IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メティス ファーマシューティカルズ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-510362R-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンとS-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンを非ラセミ比で含む相乗的組成物
<>
  • 特表-R-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンとS-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンを非ラセミ比で含む相乗的組成物 図1
  • 特表-R-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンとS-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンを非ラセミ比で含む相乗的組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】R-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンとS-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンを非ラセミ比で含む相乗的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20220119BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C07D487/04 140
A61K31/4985
A61P25/24
A61P25/02
A61P25/28
A61P25/04
A61P3/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P21/00
A61P31/18
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531431
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2019083599
(87)【国際公開番号】W WO2020115096
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】18210128.7
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519427413
【氏名又は名称】メティス ファーマシューティカルズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルディーニ カールラ
(72)【発明者】
【氏名】ディ チェザーレ マネッリ ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ファリーナ カルロ
(72)【発明者】
【氏名】シェルツ ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4C050
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB08
4C050CC04
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH01
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB262
4C084ZB332
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、ある比の2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オン誘導体のエナンチオマーおよびそれらの薬学的に許容される溶媒和物または共結晶の組成物、前記組成物を含む医薬組成物、その医薬品としての使用、ならびに典型的にかつ好ましくは、末梢性感覚神経障害、好ましくは末梢神経障害性疼痛;発作;うつ病;または認知障害から選択される疾患または障害の治療および/または予防における本発明の組成物または医薬組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物および式(II)の化合物
【化1】
(式中、Zは、
1個または複数のFで置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環式C1-4-アルキル基、あるいは
1およびR2で置換されているフェニル基
から選択され、R1は、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびメチルからなる群から選択され、R2は独立して、水素、フルオロ、クロロおよびメチルからなる群から選択され、
1およびR2は独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める)、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物、および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶であり、式(II)の化合物が式(IIa)の化合物、および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶であり
【化2】
(式中、R1は、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびメチルからなる群から選択され、R2は独立して、水素、フルオロ、クロロおよびメチルからなる群から選択され、
1およびR2は独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める)、
前記式(Ia)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(Ia)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が30%以上、50%以下、好ましくは35%以上、50%以下である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶と式(II)の化合物および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶が、別々にパッケージされている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、2-([2-フルオロフェニル]スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、非ラセミ混合物が、式(I)の化合物および式(II)の化合物を、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が、2-([4-フルオロフェニル]スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、非ラセミ混合物が、式(I)の化合物および式(II)の化合物を、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、2-([3-フルオロフェニル]スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、非ラセミ混合物が、式(I)の化合物および式(II)の化合物を、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
式(I)の化合物および式(II)の化合物と、式(I)の化合物および式(II)の化合物を組み合わせて、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキット。
【請求項10】
医薬品としての使用のための、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物または請求項8に記載の医薬組成物または請求項9に記載のパーツのキット。
【請求項11】
疾患または障害の治療および/または予防における使用のためのものであって、疾患、損傷または障害が、末梢性感覚神経障害、発作、うつ病または認知障害から選択される、請求項10に記載の組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項12】
疾患、損傷または障害の治療および/または予防における使用のためのものであって、疾患、損傷または障害が、末梢性感覚神経障害、神経精神障害、運動ニューロン障害、または運動障害から選択される、請求項10に記載の組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項13】
疾患、損傷または障害が末梢性感覚神経障害であり、好ましくは末梢性感覚神経障害が末梢神経障害性疼痛である、請求項11または12に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項14】
疾患、傷害または障害がうつ病または快感消失であり、好ましくはうつ病または快感消失が、確立された抗うつ薬による前治療には応答していない、請求項11または12に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項15】
末梢性感覚神経障害が、糖尿病性神経障害、疱疹後神経障害、腰痛、仙骨痛、外科的疼痛、圧挫損傷、脊椎損傷、複合性局所疼痛症候群、幻肢感覚、変形性関節症に関連する末梢性感覚神経障害、関節リウマチに関連する末梢性感覚神経障害、自己免疫性骨関節炎に関連する末梢性感覚神経障害、頭痛、線維筋痛、細菌発育抑制療法(antiblastic therapy)によって誘発される末梢性感覚神経障害、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、内蔵損傷に関連する末梢性感覚神経障害、骨壊死に関連する末梢性感覚神経障害、ヒト免疫不全ウイルス感染に関連する末梢性感覚神経障害、末梢神経障害性疼痛、または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である、請求項11または13に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項16】
末梢性感覚神経障害が、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害から選択される、請求項11から14までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項17】
末梢性感覚神経障害が、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、化学療法剤が、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択され、好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選択される、請求項11から15までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項18】
末梢性感覚神経障害が、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、抗ウイルス剤が、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤であり、好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンおよびジドブジンから選択される、請求項11から17までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項19】
組成物または医薬組成物が、少なくとも1つの抗腫瘍薬と共に使用され、抗腫瘍薬が、好ましくはキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイドおよび白金塩からなる群から選択され、より好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選択される、請求項11から18までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項20】
組成物または医薬組成物が、少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用され、抗ウイルス薬が、好ましくはヌクレオシドまたはヌクレオチドから選択され、さらに好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンおよびジドブジンから選択される、請求項11から19までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項21】
組成物または医薬組成物が、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与されることになっている、請求項11から20までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項22】
学習および記憶を増強する方法における使用のための、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物または請求項8に記載の医薬組成物または請求項9に記載のパーツのキット。
【請求項23】
式(I)の化合物と式(II)の化合物、または
式(I)の化合物と式(I)および(II)の化合物のラセミ体
を組み合わせるステップを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物または請求項8に記載の医薬組成物を調製する方法。
【請求項24】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物または請求項8に記載の医薬組成物または請求項9に記載のキットの調製における式(I)の化合物および/もしくは式(II)の化合物ならびに/または式(I)および(II)の化合物のラセミ体の使用。
【請求項25】
