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特表2022-510174介入的薬物送出のための医療デバイス及びシステムと共に使用するための埋込可能なリザーバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】介入的薬物送出のための医療デバイス及びシステムと共に使用するための埋込可能なリザーバ
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/375 20060101AFI20220119BHJP
   A61N 1/30 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61N1/375
A61N1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529737
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 US2019062990
(87)【国際公開番号】W WO2020112625
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/771,207
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521226473
【氏名又は名称】アドヴァンスト ケモセラピー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】ダウンチ ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイアーズ トニー
(72)【発明者】
【氏名】カールソン ジュニア デール
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ブレーン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053HH01
4C053JJ11
4C053JJ32
4C053KK10
(57)【要約】
体内組織のターゲット部位を通した局所薬物送出のためのイオン導入システムに使用するために患者の中に埋め込むための外科的に埋込可能なリザーバを提供する。リザーバは、封入チャンバを定める内面とチャンバを通る薬物を含む流体の流れのための入口開口部及び出口開口部とを有するハウジングを含む。ハウジングは、薬物を放出するために局在電界と相互作用することができる。電極を保持するプラットホームは、プラットホームとハウジングの内面の隣接部分とがプラットホームを取り囲むトラフを定めるようにハウジングの内面からチャンバの中に内向きに延びる。入口開口部から出口開口部までリザーバを通る流体流れは、電気分解によって形成された気泡を電極の面から移動し、出口開口部を通して気泡を運ぶ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内組織のターゲット部位を通した局所薬物送出のためのイオン導入システムに使用するために患者の中への埋め込みのための外科的に埋込可能なリザーバであって、前記イオン導入システムは、該ターゲット部位で局在電界を形成するためのソース電極と該ソース電極と電気通信している対電極とを含み、前記リザーバは、
封入チャンバを定める内面と該チャンバを通る薬物を含む流体の流れのための入口開口部及び出口開口部とを有し、該薬物を放出するために前記局在電界と相互作用することができるハウジングと、
前記ハウジングの前記内面から前記チャンバの中に内向きに延びて前記ソース電極を保持するようになったプラットホームであって、該プラットホームと該ハウジングの該内面の隣接部分とが該プラットホームを取り囲むトラフを定めるような前記プラットホームと
前記ターゲット部位の前記組織に前記ハウジングを固定するための手段と、
を含み、
前記入口開口部から前記出口開口部までリザーバを通る流体流れが、電気分解によって形成された気泡を前記電極の面から移動し、かつ該出口開口部を通して該泡を運ぶ、
ことを特徴とするリザーバ。
【請求項2】
前記出口開口部は、前記入口開口部から離間していることを特徴とする請求項1に記載のリザーバ。
【請求項3】
前記出口開口部は、前記入口開口部の反対側であることを特徴とする請求項3に記載のリザーバ。
【請求項4】
前記ハウジング固定手段は、リザーバの少なくとも一部分の周りのスカートを含み、
前記スカートは、前記ターゲット部位で組織に縫合することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載のリザーバ。
