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特表2022-510279拡散バリアを有する経皮治療システム
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  • 特表-拡散バリアを有する経皮治療システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】拡散バリアを有する経皮治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20220119BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220119BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61F13/00 300
A61F13/00 T
A61F13/02 310J
A61F13/02 310R
A61K9/70 401
A61K45/00
A61K47/32
A61K47/34
A61P5/00
A61P9/12
A61P25/00
A61P25/02 101
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/00
A61P29/00
A61P15/00
A61K31/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530909
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2019082448
(87)【国際公開番号】W WO2020109241
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】102018130469.2
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508163924
【氏名又は名称】エルテーエス・ローマン・テラピー-ズユステーメ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LTS Lohmann Therapie-Systeme AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】ロイム,ニコ
(72)【発明者】
【氏名】エムゲンブロイヒ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーダーズベルク,ザンドラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC17
4C076CC30
4C076EE09
4C076EE27
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA32
4C084MA63
4C084NA10
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA211
4C084ZA212
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC031
4C084ZC032
4C086AA01
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA02
(57)【要約】
本発明は、活性物質キャリア層(2)に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックス(3)を有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層(2)、および、活性物質非含有感圧接着剤(7)によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層(6)であって、活性物質非含有感圧接着剤(7)により、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)とは反対側に面した活性物質キャリア層(2)の平らな側に直接、結合された、接着剤キャリア層(6)、を含み、接着剤キャリア層(6)は、活性物質キャリア層(2)の縁を越えて周辺側に突出する、経皮治療システム(1)、に関する。該システムは、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)と活性物質非含有感圧接着剤(7)との間に、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)および/または活性物質非含有感圧接着剤(7)でコーティングの厚さが減少した周領域(4)が存在することを特徴とする。本発明はさらに、前記経皮治療システムの使用およびそれを含むキットに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質キャリア層(2)に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックス(3)を有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層(2)、および
活性物質非含有感圧接着剤(7)によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層(6)であって、活性物質非含有感圧接着剤(7)により、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)とは反対側に面した活性物質キャリア層(2)の平らな側に直接、結合された、接着剤キャリア層(6)、
を含み、
接着剤キャリア層(6)は、活性物質キャリア層(2)の縁を越えて周辺側に突出する、経皮治療システム(1)であって、
活性物質含有ポリマーマトリックス(3)と活性物質非含有感圧接着剤(7)との間に、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)および/または活性物質非含有感圧接着剤(7)でコーティングの厚さが減少した周領域(4)が存在することを特徴とする、経皮治療システム。
