂肪酸、酵素および抗酸化物質を含む群から選択される)食品の栄養価を増加させる1つ以上の成分(複数可)を前記細胞バイオマスに添加するステップをさらに含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
1つ以上の香味料(複数可)、香味芳香化合物(複数可)および/または着色料(複数可)を前記細胞バイオマスに添加することをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
冷却、冷凍、固化、乾燥、漬け込み、煮沸、調理、焼き、揚げ、燻製、3D印刷、および包装から選択される1つ以上の食品加工ステップ(複数可)をさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載のプロセスにより製造された栄養食品。
【請求項32】
請求項1~27のいずれか一項に記載のプロセスにより製造された細胞バイオマス。
【請求項33】
人間または動物が消費するための合成食品を製造するための、請求項32に記載の細胞バイオマスの使用。
【請求項34】
請求項32に記載の細胞バイオマスを含む、または本質的にそれらからなる合成食品。
【請求項35】
前記鳥類細胞とともにin vitroで成長するか、または前記鳥類細胞の採取後に添加される、非ヒト筋細胞、脂肪細胞もしくは軟骨細胞、またはそれらの組み合わせ等の他の細胞をさらに含む、請求項31または34に記載の合成食品。
【請求項36】
ミネラル、ビタミン、コビタミン、必須脂肪酸、必須アミノ酸、酵素および抗酸化物質、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される前記栄養価を高める追加の成分をさらに含む、請求項31、34、および35のいずれか一項に記載の合成食品。
【請求項37】
1つ以上の香味料(複数可)、香味芳香化合物(複数可)および/もしくは着色料(複数可)、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項31、34~36のいずれか一項に記載の合成食品。
【請求項38】
ペースト、ピューレ、スープ、パイ、粉末、顆粒、チップ、錠剤、カプセル、スプレッドおよびソーセージを含む群から選択される消費形態のいずれかに加工される、請求項31、34~36のいずれか一項に記載の合成食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ヒトおよび/または動物が消費するための合成栄養食品の工業的生産に関する。より具体的には、本発明は、食物または栄養補助食品として適切な細胞バイオマスを生産するための、鳥類細胞株、特に胚性起源の幹細胞に由来するニワトリまたはカモのES細胞株の使用に関する。本発明は、そのような合成食品の製造方法および製品自体を包含する。
【背景技術】
【0002】
世界の食肉生産は、過去50年間で急速に増加した。すなわち、世界の総生産量は1961年から4~5倍に増加した(Ritchie and Roser, 2018)。2014年の食肉の総生産量は約3億トンで、そのほとんどが家禽、豚および牛肉であった。同時に、家畜の総数は約14億頭の牛、12億頭の羊、10億頭のヤギ、および約10億頭の豚であり、主にアジアの需要の増加により非常に強い増加傾向にある。1人あたりの食肉の総消費量は、過去50年間で2倍になった。すなわち、肉の消費量は人口増加を上回っている。さらに、2030年には世界の食肉消費量は2015年に比べて25%増加し、2050年には4億6,000万トンに達すると推定されている(GEAS 2012)。
【0003】
この目覚ましい成長の裏側には、推定される傾向でさらに増加する一方の現在の動物肉生産に関連する深刻な問題がある。
【0004】
第一に、動物の肉を生産する従来の方法は非常に非効率的である。農業生産された全ての穀物のかなりの部分が動物の消費に使用される。さらに、1ポンドの肉を生産するには、数千ポンドの水が必要である。例えば、1キログラムの豚、羊/山羊、または牛の肉を生産するには、それぞれ5988、8768および15415リットルの水が必要である(Mekonnen and Hoekstra,2010)。それにもかかわらず、現在の努力は、ホルモンおよび抗生物質を使用し、そのようにして穀物および水の消費を減らすことにより、家畜の成長を固定することに焦点を当てている。しかしながら、この開発は、成長ホルモン(特に、テストステロン、プロゲステロン、エストロゲン、またはそれらの合成誘導体等のステロイドホルモン)および抗生物質で汚染された家畜の肉が公衆衛生に対する脅威となる別の問題をもたらす(Galbraith,2002;Jeong et al.,2010)。
【0005】
第二に、畜産の強化は、世界中に病原菌および新興疾患の急速な広がりに関連している(Greger,2007)。サルモネラ菌、カンピロバクター、大腸菌等の食品媒介病原菌は、毎年何百万もの発病の原因となり、人間および動物の健康システムに巨額の支出をもたらしている。
【0006】
第三に、畜産部門からの二酸化炭素およびメタンの大量排出は、深刻な環境問題である(GEAS 2012;Opio et al.,2013;Hedenus et al.,2014)。世界銀行の推定によると、世界のCO排出量の18%は、現在の非効率的な食肉生産によって引き起こされている。Worldwatch Instituteは、真の数値は51%であると主張している(https://www.independent.co.uk/environment/climate-change/study-claims-meat-creates-half-of-all-greenhouse-gases-1812909.htmlを参照されたい)。
【0007】
第四に、現在の肉生産方法は動物の苦痛を伴い、これには今日多くの人々が反対している。
【0008】
第五に、消費に天然肉を使用することのさらなる欠点は、コレステロールおよび飽和脂肪等の有害物質の含有量が高く、食事や健康を脅かす問題を引き起こすことである。
【0009】
したがって、上記の問題を少なくとも部分的に解決または低減できる肉および/または肉類似製品の生産のための新しいアプローチを開発する必要がある。
【0010】
1つのアプローチは、ex vivoで生成された非従来型肉製品を開発することである。「細胞培養肉」、「人工肉」、「クリーンミート」、「ラボ成長肉」とも呼ばれる、いわゆる「合成肉」または「in vitro肉」は、in vitroで培養された動物由来の細胞を使用して製造される。そのような合成肉は、天然資源(土地、エネルギー、水)の使用効率、より低い温室効果ガス生成、およびより良い動物福祉の観点から、従来の肉に比べて多くの利点がある(Tuomisto、2014)。さらに、培養肉の栄養組成を徹底管理し、それによりコレステロール、飽和脂肪、ホルモン、抗生物質および感染性微生物等の有害成分の混入を防ぐことができる。
【0011】
理論上、合成肉は、物理的特性、色、風味、香り、食感、嗜好性および栄養価が従来の動物肉と同等である、または単に人間に受け入れられる限り、従来の肉製品と補完的な役割を果たし得る、またはさらには肉の代替品と見なすことができる。近年、いくらかの進歩が見られるが、合成肉または肉類似品生産の分野における技術は、まだ非常に初期の実践段階にある(Kadim et al.,2015でレビューされている)。適切な細胞型の選択、培養条件の完成、およびコスト効率的で有害な汚染物質を含まない培養培地の開発等、解決すべき重要な問題が残されていた。
【0012】
特に、本発明によって解決される重要な問題の1つは、大量の肉類似製品を手頃な価格で生産するためのスケールアップである。
【0013】
本発明者らは、培養で持続的に成長し、大量の細胞バイオマスを生成することができる鳥類細胞株を開発した。特に、本明細書に提示される細胞株は、高度な産業規模の培養を実現可能にするために必要なすべての特徴を有する。
【発明の概要】
【0014】
抗生物質を含まず、必要なエネルギーおよび水がより少ない食品を製造する代替方法を見つけることが極めて必要とされている意外なことに、鳥類細胞株を懸濁液中で培養すると、そのような食品の非常に高収率の源が提供された。
【0015】
本出願は、従来のアプローチに関連する深刻な環境、健康および倫理的問題の解決に役立ち、急速に成長する消費者のニーズを満たすことができる合成肉製品を製造するための新たなプロセスを提供する。開示されたプロセスは、組織工学の面倒な手順を伴わないが、低コストの細胞培養に基づいている。本発明の態様は、特に以下を提供する:
【0016】
A1.鳥類細胞株を懸濁液中で培養することを含む、ヒトまたは動物が消費するための栄養食品を「in vitro」で製造するプロセス/方法であって、前記鳥類細胞株は、i)鳥類胚性幹細胞に由来し、ii)外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培養培地中で成長することができ、ならびにiii)懸濁液中で継続的に増殖することができるプロセス/方法。
【0017】
A2.鳥類細胞株が、
a)産卵期付近の発生段階にある胚(複数可)から鳥類胚性幹細胞を単離するステップと;
b)少なくとも1つの外因性成長因子SCF、IGF-1、bFGF、IL-6、IL-6Rおよび/またはCNTF、フィーダー細胞の層、ならびに動物血清を含む基礎培養培地中で前記細胞を少なくとも20継代にわたり培養するステップと;
c)前記成長因子、フィーダー細胞および動物血清を段階的に除去することにより前記培養培地を改変し、少なくとも数継代にわたり細胞をさらに培養するステップと;
d)ステップc)の細胞を懸濁液に適応させ、
それにより、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培養培地中で少なくとも50日間増殖可能な樹立された鳥類細胞株を得るステップとを含むプロセスにより得られる、態様A1のプロセス/方法。
【0018】
A3.鳥類細胞株が、
a)産卵期付近の発生段階にある胚(複数可)から鳥類胚性幹細胞を単離するステップと;
b)前記細胞を、外因性成長因子IGF-1およびCNTF、フィーダー細胞の層、ならびに動物血清を含む基礎培養培地中で少なくとも1継代にわたり培養するステップと;
