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特表2022-510363(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドを非ラセミ比で含む相乗的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドを非ラセミ比で含む相乗的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4015 20060101AFI20220119BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61P25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531433
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2019083594
(87)【国際公開番号】W WO2020115093
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】18210106.3
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519427413
【氏名又は名称】メティス ファーマシューティカルズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ファリーナ カルロ
(72)【発明者】
【氏名】シェルツ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルディーニ カールラ
(72)【発明者】
【氏名】ディ チェザーレ マネッリ ロレンツォ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、ある比の2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのエナンチオマーおよびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶の組成物、前記組成物を含む医薬組成物、その医薬品としての使用、ならびに典型的にかつ好ましくは、発作関連障害、末梢性感覚神経障害、好ましくは末梢神経障害性疼痛;発作;うつ病;または認知障害から選択される疾患または障害の治療および/または予防における本発明の組成物または医薬組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物および式(II)の化合物、
【化1】
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、67%以下である、組成物。
【請求項2】
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、40%以下である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶と式(II)の化合物および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶が、別々にパッケージされている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、非ラセミ混合物が、式(I)の化合物を式(II)の化合物に対して20%以上、67%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物および式(II)の化合物と、式(I)の化合物および式(II)の化合物を組み合わせて、20%以上、67%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキット。
【請求項8】
医薬品としての使用のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物または請求項6に記載の医薬組成物または請求項7に記載のパーツのキット。
【請求項9】
疾患、損傷または障害の治療および/または予防における使用のためのものであって、疾患、損傷または障害が、発作関連障害から選択される、請求項8に記載の組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項10】
組成物または医薬組成物が、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与されることになっている、請求項9に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
【請求項11】
式(I)の化合物と式(II)の化合物、または
式(I)の化合物と式(I)および(II)の化合物のラセミ体
を組み合わせるステップを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物または請求項6に記載の医薬組成物を調製する方法。
【請求項12】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物または請求項6に記載の医薬組成物または請求項7に記載のキットの調製における式(I)の化合物および/もしくは式(II)の化合物ならびに/または式(I)および(II)の化合物のラセミ体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある範囲の比の(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドおよびそれらの薬学的に許容される溶媒和物または共結晶を含む組成物およびキット、前記組成物を含む医薬組成物、それらの医薬品としての使用、ならびに典型的にかつ好ましくは発作関連障害から選択される中枢神経系疾患または障害の治療および/または予防のための本発明の組成物または医薬組成物またはキットの使用であって、好ましくは、疾患が癲癇である、本発明の組成物または医薬組成物またはキットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、脳に広範に存在する興奮性神経伝達物質である。興奮性メッセンジャーとしてのその役割は、最初の徴候が1950年代に現れ、グルタメートの静脈内投与によって、痙攣が誘発されることが認められた。しかし、生合成および分解酵素、細胞取り込み機構、細胞内貯蔵放出系、ならびにその細胞表面イオンチャネルおよびGタンパク質共役受容体を含むグルタミン酸作動性神経伝達物質系全体の検出は1970年代まで行われず、1980年代になって、好適な薬理学的ツールが初めて同定された。新たに出現した分子生物学的ツールによって、グルタミン酸作動性イオンチャネル、受容体、トランスポーターなどの分子同定および分類のための手段が提供されたのは、1990年代だった。
興奮性アミノ酸であるグルタメートおよびグリシンによって開閉され、生体異物化合物であるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)にも応答する膜結合イオンチャネルは、2価および1価の両陽イオンのシナプス前およびシナプス後神経系細胞への流入を制御する(Foster et al., Nature 1987, 329:395-396; Mayer et al., Trends in Pharmacol. Sci. 1990, 11:254-260を参照のこと)。それらは、生体異物物質であるカイネートまたはα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)に応答する、グルタメート開閉型陽イオン伝導性イオンチャネルとは分子的、電気生理学的、および薬理学的に異なり、同様にグルタメート開閉型Gタンパク質共役受容体のファミリー、いわゆる代謝型グルタメート受容体とは異なる。
【0003】
NMDA選好性グルタメート開閉型イオンチャネルは、それぞれGRIN1遺伝子および4つのGRIN2遺伝子の1つによってコードされる2つの必須GluN1ユニットおよび2つの可変性GluN2受容体サブユニットのヘテロ四量体構造基部を有する。1つまたは両方のGluN2サブユニットを、GluN3AまたはGluN3Bサブユニットによって潜在的に置き換えることができる。GRIN1遺伝子産物は8つのスプライスバリアントを有する一方、異なる4つのGluN2サブユニットをコードする異なる4つのGRIN2遺伝子(GRIN2A-D)が存在する。グリシン結合部位はGluN1サブユニット上に存在し、グルタメート結合部位はGluN2サブユニット上に存在する(Paoletti P et al., Nat Rev Neurosci. 2013; 14(6):383-400)。
