(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】同軸導波管
(51)【国際特許分類】
H04R 1/32 20060101AFI20220119BHJP
G10K 11/172 20060101ALI20220119BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20220119BHJP
H04R 1/22 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H04R1/32 310Z
G10K11/172
G10K11/16 140
G10K11/16 100
H04R1/22 310
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530215
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2019063042
(87)【国際公開番号】W WO2020112653
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ・ジョセフ・ザストウピル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジェイ・クティル
(72)【発明者】
【氏名】ガーブリエル・ロイド・マレー
【テーマコード(参考)】
5D018
5D061
【Fターム(参考)】
5D018AA01
5D018AA10
5D018AB11
5D018AB15
5D018AF16
5D061AA22
5D061CC04
(57)【要約】
様々な実装形態は、ラウドスピーカを含む。いくつかの特定の場合には、ラウドスピーカは、高周波(HF)ドライバと、HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、LFドライバの音放射面を覆う導波管であって、導波管は、LFドライバの音放射パターンが基準位置でHFドライバの音放射パターンと一致するように孔パターンを有する、導波管と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウドスピーカであって、
高周波(HF)ドライバと、
前記HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、
前記LFドライバの音放射面を覆う導波管であって、前記導波管は、前記LFドライバの音放射パターンが基準位置で前記HFドライバの音放射パターンと一致するように孔パターンを有する、導波管と、を備える、ラウドスピーカ。
【請求項2】
前記導波管は、前記HFドライバが露出している開口部を含む、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項3】
前記導波管と前記LFドライバとの間に位置するバッティングを更に備え、前記バッティングは、前記LFドライバと前記導波管との間の空洞共振を制御し、前記バッティングは、低周波数において音響的に透過であり、高周波数において堅固な音響境界として機能する、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項4】
前記導波管が、前記LFドライバの前方に位置する、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項5】
前記導波管が、前記HFドライバを包囲し、前記孔パターンを画定する剛性バッフルを含む、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項6】
前記孔パターンが、前記HFドライバの周りに配置された複数の孔を含む、請求項5に記載のラウドスピーカ。
【請求項7】
前記LFドライバからのエネルギが、音響出力のビーム幅を制御するために前記孔パターン内の孔を通して放出される、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項8】
前記導波管が、前記HFドライバから熱を放散するための材料を含む、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項9】
前記LFドライバの前方の音響ボリュームを画定するエンクロージャと、
前記LFドライバの前方の前記音響ボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を更に備える、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項10】
前記LFドライバと前記HFドライバとの間の音響バックボリュームを画定するハウジングと、
