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特表2022-510388タンパク質結晶の高コントラストイメージングのための携帯型UVホログラフィック顕微鏡
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】タンパク質結晶の高コントラストイメージングのための携帯型UVホログラフィック顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20220119BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20220119BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G03H1/22
G03H1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531559
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 US2019064321
(87)【国際公開番号】W WO2020117864
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】62/775,005
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.iPad
(71)【出願人】
【識別番号】592110646
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】オズキャン,アイドガン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,アニルッドハ
(72)【発明者】
【氏名】ダログリュー,ムスタファ
【テーマコード(参考)】
2G059
2K008
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE01
2G059FF01
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH03
2G059JJ02
2G059KK04
2G059MM01
2K008AA06
2K008BB04
2K008CC03
2K008HH01
2K008HH28
(57)【要約】
UVホログラフィックイメージングデバイスは、高価で嵩張る光学部品を必要とせずに、タンパク質結晶をイメージングして塩結晶と区別するための低コストで携帯型の堅牢な手法を提供する。この「オンチップ」デバイスは、UV LEDと、キャップを外してプロセッサまたはマイクロコントローラに接続された消費者用のCMOSイメージセンサとを使用し、センサのアクティブ領域のすぐ近くに置かれた結晶サンプルからの情報は、インラインホログラムの形態でキャプチャされ、デジタル逆伝播によって抽出される。それらのホログラムの振幅および/または位相の再構成では、タンパク質結晶が、塩結晶とは異なり、強いUV吸収により背景に比べて著しく暗く見え、タンパク質結晶と塩結晶を明確に区別することが可能である。このように、オンチップUVホログラフィック顕微鏡は、タンパク質結晶学で使用される従来のレンズベースのUV顕微鏡に代わる、低コストで高感度かつ堅牢な代替手段として機能する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶を含むサンプルをイメージングする方法であって、
携帯型ホログラフィック顕微鏡を提供するステップであって、前記携帯型ホログラフィック顕微鏡が、紫外線(UV)を発する1または複数の光源と、UVバンドパスフィルタと、イメージセンサと、前記イメージセンサと動作可能に通信するマイクロコントローラまたはオンボードプロセッサとを備える、ステップと、
結晶を含むサンプルを前記携帯型ホログラフィック顕微鏡内に挿入し、前記1または複数の光源からのフィルタリングされた光でサンプルを照射するステップと、
前記イメージセンサにより、結晶を含むサンプルの1または複数の生のホログラム画像をキャプチャするステップと、
コンピューティングデバイスを使用して実行される画像処理ソフトウェアを用いて、前記1または複数の生のホログラム画像をデジタル逆伝播して、サンプルの1または複数の振幅および/または位相画像を取得するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記結晶の少なくとも一部が、タンパク質結晶を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプルが、タンパク質結晶と塩結晶の混合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記1または複数の生のホログラム画像が、前記マイクロコントローラまたはオンボードプロセッサに一時的に保存され、前記画像処理ソフトウェアを含む第2のコンピューティングデバイスに転送されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記イメージセンサが、カラーイメージセンサを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
イメージセンサが、モノクロイメージセンサを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記1または複数の光源が、1または複数のUV発光ダイオード(LED)を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプルが、前記携帯型ホログラフィック顕微鏡内に挿入される別個の光透過性のサンプルホルダに含まれていることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記サンプルホルダが、結晶を含む液体サンプルを保持するための3次元ボリュームを規定することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプルの1または複数の振幅および/または位相画像が、オンボードコンピューティングデバイスまたは別のコンピューティングデバイスに付随するディスプレイに表示されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記マイクロコントローラまたはオンボードプロセッサが、前記画像処理ソフトウェアを実行することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記画像処理ソフトウェアが、前記1または複数の振幅および/または位相画像において識別される結晶の測定したコントラストに少なくとも部分的に基づいて、非タンパク質結晶からタンパク質結晶を識別するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記画像処理ソフトウェアが、前記1または複数の振幅および/または位相画像において識別される結晶の測定したコントラストが閾値を超えるか否かに基づいて、タンパク質結晶を識別するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
前記デジタル逆伝播が、角度スペクトル法またはフレネル伝播法を使用して実行されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
複数の光源を順次照明して、対応するサブピクセルシフトした生のホログラム画像を得て、これにピクセル超解像プロセスを適用して、前記画像処理ソフトウェアにより、より高い空間解像度、より高いコントラストおよび/またはより高い信号対雑音比のうちの1または複数を有する1または複数のホログラム画像を生成することを特徴とする方法。
【請求項16】
携帯型ホログラフィック顕微鏡であって、
携帯型ハウジングを備え、この携帯型ハウジングが、
紫外線(UV)光を照射する1または複数の光源と、
UVバンドパスフィルタと、