NMDA受容体機能をモジュレートする化合物は、双極性障害(Martucci L et al., Schizophrenia Res, 2006; 84(2-3):214-21)、大うつ病性障害(Li N et al., Biol Psychiatry. 2011; 69(8):754-61)、治療抵抗性うつ病(Preskorn SH et al. J Clin Psychopharmacol. 2008; 28(6):631-7)および他の気分障害(統合失調症(Grimwood S et al., Neuroreport. 1999; 10(3):461-5)、産前および産後うつ病(Weickert CS et al. Molecular Psychiatry (2013) 18, 1185-1192)、季節性感情障害などを含む);アルツハイマー病(Hanson JE et al., Neurobiol Dis. 2015; 74:254-62; Li S et al., J Neurosci. 2011; 31(18):6627-38)および他の認知症(Orgogozo JM et al. Stroke 2002, 33: 1834-1839)、パーキンソン病(Duty S, CNS Drugs. 2012; 26(12):1017-32; Steece-Collier K et al., Exp Neurol. 2000; 163(1):239-43; Leaver KR et al. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2008; 35(11):1388-94)、ハンチントン舞踏病(Tang TS et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2005; 102(7):2602-7; Li L et al., J Neurophysiol. 2004; 92(5):2738-46)、多発性硬化症(Grasselli G et al., Br J Pharmacol. 2013; 168(2):502-17)、認知障害(Wang D et al. 2014, Expert Opin Ther Targets 2014; 18(10):1121-30)、頭部外傷(Bullock MR et al., Ann N Y Acad Sci. 1999; 890:51-8)、脊髄損傷、脳卒中(Yang Y et al., J Neurosurg. 2003; 98(2):397-403)、癲癇(Naspolini AP et al., Epilepsy Res. 2012 Jun; 100(1-2):12-9)、運動障害(例えば、ジスキネジア)(Morissette M et al., Mov Disord. 2006; 21(1):9-17)、様々な神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(Fuller PI et al., Neurosci Lett. 2006; 399(1-2):157-61)または細菌性もしくは慢性感染に関連する(associated with)神経変性、緑内障(Naskar R et al. Semin Ophthalmol. 1999 Sep; 14(3):152-8)、疼痛(例えば、慢性、がん性、術後および神経障害性疼痛(Wu LJ and Zhuo M, Neurotherapeutics. 2009; 6(4):693-702)、糖尿病性神経障害、片頭痛(Peeters M et al., J Pharmacol Exp Ther. 2007; 321(2):564-72)、脳虚血(Yuan H et al., Neuron. 2015; 85(6):1305-18)、脳炎(Dalmau J. et al., Lancet Neurol. 2008; 7(12):1091-8)、自閉症および自閉症スペクトラム障害(Won H. et al., Nature. 2012; 486(7402):261-5)、記憶および学習障害(Tang, Y. P. et al., Nature. 1999; 401(6748):63-9)、強迫性障害(Arnold PD et al., Psychiatry Res. 2009; 172(2):136-9)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(Dorval KM et al., Genes Brain Behav. 2007; 6(5):444-52)、外傷後ストレス障害(PTSD)(Haller J et al. Behav Pharmacol. 2011; 22(2):113-21; Leaderbrand K et al. Neurobiol Learn Mem. 2014; 113:35-40)、耳鳴り(Guitton MJ, and Dudai Y, Neural Plast.2007; 80904; Hu SS et al. 2016; 273(2): 325-332)、睡眠障害(ナルコレプシーまたは日中眠気過度のような睡眠障害、国際公開第2009/058261号)、めまいおよび眼振(Straube A. et al., Curr Opin Neurol. 2005; 18(1):11-4; Starck M et al. J Neurol. 1997 Jan; 244(1):9-16)、不安、神経精神全身性エリテマトーデスのような自己免疫障害(Kowal C et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2006; 103, 19854-19859)、ならびに耽溺性疾患(例えば、アルコール嗜癖、薬物嗜癖)(Nagy J, 2004, Curr Drug Targets CNS Neurol Disord. 2004; 3(3):169-79.; Shen H et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2011; 108(48):19407-12)を含むがこれらに限定されない多くの神経および精神障害の治療において有用であり得る。
【0004】
最近のヒト臨床研究により、NMDA型グルタメート開閉型イオンチャネルがうつ病の治療にとってとても興味深い新規標的として確認された(Singh JB et al., Biol Psychiatry 2016; 80(6):424-431; Preskorn SH et al. J Clin Psychopharmacol 2008; 28(6):631-7)。これらの研究は、公知のNMDA受容体アンタゴニストであるケタミンおよびCP-101606を使用して実施され、難治性うつ病患者におけるうつ病評価スコアの著しい低減を示した。有効性は著しかったが、これらのNDMA受容体アンタゴニストを使用する副作用は厄介であった。
【0005】
NMDA調節低分子アゴニストおよびアンタゴニスト化合物が、潜在的な治療的使用のために開発されてきた。しかし、これらの多くは、非常に狭い治療指数、ならびに幻覚、運動失調症、非合理的行動、および著しい毒性を含めて望ましくない副作用を伴い、それらのすべてによって、これらの効果および/または安全性が限定される。さらに、うつ病患者の50%以上は、公知の投与された薬物に対して十分な治療応答を経験しない。たいていの場合、うつ病の薬理学的治療に関する非盲検の研究において顕著なように、意味のある改善が認められるまでには、2週間以上の薬物療法が必要とされる(Rush et al, Am. J. Psychiatry 2006, 163:1905)。
発作は、通常短時間の脳における制御されない電気的活動の単回の発生である。それは、痙攣、思考障害、意識消失、および/または他の症状のような多数の徴候および症状を引き起こすおそれがある。通常、発作は、疾患の症状と考えられる。癲癇は、例えば再発性の非挑発性発作の慢性疾患であり、発作性疾患の1つのタイプである。癲癇において、痙攣は、通常癲癇および/または毒物に関連した不随意の筋収縮によって引き起こされる、体肢の急激で激烈で不規則な動きである。
【0006】
発作性疾患は、脳における制御されない電気的活動のエピソードを特徴とする医学的病態であり、したがって2種以上の発作を含む症状をもたらす。発作関連障害は、脳における患部のために、それらの潜在的原因およびそれら自体の一連の症状で互いに区別される。
全般発作によって、意識消失になる。運動症状が、例えば大発作(筋肉攣縮または痙攣を伴う強直-間代大発作とも呼ばれる)に関与するとき、徴候および症状は、筋肉の硬直(強直性)、弛緩筋(脱力性)、体または肢の短時間の散発性攣縮を引き起こす筋肉(ミオクローヌス性)、および体の反復性のふるえまたは攣縮(間代性)から明らかである。非運動性または欠神様症状が全般発作に関与するとき、それらの症状としては、瞬目を時々伴う空間凝視、および対象または患者の周りで起こっていることに対する認識の欠如を挙げることができる。
部分または焦点発作は、数分間の意識消失も錯乱も起こさない。患者は、単収縮または感覚の変化を認識している。患者は、数分間狼狽することがある。
【0007】
起始不明発作は、未分類の症状を伴い、全般または焦点発作の疑わしい特徴を共有することがある。例えば、単純部分発作性疾患は、脳の患部に応じて人によってそれぞれ異なる。小児良性ローランド癲癇は舌の単収縮を引き起こし、発話を妨げかつ流涎を引き起こすおそれがある。月経随伴性癲癇は、月経周期との関連で起こる発作を指す。脱力発作は、意識消失に通常関連していない転倒のような症状を引き起こす。欠神発作は、症状のほとんどまたは全くない短時間の意識消失を引き起こす。間代発作は、同時に体の両側に影響を与える律動性攣縮を引き起こす。強直発作は、筋肉の硬直を引き起こす。熱性発作は、通常、6か月~5歳の間の年齢の小児において起こる。発作性疾患の他の症状としては、痙攣、瞬目、突然の筋緊張の喪失、突然の頭部前屈または叫び、地面への予想外の転倒、味覚または嗅覚の変化、咬舌、または眼球回転を挙げることができる。これらの例は、発作性疾患およびそれらの症状の複雑さを示す。
薬物療法は、発作関連症状患者の大部分に有効であるが、重要な未だ満たされていない医学的必要性および治療の課題が残っている。これらとしては、薬剤抵抗性癲癇、有害反応、薬物相互作用、癲癇症候群のよりよい同定の必要性、ならびに癲癇およびその併存疾患の発症を予防することができる抗癲癇剤の欠如が挙げられる。多くのより新しい第二世代抗発作薬は、より古い作用剤より、もたらす薬物相互作用が少なく、忍容性が高いが、より効果的であるとも判明せず、薬剤抵抗性癲癇の有病率も低減しなかった。
【0008】
したがって、発作関連障害の予防および治療に対して経口投与で有効である新規治療剤を開発する、緊急で重要な医学的必要性が残っている。