健常対象における学習および記憶を増強するための請求項1から7までのいずれか1項に記載の組成物の非治療的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある範囲の比のR-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンとS-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンおよびそれらの薬学的に許容される溶媒和物または共結晶を含む組成物およびキット、前記組成物を含む医薬組成物、それらの医薬品としての使用、ならびに典型的にかつ好ましくはうつ病および治療抵抗性うつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ならびに不安;末梢性感覚神経障害の症状、好ましくは末梢神経障害性疼痛および冷感アロディニア、線維筋痛、過敏性腸症候群、片頭痛、ならびに群発頭痛などの急性および慢性中枢性過敏障害;ならびに脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソンのジストニアおよびハンチントンのジストニアなどの運動ニューロン障害から選択される精神疾患または障害の治療および/または予防のための本発明の組成物または医薬組成物またはキットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、脳に広範に存在する興奮性神経伝達物質である。興奮性メッセンジャーとしてのその役割は、最初の徴候が1950年代に現れ、グルタメートの静脈内投与によって、痙攣が誘発されることが認められた。しかし、生合成および分解酵素、細胞取り込み機構、細胞内貯蔵放出系、ならびにその細胞表面イオンチャネルおよびGタンパク質共役受容体を含むグルタミン酸作動性神経伝達物質系全体の検出は1970年代まで行われず、1980年代になって、好適な薬理学的ツールが初めて同定された。新たに出現した分子生物学的ツールによって、グルタミン酸作動性イオンチャネル、受容体、トランスポーターなどの分子同定および分類のための手段が提供されたのは、1990年代だった。
興奮性アミノ酸であるグルタメートおよびグリシンによって開閉され、生体異物化合物であるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)にも応答する膜結合イオンチャネルは、2価および1価の両陽イオンのシナプス前およびシナプス後神経系細胞への流入を制御する(Foster et al., Nature 1987, 329:395-396; Mayer et al., Trends in Pharmacol. Sci. 1990, 11:254-260を参照のこと)。それらは、生体異物物質であるカイネートまたはα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)に応答する、グルタメート開閉型陽イオン伝導性イオンチャネルとは分子的、電気生理学的、および薬理学的に異なり、同様にグルタメート開閉型Gタンパク質共役受容体のファミリー、いわゆる代謝型グルタメート受容体とは異なる。
【0003】
NMDA選好性グルタメート開閉型イオンチャネルは、それぞれGRIN1遺伝子および4つのGRIN2遺伝子の1つによってコードされる2つの必須GluN1ユニットおよび2つの可変性GluN2受容体サブユニットのヘテロ四量体構造基部を有する。1つまたは両方のGluN2サブユニットを、GluN3AまたはGluN3Bサブユニットによって潜在的に置き換えることができる。GRIN1遺伝子産物は8つのスプライスバリアントを有する一方、異なる4つのGluN2サブユニットをコードする異なる4つのGRIN2遺伝子(GRIN2A-D)が存在する。グリシン結合部位はGluN1サブユニット上に存在し、グルタメート結合部位はGluN2サブユニット上に存在する(Paoletti P et al., Nat Rev Neurosci. 2013; 14(6):383-400)。
NMDA受容体機能をモジュレートする化合物は、双極性障害(Martucci L et al., Schizophrenia Res, 2006; 84(2-3):214-21)、大うつ病性障害(Li N et al., Biol Psychiatry. 2011; 69(8):754-61)、治療抵抗性うつ病(Preskorn SH et al. J Clin Psychopharmacol. 2008; 28(6):631-7)および他の気分障害(統合失調症(Grimwood S et al., Neuroreport. 1999; 10(3):461-5)、産前および産後うつ病(Weickert CS et al. Molecular Psychiatry (2013) 18, 1185-1192)、季節性感情障害などを含む);アルツハイマー病(Hanson JE et al., Neurobiol Dis. 2015; 74:254-62; Li S et al., J Neurosci. 2011; 31(18):6627-38)および他の認知症(Orgogozo JM et al. Stroke 2002, 33: 1834-1839)、パーキンソン病(Duty S, CNS Drugs. 2012; 26(12):1017-32; Steece-Collier K et al., Exp Neurol. 2000; 163(1):239-43; Leaver KR et al. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2008; 35(11):1388-94)、ハンチントン舞踏病(Tang TS et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2005; 102(7):2602-7; Li L et al., J Neurophysiol. 2004; 92(5):2738-46)、多発性硬化症(Grasselli G et al., Br J Pharmacol. 2013; 168(2):502-17)、認知障害(Wang D et al. 2014, Expert Opin Ther Targets 2014; 18(10):1121-30)、頭部外傷(Bullock MR et al., Ann N Y Acad Sci. 1999; 890:51-8)、脊髄損傷、脳卒中(Yang Y et al., J Neurosurg. 2003; 98(2):397-403)、癲癇(Naspolini AP et al., Epilepsy Res. 2012 Jun; 100(1-2):12-9)、運動障害(例えば、ジスキネジア)(Morissette M et al., Mov Disord. 2006; 21(1):9-17)、様々な神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(Fuller PI et al., Neurosci Lett. 2006; 399(1-2):157-61)または細菌性もしくは慢性感染に関連する(associated with)神経変性、緑内障(Naskar R et al. Semin Ophthalmol. 1999 Sep; 14(3):152-8)、疼痛(例えば、慢性、がん性、術後および神経障害性疼痛(Wu LJ and Zhuo M, Neurotherapeutics. 2009; 6(4):693-702)、糖尿病性神経障害、片頭痛(Peeters M et al., J Pharmacol Exp Ther. 2007; 321(2):564-72)、脳虚血(Yuan H et al., Neuron. 2015; 85(6):1305-18)、脳炎(Dalmau J. et al., Lancet Neurol. 2008; 7(12):1091-8)、自閉症および自閉症スペクトラム障害(Won H. et al., Nature. 2012; 486(7402):261-5)、記憶および学習障害(Tang, Y. P. et al., Nature. 1999; 401(6748):63-9)、強迫性障害(Arnold PD et al., Psychiatry Res. 2009; 172(2):136-9)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(Dorval KM et al., Genes Brain Behav. 2007; 6(5):444-52)、外傷後ストレス障害(PTSD)(Haller J et al. Behav Pharmacol. 2011; 22(2):113-21; Leaderbrand K et al. Neurobiol Learn Mem. 2014; 113:35-40)、耳鳴り(Guitton MJ, and Dudai Y, Neural Plast.2007; 80904; Hu SS et al. 2016; 273(2): 325-332)、睡眠障害(ナルコレプシーまたは日中眠気過度のような睡眠障害、国際公開第2009/058261号)、めまいおよび眼振(Straube A. et al., Curr Opin Neurol. 2005; 18(1):11-4; Starck M et al. J Neurol. 1997 Jan; 244(1):9-16)、不安、神経精神全身性エリテマトーデスのような自己免疫障害(Kowal C et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2006; 103, 19854-19859)、ならびに耽溺性疾患(例えば、アルコール嗜癖、薬物嗜癖)(Nagy J, 2004, Curr Drug Targets CNS Neurol Disord. 2004; 3(3):169-79.; Shen H et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2011; 108(48):19407-12)を含むがこれらに限定されない多くの神経および精神障害の治療において有用であり得る。
【0004】
最近のヒト臨床研究により、NMDA型グルタメート開閉型イオンチャネルがうつ病の治療にとってとても興味深い新規標的として確認された(Singh JB et al., Biol Psychiatry 2016; 80(6):424-431; Preskorn SH et al. J Clin Psychopharmacol 2008; 28(6):631-7)。これらの研究は、公知のNMDA受容体アンタゴニストであるケタミンおよびCP-101606を使用して実施され、難治性うつ病患者におけるうつ病評価スコアの著しい低減を示した。有効性は著しかったが、これらのNDMA受容体アンタゴニストを使用する副作用は厄介であった。
【0005】
NMDA調節低分子アゴニストおよびアンタゴニスト化合物が、潜在的な治療的使用のために開発されてきた。しかし、これらの多くは、非常に狭い治療指数、ならびに幻覚、運動失調症、非合理的行動、および著しい毒性を含めて望ましくない副作用を伴い、それらのすべてによって、これらの効果および/または安全性が限定される。さらに、うつ病患者の50%以上は、公知の投与された薬物に対して十分な治療応答を経験しない。たいていの場合、うつ病の薬理学的治療に関する非盲検の研究において顕著なように、意味のある改善が認められるまでには、2週間以上の薬物療法が必要とされる(Rush et al, Am. J. Psychiatry 2006, 163:1905)。
【0006】
末梢性感覚神経障害の最も顕著な症状の1つである末梢神経障害性疼痛(Zilliox LA, 2017)を含めて症状は、頻繁に遭遇する臨床状態である。一般集団における有病率は、7%~10%の間であると推定された(van Hecke O et al., 2014)。米国では、有痛性糖尿病性末梢神経障害は単独で、約1千万人を冒すと推定される。末梢性感覚神経障害は治療に対して耐性を示すことが多く、それらの治療について低い患者満足度を伴う。いくつかの薬物は、糖尿病性神経障害および疱疹後神経痛に関連する末梢性感覚神経障害を治療する際に有効であることが示された。これらの薬物を使用して、同様に他の状態に関連する神経障害性疼痛を治療することが多い。これらの治療は、望ましくない有害作用を示すことが多く、治療の中止が問題となり得る。末梢性感覚神経障害は日常生活の多くの側面に影響を及ぼし、不十分な全身の健康、生活の質の低下、浅眠、ならびにより強い不安およびうつ病を伴うことを認識することは重要である。実際、慢性末梢性感覚神経障害者における生活の質の程度は、臨床的うつ病、冠動脈疾患、亜急性心筋梗塞、またはコントロール不良糖尿病の患者の生活の質の程度と同じくらい低いと評価された(Smith BH et al., 2007)。
【0007】
米国食品医薬品局により認可された神経障害性疼痛薬は、カルバマゼピン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、局所リドカイン、および局所カプサイシンである。トラマドールおよびオピオイド鎮痛薬は、様々なタイプの神経障害性疼痛において有効であるが、一般的には長期の安全性についての懸念のため第一選択治療として推奨されない。しかし、それらは、急性神経障害性疼痛、がんによる神経障害性疼痛、および重度神経障害性疼痛の反復性増悪における第一選択治療として推奨される。様々な神経障害性疼痛状態の治療における強力なオピオイド(コデイン、モルヒネ、オキシコドンおよびフェンタニル)の使用には議論の余地があり、公衆衛生の懸念に、医療用オピオイドに関連した死亡の数の増加が加わる。これらの薬物が有する過量、依存、および嗜癖の重大なリスクは、潜在的利益を上回るおそれがある。
【0008】
したがって、神経障害性疼痛、ならびにうつ病および他の精神状態の予防および治療に対して経口投与で有効であり、中毒学的に良性であり、幻覚発現性の依存および嗜癖の現象への可能性がない新規治療剤を開発する、緊急で重要な医学的必要性が残っている。5th version of the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)に記載されているものなどの神経精神疾患;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患の治療に対して経口投与で有効な新規治療剤を開発する重要な医学的必要性も残っている。
((RS)-2-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オン)は、向知性活性を有する二環式2-ピロリジノン誘導体である。ラセミの2-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンは、対応する単一のR-エナンチオマーより強力な向知性活性を有し、単一のRエナンチオマーは、対応するS-エナンチオマーより強力な向知性活性を有する(Martini et al., Med Chem. 2005, 1(5), pages 473-480)。((RS)-2-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オン)およびいくつかの誘導体の合成は、国際公開第2009/103176号に記載されており、それらの立体選択的合成については、Martini et al., Med Chem. 2005, 1(5), pages 473-480に記載されている。薬理学的特性および構造活性相関の研究は、Romanelli et al., CNS Drug Rev. 2006, 12(1), pages 39-52; Scapecchi et al., Bioorg Med Chem. 2004, 12(1), pages 71-85; Galeotti et al., Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2003, 368(6), pages 538-45およびMartini et al., Med Chem. 2005, 1(5), pages 473-480に開示されている。入手可能な報告書の要約として、(RS)-2-[(4-フルオロフェニル)スルホニル]ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンおよびそのR-エナンチオマーは、ラットの認知モデルにおいて広範に有効な経口治療薬であるということができる。
【0009】
