(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】貝類を包装する方法
(51)【国際特許分類】
A01K 63/02 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A01K63/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529698
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 AU2019051282
(87)【国際公開番号】W WO2020102856
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521225177
【氏名又は名称】サザン クロス マリン カルチャー アールアンドディー プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SOUTHERN CROSS MARINE CULTURE R&D PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】パウリ,ティモシー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マックヒュー,シェーン ジー
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー-ワグナー,ギデオン ジェイ
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA22
2B104BA17
2B104EB01
2B104FA27
(57)【要約】
生きている貝類を包装する方法であって、生きている貝類を、シール可能な容器内に入れるステップと、容器内に気相ヘッドスペースが存在できる量で酸素富化水性液体媒体を容器に送入するステップと、容器に、酸素を含むガスを送入するステップであって、容器ヘッドスペースがガスで満たされる量でガスを送入するステップと、容器をシールすることで容器の内容物を密閉環境に保持するステップとを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている貝類を包装する方法であって、
生きている貝類を、シール可能な容器内に入れるステップと、
前記容器内に気相ヘッドスペースが存在できる量で酸素富化水性液体媒体を前記容器に送入するステップと、
前記容器に、酸素を含むガスを送入するステップであって、容器ヘッドスペースが前記ガスで満たされる量で前記ガスを送入するステップと、
前記容器をシールすることで前記容器の内容物を密閉環境に保持するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記水性液体媒体が、前記水性液体媒体中でのアンモニアの蓄積を実質的に回避するための薬剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ガスが、酸素と1つ以上の他の気体成分との混合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ガスが、少なくとも約80%の酸素と20%の1つ以上の他の気体成分との混合物である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記水性液体媒体が、酸素ガスで過飽和されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記水性液体媒体の温度が、前記貝類を生きている状態で維持することを促す温度に維持される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記水性液体媒体が、濾過および/または滅菌に供された海水である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
貝類を生きている状態で輸送するための包装された製品であって、
生きている貝類が含まれるシールされた容器と、
酸素富化水性液体と、
酸素を含むガスで満たされた容器ヘッドスペースと
を含む、包装された製品。
【請求項10】
前記水性液体中でのアンモニアの蓄積を実質的に回避する薬剤をさらに含む、請求項9記載の包装された製品。
