(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】オリゴベンズアミド類似体およびがん処置におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07C 237/44 20060101AFI20220119BHJP
C07C 237/40 20060101ALI20220119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220119BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20220119BHJP
C07D 231/54 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/416 20060101ALI20220119BHJP
C07D 215/38 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20220119BHJP
C07D 233/48 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/4168 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C07C237/44 CSP
C07C237/40
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/166
C07D231/54
A61K31/416
C07D215/38
A61K31/47
C07D233/48
A61K31/4168
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531522
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 US2019064073
(87)【国際公開番号】W WO2020117715
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラジ ガネシュ
(72)【発明者】
【氏名】アーン ジュン-モ
(72)【発明者】
【氏名】バドラムディ ラトナ ケイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC28
4C086BC37
4C086BC38
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA14
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA09
4C206GA28
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA76
4C206MA78
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA85
4C206MA86
4C206MA87
4C206NA14
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006AB28
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM71
4H006BN10
4H006BP30
4H006BT32
4H006BU26
4H006BU32
(57)【要約】
本開示は、変数が本明細書に定義される式(I)および(II)の本開示の化合物、ならびにその薬学的組成物を提供する。本開示はまた、がんの処置などにおいて本化合物および/または薬学的組成物を使用するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物または以下の式の薬学的に許容される塩:
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は、-OR
5aまたは-NHR
5bであり、
R
5aは、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5bは、水素、または
シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり、
但し、R
5bが水素である場合はR
1はハロであり、かつ、但し、R
5aがメチルである場合はR
3はアルキル
(C≦12)ではない;
または
以下の式の化合物または以下の式の薬学的に許容される塩:
式中:
R
6は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
6a)NH
2であり、
R
6aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
7およびR
8は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-シクロアルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、またはこれらの基のいずれかの置換型であり;かつ
R
9は、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
2は、-CO
2-または-C(O)NR
L2-であり、
R
L2は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
9aは、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である。
【請求項2】
化合物が式(I)のものである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は、-OR
5aまたは-NHR
5bであり、
R
5aは、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5bは、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である、
請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
化合物が、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1はハロであり;かつ
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)である、
請求項1または2記載の化合物。
【請求項5】
化合物が、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は、-OR
5aまたは-NHR
5bであり、
R
5aは、アルキル
(C2-12)または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5bは、水素、または
シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である、
請求項1または2記載の化合物。
【請求項6】
化合物が、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
3は、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)である、
請求項1または2記載の化合物。
【請求項7】
R
5bが水素である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項8】
R
5aがメチルである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項9】
化合物が、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は-NHR
5bであり、
R
5bは、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である、
請求項1~3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
R
2が、アラルキル
(C≦18)または置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1~9のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
R
2が置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1~10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
R
2が4-ヒドロキシフェネチルである、請求項1~11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
R
2が、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)である、請求項1~9のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
R
2が置換アルキル
(C≦12)である、請求項1~9および13のいずれか一項記載の化合物。
【請求項15】
R
2が1-ヒドロキシエチルである、請求項1~9、13、および14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
R
4が、アラルキル
(C≦18)または置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1~15のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
R
4がアラルキル
(C≦18)である、請求項1~16のいずれか一項記載の化合物。
【請求項18】
R
4がベンジルである、請求項1~17のいずれか一項記載の化合物。
【請求項19】
R
4が、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)である、請求項1~15のいずれか一項記載の化合物。
【請求項20】
R
4がアルキル
(C≦12)である、請求項1~15および19のいずれか一項記載の化合物。
【請求項21】
R
4がn-ブチルである、請求項1~15、19、および20のいずれか一項記載の化合物。
【請求項22】
R
4がi-ブチルである、請求項1~15、19、および20のいずれか一項記載の化合物。
【請求項23】
R
3が、アラルキル
(C≦18)または置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1~22のいずれか一項記載の化合物。
【請求項24】
R
3がアラルキル
(C≦18)である、請求項1~23のいずれか一項記載の化合物。
【請求項25】
R
3が2-(ナフタレン-2-イル)エチルである、請求項1~24のいずれか一項記載の化合物。
【請求項26】
R
3が、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)である、請求項1~5、7、および9~22のいずれか一項記載の化合物。
【請求項27】
R
3がアルキル
(C≦12)である、請求項1~5、7、9~22、および26のいずれか一項記載の化合物。
【請求項28】
R
3がメチルである、請求項1~5、7、9~22、26、および27のいずれか一項記載の化合物。
【請求項29】
R
3がi-ブチルである、請求項1~5、7、9~22、26、および27のいずれか一項記載の化合物。
【請求項30】
R
5bが、アラルキル
(C≦18)または置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1~3、5、および8~29のいずれか一項記載の化合物。
【請求項31】
R
5bがアラルキル
(C≦18)である、請求項1~3、5、および8~30のいずれか一項記載の化合物。
【請求項32】
R
5bが(ナフタレン-2-イル)メチルである、請求項1~3、5、および8~31のいずれか一項記載の化合物。
【請求項33】
R
5bが、ヘテロアリール
(C≦12)または置換ヘテロアリール
(C≦12)である、請求項1~3、5、および8~29のいずれか一項記載の化合物。
【請求項34】
R
5bがヘテロアリール
(C≦12)である、請求項1~3、5、8~29、および33のいずれか一項記載の化合物。
【請求項35】
R
5bが1H-イミダゾール-2-イルである、請求項1~3、5、8~29、33、および34のいずれか一項記載の化合物。
【請求項36】
R
5bが、シクロアルキル
(C≦12)または置換シクロアルキル
(C≦12)である、請求項1~3、5、および8~29のいずれか一項記載の化合物。
【請求項37】
R
5bがシクロアルキル
(C≦12)である、請求項1~3、5、8~29、および36のいずれか一項記載の化合物。
【請求項38】
R
5bが4-メチルシクロヘキシルである、請求項1~3、5、8~29、36、および37のいずれか一項記載の化合物。
【請求項39】
L
1が-C(O)NR
L1-である、請求項1~3、5、および8~29のいずれか一項記載の化合物。
【請求項40】
R
L1が水素である、請求項1~3、5、8~29、および39のいずれか一項記載の化合物。
【請求項41】
R
5b’が、ヘテロアリール
(C≦12)または置換ヘテロアリール
(C≦12)である、請求項1~3、5、8~29、39、および40のいずれか一項記載の化合物。
【請求項42】
R
5b’がヘテロアリール
(C≦12)である、請求項1~3、5、8~29、および39~41のいずれか一項記載の化合物。
【請求項43】
R
5b’がキノリン-3-イルである、請求項1~3、5、8~29、および39~42のいずれか一項記載の化合物。
【請求項44】
R
5b’が1H-インダゾール-7-イルである、請求項1~3、5、8~29、および39~42のいずれか一項記載の化合物。
【請求項45】
R
1が-NO
2である、請求項1~3、5、6、および8~44のいずれか一項記載の化合物。
【請求項46】
R
1が、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)である、請求項1~3、5、6、および8~44のいずれか一項記載の化合物。
【請求項47】
R
1がアルキル
(C≦12)である、請求項1~3、5、6、8~44、および46のいずれか一項記載の化合物。
【請求項48】
R
1がメチルである、請求項1~3、5、6、8~44、46、および47のいずれか一項記載の化合物。
【請求項49】
R
1がハロである、請求項1~44のいずれか一項記載の化合物。
【請求項50】
R
1がフルオロである、請求項1~44および49のいずれか一項記載の化合物。
【請求項51】
R
1がヨードである、請求項1~44および49のいずれか一項記載の化合物。
【請求項52】
R
1が、アミド
(C≦12)または置換アミド
(C≦12)である、請求項1~3、5、6、および8~44のいずれか一項記載の化合物。
【請求項53】
R
1が置換アミド
(C≦12)である、請求項1~3、5、6、8~44、および52のいずれか一項記載の化合物。
【請求項54】
R
1が3-アミノプロパンアミドである、請求項1~3、5、6、8~44、52、および53のいずれか一項記載の化合物。
【請求項55】
R
1aが、アラルキル
(C≦18)または置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1~3、5、6、および8~44のいずれか一項記載の化合物。
【請求項56】
R
1aがアラルキル
(C≦18)である、請求項1~3、5、6、8~44、および55のいずれか一項記載の化合物。
【請求項57】
R
1aがベンジルである、請求項1~3、5、6、8~44、55、および56のいずれか一項記載の化合物。
【請求項58】
化合物が式(II)のものである、請求項1記載の化合物。
【請求項59】
R
7が、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)である、請求項1または58記載の化合物。
【請求項60】
R
7が置換アルキル
(C≦12)である、請求項1、58、および59のいずれか一項記載の化合物。
【請求項61】
R
7が1-ヒドロキシエチルである、請求項1および58~60のいずれか一項記載の化合物。
【請求項62】
R
8が、-アルカンジイル
(C≦12)-シクロアルキル
(C≦12)または置換-アルカンジイル
(C≦12)-シクロアルキル
(C≦12)である、請求項1および58~61のいずれか一項記載の化合物。
【請求項63】
R
8が-アルカンジイル
(C≦12)-シクロアルキル
(C≦12)である、請求項1および58~62のいずれか一項記載の化合物。
【請求項64】
R
8が(シクロヘキシル)メチルである、請求項1および58~63のいずれか一項記載の化合物。
【請求項65】
R
9が、アラルキル
(C≦18)または置換アラルキル
(C≦18)である、請求項1および58~64のいずれか一項記載の化合物。
【請求項66】
R
9がアラルキル
(C≦18)である、請求項1および58~65のいずれか一項記載の化合物。
【請求項67】
R
9が2-(ナフタレン-2-イル)エチルである、請求項1および58~66のいずれか一項記載の化合物。
【請求項68】
R
6が、アミド
(C≦12)または置換アミド
(C≦12)である、請求項1および58~67のいずれか一項記載の化合物。
【請求項69】
R
6が置換アミド
(C≦12)である、請求項1および58~68のいずれか一項記載の化合物。
【請求項70】
R
6が3-アミノプロパンアミドである、請求項1および58~69のいずれか一項記載の化合物。
【請求項71】
化合物が、
、またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される、請求項1~70のいずれか一項記載の化合物。
【請求項72】
化合物が、
、またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される、請求項1~57のいずれか一項記載の化合物。
【請求項73】
化合物が、
、またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される、請求項1~57のいずれか一項記載の化合物。
【請求項74】
化合物が、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される、請求項1および58~71のいずれか一項記載の化合物。
【請求項75】
(a)請求項1~74のいずれか一項記載の化合物;ならびに
(b)賦形剤および/または薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物。
【請求項76】
経口的に、脂肪内に、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜内に、前立腺内に、直腸内に、髄腔内に、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、膣内に、静脈内に、小胞内に、硝子体内に、リポソームによって、局所に、粘膜に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に、経頬的に、経皮的に、膣に、クリームで、脂質組成物で、カテーテルによって、洗浄によって、持続注入によって、注入によって、吸入によって、注射によって、局所送達によって、または局所灌流によって投与するために製剤化されている、請求項75記載の薬学的組成物。
【請求項77】
経口的に、動脈内に、腫瘍内に、静脈内に、局所に、皮下に、局所的に、腹腔内に、または注射によって投与するために製剤化されている、請求項75または76記載の薬学的組成物。
【請求項78】
その必要がある患者における疾患または障害を処置する方法であって、治療有効量の請求項1~77のいずれか一項記載の化合物または組成物を患者へ投与する工程を含む、前記方法。
【請求項79】
患者が哺乳動物である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
患者がヒトである、請求項78または79記載の方法。
【請求項81】
疾患または障害ががんである、請求項78~80のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
がんが治療抵抗性がんである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
がんが、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、または脳がんである、請求項81または82記載の方法。
【請求項84】
がんが乳がんである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
がんが卵巣がんである、請求項83記載の方法。
【請求項87】
がんが膵臓がんである、請求項83記載の方法。
【請求項88】
がんが脳がんである、請求項83記載の方法。
【請求項89】
脳がんが膠芽腫である、請求項88記載の方法。
【請求項90】
がんがエストロゲン受容体陽性がんである、請求項81~84、86、および87のいずれか一項記載の方法。
【請求項91】
がんがエストロゲン受容体陰性がんである、請求項81~87のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
投与する工程が、静脈内、動脈内、腫瘍内、皮下、局所、または腹腔内投与を含む、請求項78記載の方法。
【請求項93】
投与する工程が、局所、限局、全身、または連続投与を含む、請求項78記載の方法。
【請求項94】
第2の抗がん療法を対象へ提供する工程をさらに含む、請求項78記載の方法。
【請求項95】
第2の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、および寒冷療法である、請求項94記載の方法。
【請求項96】
第2の抗がん療法を、前記化合物を投与する工程の前に提供する、請求項94記載の方法。
【請求項97】
第2の抗がん療法を、前記化合物を投与する工程の後に提供する、請求項94記載の方法。
【請求項98】
第2の抗がん療法を前記化合物と同時に提供する、請求項94記載の方法。
【請求項99】
前記化合物を毎日投与する、請求項78記載の方法。
【請求項100】
前記化合物を、7日間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、6週間、8週間、2ヶ月間、12週間、または3ヶ月間にわたり毎日投与する、請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記化合物を毎週投与する、請求項78記載の方法。