結晶を含むサンプルを中に保持または受け入れるように構成されたサンプルホルダと、
イメージセンサと、
前記1または複数の光源を制御するとともに、前記イメージセンサから得られたサンプルの1または複数の画像を受信するように構成されたプロセッサおよび/またはマイクロコントローラとを備えることを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項17】
請求項16に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
前記携帯型ハウジングのプロセッサまたはマイクロコントローラと通信する第2のコンピューティングデバイスをさらに備え、前記第2のコンピューティングデバイスが、前記第2のコンピューティングデバイス上で実行される画像処理ソフトウェアを有し、この画像処理ソフトウェアが、前記サンプルの1または複数の画像を、前記サンプルの対応する1または複数の振幅および/または位相画像に逆伝播するように構成されていることを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項18】
請求項17に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
前記第2のコンピューティングデバイスが、ローカルコンピューティングデバイスを含むことを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項19】
請求項17に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
前記第2のコンピューティングデバイスが、リモートコンピューティングデバイスを含むことを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項20】
請求項16に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
ある体積のサンプルを保持するように構成されたサンプルチャンバをさらに備えることを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項21】
請求項16に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
可視光を発する1または複数の光源をさらに備えることを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項22】
請求項17に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
前記携帯型ハウジングが、対応するサブピクセルシフトされた生のホログラム画像を得るために順次照射される複数の光源を含み、前記画像処理ソフトウェアが、より高い空間解像度、より高いコントラストおよび/またはより高い信号対雑音比のうちの1または複数を有する1または複数のピクセル超解像ホログラム画像を生成するように構成されていることを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【請求項23】
携帯型ホログラフィック顕微鏡システムであって、
ハウジング内に光軸に沿って紫外線(UV)光を発する1または複数の光源を含む携帯型ハウジングと、
前記ハウジング内に光軸に沿って配置されたUVバンドパスフィルタと、
前記ハウジング内に光軸に沿って配置されたイメージセンサと、
前記1または複数の光源を制御するとともに、前記イメージセンサから得られたサンプルの1または複数の画像を受信するように構成されたプロセッサおよび/またはマイクロコントローラと、
結晶を含むサンプルを中に保持または受け入れるように構成されたサンプルホルダであって、光軸に沿って位置しかつ前記イメージセンサに隣接するよう前記にハウジング内に挿入可能なサンプルホルダと、
前記携帯型ハウジングのプロセッサまたはマイクロコントローラと通信する別のコンピューティングデバイスであって、この別のコンピューティングデバイス上で実行される画像処理ソフトウェアを有し、この画像処理ソフトウェアが、前記結晶を含むサンプルの1または複数の画像を、前記サンプルの対応する1または複数の振幅および/または位相画像に逆伝播するように構成されている、別のコンピューティングデバイスとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項23に記載のシステムにおいて、
前記サンプルの対応する1または複数の振幅および/または位相画像を表示するように構成されたディスプレイをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムにおいて、
前記画像処理ソフトウェアが、前記サンプルの1または複数の振幅および/または位相画像において識別される結晶の測定したコントラストに少なくとも部分的に基づいて、非タンパク質結晶からタンパク質結晶を識別するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、
前記画像処理ソフトウェアが、前記サンプルの1または複数の振幅および/または位相画像において識別される結晶のコントラストの測定値が閾値を超えるか否かに基づいて、タンパク質結晶を識別するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項23に記載のシステムにおいて、
可視光を発する1または複数の光源をさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項23に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡において、
前記携帯型ハウジングが、対応するサブピクセルシフトされた生のホログラム画像を得るために順次照射される複数の光源を含み、前記画像処理ソフトウェアが、より高い空間解像度、より高いコントラストおよび/またはより高い信号対雑音比のうちの1または複数を有する1または複数のピクセル超解像ホログラム画像を生成するように構成されていることを特徴とする携帯型ホログラフィック顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、概してホログラフィック顕微鏡デバイスおよび方法に関する。より詳細には、本技術分野は、結晶をイメージングするために使用される紫外線(UV)ホログラフィック顕微鏡デバイスに関する。UVホログラフィック顕微鏡デバイスは、ユーザがタンパク質結晶と塩結晶とを区別することを可能にする。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2018年12月4日に出願された米国仮特許出願第62/775,005号の優先権を主張するものであり、この仮特許出願は、その全体が引用により本明細書に援用されるものとする。優先権は、米国特許法第119条および他の該当する法令に従って主張する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質結晶学者は、明視野モードおよび紫外線(UV)誘起蛍光モードを有するデュアルモード光学顕微鏡を使用して、タンパク質結晶をイメージングするとともに、それらを結晶化プロセス中に形成される塩結晶と区別している。この区別は、主にUV照射に対する反応に基づくものであり、殆どのタンパク質結晶は、塩結晶とは異なり、UV光を吸収して、トリプトファン残基を介して蛍光を発する。UV蛍光に加えて、有機材料内でのUV光の強い吸収は、組織サンプル、細胞、細胞内の核酸やタンパク質、ウイルスやタンパク質凝集体をイメージングする際の固有の造影剤として利用されており、UV顕微鏡は研究者にとって重要なツールとなっている。しかしながら、従来のレンズベースのUV顕微鏡は、比較的高価なイメージングモダリティであり、明視野イメージングのためのUV光源やUV感度の高いカメラに加えて、UV波長用に特別に設計された比較的嵩張る光学部品を使用する必要があり、かなりの費用(例えば、35,000ドル~200,000ドル)がかかる。