c)ステップb)の培養物から前記成長因子を段階的に取り出し、少なくとも1継代にわたりさらに成長させるステップと;
d)ステップc)の培養物からフィーダー細胞を段階的に取り出し、少なくとも1継代にわたり成長させるステップと;
e)ステップd)の培養物から動物血清を段階的に取り出し、少なくとも1継代にわたり成長させるステップと;
f)ステップe)の細胞を懸濁液に適応させ、
それにより、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培地中で増殖可能な連続鳥類細胞株を得るステップとを含むプロセスにより得られる、態様A1およびA2のプロセス/方法。
【0019】
A4.鳥類細胞株が、ニワトリ胚性幹細胞に由来する、態様A1~A3のいずれかのプロセス/方法。
【0020】
A5.鳥類細胞株が、カモ胚性幹細胞に由来する、態様A1~A4のいずれかのプロセス/方法。
【0021】
A6.鳥類細胞株が、機能的な内因性レトロウイルスまたは他のウイルス粒子を含まない、態様A1~A5のいずれかのプロセス/方法。
【0022】
A7.鳥類細胞株が、SPF種に由来する、態様A1~A6のいずれかのプロセス/方法。
【0023】
A8.鳥類細胞株が、ニワトリEB14、ニワトリEB系統0、ニワトリEBv13、ニワトリDL43、ニワトリDL46、カモEB24、カモEB26およびカモEB66細胞株からなる群から選択される、態様A1~A7のいずれかのプロセス/方法。
【0024】
A9.鳥類細胞株が、ニワトリDL43、ニワトリDL46、カモEB24、カモEB26である、態様A1~A8のいずれかのプロセス/方法。
【0025】
A10.鳥類細胞株が、ニワトリDL43またはカモEB26である、態様A1~A9のいずれかのプロセス/方法。
【0026】
A11.細胞株が、ヒトおよび/または動物に対する有害物質を含まない合成または既知組成(CD)培地である培養培地中で成長される、態様A1~A10のいずれか一項に記載のプロセス/方法。
【0027】
A12.合成培地が、Ex-Cell(登録商標)GRO-Iおよび/またはHYQ CDM4 Avian培地である、態様A11のプロセス/方法。
【0028】
A13.合成培地またはCD培地に、アミノ酸、ヌクレオチド、ビタミン、サッカリド、脂肪酸、ベータ-メルカプト-エタノール、インスリン、グリシン、コリン、プルロン酸F-68およびピルビン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の成分(複数可)がさらに補充される、態様A11に記載のプロセス/方法。
【0029】
A14.追加の成分が、0~12mMまたは1~5mM、好ましくは約2.5mMの濃度で使用されるL-グルタミンである、態様A13のプロセス/方法。
【0030】
A15.培養培地が、植物および/または酵母の加水分解物をさらに含む、態様A11~A13のいずれかのプロセス/方法。
【0031】
A16.培養培地が、血清を含むいかなる動物製品も含まない、態様A11~A15のいずれかのプロセス/方法。
【0032】
A17.細胞株が、流加培養条件下で培養される、態様A1~A16のいずれかのプロセス/方法。
【0033】
A18.細胞株が、灌流条件下で培養される、態様A1~A16のいずれかのプロセス。
【0034】
A19.細胞が、30リットル、50リットル、100リットル、1000リットル、好ましくは10,000リットル以上の容量のバイオリアクタ内で培養される、態様A1~A18のいずれかのプロセス/方法。
【0035】
A20.細胞株が、約37℃、pH7.2、pO2約50%、および約40rpm以上の攪拌速度で培養される、態様A1~A19のいずれかのプロセス/方法。
【0036】
A21.細胞株が、細胞密度が約10細胞/mLに達するまで培養される、態様A1~A20のいずれかのプロセス/方法。
【0037】
A22.細胞株が、細胞密度が約10細胞/mLに達するまで培養される、態様A1~A21のいずれかのプロセス/方法。
【0038】
A23.細胞株が、細胞密度が10細胞/mLを超えるまで培養される、態様A1~A21のいずれかのプロセス/方法。
【0039】
A24.プロセスの収率が、媒体1gあたり少なくとも約0.5~1gのバイオマスである、態様A1~A23のいずれかのプロセス/方法。
【0040】
A25.沈殿およびデカンテーションにより細胞バイオマスを採取するステップをさらに含む、態様A1~A24のいずれかのプロセス/方法。
【0041】
A26.細胞沈降が、細胞懸濁液へのカルシウム塩の添加によって行われる、態様A25のプロセス/方法。
【0042】
A27.カルシウム塩が、10~500mg/L、好ましくは50~300mg/L、より好ましくは50mg/Lの最終濃度で使用される塩化カルシウムである、態様A26のプロセス/方法。
【0043】
A28.ビタミン、コビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、必須脂肪酸、酵素および抗酸化物質を含む群から選択される食品の栄養価を増加させる1つ以上の成分(複数可)を前記細胞バイオマスに添加するステップをさらに含む、態様A1~A27のいずれかのプロセス/方法。
【0044】
A29.1つ以上の香味料(複数可)、香味芳香化合物(複数可)および/または着色料(複数可)を細胞バイオマスに添加することをさらに含む、態様A1~A28のいずれかのプロセス/方法。
【0045】
A30.冷却、冷凍、固化、乾燥、漬け込み、煮沸、調理、焼き、揚げ、燻製、3D印刷、および包装から選択される1つ以上の食品加工ステップ(複数可)をさらに含む、態様A1~A29のいずれかのプロセス/方法。
【0046】
B1.態様A1~A30のいずれかのプロセス/方法により製造された食品。
【0047】
C1.態様A1~A27のいずれかのプロセス/方法により製造された細胞バイオマス。
【0048】
D1。人間または動物が消費するための合成食品を製造するための、態様C1の細胞バイオマスの使用。
【0049】
B2.態様C1の細胞バイオマスを含む、または本質的にそれらからなる食品。
【0050】
B3.鳥類細胞とともにin vitroで成長するか、または鳥類細胞の採取後に添加される、非ヒト筋細胞、脂肪細胞もしくは軟骨細胞、またはそれらの組み合わせ等の他の細胞をさらに含む、態様B1またはB2の食品。
【0051】
B4.ミネラル、ビタミン、コビタミン、必須脂肪酸、必須アミノ酸、酵素および抗酸化物質、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される栄養価を高める追加の成分をさらに含む、態様B1、B2、またはB3のいずれかの食品。
【0052】
B5.1つ以上の香味料(複数可)、香味芳香化合物(複数可)および/もしくは着色料(複数可)、またはそれらの組み合わせをさらに含む、態様B1、B2~B4のいずれかの食品。
【0053】
B6.ペースト、ピューレ、スープ、パイ、粉末、顆粒、チップ、錠剤、カプセル、スプレッドおよびソーセージを含む群から選択される消費形態のいずれかに加工される、態様B1、B2~B5のいずれかの食品。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明は、以下の図、表、および実施例によってさらに説明され、それらからさらなる特徴、実施形態および利点を得ることができる。このように、議論された特定の変更は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な同等物、変更、および修正を行うことができることが明らかであり、したがって、そのような同等の実施形態が本明細書に含まれることを理解されたい。
【0055】
本発明に関連して、
図1】バンク生成前の鳥類幹細胞のCDM4鳥類培地への適応プロセスを示す図である。
図2A】CD培地での鳥類幹細胞の適応に沿った細胞成長パラメータを示す図である。(A)細胞密度(実線)および生存率(破線)。(B)集団倍加時間(PDT)。
図2B】なし
図3A】解凍後の細胞回収を示す図である。(A)解凍後の細胞密度(実線)および生存率(破線)。(B)集団倍加時間(PDT)。
図3B】なし
図4A】異なる濃度で播種された鳥類幹細胞の成長速度を示す図である。(A)2.5mMのL-グルタミンが補充されたCD培地で3日または4日間培養した後に得られた細胞密度。(B)異なる濃度で播種後3日目および4日目に得られた生存率。
図4B】なし
図5】30Lのバイオリアクタの播種のための細胞を増幅するためのスケールアッププロセスを示す図である。
図6】鳥類幹細胞のスケールアップ中に得られる典型的な密度を示す図である。増幅プロセス中の鳥類幹細胞の細胞密度(実線)および生存率(破線)。
図7】30LのバイオリアクタでのCD適合鳥類幹細胞の細胞成長を示す図である。バイオリアクタでの増幅プロセス中の鳥類幹細胞の細胞密度(実線)および生存率(破線)。
図8】30Lのバイオリアクタから採取した細胞懸濁液を含む1Lのボトルを示す図である。
図9】30Lのバイオリアクタで作製された鳥類幹細胞ペレットを含む500mLの管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
家禽の肉、特に鶏肉およびカモ肉が食用タンパク質の主要な供給源であることが本発明者によって認識された。また、家禽肉または一般的な肉を生産する従来のアプローチは効率的ではなく、また急速に成長する消費者のニーズおよび増え続ける食肉消費者の数を満たすのに十分な量の健康的な製品を生産することもできないことが認識された。
【0057】
in vitroで成長させた「家禽」食品は、従来の方法で生産された家禽肉の代替品、または食品のサプリメントとなり得る。重要なことに、in vitro培養は制御された無菌条件下で行われるため、有害な汚染のない合成食品の生成が可能になる。さらに、本明細書に記載の培養プロセスは、妥当な価格で工業規模で細胞バイオマスを生産するのに適している。
【0058】
したがって、本発明の目的は、in vitroで成長させた鳥類細胞から製造された食品を提供することであり、これは、従来のニワトリもしくはカモの肉または任意の肉または合成肉製品のサプリメントとして使用することができる。
【0059】