先行する特許出願(国際公開第2009/103176号)に報告されているように、ラセミの2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンは、神経障害性疼痛が様々な作用剤または手術障害によって引き起こされる多様な動物モデルにおいて抗痛覚過敏および抗アロディニア効果も示す。すべての試験動物モデルにおいて、ラセミの2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンは、標準治療薬のガバペンチン、プレガバリンまたはデュロキセチンよりよい効力および有効性プロファイルを示す。さらに、ラセミの2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンは、対応する単一のR-エナンチオマーよりよい効力および有効性プロファイルを示し、単一のRエナンチオマーは、単一のSエナンチオマーよりも優れている。ラセミの2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの有効性は、単一の経口用量後に明らかである。さらに、これらの抗痛覚過敏および抗アロディニア効果については、正常動物では検出可能な効果がなく、神経圧挫損傷の非対称手術モデルではラットの傷害側のみ薬物の経口投与に応答するので、疾患特異的である。
【0010】
ジミラセタムは、(RS)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]イミダゾール-2,5-ジオンであり、ラット脊髄シナプトソーム調製物における脊髄NMDA型グルタメート受容体のネガティブアロステリックモジュレーターであり(Fariello RG, et al. Neuropharmacology. 2014, 81:85-94)、ラットの神経障害性疼痛、うつ病、および認知障害モデルにおいて経口投与で活性である(Pinza M, et al. J Med Chem 1993, 36(26):4214-20)。本発明者らは、驚くべきことに、RおよびS-ジミラセタムの非ラセミ混合物が、単一のエナンチオマーおよびラセミ体の活性よりも優れている活性を導くことを見出した。この知見は、全体として参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の国際出願PCT/EP2018/064125号の基礎である。
【発明の概要】
【0011】
今回、驚くべきことにかつ予想外なことに、20%以上、50%以下の(R)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率(ee)を有するいくつかの2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの(R)-および(S)-エナンチオマーの組成物は、対応する個々のエナンチオマーよりまたはラセミ体よりも高い薬理学的効力を示し、したがって、個々のエナンチオマーまたはラセミ体の効力に基づいては予想することができなかった相乗効果をもたらすことがわかった。したがって、これらの非ラセミ組成物は、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脳または脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸(グルタミン酸の模倣物として使用される)遊離を対応する個々のエナンチオマーよりまたは対応するラセミ体よりも強力に阻害する。さらに、げっ歯類のグルタメートシグナル伝達が関わっていると考えられる神経障害性疼痛、認知能力、うつ病モデル、および他のモデルにおいて、これらの非ラセミ組成物は、対応する個々のエナンチオマーよりまたは対応するラセミ体よりも強力である。
したがって、(R)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物は、モノヨード酢酸ナトリウムの投与後のpaw-pressure試験における末梢神経障害性疼痛を低減する際に;またはオキサリプラチン誘発性末梢神経障害性疼痛の予防において;またはステップスルー型受動的回避アッセイにおける認知機能の改善において;またはうつ病のPorsoltモデルにおいて水泳時間を増加させる際に、対応するラセミ混合物よりはるかに効率的である。
【0012】
したがって、20%以上、50%以下の対応する(R)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率(ee)を有する、それぞれ式(I)および(II)によって表される2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの(R)-および(S)-エナンチオマーの本発明の組成物は、純粋なエナンチオマー単独またはこれらの化合物のラセミ混合物と比較して、所与の用量で薬理学的により効果的である。ラセミのという用語は、(R)-および(S)-エナンチオマーの質量により1:1の混合物を指し、したがって、その混合物は、0%のエナンチオマー過剰率(ee)を有する。したがって、本発明に関連する効果は、驚くべきことにそれぞれ式(I)および(II)によって表される(R)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンと(S)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの間の特定範囲の比に起因する相乗効果である。
【0013】
本発明の組成物は有益であり、典型的にかつ好ましくはうつ病および治療抵抗性うつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ならびに不安;末梢性感覚神経障害の症状、好ましくは末梢神経障害性疼痛および冷感アロディニア、線維筋痛、過敏性腸症候群、片頭痛、ならびに群発頭痛などの急性および慢性中枢性過敏障害;ならびに脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソンのジストニアおよびハンチントンのジストニアなどの運動ニューロン障害から選択される精神疾患または障害の治療および/または予防に使用することができる。
【0014】
第1の態様において、本発明は、式(I)の化合物(本明細書では(R)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンと呼ぶこともある)および式(II)の化合物(本明細書では(S)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンと呼ぶこともある)
【化1】
(式中、Zは、
1個または複数のFで置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環式C1-4-アルキル基、あるいは
1またはR2で置換されているフェニル基
から選択され、R1は、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびメチルからなる群から選択され、R2は独立して、水素、フルオロ、クロロおよびメチルからなる群から選択され、
1およびR2は独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める)、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、組成物を提供する。
【0015】
好ましい態様において、本発明は、式(Ia)の化合物(本明細書では(R)-2-(フェニルスルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンと呼ぶこともある)および式(IIa)の化合物(本明細書では(S)-2-(フェニルスルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンと呼ぶこともある)
【化2】
(式中、R1は、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびメチルからなる群から選択され、R2は独立して、水素、フルオロ、クロロおよびメチルからなる群から選択され、
1およびR2は独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める)、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(Ia)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、組成物を提供する。
【0016】
本発明の組成物のいくつかの実施形態において、前記式(Ia)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、20%以上、40%以下である。
別の態様において、本発明は、本発明の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物と、式(I)の化合物および式(II)の化合物を組み合わせて、20%以上、50%以下の前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキットを提供する。この態様において、組成物に関して本明細書に記載されるのと同じ好ましい範囲の前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)ならびに式(I)の化合物と式(II)の化合物のエナンチオマー比が当てはまる。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、典型的にかつ好ましくはうつ病および治療抵抗性うつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ならびに不安;末梢性感覚神経障害の症状、好ましくは末梢神経障害性疼痛および冷感アロディニア、線維筋痛、過敏性腸症候群、片頭痛、ならびに群発頭痛などの急性および慢性中枢性過敏障害;ならびに脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソンのジストニアおよびハンチントンのジストニアなどの運動ニューロン障害から選択される精神疾患または障害の治療および/または予防のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、典型的にかつ好ましくはうつ病および治療抵抗性うつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ならびに不安;末梢性感覚神経障害の症状、好ましくは末梢神経障害性疼痛および冷感アロディニア、線維筋痛、過敏性腸症候群、片頭痛、ならびに群発頭痛などの急性および慢性中枢性過敏障害;ならびに脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソンのジストニアおよびハンチントンのジストニアなどの運動ニューロン障害から選択される精神疾患または障害の治療および/または予防の方法を提供する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、典型的にかつ好ましくはうつ病および治療抵抗性うつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ならびに不安;末梢性感覚神経障害の症状、好ましくは末梢神経障害性疼痛および冷感アロディニア、線維筋痛、過敏性腸症候群、片頭痛、ならびに群発頭痛などの急性および慢性中枢性過敏障害;ならびに脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソンのジストニアおよびハンチントンのジストニアなどの運動ニューロン障害から選択される精神疾患または障害の治療および/または予防のための医薬品の製造における本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物と、容器またはパッケージと、添付文書などの書面による説明および投与指示書とを含む製品を提供する。
本発明の別の態様および実施形態は、本明細書が先に進むにつれて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】パクリタキセル誘発性機械的アロディニアに対する2-(2-フルオロベンゼンスルホニル)ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オンのR-およびS-エナンチオマーならびにその異なるエナンチオマー混合物の効果を示す図である。
図2】パクリタキセル誘発性機械痛覚過敏に対する2-(2-フルオロベンゼンスルホニル)ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オンのR-およびS-エナンチオマーならびにその異なるエナンチオマー混合物の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
エナンチオマー過剰率を特徴付けるために使用される場合の「約」という用語は、別段の指示のない場合、所与の数値を参照して±4%を意味する。本発明の実施形態のそれぞれにおいて、「約」を削除することができる。
「好ましくは」という用語は、本発明において必要とされないが、改善された技術的効果を引き起こすことができ、したがって望ましいが、必須ではない特徴または実施形態を説明するために使用される。
いくつかの化合物が、それらの構造式および/またはIUPAC名などそれらの化学名を参照することにより本明細書に記載される。構造式と化学名との間に矛盾がある場合、本発明ははっきりと、構造式ならびに化学名によって言及される化合物に関する。
【0021】
本明細書における式(I)の化合物が本明細書に言及されている場合は、式(Ia)の化合物など式(I)の化合物のいずれか好ましい例も指すことを理解すべきである。さらに、本明細書における式(II)の化合物が本明細書に言及されている場合は、式(IIa)の化合物など式(II)の化合物のいずれか好ましい例も指すことを理解すべきである。
本明細書で用いられる障害または疾患の「治療」という用語は、当技術分野において周知である。障害または疾患の「治療」は、障害または疾患が患者/対象において疑われるまたは診断されたことを意味する。障害または疾患に罹っている疑いのある患者/対象は、典型的には、当業者が特定の病態に容易に帰属させる(すなわち、障害または疾患を診断する)ことができる特定の臨床的および/または病理的症状を示す。障害または疾患の「治療」は、例えば障害または疾患の進行の停止(例えば、症状の悪化がないこと)あるいは障害または疾患の進行の遅延(進行の停止が一過性にすぎない場合)を導くことができる。障害または疾患の「治療」は、障害または疾患に罹っている対象/患者の部分奏効(例えば、症状の改善)または完全奏効(例えば、症状の消失)も導くことができる。したがって、障害または疾患の「治療」は、障害または疾患の改善も指すことがあり、例えば、障害または疾患の進行の停止あるいは障害または疾患の進行の遅延を導くことができる。そのような部分または完全奏効は、再燃を後に伴うことがある。対象/患者は、治療に対して広範囲の奏効(以上に記載される例示的な応答など)を示すことがあると理解すべきである。障害または疾患の治療は、とりわけ、根治的治療(好ましくは、障害または疾患の完全奏効、ひいては治癒を導く)および(症状軽減を含めて)対症的治療を含む。
【0022】