前記LFドライバと前記HFドライバとの間の前記音響バックボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を更に備える、請求項1に記載のラウドスピーカ。
【請求項11】
ラウドスピーカであって、
高周波(HF)ドライバと、
前記HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、
前記LFドライバの音放射面を覆う導波管であって、前記導波管は、内部を通って軸方向に延在する複数の孔を有するプレートを含み、前記LFドライバの音放射パターンは、基準位置で前記HFドライバの音放射パターンと一致する、導波管と、
前記導波管と前記LFドライバとの間に位置するバッティングであって、前記バッティングは前記LFドライバと前記導波管との間の空洞共振を制御する、バッティングと、を備える、ラウドスピーカ。
【請求項12】
前記導波管は、前記HFドライバが露出している開口部を含む、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項13】
前記バッティングが、低周波数において音響的に透過であり、高周波数において堅固な音響境界として機能する、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項14】
前記導波管が、前記LFドライバの前方に位置する、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項15】
前記プレートが剛性バッフルを含み、前記複数の孔が前記HFドライバの周りに配置されている、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項16】
前記LFドライバからのエネルギが、音響出力のビーム幅を制御するために前記複数の孔を通して放出される、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項17】
前記LFドライバの前方の音響ボリュームを画定するエンクロージャと、
前記LFドライバの前方の前記音響ボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を更に備える、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項18】
前記LFドライバと前記HFドライバとの間の音響バックボリュームを画定するハウジングと、
前記LFドライバと前記HFドライバとの間の前記音響バックボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を更に備える、請求項11に記載のラウドスピーカ。
【請求項19】
ラウドスピーカを提供するステップであって、前記ラウドスピーカは、
高周波(HF)ドライバと、
前記HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、
前記LFドライバの音放射面を覆う導波管と、を含む、ステップと、
電気信号を前記ラウドスピーカで音響出力に変換するステップと、を含む方法であって、
前記導波管は、前記音響出力が、基準位置で前記HFドライバの音放射パターンと一致する前記LFドライバの音放射パターンを含むように孔パターンを有する、方法。
【請求項20】
前記LFドライバからのエネルギが、前記音響出力のビーム幅を制御するために前記孔パターン内の孔を通して放出され、前記ラウドスピーカは、前記導波管と前記LFドライバとの間に位置するバッティングを更に含み、前記バッティングは、前記LFドライバと前記導波管との間の空洞共振を制御し、前記バッティングは、低周波数において音響的に透過であり、高周波数において堅固な音響境界として機能する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してラウドスピーカに関する。より具体的には、本開示は、低周波ドライバ及び高周波ドライバからの音放射パターンを制御するための同軸導波管を有するラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
薄型スピーカ用途の需要が高まっている。しかしながら、ラウドスピーカの深さが減少するにつれて、低周波ドライバ(ウーファ)と高周波ドライバ(ツィータ)との間の距離が低減されることにより、音響上の課題が生じ得る。例えば、低周波ドライバのビーム幅は、これらの条件下で制御することが困難であり得る。従来のラウドスピーカは、これらの課題に対処することができない。
【発明の概要】
【0003】
下記で言及される全ての例及び特徴は、技術的に可能な任意の方式で組み合わせることができる。
【0004】