【請求項102】
前記化合物を、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、10週間、または12週間にわたり毎週投与する、請求項78記載の方法。
【請求項103】
前記化合物または前記組成物を、小胞体ストレスを誘導しかつ/またはタンパク質合成を停止させるために十分な量で投与する、請求項78記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2018年12月3日に出願された米国仮出願第62/774,671号の優先権の恩典を主張し、この内容全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供の陳述
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金番号1R01 CA223828-01の下で政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
I.発明の分野
本開示は、一般に、ペプチド模倣体の分野、具体的には、がんのような医学的適応症における組成物およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
II.関連技術の説明
ペプチド模倣体(ペプチドミメティクスとしても知られる)は、ペプチド骨格構造を有さないが、同じ標的タンパク質との相互作用を該タンパク質中の結合ポケットに相補的な(complimentary)必須の三次元パターンに必須官能基(すなわちファルマコフォア)を配置することで行う能力を依然として保持する、小有機分子である。ペプチドおよびタンパク質がそれらの球形形状を作りかつそれらの結合パートナーを認識するために二次構造(例えばα-ヘリックス、β-シートおよび逆向ターン)を採用および利用することから、二次構造模倣体の合理的設計は、化学ライブラリーの従来のハイスループットスクリーニングに比べて、タンパク質複合体形成の小分子モジュレーターを開発する上で重要な戦略である。
【0005】
これらの化合物は、がん細胞中のホルモン受容体へ結合することが公知であり、これらの適応症の処置において有用である。従って、ホルモン受容体の調節を通してがんの処置において有用である新規かつ有用な化合物を開発する必要性が存在したままである。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、がんの処置および/または予防における使用のためのオリゴベンズアミドペプチド模倣化合物を提供する。これらの小分子は、標的分子中のヘリックスセグメントを表すα-ヘリックス模倣体を含む。オリゴベンズアミドペプチド模倣化合物は、タンパク質-タンパク質、タンパク質-ペプチド、またはタンパク質-薬物相互作用を調節して、様々な生理学的結果を発揮する。オリゴベンズアミドペプチド模倣化合物はまた、がん細胞中において著しい小胞体ストレスを引き起こし、デノボタンパク質合成を効果的に停止させ、細胞死をもたらし得る。
【0007】
一局面において、本開示は、以下の式の化合物または以下の式の薬学的に許容される塩を提供する:
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は、-OR
5aまたは-NHR
5bであり、
R
5aは、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5bは、水素、または
シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり、
但し、R
5bが水素である場合はR
1はハロであり、かつ、但し、R
5aがメチルである場合はR
3はアルキル
(C≦12)ではない;
または
式中:
R
6は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
6a)NH
2であり、
R
6aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
7およびR
8は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-シクロアルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、またはこれらの基のいずれかの置換型であり;かつ
R
9は、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型;または
以下の式の基:
であり、
L
2は、-CO
2-または-C(O)NR
L2-であり、
R
L2は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
9aは、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である。
【0008】
いくつかの態様において、化合物は式(I)のものである。さらなる態様において、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は、-OR
5aまたは-NHR
5bであり、
R
5aは、アルキル
(C≦12)または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5bは、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である。
【0009】
いくつかの態様において、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1はハロであり;かつ
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)である。
【0010】
いくつかの態様において、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は、-OR
5aまたは-NHR
5bであり、
R
5aは、アルキル
(C2-12)または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5bは、水素、または
シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である。
【0011】
いくつかの態様において、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
3は、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)である。
【0012】
いくつかの態様において、R5bは水素である。いくつかの態様において、R5aはメチルである。
【0013】
いくつかの態様において、化合物は、
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
式中:
R
1は、ハロ、-NO
2、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アミド
(C≦12)、置換アミド
(C≦12)、または-NHC(O)CH(R
1a)NH
2であり、
R
1aは、アラルキル
(C≦18)、置換アラルキル
(C≦18)、または標準アミノ酸の側鎖であり;
R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、または置換アラルキル
(C≦18)であり;かつ
R
5は-NHR
5bであり、
R
5bは、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型、または
以下の式の基:
であり、
L
1は、-CO
2-または-C(O)NR
L1-であり、
R
L1は、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
5b’は、アリール
(C≦12)、アラルキル
(C≦18)、ヘテロアリール
(C≦12)、ヘテロアラルキル
(C≦18)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である。
【0014】
いくつかの態様において、R2は、アラルキル(C≦18)または置換アラルキル(C≦18)である。さらなる態様において、R2は、置換アラルキル(C≦18)、例えば、4-ヒドロキシフェネチルである。他の態様において、R2は、アルキル(C≦12)または置換アルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R2は、置換アルキル(C≦12)、例えば、1-ヒドロキシエチルである。いくつかの態様において、R4は、アラルキル(C≦18)または置換アラルキル(C≦18)である。さらなる態様において、R4は、アラルキル(C≦18)、例えば、ベンジルである。他の態様において、R4は、アルキル(C≦12)または置換アルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R4は、アルキル(C≦12)、例えば、n-ブチルまたはi-ブチルである。いくつかの態様において、R3は、アラルキル(C≦18)または置換アラルキル(C≦18)である。さらなる態様において、R3は、アラルキル(C≦18)、例えば、2-(ナフタレン-2-イル)エチルである。他の態様において、R3は、アルキル(C≦12)または置換アルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R3は、アルキル(C≦12)、例えば、メチルまたはi-ブチルである。
【0015】
いくつかの態様において、R5bは、アラルキル(C≦18)または置換アラルキル(C≦18)である。さらなる態様において、R5bは、アラルキル(C≦18)、例えば、(ナフタレン-2-イル)メチルである。他の態様において、R5bは、ヘテロアリール(C≦12)または置換ヘテロアリール(C≦12)である。さらなる態様において、R5bは、ヘテロアリール(C≦12)、例えば、1H-イミダゾール-2-イルである。さらに他の態様において、R5bは、シクロアルキル(C≦12)または置換シクロアルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R5bは、シクロアルキル(C≦12)、例えば、4-メチルシクロヘキシルである。いくつかの態様において、L1は-C(O)NRL1-である。いくつかの態様において、RL1は水素である。いくつかの態様において、R5b’は、ヘテロアリール(C≦12)または置換ヘテロアリール(C≦12)である。さらなる態様において、R5b’は、ヘテロアリール(C≦12)、例えば、キノリン-3-イルまたは1H-インダゾール-7-イルである。
【0016】
いくつかの態様において、R1は-NO2である。他の態様において、R1は、アルキル(C≦12)または置換アルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R1は、アルキル(C≦12)、例えば、メチルである。さらに他の態様において、R1は、ハロ、例えば、フルオロまたはヨードである。さらに他の態様において、R1は、アミド(C≦12)または置換アミド(C≦12)である。さらなる態様において、R1は、置換アミド(C≦12)、例えば、3-アミノプロパンアミドである。いくつかの態様において、R1aは、アラルキル(C≦18)または置換アラルキル(C≦18)である。さらなる態様において、R1aは、アラルキル(C≦18)、例えば、ベンジルである。
【0017】
他の態様において、化合物は式(II)のものである。いくつかの態様において、R7は、アルキル(C≦12)または置換アルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R7は、置換アルキル(C≦12)、例えば、1-ヒドロキシエチルである。いくつかの態様において、R8は、-アルカンジイル(C≦12)-シクロアルキル(C≦12)または置換-アルカンジイル(C≦12)-シクロアルキル(C≦12)である。さらなる態様において、R8は、-アルカンジイル(C≦12)-シクロアルキル(C≦12)、例えば、(シクロヘキシル)メチルである。いくつかの態様において、R9は、アラルキル(C≦18)または置換アラルキル(C≦18)である。さらなる態様において、R9は、アラルキル(C≦18)、例えば、2-(ナフタレン-2-イル)エチルである。いくつかの態様において、R6は、アミド(C≦12)または置換アミド(C≦12)である。さらなる態様において、R6は、置換アミド(C≦12)、例えば、3-アミノプロパンアミドである。
【0018】
いくつかの態様において、化合物は、以下またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される:
【0019】
いくつかの態様において、化合物は、以下またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される:
【0020】
いくつかの態様において、化合物は、以下またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される:
【0021】
いくつかの態様において、化合物は、以下またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される:
【0022】
別の局面において、本開示は、
(a)本明細書に開示される化合物;ならびに
(b)賦形剤および/または薬学的に許容される担体
を含む薬学的組成物を提供する。
【0023】
いくつかの態様において、組成物は、経口的に、脂肪内に、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜内に、前立腺内に、直腸内に、髄腔内に、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、膣内に、静脈内に、小胞内に、硝子体内に、リポソームによって、局所に、粘膜に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に、経頬的に、経皮的に、膣に、クリームで、脂質組成物で、カテーテルによって、洗浄によって、持続注入によって、注入によって、吸入によって、注射によって、局所送達によって、または局所灌流によって投与するために製剤化されている。さらなる態様において、組成物は、経口的に、動脈内に、腫瘍内に、静脈内に、局所に、皮下に、局所的に、腹腔内に、または注射によって投与するために製剤化されている。
【0024】
さらに別の局面において、本開示は、その必要がある患者における疾患または障害を処置する方法であって、治療有効量の本明細書に開示される化合物または組成物を患者へ投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様において、患者は、哺乳動物、例えば、ヒトである。いくつかの態様において、疾患または障害はがんである。いくつかの態様において、がんは治療抵抗性がんである。いくつかの態様において、がんは、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、または脳がんである。さらなる態様において、がんは、乳がん、例えば、トリプルネガティブ乳がんである。他の態様において、がんは卵巣がんである。さらに他の態様において、がんは膵臓がんである。さらに他の態様において、がんは、脳がん、例えば、膠芽腫である。いくつかの態様において、がんはエストロゲン受容体陽性がんである。他の態様において、がんはエストロゲン受容体陰性がんである。
【0025】
いくつかの態様において、投与する工程は、静脈内、動脈内、腫瘍内、皮下、局所、または腹腔内投与を含む。いくつかの態様において、投与する工程は、局所、限局、全身、または連続投与を含む。いくつかの態様において、方法は、第2の抗がん療法を対象へ提供する工程をさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗がん療法は、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、および寒冷療法である。いくつかの態様において、第2の抗がん療法を、前記化合物を投与する工程の前に提供する。他の態様において、第2の抗がん療法を、前記化合物を投与する工程の後に提供する。さらに他の態様において、第2の抗がん療法を前記化合物と同時に提供する。
【0026】
いくつかの態様において、前記化合物を毎日投与する。いくつかの態様において、前記化合物を、7日間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、6週間、8週間、2ヶ月間、12週間、または3ヶ月間にわたり毎日投与する。さらなる態様において、前記化合物を毎週投与する。いくつかの態様において、前記化合物を、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、10週間、または12週間にわたり毎週投与する。いくつかの態様において、化合物または組成物を、小胞体ストレスを誘導しかつ/またはタンパク質合成を停止させるために十分な量で投与する。いくつかの態様において、前記化合物は、投与の数時間内に小胞体ストレスを誘導することによって作用し、引き続いてタンパク質合成を停止させる。いくつかの態様において、細胞内の基底の小胞体ストレスまたは代償性変性タンパク質応答のレベルは、薬物に対する応答を決定する。
【0027】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用する場合の「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致している。
【0028】
本明細書において使用する「またはその組み合わせ」という用語は、その用語に先行する列挙された項目のすべての順列および組み合わせを意味する。例えば、「A、B、Cまたはその組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを含むように、かつ特定の文脈において順序が重要である場合はBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABも含むように意図されている。当業者は、文脈から別途明らかではない場合、通常は任意の組み合わせにおける項目または事項の数が限定されないということを理解するであろう。
【0029】
本明細書および特許請求の範囲において使用する「含む(comprising)」(ならびにcomprisingの任意の形態、例えば「comprise」および「comprises」)、「有する(having)」(ならびにhavingの任意の形態、例えば「have」および「has」)、「含む(including)」(ならびにincludingの任意の形態、例えば「includes」および「include」)または「含有する(containing)」(およびcontainingの任意の形態、例えば「contains」および「contain」)という用語は、包括的または開放的であり、さらなる列挙されない要素または方法段階を排除しない。
【0030】
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体的な例は、本開示の具体的な態様を示しているが、この詳細な説明から本開示の精神および範囲内の様々な変更および改変が当業者には明らかとなるため、例示として提供されるにすぎないことが理解されるべきである。特定の化合物が1つの特定の一般式に帰属するからといって、その化合物が別の一般式にも属し得ないことを意味するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示の特徴および利点のより完全な理解のために、ここで本開示の詳細な説明を添付の図面と共に参照する。
【
図1】一次TK41(即ち、ERX-41)構造および低エネルギーらせん形構造を示す。
【
図2】MTTアッセイによって決定された、エストロゲン受容体陽性(
図2A)、エストロゲン受容体陰性(
図2B)および治療抵抗性ERMT (
図2C)細胞に対するTK41の効力(50~500 nMのIC
50)を示す。
【
図3】TLX (MacroModel and AutoDock;
図3A)にドッキングされたTK41(即ち、ERX-41)を示す。アビジンビーズプルダウンを使用して、ビオチン化ERX-41とのインキュベーション後、精製TLXタンパク質との相互作用を解析した(
図3B)。
図3Cは、GST-TLXをTK41 (1μM)の存在または非存在下でTNBC細胞溶解物と共にインキュベートし、PELP1とのTLX相互作用を、GSTプルダウン、続いてのウエスタンによって分析したことを示す。
【
図4】エストロゲン受容体陽性(ER+ve)腫瘍増殖に対するTK41の効果を示す。ZR75 (ER+ve; n = 18)異種移植片をヌードマウス中に確立し、Captisol(登録商標)中の経口強制栄養として投与されたビヒクル(円形マーカー)または10 mg/kg/日 TK41 (四角形マーカー)のいずれかで処置した。腫瘍体積に対する効果を
図4Aに示す。腫瘍重量に対する効果を
図4Bに示す。マウス体重の比較を棒グラフで示す(
図4C)。* p<0.05; **** p<0.001。
【
図5】トリプルネガティブ乳がん異種移植腫瘍に対するTK41の効果を示す。MDA-MB-231 (TNBC; n = 10)異種移植片をヌードマウス中に確立し、Captisol(登録商標)中の経口強制栄養として投与されたビヒクル(円形マーカー)または10 mg/kg/日 TK41 (四角形マーカー)のいずれかで処置した。マウス体重の比較を棒グラフで示す(
図5A)。腫瘍重量に対する効果を
図5Bに示す。腫瘍体積に対する効果を
図5Cに示す。剖検時の個々の腫瘍の写真は、TNBCに対するTK41の効果を支持する。* p<0.05; **** p<0.001。
【
図6】ki67染色によって測定された、原発性患者由来TNBCエクスビボ培養組織の増殖に対するERX-41 (TK41)の効果を示す。n = 11の実験の累積シリーズを示す。
【
図7】患者由来異種移植片中のトリプルネガティブ乳がんにおけるTK41の効果を示す。TNBC患者由来異種移植片(n = 6)をヌードマウス中に確立し、ビヒクル(円形マーカー)または10 mg/kg/日/経口ERX-41 (即ち、TK41; 四角形マーカー)で処置した。腫瘍体積(
図7A)、剖検時の腫瘍重量の分布(
図7B)、およびマウス体重(棒グラフ;
図7C)は、ERX-41がTNBC PDX腫瘍に対して活性を有することを支持する。* p<0.05; **** p<0.001。
【