例えば、Gill et al.,「Evaluating the efficacy of tryptophan fluorescence and absorbance as a selection tool for identifying protein crystals」,Acta Crystallograph.Sect.F Struct.Biol.Cryst.Commun,66,364-372(2010)を参照されたい。さらに、レンズベースの顕微鏡の固有の限界は、従来のUV顕微鏡にも当てはまり、視野(FOV)と解像度との間のトレードオフにより、イメージングできるサンプルの総面積が制限されてしまう。このため、従来のUVベースの顕微鏡は、嵩張り高価であるだけでなく、多くの場合、比較的大きなFOVしかイメージングすることができない。それには、かなり広い範囲でサンプルをスキャンする必要があり、時間と手間がかかる。したがって、そのような課題を解決するための代替的なUVベースの顕微鏡が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、携帯型ホログラフィックイメージングプラットフォームまたはシステムが提供される。このプラットフォームまたはシステムは、光路に沿って光を発する紫外線(UV)光を発する1または複数の光源を含むハウジングまたはエンクロージャを含む、小型の携帯型ホログラフィックイメージングデバイスを含む。UVバンドパスフィルタは、任意選択的には、側波帯を遮断し、実質的に純粋なUV光をサンプルに向けて照射するために、光路に沿ってハウジングまたはエンクロージャに配置されている。一実施形態では、光の波長が約280nm、バンド幅が約10nmである。イメージセンサ(例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサ)は、光路に沿ってハウジングまたはエンクロージャ内に配置されており、サンプルホルダに含まれる結晶の生のインラインホログラム画像をキャプチャするために使用され、サンプルホルダは、光路に沿ってサンプルを配置するためにハウジングまたはエンクロージャ内に挿入される。サンプルホルダは、通常、イメージセンサに非常に近い位置(例えば、イメージセンサの活性面から数十~数百マイクロメートル離れた位置)に設置されるが、1または複数の光源は、サンプルホルダからさらに離れた位置(例えば、数センチメートル)に設置される。ターゲット結晶からの散乱光と背景照明との干渉により、インラインホログラムが形成され、イメージセンサによってデジタル化/記録される。携帯型イメージャデバイスは、1または複数の光源を制御し、いくつかの実施形態では、イメージセンサから得られたサンプルの1または複数の画像を受信するように構成されたコンピューティングデバイス、デジタル回路および/またはマイクロコントローラを含む。いくつかの実施形態では、複数の光源を使用して、個々の光源が順次作動されるときにイメージセンサによって得られる個々の低解像度の画像と比較して、より高い空間解像度、より高いコントラストおよび/またはより高い信号対雑音比を有する結晶のピクセル超解像ホログラム画像を合成または生成することができる。
【0005】
その後、イメージセンサによって取得または獲得された画像は、コンピューティングデバイス上で実行される画像処理ソフトウェアによる処理を受けて、結晶を含むサンプルの画像が、サンプルの対応する振幅および/または位相画像にデジタル的に逆伝播される。いくつかの実施形態では、画像処理ソフトウェアを実行するコンピューティングデバイスが、携帯型イメージングデバイスの一部であってもよい。他の実施形態では、画像処理ソフトウェアを実行するコンピューティングデバイスが、携帯型イメージングデバイスとは別個のものであり、有線または無線の接続を介してそれに接続される。例えば、携帯型ホログラフィックイメージングデバイスで得られた画像は、処理のために、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットPC、サーバ、仮想サーバなどのコンピュータに転送されるものであってもよい。
【0006】
サンプル中に存在するタンパク質ベースの結晶は暗く見えるが、塩ベースの結晶など他の非タンパク質結晶は同じ暗い外観を示さない。タンパク質結晶によって示される非常に大きなコントラストは、タンパク質結晶と非タンパク質結晶とを識別および区別するために使用される。サンプルおよび結晶の振幅および/または位相画像は、表示および/または分析のためにディスプレイ上でユーザに提示されるものであってもよい。いくつかの実施形態において、画像処理ソフトウェアは、サンプル中の結晶がタンパク質結晶であることを自動的に識別することができる。これは、画像化された結晶の相対的なコントラストレベルを閾値と比較することによって行うことができる。例えば、特定のレベルを超えるUVコントラストレベルを示す結晶は、タンパク質結晶として特徴付けることができる。また、画像処理ソフトウェアは、サンプル中のタンパク質結晶の数および/または濃度をカウントまたは定量化することができる。本デバイスでキャプチャされる画像は、イメージセンサのアクティブ領域によってのみ制限される大きなFOV(例えば、>10mm)を有する。
【0007】
一実施形態では、結晶を含むサンプルをイメージングする方法が、携帯型ホログラフィック顕微鏡を提供する操作を含み、携帯型ホログラフィック顕微鏡が、紫外線(UV)光を放出する1または複数の光源と、任意選択的なUVバンドパスフィルタと、イメージセンサと、イメージセンサと動作可能に通信するマイクロコントローラまたはオンボードプロセッサとを備える。結晶を含むサンプルは、携帯型ホログラフィック顕微鏡内に挿入され、サンプルが、1または複数の光源からのフィルタリングされた光(例えば、フィルタが使用されている場合)で照らされる。結晶を含むサンプルの1または複数の生のホログラム画像は、イメージセンサでキャプチャされる。ある特定の実施形態では、単一の生のホログラム画像のみが得られる(例えば、シングルショット動作モード)。1または複数の生のホログラム画像は、コンピューティングデバイスを用いて実行される画像処理ソフトウェアを使用して、デジタル逆伝播を受け、それによりサンプルの1または複数の振幅および/または位相画像が得られる。サンプルの1または複数の振幅および/または位相画像は、表示および/または分析のためにユーザに提示されるようにしてもよい。
【0008】
別の実施形態では、携帯型ホログラフィック顕微鏡が携帯型ハウジングまたはエンクロージャを含み、携帯型ハウジングまたはエンクロージャが、紫外線(UV)光を放出する1または複数の光源と、任意選択的なUVバンドパスフィルタと、結晶を含むサンプルを中に保持または受け入れるように構成されたサンプルホルダと、イメージセンサとを含む。携帯型ホログラフィック顕微鏡は、1または複数の光源を制御するとともに、イメージセンサから得られたサンプルの1または複数の画像を受信するように構成されたプロセッサおよび/またはマイクロコントローラを含む。
【0009】