【請求項11】
前記薬剤がホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムである、請求項9または10記載の包装された製品。
【請求項12】
前記ガスが、酸素と1つ以上の他の気体成分との混合物である、請求項9から11までのいずれか1項記載の包装された製品。
【請求項13】
前記ガスが、少なくとも約80%の酸素と20%の1つ以上の他の気体成分との混合物である、請求項12記載の包装された製品。
【請求項14】
前記水性液体が、酸素ガスで過飽和されている、請求項9から13までのいずれか1項記載の包装された製品。
【請求項15】
前記水性液体の温度が、前記貝類を生きている状態で維持することを促す温度に維持される、請求項9から14までのいずれか1項記載の包装された製品。
【請求項16】
前記水性液体が、濾過および/または滅菌された海水である、請求項9から15までのいずれか1項記載の包装された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送して消費の準備が整うまで貯蔵すべきカキ、ムール貝、二枚貝、ピピ貝、ザルガイ、アワビ、ロブスターまたは他の任意の貝類種のうちのいずれか1つ以上を含むものの、これらに限定されることはない貝類を包装するための、または稚貝/種を生きている状態で輸送するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貝類は、軟体動物であり、カキ、ムール貝、二枚貝、ピピ貝およびホタテ貝を含むものの、これらに限定されることはない。
【0003】
生きている(閉じている)貝は、従来、乾燥した涼しい環境で輸送および貯蔵される。例えば、シドニーロックオイスターは、典型的には10~21℃で貯蔵され、パシフィックオイスターは、5~10℃で貯蔵される。ムール貝およびピピ貝のような他の貝類種も5~10℃で貯蔵および輸送される。
【0004】
カキのような生きている貝類は一度水揚げされると、貯蔵寿命が限られる(すなわち、パシフィックオイスターでは約7日であり、幾つかの在来種ではそれより短い)。この貯蔵寿命期間の間、製品の品質および鮮度は絶えず低下し、貯蔵寿命が限られていると、製品の損失に関連する在庫費用が増加すること(一部の市場では50%にもなると推定される)、および限られた貯蔵寿命の結果として低品質の製品が最終的に顧客に提供されることを含む多くの問題の一因となる。この点で、養殖場から消費者までの輸送時間が長い。例えば、オーストラリアでは、国内市場は、主に道路貨物で、ときに海上貨物で供給されており、このことは、水揚げから顧客への配達までの期間が貝類の貯蔵寿命の重要な要素をなすことを意味する。航空貨物は、輸送時間を短縮するものの、コストを大幅に増やし、包装ならびに食品および安全性のコンプライアンス要件に関する複雑さを増加させる。製品の貯蔵寿命も、拡張されたより複雑なサプライチェーンが必要とされていることを考慮すると、輸出市場にアクセスする際の重大な制約となる。
【0005】
冷凍は、貯蔵寿命を増加させる主な方法であるが、冷凍製品は、一般に、生の製品と比較して劣ると顧客によって考えられているため、より低い値が付く傾向にある。したがって、貝類は、一般に、ピークの販売時期に至るまでの間に、冷凍製品として輸送、販売および購入されるだけである。
【0006】
生きている貝が冷凍製品と比較してより魅力的であるという一般の認識を考慮して、ほとんどの商業的な貝類事業では、乾燥した涼しい環境で水を使用せずに生きている状態で貝類が輸送および販売されている。そのためには、生きている貝類を短期間で輸送および販売して、販売/消費の時点で製品が生存可能であることを保証する必要があるが、これによって、経済的および物流的な問題が課される。
【0007】
生きている貝を短期間で輸送および販売することに関連する問題を解決する試みにおいて、幾つかの商業的な貝類事業では、生きている貝類が水槽中で輸送される。しかしながら、軟体動物を輸送するための水槽の使用は、一般に、軟体動物の安全な消費を保証するために特別な予防措置を講じる必要がある高コストかつ複雑なプロセスであると考えられている。
【0008】
貝類はまた、二酸化炭素と窒素とを含む混合ガス雰囲気中で、成形トレイ上に(カップ側を下にして)位置した処理済み(すなわち、半殻が開いた)状態で輸送されることもある。混合ガス雰囲気は、魚介類の腐敗につながる微生物の成長速度を低下させるが、それにもかかわらず、開いた貝は、この状態で貯蔵および輸送された場合、典型的には約7日間の低下した貯蔵寿命を有する。