図8】治療抵抗性がん細胞に対するTK41 (即ち、ERX-41)の効果を示す。ERMT (治療抵抗性)異種移植片(n = 8)をヌードマウス中に確立し、ビヒクル(円形マーカー)または10 mg/kg/日/経口ERX-41 (四角形マーカー)で処置した。腫瘍体積(
図8A)およびマウス体重(棒グラフ;
図8B)は、ERX-41がERMT腫瘍に対して活性を有することを支持する。* p<0.05; ** p<0.01。
【
図9】TK11 (即ち、ERX-11; Raj et al., 2017)、TK41、TK207、TK203、TK208、およびYL144間の構造活性関係を示す。置換アミノ基でのTK11のR
5アミノ基の置き換えは、エストロゲン受容体陽性およびエストロゲン受容体陰性細胞株に対する活性を有意に増加させた。
【
図10】がん細胞に対するTK208の効果を示す。
図10Aは、様々なTNBC細胞株に対するTK208の効果を示す。
図10Bは、様々な卵巣がん細胞株に対するTK208の効果を示す。
【
図11】親細胞に対するBT549 NR1H4ノックアウト細胞中のTK208の細胞傷害効果の比較を示す。
図11Aは、細胞生存アッセイの結果を示す。
図11Bは、アポトーシスに対するTK208の効果を実証する、カスパーゼアッセイの結果を示す。
【
図12】卵巣がん細胞株ES2 (
図12Aおよび12B)ならびにSKOV3 (
図12Cおよび12D)に対するTK208の効果を示す。
図12Aおよび12Cは、TK208が両方の卵巣がん細胞中においてアポトーシスを促進することを示す。
図12Bおよび12Dは、TK208が両方のがん細胞株中において細胞生存率を低下させることを示す。
【
図13】TK208がES2およびSKOV3卵巣がん細胞のコロニー形成を減少させることを示す。
【
図14】TK208がES2およびSKOV3卵巣がん細胞の浸潤を減少させることを示す。
【
図15】TK208がS期においてES2およびSKOV3卵巣がん細胞の増殖停止を促進することを示す。
【
図16】様々な細胞株由来の乳がん細胞に対するYL144の効果を示す。
【
図17】BT549/NR標的化ノックアウト細胞に対するYL144の効果を示す。
【
図18】VDR-CRISPRノックアウト細胞の細胞生存率に対するYL144の効果を示す。
【
図19】TK11 (Raj et al., 2017)、TK41、TK208、TK231、YL144、TK227、YL1113、およびTK245間の構造活性関係を示す。
【
図20】TK245がエストロゲン受容体陽性細胞について高特異性を有することを示す。
【
図21】様々ながん細胞株に対するTK308の効果を示す。
【
図22】様々ながん細胞株に対するTK309の効果を示す。
【
図23】様々ながん細胞株に対するTK315の効果を示す。
【
図24】様々ながん細胞株に対するTK314の効果を示す。TK314は卵巣がん細胞に対して特有の活性を示し、乳がん細胞に対しては著しくより低い活性を示す。
【
図25】電子顕微鏡を使用して、TNBC MD-MBA-231細胞中において小胞体ストレスを誘導するTK41の能力を示す。TK41はHMEC細胞中において小胞体ストレスを誘導しない(下部パネル)。
【
図26】ウエスタンブロットを使用して、MD-MBA-231細胞中において小胞体ストレスを誘導するTK41の能力を示す。TK41はHMEC細胞中において小胞体ストレスを誘導しない。
【
図27】デノボタンパク質合成を停止させるTK41の能力を示す。TK-41は、ピューロマイシン標識新生タンパク質についてのウエスタンブロットによって示されたように、3つのTNBC細胞中において4時間および16時間での全体的な新しいタンパク質合成を減少させる。総タンパク質はクマシーブルー染色で右側に示される。
【
図28】小胞体ストレスおよび変性タンパク質応答の発現の基底レベルが、TK41活性と相関することを示す。
【
図29】電子顕微鏡を使用して、膵臓がんMiaPaca細胞中において小胞体ストレスを誘導するTK41の能力を示す。TK41はHMEC細胞中において小胞体ストレスを誘導しない。
【
図30】ERまたはTLXのいずれかを標的化し、小胞体ストレス、その後のアポトーシスを誘導し、そしてオートファジー融合を遮断することによる、TK41の作用機序を説明する略図を示す。
【
図31】TK315 (ERX-315)の経口投与が、ZR75 (
図31A~B)およびMCF7細胞(
図31C~D)中においてY537S ERa突然変異体を発現するようにCRISPRによって遺伝子操作されたBC異種移植片の成長および腫瘍重量を減少させたことを示す。体重の変化は見られなかった。
【
図32】ビヒクル(円形)またはERX-41 (四角形)のいずれかで処置された確立された乳房PDX腫瘍を示す。腫瘍体積(左)、剖検時の腫瘍重量の分布(中央パネル)をグラフ化する。* p<0.05; **** p<0.001。
【
図33】
図33A~Dは、ビヒクルまたはTK208 (ERX-208)で処置された卵巣がん異種移植片(ES2)を示す。腫瘍体積(
図33A)、体重(
図33B)、剖検時の腫瘍重量の分布(
図33C)および結節(
図33D)をグラフ化した。
図33E~Hは、ビヒクルまたはTK208 (ERX-208)で処置された卵巣PDX腫瘍を示す。腫瘍体積(
図33E)、剖検時の腫瘍重量の分布(
図33F)、および腫瘍画像(
図33G)および体重(
図33H)をグラフ化した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本開示は、化合物の南端においてシクロヘキシルアミド基で修飾されているオリゴベンズアミドに関する。これらの化合物は、乳がんのような1つまたは複数のがん細胞中のホルモン受容体へ結合することが示された。これらの化合物は、改善された効能のような、当技術分野において公知のものと比べて1つまたは複数の優先的な特性を示し得る。これらおよび他の詳細を下記に記載する。
【0033】
【0034】
本開示の化合物を、例えば、上記、概要の項、および下記の特許請求の範囲において示す。これらは、実施例の項に概略を示す合成法を用いて作製してもよい。これらの方法は、当業者によって適用される有機化学の原理および技術を用いて、さらに改変および最適化することができる。そのような原理および技術は、例えば、Smith, March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, (2013)において教示され、これは参照により本明細書に組み入れられる。加えて、合成法は、当業者によって適用されるプロセス化学の原理および技術を用いて、バッチまたは連続のどちらでも、予備的、パイロットまたは大規模産生のために、さらに改変および最適化してもよい。そのような原理および技術は、例えば、Anderson, Practical Process Research & Development - A Guide for Organic Chemists (2012)において教示され、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0035】
本開示の化合物はすべて、いくつかの態様において、本明細書に記載の、またはそれ以外の1つまたは複数の疾患または障害の予防および処置のために有用であり得る。いくつかの態様において、中間体、代謝産物、および/またはプロドラッグとして本明細書において特徴づけ、または例示する1つまたは複数の化合物も、やはり、1つまたは複数の疾患または障害の予防および処置のために有用であり得る。したがって、そうではないと明白に記載されない限り、本開示の化合物はすべて、薬学的活性成分(API)としての使用が企図される「活性化合物」および「治療用化合物」と見なされる。ヒトまたは動物に使用するための実際の適合性は、典型的には、臨床試験プロトコルおよび食品医薬品局(FDA)によって管理されるものなどの規制手順の組み合わせを用いて決定される。米国において、FDAはヒトおよび動物用薬物、ワクチンおよび他の生物学的製品、ならびに医用装置の安全性、有効性、品質、および保証を確実にすることにより、公衆衛生の保護を担っている。
【0036】
いくつかの態様において、本開示の化合物は、本明細書に記載の適応症における使用またはそれ以外のいずれに対しても、先行技術において公知の化合物よりも、有効で、毒性が低く、長期間作用し、効力が強く、副作用が少なく、容易に吸収され、代謝的に安定しており、より親油性であり、より親水性であり、かつ/または、良好な薬物動態特性(例えば、高い経口バイオアベイラビリティおよび/もしくは低いクリアランス)を有し、かつ/または、他の有用な薬理、物理、もしくは化学的性質を有する場合があるという利点を有する。
【0037】
本開示の化合物は、1つまたは複数の不斉に置換された炭素または窒素原子を含んでもよく、光学活性型またはラセミ型で単離されてもよい。したがって、特定の立体化学または異性体型が具体的に示されない限り、化学式のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ型、エピマー型、およびすべての幾何異性型が意図される。化合物はラセミ体およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして出現し得る。いくつかの態様において、単一のジアステレオマーを得る。本開示の化合物のキラル中心は、SまたはR立体配置を有し得る。いくつかの態様において、本化合物は、定義された立体化学配向を有する2つ以上の原子を含有し得る。
【0038】
本開示の化合物を表すために用いる化学式は、典型的には、可能ないくつかの異なる互変異性体の1つを示すにすぎない。例えば、ケトン基の多くの型が対応するエノール基と平衡で存在することが公知である。同様に、イミン基の多くの型がエナミン基と平衡で存在する。所与の化合物についてどの互変異性体を示すかに関係なく、またどの1つが最も多いかに関係なく、所与の化学式のすべての互変異性体が意図される。
【0039】
加えて、本開示の化合物を構成する原子は、そのような原子のすべての同位体型を含むことが意図される。本明細書において用いられる同位体は、原子番号が同じであるが質量数は異なる原子を含む。一般的な例として、水素の同位体にはトリチウムおよび重水素が含まれ、フッ素の同位体には18Fが含まれ、炭素の同位体には13Cおよび14Cが含まれるが、それらに限定されない。
【0040】
いくつかの態様において、本開示の化合物は、プロドラッグとして機能するか、またはプロドラッグとして機能するように誘導体化され得る。プロドラッグは薬剤の多くの望ましい特質(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティ、製造など)を増強することが公知であるため、本開示のいくつかの方法で用いる化合物は、必要に応じて、プロドラッグ型で送達してもよい。したがって、本開示は、本開示の化合物のプロドラッグ、ならびにプロドラッグの送達法を企図する。本開示において用いる化合物のプロドラッグは、修飾が、日常的操作またはインビボのいずれかで、親化合物へと切断されるような様式で、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製してもよい。したがって、プロドラッグには、例えば、ヒドロキシ、アミノ、またはカルボキシル基が任意の基に結合されており、プロドラッグを対象に投与すると、切断されてそれぞれヒドロキシ、アミノ、またはカルボン酸を生成する、本明細書に記載の化合物が含まれる。
【0041】
いくつかの態様において、本開示の化合物は、塩または非塩形態で存在する。塩形態(複数可)に関して、いくつかの態様において、塩が全体として薬理学的に許容される限り、本明細書に提供される化合物の任意の塩形態の一部を形成している特定のアニオンまたはカチオンは重要でない。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製法および使用法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (2002)に示され、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
多くの有機化合物は、それらがその中で反応する溶媒、またはそれらがそこから沈殿もしくは結晶化する溶媒との複合体を形成し得ることが理解されるであろう。これらの複合体は「溶媒和物」として公知である。溶媒が水である場合、複合体は「水和物」として公知である。また、多くの有機化合物は、結晶型および非晶質型を含む、複数の固体形態で存在し得ることも理解されるであろう。その任意の溶媒和物を含む、本明細書において提供する化合物のすべての固体形態は、本開示の範囲内である。
【0043】
II.化学的定義
化学基の文脈で用いられる場合、「水素」は-Hを意味し;「ヒドロキシ」は-OHを意味し;「オキソ」は=Oを意味し;「カルボニル」は-C(=O)-を意味し;「カルボキシ」は-C(=O)OH(-COOHまたは-CO2Hとも書く)を意味し;「ハロ」は独立に-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し;「アミノ」は-NH2を意味し;「ヒドロキシアミノ」は-NHOHを意味し;「ニトロ」は-NO2を意味し;イミノは=NHを意味し;「シアノ」は-CNを意味し;「イソシアニル」は-N=C=Oを意味し;「アジド」は-N3を意味し;一価の文脈で「ホスフェート」は-OP(O)(OH)2またはその脱プロトン型を意味し;二価の文脈で「ホスフェート」は-OP(O)(OH)O-またはその脱プロトン型を意味し;「メルカプト」は-SHを意味し;かつ「チオ」は=Sを意味し;「スルホニル」は-S(O)2-を意味し;かつ「スルフィニル」は-S(O)-を意味する。
【0044】
化学式の文脈で、記号「-」は一重結合を意味し、「=」は二重結合を意味し、かつ「≡」は三重結合を意味する。記号「----」は、存在する場合、一重または二重のいずれかである、任意の結合を意味する。記号
は、一重結合または二重結合を意味する。したがって、式
には、例えば、
が含まれる。また、1つのそのような環原子が複数の二重結合の一部を形成しないことが理解される。さらに、共有結合の記号「-」は、1つまたは2つのステレオジェン原子を連結する場合、いかなる好ましい立体化学も示さないことが注意される。代わりに、それはすべての立体異性体ならびにその混合物を含む。記号
は、結合を横切って垂直に引かれている場合(例えば、メチルについて
)、基の結合点を示す。結合点は、典型的には、読み手が結合点を明確に特定するのを助けるために、より大きな基についてこの様式で特定されるにすぎないことが注意される。記号
は、くさびの太い端に結合した基が「ページから外に」ある、一重結合を意味する。記号
は、くさびの太い端に結合した基が「ページの中に」ある、一重結合を意味する。記号
は、二重結合の周りの幾何学が未定義(例えば、EまたはZのいずれか)である、一重結合を意味する。したがって、両方の選択肢、ならびにその組み合わせが意図される。本出願において示す構造の原子における任意の未定義の原子価は、その原子に結合した水素原子を暗に表す。炭素原子上の太い点は、その炭素に結合し水素が紙の平面から外に向いていることを示す。
【0045】
変数が環系の「浮遊基(floating group)」として、例えば、式:
における基「R」として示される場合、変数は、安定な構造が形成される限り、描写された、暗示された、または明確に定義された水素を含む、任意の環原子に結合した任意の水素原子に置き換わってもよい。変数が縮合環系の「浮遊基」として、例えば、式:
における基「R」として示される場合、変数は、特に記載がない限り、縮合環のいずれかの任意の環原子に結合した任意の水素に置き換わってもよい。置き換え可能な水素には、安定な構造が形成される限り、描写された水素(例えば、上記の式で窒素に結合した水素)、暗示された水素(例えば、図示されていないが、存在が理解される、上記の式の水素)、明確に定義された水素、およびその存在が環原子の同一性に依存する任意の水素(例えば、Xが-CH-に等しい場合、基Xに結合した水素)が含まれる。描写された例において、Rは縮合環系の5員環または6員環のいずれにあってもよい。上記の式において、括弧で囲まれたRのすぐ後の下付き文字「y」は、数値変数を表す。特に記載がない限り、この変数は、0、1、2、または2を超える任意の整数であり得、環または環系の置き換え可能な水素原子の最大数によってのみ限定される。
【0046】
化学基および化合物クラスについて、基またはクラス中の炭素原子の数は以下に示すとおりである:「Cn」または「C=n」は、基/クラス中の炭素原子の正確な数(n)を定義する。「C≦n」は、基/クラス中にあり得る炭素原子の最大数(n)を定義し、最小数は問題の基/クラスにとって可能な限り小さい。例えば、基「アルキル(C≦8)」、「シクロアルカンジイル(C≦8)」、「ヘテロアリール(C≦8)」、および「アシル(C≦8)」中の炭素原子の最小数は1であり、基「アルケニル(C≦8)」、「アルキニル(C≦8)」、および「ヘテロシクロアルキル(C≦8)」中の炭素原子の最小数は2であり、基「シクロアルキル(C≦8)」中の炭素原子の最小数は3であり、かつ基「アリール(C≦8)」および「アレンジイル(C≦8)」中の炭素原子の最小数は6であることが理解される。「Cn-n'」は、基中の炭素原子の最小(n)および最大数(n')の両方を定義する。したがって、「アルキル(C2-10)」は、2~10個の炭素原子を有するアルキル基を示す。これらの炭素数を示す数字は、それが修飾する化学基またはクラスの前にあっても後にあってもよく、また括弧内にあってもなくてもよく、意味のいかなる変更も意味しない。したがって、「C5オレフィン」、「C5-オレフィン」、「オレフィン(C5)」、および「オレフィンC5」なる用語はすべて同義語である。以下に示す場合を除き、基または化合物が炭素原子の指定の数に一致するかどうかを判定するために、あらゆる炭素原子を計数する。例えば、基ジヘキシルアミノはジアルキルアミノ(C=12)基の一例であるが、ジアルキルアミノ(C=6)基の一例ではない。同様に、フェニルエチルはアラルキル(C=8)基の一例である。本明細書において定義される任意の化学基または化合物クラスが「置換」なる用語で修飾される場合、水素原子に置き代わる部分のいかなる炭素原子も計数しない。したがって、メトキシヘキシルは、合計7個の炭素原子を有するが、置換アルキル(C1-6)の一例である。特に記載がない限り、炭素原子の制限なしに請求項に挙げられる任意の化学基または化合物クラスは、12以下の炭素原子の制限を有する。
【0047】
「飽和」なる用語は、化合物または化学基を修飾するために用いられる場合、化合物または化学基が、以下に示す場合を除いて、炭素-炭素二重結合および炭素-炭素三重結合を有しないことを意味する。この用語が原子を修飾するために用いられる場合、原子はいかなる二重または三重結合の一部でもないことを意味する。飽和基の置換型の場合、1つまたは複数の炭素酸素二重結合または炭素窒素二重結合は存在してもよい。さらに、そのような結合が存在する場合、ケト-エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の一部として起こり得る炭素-炭素二重結合を除外するものではない。「飽和」なる用語が物質の溶液を修飾するために用いられる場合、その溶液中にその物質がそれ以上溶解し得ないことを意味する。
【0048】
「脂肪族」なる用語は、そのように修飾された化合物または化学基は非環式または環式であるが、非芳香族の化合物または基であることを示す。脂肪族化合物/基において、炭素原子は直鎖、分枝鎖、または非芳香環(脂環式)中で一緒に連結され得る。脂肪族化合物/基は、一重炭素-炭素結合によって連結された飽和(アルカン/アルキル)、あるいは1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合(アルケン/アルケニル)または1つもしくは複数の炭素-炭素三重結合(アルキン/アルキニル)による不飽和であり得る。
【0049】
「芳香族」なる用語は、そのように修飾された化合物または化学基は、完全共役環式π系で4n+2の電子を有する、原子の平面不飽和環を有することを示す。芳香族化合物または化学基は、単一の共鳴構造として示してもよいが、1つの共鳴構造の描写は任意の他の共鳴構造も指すと考えられる。例えば:
は、
を指すとも考えられる。芳香族化合物は、完全共役環式π系における電子の非局在化特性を表すために、円を用いて示してもよく、その2つの非限定例を以下に示す:
【0050】
「アルキル」なる用語は、結合点としての炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造を有し、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、一価飽和脂肪族基を意味する。基-CH3(Me)、-CH2CH3(Et)、-CH2CH2CH3(n-Prまたはプロピル)、-CH(CH3)2(i-Pr、iPrまたはイソプロピル)、-CH2CH2CH2CH3(n-Bu)、-CH(CH3)CH2CH3(sec-ブチル)、-CH2CH(CH3)2(イソブチル)、-C(CH3)3(tert-ブチル、t-ブチル、t-BuまたはtBu)、および-CH2C(CH3)3(neo-ペンチル)はアルキル基の非限定例である。「アルカンジイル」なる用語は、結合点としての1つまたは2つの飽和炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造を有し、炭素-炭素二重または三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、二価飽和脂肪族基を意味する。基-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、および-CH2CH2CH2-はアルカンジイル基の非限定例である。「アルキリデン」なる用語は、RおよびR'が独立に水素またはアルキルである二価の基=CRR'を意味する。アルキリデン基の非限定例には:=CH2、=CH(CH2CH3)、および=C(CH3)2が含まれる。「アルカン」は、Rがこの用語が上で定義されるとおりのアルキルである、式H-Rを有する化合物のクラスを意味する。
【0051】
「シクロアルキル」なる用語は、結合点としての炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の非芳香環構造の一部を形成し、炭素-炭素二重または三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、一価飽和脂肪族基を意味する。非限定例には:-CH(CH
2)
2(シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル(Cy)が含まれる。本明細書において用いられるこの用語は、非芳香環構造の炭素原子に結合した1つまたは複数のアルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。「シクロアルカンジイル」なる用語は、結合点としての2つの炭素原子を有し、炭素-炭素二重または三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、二価飽和脂肪族基を意味する。基