一態様において、本出願は、in vitroで培養された合成食品を製造するための方法を提供する。
【0060】
「合成食品」という用語は、非ヒト動物から単離された細胞の培養で生産された、消費に役立つ製品を指す。「合成食品」という用語は、本明細書で使用される場合、「肉様製品」、「合成肉」、「in vitro肉」、「培養肉」、「細胞培養肉」、「クリーンミート」、「人工肉」および「ラボ成長肉」等の用語と交換可能である。
【0061】
「in vitro」とは、生体外の単離細胞、特に合成培養培地で成長させた単離細胞に対してプロセスが行われることを意味する。
【0062】
鳥類細胞株
一実施形態において、本発明の方法は、鳥類細胞株に対して行われるが、これに限定されるものではない。「鳥類」または「鳥」という用語は、分類学的クラス「ava」の生物のあらゆる種、亜種、または種族を指す。より具体的には、「鳥」は、ガンカモ目(カモ、ガチョウ、ハクチョウおよびその仲間)、キジ目(ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、およびその仲間)、ならびにハト目(ハトおよびその仲間)の分類上のあらゆる動物を指す。
【0063】
一実施形態において、鳥は、感染性内因性レトロウイルス粒子を生成しない特定病原体除去(SPF)種の中から選択される。「内因性レトロウイルス粒子」は、いくつかの鳥類細胞ゲノムに存在するALV-EまたはEAVプロウイルス配列によってコードされるおよび/またはそれらから発現されるレトロウイルス粒子またはレトロウイルスを意味する。例えば、ALV-Eプロウイルス配列は、家禽(系統-0ニワトリを除く)、セキショクヤケイ、およびコウライキジのゲノムに存在することが知られている。EAVプロウイルス配列は、家禽、系統-0ニワトリ、セキショクヤケイ、アオエリヤケイ、ハイイロヤケイ、セイロンヤケイ、およびその仲間を含むすべての属のヤケイに存在することが知られている(Resnick et al., 1990を参照されたい)。したがって、好ましくは、鳥は、感染性内因性ALV-Eおよび/またはEAV粒子を生成しないカモ、ガチョウ、ハクチョウ、シチメンチョウ、ウズラ、日本ウズラ、ホロホロチョウ、クジャクを含む群から選択される。
【0064】
好ましい実施形態において、鳥はニワトリ、特にヤケイ属のニワトリである。例えば、ニワトリ系統は、ev-0家禽種(Gallus Gallus subspecies domesticus)、特に系統ELL-0、DEまたはPE11から選択される。別の好ましい実施形態において、ニワトリは、網状内皮症ウイルス(REV)および鳥類外因性白血病ウイルス(ALV-A、ALV-B、ALV-C、ALV-DまたはALV-J)の非存在についてスクリーニングされたSPF種から選択され、特にホワイトレグホン系統から、最も好ましくはバロ系統から選択される。
【0065】
別の好ましい実施形態において、鳥はカモであり、より好ましくは家畜のペキンまたはノバリケン、最も好ましくはペキンダック系統M14またはGL30である。
【0066】
さらなる一実施形態において、本発明の細胞株は、鳥類多能性胚性幹(ES)細胞に由来する。「多能性」とは、細胞が未分化であるか、または細胞がいくつかの異なる細胞型、例えば筋肉細胞、脂肪細胞、骨細胞または軟骨細胞を生じさせることができるが、完全な生物に発達することはできないことを意味する。好ましくは、鳥類多能性ES細胞は、特に非常に初期の発生段階、例えば胞胚期の鳥類胚(複数可)から得られる。より具体的には、ES細胞は、産卵期付近、例えば産卵前、産卵時、または産卵後に胚から単離される。好ましくは、ES細胞は、産卵時に胚から単離される。当業者は、適切な細胞の収集を可能にする産卵前の時間枠を定義することができる(Sellier et al., 2006;Eyal-Giladi and Kochan, 1976を参照されたい)。
【0067】
代替として、鳥類細胞株は、受精卵の胚盤胞期からの細胞等の全能性ES細胞に由来し得る。
【0068】
代替として、ES細胞株は、始原生殖細胞(PGC)から入手することができる。例えば、PGCは、Hamburger & Hamiltonの分類 (Hamburger & Hamilton, 1951)のステージ12~14のニワトリ胚の背側大動脈から採取された胚の血液から分離され得る。それ以外の場合、PGCは、鳥類の胚の機械的解剖によって胚半月体から、または生殖腺から収集され得る(例えば、Chang et al., 1992;Yasuda et al., 1992;Naito et al., 1994を参照されたい)。
【0069】
さらに、本発明の鳥類細胞株は、鳥類誘導多能性幹細胞(iPSC)に由来し得る。
【0070】
さらに代替として、本発明の鳥類細胞株は、鳥類の体性幹細胞に由来し得る。
【0071】
別の実施形態において、本発明の鳥類細胞株は、部分分化または分化細胞を得るために前駆細胞として機能することができる。確かに、これらの幹細胞は多能性であり、これは複数の分化経路、特に筋細胞、または脂肪細胞、または軟骨細胞、または他の適切な細胞への変換で誘導される可能性があることを意味する。
【0072】
さらなる一実施形態において、鳥類細胞株は連続細胞株である。「連続的」とは、細胞が培養で長期間複製し得ることを意味する。より具体的には、本発明の細胞は、少なくとも50日、少なくとも75日、少なくとも100日、少なくとも125日、少なくとも150日、少なくとも175日、少なくとも200日、少なくとも250日または無期限に培養物中で増殖することができる。
【0073】
さらなる一実施形態において、例えばカモまたはニワトリ細胞株等の鳥類細胞株は、連続的で安定である。「安定」とは、細胞が安定した集団倍加時間および制御された増殖、安定した表現型(形状、サイズ、微細構造、核細胞質比)、定義された条件で維持された場合の安定した最適密度、ならびにタンパク質(例えばテロメラーゼ等)およびマーカー(例えばSSEA1およびEMA-1等)の安定した発現につながる、安定した細胞周期持続時間を有することを意味する。好ましい実施形態において、鳥類細胞株、特にEBx細胞株は、高い核細胞質比、高いテロメラーゼ活性、および1つ以上のES細胞マーカー、例えばアルカリホスファターゼおよびSSEA-1、EMA-1およびENS1エピトープ等の発現を特徴とする安定な表現型(形状、サイズ、微細構造、核細胞質比)を有し、また安定した細胞周期を有する。これらのパラメータは、当技術分野で周知の技術によって測定され得る。例えば、安定した表現型は、電子顕微鏡により測定され得る。細胞周期は、ブロモデオキシウリジン(BrDU)およびヨウ化プロピジウム(PI)による共染色を使用したフローサイトメトリーによるDNA含有量のモニタリングに基づいて測定され得る。当業者は、他の方法を使用することもできる。
【0074】
1つのさらなる実施形態において、本発明の細胞株は遺伝的に安定しており、これはすべての細胞が継代にわたって同様の核型を維持することを意味する。
【0075】
好ましくは、本発明の鳥類ES細胞は、無期限に複製するために特異的に導入された遺伝子改変を受けない。連続細胞株は、ES細胞特異的マーカー(例えばテロメラーゼ、SSEA-1、EMA-1)の発現、in vitroで無期限に自己再生する能力、および長期的な遺伝的安定性等のES細胞の独特の生物学的特性のいくつかを維持する安定な細胞の選択を可能にする複数ステッププロセス後に自発的に得ることができる (Olivier et al., 2010;Biswas and Hutchins, 2007)。
【0076】
代替として、連続細胞表現型は、遺伝子改変および/または不死化プロセスによって得ることができる。「不死化」とは、通常は無期限に増殖しないが、突然変異(複数可)のために正常な細胞老化を回避し、分裂を続けることができる細胞を意味する。突然変異(複数可)は、例えば物理的、化学的または遺伝的改変によって意図的に誘導され得る。物理修飾は、UV、X線、またはガンマ線照射によって達成され得る。化学修飾は、化学的変異原(DNAに損傷を与える物質)によって達成され得る。遺伝子改変とは、遺伝子過剰発現のために、細胞が一過性または安定的にウイルスまたは非ウイルスベクターで、例えば、プロトオンコジーン、テロメラーゼまたは転写因子、例えばOCT4、Klf4、Myc、Nanog、LIN28等でトランスフェクトされ得ることを意味する。細胞の不死化の方法は、例えば、特許出願WO2009137146(UV光で不死化されたウズラ細胞)、WO2005042728(ウイルストランスフェクションによって不死化されたカモ細胞)、およびWO2009004016(非ウイルスベクターでトランスフェクトされたカモ細胞)に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
1つのさらなる実施形態において、本発明の鳥類細胞株は非接着細胞株であり、これは細胞が支持表面またはマトリックスなしで懸濁状態で成長できることを意味する。本発明の細胞は、培養中に自発的に非接着性になり得るか、または非接着性はフィーダー層を取りやめることによって得られる。非接着細胞は、高い細胞密度に達するまで、培養懸濁液中で長期間増殖することができる。したがって、それらはバイオリアクタでの大規模製造に完全に適している。
【0078】
さらに、本発明の細胞は、大きな核、高い核細胞質比、安定した数の染色体、上昇したテロメラーゼ活性、陽性のアルカリホスファターゼ活性、ならびにEMA1、ENS1およびSSEA-1表面エピトープ(ES特異的マーカー)の発現の少なくとも1つの特徴を有する。代替として、これらの細胞は、目的の物質、例えばタンパク質、脂質、酵素、ビタミン等を生成するように遺伝子組み換えされていてもよい。
【0079】