【請求項2】
接着剤キャリア層(6)が、活性物質非含有感圧接着剤(7)によりできるだけ完全にコーティングされ、活性物質キャリア層(2)に結合されており、活性物質キャリア層(2)が、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングの厚さが減少した周縁領域(4)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
コーティングの厚さが減少した周縁領域(4)が、表面全体が活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングされた活性物質キャリア層(2)の材料上にパンチングツールをガイドすることによって形成されるかまたは形成可能であり、前記ツールは、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側に、より具体的には同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備え、該中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層(2)に押し付けられて、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングの厚さが減少し、その後、カッティングブレードを使用して、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングの厚さが減少した周縁領域(4)を有する活性物質キャリア層(2)が打ち抜かれたことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
接着剤キャリア層(6)が、活性物質キャリア層(2)に隣接するところで、活性物質非含有感圧接着剤(7)でコーティングの厚さが減少した周領域(4)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
該システムにおいて、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)が、活性物質キャリア層(2)に直接適用され、および、活性物質非含有感圧接着剤(7)が、接着剤キャリア層(6)に直接適用されており、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)とは反対側に面する活性物質キャリア層(2)の平らな側と、接着剤キャリア層(6)の活性物質非含有感圧接着剤(7)との間に、さらなる層が存在しないことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
活性物質含有ポリマーマトリックス(3)および活性物質非含有感圧接着剤(7)のポリマーマトリックスが、独立して、アクリレート、シリコーン感圧接着剤、ポリイソブチレン、SISコポリマー、シリコーン-アクリレートハイブリッド系、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
薬理学的に活性な物質が、α-アドレナリンアゴニスト、β-アドレナリンアゴニスト、α-アドレナリンアンタゴニスト、β-アドレナリンアンタゴニスト、鎮痛剤(睡眠誘発性)、鎮痛剤(非睡眠誘発性)、アンドロゲン、麻酔薬、抗アレルギー剤、抗アンドロゲン、抗狭心症薬、抗不整脈薬、ペニシリン、抗糖尿病薬、抗痴呆薬、抗ヒスタミン剤、抗片頭痛薬、水素化麦角アルカロイド、カルシウム拮抗剤、ホルモン、セロトニンアンタゴニスト、血小板凝集阻害剤、抗うつ薬、気管支拡張剤、エストロゲン、ゲスターゲン、血管拡張剤、ニコチン、またはそれらの混合物からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
コーティングの厚さが減少した周領域(4)が、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)および/または活性物質非含有感圧接着剤(7)のポリマーマトリックスの厚さの20%以下、特に15%以下、好ましくは0.1~12%、であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
コーティングの厚さが減少した周領域(4)の幅が、0.05~5.0mm、特に0.1~3.0mmであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
コーティングの厚さが減少した周領域(4)が、本質的に破壊されていないことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
活性物質含有ポリマーマトリックス(2)および/または活性物質非含有感圧接着剤(7)のコーティング厚さが、20~800μm、特に40~400μm、であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
活性物質含有ポリマーマトリックス(3)および活性物質非含有感圧接着剤(7)のポリマーマトリックスの表面全体を覆う保護層(5)が設けられ、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)に面する平らな側の保護層(5)が、特に接着を低減するコーティング、好ましくは、シリコーン処理またはフルオロシリコーン処理されたコーティングが付与されている、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム(1)を製造する方法であって、
活性物質キャリア層(2)に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックス(3)を有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層(2)を供給する工程、および、