は、シクロアルカンジイル基の非限定例である。「シクロアルカン」は、Rがこの用語が上で定義されるとおりのシクロアルキルである、式H-Rを有する化合物のクラスを意味する。
【0052】
「アリール」なる用語は、結合点としての芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は、すべて炭素原子である6個の環原子をそれぞれ有する、1つまたは複数の芳香環構造の一部を形成し、かつ基は炭素および水素だけからなる、一価不飽和芳香族基を意味する。複数の環が存在する場合、環は縮合であっても、非縮合でもよい。非縮合環は共有結合で連結される。本明細書において用いられるアリールなる用語は、第1の芳香環または存在する任意の追加の芳香環に結合した、1つまたは複数のアルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。アリール基の非限定例には、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C
6H
4CH
2CH
3(エチルフェニル)、ナフチル、およびビフェニルから誘導される一価の基(4-フェニルフェニル)が含まれる。「アレンジイル」なる用語は、結合点としての2つの芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は、すべて炭素原子である6個の環原子をそれぞれ有する、1つまたは複数の6員芳香環構造の一部を形成し、かつ二価の基は炭素および水素だけからなる、二価芳香族基を意味する。本明細書において用いられるアレンジイルなる用語は、第1の芳香環または存在する任意の追加の芳香環に結合した、1つまたは複数のアルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。複数の環が存在する場合、環は縮合であっても、非縮合でもよい。非縮合環は共有結合で連結される。アレンジイルの非限定例には:
が含まれる。「アレン」は、Rがその用語が上で定義されるとおりのアリールである、式H-Rを有する化合物のクラスを意味する。ベンゼンおよびトルエンはアレンの非限定例である。
【0053】
「アラルキル」なる用語は、アルカンジイルおよびアリールなる用語がそれぞれ前述の定義に一致した様式で用いられる、一価の基-アルカンジイル-アリールを意味する。非限定例は:フェニルメチル(ベンジル、Bn)および2-フェニル-エチルである。
【0054】
「ヘテロアリール」なる用語は、結合点としての芳香族炭素原子または窒素原子を有し、該炭素原子または窒素原子は、3~8個の環原子をそれぞれ有する、1つまたは複数の芳香環構造の一部を形成し、芳香環構造の環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつヘテロアリール基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素および芳香族硫黄だけからなる、一価芳香族基を意味する。複数の環が存在する場合、環は縮合であるが;ヘテロアリールなる用語は、1つまたは複数の環原子に結合した1つまたは複数のアルキルまたはアリール基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。ヘテロアリール基の非限定例には、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、フラニル、イミダゾリル(Im)、インドリル、インダゾリル(Im)、イソキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル(ピリジル)、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、およびトリアゾリルが含まれる。「N-ヘテロアリール」なる用語は、結合点としての窒素原子を有するヘテロアリール基を意味する。「ヘテロアレン」は、Rがヘテロアリールである、式H-Rを有する化合物のクラスを意味する。ピリジンおよびキノリンはヘテロアレンの非限定例である。
【0055】
「ヘテロアラルキル」なる用語は、一価基-アルカンジイル-ヘテロアリールを指し、アルカンジイルおよびヘテロアリールなる用語は、上記に提供される定義と一致する様式でそれぞれ使用される。非限定例は、ピリジニルメチルおよび2-キノリニル-エチルである。
【0056】
「アシル」なる用語は、Rがそれらの用語が上で定義されるとおりの水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである、基-C(O)Rを意味する。基-CHO、-C(O)CH3(アセチル、Ac)、-C(O)CH2CH3、-C(O)CH(CH3)2、-C(O)CH(CH2)2、-C(O)C6H5、および-C(O)C6H4CH3はアシル基の非限定例である。「チオアシル」は、基-C(O)Rの酸素原子が硫黄原子で置き換えられていること以外は、同様の様式で定義され、-C(S)Rである。「アルデヒド」なる用語は、-CHO基に結合した、上で定義されるアルキル基に対応する。
【0057】
「アルキルアミノ」なる用語は、Rがその用語が上で定義されるとおりのアルキルである、基-NHRを意味する。非限定例には:-NHCH3および-NHCH2CH3が含まれる。「ジアルキルアミノ」なる用語は、RおよびR'が同じもしくは異なるアルキル基であり得る、基-NRR'を意味する。ジアルキルアミノ基の非限定例には:-N(CH3)2および-N(CH3)(CH2CH3)が含まれる。「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、および「アルコキシアミノ」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、Rがそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびアルコキシである、-NHRと定義される基を意味する。アリールアミノ基の非限定例は-NHC6H5である。「ジシクロアルキルアミノ」、「ジアルケニルアミノ」、「ジアルキニルアミノ」、「ジアリールアミノ」、「ジアラルキルアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、「ジヘテロシクロアルキルアミノ」、および「ジアルコキシアミノ」なる用語は、RおよびR′が、両方とも、それぞれ、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびアルコキシである、-NRR′と定義される基を意味する。同様に、アルキル(シクロアルキル)アミノなる用語は、RがアルキルでありかつR′がシクロアルキルである、-NRR′と定義される基を意味する。「アミド」(アシルアミノ)なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、Rがその用語が上で定義されるとおりのアシルである、基-NHRを意味する。アミド基の非限定例は-NHC(O)CH3である。
【0058】
化学基が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は、各場合で独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。例えば、以下の基は置換アルキル基の非限定例である:-CH2OH、-CH2Cl、-CF3、-CH2CN、-CH2C(O)OH、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)NH2、-CH2C(O)CH3、-CH2OCH3、-CH2OC(O)CH3、-CH2NH2、-CH2N(CH3)2、および-CH2CH2Cl。「ハロアルキル」なる用語は、置換アルキルの部分集合であり、炭素、水素およびハロゲン以外の他の原子が存在しないように、水素原子の置き換えがハロ(すなわち、-F、-Cl、-Br、または-I)に限定されている。基-CH2Clは、ハロアルキルの非限定例である。「フルオロアルキル」なる用語は、置換アルキルの部分集合であり、炭素、水素およびフッ素以外の他の原子が存在しないように、水素原子の置き換えがフルオロに限定されている。基-CH2F、-CF3、および-CH2CF3はフルオロアルキル基の非限定例である。置換アラルキルの非限定例は:(3-クロロフェニル)-メチル、および2-クロロ-2-フェニル-エタ-1-イルである。基-C(O)CH2CF3、-CO2H(カルボキシル)、-CO2CH3(メチルカルボキシル)、-CO2CH2CH3、-C(O)NH2(カルバモイル)、および-CON(CH3)2は置換アシル基の非限定例である。基-NHC(O)OCH3および-NHC(O)NHCH3は置換アミド基の非限定例である。
【0059】
「1つの(a)」または「1つの(an)」なる用語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」なる用語と共に用いられる場合、「1つ」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つよりも多く」の意味とも一致する。
【0060】
本出願の全体を通して、「約」なる用語は、値がその値をもとめるために用いている装置、方法の誤差の固有の変動、または試験対象または患者の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
【0061】
「活性成分」(AI)または薬学的活性成分(API)(活性化合物、活性物質、活性作用物質、薬学的作用物質、作用物質、生物活性分子、または治療化合物とも呼ぶ)は、生物活性である薬学的薬物中の成分である。
【0062】
「含む(comprise)」、「有する」、および「含む(include)」なる用語は、制限のない連結動詞である。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」および「含む(including)」などの、これらの動詞の1つまたは複数の任意の形式または時制も制限がない。例えば、1つまたは複数の段階を「含む(comprises)」、「有する」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つまたは複数の段階だけを有することに限定されることはなく、同様に他の列挙していない段階も対象とする。
【0063】
本明細書および/または特許請求の範囲において用いられる「有効な」なる用語は、所望の、予想される、または所期の結果を達成するのに十分であることを意味する。「有効量」、「治療的有効量」または「薬学的有効量」は、それらの用語が以下に定義されるとおり、患者または対象を化合物で処置する文脈において用いられる場合、対象または患者に投与したときに、疾患のそのような処置または予防を行うのに十分な化合物の量を意味する。
【0064】
「賦形剤」は、薬剤、薬学的組成物、製剤、または薬物送達系の活性成分と共に製剤される、薬学的に許容される物質である。賦形剤は、例えば、組成物を安定化させる、組成物のかさ上げをする(したがって、この目的のために用いる場合、「増量剤」、「充填剤」、または「希釈剤」と呼ぶことも多い)、または薬物吸収を促進する、粘性を低下させる、もしくは溶解性を増強するなどの、治療的増強を最終剤形中の活性成分に与えるために用いてもよい。賦形剤には、抗粘着剤、結合剤、コーティング、染料、崩壊剤、着香剤、滑剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味料、および媒体の薬学的に許容されるものが含まれる。活性成分を運ぶための媒質としてはたらく主な賦形剤は、通常は媒体と呼ぶ。賦形剤は、例えば、粉末流動性または非接着性を促進することなどにより、活性物質の取り扱いを補助するため、ならびに予想される貯蔵寿命の間の変性または凝集の防止などの、インビトロでの安定性を補助するために、製造工程において用いてもよい。賦形剤の適切性は、典型的には、投与経路、剤形、活性成分、ならびに他の因子に応じて変動することになる。
【0065】
「水和物」なる用語は、化合物に対する修飾語句として用いられる場合、化合物が、化合物の固体形態などの、各化合物分子に結合した、1つ未満(例えば、半水和物)、1つ(例えば、1水和物)、または複数(例えば、2水和物)の水分子を有することを意味する。
【0066】
本明細書において用いられる「IC50」なる用語は、得られる最大の反応の50%である阻害用量を意味する。この定量的尺度は、所与の生物学的、生化学的または化学的工程(または工程の成分、すなわち、酵素、細胞、細胞受容体または微生物)を半分だけ阻害するために、どれだけの特定の薬物または他の物質(阻害剤)が必要かを示す。
【0067】
第一の化合物の「異性体」は、各分子が第一の化合物と同じ構成原子を含むが、それらの原子の三次元の配置が異なる、別の化合物である。
【0068】
本明細書において用いられる「患者」または「対象」なる用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそのトランスジェニック種などの、生きている哺乳生物を意味する。一定の態様において、患者または対象は霊長類である。ヒト患者の非限定例は、成人、少年、乳児および胎児である。
【0069】
本明細書において一般に用いられる「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に相応の、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織、器官、および/または体液と接触して用いるのに適した、化合物、材料、組成物、および/または剤形を意味する。
【0070】
「薬学的に許容される塩」は、上で定義されるとおり、薬学的に許容され、かつ所望の薬理活性を有する、本明細書に開示される化合物の塩を意味する。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などの無機酸と;または1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ-およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、tert-ブチル酢酸、およびトリメチル酢酸などの有機酸と形成される酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応可能な場合に形成され得る、塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、およびN-メチルグルカミンなどが含まれる。本開示の任意の塩の一部を形成している特定のアニオンまたはカチオンは、塩が全体として薬理学的に許容される限り、重要ではないことが理解されるべきである。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製法および使用法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002)に提示されている。
【0071】
「薬学的に許容される担体」、「薬物担体」、または単に「担体」は、化学物質を担持、送達および/または輸送することに関与する、活性成分薬剤と共に製剤される、薬学的に許容される物質である。薬物担体は、例えば、薬物のバイオアベイラビリティを調節する、薬物代謝を低下させる、および/または薬物毒性を低減するための制御放出技術を含む、薬物の送達および有効性を改善するために用いてもよい。いくつかの薬物担体は、特定の標的部位への薬物送達の有効性を高め得る。担体の例には、リポソーム、ミクロスフェア(例えば、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)でできている)、アルブミンミクロスフェア、合成ポリマー、ナノファイバー、タンパク質-DNA複合体、タンパク質結合体、赤血球、ビロソーム、およびデンドリマーが含まれる。
【0072】
「薬学的薬物」(薬品、薬学的調製物、薬学的組成物、薬学的製剤、薬学的製品、薬用製品、薬剤、医薬品、薬、または単に薬物、作用物質、もしくは調製物とも呼ぶ)は、薬学的活性成分(API)(上で定義)を含み、かつ、賦形剤(上で定義)とも呼ばれる1つまたは複数の不活性成分を任意で含有する、疾患を診断、治癒、処置、または予防するために用いる組成物である。
【0073】
「予防」または「予防すること」には:(1)疾患のリスクが高い、および/もしくは素因を有し得るが、疾患の任意の、もしくはすべての病態もしくは総体症状をまだ経験もしくは提示していない、対象もしくは患者における疾患の発症を阻害すること、ならびに/または(2)疾患のリスクが高い、および/もしくは素因を有し得るが、疾患の任意の、もしくはすべての病態もしくは総体症状をまだ経験もしくは提示していない、対象もしくは患者における疾患の病態もしくは総体症状の発症を遅延させることが含まれる。
【0074】
「プロドラッグ」は、インビボで本開示の阻害剤へと代謝的に変換可能な化合物を意味する。プロドラッグ自体も所与の標的タンパク質に関して活性を有しても、有しなくてもよい。例えば、ヒドロキシ基を含む化合物を、インビボでヒドロキシ化合物へと加水分解によって変換されるエステルとして投与してもよい。インビボでヒドロキシ化合物へと変換され得る適切なエステルの非限定例には、酢酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステル、リン酸エステル、酒石酸エステル、マロン酸エステル、シュウ酸エステル、サリチル酸エステル、プロピオン酸エステル、コハク酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、メチレン-ビス-β-ヒドロキシナフトエ酸エステル、ゲンチジン酸エステル、イセチオン酸エステル、ジ-p-トルオイル酒石酸エステル、メタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、シクロヘキシルスルファミン酸エステル、キナ酸エステル、およびアミノ酸のエステルが含まれる。同様に、アミン基を含む化合物を、インビボでアミン化合物へと加水分解によって変換されるアミドとして投与してもよい。
【0075】
「立体異性体」または「光学異性体」は、同じ原子が同じ他の原子に結合しているが、それらの原子の三次元の配置が異なる、所与の化合物の異性体である。「鏡像異性体」は、左右の手のような、互いに鏡像である、所与の化合物の立体異性体である。「ジアステレオマー」は、鏡像異性体ではない、所与の化合物の立体異性体である。キラル分子は、立体中心またはステレオジェン中心とも呼ぶキラル中心を含み、これは任意の2つの基の交換が立体異性体につながるような基を有する分子における任意の点であるが、必ずしも原子ではない。有機化合物において、キラル中心は典型的には炭素、リンまたは硫黄原子であるが、有機および無機化合物において他の原子が立体中心であることも可能である。分子は複数の立体中心を有して、多くの立体異性体を生じることもできる。その立体異性が四面体ステレオジェン中心(例えば、四面体炭素)による化合物において、仮説上可能な立体異性体の総数は2nを越えず、ここでnは四面体立体中心の数である。対称性を有する分子は多くの場合、可能な最大数よりも少ない立体異性体を有する。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物と呼ぶ。または、鏡像異性体の混合物は、1つの鏡像異性体が50%よりも多い量で存在するように、鏡像異性的に濃縮され得る。典型的には、鏡像異性体および/またはジアステレオマーは、当技術分野において公知の技術を用いて分割または分離することができる。立体化学が定義されていないキラリティーの任意の立体中心または軸について、キラリティーのその立体中心または軸はそのR型、S型、またはラセミおよび非ラセミ混合物を含むRおよびS型の混合物として存在し得ることが企図される。本明細書において用いられる「実質的に他の立体異性体を含まない」なる語句は、組成物が≦15%、より好ましくは≦10%、さらにより好ましくは≦5%、または最も好ましくは≦1%の別の立体異性体を含むことを意味する。
【0076】
「処置」または「処置すること」には、(1)疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患を阻害する(例えば、病態および/または総体症状のさらなる発生を停止する)こと、(2)疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患を改善する(例えば、病態および/または総体症状を逆転する)こと、および/または(3)疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患もしくはその症状の任意の測定可能な低減を行うことが含まれる。
【0077】
「単位用量」なる用語は、単回投与で患者へ単回治療有効用量の活性成分を提供するために十分な様式で製剤が調製されているような、化合物または組成物の製剤を指す。使用され得るそのような単位用量製剤としては、単一の錠剤、カプセル剤、もしくは他の経口製剤、または注射器に充填可能な液体もしくは他の注射可能な製剤を含む単一のバイアルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
前述の定義は、参照により本明細書に組み入れられる任意の参照文献における任意の相反する定義に取って代わる。しかし、一定の用語が定義されているという事実は、定義されていない任意の用語が明確ではないことを示すと考えられるべきではない。むしろ、用いられるすべての用語は、当業者であれば範囲を理解し、本開示を実施し得るような用語で本開示を記載すると考えられる。
【0079】
III.オリゴベンズアミドおよび合成方法
本開示は、タンパク質媒介性機能の刺激または阻害のいずれかを導く特異的なタンパク質相互作用を可能にする適当な三次元配向において対応するタンパク質リガンドの本質的官能基を提示する、合成分子を提供する。
【0080】
ペプチド模倣体(ペプチドミメティクスとしても知られる)は、天然ペプチドのペプチド骨格を欠く小分子化合物である。この修飾にもかかわらず、それらは、標的タンパク質に相補的な特徴的三次元パターンにおいて本質的な化学官能基(すなわちファルマコフォア)を提示することで対応する受容体または酵素と相互作用する能力を依然として保持する(Marshall, 1993; Ahn et al., 2002)。これにより、ペプチド模倣体はペプチドの利点(例えば高い効力および選択性、小さい副作用)と小有機分子の利点(例えば高い酵素安定性および経口バイオアベイラビリティ)とを潜在的に併せ持つ。
【0081】
