(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】芳香族有機アニオンを含むカルニチン塩又はカルニチン誘導体塩を含む組成物を使用したケラチン繊維を処理する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20220119BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220119BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220119BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220119BHJP
A61K 8/368 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/55
A61Q5/00
A61K8/368
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531402
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2019086353
(87)【国際公開番号】W WO2020127767
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・グレーヴ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB102
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC172
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC542
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC791
4C083AC901
4C083EE07
4C083EE21
(57)【要約】
本発明は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、芳香族有機アニオンを含む少なくとも1種のカルニチン塩又はカルニチン誘導体塩を含む組成物を塗布することを含む、ケラチン繊維を処理する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を処理する方法であって、
(i)少なくとも1種の式(I)の化合物:
【化1】
及びその溶媒和物、例えば、水和物を含む組成物(A)を前記ケラチン繊維に塗布するステップを含む、方法
[式中、
・ 同一又は異なってもよいR
1、R
2及びR
3は、(C
1~C
4)アルキル基又は(C
1~C
4)ヒドロキシアルキル基を表し;
・ R
4は、水素原子、(C
1~C
4)アルキル基又は-C(O)R基を表し、ここで、Rは、(C
1~C
3)アルキル基であり;
・ R
5は、水素原子、(C
1~C
4)アルキル基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し;
・ An
-は、下記の式(II)、(III)又は(IV)の化合物
【化2】
から選択される芳香族有機アニオンを表し、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6、R
7及びR
8は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくは、負の電荷を表し;
・ xは、式(I)の化合物の電気的中性を保証するように選択された化学量論係数である]。
【請求項2】
An
-が、下記の式(II’)、(III’)又は(IV’)の化合物
【化3】
から選択され、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6及びR
7は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくは、負の電荷を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- R
6が、ヒドロキシル又は(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
7が、水素原子、又は(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
- R
6が、ヒドロキシル又はメトキシルから選択される基を表し;
- R
7が、水素原子、又は(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基、好ましくは、水素原子、又はメチル若しくはメトキシルから選択される基を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
An
-が、下記の式(II’’)、(III’’)又は(IV’’)の化合物
【化4】
から選択され、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6、R
7及びR
8は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくは、負の電荷を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
R
6、R
7及びR
8が、ヒドロキシル基を表す、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
・ R
1、R
2及びR
3が、メチル基を表し;
・ R
4及びR