活性物質非含有感圧接着剤(7)によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層(6)を、活性物質非含有感圧接着剤(7)により、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)とは反対側に面した活性物質キャリア層(2)の平らな側に直接、結合させる工程、
を含み、
接着剤キャリア層(6)は、活性物質キャリア層(2)の縁を越えて周辺側に突出しており、
活性物質含有ポリマーマトリックス(3)と活性物質非含有感圧接着剤(7)との間に、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)および/または活性物質非含有感圧接着剤(7)でコーティングの厚さが減少した周領域(4)が存在する方法であって、コーティングの厚さが減少した周縁領域(4)は、好ましくは、表面全体が活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングされた活性物質キャリア層(2)の材料上にパンチングツールをガイドすることによって形成され、前記ツールは、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側に、より具体的には同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備え、該中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層(2)に押し付けられて、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングの厚さが減少し、その後、カッティングブレードを使用して、活性物質含有ポリマーマトリックス(3)でコーティングの厚さが減少した周縁領域(4)を有する活性物質キャリア層(2)が打ち抜かれることを特徴とする、方法。
【請求項14】
動物またはヒトの治療のための、特に、性腺機能低下症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、双極性障害、筋肉緊張、激痛、または高血圧の治療のための、または、ホルモン補充療法、または避妊のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム(1)の使用。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの経皮治療システム(1)を外装パッケージに含み、任意に、請求項14に記載の使用のための指示を含む使用説明書を含んでもよい、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質キャリア層に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックスを有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層、および、活性物質非含有感圧接着剤によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層であって、活性物質非含有感圧接着剤により、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面した活性物質キャリア層の平らな側に直接、結合された接着剤キャリア層、を含む経皮治療システムであって、前記接着剤キャリア層は、活性物質キャリア層の縁を越えて周辺側に突出する、経皮治療システム(略称「TTS」)に関する。本発明はさらに、この経皮治療システムの使用、およびそれを含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮治療システム(TTS)は、層状構造を有する平面的な医薬品であり、賦形剤(浸透促進剤など)を伴いまたは伴わないで、1つ以上の活性物質が、任意の感圧接着性ポリマーマトリックスに埋め込まれている。このポリマーマトリックスは、通常、バッキングフィルムを活性物質含有ポリマー組成物でコーティングし、次に、それに、経皮治療システムの適用中においても皮膚上に残るカバーフィルムを供給することによって製造される。バッキングフィルムは、保管中のポリマーマトリックスの保護層として機能し、場合により、経皮治療システムを後で使用するための適用補助材として機能する。
【0003】
経皮治療システムは、適用期間の全体にわたって活性物質の継続的な供給を可能にする。したがって、それらの濃度-時間プロファイルにおいては、それらは持続-点滴注入に匹敵する。さまざまな活性物質および活性物質の組み合わせを有する多くの経皮治療システムが、現在、医薬品市場に存在している。経皮治療システムの最も重要な適応領域の1つは、特に更年期の女性における、ホルモン補充療法である。経皮ホルモン補充療法の初期に、この目的で使用されたのは、主にエストロゲン含有単剤製品であった。しかしながら、最近では、エストロゲン(例えば、17β-エストラジオール)およびゲスターゲン(例えば、ノルエチステロン)の組み合わせを含む経皮治療システムが、利用可能になっている。男性ホルモンであるテストステロンは、ホルモン補充療法、特に性腺機能低下症の治療に使用されるステロイドホルモンのグループの1つである。
【0004】
多くの市販の経皮治療システムは、いわゆるマトリックスシステムとして構成されている。これらは、感圧接着剤または非感圧接着剤を備えたポリマーマトリックス中に、活性物質が溶解または懸濁した形態で存在するシステムである。このようなポリマーマトリックスは、主にポリアクリレートをベースにした感圧接着剤で構成されている。
【0005】
経皮治療システムの活性物質パッチに含まれる薬理学的に活性な物質は、多くの適用で費用がかかるため、活性物質パッチは、しばしば、切断による損失を最小限に抑えるために、角が形成されて、例えば正方形に切断されることが多い。角のあるパッチは皮膚から剥がれやすいので、しっかりと保持するために、通常は角が丸いまたは全体的に丸い固定パッチをその上に貼り付ける。しかしながら、そのような配置は、直接隣接する固定パッチの感圧接着性マトリックスに、活性物質および/または1つまたは複数の賦形剤が、望ましくない移動をする現象を引き起こす。活性物質が、感圧接着性マトリックスから皮膚に移動できなくなるおそれがあるため、これは、活性物質の制御不能なロスにつながり、その結果、活性物質の所望の投与量を達成できなくなるおそれがある。この移動問題に対抗するための様々なアプローチが、従来技術により知られている。