α-ヘリックスを模倣するために、本開示は、構造が強固であり、α-ヘリックスと同様に置換基を配置して配向させる、オリゴベンズアミド足場を提供する。例えば、強固なトリスベンズアミド上での置換は、理想的α-ヘリックスのi位、i+4位およびi+7位に見られるアミノ酸の側鎖に対応する3個の官能基(R2-4)の容易な配置を可能にした。さらに、本発明者らは、標的タンパク質のα-ヘリックスセグメントを表すいくつかのトリスベンズアミドを調製する容易な合成経路を開発した。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2009/0012141号は、種々のオリゴベンズアミド化合物およびその合成方法を開示している。
【0082】
より具体的には、本開示は、2個または3個の置換されていてもよいベンズアミド、いわゆる「ビス」および「トリス」ベンズアミドを含む、例示されるオリゴベンズアミドペプチド模倣化合物を提供する。さらに、エステル結合、チオエステル結合、チオアミド結合、トランス-エチレン結合、エチル結合、メチルオキシ結合、メチルアミノ結合、ヒドロキシエチル結合、カルバメート結合、尿素結合、イミド結合、ヒドラジド結合、アミノオキシ結合、または当業者に公知の他の結合を含む、置換されていてもよいベンズアミドの間の結合は、必要に応じて変動しうる。また、オリゴベンズアミドペプチド模倣化合物はアミノ酸、オリゴペプチド、置換されていてもよいアルキル、または当業者に公知の他の構造に結合しうる。
【0083】
置換ベンズアミド上での置換は一般にベンゼン環上であり、各ベンゼン環の2位、3位、4位、5位または6位上でありうる。置換は各ベンズアミド環上の同一位置においてでもよく、各ベンゼン環上の異なる位置においてでもよい。例えば、置換はエーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合、ならびに炭素-炭素(単、二重および三重)結合を含む化学結合によってベンズアミド環に接続され、置換は置換されていてもよいアルキル基、低級アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、アミノ基、イミノ基、ニトレート基、アルキルアミノ基、ニトロソ基、アリール基、ビアリール基、架橋アリール基、縮合アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルアミノ基、シクロアルキル基、架橋シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル-アルキル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、カルボキサミド基、カルバモイル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ヘテロアリール、複素環、アリール複素環、複素環化合物、アミド、イミド、グアニジノ、ヒドラジド、アミノオキシ、アルコキシアミノ、アルキルアミド、カルボン酸エステル基、チオエーテル基、カルボン酸、ホスホリル基、またはその組み合わせを含む。
【0084】
本開示はまた、少なくとも2個の置換されていてもよいベンズアミドを含み、各置換ベンズアミドがベンゼン環上に1個の置換を有する、オリゴベンズアミドペプチド模倣化合物を提供する。置換は、エーテル結合、チオエーテル結合、アミン結合、アミド結合、カルバメート結合、尿素結合、ならびに炭素-炭素(単、二重および三重)結合を含む化学結合によってオリゴベンズアミドペプチド模倣化合物のベンゼン環に個々に結合している。置換は置換されていてもよいアルキル基、低級アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、アミノ基、イミノ基、ニトレート基、アルキルアミノ基、ニトロソ基、アリール基、ビアリール基、架橋アリール基、縮合アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルアミノ基、シクロアルキル基、架橋シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル-アルキル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、カルボキサミド基、カルバモイル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ヘテロアリール、複素環、アリール複素環、複素環化合物、アミド、イミド、グアニジノ、ヒドラジド、アミノオキシ、アルコキシアミノ、アルキルアミド、カルボン酸エステル基、チオエーテル基、カルボン酸、ホスホリル基、またはその組み合わせを一般に含む。
【0085】
米国特許出願公開第2009/0012141号は、例えばその中の
図2において、本開示のα-ヘリックス模倣化合物を調製するための合成スキームを提供する。その文献における具体例は、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸化合物7から出発し、これをN-Ac保護メチルエステル化合物8に変換することで作製された15個のα-ヘリックス模倣化合物を示す。当業者に公知である種々のアルキルハロゲン化物および塩基(例えばNaOH)を使用して、様々なアルキル基がヒドロキシル基に導入された。アルキル化反応後、塩基(LiOHのような)を使用してメチルエステル化合物9が加水分解され、カップリング試薬(BOPのような)を使用して4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸メチル化合物10が遊離安息香酸にカップリングされて、ヘリックスのi位に対応する1個のアルキル基を含有するベンズアミド化合物11が得られた。オリゴベンズアミド化合物を合成するためにこれらの工程が繰り返された。当業者は、そのような方法の、本明細書に開示される化合物などの他の化合物の合成におけるさらに広範な応用性を理解するであろう。
【0086】
追加のペプチド模倣体ならびにそれらの製造方法はRaj et al., 2017に開示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。当業者は、Raj et al., 2017に開示される合成法が、本開示の化合物を構築するために用いられ得ることを認識する。
【0087】
IV.薬学的製剤および処置方法
A.製剤
別の局面において、そのような処置を必要としている患者への投与のために、薬学的製剤(薬学的調製物、薬学的組成物、薬学的製品、薬用製品、薬剤、医薬品、または薬とも呼ぶ)は、指示された投与経路に適した1つまたは複数の賦形剤および/または薬物担体と共に製剤した、本明細書に開示される化合物の治療的有効量を含む。いくつかの態様において、本明細書に開示される化合物を、ヒトおよび/または動物患者の処置に適した様式で製剤する。いくつかの態様において、製剤は、本明細書に開示される化合物の1つまたは複数を、以下の賦形剤の1つまたは複数と混和または混合することを含む:ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ならびに/またはポリビニルアルコール。いくつかの態様において、例えば、経口投与のために、薬学的製剤を錠剤化またはカプセル化してもよい。いくつかの態様において、化合物を、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または様々な緩衝液中に溶解またはスラリー化してもよい。いくつかの態様において、薬学的製剤を、滅菌などの薬学的操作に供してもよく、かつ/または保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、カプセル化剤、例えば脂質、デンドリマー、ポリマー、タンパク質、例えばアルブミン、核酸、および緩衝剤などの薬物担体および/もしくは賦形剤を含んでもよい。
【0088】
薬学的製剤を、様々な方法、例えば、経口または注射(例えば、皮下、静脈内、および腹腔内)によって投与してもよい。投与経路に応じて、本明細書に開示される化合物を、化合物を酸の作用および化合物を不活化し得る他の自然条件から保護するための材料中でコーティングしてもよい。非経口投与以外で活性化合物を投与するために、化合物を、その不活化を防止するための材料でコーティングする、またはこれと同時投与することが必要であり得る。いくつかの態様において、活性化合物を、適切な担体、例えば、リポソーム、または希釈剤中で患者に投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤には、食塩水および水性緩衝液が含まれる。リポソームには、水中油中水型CGFエマルジョンならびに通常のリポソームが含まれる。
【0089】
本明細書に開示される化合物を、非経口、腹腔内、脊髄内、または脳内に投与してもよい。分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物ならびに油中で調製することができる。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含んでもよい。
【0090】
注射使用に適した薬学的組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌注射溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトールなどの多価アルコールを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長期吸収を、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0091】
本明細書に開示される化合物を、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体と共に、経口投与することができる。化合物および他の成分を、ゼラチン硬カプセルもしくは軟カプセルに封入してもよく、錠剤に圧縮してもよく、または患者の食餌中に直接組み込んでもよい。治療的経口投与のために、本明細書に開示される化合物を、賦形剤と共に組み込んで、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、ウェーハなどの形態で使用してもよい。組成物および調製物中の治療用化合物のパーセンテージは、当然ながら、変動してもよい。そのような薬学的製剤中の治療用化合物の量は、適切な用量が得られるような量である。
【0092】
治療用化合物はまた、皮膚、眼、耳、または粘膜に局所的に投与してもよい。治療用化合物の投与は、局所的に、局所溶液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、フォーム、経皮パッチ、またはチンキ剤としての化合物の製剤を含み得る。治療用化合物が局所投与用に製剤化される場合、化合物は、それが投与される組織を通っての化合物の透過性を増加させる1つまたは複数の薬剤と組み合わされ得る。他の態様において、局所投与を眼へ投与することが企図される。そのような投与は、角膜、結膜、または強膜の表面へ適用され得る。いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、眼の表面への投与は、治療用化合物が眼の後部に達することを可能にすると考えられる。局所眼投与は、溶液、懸濁液、軟膏、ゲル、または乳濁液として製剤化され得る。最後に、局所投与はまた、口の内側などの粘膜への投与を含み得る。そのような投与は、歯、びらん、潰瘍などの粘膜内の特定の場所に直接行うことができる。または、肺への局所送達が望まれる場合、治療用化合物を、乾燥粉末またはエアロゾル製剤中での吸入によって投与してもよい。
【0093】
いくつかの態様において、投与の容易さおよび用量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形に製剤することが有利であり得る。本明細書において用いられる単位剤形は、処置する患者のための単位用量として適した物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の治療用化合物を含む。いくつかの態様において、本開示の単位剤形の明細は(a)治療用化合物の独特の特徴および達成すべき特定の治療効果、および(b)患者における選択された状態の処置のために、そのような治療用化合物を配合する当技術分野において固有の制限によって規定され、それらに直接依存する。いくつかの態様において、活性化合物を、患者の状態に関連する状態を処置するのに十分な治療的有効用量で投与する。例えば、化合物の有効性は、ヒトまたは別の動物における疾患を処置する際の有効性を予測し得る動物モデル系で評価することができる。
【0094】
いくつかの態様において、治療用化合物の有効用量範囲は、様々な異なる動物の動物試験において決定された有効用量から外挿することができる。いくつかの態様において、mg/kgでのヒト等価用量(HED)は、以下の式で計算することができる(例えば、Reagan-Shaw et al., FASEB J., 22(3):659-661, 2008を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる):
HED(mg/kg)=動物用量(mg/kg)×(動物Km/ヒトKm)
【0095】
変換におけるKm因子の使用により、体重だけでなく、体表面積(BSA)に基づく、HED値が得られる。ヒトおよび様々な動物のKm値は周知である。例えば、平均60kgのヒト(1.6m2のBSAを有する)のKmは37であり、一方、20kgの子供(BSAは0.8m2)のKmは25である。いくつかの関連する動物モデルのKmも周知で、以下のとおりである:マウスのKmは3(体重0.02kgおよびBSA 0.007と仮定);ハムスターのKmは5(体重0.08kgおよびBSA 0.02と仮定);ラットのKmは6(体重0.15kgおよびBSA 0.025と仮定)およびサルのKmは12(体重3kgおよびBSA 0.24と仮定)。
【0096】
治療組成物の正確な量は、医師の判断に依存し、各個人に特有である。それにもかかわらず、計算されたHED用量は一般的な指標を提供する。用量に影響を及ぼす他の因子には、患者の身体および臨床状態、投与経路、処置の意図される目標、ならびに特定の治療製剤の効力、安定性および毒性が含まれる。
【0097】
患者に投与する本開示の化合物または本開示の化合物を含む組成物の実際の投薬量は、処置する動物の種類、年齢、性別、体重、状態の重症度、処置中の疾患の種類、以前のまたは併用の治療的介入、患者の特発疾患、および投与経路などの身体的および生理的因子によって決定してもよい。これらの因子は当業者が決定してもよい。投与の責任を負う医師は、典型的には、組成物中の活性成分の濃度および個々の患者に対する適切な用量を決定することになる。用量は、任意の合併症がある場合、個々の医師によって調節してもよい。
【0098】
いくつかの態様において、治療的有効量は、典型的には、1日または数日間、1日に1つまたは複数の用量投与にて、約0.001mg/kg~約1000mg/kg、約0.01mg/kg~約750mg/kg、約100mg/kg~約500mg/kg、約1mg/kg~約250mg/kg、約10mg/kg~約150mg/kgで変動する(当然ながら、投与の様式および上記の因子に応じて)。他の適切な用量範囲には、1日あたり1mg~10,000mg、1日あたり100mg~10,000mg、1日あたり500mg~10,000mg、および1日あたり500mg~1,000mgが含まれる。いくつかの特定の態様において、量は、1日あたり10,000mg未満で1日あたり750mg~9,000mgの範囲である。
【0099】
いくつかの態様において、薬学的製剤中の活性化合物の量は、約2~約75重量%である。これらの態様のいくつかにおいて、量は約25~約60重量%である。
【0100】
薬剤の1回または複数回の投与が企図される。複数回投与の送達のための望まれる時間間隔は、日常的な実験だけを用いて、当業者によって決定することができる。一例として、患者に約12時間間隔で1日2回投与してもよい。いくつかの態様において、薬剤を1日に1回投与する。
【0101】
薬剤は、日常的計画で投与してもよい。本明細書において用いられる日常的計画は、所定の指定された期間を指す。日常的計画は、計画があらかじめ決められている限り、長さが同一であるか、または異なる期間を含んでもよい。例えば、日常的計画は、1日2回、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、週単位、月単位、またはその間の任意の数日もしくは数週間の投与を含んでもよい。または、所定の日常的計画は、1週間目に1日2回と、続いて数ヶ月間の毎日の投与などを含んでもよい。他の態様において、本開示は、薬剤を経口で摂取してもよく、そのタイミングは食物摂取に依存するか、または依存しないことを提供する。したがって、例えば、患者が食後であるか、または食前であるかにかかわらず、薬剤を毎朝および/または毎夕摂取することができる。
【0102】
B.乳がん
乳がんとは、乳房組織に由来し、乳管の裏層、または乳管に乳を供給する小葉に最も一般的に由来する、がんを意味する。乳管に由来するがんは乳管がんとして知られ、小葉に由来するがんは小葉がんとして知られる。異なる病期(拡散)、侵攻性および遺伝学的体質によって多くの異なる種類の乳がんが存在し、生存率はこれらの要因に応じて大きく変動する。生存率を予測するためにコンピュータ処理モデルが利用可能である。最善の処置によって、かつ病期決定に応じて、10年無病生存率は98%から10%まで変動する。処置としては手術、薬物(ホルモン療法および化学療法)、ならびに放射線照射が挙げられる。
【0103】
世界的に、乳がんは女性の全がん発生件数の10.4%を構成し、2番目に一般的な種類の非皮膚がん(胃がんに次いで)、および5番目に一般的ながん死の原因となっている。2004年には、乳がんは世界中で519,000件の死亡を引き起こした(がん死の7%、全死亡の約1%)。乳がんは男性よりも女性において約100倍一般的であるが、男性は診断の遅延が理由で比較的不良な予後を示す傾向がある。
【0104】
一部の乳がんは成長にホルモンであるエストロゲンおよびプロゲステロンが必要であり、それらのホルモンの受容体を有する。手術後、それらのがんは、それらのホルモンに干渉する薬物、通常はタモキシフェン、および卵巣または他の場所におけるエストロゲンの産生を遮断する薬物で処置され、これは卵巣を損傷し、受胎能を終了させることがある。手術後、低リスクのホルモン感受性乳がんをホルモン療法および放射線照射のみで処置することができる。ホルモン受容体のない乳がん、または腋窩中のリンパ節に拡散した乳がん、または特定の遺伝学的特性を発現させる乳がんは比較的危険性が高く、より侵襲的に処置される。米国において一般的である1つの標準的レジメンは、CAとして知られるシクロホスファミド+ドキソルビシン(アドリアマイシン)であり、これらの薬物はがん中のDNAを損傷するが、急速に成長する正常細胞中のDNAも損傷して、重大副作用を引き起こす。時々ドセタキセルなどのタキサン薬が加えられ、したがってこのレジームはCATとして知られる。タキサンはがん細胞中の微小管を攻撃する。欧州において一般的な同等の処置はシクロホスファミド、メトトレキサートおよびフルオロウラシル(CMF)である。トラスツズマブ(ハーセプチン)などのモノクローナル抗体は、HER2変異を有するがん細胞に使用される。手術によって見逃されたがん細胞を制御するために放射線が手術台に通常は印加され、これにより生存が通常は延長されるが、心臓への放射線曝露が後年に損傷および心不全を引き起こすことがある。
【0105】
スクリーニング技術(以下でさらに論じる)はがんの可能性を決定する上で有用であるが、スクリーニングで検出された塊が、単純な嚢胞などの良性の代替物とは逆にがんであるか否かを確認するには、さらなる検査が必要である。
【0106】
臨床設定において、乳がんは、臨床的乳房検査(訓練された医師による乳房検査)、マンモグラフィーおよび穿刺吸引細胞診の「三重検査」を使用して一般的に診断される。スクリーニングにも使用されるマンモグラフィーおよび臨床的乳房検査はいずれも、塊ががんであることのおおよその可能性を示すことができ、任意の他の病変を同定することもできる。穿刺吸引細胞診(FNAC)は、必要であればドクターズオフィスにおいて局所麻酔を使用して行うことがあり、塊からわずかな体液を抽出しようとすることを包含する。透明な体液であれば塊ががんである可能性は非常に低くなるが、血性の体液であれば顕微鏡下でのがん細胞の検査に送られることがある。これら3つの手段を一緒に使用することで良好な精度で乳がんを診断することができる。
【0107】
生検の他の選択肢としては、乳房の塊の一部が除去されるコア生検、および塊全体が除去される摘出生検が挙げられる。
【0108】
さらに、真空補助下乳房生検(VAB)は、女性のマンモグラフィーで検出された乳房病変を有する患者において系統的レビューに従って乳がんを診断することに役立ちうる。この研究において、乳がんの診断における真空補助下乳房生検の概略推定値は以下の通りであった。感度は98.1%(95% CI=0.972~0.987)であり、特異度は100%(95% CI=0.997~0.999)であった。しかし、異型乳管過形成(ADH)および非浸潤性乳管がん(DCIS)の過小評価率はそれぞれ20.9%(95% CI=0.177~0.245)および11.2%(95% CI=0.098~0.128)であった。
【0109】
乳がんスクリーニングとは、比較的早期の診断を実現する目的で、乳がんでなければ健康である女性を乳がんについて検査することを意味する。早期検出が予後を改善すると仮定される。臨床的乳房検査および乳房自己検査、マンモグラフィー、遺伝学的スクリーニング、超音波、および磁気共鳴画像診断を含むいくつかのスクリーニング検査が使用されている。
【0110】
臨床的乳房検査または乳房自己検査は、塊または他の異常について乳房を触診することを包含する。塊は、発見されるほど大きくなる時までに数年間をかけて成長していた可能性が高く、すぐに検査なしで発見されるほど大きくなるであろうことから、研究の証拠は、いずれかの種類の乳房検査の有効性を裏付けるものではない。乳がんのマンモグラフィースクリーニングは、任意の特徴的ではない腫瘤または塊について乳房を検査するためにX線を使用する。高リスクの女性、例えばがんの強力な家族歴を有する女性において、マンモグラフィースクリーニングが比較的若い年齢で推奨されており、さらなる検査としては、BRCA遺伝子について検査する遺伝学的スクリーニング、および/または磁気共鳴画像診断を挙げることができる。
【0111】