別の実施形態では、携帯型ホログラフィック顕微鏡システムが、ハウジング内に光軸に沿って紫外線(UV)光を放出する1または複数の光源を有する携帯型ハウジングまたはエンクロージャを含む。任意選択的なUVバンドパスフィルタは、ハウジング内に光軸に沿って配置される。イメージセンサは、ハウジング内に光軸に沿って配置されている。携帯型ホログラフィック顕微鏡は、1または複数の光源を制御するとともに、イメージセンサから得られたサンプルの1または複数の画像を受信するように構成されたプロセッサおよび/またはマイクロコントローラを含む。サンプルホルダは、結晶を含むサンプルを中に保持または受け入れるように構成されており、光軸に沿って位置しかつイメージセンサに隣接するようにハウジング内に挿入可能である。サンプルホルダは、ハウジングまたはエンクロージャの一部であってもよいし、ハウジングまたはエンクロージャ内に挿入可能な別のコンポーネントやデバイスであってもよい。本システムは、携帯型ハウジングのプロセッサまたはマイクロコントローラと通信する別のコンピューティングデバイスを含み、別のコンピューティングデバイスは、この別のコンピューティングデバイス上で実行される画像処理ソフトウェアを有し、画像処理ソフトウェアが、結晶を含むサンプルの1または複数の画像を、サンプルの対応する1または複数の振幅および/または位相の画像に逆伝播するように構成されている。その後、サンプルの1または複数の振幅および/または位相画像が、別のコンピューティングデバイスのディスプレイまたは別のディスプレイ(例えば、携帯型電子デバイスまたは他のコンピューティングデバイスのディスプレイ)上でユーザに表示されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、結晶を含むサンプルの対応する1または複数の振幅および/または位相画像を生成するために画像処理(例えば、逆伝播)を受ける、結晶を含むサンプルの1または複数の生のホログラム画像を取得および/または獲得するために使用される携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイスを含むシステムを示している。
図2図2は、一実施形態に係る図1の携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス/システムを操作するために使用される一連の動作を示している。
図3図3は、一実施形態に係るサンプルホルダの一実施形態を示している。
図4図4Aは、UVベースのホログラフィック顕微鏡の写真画像を示している。UV LEDは、側波帯をブロックするためにバンドパスフィルタを使用してスペクトルフィルタリングされ、280nmのピーク波長と10nmの帯域幅を有する純粋なUV光を、イメージセンサの非常に近く(約300~400μm)に配置されたサンプルに向けて透過させ、イメージングFOVとして全アクティブ領域(>10mm)を利用する。図4Bは、携帯型ホログラフィック顕微鏡の簡略化された概略図の一部を切り取ったものである。
図5図5Aは、プロテイナーゼK、塩化ナトリウムおよび硫酸アンモニウムの結晶の明視野顕微鏡画像を示している。図5Bは、図5Aの同じFOVの振幅再構成を示しており、プロテイナーゼKの結晶が、著しく暗く見える。図5Cは、プロテイナーゼK、塩化ナトリウムおよび硫酸アンモニウムの結晶サンプルからのX線回折データを示しており、最大間隔値がそれぞれ30A、3.25A、3.25Aである。
図6図6Aは、携帯型ホログラフィック顕微鏡システム(図1図4A図4B)によりキャプチャされた全FOV(>10mm)画像を示しており、矩形が、5倍の対物レンズを有するレンズベースのUV顕微鏡を使用して可能な典型的なFOVを示している。図6Bは、レンズベースのUV顕微鏡で明視野およびUV蛍光の両方のモードでイメージングした、同じチャンバ内にプロテイナーゼKと塩の結晶(酢酸リチウムおよび硫酸リチウム)を含むサンプルを示している。プロテイナーゼKの結晶は280nmのUV光を強く吸収して蛍光を発するが、塩の結晶はそうではない。図6Cは、携帯型ホログラフィック顕微鏡システムによってキャプチャされた同じFOVの対応する振幅再構成を示している。図6Bで蛍光を発した同じ結晶は、より強い吸収により、背景と比較して著しく暗く見え、一方、蛍光を発しなかった結晶(すなわち、塩結晶)は、振幅再構成において著しいコントラストを示していない。図6Dは、タンパク質結晶が塩結晶に比べて非常に強いUVコントラストを示している様子(p<0.02)を示すグラフである。標準偏差バーは、ターゲットオブジェクトの平均コントラストを計算するために使用される矩形領域内のコントラストのバラツキを表している。
図7図7Aは、レンズベースのUV顕微鏡(明視野およびUV蛍光)で得られたタンパク質結晶(RING1B複合体およびマルトース結合タンパク質結晶)の画像を、本明細書に記載の携帯型ホログラフィック顕微鏡で得られた再構成UV画像とともに示している。対照として、酢酸リチウム結晶(例えば、塩結晶)を用いた。タンパク質結晶は、レンズベースのUVイメージングプラットフォームでイメージングしたときに蛍光を示したが、塩結晶は僅かな蛍光しか示さなかった。同様に、タンパク質結晶からの振幅再構成では、著しいコントラストが見られたが、塩結晶では見られなかった。図7Bは、タンパク質結晶(RING1B複合体およびマルトース結合タンパク質の結晶)および塩結晶(酢酸リチウム)のUVコントラストを示すグラフである。この有意なコントラストの差(p<0.003)は、タンパク質結晶と塩結晶を区別する上での携帯型ホログラフィック顕微鏡システムの有効性を明確に示している。標準偏差のバーは、ターゲットオブジェクトの平均コントラストを算出するために使用した矩形領域内のコントラストのバラツキを表している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、結晶を含むサンプル12の1または複数の生のホログラム画像44を取得および/または獲得するために使用される携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10を含むシステム2を示しており、ホログラム画像は、その後、結晶を含むサンプル12の対応する1または複数の振幅および/または位相画像60を生成するために画像処理(例えば、本明細書で述べる逆伝播)を受ける。出力または生成された1または複数の振幅および/または位相画像60は、高度なコントラストを有するタンパク質結晶16を表示する(すなわち、それらは1または複数の振幅画像60において暗く見える)。対照的に、非タンパク質結晶18は、高度なコントラストを有さず、1または複数の振幅画像60において明るく見える。他の実施形態では、位相画像60が、特定の結晶に関して高度なコントラストを表示することができ、1または複数の振幅画像60の代わりに、または1または複数の振幅画像と組み合わせて生成されるものであってもよい。システム2は、サンプル12の複数の生のホログラム画像44が得られることを想定しているが、単一の生のホログラム画像44のみが必要であることを理解されたい。このため、一実施形態では、システム2が、携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10によって得られた「シングルショット」の生のホログラム画像44に対して操作する。
【0012】
携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10は、ホログラフィック顕微鏡デバイス10のコンポーネントを保持するハウジングまたはエンクロージャ20を含む。携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10は、小型軽量であり、人が持ち運んで容易に移動することができ、従来の顕微鏡のように指定されたベンチエリアを必要としない。ハウジングまたはエンクロージャ20は、様々な光学部品を保持し、外部の周囲光が入るのを遮断する内部部分22を含む。ハウジングまたはエンクロージャ20は、ポリマーまたはプラスチックのような軽量の材料から形成することができるが、他の材料を使用することもできる。図1を参照すると、ハウジングまたはエンクロージャ20は、サンプル12に紫外線(UV)光を照射するために使用される1または複数の光源24を含む。1または複数の光源24は、UV範囲の光を発する1または複数の発光ダイオード(LED)またはレーザダイオードを含むことができる。一実施形態では、1または複数の光源24が、約280nmのピーク波長で動作する単一の深紫外線LEDを含む。1または複数の光源24は、UV範囲内の波長の範囲内で動作することができるが、必ずしも単一の波長で動作する必要はないことを理解されたい。約280nmのピーク波長が使用される理由は、タンパク質結晶16が、アミノ酸、トリプトファン、チロシンおよびシステインの存在により、この波長のUV光を強く吸収するためである。塩の結晶18は、この波長の紫外線を吸収しない。複数の光源24が使用される場合、イメージセンサ36へのシャドーイング効果を避けるために、複数の光源24に隣接して(例えば、光源24とUVバンドパスフィルタ30との間に)、開口または穴25が設けられる。ただし、開口または穴25は任意であり、例えば、単一の光源24を使用する場合には必要ない。