【0009】
本発明は、貝類を包装、輸送および貯蔵する従来の方法に関連する上記の欠点のうちの少なくとも幾つかに対処することを意図している。
【0010】
本明細書における従来技術への言及は、従来技術が本明細書の特許請求の範囲の優先日における共通の一般知識の一部をなすことを容認または示唆するものとしては解釈されず、またそのように解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、本発明は、生きている貝類を包装する方法であって、生きている貝類を、シール可能な容器内に入れるステップと、容器内に気相ヘッドスペースが存在できる量で酸素富化水性液体媒体を容器に送入するステップと、容器に、酸素を含むガスを送入するステップであって、容器ヘッドスペースがガスで満たされる量でガスを送入するステップと、容器をシールすることで容器の内容物を密閉環境に保持するステップとを含む方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、水性液体媒体は、カキの消費前に容器が開かれるまで液体媒体中で高レベルの酸素が維持されることを保証する量の酸素ガスで飽和されている。一実施形態では、水性液体媒体は、酸素ガスで過飽和されている。
【0013】
一実施形態では、この方法は、液体媒体に薬剤を加えて、液体媒体中で貝類によって排出されるアンモニアの蓄積を実質的に回避するステップをさらに含み得る。液体媒体に加えられ得るそのような適切な薬剤の例は、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムを含む配合物を含むものの、これらに限定されることはない。この点で、アクアピュア、大型藻類(アオサ)種およびゼオライトを含むものの、これらに限定されることはない配合物が、アンモニアの蓄積を回避するのに、または少なくとも低減するのに有用であり得る。この点で、アンモニアは、カキ製品の寿命、品質および美味しさを低下させ得る、貝類の代謝の不所望な副産物であると理解されるだろう。
【0014】
一実施形態では、ガスは、酸素と、窒素、アルゴンおよびヘリウムを含むものの、これらに限定されることはない1つ以上の他の気体成分との混合物であり得る。一実施形態では、ガスは、少なくとも約80%の酸素と20%の1つ以上の他の気体成分との混合物であり得る。
【0015】
一実施形態では、製品の貯蔵寿命を延ばす役割を果たし得る1つ以上の化学化合物が、シール前に液体ベースの媒体および/または容器に加えられ得る。そのような化合物は、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよび/または塩化ナトリウムのような塩を含み得るものの、これらに限定されることはない。
【0016】
一実施形態では、液体の温度は、貝類を生きている状態で維持することおよび代謝率を低下させることを促す温度に維持される。異なる貝類種であれば、生きている状態かつ最適な品質および鮮度で維持されるには、異なる温度が必要であると理解されるだろう。容器は、一度シールされると、箱詰めおよび輸送の前に、冷蔵室内で約2℃~8℃で貯蔵され得る。一実施形態では、液体温度は、容器に送入される前に、所望の設定点まで低下され得る。
【0017】
一実施形態では、液体は、濾過および滅菌された海水であり得る。この実施形態では、海水は、例えば5μmのフィルタを通して収集および濾過されて、微生物、破片および他の固体粒子が除去され得る。海水はまた、UV光処理および/またはオゾン処理を使用する滅菌を含む更なる処理に供されて、微生物/有機物の負荷が低減され得る。
【0018】
別の態様では、本発明は、貝類を生きている状態で輸送するための包装された製品であって、生きている貝類が含まれるシールされた容器と、水性液体と、酸素を含むガスで満たされた容器ヘッドスペースとを含み、水性液体がガスで過飽和されている、製品を提供する。
【0019】
一実施形態では、容器は、漏れのリスクを低減し、かつ容器の壁を通したガスの拡散を最小限に抑えるように、機械的耐久性の点で選択され得る。一実施形態では、容器は、多層膜/バリアフィルムから製造されたパウチまたはトレイである。
【0020】