時々、乳がんは最初に手術で、次に化学療法、放射線照射またはその両方で処置される。処置は、予後および再発危険性に従って侵襲性を増大させて行われる。ステージ1のがん(およびDCIS)は優れた予後を示し、化学療法または放射線照射ありまたはなしで腫瘤摘出術で一般に処置される。しかし、侵攻性のHER2+がんはトラスツズマブ(ハーセプチン)レジームでも処置すべきである。進行性のより不良な予後、およびより大きな再発危険性を伴うステージ2および3のがんは、外科手術(リンパ節除去ありまたはなしの腫瘤摘出術または乳房切除術)、放射線照射(時々)、および化学療法(HER2+がんではトラスツズマブを追加)で一般に処置される。ステージ4の転移性がん(すなわち遠方部位に拡散)は治癒可能ではなく、手術、放射線照射、化学療法および標的化治療からのすべての処置の様々な組み合わせによって管理される。これらの処置はステージ4の乳がんの生存期間中央値を約6ヶ月増大させる。
【0112】
C.卵巣がん
卵巣がんは、卵巣の異なった部分から生じるがん性成長である。大部分(90%超)の卵巣がんは「上皮性」として分類されており、卵巣の表面(上皮)から生じると考えられた。しかし、最近の証拠は、卵管も一部の卵巣がんの源となる可能性があることを示唆している。卵巣および卵管が互いに密接に関連していることから、これらの細胞が卵巣がんを模倣しうると仮定される。他の種類は卵細胞(胚細胞腫瘍)または支持細胞(性索/間質)から生じる。
【0113】
2004年に、米国では25,580件の新たな症例が診断され、16,090名の女性が卵巣がんで死亡した。危険性は年齢によって増大し、妊娠によって減少する。寿命リスクは約1.6%であるが、罹患した第一度近親者がいる女性は5%の危険性を有する。変異BRCA1またはBRCA2遺伝子を有する女性は特定の変異に応じて25%~60%の危険性を有する。卵巣がんは、女性におけるがんによる死亡の第5位の原因であり、婦人科がんによる死亡の第1位の原因である。
【0114】
卵巣がんは非特異的症状を引き起こす。ステージIおよびIIのがんがステージIIIおよびIVのがんに進行すると仮定すると(但しこれは証明されていない)、早期の診断がより良い生存率をもたらすと考えられる。卵巣がんを有する大部分の女性は、1つまたは複数の症状、例えば、腹痛または腹部不快感、腹部腫瘤、腹部膨満、背痛、尿意切迫、便秘、疲労および一連の他の非特異的症状、ならびに骨盤痛、異常膣出血または不随意の体重減少などのより特異的な症状を報告している。腹腔内での体液の蓄積(腹水症)がありうる。
【0115】
卵巣がんの診断は身体所見検査(内診を含む)、血液検査(CA-125および時々他のマーカーについて)および経膣的超音波検査で開始する。診断は、腹腔を検査し、生検材料(顕微鏡分析用の組織試料)を採取しかつ腹部体液中のがん細胞を探すために、手術によって確認しなければならない。通常、処置は化学療法および手術、ならびに時々放射線療法を包含する。
【0116】
大部分の場合、卵巣がんの原因は不明のままである。比較的高年齢の女性、およびこの疾患を有する第一度または第二度近親者がいる女性は、増大した危険性を示す。遺伝性の形態の卵巣がんは、特定の遺伝子(最も特筆すべきはBRCA1およびBRCA2であるが、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がんの遺伝子も)の変異によって引き起こされうる。不妊の女性、ならびに子宮内膜症と呼ばれる状態を有する女性、一度も妊娠したことのない女性、および閉経後エストロゲン補充療法を使用している女性は増大したリスク下にある。併用経口避妊薬の使用は防御因子となる。また、卵管が外科的に遮断された(卵管結紮)女性においても危険性は比較的低い。
【0117】
卵巣がんは、病理報告において得られる腫瘍の組織診に従って分類される。組織診は、臨床処置、管理および予後の多くの局面を決定する。卵巣上皮がんとしても知られる表層上皮性・間質性腫瘍は、最も一般的な種類の卵巣がんである。それは漿液性腫瘍、子宮内膜性腫瘍および粘液性嚢胞腺がんを含む。エストロゲンを産生する顆粒膜細胞腫瘍および男性化するセルトリ・ライディッヒ細胞腫瘍または男性化細胞腫を含む性索間質腫瘍は卵巣がんの8%を占める。胚細胞腫瘍は卵巣腫瘍の約30%を占めるが卵巣がんのわずか5%しか占めない。というのも、大部分の胚細胞腫瘍が奇形腫であり、大部分の奇形腫が良性である(奇形腫を参照)ためである。胚細胞腫瘍は若い女性および少女において起こる傾向がある。予後は胚細胞腫瘍の特定の組織診に依存するが、全体的に好ましい。混合腫瘍は、腫瘍組織診の上記クラスの1つを超える要素を含む。
【0118】
卵巣がんは、体内の他の場所の原発性がんからの転移の結果である二次がんでもありうる。卵巣がんの7パーセントは転移によるものであり、一方、残りは原発性がんである。一般的な原発性がんは乳がんおよび胃腸がんである(一般的な誤りは、任意の胃腸がんからのすべての腹膜転移をクルーケンベルクがんと名づけることであるが、これは原発性胃がんに由来する場合にしか当てはまらない)。表層上皮性・間質性腫瘍は腹膜(腹腔の裏層)に由来しうるものであり、この場合、卵巣がんは原発性腹膜がんに二次的であるが、処置は、腹膜を包含する原発性表層上皮性・間質性腫瘍と基本的には同一である。
【0119】
卵巣がんの病期決定はFIGO病期決定システムによるものであり、手術後に得られる情報を使用し、手術は腹式子宮全摘術、(通常は)両方の卵巣および卵管、(通常は)大網の除去、ならびに細胞病理向けの骨盤(腹膜)洗浄を含みうる。AJCC病期はFIGO病期と同一である。AJCC病期決定システムは、原発性腫瘍の程度(T)、近傍のリンパ節への転移の非存在または存在(N)、および遠隔転移の非存在または存在(M)を記述する。
【0120】
AJCC/TNM病期決定システムは卵巣がんの3つのカテゴリーT、NおよびMを含む。Tカテゴリーは3つの他のサブカテゴリーT1、T2およびT3を含み、それぞれ腫瘍が発生した場所(卵巣の一方または両方、卵巣の内側または外側)に従って分類されている。卵巣がんのT1カテゴリーは、卵巣に限局されていて卵巣の一方または両方を冒しうる卵巣腫瘍を記述する。サブサブカテゴリーT1aは、一方の卵巣にのみ見られ、被膜が無事なままであり、骨盤から採取される体液には見ることができないがんを病期決定するために使用される。被膜を冒しておらず、卵巣の内側に限局されており、骨盤から採取される体液には見ることができないが両方の卵巣に影響しているがんをT1bと病期決定する。T1cカテゴリーは、一方または両方の卵巣を冒しうるものであって、卵巣の被膜を通じて成長しているかまたは骨盤から採取される体液に存在している、腫瘍の種類を記述する。T2はより進行した病期のがんである。この場合、腫瘍は一方または両方の卵巣中で成長しており、子宮、卵管または他の骨盤組織に拡散している。ステージT2aは、子宮もしくは卵管(またはその両方)に拡散しているが、骨盤から採取される体液には存在しないがん性腫瘍を記述するために使用される。ステージT2bおよびT2cは、子宮および卵管以外の骨盤組織に転移していて、骨盤から採取される体液に見ることができないがん、ならびに、骨盤組織のいずれか(子宮および卵管を含む)に拡散しているだけでなく、骨盤から採取される体液にも見ることができる腫瘍をそれぞれ示す。T3は、腹膜に拡散したがんを記述するために使用される病期である。この病期は、転移性腫瘍(身体の他の区域に位置するが卵巣がんによって引き起こされる腫瘍)のサイズに関する情報を与える。これらの腫瘍は非常に小さいことがあり、顕微鏡下でのみ見えることがあり(T3a)、見えるが2センチメートル以下の大きさであることがあり(T3b)、2センチメートルよりも大きいことがある(T3c)。
【0121】
この病期決定システムは、近傍のリンパ節に転移したかまたは転移していないがんを記述するNカテゴリーも使用する。Nカテゴリーは2つしかなく、N0は、がん性腫瘍がリンパ節を冒していないことを示し、N1は、腫瘍に近いリンパ節の関与を示す。AJCC/TNM病期決定システムのMカテゴリーは、卵巣がんが肝臓または肺などの遠隔臓器に転移したか否かに関する情報を与える。M0は、がんが遠隔臓器に拡散しなかったことを示し、M1カテゴリーは、身体の他の臓器に拡散したがんについて使用される。AJCC/TNM病期決定システムは、TxおよびNxサブカテゴリーも含み、これらは、不十分なデータが理由で腫瘍の程度を記述することができないこと、および、同じ理由でリンパ節の関与を記述することができないことをそれぞれ示す。
【0122】
卵巣がんも、任意の他の種類のがんと同様に、病期決定以外に悪性度決定が行われる。腫瘍の組織学的悪性度は、その細胞が顕微鏡下でどの程度異常または悪性に見えるかの尺度となる。がんが拡散する可能性を示す4つの悪性度が存在し、悪性度が高くなるほどこれが起こる可能性が高くなる。グレード0は、非浸潤腫瘍を記述するために使用される。グレード0がんは境界悪性腫瘍とも呼ばれる。グレード1腫瘍は、高分化型である(正常組織に非常に類似して見える)細胞を有しており、最良の予後を示す腫瘍である。グレード2腫瘍は中分化型とも呼ばれており、正常組織に類似した細胞で構成されている。グレード3腫瘍は、最悪の予後を示し、それらの細胞は異常であり、低分化型と呼ばれる。
【0123】
卵巣がんの徴候および症状は大部分の時点で存在しないが、それらは存在する場合、非特異的である。大部分の場合、患者が診断を受けるまで症状は数ヶ月間持続する。
【0124】
プライマリーケアクリニックを訪問した1,709名の女性の前向き症例対照研究は、腹部膨満、腹部サイズ増大および尿症状の組み合わせが卵巣がんを有する女性の43%に見られたが、プライマリーケアクリニックを訪問した女性では8%にしか見られなかったことを発見した。
【0125】
通常、正確な原因は不明である。卵巣がんを発生させる危険性はいくつかの要因に影響されるようである。女性が産んだ子供の数が多いほど、卵巣がんの危険性は低下する。また、低年齢の初回妊娠、比較的高年齢の最終妊娠、および低用量のホルモン避妊薬の使用が防御効果を示すことがわかった。卵巣がんは卵管結紮後の女性において減少する。
【0126】
経口避妊薬の使用と卵巣がんとの間の関係は、45件の症例対照研究および前向き研究の結果の概要に示された。累積的に、これらの研究は卵巣がんの防御効果を示す。経口避妊薬を10年間使用した女性は卵巣がんの危険性の約60%の減少を示した(大きな研究サイズを考慮して統計的に有意な信頼区間でリスク比は0.42であり、予想通りであった)。これは、250名の女性が経口避妊薬を10年間服用する場合、1件の卵巣がんが予防されることを意味する。この研究は、この主題に関してこれまで最大の疫学的研究である(45件の研究、卵巣がんを有する20,000名超の女性、および約80,000名の対照)。
【0127】
クエン酸クロミフェンなどの妊娠促進薬の使用との関連は問題になっている。1991年の分析は、薬物の使用が卵巣がんの危険性を増大させる可能性を提起した。それ以後、いくつかのコホート研究および症例対照研究が行われたが、そのような関連の決定的な証拠は示されなかった。不妊集団の出産歴が「正常な」集団と異なることから、それは複雑な研究トピックのままである。
【0128】
一部の女性において遺伝学的因子が重要であるという格好の証拠がある。BRCA1またはBRCA2遺伝子の特定の変異の保有者は特に危険性がある。BRCA1およびBRCA2遺伝子は卵巣がんの5%~13%を占め、特定の集団(例えばアシュケナージ系ユダヤ人女性)は、しばしば一般的な集団よりも早期の年齢で乳がんと卵巣がんとの両方の高い危険性がある。乳がんの個人歴または乳がんおよび/もしくは卵巣がんの家族歴を有する患者は、特に若い年齢で診断を受けた場合、高い危険性を示すことがある。
【0129】
子宮がん、結腸がんまたは他の胃腸がんの強力な家族歴は、卵巣がんを発生させる比較的高いリスクをもたらす、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がんとして知られる症候群(HNPCC、リンチ症候群としても知られる)の存在を示すことがある。卵巣がんの強力な遺伝学的危険性を有する患者は、出産の完了後に予防的、すなわち防止的卵巣摘除術の使用を検討することがある。International Cancer Genome Consortiumのメンバーであるオーストラリアは、卵巣がんの全ゲノムをマッピングする試みを主導している。
【0130】
早期(I/II)の卵巣がんは、拡散して後期(III/IV)に進行するまでは診断困難である。これは、大部分の症状が非特異的であり、したがって診断にほとんど役に立たないためである。
【0131】
卵巣悪性腫瘍が診断可能なもののリストに含まれる場合、限られた数の臨床検査が指示される。全血球算定(CBC)および血清電解質検査をすべての患者において行うべきである。
【0132】
血清BHCGレベルを、妊娠の可能性があるあらゆる女性において測定すべきである。さらに、血清α-フェトプロテイン(AFP)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を、卵巣腫瘍が疑われる少女および思春期女性において測定すべきである。というのも、患者が若いほど悪性胚細胞腫瘍の可能性が高くなるためである。
【0133】
CA-125と呼ばれる血液検査が鑑別診断および疾患の経過観察に有用であるが、その許容不能な低感度および低特異度が理由で、早期卵巣がんをスクリーニングする有効な方法であることがそれ自体では示されなかった。しかし、これが現在利用可能である唯一の広く使用されているマーカーである。
【0134】
現在の研究は、精度を向上させるために腫瘍マーカーのプロテオミクスと疾患の他の指標(すなわち放射線学および/または症状)とを組み合わせる方法を検討している。そのようなアプローチの課題は、卵巣がんの非常に低い集団有病率が、非常に高い感度および特異度で検査しても依然としていくつかの偽陽性結果につながる(すなわち、がんが手術中に見つからない外科手技が行われる)ことを意味するということである。しかし、プロテオミクスの寄与は依然として初期段階にあり、さらなる洗練が必要である。プロテオミクスに関する現在の研究は、個人に合わせての治療に向けてのパラダイムシフトの始まりを表している。
【0135】
内診、ならびにCTスキャンおよび経膣的超音波検査を含む画像診断が必須である。身体所見検査は、腹囲および/または腹水(腹腔内の体液)の増大を明らかにすることがある。内診は卵巣腫瘤または腹部腫瘤を明らかにすることがある。内診は、卵巣のより良好な触診のための直腸膣コンポーネントを含みうる。非常に若い患者では、磁気共鳴画像診断が直腸診および膣内診よりも好まれることがある。
【0136】
卵巣がんを決定的に診断するには、腹部内を調べる外科手技が必要である。これは開放性手技(開腹、腹壁を通じた切開)または鍵穴手術(腹腔鏡検査)でありうる。この手技の間、疑わしい区域は除去され、顕微鏡分析に送られる。腹腔からの体液もがん細胞について分析されることがある。がんが存在する場合、この手技はその拡散を決定することもある(腫瘍病期決定の一形態である)。
【0137】
子供を産んだことがある女性は子供を産んだことがない女性よりも卵巣がんを発生させる可能性が低く、また、母乳栄養は特定の種類の卵巣がんの危険性を減少させることがある。卵管結紮および子宮摘出術は危険性を減少させ、両卵管および卵巣の除去(両側卵管卵巣摘除術)は卵巣がんだけでなく乳がんの危険性も劇的に減少させる。5年間以上の経口避妊薬(受胎調節ピル)の使用は、後年の人生での卵巣がんの危険性を50%減少させる。
【0138】
卵管結紮は、卵巣がんを発生させる可能性を最大67%減少させると考えられ、一方、子宮摘出術は、卵巣がんを得る危険性を約3分の1減少させうる。さらに、いくつかの研究によれば、アセトアミノフェンおよびアスピリンなどの鎮痛薬は、卵巣がんを発生させる危険性を減少させるようである。しかし、情報は一貫しておらず、この問題についてさらなる研究を続ける必要がある。
【0139】
卵巣がんに関する女性の日常的スクリーニングはどの専門医協会も推奨しておらず、この専門医協会としてはU.S. Preventive Services Task Force、American Cancer Society、American College of Obstetricians and GynecologistsおよびNational Comprehensive Cancer Networkが挙げられる。これは、スクリーニングを経た女性について生存率の改善を示した試みがないためである。任意の種類のがんのスクリーニングは、正確かつ信頼できるものでなければならず、すなわち、その疾患を正確に検出する必要があり、がんを有さない人々において偽陽性結果を示してはならない。これまで、これらの基準を満たすことがわかった卵巣スクリーニングの技術は存在しない。しかし、英国などの数ヶ国において、卵巣がんの危険性の増大を示す可能性が高い女性(例えばこの疾患の家族歴を有する場合)に医師を通じて個人的スクリーニングを提案されることがあるが、これは早期にこの疾患を必ずしも検出するものではない。
【0140】
研究者は、卵巣がんをスクリーニングする異なる方法を評価している。日常的スクリーニングに単独または併用で潜在的に使用される可能性があるスクリーニング検査としてはCA-125マーカーおよび経膣的超音波検査が挙げられる。医師は女性の血液中のCA-125タンパク質のレベルを測定することができる。高レベルは卵巣がんの徴候である可能性があるが、これは必ずしもそうではない。また、卵巣がんを有するすべての女性が高CA-125レベルを有するわけではない。経膣的超音波検査は、超音波プローブを使用して膣の内側から卵巣をスキャンすることで、腹部をスキャンするよりも明らかな画像を与えることを包含する。UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screeningは、CA-125血液検査と経膣的超音波検査とを併用するスクリーニング技術を検査中である。
【0141】
スクリーニングの目的は、成功裏に処置される可能性が高くなる早期に卵巣がんを診断することにある。しかし、この疾患の発生は完全には理解されておらず、早期がんが必ずしも後期疾患に発達しないことがあると主張されている。どのスクリーニング技術でも慎重に考慮する必要がある危険性および利点が存在し、医療当局は、任意の卵巣がんスクリーニングプログラムを紹介する前にこれらを評価する必要がある。
【0142】
卵巣がんスクリーニングの目標は、ステージIでこの疾患を検出することにある。いくつかの大きな研究が進行中であるが、どの研究も有効な技術を同定していない。しかし2009年に、UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening(UKCTOCS)による初期結果は、年1回のCA-125検査と超音波画像診断とを併用する技術が早期にこの疾患を検出することに役立つことを示した。しかし、このアプローチが実際に生命を救うことに役立つか否かはまだ明らかではない。この試みの最終結果は2015年に公開される見込みである。
【0143】
外科的処置は、高分化型であって卵巣に限局されている悪性腫瘍には十分でありうる。卵巣に限局されるより侵攻性の高い腫瘍には化学療法の追加が必要になることがある。進行した疾患を有する患者には、外科的縮小と併用化学療法レジメンとの併用が標準的である。境界悪性腫瘍は、卵巣の外側への拡散後であっても、手術で十分に管理され、化学療法は有用であるとは見なされない。
【0144】
手術は好ましい処置であり、鑑別診断用の組織検体をその組織診を経由して得るためにしばしば必要である。通常、婦人科腫瘍専門医が行う手術は、改善された結果をもたらす。生存率の改善は、一般的婦人科医および一般的外科医に比べて、婦人科腫瘍専門医によるこの疾患の病期決定が正確であること、および腹部内の腫瘍の侵襲的な外科的切除の速度が速いことに起因する。
【0145】
手術の種類は、診断した際にがんがどの程度拡散しているか(がん病期)、ならびに推定されるがんの種類および悪性度に依存する。外科医は一方の卵巣(一側卵巣摘除術)または両方の卵巣(両側卵巣摘除術)、卵管(卵管摘除術)および子宮(子宮摘出術)を除去することがある。いくつかの非常に早期の腫瘍(ステージ1、低悪性度または低リスクの疾患)では、特に受胎能を保存したいと望む若い女性において、関与する卵巣および卵管のみが除去される(「一側卵管卵巣摘除術」USOと呼ばれる)。
【0146】
完全な切除が実行可能ではない進行悪性腫瘍において、できるだけ多くの腫瘍が除去される(減量手術)。この種類の手術が成功する(すなわち、直径1cm未満の腫瘍が残る[「最適減量」])場合、予後は、大きな腫瘤(直径1cm超)が残る患者に比べて改善している。最小限に侵襲的な外科手技は、手術の合併症をより少なくしながら非常に大きな(10cm超)腫瘍の安全な除去を促進することができる。
【0147】
化学療法は数十年間、卵巣がんの一般的標準治療となっているが、プロトコールが非常に変わりやすい。適切であれば、化学療法は、手術後に任意の残りの疾患を処置するために使用される。これは腫瘍の組織診に依存するものであり、いくつかの種類の腫瘍(特に奇形種)は化学療法に感受性がない。いくつかの場合、最初に化学療法を、続いて手術を行う理由があることがある。
【0148】
成功した最適減量を受けたステージIIIC上皮性卵巣腺がんを有する患者について、最近の臨床治験は、生存期間中央値が腹腔内(IP)化学療法を受けた患者において著しく長いことを示した。この治験の患者はIP化学療法に対する比較的低い遵守を報告し、患者の半数未満がIP化学療法の全6つのサイクルを受けた。この高い「脱落」率にもかかわらず、群全体(IP化学療法処置を完了しなかった患者を含む)は、静脈内化学療法を単独で受けた患者よりも平均的に長く生存した。
【0149】
一部の専門医は、IP化学療法の毒性および他の合併症が、現在開発中の改善されたIV化学療法薬では不要になると考えている。
【0150】
IP化学療法は卵巣がんの第一選択処置の標準治療として推奨されているが、この推奨の根拠には意義が唱えられている。
【0151】
生命維持臓器が照射野にある際に高線量を安全に送達することができないことから、放射線療法は進行病期には有効ではない。したがって、これらの卵巣がん処置に関連する問題に生命維持臓器が耐えることができないことがあることから、放射線療法はそのような病期では一般に回避される。
【0152】
通常、卵巣がんは予後不良を示す。卵巣がんには任意の明らかな早期検出またはスクリーニング検査がなく、したがって大部分の症例が進行病期に到達するまで診断されないということから、卵巣がんは過度に致命的である。このがんを示す女性の60%超が、卵巣を超えて既に拡散したステージIIIまたはステージIVがんを既に有している。卵巣がんは、腹腔内の天然の体液に細胞を流し込む。次にこれらの細胞は、子宮、膀胱、腸、および腸壁大網の裏層を含む他の腹部(腹膜)構造上に植え付けられて、がんが疑われる前であっても新たな腫瘍成長を形成することがある。
【0153】
卵巣がんの全病期の5年生存率は45.5%である。疾患早期に診断が行われる症例では、がんが原発部位に依然として限局されている場合、5年生存率は92.7%である。
【0154】
D.脳がん