【請求項5】
前記スカートは、縫合開口部を有することを特徴とする請求項4に記載のリザーバ。
【請求項6】
前記ハウジング固定手段は、生物学的接着剤、極微針、又はステープルを含むことを特徴とする請求項1に記載のリザーバ。
【請求項7】
前記ハウジングの少なくとも一部分が膜を含み、該膜は、局在電界が印加された時に薬物が該膜を通過してターゲット組織の中に入ることを可能にすることを特徴とする請求項1に記載のリザーバ。
【請求項8】
前記膜は、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、及びポリアクリル-ポリアミドアクリレートを含む天然又は合成ポリオマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のリザーバ。
【請求項9】
体内組織のターゲット部位を通した局所薬物送出のためのイオン導入システムであって、
ソース電極と、
前記ソース電極と電気通信しており、該ソース電極と協働して前記ターゲット部位で局在電界を形成するように構成された対電極と、
薬物を含み、前記ソース電極と前記対電極間に形成された前記局在電界に露出された時に前記ターゲット部位の前記組織を通して送出されることが可能な流体カーゴと、
前記ターゲット部位に固定されるようになっている外科的に埋込可能なリザーバであって、前記リザーバは、
封入チャンバを定める内面と該チャンバを通るカーゴ流れのための入口開口部及び出口開口部とを有し、前記カーゴを放出するために前記局在電界と相互作用することができるハウジングと、
前記ハウジングの前記内面から前記チャンバの中に内向きに延びて前記ソース電極を保持するように構成されたプラットホームであって、該プラットホームと該ハウジングの該内面の隣接部分とが該プラットホームを取り囲むトラフを定めるような前記プラットホームと、及び
前記ターゲット部位の前記組織に前記ハウジングを固定するための手段と、を含む前記リザーバと、
を含み、
前記入口開口部から前記出口開口部までリザーバを通るカーゴ流れが、電気分解によって形成された気泡を前記電極の面から移動し、かつ該出口開口部を通して該泡を運ぶ、
ことを特徴とするイオン導入システム。
【請求項10】
前記ソース電極は、白金を含むことを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項11】
前記カーゴは、麻酔薬、ワクチン、化学療法剤、代謝産物、免疫修飾物質、抗酸化剤、抗生物質、及びイオンチャネル調整剤、又はホルモンを含むことを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項12】
前記カーゴは、1又は2以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含むことを特徴とする請求項11に記載のイオン導入システム。
【請求項13】
前記カーゴは、治療薬を含むことを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項14】
前記治療薬は、ゲムシタビンを含むことを特徴とする請求項13に記載のイオン導入システム。
【請求項15】
前記ハウジングの中へのカーゴの流れのために前記入口開口部と流体連通しているカーゴのソースを更に含むことを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項16】
前記出口開口部は、前記入口開口部から離間していることを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項17】
前記出口開口部は、前記入口開口部の反対側であることを特徴とする請求項16に記載のイオン導入システム。
【請求項18】
前記ハウジング固定手段は、前記リザーバの少なくとも一部分の周りのスカートを含み、
前記スカートは、前記ターゲット部位で組織に縫合することができる、
ことを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項19】
前記スカートは、縫合開口部を定める複数の係止点を含むことを特徴とする請求項18に記載のイオン導入システム。
【請求項20】
前記ハウジング固定手段は、生物学的接着剤を含むことを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項21】
前記ハウジングの少なくとも一部分が膜を含み、該膜は、局在電界が印加された時に薬物が該膜を通過してターゲット組織の中に入ることを可能にすることを特徴とする請求項9に記載のイオン導入システム。
【請求項22】