【0013】
さらに、別の代替的な実施形態では、サンプル12を照射するために使用される複数の光源24を有する。複数の光源24は、光軸または光路31に概ね直交するアレイに配置することができる。複数の光源24は、任意選択的には、それぞれの光ファイバに結合されるようにしてもよく、それら光ファイバは、複数の光源24の各々によって順次照射されるファイバのアレイまたはパターン(例えば、横列および縦列または他の2次元パターン)で終端となる。1または複数の別個の生のホログラフィック画像44は、複数の光源24の各々について、イメージセンサ36でキャプチャされる。その後、横方向に(x,y平面において)オフセットされた光源24は、ピクセル超解像プロセスで使用することができ、低解像度のシフトされたホログラフィック画像44は、より高い空間解像度、より高いコントラストおよび/またはより高い信号対雑音比(snr)を有するホログラフィック画像44を生成するために、ピクセル超解像プロセスを受ける。その後、それらの高解像度画像44は、デジタル的に逆伝播されて、図2の内容に関連して記載および説明するように、振幅および/または位相画像60が生成される。ピクセル超解像は、同じシーンまたはオブジェクトのサブピクセルシフトされた低解像度画像のセットから、より高い解像度の画像を合成する計算方法である。相対的なシフトは、低解像度ホログラム画像44とともに、高解像度(超解像)ホログラムを推定するための最小二乗最適化問題の入力として提供される。ピクセル超解像に関する詳細は、例えば、Greenbaum et al.,「Field-Portable Pixel Super-Resolution Colour Microscope」,PLoS ONE 8(9):e76475.doi:10.1371/journal.pone.0076475(2013)、並びに、Bishara et al.,「Holographic pixel super-resolution in portable lensless on-chip microscopy using a fiber-optic array」,Lab Chip 11:1276-1279(2011)に記載されており、それらは引用により本明細書に援用されるものとする。
【0014】
LEDドライバ回路26は、1または複数の光源24を駆動するために使用することができるが、そのような回路は、後述するように、プリント回路基板(PCB)38上に配置されたマイクロコントローラまたはプロセッサ40に組み込まれるものであってもよい。また、LEDドライバ回路26を完全に省略し、LED光源24を直接駆動するようにしてもよい。1または複数の光源24は、携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10に付随する1または複数のバッテリなどの電源28を用いて電力を供給するようにしてもよい。また、専用の電源コードを介して、またはデータ/画像の転送にも使用される通信ケーブル(例えば、USBケーブル)を介して電力を供給するようにしてもよい。
【0015】
携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10は、1または複数の光源24からの側波帯放射を遮断するために使用される任意選択的なUVバンドパスフィルタ30を含む。UVバンドパスフィルタ30は、1または複数の光源24から、ハウジングまたはエンクロージャ20の内部22を通って延びる光軸または光路31に沿って配置されている。図1に示すように、サンプル12を含むサンプルホルダ32は、光軸または光路31に挿入され、フィルタリングされたUV光を受ける。サンプルホルダ32は、結晶を含む液体を保持する3次元のボリュームを含むことができる。サンプルホルダ32は、結晶サンプルを保持するために使用されるキュベット、チューブ、キャピラリ、チャンバ、ウェルまたはスライドベースのサンプルホルダ32を含むことができる。例えば、一実施形態では、3次元サンプルチャンバが、UV溶融シリカスライドと、ウェルを含む標準的なポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、例えばACLAR(登録商標)カバーとの間に形成される。サンプルホルダ32は、UVフィルタリングされた光がサンプル12を照らすことができるように、UV放射に対して光学的に透明であることが好ましい。サンプルホルダ32は、いくつかの実施形態では、サンプル32をハウジングまたはエンクロージャ20に出し入れすることができるトレイまたは支持体34上に配置されるようにしてもよい。
【0016】
図3は、サンプルホルダ32の一実施形態を示しており、このサンプルホルダは、サンプル12を保持するためにその中に形成されたウェルまたはチャンバ35を含む下部基板33aを有する。上部基板33bは、下部基板33aの上に配置され、流体サンプル12をウェルまたはチャンバ35の内部に維持する。下部基板33aおよび上部基板33bはともに、UV光に対して実質的に光学的に透明である。例えば、下部基板33aはPCTFEから形成され、上部基板33bはスライドガラスまたはカバースリップであってもよい。そして、サンプルホルダ32は、携帯型ホログラフィック顕微鏡デバイス10のハウジングまたはエンクロージャ20内に、直接またはトレイまたは支持体34を用いて挿入可能である。
【0017】
図1に示すように、イメージセンサ36は、ハウジングまたはエンクロージャ20の内部22に配置され、サンプル12を含むサンプルホルダ32と光軸または光路31において位置合わせされ、サンプルホルダが、イメージセンサ36と1または複数の光源24との間に介在している。イメージセンサ36は、一実施形態では、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサ36を含むことができる。イメージセンサ36は、モノクロまたはカラーのイメージセンサ36を含むことができる。イメージセンサ36は、カラーイメージセンサ36を含むことができるが、画像処理のためにピクセル値の1色(例えば、緑)のみが保持されている。サンプル12を有するサンプルホルダ32の位置は、イメージセンサ36のアクティブ領域に隣接または近接して配置されている。典型的には、サンプル12は、イメージセンサ36のアクティブ領域から数十~数百ミクロン(例えば、200~600μm)離れた位置に配置されている。一方、1または複数の光源24は、サンプルホルダ32およびサンプル12から遥かに離れた位置に配置されている。典型的には、1または複数の光源24(および任意選択的な開口または穴25)は、サンプルホルダ32およびサンプル12から数センチメートル離れた位置に配置されている。この構成では、イメージセンサ36のアクティブ領域がイメージングFOVとして完全に利用され(例えば、>10mm)、フィルタリングされたUV光がサンプル12を通って散乱され、イメージセンサ36によりキャプチャされる背景光との干渉によってインラインホログラムが生成される。次いで、それらの生のホログラフィック画像44がデジタル的に処理されて、サンプル12内のオブジェクト(例えば、結晶16、18)から干渉パターンに符号化された振幅および/または位相情報が抽出される。
【0018】