【0006】
US2017/0290779A1は、皮膚適用のためのパッチを開示しており、該パッチは、活性リザーバ層、この層を越えて突出するキャリア層、および、接着剤でコーティングされた前記2層を越えて突出するさらなるキャリア層を含む。リザーバ層は、感圧接着剤および/または非接着性ポリマーマトリックスを含み得る。この層構造の製造は、非常に複雑であり、その構成には高度な製造精度が必要となる。
【0007】
WO2016/081616A2は、水溶性活性物質、ペプチド、タンパク質、およびオリゴ糖の経皮送達のためのパッチ製剤を記載している。該パッチは、活性物質およびポリマーマトリックスを含む層と、接着剤層とを含み、該接着剤層は、活性物質/ポリマー層を越えて突出している。接着剤層は、活性物質/ポリマー層を越えて突出する接着剤のない領域をさらに含む。
【0008】
EP0755284B1は、皮膚および/または経皮の物質の投与のための局所包帯を教示しており、該包帯は、接着剤でコーティングされたキャリア層を含む。キャリア層は、接着剤を含まない円形のカットアウト領域をさらに含む。カットアウト領域では、活性物質含有パッドが挿入される窪みが定義され、パッドはカットアウト領域よりも直径が小さい。これにより、活性物質含有パッドと接着剤層との間に、層の厚さが減少した中間領域が生じる。
【0009】
上記の2つの解決手段の場合、製造中の異なる時点において異なるコーティング材料およびコーティング構造によってキャリア層をコーティングすることは、複雑であり、問題が発生しやすいことが不利な点であると、認識することができる。さらに、この構造の場合、キャリア層はすべてのコーティング材料と適合性がなければならず、これは材料の選択を制限する。
【発明の概要】
【0010】
上記先行技術を出発点として、本発明の目的は、より安価に製造することができ、同時に皮膚に対して良好な接着特性を有し、そして薬理学的に活性な物質が固定パッチの接着剤に移動することを大幅に防止する、冒頭で言及したタイプの経皮治療システムを提供することである。
【0011】
この目的は、冒頭で述べたタイプの経皮治療システムにおいて、活性物質含有ポリマーマトリックスと、接着剤キャリア層の活性物質非含有感圧接着剤との間に、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤によるコーティングの厚さが減少した領域であって、薬理学的に活性な物質および/または1つ以上の賦形剤が接着剤キャリア層の接着剤に横方向に拡散するのを防ぐ拡散バリアとして機能する領域を設けることによって、達成される。
【0012】
したがって、本発明は、
活性物質キャリア層に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックスを有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層、および
活性物質非含有感圧接着剤によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層であって、活性物質非含有感圧接着剤により、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面した活性物質キャリア層の平らな側に直接、結合された、接着剤キャリア層、
を含み、
接着剤キャリア層は、活性物質キャリア層の縁を越えて周辺側に突出する、経皮治療システムであって、該システムは、活性物質含有ポリマーマトリックスと活性物質非含有感圧接着剤との間に、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤でコーティングの厚さが減少した周領域が存在することを特徴とする、経皮治療システムに関する。
【0013】
コーティングの厚さが減少した周縁領域は、好ましくは、表面全体が活性物質含有ポリマーマトリックスではじめにコーティングされた活性物質キャリア層の上にパンチングツールをガイドすることによって形成され、前記ツールは、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側に、より具体的には同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備えている。このプロセスでは、中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層に押し付けられる。これにより、接着剤が横方向に移動し、この領域において、活性物質含有ポリマーマトリックスによるコーティングの厚さが大幅に減少する。その後、カッティングブレードを使用して、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周縁領域を有する活性物質キャリア層が打ち抜かれる。このプロセスでは、活性物質キャリア層として活性物質含有ポリマーマトリックスでその表面全体にコーティングされたキャリア材料から出発することが可能であり、コーティングされた活性物質キャリア層を、材料を失うことなく、また、複雑な局所コーティング方法を使用することなく、1回の操作で製造することができるため、この手法は特に有利である。このプロセス中に活性物質含有ポリマーマトリックスの残留層の厚さが残っていたとしても、それにもかかわらず、これは、薬理学的に活性な物質が接着剤キャリア層の接着剤に拡散することをほぼ完全に防ぐのに十分である。
【0014】
したがって、本発明はまた、本発明の経皮治療システムを製造する方法であって、
活性物質キャリア層に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックスを有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層を供給する工程、および、