様々な実装形態は、同軸導波管を有するラウドスピーカを含む。追加の実装形態では、同軸導波管は、ラウドスピーカの音響出力を制御するために使用される。
【0005】
いくつかの特定の態様では、ラウドスピーカは、高周波(HF)ドライバと、HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、LFドライバの音放射面を覆う導波管であって、導波管は、LFドライバの音放射パターンが基準位置でHFドライバの音放射パターンと一致するように孔パターンを有する、導波管と、を含む。
【0006】
別の態様では、ラウドスピーカは、高周波(HF)ドライバと、HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、LFドライバの音放射面を覆う導波管であって、導波管は、内部を通って軸方向に延在する、複数の孔を有するプレートを有し、LFドライバの音反射パターンが基準位置でHFドライバの音反射パターンと一致する、導波管と、導波管とLFドライバとの間に位置するバッティングであって、バッティングは、LFドライバと導波管との間の空洞共振を制御するバッティングと、を含む。
【0007】
追加の態様では、方法は、ラウドスピーカを提供することであって、ラウドスピーカは、高周波(HF)ドライバと、HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、LFドライバの音放射面を覆う導波管と、を有する、ことと、電気信号をラウドスピーカで音響出力に変換することと、を含み、導波管は、音響出力が、基準位置でHFドライバの音放射パターンと一致するLFドライバの音放射パターンを含むように孔パターンを有する。
【0008】
更なる態様では、ラウドスピーカは、高周波(HF)ドライバと、HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、LFドライバの音放射面を覆う導波管と、LFドライバの前方の音響ボリュームを画定するエンクロージャと、LFドライバの前方の音響ボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を含む。
【0009】
別の態様では、ラウドスピーカは、高周波(HF)ドライバと、HFドライバと同軸に配置された低周波(LF)ドライバと、LFドライバの音放射面を覆う導波管と、LFドライバとHFドライバとの間の音響バックボリュームを画定するハウジングと、LFドライバとHFドライバとの間の音響バックボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を含む。
【0010】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0011】
場合によっては、導波管は、HFドライバが露出している開口部を含む。
【0012】
特定の態様では、ラウドスピーカは、導波管とLFドライバとの間に位置するバッティングを更に含み、バッティングはLFドライバと導波管との間の空洞共振を制御し、バッティングは低周波数において音響的に透過であり、高周波数において堅固な音響境界として機能する。
【0013】
特定の実装形態では、導波管はLFドライバの前方に位置する。
【0014】
いくつかの態様では、導波管は、HFドライバを包囲し、孔パターンを画定する剛性バッフルを含む。
【0015】
特定の場合には、孔パターンは、HFドライバの周囲に配置された複数の孔を含む。
【0016】
ある態様では、LFドライバからのエネルギは、音響出力のビーム幅を制御するために孔パターン内の孔を通して放出される。
【0017】
場合によっては、導波管は、HFドライバから熱を放散するための材料を含む。
【0018】
特定の実装形態では、ラウドスピーカは、LFドライバの前方の音響ボリュームを画定するエンクロージャと、LFドライバの前方の音響ボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を更に含む。
【0019】
場合によっては、ラウドスピーカは、LFドライバの前方の音響ボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器内に音響バッティングを含む。
【0020】
特定の実装形態では、ラウドスピーカは、LFドライバとHFドライバとの間の音響バックボリュームを画定するハウジングと、LFドライバの前方の音響ボリュームと結合されたヘルムホルツ共振器と、を更に含む。ヘルムホルツ共振器は、LFドライバとHFドライバとの間の音響バックボリューム内に位置し得る。
【0021】
いくつかの態様では、ラウドスピーカは、LFドライバとHFドライバとの間の音響バックボリューム内に音響バッティングを含む。
【0022】