本明細書で用いられる障害または疾患の「予防」という用語も、当技術分野において周知である。例えば、障害または疾患に罹りやすい疑いのある患者/対象は、特に障害または疾患の予防によって利益を得ることができる。対象/患者は、例えばがん化学療法に関連した末梢神経障害症状の発症など望ましくない効果を発生するリスクを伴うことが知られている所与の医療処置を受けるおそれがある。対象/患者は、遺伝的素因を含むがこれに限定されない、障害または疾患に対する感受性または素因またはリスク因子を有することがある。そのような素因は、例えば遺伝マーカーまたは表現型指標を使用して標準方法またはアッセイによって決定することができる。患者/対象において、本発明に従って予防することができる障害または疾患を診断していないまたは診断できないことを理解すべきである(例えば、患者/対象は、いずれの臨床的または病理的症状も示さない)。したがって、「予防」という用語は、担当医によっていずれかの臨床的および/または病理的症状を診断または決定する、あるいは診断または決定することができる前の、本発明の水性医薬組成物の使用を含む。
本明細書に記載の数値に関して、別段の明示のない限り、数値の最後の小数位は、好ましくはその精度を示す。したがって、他の許容誤差が与えられていない限り、最大許容範囲は、好ましくは丸め規則を最後の小数位に適用することによって確かめられる。したがって、2.5という値は、好ましくは2.45~2.54の範囲を含む。
【0023】
本発明は、式(I)の(R)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンおよび式(II)の(S)-2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンをある比で含む組成物に関する。「組成物」という用語は、純粋な式(I)の化合物および純粋な式(II)の化合物は直接混合されなければならないことを必要としないと理解すべきである。それらは、一緒にまたは別々に製剤化し、同時にまたは続いて投与することができる。ただし、治療対象において得られる式(I)の化合物と式(II)の化合物の比は、本発明によって必要とされる通りであることを条件とする。好ましくは、本発明の組成物は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物であるが、本発明の組成物は、治療対象において得られる式(I)の化合物と式(II)の化合物の比が本発明によって必要とされる通りであるような、式(I)の化合物を含む1つもしくは複数の物品および式(II)の化合物を含む1つもしくは複数の物品の組合せ、または式(I)の化合物を含む1つもしくは複数の物品および式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物、例えば、式(I)の化合物と式(II)の化合物の約1:1混合物を含む1つもしくは複数の物品の組合せも包含することができる。
【0024】
さらに、本発明の組成物に含まれる2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンは、本発明において必要とされる式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の全範囲、あるいは式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率として表される全範囲で存在しなければならない。言い換えれば、等量の式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物を、過剰量の式(I)の化合物を含む構成要素と過剰量の式(II)の化合物を含む別の構成要素に理論的に分割することは、本発明の主旨に反することである。したがって、本発明の組成物の物理的形がどちらであろうと、組成物は全体として、本発明の式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の範囲、あるいは式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率として表される範囲に関する要件を満たさなければならない。式(I)の化合物と式(II)の化合物の比は、あるいは式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率として表されるが、統計的に意味のある数の2-(置換スルホニル)-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オン分子、典型的には1000個を超える分子に基づいていることを理解すべきである。本発明において、式(I)の化合物と式(II)の化合物の相対量は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の比によって、または式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率によって表される。
【0025】
本明細書で用いられる式(I)の化合物と式(II)の化合物の「比」は、別段の明示のない限り、式(I)の化合物と式(II)の化合物の質量比を指すことを理解すべきである。式(I)の化合物および/または式(II)の化合物の溶媒和物が使用される場合、溶媒はこの計算において無視されることになる。言い換えれば、「式(I)の化合物と式(II)の化合物の比」は、以下の通り算出される。

【0026】
当業者によって公知であるように、式(I)の化合物と式(II)の化合物の場合などにおけるキラリティーのみが異なる化合物の比は、キラルな保持体を使用するクロマトグラフィー、キラルな保持体上でのキャピラリー電気泳動分離、偏光の回転の旋光測定、キラルシフト試薬を使用する核磁気共鳴分光法、またはモッシャー酸などのキラル化合物を使用する化合物の誘導体化と、その後に続くクロマトグラフィーもしくは核磁気共鳴分光法を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知であるいくつかの方式で決定することができる。さらに、エナンチオマーを、共結晶中に存在する特定の水素結合相互作用の形成を利用するキラル共結晶化技法により、ラセミ体のキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)および直接分別結晶化を含めて、当業者に公知の方法で混合物から単離することができる(Springuel GR, et al., 2012;および米国特許第6,570,036号を参照のこと)。有用な共結晶化パートナーとしては、マンデル酸、リンゴ酸、酒石酸およびその誘導体のエナンチオマーが挙げられ、またはエナンチオマーを不斉合成により調製することができる。(例えば、Eliel and Wilen, 1994を参照のこと。)
【0027】
非ラセミ混合物などの本発明の組成物の式(I)の化合物と式(II)の化合物の比(キラル純度と呼ばれることもある)は、典型的にかつ好ましくはキラルHPLCにより決定し(詳細については、例を参照のこと)、方程式:
ee=(AR-AS)/(AR+AS)×100%
で計算して、そのエナンチオマー過剰率(ee)で表すこともできる。式中、ARは、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおける式(I)の化合物のピーク面積であり、ASは、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおける式(II)の化合物のピーク面積である。
この点に関して、キラル「純度」が上述されているが、本発明の主旨は、高いキラル純度の式(I)の化合物または式(II)の化合物を実現するものではないと認められている。むしろ、本発明の主旨は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の間のある範囲の比は、特に相乗効果を引き起こすことである。単に化合物の純度を改善するべき場合、すなわち目的が知られている、すなわち特定の一化合物を理想的には100%の純度で得るべき場合とは対照的に、本発明は、以前には知られていなかった比の2つの化合物、すなわち式(I)の化合物と式(II)の化合物に基づいている。
【0028】
本発明において、「直鎖状、分枝状または環式C1-4-アルキル基」という用語は、1~4個の炭素原子を有する任意のアルキル基を指す。その例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、iso-ブチルおよびtert-ブチルが挙げられる。「1個または複数のFで置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環式C1-4-アルキル基」という用語は、「直鎖状、分枝状または環式C1-4-アルキル基」が1個または複数のフッ素原子で置換されていることがあり、そのフッ素原子が典型的にはアルキル基の水素原子に置き換わっていることを示す。フッ素原子の数は、特に限定されていないが、典型的には1~10個、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個である。例としては、トリフルオロメチルおよび1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルが挙げられる。
【0029】
「独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める」という表現は、基がフェニル環にいずれか利用可能な位置で結合(または接続)されていることがあることを示す。典型的には、基はフェニル基に結合されて、その位置の水素原子に置き換わる。したがって、フェニル環の環炭素原子は、水素原子に結合している代わりに(例えば、R1またはR2)基に結合される。R1もR2も必須の置換基ではないことを理解すべきである。したがって、フェニル環は、R1もしくはR2、または両方で置換されていてもよく、あるいはR1でもR2でも置換されていなくてもよい。R1およびR2は、オルト、メタまたはパタなどのいずれか利用可能な位置で結合されていてもよい。置換フェニル環の具体例としては、2-フルオロフェニル-、2-クロロフェニル-、2-メチルフェニル-、2-シアノフェニル-、2-トリフルオロメチルフェニル-、3-フルオロフェニル-、3-クロロフェニル-、3-メチルフェニル-、3-シアノフェニル-、3-トリフルオロメチルフェニル-、4-フルオロフェニル-、4-クロロフェニル-、4-メチルフェニル-、4-シアノフェニル-、4-トリフルオロメチルフェニル-、2,3-ジフルオロフェニル-、2-フルオロ-3-クロロフェニル-、2-フルオロ-3-メチルフェニル-、2-フルオロ-3-シアノフェニル-、2-フルオロ-3-トリフルオロメチルフェニル-、2,4-ジフルオロフェニル-、2-フルオロ-4-クロロフェニル-、2-フルオロ-4-メチルフェニル-、2-フルオロ-4-シアノフェニル-、2-フルオロ-5-トリフルオロメチルフェニル-、2,5-ジフルオロフェニル-、2-フルオロ-5-クロロフェニル-、2-クロロ-5-メチルフェニル-、2-フルオロ-5-シアノフェニル-、2-フルオロ-5-トリフルオロメチルフェニル-、2,6-ジフルオロフェニル-、2-フルオロ-6-クロロフェニル-、2-フルオロ-6-メチルフェニル-、2-フルオロ-6-シアノフェニル-、2-フルオロ-6-トリフルオロメチルフェニル-、2-クロロ-3-フルオロフェニル-、2,3-ジクロロフェニル-、2-クロロ-3-メチルフェニル-、2-クロロ-3-シアノフェニル-、2-クロロ-3-トリフルオロメチルフェニル-、2-クロロ-4-フルオロフェニル-、2,4-ジクロロフェニル-、2-クロロ-4-メチルフェニル-、2-クロロ-4-シアノフェニル-、2-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル-、2-クロロ-5-フルオロフェニル-、2,5-ジクロロフェニル-、2-クロロ-5-メチルフェニル-、2-クロロ-5-シアノフェニル-、2-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル-、2,6-ジクロロフェニル-、2-クロロ-6-メチルフェニル-、2-クロロ-6-シアノフェニル-、2-クロロ-6-トリフルオロメチルフェニル-、2-メチル-3-フルオロフェニル-、2-メチル-3-クロロフェニル-、2,3-ジメチルフェニル-、2-メチル-3-シアノフェニル-、2-メチル-3-トリフルオロメチルフェニル-、2-メチル-4-フルオロフェニル-、2-メチル-4-クロロフェニル-、2,4-ジメチルフェニル-、2-メチル-4-シアノフェニル-、2-メチル-4-トリフルオロメチルフェニル-、2-メチル-5-フルオロフェニル-、2-メチル-5-クロロフェニル-、2,5-ジメチルフェニル-、2-メチル-5-シアノフェニル-、2-メチル-5-トリフルオロメチルフェニル-、2,6-ジメチルフェニル-、2-メチル-6-シアノフェニル-、2-メチル-6-トリフルオロメチルフェニル-、2-シアノ-3-フルオロフェニル-、2-シアノ-3-クロロフェニル-、2-シアノ-3-メチルフェニル-、2-シアノ-4-フルオロフェニル-、2-シアノ-4-クロロフェニル-、2-シアノ-4-メチルフェニル-、2-シアノ-5-フルオロフェニル-、2-シアノ-5-クロロフェニル-、2-シアノ-5-メチルフェニル-、2-トリフルオロメチル-3-フルオロフェニル-、2-トリフルオロメチル-3-クロロフェニル-、2-トリフルオロメチル-3-メチルフェニル-、2-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル-、2-トリフルオロメチル-4-クロロフェニル-、2-トリフルオロメチル-4-メチルフェニル-、2-トリフルオロメチル-5-フルオロフェニル-、2-トリフルオロメチル-5-クロロフェニル-、2-トリフルオロメチル-5-メチルフェニル-、3,4-ジフルオロフェニル-、3-フルオロ-4-クロロフェニル-、3-フルオロ-4-メチルフェニル-、3-フルオロ-4-シアノフェニル-、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル-、3-クロロ-4-フルオロフェニル-、3,4-ジクロロフェニル-、3-クロロ-4-メチルフェニル-、3-クロロ-4-シアノフェニル-、3-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル-、3-メチル-4-フルオロフェニル-、3-メチル-4-クロロフェニル-、3,4-ジメチルフェニル-、3-メチル-4-シアノフェニル-、3-メチル-4-トリフルオロメチルフェニル-、3-シアノ-4-フルオロフェニル-、3-シアノ-4-クロロフェニル-、3-シアノ-4-メチルフェニル-、3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル-、3-トリフルオロメチル-4-クロロフェニル-、3-トリフルオロメチル-4-メチルフェニル-、3,5-ジフルオロフェニル-、3-フルオロ-5-クロロフェニル-、3-フルオロ-5-メチルフェニル-、3-フルオロ-5-シアノフェニル-、3-フルオロ-5-トリフルオロメチルフェニル-、3,5-ジクロロフェニル-、3-クロロ-5-メチルフェニル-、3-クロロ-5-シアノフェニル-、3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル-、3,5-ジメチルフェニル-、3-メチル-5-シアノフェニル-、および3-メチル-5-トリフルオロメチルフェニル-からなる群が挙げられる。
【0030】
好ましい実施形態において、(置換)フェニル環は、フェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルおよび4-フルオロフェニルから選択される基である。より好ましくは、(置換)フェニル環は、フェニル、2-フルオロフェニルおよび4-フルオロフェニルから選択される基である。さらにより好ましくは、(置換)フェニル環は、フェニルおよび2-フルオロフェニルから選択される基である。