2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのS-エナンチオマー(S-エチラセタム、またはレベチラセタム、またはL059)が、部分起始、ミオクローヌス、または強直-間代発作、および癲癇の治療用にKeppra(登録商標)として販売されてきた。ラセミのエチラセタムの薬理についても、Sara et al. Psychopharmacology (Berl). 1980;68(3):235-41およびVan Aken et al. in Acta Anaesthesiol Belg. 1980;31 Suppl:21-8などの報告がある。エチラセタム(etiractam)のR-エナンチオマーは、S-エナンチオマーより強力でないようである(Gower et al., Eur J Pharmacol. 1992 Nov 10;222(2-3):193-203); Verloes R, et al., Effects of nootropic drugs in a scopolamine-induced amnesia model in mice. Psychopharmacology (Berl). 1988;95(2):226-30)。個々のエナンチオマーのインビトロおよびインビボにおける効力が単一の刊行物内で比較され、ラセミのエチラセタムのインビボにおける効力が別々に記載された。エチラセタムのS-エナンチオマーは、R-エナンチオマーまたはラセミ体より強力であると思われる。入手可能なデータは、小胞タンパク質SV2Aが抗癲癇薬レベチラセタムの結合部位であること(Lynch et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Jun 29;101(26):9861-6)、AMPA型グルタメート開閉型イオンチャネルがレベチラセタム(leviracetam)の作用機序において役割を果たすことができること(Carunchio et al., Epilepsia. 2007 Apr;48(4):654-62)を示唆するようである。
【0009】
欧州特許第0165919号において、2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのR-エナンチオマー(R-エチラセタム、またはL060)は、ラットの電気ショック誘発健忘モデルにおいて皮下注射で、ラセミのエチラセタムより10倍強力であると主張された。
ジミラセタムは、(RS)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]イミダゾール-2,5-ジオンであり、ラット脊髄シナプトソーム調製物における脊髄NMDA型グルタメート受容体のネガティブアロステリックモジュレーターであり(Fariello RG, et al. Neuropharmacology. 2014, 81:85-94)、ラットの神経障害性疼痛、うつ病、および認知障害モデルにおいて経口投与で活性である(Pinza M, et al. J Med Chem 1993, 36(26):4214-20)。本発明者らは、驚くべきことに、RおよびS-ジミラセタムの非ラセミ混合物が、単一のエナンチオマーおよびラセミ体の活性よりも優れている活性を導くことを見出した。この知見は、全体として参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の国際出願PCT/EP2018/064125号の基礎である。
【発明の概要】
【0010】
今回、驚くべきことにかつ予想外なことに、20%以上、67%以下の(S)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率(ee)を有する2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの(R)-および(S)-エナンチオマーの組成物は、対応する個々のエナンチオマーよりまたはラセミ体よりも高い薬理学的効力を、特にいくつかのラットの発作関連障害モデルにおいて示すことができることがわかった。したがって、2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの(R)-および(S)-エナンチオマーのこれらの組成物は、個々のエナンチオマーまたはラセミ体の効力に基づいては予想することができなかった相乗効果をもたらす。
したがって、ある(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物は、電気刺激誘発性発作キンドリングモデルにおける発作の重症度および頻度を低減する際に、モノヨード酢酸ナトリウムの投与後のpaw-pressure試験における末梢神経障害性疼痛を低減する際に、またはオキサリプラチン誘発性末梢神経障害性疼痛の予防において、または認知機能の改善において、対応するラセミ混合物よりはるかに効率的である。
【0011】
したがって、それぞれ20%以上、67%以下(好ましくは50%以下)の(S)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率(ee)を有する、式(I)によって表される(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと式(II)によって表される(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの本発明の組成物は、純粋なエナンチオマー単独またはこれらの化合物のラセミ混合物と比較して、所与の用量で薬理学的により効果的である。ラセミのという用語は、(R)-および(S)-エナンチオマーの質量により1:1の混合物を指し、したがって、その混合物は、0%のエナンチオマー過剰率(ee)を有する。したがって、本発明に関連する効果は、驚くべきことにそれぞれ式(I)および(II)によって表される(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの間の特定範囲の比に起因する相乗効果である。
本発明の組成物は有益であり、発作関連障害の治療および/または予防に使用することができる。
【0012】
第1の態様において、本発明は、式(I)の化合物(本明細書では(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと呼ぶこともある)および式(II)の化合物(本明細書では(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドと呼ぶこともある)
【化1】
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、67%以下(好ましくは50%以下)である、組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、本発明の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物と、式(I)の化合物および式(II)の化合物を組み合わせて、20%以上、67%以下(好ましくは50%以下)の前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキットを提供する。この態様において、組成物に関して本明細書に記載されるのと同じ好ましい範囲の前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)ならびに式(I)の化合物と式(II)の化合物のエナンチオマー比が当てはまる。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、発作関連障害の治療および/または予防のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、発作関連障害の治療および/または予防の方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、発作関連障害の治療および/または予防のための医薬品の製造における本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物と、容器またはパッケージと、添付文書などの書面による説明および投与指示書とを含む製品を提供する。
本発明の別の態様および実施形態は、本明細書が先に進むにつれて明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
エナンチオマー過剰率を特徴付けるために使用される場合の「約」という用語は、別段の指示のない場合、所与の数値を参照して±4%を意味する。本発明の実施形態のそれぞれにおいて、「約」を削除することができる。
「好ましくは」という用語は、本発明において必要とされないが、改善された技術的効果を引き起こすことができ、したがって望ましいが、必須ではない特徴または実施形態を説明するために使用される。
いくつかの化合物が、それらの構造式および/またはIUPAC名などそれらの化学名を参照することにより本明細書に記載される。構造式と化学名との間に矛盾がある場合、本発明ははっきりと、構造式ならびに化学名によって言及される化合物に関する。
本明細書に記載の数値に関して、別段の明示のない限り、数値の最後の小数位は、好ましくはその精度を示す。したがって、他の許容誤差が与えられていない限り、最大許容範囲は、好ましくは丸め規則を最後の小数位に適用することによって確かめられる。したがって、2.5という値は、好ましくは2.45~2.54の範囲を含む。
【0015】
本明細書で用いられる障害または疾患の「治療」という用語は、当技術分野において周知である。障害または疾患の「治療」は、障害または疾患が患者/対象において疑われるまたは診断されたことを意味する。障害または疾患に罹っている疑いのある患者/対象は、典型的には、当業者が特定の病態に容易に帰属させる(すなわち、障害または疾患を診断する)ことができる特定の臨床的および/または病理的症状を示す。障害または疾患の「治療」は、例えば障害または疾患の進行の停止(例えば、症状の悪化がないこと)あるいは障害または疾患の進行の遅延(進行の停止が一過性にすぎない場合)を導くことができる。障害または疾患の「治療」は、障害または疾患に罹っている対象/患者の部分奏効(例えば、症状の改善)または完全奏効(例えば、症状の消失)も導くことができる。したがって、障害または疾患の「治療」は、障害または疾患の改善も指すことがあり、例えば、障害または疾患の進行の停止あるいは障害または疾患の進行の遅延を導くことができる。そのような部分または完全奏効は、再燃を後に伴うことがある。対象/患者は、治療に対して広範囲の奏効(以上に記載される例示的な応答など)を示すことがあると理解すべきである。障害または疾患の治療は、とりわけ、根治的治療(好ましくは、障害または疾患の完全奏効、ひいては治癒を導く)および(症状軽減を含めて)対症的治療を含む。