5が、水素原子を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
An
-が、請求項1に記載の式(II)の化合物、又は請求項2に記載の式(II’)の化合物、又は請求項5に記載の式(II’’)の化合物、好ましくは、請求項2に記載の式(II’)の化合物、又は請求項5に記載の式(II’’)の化合物、より優先的には、請求項2に記載の式(II’)の化合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物が、下記の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)又は(Ie)の化合物
【化5】
及びこれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物のカチオン性部分が、L又はD配置、好ましくは、L配置の光学異性体の形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物(A)が、前記組成物(A)の総質量に対して、0.1質量%~100質量%、好ましくは、0.5質量%~50質量%、より優先的には、0.5質量%~20質量%、さらにより優先的には、1質量%~10質量%の範囲の式(I)の化合物の総含量を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物(A)が、水、C
2~C
4アルコール、ポリオール、ポリオールエーテル及びこれらの混合物で構成される群から、好ましくは、水、エタノール、イソプロパノール及びこれらの混合物で構成される群から、より優先的には、水、エタノール及びこれらの混合物で構成される群から選択される溶媒を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物(A)が、少なくとも10質量%、好ましくは、少なくとも20質量%、より優先的には、少なくとも30質量%のエタノールを含む水/エタノール混合物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物(A)が、乾燥した若しくは濡れたケラチン繊維、好ましくは、乾燥したケラチン繊維に塗布される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップi)に続き下記のステップii)~iv)
ii)前記組成物(A)を前記ケラチン繊維上に、好ましくは、少なくとも10秒の期間放置するステップ;
iii)前記ケラチン繊維をすすぎ、且つ/又は洗浄するステップ;
iv)前記ケラチン繊維を周囲空気中で又は加熱装置を用いて乾燥させるステップ
から選択される少なくとも1つのさらなるステップを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物(A)。
【請求項17】
下記の式(Ib)、(Ic)、(Id)又は(Ie)の化合物
【化6】
及びこれらの混合物。
【請求項18】
ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、好ましくは、ケラチン繊維の破損を防止するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1種の式(I)の化合物の美容的使用。
【請求項19】
ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、好ましくは、ケラチン繊維の破損を防止するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の組成物(A)の美容的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、芳香族有機アニオンを含む少なくとも1種のカルニチン塩又はカルニチン誘導体塩を含む組成物を塗布することを含む、ケラチン繊維を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、外部大気作用物質、例えば、汚染及び悪天候によって、並びにまた機械的又は化学的処理、例えば、ブラッシング、くしで梳くこと、ヘアダイ、漂白、パーマネントウェーブ、リラクシング及び繰返しの洗浄によって、損傷を受け、弱くなり得る。毛髪は損傷を受け得、長期では、脆くなり得る。
【0003】
このように、これを改善するために、毛髪をコンディショニングすることを意図する毛髪用組成物に頼ることは普通のことである。しかし、これらの毛髪処理によって得られるコンディショニング効果は、経時的に急速にフェードアウトし、シャンプー洗浄に関して満足できる持続性を有さない。
【0004】
カルニチン又はその塩、例えば、カルニチンタルトレート又はカルニチンラクテートは、毛髪用組成物中で使用することができることは公知である(特に、(特許文献1)、(特許文献2)及び(特許文献3)を参照されたい。同様に、ある特定の有機酸は、毛髪用組成物中で使用することができることは公知である(特に、(特許文献4)を参照されたい)。しかし、これらの化合物は、特に、くしで梳く間の毛髪の破損の防止に関して必ずしも完全に満足できるものであるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第19539859号明細書
【特許文献2】欧州特許第1800654号明細書
【特許文献3】欧州特許第2111852号明細書