【0031】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物、典型的にかつ好ましくは溶媒和物、共結晶または担体が、典型的にかつ好ましくは製剤において使用されるとき、または典型的にかつ好ましくはそれを用いて動物、好ましくはヒトを治療するのに使用されるとき、他の成分、典型的にかつ好ましくは本発明の組成物と化学的にまたは中毒学的に相溶性でなければならないことを示す。好ましくは、「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物、典型的にかつ好ましくは溶媒和物、共結晶または担体が、典型的にかつ好ましくは製剤において使用されるとき、または典型的にかつ好ましくはそれを用いて動物、好ましくはヒトを治療するのに使用されるとき、他の成分、典型的にかつ好ましくは本発明の組成物と化学的にかつ中毒学的に相溶性でなければならないことを示す。医薬組成物は、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Pharmaceutical Press, 22nd editionに公表されている技法など当業者に公知である技法によって製剤化することができると認められている。
【0032】
「溶媒和物」は、1個または複数の溶媒分子と式(I)の(R)-エナンチオマーまたは式(II)の(S)-エナンチオマーとの会合体または複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例としては、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0033】
「共結晶」は、周囲条件下においてそれらの純粋な形で固体である異なる少なくとも2つの化合物を含む結晶構造を指す。異なる少なくとも2つの化合物は、式(I)の化合物および/もしくは式(II)の化合物ならびに/または組成物のいずれか別の成分もしくは医薬組成物の賦形剤を含むことができる。共結晶は、中性分子種から作製され、すべての種は結晶化後も中性のままである。さらに、典型的にかつ好ましくは、それらは、2つ以上のビルディング化合物が定義された化学量論比で存在する結晶性均質相材料である。この点に関して、Wang Y and Chen A, 2013;およびSpringuel GR, et al., 2012;ならびに米国特許第6,570,036号を参照のこと。式(I)の化合物および/または式(II)の化合物は、いずれかの多形体の形をとり得ることが理解されるべきである。様々な共結晶およびそのような共結晶を調製する技法については、RSC Drug Discovery, Pharmaceutical Salts and Co-crystals, published in 2012 by the Royal Society of Chemistry and edited by Johan Wouters and Luc Quere, in particular in chapters 15 and 16に記載されている。共結晶形成剤の好ましい例は、この参考文献の表16.1で開示されているものである。さらにより好ましい共結晶には、α-ヒドロキシ酸、α-ケト酸および/またはα-ケトアミドと本明細書に開示される(R)と(S)の比の式(I)および(II)の化合物との共結晶が含まれる。α-ヒドロキシ酸の例としては、アトロラクチン酸、ベンジル酸、4-クロロマンデル酸、クエン酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、エチルピルベート、ガラクツロン酸、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、グリコール酸、2-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシオクタン(hydroxyactanoic)酸、2-ヒドロキシノナン酸、2-ヒドロキシデカン酸、2-ヒドロキシウンデカン酸、4-ヒドロキシマンデル酸、3-ヒドロキシ-4-メトキシマンデル酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシマンデル酸、α-ヒドロキシアラキドン酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシラウリン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシパルミチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、3-(2’-ヒドロキシフェニル)乳酸、3-(4’-ヒドロキシフェニル)乳酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メチル乳酸、メチルピルベート、粘液酸、α-フェニル酢酸、α-フェニルピルビン酸、ピルビン酸、糖酸、酒石酸およびタルトロン酸が挙げられる。α-ケト酸の例としては、2-ケトエタン酸(グリオキシル酸)、メチル2-ケトエタノエート、2-ケトプロパン酸(ピルビン酸)、メチル2-ケトプロパノエート(メチルピルベート)、エチル2-ケトプロパノエート(エチルピルベート)、プロピル2-ケトプロパノエート(プロピルピルベート)、2-フェニル-2-ケトエタン酸(ベンゾイルギ酸)、メチル2-フェニル-2-ケトエタノエート(ベンゾイルギ酸メチル)、エチル2-フェニル-2-ケトエタノエート(ベンゾイルギ酸エチル)、3-フェニル-2-ケトプロパン酸(フェニルピルビン酸)、メチル3-フェニル-2-ケトプロパノエート(メチルフェニルピルベート)、エチル3-フェニル-2-ケトプロパノエート(エチルフェニルピルベート)、2-ケトブタン酸、2-ケトペンタン酸、2-ケトヘキサン酸、2-ケトヘプタン酸、2-ケトオクタン酸、2-ケトドデカン酸およびメチル2-ケトオクタノエートが挙げられる。α-ケトアミドの例としては、α-ケト酸の上記の例のいずれか1つを第一級または第二級アミンと反応させることによって得られ得るいずれかの化合物が挙げられる。
【0034】
第1の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物
【化3】
(式中、Zは、
1個または複数のFで置換されていてもよい直鎖状、分枝状または環式C1-4-アルキル基、あるいは
1またはR2で置換されているフェニル基
から選択され、R1は、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびメチルからなる群から選択され、R2は独立して、水素、フルオロ、クロロおよびメチルからなる群から選択され、
1およびR2は独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める)、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、組成物を提供する。
【0035】
好ましい態様において、本発明は、式(Ia)の化合物および式(IIa)の化合物
【化4】
(式中、R1は、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチルおよびメチルからなる群から選択され、R2は独立して、水素、フルオロ、クロロおよびメチルからなる群から選択され、
1およびR2は独立して、フェニル環のいずれか2つの位置を占める)、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(Ia)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、組成物を提供する。
【0036】
好ましくは、R1は、水素、メチルまたはフルオロである。さらにより好ましくは、R1はフルオロである。R2は、好ましくは水素、フルオロまたはメチル、より好ましくは水素またはフルオロ、さらにより好ましくは水素である。
より好ましい組成物は、2-(2-フルオロフェニル)スルホニル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの非ラセミ混合物、2-(3-フルオロフェニル)スルホニル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの非ラセミ混合物、または2-(4-フルオロフェニル)スルホニル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの非ラセミ混合物であり、これらのより好ましい実施形態の対応する(R)エナンチオマーのエナンチオマー過剰率が、20%以上であり、50%以下である。
これらの組成物、ならびに本発明によるいずれか他の組成物および医薬組成物は、好ましくはNMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離を約10nMの濃度で少なくとも約36%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約45%、さらにより好ましくは約50%阻害する。このパラメータを測定するためのアッセイは、Bonanno G et al. Heterocarrier-mediated reciprocal modulation of glutamate and glycine release in rat cerebral cortex and spinal cord synaptosomes. Eur J Pharmacol 1994, 252(1):61-7;およびFariello RG, Ghelardini C, Di Cesare Mannelli L, Bonanno G, Pittaluga A, Milanese M, Misiano P, Farina C. Broad spectrum and prolonged efficacy of dimiracetam in models of neuropathic pain. Neuropharmacology. 2014 Jun;81:85-94. PMID: 24486381に記載される。
【0037】
本発明による組成物において、式(I)の化合物および式(II)の化合物は、好ましくは式(I)および(II)に示した立体中心の立体化学のみが互いに異なる。言い換えれば、本発明による組成物は、好ましくは式(I)の化合物および式(II)の化合物を含有し、式中、Zは、式(I)の化合物および式(II)の化合物において同じである。
典型的に、非溶媒和または非共結晶化組成物が好ましい。さらに好ましいのは、非溶媒和および非共結晶化組成物である。
したがって、別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物を、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)で含む組成物を提供する。
より好ましくは、式(I)の化合物の前記エナンチオマー過剰率(ee)は20%以上、約40%以下である。さらにより好ましくは、式(I)の化合物の前記エナンチオマー過剰率(ee)は20%以上、35%以下である。
【0038】
式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、好ましくは22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%または40%以上である。一方、式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、好ましくは48%、46%、44%、42%、40%、38%、36%、34%、32%または30%以下とすることができる。式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)の適した好ましい範囲の例としては、20%~48%、20%~46%、20%~44%、20%~42%、20%~40%、20%~38%、20%~36%、20%~34%、20%~32%、20%~30%、30%~50%、30%~48%、30%~46%、30%~44%、30%~42%、30%~40%、40%~50%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、35%~50%、35%~45%、35%~40%などが挙げられる。
当業者に公知であるように、エナンチオマー過剰率の代わりに、式(I)の化合物と式(II)の化合物の比を参照することができる。式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の好ましい範囲は、1.5:1~3.0:1、好ましくは1.5:1~2.3:1、より好ましくは1.5:1~2.0:1である。式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の他の好ましい範囲は、1.5:1~3.3:1、好ましくは2:1~3:1、より好ましくは2:1または3:1である。
【0039】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物と、式(I)の化合物および式(II)の化合物を組み合わせて、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキットを提供する。以下において、本発明の組成物の使用が記載されているときはいつでも、本発明によるキットを代わりとして使用し得ることを理解すべきである。当業者は、キットの成分を投与前に組み合わせることができ、これが好ましく、またはキットの成分を別々に投与することができることを理解する。後者の場合、本発明の効果を達成するためには、キットの成分を典型的に多くとも30分の時間範囲内で投与すべきである。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、以下に記載するものなど多数の疾患および障害の治療または予防における使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する:
a)脊髄もしくは高次脳構造または神経細胞経路の増感に関連する一次性アロディニア、二次性アロディニア、または他の疼痛もしくは不快感を含めて、化学療法、細菌発育抑制療法、ウイルス感染およびウイルス治療、疱疹後神経痛、骨壊死、三叉神経痛、または糖尿病性末梢神経障害に関連するものなど、寒冷過敏性、刺痛、灼熱、またはうずくような感覚を含めて、末梢神経障害の陽性症状の予防または治療のため;
b)骨および関節痛、骨壊死疼痛、反復運動疼痛、歯痛、月経困難症疼痛、がん性疼痛、筋筋膜痛、外科的疼痛、周術期疼痛、および乳房切除後症候群、開胸術後症候群、または断端痛などの術後疼痛症候群、ならびにアンギナに関連する疼痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性骨盤痛、慢性腰痛を含めて、疼痛の予防または治療のため;
c)変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、慢性関節炎痛および関連神経痛、腱鞘炎ならびに痛風などの炎症性疼痛の予防または治療のため;
d)化学療法誘発性疼痛、外傷後損傷疼痛、挫傷痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発神経障害、脊椎損傷、腰痛、神経圧迫または絞扼によって生ずる疼痛、仙骨痛、三叉神経痛、片頭痛、疱疹後神経痛、幻肢疼痛、疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、末梢神経系のいずれかのレベルにおける病変によって引き起こされる中枢性疼痛症候群などの神経障害性疼痛の予防または治療のため;