【0016】
本明細書で用いられる障害または疾患の「予防」という用語も、当技術分野において周知である。例えば、障害または疾患に罹りやすい疑いのある患者/対象は、特に障害または疾患の予防によって利益を得ることができる。対象/患者は、例えばがん化学療法に関連した末梢神経障害症状の発症など望ましくない効果を発生するリスクを伴うことが知られている所与の医療処置を受けるおそれがある。対象/患者は、遺伝的素因を含むがこれに限定されない、障害または疾患に対する感受性または素因またはリスク因子を有することがある。そのような素因は、例えば遺伝マーカーまたは表現型指標を使用して標準方法またはアッセイによって決定することができる。患者/対象において、本発明に従って予防することができる障害または疾患を診断していないまたは診断できないことを理解すべきである(例えば、患者/対象は、いずれの臨床的または病理的症状も示さない)。したがって、「予防」という用語は、担当医によっていずれかの臨床的および/または病理的症状を診断または決定する、あるいは診断または決定することができる前の、本発明の水性医薬組成物の使用を含む。
【0017】
本発明は、式(I)の(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドおよび式(II)の(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドをある比で含む組成物に関する。「組成物」という用語は、純粋な式(I)の化合物および純粋な式(II)の化合物は混合されなければならないことを必要としないと理解すべきである。それらは、一緒にまたは別々に製剤化し、同時にまたは続いて投与することができる。ただし、治療対象において得られる式(I)の化合物と式(II)の化合物の比は、本発明によって必要とされる通りであることを条件とする。好ましくは、本発明の組成物は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物であるが、本発明の組成物は、式(I)の化合物を含む1つもしくは複数の物品および式(II)の化合物を含む1つもしくは複数の物品の組合せ、または式(I)の化合物を含む1つもしくは複数の物品および式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物、例えば、式(I)の化合物と式(II)の化合物の約1:1混合物を含む1つもしくは複数の物品の組合せも包含することができる。
【0018】
さらに、本発明の組成物に含まれる2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドは、本発明において必要とされる式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の全範囲、あるいは式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率として表される全範囲で存在しなければならない。言い換えれば、等量の式(I)の化合物および式(II)の化合物を含む組成物を、過剰量の式(I)の化合物を含む構成要素と過剰量の式(II)の化合物を含む別の構成要素に理論的に分割することは、本発明の主旨に反することである。したがって、本発明の組成物の物理的形がどちらであろうと、組成物は全体として、本発明の式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の範囲、あるいは式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率として表される範囲に関する要件を満たさなければならない。式(I)の化合物と式(II)の化合物の比は、あるいは式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率として表されるが、統計的に意味のある数の2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド分子、典型的には1000個を超える分子に基づいていることを理解すべきである。本発明において、式(I)の化合物と式(II)の化合物の相対量は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の比によって、または式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率によって表される。
【0019】
本明細書で用いられる式(I)の化合物と式(II)の化合物の「比」は、別段の明示のない限り、式(I)の化合物と式(II)の化合物の質量比を指すことを理解すべきである。式(I)の化合物および/または式(II)の化合物の溶媒和物が使用される場合、溶媒はこの計算において無視されることになる。言い換えれば、「式(I)の化合物と式(II)の化合物の比」は、以下の通り算出される。

【0020】
当業者によって公知であるように、式(I)の化合物と式(II)の化合物の場合などにおけるキラリティーのみが異なる化合物の比は、キラルな保持体を使用するクロマトグラフィー、偏光の回転の旋光測定、キラルシフト試薬を使用する核磁気共鳴分光法、またはモッシャー酸などのキラル化合物を使用する化合物の誘導体化と、その後に続くクロマトグラフィーもしくは核磁気共鳴分光法を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知であるいくつかの方式で決定することができる。さらに、エナンチオマーを、共結晶中に存在する特定の水素結合相互作用の形成を利用するキラル共結晶化技法により、ラセミ体のキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)および直接分別結晶化を含めて、当業者に公知の方法で混合物から単離することができる(Springuel GR, et al., 2012;および米国特許第6,570,036号を参照のこと)。有用な共結晶化パートナーとしては、マンデル酸、リンゴ酸、酒石酸およびその誘導体のエナンチオマーが挙げられ、またはエナンチオマーを不斉合成により調製することができる。(例えば、Eliel and Wilen, 1994を参照のこと。)
非ラセミ混合物などの本発明の組成物の式(I)の化合物と式(II)の化合物の比(キラル純度と呼ばれることもある)は、典型的にかつ好ましくはキラルHPLCにより決定し(詳細については、実施例を参照のこと)、方程式:
ee=(AS-AR)/(AS+AR)×100%
で計算して、そのエナンチオマー過剰率(ee)で表すこともできる。式中、ASは、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおける式(I)の化合物のピーク面積であり、ARは、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおける式(II)の化合物のピーク面積である。
この点に関して、キラル「純度」が上述されているが、本発明の主旨は、高いキラル純度の式(I)の化合物または式(II)の化合物を実現するものではないと認められている。むしろ、本発明の主旨は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の間のある範囲の比は、特に相乗効果を引き起こすことである。単に化合物の純度を改善するべき場合、すなわち目的が知られている、すなわち特定の一化合物を理想的には100%の純度で得るべき場合とは対照的に、本発明は、以前には知られていなかった比の2つの化合物、すなわち式(I)の化合物と式(II)の化合物に基づいている。
【0021】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物、典型的にかつ好ましくは溶媒和物、共結晶または担体が、典型的にかつ好ましくは製剤において使用されるとき、または典型的にかつ好ましくはそれを用いて動物、好ましくはヒトを治療するのに使用されるとき、他の成分、典型的にかつ好ましくは本発明の組成物と化学的にまたは中毒学的に相溶性でなければならないことを示す。好ましくは、「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物、典型的にかつ好ましくは溶媒和物、共結晶または担体が、典型的にかつ好ましくは製剤において使用されるとき、または典型的にかつ好ましくはそれを用いて動物、好ましくはヒトを治療するのに使用されるとき、他の成分、典型的にかつ好ましくは本発明の組成物と化学的にかつ中毒学的に相溶性でなければならないことを示す。医薬組成物は、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Pharmaceutical Press, 22nd editionに公表されている技法など当業者に公知である技法によって製剤化することができると認められている。
【0022】
「溶媒和物」は、1個または複数の溶媒分子と式(I)の(S)-エナンチオマーまたは式(II)の(R)-エナンチオマーとの会合体または複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例としては、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0023】