前記膜は、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、又はポリアクリル-ポリアミドアクリレートを含む天然又は合成ポリオマーを含むことを特徴とする請求項21に記載のイオン導入システム。
【請求項23】
患者の体内組織のターゲット部位を通してイオン導入によって薬物分子の局所送出方法であって、
ソース電極を与える段階と、
前記ソース電極と電気通信しており、該ソース電極と協働して前記ターゲット部位で局在電界を形成するように構成された対電極を与える段階と、
前記ターゲット部位に固定されるようになっているリザーバを前記患者に埋め込む段階であって、前記リザーバは、
封入チャンバを定める内面を有し、該チャンバを通る流体流れのための入口開口部及び出口開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングに配置され、かつ該ハウジングの前記内面から前記チャンバの中に内向きに延びて前記ソース電極を保持するようになったプラットホームであって、該プラットホームと該ハウジングの該内面の隣接部分とが該プラットホームを取り囲むトラフを定めるような前記プラットホームと、及び
前記ターゲット部位の前記組織に前記ハウジングを固定するための手段とを含む、前記埋め込む段階と、
前記薬物を含む流体カーゴを前記ハウジングの入口開口部に送出する段階であって、該流体カーゴが、前記ソース電極と前記対電極間に形成された前記局在電界に露出された時に前記ターゲット部位の前記組織を通して送出されることが可能である前記送出する段階と、を含み、
前記ハウジングは、前記カーゴを放出するために前記局在電界と相互作用することができ、
前記入口開口部から前記出口開口部まで前記リザーバを通るカーゴ流れが、電気分解によって形成された気泡を前記電極の面から移動し、かつ該出口開口部を通して該泡を運ぶ、
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
流体カーゴを送出する前記段階は、流体カーゴの連続流れを含むことを特徴とする請求項23に記載の薬物分子の局所送出方法。
【請求項25】
対電極を与える前記段階は、前記患者の皮膚上に該対電極を置く段階を含むことを特徴とする請求項23に記載の薬物分子の局所送出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
介入的薬物送出のための医療デバイス及びシステム、より具体的には、ターゲット化された薬物送出のためのイオン導入デバイス及びシステムと共に使用するための埋込可能なリザーバを説明する。
【背景技術】
【0002】
影響を受けた臓器の中への直接の化学療法の送出は、全身療法単独で治療することが困難である癌に対するソリューションを提供する。一用途では、化学療法剤を注入するように設計されたデバイスは、腫瘍の中に直接に埋め込まれる。この技術は、直接に腫瘍へのより高い投与量のよりターゲット化された薬物送出を可能にし、殆ど周囲組織を傷つけない。腫瘍を直接に治療することにより、医師は、化学療法のより少ない投与で腫瘍を手術可能なサイズまで理論的には縮小することができる。この手法はまた、患者に対する全身毒性の副作用を有意に軽減するはずである。
【0003】
膵臓癌は、治療することが困難である病気の例である。膵臓は、重要な臓器及び血管の近くの困難な場所にある。膵臓腫瘍が隣接組織の中に成長する時に、それは、肝臓又は胃に侵入する可能性があり、より頻繁には、局所血管系に侵入して腫瘍を手術不能にする。更に、膵臓腫瘍は、腫瘍を取り囲む緻密な繊維芽間質に起因して従来の全身化学療法に耐性である。現在の全身治療は、静脈投与化学療法の投与量を増すことによってこれらの困難を克服しようとする。しかし、これは殆ど機能せず、高投与量は、患者に対して格別に辛いものである。
【0004】
膵臓の上に直接に埋め込まれる医療デバイスは、ゲムシタビンのような化学療法剤を膵臓腫瘍の中に直接に注入するのに使用することができる。デバイスは、薬物溶液を通過して組織の中に入る電流を使用して化学療法剤を腫瘍の中に駆動するのにイオン導入を使用する。デバイスは、薬物及び電極を閉じ込める埋込可能なリザーバを含む。埋込可能なリザーバは、注入ポンプ及び電極リードに腹部を通して接続される。回路は、電界を発生させるための患者の背中上の第2の電極によって完成する。イオン導入は、間質を横切って腫瘍の中に化学療法を通させる起電力及び電気浸透力を使用する。1つのそのようなデバイスは、「介入的薬物送出システム及び関連の方法」という名称の米国特許出願公開第2016/0022985号明細書に説明されており、この出願の内容は、これによりその全体が本明細書に引用によって組み込まれる。
【0005】