さらに図1を参照すると、イメージセンサ36が、プリント回路基板(PCB)38または他の基板上に配置されている。また、PCB38は、携帯型ホログラフィック顕微鏡10の電子機器を動作させるために使用されるマイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40も保持することができる。これには、1または複数の光源24およびイメージセンサ36を動作させることが含まれる。マイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40は、イメージセンサ36によって得られた生のホログラフィック画像44を格納するためにも使用される。それらは、マイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40に関連付けられたメモリ(図示せず)に格納されるようにしてもよい。マイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40は、本明細書でより詳細に説明するように、生のホログラフィック画像44の別のコンピューティングデバイス50への転送を制御するためにも使用される。携帯型ホログラフィック顕微鏡10との間で画像/データを転送するために、1または複数の通信ポート42(例えば、LANまたはUSBポート)をPCB38に設けることができる。代替的には、マイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40は、画像ファイル44およびデータを別のコンピューティングデバイス50にワイヤレスで転送することができるように、ワイヤレス機能(例えば、Wi-Fi、Bluetoothなど)を含むことができる。
【0019】
図1に示すように、別のコンピューティングデバイス50は、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、サーバ、仮想サーバ、またはスマートフォンなどの携帯型電子デバイスを含むことができる。コンピューティングデバイス50は、1または複数のプロセッサ56を含み、さらに、いくつかの実施形態では、1または複数の任意選択的なグラフィックス処理ユニット(GPU)を含む。別のコンピューティングデバイス50は、携帯型ホログラフィック顕微鏡10と同じ場所に配置することができ、あるいは携帯型ホログラフィック顕微鏡10から離れた場所に配置することができる(例えば、異なる地理的領域に配置されたサーバとすることができる)。コンピューティングデバイス50は、1または複数の入力デバイス52と、サンプル16の逆伝播された振幅および/または位相画像60を表示するためのディスプレイ54(いくつかの実施形態では入力デバイス52にある)とを有することができる。ディスプレイ54は、別個のディスプレイであってもよいし、コンピューティングデバイス50(例えば、スマートフォン、タブレットPC、iPadなどの画面)に組み込まれていてもよい。コンピューティングデバイス50は、1または複数のプロセッサ56と、1または複数のプロセッサ56を用いて実行される画像処理ソフトウェア58とを含む。一実施形態では、画像処理ソフトウェア58は、1または複数の生のホログラフィック画像44を入力として受け取り、ホログラフィック画像をサンプル12内の平面(またはサンプル12内のオブジェクト)に逆伝播して、振幅および/または位相画像60を出力するように構成されている。逆伝播された振幅および/または位相画像60は、その後、図1に示すようなディスプレイ54に表示されるようにしてもよい。振幅および/または位相画像60は、タンパク質ベースの結晶16を暗く表示する一方で、非タンパク質結晶(例えば、塩の結晶)18は暗くならない。
【0020】
画像処理ソフトウェア58は、任意の数の言語またはプログラムで実装することができる。本明細書に記載の例では、MATLAB(MathWorks、ミシガン州、米国)を利用したが、他の言語やプログラムを利用することができることを理解されたい。例えば、Python、C++などが挙げられる。一実施形態では、画像処理ソフトウェア58が、サンプル12の1または複数の振幅および/または位相画像60において識別された結晶の測定されたコントラストに少なくとも部分的に基づいて、非タンパク質結晶からタンパク質結晶16を自動的に識別するように構成されている。例えば、振幅および/または位相画像60内の異なる結晶16、18は、画像処理ソフトウェア58を用いてセグメント化され、その後、それぞれのコントラスト値(セグメント化された領域内またはその一部におけるコントラスト値)が測定され、閾値と比較されるものであってもよい。閾値は、システム2で分析されているタンパク質系結晶16および非タンパク質系結晶18を有する既知のサンプルに基づいて、経験的に設定することができる。振幅および/または位相画像60内において、この閾値を超える平均UVコントラスト値、中間UVコントラスト値等を有するそれらの結晶は、タンパク質系結晶16として識別することができ、一方、閾値を超えないものは、非タンパク質系結晶18として識別することができる。
【0021】
図2は、一実施形態に係る、結晶16、18を含むサンプル12をイメージングする方法を示している。操作100では、結晶16、18を含むサンプル12がサンプルホルダ32内に装填される。サンプル12は、生体液やその抽出物などの生体サンプルを含むことができる。また、サンプル12は、例えば結晶学的合成や研究用途に用いられる、1または複数の緩衝液に含まれる。また、サンプル12は、環境サンプルや、反応生成物またはプロセスのサンプルを含むことができる。サンプル12は、典型的には、水性ベースの流体に含まれており、その中に結晶16、18を含む。このため、結晶16、18は、キャリア流体に含まれるものであってもよい。キャリア流体は、従来の緩衝液、水溶液、あるいは生物学的流体を含むことができる。サンプルホルダ32は、携帯型ホログラフィック顕微鏡10のハウジングまたはエンクロージャ20内に挿入される。これは、サンプルホルダ32をハウジングまたはエンクロージャ20内に直接挿入することによって行われるものであってもよい。代替的には、サンプルホルダ32を移動可能なトレイまたは支持体34に装填し、その上にサンプルホルダ32を置き、ハウジングまたはエンクロージャ20内の光路に移動させるようにしてもよい。その後、操作110に見られるように、サンプル12が、1または複数の光源24からのUV光で照射される。これは、フィルタリングされたUV光であってもよいし、フィルタリングされていないUV光であってもよい。次に、操作120において、イメージセンサ36が、1または複数の生のホログラム画像44を取得または獲得する。これらの画像44は、携帯型ホログラフィック顕微鏡10にローカルに一時的に保存された後に、別のコンピューティングデバイス50に転送されるか、または別のコンピューティングデバイス50に直ちに転送される。代替的には、別の実施形態では、画像44が、可搬型ホログラフィック顕微鏡10のマイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40を使用して逆伝播され、よって、1または複数の生のホログラム画像44を別のコンピューティングデバイス50に転送する必要がなくなる。
【0022】
コンピューティングデバイス50では(またはマイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40を使用して)、1または複数の生のホログラム画像44は、操作130に見られるように、デジタル逆伝播の対象となり、ここでは、画像処理ソフトウェア58が1または複数の生のホログラム画像44を1または複数の振幅および/または位相画像60にデジタル的に逆伝播する。角度スペクトル法は、波動場の伝播をモデル化するための手法であり、複素波動場を無限の平面波の合計に拡張することを伴う。ホログラムは、先ず、高速フーリエ変換(FFT)を用いて、空間周波数領域に変換される。次に、波長、伝播距離、媒質の屈折率の関数である位相因子を角度スペクトルに掛け合わせる。最後に、それを空間領域に逆フーリエ変換して、サンプル12の逆伝播画像を得る。その後、図1の操作140に見られるように、オブジェクト平面(すなわち、サンプル12内)における逆伝播された振幅および/または位相画像60を表示および/または分析する。分析は、サンプル12内のタンパク質結晶16および/または非タンパク質結晶18を自動的に識別することを含むことができる。また、分析は、サンプル12内のタンパク質結晶16(または非タンパク質結晶18)の数または量をカウントまたは定量化することも含むことができる。代替的には、単一のFFTを用いた逆伝播にフレネル伝播法を用いることもできるが、フレネル近似に基づいているため、解像度が制限される。例えば、Gorocs et al.,「On-Chip Biomedical Imaging」,IEEE Reviews in Biomed.Eng.,Vol.6,pp.29-46(2012)を参照されたい。この文献は引用により本明細書に援用されるものとする。