一実施形態では、貝類、例えばカキは、容器内に入れられる前に前処理され得る。前処理では、微生物の負荷および老廃物を低減して、輸送および貯蔵中の貝類の貯蔵寿命をさらに延ばし、かつ製品の品質を維持することが意図されている。
【0021】
典型的な前処理は、養殖場の高エネルギー領域に貝類のストックを保持することで風/海水の波の効果によって貝類を洗浄することによる機械的洗浄を含み得るものの、これに限定されることはない。他の機械的処理は、転磨、ブラシ掛け、および/または高圧ウォータージェットのような他のスクラビング法を含むものの、これらに限定されることはない。
【0022】
実施形態では、貝類はまた、容器内に入れられる前に、処理(濾過および滅菌)された海水中に保持され、腸が空にされ、デトリタス、さらには包装された製品への生物付着も低減され得る。
【0023】
実施形態では、貝類はまた、容器に送入される前に化学的前処理に供され得る。一実施形態では、化学的前処理は、生きている貝類を過酸化水素溶液に浸すことを含む。他の化学的前処理は、微生物の負荷ひいては包装された製品への生物付着をさらに低減する一助となるオゾンガスおよび/またはUV光を含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、消費および/または食品調製の時点での生の製品の殻開け(殻むき)プロセスを補助する試みで、天然マグネシウム塩溶液も、包装される製品にシール前に加えられ得る。
【0025】
これより、本発明の実施形態を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】本発明の実施形態によるカキの調製(処理)および包装に関連するステップの概要を提供する。
【
図1B】本発明の実施形態によるカキの調製(処理)および包装に関連するステップの概要を提供する。
【
図1C】本発明の実施形態によるカキの調製(処理)および包装に関連するステップの概要を提供する。
【
図2】カキ養殖のための公共用水地を含む典型的な商業用カキリース地の図である。
【
図3】成熟したカキを水揚げする前に処理することに関連するステップを図示する。
【
図4】本発明の実施形態による包装方法および製品で使用するための海水の収集に関連するステップを図示する。
【
図5】成熟したカキの水揚げに関連するステップを図示する。
【
図6】水揚げ後のカキの洗浄および選別に関連するステップを図示する。
【
図7】水揚げ後のカキの消毒および浄化に関連するステップを図示する。
【
図8】本発明の実施形態による包装方法および製品で使用すべき水を調整することに関連するステップを図示する。
【
図9】本発明の実施形態によって、容器として使用される多層膜パウチ内に生きているカキを入れることを図示する。
【
図10】
図9に示される多層膜パウチに滅菌および酸素飽和水を充填するステップを示す。
【
図11】本発明の実施形態による、
図9および10に示される多層膜パウチのヘッドスペースへの純粋な酸素ガスの充填を示す。
【
図12】本発明の実施形態による、
図9~11に示される多層膜パウチをヒートシールでシールするステップを示す。
【
図13】本発明の実施形態による、包装された生きているカキの貯蔵および運送を示す。
【
図14】開封後に、カキを消費する前に、包装に塩調製物(塩化マグネシウム)を加えるステップを図示する。
【
図15】カキの包装に適用するための適切なアンモニア制御剤を特定するために実施された試験の結果を示す。
【
図16】アクアピュアアンモニア制御剤の最適な投入量レベルを決定するために実施された試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
便宜上、本発明を、カキの包装に関する特定の実施形態に関して説明するが、当業者であれば、本発明がこの特定の実施形態に限定されることはないと理解するであろう。
【0028】
カキ養殖作業は、大きく4つの段階、すなわち、(i)稚貝収集、(ii)養殖、(iii)水揚げ、ならびに(iv)包装/輸送および販売に分けることができる。
【0029】
稚貝または幼生のカキを、その後の養殖および水揚げのために最初に収集して、主に魚のような捕食者からの捕食のリスクを回避する。稚貝収集は、稚貝が定着可能な最大表面積を提供する稚貝収集器(プラスチックスラットまたはタールコーティングされたスティックのうちのいずれか)の使用を含む。稚貝収集器はまた、カキを損傷なくすぐに取り出せるように構成されている。稚貝が十分な数で稚貝収集器に定着し、捕食のリスクがないような十分なサイズに成長したら、幼生のカキを稚貝収集器から取り出し、より高い栄養負荷をもたらすカキリース地(すなわち、販売用のカキを養殖する目的でカキ養殖業者にリースされる公共水路)内の領域に移動させることでカキの成長(養殖)を促進する。