一実施形態において、本発明の鳥類細胞株は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2003076601、WO2005007840、またはWO2008129058に以前に記載された方法によって得られる。簡潔に説明すると、鳥類ES細胞は、産卵期付近の鳥の胚(複数可)から分離される。細胞は、細胞成長を補助するすべての因子を含み、さらに少なくとも1つ、好ましくは2つの成長因子、例えばインスリン成長因子1(IGF-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、幹細胞因子(SCF)および/または線維芽細胞増殖因子(FGF)、動物血清および支持層細胞が補充された基礎培養培地中で培養される。数回の継代後、成長因子、動物血清、およびフィーダー層細胞を減少させる、および/または完全に取りやめることによって培養培地を段階的に改変し、続いて細胞を懸濁液にさらに適応させる。この培養細胞の基礎合成培地への漸次的適応は、接着性または非接着性の鳥類細胞株(本明細書では「EBx」または「EBx細胞株(複数可)」とも呼ばれる)をもたらし、これは、長期間、特に少なくとも50日間、少なくとも250日間、好ましくは無期限に培養で増殖し得る。樹立されたEBx細胞株は、外因性成長因子、動物血清、およびフィーダー層細胞を含まない基礎培養培地で、少なくとも50日間、100日間、150日間、300日間、または600日間、懸濁状態で成長し得る。
【0080】
より具体的には、鳥類細胞株は、
a)産卵期付近の発生段階にある胚(複数可)から鳥類胚性幹細胞を単離するステップと;
b)少なくとも1つの外因性成長因子SCF、IGF-1、bFGF、IL-6、IL-6RおよびCNTF、フィーダー細胞の層、ならびに動物血清を含む基礎培養培地中で前記細胞を少なくとも20継代にわたり培養するステップと;
c)前記成長因子、フィーダー細胞および動物血清を段階的に除去することにより前記培養培地を改変し、少なくとも数継代にわたり細胞をさらに培養するステップと;
d)ステップc)の細胞を懸濁液に適応させ、
それにより、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培養培地中で少なくとも50日間、好ましくは少なくとも600日間増殖可能な樹立された細胞株を得るステップとを含むプロセスによって得ることができる。
【0081】
代替として、鳥類細胞株は、
a)産卵期付近の発生段階にある胚(複数可)から鳥類胚性幹細胞を単離するステップと;
b)前記細胞を、外因性成長因子IGF-1およびCNTF、フィーダー細胞の層、ならびに動物血清を含む基礎培養培地中で少なくとも1継代にわたり培養するステップと;
c)ステップb)の培養物から前記成長因子を段階的に取りやめ、少なくとも1継代にわたりさらに成長させるステップと;
d)ステップc)の培養物からフィーダー細胞を段階的に取りやめ、少なくとも1継代にわたり成長させるステップと;
e)ステップd)の培養物から動物血清を段階的に取りやめ、少なくとも1継代にわたり成長させるステップと;
f)ステップe)の細胞を懸濁液に適応させ、
それにより、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎培地中で長期間(少なくとも50日間)、好ましくは無期限に増殖することができる樹立された鳥類細胞株を得るステップとを含むプロセスによって得ることができる。
【0082】
「継代」とは、希釈の有無にかかわらず、ある培養容器から別の培養容器に細胞を移すことを意味する。この用語は、「二次培養」という用語と同義である。継代数は、細胞が新しい容器内で二次培養または継代された回数である。この用語は、細胞の集団が1回複製するために必要な時間である集団倍加時間(PTD)または世代と同義ではない。例えば、上記のステップa)の単離された鳥類ES細胞は、約40時間超のPDTを有する。樹立された鳥類細胞株の細胞は、約30時間未満または約20時間未満のPDTを有する。ES細胞の場合、通常3世代ごとに1回の継代が生じる。
【0083】
「段階的な除去または取りやめ」とは、時間の経過とともに広がる完全な消失(完全な取りやめ)まで、任意の成分が漸次的に減少することを意味する。本発明の細胞株を樹立するために、成長因子、血清および/またはフィーダー層を取りやめることにより、基礎培地中で無期限に成長することができる鳥類胚由来幹細胞の集団が単離される。
【0084】
「懸濁液に適応させる」とは、細胞が、支持表面、マトリックスまたは担体なしで非接着細胞として成長するように適応させることを意味する。
【0085】
本発明によれば、「基礎培養培地」は、それ自体で少なくとも細胞の生存、さらにはより良好には細胞成長を可能にする古典的な培地配合を有する培養培地を意味する。好ましくは、基礎培地は、合成または既知組成(CD)培地である。そのような培地は、無機塩(例えばCaCl、KCl、NaCl、NaHCO、NaHPO、MgSO)、アミノ酸(例えば、L-グルタミン)、ビタミン(例えば、チアミン、リボフラビン、葉酸、D-Caパントテネート)、ならびに任意選択でグルコース、スクロース、ベータ-メルカプト-エタノールおよびピルビン酸ナトリウム等の他の成分を含む。基礎培地の非限定的な例は、SAFC Excell培地、BME(基礎イーグル培地)、MEM(最小イーグル培地)、培地199、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、GMEM(グラスゴー改変イーグル培地)、DMEM-HamF12、ハム-F12(Gibco)およびHam-F10(Gibco)、IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地)、MacCoy’s 5A培地、RPMI 1640、およびGTM3である。
【0086】
いくつかの実施形態において、基礎合成培地には、IL-6、IL-6R、SCF、FGF、IGF-1およびCNTFを含む群から選択される少なくとも1つの成長因子が補充され得る。上記プロセスのステップb)で使用される各成長因子の最終濃度は、好ましくは約1ng/mLである。
【0087】
さらに、いくつかの実施形態において、基礎合成培地には、1~50mg/L、特に1~10mg/L、好ましくは約10mg/Lの濃度のインスリンが補充されてもよい。
【0088】
さらに、いくつかの実施形態において、基礎合成培地には、0~12mM、好ましくは1~5mM、より好ましくは約2.5mMの濃度のL-グルタミン(L-Gln)が補充されてもよい。
【0089】
さらに、いくつかの実施形態において、基礎合成培地には、アミノ酸、ヌクレオチド、ビタミン、サッカリド、脂肪酸、ベータ-メルカプト-エタノール、グリシン、コリン、プルロン酸F-68およびピルビン酸ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の成分(複数可)が補充されてもよい。
【0090】
さらに、基礎合成培地には、動物血清(例えばウシ胎児血清)が1%~10%の濃度で補充されてもよい。好ましくは、上記プロセスのステップb)における動物血清濃度は、約5~10%である。いくつかの実施形態において、無血清基礎培養培地が使用される。
【0091】
動物血清の代わりに、非動物由来のタンパク質加水分解物を使用して基礎培地を補完することができる。非動物起源のタンパク質加水分解物は、細菌トリプトン、酵母トリプトン、酵母または大豆加水分解物等の植物加水分解物、またはそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態において、非動物起源のタンパク質加水分解物は、大豆加水分解物である。
【0092】
本発明の鳥類細胞株の樹立のために、好ましい基礎培地は、2mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1%の非必須アミノ酸、ビタミン1%、0.16mMのベータ-メルカプト-エタノール、および任意選択で1×酵母加水分解物を補充したDMEM-HamF12培地である。
【0093】
鳥類細胞株の樹立に使用される条件の詳細は、WO2003076601、WO2005007840およびWO2008129058に見出すことができる。
【0094】
一実施形態において、上記の方法に従って樹立された細胞株は、ニワトリ細胞株である。別の実施形態において、上記の方法に従って樹立された細胞株は、カモ細胞株である。上記の方法に従って樹立された細胞株は、遺伝的に安定であり、連続的であり、外因性成長因子、フィーダー細胞および/または動物血清の非存在下で、基礎合成培地中で懸濁状態で成長することができる。それらはまた、長期培養条件で持続的な生存能力および複製能力を示し、したがって食品として使用できる高収率のバイオマスを生産するための工業規模での成長に理想的に適合する。
【0095】
別の実施形態において、本発明の鳥類細胞株は、細胞株が上記の全ての特徴を有する限り、特許出願WO2003076601、WO2005007840およびWO2008129058に既に記載されている鳥類EBx細胞株から選択されるが、これらに限定されない。したがって、本発明の細胞株は、ニワトリ細胞株、特にEB1、EB3、EB4、EB5、EB14、EB系統0およびEBv13細胞株(WO2003076601およびWO2005007840に記載)からなる群から選択される非接着性ニワトリ細胞株であってもよい。好ましくは、ニワトリ細胞株は、EB系統0として感染性内因性レトロウイルスを含まないか、またはニワトリ細胞株はEBv13としてSPF種に由来し、両方ともWO2008129058に記載されている。最も好ましくは、ニワトリ細胞株は、EBv13、特にDL43およびDL46に由来する細胞株であり、発明の概要において上述した態様A3のプロセスによって得られたものである。
【0096】
好ましい実施形態によれば、細胞株は、WO2008129058に記載されている任意のカモEBx細胞株であってもよい。特に、カモ細胞株は、EB24、EB26およびEB66細胞株からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。最も好ましくは、カモ細胞株は、EB24(WP24)またはEB26(WP26)である。本出願において使用されるEB24およびWP24、ならびにEB26およびWP26の細胞株名は交換可能である。すべてのカモEBx細胞株には共通の特徴があり、すなわち、それらはカモES細胞に由来し、安定しており、連続的であり、外因性成長因子、フィーダー細胞、および/または動物血清の非存在下で、合成培地中の高密度懸濁液で長期間にわたり、または無期限に成長し得る。重要なことに、それらはゲノムにALV-Eおよび/またはEAVプロウイルス配列を含まず、したがって内因性複製可能レトロウイルス粒子がない。