【特許文献4】欧州特許第0978272号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特に、くしで梳く間に及び長続きする様式で、繊維の破損を低減させるために、繊維の質を保存するか、又はそれどころか改善することを可能とし、すなわち、シャンプー洗浄に関して満足できる持続性を示す毛髪を処理する方法を開発することが依然として真に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの問題の全ては、1個若しくは複数の芳香族有機アニオンを有するカルニチン塩又はカルニチン誘導体塩を含む組成物の毛髪への塗布が関与する、本発明による方法によって解決することができることを出願人は驚いたことに見出した。
【0008】
第1の態様によれば、本発明の対象は、
(i)少なくとも1種の式(I)の化合物:
【化1】
及びその溶媒和物、例えば、水和物を含む組成物(A)をケラチン繊維に塗布するステップを含む、ケラチン繊維を処理する方法であり、
式中、
・ 同一又は異なってもよいR
1、R
2及びR
3は、(C
1~C
4)アルキル基又は(C
1~C
4)ヒドロキシアルキル基を表し;
・ R
4は、水素原子、(C
1~C
4)アルキル基又は-C(O)R基を表し、ここで、Rは、(C
1~C
3)アルキル基であり;
・ R
5は、水素原子、(C
1~C
4)アルキル基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し;
・ An
-は、下記の式(II)、(III)又は(IV)の化合物
【化2】
から選択される芳香族有機アニオンを表し、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6、R
7及びR
8は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し;
・ xは、式(I)の化合物の電気的中性を保証するように選択された化学量論係数である。
【0009】
第2の態様によれば、本発明の対象は、上記に定義されているような組成物(A)である。
【0010】
第3の態様によれば、本発明の対象は、下記の式(Ib)、(Ic)、(Id)又は(Ie)の化合物
【化3】
である。
【0011】
第4の態様によれば、本発明の対象は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、少なくとも1種の上記に定義されているような式(I)の化合物の美容的使用である。
【0012】
最後の態様によれば、本発明の対象は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、少なくとも1種の上記に定義されているような組成物(A)の美容的使用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語「ケラチン繊維」は、毛髪、体毛、まつ毛、眉毛、ウール、アンゴラ、カシミア又は毛皮などの、ヒト又は動物起源の繊維を意味することを意図する。本発明によれば、ケラチン繊維は、好ましくは、ヒトケラチン繊維、より優先的には、毛髪である。
【0014】
用語「アルキル基」は、1~12個の炭素原子を含有する直鎖状若しくは分岐状基を意味することを意図する。
【0015】
用語「(C1~C4)アルキル基」は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル又はブチル、より優先的には、メチル又はn-プロピル、さらにより優先的には、メチルを意味することを意図する。
【0016】
用語「(C1~C3)アルキル基」は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピル、より優先的には、メチル又はn-プロピル、さらにより優先的には、メチルを意味することを意図する。
【0017】
用語「(C1~C4)ヒドロキシアルキル基」は、その水素原子の少なくとも1個が、ヒドロキシル(-OH)基で置き換えられている(C1~C4)アルキル基を意味することを意図する。
【0018】
用語「アルコキシル基」は、水素原子に結合しているアルキル基を意味することを意図する。
【0019】
用語「(C1~C4)アルコキシル基」は、1~4個の炭素原子を含むアルコキシル基を意味することを意図する。
【0020】
表現「少なくとも1つ」は、表現「1つ又は複数の」と同義である。
【0021】
表現「ケラチン繊維の破損を防止すること」は、表現「ケラチン繊維の機械的強度を増加させること」と同義である。
【0022】
処理方法
第1の態様によれば、本発明の対象は、上記のようなケラチン繊維を処理する方法である。好ましくは、処理方法は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための方法であり得る。
【0023】
本発明の方法において、カルボキシレート、スルホネート又はホスホネート基を有するある特定の芳香族有機アニオンと組み合わせたカルニチン又はその誘導体の使用によって、ケラチン繊維の機械的強度を改善し、このように特に、くしで梳く間にその破損を低減させることを可能とすることを出願人は驚いたことに見出した。さらに、特に、シャンプー洗浄に関して満足できる持続性を伴って長期に亘り長続きする効果を得ることが可能であることを出願人はまた観察してきた。
【0024】
組成物(A)
第2の態様によれば、本発明の対象はまた、上記のような組成物(A)である。
【0025】
組成物(A)は、少なくとも1種の上記に定義されているような式(I)の化合物を含む。式(I)の化合物は、カルニチン塩又はその誘導体の塩である。式(I)の化合物のカチオン性部分は、カルニチン又はその誘導体であり、式(I)の化合物のアニオン性部分An-は、芳香族有機アニオンである。
【0026】
アニオン性部分
An
-は、下記の式(II)、(III)又は(IV)の化合物
【化4】