特定の場合には、LFドライバからのエネルギは、音響出力のビーム幅を制御するため、孔パターン内の孔を通して放出され、ラウドスピーカは、導波管とLFドライバとの間に位置するバッティングを更に含み、バッティングはLFドライバと導波管との間の空洞共振を制御し、バッティングは低周波数において音響的に透過であり、高周波数において堅固な音響境界として機能する。
【0023】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される特徴の2つ以上は、特に本明細書に記載されない実装形態を形成するために組み合わされ得る。
【0024】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】様々な実装形態によるラウドピーカの側面断面図を示す。
【0026】
【0027】
【
図3】様々な追加の実装形態によるラウドピーカの側面断面図を示す。
【0028】
【
図4】様々な更なる実装形態によるラウドピーカの側面断面図を示す。
【0029】
【
図5】従来のラウドスピーカと比較した、様々な実装形態によるラウドスピーカの音圧レベル(SPL)対周波数を示す例示的な周波数応答グラフを示す。
【0030】
【
図6】従来のラウドスピーカ及び様々な実装形態によるラウドスピーカの例示的なビーム幅グラフを示す。
【0031】
様々な実装形態の図面は必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを意図するものであり、したがって、実装の範囲を限定するものと見なされるべきではない。図面において、同様の番号付けは、図面間の同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、同軸導波管がラウドスピーカに有益に組み込まれ得るという認識に、少なくとも部分的に基づいている。例えば、同軸導波管を有するラウドスピーカは、埋め込み型又は表面実装型の用途において所望の音響出力を提供し得る。
【0033】
図中の共通にラベル付けされた構成要素は、例示目的のために略同等の構成要素であると見なされ、それらの構成要素の重複する説明は、明確化のために省略する。
【0034】
本明細書に記載されるように、薄型スピーカシステムでは、高周波(HF)ドライバ(又は、ツィータ)と低周波(LF)ドライバ(又はウーファ)との間の間隔が低減されるため、システム設計上の課題が生じる。多くのエンドユーザの用途では、埋め込み型又は表面実装型のスピーカ設計が求められるため、ラウドスピーカシステム設計者は、HFドライバとLFドライバとの間の間隔を低減するとともに所望の音響出力を提供することを試みる必要がある。この問題に対処するための従来のアプローチは、低周波数でのビーム幅を制御することができず、空洞共振を示し、かつ/又は一貫しない軸外音響出力を示す。
【0035】
従来のシステムとは対照的に、様々な実装形態によって開示されるラウドスピーカは、HFドライバと同軸に配置されたLFドライバを含む。ラウドスピーカは、ラウドスピーカの前方の基準位置においてHFドライバの音放射パターンと一致するようにLFドライバの音放射パターンを制御するための孔パターンを有する導波管を含む。ある場合には、ラウドスピーカの音放射パターンは、そのビーム幅によって画定され得る。様々な実装形態によって開示されるラウドスピーカは、例えば、HFドライバ及びLFドライバの中心軸の周辺に様々な距離で一貫した軸外音響出力を提供し得る。統合された導波管構成は、広範な周波数にわたって(例えば、LFドライバの低域遮断周波数から、HFドライバがスピーカの応答を制御するクロスオーバー周波数まで)音響出力における一貫性を改善し得る。加えて、様々な実装形態によって開示されるラウドスピーカは、LFドライバとHFドライバとの間の空洞共振を制御するための音響バッティングを含み得る。場合によっては、導波管はまた、HFドライバを冷却するためのヒートシンクとして機能することができ、従来のシステムと比較して、より高い音圧レベル(SPL)を有するより高い電力用途を可能にする。
【0036】
図1は、様々な実装形態によるラウドスピーカ10の側面断面図を示し、
図2はラウドスピーカ10の平面断面図を示す。
図1及び
図2を同時に参照する。様々な実装形態によれば、ラウドスピーカ10は、高周波(HF)ドライバ30及び低周波(LF)ドライバ40を収容するエンクロージャ20を含む。場合によっては、HFドライバ30は、ドームツィータ、コーンツィータ、ピエゾツィータなどのツィータを含む。特定の一実装形態では、HFドライバ30はドームツィータである。ある実装形態では、LFドライバ40はウーファを含む。いくつかの実装形態では、LFドライバ40は、HFドライバ30と同軸上に配置され、それにより、
