(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】二次電池におけるデンドライト成長防止
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20220119BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20220119BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220119BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/44
H01M50/414
H01M10/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531351
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 IL2019051325
(87)【国際公開番号】W WO2020115743
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513287255
【氏名又は名称】フィナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ダニーノ アヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】ヤクポフ イルヤ
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
【Fターム(参考)】
5H021CC01
5H021CC04
5H021EE12
5H021HH10
5H028AA05
5H028CC08
5H028CC11
5H028CC26
5H028EE06
(57)【要約】
亜鉛酸アニオンが二次電池の亜鉛ベースのアノードとセパレータとの間の区画の外側に拡散するのを防止することによって、その二次電池の亜鉛ベースのアノードとセパレータとの間の区画への亜鉛デンドライト成長が制限される二次電池及び対応する方法が提供される。デンドライト成長を制限するセパレータは、上記アルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるように構成されたイオン選択膜(複数可)を含んでもよい。この膜は、補強されていてもよく、かつ/又は亜鉛酸イオンを含まない電解質を有する内部区画(複数可)を支持してもよい。より一般的には、電荷移動イオンに対しては透過性であるが金属イオンに対しては不透過性であり、電荷移動イオンをアノード区画に制限するセパレータが提供され、このアノード区画において、金属イオンは、電池セルの構造的及び機能的完全性を損なう可能性のあるデンドライトを形成しない方法で堆積してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛ベースのアノードと、カソードと、アルカリ電解質と、前記亜鉛ベースのアノードを前記カソードから分離するセパレータとを含む二次電池であって、
前記セパレータは、前記アルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるように構成されたイオン選択膜を含む二次電池。
【請求項2】
前記セパレータが、亜鉛酸アニオンが前記亜鉛ベースのアノードと前記セパレータとの間の区画の外側に拡散するのを防止することによって、亜鉛デンドライト成長を前記区画に制限するようにさらに構成されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記イオン選択膜がセロファン膜である請求項1又は請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記イオン選択膜が薄膜複合膜である請求項1又は請求項2に記載の二次電池。
【請求項5】
前記イオン選択膜が非対称逆浸透膜である請求項1又は請求項2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記セパレータが機械的に補強されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記セパレータが繊維状ポリマーで補強されている請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記セパレータが繊維状ポリマーの層を含む請求項6に記載の二次電池。
【請求項9】
前記セパレータが機械的支持体を含む請求項6に記載の二次電池。
【請求項10】
前記セパレータが、亜鉛酸イオンを含まない電解質を有する少なくとも1つの内部区画を支持するように構成されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
二次電池における亜鉛デンドライト成長を制限する方法であって、前記二次電池において亜鉛ベースのアノードとイオン選択的なセパレータとの間に区画を提供する工程であって、前記区画は、亜鉛酸アニオンが前記区画の外側に拡散するのを防止する工程を含む方法。
【請求項12】
前記二次電池のアルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるイオン選択膜を配置する工程と、
前記イオン選択膜から、前記アルカリ電解質中で前記二次電池の前記亜鉛ベースのアノードをカソードから分離する前記セパレータを構成する工程と
をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜を配置することが、膜構成要素として、セロファン膜、薄膜複合膜及び非対称逆浸透膜のうちの少なくとも1つを使用することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
繊維状ポリマー、繊維状ポリマーの層及び機械的支持体のうちの少なくとも1つを用いて前記セパレータを機械的に補強する工程をさらに含む請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
亜鉛酸イオンを含まない電解質を有する少なくとも1つの内部区画を支持するように前記セパレータを構成する工程をさらに含む請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの金属ベースのアノードと、少なくとも1つのカソードと、アルカリ電解質と、前記少なくとも1つのアノードを前記少なくとも1つのカソードから分離する少なくとも1つのセパレータとを含む二次電池であって、前記セパレータは、前記アルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、金属イオンに対して不透過性であるように構成されたイオン選択膜を含む二次電池。
【請求項17】
前記少なくとも1つのセパレータが、前記金属イオンが前記少なくとも1つのアノードと前記少なくとも1つのセパレータとの間の区画の外側に拡散するのを防止することによって、前記金属イオンの堆積を前記区画に制限するようにさらに構成されている請求項16に記載の二次電池。
【請求項18】
前記イオン選択膜が、セロファン膜、薄膜複合膜及び非対称逆浸透膜のうちの少なくとも1つを含む請求項16又は請求項17に記載の二次電池。
【請求項19】
前記セパレータが、繊維状ポリマー、繊維状ポリマーの層及び機械的支持体のうちの少なくとも1つで機械的に補強されている請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の分野に関し、より具体的には、デンドライト成長を制限又は防止するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ベースのアノードを有する二次電池は、充電時にデンドライト成長に悩まされることが多く、これは、その広範な使用を妨げる性能及び安全性の問題を提起する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
以下は、本発明の最初の理解を提供する簡略化された要約である。この要約は、必ずしも重要な要素を特定したり、本発明の範囲を限定したりするものではなく、単に以下の説明の導入として機能するものである。
【0004】
本発明の1つの態様は、少なくとも1つの金属ベースのアノードと、少なくとも1つのカソードと、アルカリ電解質と、上記少なくとも1つのアノードを上記少なくとも1つのカソードから分離する少なくとも1つのセパレータとを含む二次電池であって、上記セパレータは、上記アルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、金属イオンに対して不透過性であるイオン選択膜を含む二次電池を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、亜鉛ベースのアノードと、カソードと、アルカリ電解質と、上記亜鉛ベースのアノードを上記カソードから分離するセパレータとを含む二次電池であって、上記セパレータは、上記アルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるように構成されたイオン選択膜を含む二次電池である。
【0006】
別の態様では、本発明は、二次電池における亜鉛デンドライト成長を制限する方法であって、この二次電池は、亜鉛ベースのアノード、カソード、及びアルカリ電解質を有し、当該方法は、上記二次電池のアルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるイオン選択膜を含むセパレータを提供する工程と、アルカリ電解質中で、上記亜鉛ベースのアノードと上記カソードとの間に、上記セパレータを用いて区画を形成する工程とを含む。
【0007】
本発明のこれらの、追加の、及び/若しくは他の態様並びに/又は利点は、以下の詳細な説明に記載されており、詳細な説明から推論できる可能性があり、及び/又は本発明の実施によって学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施形態をよりよく理解するために、また、本発明がどのように実施されうるかを示すために、これより、純粋に例示として、添付の図面を参照することにする。図面では、全体にわたって同様の数字は対応する要素又はセクションを示す。