【0097】
さらなる一実施形態において、本発明の細胞株は、上記のプロセスの1つによって得られる新たな鳥類細胞株であり、前記細胞株は、安定であり、連続的であり、内因性または外因性ウイルス粒子を含まないことを特徴とし、天然もしくは合成ホルモンもしくはそれらの誘導体、フィーダー細胞および/または任意の追加の動物製品(血清を含む)等の追加の成長因子(複数可)の非存在下で基礎合成培地中で増殖可能なプロウイルスおよび/または腫瘍形成配列は、細胞密度が高くなるまで懸濁状態で増殖し、高収率のバイオマスを生成し得る。
【0098】
代替として、鳥類細胞株は、カモ細胞株AGE1.CR(登録商標).pIX(WO2005042728に記載)、DuckCelt(登録商標)-T17細胞株(WO2009004016に記載)およびウズラ細胞株QOR/2E11(WO2009137146に記載)を含むがこれらに限定されない任意の市販の細胞株から選択され得る。簡潔に説明すると、AGE1.CR(登録商標).pIXは、アデノウイルス遺伝子のトランスフェクションによって不死化された網膜または胚性線維芽細胞に由来する遺伝子改変カモ細胞株である。別の遺伝子組み換えカモ細胞株DuckCelt(登録商標)-T17は、Cairina moschataの初代胚細胞から、E1A配列のゲノムへの組み込みによって生成された。ウズラQOR/2E11細胞株は、ウズラの胚からUV照射によって接着細胞株として得られたが、懸濁状態での成長への適応も報告された(Kraus et al.,2011を参照されたい)。
【0099】
本発明の鳥類細胞株は、当技術分野で知られている標準的な方法によってさらに特徴付けられ得る。例えば、細胞株を特性評価し、その特定の特徴(複数可)を決定する可能な方法は、前記細胞株のゲノムの配列決定であり得る。完全なゲノムが分かったら、非常に類似したゲノム配列の細胞株から開始し、CRISPR-Cas9法等の遺伝子編集によって配列を変更することにより、細胞株のコピーを得ることができる(Hsu et al.,2014を参照されたい)。
【0100】
鳥類細胞バイオマスの製造プロセス
別の態様において、本出願は、上記の鳥類細胞株に由来する細胞バイオマスのスケールアップされた高収率生産のプロセスを提供する。簡潔に説明すると、このプロセスは、これらに限定されないが、マスターまたは使用バンクから細胞培養培地に細胞を適応させるステップと;様々なサイズのTフラスコまたは三角フラスコで適応細胞の二次培養物をスケールアップするステップと;適応細胞を適切なバイオリアクタに播種するステップと;適応鳥類細胞の懸濁液を合成培地中で高密度の細胞に達するまで培養するステップと;濾過、遠心分離もしくは沈殿(沈降およびデカンテーション)、または培地から細胞を分離できる任意の種類の方法により細胞バイオマスを収集するステップとを含む。
【0101】
大細胞バイオマスの生成をもたらす上記のプロセスの変形もまた、本発明に包含されることに留意すべきである。
【0102】
本出願はまた、鳥類細胞バイオマスの大規模生産のための条件も提供する。
【0103】
特に、本出願は、ヒトおよび/または動物にとって有害な物質を含まない合成培地である細胞培養培地を提供する。より具体的には、培地は、BME(基礎イーグル培地)、MEM(最小イーグル培地)、培地199、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、GMEM(グラスゴー改変イーグル培地)、DMEM-HamF12、Ham-F12、Ham-F10、IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地)、MacCoy’s 5A培地、RPMI 1640、GTM3、Ex-Cell(登録商標)EBx(商標)GRO-I、HYQ CDM4 PermAbおよびHYQ CDM4 Avian培地(Hyclone)、L-15 (Leibovitz)、OptiPRO(商標)SFMおよび293 SFM II、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない群から選択され得る。代替として、培養培地は、実験的に、例えば市販の培地の組み合わせまたは改変によって開発された新しい合成培地であってもよい。細胞の成長を改善するために、追加の成分が培地に添加されてもよい。それらは、アミノ酸(非必須または必須アミノ酸)、特にL-グルタミン、メチオニン、グルタメート、アスパルテート、アスパラギン、ヌクレオチド、インスリン、ビタミン(例えば、チアミン、リボフラビン、葉酸、D-パントテン酸Ca)、サッカリド(例えば、D-グルコース、D-スクロース、D-ガラクトースまたはそれらの混合物)、脂肪酸、ベータ-メルカプト-エタノール、グリシン、コリン、プルロン酸F-68およびピルビン酸ナトリウムを含むが、それらに限定されない。培養培地中のL-グルタミン(L-Gln)の最終濃度は、0~12mMまたは0~10mM、特に1~5、より特に2~4mMの範囲内、好ましくは約2.5mMで使用され得る。培地中のインスリンの最終濃度は、1~50mg/L、特に1~10mg/Lの範囲内、好ましくは約10mg/Lであってもよい。
【0104】
好ましくは、培養培地は、いかなる動物製品も含まず、特に動物血清を含まない。「無血清培地」(SFM)は、動物血清を必要としない、すぐに使用できる細胞培養培地を意味する。本発明のSFM培地は、アミノ酸、ビタミン、有機および無機塩、炭水化物源を含む多くの成分を含み、各成分は、in vitroでの細胞の培養を補助する量で存在する。この培地は必ずしも既知組成ではなく、例えば植物(例えば大豆)または酵母由来の様々な起源の加水分解物を含んでもよい。好ましい実施形態において、培養培地は、動物またはヒト起源の成分を含まない(「動物起源を含まない」)既知組成SFMである。
【0105】
好ましくは、細胞培養は、HYQ CDM4 Avian培地またはその組み合わせ、特に2.5~4mMの濃度で使用されるL-Glnが補充されたHYQ CDM4鳥類培地中で行われる。
【0106】
本発明の別の実施形態によれば、細胞は、支持体またはマトリックスなしで懸濁状態で増殖する。代替として、細胞は、基板に付着するか、足場に付着するか、またはマイクロキャリアビーズもしくはゲルに付着することができる。
【0107】
本発明の他の実施形態によれば、細胞培養は、バッチ、流加、灌流、または連続モードで行うことができる。
【0108】
簡潔に説明すると、流加培養は、最も広い意味で、培養中に1つ以上の栄養素がバイオリアクタに供給され、生産が終了するまで生成物がバイオリアクタ内に留まるバイオテクノロジープロセスにおける運用技術として定義される(Yamane & Shimizu, 1984)。流加戦略は、通常、バイオリアクタ内の高い細胞密度を達成するためにバイオ産業プロセスにおいて使用される。ほとんどの場合、供給溶液は、バイオリアクタの希釈、pHおよび浸透圧の上昇を回避するために高濃縮されている。栄養素の制御された添加は、培養物の成長率に直接影響し、栄養素の枯渇、オーバーフロー代謝および酸素制限を回避するのに役立つ(Jeongseok Lee et al., 1999)。
【0109】
定常流加培養は、成長制限基質の供給速度が一定である培養であり、すなわち、供給速度は培養中不変である。成長制限基質の供給速度を細胞の指数成長速度に比例して増加させると、指数関数的流加培養と呼ばれる、指数関数的な細胞成長速度を長期間維持することができる。
【0110】
灌流培養とは、バイオリアクタ内で細胞培養を維持することを意味し、細胞がリアクタ内に保持されている間に、等量の培地が同時に追加および除去される。これにより、新鮮な栄養素の安定した供給源、および細胞老廃物の持続的な除去が提供される。
【0111】
本発明の培養容器は、攪拌フラスコ、三角フラスコ、スピナーフラスコ、および攪拌パドルまたはウェーブバイオリアクタから選択することができるが、これらに限定されない。特に、培養容器は、連続攪拌槽バイオリアクタ、Wave(商標)バイオリアクタ、Bello(商標)バイオリアクタ、Mobiusバイオリアクタ、攪拌バイオリアクタ(例えばOrbshake)、灌流システムを備えたバイオリアクタから選択することができるが、これらに限定されない。スケールアップ生産の場合、好ましい培養容器はバイオリアクタである。バイオリアクタの容量は、20リットル以上、100リットル以上、1,000リットル以上、好ましくは最大10,000リットルである。好ましい実施形態によれば、培養容器は、温度、通気、pHおよび他の制御条件の制御を可能にする連続攪拌槽バイオリアクタであり、細胞、無菌酸素、培養のための様々な培地を導入するための適切な入口と、プローブの取り付け、細胞および培地の除去のための出口と、バイオリアクタ内の培養培地を攪拌するための手段とを備える。
【0112】
典型的には、細胞は、マスターまたは使用細胞バンクバイアルから、様々なサイズのTフラスコ、三角フラスコ、ローラーボトルまたはWave(商標)バイオリアクタを通してスケールアップされる。得られた細胞懸濁液は、次いでさらなる培養のためにより大きなバイオリアクタに供給される。例えば、30Lのバイオリアクタの播種に約160億個の細胞が使用される。
【0113】
本発明の好ましい実施形態では、細胞培養は、pH7.2(COまたはNaOH注入で調節)、50%のpO、40rpmの攪拌速度および37℃の温度で行われる。
【0114】
流加培養における集団倍加時間(PDT)は、10~40時間、好ましくは10~20時間、より好ましくは10~15時間、最も好ましくは約12時間(またはそれ未満)の範囲内であってもよい。
【0115】
懸濁培養中の動物細胞から得ることができる理論上の最大細胞濃度(細胞密度)は、約10~1011細胞/mLと考えられる。工業生産に使用される従来の細胞株の多くでは、細胞密度は流加培養モードで得られる2×10~4×10細胞/mLの範囲内であり、灌流モードでは最大3×10細胞/mLが得られる(Tapia et al.,2016を参照されたい)。
【0116】