「共結晶」は、周囲条件下においてそれらの純粋な形で固体である異なる少なくとも2つの化合物を含む結晶構造を指す。異なる少なくとも2つの化合物は、式(I)の化合物および/もしくは式(II)の化合物ならびに/または組成物のいずれか別の成分もしくは医薬組成物の賦形剤を含むことができる。共結晶は、中性分子種から作製され、すべての種は結晶化後も中性のままである。さらに、典型的にかつ好ましくは、それらは、2つ以上のビルディング化合物が定義された化学量論比で存在する結晶性均質相材料である。この点に関して、Wang Y and Chen A, 2013;およびSpringuel GR, et al., 2012;ならびに米国特許第6,570,036号を参照のこと。式(I)の化合物および/または式(II)の化合物は、いずれかの多形体の形をとり得ることが理解されるべきである。様々な共結晶およびそのような共結晶を調製する技法については、RSC Drug Discovery, Pharmaceutical Salts and Co-crystals, published in 2012 by the Royal Society of Chemistry and edited by Johan Wouters and Luc Quere, in particular in chapters 15 and 16に記載されている。共結晶形成剤の好ましい例は、この参考文献の表16.1で開示されているものである。さらにより好ましい共結晶には、α-ヒドロキシ酸、α-ケト酸および/またはα-ケトアミドと本明細書に開示される(R)と(S)の比の式(I)および(II)の化合物との共結晶が含まれる。α-ヒドロキシ酸の例としては、アトロラクチン酸、ベンジル酸、4-クロロマンデル酸、クエン酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、エチルピルベート、ガラクツロン酸、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、グリコール酸、2-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシオクタン(hydroxyactanoic)酸、2-ヒドロキシノナン酸、2-ヒドロキシデカン酸、2-ヒドロキシウンデカン酸、4-ヒドロキシマンデル酸、3-ヒドロキシ-4-メトキシマンデル酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシマンデル酸、α-ヒドロキシアラキドン酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシラウリン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシパルミチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、3-(2’-ヒドロキシフェニル)乳酸、3-(4’-ヒドロキシフェニル)乳酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メチル乳酸、メチルピルベート、粘液酸、α-フェニル酢酸、α-フェニルピルビン酸、ピルビン酸、糖酸、酒石酸およびタルトロン酸が挙げられる。α-ケト酸の例としては、2-ケトエタン酸(グリオキシル酸)、メチル2-ケトエタノエート、2-ケトプロパン酸(ピルビン酸)、メチル2-ケトプロパノエート(メチルピルベート)、エチル2-ケトプロパノエート(エチルピルベート)、プロピル2-ケトプロパノエート(プロピルピルベート)、2-フェニル-2-ケトエタン酸(ベンゾイルギ酸)、メチル2-フェニル-2-ケトエタノエート(ベンゾイルギ酸メチル)、エチル2-フェニル-2-ケトエタノエート(ベンゾイルギ酸エチル)、3-フェニル-2-ケトプロパン酸(フェニルピルビン酸)、メチル3-フェニル-2-ケトプロパノエート(メチルフェニルピルベート)、エチル3-フェニル-2-ケトプロパノエート(エチルフェニルピルベート)、2-ケトブタン酸、2-ケトペンタン酸、2-ケトヘキサン酸、2-ケトヘプタン酸、2-ケトオクタン酸、2-ケトドデカン酸およびメチル2-ケトオクタノエートが挙げられる。α-ケトアミドの例としては、α-ケト酸の上記の例のいずれか1つを第一級または第二級アミンと反応させることによって得られ得るいずれかの化合物が挙げられる。
【0024】
第1の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物
【化2】
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)が20%以上、50%以下である、組成物を提供する。前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、50%より高く、67%以下でもあり得る。したがって、本発明において、前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、20%以上、67%以下である。好ましくは、前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、20%以上、50%以下である。
【0025】
典型的に、非溶媒和または非共結晶化組成物が好ましい。さらに好ましいのは、非溶媒和および非共結晶化組成物である。
したがって、別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物を、20%以上、50%以下の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)で含む組成物を提供する。
より好ましくは、式(I)の化合物の前記エナンチオマー過剰率(ee)は20%以上、約40%以下である。さらにより好ましくは、式(I)の化合物の前記エナンチオマー過剰率(ee)は20%以上、35%以下である。
【0026】
式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、好ましくは22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%または40%以上である。一方、式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)は、好ましくは48%、46%、44%、42%、40%、38%、36%、34%、32%または30%以下とすることができる。式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)の適した好ましい範囲の例としては、20%~48%、20%~46%、20%~44%、20%~42%、20%~40%、20%~38%、20%~36%、20%~34%、20%~32%、20%~30%、30%~50%、30%~48%、30%~46%、30%~44%、30%~42%、30%~40%、40%~50%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、35%~50%、35%~45%、35%~40%などが挙げられる。
前記式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)の他の好ましい上限としては、65%、62%、60%、58%、56%、54%、52%および50%が挙げられる。
当業者に公知であるように、エナンチオマー過剰率の代わりに、式(I)の化合物と式(II)の化合物の比を参照することができる。式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の好ましい範囲は、1.5:1~3.0:1、好ましくは1.5:1~2.3:1、より好ましくは1.5:1~2.0:1である。式(I)の化合物と式(II)の化合物の比の他の好ましい範囲は、1.5:1~5.0:1、好ましくは2:1~4:1、より好ましくは2:1~3.3:1、より好ましくは2:1または3:1である。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物および式(II)の化合物と、式(I)の化合物および式(II)の化合物を組み合わせて、20%以上、67%以下(好ましくは50%以下)の式(I)の化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキットを提供する。以下において、本発明の組成物の使用が記載されているときはいつでも、本発明によるキットを代わりとして使用し得ることを理解すべきである。当業者は、キットの成分を投与前に組み合わせることができ、これが好ましく、またはキットの成分を別々に投与することができることを理解する。後者の場合、本発明の効果を達成するためには、キットの成分を典型的に多くとも30分の時間範囲内で投与すべきである。
さらに別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、発作関連障害の治療または予防における使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。多種多様な神経および精神症状および障害は、それらの病因として、発作または関連発作様神経学的現象を有することがある。簡単に言えば、発作または関連発作様神経学的現象は、「発作原性」と呼ばれるプロセスを介してニューロンの集まりまたは発作感受性のニューロン群からの過度の放電によって起こる単一の別個の臨床事象である。したがって、発作原性の発作は、疾患の症状にすぎないかもしれない。しかし、癲癇および他の類似した発作関連障害は、複雑でほとんど解明されていない一連の病理的形質転換を特徴とする成熟プロセスを伴う動的でしばしば進行性の疾患である。