から選択される芳香族有機アニオンを表し、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6、R
7及びR
8は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。
【0027】
好ましくは、R9は、負の電荷を表す。
【0028】
An-が、式(II)若しくは(III)の又は式(IV)の化合物(ここで、R9は、水素原子を表す)から選択される場合、化学量論係数xは、化合物(I)の電気的中性を保証するように、1と等しい。代わりに、An-は、式(IV)の化合物(ここで、R9は、負の電荷を表す)から選択される場合、化学量論係数xは、化合物(I)の電気的中性を保証するように、0.5と等しい。
【0029】
組成物(A)は、上記に定義されているような式(II)、(III)又は(IV)の化合物から選択される、異なる芳香族有機アニオンAn-を含む式(I)の化合物の混合物を含み得る。
【0030】
An
-は、好ましくは、下記の式(II’)、(III’)又は(IV’)の化合物
【化5】
から選択することができ、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6及びR
7は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくは、負の電荷を表す。
【0031】
組成物(A)は、上記に定義されているような式(II’)、(III’)又は(IV’)の化合物から選択される、異なる芳香族有機アニオンAn-を含む式(I)の化合物の混合物を含み得る。
【0032】
有利なことには、R6は、ヒドロキシル又は(C1~C4)アルコキシルから選択される基を表すことができ、R7は、水素原子、又は(C1~C4)アルキル若しくは(C1~C4)アルコキシルから選択される基を表すことができる。
【0033】
有利なことには、R6は、ヒドロキシル又はメトキシルから選択される基を表すことができ、R7は、水素原子、又は(C1~C4)アルキル若しくは(C1~C4)アルコキシルから選択される基、好ましくは、水素原子、又はメチル若しくはメトキシルから選択される基を表すことができる。
【0034】
An
-は、好ましくは、下記の式(II’’)、(III’’)又は(IV’’)の化合物
【化6】
から選択することができ、式中、
- 同一又は異なってもよいR
6、R
7及びR
8は、水素原子、又はヒドロキシル、(C
1~C
4)アルキル若しくは(C
1~C
4)アルコキシルから選択される基を表し;
- R
9は、水素原子、負の電荷、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくは、負の電荷を表す。
【0035】
有利なことには、R6、R7及びR8は、ヒドロキシル基を表す。
【0036】
好ましくは、An-は、上記に定義されているような式(II’)又は(II’’)の化合物から選択することができる。より優先的には、An-は、上記に定義されているような式(II’)又は(II’’)の化合物から選択することができる。さらにより優先的には、An-は、式(II’)の化合物から選択することができる。
【0037】
カチオン性部分
R5がアルカリ金属を表す場合、これは、ナトリウムであり得る。
【0038】
式(I)の化合物は、好ましくは、カルニチン塩でよい。このように、R1、R2及びR3は、好ましくは、メチル基を表すことができ、R4及びR5は、好ましくは、水素原子を表すことができる。
【0039】
式(I)の化合物のカチオン性部分は、好ましくは、L(左旋性)又はD(右旋性)配置の、より優先的には、L配置の光学異性体の形態でよい。
【0040】
式(I)の化合物は、下記の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)又は(Ie)の化合物
【化7】
及びこれらの混合物から選択することができる。
【0041】
組成物(A)は、組成物(A)の総質量に対して、0.1質量%~100質量%、好ましくは、0.5質量%~50質量%、より優先的には、0.5質量%~20質量%、さらにより優先的には、1質量%~10質量%の範囲の式(I)の化合物の総含量を含むことができる。
【0042】
他の要素/成分
本発明による方法において使用される組成物(A)は、化粧用組成物、すなわち、美容的に許容される媒体、すなわち、ヒトケラチン繊維と適合性である媒体を含む組成物である。
【0043】
組成物(A)は、水、C2~C4アルコール、ポリオール、ポリオールエーテル、及びこれらの混合物で構成される群から選択される溶媒を含むことができる。この場合、式(I)の化合物は、特に、組成物(A)中の分離した形態でよい。
【0044】
組成物(A)は、水、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの混合物で構成される群から選択される溶媒を含み得る。
【0045】
好ましくは、組成物(A)は、水、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物で構成される群から選択される溶媒を含み得る。
【0046】
より優先的には、組成物(A)は、水、エタノール、及びこれらの混合物で構成される群から選択される溶媒を含み得る。
【0047】
組成物(A)は有利に、少なくとも10質量%、少なくとも20質量%、より優先的には、少なくとも30質量%のエタノールを含む水/エタノール混合物を含むことができる。後者の実施形態によると、組成物(A)は、特に、乾燥したケラチン繊維に塗布されるローションの形態で配合することができ、エタノールの使用は、乾燥したケラチン繊維を湿らせること、このように処理されたケラチン繊維の乾燥、及びまた、ケラチン繊維における活性剤の拡散を促進することを可能とする。