本発明のプロセスで使用される鳥類細胞株は、工業的規模の生産の可能性が高く、適切な細胞株の選択が重要である。主な選択基準は、ほとんどの場合、いくつかの継代にわたって安定する能力、および可能な限り短期間で可能な限り大量のバイオマスを安全に生産し得る能力である。例えば、EB66細胞株は、灌流モードで培養すると、1.6×10細胞/mLを超える細胞密度に到達し得る(Nikolay et al.,2018を参照されたい)。典型的には、流加培養におけるEBx細胞について得られる細胞密度は、1×10~2×10細胞/mLの範囲内である。好ましい実施形態において、培養細胞密度は、約1×10細胞/mL以上、約2×10細胞/mL以上、約5×10細胞/mL以上、約10細胞/mL以上に達する。
【0117】
典型的には、細胞バイオマスは、細胞百万個あたり0.5~1.0mg以上、好ましくは細胞百万個あたり0.7~1.0mg以上、より好ましくは細胞百万個あたり約1mg以上の範囲内である。本プロセスによって達成可能なバルク細胞収率は、1011細胞/Lを超える可能性があると予想される。
【0118】
鳥類細胞懸濁液を培養する典型的なプロセスは、次のステップを含む。
1)凍結バイアルに含まれる1,000~2,000万個のCD培地適合細胞を37℃の水浴で解凍し、約30mLの予め加温したCD培地に懸濁し、150rpmの25mmオービタルスローシェーカーで攪拌しながら37℃、7.5%COの加湿雰囲気(80%超)でインキュベータに入れる。
2)回収した後、ステップ1の細胞を二次培養し、約0.3×10~0.5×10細胞/mLの濃度で播種した大型三角フラスコに3回の継代のために増幅する。各二次培養の間に、三角フラスコを37℃、7.5%COおよび150rpmで3日間インキュベートする。
3)3回継代した後、細胞を30Lのバイオリアクタ内の20LのCD培地中に約1:10の体積比で播種し;少なくとも10細胞/mLの細胞密度に達するまで、細胞を37℃、40rpm、50%Oで3日間培養する。
4)3450gで10分間の遠心分離により、または濾過により、または沈殿により細胞を採取する。
【0119】
一実施形態において、細胞沈殿は、細胞懸濁液にカルシウム塩を添加することにより行うことができる。カルシウム塩は、これらに限定されないが、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウムおよび乳酸カルシウムからなる群から選択され得る。好ましくは、塩化カルシウムが使用される。塩化カルシウムの最終濃度は、10~500mg/L、好ましくは50~300mg/Lの範囲内、より好ましくは50mg/Lである。塩化カルシウムの添加後、鳥類細胞は大きな凝集体(凝塊)を形成し、これが沈殿する。塩化カルシウムは、細胞増幅プロセスの最後にバイオリアクタに追加することができる。その結果、細胞バイオマスが容器の底に沈降し、上澄みをデカンテーションで取り除くことができる。採取ポートが容器の最下部に位置する場合、低減された体積の濃縮細胞「ペースト」を収集し、バイオプロセスの次のステップで使用することができる。
【0120】
バイオリアクタでの鳥類EBx細胞株、特にEB66細胞株の灌流培養の例は、Nikolay at el.,2018に記載されている。簡潔に説明すると、1Lのバイオリアクタが、スケーラブルな中空糸ベースの接線流濾過(TFF)および交互接線流濾過(ATF)灌流システムで操作された。
【0121】
灌流バイオリアクタでの培養は、CSPR=Dperf/X(式中、Dperfは灌流培地の容量であり、Xは生細胞濃度である)として計算される固定細胞特異的灌流速度(CSPR)で行われた。CSPRはバイオプロセス間で大きく異なる可能性があり、典型的には、供給プロファイルに応じて50~500pL/細胞/日の範囲内で選択される(Konstantinov et al.,2006)。既知組成CDM4Avian培地でEB66細胞を34pL/細胞/日のCSPRで培養すると、細胞濃度は1.6×10細胞/mLとなった。灌流の別の例では、約60pL/細胞/日のCSPRで手動モードで実行されたAGE1.CR.pIX(登録商標)細胞株の培養で、5.0×10細胞/mLの細胞濃度が達成された(Vazquez-Ramirez et al.,2018)。
【0122】
本発明の好ましい実施形態において、鳥類細胞を培養し、細菌、真菌、ウイルス、プリオン、原生動物、または上記の任意の組み合わせ等の危険微生物を実質的に含まない最終食品を調製するために、無菌技術を使用する必要がある。好ましくは、製造は、有害な汚染を回避する適正製造基準(GMP)条件下で行われる。
【0123】
別の態様において、本出願は、in vitroで培養された鳥類細胞株に由来する細胞バイオマスを提供する。細胞バイオマスは、in vitroで培養された鳥類細胞を含むか、または本質的にそれらからなる。細胞バイオマスは、本明細書で提供されるプロセスまたは任意の改変されたプロセスによって得ることができる。鳥類細胞培養に適した製造プロセスを検討することができる。工業規模で行われる高収率細胞培養が好ましい。
【0124】
さらに別の態様において、本発明は、ヒトまたは動物が消費するための合成食品の製造のための、上記の鳥類細胞株および細胞バイオマスの使用に関する。
【0125】
さらに別の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の消費に適した、in vitroで成長させた鳥類細胞に由来する合成食品を提供する。
【0126】
一実施形態において、本発明の合成食品は、上記のプロセスのいずれかに従って製造された鳥類細胞バイオマスを含むか、または本質的にそれらからなる。1つの特定の実施形態において、合成食品は、ニワトリ細胞株、好ましくは、これらに限定されないが、上記のEB1、EB3、EB4、EB5、EB14、EB系統0、およびEBv13、DL43およびDL46細胞株からなる群から選択されるニワトリ細胞株に由来する細胞バイオマスを含むか、または本質的にそれらからなる。別の特定の実施形態において、細胞株は、これらに限定されないが、カモEB24、EB26およびEB66細胞株からなる群から選択され得る。代替として、合成食品は、本明細書に記載のプロセスのいずれかによって得られた鳥類細胞株に由来する細胞バイオマスを含むか、または本質的にそれからなってもよい。
【0127】
好ましくは、本発明の合成食品は、ニワトリ細胞株DL43またはカモ細胞株EB26(WP26)から得られる細胞バイオマスを含むか、または本質的にそれらからなる。
【0128】
一実施形態において、本発明の合成食品は、細胞、タンパク質、ポリペプチド、酵素、脂質、体脂肪、動物組織、血清等の動物起源に由来する追加の成分(複数可)を含まない。
【0129】
本発明の別の実施形態において、本発明の合成食品は、筋肉、脂肪もしくは軟骨細胞、またはそれらの組み合わせ等の任意の動物組織に由来する他の細胞をさらに含んでもよい。これらの細胞は、哺乳類(ウシ、スイギュウ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、シカ等)、鳥(ニワトリ、カモ、ダチョウ、シチメンチョウ、キジ等)、魚(メカジキ、サケ、マグロ、シーバス、マス、ナマズ等)、無脊椎動物(ロブスター、カニ、エビ、二枚貝、カキ、ムール貝、ウニ等)、爬虫類(ヘビ、アリゲーター、カメ等)、両生類(例えば変カエルの足等)等の任意の動物に由来する初代体細胞であってもよい。代替として、これらの細胞は、分化細胞に誘導された多能性胚性幹細胞に由来する細胞であってもよい。例えば、筋細胞は、初代筋細胞であってもよく、または筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、および軟骨細胞を生じる多能性胚間葉幹細胞に由来し得る。鳥類細胞の例は、ATTC細胞株DF1(CRL-12203ニワトリ)、QM7(ウズラ)、DE(カモ)、およびWO2018011805に記載のニワトリ胚線維芽細胞を含むが、これらに限定されない。これらの細胞は、鳥類細胞と一緒にin vitroで成長させるか、または鳥類細胞の採取後に追加することができる。これらの細胞の添加は、合成肉の味、香り、および/または栄養価を改善し得る。例えば、油が多い肉ほどおいしく、製品の味の特性を改善し得る。肉細胞の脂肪細胞に対する比率は、最適な風味および健康効果を備えた食品を製造するために、in vitroで調整され得る。筋細胞および軟骨細胞は、製品の食感(一貫性)を改善し得る。筋細胞および軟骨細胞を有する合成食品の例は、鶏胸肉または豚バラ肉を含む。
【0130】
さらに別の実施形態において、動物全体の肉製品に通常不足しているビタミン等の他の栄養素を添加して、合成食品の栄養価を高めることができる。これは、培養培地への栄養分の直接添加、または遺伝子工学技術により達成され得る。例えば、ビタミンD、A、または様々なビタミンB複合体等の特定のビタミンの生合成に関与する酵素の遺伝子を培養鳥類細胞にトランスフェクトして、特定のビタミンを生成することができる。他の栄養素には、必須微量元素、ミネラル、コビタミン、必須脂肪酸、必須アミノ酸、酵素、抗酸化物質等が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
さらに別の実施形態において、本発明のプロセスはまた、香味料および/または香味芳香物質を添加することを含んでもよい。香味料は、混合ステップ中に添加されてもよく、または混合ステップ前に成分のいずれか(例えば培養細胞)と混合されてもよい。味覚および感覚を生み出す香味料の例には、人工甘味料、グルタミン酸塩、グリシン塩、グアニル酸塩、イノシン酸塩、リボヌクレオチド塩、ならびに酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびポリフェノールを含む有機酸が含まれる。一般的な香味芳香物質のいくつかの代表的な例には、酢酸イソアミル(バナナ)、桂皮アルデヒド(シナモン)、プロピオン酸エチル(フルーティー)、リモネン(オレンジ)、エチル-(E,Z)-2,4-デカジエノエート(梨)、アリルヘキサノエート(パイナップル)、エチルマルトール(砂糖、綿菓子)、サリチル酸メチル(ウィンターグリーン)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0132】