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る二次電池の高レベルの模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る方法を示す高レベルのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明の様々な態様が記載される。説明の目的のために、本発明の完全な理解を提供するために、特定の構成及び詳細が示されている。しかしながら、本発明は、本明細書中に示された特定の詳細がなくても実施できることも、当業者には明らかであろう。さらには、周知の特徴は、本発明を不明瞭にしないために、省略又は簡略化されている可能性がある。図面を具体的に参照するとき、示された特定事項は例示であり、本発明の説明的な論述を目的としたものに過ぎず、本発明の原理及び概念的側面についての最も有用で容易に理解できる説明であると考えられるものを提供することを目的として提示されていることが強調される。この点において、本発明の基本的な理解に必要な以上に、本発明の構造的な詳細を示す試みはなされておらず、図面を用いて解釈される説明は、本発明のいくつかの形態がどのように実際に具現化されうるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
本発明の少なくとも1つの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、以下の説明に記載された、又は図面に示された構造の詳細及び構成要素の配置にその適用が限定されないことを理解されたい。本発明は、様々な方法で実施又は遂行されてもよい他の実施形態に適用可能であるだけでなく、開示された実施形態の組み合わせにも適用可能である。本明細書で採用されている言い回しや専門用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではないことも理解されたい。
【0012】
本発明の実施形態は、亜鉛ベースの電池等の二次電池の安全性及び性能を向上させるための効率的かつ経済的な方法及び機構を提供し、それによってエネルギー貯蔵の技術分野に改善をもたらす。例えば、拡散による亜鉛酸イオンの移動を防止するためにセパレータを配置することにより亜鉛酸アニオンが二次電池の亜鉛ベースのアノードとセパレータとの間の区画の外側に拡散するのを防止することによって、亜鉛デンドライト(樹枝状晶)成長が、その二次電池の亜鉛ベースのアノードとセパレータの間の区画に制限される二次電池及びそれに対応する方法が提供される。デンドライト成長を制限するセパレータは、アルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるように構成されたイオン選択膜(複数可)を含んでいてもよい。この膜は、補強されていてもよく、かつ/又は亜鉛酸イオンを含まない電解質を有する内部区画の境界を提供してもよく、その区画を支持してもよい。より一般的には、様々な実施形態において、電荷移動イオンに対しては透過性であるが金属イオンに対しては不透過性であり、金属イオンをアノード区画に制限するセパレータが提供され、このアノード区画において、金属イオンは、電池セルの構造的及び機能的完全性を損なう可能性のあるデンドライトを形成しない方法で堆積してもよい。
【0013】
当該電池は、セルのアノード(複数可)とカソード(複数可)との間に配置された、電池の高性能化とサイクル寿命の延長をもたらすイオン交換膜(複数可)を含んでいてもよい。例えば、開示された電池は、電気自動車に使用されてもよい。有利なことに、開示された実施形態は、デンドライト成長を克服し、デンドライト成長及び関連する安全性と寿命の問題に起因して現在は広く使用されていない亜鉛ベースの二次電池の使用を可能にする。再充電可能な金属アノードのこの固有の問題は、電池の放電と充電のサイクル中に、アノードの金属が解離と復元を繰り返すという事実に起因する。放電時にはアノードの金属が可溶性のイオンや不溶性の酸化化合物に変化して「消滅」し、一方、充電時にはその金属が金属イオンから金属に還元されて「復元」される。この金属還元は、電気めっき浴での金属めっきのプロセスに類似している。従来の技術では、電池内の金属還元サイクルは、通常、固体の高密度金属層の形成には好ましくない条件で行われる。その代わり、還元プロセスの結果として、放電/充電を数サイクル行った後の金属アノードの平らな表面にはすぐに粗さが生じ、局所的な凹凸はすぐに樹枝状の金属結晶、「デンドライト」に変化し、これが反対側の電極(カソード)の方向に伝播する。成長したデンドライトは、電池のセパレータを突き破り、内部短絡を引き起こし、電池の有効容量やサイクル寿命に影響を与える。内部短絡は、二次電池の分野では安全上の大きな問題でもある。
【0014】
以下の開示は、デンドライトの成長という従来技術の障壁を克服し、二次電池、とりわけ亜鉛ベースの電池の寿命を延長するセルを提供する。
【0015】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る二次電池100の高レベル模式図である。二次電池100は、亜鉛ベースのアノード110と、カソード120と、アルカリ電解質140と、亜鉛ベースのアノード110をカソード120から分離するセパレータ130とを含む。セパレータ130は、セルの内部空間を、アノード110に接触している電解質140を含むアノード区画111と、アノード120に接触している電解質140を含むカソード区画121とに分離する。セパレータ130は、アルカリ電解質140(例えば、KOH)の電荷移動カチオン(例えば、K
+)に対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンZn(OH)
4