【0048】
組成物(A)はまた、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性界面活性剤、ビタミン及びパンテノールを含めたプロビタミン、充填剤、着色剤、真珠光沢剤、乳白剤、金属イオン封鎖剤、皮膜形成ポリマー、カチオン性、アニオン性若しくは中性ポリマー、会合性ポリマー、可塑剤、シリコーン、増粘剤、油、消泡剤、モイスチャーライザー、皮膚軟化剤、浸透剤、香料、保存料、並びにこれらの混合物で構成される群から選択される少なくとも1種の化粧品成分を含み得る。
【0049】
これらの通常の化粧品成分は、組成物(A)中に通常の量で存在することができ、それは、当業者が容易に決定することができ、及び組成物(A)の総質量に対して0.01質量%~20質量%の各成分範囲でよい。当業者は、組成物の特性を害しないように、組成物(A)中に含まれる成分、及びまたその量を選択するように気を付ける。
【0050】
組成物(A)は、毛髪塗布のために従来使用される任意のガレヌス形態でよい。非限定的な様式で、組成物(A)は、ローション、クリーム、泡、ゲル、スプレー又はラッカーの形態でよい。
【0051】
組成物(A)は、洗い流す又は洗い流さない塗布によって使用することができる。
【0052】
組成物(A)は、シャンプー、マスク、コンディショニング組成物又はプレシャンプーの形態であり得る。組成物(A)はまた、塗布の前に、シャンプー、マスク又はコンディショニング組成物に加えられるか、若しくはこれと混合する組成物の形態でよい。
【0053】
組成物(A)は、気化形態(ラッカー)又は泡形態の組成物(A)の塗布を確実にするために、ポンプ式ディスペンサーボトル又はエアゾール容器中にパッケージ化することができる。これらの場合、組成物(A)は、好ましくは、少なくとも1種の噴射剤を含む。
【0054】
組成物(A)のpH
組成物(A)は、3~10、好ましくは、4~7の範囲のpHを有する。pHは、化粧品業界において通常使用される有機若しくはミネラルベース又は有機若しくはミネラルベースを使用して調節することができる。
【0055】
方法に関するさらなる特徴
組成物(A)は、乾燥した又は濡れたケラチン繊維に、好ましくは、乾燥したケラチン繊維に塗布し得る。
【0056】
ケラチン繊維に塗布される組成物(A)の浴比は、0.1~10の範囲でよい。用語「浴比」は、塗布される組成物(A)の総質量及び処理するケラチン繊維の総質量の比を意味することを意図する。
【0057】
本発明による方法は、ステップi)に続き下記のステップii)~iv)
ii)組成物(A)をケラチン繊維上に、好ましくは、少なくとも10秒の期間放置するステップ;
iii)ケラチン繊維をすすぎ、且つ/又は洗浄するステップ;
iv)ケラチン繊維を周囲空気中で又は加熱装置を用いて乾燥させるステップ
から選択される少なくとも1つのさらなるステップを含み得る。
【0058】
好ましくは、この方法は、上記の通りであり、且つその順序で行われる、さらなるステップi)及びiv)を含み得る。より優先的には、この方法は、上記の通りであり、且つその順序で行われる、さらなるステップii)、iii)及びiv)の全てを含み得る。
【0059】
洗い流さないステップは、10秒~60分、好ましくは、30秒~30分の範囲の持続期間を有することができる。
【0060】
洗浄ステップは、例えば、シャンプーを使用して行い得る。
【0061】
加熱手段の温度は、45℃~230℃、好ましくは、45℃~100℃、より優先的には、50℃~80℃の範囲であり得る。ヘアドライヤー、加熱フード、アイロン又は加熱ブラシを、例えば、加熱手段として使用し得る。
【0062】
方法がケラチン繊維をすすぎ、且つ/又は洗浄するステップiii)を含まない場合、組成物(A)は、例えば、少なくとも10質量%、好ましくは、少なくとも20質量%、より優先的には、少なくとも30質量%のエタノールを含む水/エタノール混合物を含み得る。このような混合物の使用は、特に、組成物の蒸発を促進することを可能とする。
【0063】
化合物
第3の態様によれば、本発明の対象は、下記の式(Ib)、(Ic)、(Id)又は(Ie)の化合物
【化8】
及びこれらの混合物である。
【0064】
使用
第4の態様によれば、本発明の対象は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、好ましくは、ケラチン繊維の破損を防止するための、少なくとも1種の上記に定義されているような化合物(I)の美容的使用である。上記の化合物(I)のいずれかは、この目的のために使用することができる。
【0065】
最後の態様によると、本発明の対象は、ケラチン繊維を手入れし、且つ/又は修復するための、好ましくは、ケラチン繊維の破損を防止するための、上記に定義されているような組成物(A)の美容的使用である。
【0066】
下記の実施例は、本発明を例示する役割を果たすが、しかし、本質的に限定的であることを伴わない。
【実施例】
【0067】
下記の文章において、用語「アルカリ溶解度(AS)」は、65℃にて30分間の10分の1規定の水酸化ナトリウム溶液の作用下の100mgのケラチン繊維の試料の質量の喪失を意味することを意図する。
【0068】
実施例において使用されるカルニチン塩の調製:
カルニチンサリチレート
カルニチンサリチレートを、下記の手順によって調製した。
手順:
250gのL-カルニチン(M=161.19g/mol;CAS:541-15-1)、すなわち、1.55molをフラスコ中に検量し、次いで、214.45gの固体サリチル酸(M=138.27g/mol;CAS:69-72-7)、すなわち、1.55molを加える。20mlの水及び60mlのエタノールを加える。混合物を撹拌する。化合物の完全な可溶化まで、混合物を水浴(50℃の浴温度)中で加熱する。このように得られた溶液を周囲温度にて30分間撹拌する。溶媒を蒸発し、次いで、このように得られた生成物を、質量が一定となるまでデシケーター(T=40℃)中に入れる。
【0069】
結果:
mobtained:422.37g
【0070】
カルニチン3-メチルサリチレート
カルニチン3-メチルサリチレートを下記の手順によって調製した。
手順:
50gのL-カルニチン(M=161.19g/mol;CAS:541-15-1)、すなわち、310ミリモルを、一つ口フラスコ中へと検量し、次いで、47.19gの3-メチルサリチル酸(M=152.15g/mol;CAS:83-40-9)、すなわち、310ミリモルを加える。50mlの水及び30mlのエタノールを加える。混合物を5分間撹拌する。このように得られた混合物をナシフラスコ中に移し、壁をエタノールですすぎ、真空蒸発を行う。
【0071】
結果:
mobtained:96g
【0072】
カルニチン2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート
カルニチン2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエートを、下記の手順によって調製した。
手順:
50gのL-カルニチン(M=161.19g/mol;CAS:541-15-1)、すなわち、310ミリモルを一つ口フラスコ中に検量する。52.15gの2-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸(M=168.15g/mol;CAS:877-22-5)、すなわち、310ミリモルを加える。30mlの水及び20mlのエタノールを加える。このように得られた溶液を周囲温度にて30分間撹拌する。真空蒸発を行い、次いで、このように得られた生成物を、質量が一定となるまでデシケーター(T40℃)中に入れる。
【0073】
結果:
mobtained:101.2g
【0074】
カルニチン2-メトキシベンゾエート
カルニチン2-メトキシベンゾエートを、下記の手順によって調製した。
手順:
50gのL-カルニチン(M=161.19g/mol;CAS:541-15-1)、すなわち、310ミリモルを一つ口フラスコ中に検量する。47.19gの2-メトキシ安息香酸(M=152.15g/mol;CAS:579-75-9)、すなわち、310ミリモルを加える。40mlの水及び30mlのエタノールを加え、このように得られた混合物を30分間撹拌し、次いで、真空蒸発を行う。
【0075】
結果:
mobtained:97g
【0076】
カルニチンガレート
カルニチンガレートを下記の手順によって調製した。
手順:
20gのL-カルニチン(M=161.19g/mol;CAS:541-15-1)、すなわち、124ミリモル、及び20mlの水をフラスコ中に検量する。21.1gの固体没食子酸(M=170.12g/mol;CAS:149-91-7)、すなわち、124ミリモルのエタノール(65ml)溶液を、次いで、滴下で添加する。混合物を撹拌する。化合物の完全な可溶化まで、混合物を水浴(50℃の浴温度)において加熱する。このように得られた溶液を周囲温度にて30分間撹拌する。溶媒を蒸発し、次いで、このように得られた生成物を、質量が一定となるまでデシケーター(T=40℃)中に入れる。
【0077】
結果:
mobtained:42g(ベージュ色のワックス)
【0078】
比較試験、第1:カルニチンサリチレート対カルニチンタルトレートの比較-「繰り返しくしで梳くことによる破損の防止」効果の研究
試験したフォーミュラ:
下記のフォーミュラを、調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0079】
【0080】
手順:
損傷を受けた毛髪の3つの房(2.7g/25cm;60のアルカリ溶解度)を、27℃の温度に保ち、且つ食品フィルムでカバーしたホットプレート上に置く。0.5gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ1又は2)/1gの毛髪を2つの別個の毛髪の房に塗布する。試験を受けるフォーミュラを、小さなブラシを使用して毛髪の房上に広げる。5分間静置する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。試験を受けるフォーミュラの全部で5回の塗布を行うためにステップを繰り返す。毛髪の房を垂直に24時間つるす。次いで、毛髪の房をくしで10cm/秒の速度にて30回梳く。くしで梳く間に失われた毛髪の質量を秤量する。
【0081】
結果:
【0082】
【0083】
毛髪の房を本発明による方法を用いて処理するとき、毛髪破損はより少ないことを結果は示す。
【0084】
比較試験、第2:欧州特許出願公開0978272A1号明細書の実施例11に関する比較-「繰り返しくしで梳くことによる破損の防止」効果の研究
試験したフォーミュラ:
下記のフォーミュラを、調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0085】
【0086】
手順:
損傷を受けた毛髪の4つの房(2.7g/25cm;60のアルカリ溶解度)を、40℃の温度に保ち、且つ食品フィルムでカバーしたホットプレート上に置く。10gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ3又は4又は5又は6)/1gの毛髪を4つの別個の毛髪の房に塗布する。試験を受けるフォーミュラを、小さなブラシを使用して毛髪の房上に広げる。60分間静置する。フィルムを取り除く。毛髪の房のそれぞれをDOPシャンプーで下記の洗浄プロトコルによって洗浄する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。毛髪の房を垂直に24時間つるす。次いで、毛髪の房をくしで10cm/秒の速度にて30回梳く。くしで梳く間に失われた毛髪の質量を秤量する。