さらに、本発明の化合物および組成物の使用が、典型的にかつ好ましくはうつ病および治療抵抗性うつ病、双極性障害、外傷後ストレス障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、ならびに不安;末梢性感覚神経障害の症状、好ましくは末梢神経障害性疼痛および冷感アロディニア、線維筋痛、過敏性腸症候群、片頭痛、ならびに群発頭痛などの急性および慢性中枢性過敏障害;ならびに脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソンのジストニアおよびハンチントンのジストニアなどの運動ニューロン障害から選択される精神疾患または障害のために企図される。精神疾患または障害の別の例は、以下の実施例に記載される。したがって、本発明の化合物および組成物にも使用することができる:
【0029】
a)脊髄もしくは高次脳構造または神経細胞経路の増感に関連する一次性アロディニア、二次性アロディニア、または他の疼痛もしくは不快感を含めて、化学療法、細菌発育抑制療法、ウイルス感染およびウイルス治療、疱疹後神経痛、骨壊死、三叉神経痛、または糖尿病性末梢神経障害に関連するものなど、寒冷過敏性、刺痛、灼熱、またはうずくような感覚を含めて、末梢神経障害の陽性症状の予防または治療のため;
b)骨および関節痛、骨壊死疼痛、反復運動疼痛、歯痛、月経困難症疼痛、がん性疼痛、筋筋膜痛、外科的疼痛、周術期疼痛、および乳房切除後症候群、開胸術後症候群、または断端痛などの術後疼痛症候群、ならびにアンギナに関連する疼痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性骨盤痛、慢性腰痛を含めて、疼痛の予防または治療のため;
c)変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、慢性関節炎痛および関連神経痛、腱鞘炎ならびに痛風などの炎症性疼痛の予防または治療のため;
d)化学療法誘発性疼痛、外傷後損傷疼痛、挫傷痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発神経障害、脊椎損傷、腰痛、神経圧迫または絞扼によって生ずる疼痛、仙骨痛、三叉神経痛、片頭痛、疱疹後神経痛、幻肢疼痛、疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、末梢神経系のいずれかのレベルにおける病変によって引き起こされる中枢性疼痛症候群などの神経障害性疼痛の予防または治療のため;
【0030】
e)神経精神障害の予防または治療のため。神経精神障害の例としては、統合失調症、統合失調症を含む精神病、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、物質関連障害、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症または型分類困難な統合失調症、物質誘発性精神病性障害、物質関連障害および嗜癖行動が挙げられる;
f)過剰食物摂取、神経性過食症に関連する肥満または他の摂食障害;
g)脳卒中、脳水腫、脳虚血、脳出血、神経変性疾患、心臓バイパス手術および移植、周産期低酸素症、心停止、ならびに低血糖性脳損傷の後に起こる脳障害;
h)不眠、ナルコレプシー、または下肢静止不能障害などの睡眠障害;
i)感情障害、パニック発作、パニック障害、急性ストレス障害、広場恐怖症、全般不安障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害、社交恐怖症、特定恐怖症、物質誘発性不安障害などの不安障害;
j)うつ病、快感消失、単極性うつ病、双極性障害、精神病性うつ病などの気分障害;
k)物質嗜癖、薬物依存、アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚薬、吸入剤、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静薬、催眠薬または抗不安薬を含めて物質耐性、依存または離脱;
【0031】
l)アルツハイマー病、虚血、外傷、血管の問題または脳卒中、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト-ヤコブ病、化学療法、周産期低酸素症、他の医学的全身状態または物質乱用に関連する異なるタイプの認知症などの加齢性認知機能低下または認知障害など認知機能の障害;
m)薬物誘発性パーキンソニズムを含めてパーキンソン病、または脳炎後パーキンソニズム;
n)注意欠陥多動性障害(ADHD)、強迫性障害、恐怖症、外傷後ストレス症候群、自閉症および自閉症スペクトラム障害、衝動制御障害などの注意欠陥障害;
o)耳鳴り、老人性難聴;
p)学習および記憶を増強するため;
q)遺伝性または散発性運動ニューロン障害の予防または治療のため。それらの例としては、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、進行性球麻痺、フリードライヒ運動失調症、脆弱X症候群が挙げられる;
r)運動障害の予防または治療のため。それらの例としては、ジストニア、ハンチントン舞踏病を含めて舞踏病、パーキンソン病関連ジストニア、クロイツフェルト-ヤコブ病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、大脳基底核石灰化が挙げられる;
s)無動性硬直症候群などの無動症のため、
t)神経遮断薬誘発性パーキンソニズムなどの薬物誘発性パーキンソニズム、神経遮断性悪性症候群、神経遮断薬誘発性急性ジストニア、神経遮断薬誘発性急性静坐不能、神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジアならびに安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦を含めて、薬物誘発性姿勢時振戦、舞踏病(シデナム舞踏病、ハンチントン病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬物誘発性舞踏病およびヘミバリスムなど)、全般性または焦点性ミオクローヌス、チック(単純性チック、複雑性チックおよび症候性チックを含む)、およびジストニア(突発性ジストニア、薬物誘発性ジストニア、症候性ジストニアおよび発作性ジストニアなどの全般性ジストニア、ならびに眼瞼痙攣、顎口腔ジストニア、痙攣性発声障害、痙性斜頸、軸性ジストニア、ジストニアの書痙および片麻痺性ジストニアなどの局所性ジストニアを含む)、筋痙攣、ならびに振戦を含めて筋痙縮または脱力に関連する障害などのジスキネジアのため;
u)ならびに尿失禁、多系統萎縮症、結節性硬化症、オリーブ-橋-小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物誘発性視神経炎、虚血性網膜症、糖尿病網膜症、緑内障、痙縮、ミオクローヌス、およびトゥレット症候群に関連するジスキネジアのため。
【0032】
さらに、本発明の組成物は、健常対象における学習および記憶を増強するために、例えば非治療的使用の形で使用することもできる。
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防の方法であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは発作関連障害のうちから選択され、前記方法が、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0033】
本発明の一部分は、疾患または障害の治療の方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、それを必要とする動物、好ましくはヒトに投与される、方法を提供することでもある。ここで「治療有効量」という用語は、治療される状態または疾患の症状の1つまたは複数をモジュレートするのに十分な量を指し、好ましくは投与1回当たり10mg~3000mgの間、経口経路により1日1回または1日2回または1日3回投与される。さらに、本発明の一部分は、疾患または障害の予防の方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、それを必要とすると合理的に予想される動物、好ましくはヒトに投与される、方法を提供することでもある。ここで「治療有効量」という用語は、回避されるべき状態または疾患の予想される症状の1つまたは複数をモジュレートするのに十分な量を指し、好ましくは投与1回当たり10mg~3000mgの間、経口経路により1日1回または1日2回または1日3回投与される。
【0034】
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防において使用するための医薬品の製造における本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは発作関連疾患から選択される、使用を提供する。
組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗発作薬を伴って投与されることがさらにより好ましく、前記少なくとも1つの抗発作薬を伴った前記組成物または前記医薬組成物の前記投与は、並行、同時、連続または別個の投与である。
そのような抗発作薬の限定されない例は、エスリカルバゼピン、ラコサミド、ルフィナミド、プレガバリン、スチリペントール、オクスカルバゼピン、チアガビン、ホスフェニトイン、トピラメート、ガバペンチン、フェルバメート、ラモトリギン、ゾニサミド、およびビガバトリンからなる群から選択される。
【0035】
組成物または医薬組成物またはキットは、好ましくは少なくとも1つの抗発作薬と共に使用され、前記抗発作薬が好ましくはエスリカルバゼピン、ラコサミド、ルフィナミド、プレガバリン、スチリペントール、オクスカルバゼピン、チアガビン、ホスフェニトイン、トピラメート、ガバペンチン、フェルバメート、ラモトリギン、ゾニサミド、およびビガバトリンから選択される。
前記疾患または障害は、好ましくは発作である。用量は、特定の患者または対象に個々のレジメンおよび用量レベルを決定するとき担当医によって普通考慮される投与経路、疾患の重症度、患者または対象の年齢および質量ならびに他の因子に依存する。