脳腫瘍は、頭蓋内の固形新生物、すなわち脳または中心脊柱管内の腫瘍(細胞の異常成長として定義される)である。脳腫瘍は頭蓋内または中心脊柱管中のすべての腫瘍を含む。それらは、通常は脳それ自体(ニューロン、グリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、ミエリンを産生するシュワン細胞)、リンパ組織、血管)、脳神経、脳外膜(髄膜)、頭蓋骨、脳下垂体、および松果体のいずれかにおける異常で制御されない細胞分裂によって作り出されるか、または他の臓器に一次的に位置するがんから拡散している(転移性腫瘍)。
【0155】
任意の脳腫瘍は、頭蓋内腔の限られた空間内でのその侵入性および浸潤性が理由で、本質的に重大で生命を脅かすものである。しかし、脳腫瘍(悪性のものであっても)は必ずしも致命的ではない。脳腫瘍または頭蓋内新生物はがん性(悪性)または非がん性(良性)でありうるが、悪性または良性新生物の定義は、体内の他の種類のがん性または非がん性新生物に一般的に使用されるものとは異なる。その脅威レベルは、腫瘍の種類、その位置、そのサイズおよびその発生状態のような要因の組み合わせに依存する。脳が頭蓋骨によって十分に保護されていることから、脳腫瘍の早期検出は、診断ツールが頭蓋腔に向けられる場合にのみ起こる。通常、検出は、腫瘍の存在が原因不明の症状を引き起こした進行期に起こる。
【0156】
原発性(真性)脳腫瘍は、子供の後頭蓋窩および大人の大脳半球の前方3分の2に一般的に位置するが、脳の任意の部分を冒しうる。
【0157】
脳がんの予後はがんのタイプに基づいて変動する。髄芽腫は化学療法、放射線療法および外科的切除による良好な予後を示し、一方、多形性膠芽腫は侵襲的放射線化学療法および手術によっても12ヶ月の生存期間中央値しか示さない。脳幹グリオーマは任意の形態の脳がんの最も不良な予後を示し、腫瘍への放射線照射と副腎皮質ステロイドとから典型的になる治療でも大部分の患者は1年以内に死亡する。しかし、脳幹グリオーマの一種である限局性は例外的な予後の可能性があるようであり、長期生存が頻繁に報告されている。
【0158】
多形性膠芽腫は悪性脳腫瘍の最も致死性が高く最も一般的な形態である。放射線療法、化学療法および外科的切除からなる侵襲的な集学的療法を使用する場合でも、生存期間中央値はわずか12~17ヶ月である。多形性膠芽腫の標準的治療は、腫瘍の最大外科的切除、これに続く外科手技の2~4週間後のがんを除去するための放射線療法からなる。化学療法がこれに続く。膠芽腫を有する大部分の患者は、病気中に症状を緩和するために副腎皮質ステロイド、典型的にはデキサメタゾンを服用する。実験的処置としてはガンマナイフ放射線手術、ホウ素中性子捕捉療法および遺伝子導入が挙げられる。
【0159】
乏突起膠腫は、不治であるがゆっくりと進行する悪性脳腫瘍である。それらは外科的切除、化学療法および/または放射線療法で処置されうる。選択された患者において疑われる低悪性度乏突起膠腫について、一部の神経腫瘍医は、対症療法のみを伴う慎重な経過観察の過程を選択する。1p/19q共欠失を伴う腫瘍は特に化学感受性があることがわかっており、1つの情報源は、乏突起膠腫が最も化学感受性の高いヒト固形悪性腫瘍の1つであることを報告している。最大16.7年の生存期間中央値が低悪性度乏突起膠腫について報告された。
【0160】
任意の脳腫瘍について特異的なまたは唯一の臨床的症状または徴候は存在しないが、症状の組み合わせの存在、および感染症または他の原因の対応する臨床的徴候の欠如は、頭蓋内新生物の可能性に対して診断調査を再び向けるための指標でありうる。
【0161】
診断は、患者の医学的前駆症状および現在の症状の明らかな見通しを得るために、患者の問診でしばしば始まる。臨床調査および検査室調査は、感染症を症状の原因として排除することに役立つ。この段階での検査としては眼科検査、耳鼻科(もしくはENT)検査および/または電気生理学的検査を挙げることができる。脳波記録法(EEG)の使用は脳腫瘍の診断においてしばしば役割を果たす。
【0162】
腫大、または脳からの脳脊髄液(CSF)の通過の閉塞は、頭蓋内圧の増大の(早期)徴候を引き起こすことがあり、これは臨床的に頭痛、嘔吐または意識変容状態、ならびに子供において頭蓋骨の直径の変化および泉門の膨隆に変換される。内分泌機能異常などの比較的複雑な症状は、医師に脳腫瘍を排除しないように警告するはずである。
【0163】
両耳側視野欠損(視交叉の圧迫による)または瞳孔散大、ならびに、認知障害および行動障害(判断力障害、記憶喪失、認識欠如、空間識障害を含む)、性格変化または感情変化、不全片麻痺、知覚鈍麻、失語症、運動失調、視野障害、嗅覚障害、聴覚障害、顔面神経麻痺、複視などの局所神経症状、あるいは、振戦、身体の一側の麻痺である片麻痺、またはてんかんの負の病歴を有する患者における(てんかん性)発作などのより重度の症状のゆっくりとした進行または突然の発症のいずれかが起こることで、脳腫瘍の可能性が上昇するはずである。
【0164】
画像診断は脳腫瘍の診断において中心的役割を果たす。最近、気脳撮影および脳血管撮影などの侵襲的であり危険であることもある早期画像診断法は放棄され、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンおよび特に磁気共鳴画像診断(MRI)などの非侵襲的高分解能技術に取って代わられている。新生物は、CTまたはMRI結果において異なった色の腫瘤(突起とも呼ばれる)としてしばしば示される。
【0165】
良性脳腫瘍は、頭蓋CTスキャンで低密度(脳組織よりも暗い)腫瘤病変としてしばしば示される。MRIにおいて、それらはT1加重スキャンで低強度(脳組織よりも暗い)もしくは等強度(脳組織と同じ強度)のいずれか、またはT2加重MRIで高強度(脳組織よりも明るい)として現れるが、この出現は変わりやすい。
【0166】
大部分の悪性原発性および転移性脳腫瘍において、時として特徴的なパターンでの造影剤の取り込みがCTスキャンまたはMRIスキャンのいずれかで示されうる。病巣周囲浮腫、または圧迫区域、または脳組織が浸潤過程によって圧迫された場所もT2加重MRIで高強度として現れるものであり、散在性新生物の存在を示す可能性がある(不明確な輪郭)。これは、これらの腫瘍が血液脳関門の正常な機能を破壊してその透過性の増大を導くためである。しかし、亢進パターンのみに基づいて高悪性度グリオーマを低悪性度グリオーマと対比して診断することは不可能である。
【0167】
多形性膠芽腫および未分化星状細胞腫は、薬物抵抗性発作に関連する陽性検査結果を含む遺伝学的急性肝性ポルフィリン症(PCT、AIP、HCPおよびVP)に関連している。これらの腫瘍の薬物処置に関連する原因不明の合併症は、診断未確定の神経性ポルフィリン症について医師に注意を喚起するはずである。
【0168】
脳腫瘍の決定的な診断は、脳生検または開放性手術のいずれかで得られる腫瘍組織試料の組織学的検査によってのみ確認されうる。組織学的検査は、適切な処置および正確な予後を決定するために必須である。病理医が行うこの検査は、典型的には3つの段階、すなわち、新たな組織の術中検査、調製された組織の予備顕微鏡検査、および免疫組織化学染色または遺伝学的分析後の調製された組織の追跡検査を有する。
【0169】
脳腫瘍を診断する際に、患者およびその家族に主治医が提示する処置選択肢を評価するために医療チームが形成される。脳の原発性固形新生物の位置を考慮すると、大部分の場合、「何もしない」という選択肢は通常提示されない。脳神経外科医が患者およびその親族に管理計画を提示する前に新生物の進行度を観察するには時間がかかる。これらの各種の処置が、新生物の種類および位置に応じて利用可能であり、生存の可能性を最も高くするように併用可能である。手術:できるだけ多くの腫瘍細胞を除去する目的での腫瘍の完全または部分切除;放射線療法;および手術後に残ったがん細胞をできるだけ多く死滅させ、残留する腫瘍細胞をできるだけ長く非分裂性の休止状態にする目的での化学療法。
【0170】
原発性脳腫瘍での生存率は、腫瘍の種類、年齢、患者の機能状態、外科的腫瘍除去の程度、および各症例に特異的な他の要因に依存する。
【0171】
医学文献に記載の一次的かつ最も望ましい手順は、開頭術を経由した外科的除去(切除)である。最小限に侵襲的な技術は研究中であるが、決して一般的になっていない。手術の一次的な治療目的は腫瘍細胞をできるだけ多く除去することであり、完全な除去が最善の結果であり、腫瘍の細胞切除(「減量」)はそれと異なる。いくつかの場合、腫瘍へのアクセスは不可能であり、手術を邪魔または妨害する。
【0172】
多くの髄膜腫は、頭蓋底に位置するいくつかの腫瘍を除いてうまく外科的に除去することができる。大部分の下垂体腺腫は、鼻腔および頭蓋底を通じた最小限に侵襲的なアプローチ(経鼻的経蝶形骨性アプローチ)をしばしば使用して外科的に除去することができる。大きな下垂体腺腫の除去には開頭術(頭蓋骨の開放)が必要である。定位的アプローチを含む放射線療法が、手術不能な症例のために留保される。
【0173】
いくつかの現在の研究は、腫瘍細胞が蛍光を発するようにする化学物質(5-アミノレブリン酸)で腫瘍細胞を標識することにより脳腫瘍の外科的除去を改善することを目的としている。術後の放射線療法および化学療法は悪性腫瘍の治療標準の不可欠な部分である。「低悪性度」グリオーマの場合において、著しい腫瘍負荷の減少が外科的に実現できなかった際に、放射線療法を実行してもよい。
【0174】
脳の手術を受けたどの個人もてんかん発作に罹患する可能性がある。発作は非存在から重度の強直間代発作まで変動しうる。発作の発生を最小化または除去するように薬物が処方および投与される。
【0175】
一般に、多発性転移性腫瘍は手術よりもむしろ放射線療法および化学療法で処置される。そのような症例での予後は原発性腫瘍によって決定されるが、一般に不良である。
【0176】
放射線療法の目標は、正常脳組織を無傷のままにしながら腫瘍細胞を選択的に死滅させることにある。標準的な体外照射療法において、標準「分割」線量の放射線による複数回の処置が脳に加えられる。この過程は、腫瘍の種類に応じて合計10~30回の処置で繰り返される。このさらなる処置は一部の患者に予後の改善および生存率の向上を与える。
【0177】
放射線手術は、周囲の脳への放射線量を最小化しながら腫瘍の部位に放射線を集中させるためにコンピュータ計算を使用する処置方法である。放射線手術は、他の処置の補助であることもあれば、いくつかの腫瘍の一次処置技術に相当することもある。
【0178】
放射線療法は腫瘍の切除後に、またはいくつかの場合では腫瘍の切除の代わりに使用することがある。脳がんに使用される放射線療法の形態としては体外照射療法、近接照射療法、およびより難しい症例ではガンマナイフ、サイバーナイフまたはNovalis Tx放射線手術などの定位放射線手術が挙げられる。
【0179】
放射線療法は続発性脳腫瘍の最も一般的な処置である。放射線療法の量は、がんに冒された脳の区域のサイズに依存する。従来の体外「全脳放射線療法」(WBRT)または「全脳放射線照射」は、他の続発性腫瘍が将来発生する危険性があると示唆されることがある。3つ未満の小さな続発性脳腫瘍を包含する症例では、定位放射線療法が通常は推奨される。
【0180】
化学療法を受ける患者は、腫瘍細胞を死滅させるように設計された薬物を投与される。化学療法は、最も悪性度の高い原発性脳腫瘍を有する患者において全体的生存率を改善することがあるが、患者の約20パーセントしか改善しない。放射線照射が発達中の脳に悪影響を示すことがあることから、化学療法が若い子供において放射線照射の代わりにしばしば使用される。この処置を処方するという決定は、患者の全体的健康、腫瘍の種類、およびがんの程度に基づく。薬物の毒性および多くの副作用、ならびに脳腫瘍における化学療法の不確実な予後によって、この処置は処置選択肢の系列のさらに下位に置かれるものであり、手術および放射線療法が好ましい。
【0181】
シャントは治癒としては使用されないが、脳脊髄液の遮断によって引き起こされる水頭症を減少させることで症状を軽減するために使用される。
【0182】
研究者は現在、遺伝子治療、高集中放射線療法、免疫療法および新規化学療法を含むいくつかの有望な新規処置を調査している。種々の新規処置が、脳腫瘍治療に特化したセンターにおいて調査ベースで利用可能になっている。
【実施例】
【0183】
V.実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい態様を示すために含まれる。当業者は、以下の実施例で開示される技術が、本開示の実行において十分に機能することを本発明者が発見した技術を代表するものであり、したがってその実行の好ましい様式を構成すると考えられうることを認識すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本開示の真意および範囲を逸脱することなく、開示されている具体的な態様に多くの変更を行い、なお類似または同様の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0184】
実施例1 - 結果
本発明のオリゴベンズアミド類似体は、乳がん、卵巣がん、および膵臓がんを含む様々ながん細胞に対して極めて強力かつ有効である。これらの化合物は、これらの疾患に対する既存の治療的処置と比較して独特の作用様式を有する。化合物は、増殖阻害について10~50 nMのIC
50値を伴って非常に強力である。TK41はトリスベンズアミド類似体であり、それは、高効力(IC
50はおよそ100 nMである;
図1~4)でがん細胞中においてその共調節因子タンパク質との核内受容体(NR)相互作用を阻害する。この化合物は、現在利用可能な内分泌および化学療法によって処置することが困難である、内分泌療法抵抗性乳がん細胞に対して非常に有効であることが分かった(
図2および
図8)。
【0185】
TK41はエストロゲン受容体を標的化するように最初は設計されたが、それは、エストロゲン受容体陰性であるトリプルネガティブ乳がん細胞においても活性を示すことが分かった(
図2および
図5~7)。この結果は、以前のベンズアミド化合物のパフォーマンスに基づいて予想外であった(構造活性表については
図9を参照のこと)。実際に、TK41は、100 nM未満のIC
50値でトリプルネガティブ乳がん細胞(TNBC)の非常に強い増殖阻害を示す。TNBCは処置が困難であり、現在、市場で入手可能な良い薬物はない。TK41での動物研究は、著しい腫瘍増殖阻害を示しただけでなく、明らかな副作用や毒性も示さなかった。TK41は、経口摂取可能であり、広範囲の乳がんについての優れた治療候補である。
【0186】
さらに、別のトリスベンズアミド化合物TK208を合成し、乳がんおよび卵巣がん細胞株に対して試験した(
図10~15)。TK208は、10~100 nMのIC
50値で、TNBCおよび卵巣がん細胞の増殖阻害において非常に高い効力を示した。追加のトリスベンズアミド類似体、TK314(
図24)およびTK315(
図23)をさらに調製し、これらは、10~50 nMのIC
50値で、それぞれ、卵巣がん細胞および乳がん細胞に対してさらにより強力な活性を示す。これらの化合物(例えば、TK41、TK208、TK308(
図21)、TK309(
図22)、TK314、TK315)は、腫瘍増殖を阻害し、乳がんおよび卵巣がん細胞を死滅させる極めて強力な化合物であり、したがって、それらはそのような疾患についての素晴らしい治療候補である。
【0187】
トリスベンズアミドYL144も合成し、これは高効力でビタミンD受容体(VDR)を阻害することがわかり、膵臓がんについての有用な治療候補であり得る(
図16~18)。ビスベンズアミドTK245は、エストロゲン受容体陽性乳がんの強力な増殖阻害を示す独特な化合物である(
図19および
図20)。
【0188】
TK41はまた、TNBC MD-MBA-231細胞中において小胞体ストレスを誘導することが示されたが、HMEC細胞中において小胞体ストレスを誘導しない(
図25および
図26)。TK41はTNBC細胞中のデノボタンパク質合成を停止させる(
図27)。小胞体ストレスおよび変性タンパク質応答の発現の基底レベルは、TK41活性と相関する(
図28)。これらのストレスタンパク質のレベルの調節はTK41の活性に影響を与える。したがって、小胞体ストレスおよび変性タンパク質応答タンパク質の発現の基底レベルは、TK41に対する応答を予測するためのバイオマーカーとして役立ち得る。小胞体ストレスはまた、TK41へ曝露されると膵臓がんMiaPaca細胞中において誘導されたが、HMEC細胞中において小胞体ストレスを誘導しない(
図29)。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、TK41の作用機序は、ERまたはTLXのいずれかを標的化し、小胞体ストレス、その後のアポトーシスを誘導し、そしてオートファジー融合を遮断することを含んで作動し得る(
図30)。
【0189】
要約すれば、多くのオリゴベンズアミド類似体を開発し、これらは、乳がん、卵巣がん、および膵臓がんを処置することにおいて非常に強力な治療可能性を示した。それらの作用様式および効力は、現在利用可能な薬物において比類なく、したがって、これらは非常に有望な治療候補である。
【0190】
【0191】
スキーム1.TK41への合成経路。
試薬および条件:(a) (COCl)2, cat. DMF, DCM, rt, 2 h; (b) DIEA, DCM, rt, 24 h; (c) SnCl2, DMF, rt, 12 h; (d) HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (e) Pd(PPh3)4, PhSiH3, THF, rt, 1 h; (f) HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (g) conc. HCl, rt, 24 h。
【0192】
化合物4:250 mL丸底フラスコに、化合物1 (5.45g, 22.8 mmol)、DCM (100 mL)、塩化オキサリル(2.6 mL, 30.1 mmol)および2滴のDMFを入れた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた化合物2をDCM (20 mL)中に溶解させ、化合物3 (3.8 g, 15.2 mmol)、DIEA (5.3 mL, 30.4 mmol)およびDCM (100 mL)の溶液へ徐々に添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで、1 N HCl (50 mL)、飽和NaHCO3 (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAc/ヘキサン(1:4)からの結晶化による精製によって、化合物4が淡黄色固体(5.1 g, 71 %)として得られた。
【0193】
化合物5:250 mL丸底フラスコに、化合物4 (4.7 g, 10.0 mmol)、DMF (100 mL)、およびSnCl2・2H2O (6.8 g, 30.0 mmol)を入れた。反応混合物を室温で12時間撹拌し、次いでEtOAc (200 mL)および1 N HCl (200 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (100 mL)および鹹水(100 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 4:1)による精製によって、化合物5が淡黄色固体(3.6 g, 82%)として得られた。
【0194】
化合物7:250 mL丸底フラスコに、化合物5 (3.6 g, 8.2 mmol)、化合物6 (6.2 g, 13.2 mmol)、HATU (6.7 g, 17.6 mmol)、DMF (100 mL)、およびDIEA (4.6 mL, 26.4 mmol)を入れた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAc (300 mL)および0.5 N HCl (200 mL)で希釈した。有機層を分離し、0.5 N HCl (100 mL)および鹹水(100 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAcからの結晶化による精製によって、化合物7が淡黄色固体(5.6 g, 77 %)として得られた。
【0195】
化合物8:250 mL丸底フラスコに、化合物7 (5.3 g, 5.9 mmol)およびTHF (100 mL)を入れた。次いで、Pd(PPh3)4 (0.69 g, 0.60 mmol)およびPhSiH3 (1.5 mL, 12.2 mmol)を反応混合物へ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。結果として生じた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物8が白色固体 (4.9 g, 97%)として得られた。
【0196】
化合物9:100 mL丸底フラスコに、化合物8 (2.7 g, 3.2 mmol)、HATU (1.4 g, 3.7 mmol)、DMF (30 mL)、trans-4-メチルシクロヘキシルアミン(0.73 g, 6.4 mmol)、およびDIEA (1.2 mL, 6.9 mmol)を入れた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAc (100 mL)および0.5 N HCl (50 mL)で希釈した。有機層を分離し、0.5 N HCl (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。結果として生じた固体を濾過し、EtOAcで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物9が白色固体(1.75 g)として得られた。生成物をさらなる精製無しに次の反応において使用した。
【0197】
TK41:500 mL丸底フラスコに、化合物9 (1.75 g)、THF (300 mL)およびconc. HCl (30 mL)を入れた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体を濾過し、MeOHで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK11-41が淡黄色固体(1.3 g、2反応段階にわたって57%)として得られた。
【0198】
【0199】
スキーム2.TK296への合成経路。
試薬および条件:(a) ), ナフタレン-2-メタンアミン塩酸塩, NaBH3CN, 1% AcOH/DMF, rt, 24 h; (b) PyBroP, DIEA, DCM, rt, 24 h; (c) Na2S2O4, 1,1'-ジ-n-オクチル-4,4'-ビピリジニウムジブロミド, K2CO3, H2O/THF, rt, 24 h; (d) Boc-β-Ala-OH, DIC, DMF/DCM, rt, 24 h; (e) TFA, rt, 1 h。