e)神経精神障害の予防または治療のため。神経精神障害の例としては、統合失調症、統合失調症を含む精神病、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、物質関連障害、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症または型分類困難な統合失調症、物質誘発性精神病性障害、物質関連障害および嗜癖行動が挙げられる;
f)焦点性および全般性の両方の癲癇および他の発作;
g)過剰食物摂取、神経性過食症に関連する肥満または他の摂食障害;
h)脳卒中、脳水腫、脳虚血、脳出血、神経変性疾患、心臓バイパス手術および移植、周産期低酸素症、心停止、ならびに低血糖性脳損傷の後に起こる脳障害;
i)不眠、ナルコレプシー、または下肢静止不能障害などの睡眠障害;
j)感情障害、パニック発作、パニック障害、急性ストレス障害、広場恐怖症、全般不安障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害、社交恐怖症、特定恐怖症、物質誘発性不安障害などの不安障害;
k)うつ病、快感消失、単極性うつ病、双極性障害、精神病性うつ病などの気分障害;
l)物質嗜癖、薬物依存、アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚薬、吸入剤、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静薬、催眠薬または抗不安薬を含めて物質耐性、依存または離脱;
m)アルツハイマー病、虚血、外傷、血管の問題または脳卒中、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト-ヤコブ病、化学療法、周産期低酸素症、他の医学的全身状態または物質乱用に関連する異なるタイプの認知症などの加齢性認知機能低下または認知障害など認知機能の障害;
n)薬物誘発性パーキンソニズムを含めてパーキンソン病、または脳炎後パーキンソニズム;
o)注意欠陥多動性障害(ADHD)、強迫性障害、恐怖症、外傷後ストレス症候群、自閉症および自閉症スペクトラム障害、衝動制御障害などの注意欠陥障害;
p)耳鳴り、老人性難聴;
q)学習および記憶を増強するため;
r)遺伝性または散発性運動ニューロン障害の予防または治療のため。それらの例としては、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、進行性球麻痺、フリードライヒ運動失調症、脆弱X症候群が挙げられる;
s)運動障害の予防または治療のため。それらの例としては、ジストニア、ハンチントン舞踏病を含めて舞踏病、パーキンソン病関連ジストニア、クロイツフェルト-ヤコブ病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、大脳基底核石灰化が挙げられる;
t)無動性硬直症候群などの無動症のため、
u)神経遮断薬誘発性パーキンソニズムなどの薬物誘発性パーキンソニズム、神経遮断性悪性症候群、神経遮断薬誘発性急性ジストニア、神経遮断薬誘発性急性静坐不能、神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジアならびに安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦を含めて、薬物誘発性姿勢時振戦、舞踏病(シデナム舞踏病、ハンチントン病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬物誘発性舞踏病およびヘミバリスムなど)、全般性または焦点性ミオクローヌス、チック(単純性チック、複雑性チックおよび症候性チックを含む)、およびジストニア(突発性ジストニア、薬物誘発性ジストニア、症候性ジストニアおよび発作性ジストニアなどの全般性ジストニア、ならびに眼瞼痙攣、顎口腔ジストニア、痙攣性発声障害、痙性斜頸、軸性ジストニア、ジストニアの書痙および片麻痺性ジストニアなどの局所性ジストニアを含む)、筋痙攣、ならびに振戦を含めて筋痙縮または脱力に関連する障害などのジスキネジアのため;
v)ならびに尿失禁、多系統萎縮症、結節性硬化症、オリーブ-橋-小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物誘発性視神経炎、虚血性網膜症、糖尿病網膜症、緑内障、痙縮、ミオクローヌス、およびトゥレット症候群に関連するジスキネジアのため。
上記の疾患リストは、具体例として記載しているにすぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解すべきである。上記のうち、好ましいのは、a)、e)、q)、r)、およびs)から選択される1つまたは複数である。
【0041】
疾患または障害は、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される。
さらに、本発明の組成物は、健常対象における学習および記憶を増強するために、例えば非治療的使用の形で使用することもできる。
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防の方法であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択され、前記方法が、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0042】
本発明の一部分は、疾患または障害の治療の方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、それを必要とする動物、好ましくはヒトに投与される、方法を提供することでもある。ここで「治療有効量」という用語は、治療される状態または疾患の症状の1つまたは複数をモジュレートするのに十分な量を指し、好ましくは投与1回当たり10mg~3000mgの間、経口経路により1日1回または1日2回または1日3回投与される。さらに、本発明の一部分は、疾患または障害の予防の方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、それを必要とすると合理的に予想される動物、好ましくはヒトに投与される、方法を提供することでもある。ここで「治療有効量」という用語は、回避されるべき状態または疾患の予想される症状の1つまたは複数をモジュレートするのに十分な量を指し、好ましくは投与1回当たり10mg~3000mgの間、経口経路により1日1回または1日2回または1日3回投与される。
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防において使用するための医薬品の製造における本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される、使用を提供する。
【0043】
本発明の一部分は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を、副作用として末梢神経障害性疼痛および末梢神経障害の他の症状の暴動を呈する活性成分および活性剤、特に抗腫瘍薬および抗ウイルス薬をそれぞれ伴って投与することでもある。組成物または医薬組成物またはキットは、好ましくは単独でまたは少なくとも1つの抗腫瘍薬もしくは少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用される。より好ましくは、組成物または医薬組成物またはキットは単独で使用される。より好ましくは、組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗腫瘍薬と共に使用される。あるいは、好ましくは、組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用される。
組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗腫瘍薬または少なくとも1つの抗ウイルス薬を伴って投与されることがさらにより好ましく、前記少なくとも1つの抗腫瘍薬または前記少なくとも1つの抗ウイルス薬を伴った前記組成物または前記医薬組成物の前記投与は、並行、同時、連続または別個の投与である。
【0044】
そのような抗腫瘍薬の限定されない例は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択される。そのような抗ウイルス薬の限定されない例は、ヌクレオシド類似体またはヌクレオチド類似体から選択される。前記抗腫瘍薬は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択されることがさらにより好ましい。前記抗腫瘍薬は、好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択される。前記抗ウイルス薬は、好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンおよびジドブジンから選択される。
【0045】
組成物または医薬組成物またはキットは、好ましくは少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用され、前記抗ウイルス薬が好ましくはヌクレオシドまたはヌクレオチドから選択され、さらに好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンまたはジドブジンから選択される。
前記疾患または障害は、好ましくは発作である。あるいは、前記疾患または障害は、好ましくはうつ病である。さらに好ましくは、前記疾患または障害は、認知障害である。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、末梢性感覚神経障害である。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、末梢神経障害性疼痛である。
前記疾患または障害は、より好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、(i)糖尿病性神経障害、(ii)疱疹後神経障害、(iii)腰痛、(iv)仙骨痛、(v)外科的疼痛、(vi)圧挫損傷、(vii)脊椎損傷、(viii)複合性局所疼痛症候群、(ix)幻肢感覚、(x)変形性関節症(骨関節炎)に関連する末梢性感覚神経障害、(xi)関節リウマチに関連する末梢性感覚神経障害、(xii)自己免疫性骨関節炎に関連する末梢性感覚神経障害、(xiii)頭痛、(xiv)線維筋痛、(xv)細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvi)化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvii)内蔵損傷に関連する末梢性感覚神経障害、(xviii)骨壊死に関連する末梢性感覚神経障害、(xix)ヒト免疫不全ウイルス感染に関連する末梢性感覚神経障害、および(xx)抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害からなる群から選択される。
【0046】
前記疾患または障害は、好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、(i)糖尿病性神経障害、(ii)疱疹後神経障害、(iii)腰痛、(iv)仙骨痛、(v)外科的疼痛、(vi)圧挫損傷、(vii)脊椎損傷、(viii)複合性局所疼痛症候群、(ix)幻肢感覚、(x)変形性関節症に関連する末梢性感覚神経障害、(xi)関節リウマチに関連する末梢性感覚神経障害、(xii)自己免疫性骨関節炎に関連する末梢性感覚神経障害、(xiii)頭痛、(xiv)線維筋痛、(xv)細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvi)化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvii)内蔵損傷に関連する末梢性感覚神経障害、(xviii)骨壊死に関連する末梢性感覚神経障害、(xix)ヒト免疫不全ウイルス感染に関連する末梢性感覚神経障害、(xx)抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、および(xxi)末梢神経障害性疼痛からなる群から選択される。
【0047】
前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、糖尿病性神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、疱疹後神経障害である。前記疾患または障害は、好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、腰痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、仙骨痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、外科的疼痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、圧挫損傷である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、脊椎損傷である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、複合性局所疼痛症候群である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、幻肢感覚である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、変形性関節症(骨関節炎)に関連する末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、関節リウマチに関連する末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、自己免疫性骨関節炎に関連する末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、頭痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、線維筋痛である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、内蔵損傷に関連する末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、骨壊死に関連する末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、ヒト免疫不全ウイルス感染に関連する末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、末梢神経障害性疼痛である。
前記末梢性感覚神経障害は、好ましくは化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害から選択される。
【0048】