活性物質非含有感圧接着剤によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層を、活性物質非含有感圧接着剤により、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面した活性物質キャリア層の平らな側に直接、結合させる工程、
を含み、
接着剤キャリア層は、活性物質キャリア層の縁を越えて周辺側に突出しており、ここで、該方法は、活性物質含有ポリマーマトリックスと活性物質非含有感圧接着剤との間に、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤でコーティングの厚さが減少した周領域が存在しており、コーティングの厚さが減少した周縁領域は、好ましくは、表面全体が活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングされた活性物質キャリア層の材料上にパンチングツールをガイドすることによって形成され、前記ツールは、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側、より具体的には同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備え、該中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層に押し付けられて、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少し、その後、カッティングブレードを使用して、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周縁領域を有する活性物質キャリア層が打ち抜かれることを特徴とする、方法を提供する。そして、カッティングブレードは、好ましくは、最初にその開始位置に移動し、その後、中空シリンダーが持ち上げられるだけである。パンチングは、活性物質含有ポリマーマトリックスの側からパンチすることも可能であるが、好ましくは、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面した平らな側から実施される。
【0015】
経皮治療システムの最終の作製のために、上記のようにして得たパンチブランクは、接着剤キャリア層が活性物質キャリア層の縁を越えて周辺側に突出するように、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面する平らな側によって、接着剤キャリア層の接着剤側に結合される。その後、このように製造された経皮治療システムは、典型的には、剥離ライナーの形態の保護層で接着側がさらに覆われ、包装される。
【0016】
本発明はさらに、いくつか例を挙げると、性腺機能低下症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、双極性障害、筋肉緊張、激痛、または高血圧の治療のための、または、ホルモン補充療法、または避妊のための、本発明の経皮治療システムの使用に関する。
【0017】
本発明の別の目的は、本発明の経皮治療システムを外装パッケージに含み、任意に、本発明による使用のための指示を含む使用説明書を含んでもよい、キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の経皮治療システムの製造における中間段階を示す。
図2図2は、本発明の完成した経皮治療システムの図2に示される実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
活性物質含有ポリマーマトリックスおよび活性物質非含有感圧接着剤としては、独立して、皮膚での使用に適した当業者に知られている感圧接着剤系を用いることが可能である。本発明の目的のための感圧接着剤は、0~40℃の範囲内で、特に室温で、永続的に粘着性があり、少し圧力によって、異なる表面に、特にヒトの皮膚に、良好な接着を形成する接着剤である。これは「粘着」とも称される。適切な接着剤は、接着テープ、特に医療用接着テープまたは応急処置用包帯の技術分野により、当業者に知られている。適切な感圧接着剤は、例えば、ガラス転移温度Tgが-10℃以下である。ガラス転移温度Tgは、Mettler DSC 12E(Mettler Toledo GmbH、Giessen、ドイツ)を用いて、10K/minの加熱速度で、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。使用可能な感圧接着剤としては、例えば、DE10141652A1において開示されているものである。適切な感圧接着剤は、例えば、Duro-Tak(商標)およびGelva(商標)(ともに、Henkel AG&Co.KGaA)のブランド名で市販されている。適切なシリコーン接着剤(BIO-PSA 7-4101、BIO-PSA 7-4102、BIO-PSA 7-4201、BIO-PSA 7-4202、BIO-PSA 7-4301、BIO-PSA 7-4302、BIO-PSA 7-4401、BIO-PSA 7-4402、BIO-PSA 7-4501、BIO-PSA 7-4502、BIO-PSA 7-4601、BIO-PSA 7-4602)、シリコーン-アクリレートハイブリッド系(7-6101 SilAc Hybrid PSA、7-6102 SilAc Hybrid PSA、7-6301 SilAc Hybrid PSA、7-6302 SilAc Hybrid PSA),および、2成分シリコーン接着剤(MG7-9700 kit(A&B)、MG7-9800 kit(A&B)、MG7-9850 Kit(A&B)、MG7-9900 kit(A&B)、MG7-1010 kit(A&B))は、Dow Corningから市販されており、ポリイソブチレン(Oppanol B10 N、Oppanol B10 SFN、Oppanol B11 SFN、Op-panol B12 N、Oppanol B12 SFN、Oppanol B13 SFN、Oppanol B14 SFN、Oppanol B15 N、Oppanol B15 SFN、Oppanol N50、Oppanol N50 SF、Oppanol N80、Oppanol N100、Oppa-nol N150)は、BASF SEから、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(JSR SIS 5505、JSR SIS 5403、JSR SIS 5250、JSR SIS 5229、JSR SIS 5002)は、日本のJSRライフサイエンスから、そして、適切なポリウレタン感圧接着剤(Transform(商標)TPU)は、Lubrizolから、市販されている。