【0200】
化合物1:AM PS樹脂(0.42 mmol/g, 3.0 g, 1.26 mmol)をDMF中で12時間膨潤させ、DMF (3 × 1 min)で洗浄した。DMF (25 mL)中のBALリンカー(676 mg, 2.52 mmol)、PyBOP (1.44 g, 2.77 mmol)およびDIEA (0.97 mL, 5.6 mmol)の溶液を、樹脂へ添加し、室温で24時間振盪し、DMF (3 × 1 min)で洗浄した。カップリング反応の完了をネガティブKaiserニンヒドリンテストによって確認した。
【0201】
化合物2:1% AcOH/DMF (5 mL)中の化合物1 (0.25 g, 0.11 mmol)、ナフタレン-2-メタンアミン塩酸塩(85 mg, 0.44 mmol)、NaBH3CN (29 mg, 0.44 mmol)の混合物を室温で24時間振盪し、DMF (3 × 1 min)で洗浄した。ポジティブクロラニルテストを使用して反応をモニターした。
【0202】
化合物4:
1.アミド結合形成:DCM (6 mL)中の化合物3 (90 mg, 0.33 mmol)、PyBroP (154 mg, 0.33 mmol)およびDIEA (0.11 mL, 0.66 mmol)の溶液を、室温で1時間振盪し、化合物2へ添加した。反応混合物を室温で24時間振盪し、DMF (3 × 1 min)で洗浄した。反応の完了をネガティブクロラニルテストによって確認した。
2.還元:20% H2O/THF (8 mL)中の結果として生じた樹脂、Na2S2O4 (113 mg, 0.55 mmol)、1,1’-ジ-n-オクチル-4,4’-ビピリジニウムジブロミド(6 mg, 0.01 mmol)、K2CO3 (30 mg, 0.22 mmol)の混合物を室温で24時間振盪し、H2O (3 × 1 min)、20% 1N HCl (aq)/THF (3 × 1 min)、20% H2O/THF (3 × 1 min)、DMF (3 × 1 min)で洗浄し、化合物4が得られた。
【0203】
化合物6:この化合物を、化合物4についてのものと同じ手順を使用することによって化合物5から調製した。
【0204】
化合物8:この化合物を、化合物4についてのものと同じ手順を使用することによって化合物7から調製した。
【0205】
化合物9:20% DMF/DCM (6 mL)中のBoc-β-Ala-OH (378 mg, 2.0 mmol)、DIC (0.15 mL, 1.0 mmol)の溶液を、室温で1時間振盪し、化合物6へ添加した。反応混合物を室温で24時間振盪し、DMF (3 × 1 min)で洗浄した。
【0206】
TK296:5% H2O/TFA (5 mL)中の化合物9の混合物を室温で2時間振盪し、次いでTFA溶液を濾過し、樹脂をTFA (2 mL)およびDCM (2 mL)で洗浄した。合わせたTFA溶液を緩やかな窒素流と共に濃縮し、冷ジエチルエーテル(5 mL)を添加することによって白色固体を沈殿させた。白色固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK296 (30 mg, 28%)が得られた。
【0207】
【0208】
スキーム3.TK207への合成経路。
試薬および条件:(a) (COCl)2, cat. DMF, DCM, rt, 2 h; (b) DIEA, DCM, rt, 24 h; (c) Pd(PPh3)4, PhSiH3, THF, rt, 1 h; (d) PyBOP, DIEA, DMF, rt, 24 h; (e) Pd(PPh3)4, PhSiH3, THF, rt, 1 h; (f) 7-アミノ-1H-インダゾール, HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (g) TFA, rt, 1 h。
【0209】
化合物4:250 mL丸底フラスコに、化合物1 (1.91 g, 6.75 mmol)、DCM (50 mL)、塩化オキサリル(1.2 mL, 13.5 mmol)および2滴のDMFを入れた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた化合物2をDCM (20 mL)中に溶解させ、化合物3 (2.0 g, 4.5 mmol)、DIEA (1.6 mL, 9.0 mmol)およびDCM (50 mL)の溶液へ徐々に添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで1 N HCl (50 mL)、飽和NaHCO3 (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAc/ヘキサン(1:2)からの結晶化による精製によって、化合物4が淡黄色固体(2.7 g, 85 %)として得られた。
【0210】
化合物5:250 mL丸底フラスコに、化合物4 (2.7 g, 3.83 mmol)およびTHF (100 mL)を入れた。次いで、Pd(PPh3)4 (0.59 g, 0.51 mmol)およびPhSiH3 (0.95 mL, 7.7 mmol)を反応混合物へ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物5が淡黄色固体(2.5 g, 98%)として得られた。
【0211】
化合物7:100 mL丸底フラスコに、化合物5 (0.60 g, 0.90 mmol)、PyBOP (0.56 g, 1.1 mmol)、DMF (30 mL)、およびDIEA (0.93 mL, 5.3 mmol)を入れ、混合物を室温で1時間撹拌した。化合物6 (0.80 g, 2.70 mmol)を次いで反応混合物へ添加し、結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (100 mL)および1 N HCl (50 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAcからの結晶化による精製によって、化合物7が淡黄色固体(0.51 g, 68 %)として得られた。
【0212】
化合物8:250 mL丸底フラスコに、化合物7 (0.49 g, 0.59 mmol)およびTHF (100 mL)を入れた。次いで、Pd(PPh3)4 (0.14 g, 0.12 mmol)およびPhSiH3 (0.30 mL, 0.24 mmol)を反応混合物へ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物8が黄色固体(0.38 g, 81%)として得られた。
【0213】
TK207:DMF (3 mL)中の化合物8 (40 mg, 0.051 mmol)、HATU (25 mg, 0.066 mmol)、およびDIEA (27μL, 0.16 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌した。7-アミノ-1H-インダゾール(20 mg, 0.15 mmol)を次いで反応混合物へ添加し、結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (30 mL)および1 N HCl (20 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (20 mL)および鹹水(20 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAcからの結晶化による精製によって、化合物9が黄色固体として得られた。
【0214】
TFA (3 mL)中の化合物9の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK207が黄色固体(16 mg、2反応段階にわたって37%)として得られた。
【0215】
【0216】
スキーム4.TK208への合成経路。
試薬および条件:(a) 3-アミノキノリン, HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (b) TFA, rt, 1 h。
【0217】
化合物2:DMF (50 mL)中の化合物1 (2.6 g, 3.3 mmol)、HATU (1.5 g, 3.9 mmol)、およびDIEA (1.1 mL, 6.3 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌した。3-アミノキノリン(1.4 g, 9.7 mmol)を次いで反応混合物へ添加し、結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (100 mL)および1 N HCl (50 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAcからの結晶化による精製によって、化合物2が黄色固体(2.6 g, 86%)として得られた。
【0218】
TK208:TFA (30 mL)中の化合物9 (1.2 g, 1.31 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK208が黄色固体(0.67 g, 60%)として得られた。
【0219】
【0220】
スキーム5.TK314への合成経路。
試薬および条件:(a) (COCl)2, cat. DMF, DCM, rt, 2 h; (b) DIEA, DCM, rt, 24 h; (c) Pd(PPh3)4, PhSiH3, THF, rt, 1 h; (d) trans-4-メチルシクロヘキシルアミン, HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (e) TFA, rt, 1 h。
【0221】
化合物4:DCM (30 mL)中の化合物1 (0.62 g, 2.4 mmol)、塩化オキサリル(0.41 mL, 4.7 mmol)および2滴のDMFの溶液を、室温で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた化合物2をDCM (10 mL)中に溶解させ、化合物3 (0.70 g, 1.6 mmol)、DIEA (0.55 mL, 3.2 mmol)およびDCM (30 mL)の溶液へ徐々に添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで1 N HCl (50 mL)、飽和NaHCO3 (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAc/ヘキサン(1:2)からの結晶化による精製によって、化合物4が黄色固体(0.46 g, 42 %)として得られた。
【0222】
化合物5:THF (30 mL)中の化合物4 (0.40 g, 0.59 mmol)、Pd(PPh3)4 (69 mg, 0.06 mmol)およびPhSiH3 (0.15 mL, 1.2 mmol)の溶液を、室温で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物5が黄色固体(0.37 g, 98%)として得られた。
【0223】
TK314:DMF (4 mL)中の化合物5 (50 mg, 0.078 mmol)、HATU (39 mg, 0.10 mmol)、DIEA (41μL, 0.24 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いでtrans-4-メチルシクロヘキシルアミン(45 mg, 0.40 mmol)を反応混合物へ添加した。結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAc (20 mL)および1 N HCl (10 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (10 mL)および鹹水(10 mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物6が黄色固体として得られた。
【0224】
TFA (3 mL)中の化合物6溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK314が黄色固体(42 mg、2反応段階にわたって79%)として得られた。
【0225】
【0226】
スキーム6.TK315への合成経路。
試薬および条件:(a) HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (b) TFA, rt, 1 h。
【0227】
TK315:DMF (4 mL)中の化合物1 (50 mg, 0.078 mmol)、HATU (39 mg, 0.10 mmol)、DIEA (41μL, 0.24 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで、化合物2 (91 mg, 0.24 mmol)を反応混合物へ添加した。結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAc (20 mL)および1 N HCl (10 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (10 mL)および鹹水(10 mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物3が黄色固体として得られた。
【0228】
TFA (3 mL)中の化合物3の溶液を室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK315が黄色固体(51 mg、2反応段階にわたって78%)として得られた。
【0229】
【0230】
スキーム7.TK308への合成経路。
試薬および条件:(a) (COCl)2, cat. DMF, DCM, rt, 2 h; (b) DIEA, DCM, rt, 24 h; (c) Pd(PPh3)4, PhSiH3, THF, rt, 1 h; (d) trans-4-メチルシクロヘキシルアミン, HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (e) TFA, rt, 1 h。
【0231】
化合物4:DCM (30 mL)中の化合物1 (1.1 g, 4.4 mmol)、塩化オキサリル(0.78 mL, 9.0 mmol)および2滴のDMFの溶液を、室温で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた化合物2をDCM (10 mL)中に溶解させ、化合物3 (1.3 g, 3.0 mmol)、DIEA (1.0 mL, 5.7 mmol)およびDCM (30 mL)の溶液へ徐々に添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで1 N HCl (50 mL)、飽和NaHCO3 (50 mL)および鹹水(50 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAc/ヘキサン(1:2)からの結晶化による精製によって、化合物4が黄色固体(0.74 g, 37 %)として得られた。
【0232】
化合物5:THF (30 mL)中の化合物4 (0.70 g, 1.04 mmol)、Pd(PPh3)4 (0.12 g, 0.10 mmol)およびPhSiH3 (0.26 mL, 2.1 mmol)の溶液を、室温で2時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物5が黄色固体(0.57 g, 86%)として得られた。
【0233】
TK308:DMF (4 mL)中の化合物5 (50 mg, 0.079 mmol)、HATU (39 mg, 0.10 mmol)、DIEA (41μL, 0.24 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで、trans-4-メチルシクロヘキシルアミン(45 mg, 0.40 mmol)を反応混合物へ添加した。結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAc (20 mL)および1 N HCl (10 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (10 mL)および鹹水(10 mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物6が黄色固体として得られた。
【0234】
TFA (3 mL)中の化合物6の溶液を室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK308が黄色固体(40 mg、2反応段階にわたって75%)として得られた。
【0235】
【0236】
スキーム8.TK309への合成経路。
試薬および条件:(a) HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (b) TFA, rt, 1 h。
【0237】
TK309:DMF (4 mL)中の化合物1 (50 mg, 0.079 mmol)、HATU (39 mg, 0.10 mmol)、DIEA (41μL, 0.24 mmol)の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで、化合物2 (91 mg, 0.24 mmol)を反応混合物へ添加した。結果として生じた混合物を室温で24時間撹拌し、次いでEtOAc (20 mL)および1 N HCl (10 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (10 mL)および鹹水(10 mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥させ、化合物3が黄色固体として得られた。
【0238】
TFA (3 mL)中の化合物3の溶液を室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、TK309が黄色固体(55 mg、2反応段階にわたって84%)として得られた。
【0239】
【0240】
スキーム9.YL144への合成経路。
試薬および条件:(a) 2-アミノイミダゾール硫酸塩, HATU, DIEA, DMF, rt, 24 h; (b) TFA, rt, 1 h。
【0241】
YL144:DMF (20 mL)中の化合物1 (0.20 g, 0.30 mmol)、2-アミノイミダゾール硫酸塩(79 mg, 0.60 mmol)およびDIEA (0.42 mL, 2.4 mmol)の混合物を、60℃で1時間撹拌した。HATU (0.15 g, 0.39 mmol)を次いで反応混合物へ添加し、結果として生じた混合物を60℃で24時間撹拌した。反応混合物を室温へ冷却し、EtOAc (50 mL)および1 N HCl (30 mL)で希釈した。有機層を分離し、1 N HCl (30 mL)および鹹水(30 mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、粗生成物が得られた。EtOAcからの結晶化による精製によって、化合物2が黄色固体として得られた。
【0242】
TFA (5 mL)中の化合物2の溶液を、室温で1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。結果として生じた固体をエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させ、YL144が黄色固体(0.12 g, 52%)として得られた。
【0243】
実施例3 - オリゴベンズアミド類似体およびがん処置におけるそれらの使用 - OTC Ref.: HSC-1542
本発明者らは、新しい化合物TK41 (ERX-41)、TK208 (ERX-208)およびTK315 (ERX-315)の効力を調べるために、前臨床マウス異種移植片および患者由来異種移植片(PDX)を使用して、UTHSCSAでいくつかの研究を行った。結果を下記に示す。
【0244】
Captisol製剤中のTK315 (ERX-315)の経口投与は、MCF7-MT ESR1 ZR-75およびZR75-MT Y537S ERα発現治療抵抗性BC異種移植モデルの両方に対して強力な活性を示したが、マウス肝臓や体重に対して影響を示さなかった(
図31A~C)。腫瘍の組織学的評価は、これらの腫瘍中の劇的に減少したKi67増殖インデックスを示した。重要なことには、ERX-315で処置された同系D2A1腫瘍の脾臓、リンパ節、腎臓、または肝臓中の免疫抗体浸潤物の欠如は、ERX-315が強力であり、免疫原性ではなく、安全に経口投与することができることを示唆した。
【0245】
PDXモデルは、ヒトBC(原発腫瘍サンプル)の構造複雑性および個体不均一性を再現し、したがって、これらのモデルでの研究は、臨床解釈のための明白な基礎を確立する。本発明者らの研究室において確立されたプロトコールを使用して乳房脂肪体中へPDX腫瘍片を移植することによって、3つの異なるTNBC PDX腫瘍をNSGマウス中に確立した。結果は、TK41 (ERX-41)処置が、試験した全ての3つのTNBC PDX腫瘍の成長を有意に減少させたことを示した(
図32A~C)。
【0246】
本発明者らは、卵巣異種移植片およびPDXモデルの両方を使用して、TK208 (ERX-208)のインビボ活性を試験した。結果は、TK208 (ERX-208)が、卵巣腫瘍体積を減少させることにおいて良好な効力を有し、マウス体重に対して影響を与えないことを示し、これは毒性がないことを示唆している(
図33A~H)。
【0247】
本明細書において開示および特許請求したすべての組成物および/または方法を、本開示に照らして、過度の実験なしに実施および実行することができる。本開示の組成物および方法を好ましい態様に関して説明してきたが、本開示の概念、真意および範囲を逸脱することなく、この組成物および/または方法、ならびに本明細書に記載の方法の段階または段階の順序に変形を適用することができることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような同様の代用物および修正は、添付の特許請求の範囲により定義される本開示の真意、範囲および概念内にあると見なされる。
【0248】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されるものを補足する例示的な手順上の詳細または他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【国際調査報告】