前記疾患または障害は、さらにより好ましくは化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、典型的にかつ好ましくは、前記化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイドおよび白金塩からなる群から選択される。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイドおよび白金塩からなる群から選択される。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチンからなる群から選択される。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、ビンクリスチン、パクリタキセル、またはオキサリプラチンからなる群から選択される。非常に好ましくは、前記末梢性感覚神経障害は化学療法剤によって誘発され、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、パクリタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンである。
【0049】
さらに好ましくは、前記疾患または障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、好ましくは、前記抗ウイルス剤は、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤である。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記抗ウイルス剤は、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジンまたはジドブジンから選択される。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、ザルシタビンによって誘発される末梢性感覚神経障害である。
好ましくは、前記化学療法誘発性末梢性感覚神経障害は、アロディニアまたは感覚異常の症状、より好ましくは手または足のアロディニアまたは感覚異常、さらに好ましくはソラフェニブ、ビンクリスチン、パクリタキセル、またはカルボプラチン、シスプラチン、もしくはオキサリプラチンによって誘発される手または足のアロディニアまたは感覚異常を伴う。
さらにより好ましくは、前記末梢性感覚神経障害は、疼痛、異常感覚、感覚異常またはアロディニアを伴う。
さらに好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を、抗腫瘍性化学療法剤成分が末梢性感覚神経障害およびその付随症状を誘発する前に予防的に投与することができる。
さらに好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を間欠的に投与することができる。さらに、本発明において、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を、抗腫瘍性化学療法剤成分の繰り返しサイクルと同調させて投与することができることが好ましい。
【0050】
用量は、特定の患者または対象に個々のレジメンおよび用量レベルを決定するとき担当医によって普通考慮される投与経路、疾患の重症度、患者または対象の年齢および質量ならびに他の因子に依存する。
本発明の組成物または医薬組成物は、経口、筋肉内、皮下、局所、経皮、鼻腔内、静脈内、舌下または直腸内投与を含めて、いずれの経路によっても投与することができる。典型的にかつ好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口経路により単回用量単位で1日1回、1日2回または1日3回、最も好ましくは1日1回または1日2回投与される。最も好ましい実施形態において、本発明の組成物または医薬組成物は、1日2回投与される。
典型的にかつ好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物の経口用量は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間である。典型的にかつ好ましくは、前記組成物または前記医薬組成物は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与される。
【0051】
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の好適に選択された薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、アジュバント、添加剤、界面活性剤、乾燥剤または希釈剤を混合することによって調製することができ、経口、非経口または局所投与に好適に適応させることができる。典型的にかつ好ましくは、本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、粉末、顆粒、ペレット、経口または非経口用溶液、懸濁液、坐剤、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ペーストの形で投与され、かつ/またはリポソーム、ミセルおよび/もしくはミクロスフェアを含むことができる。
本発明の医薬組成物の薬学的に許容される担体は、限定されることなく、いずれかの薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、アジュバント、添加剤、界面活性剤、乾燥剤または希釈剤である。好適な薬学的に許容される担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターである。本発明の薬学的に許容される担体は、固体、半固体または液体であり得る。
【0052】
経口投与のための錠剤、カプセルまたはサシェは通常、用量単位で供給され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤形成剤、滑沢剤、洗浄剤、崩壊剤、着色剤、フレーバーおよび湿潤剤などの通常の賦形剤を含むことができる。錠剤は、当技術分野において周知の方法に従ってコーティングしてもよい。好適な充填剤としては、好ましくはセルロース、マンニトール、ラクトースおよび同様の薬剤を含み、またはそれらである。好適な崩壊剤としては、好ましくはデンプン、ポリビニルピロリドン、およびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体を含み、またはそれらである。好適な滑沢剤としては、好ましくは例えばステアリン酸マグネシウムを含み、またはそれである。好適な湿潤剤としては、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含み、またはそれである。これらの経口用固体組成物は、通常の混合、充填または打錠方法で調製することができる。混合操作を繰り返して、大量の充填剤を含む組成物に活性剤を分散させることができる。これらの操作は通常の操作である。
【0053】
経口用液体組成物は、例えば水性溶液、乳濁液、シロップもしくはエリキシルの形で、または使用時に水もしくは好適な液体担体で再構成させる乾燥製品の形で提供することができる。液体組成物は、懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂肪;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシア;非水性担体(食用油を含むことができる)、例えばアーモンド油、分留ヤシ油、グリセリンエステルなどの油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸、および望むなら、通常のフレーバーまたは着色剤など通常の添加剤を含むことができる。経口製剤としては、錠剤または顆粒などの通常の製剤を挙げることもでき、またはそれらとして製剤化することができる。非経口投与には、本発明の組成物および無菌担体を含む液体用量単位を調製することができる。
経口製剤は、経口製剤の風味認識を最適化するために風味マスキング成分をさらに含んでもよい。そのような風味マスキング成分の例は、当業者に公知の、柑橘フェニル、甘草フェニル、ミントフェニル、ブドウフェニル、クロフサスグリまたはユーカリベースフレーバラントであり得る。
非経口溶液は通常、化合物を担体に溶解し、濾過により滅菌した後に、好適なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することによって調製される。
【0054】
局所麻酔薬、保存剤および緩衝剤などのアジュバントは、医薬組成物に添加することができる。安定性を高めるために、組成物をバイアルに充填した後に凍結させ、真空下で水を除去することができる。本発明の組成物の一様分布を促進するために、界面活性剤または保水剤を医薬組成物に有利に含めることができる。
局所製剤は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ゴム、溶液、ペーストを含み、もしくはそれらであり、またはリポソーム、ミセルもしくはミクロスフェアを含むことができる。
本発明の組成物または医薬組成物によって治療される対象は、ヒトおよび動物である。好ましい動物は家畜であり、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ラクダ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌおよびオウムを含むが、これらに限定されない。より好ましい対象は、哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットと、容器またはパッケージと、添付文書などの書面による説明および投与指示書とを含む製品を提供する。
【0055】
式(I)の化合物または式(II)の化合物と、アニラセタム、ブリバラセタム、セバラセタム、コルラセタム、ジミラセタム、ドリラセタム、デュプラセタム、エチラセタム/レベチラセタム、ファソラセタム、イムラセタム、メチルフェニルピラセタム、ネブラセタム、ネフィラセタム、オムベラセタム(ヌーペプト)、オキシラセタム、フェニルピラセタム、フェニルピラセタムヒドラジド、ピラセタム、プラミラセタム、ロリプラム、ロルジラセタムおよび/またはセレトラセタムなどのラセタムとの組成物は、特に式(I)の化合物または式(II)の化合物とラセタムまたは他のラセタムのエナンチオマーの比が式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物について本明細書に開示される範囲内で選択される場合に、相乗的混合物および組成物を調製するために使用することもできることがさらに想定される。
式(I)の化合物または式(II)の化合物と、米国特許第7,544,705号または米国特許第8,334,286号で開示されたジミラセタムまたはジミラセタム様化合物など他の化合物との組成物は、特に式(II)(または(I))の化合物とジミラセタム様化合物またはジミラセタム様化合物のエナンチオマーの比が式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物について本明細書に開示される範囲内で選択される場合に、相乗的混合物および組成物を調製するために使用することもできることがさらに想定される。
【0056】
本発明は、疾患、損傷、または障害を治療および/または予防する方法であって、対象に請求項1に記載の組成物を投与するステップを含み、疾患、損傷、または障害が、末梢性感覚神経障害、発作、うつ病、または認知障害である、方法にも関する。本方法において、疾患、損傷、または障害は、好ましくは末梢性感覚神経障害、神経精神障害、運動ニューロン障害、または運動障害である。より好ましくは、疾患、損傷、または障害は、末梢性感覚神経障害である。末梢性感覚神経障害は、好ましくは末梢神経障害性疼痛である。末梢性感覚神経障害は、好ましくは糖尿病性神経障害、疱疹後神経障害、腰痛、仙骨痛、外科的疼痛、圧挫損傷、脊椎損傷、複合性局所疼痛症候群、幻肢感覚、変形性関節症に関連する末梢性感覚神経障害、関節リウマチに関連する末梢性感覚神経障害、自己免疫性骨関節炎に関連する末梢性感覚神経障害、頭痛、線維筋痛、細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、内蔵損傷に関連する末梢性感覚神経障害、骨壊死に関連する末梢性感覚神経障害、ヒト免疫不全ウイルス感染に関連する末梢性感覚神経障害、末梢神経障害性疼痛、または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害から選択される。場合によっては、末梢性感覚神経障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である。いくつかの場合において、末梢性感覚神経障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択され、好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択される。場合によっては、末梢性感覚神経障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、抗ウイルス剤は、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤である。場合によっては、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤は、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、またはジドブジンである。
【0057】
場合によっては、方法は、抗腫瘍薬を投与するステップをさらに含み、抗腫瘍薬は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択される。場合によっては、抗腫瘍薬は、ソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンからなる群から選択される。場合によっては、方法は、抗ウイルス薬を投与するステップをさらに含み、抗ウイルス薬は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドである。場合によっては、抗ウイルス薬は、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、またはジドブジンである。場合によっては、組成物は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、投与1回当たり20mg~2000mgの間、または投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与される。
【0058】
本発明はさらに、学習および記憶を増強する方法であって、本明細書に記載される本発明の組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。本方法の一部の場合では、対象は、健常対象である。
本明細書に引用された非特許参考文献は、第一著者に刊行年を添えて略記する。完全な引用文献を以下に列挙する。




【実施例
【0059】
本発明の例は、単に例示のためであり、限定するためのものではない。ラセミの2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンおよび誘導体、ならびに式(I)および(II)の個々のエナンチオマーの試料は、Sigma-Aldrich社から購入したものなど市販の出発物質を使用して合成することができる。これらの市販の供給物は、当業者に周知の準備合成方法および技法を使用して、さらに精製することなく供給元から受け入れたままの状態で使用することができる。
【0060】
(例1)
2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの合成