【0030】
本発明の実施形態によるカキの養殖、処理、水揚げおよび包装に関連するステップの概要は、
図1A~1Cに記載されている。これらのステップ(ブロック200~1400に図示)は、それぞれ個別に示されており、
図2~14でさらに詳細に説明されている。
【0031】
カキの養殖は、典型的には、「ラックアンドレール」システムまたは「ロングライン」システムのうちのいずれかを使用して実施される。「ラックアンドレール」システムは、カキを保持する、カキリース地に組み込まれたラックで支持されているコンテナの使用を含む。対照的に、「ロングライン」システムは、カキを含むかごをクリップ留めしたり吊るしたりできる1本のラインから構成されている。「ロングライン」システムの養殖は、
図2に示されており、このシステムでは、カキ(10)は、カキリース地(210)のベースに打ち込まれたポール(30)によって支えられているラインから吊り下げられたかご(20)内に入れられる。
【0032】
水揚げ前に、成熟したカキ(10)は、洗浄するため、強くするため、および調整するために、カキリース地の「高エネルギー」領域に移動される。
図3に示されるように、カキリース地の「高エネルギー」領域は、卓越風(310)および波(320)に供されると理解されるだろう。そのような風/波の影響下で、カキのストックは、機械的作用によって転磨および洗浄され、それによって、包装、輸送および販売の準備におけるストックへの生物付着が低減される。カキをそのような風/波および/または潮汐効果に供することはまた、(閉殻筋を強化することによって)カキを強くする一助となり、これはさらに、カキの貯蔵寿命を延ばす一助となる。
【0033】
図4は、カキを入れる容器(パウチ)内の水性液体媒体として使用するためにリース地から海水(40)をどのように収集するかを示す。カキが水揚げされるリース地からの海水(40)の収集は、この実践が外国の海水からの外来の汚染物質、残留物および/または汚染因子の導入を回避するので、さまざまな規制要件および輸出要件が満たされることを保証する一助となる。海水(40)をパウチに送入する前に、海水(40)は、ポンプ(410)を使用して、5μmの濾過システム(420)を通過し、カキの包装プロセスに備えて、1000Lの中間バルクコンテナ(50)に収集される。
【0034】
図5を参照すると、カキが水揚げの準備が整う時点まで成熟したら、成熟したカキ(10)は、かご(20)から取り出され、船(510)上に積み重ねられた貯蔵箱に入れられる。成熟したカキ(10)は、その後、加工施設に輸送するためにバルクビンコンテナ(bulk bin containers)(520)に移され、そこで、包装前に、更なる洗浄、選別およびサイズ分別/等級分別に供される。
【0035】
図6は、成熟したカキ(10)を洗浄および選別するステップを示す。これは、カキ(10)を、コンベヤーベルト(610)に沿って洗浄ユニットに通して輸送し、そこで、カキを、加圧水(620)のジェットで噴霧することおよび/または回転スクラバー(630)の使用による機械的スクラビングに供することによって達成される。高圧水洗浄および/または機械的スクラビングは、包装前にカキの殻から表面の有機物および潜在的な混獲物を除去する一助となる。
【0036】
カキはまた、死んだまたは不規則な形のカキを手作業で廃棄する選別ステップに供される。選別ステップに続いて、カキは、Shellfish Equipment Design Vision Grader(SED)を使用して等級分別(サイズ分別)ステップに供され、そこで、カキは、「ビストロ」、「ビュッフェ」、「標準」および「大」を含むカテゴリーに分けられる。
【0037】