【0023】
別の実施形態では、電磁スペクトルの可視部分の光を放出する1または複数の追加の光源24が、携帯型ホログラフィック顕微鏡10に含まれるようにしてもよい。これらの1または複数の追加の光源24は、任意選択的なバンドパスフィルタ30の後に配置され、様々なチャネル(例えば、青色、赤色または緑色の光)からのサンプル12に関する追加の情報を提供するために使用され、それは、コントラストの変化などを評価して、結晶評価のための別の次元を提供するために、UV画像60とともに使用され得る。
【0024】
実験
テストされた携帯型ホログラフィック顕微鏡10(図1図4A図4B)は、汎用性の高いRaspberry Pi 3ボード/マイクロコントローラ40に基づいて構築されるとともに、容易に入手可能な8メガピクセルのCMOSカメラを有し、それらはすべて、3Dプリントされたカスタム設計のハウジングまたはエンクロージャ20内に収容され、ハウジングまたはエンクロージャは、側波帯放射を遮断するためのバンドパスフィルタ30とともに、280nmのピーク波長で動作するUV LED光源24も保持している。なお、Raspberry Pi 3は単なる一例であり、他のマイクロコントローラ/プロセッサ40または制御回路を使用して、光源24やイメージセンサ36に電力を供給したり制御したりすることも可能である。Raspberry Pi 3ボード/マイクロコントローラ40を使用する特定の実施形態では、CMOSカメラのキャップを外してレンズモジュールを取り外し、イメージングFOVとして完全に利用されるイメージセンサ36のアクティブ領域(>10mm図6A)に非常に近い位置(約300~400μm)にサンプルを配置する。フィルタリングされたUV光は、サンプル12を通って散乱し、イメージセンサ36により捕捉される背景光との干渉によってインラインホログラムを生成する。これらのホログラフィック画像44は、次に、サンプル12内のターゲットオブジェクトから干渉パターンに符号化された振幅および/または位相情報を抽出するためにデジタル処理され、振幅および/または位相画像60が生成される。
【0025】
携帯型ホログラフィック顕微鏡10は、振幅再構成における強いUV吸収の影響を検証するためにテストされ、タンパク質結晶をイメージングした(図5B)。サンプル12は、UV溶融シリカガラススライドおよびACLAR(登録商標)タンパク質結晶化カバー(タンパク質結晶学者によって使用される標準的なUV透過性の材料)片を用いてイメージングチャンバ32を構築することにより準備した。ホログラフィーのようなコヒーレントイメージングモダリティのための材料の透過性については、材料ボリュームの不規則性が強い背景歪みを引き起こす可能性があるため、さらに考慮する必要があることに注意することが重要である。タンパク質結晶学者により使用される標準的なUV透過性のACLAR(登録商標)は、ホログラフィックイメージングに適しており、イメージング品質に影響を与えない、背景にかすかな変調が生じるのみである(図5B)。
【0026】
イメージングプラットフォーム(図1図4A図4B)は、先ず、280nmの光で励起されると蛍光を発する芳香族アミノ酸を含む、結晶化に容易に利用可能なセリンプロテアーゼであるプロテイナーゼKを有するサンプル、および2種類の塩結晶サンプル(塩化ナトリウムおよび硫酸アンモニウム)(図5Aおよび図5B)を準備することによってテストされ、それぞれのX線回折データが図5Cに示されている。個々の結晶を、約1μLの溶液とともに、(粘着性のある面を上に向けた)ACLAR(登録商標)片上にピペットで移し、UV溶融シリカを用いて液滴をチャンバ32内に封入した。ホログラム44の振幅再構成60は、塩結晶とは異なり、タンパク質結晶が背景に比べて遥かに濃く見えることを明確に示している(図5B)。図5Bに示す振幅再構成画像60は、二重像アーチファクトを緩和するために追加の位相回復手法を用いてさらに改善することができるが、これは追加の計算および/またはホログラフィック測定を犠牲する可能性がある。本明細書で画像化された特定の結晶は、振幅再構成画像60を使用したが、他の結晶サンプルは、位相再構成画像60、または振幅再構成画像と位相再構成画像60の両方の組合せを使用できることを理解されたい。
【0027】
携帯型ホログラフィックイメージングシステム2をさらに評価するために、同じFOV内でタンパク質(プロテイナーゼK)と塩(酢酸リチウムおよび硫酸リチウム)の結晶の両方を含む混合サンプルを画像化した(図6A図6D)。このサンプルは、結晶を含む約1μLの緩衝液の液滴をUV溶融シリカスライドとACLAR(登録商標)シート片との間に挟むことによって用意した。結晶は、それぞれの緩衝液中で成長させた後、マイクロループで個別に採取し、液滴の中に沈めてから封入した。レンズベースの顕微鏡(図6B)で最初に画像化したサンプル12は、タンパク質結晶の蛍光によってタンパク質結晶と塩結晶を区別することができ、タンパク質結晶が蛍光を発しているのに対し、塩結晶は暗いままであることが観察される。次に、このサンプルを携帯型ホログラフィック顕微鏡で画像化したところ(図6A図6C)、プロテイナーゼKの結晶は、塩結晶に比べて非常に強いコントラスト(p<0.02)を示した(図6C図6D)。UVホログラフィック振幅再構成におけるコントラスト(C)は、以下のように、平均バックグラウンド信号値(S)からターゲット結晶の平均振幅信号(S)を差し引き、この差を平均バックグラウンド信号値で割ることにより算出した。
【0028】
ここで、Sは、ターゲット結晶の内側に収まる最大の矩形領域内で計算され、Sは、オブジェクトを含まないFOVの透明領域内で計算される。
【0029】
タンパク質結晶化のための携帯型ホログラフィック顕微鏡10のイメージング機能をさらにテストするために、(1)核膜に関連し、ヒトのヒストンのユビキチン化に関与するRING1B複合体と、(2)大腸菌のマルトデキストリンを分解し、UV活性結晶を形成するマルトース結合タンパク質とを用いて、追加の実験を行った(図7Aおよび図7B)。テスト対象のサンプルはすべて、最初にレンズベースのUV顕微鏡で画像化し(図7Aの左2列)、次にUVベースの携帯型ホログラフィック顕微鏡10で画像化した(図7Aの右列および図7B)。タンパク質結晶と塩結晶を区別する携帯型UVイメージングプラットフォームの機能は、それらの異なるタイプのタンパク質でさらに検証され、塩結晶(酢酸リチウム)と比較して、非常に高いコントラスト(p<0.003)を示した(図7B)。
【0030】
本明細書に開示の携帯型ホログラフィック顕微鏡10およびシステム2は、タンパク質結晶学者により使用される高価で嵩張るデュアルモードUV顕微鏡の代替手段である。携帯型ホログラフィック顕微鏡システム2は、センサ統合時間の短縮を可能にする深紫外線LEDの電力出力効率を改善するとともに、シングルボードコンピュータの1または複数のプロセッサ56としての組み込みグラフィックス処理ユニット(GPU)の利用可能性を向上させることによって、ほぼリアルタイムのイメージング機能をさらに強化することができる。
【0031】
さらに、生のホログラフィック画像44は、画像処理ソフトウェア58による逆伝播のために別のコンピューティングデバイス50にオフロードされたが、他の実施形態では、逆伝播が、携帯型ホログラフィック顕微鏡10とともにローカルに存在するマイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40上で行われ得ることを理解されたい。例えば、逆伝播は、マイクロコントローラまたは1または複数のプロセッサ40によってオンボードで実行されるPythonで実装されるようにしてもよく、それにより、画像処理のために生のホログラフィック画像44を別のコンピューティングデバイス50にオフロードまたは転送する必要性を回避することができる。
【0032】