【0020】
本発明の経皮治療システムは、活性物質キャリア層および接着剤キャリア層を含む。活性物質キャリア層および接着剤キャリア層に使用される担体材料は、同じであっても異なっていてもよい。担体は、フィルム、織布、敷布、不織布、または編布の形態であり得る。担体は、便宜上、該システムが皮膚の輪郭にフィットすることができるのに十分な柔軟性を有している。適切な担体材料としては、感圧接着テープに使用される従来の柔軟性のある担体材料が挙げられ、例えば、ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、統計的配向性のあるナイロン繊維、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、レーヨンなどの天然繊維などが挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート-アルミニウム-ポリエチレン複合材料などの層状の担体も適している。
【0021】
担体は、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび活性物質非含有感圧接着剤の成分に対して本質的に不活性であるべきである。担体材料の厚さは、求める要件に依存するが、例えば、5~100μmの範囲内である。
【0022】
使用される担体材料は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、その厚さは、さらに好ましくは、10~40μmの範囲内である。
【0023】
活性物質キャリア層および特に接着剤キャリア層のコーティングされていない側は、着用時にパッチを目立たなくするために、例えば皮膚色で、外側コーティングを有することができる。
【0024】
経皮治療システムの表面の面積は、要件に依存するものであるが、通常は、1.0~250cmである。
【0025】
活性物質含有ポリマーマトリックスおよび活性物質非含有感圧接着剤のポリマーマトリックスには、表面全体を覆う保護層を設けることができ、保護層は、活性物質含有ポリマーマトリックスに面する平らな側において、特に接着を低下させるコーティングが施され、好ましくは、シリコーン処理されており、特にシリコーン接着剤の場合はフルオロシリコーン処理されている。接着を低下させるコーティングは、感圧接着面を露出させるために、TTSの適用前に剥がすため、保護層の除去を容易にする。適切な保護層としては、ポリエステルシート、ポリエチレンシート、ポリスチレンシート、または、適切なフルオロポリマーまたはシリコーンベースのコーティングでコーティングされたポリエチレンコート紙などの既知のシート材料を含む、従来の剥離層が挙げられる。
【0026】
本発明は、特に以下の実施形態に関する。
第1の実施形態において、本発明は、
活性物質キャリア層に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックスを有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層、および
活性物質非含有感圧接着剤によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層であって、活性物質非含有感圧接着剤により、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面した活性物質キャリア層の平らな側に直接、結合された、接着剤キャリア層、
を含み、
接着剤キャリア層は、活性物質キャリア層の縁を越えて周辺側に突出する、経皮治療システムであって、
活性物質含有ポリマーマトリックスと活性物質非含有感圧接着剤との間に、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤でコーティングの厚さが減少した周領域が存在することを特徴とする、経皮治療システム、に関する。
【0027】
第2の実施形態において、本発明は、接着剤キャリア層が、活性物質非含有感圧接着剤によりできるだけ完全にコーティングされ、活性物質キャリア層に結合されており、活性物質キャリア層が、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周縁領域を有することを特徴とする、実施形態1に記載のシステム、に関する。
【0028】
第3の実施形態において、本発明は、コーティングの厚さが減少した周縁領域が、表面全体が活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングされた活性物質キャリア層の材料上にパンチングツールをガイドすることによって形成されるかまたは形成可能であり、前記ツールは、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側に、より具体的には同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備え、該中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層に押し付けられて、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少し、その後、カッティングブレードを使用して、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周縁領域を有する活性物質キャリア層が打ち抜かれたことを特徴とする、実施形態2に記載のシステム、に関する。