このデバイスの問題は、電気分解が泡をリザーバに形成させて電極面に付着させることである。泡は、電極のインピーダンスを変化させ、これは、次により高い電圧を必要とする。しかし、電圧は、患者への悪影響がないことを保証するために25Vよりも低く留まらなければならない。これに加えて、膵臓上のデバイスの向きは、泡を電極から一掃するいずれの機構にも影響を与える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0022985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の理由に対して、泡の除去によって電極面への泡の付着を最小にするイオン導入デバイス及びシステムと共に使用するための埋込可能なリザーバに対する必要性が存在する。理想的には、泡除去処理は、リザーバの向きに関係なく機能すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
外科的に埋込可能なリザーバは、体内組織のターゲット部位を通した局所薬物送出のためにイオン導入システムに使用するための患者の中への埋め込みのために提供される。イオン導入システムは、ターゲット部位で局在電界を形成するためにソース電極と、ソース電極と電気通信する対電極とを含む。リザーバは、封入チャンバを定める内面とチャンバを通る薬物を含む流体の流れのための入口開口部及び出口開口部とを有するハウジングを含む。ハウジングは、薬物を放出するように局在電界と相互作用することができる。プラットホームが、ハウジングの内面からチャンバの中に内向きに延び、そのためにプラットホーム及びハウジングの内面の隣接部分は、プラットホームを取り囲むトラフを定める。プラットホームは、ソース電極を保持するようになっている。ハウジングをターゲット部位の組織に固定するための手段が提供される。使用時に、入口開口部から出口開口部までリザーバを通る流体流れは、電気分解によって形成された気泡を電極の面から移動し、出口開口部を通して気泡を運ぶ。
【0009】
イオン導入システムも、体内組織のターゲット部位を通した局所薬物送出のために提供される。イオン導入システムは、ソース電極と、ソース電極と電気通信する対電極とを含み、対電極は、ソース電極と協働して局在電界をターゲット部位に形成するように構成される。薬物を含む流体カーゴは、ソース電極と対電極の間に形成された局在電界に露出された時にターゲット部位の組織を通して送出されることが可能である。外科的に埋込可能なリザーバは、ターゲット部位に固定されるようになっている。リザーバは、封入チャンバを定める内面と、チャンバを通るカーゴ流れのための入口開口部及び出口開口部とを有するハウジングを含む。ハウジングは、カーゴを放出するために局在電界と相互作用することができる。プラットホームが、ハウジングの内面からチャンバの中に内向きに延び、そのためにプラットホーム及びハウジングの内面の隣接部分は、プラットホームを取り囲むトラフを定める。プラットホームは、ソース電極を保持するようになっている。ターゲット部位の組織にハウジングを固定するための手段が提供される。使用時に、入口開口部から出口開口部までリザーバを通るカーゴ流れは、電気分解によって形成された気泡を電極の面から移動し、出口開口部を通して気泡を運ぶ。
【0010】
一態様では、ソース電極は白金電極を含む。
【0011】
別の態様では、カーゴは、麻酔薬、ワクチン、化学療法剤、代謝産物、免疫修飾物質、抗酸化剤、抗生物質、及びイオンチャネル調整剤、又はホルモンを含む。カーゴは、1又は2以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含むことができる。一実施形態では、カーゴは、ゲムシタビンを含む場合がある治療薬を含む。入口開口部と流体連通するカーゴのソースは、カーゴをハウジングに流入させる。
【0012】
更に別の態様では、チャンバからの出口開口部は、入口開口部から離間している。実施形態では、出口開口部は、入口開口部の反対側である。
【0013】
ハウジング固定手段は、リザーバの少なくとも一部分の周りにスカートを含むことができ、スカートは、ターゲット部位で組織に縫合することができる。スカートは、縫合開口部を定める複数の係止点含む。別の実施形態では、ハウジング固定手段は、生物学的接着剤を含む。
【0014】
更に別の実施形態では、リザーバのハウジングの少なくとも一部分は、本質的に半透過性とすることができる膜を含む。膜は、局在電界が印加された時に薬物が膜を通過してターゲット組織の中に入ることを可能にする。膜は、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、又はポリアクリル-ポリアミドアクリレートのような天然又は合成ポリオマーを含むことができる。