さらに、本発明は、食品を視覚的により魅力的にするために培養細胞に添加することができる色増強剤(着色剤)を提供する。さらに、着色剤は、生理学的抗酸化剤として機能し、したがって別の必須栄養素を提供し得る。例えば、トマト、クロフサスグリ、ブドウ、ブルーベリー、クランベリー等からのフラボノイド、カロテノイド、アントシアニン等の着色された抗酸化剤が使用され得る。好ましくは、着色剤は、天然産物または精製もしくは部分精製産物である。例えば、精製カテキン、レスベラトロール、アントシアニン、ベータカロチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン等が着色剤として使用され得る。
【0133】
さらに別の実施形態において、本発明の食品を使用して、味、食感、および栄養成分に寄与することができるあらゆる種類の食品を生成することができる。本発明の合成食品は、漬ける、煮る、調理する、燻す、揚げる、焼く、乾燥させる、または冷凍することができ、典型的にはスナックとして、または食事の一部として食べることができる。本発明のプロセスに従って得られる最終食品(食用製品)は、スープ、ピューレ、ペースト、パイ、ペレット、クランブル、ゲル、粉末、顆粒、タブレット、チップ、カプセル、スプレッド、ソーセージ等を含むがこれらに限定されない消費形態のいずれかで構成され得る。最終食品は、3Dプリンタで作製され得る。3D印刷食品はNovameat、Jet-Eat、Meatech等の企業によって開発されています。特に、Novameatは、牛肉または鶏肉の食感を有する3D印刷合成肉を開発した(https://www.novameat.com/を参照されたい)。3D食品印刷の詳細については、(例えばSun J.et al.,2015を参照されたい)。
【0134】
最終食品はそれぞれ、必須成分として培養鳥類細胞の一部を含むが、他の非毒性物質、例えば植物由来物質(培養植物細胞を含む)も含み得る。
【0135】
最後に、上記の実施形態が参照されるが、上記の実施形態は、本発明の技術的解決策を例示するためにのみ使用され、それらに限定されないことに留意されたい。特定の実践様式は、修正または同等に置き換えることができるが、これらの修正または変更は、本発明の特許請求の範囲の保護範囲から除外されない。
【実施例
【0136】
実施例1.細胞バイオマスの製造
材料および方法
細胞バンク
2.5mMのL-グルタミン(L-Gln)が補充されたEx-Cell(登録商標)EBx(商標)GRO-I無血清培地(SAFC、ref.14530C)中で成長するように適合された細胞から調製された鳥類幹細胞バンク(Valneva、カモ細胞株、GMP Working Cell Bank)を出発物質として使用した。
【0137】
細胞株を最初にカモの胚盤葉から単離し、足場またはマトリックスを含まない無血清培地中の懸濁液中で成長するように適合させた。細胞は、37℃の担体を含まない懸濁液中で、小規模(三角フラスコ内)またはより大規模なバイオリアクタ内で成長する特性によって特徴付けられる。一定の攪拌下で維持すると、細胞は凝塊として増殖する。
【0138】
CD成長培地の調製
このプロセスで使用された培地は、2.5または4mMのL-Gln(LONZA、ref. BE17-605E)が補充された既知組成培地HYQ CDM4 Avian培地(Hyclone、ref. SH31036.02)であった。
【0139】
凍結ミックス
50gのショ糖粉末(Sigma、S1888)を100mLの滅菌水(B Braun)に溶解することにより、1.46Mショ糖溶液を調製した。次いで、溶液を0.22μmフィルタ(Millipore)を通して無菌濾過した。凍結ミックスは、20%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma、D2438)、および2.5mMのL-Glnが補充された新鮮なCD培地で希釈された0.2Mスクロースを含む。この凍結ミックスは即時に調製され、使用前に4℃に置かれた。
【0140】
細胞バンクの解凍および凍結前のCD培地の適応
細胞の解凍は、クライオバイアルを37℃の水浴に入れて可能な限り迅速に行った。次いで、2.5mMのL-Glnが補充された30mLの予め加温されたCD成長培地で細胞を希釈した。トリパン排除法(VI-Cell XR、Beckman Coulter)に基づく細胞計数器を用い、細胞アリコートで細胞数および生存率を評価した。凍結培地を除去するために、1200rpmで10分間の細胞遠心分離を適用した。遠心分離後、細胞ペレットを完全成長培地に再懸濁して、0.5~1.5×10細胞/mLの間に含まれる最終播種濃度を得、細胞懸濁液を125mL三角フラスコに移した。125rpmでの一定攪拌下(IKA攪拌機、ref.KS260)、37℃および7.5%CO、湿度約90%(Thermo Incubator、Model 311、Hepa Class 100)で細胞を培養した。
【0141】
再活性化後、細胞培養を顕微鏡観察によって毎日確認した。この解凍後の期間中に、細胞の回復を評価するために定期的に細胞計数を行った。密度が過剰になるのを避けるために、2日目および3日目に新鮮なCD成長培地を添加した。4日目に、250mLの三角フラスコ内で、60mLのCD成長培地下で0.3×10細胞/mLで細胞を播種した。攪拌速度を135rpmに上げた。
【0142】
増幅のために、供給者の推奨に従って、500mLおよび1Lの三角フラスコ内で0.3×10細胞/mLで細胞を播種した。
【0143】
マスター細胞バンク(MCB)の凍結
CD培地に適合させた細胞を、1200rpmで10分間遠心分離することにより、500mL管内での指数増殖期に収穫した。遠心分離後、細胞ペレットを使用済み培地で40×10細胞/mLに希釈し、等量の冷たい凍結ミックスを1滴ずつ添加し、最終的に20×10細胞/mLの細胞懸濁液を得た。最後に、凍結保存培地は、DMSO(10%)(Sigma、ref D2438-50mL)、0.1Mのスクロース(6.5%)(Sigma、ref S188)、培養物から回収された50%の使用済みCD培地、および2.5mMのL-Glnが補充された33.5%の新鮮なCD培地で構成された。クライオバイアル(Corning、ref 430488)に1mLの細胞凍結混合物を充填し、-80℃で凍結容器(Nalgene、Mr. Frosty(商標))に入れた後、長期保存のために液体窒素(-196℃)内に移した。
【0144】
CD培地適合細胞株の解凍および培養
CD培地中での成長に適合された細胞を含むクライオバイアルを、15mLの新鮮なCD培地下で125mLの三角フラスコ内で解凍し、150rpmの攪拌速度、7.5%COおよび80%湿度のシェーカーインキュベータ(Kuhner、ref ISF1-XC)内に入れた。1日目および2日目にそれぞれ15mLおよび20mLの培地を添加した後、さらなる増幅ステップのために3日目に細胞を二次培養した。
【0145】
小規模な培養
解凍後、一定攪拌(150rpm(250、500、もしくは1Lの三角フラスコ)または80rpm(3Lの三角フラスコ)、25mmオービタル)下、37℃、80%湿度および7.5%COのシェーカーインキュベータ(Kuhner、ref ISF1-XC)内に維持された250mL~3Lの三角フラスコ(Corning、Ref 431144、431147および431253)内で細胞を成長させた。細胞を0.3×10細胞/mLで播種し、3日ごとに二次培養した。播種は、250mL、1Lまたは3Lの三角フラスコ内で、それぞれ60mL、400mL、または1Lで行った。
【0146】
成長速度論
2.5mMのL-Glnが補充された100mLのCD培地下で、細胞を250mLの三角フラスコ内で0.1~0.5×10細胞/mLで播種した。移した後、毎日の細胞計数を行って、播種後の細胞濃度および生存率を確認した。
【0147】
30Lの攪拌槽バイオリアクタでの大量生産に使用されるパラメータ
3Lの三角フラスコ内で増幅した後、30Lのステンレススチールバイオリアクタ(Applikon、Ref ADI 1075)内の予め加温された培地20Lに細胞を0.8×10細胞/mLで播種した。インキュベーションモニタリングは、以下に記載されるように定義された:COまたはNaOH注入により調整されたpH7.2、O設定点50%、攪拌速度40rpmおよび温度37℃。炭素源(グルコース、グルタメートおよびグルタミン)の消費および代謝副産物(ラクテートおよびアンモニウム)の放出を、細胞培養に沿って毎日監視した(Bioprofile Flexアナライザ、Nova Biomedical)。
【0148】
細胞の採取およびペレットの調製
播種の3日後、細胞をバイオリアクタから1Lのボトルに収集し、3450gで10分間遠心分離した(Beckman Coulter、Ref AVANTI JXN-26/ロータJL-8.1000)。使用済み培地を除去した後、細胞を1×PBS(LONZA、Ref BE17-516F)に再懸濁してすすぎ、500mL管に移し、3450g(4000rpm)で10分間の第2の遠心分離を行った(ThermoFisher Scientific、Ref Sorvall ST40)。緩衝液を除去した後、乾燥ペレットを含む500mL管を秤量し(天秤:Denver、Ref SI 4002)、-80℃(Sanyo、Ref MDF-U73V)に置いて保存した。細胞ペレットの重量は、500mL管の重量を合計重量(500mL管+細胞ペレット)から差し引くことによって計算された。
【0149】
結果
既知組成培地への鳥類幹細胞の適応
プロセスの第1のステップは、既知組成培地HYQ CDM4 Avian培地での成長に適合された鳥類幹細胞のバンクの生成であった。
【0150】
このステップの目的は、細胞の唯一の源を準備することであった:
- いくつかの適応を回避するため
- マスター細胞バンクの可能な検証/リリースを可能にするため
- 製造のいくつかのバッチに同じ出発原料を使用するため
- 既知組成バイオ製品に割り当てられたタイムラインを短縮するため
- バッチ間のばらつきを最小限に抑えるため
【0151】
細胞適応とバンク生成
各製造ラウンドに対し幹細胞のCD培地への適応を行うことを回避するために、以下で説明され図1に示されるように1回の適応を行い、165バイアルの使用バンクを調製した。
【0152】