【0029】
第4の実施形態において、本発明は、接着剤キャリア層が、活性物質キャリア層に隣接するところで、活性物質非含有感圧接着剤でコーティングの厚さが減少した周領域を有することを特徴とする、実施形態1に記載のシステム、に関する。
【0030】
第5の実施形態において、本発明は、該システムにおいて、活性物質含有ポリマーマトリックスが、活性物質キャリア層に直接適用され、および、活性物質非含有感圧接着剤が、接着剤キャリア層に直接適用されており、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面する活性物質キャリア層の平らな側と、接着剤キャリア層の活性物質非含有感圧接着剤との間に、さらなる層が存在しないことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0031】
第6の実施形態において、本発明は、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび活性物質非含有感圧接着剤のポリマーマトリックスが、独立して、アクリレート、シリコーン感圧接着剤、ポリイソブチレン、SISコポリマー、シリコーン-アクリレートハイブリッド系、例えば、Dow Corning Healthcare Solutionsにより販売されているもの、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0032】
第7の実施形態において、本発明は、薬理学的に活性な物質が、α-アドレナリンアゴニスト、β-アドレナリンアゴニスト、α-アドレナリンアンタゴニスト、β-アドレナリンアンタゴニスト、鎮痛剤(睡眠誘発性)、鎮痛剤(非睡眠誘発性)、アンドロゲン、麻酔薬、抗アレルギー剤、抗アンドロゲン、抗狭心症薬、抗不整脈薬、ペニシリン、抗糖尿病薬、抗痴呆薬、抗ヒスタミン剤、抗片頭痛薬、水素化麦角アルカロイド、カルシウム拮抗剤、ホルモン、セロトニンアンタゴニスト、血小板凝集阻害剤、抗うつ薬、気管支拡張剤、エストロゲン、ゲスターゲン、血管拡張剤、ニコチン、またはそれらの混合物からなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0033】
第8の実施形態において、本発明は、コーティングの厚さが減少した周領域が、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤のポリマーマトリックスの厚さの20%以下、特に15%以下、好ましくは0.1~12%、であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。コーティングの厚さが減少した領域では、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤が完全に除去されていることも可能である。
【0034】
第9の実施形態において、本発明は、コーティングの厚さが減少した周領域の幅が、0.05~5.0mm、特に0.1~3.0mmであることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0035】
第10の実施形態において、本発明は、コーティングの厚さが減少した周領域が、本質的に破壊されていないことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0036】
第11の実施形態において、本発明は、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤のコーティング厚さが、20~800μm、特に40~400μm、であることを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0037】
第12の実施形態において、本発明は、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび活性物質非含有感圧接着剤のポリマーマトリックスの表面全体を覆う保護層が設けられ、活性物質含有ポリマーマトリックスに面する平らな側の保護層が、特に接着を低減するコーティング、好ましくは、シリコーン処理またはフルオロシリコーン処理されたコーティングが付与されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載のシステム、に関する。
【0038】
第13の実施形態において、本発明は、実施形態1~12のいずれか1つに記載の経皮治療システムを製造する方法であって、
活性物質キャリア層に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックスを有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質を含む、活性物質キャリア層を供給する工程、および、
活性物質非含有感圧接着剤によりできるだけ完全にコーティングされた接着剤キャリア層を、活性物質非含有感圧接着剤により、活性物質含有ポリマーマトリックスとは反対側に面した活性物質キャリア層の平らな側に直接、結合させる工程、
を含み、
接着剤キャリア層は、活性物質キャリア層の縁を越えて周辺側に突出しており、
活性物質含有ポリマーマトリックスと活性物質非含有感圧接着剤との間に、活性物質含有ポリマーマトリックスおよび/または活性物質非含有感圧接着剤でコーティングの厚さが減少した周領域が存在する方法であって、コーティングの厚さが減少した周縁領域は、好ましくは、表面全体が活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングされた活性物質キャリア層の材料上にパンチングツールをガイドすることによって形成され、前記ツールは、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側に、より具体的には同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備え、該中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層に押し付けられて、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少し、その後、カッティングブレードを使用して、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周縁領域(4)を有する活性物質キャリア層が打ち抜かれることを特徴とする、方法、に関する。