2-112に対して不透過性であるイオン選択膜132を含む。本発明者らは、亜鉛酸イオン112がデンドライト成長に寄与するので、イオン選択膜132の形で亜鉛酸イオンに対する障壁を置くことが、有利にもセパレータ130を通ってカソード区画121へのデンドライト成長を防止し、亜鉛堆積物115をアノード区画111に制限することを見出した。それゆえ、セパレータ130は、亜鉛酸アニオン112が区画111の外側に拡散するのを防止することによって、亜鉛ベースのアノード110とセパレータ130との間の区画111に亜鉛のデンドライト成長を制限するように構成されている。充電プロセスの一部としてアノード110上に亜鉛が堆積してもよいが、初期のデンドライト構造113のみがその上に形成される可能性があり、さらなる亜鉛堆積物は、セルの構造的完全性を危険にさらすデンドライトを形成することが防止される。
【0016】
様々な実施形態において、イオン選択膜132は、セロファン膜等のポリマーベースのフィルム、薄膜複合膜及び/又は非対称逆浸透膜を含む、この目的のために当該技術分野で公知の膜から選択されてもよい。様々な実施形態において、セパレータ130は、例えば、イオン選択膜132と一体化されてもよい繊維状ポリマーで機械的に補強されてもよく(
図1では複合層133として示されている)、かつ/又は、セパレータ130は、イオン選択膜132(層133としてさらに内部補強されてもよい)に付着又は隣接して、セパレータ130の機械的支持体134を形成する繊維状ポリマーの層134を含んでもよい。特定の実施形態では、イオン選択膜132は、電荷選択的であって、カチオンを通し、アニオンを通さないものであってもよい。特定の実施形態では、セパレータ130は、亜鉛酸イオンが実質的に枯渇した、又は亜鉛酸イオンを含まない電解質140を有する少なくとも1つの内部区画135を支持するように構成されてもよい。例えば、内部区画(複数可)135は、亜鉛酸イオンが枯渇した、すなわち、亜鉛酸イオンを全く含有しないか又はせいぜい無視できる量しか含有しない電解質140を保持するセル100内の区画及び/又は電解質の外部供給源(図示せず)と流体連通していてもよい。
【0017】
電荷移動イオン(上記の例ではカリウム)が活性金属(上記の例では亜鉛)のイオンとは異なる限り、同様の構造原理が他のタイプの電池にも適用可能であることに留意されたい。そのような場合、セパレータ130及び/又はイオン選択膜132は、電荷移動イオンに対しては透過性であるが活性金属のイオンに対しては不透過性であり、それによりデンドライトの成長の可能性をアノード区画111に制限するように選択されてもよい。
【0018】
特定の実施形態は、充電中にアノード上で金属が還元され、新たに形成された金属堆積物が生成される、金属ベースのアノードを有する電池に適用可能である。金属イオンが錯イオン(例えば、金属水酸化物)で存在する場合には、金属イオンの還元の生成物が電解質バルク(本体)に放出される。例えば、アルカリ亜鉛系二次電池の場合、亜鉛アノードの充電プロセスは、[Zn(OH)4]2-+2e-→[Zn]0+4(OH)-のように記述することができ、金属イオン(Zn2+)が亜鉛酸アニオン([Zn(OH)4]2-)中に存在し、このアニオンがアノード上で分解して、金属亜鉛を生成し、4つのヒドロキシルアニオンを電解質中に放出する。
【0019】
開示されたセパレータ130は、アノード区画111を超えて金属アノード上に金属イオンが堆積するのを防ぎ、それによってデンドライトの成長を制限する。開示された実施形態は、電荷移動イオンが金属イオンとは異なる電池に適用可能であり、例えば、図示されたケースでは、電解質140からのカリウムカチオン(K+)は、アノード区画111に制限されない電荷移動イオンである一方で、亜鉛酸イオンは、セル100の電荷移動能力を損なうことなくアノード区画111に制限される金属イオンであることに留意されたい。なお、本発明は、リチウムイオン電池のように、金属イオンが電荷移動イオンでもある電池には適用できない。
【0020】
様々な実施形態において、セパレータ130は、電荷移動種に対して透過性であり、デンドライトを形成する金属イオンに対して不透過性である(例えば、アルカリ亜鉛二次電池では、アルカリカチオンが電荷移動種であり、亜鉛酸イオンが金属イオンである)。セパレータ130は、金属イオンをアノード区画111に閉じ込め、アノード区画111の限界を超えて金属が堆積しないようして、デンドライトの成長を防ぐ。例えば、亜鉛酸イオンは、アノード区画111を超えて電解質140中で利用できないので、それ以上のデンドライト成長はあり得ない。特定の実施形態では、金属不在(金属フリー)ゾーン(複数可)がカソード120の近傍に形成され、カソード120と直接接触するまでの金属の膨張の確率を最小化し、電池の短絡を防止する。亜鉛堆積物113をマイクロレベルで観察して、本発明者らは、成長しているZn突起113の先端は、セパレータ130に到達した時点でさらなる亜鉛堆積物による成長を停止し(×をつけた矢印で模式的に示す)、セパレータ130の表面に対して側面、横方向、又は接線方向に成長し続け(矢印115で模式的に示す)、セパレータ膜を介してカソード120に向かって伝播し続けることはないことに注目した。なぜなら、金属堆積(及びデンドライト伝播)に必要な亜鉛酸イオンは、デンドライトの側面でのみ利用可能であり、セパレータ区画135(任意)、及びカソード区画121のそれぞれにおいて、電極表面に垂直な方向には利用できないからである。
【0021】