【0015】
患者の体内組織のターゲット部位を通したイオン導入による薬物分子の局所送出のための方法も提供する。薬物送出方法は、ソース電極と、ソース電極と電気通信する対電極とを与える段階を含む。対電極は、ソース電極と協働してターゲット部位に局在電界を形成するように構成される。リザーバが、患者に埋め込まれてターゲット部位に固定される。リザーバは、封入チャンバを定める内面を有し、チャンバを通る流体流れのための入口開口部及び出口開口部を有するハウジングを含む。プラットホームは、ハウジングの内面からチャンバの中に内向きに延び、そのためにプラットホーム及びハウジングの内面の隣接部分は、プラットホームを取り囲むトラフを定める。プラットホームは、ソース電極を保持するようになっている。ターゲット部位の組織にハウジングを固定するための手段が提供される。薬物を含む流体カーゴは、ハウジングの入口開口部に送出される。流体カーゴは、ソース電極と対電極の間に形成された局在電界に露出された時にターゲット部位の組織を通して送出されることが可能である。ハウジングは、カーゴを放出するために局在電界と相互作用することができる。入口開口部から出口開口部までリザーバを通るカーゴ流れは、電気分解によって形成された気泡を電極の面から移動し、出口開口部を通して気泡を運ぶ。
【0016】
一態様では、流体カーゴを送出する段階は、流体カーゴの連続流れを含む。
【0017】
別の態様では、対電極を与える段階は、患者の皮膚上にその対電極を置く段階を含む。
【0018】
薬物送出デバイス及びシステムと共に使用するためのリザーバのより完全な理解のために、添付図面に示して以下に説明する実施形態をここで参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ヒト膵臓の前面に取り付けられたリザーバの実施形態の概略斜視図である。
図2】薬物送出に関して介入的であるデバイス及びシステムと共に使用するためのリザーバアセンブリの実施形態の分解斜視図である。
図3図2に示すようなリザーバアセンブリの左側面図である。
図4図3に示すようなリザーバアセンブリの長手断面図である。
図5】膜が取り外された図3に示すようなリザーバアセンブリの底面図である。
図6図2に示すようなリザーバアセンブリと共に使用するためのリザーバの実施形態の上面斜視図ある。
図7A】膜を含む図6に示すようなリザーバの底面斜視図である。
図7B】膜が取り外された図6に示すようなリザーバの底面斜視図である。
図8】膜が取り外されて電極が定位置にある図6に示すようなリザーバの底面図である。
図9】右側面図がその鏡像である図6に示すようなリザーバの左側面図である。
図10図9に示すようなリザーバの長手断面図である。
図11】膜及び電極が取り外された図6に示すようなリザーバの底面図である。
図12図6に示すようなリザーバの上面図である。
図13図6に示すようなリザーバの前端面図である。
図14図6に示すようなリザーバの後端面図である。
図15】コンピュータ発生フローアニメーションを示す図2に示すようなリザーバアセンブリの概略図である。
図16A】泡除去の3-Dシミュレーションを示す図2に示すようなリザーバアセンブリの概略図である。
図16B】泡除去の3-Dシミュレーションを示す図2に示すようなリザーバアセンブリの概略図である。
図16C】泡除去の3-Dシミュレーションを示す図2に示すようなリザーバアセンブリの概略図である。
図17A】泡除去に関する流体流れの実験的検証を明らかにするリザーバアセンブリを示す一連の写真である。
図17B】泡除去に関する流体流れの実験的検証を明らかにするリザーバアセンブリを示す一連の写真である。
図17C】泡除去に関する流体流れの実験的検証を明らかにするリザーバアセンブリを示す一連の写真である。
図17D】泡除去に関する流体流れの実験的検証を明らかにするリザーバアセンブリを示す一連の写真である。
図17E】泡除去に関する流体流れの実験的検証を明らかにするリザーバアセンブリを示す一連の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ある一定の専門用語は、本明細書で便宜上使用されるに過ぎず、制限として解釈しないものとする。例えば、「上側」、「下側」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」、「上向き」、「下向き」、「上部」、及び「底部」のような単語は、単に図に示す構成を説明するものである。実際に、構成要素は、あらゆる方向に向けることができ、従って、専門用語は、他が指定されない限り、そのような変形を包含するように理解すべきである。単語「内部」及び「外部」は、コア及びその指定された部品の幾何学中心に向けた及びそこから離れる方向をそれぞれ指している。専門用語は、上記で具体的に言及した単語、その派生語、及び同様の趣旨の単語を含む。