本発明の組成物または医薬組成物は、経口、筋肉内、皮下、局所、経皮、鼻腔内、静脈内、舌下または直腸内投与を含めて、いずれの経路によっても投与することができる。典型的にかつ好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口経路により単回用量単位で1日1回、1日2回または1日3回、最も好ましくは1日1回または1日2回投与される。最も好ましい実施形態において、本発明の組成物または医薬組成物は、1日2回投与される。
典型的にかつ好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物の経口用量は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間である。典型的にかつ好ましくは、前記組成物または前記医薬組成物は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与される。
【0036】
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の好適に選択された薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、アジュバント、添加剤、界面活性剤、乾燥剤または希釈剤を混合することによって調製することができ、経口、非経口または局所投与に好適に適応させることができる。典型的にかつ好ましくは、本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、粉末、顆粒、ペレット、経口または非経口用溶液、懸濁液、坐剤、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ペーストの形で投与され、かつ/またはリポソーム、ミセルおよび/もしくはミクロスフェアを含むことができる。
本発明の医薬組成物の薬学的に許容される担体は、限定されることなく、いずれかの薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、アジュバント、添加剤、界面活性剤、乾燥剤または希釈剤である。好適な薬学的に許容される担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターである。本発明の薬学的に許容される担体は、固体、半固体または液体であり得る。
【0037】
経口投与のための錠剤、カプセルまたはサシェは通常、用量単位で供給され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤形成剤、滑沢剤、洗浄剤、崩壊剤、着色剤、フレーバーおよび湿潤剤などの通常の賦形剤を含むことができる。錠剤は、当技術分野において周知の方法に従ってコーティングしてもよい。好適な充填剤としては、好ましくはセルロース、マンニトール、ラクトースおよび同様の薬剤を含み、またはそれらである。好適な崩壊剤としては、好ましくはデンプン、ポリビニルピロリドン、およびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体を含み、またはそれらである。好適な滑沢剤としては、好ましくは例えばステアリン酸マグネシウムを含み、またはそれである。好適な湿潤剤としては、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含み、またはそれである。これらの経口用固体組成物は、通常の混合、充填または打錠方法で調製することができる。混合操作を繰り返して、大量の充填剤を含む組成物に活性剤を分散させることができる。これらの操作は通常の操作である。
【0038】
経口用液体組成物は、例えば水性溶液、乳濁液、シロップもしくはエリキシルの形で、または使用時に水もしくは好適な液体担体で再構成させる乾燥製品の形で提供することができる。液体組成物は、懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂肪;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシア;非水性担体(食用油を含むことができる)、例えばアーモンド油、分留ヤシ油、グリセリンエステルなどの油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸、および望むなら、通常のフレーバーまたは着色剤など通常の添加剤を含むことができる。経口製剤としては、錠剤または顆粒などの通常の製剤を挙げることもでき、またはそれらとして製剤化することができる。非経口投与には、本発明の組成物および無菌担体を含む液体用量単位を調製することができる。
経口製剤は、経口製剤の風味認識を最適化するために風味マスキング成分をさらに含んでもよい。そのような風味マスキング成分の例は、当業者に公知の、柑橘、甘草、ミント、ブドウ、クロフサスグリまたはユーカリベースフレーバラントであり得る。
非経口溶液は通常、化合物を担体に溶解し、濾過により滅菌した後に、好適なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することによって調製される。
【0039】
局所麻酔薬、保存剤および緩衝剤などのアジュバントは、医薬組成物に添加することができる。安定性を高めるために、組成物をバイアルに充填した後に凍結させ、真空下で水を除去することができる。本発明の組成物の一様分布を促進するために、界面活性剤または保水剤を医薬組成物に有利に含めることができる。
局所製剤は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ゴム、溶液、ペーストを含み、もしくはそれらであり、またはリポソーム、ミセルもしくはミクロスフェアを含むことができる。
本発明の組成物または医薬組成物によって治療される対象は、ヒトおよび動物である。好ましい動物は家畜であり、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ラクダ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌおよびオウムを含むが、これらに限定されない。より好ましい対象は、哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットと、容器またはパッケージと、添付文書などの書面による説明および投与指示書とを含む製品を提供する。
【0040】
式(I)の化合物または式(II)の化合物と、アニラセタム、ブリバラセタム、セバラセタム、コルラセタム、ジミラセタム、ドリラセタム、デュプラセタム、ファソラセタム、イムラセタム、メチルフェニルピラセタム、ネブラセタム、ネフィラセタム、オムベラセタム(ヌーペプト)、オキシラセタム、フェニルピラセタム、フェニルピラセタムヒドラジド、ピラセタム、プラミラセタム、ロリプラム、ロルジラセタムおよび/またはセレトラセタムなどのラセタムとの組成物は、特に式(I)の化合物または式(II)の化合物とラセタムまたは他のラセタムのエナンチオマーの比が式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物について本明細書に開示される範囲内で選択される場合に、相乗的混合物および組成物を調製するために使用することもできることがさらに想定される。
式(I)の化合物または式(II)の化合物と、米国特許第7,544,705号または米国特許第8,334,286号で開示されたものなど他の化合物との組成物は、特に式(I)の化合物または式(II)の化合物とジミラセタム様化合物またはジミラセタム様化合物のエナンチオマーの比が式(I)の化合物と式(II)の化合物の混合物について本明細書に開示される範囲内で選択される場合に、相乗的混合物および組成物を調製するために使用することもできることがさらに想定される。
本明細書に引用された非特許参考文献は、第一著者に刊行年を添えて略記する。完全な引用文献を以下に列挙する。




【実施例
【0041】
本発明の例は、単に例示のためであり、限定するためのものではない。ラセミの2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドならびに式(I)および(II)の個々のエナンチオマーの試料は、Sigma-Aldrich社から購入したものなど市販の出発物質を使用して合成することができる。これらの市販の供給物は、当業者に周知の準備合成方法および技法を使用して、さらに精製することなく供給元から受け入れたままの状態で使用することができる。
【0042】
(実施例1)
2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの合成
(R)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド、(S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミド、および2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのラセミ混合物は、欧州特許第0165919号および米国特許第6,784,197号に記載されている方法に従って調製した。(R)-および(S)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率は、本発明の組成物を調製するために別々に使用されるとき、各エナンチオマーについて96%以上であった。
20%以上ee(過剰(S))および50%以下ee(過剰(S))の所望のエナンチオマー過剰率、ならびに本発明による他の所望の特定の組成物を達成するには、当業者に公知のいくつかの方法を適用することができる。例えば、個々のエナンチオマーを混合することによって、または2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのラセミ体をそれぞれの量の(S)-エナンチオマーと混合することによって、前記組成物を調製した。さらに、ラセミの2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドから出発して、(R)-エナンチオマーの一部分または全部を、分取キラルカラムクロマトグラフィーによって除去することができる。