【0039】
第14の実施形態において、本発明は、ヒトまたは動物の治療のための、特に、性腺機能低下症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、双極性障害、筋肉緊張、激痛、または高血圧の治療のための、または、ホルモン補充療法、または避妊のための、実施形態1~12のいずれか1つに記載の経皮治療システムの使用、に関する。
【0040】
第15の実施形態において、本発明は、実施形態1~12のいずれか1つに記載の少なくとも1つの経皮治療システムを外装パッケージに含み、任意に、実施形態14に記載の使用のための指示を含む使用説明書を含んでもよい、キット、に関する。
【実施例
【0041】
以下、図1および図2に示す実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の経皮治療システムの製造における中間段階を示す。
図2は、本発明の完成した経皮治療システムの図2に示される実施形態を示す。
【0042】
図2は、本発明による経皮治療システム1の実施形態を示している。経皮治療システム1は、活性物質キャリア層2に適用される少なくとも1つの活性物質含有ポリマーマトリックス3を有し、前記マトリックスは、少なくとも1つの感圧接着剤、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質(本例の場合、スコポラミン)を含む、活性物質キャリア層2を備えている。活性物質キャリア層2は、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周縁領域4を有しており、活性物質含有ポリマーマトリックス3の表面全体を覆い、縁においてこれを越えて突出し、感圧接着剤の接着性を減少させるためにシリコーンコーティングが施されている、保護層5上に、適用されている。
【0043】
活性物質含有ポリマーマトリックス3に面する平らな側において、活性物質キャリア層2は、活性物質非含有感圧接着剤7によって活性物質キャリア層2に直接結合される接着剤キャリア層6によって完全に覆われている。接着剤キャリア層6は、その表面全体にわたって、活性物質非含有感圧接着剤7でコーティングされている。接着剤キャリア層6が活性物質キャリア層2に結合する結果、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周領域4は、一周にわたって曲げられている。活性物質含有ポリマーマトリックス3の感圧接着剤および活性物質非含有感圧接着剤7は、両方、本例の場合、シリコーンベースの感圧接着剤である。
【0044】
本発明の経皮治療システム1の製造において、活性物質キャリア層2は、まず、少なくとも1つの感圧接着剤(本例の場合、シリコーンベースの感圧接着剤)、および、ヒトまたは動物の皮膚を通して吸収可能な少なくとも1つの薬理学的に活性な物質(本例の場合、スコポラミン)を含む、活性物質含有ポリマーマトリックス3でコーティングされる。活性物質含有ポリマーマトリックス3でその表面全体が最初にコーティングされた活性物質キャリア層2の材料の上に、中空シリンダーと、該中空シリンダーの外側に同心円状に直接それに隣接して配置されたカッティングブレードとを備えたパンチングツールがガイドされる。このプロセスでは、中空シリンダーが、まずコーティングされた活性物質キャリア層2に押し付けられて、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少し、その結果、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周領域4が得られる。その後、カッティングブレードを使用して、コーティングの厚さが減少した周領域4の外側で活性物質キャリア層2を打ち抜き、そして、これが、シリコーンコーティングを備えた保護層5に適用され、前記保護層は、活性物質含有ポリマーマトリックス3を完全に覆い、その縁を越えて突出している。このプロセスにおいて、活性物質含有ポリマーマトリックス3は、中空シリンダーの接触圧力および活性物質含有ポリマーマトリックス3の柔らかさに応じて、中空シリンダーの領域内の全てまたは大部分が完全に除去され得る。これにより、中間体10が得られ、その層構造は図1に示される。
【0045】
活性物質含有ポリマーマトリックス3に面する中間体10の平らな側において、活性物質キャリア層2の表面全体は、活性物質非含有感圧接着剤7により活性物質キャリア層2に直接結合される接着剤キャリア層6によって覆われて、本発明の経皮治療システム1が得られる。この場合も、シリコーンベースの感圧接着剤が使用される。接着剤キャリア層6が活性物質キャリア層2に結合する結果、活性物質含有ポリマーマトリックスでコーティングの厚さが減少した周領域4が、一周にわたって曲げられるが、これは拡散バリアとして機能する能力に影響を及ぼさない。
【0046】
製造後、このように製造された経皮治療システム1は、個々のアルミニウム積層ポリエステルフィルムパッケージ内に密封され、40℃および相対湿度75%で6ヶ月間、人工気候室内で保管される。その後、経皮治療システム1をパッケージから取り出し、スコポラミンの移動の可能性について調査する。これらの調査では、活性物質非含有感圧接着剤7でスコポラミンは検出されなかった。
【0047】
本発明の経皮治療システム1を適用するために、保護層5を剥がし、残りの層構造物を、皮膚の所望の領域に、接着剤側を下にして置き、圧力を加える。
【0048】
1~2日の使用期間後に本発明の経皮治療システム1を皮膚から剥離した後、分析すると、活性物質キャリア層2を越えて突出する接着剤キャリア層6における領域において、活性物質非含有感圧接着剤7中に、スコポラミンは検出されなかった。
図1
図2
【国際調査報告】