図1の軸(A)によって示されるように、LFドライバ40の運動の中心軸は、HFドライバ30の運動の中心軸と一致する。しかしながら、他の実装形態では、HFドライバ30の中心軸は、ラウドスピーカ10の出力が非対称になるように、軸(A)に対して角度付け/回転され得る。
【0037】
HFドライバ30及びLFドライバ40の両方は、ドライバ30、40の一方又は両方を励起するために電気信号を提供するための1つ以上の制御回路(図示せず)と結合され得ることが理解される。それぞれのドライバ30、40は、音響出力を生成するための音放射面を含む。制御回路(複数可)は、プロセッサ及び/又はマイクロコントローラを含み得、プロセッサ及び/又はマイクロコントローラは、HFドライバ30又はLFドライバ40の一方又は両方においてオーディオコンテンツを再生(レンダリング)するためのデコーダ、DSPハードウェア/ソフトウェアなどを含み得る。制御回路(複数可)はまた、デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換するための1つ以上のデジタル・アナログ(D/A)変換器を含み得る。このオーディオハードウェアはまた、増幅アナログオーディオ信号をHFドライバ30及び/又はLFドライバ40に提供する1つ以上の増幅器を含み得る。
【0038】
エンクロージャ20は、LFドライバ40が電気信号によって励起されたときのLFドライバ40の運動に応答する、LFドライバ40の前方の音響ボリューム50を画定する。ラウドスピーカ10はまた、LFドライバ40とHFドライバ30との間に位置する音響バックボリューム70を画定するハウジング60を含む。場合によっては、音響バックボリューム70は、HFドライバ30が電気信号によって励起されたときの該ドライバの運動に応答する。他の実装形態では、HFドライバ30は、HFドライバ30が音響バックボリューム70と相互作用しないように、そのトランスデューサに封止された別個のバックボリュームを含み得る。いずれの場合も、エンクロージャ20及びハウジング60は、任意の従来のラウドスピーカ材料、例えば、重いプラスチック、金属、複合材料などで形成され得る。
【0039】
LFドライバ40の音放射面80は、LFドライバ40からラウドスピーカエンクロージャ20の前部100に音響エネルギを方向付けるための導波管90で覆われている。様々な実装形態において、導波管90は、HFドライバ30が露出している少なくとも1つの開口部110を含む。すなわち、導波管90は、HFドライバ30を収容するための開口部110を含み、HFドライバ30がラウドスピーカエンクロージャ20の前部100で露出するようになっている。
【0040】
図1に示すように、導波管90はLFドライバ40の前方に位置する。様々な実装形態において、導波管90は、HFドライバ30の周りに配置された複数の孔130(孔130A、130B、130Cなどとして示される)を含む孔パターン120を含む。この孔130の配置は、単に1つの例示的な配置であり、様々な実装形態によれば、様々な孔の位置及び/又はサイズが使用され得ることができることが理解される。孔130は、導波管90を通って延在して、音響ボリューム50とエンクロージャ20の前部100との間、すなわち周囲への気流を可能にする。本明細書に記載されるように、様々な実装形態では、孔パターン120は、LFドライバ40の音放射パターンが基準位置でHFドライバ30の音放射パターンと一致するように構成されている。いくつかの実施例では、この基準位置は、スピーカ10のカバレッジパターン又はビーム幅によって画定される横方向距離内の、ラウドスピーカの前方約10メートルの任意の位置を含む。ある実施例では、スピーカ10のビーム幅は、約130度~約150度の範囲であり得る。すなわち、様々な実装形態によれば、LFドライバ40からのエネルギは、ラウドスピーカ10からの音響出力のビーム幅を制御するために導波管90の孔パターン120内の孔130A、130B、130Cなどを通して放出される。
【0041】
特定の実装形態では、導波管90は、HFドライバ30を包囲し、孔パターン120を画定する剛性バッフルを含む。すなわち、いくつかの実施例では、孔パターン120は、中心軸(A)と交差する線によって測定される孔130間の中心間隔が約2インチ~約5インチ(いくつかの特定の実施例では、約3.5インチ)になるように構成され得る。パターン内の様々な孔130は、別個の中心間隔を有してもよいこと、また、これらの値は、特定の実施例の単なる例に過ぎないことが理解される。
【0042】
様々な実装形態では、導波管90は、HFドライバ30から熱を放散するための材料で形成される。場合によっては、導波管90は、アルミニウム(又はアルミニウムの合金)などの金属を含むが、他の場合には、導波管90は、HFドライバ30からの熱の放散を補助するのに十分な熱伝導率を有する別の材料を含む。