(R)-エナンチオマー、(S)-エナンチオマー、および2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンのラセミ混合物は、Manetti D, et al. 2000; Martini E, et al. 2005;およびScapecchi S, et al. 2004に記載されている方法に従って調製した。合成された(R)-および(S)-誘導体のエナンチオマー過剰率は、Manetti D, et al. 2000に記載されているように決定した。(R)-および(S)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率は、本発明の組成物を調製するために別々に使用されるとき、各エナンチオマーについて96%以上である。
【0061】
20%以上ee(過剰(R))および50%以下ee(過剰(R))の所望のエナンチオマー過剰率、ならびに本発明による他の所望の特定の組成物を達成するには、当業者に公知のいくつかの方法を適用することができる。例えば、個々のエナンチオマーを混合することによって、または2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンのラセミ体をそれぞれの量の(R)-エナンチオマーと混合することによって、前記組成物を調製する。さらに、ラセミの2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンから出発して、(S)-エナンチオマーの一部分または全部を、分取キラルカラムクロマトグラフィーによって除去することができる。
【0062】
(例2)
ラットの誘発性末梢神経障害性疼痛モデル
疼痛反応の評価
評価下にあるモデルによる疼痛反応のピークにおいて、被験化合物、ビヒクルおよび対照物の単一用量の効果を評価した。その後、耐性の起こり得る発生を評価するために、2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンまたは誘導体の混合物の反復投与を研究した。痛覚過敏もアロディニアも評価した。有効性の評価はすべて、ラットの処置の割付けを知らされていない担当医師によって実施された。
【0063】
結果は、指示経路でビヒクル投与を受ける時間を一致させた傷害ラットと比較するとき、(同じ経路を介して)統計的有意差が観察される最小用量として表される。分散分析ANOVA、次にポストホック比較のためのフィッシャーの制約付最小有意差手順を使用して、Randall & Selitto装置paw pressure試験(「抗痛覚過敏」)またはVon Frey試験(「機械的アロディニア」)または冷板試験(「冷感アロディニア」)による痛覚過敏行動結果の2つの手段間における有意性を検証した。P値≦0.05は、有意であるとみなされた。この定義は、「統計的に有意に」阻害するとして本明細書に指定されたいずれの用量にも当てはまる。
【0064】
Paw pressure試験(痛覚過敏)
足の機械感受性は、一定速度(32g/秒)で増加する力を及ぼすRandall & Selitto装置(Randall and Selitto, 1957)を使用して決定した。足の逃避を引き起こす刺激を、処置前および処置後の異なる時間に評価した。結果は、足の逃避の機械閾値の平均を表し、グラム数として表される。ラットの足への考え得る損傷を回避するために、加えられる最大の力を240gに設定した。単回投与プロトコルにおいて、paw pressure試験を処置前(投与前)および処置後一定間隔で行った。
Von Frey試験(機械的アロディニア)
プラスチックのドームで覆われた、メッシュ金属床を備えたチャンバに、それぞれ動物を置いた。ドームの中で、動物は自由に歩くことができたが、跳躍することはできなかった。次いで、機械的刺激を、電子式von Frey装置(37400 Dynamic Plantar Aesthesiometer、Ugo Basile社、Comerio、Varese、Italy)を使用して、左後足の足底中央部皮膚に送った。カットオフを50gに設定し、力の増加速度(ランプ時間)を20秒に設定した。単回投与プロトコルにおいて、疼痛閾値測定を処置前(投与前)および処置後一定間隔で行った。反復処置プロトコルにおいて、最後に投与してから13時間後に試験前値を測定した。その後、動物は新たに投与を受け、記載の時間に措置を行った。結果はグラムで表され、機械閾値の平均±S.E.M.を示す。
冷板試験(冷感アロディニア)
冷板を床として備えたステンレス箱(12cm×20cm×10cm)に、動物を置いた。冷板の温度を4℃±1℃で一定に維持した。疼痛関連行動(すなわち、後足の持ち上げおよび舐め)を観察し、最初の徴候の時間を記録した。足の持ち上げまたは舐めの潜時のカットオフ時間を60秒に設定した(Di Cesare Mannelli et al. Exp Neurol 261:22-33, 2014)。
【0065】
(例2A)
慢性絞扼損傷モデルにおける化合物の効果
機械痛覚過敏に対する被験化合物の効果をビヒクルまたは選択された対照物と比較して評価するために、広く受け入れられている有痛性神経障害モデルであるラットの慢性絞扼損傷モデル(Wang and Wang, 2003)を選択した。
神経障害は、Bennett and Xie (1998)によって記載された手順に従って誘発させた。簡潔に言えば、ラットに無菌条件下で抱水クロラールを400mg/kg腹腔内投与して麻酔し、右総坐骨神経を、鈍的剥離によって大腿中部のレベルで露出させた。三叉部の近位で、神経から周囲の結合組織を注意深く取り除き、4本のクロミックカットグット結紮糸(4-0、Ethicon社、Norderstedt、Germany)をその周りに約1mmの間隔でゆるく結んだ。止血を確認した後、切り口を層中に閉じた。次いで、動物を麻酔および手術から回復させ、1ケージ当たり1匹で維持し、水および標準飼料を自由摂取で与えた。この手順により、機械的刺激に応答して痛覚過敏およびアロディニアの出現が誘発される。これは、傷害2~5日後に明らかであり、約14日でそれらの最大重症度に到達する。
【0066】
【表1】
【0067】
(例2B)
MIA誘発性変形性関節症モデルにおける化合物の効果
変形性膝関節症モデル
モノヨード酢酸ナトリウム(MIA)の単回関節内注射を、Fernihough J et al., 2004によって記載された方法に従ってラットの膝関節に導入した。モノヨード酢酸ナトリウム(MIA)は、投与14日後に軟骨下骨肥厚に関連する軟骨における骨関節炎様限局性病変の形で軟骨分解を導く軟骨細胞代謝を阻害する(Guingamp et al., 1997)。したがって、このモデルは、ヒト疾患において観察されたものと同様の骨関節炎様病変および機能障害をラットにおいて容易にかつ急速に再現することができる(Guzman et al., 2003)。注射7日後に、炎症性成分は鎮静し、残っている疼痛は、事実上神経障害性疼痛とみなされる。簡潔に言えば、ラットをジエチルエーテルで深く麻酔した。後足ピンチ逃避反射の廃止に続いて、27ゲージの針を脛骨プラトーと大腿顆の間の関節腔に導入した。適切な位置に収まると、2mgのMIAを25mLの1%CMC(水中カルボキシメチルセルロース、Sigma-Aldrich社、Italy)の体積に希釈し、1つの膝関節に注射し、ラットを疼痛評価前に14日間回復させた。
【0068】
【表2】
【0069】
(例2C)
糖尿病性末梢神経障害
マウス(約30g)の尾部に、0.1Nシトレート緩衝液でpH4.5に調整された食塩水中で調製されたストレプトゾトシン(Wako Pure Chemicals社、Richmond、VA)を200mg/kg静脈内注射した。年齢を一致させた非糖尿病性対照マウスに、ビヒクルを単独で注射した。ストレプトゾトシン溶液は、化合物の安定性が限られているため新たに調製した。動物を、1ケージ当たり4匹を一群として維持し、飼料および水補充の特殊なケアを施した。ケージの床は毎日取り換えた。一連の予備的対照実験において、血清グルコースレベルを、ストレプトゾトシン処置後7、14、および21日目に分光測定し、期間を通して糖尿レベル(300mg/dlを超える)と一致していることがわかった。血清グルコースレベルは、尾静脈穿刺によって得られた血液試料からグルコースオキシダーゼ法によって測定した。動物は、ストレプトゾトシン処置後1週、2週、および3週目に熱痛覚過敏も機械痛覚過敏も発症することがわかった。ストレプトゾトシン処置後7日目の動物を研究に使用した。
【0070】
マウスの左側脳室へのi.c.v.注射を実施した。注射は、26ゲージの針を装着したHamiltonマイクロリットル注射器を使用して、Haley and McCormick (1957)の方法に従って行った。注射の部位は、ブレグマに対して2mm尾側、2mm外側であり、頭蓋骨表面から3mmの深さであった。注入量は5μlであった。
【表3】
【0071】
(例3A)
化学療法誘導性末梢性感覚神経障害-オキサリプラチンモデル
成体ラットにおいて、Cavaletti et al., 2001に従って食塩水中オキサリプラチン(Tocris社)を2.4mg/kgで1日1回、毎週連続5日間、3週間腹腔内投与すること(蓄積量36mg/kg)によって、末梢性感覚神経障害が誘発された。第1回のオキサリプラチン投与21日後から開始して、オキサリプラチン誘発性機械痛覚過敏に対するラセミのユニフィラムまたはエナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する50%の(R)-ユニフィラムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物の反復経口投与の効果を評価した。
【0072】
【表4】

【0073】
(例3B)
化学療法誘発性末梢性感覚神経障害-ビンクリスチンモデル
【表5】

【0074】
(例3C)
化学療法誘発性末梢性感覚神経障害-パクリタキセルモデル
【表6】

【0075】
2-(2-フルオロベンゼンスルホニル)ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オン誘導体(Rエナンチオマー=NT-24336、S-エナンチオマー=NT-24781、R:S混合物1:1、1:3および3:1)の有効性を、雄性のSprague Dawley成体ラットにおいて機械的に誘発させた痛覚過敏およびアロディニアのモデルにおいて単回の急性投与(1mg/kg、静脈内投与)後に比較した。
【0076】
機械的アロディニア(von Frey試験)の評価により、3部のR-エナンチオマーおよび1部のS-エナンチオマーを含む非ラセミ混合物は、群を抜いて最も活性のあるものであり、R-エナンチオマーよりも統計的に有意に効果的であること(投与後15分においてP<0.05および30分後P<0.01)が明らかになった。ラセミの1:1混合物はわずかに効果的であり、S-エナンチオマーならびにR-およびS-エナンチオマーの1:3混合物はほとんど不活性であった(図1を参照のこと)。機械痛覚過敏(Randall & Selitto、paw pressure試験)アッセイにおいて、効力の順位序列が同じであることが明らかになった(図2を参照のこと)。
【0077】
図1は、パクリタキセル誘発性機械的アロディニアに対する2-(2-フルオロベンゼンスルホニル)ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オンのR-およびS-エナンチオマーならびにその異なるエナンチオマー混合物の効果を示す。パクリタキセル(2mg/kg、腹腔内投与)を1、3、5および8日目に投与した。被験化合物を食塩水に溶解し、雄性のSprague-Dawley成体ラット(Charles River社、Italy、220~250g質量)に1mg/kgの用量で静脈内投与した。データは注射後0~75分で得られたものであり、6匹の動物の平均±s.e.m.として表される。ビヒクル+パクリタキセル処置ラットに対して、*P<0.05および**<0.01;NT24336(R)処置群に対して、°P<0.05および°°P<0.01。
【0078】
図2は、パクリタキセル誘発性機械痛覚過敏に対する2-(2-フルオロベンゼンスルホニル)ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-6-オンのR-およびS-エナンチオマーならびにその異なるエナンチオマー混合物の効果を示す。パクリタキセル(2mg/kg、腹腔内投与)を1、3、5および8日目に投与した。被験化合物を食塩水に溶解し、雄性のSprague-Dawley成体ラット(Charles River社、Italy、220~250g質量)に1mg/kgの用量で静脈内投与した。データは注射後0~75分で得られたものであり、6匹の動物の平均±s.e.m.として表される。ビヒクル+パクリタキセル処置ラットに対して、*P<0.05および**<0.01。
【0079】
(例4)
マウスの受動的回避パラダイムにおけるインビボ抗健忘活性
ラセミの混合物ならびにRおよびSエナンチオマーを、マウスの受動的回避試験において3、10および30mg/kgの用量で経口投与30分後に試験した。
方法。試験は、Jarvik ME ad Kopp R, Psychol Rep, 21:221-224, 1967によって記載されたステップスルー法に従って行った。装置は、2コンパートメントのアクリル箱からなるものであり、明コンパートメントがギロチンドアによって暗コンパートメントに連結されている。マウスは、暗コンパートメントに入るとすぐに苦痛を与える電気ショック(0.3mA、1秒)を受ける。試験を連続2日行った。マウスを2コンパートメントの箱の明コンパートメント側に置き、暗コンパートメントに入る潜伏時間を、第1日目の訓練セッションにおいて、また24時間後、2日目の保持セッションにおいて測定した。マウスは、訓練セッションにおいて暗室に入ると罰を受け、それらの記憶力が健忘薬によって減退されない限り、翌日のセッションでそれを思い出した。訓練セッションにおいて、60秒の潜時後に暗コンパートメントに入らなかったマウスを、残りの実験から除外した。各群から、約20~30%のマウスを除外した。調査薬物はすべて、訓練セッション30分前に経口投与した。記憶混乱については、訓練セッションの完了直後に、マウスに健忘薬スコポラミンを注射した(1.5mg/kg腹腔内投与)。
【0080】
ビヒクル処置マウスは、訓練セッション直後にスコポラミン注射の対照として食塩水の腹腔内注射を受けた。24時間後、試験を繰り返した(保持セッション)。2日目においては、薬物を投与しなかった。保持セッションにおいて許容された最大の進入潜時は180秒であった。結果を表7に示す。
【表7】

【0081】
2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンの特許請求された比のR:S-エナンチオマーは、2-フェニルスルホニル-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6(2H)-オンのラセミ体が使用された場合より明らかによい、ラット脊髄シナプトソームからのグルタメート遊離のより強力な阻害、末梢神経障害性疼痛のより強力な治療、より強力な抗健忘効果およびより強力な抗うつ効果を導く。
【0082】
以上に引用されたすべての特許、刊行物、および要約は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の実現として記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の例示にすぎないことを認識すべきである。多数の修正およびその改変は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかである。
図1
図2
【国際調査報告】