Ex-cell GRO-I SFMで最初に成長させた鳥類幹細胞の1つの凍結バイアルを、2.5mMのL-Glnが補充された30mLのCDM4 Avian CD培地中で直接解凍した。遠心分離後、7.2×10細胞を回収し、125mLの三角フラスコ内で、0.6×10細胞/mLの濃度で12mL培地下で播種した。細胞を、125rpmのシェーカー上のインキュベータに入れた。解凍後2日目および3日目に、それぞれ8mLおよび15mLのCD培地を添加した。4日目に、細胞計数のためにアリコートを収集し、遠心分離によって細胞を採取した。細胞ペレットを新鮮なCD培地に再懸濁し;次いで、1つの250mLの三角フラスコに60mL下で0.3×10細胞/mLの濃度で播種し、135+/-15rpmで攪拌しながらインキュベートした。次の2継代は以下のように行った:7日目または10日目に細胞を採取し、3つの新しい500mLの三角フラスコまたは3Lの三角フラスコに移し、それぞれ200mLまたは1LのCD培地下で0.3×10細胞/mLに希釈した。13日目に、約110億個の細胞を3Lの三角フラスコから収集した。最終的な細胞濃度は9.1×106細胞/mLであり、生存率は91%であった。
【0153】
HYQ CDM4 Avian培地への直接適応は非常に効率的であった。CD培地で解凍してから10日後、細胞は5×10細胞/mLの予想密度および良好な生存率(80%以上)で回復した(図2Aを参照されたい)。その結果、速やかに達成された集団倍加時間(PDT)は、15~16時間の予想範囲内であった(図2Bを参照されたい)。形態に関しては、細胞は、ピペッティングによって容易に再懸濁され得る数十個の細胞の凝塊として懸濁状態で成長する性質を維持していた。13日目に、細胞濃度は9.1×10細胞/mLに達し、細胞生存率は91%に達した。これにより、165バイアル(バンク5777)の細胞バンクが形成された。したがって、高品質のマスター細胞バンクを調製するためにHYQ CDM4 Avian CD培地中で鳥類幹細胞を適応させるには、4回の継代および13日間だけで十分であった。
【0154】
細胞バンクのバリデーション
CD適応後の鳥類幹細胞バンクの品質を確保するために、細胞バンクを解凍し、細胞の堅牢性、生存率、ならびに継代にわたる細胞密度およびPDTの安定性を制御した。
【0155】
細胞の堅牢性および安定性を確認するために、バンク5777を解凍し、さらなる4回の継代培養中に維持した。図3に示すように、解凍直後のバンクの生存率は91%と非常に良好であった。バイアルに充填された細胞の総量が完全に回収されたため、凍結ステップに関連した細胞の損失はなかった。3日間のインキュベーション後、細胞密度は約5×10細胞/mLに達し、細胞増殖が速いことを示していた。次の継代では、6×10細胞/mLより高い濃度で細胞バンクの良好な品質が確認された。
【0156】
成長速度論
適応させた鳥類幹細胞によって達成可能な最適な密度を決定するために、250mLの三角フラスコに異なる濃度で播種し、インキュベートし、細胞密度および生存率を毎日確認した。図4Aは、培養3日後および4日後に得られた細胞密度を示し、図4Bは、対応する細胞生存率を示す。データは、0.4×10細胞/mLまでの播種密度の増加が、4日間の培養後に最適な細胞濃度を改善しないことを示している。播種量が0.2×10細胞/mLを超えるすべての条件で、生存率は4日目にわずかに減少する傾向があった。生存率および細胞濃度に関して、250mLの三角フラスコにおいて良好な生存率で最適密度に到達するための適切な妥協点は、0.3~0.4×10細胞/mLの量で細胞を播種することである。
【0157】
30Lのバイオリアクタの播種のためのスケールアップ
30Lのバイオリアクタに播種するために必要な細胞バイオマスを製造するために、適応させた鳥類幹細胞バンク5777を解凍し、三角フラスコ内で行われるスケールアッププロセスに従って細胞を増幅した。
【0158】
30Lのステンレス鋼バイオリアクタを使用して、最終的な鳥類細胞バイオマスをin vitroで製造した。30Lのバイオリアクタに20Lの細胞懸濁液を0.8×10細胞/mLの濃度で播種するには、160億個の細胞が必要であった。鳥類幹細胞は高い細胞密度で成長する性質があることから、2Lの懸濁液で必要な量の細胞が得られたため、スケールアップ手順は面倒ではなかった。図5は、バイオリアクタに播種するための細胞の迅速な増幅の典型的なプロセスを示す。
【0159】
図6は、スケールアッププロセスに沿って各継代で得られた細胞密度を示す。増幅の最終ステップでは、達成された細胞濃度は10.3×10細胞/mLであり、合計206億個の細胞を採取することができた。
【0160】
30Lのバイオリアクタでのバッチ細胞成長
両方の3Lの三角フラスコフラスコから採取した細胞を、4mMのL-Glnが補充された20リットルの予め加温されたCD培地下で、0.8×10細胞/mLの濃度で30Lのバイオリアクタ内で播種した。pHおよび酸素調整の設定値は、それぞれ7.2および50%に調節され、攪拌速度は40rpmであった。プロセスはバッチ方式で行われたため、グルコースもグルタミンも調節されなかった。炭素源(グルコース、グルタメートおよびグルタミン)の消費、ならびに代謝副産物(ラクテートおよびアンモニウム)の放出は、細胞培養(Bioprofile Flexアナライザ、Nova Biomedical)に沿って毎日監視された。
【0161】
前述のパラメータを使用して、3回の実行が行われた。図7は、3日間の製造における細胞成長および生存率を示す。播種後、遅延相は観察されず、播種から1日目までの短い集団倍加時間(12時間未満)によって示されるように、細胞増殖は非常に速かった(表1を参照されたい)。3日目に、生存率の低下と相まって増殖の減速を示すPDTの増加(35時間以上)が観察された。
【0162】
【表1】
【0163】
3回の実行で得られたより高い細胞濃度の平均および対応する生存率に基づいて、2日目および3日目の間に約14×10総細胞/mLの濃度で最適な密度に到達したと結論付けられた。
【0164】
3回の実行中に行われた代謝物の研究では、グルタミン、グルタメートおよびグルコースの消費量が多いことが示された(データは示さず)。
【0165】
細胞採取
遠心分離
バイオリアクタ内で3日間細胞を成長させた後、鳥類細胞を高速遠心分離(3450g)により1Lのボトルに採取し(図8を参照されたい)、PBSですすぎ、500mLの管に移し、遠心分離の第2の実行によりペレット化した(図9を参照されたい)。
【0166】
遠心分離の最後の実行後にペレットを秤量した。実行1、実行2および実行3からそれぞれ304g、282gおよび281gが得られ、バイオマス製造に関するプロセスの再現性が実証された。最後に、ペレットを-80℃で凍結して保存した。
【0167】
沈降およびデカンテーション
遠心分離による細胞バイオマスの採取は面倒なプロセスであり、冷却システムがなければ、数回の遠心分離実行後に温度の上昇が観察され得、生体物質が変性する危険性がある。そのため、懸濁液の体積を減らすために遠心分離(または濾過)前のデカンテーションのステップが考慮された。
【0168】
EBx細胞は小さな凝集体として成長するため、細胞の沈降を促進するために細胞の凝塊化を誘導する条件を調べた。培地への塩化カルシウムの添加は、細胞凝塊の形成を引き起こす。カモおよびニワトリの細胞は同じ範囲のカルシウム濃度に対して感受性がないため、様々な条件を試験した。対数期の終わりのニワトリまたはカモの細胞懸濁液に、50、100、150、200または300mg/Lの塩化カルシウムを補充し、37℃で2~6時間攪拌しながらインキュベートした。EBx細胞株では、2時間のインキュベーション後にすでに凝集が観察された。最大の凝塊は、最高のカルシウム濃度で生成された。凝塊のサイズは、カルシウム濃度とともに漸次的に増加することが分かった。カモの細胞では、50mg/mLの塩化カルシウムの存在下で2時間インキュベートした後、ほぼすべての細胞が凝集するため、細胞の凝塊化はより顕著である。
【0169】
塩化カルシウムとともに6時間インキュベートし、20分間沈下させた後、管の底に沈降した細胞集団のパーセンテージをより正確に評価するために、上清中の残留細胞の細胞数を数えた。得られたデータを、表2および表3にまとめる。ニワトリ細胞懸濁液の42.8%は、カルシウムを添加しなくても20分で沈降することが観察された。6時間の処理により、この沈降のパーセンテージが改善され、塩化カルシウムの最高試験投入量(300mg/L)で75.5%の最大値に達した。カモの細胞では、カルシウムなしで20分後に明確な沈降は観察されなかったが、細胞バイオマスの95%の沈殿には、50mg/Lの塩化カルシウムの添加で十分であった。
【0170】
同様に、細胞沈降のステップは、細胞増幅プロセスの最後にバイオリアクタに適用できる。その結果、細胞バイオマスが容器の底に沈殿する。採取ポートが容器の最下部に位置する場合、低減された体積の濃縮細胞「ペースト」を収集し、バイオプロセスの次のステップで使用することができる。
【表2】

【表3】
【0171】
酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウムおよび乳酸カルシウム等の他のカルシウム塩が代替として考慮され得る。
【0172】
生成収率
実行1、実行2および実行3は、それぞれ304g、282gおよび281gの鳥類幹細胞を生成した。したがって、バイオリアクタから採取された細胞量(表2を参照されたい)に基づき、バイオマス生産性(総重量を採取された総細胞で割った値)は、100万細胞あたり1.18+/-0.07mgでした。20Lのバイオリアクタを実行するには385.6gの培地粉末が必要であったため、生成収率は培地粉末gあたり約0.75gのバイオマスであった。
【表4】
【0173】
したがって、三角フラスコ内での速度論と代謝産物の消費中に得られたデータに基づき、生成物収率の改善は以下により達成され得る。
- 最初の細胞播種を変更して、細胞増殖を3日目以降に延長する;
- 枯渇を避けるためにCD培地を補充する;
- 流加または灌流プロセスを適用する。
【0174】
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図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】