【0021】
ここで同じ参照番号がいくつかの図を通して対応する又は類似の要素を指定する図面を参照すると、イオン導入を使用する薬物送出のためのシステムが、ヒト膵臓上に配置されて図1に示されている。イオン導入システムは、ターゲット化された薬物送出のためのリザーバアセンブリの実施形態を含み、これは、全体的に20で指定されている。
【0022】
図2に示すように、リザーバアセンブリ20は、送出のために薬物を閉じ込めるためのリザーバ22を含む。入口導管24は、リザーバ22への流体流れを患者の身体の外部の近位端26からリザーバでの遠位端28に提供する。出口導管30は、リザーバ22からの流体流れをリザーバでの遠位端34から患者の身体の外部の近位端32に提供する。入口導管24の近位端26は、入口導管を通してリザーバ22への流体の送出を制御するためのルアー翼取り付け具27を受け入れる。出口導管30の近位端32は、雄ルアー取り付け具33と、雄ルアー取り付け具33と外側雌ルアー取り付け具37間の逆止弁36とを有する。取り付け具33、37、及び逆止弁36は、流体がリザーバ22から出口導管30の近位端32から外に流れることを可能にする。
【0023】
図6及び7B-14を参照すると、リザーバ22は、一般的に、本体部分40と管状突起42とを含む矢じり形態に成形される。リザーバ22の本体40は、底部で開いている内側チャネル41を定める。半透過性膜60は、チャンバ41が完全に封入された空間であるように、チャンバ41を密封するためにリザーバ22の底部を張っている。突起42は、本体400から近位に延びる中実要素である。突起42は、チャンバ41の中に開いている通路43を定める。通路43は、入口導管がチャンバ41と流体連通状態にあるように、入口導管24の遠位端28を受け入れるためのサイズにされる。突起42の上側外面及びリザーバ22の本体部分40の隣接上側外面は、線形溝44を定める。溝44は、リザーバ22の本体部分40を通してチャンバ45の中に開口部45で遠位に終端する。溝44は、出口導管30とのチャンバ41の流体連通のための出口導管30の遠位端34を受け入れるように構成される。溝44は線形であるので、チャンバ41への入口開口部43は、入口開口部45の真反対である。
【0024】
リザーバ22は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成される。リザーバは、生体適合性でもあるいずれかの他の柔らかい可撓性材料から形成される場合があることは理解される。膜60は、以下に限定されないが、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、又はポリアクリル-ポリアミドアクリレートを含む天然又は合成ポリオマーを含むことができる。有機膜は、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スルホン化テトラフルオロエチレンコポリマー(Nafion)、ポリアミドイミド(PAI)、及びポリビニリデン二フッ化物(PVDF)、ポリフェレンオキシド(PPO)、ポリスチレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、親水性及び疎水性ポリエステル(PETE)、又はポリプロピレンを含むことができる。天然ポリマーは、天然ゴム及びセルロース(酢酸セルロース)を含むことができる。
【0025】
保護シリコーンキャップ50は、一般的に、リザーバ22様に成形されて管状近位突起52を含む。図3-5に見られるように、キャップ50は、リザーバ22を包み込むためにリザーバ22のサイズに対応するポケット51を定める。管状突起52は、リザーバの突起42を受け入れるように構成される。入口及び出口導管24、30は、保護シリコーンシース46に収容される(図2)。シース46の遠位端47は、キャップ50からの突起52に嵌合してリザーバ22からの突起42の端部に対して当接する(図4)。入口及び出口導管24、30の遠位端28、34は、シース46からそれぞれ通路43及び溝44の中に遠位に延びる。円板状固定スカート56は、リザーバ22とキャップ50の間に捕捉される。固定スカート56は、リザーバを身体のターゲット部位に固定するためにリザーバ22を生体組織に縫合するための開口部を提供するポリエステルメッシュで形成される。縫合のための係止点も、スカート56に形成することができる。これに代えて、リザーバ22は、生物学的接着剤、極微針、又はステープルを単独で又は縫合糸と組み合わせて使用して生体組織のターゲット部位に固定することができる。