【0043】
(実施例2)
マウスのペンチレンテトラゾール誘発性発作モデル
この実験によって、1日1回のペンチレンテトラゾール(PTZ)注射によってキンドリングされた強直および間代痙攣の、公表されたマウスモデル((Gower et al. (Eur. J. Pharmacol. 222, 1992, 193-203))におけるレベチラセタムの保護効果の用量反応関係を評価した。さらに、一定用量で、レベチラセタムの保護効果を、ラセミのエチラセタムによって、またはレベチラセタムとエチラセタムの2つの混合物によって示された保護効果と比較した。2つの被験混合物は、混合物中のエチラセタムのRエナンチオマーの比が異なるものであった(すなわち、1-対-3 R-対-S-エチラセタム、および1-対-5 R-対-S-エチラセタム)。
【0044】
動物
雄性CD1成体マウス(Envigo社、Italy、到着時質量20~25g)を使用した。馴化のため、実験の前日にケージを実験室に持って入った。処置群はそれぞれ、マウス15匹からなった。マウスに標準実験食を給餌した。飼料および水は、自由摂取させた。室温および相対湿度を、それぞれ22±2℃および55±15%に一定に維持し、12時間の明期および12時間の暗期のサイクルを維持した。
薬物
レベチラセタム(バッチP102-14050、Astatech社から供給)、エチラセタム(Shaanxi Swiden Biotech Co.,Ltd.から供給、カタログ番号E932970)、またはレベチラセタム1部とエチラセタム1部の混合物(1-対-3 R-対-S-エチラセタム)もしくはレベチラセタム1部とエチラセタム0.5部の混合物(1-対-5 R-対-S-エチラセタム)を、1%カルボキシメチルセルロース(CMC)溶液に製剤強度55mg/mLで溶解し、1日当たり1回経口投与した。PTZ(55mg/kg腹腔内投与)の60分前に、化合物を1日目~11日目の毎日投与した。PTZを食塩水に溶解した。腹腔内注射後、ビヒクル処置マウスにおいて発作が約20分以内に発症した。
【0045】
PTZ誘発キンドリング(PTZ-induce kindling)試験
試験は、Gower et al.(Eur. J. Pharmacol. 222, 1992, 193-203)に従って行った。雄性マウスの別個の群に、PTZ(ペンチレンテトラゾール、55.0mg/kg腹腔内)投与60分前に、レベチラセタム(10、30、または60mg/kg経口投与);エチラセタム(30mg/kg経口投与);または1-対-3 R-対-S-エチラセタム(30mg/kg経口投与);または1-対-5 R-対-S-エチラセタム(30mg/kg経口投与);または経口ビヒクルを1日1回、連続11日間経口投与した。PTZ注射直後に、マウスを個々のケージに入れ、強直および間代発作を観察した。
統計解析
カイ2乗検定を使用して、行動結果の2つの手段間の有意性を検証した。データは、Social Science Statistics Programで分析した。P値≦0.05は有意であるとみなされた(リンクhttps://www.socscistatistics.com/tests/chisquare/default2.aspx)。
【0046】
結果
結果を以下の表1および2に要約する。
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
1日1回のPTZ(55mg/kg腹腔内)注射によって、強直または間代痙攣を伴ったビヒクル対照処置マウスの割合が漸増し、1日目の25%未満から11日目の100%へと増加した(表1)。レベチラセタム(10、30または60mg/kg経口投与)での前処置によって、この現象の用量依存的な低減がもたらされた。発作を示しているマウスの割合をビヒクル処置群と比べた統計的有意差は、60mg/kgの用量で経口投与して、処置8日目から11日目になってようやく達する(表1)。レベチラセタムの効果の強さは、60mg/kgの経口投与の後に、間代痙攣の発生率が最初の6日間で20%を超えず、11日間のキンドリングの後に最大値の40%に達したような強さであった。レベチラセタムの低い方の被験用量(10mg/kg経口投与)では、処置の終わりに、マウスはすべて、強直または間代痙攣を示した。30mg/kgの用量で経口投与すると、効果の中程度の低減が観察された(表1)。
【0049】
その後の実験の順序で、レベチラセタム30mg/kgの経口投与での抗癲癇効果を、ラセミのエチラセタム(30mg/kg経口投与)、ならびに1-対-3 R-対-Sエチラセタム混合物および1-対-5 S-対-Rエチラセタム混合物の抗癲癇効果と比較した(表2)。
1-対-3 R-対-S-エチラセタム30mg/kgの経口投与は、レベチラセタムより効果的であった。強直/間代痙攣を示しているマウスの割合は、レベチラセタム群の割合より小さく、この効果は、8日目から始まって11日目まで統計的に有意であった。1-対-5 R-対-S-エチラセタムでは、11日目に強直または間代発作を示しているマウスの割合が67%であり(表2)、レベチラセタム処置群の割合より数値的に小さかった。
結論
PTZキンドリングマウス発作モデルは、経口レベチラセタムの用量反応的効果を示し、既に公表されたデータと矛盾しない。30mg/kgの経口投与で比較すると、レベチラセタムは中程度に効果的であり、ラセミのエチラセタム30mg/kgの経口投与は無効であった。注目すべきことに、1-対-3 R-対-S-エチラセタムと1-対-5 R-対-S-エチラセタムの混合物は、レベチラセタム自体より効果的であった。1-対-3 R-対-S-エチラセタム混合物では、この差は、遅くとも8日目~11日目にレベチラセタムとの統計的有意性を実現した。
【0050】
(実施例3)
発作モデルにおける新規組成物の効果
付随する新規組成物の抗発作効果は、Loscher W et al., J. Pharm. Exp. Ther., 284:474-479, 1998に記載されている側頭葉癲癇のキンドリングモデルにおいて評価する。
電極埋め込み。キンドリング実験では、ラットに抱水クロラール(360mg/kg腹腔内投与)で麻酔をかけ、Paxinos and Watson (1986)のアトラスに記載されている手術方法に従って、右扁桃体基底外側部において双極電極1本の定位固定埋め込みを行う。電極埋め込みのための座標は、AP-2.2、L-4.8、V-8.5である。すべての座標は、ブレグマから測定される。頭蓋ネジは、中性の基準電極の働きをする。電極アセンブリは、歯科用アクリルセメントによって頭蓋に結合される。
【0051】
キンドリング発生の実験。各群ラット8匹の4群に、以上で説明したキンドリング電極を埋め込む。埋め込み後2週間、上昇階段手法を使用して、各ラットにおいて刺激領域の初期(プレキンドリング)電気感受性(ADT)を決定する。初期の電流強度は10μAであり、電流強度を、1分の間隔で前の電流の約20%ずつ、少なくとも3秒間の後発射が誘発されるまで増加させる。翌日の朝に、慢性処置を開始し、被験化合物の各腹腔内注射1時間後に動物を500μAの閾値上電流で刺激する。I群には、ビヒクル(食塩水)の腹腔内注射を、II群には、レベチラセタム13mg/kgの腹腔内注射を、III群には、レベチラセタム27mg/kgの腹腔内注射を、IV群には、レベチラセタム54mg/kgの腹腔内注射を行う。ビヒクルまたは薬物を、1日1回、1週間に5日間(週末を除く)注射する。21回の注射後、処置および扁桃刺激を終える。5日間の休薬期間を設けた後、さらに500μAの扁桃刺激を、すべての動物が段階5の発作を10回示すまで実施する。各刺激後に、発作重症度、発作時間および後発射時間を以下の通り記録する。発作重症度をRacine(1972)に従って分類する:1、不動、閉眼、震毛の単収縮、嗅ぐこと、顔クローヌス;2、より重度な顔クローヌスに関連した点頭;3、1つの前肢のクローヌス;4、両側前肢クローヌスをしばしば伴う立ち上がり;5、平衡感覚喪失を伴う立ち上がりおよび全般間代発作を伴う転倒。発作時間は、辺縁系(段階1~2)および/または運動発作(段階3~5)の時間である。運動発作の終了後にしばしば起こる辺縁系発作活動(低振幅の後発射および偶発的顔クローヌスもしくは点頭に関連した不動)は、発作時間に含まれない。後発射時間は、前置刺激の記録の振幅の少なくとも2倍の振幅および1/秒より大きい周波数を有する扁桃脳波スパイクの全時間である。
【0052】
最後の段階5の発作の1週間後、各群においてポストキンドリングADTが、プレキンドリングADTについて以上で説明したように決定される。
実施例1および2の実験結果に基づいて、2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの特許請求された比のS:R-エナンチオマーの効果が、2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドのラセミ体または2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブタンアミドの個々のエナンチオマーのいずれと比較しても抗発作有効性の増大を導いていることを理解することができるであろう。
【0053】
以上に引用されたすべての特許、刊行物、および要約は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の実現として記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の例示にすぎないことを認識すべきである。多数の修正およびその改変は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかである。
【国際調査報告】