図7を参照すると、カキ(10)は、洗浄、選別および等級分別された後に、さらに消毒および浄化ステップに供されて、微生物および有機物の負荷が低減され、それによって、貯蔵寿命の延長が補助される。浄化ステップは、中間バルクコンテナ(50)に貯蔵された前処理済みの海水から供給される海水(40)を含む水産養殖タンク(710)にカキを浸すことを含む。海水(40)は、濾過ユニット(720)を通って連続的に濾過され、貯蔵タンク(730)から圧送される過酸化水素(20~50mg/L)が投入される。過酸化水素は、外部および場合によって内部の細菌ならびにカキの表面または内部に存在する寄生虫を殺す一助となる。カキは、カキの腸内容物および死んだ生物のような実質的にすべての固形物の除去を保証し、また過酸化水素を放散させるために、水産養殖タンク(710)内に約24時間にわたって放置される。その後、カキは、多層膜を含むバリアパウチ内に入れる準備が整っており、したがって、包装プロセスの一部として、液体および気体を透過させない。
【0038】
図8を参照すると、多層膜パウチに送入される前に、中間バルクコンテナ(50)内に貯蔵された処理済みの海水(40)は、処理済みの海水(40)を1μmの濾過バッグ(810)に通して濾過することと、処理済みの海水(40)を紫外線(820)に曝して滅菌海水(60)を生成することとを含む更なる処理(調整)に供される。滅菌海水(60)は、水が約200~500%の飽和レベルにて酸素ガスで過飽和されるまで、セラミックストーンディフューザーを使用して、酸素ボンベ(80)内に貯蔵された酸素ガスが流される。
【0039】
続けて
図8を参照すると、薬剤(840)も、包装中でのアンモニアの蓄積を制御するために滅菌海水(60)に加えられる。この点で、アンモニアは、貝類によって排泄される天然の副産物であり、大量に存在すると不快な臭いを発生させると理解されるだろう。
【0040】
液体媒体中に適用するための、アンモニアの蓄積を制御するための適切な薬剤を決定する試みにおいて、本発明者等は、3つの薬剤(アクアピュア、アオサ属およびゼオライト)を、包装されたカキから排出されるアンモニアの蓄積を回避または低減するそれらの能力について試験する、一連の初期実験を実施した。
【0041】
包装のヘッドスペースに酸素を加えることなくまたは海水にアンモニア制御剤を加えることなく酸素ガスで過飽和された滅菌海水に入れられた前処理済みのカキの包装を対照として使用した。アンモニアレベル(ppm)は、APIアンモニア試験キットを使用して約4日後に測定した(一部の実験では、包装のシール後に7日間および10日間にわたって試験を継続した)。各アンモニア制御剤の原液は、1gの薬剤を10mLの蒸留水に溶解させることによって調製し、1~2mL/Lの濃度で(必要に応じて)各試験群に適用した。酸素ガスで過飽和された海水を各試験群に使用した。これらの初期実験の結果は、
図15に示される。
【0042】
初期実験の結果によって、約4日後に、対照包装(包装のヘッドスペースにアンモニア制御剤または酸素ガスを加えずに過飽和(O2)および滅菌海水に入れられたカキ)のアンモニアレベルが8ppm(約5.657×10-3mg/L)を上回ったことが確認された(注:8ppm(約5.657×10-3mg/L)がAPI試験装置で検出できるアンモニアの最大量である)。
【0043】
また、初期実験の結果によって、アオサ属調製物が、試験した他の2つの調製物の性能を上回り、試験の7日後でさえも比較的低いレベルのアンモニアが検出されること(0.5ppm(約0.354×10-3mg/L))および試験の10日後でさえも比較的低いレベルのアンモニアが検出されること(2ppm(約1.414×10-3mg/L))が確認された。しかしながら、アオサ属調製物は、アンモニアの蓄積を回避する見込みを示した一方で、関連する無脊椎動物群集を包装に導入すると、この調製物を加えた結果として、後に更なる問題が課されるであろう。したがって、アオサ属調製物は、更なる検討からは除外した。
【0044】
ゼオライト調製物も、包装からのアンモニアの蓄積を回避するその能力に関して比較的良好に機能したが、これらのスポンジは、連続流の濾過のために設計されており、したがって、アンモニアの蓄積を防止または低減するそれらの能力は、試験の10日目には無視できる程度になった。したがって、ゼオライト調製物の使用は、更なる検討からは除外した。
【0045】
アクアピュア調製物は、追加の生物学的物質を導入せず、連続流の濾過を必要としなかったので、長期間にわたるカキの代謝の結果としてかなりの量のアンモニアが蓄積することを回避するために水性液体媒体に加える必要のあるアクアピュア原液(1g/10mLの蒸留水)の最適濃度(mL/L)を決定するための更なる実験を実施した。この更なる実験は、酸素で過飽和された1Lの濾過水(2μmのフィルタを使用)に12匹のカキを入れて25日間にわたって実施した。4つのアクアピュア処理群(5.5mL/L、8mL/L、10mL/Lおよび13mL/L)について試験した。この更なる実験の結果は、