【0087】
洗浄プロトコル:
毛髪の房を水道水で38℃にて10秒間湿らせ、シャンプー(0.4g/1gの毛髪)を塗布し、15秒間マッサージし、水で20秒間注意深くすすぐ。毛髪の房を絞って乾燥させる。くしで梳く。
【0088】
結果:
【0089】
【0090】
毛髪の房を本発明による方法を用いて処理するとき、毛髪破損はより少ない。
【0091】
比較試験、第3:カルニチンサリチレート対リンゴ酸及び乳酸の比較-「繰り返しくしで梳くことによる破損の防止」効果の研究
試験したフォーミュラ:
下記のフォーミュラを、調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0092】
【0093】
手順:
損傷を受けた毛髪の5つの房(2.7g/25cm;60のアルカリ溶解度)を、27℃の温度に保ち、且つ食品フィルムでカバーしたホットプレート上に置く。0.5gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ7~11)/1gの毛髪を5つの別個の毛髪の房に塗布する。試験を受けるフォーミュラを、小さなブラシを使用して毛髪の房上に広げる。5分間静置する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。試験を受けるフォーミュラの全部で5回の塗布を行うようにステップを繰り返す。毛髪の房を垂直に24時間つるす。次いで、毛髪の房をくしで10cm/秒の速度にて30回梳く。くしで梳く間に失われた毛髪の質量を秤量する。
【0094】
結果:
【0095】
【0096】
毛髪の房を本発明による方法を用いて処理するとき、毛髪破損はより少ないことを結果は示す。
【0097】
比較試験、第4:様々なカルニチンサリチレート誘導体の比較-「繰り返しくしで梳くことによる破損の防止」効果の研究
試験したフォーミュラ:
下記のフォーミュラを、調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0098】
【0099】
手順:
損傷を受けた毛髪の4つの房(2.7g/25cm;60のアルカリ溶解度)を、27℃の温度に保ち、且つ食品フィルムでカバーしたホットプレート上に置く。5gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ12~15)/1gの毛髪を4つの別個の毛髪の房に塗布する。試験を受けるフォーミュラを、小さなブラシを使用して毛髪の房上に広げる。10分間静置する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。試験を受けるフォーミュラの全部で5回の塗布を行うようにステップを繰り返す。毛髪の房を垂直に24時間つるす。次いで、毛髪の房をくしで10cm/秒の速度にて30回梳く。くしで梳く間に失われた毛髪の質量を秤量する。
【0100】
結果:
【0101】
【0102】
毛髪の房を本発明による方法を用いて処理するとき、毛髪破損はより少ないことを結果は示す。
【0103】
比較試験、第5:シャンプー洗浄に関する屈曲摩耗試験を用いた「破損の防止」効果の持続性の評価
試験したフォーミュラ:
下記のフォーミュラを、調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0104】
【0105】
手順:
損傷を受けた毛髪の房(150mg/27cm;概ね40のアルカリ溶解度(AS))をシュート中に入れる。AS40の毛髪の房を天然の毛髪から開始して3回の連続的な漂白によって調製する。0.5gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ16)/1gの毛髪をシュート中にそそぎ、フォーミュラを毛髪の房上に十分に分布させるように毛髪の房をマッサージする。27℃の温度に保ったホットプレート上に5分間静置する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。試験を受けるフォーミュラの全部で5回の塗布を行うためにステップを繰り返す。次いで、下記の洗浄プロトコルによって毛髪の房を洗浄する。
【0106】
洗浄プロトコル:
毛髪の房を水道水で38℃にて10秒間湿らせ、DOPシャンプー(0.4g/1gの毛髪)を塗布し、15秒間マッサージし、水で20秒間注意深くすすぐ。前述のシャンプーのプロトコルを3回繰り返す。同じプロトコルを使用したElseveマルチビタミン2-イン-1シャンプーによる5回目のシャンプー洗浄で終了する。毛髪の房を絞って乾燥させる。くしで梳く。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。
【0107】
プラセボ毛髪の房を、上記のような同じ手順に従うことによってフォーミュラ17を使用して調製した。さらに、対照(無処理)毛髪の房を、上記の洗浄プロトコルによって、DOPシャンプーで4回及びElseveマルチビタミン2-イン-1シャンプーで1回洗浄した。本発明による毛髪の房、プラセボ毛髪の房及び対照毛髪の房を、下記の屈曲摩耗試験によって試験した。
【0108】
屈曲摩耗試験