UVオンチップイメージングプラットフォーム
携帯型ホログラフィック顕微鏡10(図1図4A図4B)は、Raspberry Pi 3Bシングルボードコンピュータ(マイコン/プロセッサ40)に接続された、キャップを外された8メガピクセル(水平3280×垂直2464、アクティブ領域が約10.14mm)のピクセルピッチ1.12μmのCMOSイメージセンサ(IMX219、Sony Corporation、東京都、日本)と、ピーク波長280nmで動作する深紫外線LED光源24(TH-UV280J9-C-H-B、Tianhui Optoelectronics Co.,Ltd、Guangdong Province、中国)と、紫外線LED光源24からの側波帯放射を遮断する、中心波長280nm、帯域幅10nmのUVバンドパスフィルタ(FF01-280/10-25、Semrock、ニューヨーク州、米国)とにより構成されている。これらコンポーネントはすべて、3Dプリントされたアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)(Stratasys、Dimensions Elite)のカスタム設計のハウジングまたはエンクロージャ20内に収められている。カスタムPythonスクリプトを使用して、イメージセンサ36からRaspberry Pi 3Bのオンボードストレージに生のフレーム/ホログラム44を捕捉、抽出、保存した。
【0033】
データ処理
イメージセンサ36の緑のピクセルがUV照明に最も反応したため、生のホログラフィック画像フレーム44の赤と青のピクセルの値は、それらの隣接する緑のピクセルの平均値で置き換えた。次に、ホログラフィック投影を含む画像フレーム44を、角度スペクトルアプローチを使用してデジタル的に逆伝播し、ホログラムのフーリエ変換と波動伝播の伝達関数を乗算することによってレイリー・ゾンマーフェルト積分を数値的に解き、サンプル12の振幅および/または位相画像60を生成した。完全なデータ処理には、MATLAB(MathWorks、ミシガン州、米国)が動作する標準的なデスクトップコンピュータ50(Dell Optiplex 9010、Intel i7、32GB RAM)を使用して約1分かかる。塩結晶と比較したタンパク質結晶の振幅再構成におけるコントラストの増加の統計的有意性は、プロテイナーゼKについての2つの別々の実験(図6D)、およびRING1B複合体およびマルトース結合タンパク質を含む追加のタンパク質のセットについての3つの別々の実験(図7A)によりt検定を用いて検証した。
【0034】
サンプルの準備
UV溶融シリカスライド(10mm×10mm、厚さ0.2mm、MTI Corp.、カリフォルニア州、米国)およびポリクロロトリフルオロエチレン(Grace Bio-Labs ProCrystal Cover 875238、オレゴン州、米国)からなるACLAR(登録商標)から形成された標準的なタンパク質結晶化カバー片を含むUV適合性材料を使用して、結晶サンプル12を保持するサンプルチャンバ32を構築した。結晶および対応する緩衝液を含む0.8~1μLの液滴を、粘着性のある面を上に向けた1つのウェルを含むACLAR(登録商標)片上に付着させた。その後、UV溶融シリカスライドを使って静かにウェルを覆い、液滴をサンプルホルダ32に封じ込めた。注目すべきは、ACLAR(登録商標)の標準的なタンパク質結晶化用カバー材がコヒーレントイメージングに適しており、画質には影響を与えないかすかな背景変調(図5B)が生じるのみであったことである。
【0035】
タンパク質および塩の結晶化
TTP LabTech Mosquito(TTP Labtech Inc.、マサチューセッツ州、米国)を使用して、96ウェルの吊り下げ式ドロップ結晶化セットアップを生成した。すべてのタンパク質結晶を、蒸気拡散を用いて数日間で成長させた。プロテイナーゼK(VWRカタログ番号97062-238、ペンシルベニア州、米国)は、凍結乾燥した粉末を水に溶かして結晶化し、50mg/mlのストックを得た。このストック溶液を、1.5Mの硫酸アンモニウムおよび0.1MのTris-HCl pH7.5と1:1で混合した。20mMのTris-HCl pH8.0および50mMのNaCl中のマルトース結合タンパク質80mg/mlを、0.2Mの塩化マグネシウム六水和物、0.1MのMES pH6.0および20%w/vのPEG6000と1:1で混合して結晶化させた。RING1B、PCGF4、CBX8およびPHC1のオリゴマー化領域は、UCLAのChemistry and Biochemistry Departmentから提供された。このサンプルを、0.7Mのギ酸ナトリウム pH7.0および20%w/vのPEG3350と1:1で混合した。300nLの液滴はすべて、100μLの対応する結晶化溶液で平衡化した。1.0Mの塩化ナトリウム、2.0Mの硫酸アンモニウム、1.0Mの酢酸リチウムおよび1.0の硫酸リチウムを、μLマイクロリットルのアリコートで分注し、立体顕微鏡で観察しながら空気中で蒸発させた。水溶液中での脱水により形成された結晶は、50ミクロンのマイクロループ(Mitegen M5-L18SP-50LD、ニューヨーク州、米国)を用いて手動で採取し、1μLのストック塩溶液に入れた。結晶を含むそれらの溶液は、イメージングのためにピペットでACLAR(登録商標)表面に移した。
【0036】
レンズベースのUV顕微鏡
携帯型ホログラフィックイメージングシステム2との比較のために、デュアルモードUV顕微鏡(Korima PRS-1000、カリフォルニア州、米国)を使用した。サンプルは、最初にUV顕微鏡で画像化し、その後、携帯型ホログラフィック顕微鏡10でホログラフ的に画像化した。結晶を280nmの光に5秒以内で露光し、撮影した画像を対応する再構成ホログラフィック画像と比較した(図7A)。
【0037】
X線回折
タンパク質結晶と塩をさらに区別するために、回折画像を撮影した。ターゲットサンプルから個々の結晶を採取し、結晶水の形成を防ぐために33%のグリコールを加えた母液に入れた。X線データの収集には、回転陽極発生器(Rigaku FRE+、東京都、日本)およびイメージングプレート検出器(Rigaku HTC、東京都、日本)を使用した。高分子結晶は、結晶の対称要素間の間隔が大きくなることで発生する低解像度の反射によって、塩結晶と区別することができる(図5C)。
【0038】
タンパク質結晶の高コントラストイメージングのために、280nmの深紫外線波長で動作する低コストで携帯型ホログラフィック顕微鏡10を設計および構築した。本システム2は、高感度で嵩張る高価なコンポーネントを必要とせずに、タンパク質結晶をイメージングして塩結晶と区別するために、タンパク質結晶学者が日常的に使用している明視野モードと紫外線(UV)誘導蛍光モードからなるデュアルモード光学顕微鏡に代わる、低コスト、高スループットかつ堅牢な代替手段を提供するものである。携帯型ホログラフィック顕微鏡10は、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、酢酸リチウムおよび硫酸リチウムを含む複数の異なる塩結晶と比較して、プロテイナーゼK、マルトース結合タンパク質、RING1B複合体などの様々なタンパク質結晶をイメージングすることによりテストした。タンパク質結晶の振幅再構成画像60は、背景に比べて遥かに暗く見えるが、塩結晶はコントラストを示すことなく、2種類の結晶を明確に区別している。携帯型ホログラフィック顕微鏡10は、タンパク質結晶をイメージングして塩結晶と区別するための低コストで堅牢な代替的なプラットフォームとして、タンパク質結晶学者などを支援することができる。
【0039】
本発明の実施形態を開示および説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることが可能である。よって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物を除いて、限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
【国際調査報告】