図16に示される。
【0046】
図16から分かるように、アクアピュア調製物が少なくとも8mL/L超の濃度で適用された処理群は、良好に機能し、かつ少なくとも22日間にわたってアンモニアの蓄積を回避した。
【0047】
したがって、8mL/L~10mL/Lの濃度で適用されたアクアピュア原液(1g/10mL)をカキの包装の基準線として追い求めた。
【0048】
上記の試験の結果として、またもう一度
図8を参照すると、蒸留水10mLあたり1gの乾燥粉末を使用して調製されたアクアピュア原液も約8~10mL/Lの濃度で滅菌海水(60)に加えられて、シール後の包装された製品におけるアンモニアの蓄積が回避または少なくとも低減される。
【0049】
カキを洗浄、選別および等級分別し、海水を調整したら(すなわち、濾過して、滅菌して、かつアンモニア制御剤を加えたら)、カキは、包装の準備が整う。
【0050】
図9を参照すると、ある量のカキ(典型的には12個のカキ)が、衛生条件下で多層膜パウチ(70)に入れられる。
図10に示されるように、パウチ(70)には、所定量の調整済みの酸素富化海水(60)が充填されている。この点で、パウチ(70)に加えられる海水(60)の量は、パウチに加えられるカキの量に基づいて決定されると理解されるだろう。典型的には、パウチ(70)内にガスヘッドスペースが存在できるように、十分な海水(60)がパウチに加えられるだろう。
【0051】
図11に示されるように、カキ(10)および酸素富化海水(60)(アンモニア制御剤を含む)をパウチ(70)に加えたら、ボンベ(80)内に貯蔵された純粋な酸素ガス(1110)をパウチ(70)のヘッドスペースに導入する。パウチのヘッドスペースは、パウチ体積の約60%を占めており、それによって、海水(60)の酸素レベルを経時的に(気相(ヘッドスペース)から液相(海水)への酸素の拡散によって)補充することが可能になり、それによって、カキの包装時点からカキの消費直前の開封時点まで、海水中に高濃度の酸素が維持される。
【0052】
図12を参照すると、パウチ(70)は、ヒートバーによってシールされてヒートシール(1210)を形成しており、それによって、生きているカキ(10)と、酸素富化海水(60)と、酸素で満たされたヘッドスペース(80)とが、シールされた非透過性かつ不浸透性のパウチ(70)内に保持される。
【0053】
図13は、生きているカキ(10)の貯蔵および運送を示す。シールされたパウチ(70)は、輸送の準備のために箱詰め(1310)され、貯蔵倉庫(1320)内で約2~8℃で貯蔵および維持される。それらの貯蔵寿命が延びている(本発明の実施形態による包装方法の結果として約20日)ことから、カキは、魚介類の小売業者、レストランおよび一般の人々のような消費者に提供する前に製品の品質を損なうことなく、国内および国外のどちらでも、生きている状態で輸送(1330)することができる。
【0054】
一実施形態では、天然塩調製物(1410)が、包装と一緒に供給され、包装を開封した後に、かつ提供皿(1420)上に示されるように新鮮なカキを取り出して消費する前に、消費者によって任意選択的に海水(60)に加えられ得る。天然塩調製物(1410)は、カキの筋肉を弛緩させる麻酔効果をカキに対して有し、それによって殻むきプロセスを容易にすると理解されるだろう。
【0055】
文脈からそうでないと解釈されない限り、本明細書および以下の特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」のような派生語は、記載されている特徴もしくはステップまたは特徴もしくはステップの群を含むことを意味しているが、他の特徴もしくはステップまたは特徴もしくはステップの群を除外することを意味してはいないと理解されるだろう。
【0056】
関連する技術分野の当業者であれば、広範に説明されている本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、実施形態に詳述されているように、本発明に対して多数の変形および/または修正を行うことができると理解するであろう。したがって、本実施形態は、すべての態様において、例示的であり、限定的ではないと考えられるものとする。
【国際調査報告】