【0026】
白金電極70は、リザーバ22の本体の中心と一体のプラットホーム62上に置かれる(図5及び8)。プラットホーム62は、本体40の内面からチャンバ41の中に内向きに延びる。プラットホーム62の壁は、プラットホーム62及び電極70を取り囲むトラフ75を形成するリザーバ22の隣接する内面から離間している。電極70は、リザーバ22内の開口部73を出る電気ケーブル72を通して電源に接続される。ケーブル72は、出口導管30の下の溝44に沿ってシース46を通過する。ケーブル72は、外部電源にアクセスするためのプラグ74で終端する。
【0027】
使用時に、リザーバアセンブリ20は、患者の身体のターゲット部位に埋め込まれる。図1に示す実施形態では、薬物及びソース電極70を閉じ込めるリザーバ22及び本体部分40を含むリザーバアセンブリ20は、膵臓の前面に固定される。入口及び出口導管24、30、並びに電気ケーブル72を取り囲む保護シース46は、それぞれ注入ポンプ及び電源に接続するために腹部を通して出ている。イオン導入デバイス及びシステムを完成するために、第2の対極(図示せず)が、電気回路を完成するために患者の皮膚、典型的には背中に置かれる。送出すべき薬物を含む流体カーゴは、リザーバ22のチャンバ41の中に入口導管24を通して供給される。膜60を横切って膵臓の組織及び腫瘍の中に薬物を移動するために、ソース電極と対電極の間に電界が発生される。
【0028】
ソース電極70内の電気分解は、電極面に付着する気泡を形成させる。トラフ75内のリザーバ22の本体40を通して電極70にわたって及びプラットホーム62の周りのカーゴ流体の流れは、泡を除去し、出口開口部45を通してチャンバ41から搬送する。電極70を保持するプラットホーム62の周りに形成されたトラフ75、並びに位置合わせした流体入口開口部24及び出口開口部30は、電極面からリザーバ22のチャンバ41の外に泡を実質的に一掃するフローパターンを生成する。特に、図15に示すように、最も高い流体流量の区域は、電極上に形成する泡がトラフ75の中に掃引されるように、電極70がその上に位置決めされた上昇したプラットホーム62を横切っている。図16は、リザーバの中にランダムに導入されて次に流体流れによって電極から運び去られる泡を示すコンピュータシミュレーションである。図16Aは、シミュレーションの中への泡の初期導入を示し、トラフの中に搬送されている泡を明確に明らかにしている。図16B及び16Cは、このシミュレーションを継続し、トラフに集まる泡の増加量を示している。泡は、出る前に入口開口部24の反対側のチャンバ41の遠位端で出口開口部30に蓄積する。次に、泡は、流体流れによってリザーバ22のチャンバ41の外に搬送される。同様に、図17Aは、最初に透明な液体で満たされたリザーバを示す(図17A)。青色染料が導入され(図17B)、遠位出口開口部45に向けて進行し(図17B-17E)、流体流れを示している。
【0029】
リザーバアセンブリは、イオン導入を使用する薬物送出のためのシステムでのその使用を含む多くの利点を有する。リザーバアセンブリの設計は、気泡形成及び電極の面への付着を最小にする。それでも形成する気泡は、リザーバを通る流体流れによって洗い流され、電極上に集まらない。リザーバアセンブリ及びイオン導入システムは、以下に限定されないが、肉腫、頭部及び頸部及び乳癌のような他の中実腫瘍を治療するのに使用することができる。
【0030】
本発明のリザーバアセンブリをその単に小数の例示的実施形態に関してかなり詳細に図示して説明したが、様々な修正、省略、及び追加を新しい教示及び利点から大幅に逸脱することなく特に上述の教示に照らして開示の実施形態に対して行うことができるので、リザーバアセンブリをその実施形態に制限するように意図しないことを当業者は理解すべきである。従って、全てのそのような修正、省略、追加、及び均等物は、特許請求の範囲によって定めるようなリザーバアセンブリの精神及び範囲に含むことができるので、それを網羅するように意図している。特許請求の範囲では、手段+機能条項は、列挙する関数を実行するように本明細書に説明する構造、及び構造均等物だけではなく同等構造も網羅するように意図している。すなわち、釘及びスクリューは、釘が木製部品を互いに固定するのに円筒面を使用し、スクリューは螺旋面を使用する点で構造均等物ではない場合があるが、木製部品を締結する環境では、釘及びスクリューは同等構造である場合がある。
【符号の説明】
【0031】
20 リザーバアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
【国際調査報告】