【0043】
ある特定の場合には、ラウドスピーカ10は、導波管90とLFドライバ40との間の音響ボリューム50内に位置するバッティング(batting)140を更に含む。バッティング140は、綿又は合成繊維を含み得、導波管90の裏側に固着(例えば、接着又は取り付け)され得るか、又はエンクロージャ20若しくはハウジング60の1つ以上の壁に固着され得る。特定の例示的な実装形態では、
図1に示されるように、バッティング140は導波管90の裏側に固着される。様々な実装形態において、バッティング140は、LFドライバ40と導波管90との間の空洞共振の制御を補助し得る。バッティング140が導波管90の裏側に固着される場合には、バッティング140は低周波数(例えば、LFドライバ40のクロスオーバー周波数よりも低い周波数)において音響的に透過であり得るが、高周波数(例えば、LFドライバ40のクロスオーバー周波数を上回る周波数)において堅固な音響境界として機能し得る。加えて、バッティング140が導波管90の裏側に固着されると、バッティング140は、クロスオーバー周波数付近の周波数(例えば、2キロヘルツ(kHz)の周波数)で生じる音響ボリューム50内の空洞共振を減衰させ得る。すなわち、バッティング140は、導波管90の裏側に固着されると、HFドライバ30からのより平滑な(残響の少ない)軸上応答、並びにHFドライバ30からのより一貫した軸外応答を提供し得る。
【0044】
他の場合には、本明細書に記載されるように、バッティング140が導波管90の裏側に固着されているか又は固着されていないいずれかの状態で、バッティング140は、エンクロージャ20及び/又はハウジング60の1つ以上の壁に固着される。これらの追加の位置にあるバッティングは、ラウドスピーカ10内の共振を減衰させ得るが、高周波数において堅固な音響境界として機能しない場合がある。
【0045】
動作中、ラウドスピーカ10内の制御回路は、電気信号をHFドライバ30及びLFドライバ40で音響出力に変換するように構成されている。本明細書に記載されるように、導波管90内の孔パターン120は、音響出力が、基準位置においてHFドライバ40の音放射パターンと一致するLFドライバ40の音放射パターンを有するように構成されている。すなわち、LFドライバ30からのエネルギは、音響出力のビーム幅を制御するために孔パターン120の孔130を通して放出される。ある場合には、バッティング140は、LFドライバ40と導波管90との間の音響ボリューム50内の空洞共振を制御するために使用され、バッティング140が低周波数において音響的に透過であり、高周波数において堅固な音響境界として機能するようになっている。
【0046】
図3は、ラウドスピーカ300の追加の実装形態の断面図を示す。
図3に示すように、ラウドスピーカ300は、LFドライバ40の前方の音響ボリューム50と結合されたヘルムホルツ共振器320を含み得る。ある場合には、ヘルムホルツ共振器320は、LFドライバ40に近接するエンクロージャ20の壁内に位置する。ラウドスピーカ10の動作中、ヘルムホルツ共振器320は、音響空洞50内の空洞共振を減衰させ得る。いくつかの実装形態では、ヘルムホルツ共振器320は、狭くなったネック部分340によって音響ボリューム50と結合された気体(例えば、空気)のポケット330を含む。他の例示的な実装形態では、ヘルムホルツ共振器320のポケットの一部分には、そのヘルムホルツ共振器320のQファクタを制御し得る音響バッティング140が充填される。Qファクタは、共振素子内のエネルギ損失を示す無次元パラメータである。バッティング140は、ヘルムホルツ共振器320の内側表面に固着され得、ヘルムホルツ共振器320のQファクタを、それが結合される音響ボリューム50のQファクタと一致させるために使用され得る。
【0047】
図4は、ラウドスピーカ400の追加の実装形態の断面図を示す。
図4に示すように、ラウドスピーカ400は、LFドライバ40とHFドライバ30との間の音響ボリューム50と結合されたヘルムホルツ共振器320を含み得る。ある場合には、ヘルムホルツ共振器320は、HFドライバ30の後ろのハウジング60の壁内に位置する。いくつかの実装形態によれば、ヘルムホルツ共振器320は、例えば、LFドライバ40とHFドライバ30との間の位置にあるハウジング60の壁内に位置し、LFドライバ40とHFドライバ30との間の音響バックボリューム70内に延在する。ヘルムホルツ共振器320は、音響バッティング140と組み合わせるいくつかの場合には、音響ボリューム50内の空洞共振を減衰させるために使用され得る。いくつかの実装形態では、ヘルムホルツ共振器320は、狭くなったネック部分(
図4にはラベル付けせず)によって音響バックボリューム70と結合される気体(例えば、空気)のポケットを含む。特定の実装形態では、