屈曲摩耗技術は、ケラチン繊維の破損について当業者には公知である(参照:Flexabrasion:A Method for Evaluating Hair Strength,Cosmetics & Toiletries Journal,June 26,2009及びHair Breakage in Normal and Weathered Hair:Focus on the Black Patient,Journal of Investigative Dermatology Symposium Proceedings,Volume 12,Issue 2,December 2007,Pages6-9)。この試験の原理は、機械的応力に供された毛髪繊維が切断するのに要した時間を測定することである(屈曲及び摩耗)。屈曲摩耗装置(会社Textechnoからの繊維ストレスモデル)を使用する。毛髪の束を一方の端部において20gのおもりに結合し、他の端部を固定されたバーに結合する。毛髪の束を300μmステンレス鋼ワイヤー上で往復して動かす。動きは、10mmの振幅及び0.5Hzの頻度を有する。破損は、(秒での)破損時間を測定する光学センサーによって検出する。一連の測定は、25束の毛髪を含む。
【0109】
結果:
【0110】
【0111】
5回のシャンプー洗浄の後でさえ、プラセボ及び対照と比較して、毛髪破損の防止に関してより良好な性能品質がまだ存在することを結果は示す。このように、本発明による処理方法は特に、シャンプー洗浄に対して耐性である。
【0112】
比較試験、第6:シャンプー洗浄に関する繰り返し疲労試験を用いた「破損の防止」効果の持続性の評価
試験したフォーミュラ:
下記のフォーミュラを、調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0113】
【0114】
手順:
損傷を受けた毛髪の房(150mg/27cm;概ね40のアルカリ溶解度(AS))をシュート中に入れる。AS40毛髪の房を天然の毛髪から開始して3回の連続的な漂白によって調製した。0.4gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ18)/1gの毛髪をシュート中にそそぎ、フォーミュラを毛髪の房上に十分に分布させるように毛髪の房をマッサージする。27℃の温度に保ったホットプレート上に5分間静置する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。
【0115】
洗浄プロトコル:
毛髪の房を水道水で38℃にて10秒間湿らせ、DOPシャンプー(0.4g/1gの毛髪)を塗布し、15秒間マッサージし、水で20秒間注意深くすすぐ。前述のシャンプーのプロトコルを3回繰り返す。同じプロトコルを使用したElseveマルチビタミン2-イン-1シャンプーによる5回目のシャンプー洗浄で終了する。毛髪の房を絞って乾燥させる。くしで梳く。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。
【0116】
プラセボ毛髪の房を、上記のような同じ手順に従うことによってフォーミュラ19を使用して調製した。本発明による毛髪の房及びプラセボ毛髪の房を、下記の繰り返し疲労試験によって試験した。
【0117】
繰り返し疲労試験:
繰り返し疲労技術は、ケラチン繊維の破損について当業者には公知である(参照:https://www.diastron.com/app/uploads/2017/06/Dia-Stron-CYC801-Brochure.pdf)。この試験の原理は、破損の前の単一の繊維の伸張のサイクルの数を測定することである。30mm長さの繊維を、一定の割合(40mm/秒)で一定応力(100MPa)に供する。研究は25℃及び45%相対湿度にて行う。Diastron CYC801装置(会社Diastronから)を使用する。一連の測定は、50束の毛髪を含む。
【0118】
結果:
【0119】
【0120】
毛髪の房を本発明による方法を用いて処理するとき、毛髪破損はより少ないことを結果は示す。
【0121】
さらなる試験:シャンプー洗浄に関する屈曲摩耗試験を用いたカルニチンガレートの「破損の防止」効果の持続性の評価
試験するフォーミュラ:
下記のフォーミュラを調製し、次いで、下記の手順によって試験した。
【0122】
【0123】
手順:
損傷を受けた毛髪の房(150mg/27cm;概ね20のアルカリ溶解度(AS))をシュート中に入れる。0.4gの試験を受けるフォーミュラ(フォーミュラ20)/1gの毛髪をシュート中にそそぎ、フォーミュラを毛髪の房上に十分に分布させるように毛髪の房をマッサージする。27℃の温度に保ったホットプレート上に5分間静置する。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。試験を受けるフォーミュラの全部で5回の塗布を行うためにステップを繰り返す。次いで、下記の洗浄プロトコルによって毛髪の房を洗浄する。
【0124】
洗浄プロトコル:
毛髪の房を水道水で38℃にて10秒間湿らせ、DOPシャンプー(0.4g/1gの毛髪)を塗布し、15秒間マッサージし、水で20秒間注意深くすすぐ。前述のシャンプーのプロトコルを3回繰り返す。同じプロトコルを使用したElseveマルチビタミン2-イン-1シャンプーによる5回目のシャンプー洗浄で終了する。毛髪の房を絞って乾燥させる。くしで梳く。フード下で乾燥させる(60℃、10分/1gの毛髪)。本発明による毛髪の房を、比較試験第5に記載した屈曲摩耗試験によって試験した。
【0125】
結果:
【0126】
【0127】
5回のシャンプー洗浄の後でさえ、フォーミュラ20について毛髪破損の防止に関して良好な性能品質がまだ存在することを結果は示す。このように、カルニチンガレートを含む組成物を使用した本発明による処理方法は、シャンプー洗浄に対して特に耐性である。
【国際調査報告】