様々な実施形態において、二次電池100であって、少なくとも1つの金属ベースのアノード110と、少なくとも1つのカソード120と、アルカリ電解質140と、アノード110をカソードから分離する少なくとも1つのセパレータ130とを含み、セパレータ130は、アルカリ電解質140の電荷移動カチオンに対して透過性であり、金属イオン112に対して不透過性であるように構成されたイオン選択膜を含む二次電池100が提供される。セパレータ130は、金属イオン112がアノード110とセパレータ130との間の区画(複数可)111の外側に拡散するのを防止することによって、金属イオン112の堆積をアノード110とセパレータ130との間の区画111に制限するようにさらに構成されてもよい。上記イオン選択膜は、セロファン膜(複数可)、薄膜複合膜(複数可)、及び非対称逆浸透膜(複数可)のいずれかを含んでもよく、繊維状ポリマー(複数可)若しくはその層のいずれか、及び/又は他の機械的支持体(複数可)で機械的に補強されてもよい。
【0022】
セパレータ130は、カチオン交換膜、カチオン選択膜、半透膜、サイズ選択膜、電荷選択膜、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カチオン選択膜は、カチオン(特定の実施形態では電荷移動イオン等)のみに対して透過性であり、アニオン(特定の実施形態では金属イオン等)に対して透過性ではない。亜鉛ベースの電池の例では、負の亜鉛酸アニオンはその膜を介して移動できないが、Na+やK+等の正イオンはその膜を介して移動できる。いくつかの実施形態では、サイズ選択膜は、ナトリウム又はカリウム等のより小さいアルカリカチオンを移動させ、より大きい亜鉛酸アニオン又は亜鉛カチオンをその膜を越えて移動させない。様々な実施形態において、セパレータ130の膜は、イオンのサイズ、イオンの電荷、又はイオンの電荷とサイズの両方に関して選択的であってもよい。特定の実施形態では、カチオンサイズは、カチオン自体又は溶媒和カチオン(カチオンサイズは、水分子に囲まれたカチオンのサイズを表す)を指してもよい。
【0023】
図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る方法200を示す高レベルのフロー図である。方法の段階は、上述の二次電池100及びセパレータ130に関して実施されてもよく、これらは任意に方法200を実施するように構成されてもよい。方法200は、以下の段階をその順序によらず含んでもよい。
【0024】
方法200は、亜鉛酸アニオンが二次電池の亜鉛ベースのアノードとセパレータとの間の区画の外側に拡散するのを防止することによって、亜鉛デンドライトの成長を、その二次電池の亜鉛ベースのアノードとセパレータとの間の区画に制限する工程を含む(段階210)。
【0025】
特定の実施形態では、方法200は、二次電池のアルカリ電解質の電荷移動カチオンに対して透過性であり、水和した亜鉛酸アニオンに対して不透過性であるイオン選択膜を配置する工程(段階220)と、そのイオン選択膜から、アルカリ電解質中で二次電池の亜鉛ベースのアノードをカソードから分離するセパレータを構成する工程(段階230)とを含んでもよい。膜220を配置することは、膜構成要素(複数可)として、セロファン膜、薄膜複合膜及び/又は非対称逆浸透膜を使用することを含んでもよい(段階240)。方法200は、繊維状ポリマー(複数可)、繊維状ポリマーの層(複数可)及び/又は他の機械的支持体(複数可)を用いてセパレータを機械的に補強する工程をさらに含んでもよい(段階250)。
【0026】
特定の実施形態では、方法200は、亜鉛酸イオンを含まない電解質を有する少なくとも1つの内部区画を支持するように上記セパレータを構成する工程(段階260)をさらに含んでもよい。
【0027】
以上の説明において、一実施形態は、本発明の一例又は実施態様である。「1つの実施形態」、「一実施形態」、「特定の実施形態」又は「いくつかの実施形態」の様々な登場は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではない。本発明の様々な特徴は、単一の実施形態の文脈で説明されることがあるが、その特徴は、別々に又は任意の適切な組み合わせで提供されてもよい。逆に、本発明は、明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されることがあるが、本発明は、単一の実施形態で実施されてもよい。本発明の特定の実施形態は、上で開示された異なる実施形態からの特徴を含んでもよく、特定の実施形態は、上で開示された他の実施形態からの要素を組み込んでもよい。特定の実施形態の文脈における本発明の要素の開示は、その特定の実施形態のみでの使用を限定するものとはみなされない。さらには、本発明は様々な方法で実行又は実施することができ、本発明は上記の説明で概説したもの以外の特定の実施形態で実施することができることを理解されたい。
【0028】
本発明は、それらの図又は対応する説明に限定されるものではない。例えば、フローは、図示された各ボックスや状態を通って移動する必要はなく、また、図示され説明されたものと全く同じ順序で移動する必要もない。本明細書で使用される技術用語及び科学用語の意味は、特に定義されていない限り、本発明が関連する技術分野の当業者によってそのような用語に割り当てられるはずのものである。本発明は限られた数の実施形態に関して説明されてきたが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ好ましい実施形態の一部を例示するものであると解釈されるべきである。他の可能な変形例、変更例、及び応用例もまた、本発明の範囲内である。従って、本発明の範囲は、これまで説明してきた内容によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその法的な均等物によって限定されるべきである。
【国際調査報告】