図3のヘルムホルツ共振器320を参照して論じたように、音響バックボリューム70の一部分には音響バッティング140が充填される。
【0048】
図1に戻ると、ラウドスピーカ10はまた、
図3及び
図4を参照して示され説明される位置のうちの1つにヘルムホルツ共振器320を含み得ることができることが理解される。これらの例示的な実装形態は、仮想線で示されており、ヘルムホルツ共振器320は、音響ボリューム50に結合され、エンクロージャ20の壁内(
図3のラウドスピーカ300と同様に)、又はハウジング60の壁内(
図4のラウドスピーカ400と同様に)のいずれかに位置する。
【0049】
図5は、様々な実装形態によるラウドスピーカ(例えば、ラウドスピーカ10、300、又は400)及び本明細書に記載される導波管(例えば、導波管90又は導波管310)を有さない従来のラウドスピーカの音圧レベル(SPL)対周波数示す例示的な周波数応答グラフを示す。
図5は、様々な実装形態によるラウドスピーカ(例えば、ラウドスピーカ10、300、又は400)の周波数応答は、本明細書に記載される導波路を有さない従来のラウドスピーカと比較して、一定範囲の周波数にわたって変動が著しく少ない(すなわち、応答がより平滑である)ことを示す。
【0050】
図6は、(a)本明細書に記載される導波管を有さない従来のラウドスピーカ、及び(b)様々な実装形態によって記載されるラウドスピーカ(複数可)(例えば、ラウドスピーカ10、300、又は400)の例示的なビーム幅グラフを示す。これらのグラフは、対応するラウドスピーカのそれぞれに関するビーム幅対周波数の変動を示す。グラフ(a)における従来のラウドスピーカとのこの比較で分かるように、高周波数と低周波数との間のビーム幅は、様々な実装形態によるラウドスピーカ(例えば、ラウドスピーカ10、300、又は400)の応答を表すグラフ(b)では著しく一貫している。
【0051】
従来のラウドスピーカとは対照的に、ラウドスピーカ10、300、及び400は、一貫した軸外応答及び平滑な軸上高周波数応答を有する薄型(例えば、埋め込み型又は表面実装型)スピーカ構成を提供し得る。例えば、場合によっては、本明細書に記載されるラウドスピーカは、著しく大きい深さを有するラウドスピーカと同等の音響出力を提供し得る。
【0052】
本明細書に含まれる図に示されるように、ラウドスピーカ10、300、400並びにその構成要素及び特徴の相対的な比率、サイズ、及び形状は、これらの構成要素のそのような物理的属性の単なる例示であり得ることが理解される。すなわち、これらの比率、形状、及びサイズは、様々な製品に適合するように、様々な実装形態によって変更され得る。例えば、特定の実装形態による、実質的に矩形のラウドスピーカが示される場合があるが、ラウドスピーカはまた、本明細書に記載される音響機能を提供するために他の3次元形状を取り得ることが理解される。
【0053】
様々な実装形態では、互いに「連結」されているとして説明される構成要素は、1つ以上のインターフェースに沿って接合することができる。いくつかの実装形態では、これらのインターフェースは、別個の構成要素間の接合部を含むことができ、他の場合には、これらのインターフェースは、強固に及び/又は一体的に形成された相互接続部を含み得る。すなわち、場合によっては、互いに「連結された」構成要素は同時に形成されて、単一の連続部材を画定することができる。しかしながら、他の実装形態では、これらの連結された構成要素は、別個の部材として形成され、その後、既知のプロセス(例えば、はんだ付け、締結、超音波溶接、接合)によって接合され得る。様々な実装形態では、「連結された」と記載される電子構成要素は、これらの電子構成要素が互いにデータを通信することができるように、従来の有線及び/又は無線手段を介してリンクすることができる。更に、所与の構成要素内の下位構成要素は、従来の経路を介してリンクされていると考えることができるが、必ずしも図示されない。
【0054】
複数の実装形態を説明してきた。それにもかかわらず、本明細書に記載される本発明の概念の範囲から逸脱することなく追加の改変を行うことができ、したがって、他の実装形態も以下の特許請求の範囲の範疇にあることが理解される。
【符号の説明】
【0055】
10 ラウドスピーカ
20 エンクロージャ
30 高周波(HF)ドライバ
40 低周波(LF)ドライバ
50 音響ボリューム
60 ハウジング
70 音響バックボリューム
80 音放射面
90 導波管
100 前部
110 開口部
120 孔パターン
130 孔
130A、130B、130C 孔
140 バッティング
300 ラウドスピーカ
310 導波管
320 ヘルムホルツ共振器
330 ポケット
340 ネック部分
400 ラウドスピーカ
【国際調査報告】